概況
日本における通信市場は、「光コラボレーションモデル」の開始による多様なプレーヤーのサービス提供開始、スマートフォンやタブレットの急速な普及及び政府の競争促進政策(MVNOの新規参入、SIMロック解除の義務化及び総務省による携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォースの提言等)などにより、大きく変化しています。
このような市場環境の中、当社グループは、当連結会計年度を中期目標の達成に向けた確かな一歩を踏み出す年と位置付け、営業利益目標の達成にこだわり事業運営を進めてきました。
通信サービス収入の増加に向け、新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の充実及び「ドコモ光」の普及拡大に向けた各種取り組みを行うとともに、通信ネットワークの強化、魅力的な端末の提供に取り組みました。
また、スマートライフ領域※1の成長に向け、dマーケットにおけるサービスの拡充及びサービスのコンテンツ充実に取り組みました。
あわせて、経営体質の強化をめざし一層のコスト効率化を推進しました。
さらに、当社グループは、これまでの事業で培ってきた決済基盤やポイントプログラムなどのビジネスアセットを連携させて新たな価値を協創する「+d」の取り組みを開始し、多くのパートナーとの連携を進めました。その一環として、「+d」の基盤拡大に向け「ドコモポイント」を「dポイント」にリニューアルし、お客さまにとってより便利で利用価値の高いポイントサービスの提供を開始しました。
これらの取り組みの結果、営業利益・各種オペレーション数値等を大幅に改善するとともに、株式会社J.D.パワー アジア・パシフィックが実施した「2015年日本携帯電話サービス顧客満足度調査℠」※2において、総合満足度第1位の評価を得ることができました。
当連結会計年度の営業収益は、新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の上位プランへの移行が進んだことやタブレット端末等の2台目需要の拡大などによる通信事業の回復、dマーケットをはじめとしたスマートライフ領域の順調な成長などにより、前連結会計年度に比べ1,437億円増の4兆5,271億円となりました。
営業費用は、スマートライフ領域の収入の増加に連動する費用が増加したものの、コスト効率化の取り組みに伴い、販売関連費用やネットワーク関連費用が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ3億円減の3兆7,441億円となりました。
これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ1,440億円増の7,830億円となりました。これは、当連結会計年度の第2四半期決算発表時に見直した連結業績予想7,100億円を大幅に上回るものであり、中期目標の達成に向けて大きく前進することができました。
また、法人税等及び持分法による投資損益前利益7,780億円から税金等を控除した当社に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ1,383億円増の5,484億円となりました。
※1 「スマートライフ事業」と「その他の事業」を合わせた事業領域のこと。
※2 J.D.パワー アジア・パシフィック2015年日本携帯電話サービス顧客満足度調査℠。2015年7月の期間中、日本国内在住の携帯電話利用者計31,200名からの回答を得た2015年調査結果による。
当連結会計年度における主な経営成績は、次のとおりです。
区分 | 当連結会計年度 | 対前年度増減率(%) | ||
営業収益 | 45,271 | 3.3 | ||
営業利益 | 7,830 | 22.5 | ||
法人税等及び持分法による | 7,780 | 20.8 | ||
当社に帰属する当期純利益 | 5,484 | 33.7 | ||
EBITDAマージン | 32.1 | % | 0.9 | ポイント |
ROE | 10.3 | % | 2.9 | ポイント |
(注) 1 EBITDAマージン:EBITDA÷営業収益
EBITDA:営業利益+減価償却費+有形固定資産売却・除却損+減損損失
(EBITDAマージンの算出過程) | ||||
区分 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
a.EBITDA | 13,691 | 14,546 | ||
減価償却費 | △6,598 | △6,259 | ||
有形固定資産売却・除却損 | △401 | △365 | ||
減損損失 | △302 | △91 | ||
営業利益 | 6,391 | 7,830 | ||
営業外損益(△費用) | 48 | △50 | ||
法人税等 | △2,381 | △2,117 | ||
持分法による投資損益(△損失) | △78 | △51 | ||
控除:非支配持分に帰属する | 121 | △129 | ||
b.当社に帰属する当期純利益 | 4,101 | 5,484 | ||
c.営業収益 | 43,834 | 45,271 | ||
EBITDAマージン (=a/c) | 31.2 | % | 32.1 | % |
売上高当期純利益率 (=b/c) | 9.4 | % | 12.1 | % |
(注) 当社が使用しているEBITDA及びEBITDAマージンは、米国証券取引委員会(SEC)レギュレーション S-K Item 10(e)で用いられているものとは異なっています。従って、他社が用いる同様の指標とは比較できないことがあります。 |
2 ROE:当社に帰属する当期純利益÷株主資本
(ROEの算出過程) | ||||
区分 | 前連結会計年度 2014年4月1日から 2015年3月31日まで (億円) | 当連結会計年度 2015年4月1日から 2016年3月31日まで (億円) | ||
a.当社に帰属する当期純利益 | 4,101 | 5,484 | ||
b.株主資本 | 55,117 | 53,412 | ||
ROE(=a/b) | 7.4 | % | 10.3 | % |
(注) 株主資本=(前(前々)連結会計年度末株主資本+当(前)連結会計年度末株主資本)÷2 |
セグメントの業績は、次のとおりです。
通信事業
業績
区分 | 当連結会計年度 | 対前年度増減率(%) |
通信事業営業収益 | 36,898 | 1.0 |
通信事業営業利益(△損失) | 7,089 | 11.4 |
当連結会計年度における通信事業営業収益は、「月々サポート」による減収影響はあるものの、「カケホーダイ&パケあえる」の上位プランへの移行が進んだことやタブレット端末等の2台目需要の増加、「ドコモ光」の契約数が157万契約となったことなどでARPU等が回復していることなどにより、前連結会計年度に比べ352億円(1.0%)増加して3兆6,898億円となりました。
また、通信事業営業費用はコスト効率化の取り組みに伴い、販売関連費用やネットワーク関連費用が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ376億円(1.2%)減少して2兆9,809億円となりました。
この結果、通信事業営業利益は、前連結会計年度に比べ728億円(11.4%)増加して7,089億円となりました。
≪トピックス≫
○ 新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の充実
2015年9月より、5分以内の国内音声通話を回数の制限なくご利用いただける「カケホーダイライトプラン」の提供を開始しました。
また、2016年3月より、データ通信のご利用が少ないお客さま向けにご家族で毎月5GBのデータ量をわけあえる「シェアパック5」の提供を開始しました。
これらにより、お客さまご自身の音声通話とデータ通信の利用量に合わせて、より自由に基本プランとシェアパックの組み合わせを選択できるようになりました。たとえば、ご家族3人で「カケホーダイライトプラン」と「シェアパック5」を組み合わせることで、お一人あたり5,000円以下でスマートフォンをご利用いただくことが可能となりました。
○ 「ドコモ光」の普及拡大に向けた取り組み
2015年3月より提供している光ブロードバンドサービス「ドコモ光」について、提携インターネットプロバイダ数を開始当初の14社から2016年3月末には23社に拡大しました。その結果、お客さまのプロバイダ選択の幅を広げ、フレッツ光からの転用の際により多くのお客さまがプロバイダをそのままご利用いただくことが可能となりました。
さらに、2016年2月より、法人のお客さま向けのサポート付きクラウド型Wi-Fiサービス「ドコモ光ビジネスWi-Fi」、2016年3月より、最大100Mbpsの通信を2段階定額料金でご利用いただけるプラン「ドコモ光ミニ」など、お客さまのニーズに沿ったサービス・新料金プランの提供を開始しました。
多くのお客さまにご好評をいただき、2016年3月末には累計申込数は180万件を突破し、契約数は157万契約となりました。
○ 魅力的な端末ラインナップの充実
2015夏モデル及び2015-2016冬春モデルなどのAndroidスマートフォンやiPhone 6s※及びiPhone 6s Plus※の販売を開始するなど、お客さまの多様なニーズにお応えできるよう努めました。この結果、当連結会計年度におけるスマートフォンの販売台数は1,544万台となりました。また、そのうち、「dtab d-01G」、「Arrows Tab F-03G」及びiPad Air2※などの販売が順調に拡大したことにより、当連結会計年度におけるタブレットの販売台数は218万台となりました。
○ 通信ネットワーク強化の取り組み
お客さまに、より快適にネットワークサービスをご利用いただくため、「PREMIUM 4G」のエリアを2016年3月末で全国976都市に拡大するとともに、2015年10月より受信時最大300Mbpsの通信サービスを国内一部エリアで開始しました。
また、総務省が定めた「実効速度に関するガイドライン」に基づき実効速度計測を行い、ダウンロード・アップロードともに高速であるという結果(中央値(Android+iOS):ダウンロード71Mbps、アップロード21Mbps)となりました。
○ 仮想化技術を適用した商用ネットワークの提供
2016年3月より提供開始した本技術を適用している装置に関して、通信混雑時におけるつながりやすさ及び設備故障時における通信の信頼性などが向上し、よりよいネットワークサービスをご利用いただくことが可能となりました。
○ 災害時等における通信の確保
広域災害・停電時における人口密集地の通信容量強化を目的として、通信容量が約3倍となる大ゾーン基地局のLTE対応を進めるとともに、沿岸部や山間部の中心地などの通信確保を目的とした中ゾーン基地局の全国整備を開始しました。
※ TM and (c) 2016 Apple Inc. All rights reserved. iPad、iPhoneはApple Inc.の商標です。iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています。
主なサービスの契約数、携帯電話販売数等の状況は、次のとおりです。
主なサービスの契約数
区分 | 当連結会計年度末 2016年3月31日 | 対前年度末増減率(%) | |
携帯電話サービス | 70,964 | 6.6 | |
(再掲)新料金プラン | 29,704 | 66.6 | |
| LTE(Xi)サービス | 38,679 | 25.8 |
| FOMAサービス | 32,285 | △9.9 |
(注) 1 携帯電話サービス契約数、LTE(Xi)サービス契約数及びFOMAサービス契約数には、通信モジュールサービス契約数を含めて記載しています。
2 2008年3月より、「2in1」を利用する際にはその前提として原則FOMA契約を締結することが条件と
なっており、携帯電話サービス契約数及びFOMAサービス契約数にはその場合の当該FOMA契約も含まれ
ています。
携帯電話販売数等
区分 | 当連結会計年度 2015年4月1日から | 対前年度増減率(%) | ||
携帯電話販売数 | 26,058 | 9.7 | ||
| LTE(Xi) | 新規 | 9,234 | 51.6 |
契約変更 | 3,538 | △32.9 | ||
機種変更 | 8,059 | 38.1 | ||
FOMA | 新規 | 2,374 | △17.8 | |
契約変更 | 101 | △22.2 | ||
機種変更 | 2,751 | △22.2 | ||
解約率 | 0.62% | 0.01ポイント |
(注) 1 新規:新規の回線契約
契約変更:FOMAからLTE(Xi)への変更及びLTE(Xi)からFOMAへの変更
機種変更:LTE(Xi)からLTE(Xi)への変更及びFOMAからFOMAへの変更
2 当連結会計年度より解約率の算定方法を変更しました。新たな算定方法においては、仮想移動体通信事業者(MVNO)の契約数及び解約数を除いて算出しています。これに伴い、前連結会計年度の数値も変更しています。
ARPU・MOU
当連結会計年度より、「通信サービス収入の増加に向けた取り組み」を測る指標とするため、ARPUを再定義しました。
タブレットやWi-Fiルーター等への需要の高まりにより、1利用者による複数契約が拡大していることから、従来の「1契約当たり月間平均収入」から「1利用者当たり月間平均収入」への変更を行いました。また、光ブロードバンドサービスの開始により「音声ARPU」と「パケットARPU」に加えて「ドコモ光ARPU」を新設しました。
さらに、スマートライフ領域については、当社通信サービス利用者以外の収益拡大もめざしていることから、「スマートARPU」をARPUの算定から除外しました。
なお、パケットARPUとドコモ光ARPUの合算値を「データARPU」と称します。
区分 | 当連結会計年度 | 対前年度増減率 | |||
総合ARPU | 4,170 | 1.7 | |||
| 音声ARPU | 1,210 | △5.5 | ||
| データARPU | 2,960 | 5.0 | ||
|
| パケットARPU | 2,910 | 3.2 | |
|
| ドコモ光ARPU | 50 | - | |
MOU | 133 | 分 | 9.0 |
(注) 1 ARPU・MOUの定義
a.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit):1利用者当たり月間平均収入
1利用者当たり月間平均収入(ARPU)は、1利用者当たりの各サービスにおける平均的な月間営業収益を計るために用います。ARPUは通信サービス収入(一部除く)を、当該期間の稼動利用者数で割って算出されています。こうして得られたARPUは1利用者当たりの各月の平均的な利用状況及び当社による料金設定変更の影響を分析する上で有用な情報を提供するものであると考えています。なお、ARPUの分子に含まれる収入は米国会計基準により算定しています
b.MOU(Minutes of Use):1利用者当たり月間平均通話時間
2 ARPUの算定式
総合ARPU:音声ARPU+パケットARPU+ドコモ光ARPU
・音声ARPU:音声ARPU関連収入(基本使用料、通話料)÷稼動利用者数
・パケットARPU:パケットARPU関連収入(月額定額料、通信料)÷稼動利用者数
・ドコモ光ARPU:ドコモ光ARPU関連収入(基本使用料、通話料)÷稼動利用者数
なお、パケットARPUとドコモ光ARPUの合算値をデータARPUと称します。
3 稼動利用者数の算出方法
当該期間の各月稼動利用者数((前月末利用者数+当月末利用者数)÷2)の合計
4 利用者数は、以下のとおり、契約数を基本としつつ、一定の契約数を除外して算定しています。
利用者数 = 契約数
-通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」並びに仮想移動体通信事業者(MVNO)へ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る契約数
-Xi契約及びFOMA契約と同一名義のデータプラン契約数
なお、通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」並びに仮想移動体通信事業者(MVNO)へ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る収入は、ARPUの算定上、収入に含めていません。
5 当連結会計年度より算定方法を変更しています。それに伴い、前連結会計年度のARPU及びMOUの数値も変更しています。
スマートライフ事業
業績
区分 | 当連結会計年度 | 対前年度増減率(%) |
スマートライフ事業営業収益 | 5,041 | 13.7 |
スマートライフ事業営業利益(△損失) | 465 | - |
当連結会計年度におけるスマートライフ事業営業収益は、dマーケット等を通じたコンテンツサービス収入の拡大や「dカード」等の金融・決済サービスの取扱高が拡大したこと、グループ会社によるショッピングサービス等の収入が拡大したことなどにより、前連結会計年度に比べ608億円(13.7%)増加して5,041億円となりました。
また、スマートライフ事業営業費用は、前連結会計年度より計上している携帯端末向けマルチメディア放送に係る事業資産の減損損失が減少したものの、dマーケット等を通じたコンテンツサービスの収入に連動した費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ120億円(2.7%)増加して4,577億円となりました。
この結果、スマートライフ事業営業利益は、前連結会計年度に比べ488億円増加して465億円となりました。
≪トピックス≫
○ dマーケット契約数※の拡大と利用促進に向けた取り組み
幅広いお客さまにdマーケットのサービスをお楽しみいただけるよう、サービスの拡充及びサービスのコンテンツ充実に努めました。
2015年5月より、dマーケットの新たなサービスとして、食に関する様々な情報やお得なクーポンがご利用いただける等、お客さまの食をトータルサポートする「dグルメ」の提供を開始しました。また、「dTV」「dアニメストア」「dヒッツ」「dキッズ」「dマガジン」においてもコンテンツの充実に努めました。
これらの取り組みの結果、dマーケット契約数は2016年3月末には1,554万契約となりました。
○ 「dポイントカード」「dカード」の発行
提携店舗でのお買い物の際に提示するだけで「dポイント」を貯める・使うことができる「dポイントカード」の発行を2015年12月より開始しました。さらに、当社の提供するクレジットサービス「DCMX」を、「dカード」にリニューアルしました。「dカード」は、「dポイントカード」にクレジット決済機能や電子マネー機能を搭載したもので、よりお得に「dポイント」を貯めることができます。
当社のお客さま向け会員プログラム「dポイントクラブ」の会員登録件数は2016年3月末には約5,800万件となり、そのうち「dポイントカード」の登録件数は発行開始から4ヵ月で350万件を突破しました。
○ スマートライフ実現に向けた新たなサービスの提供
2015年10月より、約300の豊富なコースから好きなものを自由に選んで体験することができる「すきじかん」の提供を開始しました。
また、2015年11月より、言葉だけでは伝わりにくい場面でも手書き文字やイラストで簡単にコミュニケーションをとることができる「てがき翻訳」の提供を開始しました。
さらに、2015年12月より、少額のギフトチケットをいつでもどこでも手軽に贈ることができる「ギフトコ」の提供を開始しました。
※ 「dTV」「dアニメストア」「dヒッツ」「dキッズ」「dマガジン」「dグルメ」の合計契約数。
その他の事業
業績
区分 | 当連結会計年度 | 対前年度増減率(%) |
その他の事業営業収益 | 3,593 | 14.6 |
その他の事業営業利益(△損失) | 277 | 414.4 |
当連結会計年度におけるその他の事業営業収益は、ケータイ補償サービスの契約数増加やIoT※1ビジネスに関連するサービス収入の拡大などにより、前連結会計年度に比べ458億円(14.6%)増加して3,593億円となりました。
また、その他の事業営業費用は、ケータイ補償サービス等の収入に連動した費用の増加などにより、前連結会計年度に比べ235億円(7.6%)増加して3,316億円となりました。
この結果、その他の事業営業利益は、前連結会計年度に比べ223億円(414.4%)増加して277億円となりました。
≪トピックス≫
○ IoTビジネスの拡大
IoTの利用促進に向け、国内では「LTEユビキタスプラン」の提供開始により、通信モジュールをLTE回線でご利用いただくことが可能となりました。
また、国外では、ブラジルにおいて、SIMを差し替えることなくドコモの電話番号からVivo※2の電話番号に入れ替えることができるeSIM及びeSIMを活用したソリューションの提供を開始しました。日本の通信事業者として、海外通信事業者とeSIMを活用したソリューションの提供に合意するのは今回が初めてとなります。本ソリューションは、ヤンマー株式会社の輸出製品に組み込まれ、稼働状況管理、稼働診断保守、盗難防止などの遠隔情報サービスに活用される予定です。
○ 地域社会の課題解決に向けた取り組み
「かんたん位置情報サービス」を活用した「高齢者見守りサービス」を複数の自治体向けに提供しました。本サービスは、当社の提供するGPS端末を高齢者に身に着けていただくことにより、高齢者が行方不明となった場合等に、ご家族がご利用中のスマートフォン、タブレット等を使用して現在位置を探索することを可能とし、早期発見につなげることを目的としています。
※1 Internet of Thingsの略。あらゆるモノがインターネットを通じて接続され、状況の把握や制御等を可能にするといった概念のこと。
※2 ブラジルの携帯電話事業者Telefonica Brasil S.A.のブランド名
(ご参考)
新たな付加価値を協創する「+d」の取り組み | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
当社グループは様々なパートナーとともに新たな価値を協創する「+d」の取り組みを開始しました。当連結会計年度における主な取り組みは以下のとおりです。
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(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、1兆2,091億円の収入となりました。前連結会計年度と比較して2,462億円(25.6%)キャッシュ・フローが増加していますが、これは、携帯端末代金の分割購入に伴う立替金の回収が増加したことに加え、法人税等の支払が減少したことなどによるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、3,753億円の支出となりました。前連結会計年度と比較して2,759億円(42.4%)支出が減少していますが、これは、関連当事者への長期預け金償還による収入が増加したことや、ネットワーク構築効率化に伴う固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、5,836億円の支出となりました。前連結会計年度と比較して1,506億円(20.5%)支出が減少していますが、これは自己株式の取得による支出が減少したことなどによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は3,544億円となり、前連結会計年度末と比較して2,489億円(235.8%)増加しました。
(3) CSRの取り組み
当社グループは、国や地域、世代を超えて、人々がより安心・安全かつ快適で豊かに暮らすことができる社会の実現に貢献することをめざしています。
パートナーの皆さまとともに新たなサービスやビジネスを創出する「社会価値の協創」としてIoT、医療、健康、教育、農業分野などにおける様々な社会的課題を解決すること(Innovative docomo)、その基盤として公正・透明で倫理的な事業活動を徹底すること(Responsible docomo)、この二つが当社グループの社会的責任(CSR)であると考え、CSRを経営の根幹に位置付けています。
<安心・安全な社会の実現>
○ 「スマホ・ケータイ安全教室」及び「ドコモ・ハーティ講座」
スマートフォン・携帯電話におけるマナーや、トラブルへの対処方法を啓発する「スマホ・ケータイ安全教室」について、2015年度は約6,900回開催し、のべ約105万人の方に受講いただきました。
また、障がいのある方にスマートフォン等を役立てていただけるよう、便利な機能や活用方法を紹介する「ドコモ・ハーティ講座」を69回開催し、のべ約780人の方に受講いただきました。
○ 「Move&Flick」
手元を見ずに文字入力操作が可能となる、スマートフォン向けの新たな文字入力アプリ「Move&Flick」の提供を開始しました。このアプリは、従来の文字入力キーの位置を正確に把握することが難しい視覚障がい者の方にも使いやすく、便利にご利用いただけます。
<環境保全・社会貢献活動>
○ 地球環境対策
「NTTドコモグループ地球環境対策2016年度目標」達成に向けて、データ通信量あたりの通信設備電力の抑制と、店頭広告物の削減等に取り組みました。2015年度は、通信設備電力の抑制については目標に対して順調に推移し、店頭広告物については2012年度比で約63%削減しました。
○ チャリティ活動
ネパール中部地震、平成27年台風第18号による大雨などの被災者・被災地支援としてチャリティサイトを開設し、お客さまから寄せられた約6,110万円を寄付しました。
○ モバイル・コミュニケーション・ファンドの活動
当社が設立したNPO法人モバイル・コミュニケーション・ファンドは、若手研究者支援等を目的として、移動通信技術等に関する優れた研究成果・論文に「ドコモ・モバイル・サイエンス賞」優秀賞を先端技術・基礎科学の2部門で各1件(賞金600万円)、奨励賞を社会科学部門で1件(賞金200万円)授与しました。また、アジアからの私費留学生支援として、40名に奨学金総額5,760万円を支給するとともに、子どもの育成や地球環境保護に取り組む市民活動団体支援として、全国41の団体に総額2,000万円の助成を実施しました。
<東北復興支援>
当社グループは、復興支援に賛同する社員約9,400人からの募金に会社拠出分を加えた約6,450万円を、被災地自治体(宮城県仙台市、岩手県陸前高田市等)や中間支援団体に寄付しました。
また、東日本大震災における被災者の「心のケア」をめざし、当社のグループ会社である株式会社ABC Cooking Studioによる料理教室を7回実施しました。この取り組みにより、被災者同士の交流の場を設けるとともに、参加者に対してタブレットを使った「dTV」の体験会を実施し、被災者同士が共に映像を楽しむことができる時間を提供しました。
<ダイバーシティ推進>
障がいのある方の雇用促進を目的とする新会社「株式会社ドコモ・プラスハーティ」を、2015年10月に設立しました。同社では重度の障がいのある方を積極的に雇用し、当社の自社ビルを中心とするビル清掃業務等を行っています。また、能力開発の一環として、公文式学習の導入により、障がいのある方の社会的能力の向上をめざした取り組み等を行っています。
電気通信事業会計規則第5条、同附則第2項、第3項及び平成16年総務省告示第232号に基づき、第25期における当社の移動電気通信役務損益明細表を以下に記載します。
なお、移動電気通信役務損益明細表は、提出会社における単独情報のため、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」に記載のセグメントの業績とは一致していません。
移動電気通信役務損益明細表
2015年4月1日から
2016年3月31日まで
(単位:百万円)
役務の種類 | 営業収益 | 営業費用 | 営業利益 | ||
移 | 音声伝送役務 | 携帯電話 | 861,154 | 713,473 | 147,680 |
その他の移動体通信 | 3,768 | 7,228 | △3,460 | ||
小計 | 864,922 | 720,702 | 144,220 | ||
データ伝送役務 | 2,088,001 | 1,495,773 | 592,227 | ||
小計 | 2,952,923 | 2,216,475 | 736,447 | ||
移動電気通信役務以外の電気通信役務 | 45,152 | 60,245 | △15,092 | ||
合計 | 2,998,075 | 2,276,720 | 721,355 |
注記事項
1.移動電気通信役務損益明細表の作成基準
本移動電気通信役務損益明細表は、電気通信事業会計規則(昭和60年 郵政省令第26号)に基づいて作成して
います。なお、本移動電気通信役務損益明細表は、総務大臣に提出するために作成しています。
2.電気通信役務に関連する収益及び費用の配賦基準
電気通信役務に関連する収益及び費用の配賦基準については、電気通信事業会計規則及び附則第3項の規定に
より総務大臣に提出する基準及び手順に準拠して、電気通信事業会計規則第15条に基づく別表第二に掲げる基準
によるほか、適正な基準によりそれぞれの役務に配賦しています。
当社グループは電気通信事業等の事業を行っており、生産、受注といった区分による表示が困難であるため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」に記載のセグメントの業績に関連付けて示しています。
当社グループは、今後起こりうる社会変化を捉え、更なる成長と社会への新たな価値提供をめざし、企業ビジョンとして2020年ビジョン「HEART ~スマートイノベーションへの挑戦~」を策定しています。
また、「スマートライフのパートナーへ」をテーマに掲げ、「通信事業の競争力強化」及び「スマートライフ領域での取り組み加速」を進めてきました。さらに、「中期目標に向けた新たな取り組み」を2014年度の期末決算説明会にて発表しています。
中期的な取り組み |
当社グループは、お客さまのニーズにお応えし続けるために、世の中の様々なパートナーの皆さまとのオープンなコラボレーションを進化させて新たな付加価値を創造する「+d」の取り組みを進めています。
具体的には、決済基盤や「dポイント」「dカード」などのドコモが持つビジネスアセットを連携させて、パートナーの皆さまとともに新たな付加価値を協創する取り組みを展開します。この取り組みにより、ドコモはパートナーの皆さまと、「もっとお得・もっと楽しい・もっと便利」をお客さまに提供します。
また、ドコモのお客さまへの価値創造に加え、様々なパートナーの皆さまへの新たな価値提供にも取り組んでいきます。具体的には「IoT」「地方創生」「2020」「社会的課題の解決」の領域において、両者のアセットを活用したコラボレーションにより新たなサービスやビジネスを創出する「社会価値の協創」の取り組みを進め、業種業態を超えた新たな領域での収益機会の獲得をめざします。
2016年度の重点取り組み |
2016年度は、利益回復から「さらにその先へ向かう躍動の年」と位置付け、「通信事業の発展」「スマートライフ領域の強化」を両輪に取り組んでいきます。
○ 通信事業の発展
通信事業においては、業界全体で端末価格や料金の見直しが本格化することが予想され、これを受けて当社グループは家族を中心としたモバイル・光・サービスの総合提案力を強化し、競争ステージの転換を図っていきます。
その取り組みの一つとして、2016年3月にライトユーザー向け料金として、「シェアパック5」の導入および「カケホーダイライトプラン」の適用拡大を実施しました。さらに、2016年6月に長期契約者向け料金として、解約金のあり・なしを選べる2つのコースの新設、「ずっとドコモ割」の更なる拡大、「更新ありがとうポイント」を開始することとしました。
また、新料金プランの契約数拡大によるARPUの増加やコスト効率化により通信事業の利益を確保していきます。
○ スマートライフ領域の強化
スマートライフ領域においては、「dTV」「dヒッツ」「dマガジン」等のdマーケットのサービスやコンテンツを更に充実させるなど、契約者拡大に向けて取り組みます。
また、これまでの事業で培ってきた課金・決済基盤やポイントプログラムなどのビジネスアセットを連携させて新たな価値をパートナーと協創する「+d」の取り組みを強化します。パートナー企業を拡大して「dポイント」の魅力を高め、「dアカウント」の普及拡大をめざします。
これらの取り組みにより、2017年度中期目標で掲げた各種指標の1年前倒しの達成に向けて事業運営を行っていきます。
(注) 本項における将来に関する記述等については、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」等をあわせてご参照ください。
<2016年度目標とする経営指標>
項目 | 2016年度目標 | <ご参考> | |
営業利益 | 9,100億円 | 8,200億円以上 | |
| (再掲)スマートライフ領域 | 1,200億円 | 1,000億円以上 |
設備投資額 | 5,850億円 | 6,500億円以下 |
本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、本有価証券報告書に記載されている、将来に関する記述を含む歴史的事実以外のすべての記述は、当社グループが現在入手している情報に基づく、本有価証券報告書提出日現在における予測、期待、想定、計画、認識、評価等を基礎として記載されているに過ぎません。また、予想数値を算定するためには、過去に確定し正確に認識された事実以外に、予想を行うために不可欠となる一定の前提(仮定)を用いています。これらの記述ないし事実または前提(仮定)は、客観的には不正確であったり将来実現しない可能性があります。その原因となる潜在的リスクや不確定要因としては以下の事項があり、これらはいずれも当社グループの事業、業績または財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、潜在的リスクや不確定要因はこれらに限られるものではありませんのでご留意ください。
(1) 携帯電話の番号ポータビリティ、訴求力のある端末の展開、新規事業者の参入、他の事業者間の統合など、通信業界における他の事業者等及び他の技術等との競争の激化や競争レイヤーの広がりをはじめとする市場環境の変化に関連して、当社グループが獲得・維持できる契約数が抑制されたり、当社グループの想定以上にARPUの水準が逓減し続けたり、コストが増大したり、想定していたコスト効率化ができない可能性があること
当社グループは携帯電話の番号ポータビリティ、訴求力のある端末の展開、新規事業者の参入、他の事業者間の統合など、通信業界における他の事業者との競争の激化にさらされています。例えば、他の移動通信事業者も高速移動通信サービス対応端末や音楽・映像再生機能搭載をはじめとするお客さまのニーズや嗜好を追及した端末、音楽・映像配信サービス、音声・メール等の定額利用サービスなどの新商品、新サービスの投入、あるいは携帯電話端末等の割賦販売方式の導入を行っており、今後、他の事業者がお客さまにとってより利便性の高いサービスや訴求力のある端末を提供することに対し、当社グループが適時・適切にこれに対抗し得ない可能性もあります。移動通信ネットワークについても、他の事業者が当社を上回るエリア・品質を伴ったネットワークを構築する一方で、当社が想定する期間でエリア・品質を伴ったネットワークの構築ができない場合、当社が提供するネットワークに対するお客さま満足度が低下する可能性があります。
一方、他の新たなサービスや技術、特に低価格・定額制のサービスとして、固定または移動のIP電話(当社グループのスマートフォンやタブレット端末において動作するアプリケーションを利用するサービスを含みます。)や、ブロードバンド高速インターネットサービスやデジタル放送、Wi-Fi等を利用した公衆無線LAN、OTT※事業者等による無料もしくは低価格のサービスやSIMの提供等、またはこれらの融合サービスなどが提供されており、これらにより更に競争が激化しています。
通信業界における他の事業者や他の技術などとの競争以外にも、日本の移動通信市場の飽和、MVNOや異業種からの参入を含めた競争レイヤーの広がりによるビジネス・市場構造・環境の変化といったものが競争激化の要因として挙げられます。スマートフォンやタブレット端末等のオープン・プラットフォーム端末の普及拡大に伴い、多くの事業者等が携帯電話端末上でのサービス競争に参入してきており、さらにはNTT東西が光アクセスのサービス卸を開始したことから、多様なプレーヤーによる光ファイバーを利用したサービス提供や移動通信と固定通信のセット割引が可能となり、今後、これらの事業者等がお客さまにとってより利便性の高いサービスを提供したり、更に料金競争が激化する可能性があります。また、例えば、電力の小売全面自由化に伴う電力小売り事業の開始等、移動通信事業者による他の業種への参入・協業等が活発化しており、移動通信事業者が他の業種の提供するサービスをパッケージにしたセット割引等により、料金競争がより激化する可能性があります。
こうした市場環境のなか、今後当社グループの新規獲得契約数の減少が加速したり、当社グループの期待する数に達しないかもしれず、また、既存契約数についても、更なる競争激化のなか、他の事業者への転出等によって既存契約数を維持し続けることができない可能性があり、さらには、新規獲得契約数及び既存契約数を維持するため、見込み以上のARPUの低下が発生したり、想定以上のコストをかけなくてはならないかもしれません。当社グループは厳しい市場環境のなか、高度で多様なサービスの提供及び当社グループの契約者の利便性向上を目的として、機種ごとに設定した一定額を毎月の利用料金から割り引くサービス、国内の音声通話を定額とし、パケット通信のデータ通信量を家族で分け合える料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」、長期ご利用者向けの割引サービス「ずっとドコモ割」や25歳以下のお客さまが割引対象となる「U25応援割」、「ドコモ光」とスマートフォン・携帯電話をまとめて提供する「ドコモ光パック」の導入など、各種料金割引サービス等の改定を行ってきました。さらには、当事業年度において、新たに低利用者向けの料金プランとして「カケホーダイライトプラン」や「シェアパック5」を導入しました。しかしながら、これらによって当社グループの契約数を獲得・維持できるかどうかは定かではありません。また、各種料金・割引サービスの契約率や定額制サービスへ移行する契約数の動向が、当社グループが想定したとおりにならなかったり、当社グループの想定していないARPUの低下が起こるなどの可能性があります。
また、市場の成長が鈍化した場合又は市場が縮小した場合、当社グループの見込み以上にARPUが低下し、または当社グループが期待する水準での新規契約数の獲得及び既存契約数の維持ができない可能性があります。
さらに、経営体質の強化に向け、ネットワーク、販売・サービス、研究開発、端末に関わる効率化を推進しているところですが、他の事業者等との競争が激化したり、市場環境が変化することなどにより、効率化が期待どおりに進まず、想定していたコスト効率化ができない可能性があります。
これらの結果、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
※ Over The Topの略。自社でサービスの配信に必要な通信インフラを持たずに、他社の通信インフラを利用してコンテンツ配信を行うサービス。
(2) 当社グループが提供している、あるいは新たに導入・提案するサービス・利用形態・販売方式が十分に展開できない場合や想定以上に費用が発生してしまう場合、当社グループの財務に影響を与えたり、成長が制約される可能性があること
当社グループは、スマートフォン及びLTE(Xi)の普及拡大並びにこれらに対応するサービス利用によるパケット通信その他データ通信の拡大、さらにスマートライフ領域への取り組み等による収益の増加が今後の成長要因と考えていますが、そうしたサービスの発展を妨げるような数々の不確定要素があり、そうした成長が制約される可能性があります。
また、市場の成長が鈍化した場合又は市場が縮小した場合、当社グループが提供するサービス・利用形態・販売方式が十分に展開できず、当社グループの財務に影響を与えたり、成長が制約される可能性があります。
特に、以下の事柄が達成できるか否かについては定かではありません。
・サービス・利用形態の提供に必要なパートナー、スマートフォンのサービス等の利用促進に必要なオペレーティングシステムやアプリケーション等のソフトウェアの提供者、端末メーカー、コンテンツプロバイダ等との連携・協力などが当社グループの期待どおりに展開できること
・当社グループが計画している新たなサービスや利用形態を予定どおりに提供することができ、かつ、そのようなサービスの普及拡大に必要なコストを予定内に収めること
・当社グループが提供する、または提供しようとしているサービス・利用形態・割賦販売等の販売方式が、現在の契約者や今後の潜在的契約者にとって魅力的であり、また十分な需要があること
・メーカーとコンテンツプロバイダが、当社グループのFOMA端末・LTE(Xi)端末や当社グループが提供するサービスに対応した端末、スマートフォンのサービス等の利用促進に必要なオペレーティングシステムやアプリケーション等のソフトウェア、コンテンツなどを適時に適切な価格で安定的に生産・提供できること
・携帯電話端末に対する市場の需要が想定どおりとなり、その結果端末調達価格を低減し、適切な価格で販売できること、及び過剰在庫が発生しないこと
・現在または将来の当社グループのiモード、spモード等のISPサービス、音声通話やパケット通信を利用するための各種料金プランや割引サービス、「しゃべってコンシェル」等のインテリジェントサービス、「フォトコレクション」等のストレージサービス、「dTV」「dヒッツ」「dマガジン」等のdマーケット上のサービスまたは「dカード」「ドコモの保険」等の金融・決済サービス、株式会社オークローンマーケティングや、らでぃっしゅぼーや株式会社などが展開するコマース事業などの様々なサービス、ドコモ・ヘルスケア株式会社やABC Cooking Studioが展開する生活関連サービス等のような他産業との融合による「+d」の取り組みが、既存契約者や潜在的契約者を惹きつけることができ、継続的な、または新たな成長を達成できること
・当社の戦略やサービスの基盤となる、スマートフォン利用者数の拡大や「dポイント」「dアカウント」による顧客基盤の拡大等が当社の計画通り進展すること
・オープン・プラットフォームの普及という事業環境のもと、当社グループのこれらサービスと競合する類似サービスを提供する他の事業者が、より競争力・訴求力のあるサービスを提供し、当社グループのサービスを凌駕することのないこと
・LTE/LTE-Advanced等の技術により、データ通信速度を向上させたサービスを予定どおりに拡大できること
こうした当社グループの新たなサービス・利用形態・販売方式の展開が制約された場合やその展開に想定以上の費用が発生してしまう場合、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(3) 種々の国内外の法令・規制・制度等の導入や変更または当社グループへの適用等により、当社グループの事業運営に制約が課されるなど悪影響が発生し得ること
日本の電気通信業界では、料金規制などを含め多くの分野で規制改革が進んでいますが、当社グループの展開する移動通信事業は、無線周波数の割当てを政府機関より受けており、特に規制環境に影響を受けやすい事業であります。また、当社グループは、他の事業者等には課せられない特別な規制の対象となることがあります。様々な政府機関が移動通信事業に影響を与え得る改革案を提案または検討してきており、当社グループの事業に不利な影響を与え得るような法令・規制・制度の導入や変更を含む改革が、引き続き実施される可能性があります。そのなかには次のようなものが含まれています。
・利用者の多様なニーズに対応した料金プランの導入等により、スマートフォンの料金負担の軽減を図ることの要請
・スマートフォンの端末購入補助の適正化に関する要請及び指針
・SIMロック解除規制など、端末レイヤーにおける競争促進のための規制
・周波数再割当て、オークション制度の導入などの周波数割当て制度の見直し
・認証や課金といった通信プラットフォームの一部の機能を他社に開放することを求めるような措置
・プラットフォーム事業者やISP事業者、コンテンツプロバイダ等に対して、iモードやspモード等、当社サービスに係る機能の開放を求めるような規制
・特定のコンテンツや取引、またはiモードやspモード等のようなモバイルインターネットサービスを禁止または制限するような規制
・解約金を含む継続利用期間の契約を前提とする当社グループの割引サービスの提供を禁止または制限するような規制
・通信契約への初期契約解除制度の導入
・携帯電話のユニバーサルサービスへの指定、現行のユニバーサルサービス基金制度の変更など新たなコストが発生する措置
・NTT東西のサービス卸により実現する光サービス「ドコモ光」等に対する販売・プロモーション・料金設定等に関する規制
・MVNOの新規参入の促進及びMVNOサービスの低廉化・多様化のための公正競争環境整備策
・指定電気通信設備制度(ドミナント規制)の見直しによる新たな競争促進のための規制
・当社グループを含む日本電信電話株式会社(NTT)グループの在り方に関する見直し
・その他、事業者間接続ルールの見直し等、通信市場における当社グループの事業運営に制約を課す競争促進措置
上記に挙げた移動通信事業に影響を与え得る改革案に加え、当社グループは、国内外の様々な法令・規制・制度の影響を受ける可能性があります。例えば、当社グループは契約数や契約者のトラフィック※の増加に対応し、サービス品質の確保・向上を図るため通信設備の拡充を進めており、その結果、電力使用量が増加傾向にあります。当社グループは、省電力装置や高効率電源装置の導入など温室効果ガス排出量の削減に向けた施策を実施していますが、温室効果ガス排出量削減のための規制等の導入によりコスト負担が増加し、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。また、燃料価格の高騰等を受けた電気料金の値上げにより、当社グループがサービス提供に必要な設備等の維持運用に係る費用が増加することで、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
また、2010年7月に米国で「金融規制改革法」が成立しました。これを受けて米国証券取引委員会は、取り扱っている製品に対象の鉱物を使用する米国上場企業に対して、それらがコンゴ民主共和国及び隣接国産であるかどうかの開示を義務付ける規則を2012年8月に制定しました。この規則の導入に伴い、規則遵守のための調査費用の負担、対象の鉱物を使用する部材等の価格上昇等により、コスト負担が増加するなど、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
さらに、当社グループは、「+d」の取り組みを展開するなど、出資・提携を通じて様々な事業やビジネス領域へ進出していることから、移動通信事業に関わる法令・規制・制度に加え、新たなサービス・事業・ビジネス領域における特有の法令・規制・制度の影響を受けます。これらの法令・規制・制度が適用されることにより、当社グループの事業運営に制約が課され、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響が発生する可能性があります。
移動通信事業に影響を与え得る改革案が実施されるか、またはその他の法令・規制・制度が立案されるかどうか、そして実施された場合に当社グループの事業にどの程度影響を与えるのかを正確に予測することは困難であります。しかし、移動通信事業に影響を与え得る改革案のいずれか、またはその他の法令・規制・制度が導入、変更または当社グループへ適用された場合、当社グループの移動通信サービスの提供が制約され、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
※ データ通信によって発生する通信の総量。
(4) 当社グループが使用可能な周波数及び設備に対する制約に関連して、サービスの質の維持・増進や、顧客満足の継続的獲得・維持に悪影響が発生したり、コストが増加する可能性があること
移動通信ネットワークの容量の主要な制約のひとつに、使用できる無線周波数の問題があります。当社グループがサービスを提供するために使用できる周波数や設備には限りがあります。その結果、東京、大阪といった都心部の主要駅周辺などでは、当社グループの移動通信ネットワークは、トラフィックのピーク時に使用可能な周波数の限界、もしくはそれに近い状態で運用されることがあるため、サービス品質の低下が発生する可能性があります。
その他、当社グループの契約数や契約者当たりのトラフィックが増加していくなか、事業の円滑な運営のために必要な周波数が政府機関より割り当てられなかった場合にも、サービス品質が低下する可能性があります。
また、当社グループに割り当てられた周波数を使用する特定基地局を開設するためには、他事業者の既存無線局の移行を促進するための措置や周波数共用に関わる協議などが必要となる場合があります。これらの措置や協議などが想定どおりに進まない場合は、特定基地局を計画通りに開設できないことで、円滑な移動通信ネットワークの運用ができず、サービス品質が低下したり、追加の費用が発生する可能性があります。
当社グループはLTE/LTE-Advanced等の技術やLTE移行促進等による周波数利用効率の向上及び新たな周波数の獲得に努めていますが、これらの努力によってサービス品質の低下を回避できるとは限りません。
また、基地局設備や交換機設備、その他サービス提供に必要な設備等の処理能力にも限りがあるため、トラフィックのピーク時や契約数が急激に増加した場合、または当社グループのネットワークを介して提供される映像、音楽といったコンテンツの容量が急激に増加した場合、サービス品質の低下が発生するかもしれません。またFOMA及びLTE(Xi)サービスに関しては、スマートフォンやタブレット端末、PC向けデータ通信端末の普及拡大に伴い、サービスに加入する契約数の伸びや加入した契約者当たりのトラフィックが当社グループの想定を大きく上回る可能性があります。さらにスマートフォンやタブレット端末上で動作するアプリケーション等のソフトウェアの中には、通信の確立、切断等をするために、端末とネットワーク間でやりとりされる信号である制御信号の増加等、当社グループの想定を大きく上回る設備への負荷を生じさせる可能性を有するものがあります。これらにより、既存の設備ではそうしたトラフィックを処理できないことで、サービス品質が低下したり、通信障害が発生する可能性があり、これに対応するための設備投資コストが増加する場合があります。
当社グループは、今後のスマートフォンのトラフィック増加に対応するためのネットワーク基盤の強化に取り組んでいます。しかしながら、今後の契約数の伸びや契約者当たりのトラフィックや制御信号の増加等が当社グループの想定を大きく上回って通信障害等不測の事態が発生し、これらの問題に適時かつ十分に対処できないようであれば、当社グループの移動通信サービスの提供が制約を受けるあるいは顧客の信頼を失うことで、契約者が競合他社に移行してしまうかもしれず、他方これに対処するためには設備投資コスト等が増加することで、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(5) 当社グループが採用する移動通信システムに関する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域を他の移動通信事業者が採用し続ける保証がなく、当社グループの国際サービスを十分に提供できない可能性があること
十分な数の他の移動通信事業者が、当社グループが採用する移動通信システムに関する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域を採用することにより、当社グループは国際ローミングサービス等のサービスを世界規模で提供することが可能となっています。当社グループは、今後も引き続き海外の出資先や戦略的提携先その他の多くの移動通信事業者が互換性のある技術や周波数帯域を採用し維持することを期待していますが、将来にわたって期待が実現するという保証はありません。
もし、今後十分な数の他の移動通信事業者において、当社グループが採用する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域が採用されなかったり、他の技術や周波数帯域に切り替えられた場合や互換性のある技術や周波数帯域の導入及び普及拡大が遅れた場合、当社グループは国際ローミングサービス等のサービスを期待どおりに提供できないかもしれず、当社グループの契約者の海外での利用といった利便性が損なわれる可能性があります。
また、標準化団体等の活動等により当社グループが採用する標準技術に変更が発生し、当社グループが使用する端末やネットワークについて変更が必要になった場合、端末やネットワーク機器メーカーが適切かつ速やかに端末及びネットワーク機器の調整を行えるという保証はありません。
こうした当社グループが採用する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域の展開が期待どおりとならず、当社グループの国際サービス提供能力を維持または向上させることができない場合、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(6) 当社グループの国内外の投資、提携及び協力関係や、新たな事業領域への出資等が適正な収益や機会をもたらす保証がないこと
当社グループの戦略の主要な構成要素のひとつは、「+d」の取り組みとして、国内外の投資、提携及び協力関係を通じて、当社グループの企業価値を高めることであります。当社グループは、この目的を達成するにふさわしいと考える、海外における他の会社や組織と精力的に提携・協力関係を築いてきました。また、国内の企業に対しても投資、提携及び協力関係を結び、スマートライフ領域に対して出資を行うなどの戦略を推進しています。
しかしながら、当社グループがこれまで投資してきた、または今後投資する事業者や設立する合弁会社等が価値や経営成績を維持し、または高めることができるという保証はありません。また、当社グループがこれらの投資、提携または協力関係から期待されるほどの見返りと利益を得ることができるという保証もありません。スマートライフ領域への出資にあたっては、当社グループの経験が少ないことから、想定し得ない不確定要因が存在する可能性もあり、想定しているシナジーが十分に発揮されず、当社の戦略に影響を与える可能性もあります。さらに、投資、提携または協力関係を解消・処分することにより、損失が生じる可能性があります。
近年、当社グループの投資先は、競争の激化、負債の増加、株価の大幅な変動または財務上の問題によって様々な負の影響を受けています。当社グループの投資が持分法で計上され、投資先の会社が純損失を計上する限りにおいて、当社グループの経営成績は、これらの損失額に対する持分比率分の悪影響を受けます。投資先企業における投資価値に下落が生じ、それが一時的なものでない場合、当社グループは簿価の修正と、そのような投資に対する減損の認識を要求される可能性があります。当社グループの投資先企業の関与する事業結合等の取引によっても、投資先の投資価値の減損による損失を認識することが要求される可能性があります。いずれの場合においても、当社グループの財政状態または経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7) 当社グループや他の事業者等の商品やサービスの不具合、欠陥、不完全性等に起因して問題が発生し得ること
当社グループの提供する携帯電話端末には、様々な機能が搭載されています。また、当社グループの提供する携帯電話端末を通じ、当社グループはもとより当社グループのパートナーやその他の当社グループ外の多数の事業者等がサービスを提供しています。当社グループや当社グループ外の事業者が提供する端末やアプリケーション等のソフトウェアやシステムに技術的な問題が発生した場合、またはその他の不具合、欠陥、紛失等が発生した場合等、当社グループや他の事業者等の商品やサービスの不完全性等に起因して問題が発生した場合には、当社グループの信頼性・企業イメージが低下し、解約数の増加や契約者への補償のためのコストが増大するおそれがあり、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループはスマートライフ領域への取り組みを展開しており、これらの商品やサービスの不完全性等に起因して問題が発生した場合も、当社グループの信頼性・企業イメージが低下するなどし、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループの信頼性・企業イメージの低下または解約数の増加やコストの増大につながる可能性のある事態としては、例えば以下のようなものが考えられます。
・端末に搭載されている様々な機能の故障・欠陥・不具合の発生
・サービス提供に必要なソフトウェアやシステムの故障・欠陥・不具合の発生
・他の事業者等のサービスの不完全性等に起因する端末やサービスの故障・欠陥・不具合の発生
・端末、ソフトウェアやシステムの故障・欠陥・不具合や他の事業者等のサービスの不完全性等に起因した情報、電子マネー、ポイント、コンテンツ等の漏洩や消失
・端末の紛失・盗難等による情報、電子マネー、クレジット機能、ポイント等の第三者による不正な利用
・端末内部やサーバー等に蓄積された利用履歴、残高等のお客さま情報・データの第三者による不適切な読み取りや悪用
・当社グループの提携、協力している企業における、電子マネー、クレジット機能、ポイント、その他データの不十分または不適切な管理
・通信販売等のコマース事業で提供されている、当社グループの商品やサービス、または当社が運営する「dメニュー」やdマーケット等のプラットフォーム上で提供されている商品やサービスの欠陥・瑕疵等に伴うお客さまへの事故・不利益の発生
(8) 当社グループの提供する商品・サービスの不適切な使用等により、当社グループの信頼性・企業イメージに悪影響を与える社会的問題が発生し得ること
当社グループの提供している商品やサービスがユーザに不適切に使用されること等により、当社グループの商品・サービスに対する信頼性が低下し、企業イメージが低下することで、解約数が増加したり、新規契約者が期待どおり獲得できない可能性があります。
例えば、当社グループが提供する「ドコモメール」、spモードメール、iモードメール、SMS等のメールを使った迷惑メールがあります。当社グループは、迷惑メールフィルタリング機能の提供、各種ツールによる契約者への注意喚起の実施や迷惑メールを大量に送信している業者に対し利用停止措置を行うなど、様々な対策を講じてきていますが、未だ根絶するには至っていません。当社グループの契約者が迷惑メールを大量に受信してしまうことにより顧客満足度の低下や企業イメージの低下が起こり、spモードまたはiモード契約数の減少となることもあり得ます。
また、振り込め詐欺等犯罪に使用される携帯電話はレンタル携帯電話が多く、貸し出す際に本人確認をしないなど不正利用防止法に違反した悪質なレンタル事業者に対しては、法に基づき役務提供の拒否をするなど、種々の対策を講じてきました。しかし今後、犯罪への利用が多発した場合、携帯電話そのものが社会的に問題視され、当社グループ契約者の解約数の増加を引き起こすといった事態が生じる可能性もあります。そのほか、端末やサービスの高機能化に伴い、パケット通信を行う頻度及びデータ量が増加していることを契約者が十分に認識せずに携帯電話を使用し、その結果、契約者の認識以上に高額のパケット通信料が請求されるといった問題が生じました。また、有料コンテンツの過度な利用による高額課金といった問題や、自動車や自転車の運転中の携帯電話の使用による事故の発生といった問題に加え、いわゆる「歩きスマホ」という歩行中の携帯電話使用によるトラブルが発生しているという問題もあります。さらには、小中学生が携帯電話を所持することについての是非や、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」に基づき、青少年(18歳未満)のお客さまに対して、原則適用している有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の機能の十分さや精度、青少年による携帯電話からのインターネット利用が進む一方、青少年のCGM※サービス利用に伴う被害の増加等に関して様々な議論があります。こうした問題も、同様に企業イメージの低下を招くおそれがあります。
このような携帯電話をめぐる社会的な問題については、フィルタリングサービスの提供や利用者年齢認証による利用サイトの制限等の各種サービスや青少年向け携帯電話を提供することなどにより、当社グループは適切に対応していると考えていますが、将来においても適切な対応を続けることができるかどうかは定かではなく、適切な対応ができなかった場合には、既存契約者の解約数が増加したり、新規契約者が期待どおり獲得できないという結果になる可能性があり、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
※ Consumer Generated Mediaの略。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などに代表される、インターネットなどを活用して消費者が内容を生成していくメディアのこと。
(9) 当社グループまたは業務委託先等における個人情報を含む業務上の機密情報の不適切な取り扱い等により、当社グループの信頼性・企業イメージの低下等が発生し得ること
当社グループは、通信事業とスマートライフ領域において多数のお客さま情報を含む機密情報を保持しており、「個人情報の保護に関する法律」に則した個人情報保護の適切な対応を行う観点から、個人情報を含む業務上の機密情報の管理徹底、業務従事者に対する教育、業務委託先会社の管理監督の徹底、技術的セキュリティ強化等の全社的な総合セキュリティ管理を実施しています。
しかし、これらのセキュリティ対策にもかかわらず漏洩事故や不適切な取り扱いが発生した場合、当社グループの信頼性・企業イメージを著しく損なうおそれがあり、解約数の増加や当事者への補償によるコストの増大、新規契約数の鈍化など、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10) 当社グループ等が事業遂行上必要とする知的財産権等の権利につき当該権利の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品またはサービスの提供ができなくなったり、当社グループが他者の知的財産権等の権利の侵害を理由に損害賠償責任等を負う可能性があること、また、当社グループが保有する知的財産権等の権利が不正に使用され、本来得られるライセンス収入が減少したり、競争上の優位性をもたらすことができない可能性があること
当社グループや事業上のパートナーがその事業を遂行するためには、事業遂行上必要となる知的財産権等の権利について、当該権利の保有者よりライセンス等を受ける必要があります。現在、当社グループ等は、当該権利の保有者との間でライセンス契約等を締結することにより、当該権利の保有者よりライセンス等を受けており、また、今後の事業遂行上必要となる知的財産権等の権利を他者が保有していた場合、当該権利の保有者よりライセンス等を受ける予定ですが、当該権利の保有者との間でライセンス等の付与について合意できなかったり、または、一旦ライセンス等の付与に合意したものの、その後当該合意を維持できなかった場合には、当社グループや事業上のパートナーの特定の技術、商品又はサービスの提供ができなくなる可能性があります。また、他者より、当社グループがその知的財産権等の権利を侵害したとの主張を受けた場合には、その解決に多くの時間と費用を要する可能性があり、仮に当該他者の主張が認められた場合には、当該権利に関連する事業の収益減や当該権利の侵害を理由に損害賠償責任等を負う可能性があり、それにより当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
さらに、当社グループが保有する知的財産権等の権利について、第三者が不正に使用することなどにより、本来得られるライセンス収入が減少したり、競争上の優位性をもたらすことができない可能性があります。
(11) 自然災害、電力不足等の社会インフラの麻痺、有害物質の拡散、テロ等の災害・事象・事件、及び機器の不具合等やソフトウェアのバグ、ウイルス、ハッキング、不正なアクセス、サイバーアタック、機器の設定誤り等の人為的な要因により、当社グループのサービス提供に必要なネットワークや販売網等の事業への障害が発生し、当社グループの信頼性・企業イメージが低下したり、収入が減少したり、コストが増大する可能性があること
当社グループは基地局、アンテナ、交換機や伝送路などを含む全国的なネットワークを構築し、移動通信サービスを提供しています。当社グループのサービス提供に必要なシステムについては、安全かつ安定して運用できるよう二重化するなどの様々な対策を講じています。しかし、これらの対策にもかかわらず様々な事由によりシステム障害が発生する可能性があり、その要因となり得るものとしては、システムのハードウェアやソフトウェアの不具合によるもの、地震・津波・台風・洪水等の自然災害、電力不足等の社会インフラの麻痺、テロといった事象・事件によるもの、有害物質の拡散や感染症の流行等に伴い、ネットワーク設備の運用・保守が十分に実施できないことによるものなどがあります。こうした要因によりシステムの障害が発生した場合、修復にとりわけ長い時間を要し、結果として収益の減少や多額の費用の支出につながる可能性があり、それにより当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
また、固定のインターネットでは、ウイルスに感染することにより時として全世界で数千万台のコンピュータに影響が出る事例が発生し、携帯電話においても、スマートフォンの拡大に伴い、携帯電話端末を標的としたウイルスが増加しています。当社グループのネットワーク、端末、その他の設備においても、そのような事態が引き起こされる可能性がないとは言い切れず、ハッキングや不正なアクセス等により、ウイルス等が当社グループのネットワークや端末、その他設備に侵入した場合、または、サイバーアタックを受けた場合には、システム等に障害が発生し、提供するサービスが利用できなくなったり、品質が低下したり、機密情報の漏洩事故の発生などの事態が考えられ、その結果、当社グループのネットワーク、端末、その他の設備に対する信頼性や、顧客満足度が著しく低下するおそれがあります。当社グループは不正アクセス防止機能、携帯電話の遠隔ダウンロードやスマートフォン向けウイルス対策サービス「あんしんネットセキュリティ」の提供などセキュリティを強化し、不慮の事態に備え得る機能を提供していますが、そうした機能があらゆる場合に万全であるとは限りません。さらに、悪意を持ったものでなくともソフトウェアのバグ、機器の設定誤り等の人為的なミスにより、システム障害やサービス品質の低下、機密情報の漏洩事故等の損害が起こる可能性もあります。
これらのほか、自然災害や社会インフラの麻痺等の事象・事件、有害物質の拡散や感染症の流行等により、当社の事業所や販売代理店等の必要なパートナーが業務の制限を強いられたり、一時的に閉鎖せざるを得なくなった場合、当社グループは、商品・サービスの販売・提供の機会を喪失するほか、お客さまからのお申し込み受付やアフターサービスなどに関する要望に適切に対応できない可能性があります。
このような不慮の事態において当社グループが適切な対応を行うことができなかった場合、当社グループに対する信頼性・企業イメージが低下するおそれがあるほか、収益の減少や多額の費用の支出につながる可能性があり、またこのような不慮の事態によって市場の成長が鈍化したり、市場が縮小した場合、当社グループの見込み以上にARPUが低下したり、当社グループが期待する水準での新規契約数の獲得及び既存契約数の維持ができない可能性があります。これらにより、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(12) 無線通信による健康への悪影響に対する懸念が広まることがあり得ること
各種メディアやインターネットを通じて、無線通信端末とその他の無線機器が発する電波は、人の健康に悪影響を及ぼす可能性があること、補聴器や心臓ペースメーカーなどを含む、医用電気機器の使用に障害を引き起こす可能性があることなど、電波を利用するリスクへの懸念を示す情報が展開されています。これら無線機器が発する電波のリスクへの懸念は、携帯電話契約者の解約増加や新規契約者の獲得数減少、利用量の減少、新たな規制や制限並びに訴訟などを通して、当社グループの企業イメージ及び当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性もあります。当社グループの携帯電話端末と基地局から発する電波は、世界保健機関(WHO)が推奨している国際非電離放射線防護委員会の国際的なガイドラインと同等であるところの、国が定める電波防護指針を遵守しています。WHOは現在の国際的なガイドラインの値を超えない強さの電波であれば、人の健康に悪影響を示すという明確な証拠はないという見解を示しています。また、WHOをはじめ海外の研究機関や総務省において、電波の人への健康影響に関する調査や研究が進められており、これまで人の健康に悪影響を及ぼすとした証拠は得られてはいませんが、更なる調査や研究結果が電波と健康問題に関連性がないことを示す保証はありません。
さらに、総務省及び電波環境協議会は、携帯電話や他の無線機器からの電波が心臓ペースメーカーなどを含む、医用電気機器の動作に影響を及ぼすことを確認しており、安全に利用できるようガイドラインを作成して、一般に周知しています。当社グループも携帯電話を使用する際に、これらに対応した注意を利用者が十分認識するよう案内するなどの取り組みを行っています。しかしながら、規制内容の変更や新たな規則や制限によって、市場や契約数の拡大が制約されるなどの悪影響を受けるかもしれません。
(13) 当社の親会社である日本電信電話株式会社が、当社の他の株主の利益に反する影響力を行使することがあり得ること
日本電信電話株式会社(NTT)は2016年3月31日現在、当社の議決権の65.66%を所有しています。1992年4月に郵政省(当時)が発表した公正競争のための条件に従う一方で、NTTは大株主として、当社の取締役の指名権など経営を支配する権利を持ち続けています。現在、当社は通常の業務をNTTやその他の子会社から独立して営んでいますが、重要な問題については、NTTと話し合い、もしくはNTTに対して報告を行っています。このような影響力を背景に、NTTは、自らの利益にとって最善であるが、その他の株主の利益とはならないかもしれない行動をとる可能性があります。
○ 日本電信電話株式会社が行う基盤的研究開発及びグループ経営運営に関する契約
当社は日本電信電話株式会社(NTT)との間で、NTTが行う基盤的研究開発及びグループ経営運営に関し、NTTから提供される役務及び便益並びにその対価の支払等を内容とする契約を締結しています。
○ NTTファイナンス株式会社との当社通信サービス等料金の請求・回収業務等に関する契約
当社はNTTファイナンス株式会社(NTTファイナンス)と、通信サービス等料金の請求・回収業務等に関する基本契約及び当該契約に基づく債権譲渡契約等を締結し、これにより当社は、通信サービス等に係る債権をNTTファイナンスに譲渡しています。
当連結会計年度中に実施した研究開発の内容は、次のとおりです。
≪当連結会計年度に実用化した技術≫
○ コミュニケーショントイ
「しゃべってコンシェル」で鍛えられた自然言語処理技術を発展させ、自由で自然な対話を楽しめる次世代コミュニケーショントイ「OHaNAS(オハナス)」を株式会社タカラトミーと共同で開発し、2015年10月より同社にて販売を開始しました。
○ 新たな翻訳サービス
スマートフォンやタブレット上で、手書きの言葉や文章を自動で認識し翻訳する「てがき翻訳」を開発しました。「てがき翻訳」はイラスト機能を備えており、手書きの地図にコメントを書いて、これを翻訳したもので道案内するなど新たなコミュニケーションが可能となりました。なお、翻訳機能は6言語に対応しています。
○ IoTのプラットフォーム
Webアプリケーションから複数のIoT端末へ一元的にサービス提供を可能とする「デバイスコネクトWebAPI」の普及促進を行うコンソーシアムを2015年4月に設立※しました。また、スマートフォンアプリと複数のIoT端末を連携させるプラットフォーム「Linking」を開発しました。
※ 当社とソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)により設立。幅広く機器メーカーやサービス提供会社などへ参加を呼び掛け、2016年3月末で会員企業90社、個人会員6名。
○ VoLTEローミング
VoLTE用の新たなローミング方式の国際標準仕様策定をリードし、2015年10月より、韓国のKT Corporationと世界初となる双方向のVoLTEローミングの提供を開始しました。
○ モバイル空間統計の活用
特定エリアの人口推計等が可能な当社のモバイル空間統計と、神戸市の観光施設や避難所情報などの自治体データを活用した、新たな付加価値を生み出せるアプリ制作のコンテストを実施しました。
≪今後の実用化をめざした研究開発≫
○ PREMIUM 4Gの更なる高速化
2016年6月に実用化をめざしている3.5GHz帯データ通信サービスについて、屋外実験で受信時340Mbpsを超えるデータ通信に成功しました。
○ 第5世代移動通信方式(5G)
2020年に向けて5Gの提供をめざしています。5Gでは、10Gbpsを超える通信速度、LTEサービスの約1,000倍にもおよぶ大容量化及びIoT端末を含む新たな通信サービスの実現を目標に取り組みます。世界主要ベンダと協力して5Gの研究に取り組み、基地局当たり20Gbps以上のデータ通信や24ユーザの同時通信などの屋外実験に成功しました。また、国際標準化への本格対応を開始しました。
○ グリーン基地局
ソーラーパネルとリチウムイオン蓄電池を備えたグリーン基地局を大雨警報などの気象災害予報と連動し制御することで、停電時の基地局運用時間をこれまでの約24時間から約63時間へ延長する実証実験に成功しました。
以上の結果、当連結会計年度の研究開発費合計は前連結会計年度に比べ14.1%減の833億円となりました。
なお、当社グループの研究開発活動は各セグメントを複合的に行うものも含まれており、各セグメントに関連付けて記載していません。
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する以下の考察は、本有価証券報告書に記載されたその他の情報と合わせてお読みください。
本考察にはリスク、不確実性、仮定を伴う将来に関する記述を含んでいます。将来の記述は本有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、実際の結果は、将来に関する記述の内容とは大幅に異なる可能性があります。その主な要因については「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載されていますが、それらに限定されるものではありません。
本考察においては、以下の項目を分析しています。
②最近公表された会計基準
当社グループは、国内最大の移動通信事業者であり、当連結会計年度末において、国内の携帯電話契約数の45.3%に相当する総計7,096万の契約を有しています。当社グループは主として携帯電話サービス及び携帯電話サービスのための端末機器販売を収益及びキャッシュ・フローの源泉にしています。収益の大部分を占める携帯電話サービスにおいては、音声通話サービス、パケット通信によるデータ通信サービスを提供しています。携帯電話サービス、端末機器の販売に加えて、光ブロードバンドサービス、衛星電話サービス、国際サービスなどの通信事業を行っています。また、スマートライフの実現に向け、動画配信サービス・音楽配信サービス及び電子書籍サービス等のdマーケットを通じたサービス、金融・決済サービス、ショッピングサービス、生活関連サービスなどのスマートライフ事業を行っています。その他、ケータイ補償サービス、システムの開発・販売及び保守受託などの事業を行っています。
以下では、市場、技術・サービス、規制の観点から情報通信市場の動向を分析します。
市場
社団法人電気通信事業者協会及び移動通信事業者各社の発表によれば、国内の移動通信市場は引き続き拡大し、当連結会計年度における携帯電話の契約純増数は378万契約となり、当連結会計年度末の総契約数は1億5,648万契約、人口普及率は約123%となりました。人口普及率の高まりと将来の人口の減少傾向に伴い、音声利用を伴う新規契約数の今後の伸びは限定的であると予想されるなか、近年では、タブレット端末やモバイルWi-Fiルーターなどの2台目需要の喚起及び機器組み込み型の通信モジュールなどの新たな市場の開拓や、法人契約の拡大などによる契約者の増加が新規契約数の増加に寄与しており、携帯電話契約数の増加率は、前連結会計年度は6.0%、当連結会計年度は2.5%となりました。
当連結会計年度末において、国内における携帯電話サービスは、当社グループを含むMNO※1の3グループ及びMNOより通信設備を借り受けているMVNO※2により提供されています。これら移動通信事業者は、それぞれの携帯電話サービスを提供するほか、それぞれが提供する携帯電話サービスに対応した携帯電話・通信端末を端末メーカーから購入し、主に販売代理店に販売しています。販売代理店はそれらの端末をお客様に販売しています。携帯電話サービスにおいては、各MNOグループとも第3世代移動通信システムを発展させた通信規格LTE※3を導入しており、第3世代からの移行も含めLTEの利用者は急速に拡大しています。当社グループのLTE(Xi)サービス契約数は、当連結会計年度末においては3,868万契約と前連結会計年度末の3,074万契約から大きく増加し、第3世代移動通信システムであるFOMAの3,228万契約を上回りました。更にLTE(Xi)サービスの拡大に伴い、スマートフォンの販売も急速に拡大しており、当社グループにおける当連結会計年度のスマートフォン販売数は1,544万台となりました。当社グループでは、LTE(Xi)サービスの契約数及びスマートフォン販売数の拡大傾向は今後も継続するものと予想しています。
今後の国内移動通信市場では、音声通話を中心的な用途とした契約数の成長は限定的であると予想されるものの、スマートフォン利用の拡大、お客様の多様なニーズに対応した様々なパケット料金プランの提供や高速データ通信サービスの普及などを背景としてデータ通信利用が増大しているほか、スマートフォン向けコンテンツ・アプリケーションなど新たな市場機会が生まれています。その一方で、料金プラン・ネットワーク・端末の同質化が進みつつあること、MVNOの新規参入及びSIMロック解除の義務化といった総務省の競争促進政策等により、移動通信事業者間の競争が激化しています。また、総務省による「利用者視点からのサービス検証タスクフォース」及び「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」等の提言により、競争環境の変化が見込まれるため、提言が競争環境に与える影響を注視しています。更に、スマートフォンやタブレット端末等のオープンプラットフォーム端末の普及拡大に伴い、OTT※4事業者等による競争力のあるサービスなども提供されるなど、厳しい競争環境は継続していくと想定しています。
国内固定通信市場では、2015年2月より東日本電信電話株式会社及び西日本電信電話株式会社が提供する光アクセスのサービス卸を開始したことから、通信事業者のみならず、多様なプレーヤーによる光ファイバーを活用したサービスの提供が可能になり、これまでの固定通信市場の枠を超えた更なる競争の激化が進みました。当社グループにおいては、2015年3月より光ブロードバンドサービス「ドコモ光」及び「ドコモ光パック」を提供開始し、移動通信と固定通信とを組み合わせた新たな付加価値を提供しており、「ドコモ光」の契約数は当連結会計年度末には157万契約となりました。
また、移動通信業者による電力などの他の業種への参入・協業等が活発化しており、異業種の事業者が提供するサービスをパッケージにしたセット割引等により、料金競争がより激化すると想定しています。
こうした市場環境の変化の中、当社グループは更なる取り組みとして、これまでの事業で培ってきたビジネスアセットを連携させて新たな価値を協創する「+d」の取り組みを開始し、多くのパートナーとの連携を進めました。その一環として、「+d」の基盤拡大に向け「ドコモポイント」を「dポイント」にリニューアルし、お客様にとってより便利で利用価値の高いポイントサービスの提供を開始しました。
※1 Mobile Network Operatorの略。移動通信サービスに係る無線局を自ら開設または運用し、移動通信サービスを提供している事業者。
※2 Mobile Virtual Network Operatorの略。無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供している事業者。
※3 Long Term Evolutionの略。標準化団体3rd Generation Partnership Project(以下「3GPP」)で仕様が作成された移動通信方式。
※4 Over The Topの略。自社でサービスの配信に必要な通信インフラを持たずに、他社の通信インフラを利用してコンテンツ配信等を行うサービス。
技術・サービス
スマートフォンやタブレット端末、PC向けデータ端末の普及拡大やコンテンツのリッチ化に伴い、移動通信ネットワークのトラフィックは、年々増加しています。当社グループは、ネットワーク基盤の強化に取り組んでおり、通信設備の増強を図るとともに、より周波数利用効率のよいLTE-Advanced※1を中心としたネットワーク容量の拡大等の対策を講じることで、お客様により安定した快適な通信品質を提供しています。当社グループは、LTE-Advancedを用いたサービス「PREMIUM 4G」のエリアを当連結会計年度末で全国976都市に拡大するとともに、2015年10月より受信時最大300Mbpsの通信サービスを国内一部エリアで開始しました。また、2016年3月には、ネットワーク仮想化技術を適用した商用ネットワークの運用を開始しました。これにより、通信混雑時におけるつながりやすさ及び設備故障時における通信の信頼性などが向上し、よりよいネットワークサービスをご利用いただくことが可能となりました。
国内移動通信市場における料金競争が激化する中、当社グループは、高度で多様なサービスの提供及び当社グループの契約者の利便性向上を目的として、2014年6月より国内音声通話定額サービス、パケット(データ)通信量を家族で分けあえるサービス、ご利用年毎に応じた割引サービス、25歳以下のお客様を応援する割引サービスの4つを柱とした新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の提供を開始しました。2015年9月には新たに低利用者向けの料金プランとして「カケホーダイライトプラン」を追加し、2016年3月には「カケホーダイライトプラン」の組み合わせ対象となるパケットパックを拡大するとともに、5GBのデータ量を家族でシェアして利用できる「シェアパック5」を追加したことで、音声通話料金とデータ通信料金の組み合わせをより一層自由に選択できるようになりました。また、2016年6月には、2年定期契約満了後に、引き続き2年間のご利用をお約束いただくことで利用年数に応じた割引やポイントのプレゼントが受けられる「ずっとドコモ割コース」と基本プランの料金がそのままで解約金が不要となる「フリーコース」の2つのコースをお客様が選択できるように新設しました。
「ドコモ光」の更なる普及拡大のため、2016年3月より、主に「ひかり電話」やFAXを利用しインターネットの利用がないお客様向けに、最大100Mbpsの通信を2段階定額料金でご利用いただける「ドコモ光ミニ」の提供を開始しました。また、ご家族や同一法人内等のシェアグループ内で2回線以上の「ドコモ光」をご契約いただく場合、2回線目以降はおトクにご利用いただける「光複数割」など、様々なお客様のご利用状況に合わせておトクにご利用いただける割引も提供しています。
当社グループは、上記の通信事業の競争力強化に留まらず、スマートライフ領域の成長に向けた取り組みを加速しています。具体的にはdマーケットにおけるサービスの拡充及びサービスのコンテンツ充実に取り組みました。2015年5月には料理や食に関する情報を提供する「dグルメ」を開始しました。その結果、dマーケット契約数※2は、当連結会計年度末において1,554万契約となりました。
※1 3GPPで標準化が進められている、LTEと技術的な互換性を保ちつつ更に高度化した移動通信方式。
※2 「dTV」「dアニメストア」「dヒッツ」「dキッズ」「dマガジン」及び「dグルメ」の合計契約数。
規制
当社グループを含む国内の移動通信事業者(MNO)は、無線周波数を政府機関より割り当てられており、電気通信事業法や電波法等による規制を受けていますが、近年、国内の移動通信業界は、多くの分野で規制改革が進んでおり、2015年5月には電気通信事業法等改正案が成立しました。本改正法は2016年5月21日より施行され、移動通信事業者のうち、当社のみ課せられている禁止行為規制が大幅に緩和され、当社は他移動通信事業者同様、様々なパートナーとの自由な協業が認められることとなりました。他方、本改正法においては、消費者保護を目的とした各種ルールが改正・新規導入されることとなりました。消費者保護政策は当社のみならず電気通信事業者全体に対する規定であり、各社とも本規定に基づく消費者対応が求められることとなります。今後、規制環境の変化が更に進んだ場合、当社グループを含む移動通信業界の収益構造やビジネスモデルが大きく変化する可能性があります。
以上のように、市場環境、規制、ビジネスモデルの変化の点などから、当社を取り巻く環境は厳しい状況ではありますが、引き続き競争力強化及び利益拡大に向けて取り組んでいます。
②当連結会計年度の業績
以下では、当連結会計年度の業績についての分析をしています。次の表は、当連結会計年度と前連結会計年度の連結損益計算書から抽出したデータ及びその内訳を表しています。
(単位:百万円)
| 前連結会計年度 2014年4月1日から 2015年3月31日まで | 当連結会計年度 2015年4月1日から 2016年3月31日まで | 増減 | 増減率(%) |
営業収益: |
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通信サービス | 2,747,155 | 2,815,507 | 68,352 | 2.5 |
モバイル通信サービス収入 | 2,736,649 | 2,767,591 | 30,942 | 1.1 |
音声収入(1) | 883,844 | 849,440 | △34,404 | △3.9 |
パケット通信収入 | 1,852,805 | 1,918,151 | 65,346 | 3.5 |
光通信サービス及びその他の通信サービス収入 | 10,506 | 47,916 | 37,410 | 356.1 |
端末機器販売 | 904,089 | 860,486 | △43,603 | △4.8 |
その他の営業収入 | 732,153 | 851,091 | 118,938 | 16.2 |
営業収益合計 | 4,383,397 | 4,527,084 | 143,687 | 3.3 |
営業費用: |
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サービス原価 | 1,159,514 | 1,248,553 | 89,039 | 7.7 |
端末機器原価 | 853,062 | 881,471 | 28,409 | 3.3 |
減価償却費 | 659,787 | 625,934 | △33,853 | △5.1 |
減損損失 | 30,161 | 9,063 | △21,098 | △70.0 |
販売費及び一般管理費 | 1,041,802 | 979,039 | △62,763 | △6.0 |
営業費用合計 | 3,744,326 | 3,744,060 | △266 | △0.0 |
営業利益 | 639,071 | 783,024 | 143,953 | 22.5 |
営業外損益(△費用) | 4,812 | △5,003 | △9,815 | - |
法人税等及び持分法による投資損益(△損失)前利益 | 643,883 | 778,021 | 134,138 | 20.8 |
法人税等 | 238,067 | 211,719 | △26,348 | △11.1 |
持分法による投資損益(△損失)前利益 | 405,816 | 566,302 | 160,486 | 39.5 |
持分法による投資損益(△損失) | △7,782 | △5,060 | 2,722 | 35.0 |
当期純利益 | 398,034 | 561,242 | 163,208 | 41.0 |
控除:非支配持分に帰属する当期純損益 | 12,059 | △12,864 | △24,923 | - |
当社に帰属する当期純利益 | 410,093 | 548,378 | 138,285 | 33.7 |
(1) 回線交換によるデータ通信を含んでいます。
当連結会計年度における業績の分析と前連結会計年度との比較
当連結会計年度の営業収益は、前連結会計年度の4兆3,834億円から1,437億円(3.3%)増加して4兆5,271億円になりました。通信サービス収入は、2兆8,155億円と前連結会計年度の2兆7,472億円に比べて684億円(2.5%)増加しました。通信サービス収入のうち、モバイル通信サービス収入は、2兆7,676億円と前連結会計年度の2兆7,366億円に比べて309億円(1.1%)増加しました。モバイル通信サービス収入のうち音声収入は、前連結会計年度の8,838億円から8,494億円へと344億円(3.9%)減少しました。これは、「月々サポート」による割引の拡大に伴う減収影響が新料金プランへの移行による増収影響を上回ったことによるものです。なお、「月々サポート」とは一定の契約条件を満たしたスマートフォンやタブレット端末等をご利用のお客様を対象にご購入の機種に応じた一定額を毎月のご利用料金から、最大24ヶ月割り引くサービスです。パケット通信収入は、前連結会計年度の1兆8,528億円から1兆9,182億円へと653億円(3.5%)増加しました。この増加は、タブレット端末のラインナップ充実と販売促進による2台目需要の増加及び「カケホーダイ&パケあえる」の上位プランへの移行が進んだことに伴う増収影響によるものです。当連結会計年度のLTE(Xi)サービス契約数は3,868万契約となり、スマートフォン販売数は1,544万台となりました。光通信サービス及びその他の通信サービス収入は479億円と、前連結会計年度の105億円に比べて374億円(356.1%)増加しました。この増加は、2015年3月に提供を開始した「ドコモ光」において、当連結会計年度に契約数が大幅に増加したことによるものです。上記により、当連結会計年度の音声ARPUは、前連結会計年度の1,280円から70円(5.5%)減少し1,210円となりました。また、当連結会計年度のパケットARPUは、前連結会計年度の2,820円から90円(3.2%)増加し2,910円となりました。当連結会計年度のドコモ光ARPUは、50円となりました。なお、光ブロードバンドサービス「ドコモ光」は2015年3月より提供を開始しています。
端末機器販売収入は、前連結会計年度の9,041億円から436億円(4.8%)減少して8,605億円になりました。これは、フィーチャーフォンより販売単価の高いスマートフォン及びタブレット端末の割合が増加したものの、販売代理店への卸売販売数が減少したことによるものです。
その他の営業収入は、前連結会計年度の7,322億円から8,511億円へと1,189億円(16.2%)増加しました。その他の営業収入には、主に、ショッピングサービスによる収入、生活関連サービスによる収入、ケータイ補償サービス等による収入、dマーケットから得られる収入、クレジットサービス収入などが含まれています。主な増加要因は、ケータイ補償サービスの契約数の増加により収入が増加したこと、「スゴ得コンテンツ」サービスの契約数が増加したことにより収入が増加したこと、dマーケットの月額課金ユーザの契約数増加によりdマーケットを通じて得られる関連収入が増加したこと、「dカード」等のクレジットサービスの取扱高が拡大したこと及び携帯電話のアクセサリーの販売収入が増加したことなどによるものです。
営業費用は、前連結会計年度の3兆7,443億円から3兆7,441億円へと3億円減少しました。
お客様にモバイル通信サービスや子会社におけるサービスを提供するために直接的に発生する費用であるサービス原価は、「ドコモ光」、dマーケット及びケータイ補償サービス等の新たな成長分野での収益増加に連動したサービス原価の増加により、前連結会計年度の1兆1,595億円から1兆2,486億円へと890億円(7.7%)増加しました。
新規のお客様及び既存のお客様への販売を目的として、当社グループが販売代理店等に卸売するために仕入れた端末機器の購入原価である端末機器原価は、フィーチャーフォンより仕入単価の高いスマートフォン及びタブレット端末の割合が増加した影響により、前連結会計年度の8,531億円から8,815億円へ284億円(3.3%)増加しました。
減価償却費は、前連結会計年度の6,598億円から339億円(5.1%)減少して6,259億円になりました。これは、これまでの設備投資のコスト効率化への取り組みによる償却対象の固定資産の減少によるものです。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度の1兆418億円から9,790億円と628億円(6.0%)減少しました。販売費及び一般管理費は、販売代理店へ支払う手数料や「dポイント」及び「ドコモポイントサービス」関連費用等の新規契約獲得と既存契約の維持に関する費用が主な構成要素です。「dポイント」及び「ドコモポイントサービス」制度に関する費用の減少、料金回収に係る費用の減少ならびに販売代理店に支払う手数料の減少などにより、販売費及び一般管理費は減少しました。
減損損失は、前連結会計年度の302億円から91億円と211億円(70.0%)減少しました。前連結会計年度においては、携帯端末向けマルチメディア放送に係る事業資産の簿価を公正価値まで減損しました。また、当連結会計年度における減損損失は、主に当連結会計年度に取得した携帯端末向けマルチメディア放送事業に係る事業資産の減損です。
上記のとおり、サービス原価及び端末機器原価が増加したものの、減価償却費、減損損失ならびに販売費及び一般管理費が減少したことにより、営業費用は前連結会計年度とほぼ同程度になりました。
この結果、当連結会計年度の営業利益は7,830億円となり前連結会計年度の6,391億円から1,440億円(22.5%)増加しました。営業利益率は、前連結会計年度の14.6%から17.3%に上昇しました。
営業外損益には支払利息、受取利息、受取配当金、為替差損益、市場性のある有価証券及びその他の投資の評価損ならびに実現損益などが含まれています。当連結会計年度の営業外損益は50億円の損失となり、前連結会計年度の48億円の収益から損失に転じました。主な要因は、当連結会計年度において連結子会社売却損が131億円発生したことによるものです。
以上の結果、法人税等及び持分法による投資損益前利益は7,780億円となり、前連結会計年度の6,439億円から1,341億円(20.8%)増加しました。
法人税等は、前連結会計年度の2,381億円から263億円(11.1%)減少して2,117億円となりました。これは法人税等及び持分法による投資損益前利益の増加による影響を、携帯端末向けマルチメディア放送事業を営む連結子会社に係る評価性引当額の減少及び当連結会計年度において適用される法定実効税率が前連結会計年度に比べて引き下げられた影響が上回ったことによるものです。当連結会計年度及び前連結会計年度の税負担率はそれぞれ27.2%、37.0%でした。
持分法による投資損益は、前連結会計年度の78億円の損失から27億円(35.0%)損失が縮小し、51億円の損失となりました。また、当連結会計年度及び前連結会計年度において、Tata Teleservices Limitedを含む持分法による投資損失は、三井住友カード株式会社及びPhilippine Long Distance Telephone Companyを含む投資利益により相殺されています。当連結会計年度において持分法による投資損失が縮小した主な要因は、TTSLに係る持分法による投資損失が前連結会計年度に比べて縮小したことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度の当社に帰属する当期純利益は5,484億円となり、前連結会計年度の4,101億円から1,383億円(33.7%)増加しました。
主要な事業データ
上述の当連結会計年度及び前連結会計年度の業績に関連する事業データについては、以下をご参照ください。
| 前連結会計年度 2014年4月1日から 2015年3月31日まで | 当連結会計年度 2015年4月1日から 2016年3月31日まで | 増減 | 増減率 |
携帯電話 |
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契約数(千契約) | 66,595 | 70,964 | 4,368 | 6.6 |
LTE(Xi)サービス | 30,744 | 38,679 | 7,934 | 25.8 |
FOMAサービス | 35,851 | 32,285 | △3,566 | △9.9 |
(再)新料金プラン | 17,827 | 29,704 | 11,877 | 66.6 |
契約数シェア (%)(1)(2) | 43.6 | 45.3 | 1.7 | - |
総合ARPU (円)(3)(6) | 4,100 | 4,170 | 70 | 1.7 |
音声ARPU (円)(4) | 1,280 | 1,210 | △70 | △5.5 |
データARPU (円) | 2,820 | 2,960 | 140 | 5.0 |
パケットARPU (円) | 2,820 | 2,910 | 90 | 3.2 |
ドコモ光ARPU(円)(7) | 0 | 50 | 50 | - |
MOU(分)(3)(5)(6) | 122 | 133 | 11 | 9.0 |
解約率 (%)(2)(6) | 0.61 | 0.62 | 0.01 | - |
(1) 他社契約数については、社団法人電気通信事業者協会及び各社が発表した数値を基に算出しています。
(2) 通信モジュールサービス契約数を含めて算出しています。
(3) 通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモビジネストランシーバー」ならびにMVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続関連収入及び契約数を含めずに算出しています。
(4) 回線交換によるデータ通信を含んでいます。
(5) MOU(Minutes of Use): 1利用者当たり月間平均通話時間
(6) 当連結会計年度より算定方法を変更(それに伴い、前連結会計年度のARPU、MOU及び解約率も変更)
(7) 光ブロードバンドサービス「ドコモ光」は2015年3月より提供を開始しています。
ARPUの定義
総合ARPU:音声ARPU+パケットARPU+ドコモ光ARPU
音声ARPU:音声ARPU関連収入(基本使用料、通話料)÷稼動利用者数
データARPU:パケットARPU+ドコモ光ARPU
パケットARPU:パケットARPU関連収入(月額定額料、通信料)÷稼動利用者数
ドコモ光ARPU:ドコモ光ARPU関連収入(基本使用料、通話料)÷稼動利用者数
稼動利用者数:当該年度(4月から翌年3月)の「各月稼動利用者数」※の合計
※「各月稼動利用者数」:(前月末利用者数 + 当月末利用者数)÷2
(注)利用者数は、以下のとおり、契約数を基本としつつ、一定の契約数を除外して算定しています。
利用者数=契約数-通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」、「ドコモ
ビジネストランシーバー」ならびにMVNOへ提供する卸電気通信役務及び事業者間接続に係る
契約数-Xi契約及びFOMA契約と同一名義のデータプラン契約数
③セグメント情報
概要
当社グループは、事業セグメントの区分を通信事業、スマートライフ事業、その他の事業の3つに分類しています。通信事業には、携帯電話サービス(LTE(Xi)サービス、FOMAサービス)、光ブロードバンドサービス、衛星電話サービス、国際サービス及び各サービスの端末機器販売などが含まれます。スマートライフ事業には、動画配信サービス、音楽配信サービス及び電子書籍サービス等のdマーケットを通じたサービスならびに、金融・決済サービス、ショッピングサービス及び生活関連サービスなどが含まれます。その他の事業には、ケータイ補償サービスならびに、システムの開発、販売及び保守受託などが含まれます。
通信事業
(単位:百万円)
| 前連結会計年度 2014年4月1日から 2015年3月31日まで | 当連結会計年度 2015年4月1日から 2016年3月31日まで | 増減 |
セグメント営業収益 | 3,654,565 | 3,689,779 | 35,214 |
セグメント営業費用 | 3,018,489 | 2,980,925 | △37,564 |
セグメント営業利益(△損失) | 636,076 | 708,854 | 72,778 |
通信事業セグメントにおける営業収益は、主に通信サービスの提供及び端末機器の販売によるものです。当連結会計年度における通信事業セグメントの営業収益は、前連結会計年度の3兆6,546億円から352億円(1.0%)増加して3兆6,898億円となりました。通信サービス収入は、2兆7,775億円と前連結会計年度の2兆7,144億円に比べて630億円(2.3%)増加しました。通信サービス収入のうち、当連結会計年度における音声通信及びパケット通信による収益であるモバイル通信サービス収入は、2兆7,298億円となり前連結会計年度の2兆7,044億円から254億円(0.9%)増加しました。主な増加要因は、「月々サポート」による割引の拡大や「カケホーダイライトプラン」の導入による減収影響はあったものの、タブレット端末のラインナップ充実と販売促進により2台目以降の端末を購入したお客様によるデータ(パケット)利用の増加及び新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」において月額料金の高い上位プランへのお客様の移行が進んだことに伴う増収影響が上回ったことによるものです。また、当連結会計年度における光ブロードバンドサービス、衛星電話サービス、海外ケーブルテレビサービス等の収益である光通信サービス及びその他の通信サービス収入は、476億円となり、前連結会計年度の100億円から376億円(376.8%)増加しました。主な増加要因は、2015年3月に「ドコモ光」の提供を開始したことによるものであり、当連結会計年度に契約数が大幅に増加し、当連結会計年度末には157万契約となっています。一方、端末機器販売に係る収入については、フィーチャーフォンより販売単価の高いスマートフォン及びタブレット端末の割合が増加したものの、販売代理店への卸売販売数の減少により、前連結会計年度の9,007億円から441億円(4.9%)減少し8,566億円となりました。通信事業セグメントの営業収益がセグメント営業収益合計に占める割合は、当連結会計年度が81.0%、前連結会計年度が82.8%でした。通信事業セグメントの営業費用は、「ドコモ光」の収益増加に連動する他社の通信設備の使用料などの費用増加があったものの、販売代理店に支払う手数料の減少、「dポイント」及び「ドコモポイントサービス」制度に関する費用の減少ならびにこれまでの設備投資のコスト効率化への取り組みによる固定資産の減少による減価償却費の減少により、前連結会計年度の3兆185億円から2兆9,809億円と376億円(1.2%)減少しました。この結果、当連結会計年度の通信事業セグメントの営業利益は、モバイル通信サービス収入の回復、「ドコモ光」の契約数の増ならびにコスト効率化の取り組みに伴う販売関連費用及びネットワーク関連費用の減少により、前連結会計年度の6,361億円から728億円(11.4%)増加し、7,089億円となりました。
通信事業における収益及び費用の増減の分析については、前述の「②当連結会計年度の業績」、後述の「④営業活動の動向及び翌連結会計年度の見通し」を合わせてご参照下さい。
スマートライフ事業
(単位:百万円)
| 前連結会計年度 2014年4月1日から 2015年3月31日まで | 当連結会計年度 2015年4月1日から 2016年3月31日まで | 増減 |
セグメント営業収益 | 443,320 | 504,129 | 60,809 |
セグメント営業費用 | 445,714 | 457,679 | 11,965 |
セグメント営業利益(△損失) | △2,394 | 46,450 | 48,844 |
当連結会計年度におけるスマートライフ事業セグメントの営業収益は、前連結会計年度の4,433億円から608億円(13.7%)増加して5,041億円となりました。主な増加要因は、dマーケットの月額課金ユーザの契約数増加によりdマーケットを通じて得られる関連収入が増加したこと、「スゴ得コンテンツ」サービスの契約数が増加したことにより収入が増加したこと及び「dカード」等のクレジットサービスの取扱高が拡大したことによるものです。スマートライフ事業セグメントの営業収益がセグメント営業収益合計に占める割合は、当連結会計年度が11.1%、前連結会計年度が10.0%でした。スマートライフ事業の営業費用は、前連結会計年度より計上している携帯端末向けマルチメディア放送に係る事業資産の減損損失が減少したものの、dマーケットやクレジットサービス等の収益に連動した経費が増加したことにより、前連結会計年度の4,457億円から4,577億円と120億円(2.7%)増加しました。この結果、当連結会計年度のスマートライフ事業セグメントの営業損益は、前連結会計年度の24億円の営業損失から488億円増加し、465億円の営業利益となりました。
その他の事業
(単位:百万円)
| 前連結会計年度 2014年4月1日から 2015年3月31日まで | 当連結会計年度 2015年4月1日から 2016年3月31日まで | 増減 |
セグメント営業収益 | 313,492 | 359,276 | 45,784 |
セグメント営業費用 | 308,103 | 331,556 | 23,453 |
セグメント営業利益(△損失) | 5,389 | 27,720 | 22,331 |
その他の事業の当連結会計年度の営業収益は、前連結会計年度の3,135億円から458億円(14.6%)増加し3,593億円になりました。その他の事業セグメントの営業収益がセグメント営業収益合計に占める割合は、当連結会計年度が7.9%、前連結会計年度が7.1%でした。営業費用は、前連結会計年度の3,081億円から235億円(7.6%)増加し3,316億円となりました。営業収益及び営業費用の主な増加要因は、ケータイ補償サービスの契約数が増加したことによる収入及び収益に連動した関連費用の増加によるものです。以上の結果、その他の事業セグメントにおける当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度の54億円から223億円増加して277億円となりました。
④営業活動の動向及び翌連結会計年度の見通し
以下では、当社グループの営業活動について、収益と費用の面からその動向の分析及び、翌連結会計年度の見通しを記載しています。
(a)営業収益:
通信サービス
通信サービス収入は、モバイル通信サービス収入ならびに光通信サービス及びその他の通信サービス収入から構成されます。モバイル通信サービス収入は、携帯電話サービスから得られる収入であり、音声収入とパケット通信収入から構成されます。音声収入は、月額基本使用料及び接続時間に応じて課金される通話料から得られ、パケット通信収入は、月額定額料及びデータ量に応じて課金される通信料から得られます。これらは契約数の動向、お客様のサービスの利用動向、お客様に提供する料金割引等の施策などによって影響を受けます。
契約数の増加に向けては、新規契約の獲得と既存契約数の維持が必要となりますが、人口普及率の高まりにより新規契約数の大幅な伸びが望めない一方で、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末及びWi-Fiルーターなど多様な通信端末・サービスのニーズへの対応が求められています。また、スマートフォンの普及によるデータ通信利用の拡大に伴い、通信の高速化も求められており、当社グループはこうした新たな市場ニーズを捉え、LTE(Xi)サービスの利用者拡大に向けたスマートフォンの販売やLTEネットワークの拡充等に積極的に取り組んだ結果、当連結会計年度末のLTE(Xi)サービスの契約数は、前連結会計年度末に比べ25.8%増加し、LTE(Xi)サービスの契約数が携帯電話サービスの契約数全体に占める割合は当連結会計年度末において50%を超えました。
一方、既存契約の他社への流出を抑制し、これを維持することは当社グループにとって重要な事業課題であり、課題達成を図る指標として解約率を重視しています。解約は契約数に影響を与える要因の一つであり、特に契約純増数を大きく左右します。料金値下げやその他のお客様誘引施策等による解約率低下に向けた取り組みは、純増数の増加により収益の増加につながる可能性がある反面、契約当たりの平均収入の減少や費用の増加により、利益に対してマイナスの影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、競争力の強化に向けて2014年6月より新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」の提供を開始するとともに、2015年3月より光ブロードバンドサービス「ドコモ光」及び「ドコモ光パック」の提供を開始しました。また、LTEサービスによるネットワークの進化、高機能で魅力的なデバイス(端末)の提供などを進めてきた結果、当社グループにおける解約率は、前連結会計年度は0.61%、当連結会計年度は0.62%と低い水準を維持しています。純増数についても当連結会計年度は437万契約と前連結会計年度の349万契約に比べて増加しました。今後も他社への流出抑止に向け、新料金プランの充実や「ドコモ光」とのセット販売によるお客様の囲い込み、ネットワークやサービスの拡充による他社との差異化などの、解約率低減に向けた取り組みを行います。
これらの取り組みの結果、当連結会計年度における契約数は6.6%増加しました。翌連結会計年度における契約数についても、新たな市場ニーズの開拓に努め、LTE(Xi)サービス利用者拡大に向けてスマートフォンの販売やLTE/LTE-Advancedネットワークの拡充等を積極的に取り組むことにより、引き続き増加するものと予想しています。
モバイル通信サービス収入については、「月々サポート」による割引の拡大や「カケホーダイライト」の導入による減収影響はあったものの、タブレットのラインナップ充実と販売促進による2台目需要の増加及び「カケホーダイ&パケあえる」の上位プランへの移行が進んだことに伴う増収影響が上回ったことにより、当連結会計年度は前連結会計年度に比べ増加しました。「月々サポート」は、一定の契約条件を満たしたスマートフォンやタブレット端末等を利用のお客様を対象に、ご購入の機種に応じた一定額を毎月のご利用料金から最大24ヶ月割り引く割引サービスで、2011年に導入しました。スマートフォンやタブレット端末等の購入に際して、ほとんどのお客様が「月々サポート」の利用を選択するため、スマートフォン等の普及に伴って「月々サポート」契約数は拡大しており、モバイル通信サービス収入の主な減少要因となっています。当連結会計年度における「月々サポート」の減収影響は、前連結会計年度に比べて774億円増加しました。翌連結会計年度における減収影響は、「月々サポート」の適用されるスマートフォンの販売数の伸びが緩やかになってきたこと及び「月々サポート」の適用額のコントロールに努めていることから当連結会計年度と同程度と考えています。
新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」は、国内音声通話定額サービス、パケット(データ)通信量を家族で分けあえるサービス、ご利用年毎に応じた割引サービス、25歳以下のお客様を応援する割引サービスの4つを柱とした料金プランであり、2014年6月より提供開始しました。新料金プランは提供開始から好評いただいており、2016年4月12日には3,000万契約を突破しました。前連結会計年度においては、新料金プランへの移行によっておトクになるお客様が想定を大きく上回るスピードで移行したことにより、減収影響が発生しました。当連結会計年度においては、新料金プランへの移行によりおトクになるお客様の移行が鈍化したことによる音声収入の下げ止まりや、月額料金の高い上位プランへの移行の取り組みによるパケット通信収入の増収影響により、新料金プランによる減収影響は縮小しました。翌連結会計年度においては、この新料金プランの減収影響の縮小傾向が継続すると考えています。
モバイル通信サービス収入のうち、音声収入はお客様の新料金プランへの移行が進んだことによる増収影響があるものの、「月々サポート」による割引の拡大による減収影響が上回ったことにより、前連結会計年度と比較して3.9%減少しています。翌連結会計年度においては、お客様の新料金プランへの移行が引き続き進むことによる増収影響があること及び「月々サポート」による割引影響が横ばいになることにより、音声収入は増加するものと見込んでいます。
パケット通信収入は、タブレットのラインナップ充実と販売促進による2台目需要の増加及び「カケホーダイ&パケあえる」の上位プランへの移行が進んだことに伴う増収影響により、前連結会計年度と比較し3.5%増加しています。スマートフォンユーザーは、パケットの利用単価が高く、また、タブレット等データ通信端末の利用者は、拡大を続けています。当社は、月額料金の高い上位プランへの移行及びスマートフォンの販売に向け引き続き積極的に取り組むことにより、翌連結会計年度においてもパケット通信収入は増加すると予想しています。パケット通信収入のモバイル通信サービス収入に占める割合は年々増加し、前連結会計年度は67.7%、当連結会計年度は69.3%を占めています。
2015年12月には、総務省による「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の提言に基づき、総務大臣からスマートフォンの通信料金負担の軽減等について要請を受けました。当社グループは、これらの提言や要請も踏まえながら、お客様の多様なニーズに対応するため、2016年3月にご利用の少ないお客様向けに新たな料金プランの提供を開始し、更に2016年6月より2年定期契約満了後にお選びいただける解約金が不要となる料金プランの新設及び長期利用者への割引の拡充を行うなど新料金プランの更なる充実を図ってきました。翌連結会計年度においては、これらの対応により、減収影響が発生すると考えています。
光通信サービス及びその他の通信サービス収入は、光ブロードバンドサービス、衛星電話サービス、海外ケーブルテレビサービス及びその他の通信サービスから得られる収入です。2015年3月より、最大1Gbpsの高速通信をご利用いただける光ブロードバンドサービス「ドコモ光」と、スマートフォン・ドコモ ケータイと「ドコモ光」をまとめておトクな料金でご利用いただける「ドコモ光パック」の提供を開始しました。移動通信と固定通信を組み合わせた新たな付加価値を提供することにより、光ブロードバンドサービスの月額料金から得られる収入のみならず、携帯電話サービス契約の新規獲得及び解約抑止効果があるものと考えています。光通信サービス及びその他の通信サービス収入は、「ドコモ光」の契約数の増加により、前連結会計年度と比較し356.1%増加しています。翌連結会計年度の光通信サービス及びその他の通信サービス収入は、「ドコモ光」の契約数の増加傾向が続くことから、増加するものと見込んでいます。
当社グループは、1利用者当たりの各サービスにおける平均的な月間営業収益を計るための指標として、ARPU(Average monthly Revenue Per Unit、1利用者当たり月間平均収入)を用いており、音声ARPU、パケットARPU及びドコモ光ARPUで構成されています。ARPUは利用者の各月の平均的な利用状況、及び当社グループによる料金設定変更の影響を分析する上で一定程度、有用な情報を提供すると考えています。音声ARPUについては、近年、割引の影響により減少傾向が続いておりましたが、当社グループのお客様による新料金プランに含まれる国内音声通話定額サービスへの移行が進んだことに伴い、翌連結会計年度においては増加に転じると見込んでいます。パケットARPUについては、タブレットのラインナップ充実と販売促進による2台目需要の増加及び月額料金の高い上位プランへの移行の取り組みにより、当連結会計年度において増加に転じました。この傾向は、翌連結会計年度においても続くと見込んでいます。ドコモ光ARPUについては、「ドコモ光」の契約数の更なる増加により、翌連結会計年度において増加すると見込んでいます。
端末機器販売
当社グループは、提供する携帯電話サービスに対応した通信端末を端末メーカーから購入し、お客様への販売を行う販売代理店に対して主に販売しています。
当社グループは、お客様が販売代理店等から端末機器を購入する際に、端末機器代金の分割払いを選択するオプションを提供しています。お客様が分割払いを選択した場合、当社グループはお客様及び販売代理店等と締結した契約に基づき、お客様に代わって端末機器代金を販売代理店等に支払い、立替えた端末機器代金を分割払いの期間にわたり、毎月の通話料金と合わせて直接お客様に請求します。なお、この契約は、当社グループとお客様との間で締結する携帯電話サービスに関する契約及び販売代理店等とお客様の間で行われる端末機器売買とは別個の契約です。端末機器販売に係る収益は、端末機器を販売代理店等に引渡した時点で認識され、お客様からの資金回収は立替代金の回収であるため、端末機器販売収入を含む当社グループの収益に影響を与えません。
当社グループは、米国会計基準に従い、販売代理店に支払う販売手数料及びお客様に対するインセンティブの一部を端末機器販売収入から減額する会計処理を行っています。端末機器販売収入については、当連結会計年度において、フィーチャーフォンより販売単価の高いスマートフォン及びタブレット端末の割合が増加したものの、販売代理店への卸売販売数が減少したことから、端末機器販売収入は前連結会計年度に比べ4.8%減少しました。
近年、同一端末の利用期間が長期化しており、これに起因する端末販売数の減少により、翌連結会計年度においても端末機器販売収入は減少すると見込んでいます。
端末機器販売の動向が営業利益に与える影響については端末機器原価とも密接に関係しますので、後述の「端末機器原価」を合わせてご参照下さい。
その他の営業収入
その他の営業収入には、主に、ケータイ補償サービス、dマーケット及びクレジットサービス等のスマートライフ領域から得られる収入などが含まれています。当社グループは様々な企業との提携を通じたスマートライフ領域の拡大をめざしており、翌連結会計年度においても、引き続きスマートライフ領域における収益の拡大をめざしていきます。
ケータイ補償サービスは、毎月一定額をお支払い頂くことにより、携帯電話機の水濡れや紛失などのトラブルに対し、お電話いただくだけで同一機種・同一カラーの携帯電話をお届けしたり、修理代金をサポートするサービスで、ご利用するお客様は増えており、これに伴う収入も増加しています。翌連結会計年度においても、引き続きお客様の利用拡大をめざしていきます。
また、2010年度に開始した当社グループのクラウドサービスの1つであるdマーケットを通じて得られる収入が拡大しています。dマーケットとは、動画や音楽、電子書籍などの豊富なデジタルコンテンツや、食品・日用品などの幅広い商品をクラウド上で提供、販売するマーケットであり、映画やドラマを配信する「dTV」や、ゲームを提供する「dゲーム」、音楽を配信する「dヒッツ」、雑誌を配信する「dマガジン」、料理や食に関する情報を提供する「dグルメ」などのストアから構成されています。当連結会計年度は、2015年5月より食に関する様々な情報やおトクなクーポンがご利用いただける「dグルメ」の提供を開始するなど、dマーケットのサービスの拡充を行いました。また、dマーケットの各ストアにおいても、より魅力的なコンテンツの提供に取り組みました。この結果、月額契約でコンテンツを提供する「dビデオ」、「dヒッツ」、「dアニメストア」、「dキッズ」「dマガジン」及び「dグルメ」の契約数は、当連結会計年度末において合計で1,554万契約となり、dマーケットの収益も前連結会計年度に比べ大幅に増加しました。今後もdマーケットを通じて得られる収入の増加は続くものと見込んでいます。
「+d」の基盤拡大に向けた「ドコモポイント」から「dポイント」へのリニューアルに合わせ、当社グループは、2015年12月よりクレジットサービス「DCMX」をリニューアルし、dポイントカードにクレジット決済機能を搭載した「dカード」を発行しました。「DCMX」及び「dカード」等のクレジットサービスの取扱高は、年々拡大しており、これに伴いクレジットサービスによる収益も増加しています。この傾向は、翌連結会計年度においても続くと見込んでいます。
当連結会計年度におけるその他の営業収入は、上記の結果、前連結会計年度に比べ16.2%増加しました。翌連結会計年度においてもケータイ補償サービス、dマーケット及びクレジットサービスからの収入の拡大により、当連結会計年度と比較して増収を見込んでいます。
以上により、翌連結会計年度の営業収益は増収となる見込みです。
(b) 営業費用:
サービス原価
サービス原価とは、お客様に通信サービスや子会社におけるサービスを提供するために直接的に発生する費用であり、通信設備使用料、施設保全費、通信網保全・運営に関わる人件費、ケータイ補償サービス等の提供に伴う保険費用等が含まれています。当連結会計年度においては、営業費用の33.3%を占めています。サービス原価のうち、大きな割合を占めるものは通信設備の保守費用等である施設保全費及び他社の通信網利用や相互接続の際に支払う通信設備使用料であり、当連結会計年度ではそれぞれサービス原価総額の26.1%及び22.2%を占めています。通信設備使用料は、他事業者の料金設定によって変動します。当連結会計年度のサービス原価は、前連結会計年度から7.7%増加しました。これは、「ドコモ光」、dマーケット及びケータイ補償サービス等の新たな成長分野での収益増加に連動したサービス原価の増加によるものです。翌連結会計年度においてもこの傾向は継続することから、サービス原価は増加傾向が継続すると予想しています。
端末機器原価
端末機器原価は、新規のお客様及び既存のお客様への販売を目的として、当社グループが販売代理店等に卸売りするために仕入れた端末機器の購入原価であり、基本的に販売代理店等への端末機器販売数と仕入単価に影響されます。当連結会計年度においては、営業費用の23.5%を占めています。当連結会計年度の端末機器原価は、前連結会計年度から3.3%増加しました。これは、フィーチャーフォンより仕入単価の高いスマートフォン及びタブレット端末の割合が増加した影響によるものです。なお、当連結会計年度においては、端末機器原価が増加したものの、端末機器販売収入は減少していますが、これは他事業者との競争対抗上の理由により、端末機器の卸売単価の上昇を抑えたことによるものです。翌連結会計年度においては、端末機器販売の項目に記載の通り、翌連結会計年度において端末販売数の減少が予想されるため、端末機器原価も減少すると見込んでいます。
減価償却費
当連結会計年度において、減価償却費は営業費用の16.7%を占めています。これまでの設備投資のコスト効率化への取り組みによる償却対象の固定資産の減少により、当連結会計年度の減価償却費は5.1%減少しました。翌連結会計年度における減価償却費は、一部の有形固定資産に係る減価償却方法を定率法から定額法に見直したことに加え、近年の設備投資の効率化による削減により期首時点での償却対象の固定資産の簿価が減少していることから大幅に減少すると見込んでいます。設備投資の詳細については、後述の「設備投資」の項を合わせてご参照下さい。
販売費及び一般管理費
当連結会計年度において、販売費及び一般管理費は営業費用の26.1%を占めています。販売費及び一般管理費の主なものは、新規契約者獲得と既存契約者の維持に関する費用であり、その中でも大きいものは販売代理店に対する手数料です。当社が販売代理店に支払う手数料には、新規契約や端末の買い増しなど販売に連動する手数料と、料金プラン変更の受付や故障受付など販売に連動しない手数料があります。当社グループは、米国会計基準を適用しており、販売に連動する手数料の一部を端末機器販売収入から控除し、それ以外の手数料については販売費及び一般管理費に含めています。また、販売費及び一般管理費には、「dポイント」及び「ドコモポイントサービス」制度に関する経費や端末故障修理などお客様へのアフターサービスに関連する費用が含まれています。当連結会計年度は、「dポイント」及び「ドコモポイントサービス」制度に関する経費の削減、料金回収に係る費用の減少ならびに販売代理店に支払う手数料の減少により、販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ6.0%減少しています。翌連結会計年度の販売費については、「ドコモ光」の新規契約獲得のための費用及び「dポイント」制度に関する経費の増加により、増加するものと見込んでいます。
以上により、翌連結会計年度の営業費用は、サービス原価ならびに販売費及び一般管理費の増加はあるものの、減価償却費及び端末機器原価の減少影響により当連結会計年度から減少すると予想しています。
これらの結果、翌連結会計年度の営業利益は、当連結会計年度から増益となる見込みです。
市場動向に関する上記以外の情報は、本項目「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の他の箇所にも含まれています。
(2)流動性及び資金の源泉
①資金需要
翌連結会計年度の資金需要として、端末機器販売に係わる販売代理店への立替払い、ネットワークの拡充資金及びその他新たな設備への投資資金、有利子負債及びその他の契約債務に対する支払のための資金、新規事業や企業買収、合弁事業などの事業機会に必要な資金が挙げられます。当社グループは、現時点で見込んでいる設備投資や債務返済負担などの必要額を営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等金融機関からの借入、債券や株式の発行による資本市場からの資金調達により確保できると考えています。当社グループは、安定的な業績と強固な財務体質により高い信用力を維持し、十分な調達能力を確保しているものと考えています。また、当社グループは、現在の資金需要に対して十分な運転資金を保有していると考えています。当社グループは、資金調達の要否について資金需要の金額と支払のタイミング、保有する現金及び現金同等物、運用資金ならびに営業活動によるキャッシュ・フロー等を総合的に検討して決定します。保有する現金及び現金同等物、運用資金ならびに営業活動によるキャッシュ・フローによる対応が困難な場合は、借入や債券・株式の発行による資金調達を検討します。設備投資などの必要額が見込みを上回った場合や将来のキャッシュ・フローが見込みを下回った場合には、債券や株式の発行等による追加的な資金調達が必要になる可能性があります。こうした資金調達については事業上受け入れ可能な条件で、あるいは適切なタイミングで、実行できるという保証はありません。
(a)設備投資
通信業界は、一般に設備投資の極めて大きい業界であり、通信ネットワークの構築には多額の設備投資が必要です。当社グループにおけるネットワーク構築のための設備投資額は、導入する設備の種類と導入の時期、ネットワーク・カバレッジの特性とカバーする地域、ある地域内の契約数及び予想トラフィックにより決まります。更に、サービス地域内の基地局の数や、基地局における無線チャネルの数、必要な交換設備の規模によっても影響されます。また、設備投資は、情報技術やインターネット関連事業用サーバーに関しても必要となります。近年では、コンテンツのリッチ化や新サービスの提供等によりスマートフォンユーザのトラフィックが増大する傾向にあります。それに伴い、通信の高速化及びトラフィックの需要増加への対応が必要となっています。
当連結会計年度は、「快適さ」「安心・安全」を追求した強力なネットワークの構築を進めており、高品質な通信環境を提供してきました。お客様により快適にご利用いただけるネットワークの実現に向け、LTE-Advancedの都市部への重点展開を行い、LTE-Advancedに対応した基地局数を900局から22,800局に拡大しました。また、2015年10月より受信時最大300Mbpsの通信サービス提供を国内の一部エリアにて開始しました。更なるエリア充実を図るため、全国のLTEサービス基地局数を97,400局から138,100局にまで増設しました。
当連結会計年度の設備投資額は5,952億円、前連結会計年度は6,618億円でした。当連結会計年度の設備投資額は、前連結会計年度と比較して665億円(10.1%)減少しましたが、これは、経営基盤の更なる強化に向け、引き続き通信ネットワークに係る設備投資の効率化に取り組み、高度化C-RAN※等の新技術や新装置の導入による設備装置の集約化・大容量化を進めるとともに、電気通信設備の建設工事の効率化や物品調達費用等の削減を行ったことによるものです。当連結会計年度において、設備投資の96.4%が通信事業に、2.3%がスマートライフ事業に、1.3%がその他の事業に使用されています。これに対し、前連結会計年度においては、設備投資の96.0%が通信事業に、2.6%がスマートライフ事業に、1.4%がその他の事業に使用されています。
翌連結会計年度の設備投資額は、トラフィック増加への対応及びLTE-Advancedのエリア拡大などのネットワーク品質における競争上の優位性確保、ならびに先進的技術導入などの競争力獲得のための投資を進める一方、設備投資額削減に向けて引き続き投資の効率化を行うことにより、5,850億円に減少する見込みです。そのうち約96.2%を通信事業に、約2.6%をスマートライフ事業に、約1.2%をその他の事業に使用すると見込んでいます。
当社グループの設備投資の実際の水準は、様々な要因により予想とは大幅に異なる場合があります。既存の携帯電話ネットワーク拡充のための設備投資は、確実な予測が困難な契約数及びトラフィックの増加、事業上適切な条件で適切な位置に基地局を定め配置する能力、特定の地域における競争環境ならびにその他の要因に影響を受けます。特にネットワーク拡充に必要な設備投資の内容、規模及び時期は、サービスへの需要の変動や、ネットワーク構築やサービス開始の遅れ、ネットワーク関連機材のコストの変動などにより、現在の計画とは大きく異なることがあり得ます。これらの設備投資は、データ通信に対する市場の需要動向及びこうした需要に対応するため継続的に行っている既存ネットワーク拡充の状況により影響を受けていくと考えています。
※ 広域なエリアをカバーする基地局と局所的なエリアをカバーする基地局を同時に制御し、周波数の利用効率を高める技術。
(b)長期債務及びその他の契約債務
当連結会計年度末において、1年以内返済予定分を含む長期の有利子負債は2,204億円で、主に社債と金融機関からの借入金です。前連結会計年度末においては2,206億円でした。当連結会計年度に2億円、前連結会計年度に2億円の長期の有利子負債を償還しました。当連結会計年度末において、長期の有利子負債のうち、4億円(1年以内返済予定分を含む)は金融機関からの借入金です。借入金利の加重平均が年率0.9%の固定金利による借入であり、返済期限は翌連結会計年度から2018年3月期です。また2,200億円は社債であり、表面利率の加重平均は1.2%、満期は2018年3月期から2024年3月期となります。当連結会計年度末において、当社及び当社の債務は、格付会社により以下の表のとおり格付けされています。これらの格付は、当社が依頼して取得したものです。格付は、格付会社による当社の債務返済能力に関する意見の表明であり、格付会社は独自の判断で格付をいつでも引き上げ、引き下げ、保留し、または取り下げることができます。また、格付は当社の株式や債務について、取得、保有または売却することを推奨するものではありません。
格付会社 | 格付の種類 | 格付 | アウトルック |
ムーディーズ | 長期債務格付 | Aa3 | 安定的 |
スタンダード・アンド・プアーズ | 長期債務格付 | AA- | 安定的 |
日本格付研究所 | 長期債務格付 | AAA | 安定的 |
格付投資情報センター | 発行体格付 | AA+ | ネガティブ |
なお、当社の長期有利子負債の契約には、格付の変更によって償還期日が早まる等の契約条件が変更される条項を含むものはありません。
当社グループの長期有利子負債、長期有利子負債に係る支払利息、リース債務及びその他の契約債務(1年以内償還または返済予定分を含む)の今後数年間の返済金額は次のとおりです。
(単位:百万円)
| 返済期限毎の支払金額 | ||||
負債・債務の内訳 | 合計 | 1年以内 | 1年超-3年以内 | 3年超-5年以内 | 5年超 |
長期有利子負債 |
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社債 | 220,000 | - | 170,000 | - | 50,000 |
借入 | 400 | 200 | 200 | - | - |
長期有利子負債に係る | 8,241 | 2,593 | 4,005 | 730 | 913 |
キャピタル・リース | 2,999 | 1,162 | 1,366 | 456 | 15 |
オペレーティング・リース | 38,039 | 12,016 | 14,131 | 6,733 | 5,159 |
その他の契約債務(1) | 98,640 | 92,592 | 3,814 | 2,234 | - |
合計 | 368,319 | 108,563 | 193,516 | 10,153 | 56,087 |
(1) 重要性がないまたは支払時期が不確実である契約債務については、上記表の「その他の契約債務」に含めていません。なお、当社グループの年金制度に対して、翌連結会計年度においてエヌ・ティ・ティ企業年金基金に対して2,303百万円の拠出を見込んでいます。詳細については、連結財務諸表注記18をご参照ください。
「その他の契約債務」は、主として携帯電話ネットワーク向け有形固定資産の取得に関する契約債務や棚卸資産(主に端末機器)の取得、サービスの購入に係る契約債務などから構成されています。当連結会計年度末の有形固定資産の取得に関する契約債務は196億円、棚卸資産の取得に関する契約債務は508億円、その他の購入契約債務は282億円でした。これらの契約債務の金額は、一定の仮定に基づき算定された見積金額であり、また、将来に予測されるすべての購入契約の内容を反映したものではありません。当社グループはこれらとは別に商品やサービスを必要な都度購入しています。当社グループは、LTEのネットワーク拡充やスマートフォン販売の拡大などのために今後も多額の設備投資や棚卸資産の取得を継続していく方針です。また、当社グループでは随時、通信事業を中心に新規事業分野への参入や企業買収、合弁事業、出資などを行う可能性についても検討しています。なお、現在当社グループの財政状態に重要な影響を与えるような、訴訟及び保証等に関する偶発債務はありません。
②資金の源泉
次の表は当社グループの当連結会計年度及び前連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概要をまとめたものです。
(単位:百万円)
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 |
営業活動によるキャッシュ・フロー | 962,977 | 1,209,131 |
投資活動によるキャッシュ・フロー | △651,194 | △375,251 |
財務活動によるキャッシュ・フロー | △734,257 | △583,608 |
現金及び現金同等物の増減額 | △421,367 | 248,884 |
現金及び現金同等物の期首残高 | 526,920 | 105,553 |
現金及び現金同等物の期末残高 | 105,553 | 354,437 |
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析と前連結会計年度との比較
当連結会計年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、1兆2,091億円の収入となりました。前連結会計年度と比べて2,462億円(25.6%)キャッシュ・フローが増加していますが、これは、携帯端末代金の分割購入に伴う立替金の回収が増加したことによる売却目的債権の減少に加え、法人税等の支払が減少したことなどによるものです。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、3,753億円の支出となりました。前連結会計年度と比べて2,759億円(42.4%)支出が減少していますが、これは、関連当事者への長期預け金償還による収入が増加したことや、ネットワーク構築効率化に伴う固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものです。
「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、5,836億円の支出となりました。前連結会計年度と比べて1,506億円(20.5%)支出が減少していますが、これは自己株式の取得による支出が減少したことなどによるものです。
これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は3,544億円となり、前連結会計年度末と比べて2,489億円(235.8%)増加しました。また、資金の一部を効率的に運用するために実施した期間3ヵ月超の資金運用残高は当連結会計年度末で59億円であり、前連結会計年度末においては2,438億円でした。
翌連結会計年度の見通し
翌連結会計年度の資金の源泉については、当社グループが立替えた、お客様の携帯端末代金の回収の増加が見込まれるものの、法人税等の支払の増加が見込まれることなどから、営業活動によるキャッシュ・フローは減少する見通しです。投資活動によるキャッシュ・フローについては、設備投資等により5,850億円と予想しています。設備投資及び合理的に見積もることができるもの以外の投資活動によるキャッシュ・フローについては、現時点では予想が困難であることから、投資活動によるキャッシュ・フローの予想には含めていません。
(3)会計方針に関する事項
①最重要な会計方針及び見積り
連結財務諸表の作成には、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。連結財務諸表の注記3には、当社グループの連結財務諸表の作成に用いられる主要な会計方針が記載されています。いくつかの会計方針については、特に慎重さが求められています。なぜなら、それらの会計方針は、財務諸表に与える影響が大きく、また経営者が財務諸表を作成する際に用いた見積り及び判断の根拠となっている条件や仮定から、実際の結果が大きく異なる可能性があるためです。当社の経営者は会計上の見積りの選定及びその動向ならびに最重要の会計方針に関する以下の開示について、独立会計監査人ならびに当社の監査役と協議を行いました。当社の監査役は、取締役会及びいくつかの重要な会議に出席して意見を述べるほか、取締役による当社の職務執行を監査し、計算書類等を監査する法的義務を負っています。最重要な会計方針は、以下のとおりです。
当社グループの通信事業で利用されている基地局、アンテナ、交換局、伝送路等の有形固定資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産は、財務諸表上に取得価額または開発コストで計上され、見積耐用年数にわたって減価償却が行われています。当社グループは、各年度に計上すべき減価償却費を決定するために、有形固定資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産の耐用年数を見積もっています。当連結会計年度及び前連結会計年度に計上された減価償却費の合計は、それぞれ6,259億円、6,598億円でした。耐用年数は、資産が取得された時点で決定され、また、その決定は、予想される使用期間、類似資産における経験、定められた法律や規則に基づくほか、予想される技術上及びその他の変化を考慮に入れています。無線通信設備の見積耐用年数は概ね8年から16年となっています。自社利用のソフトウェアの見積耐用年数は最長7年としています。技術上及びその他の変化が当初の予想より急速に、あるいは当初の予想とは異なった様相で発生したり、新たな法律や規制が制定されたり、予定された用途が変更された場合には、当該資産に設定された耐用年数を短縮する必要があるかもしれません。結果として、将来において減価償却費の増加や損失を認識する可能性があります。当連結会計年度において、有形固定資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産の見積耐用年数の見直しは、経営成績や財政状態に重大な影響がありませんでした。前連結会計年度においては、当社グループは、2014年7月1日より一部の電気通信設備に関わるソフトウェア及び自社利用のソフトウェアの見積り耐用年数について使用実態を踏まえた見直しを行い、耐用年数の最長年数を5年から7年に延長しています。この見直しにより、前連結会計年度の減価償却費は513億円減少しています。
当社グループは、有形固定資産ならびに電気通信設備に関わるソフトウェア、自社利用のソフトウェア及び有線電気通信事業者の電気通信施設利用権といった識別可能な無形固定資産からなる供用中の長期性資産(営業権及び耐用年数が確定できない無形固定資産(非償却対象の無形固定資産)を除く)について、その帳簿価額が回復不能であることを示唆する事象や環境の変化がある場合は、随時、減損認識の要否に関する検討を行っています。減損のための分析は、耐用年数の分析とは別途に行われますが、それらはいくつかの類似の要因によって影響を受けます。減損の検討の契機となる事項のうち、当社グループが重要であると考えるものには、その資産を利用する事業に関係する以下の傾向または条件が含まれています(ただし、これらの事項に限定されるものではありません)。
・資産の市場価値が著しく下落していること
・当期の営業キャッシュ・フローが赤字となっていること
・競合技術や競合サービスが出現していること
・キャッシュ・フローの実績、または見通しが著しく下方乖離していること
・契約数が著しく、あるいは継続的に減少していること
・資産の使用方法が変更されていること
・その他のネガティブな業界動向あるいは経済動向
上記またはその他の事項が1つ以上存在し、または発生していることにより、特定の資産の帳簿価額が回復可能ではないおそれがあると判断した場合、当社グループは、予想される耐用年数にわたってその資産が生み出す将来のキャッシュ・インフローとアウトフローを見積もっています。当社グループの予想される割引前将来純キャッシュ・フロー合計額の見積りは、過去からの状況に将来の市場状況や営業状況に関する最善の見積りを加えて行っています。予想される割引前将来純キャッシュ・フローの合計額が資産の帳簿価額を下回る場合には、資産の公正価値に基づき減損処理を行っています。こうした公正価値は、取引市場が確立している場合の市場価格、第三者による鑑定や評価、あるいは割引キャッシュ・フローに基づいています。実際の市場の状況や当該資産が供用されている事業の状況が経営者の予測より悪い、もしくは契約数が経営者の計画を下回っているなどの理由によりキャッシュ・フローの減少を招くような場合には、従来減損を認識していなかった資産についても減損の認識が必要となる可能性があります。当連結会計年度、前連結会計年度において当社グループは、主に携帯端末向けマルチメディア放送事業に係る長期性資産の減損損失としてそれぞれ91億円、302億円を計上しました。詳細は連結財務諸表注記6をご覧ください。
当社グループの営業権は、主として2002年11月に実施した株式交換により地域ドコモ8社の非支配持分を取得し、完全子会社化したことにより認識されたものです。さらに近年、スマートライフ領域への展開を目的としたマジョリティ出資を実施しており、当該マジョリティ出資により認識された営業権が増えています。これにより、当連結会計年度末の残高は2,437億円となっています。また、非償却対象の無形固定資産の当連結会計年度末の残高は243億円となっています。
当社グループは、企業結合により認識した営業権及び非償却対象の無形固定資産については、年1回主に3月31日時点で、また、減損の可能性を示す事象又は状況が生じた場合にはその時点で、減損テストを実施しています。営業権の減損テストは、事業セグメントまたはそれより一段低いレベルの報告単位毎に、二段階の手続きによって実施しています。減損テストの第一段階では、報告単位の公正価値と営業権を含む簿価とを比較しています。報告単位の公正価値は、主に割引キャッシュ・フロー法を用いて算定しています。報告単位の簿価が公正価値を上回る場合には、減損額を測定するため、第二段階の手続きを行っています。第二段階では、その報告単位の営業権の簿価と営業権の公正価値を比較し、簿価が公正価値を上回っている金額を減損として認識します。また、非償却対象の無形固定資産の減損テストに関しては、非償却対象の無形固定資産の公正価値と簿価を比較し、簿価が公正価値を上回る場合には減損損失が計上されます。公正価値の算定において、営業権及び非償却対象の無形固定資産について対象となる報告単位の事業計画などに基づき、当該報告単位の生み出す将来キャッシュ・フローを見積っています。将来キャッシュ・フローの割引現在価値を算定する際に、異なる見積りや前提条件が用いられた場合、営業権の評価も異なったものとなる可能性があり、それにより将来追加的な減損処理が必要となる可能性があります。
前連結会計年度において、当社グループは、経営管理方法の変更を反映させるため、事業セグメントの区分を変更しました。これにより、報告セグメントの構成を変更する方法で、組織内部の財務報告体制を再構築しています。また、報告単位もこれに基づき再編成し、営業権を公正価値の比率に基づき、各報告単位に再配分しています。当連結会計年度及び前連結会計年度において報告単位である国内通信事業は、金額的に最も重要な営業権を有しており、通信事業セグメントに含まれています。当該報告単位は、報告単位の再編成日以降において、1,273億円の営業権を有しており、その公正価値は、減損テストの第一段階の手続において、十分に簿価を超過していると判定されています。また、前連結会計年度及び当連結会計年度において、その他の報告単位が有する残りの営業権の公正価値も、簿価を十分に超過しているか、もしくは重要性がないと考えています。報告単位の公正価値は、主に将来の事業計画に基づいた割引キャッシュ・フロー法により見積もられ、その計画は過去実績や最新の中長期的な見通しを基に作成されていますが、現時点で予期しない事象により将来の営業利益が著しく減少した場合、当該報告単位の予測公正価値に不利な影響を及ぼすことがあります。
当連結会計年度においては85億円の減損損失を計上しています。前連結会計年度は、営業権の減損損失はありませんでした。報告単位の公正価値は、割引キャッシュ・フロー法とマーケット・アプローチを併用しながら測定しています。
当社グループは、国内外の他企業に対して投資を行っています。それらの投資は、出資比率、投資先への影響力及び上場の有無等により持分法、原価法または公正価値に基づいて会計処理を実施しています。過去において、当社グループはいくつかの「関連会社投資」について多額の減損処理を実施し、その減損額をそれぞれの会計期間における「持分法による投資損益(△損失)」に計上しました。今後においても「関連会社投資」及び「市場性のある有価証券及びその他の投資」について同様の減損が発生する可能性があります。また、今後、投資持分の売却に際して多額の売却損益を計上する可能性もあります。当連結会計年度末において、「関連会社投資」の簿価は4,114億円、「市場性のある有価証券及びその他の投資」の簿価は1,829億円でした。当社グループの主要な投資先は、三井住友カード株式会社、フィリピンのPhilippine Long Distance Telephone Company及びインドのTata Teleservices Limitedであり、当連結会計年度末において、いずれも「関連会社投資」に区分されています。
持分法投資及び原価法投資において、価値の下落またはその起因となる事象が生じたかどうか、また、生じた場合は価値の下落が一時的かどうかの判定を行う必要があります。当社グループは、投資の簿価が回復できない可能性を示唆する事象や環境の変化が発生した場合は、常に減損の要否について検討を行っています。減損の検討の契機となる事項のうち、当社グループが重要であると考えるものは、以下のとおりです(ただし、これらの事項に限定されるものではありません)。
・投資先企業株式の市場価格が、著しくあるいは継続的に下落していること
・投資先の当期の営業キャッシュ・フローが赤字となっていること
・投資先の過去のキャッシュ・フローの実績が計画に比べ著しく低水準なこと
・投資先によって重要な減損または評価損が計上されたこと
・公開されている投資先関連会社株式の市場価格に著しい変化が見られること
・投資先関連会社の競合相手が損失を出していること
・その他のネガティブな業界動向あるいは経済動向
当社グループは、投資の価値評価に際し、割引キャッシュ・フローによる評価、外部の第三者による評価、及び入手可能である場合は市場の時価情報を含む、様々な情報を活用しています。回収可能価値の算定には、投資先企業の事業業績、財務情報、技術革新、設備投資、市場の成長及びシェア、割引率及びターミナル・バリューなどの推定値が必要になる場合があります。投資の価値評価を実施した結果、一時的ではない、投資簿価を下回る価値の下落が認められた場合は、減損損失を計上しています。当該減損処理時の公正価値は、投資の新たな簿価となっています。「関連会社投資」の評価損は、連結損益計算書の「持分法による投資損益(△損失)」に、「市場性のある有価証券及びその他の投資」の評価損は、「営業外損益(△費用)」にそれぞれ含まれています。当連結会計年度及び前連結会計年度に実施した関連会社投資の価値評価において、一時的ではない価値の下落に伴う減損処理を実施しています。
当連結会計年度及び前連結会計年度の関連会社投資の減損による影響は軽微でした。
「市場性のある有価証券及びその他の投資」については、当連結会計年度及び前連結会計年度において数社への投資に対して一時的ではない価値の下落に伴う減損処理を実施しており、それぞれ6億円及び9億円の減損損失を計上しました。
当社グループは、投資の減損実施後の簿価については公正価値に近似していると考えていますが、投資価値が投資簿価を下回っている期間や、予測される回収可能価値等の条件次第では、将来追加的な減損処理が必要となる可能性があります。
当社グループは、携帯電話の利用等に応じてポイントを付与する「ドコモポイントサービス」を提供しています。付与されたポイントは、当社グループ商品の購入時の支払いへの充当等が可能です。2015年12月1日より、個人のお客様に対し、携帯電話及びクレジットサービス(dカード、DCMX)の利用ならびに加盟店での支払い等に応じて付与するポイントを付与する「dポイントサービス」の提供を開始しています。当社グループ商品の購入時の支払及び通信料金への充当ならびに加盟店での支払いへの充当等が可能です。なお、「dポイントサービス」において、個人のお客様は、モバイル通信サービス契約の解約後も「dポイント」を利用することが可能です。2015年4月1日から11月30日にかけて個人のお客様に対して付与された「ドコモポイント」は、自動的に「dポイント」へ移行されており、当社グループは、2015年12月1日以降、個人のお客様に対して「ドコモポイント」を付与していません。なお、2015年3月31日までに付与された「ドコモポイント」は、ポイントの使用期限まで利用することができます。当社グループは、お客様が獲得したポイントについて「ポイントプログラム引当金」を計上していますが、「ドコモポイント」及び「dポイント」に係る引当金について、それぞれ個別に見積りを行っています。当連結会計年度末及び前連結会計年度末におけるポイントプログラム引当金は、短期、長期合わせてそれぞれ795億円及び916億円でした。また、当連結会計年度及び前連結会計年度において計上されたポイントプログラム経費は、それぞれ578億円及び677億円でした。
「ドコモポイント」に係る引当金は、過去実績に基づき将来の解約等による失効部分を反映したポイント利用率等の見積りを行っています。実際のポイント利用率が当初見積りよりも多い場合などにおいて、将来において追加的な費用の計上や引当金の計上を実施する必要が生じる可能性があります。当連結会計年度末におけるポイントプログラム引当金の算定において、その他全ての仮定を一定としたままで、ポイント利用率が1%上昇した場合、約10億円の引当金の追加計上が必要となります。
「dポイント」に係る引当金は、将来のポイント利用率を見込むのに十分な過去実績がないため、ポイント利用率の見積りを行っていません。十分な過去実績を基に将来のポイント利用率を見積もった際には、費用の戻入や引当金の取崩しが生じる可能性があります。
当社グループは、従業員非拠出型年金制度を設けており、ほぼ全従業員を加入対象としています。当社グループは、従来、従業員非拠出型年金制度として確定給付年金制度を採用しておりましたが、2014年4月1日以降の積立分について確定拠出年金制度を導入しました。なお、2014年3月31日以前の積立分は、引き続き確定給付年金制度として維持します。また、従業員拠出型確定給付年金制度であるNTTグループの企業年金基金制度にも加入しています。
年金費用及び年金債務の数理計算にあたっては、割引率、年金資産の長期期待収益率、長期昇給率、平均残存勤務年数等の様々な判断及び見積りに基づく仮定が必要となります。その中でも割引率及び年金資産の長期期待収益率を数理計算上の重要な仮定であると考えています。割引率については、償還期間が年金給付の見積り期間と同じ期間に利用可能な格付けの高い固定利付債券の市場利子率に基づいて適正な率を採用しています。また、年金資産の長期期待収益率については、現在及び将来の年金資産のポートフォリオや、各種長期投資の過去の実績利回りの分析を基にした期待収益とリスクを考慮して決定しています。これらの仮定について、当社グループは毎年検討を行っているほか、重要な影響を及ぼすことが想定される事象または投資環境の変化が発生した場合にも見直しの検討を行っています。
当連結会計年度末及び前連結会計年度末における予測給付債務を決める際に用いられた割引率、ならびに当連結会計年度及び前連結会計年度における年金資産の長期期待収益率は、次のとおりです。
| 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
従業員非拠出型確定給付年金制度 |
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割引率 | 1.0 | % | 0.5 | % |
年金資産の長期期待収益率 | 2.0 | % | 2.0 | % |
実際収益率 | 約3% | 約2% | ||
NTT企業年金基金制度 |
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割引率 | 1.0 | % | 0.5 | % |
年金資産の長期期待収益率 | 2.5 | % | 2.5 | % |
実際収益率 | 約12% | 約0.4% |
当社グループの従業員非拠出型確定給付年金制度の予測給付債務は、当連結会計年度末で2,269億円、前連結会計年度末で2,180億円でした。当社グループの従業員に係る数理計算を基礎として算出されたNTT企業年金基金制度の予測給付債務は、当連結会計年度末で1,536億円、前連結会計年度末で1,311億円でした。予測給付債務は、その実績との差異及び仮定の変更により大きく変動する可能性があります。仮定と実績との差異に関しては、米国会計基準に基づき、その他の包括利益累積額として認識された年金数理上の差異のうち、予測給付債務もしくは年金資産の公正価値のいずれか大きい方の10%を超える額が、従業員の予測平均残存勤務期間にわたって償却されます。
当社グループの従業員非拠出型確定給付年金制度及びNTT企業年金基金制度において、その他全ての仮定を一定としたままで、当連結会計年度末の割引率及び年金資産の長期期待収益率を変更した場合の状況を示すと次のとおりです。
(単位:億円)
仮定の変更 | 予測給付債務 | 年金費用 | その他の包括利益 |
従業員非拠出型確定給付年金制度 |
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割引率が0.5%増加/低下 | △96/101 | 6/△6 | 68/△72 |
年金資産の長期期待収益率が0.5%増加/低下 | - | △5/5 | - |
NTT企業年金基金制度 |
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割引率が0.5%増加/低下 | △160/180 | 1/△1 | 100/△130 |
年金資産の長期期待収益率が0.5%増加/低下 | - | △4/4 | - |
年金債務算定上の仮定及び確定拠出年金制度等の導入については、連結財務諸表注記18を合わせてご参照下さい。
当社グループは、契約事務手数料収入等を繰り延べ、契約者の見積平均契約期間にわたって収益を認識する方針を採用しています。関連する直接費用も、契約事務手数料収入等の額を上限として、同期間にわたって繰延償却しています。収益及びサービス原価の計上額は、契約事務手数料等及び関連する直接費用、ならびに計上額算定の分母となる契約者との予想契約期間によって影響を受けます。収益及び費用の繰延を行うための契約者の予想契約期間の見積りに影響を与える要因としては、解約率、新たに導入されたまたは将来導入が予想され得る競合商品、サービス、技術等が挙げられます。現在の償却期間は、過去のトレンドの分析と当社グループの経験に基づき算定されています。当連結会計年度及び前連結会計年度において、それぞれ328億円、215億円の契約事務手数料収入等及び関連する直接費用を計上しました。当連結会計年度末及び前連結会計年度末の繰延契約事務手数料収入等は、1,099億円及び901億円となっています。
②最近公表された会計基準
顧客との契約から生じる収益
2014年5月28日、米国財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board、以下「FASB」)は、会計基準アップデート(Accounting Standards Update、以下「ASU」)2014-09「顧客との契約から生じる収益」を公表しました。当該基準は、企業が、約束した財又はサービスの顧客への移転の対価として権利を得ると見込んでいる金額を認識することを要求しています。当該基準が適用になると、現在の米国会計基準の収益認識に係るガイダンスのほとんどが当該基準の内容に置き換わります。また、2016年3月にASU2016-08「本人か代理人かの検討(収益の総額表示か純額表示)」、2016年4月にASU2016-10「履行義務の識別及びライセンス付与」、2016年5月にASU2016-12「限定的な改善及び実務上の処理」が公表となり、当該基準の一部が修正されています。
2015年8月12日、FASBはASU2015-14「顧客との契約から生じる収益-適用日の延期」を公表し、当該基準の適用を1年延期しました。このため、当該基準は、当社グループにおいて2018年4月1日に開始する連結会計年度から適用されます。なお、2017年4月1日に開始する連結会計年度からの早期適用も認められています。当社グループは、当該基準適用時の移行方法の選択は実施しておらず、当社グループの連結財務諸表及び関連する注記に与える影響について、現在検討しています。
金融資産及び金融負債の認識並びに測定
2016年1月8日、FASBはASU2016-01「金融資産及び金融負債の認識並びに測定」を公表しました。当該基準は、企業が保有する持分投資が損益計算書に与える影響及び公正価値オプションを選択した金融負債の公正価値の変動の認識を、大幅に変更するものです。当該基準は、当社グループにおいて2018年4月1日に開始する連結会計年度から適用されます。当社グループは、当該基準の適用による影響について、現在検討しています。
リース
2016年2月25日、FASBはASU2016-02「リース」を公表しました。当該基準は原則として、すべてのリースの借手に対し、使用権資産とリース負債の計上を要求しています。当該基準は、当社グループにおいて2019年4月1日に開始する連結会計年度から適用されます。当社グループは、当該基準の適用による影響について、現在検討しています。
上記の記述には、上記記載の各要因、市場・業界の状況、及び係る状況下での当社グループの業績に関する経営陣の想定や認識に基づく将来の見通しに関する記述を含んでいます。当社グループの実際の業績は、これらの予測と大きく異なる可能性もあり、また市場・業界の状況の変化、競争、ならびに「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」で記載の他の要因・リスク等の様々な要因・不確実性に影響される可能性があります。さらに、想定外の事象及び状況が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性もあります。このため、上述の予測が正確であるという保証は不可能であり、いたしかねます。