第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

概況

  移動通信市場において、当社グループは、携帯電話の番号ポータビリティの活性化による通信事業者との厳しい競争に加え、通信事業者の枠を超えた、インターネット上で様々なサービスを提供する事業者とも新たな競争を展開しています。

 この新たな競争ステージの中で、当社グループは、中期的な成長戦略である「中期ビジョン2015~スマートライフの実現に向けて~」のもと、モバイル領域の徹底した磨き上げによる競争力の強化と新領域における魅力的なサービスの提供に取り組んでいます。
 当連結会計年度においては、より多くのお客さまにドコモをお選びいただけるよう、「デバイス(端末)」、「ネットワーク」、「サービス」、「料金・チャネル」の4つの総合力の強化に努めました。
 加えて、新領域の拡大を更に推し進め、「健康」や「学習」など、様々な分野での協業や提携を行いました。
 また、これらの取り組みを加速させるため、一層のコスト削減や新領域への経営資源のシフトなど、構造改革による経営体質の強化に努めました。
 
 さらに、2014年4月には、お客さま一人ひとりのライフステージに合わせて、ドコモを長くおトクにお使いいただけるよう、国内の音声通話を定額とし、パケット通信のデータ通信量を家族間等で分け合え、ご利用年数に応じた割引や、25歳以下のお客さまを対象とした新たな割引を行う、新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表しました。
 
 当社グループは、お客様や家族の生活、社会がより「幸せ」になるような取り組みを推し進め、選ばれ、使い続けていただける「スマートライフのパートナー」をめざしてまいります。
 

 当連結会計年度の営業収益は、スマートフォンの積極的な販売や新領域の収益拡大により、端末機器販売及びその他の営業収入がそれぞれ1,139億円、899億円増加したものの、「月々サポート」の影響等によりモバイル通信サービスが2,127億円減少したため、89億円減の4兆4,612億円となりました。

 営業費用は、経営体質強化に向けコスト削減を推進する一方、Xiサービスのネットワーク設備の充実に伴う減価償却費等の増加、新領域の収益拡大に伴う費用の増加等により、91億円増の3兆6,420億円となりました。

 これらの結果、営業利益は連結業績予想8,400億円を下回り、前連結会計年度に比べ180億円減の8,192億円となりました。また、当社に帰属する当期純利益については、持分法による投資損益が395億円悪化し、前連結会計年度に比べ263億円減の4,647億円となりました。

 

 

当連結会計年度における主な経営成績は、次のとおりです。

 

 

区分

当連結会計年度
2013年4月1日から
2014年3月31日まで
(億円)

対前年度増減率(%)

営業収益

44,612

△0.2

営業利益

8,192

△2.1

法人税等及び持分法による
投資損益(△損失)前利益

8,330

△0.0

当社に帰属する当期純利益

4,647

△5.4

EBITDAマージン

35.2%

0.1ポイント

ROCE(税引前)

14.3%

△1.0ポイント

ROCE(税引後)

8.8%

△0.7ポイント

 

    (注) 1 EBITDAマージン:EBITDA÷営業収益

       EBITDA:営業利益+減価償却費+有形固定資産売却・除却損

 

(EBITDAマージンの算出過程)

 

 

 

区分

前連結会計年度
2012年4月1日から
2013年3月31日まで
(億円)

当連結会計年度
2013年4月1日から
2014年3月31日まで
(億円)

 

a.EBITDA

15,693

15,722

 

 減価償却費

△7,002

△7,187

 

 有形固定資産売却・除却損

△319

△343

 

 営業利益

8,372

8,192

 

 営業外損益(△費用)

△38

139

 

 法人税等

△3,231

△3,080

 

 持分法による投資損益(△損失)

△296

△691

 

 控除:非支配持分に帰属する
    当期純損益(△利益)

103

88

 

b.当社に帰属する当期純利益

4,910

4,647

 

c.営業収益

44,701

44,612

 

EBITDAマージン (=a/c)

35.1%

35.2%

 

売上高当期純利益率 (=b/c)

11.0%

10.4%

 

(注) 当社が使用しているEBITDA及びEBITDAマージンは、米国証券取引委員会(SEC)レギュレーション S-K Item 10(e)で用いられているものとは異なっています。従って、他社が用いる同様の指標とは比較できないことがあります。
前連結会計年度については、持分法を遡及して再適用したことを反映した数値です。

 

 

   2 ROCE(税引前):営業利益÷使用総資本

ROCE(税引後):税引後営業利益÷使用総資本

 

(ROCE(税引前)、ROCE(税引後)の算出過程)

 

区分

前連結会計年度

2012年4月1日から

2013年3月31日まで

(億円)

当連結会計年度

2013年4月1日から

2014年3月31日まで

(億円)

 

a.営業利益

8,372

8,192

 

b.税引後営業利益{=a*(1-実効税率)}

5,182

5,071

 

c.使用総資本

54,707

57,480

 

ROCE(税引前) (=a/c)

15.3%

14.3%

 

ROCE(税引後) (=b/c)

9.5%

8.8%

 

(注) 使用総資本=(前連結会計年度末株主資本+当連結会計年度末株主資本) ÷ 2
             +(前連結会計年度末有利子負債+当連結会計年度末有利子負債) ÷ 2
有利子負債=1年以内返済予定長期借入債務+短期借入金+長期借入債務
実効税率 :前連結会計年度、当連結会計年度とも38.1%
前連結会計年度については、持分法を遡及して再適用したことを反映した数値です。

 

 

 

ARPU・MOU

 

 

 

区分

当連結会計年度
2013年4月1日から
2014年3月31日まで
(円)

対前年度増減率
(%)

 総合ARPU

4,500

△7.0

 

音声ARPU

1,370

△20.8

 

パケットARPU

2,640

△1.9

 

スマートARPU

490

16.7

 MOU

106分

△9.4

 

 

(注) 1 ARPU・MOUの定義

a.ARPU(Average monthly Revenue Per Unit):1契約当たり月間平均収入
1契約当たり月間平均収入(ARPU)は、1契約当たりの各サービスにおける平均的な月間営業収益を計るために使われています。ARPUはモバイル通信サービス及びその他の営業収入の一部を、当該期間の稼動契約数で割って算出されています。こうして得られたARPUは1契約当たりの各月の平均的な利用状況及び当社による料金設定変更の影響を分析する上で有用な情報を提供するものであると考えています。なお、ARPUの分子に含まれる収入は米国会計基準により算定しています。

 

    b.MOU(Minutes of Use):1契約当たり月間平均通話時間

 

 2 ARPUの算定式

総合ARPU:音声ARPU+パケットARPU+スマートARPU
      ・音声ARPU:音声ARPU関連収入(基本使用料、通話料)÷稼動契約数
     ・パケットARPU:パケットARPU関連収入(月額定額料、通信料)÷稼動契約数
     ・スマートARPU:その他の営業収入の一部(コンテンツ関連収入、料金回収代行手数料、
                      端末補償サービス収入、広告収入等)÷稼動契約数

 

3 稼動契約数の算出方法

当該期間の各月稼動契約数((前月末契約数+当月末契約数)÷2)の合計

 

4 通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」及び「ドコモビジネストランシーバー」は、ARPU及びMOUの算定上、収入、契約数ともに含めていません。

 

 

セグメントの業績は、次のとおりです。

 

 携帯電話事業

≪デバイス(端末)≫
 お客さまの幅広いニーズにお応えするため、ドコモならではのスマートフォンをお選びいただけるラインナップの充実に努めました。
 ○ iPhone※1の販売を開始

 お客さまのニーズにお応えするため、iPhoneの販売を開始し、「dマーケット」等のドコモならではのサービスをお使いいただけるよう取り組みました。

    ○ Androidスマートフォンの性能向上

 これまでのAndroidスマートフォンを更に磨き上げ、よりスムーズな動作が可能となるCPU※2の搭載や、実使用時間3日以上の実現、様々な操作性の向上など、お客さまが快適にスマートフォンをご利用いただける機能の充実に努めました。

 ○ 幅広い世代に向けたスマートフォン

  大画面のタッチパネルの「らくらくスマートフォン」や、お子さま向けの安心・安全機能が充実した「スマートフォン for ジュニア」など、シニア層からお子さままで幅広い世代の方々に向けたデザインや特長を持つスマートフォンを発売しました。

※1 TM and © 2014 Apple Inc. All rights reserved. iPhoneはApple Inc.の商標です。
iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。

※2 中央演算処理装置。パソコンやスマートフォンなどに搭載され、複雑な数値計算、情報処理、機械制御などを行う。

 

≪ネットワーク≫
 「広さ」、「速さ」、「快適さ」を追求し、ドコモの技術力を活かした、強いLTE※1ネットワークの提供をめざしました。

    ○ Xiサービス(LTEサービス)エリアの拡大

 全国のXiサービス基地局数を当連結会計年度末に55,300局まで拡大(前連結会計年度末比30,900局増)し、これまで以上のエリア展開を実施しました。また、地下鉄・新幹線の駅、商業施設や学校、世界遺産に登録された富士山※2など、お客さまが様々な場面で携帯電話をご利用できるよう、きめ細やかなサービスエリアの拡大に取り組みました。

    ○ Xiサービスの高速化推進

 東名阪地域において、受信時最大速度150Mbps※3のXiサービスの提供を開始しました。また、受信時最大速度112.5Mbps以上のXiサービスの提供を47都道府県の全てに拡大しました。

  ○ 「クアッドバンドLTE※4」の運用

 4つの周波数帯域を効率よく利用することで、高速大容量で快適な通信環境の提供が可能となる「クアッドバンドLTE」の運用を開始しました。

  ○ 「6セクタ基地局※5」の設置

 お客さまのご利用が多い都市部等における通信品質を向上させるため、1つの基地局で実質6局分の通信容量がある「6セクタ基地局」の設置を進めました。

※1 Long Term Evolutionの略。標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)で仕様が作成された移動通信方式。

※2 2013年7月から8月の山開き期間中に合わせて提供。

※3 1秒間にどれだけのデータ量を送受信できるかを表す通信速度の単位。数字が大きいほど通信速度が速い。

※4 800MHz、1.5GHz、1.7GHz、2GHzの4つの周波数帯を利用。「広さ」を提供する2GHz、800MHzと「速さ」を提供する1.5GHzに、大都市部で「速さ」を実現する1.7GHzを追加してエリアを構築する。

※5 1つの基地局がカバーするエリアを6つに細分化する技術を用いた基地局。エリアの特性に応じて、きめ細かい調整が可能。

 

≪サービス≫
 より多くのお客さまにドコモをお選びいただけるよう、「dマーケット」を中心とした魅力的で、より便利なサービスの提供を行いました。

  ○ 「dマーケット」のストア充実

 幅広いお客さまに「dマーケット」のサービスをお楽しみいただけるよう、新たなストアの充実に努めました。当連結会計年度においては、様々な手作り作品等の出品や購入ができる「dクリエイターズ」、ファッション専門の販売サイト「d fashion」、お子さまのいる家族向け知育サービス「dキッズ」、お客さまの旅行を総合的にサポートする「dトラベル」の提供を開始しました。

  ○ 「dマーケット」の利用者拡大

 「dマーケット」の各ストアにおいて、より魅力的なサービスの提供に取り組みました。月額契約でサービスを提供する「dビデオ」、「dヒッツ」、「dアニメストア」、「dキッズ」の契約数は、当連結会計年度末において合計で769万契約となりました。

  ○ 「ドコモメール」の提供

 より使いやすい、スマートフォン向けメールサービスの提供に取り組みました。「spモードメール」の操作性を向上させ、クラウドを利用した「ドコモメール」の提供を開始しました。また、ドコモの携帯電 話のメールアドレスをパソコン等からでもご利用いただける機能も提供しました。

  ○ 「docomo ID」の活用

 お客さま認証IDとして提供している「docomo ID」の機能を拡充し、サービスのマルチデバイス利用やドコモのご契約が無いお客さまでも、インターネットに接続した様々な端末から「dマーケット」等のサービスをご利用いただけるようになりました。

  ○ パッケージサービスの提供

 「おトクとあんしん」をキーワードに、お客さまにご好評のサービスをパッケージ化しました。当連結会計年度末において、「スゴ得コンテンツ」等のスマートフォンを便利にお使いいただけるサービスをまとめた「おすすめパック」は292万契約となり、また「ケータイ補償 お届けサービス」等のスマートフォンを安心してお使いいただけるサービスをまとめた「あんしんパック」は446万契約となりました。

  ○ 「ペットフィット」の提供

 通信機能を搭載したタグを愛犬につけることで、スマートフォン等で健康管理や居場所の確認ができる「ペットフィット」の提供を開始するなど、お客さまの身近な生活の場面でのM2Mサービスの充実に努めました。

※ Machine-to-Machineの略。通信機能を搭載した車両、自動販売機、情報家電等がサーバなどの機器と自動的に通信するシステム

 

≪料金・チャネル≫

 スマートフォンの普及による、お客さまのご要望とご利用形態の変化にお応えする料金・チャネルの展開に取り組みました。

  ○ 各種割引サービスの提供

 10年以上ドコモをご利用のお客さまに向けた「ありがとう10年スマホ割」や新たにスマートフォン等をご購入される学生と、そのご家族に向けた「ドコモの学割」など、各種割引サービスやキャンペーンの提供を実施しました。

  ○ お客さま対応窓口の充実

 ドコモショップでのお手続きをよりスムーズにするため、受付窓口の増設や、お客さまがお待ちの間でもご契約内容の変更等ができるタブレット端末の展開を進めました。また、マイショップ登録店舗へのご来店予約の導入や、オンライン手続きの充実、スマートフォン向けコールセンターの強化などを行いました。

※ 一部実施していない店舗があります。また、当日の混雑状況により、お時間通りのご案内とならない場合があります。

 

新料金プランの発表

 

 2014年4月、当社はお客さまのライフステージに合わせて、ドコモのスマートフォンやドコモ ケータイなどを長くおトクにお使いいただけるよう、新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表しました。

 

<新料金プランの概要>

ずっとドコモ割

・ドコモを長くご利用いただいている方におトクな割引サービス
・ご家族の中で一番ご利用年数の長い方に合わせて、データ通信料を割引

U25応援割

・学生のみならず、25歳以下の方全員を応援する割引サービス
・ご利用料金から毎月500円を割引
・1GBのボーナスパケットをプレゼント

カケホーダイ

・ドコモ同士はもちろん、他社ケータイ、固定電話にも何回でも・何分でも国内

 通話がカケホーダイ

パケあえる

・ご家族でもひとりでも、複数端末でパケットを分け合える
・お使いいただくパケット量に合わせてプランを選んでいただき、ご家族みん

 なで分け合うことでムダなくおトクにお使いいただける

・たくさん使うときも、必要な分だけ追加でパケットを購入できる

 

 

 

≪法人営業の取り組み≫

 スマートフォンとクラウドサービスなどを通じて、法人のお客さまの様々な課題に応え、ビジネスシーンに新たな価値を創造するソリューションを提供しています。当連結会計年度に実施した主な新しい取り組みは、次のとおりです。

  ○ ビジネススマートフォンの提供

 電話やメールなどの基本機能が使いやすく、高度なセキュリティ機能を搭載した法人向けのスマートフォン「F-04F」を発売しました。

  ○ 「ビジネスプラス」の提供

 グループウェアやネットワーク電話帳、出勤管理など、各種法人向けクラウドサービスをパッケージ化した「ビジネスプラス」の提供を開始しました。

※ 会社等の業務の生産性向上を支援するソフトウェア。電子メールやスケジュール共有などの機能を持つ。

 

≪グローバルビジネスの展開≫

 海外でもドコモの携帯電話を安心してご利用できる環境の整備や、新領域サービスのグローバル展開をめざした出資・提携などを進めています。当連結会計年度に実施した主な新しい取り組みは、次のとおりです。

  ○ 「海外1dayパケ」の提供

 国・地域別に設定された定額料で、24時間パケット通信をより安価にご利用いただける海外渡航者向けの新たなパケット定額サービス「海外1dayパケ」の提供を開始しました。

  ○ LTE国際ローミングの提供

 海外でもLTEによる高速パケット通信を利用でき、「海外1dayパケ」等の適用も可能なLTE国際ローミングの提供を開始しました。

  ○ 欧州における新領域ビジネスの強化

 欧州のオンライン物販市場で多様な決済サービスを提供するため、オーストリアの決済事業者であるファイントレード社を子会社化しました。

※ fine trade gmbh

 

 当連結会計年度におけるスマートフォン販売台数は1,378万台となり、当連結会計年度末の携帯電話契約数は、前連結会計年度末と比較し157万契約増の6,311万契約となりました。また当連結会計年度における解約率は前連結会計年度と比較し0.05ポイント増の0.87%となりました。
 モバイル通信サービス収入は、音声収入の減少や「月々サポート」の影響等により、2,127億円減少しました。また、端末機器販売においては、スマートフォンの販売が順調に推移したことにより、1,139億円増加しました。
 以上の結果、当連結会計年度における携帯電話事業営業収益は、前連結会計年度に比べ393億円減の4兆2,359億円、携帯電話事業営業利益は前連結会計年度に比べ329億円減の8,355億円となりました。
 

主なサービスの契約数、携帯電話販売数及び業績の状況は、次のとおりです。

 

主なサービスの契約数

区分

当連結会計年度末

2014年3月31日
(千契約)

対前年度末増減率(%)

携帯電話サービス

63,105

2.6

 

Xiサービス

21,965

89.9

 

FOMAサービス

41,140

△17.7

パケット定額サービス

40,148

3.7

spモード

23,781

30.1

iモード

26,415

△19.2

 

(注) 1

携帯電話サービス契約数及びFOMAサービス契約数には、通信モジュールサービス契約数を含めて記載しています。

     2

2008年3月3日より、「2in1」を利用する際にはその前提として原則FOMA契約を締結することが条件となっており、携帯電話サービス契約数及びFOMAサービス契約数にはその場合の当該FOMA契約も含まれています。

 

 

携帯電話販売数

区分

当連結会計年度

2013年4月1日から
2014年3月31日まで
(千台)

対前年度増減率(%)

携帯電話販売数

22,514

△4.4

 

Xi

新規

5,005

76.2

契約変更

7,154

2.3

機種変更

2,601

298.0

FOMA

新規

3,023

△33.9

契約変更

69

141.9

機種変更

4,662

△44.9

 

(注) 新規:新規の回線契約
契約変更:FOMAからXiへの変更及びXiからFOMAへの変更
機種変更:XiからXiへの変更及びFOMAからFOMAへの変更

 

 

 業績

区分

当連結会計年度
2013年4月1日から
2014年3月31日まで
(億円)

対前年度増減率(%)

携帯電話事業営業収益

42,359

△0.9

携帯電話事業営業利益(△損失)

8,355

△3.8

 

 

 

 その他事業

 当社グループは、その他事業においても、「健康」や「学習」などの新サービスの提供や出資・提携を通じ、新領域の拡大に向けた取り組みを進めています。当連結会計年度に実施した主な新しい取り組みは、次のとおりです。

 

 ○ ドコモ・ヘルスケア株式会社

 新たな健康支援サービスとして、「WM(わたしムーヴ)」の提供を開始しました。また、お客さまの健康データをもとにアドバイスを行う「カラダのキモチ」、「からだの時計 WM」及びリストバンド型のウェアラブル端末「ムーヴバンド」の提供を開始しました。

 ○ 株式会社日本アルトマーク

 医療とお客さまの生活をつなぐ新たなサービスの創出に向けて、国内最大の医療データベース等の経営資源を持つ株式会社日本アルトマークを子会社化しました。

  ○ 株式会社ABC HOLDINGS

 料理・食事を主軸に、お客さまのライフスタイルを豊かで便利にする新たなレッスンスタイルの創出や、料理教室事業拡大の今後の実現に向けて、株式会社ABC HOLDINGSを子会社化しました。

  ○ マガシーク株式会社

 商品代金を月々の携帯電話料金と一緒にお支払いできたり、ドコモポイントがご利用いただけるファッション専門の販売サイト「d fashion」の提供を開始しました。

  ○ MCV社

 グアム及び北マリアナ諸島地域におけるサービスの拡大と品質向上に向け、同地域における最大のケーブルテレビ及びインターネット事業者であるMCV社の全株式を取得し、子会社化しました。

※ MCV Guam Holding Corp.

 

 当連結会計年度におけるその他事業営業収益は、新領域の収益拡大により前連結会計年度に比べ304億円増の2,253億円、その他事業営業費用は前連結会計年度に比べ155億円増の2,416億円となり、その他事業営業損失は163億円となりました。

 

業績の状況は、次のとおりです。

 

業績

区分

当連結会計年度
2013年4月1日から
2014年3月31日まで
(億円)

対前年度増減率(%)

その他事業営業収益

2,253

15.6

その他事業営業利益(△損失)

△163

47.8

 

 

 (2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、1兆6億円の収入となりました。前連結会計年度と比較して682億円(7.3%)キャッシュ・フローが増加していますが、これは、当社グループが立替えた、お客様の携帯端末代金の回収が増加したことに加え、代理店に対する手数料の支払額及び法人税等の支払額が減少したことなどによるものです。

 

「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、7,036億円の支出となりました。前連結会計年度と比較して16億円(0.2%)支出が増加していますが、これは、ネットワーク構築効率化による固定資産取得の減少、当連結会計年度の資金運用に伴う短期投資及び関連当事者への預入れによる支出が減少したものの、短期投資の償還による収入が減少したことなどにより、収入の減少が支出の減少を上回ったことによるものです。

 

 

「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、2,698億円の支出となりました。前連結会計年度と比較して88億円(3.4%)支出が増加していますが、これは、短期借入金の返済による支出や現金配当金の支払額が増加したことなどによるものです。

 

これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は5,269億円となり、前連結会計年度末と比較して332億円(6.7%)増加しました。

 

 (3) CSRの取り組み

当社グループは、「中期ビジョン2015」のもと、高い品質のネットワークやサービスの安定的な提供と、「スマートライフのパートナー」として新たな価値の絶え間ない創造に努めています。
 これらの事業活動を通じて、社会の様々な問題を解決し、国や地域、世代を超えて、人々がより安心・安全かつ快適で豊かに暮らすことができる社会の実現に貢献することが当社グループの社会的責任(CSR)であると考え、CSRを経営の根幹に位置付けています。

 

≪安心・安全な社会の実現≫

  ○ 青少年の安心・安全なサービスの利用

 青少年に安心・安全にスマートフォンをご利用していただくためのサービス「あんしんモード」の機能を拡充し、他社が提供するWi-Fiを利用したインターネットアクセスにもフィルタリングを適用しました。また、青少年などへ携帯電話ご利用時の注意事項やマナーなどをご説明する「ケータイ安全教室」を当連結会計年度に約6,900回開催しました。

  ○ シニア世代が安心してお使いいただけるサービス

 シニア世代向けのあんしんアプリ「つながりほっとサポート」の提供を開始し、スマートフォンを使用すると、ご家族等へ利用状況をメールでお伝えできるようにしました。

  ○ 誰にとっても利用しやすいサービス

 障がいのある方及び難病患者の方にも安心してサービスを使っていただくためハーティ割引の対象者を拡大しました。また、障がいのある方に、携帯電話の操作や便利な使い方をご説明する「ドコモ・ケータイお役立ち講座」を当連結会計年度に70回開催しました。

  ○ スマートフォン利用時のマナー

 「歩きスマホ」の危険性を訴えるロゴマークや動画を作成し、各種広告物やインターネットに掲載しました。また「あんしんモード」の機能を拡充し、「歩きスマホ防止機能」を提供しました。

 

≪地球環境保全の取り組み≫

  ○ 環境にやさしい通信設備づくり

 省電力化した「LTE対応小型基地局装置」や自然エネルギーを利用した「次世代グリーン基地局」を導入し、ネットワークの電力使用量の更なる削減に取り組みました。

  ○ ドコモショップにおける環境配慮

 ドコモショップへのLED照明の導入を進めました。また、紙資源削減のため、カタログのデジタル化にも取り組みました。加えて、ドコモショップでお客様からお預かりしてリサイクルするスマートフォンの個人情報等を、適切かつ安全に消去する破砕装置を開発し、配備を進めました。

  ○ 自然環境保護(生物多様性)活動

 地域に根ざした活動として、全国47都道府県50か所にある「ドコモの森」の整備活動を展開しました。当連結会計年度は50回活動し、約2,600名の社員が地域のボランティア団体等とともに参加しました。

 

 

≪被災地復興のために≫

  ○ お客さまとともに支援する活動

 ドコモの携帯電話から募金ができる「被災地チャリティサイト」を当連結会計年度は5回開設し、約3,500万円を自然災害の被災地復興のために寄付しました。また、宮城県南三陸町の復興支援をめざした森林保全の取り組みの一環として、売上の一部を森林保全活動に還元する間伐材製のドコモダケグッズを「dショッピング」等で販売しました。

  ○ 社員による活動

 社員から希望者を募って東日本大震災の被災地に派遣し、ボランティア活動に取り組みました。当連結会計年度は20回派遣し、約340名の社員が活動しました。

 

(4) 提出会社の移動電気通信役務損益明細状況

平成16年総務省告示第232号(電気通信事業会計規則附則第3項の規定に基づく基礎的電気通信役務損益明細表、指定電気通信役務損益明細表及び移動電気通信役務損益明細表の開示方法)に基づき、第23期における当社の移動電気通信役務損益明細表を以下に記載します。

 

移動電気通信役務損益明細表

2013年4月1日から

2014年3月31日まで

(単位:百万円)

役務の種類

営業収益

営業費用

営業利益








音声伝送役務

携帯電話

1,046,664

750,965

295,699

その他の移動体通信

4,128

10,707

△6,579

小計

1,050,793

761,672

289,120

データ伝送役務

2,004,634

1,585,546

419,088

小計

3,055,427

2,347,219

708,208

移動電気通信役務以外の電気通信役務

519

494

25

合計

3,055,947

2,347,713

708,234

 

(注) 1 移動電気通信役務損益明細表は、電気通信事業会計規則第5条及び同附則第2項、第3項により作成して
います。

2 移動電気通信役務損益明細表は、提出会社における単独情報のため、「第2 事業の状況 1 業績等の
概要」に記載のセグメントの業績とは一致していません。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

当社グループは電気通信事業等の事業を行っており、生産、受注といった区分による表示が困難であるため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」に記載のセグメントの業績に関連付けて示しています。

 

 

3 【対処すべき課題】

当社グループは、「スマートライフのパートナーへ」をテーマに掲げ、「モバイル領域の競争力強化」及び「新領域での取り組み加速」を進めています。
 当連結会計年度においては、新領域の拡大に向けて、便利で多様なコンテンツを提供する「dマーケット」の拡充や、「健康」、「学習」など様々な分野での協業や提携を行いました。また、これらの取り組みを加速させるため、一層のコスト削減や新領域への経営資源のシフトなど、構造改革による経営体質の強化に努めました。
 2014年度においては、今までの取り組みを更に加速し、特に「デバイス(端末)」、「ネットワーク」、「サービス」、「料金・チャネル」の4つの総合力の強化に努めます。
 

デバイス(端末)では、スマートフォン利用者数の更なる拡大と「ケータイ+タブレット」等の2台目利用の促進に取り組み、パケット収入の更なる拡大をめざします。

 

ネットワークでは、「クアッドバンド」最強エリアの構築に向けてLTEにリソースを集中し、LTE基地局4万局の増加を進めてまいります。今夏からはVoLTE※1をスタートさせ、高品質な音声通話をご提供します。さらに、LTE-Advanced※2の実証実験を年度内に開始し、早期の商用サービス開始をめざします。

 

サービスでは、「dマーケット」のストアを拡大し、マーケットの魅力を高め、取扱高を益々拡大するとともに、dマーケットストア契約数の早期1,000万達成をめざします。また、国内市場で培った強みや、これまで築いてきた海外キャリアとの関係を基礎に、サービスにおける国内での取り組みを海外市場へと拡大し、海外でも収益機会の拡大を狙います。そして、新領域収入として、2015年度1兆円をめざし取り組んでまいります。

 

料金・チャネルでは、国内の音声通話を定額とし、パケット通信のデータ通信量を家族間等で分け合え、ご利用年数に応じた割引や、25歳以下のお客さまを対象とした新たな割引を行う新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を2014年6月に開始しました。ドコモの強みであるショップ・コールセンター等のチャネルに磨きをかけるとともに、全社を挙げて、この新料金プランの普及に取り組みます。

 

こうした取り組みにより、2014年度はスマートフォンユーザー基盤の拡大、パケットの利用促進、解約率の改善を図り、モバイル事業の新たな成長軌道をめざすとともに、際立つサービスでリードし、新領域収入・利益の拡大に努めます。

 

さらに、月々サポート、販売費用、ネットワーク費用等を適切にコントロールし、費用の効率化に取り組み、成長軌道の確立を図ります。

 

また、当社グループは、構造改革による経営基盤の強化に取り組んでいます。業務運営の効率化及び意思決定の迅速化を進め、2014年7月にはグループを再編し、スペシャリスト集団、地域密着体制によってお客さまサービスをより一層向上するとともに、支社スリム化による強化領域(新領域・法人)へのリソースシフトを行います。

 

株主還元については、経営の重要課題の一つと位置付け、連結業績及び連結配当性向にも配意し、引き続き安定的な配当に努めていきます。

  

※1 Voice over LTEの略。LTE技術を活用した音声IPサービス。

※2 LTEと技術的な互換性を保ちつつ、更に高度化された移動通信方式で、3GPPで標準化が進められている。

 

(注) 本項における将来に関する記述等については、「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」等をあわせてご参照ください。

 

4 【事業等のリスク】

本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、本有価証券報告書に記載されている、将来に関する記述を含む歴史的事実以外のすべての記述は、当社グループが現在入手している情報に基づく、本有価証券報告書提出日現在における予測、期待、想定、計画、認識、評価等を基礎として記載されているに過ぎません。また、予想数値を算定するためには、過去に確定し正確に認識された事実以外に、予想を行うために不可欠となる一定の前提(仮定)を用いています。これらの記述ないし事実または前提(仮定)は、客観的には不正確であったり将来実現しない可能性があります。その原因となる潜在的リスクや不確定要因としては以下の事項があり、これらはいずれも当社グループの事業、業績または財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、潜在的リスクや不確定要因はこれらに限られるものではありませんのでご留意ください。

 

(1) 携帯電話の番号ポータビリティ、訴求力のある端末の展開、新規事業者の参入、他の事業者間の統合など、通信業界における他の事業者等及び他の技術等との競争の激化や競争レイヤーの広がりをはじめとする市場環境の変化に関連して、当社グループが獲得・維持できる契約数が抑制されたり、当社グループの想定以上にARPUの水準が逓減し続けたり、コストが増大したり、想定していたコスト削減ができない可能性があること

 

 当社グループは携帯電話の番号ポータビリティ、訴求力のある端末の展開、新規事業者の参入、他の事業者間の統合など、通信業界における他の事業者との競争の激化にさらされております。例えば、他の移動通信事業者も高速移動通信サービス対応端末や音楽・映像再生機能搭載をはじめとするお客様のニーズや嗜好を追及した端末、音楽・映像配信サービス、音声・メール等の定額利用サービスなどの新商品、新サービスの投入、あるいは携帯電話端末等の割賦販売方式の導入を行っています。また、固定通信との融合サービスとして、ポイントプログラムの合算、携帯電話‐固定電話間の通話無料サービス、携帯電話・固定電話のセット割引などの提供を行う事業者もあり、今後、お客様にとってより利便性の高いサービスを提供された場合に、当社グループが規制の対象であることなどの要因により、適時・適切に対応できるとは限りません。さらに、他の事業者が、お客様にとってより訴求力のある端末を提供することに対し、当社グループの提供する端末ラインナップが適時・適切にこれに対抗し得ない可能性もあります。移動通信ネットワークについても、他の事業者が当社を上回るエリア・品質を伴ったネットワークを構築する一方で、当社が想定する期間でエリア・品質を伴ったネットワークの構築ができない場合、当社が提供するネットワークに対するお客様満足度が低下する可能性があります。

 一方、他の新たなサービスや技術、特に低価格・定額制のサービスとして、固定または移動のIP電話(当社グループのスマートフォンやタブレット端末において動作するアプリケーションを利用するサービスを含みます。)や、ブロードバンド高速インターネットサービスやデジタル放送、Wi-Fi等を利用した公衆無線LAN、その他OTT※1事業者等による無料もしくは低価格のサービス等、またはこれらの融合サービスなどが提供されており、これらにより更に競争が激化しています。
 通信業界における他の事業者や他の技術などとの競争以外にも、日本の移動通信市場の飽和、MVNO※2や異業種からの参入を含めた競争レイヤーの広がりによるビジネス・市場構造の変化、規制環境の変化、料金競争の激化といったものが競争激化の要因として挙げられます。スマートフォンやタブレット端末等のオープン・プラットフォーム端末の普及拡大に伴い、多くの事業者等が携帯電話端末上でのサービス競争に参入してきており、今後、これらの事業者等がお客様にとってより利便性の高いサービスを提供したり、更に料金競争が激化する可能性があります。

 こうした市場環境のなか、今後当社グループの新規獲得契約数の減少が加速したり、当社グループの期待する数に達しないかもしれず、また、既存契約数についても、更なる競争激化のなか、他の事業者への転出等によって既存契約数を維持し続けることができない可能性があり、さらには、新規獲得契約数及び既存契約数を維持するため、見込み以上のARPUの低下が発生したり、想定以上のコストをかけなくてはならないかもしれません。当社グループは厳しい市場環境のなか、高度で多様なサービスの提供及び当社グループの契約者の利便性向上を目的として、Xiサービスのドコモご契約者への国内音声通話定額サービス、パケット定額サービス及び、機種ごとに設定した一定額を毎月の利用料金から割り引くサービスの導入など、各種の料金・割引サービス等の改定を行ってまいりました。さらには、国内の音声通話を定額とし、パケット通信のデータ通信量を家族間・同一法人間等で分け合える新たな料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」と長期ご利用者向けの割引サービス「ずっとドコモ割」や25歳以下のお客さまが割引対象となる「U25応援割」を2014年6月1日に導入しました。しかしながら、これらによって当社グループの契約数を獲得・維持できるかどうかは定かではありません。また、各種料金・割引サービスの契約率や定額制サービスへ移行する契約数の動向が、当社グループが想定したとおりにならなかったり、当社グループの想定していないARPUの低下が起こるなどの可能性があります。

 また、市場の成長が鈍化した場合又は市場が縮小した場合、当社グループの見込み以上にARPUが低下し、または当社グループが期待する水準での新規契約数の獲得及び既存契約数の維持ができない可能性があります。
 さらに、経営体質の強化に向け、ネットワーク、販売・サービス、研究開発、端末に関わる効率化を推進しているところですが、他の事業者等との競争が激化したり、市場環境が変化することなどにより、効率化が期待どおりに進まず、想定していたコスト削減ができない可能性があります。

これらの結果、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

※1  Over The Topの略。自社でサービスの配信に必要な通信インフラを持たずに、他社の通信インフラを利用してコンテンツ配信を行うサービス。

※2  Mobile Virtual Network Operatorの略。無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供している事業者。

 

(2) 当社グループが提供している、あるいは新たに導入・提案するサービス・利用形態・販売方式が十分に展開できない場合や想定以上に費用が発生してしまう場合、当社グループの財務に影響を与えたり、成長が制約される可能性があること

 

 当社グループは、iモードやspモード、「dメニュー」、「dマーケット」などのスマートフォンのサービス、Xiの普及拡大、及びこれらによるパケット通信その他データ通信の拡大、「しゃべってコンシェル」等のクラウドサービスの拡大、さらに「スマートライフの実現」をめざした、メディア・コンテンツ、金融・決済、コマース、メディカル・ヘルスケア、M2M、環境・エコロジー、学習等、様々なサービスや産業との融合による新たな事業領域への取り組み等による収益の増加が今後の成長要因と考えておりますが、そうしたサービスの発展を妨げるような数々の不確定性が生じる可能性があり、その場合そうした成長が制約される可能性があります。

 また、市場の成長が鈍化した場合又は市場が縮小した場合、当社グループが提供するサービス・利用形態・販売方式が十分に展開できず、当社グループの財務に影響を与えたり、成長が制約される可能性があります。

 

特に、以下の事柄が達成できるか否かについては定かではありません。

 

・サービス・利用形態の提供に必要なパートナー、スマートフォンのサービス等の利用促進に必要なオペレーティングシステムやアプリケーション等のソフトウェアの提供者、端末メーカー、コンテンツプロバイダ、おサイフケータイサービス対応の読み取り機の設置店舗等との連携・協力などが当社グループの期待どおりに展開できること

・当社グループが計画している新たなサービスや利用形態を予定どおりに提供することができ、かつ、そのようなサービスの普及拡大に必要なコストを予定内に収めること

・当社グループが提供する、または提供しようとしているサービス・利用形態・割賦販売等の販売方式が、現在の契約者や今後の潜在的契約者にとって魅力的であり、また十分な需要があること

・メーカーとコンテンツプロバイダが、当社グループのFOMA端末・Xi端末や当社グループが提供するサービスに対応した端末、スマートフォンのサービス等の利用促進に必要なオペレーティングシステムやアプリケーション等のソフトウェア、コンテンツなどを適時に適切な価格で安定的に生産・提供できること

・携帯電話端末に対する市場の需要が想定どおりとなり、その結果端末調達価格を低減し、適切な価格で販売できること、及び過剰在庫が発生しないこと

 

・現在または将来の当社グループのiモード、spモード等のISPサービス、音声通話やパケット通信を利用するための各種料金プランや割引サービス、「しゃべってコンシェル」等のインテリジェントサービス、「フォトコレクション」等のストレージサービス、「dゲーム」、「dビデオ」、「dショッピング」等の「dマーケット」上のサービスまたは「DCMX」等の金融・決済サービス、「NOTTV」等のメディア・コンテンツサービス、株式会社オークローンマーケティングや、らでぃっしゅぼーや株式会社などが展開するコマース事業などの様々なサービス、ドコモ・ヘルスケア株式会社や株式会社日本アルトマークが展開するメディカル・ヘルスケアサービス等のような他産業との融合による新たな価値創造への取り組みが、既存契約者や潜在的契約者を惹きつけることができ、継続的な、または新たな成長を達成できること

・当社の戦略やサービスの基盤となる、スマートフォン利用者数の拡大や「docomo ID」による顧客基盤の拡大等が当社の計画通り進展すること

・オープン・プラットフォームの普及という事業環境のもと、当社グループのこれらサービスと競合する類似サービスを提供する他の事業者が、より競争力・訴求力のあるサービスを提供し、当社グループのサービスを凌駕することのないこと

・LTE/LTE-Advanced等の技術により、データ通信速度を向上させたサービスを予定どおりに拡大できること

 

 こうした当社グループの新たなサービス・利用形態の展開が制約された場合やその展開に想定以上の費用が発生してしまう場合、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(3) 種々の国内外の法令・規制・制度等の導入や変更または当社グループへの適用等により、当社グループの事業運営に制約が課されるなど悪影響が発生し得ること

 

 日本の電気通信業界では、料金規制などを含め多くの分野で規制改革が進んでおりますが、当社グループの展開する移動通信事業は、無線周波数の割当てを政府機関より受けており、特に規制環境に影響を受けやすい事業であります。また、当社グループは、他の事業者等には課せられない特別な規制の対象となることがあります。様々な政府機関が移動通信事業に影響を与え得る改革案を提案または検討してきており、当社グループの事業に不利な影響を与え得るような法令・規制・制度の導入や変更を含む改革が、引き続き実施される可能性があります。そのなかには次のようなものが含まれています。

 

・SIM※1ロック解除規制など、端末レイヤーにおける競争促進のための規制

・周波数再割当て、オークション制度の導入などの周波数割当て制度の見直し

・認証や課金といった通信プラットフォームの一部の機能を他社に開放することを求めるような措置

・プラットフォーム事業者やISP事業者、コンテンツプロバイダ等に対して、iモードやspモード等、当社サービスに係る機能の開放を求めるような規制

・特定のコンテンツや取引、またはiモードやspモード等のようなモバイルインターネットサービスを禁止または制限するような規制

・「タイプXiにねん」等の解約金を含む継続利用期間の契約を前提とする当社グループの割引サービスの提供を禁止または制限するような規制

・携帯電話のユニバーサルサービスへの指定、現行のユニバーサルサービス基金制度の変更など新たなコストが発生する措置

・MVNOの新規参入の促進のための公正競争環境整備策

・指定電気通信設備制度(ドミナント規制)の見直しによる新たな競争促進のための規制

・当社グループを含む日本電信電話株式会社(NTT)グループの在り方に関する見直し

・その他、当社及びNTT東日本・西日本を対象としたブロードバンド普及促進のための公正競争レビュー制度、事業者間接続ルールの見直し等、通信市場における当社グループの事業運営に制約を課す競争促進措置

 

 上記に挙げた移動通信事業に影響を与え得る改革案に加え、当社グループは、国内外の様々な法令・規制・制度の影響を受ける可能性があります。例えば、当社グループは契約数や契約者のトラフィック量※2の増加に対応し、サービス品質の確保・向上を図るため通信設備の拡充を進めており、その結果、電力使用量が増加傾向にあります。当社グループは、省電力装置や高効率電源装置の導入など温室効果ガス排出量の削減に向けた施策を実施していますが、温室効果ガス排出量削減のための規制等の導入によりコスト負担が増加し、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。また、燃料価格の高騰等を受けた電気料金の値上げにより、当社グループがサービス提供に必要な設備等の維持運用に係る費用が増加することで、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 また、2010年7月に米国で「金融規制改革法」が成立しました。これを受けて米国証券取引委員会は、取り扱っている製品に対象の鉱物を使用する米国上場企業に対して、それらがコンゴ民主共和国及び隣接国産であるかどうかの開示を義務付ける規則を2012年8月に制定しました。この規則の導入に伴い、規則遵守のための調査費用の負担、対象の鉱物を使用する部材等の価格上昇等により、コスト負担が増加するなど、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
 さらに、当社グループは、新たな収益源の確保に向けて、メディア・コンテンツ、金融・決済、コマース、メディカル・ヘルスケア、M2M、環境・エコロジー、学習等の分野におけるモバイルと様々なサービスや産業との融合による新たな価値創造への取り組みを展開するなど、出資・提携を通じて様々な事業やビジネス領域へ進出していることから、移動通信事業に関わる法令・規制・制度に加え、新たなサービス・事業・ビジネス領域における特有の法令・規制・制度の影響を受けます。これらの法令・規制・制度が適用されることにより、当社グループの事業運営に制約が課され、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響が発生する可能性があります。

 移動通信事業に影響を与え得る改革案が実施されるか、またはその他の法令・規制・制度が立案されるかどうか、そして実施された場合に当社グループの事業にどの程度影響を与えるのかを正確に予測することは困難であります。しかし、移動通信事業に影響を与え得る改革案のいずれか、またはその他の法令・規制・制度が導入、変更または当社グループへ適用された場合、当社グループの移動通信サービスの提供が制約され、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

※1 Subscriber Identity Moduleの略。携帯電話機に差し込んで利用者の識別に使う契約者情報を記録したICカード。

※2 データ通信によって発生する通信の総量。

 

(4) 当社グループが使用可能な周波数及び設備に対する制約に関連して、サービスの質の維持・増進や、顧客満足の継続的獲得・維持に悪影響が発生したり、コストが増加する可能性があること

 

 移動通信ネットワークの容量の主要な制約のひとつに、使用できる無線周波数の問題があります。当社グループがサービスを提供するために使用できる周波数や設備には限りがあります。その結果、東京、大阪といった都心部の主要駅周辺などでは、当社グループの移動通信ネットワークは、ピーク時に使用可能な周波数の限界、もしくはそれに近い状態で運用されることがあるため、サービス品質の低下が発生する可能性があります。

 その他、当社グループの契約数や契約者当たりのトラフィック量が増加していくなか、事業の円滑な運営のために必要な周波数が政府機関より割り当てられなかった場合にも、サービス品質が低下する可能性があります。

 当社グループでは割り当てられた700MHz帯域を使用する特定基地局を開設する計画をしておりますが、該当の周波数帯域を使用している既存のFPU及び特定ラジオマイクの移行を促進するための措置(終了促進措置)が想定どおりに進まないことで、円滑な移動通信ネットワークの運用ができず、サービス品質が低下したり、追加の費用が発生する可能性があります。
 当社グループはLTE/LTE-Advanced等の技術やLTE移行促進等による周波数利用効率の向上及び新たな周波数の獲得に努めておりますが、これらの努力によってサービス品質の低下を回避できるとは限りません。

 また、基地局設備や交換機設備、その他サービス提供に必要な設備等の処理能力にも限りがあるため、トラフィックのピーク時や契約数が急激に増加した場合、または当社グループのネットワークを介して提供される映像、音楽といったコンテンツの容量が急激に増加した場合、サービス品質の低下が発生するかもしれません。またFOMA及びXiサービスに関しては、スマートフォンやタブレット端末、PC向けデータ通信端末の普及拡大に伴い、サービスに加入する契約数の伸びや加入した契約者当たりのトラフィック量が当社グループの想定を大きく上回る可能性があります。さらにスマートフォンやタブレット端末上で動作するアプリケーション等のソフトウェアの中には、通信の確立、切断等をするために、端末とネットワーク間でやりとりされる信号である制御信号の増加等、当社グループの想定を大きく上回る設備への負荷を生じさせる可能性を有するものがあります。これらにより、既存の設備ではそうしたトラフィックを処理できないことで、サービス品質が低下したり、通信障害が発生する可能性があり、これに対応するための設備投資コストが増加する場合があります。

 当社グループは、今後のスマートフォンのトラフィック増加に対応するためのネットワーク基盤の強化に取り組んでおります。しかしながら、今後の契約数の伸びや契約者当たりのトラフィック量や制御信号の増加等が当社グループの想定を大きく上回って通信障害等不測の事態が発生し、これらの問題に適時かつ十分に対処できないようであれば、当社グループの移動通信サービスの提供が制約を受けるあるいは顧客の信頼を失うことで、契約者が競合他社に移行してしまうかもしれず、他方これに対処するためには設備投資コスト等が増加することで、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

※ Field Pickup Unitの略。スポーツ中継、報道などのテレビ放送のために使用される無線中継システム。

 

(5) 当社グループが採用する移動通信システムに関する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域を他の移動通信事業者が採用し続ける保証がなく、当社グループの国際サービスを十分に提供できない可能性があること

 

 十分な数の他の移動通信事業者が、当社グループが採用する移動通信システムに関する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域を採用することにより、当社グループは国際ローミングサービス等のサービスを世界規模で提供することが可能となっています。当社グループは、今後も引き続き海外の出資先や戦略的提携先その他の多くの移動通信事業者が互換性のある技術や周波数帯域を採用し維持することを期待しておりますが、将来にわたって期待が実現するという保証はありません。

 もし、今後十分な数の他の移動通信事業者において、当社グループが採用する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域が採用されなかったり、他の技術や周波数帯域に切り替えられた場合や互換性のある技術や周波数帯域の導入及び普及拡大が遅れた場合、当社グループは国際ローミングサービス等のサービスを期待どおりに提供できないかもしれず、当社グループの契約者の海外での利用といった利便性が損なわれる可能性があります。
 また、標準化団体等の活動等により当社グループが採用する標準技術に変更が発生し、当社グループが使用する端末やネットワークについて変更が必要になった場合、端末やネットワーク機器メーカーが適切かつ速やかに端末及びネットワーク機器の調整を行えるという保証はありません。

 こうした当社グループが採用する技術や周波数帯域と互換性のある技術や周波数帯域の展開が期待どおりとならず、当社グループの国際サービス提供能力を維持または向上させることができない場合、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(6) 当社グループの国内外の投資、提携及び協力関係や、新たな事業領域への出資等が適正な収益や機会をもたらす保証がないこと

 

 当社グループの戦略の主要な構成要素のひとつは、国内外の投資、提携及び協力関係を通じて、当社グループの企業価値を高めることであります。当社グループは、この目的を達成するにふさわしいと考える、海外における他の会社や組織と精力的に提携・協力関係を築いてまいりました。また、国内の企業に対しても投資、提携及び協力関係を結び、新たな事業領域に対して出資を行うなどの戦略を推進しております。

 しかしながら、当社グループがこれまで投資してきた、または今後投資する事業者や設立する合弁会社等が価値や経営成績を維持し、または高めることができるという保証はありません。また、当社グループがこれらの投資、提携または協力関係から期待されるほどの見返りと利益を得ることができるという保証もありません。メディア・コンテンツ、金融・決済、コマース、メディカル・ヘルスケア、M2M、環境・エコロジー、学習等の移動通信事業以外の新たな事業領域への出資にあたっては、当社グループの経験が少ないことから、想定し得ない不確定要因が存在する可能性もあり、想定しているシナジーが十分に発揮されず、当社の戦略に影響を与える可能性もあります。さらに、投資、提携または協力関係を解消・処分することにより、損失が生じる可能性があります。

 

 近年、当社グループの投資先は、競争の激化、負債の増加、株価の大幅な変動または財務上の問題によって様々な負の影響を受けています。当社グループの投資が持分法で計上され、投資先の会社が純損失を計上する限りにおいて、当社グループの経営成績は、これらの損失額に対する持分比率分の悪影響を受けます。投資先企業における投資価値に下落が生じ、それが一時的なものでない場合、当社グループは簿価の修正と、そのような投資に対する減損の認識を要求される可能性があります。当社グループの投資先企業の関与する事業結合等の取引によっても、投資先の投資価値の減損による損失を認識することが要求される可能性があります。いずれの場合においても、当社グループの財政状態または経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 当社グループや他の事業者等の商品やサービスの不具合、欠陥、不完全性等に起因して問題が発生し得ること

 

 当社グループの提供する携帯電話端末には、様々な機能が搭載されております。また、当社グループの提供する携帯電話端末を通じ、当社グループはもとより当社グループのパートナーやその他の当社グループ外の多数の事業者等がサービスを提供しております。当社グループや当社グループ外の事業者が提供する端末やアプリケーション等のソフトウェアやシステムに技術的な問題が発生した場合、またはその他の不具合、欠陥、紛失等が発生した場合等、当社グループや他の事業者等の商品やサービスの不完全性等に起因して問題が発生した場合には、当社グループの信頼性・企業イメージが低下し、解約数の増加や契約者への補償のためのコストが増大するおそれがあり、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、新たな収益源の確保に向けて、メディア・コンテンツ、金融・決済、コマース、メディカル・ヘルスケア、M2M、環境・エコロジー、学習等の分野におけるモバイルと様々なサービスや産業との融合による新たな事業領域への取り組みを展開しており、これらの商品やサービスの不完全性等に起因して問題が発生した場合も、当社グループの信頼性・企業イメージが低下するなどし、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループの信頼性・企業イメージの低下または解約数の増加やコストの増大につながる可能性のある事態としては、例えば以下のようなものが考えられます。

 

・端末に搭載されている様々な機能の故障・欠陥・不具合の発生

・サービス提供に必要なソフトウェアやシステムの故障・欠陥・不具合の発生

・他の事業者等のサービスの不完全性等に起因する端末やサービスの故障・欠陥・不具合の発生

・端末、ソフトウェアやシステムの故障・欠陥・不具合や他の事業者等のサービスの不完全性等に起因した情報、電子マネー、ポイント、コンテンツ等の漏洩や消失

・端末の紛失・盗難等による情報、電子マネー、クレジット機能、ポイント等の第三者による不正な利用

・端末内部やサーバー等に蓄積された利用履歴、残高等のお客様情報・データの第三者による不適切な読み取りや悪用

・当社グループの提携、協力している企業における、電子マネー、クレジット機能、ポイント、その他データの不十分または不適切な管理

・通信販売等のコマース事業で提供されている、当社グループの商品やサービス、または当社が運営する「dメニュー」や「dマーケット」等のプラットフォーム上で提供されている商品やサービスの欠陥・瑕疵等に伴うお客様への事故・不利益の発生

・新たな事業領域として提供されているメディカル・ヘルスケア、M2M、環境・エコロジー、学習等の分野における商品やサービスの不完全性に伴うお客様への事故・不利益の発生

 

(8) 当社グループの提供する商品・サービスの不適切な使用等により、当社グループの信頼性・企業イメージに悪影響を与える社会的問題が発生し得ること

 

 当社グループの提供している商品やサービスがユーザに不適切に使用されること等により、当社グループの商品・サービスに対する信頼性が低下し、企業イメージが低下することで、解約数が増加したり、新規契約者が期待どおり獲得できない可能性があります。

 例えば、当社グループが提供する「ドコモメール」、spモードメール、iモードメール、SMS等のメールを使った迷惑メールがあります。当社グループは、迷惑メールフィルタリング機能の提供、各種ツールによる契約者への注意喚起の実施や迷惑メールを大量に送信している業者に対し利用停止措置を行うなど、様々な対策を講じてきておりますが、未だ根絶するには至っておりません。当社グループの契約者が迷惑メールを大量に受信してしまうことにより顧客満足度の低下や企業イメージの低下が起こり、spモードまたはiモード契約数の減少となることもあり得ます。

 また、振り込め詐欺等犯罪に使用される携帯電話はレンタル携帯電話が多く、貸し出す際に本人確認をしないなど不正利用防止法に違反した悪質なレンタル事業者に対しては、法に基づき役務提供の拒否をするなど、種々の対策を講じてまいりました。しかし今後、犯罪への利用が多発した場合、携帯電話そのものが社会的に問題視され、当社グループ契約者の解約数の増加を引き起こすといった事態が生じる可能性もあります。そのほか、端末やサービスの高機能化に伴い、パケット通信を行う頻度及びデータ量が増加していることを契約者が十分に認識せずに携帯電話を使用し、その結果、契約者の認識以上に高額のパケット通信料が請求されるといった問題が生じました。また、有料コンテンツの過度な利用による高額課金といった問題や、自動車や自転車の運転中の携帯電話の使用による事故の発生といった問題に加え、いわゆる「歩きスマホ」という歩行中の携帯電話使用によるトラブルの発生が増加しているという問題もあります。さらには、小中学生が携帯電話を所持することについての是非や、「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」の施行に伴い、未成年者に対して、原則適用している有害サイトアクセス制限サービス(フィルタリングサービス)の機能の十分さや精度、青少年による携帯電話からのインターネット利用が進む一方、青少年のCGMサービス利用に伴う被害の増加等に関して様々な議論があります。こうした問題も、同様に企業イメージの低下を招くおそれがあります。

 このような携帯電話をめぐる社会的な問題については、フィルタリングサービスの提供や利用者年齢認証による利用サイトの制限等の各種サービスや青少年向け携帯電話を提供することなどにより、当社グループは適切に対応していると考えておりますが、将来においても適切な対応を続けることができるかどうかは定かではなく、適切な対応ができなかった場合には、既存契約者の解約数が増加したり、新規契約者が期待どおり獲得できないという結果になる可能性があり、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

※ Consumer Generated Mediaの略。ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)などに代表される、インターネットなどを活用して消費者が内容を生成していくメディアのこと。
 

  

(9) 当社グループまたは業務委託先等における個人情報を含む業務上の機密情報の不適切な取り扱い等により、当社グループの信頼性・企業イメージの低下等が発生し得ること

 

 当社グループは、電気通信事業並びにクレジット事業・通信販売事業等のその他事業において多数のお客様情報を含む機密情報を保持しており、「個人情報の保護に関する法律」に則した個人情報保護の適切な対応を行う観点から、個人情報を含む業務上の機密情報の管理徹底、業務従事者に対する教育、業務委託先会社の管理監督の徹底、技術的セキュリティ強化等の全社的な総合セキュリティ管理を実施しております。

 しかし、これらのセキュリティ対策にもかかわらず漏洩事故や不適切な取り扱いが発生した場合、当社グループの信頼性・企業イメージを著しく損なうおそれがあり、解約数の増加や当事者への補償によるコストの増大、新規契約数の鈍化など、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 当社グループ等が事業遂行上必要とする知的財産権等の権利につき当該権利の保有者よりライセンス等を受けられず、その結果、特定の技術、商品またはサービスの提供ができなくなったり、当社グループが他者の知的財産権等の権利の侵害を理由に損害賠償責任等を負う可能性があること、また、当社グループが保有する知的財産権等の権利が不正に使用され、本来得られるライセンス収入が減少したり、競争上の優位性をもたらすことができない可能性があること

 

 当社グループや事業上のパートナーがその事業を遂行するためには、事業遂行上必要となる知的財産権等の権利について、当該権利の保有者よりライセンス等を受ける必要があります。現在、当社グループ等は、当該権利の保有者との間でライセンス契約等を締結することにより、当該権利の保有者よりライセンス等を受けており、また、今後の事業遂行上必要となる知的財産権等の権利を他者が保有していた場合、当該権利の保有者よりライセンス等を受ける予定ですが、当該権利の保有者との間でライセンス等の付与について合意できなかったり、または、一旦ライセンス等の付与に合意したものの、その後当該合意を維持できなかった場合には、当社グループや事業上のパートナーの特定の技術、商品又はサービスの提供ができなくなる可能性があります。また、他者より、当社グループがその知的財産権等の権利を侵害したとの主張を受けた場合には、その解決に多くの時間と費用を要する可能性があり、仮に当該他者の主張が認められた場合には、当該権利に関連する事業の収益減や当該権利の侵害を理由に損害賠償責任等を負う可能性があり、それにより当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。
 さらに、当社グループが保有する知的財産権等の権利について、第三者が不正に使用することなどにより、本来得られるライセンス収入が減少したり、競争上の優位性をもたらすことができない可能性があります。
 

 

(11) 自然災害、電力不足等の社会インフラの麻痺、有害物質の拡散、テロ等の災害・事象・事件、及び機器の不具合等やソフトウェアのバグ、ウイルス、ハッキング、不正なアクセス、サイバーアタック、機器の設定誤り等の人為的な要因により、当社グループのサービス提供に必要なネットワークや販売網等の事業への障害が発生し、当社グループの信頼性・企業イメージが低下したり、収入が減少したり、コストが増大する可能性があること

 

 当社グループは基地局、アンテナ、交換機や伝送路などを含む全国的なネットワークを構築し、移動通信サービスを提供しております。当社グループのサービス提供に必要なシステムについては、安全かつ安定して運用できるよう二重化するなどの様々な対策を講じております。しかし、これらの対策にもかかわらず様々な事由によりシステム障害が発生する可能性があり、その要因となり得るものとしては、システムのハードウェアやソフトウェアの不具合によるもの、地震・津波・台風・洪水等の自然災害、電力不足等の社会インフラの麻痺、テロといった事象・事件によるもの、有害物質の拡散や感染症の流行等に伴い、ネットワーク設備の運用・保守が十分に実施できないことによるものなどがあります。こうした要因によりシステムの障害が発生した場合、修復にとりわけ長い時間を要し、結果として収益の減少や多額の費用の支出につながる可能性があり、それにより当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 また、固定のインターネットでは、ウイルスに感染することにより時として全世界で数千万台のコンピュータに影響が出る事例が発生し、携帯電話においても、スマートフォンの拡大に伴い、携帯電話端末を標的としたウイルスが増加しております。当社グループのネットワーク、端末、その他の設備においても、そのような事態が引き起こされる可能性がないとは言い切れず、ハッキングや不正なアクセス等により、ウイルス等が当社グループのネットワークや端末、その他設備に侵入した場合、または、サイバーアタックを受けた場合には、システム等に障害が発生し、提供するサービスが利用できなくなったり、品質が低下したり、機密情報の漏洩事故の発生などの事態が考えられ、その結果、当社グループのネットワーク、端末、その他の設備に対する信頼性や、顧客満足度が著しく低下するおそれがあります。当社グループは不正アクセス防止機能、携帯電話の遠隔ダウンロードやスマートフォン向けウイルス対策サービス「あんしんネットセキュリティ」の提供などセキュリティを強化し、不慮の事態に備え得る機能を提供しておりますが、そうした機能があらゆる場合に万全であるとは限りません。さらに、悪意を持ったものでなくともソフトウェアのバグ、機器の設定誤り等の人為的なミスにより、システム障害やサービス品質の低下、機密情報の漏洩事故等の損害が起こる可能性もあります。

 これらのほか、自然災害や社会インフラの麻痺等の事象・事件、有害物質の拡散や感染症の流行等により、当社の事業所や販売代理店等の必要なパートナーが業務の制限を強いられたり、一時的に閉鎖せざるを得なくなった場合、当社グループは、商品・サービスの販売・提供の機会を喪失するほか、お客様からのお申し込み受付やアフターサービスなどに関する要望に適切に対応できない可能性があります。

 このような不慮の事態において当社グループが適切な対応を行うことができなかった場合、当社グループに対する信頼性・企業イメージが低下するおそれがあるほか、収益の減少や多額の費用の支出につながる可能性があり、またこのような不慮の事態によって市場の成長が鈍化したり、市場が縮小した場合、当社グループの見込み以上にARPUが低下したり、当社グループが期待する水準での新規契約数の獲得及び既存契約数の維持ができない可能性があります。これらにより、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(12) 無線通信による健康への悪影響に対する懸念が広まることがあり得ること

 

 世界保健機関(WHO)やその他の組織団体等、及び各種メディアの報告書によると、無線通信端末とその他の無線機器が発する電波は、補聴器やペースメーカーなどを含む、医用電気機器の使用に障害を引き起こす可能性、ガン等を引き起こし、携帯電話の使用者と周囲の人間に健康上悪影響を与える可能性を完全に拭い切れないことなどの意見が出ております。無線電気通信機器が使用者にもたらすと考えられる健康上のリスクへの懸念は、契約者の解約の増加や新規契約者の獲得数の減少、利用量の減少、新たな規制や制限並びに訴訟などを通して、当社グループの企業イメージ及び当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を与える可能性もあります。当社グループの携帯電話と基地局から発する電波は、いずれも日本の電波防護に関する基準と、WHOが推奨している国際非電離放射線防護委員会の国際的なガイドラインに従っております。WHOは現在の国際的なガイドラインの値を超えない強さの電波であれば、健康に悪影響を示すという明確な証拠はないという見解を示しています。研究や調査が進むなか、当社グループは積極的に無線通信の安全性を確認しようと努めておりますが、更なる調査や研究が、電波と健康問題に関連性がないことを示す保証はありません。

 さらに、総務省及び電波環境協議会は、携帯電話や他の携帯無線機器からの電波が一部の医用電気機器に影響を及ぼすということを確認しました。当社グループは携帯電話を使用する際に、これらに対応した注意を利用者が十分認識するよう取り組んでいます。しかしながら、規制内容の変更や新たな規則や制限によって、市場や契約数の拡大が制約されるなどの悪影響を受けるかもしれません。

 

(13) 当社の親会社である日本電信電話株式会社が、当社の他の株主の利益に反する影響力を行使することがあり得ること

 

 日本電信電話株式会社(NTT)は2014年3月31日現在、当社の議決権の66.65%を所有しております。1992年4月に郵政省(当時)が発表した公正競争のための条件に従う一方で、NTTは大株主として、当社の取締役の指名権など経営を支配する権利を持ち続けています。現在、当社は通常の業務をNTTやその他の子会社から独立して営んでいますが、重要な問題については、NTTと話し合い、もしくはNTTに対して報告を行っています。このような影響力を背景に、NTTは、自らの利益にとって最善であるが、その他の株主の利益とはならないかもしれない行動をとる可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

○ 日本電信電話株式会社が行う基盤的研究開発及びグループ経営運営に関する契約

当社は日本電信電話株式会社(NTT)との間で、NTTが行う基盤的研究開発及びグループ経営運営に関し、NTTから提供される役務及び便益並びにその対価の支払等を内容とする契約を締結しています。

 

○ NTTファイナンス株式会社との当社通信サービス等料金の請求・回収業務等に関する契約

当社はNTTファイナンス株式会社(NTTファイナンス)と、通信サービス等料金の請求・回収業務等に関する基本契約及び当該契約に基づく債権譲渡契約等を締結し、これにより当社は、モバイル通信サービス等に係る債権をNTTファイナンスに譲渡しています。

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度中に実施した研究開発の内容は、次のとおりです。

 

≪端末及びサービスに関する開発≫

 ○ Xiサービス対応端末の高機能化

 Xiサービスの受信時最大150Mbps通信が可能で「クアッドバンドLTE」に対応するスマートフォンやモバイルWi-Fiルーターなどを開発し、提供を開始しました。

 ○ クラウドサービスの強化 

 「ドコモメール」等のクラウドを利用したサービスの提供を開始しました。また、サービスの利便性向上に向け、「docomo ID」対応のサービス基盤やクラウドサービスの応答時間を最大50%短縮するサーバ管理技術を開発し、提供を開始しました。

 ○ API※1提供サイトの開設

 ドコモが保有するスマートフォン等を利用した文字認識や音声認識の技術をAPIとして提供するとともに、SDK※2などの開発支援ツールを整備し、サービス開発者の皆さまを幅広く支援するAPI提供サイト「docomo Developer support」を開設しました。

 

※1  Application Programming Interfaceの略。アプリケーション等を開発する際に、第三者の技術を簡単に使用できるプログラムのこと。

※2  Software Development Kitの略。開発者がより簡単にプログラミングを行うためのツール。

 

≪今後の実用化をめざした技術開発≫

 ○ VoLTEの開発

 3GPPで標準化されているLTEネットワーク上での音声サービス「VoLTE」の開発に取り組みました。

 ○ LTE-Advancedの開発

 第4世代移動通信規格であるLTE-Advanced向けの無線伝送技術「Smart Vertical MIMO」を新たに開発し、基地局アンテナ1本で1.2Gbpsを超える屋外での走行伝送実験に成功しました。

 ○ ウェアラブル端末向けアプリケーションの開発

 視界に表示される仮想のアイコン等を現実の物体を動かすような感覚で操作できる機能や、相手の情報をディスプレイに表示する機能を持つメガネ型端末向けアプリケーション「インテリジェントグラス」の研究開発に取り組みました。

 

≪将来技術に関する取り組み≫

 ○ 次世代移動通信(5G)

 LTEの1,000倍以上の超大容量化と10Gbpsを超える超高速通信の実現をめざし、「次世代移動通信(5G)」の研究開発に取り組みました。

 ○ ネットワーク仮想化技術

 ネットワークの構築・運用の効率化をめざし、ネットワーク仮想化技術の研究開発に取り組みました。本技術により、大規模な通信混雑に際し経済的かつ速やかに対処できることを実験により確認しました。

 

以上の結果、当連結会計年度の研究開発費合計は、1,020億円となりました。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する以下の考察は、本有価証券報告書に記載されたその他の情報と合わせてお読みください。

本考察にはリスク、不確実性、仮定を伴う将来に関する記述を含んでいます。将来の記述は本有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、実際の結果は、将来に関する記述の内容とは大幅に異なる可能性があります。その主な要因については「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」に記載されていますが、それらに限定されるものではありません。

本考察においては、以下の項目を分析しています。

(1) 営業成績

 ①移動通信市場の動向
 ②当連結会計年度の業績
 ③セグメント情報
 ④営業活動の動向及び翌連結会計年度の見通し

(2)流動性及び資金の源泉

 ①資金需要
 ②資金の源泉

(3)会計方針に関する事項

  ①最重要な会計方針及び見積り

   ②最近公表された会計基準

 

(1) 営業成績

当社グループは、国内最大の移動通信事業者であり、当連結会計年度末において、国内の携帯電話契約数のおよそ43.8%に相当する総計6,311万の契約を有しています。当社グループは主として携帯電話サービスならびに携帯電話サービスのための端末機器販売を収益及びキャッシュ・フローの源泉にしています。収益の大部分を占める携帯電話サービスにおいては、音声通話サービス、パケット通信によるデータ通信サービスを提供しています。携帯電話サービス、端末機器の販売に加えて、クレジットサービス、通信販売、音楽ソフト販売、ホテル向けインターネット接続サービス、モバイル広告販売などの事業を行っています。

①移動通信市場の動向

以下では、市場、技術・サービス、規制の観点から移動通信市場の動向を分析します。

市場

社団法人電気通信事業者協会及び移動通信事業者各社の発表によれば、国内の移動通信市場は引き続き拡大し、当連結会計年度における携帯電話の契約純増数は797万契約となり、当連結会計年度末の総契約数は1億4,402万契約、人口普及率は約113%となりました。人口普及率の高まりと将来の人口の減少傾向に伴い、音声利用を伴う新規契約数の今後の伸びは限定的であると予想されるなか、スマートフォンやタブレット端末、携帯ゲーム機、機器組み込み型の通信モジュールなど新たな市場の開拓による契約数の増加が新規契約数の増加に寄与しており、携帯電話契約数の増加率は、前連結会計年度は6.1%、当連結会計年度は5.9%となりました。

 当連結会計年度末において、国内における携帯電話サービスは当社を含む3社及びこれらの各グループ会社により提供されています。これら移動通信事業者は、それぞれの携帯電話サービスを提供するほか、それぞれが提供する携帯電話サービスに対応した携帯電話・通信端末を端末メーカーから購入し、主に販売代理店に販売しています。販売代理店はそれらの端末をお客様に販売しています。携帯電話サービスにおいては、各社グループとも第3世代移動通信システムを発展させた通信規格LTEを導入しており、第3世代からの移行も含めLTEの利用者は急速に拡大しています。当社グループのLTEサービスであるXiサービス契約数は、当連結会計年度末においては2,197万契約と前連結会計年度末の1,157万契約から大きく増加しました。更にLTEサービスの拡大に伴いスマートフォンの販売も急速に拡大しており、当社グループにおける当連結会計年度のスマートフォン販売数は1,378万台となり、当社グループの総販売数に占める割合は6割を超えました。また当社グループのスマートフォン利用者の約8割はXiサービスを利用しています。当社グループでは、Xiサービスの契約数の拡大及びスマートフォン販売数の拡大傾向は今後も継続するものと予想しています。

 今後、国内移動通信市場では、音声通話を中心的な用途とした契約数の成長は限定的であると予想されるものの、スマートフォン利用の拡大、パケット定額制や高速データ通信サービスの普及などを背景としてデータ通信利用が増大しているほか、携帯電話向けコンテンツ・アプリケーションなど新たな市場機会が生まれています。また、MVNO※1を通じた契約数も伸びを示している他、2006年に始まった携帯電話の番号ポータビリティにより近年、移動通信事業者間での契約者の移動が活発になっています。更に、スマートフォンやタブレット端末等のオープンプラットフォーム端末の普及拡大に伴い、OTT※2事業者等による競争力のあるサービスも提供されるなど、厳しい競争環境は継続していくと想定しています。その一方で、増加するデータトラフィックを収容するネットワーク容量の確保や災害時においても安定した携帯電話サービスの提供を可能とする信頼性の高いネットワークの構築に対する移動通信事業者への社会的な要請も高まっています。

※1 Mobile Virtual Network Operatorの略。無線通信インフラを他社から借り受けてサービスを提供している事業者

※2 Over The Topの略。自社でサービスの配信に必要な通信インフラを持たずに、他社の通信インフラを利用しコンテンツ配信を行うサービス

 

技術・サービス

インターネットの技術革新は当社グループを含む移動通信業界に大きな影響を与える可能性があります。インターネットプロトコル(以下「IP」)技術を利用した音声通信であるIP電話は、ブロードバンドの普及に伴い、固定電話において一般的になっており、IP技術を活用した音声通話サービス(VoIP)をスマートフォン上で実現するアプリケーションの利用も進んでいます。移動通信事業者においても、LTE技術を活用した音声IPサービス(VoLTE)の導入を進める動きがあり、当社グループも翌連結会計年度において、VoLTEに対応した端末の販売を開始し、VoLTEサービスも開始を予定しています。VoLTEは周波数の利用効率が高く、音声サービスの品質の向上が見込まれることから、今後、移動通信業界においてVoLTEの導入が本格的に拡大する可能性があります。

また、携帯電話端末とブロードバンドの普及に伴い、固定通信と移動通信を融合したサービスの開発が進んでいます。従来は、主に固定通信と移動通信の請求書の一本化やコンテンツや電子メールアドレスの共有等のサービスが提供されるにとどまっていましたが、近年、スマートフォンの普及拡大に伴って、固定通信と移動通信のサービスを一体的に提供する動きが競合事業者の間で強まっています。2014年5月にNTT東日本・NTT西日本の光アクセスをサービスとして他社に卸提供する「光コラボレーションモデル」が発表されたことを受け、当社グループとしても、固定通信と移動通信のサービスを組み合わせた魅力的なサービスの提供に向けた検討を進めて行く予定です。今後、スマートフォンの浸透に伴い固定通信と移動通信が融合したサービスの本格的な普及が加速する可能性があります。

規制

当社グループを含む国内の移動通信事業者は、無線周波数を政府機関より割り当てられており、電気通信事業法や電波法等による規制を受けていますが、近年、国内の移動通信業界は、料金規制などを含め多くの分野で規制改革が進んでおり、今後、規制環境の変化が更に進んだ場合、当社グループを含む移動通信業界の収益構造やビジネスモデルが大きく変化する可能性があります。

以上の通り、市場、技術・サービス、規制の観点からは、国内の移動通信市場の飽和、MVNOや異業種からの参入を含めた競争レイヤーの広がりによる、ビジネス・市場構造の変化、規制環境の変化などが影響し、移動通信事業をとりまく競争環境は厳しい状況が継続することが想定されています。

 

 

②当連結会計年度の業績

 

以下では当連結会計年度の業績についての分析をしています。次の表は、当連結会計年度と前連結会計年度の連結損益計算書から抽出したデータならびにその内訳を表しています。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

2012年4月1日から

2013年3月31日まで

当連結会計年度

2013年4月1日から

2014年3月31日まで

増減

増減率(%)

営業収益:

 

 

 

 

モバイル通信サービス

3,168,478

2,955,788

△212,690

△6.7

音声収入(1)

1,274,584

1,065,196

△209,388

△16.4

パケット通信収入

1,893,894

1,890,592

△3,302

△0.2

端末機器販売

758,093

872,000

113,907

15.0

その他の営業収入

543,551

633,415

89,864

16.5

営業収益合計

4,470,122

4,461,203

△8,919

△0.2

営業費用:

 

 

 

 

サービス原価

1,003,497

1,059,619

56,122

5.6

端末機器原価

767,536

785,209

17,673

2.3

減価償却費

700,206

718,694

18,488

2.6

販売費及び一般管理費

1,161,703

1,078,482

△83,221

△7.2

営業費用合計

3,632,942

3,642,004

9,062

0.2

営業利益

837,180

819,199

△17,981

△2.1

営業外損益(△費用)

△3,838

13,850

17,688

-

法人税等及び持分法による投資損益(△損失)前利益

833,342

833,049

△293

△0.0

法人税等

323,059

307,979

△15,080

△4.7

持分法による投資損益(△損失)前利益

510,283

525,070

14,787

2.9

持分法による投資損益(△損失)

△29,570

△69,117

△39,547

△133.7

当期純利益

480,713

455,953

△24,760

△5.2

控除:非支配持分に帰属する当期純損益
     (△利益)

10,313

8,776

△1,537

△14.9

当社に帰属する当期純利益

491,026

464,729

△26,297

△5.4

 

(1) 回線交換によるデータ通信を含んでいます。

 

当連結会計年度における業績の分析と前連結会計年度との比較

 当連結会計年度の営業収益は前連結会計年度の4兆4,701億円から、89億円(0.2%)減少して4兆4,612億円になりました。モバイル通信サービス収入は2兆9,558億円と前連結会計年度の3兆1,685億円に比べて2,127億円(6.7%)減少しました。その結果、モバイル通信サービス収入の営業収益に占める割合は66.3%と前連結会計年度の70.9%から減少しました。モバイル通信サービス収入の減少は「月々サポート」の影響が主な要因です。音声収入は、前連結会計年度の1兆2,746億円から1兆652億円へと2,094億円(16.4%)減少しましたが、このうち、月々サポートの影響を除くと803億円の減少です。パケット通信収入は前連結会計年度の1兆8,939億円から1兆8,906億円へと33億円(0.2%)減少しましたが、「月々サポート」の影響を除くと1,212億円の増加となりました。「月々サポート」の影響を除くパケット通信収入の増加の要因としては、Xiサービス契約数の増加やスマートフォンなどの積極的な販売によるデータ通信利用の拡大の影響が挙げられます。当連結会計年度のXiサービス契約数は2,197万契約となり、スマートフォン販売数は1,378万台となりました。一方、「月々サポート」による減収影響は前連結会計年度より2,536億円増加したことより、パケット通信収入の増加が減収影響を上回るに至らなかったため、モバイル通信サービス収入は減少しました。上記により、当連結会計年度の音声ARPUは前連結会計年度の1,730円から360円(20.8%)減少し、1,370円となりました。また当連結会計年度のパケットARPUは前連結会計年度の2,690円から50円(1.9%)減少し、2,640円となりました。

  端末機器販売収入は、前連結会計年度の7,581億円から1,139億円(15.0%)増加して8,720億円になりました。以前より販売していたAndroidスマートフォンに加え、2013年9月にはiPhone※1の販売を開始したことなどから、スマートフォンの販売数の比率が高まり、代理店への卸売単価が増加したことによるものです。

 その他の営業収入は、前連結会計年度の5,436億円から6,334億円へと899億円(16.5%)増加しました。その他の営業収入には、主に、子会社売上、ケータイ補償サービス等による収入、「dマーケット」から得られる収入、クレジットサービス事業収入などが含まれています。主な増加要因は「dマーケット」の契約数が増加し、売上高も前連結会計年度に比べ大幅に増加したことに伴い、「dマーケット」を通じて得られる関連収入が増加したこと、また、新領域の拡大を目的として、前連結会計年度の7月に子会社化したタワーレコード株式会社及びイタリアのBuongiorno S.p.Aに関する収益を当連結会計年度においては年間を通じて計上したことによるものです。

 営業費用は、前連結会計年度の3兆6,329億円から3兆6,420億円へと91億円(0.2%)増加しました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度の1兆1,617億円から1兆785億円と832億円(7.2%)減少しました。販売費及び一般管理費は、販売代理店に対する手数料やドコモポイントサービス関連費用等、新規契約者獲得と既存契約者の維持に関する費用が主な構成要素です。当連結会計年度は、経営体質の強化に向けコスト効率化を推進したことが販売費及び一般管理費の主な減少要因です。また、2012年7月に子会社化したタワーレコード株式会社及びBuongiorno S.p.Aに関する販売費及び一般管理費を、当連結会計年度においては年間を通じて計上したことから増えたものの、「ドコモポイントサービス」の一部の提供条件変更に伴うポイントサービス関連経費が92億円、代理店手数料が113億円、広告宣伝費が89億円、それぞれ減少したことも販売費及び一般管理費の減少に寄与しています。お客様にモバイル通信サービスや子会社におけるサービスを提供するために直接的に発生する費用であるサービス原価は、新領域の拡大に伴う子会社のサービス原価の増加により、前連結会計年度の1兆35億円から1兆596億円へと561億円(5.6%)増加しました。新規のお客様及び既存のお客様への販売を目的として当社グループが販売代理店等に卸売りするために仕入れた端末機器の購入原価である端末機器原価においては、仕入単価の増加及びスマートフォンの順調な販売数の増加に伴い前連結会計年度の7,675億円から7,852億円へ177億円(2.3%)増加しました。減価償却費はXiサービスエリア拡充のための基地局の大幅な増設、及びデータトラフィックの増加に対応するためのネットワーク設備の増強を行ったことにより、前連結会計年度の7,002億円から185億円(2.6%)増加して7,187億円になりました。以上のように、販売費及び一般管理費以外の営業費用の増加が販売費及び一般管理費の減少を上回ったことにより、営業費用は増加しました。

 上記の結果、当連結会計年度の営業利益は8,192億円となり前連結会計年度の8,372億円から180億円(2.1%)減少しました。営業利益率は、前連結会計年度の18.7%から18.4%に下落しました。

 営業外損益には支払利息、受取利息、受取配当金、為替差損益、市場性のある有価証券及びその他の投資の評価損益ならびに実現損益などが含まれています。当連結会計年度の営業外収益は139億円となり、前連結会計年度の38億円の損失から増加に転じました。主な要因は市場性のある有価証券及びその他の投資の評価損が前連結会計年度の109億円から31億円に減少したこと、及び前連結会計年度の9億円の為替差損が、当連結会計年度は44億円の為替差益となったことによるものです。

 以上の結果、法人税等及び持分法による投資損益前利益は8,330億円となり、前連結会計年度の8,333億円から3億円減少しました。

 法人税等は前連結会計年度の3,231億円から151億円(4.7%)減少して、3,080億円となりました。当連結会計年度及び前連結会計年度の税負担率はそれぞれ37.0%、38.8%でした。

 持分法による投資損益は前連結会計年度の296億円の損失から395億円(133.7%)損失が拡大し、691億円の損失となりました。また、当連結会計年度及び前連結会計年度においてTata Teleservices Limited(以下「TTSL」)を含む持分法による投資損失はPhilippine Long Distance Telephone Company(以下「PLDT」)を含む投資利益により相殺されています。当連結会計年度におけるTTSLに関する持分法による投資損失は増加しました。主な要因は、インドにおける周波数の入札価格高騰による周波数の維持・獲得に伴うコストが増大する等、事業リスクが高まったことにより、TTSLの見積将来キャッシュ・フローは更なる下方修正となり、一時的ではない価値の下落であると判断したため、TTSLに係る関連会社投資の減損損失を512億円計上したことによるものです。なお、前連結会計年度のTTSLに係る減損損失は68億円でした。また、当連結会計年度は、TTSLは経営合理化を進めたことにより、同社の営業損失は前連結会計年度に比べ縮小したものの、金利負担の上昇により当期純損失は拡大したことも、当社グループのTTSLに関する投資損失を増加させました。TTSLの減損の詳細については、(3)①最重要な会計方針及び見積り「投資の減損」をご参照ください。また、TTSLの要約財務諸表については、連結財務諸表注記6をご覧ください。一方PLDTに係る持分法による投資利益は前連結会計年度から増加しました。主な要因は為替の影響によるもので、これは、PLDTの損益計算書を円換算する際に使用したPLDTの現地通貨であるフィリピン・ペソが日本円に対して前連結会計年度から当連結会計年度を通じて加重平均で上昇したことによるものです。

 以上の結果、当連結会計年度の当社に帰属する当期純利益は4,647億円となり、前連結会計年度の4,910億円から263億円(5.4%)減少しました。

 なお、2014年4月25日開催の取締役会において、TTSLが、2014年3月期において、所定の業績指標を達成できなかった場合、当社グループが保有するすべてのTTSL株式(1,248,974,378株、発行済株式の約26.5%に相当)を売却するためのオプションを行使することを決議しました。当社グループは、2009年3月の出資時に、TTSL及びタタ・グループの持株会社であるTata Sons Limited(以下タタ・サンズ)の三者で締結した株主間協定において、TTSLが2014年3月期までに所定の業績指標を達成できなかった場合、当社グループが保有するTTSL株式を、取得価格の50%(総額約72,500百万ルピー、約126,200百万円※2)か、公正価値のいずれか高い価格で売却できる買い手の仲介をタタ・サンズに要求する権利(オプション)を得ることとなっており、当社グループは、2014年5月末に同権利を得ました。今後は、株主間協定に従って同権利を行使しTTSL株式を売却する予定ですが、タタ・サンズの対応状況により、上記条件での取引が実現しない可能性があります。なお、当社グループの経営成績及び財政状態への影響は、これらの不確実性により見積もることができません。TTSL株式の売却時または上記条件での取引が実現しない場合、損益を認識する場合があります。

※1 TM and © 2014 Apple Inc. All rights reserved. iPhoneはApple Inc.の商標です。iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスに基づき使用されています。

※2 1ルピー=1.74円(2014年5月31日時点)で計算

 

主要な事業データ

上述の当連結会計年度及び前連結会計年度の業績に関連する事業データについては、以下をご参照ください。

 

前連結会計年度

2012年4月1日から

2013年3月31日まで

当連結会計年度

2013年4月1日から2014年3月31日まで

増減

増減率
(%)

携帯電話

 

 

 

 

契約数(千契約)

61,536

63,105

1,569

2.6

(再)Xiサービス

11,566

21,965

10,399

89.9

(再)FOMAサービス

49,970

41,140

△8,830

△17.7

(再)パケット定額サービス

38,704

40,148

1,444

3.7

(再)spモードサービス

18,285

23,781

5,497

30.1

(再)iモードサービス

32,688

26,415

△6,273

△19.2

契約数シェア (%)(1)(2)

45.2

43.8

△1.4

-

総合ARPU (円)(3)

4,840

4,500

△340

△7.0

音声ARPU (円)(4)

1,730

1,370

△360

△20.8

パケットARPU (円)

2,690

2,640

△50

△1.9

スマートARPU (円)

420

490

70

16.7

MOU(分)(3)(5)

117

106

△11

△9.4

解約率 (%)(2)

0.82

0.87

0.05

-

 

(1) 他社契約数については、社団法人電気通信事業者協会及び各社が発表した数値を基に算出しています。
(2)  通信モジュールサービス契約数を含めて算出しています。

(3)  通信モジュールサービス、「電話番号保管」、「メールアドレス保管」及び「ドコモビジネストランシーバー」関連収入及び契約数を含めずに算出しています。

(4)  回線交換によるデータ通信を含んでいます。
(5)  MOU(Minutes Of Use): 1契約当たり月間平均通話時間

ARPUの定義
 総合ARPU:音声ARPU+パケットARPU+スマートARPU
 音声ARPU:音声ARPU関連収入(基本使用料、通話料)÷稼動契約数
 パケットARPU:パケットARPU関連収入(月額定額料、通信料)÷稼動契約数
 スマートARPU:その他の営業収入の一部(コンテンツ関連収入、料金回収代行手数料、端末補償サービス収入、
        広告収入等)÷稼動契約数
 
 稼動契約数:当該年度(4月から翌年3月)の「各月稼動契約数」の合計 
 ※「各月稼動契約数」:(前当該月末契約数+当該月末契約数)÷2

 

③セグメント情報

概要

 当社グループの最高経営意思決定者は取締役会であり、内部のマネジメントレポートからの情報に基づいて事業セグメントの営業成績を評価し、経営資源を配分しています。当社グループは事業セグメントを携帯電話事業、クレジットサービス事業、通信販売事業、ホテル向けインターネット接続サービス事業及びその他の事業の5つに分類しています。その金額的な重要性により、携帯電話事業のみが報告セグメントに該当し、そのため報告セグメントとして開示しています。残りの4つのセグメントはいずれも金額的な重要性がないため、「その他事業」としてまとめて開示しています。

携帯電話事業

 当連結会計年度における携帯電話事業セグメントの営業収益は前連結会計年度の4兆2,752億円から393億円(0.9%)減少して4兆2,359億円となりました。当連結会計年度における音声通信及びパケット通信による収益であるモバイル通信サービス収入は、2兆9,558億円となり前連結会計年度の3兆1,685億円から2,127億円(6.7%)減少しました。主な減少要因は音声収入の減少及び「月々サポート」の影響によるものです。一方、端末機器販売に係る収入については、スマートフォンの販売数の比率が高まり、代理店への卸売単価が増加したことにより、前連結会計年度の7,581億円から1,139億円(15.0%)増加し8,720億円となりました。携帯電話事業セグメントの営業収益が営業収益全体に占める割合は、当連結会計年度が94.9%、前連結会計年度が95.6%でありました。携帯電話事業の営業費用は「ドコモポイントサービス」の一部の提供条件変更に伴うポイントサービス関連経費が209億円減少したものの、Xiサービスのネットワーク設備の充実に伴う減価償却費等の増加によって、前連結会計年度の3兆4,069億円から3兆4,004億円と64億円(0.2%)の減少に留まりました。この結果、当連結会計年度の携帯電話事業セグメントの営業利益はモバイル通信収入の減少が大きく響き、前連結会計年度の8,683億円から329億円(3.8%)減少し、8,355億円となりました。

 携帯電話事業における収益及び費用の増減の分析については前述の「②当連結会計年度の業績」、後述の「④営業活動の動向及び翌連結会計年度の見通し」を合わせてご参照下さい。

その他事業

 その他事業の当連結会計年度の営業収益は、前連結会計年度の1,950億円から304億円(15.6%)増加し2,253億円になりました。当連結会計年度の営業収益総額の5.1%を占めています。営業費用は前連結会計年度の2,261億円から155億円(6.8%)増加し、2,416億円となりました。営業収益及び営業費用の主な増加要因は、2012年7月に子会社化したタワーレコード株式会社等に関する営業収益及び営業費用を、当連結会計年度においては年間を通じて計上したことによるものです。以上の結果、その他事業の営業損失は前連結会計年度の311億円から149億円(47.8%)減少して163億円となりました。

④営業活動の動向及び翌連結会計年度の見通し

 以下では、当社グループの営業活動について、収益と費用の面からその動向の分析及び、翌連結会計年度の見通しを記載しています。

(a)営業収益:

モバイル通信サービス

 モバイル通信サービス収入は、音声収入とパケット通信収入から構成され、音声収入は月額基本使用料及び接続時間に応じて課金される通話料から得られます。パケット通信収入は、月額定額料及びデータ量に応じて課金される通信料から得られます。またモバイル通信サービス収入は契約数の動向、お客様のサービスの利用動向、お客様に提供する料金割引等の施策などによって影響を受けます。

 契約数の増加に向けては、新規契約の獲得と既存契約数の維持が必要となりますが、人口普及率の高まりにより新規契約数の大幅な伸びは望みにくい状況であるものの、スマートフォンやタブレット型端末、Wi-Fiルーター及び機器組み込み型の通信モジュールなど新たな通信端末・サービスのニーズが高まっています。また、スマートフォンの普及に伴うデータ通信利用の拡大に伴い、通信の高速化も求められており、当社グループはこうした新たな市場ニーズを捉えて、Xiサービスの利用者拡大に向けてスマートフォンの販売やXiネットワークの拡充等を積極的に取り組んだ結果、当連結会計年度末のXiサービスの契約数は前連結会計年度に比べ89.9%増加しました。

 一方、既存契約者の他社への流出を抑制し、これを維持することは当社グループにとって重要な事業課題であり、課題達成を図る指標として解約率を重視しています。解約は契約数に影響を与える要因の一つであり、特に契約純増数を大きく左右します。料金値下げやその他のお客様誘引施策等による解約率低下に向けた取組みは、純増数の増加により収益の増加につながる可能性がある反面、契約者当たりの平均収入の減少や費用の増加により利益に対してマイナスの影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおける解約率は、前連結会計年度は0.82%、当連結会計年度は0.87%と上昇傾向ですが、依然として低水準に抑えられており、今後は、新料金プランの導入による長期利用者の優遇や、ネットワークやサービスの拡充により他社との優位性を確立するなど、解約率低減に向けた取組みを行います。

 また、当社グループはお客様の獲得・維持に向けて当連結会計年度においては、「デバイス(端末)」、「ネットワーク」、「サービス」、「料金・チャネル」の4つの総合力の強化に努めました。これらの取組みの結果、当連結会計年度における契約数は2.6%増加しました。翌連結会計年度における契約数についても、新たな市場ニーズの開拓に努め、Xiサービス利用者拡大に向けてスマートフォンの販売やXiネットワークの拡充等に積極的に取り組むことにより、引き続き増加するものと予想しています。

 モバイル通信サービス収入については「月々サポート」が大きく影響し、当連結会計年度は対前連結会計年度で減少しました。「月々サポート」は一定の契約条件を満たしたスマートフォンやタブレット端末等を利用のお客様を対象にご購入の機種に応じた一定額を毎月のご利用料金から最大24ヶ月割り引く割引サービスで、2011年に導入しました。スマートフォンやタブレット端末等の購入に際して、ほとんどのお客様が「月々サポート」の利用を選択するため、スマートフォン等の普及に伴って「月々サポート」契約数は拡大しており、モバイル通信サービス収入の主な減少要因となっています。この傾向は翌連結会計年度も続くと考えています。

 モバイル通信サービス収入のうち、音声収入については前連結会計年度は17.3%、当連結会計年度は16.4%減少しています。主な要因は上記「月々サポート」の浸透による割引の拡大、より低廉な基本料金を選択するお客様が増加、課金対象MOU(1契約当たり月間平均通話時間)の減少及び接続料収入の低減などであり、音声収入の減少は翌連結会計年度も続くと予想しています。

 一方、パケット通信収入は、Xiサービス契約数の増加やスマートフォンなどの積極的な販売によるスマートフォンユーザーやデータプランユーザーの拡大によりパケット通信の利用は増加したものの、「月々サポート」の浸透による割引の拡大がこれを上回ったことから、前連結会計年度と比較し0.2%減少しています。スマートフォンの利用者はパケットの利用単価が高く、またタブレット等データ通信端末の利用者は拡大を続けています。スマートフォンやタブレット端末の普及に伴ってパケット通信収入は拡大傾向にあり、当社は、Xiサービス契約数の拡大及びスマートフォンの販売に向け積極的に取り組むことにより、パケット通信収入は拡大すると予想しています。パケット通信収入のモバイル通信サービス収入に占める割合は年々増加し、前連結会計年度は59.8%、当連結会計年度は64.0%を占めております。

 当社グループは、1契約当たりの各サービスにおける平均的な月間営業収益を計るための指標として、ARPU(Average monthly Revenue Per Unit、1契約当たり月間平均収入)を用いており、ARPUは、音声ARPU、パケットARPU及びスマートARPUで構成されています。ARPUは契約者の各月の平均的な利用状況、及び当社グループによる料金設定変更の影響を分析する上で一定程度、有用な情報を提供すると考えています。近年、上述の料金割引サービスの普及のほか、音声通話を提供しないデータ通信専用サービスの契約数増加に伴い、音声ARPUの下落幅が大きくなっています。

端末機器販売

 当社グループは、提供する携帯電話サービスに対応した通信端末を端末メーカーから購入し、主にお客様への販売を行う販売代理店に対して販売しています。

 当社グループは、お客様が販売代理店等から端末機器を購入する際に、端末機器代金の分割払いを選択するオプションを提供しています。お客様が分割払いを選択した場合、当社グループはお客様及び販売代理店等と締結した契約に基づき、お客様に代わって端末機器代金を販売代理店等に支払い、立替えた端末機器代金を分割払いの期間にわたり、毎月の通話料金と合わせて直接お客様に請求します。なお、この契約は、当社グループとお客様との間で締結するモバイル通信サービスに関する契約及び販売代理店等とお客様の間で行われる端末機器売買とは別個の契約です。端末機器販売に係る収益は端末機器を販売代理店等に引渡した時点で認識され、お客様からの資金回収は立替代金の回収であるため、端末機器販売収入を含む当社グループの収益に影響を与えません。

 当社グループは、米国会計基準に従い販売代理店に支払う販売手数料及びお客様に対するインセンティブの一部を端末機器販売収入から減額する会計処理を行っています。結果として、端末機器原価が端末機器販売収入を上回る状況が構造的に続いていましたが、代理店への卸売単価が上昇したこと及びスマートフォンの販売数の増加により、当連結会計年度においては、端末機器原価が端末機器販売収入を上回る状況は解消しました。端末機器販売収入については、当連結会計年度においては、以前より販売していたAndroidスマートフォンに加え、2013年9月にはiPhoneの販売を開始し、「dマーケット」等の当社グループならではのサービスを使えるよう取り組んだことなどからスマートフォンの販売数が増加したことに伴いスマートフォンの販売数の比率が高まり、代理店への卸売単価が上昇したことから端末機器販売収入は前連結会計年度に比べ15.0%増加しました。翌連結会計年度も、更なるスマートフォンの販売数拡大により、増加傾向が継続すると予想しています。

 端末機器販売の動向が営業利益に与える影響については端末機器原価とも密接に関係しますので、後述の「端末機器原価」を合わせてご参照下さい。

その他の営業収入

 その他の営業収入には、主に、子会社売上、ケータイ補償サービス等による収入、「dマーケット」から得られる収入、クレジットサービス事業収入などが含まれています。

 子会社売上には当社グループの子会社による通信販売などに関連する収益が含まれています。当社グループは子会社への出資や提携を通じて新領域の拡大をめざしています。当連結会計年度には、日本最大のメディカルデータベース事業を展開する株式会社日本アルトマーク、料理教室の展開、家庭用雑貨等の販売を行う株式会社ABC HOLDINGS、グアム及び北マリアナ諸島地域における最大のケーブルテレビ及びインターネット事業者であるMCV Guam Holding Corp.、オンライン物販向け決済サービス事業者であるオーストリアのfine trade gmbhを新たに子会社化しました。

 ケータイ補償サービスは、毎月一定額をお支払い頂くことにより、携帯電話機の水濡れや紛失などのトラブルに対し、お電話いただくだけで同一機種・同一カラーの携帯電話をお届けしたり、修理代金をサポートするサービスで、ご利用するお客様は増えており、これに伴う収入も増加しています。翌連結会計年度においても、引き続きお客様の利用拡大をめざしていきます。

 また、2010年度に開始した当社グループのクラウドサービスの1つである「dマーケット」を通じて得られる収入が拡大しています。「dマーケット」とは、動画や音楽、電子書籍などの豊富なデジタルコンテンツや、食品・日用品などの幅広い商品をクラウド上で提供、販売するマーケットであり、映画やドラマを配信する「dビデオ」や、音楽を配信する「dヒッツ」、ゲームを提供する「dゲーム」、リアルグッズの販売を行う「dショッピング」などのストアから構成されています。当連結会計年度は「dマーケット」の各ストアにおいて、より魅力的なコンテンツの提供に取り組みました。この結果、月額契約でコンテンツを提供する「dビデオ」、「dヒッツ」、「dアニメストア」、「dキッズ」の契約数は、当連結会計年度末において合計で769万契約となり、「dマーケット」での売上高も前連結会計年度に比べ大幅に増加しました。今後も「dマーケット」を通じて得られる収入の増加は続くものと見込んでいます。

 また、当社グループは新領域における収益性を示す指標としてスマートARPUを用いています。スマートARPUは新領域の拡大に伴い、当連結会計年度のスマートARPUは前連結会計年度の420円から490円と増加しました。今後も増加は続くものと見込んでいます。

 当連結会計年度におけるその他の営業収入は、上記の結果、前連結会計年度に比べ16.5%増加しました。翌連結会計年度においても「dマーケット」収入の拡大や子会社の売上拡大等により、当連結会計年度と比較して増収を見込んでいます。

以上により、翌連結会計年度の営業収益は当連結会計年度と比較して、増収となる見込みです。

(b) 営業費用:

サービス原価

 サービス原価とはお客様にモバイル通信サービスや子会社におけるサービスを提供するために直接的に発生する費用であり、通信設備使用料、施設保全費、通信網保全・運営に関わる人件費、ケータイ補償サービス等の提供に伴う保険費用等が含まれています。当連結会計年度においては営業費用の29.1%を占めています。サービス原価のうち、大きな割合を占めるものは通信設備の保守費用等である施設保全費及び他社の通信網利用や相互接続の際支払う通信設備使用料であり、当連結会計年度ではそれぞれサービス原価総額の31.8%及び19.3%を占めています。通信設備使用料は他事業者の料金設定によって変動します。当連結会計年度のサービス原価は前連結会計年度から5.6%増加しました。新領域の拡大を目的に買収した子会社の売上の増加に伴うサービス原価の増加が主要な要因です。

端末機器原価

 端末機器原価は新規のお客様及び既存のお客様への販売を目的として当社グループが販売代理店等に卸売りするために仕入れた端末機器の購入原価であり、その傾向は基本的に販売代理店等への端末機器販売数と仕入単価に影響されます。当連結会計年度においては営業費用の21.6%を占めています。当連結会計年度の端末機器原価は前連結会計年度から2.3%増加しました。お客様の多様なニーズに応え、多様かつ高機能な端末を取り揃えたことにより仕入単価が増加したこと及びスマートフォンの順調な販売数の増加を受けたものです。翌連結会計年度においても更なるスマートフォンの販売数拡大などにより、端末機器原価は増加傾向が継続すると予想しています。

 減価償却費

 当連結会計年度において減価償却費の営業費用総額に占める割合は19.7%でした。前連結会計年度の設備投資において、建設工事の合理化等によりコスト効率化に努めたものの、Xiサービスエリア拡充のための基地局の大幅な増設、及びデータトラフィック増加に対応するためのネットワーク設備の増強を行ったことにより、当連結会計年度の減価償却費は2.6%増加しました。翌連結会計年度は設備装置の集約化や、建設工事の合理化等によりコスト効率化に努めることにより、微減する見込みです。設備投資の詳細については、後述の「設備投資」の項を合わせてご参照下さい。

販売費及び一般管理費

 当連結会計年度において販売費及び一般管理費は営業費用の29.6%を占めています。販売費及び一般管理費の主要なものは、新規契約者獲得と既存契約者の維持に関する費用であり、その中でも大きいものは販売代理店に対する手数料です。販売代理店に当社が支払う手数料には、新規契約や端末の買い増しなど販売に連動する手数料と、料金プラン変更の受付や故障受付など販売に連動しない手数料があります。当社グループは米国会計基準を適用しており、販売に連動する手数料の一部を端末機器販売収入から控除し、それ以外の手数料については販売費及び一般管理費に含めています。また、販売費及び一般管理費には、「ドコモポイントサービス」制度に関する経費や端末故障修理などお客様へのアフターサービスに関連する費用が含まれています。当連結会計年度は「ドコモポイントサービス」の一部の提供条件変更に伴ってポイントサービス関連経費が減少したこと及びコスト削減を推進したことにより、販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ7.2%減少しています。翌連結会計年度の販売費については、新料金プランの導入や構造改革の取組み等により削減を見込んでいるものの、「dマーケット」等の新たな成長分野での収益増加に連動した費用増加についても見込んでいます。

 以上により、翌連結会計年度の営業費用は当連結会計年度から増加すると予想していますが、その増加は営業収益の増加を上回ると見込んでいます。

 これらの結果、翌連結会計年度の営業利益は当連結会計年度から減益となる見込みです。

 市場動向に関する上記以外の情報は、本項目「第2 事業の状況 7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の他の箇所にも含まれています。

 

(2)流動性及び資金の源泉

①資金需要

 翌連結会計年度の資金需要として、端末機器販売に係わる代理店への立替払い、ネットワークの拡充資金及びその他新たな設備への投資資金、有利子負債及びその他の契約債務に対する支払のための資金、新規事業や企業買収、合弁事業などの事業機会に必要な資金が挙げられます。当社グループは現時点で見込んでいる設備投資や債務返済負担などの必要額を営業活動によるキャッシュ・フロー、銀行等金融機関からの借入、債券や株式の発行による資本市場からの資金調達により確保できると考えています。当社グループは安定的な業績と強固な財務体質により高い信用力を維持し、十分な調達能力を確保しているものと考えています。また、当社グループは現在の資金需要に対して十分な運転資金を保有していると考えています。当社グループは、資金調達の要否について資金需要の金額と支払のタイミング、保有する現金及び現金同等物、運用資金ならびに営業活動によるキャッシュ・フロー等を総合的に検討して決定します。保有する現金及び現金同等物、運用資金ならびに営業活動によるキャッシュ・フローによる対応が困難な場合は、借入や債券・株式の発行による資金調達を検討します。設備投資などの必要額が見込みを上回った場合や将来のキャッシュ・フローが見込みを下回った場合には、債券や株式の発行等による追加的な資金調達が必要になる可能性があります。こうした資金調達については事業上受け入れ可能な条件で、あるいは適切なタイミングで、実行できるという保証はありません。

(a)設備投資

 移動通信業界は一般に設備投資の極めて大きい業界であり、無線通信ネットワークの構築には多額の設備投資が必要です。当社グループにおけるネットワーク構築のための設備投資額は、導入する設備の種類と導入の時期、ネットワーク・カバレッジの特性とカバーする地域、ある地域内の契約数及び予想トラフィックにより決まります。更に、サービス地域内の基地局の数や、基地局における無線チャネルの数、必要な交換設備の規模によっても影響されます。また設備投資は、情報技術やインターネット関連事業用サーバーに関しても必要となります。近年では、Xiサービス利用者の順調な拡大及び、スマートフォンの急速な普及拡大などを背景としてデータ通信利用が大きく拡大する傾向にあります。それに伴い通信の高速化、及びトラフィックの急激な需要増加への対応が必要となっています。当社グループは、Xiサービスのエリア拡充のために4つの周波数帯域を効率よく利用することで、高速大容量で快適な通信環境の提供が可能となる「クアッドバンドLTE」の運用を開始しています。また、ネットワークの過剰利用に対するトラフィック制御、Wi-Fiなどの活用によるデータオフロードといった対策を講じています。

 当連結会計年度は、Xiサービスのエリア充実を図るため基地局の大幅な増設を進め、Xiの屋外、屋内基地局を前連結会計年度末より30,900局増設し、累計で55,300局となりました。加えて、お客様のご利用が多い都市部等における通信品質を向上させるため、1つの基地局で実質6局分の通信容量がある「6セクタ基地局」の設置を進めました。また、高速化については、東名阪地域において受信時最大速度150MbpsのXiサービスの提供を開始しました。更に、受信時最大速度112.5Mbps以上のXiサービスの提供を47都道府県の全てに拡大しました。

 当連結会計年度の設備投資額は7,031億円、前連結会計年度は7,537億円でした。当連結会計年度の設備投資額は前連結会計年度と比較して505億円(6.7%)減少しましたが、これは、ネットワーク基盤高度化対策を前連結会計年度に実施したことや、共通目的(情報システム等)において効率化を行ったことに加え、設備装置の集約化・大容量化を進めるとともに、建設工事の効率化や物品調達費用を削減することで、経営基盤の更なる強化に向けたコスト効率化に取り組み、設備投資の増加を抑制したことによるものです。当連結会計年度において設備投資の55.2%がXiネットワーク構築目的に、9.0%がFOMA ネットワーク構築目的に、18.6%がサーバー等その他携帯電話事業目的に、17.2%が共通目的(情報システム等)に使用されています。これに対し、前連結会計年度においては設備投資の29.0%がXiネットワーク構築目的に、26.8%がFOMA ネットワーク構築目的に、24.6%がサーバー等その他携帯電話事業目的に、19.6%が共通目的(情報システム等)に使用されています。

 翌連結会計年度の設備投資額は、最強のサービスエリア構築に向けてLTEにリソースを集中し、基地局4万局の増加を進める一方、設備投資額削減に向けて引き続き投資の効率化を行うことにより、6,900億円に微減する見込みです。そのうち約67%がXiネットワーク構築目的に、約3%がFOMAネットワーク構築目的に、約12%がサーバー等その他携帯電話事業目的に、約18%が共通目的(情報システム等)になると見込んでいます。

 当社グループの設備投資の実際の水準は、様々な要因により予想とは大幅に異なる場合があります。既存の携帯電話ネットワーク拡充のための設備投資は、確実な予測が困難な契約数及びトラフィックの増加、事業上適切な条件で適切な位置に基地局を定め配置する能力、特定の地域における競争環境及びその他の要因に影響を受けます。特にネットワーク拡充に必要な設備投資の内容、規模及び時期は、サービスへの需要の変動や、ネットワーク構築やサービス開始の遅れ、ネットワーク関連機材のコストの変動などにより、現在の計画とは大きく異なることがあり得ます。これらの設備投資は、データ通信事業に対する市場の需要動向及びこうした需要に対応するため継続的に行っている既存ネットワーク拡充の状況により影響を受けていくと考えています。

(b)長期債務及びその他の契約債務

 当連結会計年度末において、1年以内返済予定分を含む長期の有利子負債は2,209億円で、主に社債と金融機関からの借入金です。前連結会計年度末においては2,415億円でした。また、当連結会年度において、700億円の無担保社債の償還を行い、これにより減少する手元資金を充当するため500億円の無担保社債を発行しました。前連結会計年度において600億円の無担保社債の償還を行い、これにより減少する手元資金を充当するため600億円の無担保社債を発行しました。当連結会計年度に750億円及び前連結会計年度に822億円の長期の有利子負債を償還しました。当連結会計年度末において、長期の有利子負債のうち、9億円(1年以内返済予定分を含む)は金融機関からの借入金です。借入金利の加重平均が年率1.0%の主に固定金利による借入であり、返済期限は翌連結会計年度から2018年3月期です。また2,200億円は社債であり、表面利率の加重平均は1.2%、満期は2018年3月期から2024年3月期となります。当連結会計年度末において、当社及び当社の債務は格付会社により以下の表のとおり格付けされています。これらの格付は当社が依頼して取得したものです。格付は格付会社による当社の債務返済能力に関する意見の表明であり、格付会社は独自の判断で格付をいつでも引き上げ、引き下げ、保留し、または取り下げることができます。また、格付は当社の株式や債務について、取得、保有または売却することを推奨するものではありません。

 

格付会社

格付の種類

格付

アウトルック

ムーディーズ

長期債務格付

Aa2

安定的

スタンダード・アンド・プアーズ

長期発行体格付

AA

ネガティブ

長期無担保優先債券格付

AA

日本格付研究所

長期優先債務格付

AAA

安定的

格付投資情報センター

発行体格付

AA+

安定的

 

 なお、当社の長期有利子負債の契約には、格付の変更によって償還期日が早まる等の契約条件が変更される条項を含むものはありません。

 当社グループの長期有利子負債、長期有利子負債に係る支払利息、リース債務及びその他の契約債務(1年以内償還または返済予定分を含む)の今後数年間の返済金額は次のとおりです。

(単位:百万円)

 

返済期限毎の支払金額

負債・債務の内訳

合計

1年以内

1年超-3年以内

3年超-5年以内

5年超

長期有利子負債

 

 

 

 

 

     社債

220,000

-

-

170,000

50,000

     借入

851

248

403

200

-

長期有利子負債に係る
支払利息

13,429

2,595

5,186

4,005

1,643

キャピタル・リース

4,560

1,763

2,120

662

15

オペレーティング・リース

39,284

9,306

13,402

7,818

8,758

その他の契約債務

747,731

545,082

202,649

合計

1,025,855

558,994

223,760

182,685

60,416

 

(注) 重要性がない契約債務については上記表のその他の契約債務に含めていません。

 「その他の契約債務」は、主として携帯電話ネットワーク向け有形固定資産の取得に関する契約債務や棚卸資産(主に端末機器)の取得、サービスの購入にかかる契約債務などから構成されています。当連結会計年度末の有形固定資産の取得に関する契約債務は451億円、棚卸資産の取得に関する契約債務は6,913億円、その他の購入契約債務は113億円でした。これらの契約債務の金額は、一定の仮定に基づき算定された見積金額であり、また、将来に予測されるすべての購入契約の内容を反映したものではありません。当社グループはこれらとは別に商品やサービスを必要な都度購入しています。当社グループはXiのネットワーク拡充やスマートフォン販売の拡大などのために今後も多額の設備投資や棚卸資産の取得を継続していく方針です。また、当社グループでは随時、移動通信事業を中心に新規事業分野への参入や企業買収、合弁事業、出資などを行う可能性についても検討しています。なお、現在当社グループの財政状態に重要な影響を与えるような、訴訟及び保証等に関する偶発債務はありません。

②資金の源泉

 次の表は当社グループの当連結会計年度及び前連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概要をまとめたものです。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度
2012年4月1日から
2013年3月31日まで

当連結会計年度
2013年4月1日から
2014年3月31日まで

営業活動によるキャッシュ・フロー

932,405

1,000,642

投資活動によるキャッシュ・フロー

△701,934

△703,580

財務活動によるキャッシュ・フロー

△260,967

△269,793

現金及び現金同等物の増減額

△28,404

33,246

現金及び現金同等物の期首残高

522,078

493,674

現金及び現金同等物の期末残高

493,674

526,920

 

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの分析と前連結会計年度との比較

 当連結会計年度における「営業活動によるキャッシュ・フロー」は、1兆6億円の収入となりました。前連結会計年度と比較して、682億円(7.3%)キャッシュ・フローが増加していますが、これは、当社グループが立替えた、お客様の携帯端末代金の回収が増加したことに加え、代理店に対する手数料の支払額及び法人税等の支払額が減少したことなどによるものです。「投資活動によるキャッシュ・フロー」は、7,036億円の支出となりました。前連結会計年度と比較して、16億円(0.2%)支出が増加していますが、これは、ネットワーク構築効率化による固定資産取得の減少、当連結会計年度の資金運用に伴う短期投資及び関連当事者への預入れによる支出が減少したものの、短期投資の償還による収入が減少したことなどにより、収入の減少が支出の減少を上回ったことによるものです。「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、2,698億円の支出となりました。前連結会計年度と比較して、88億円(3.4%)支出が増加していますが、これは、短期借入金の返済による支出や現金配当金の支払額が増加したことなどによるものです。これらの結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は5,269億円となり、前連結会計年度末と比較して332億円(6.7%)増加しました。また、資金の一部を効率的に運用するために実施した期間3ヵ月超の資金運用残高は当連結会計年度末で2,596億円であり、前連結会計年度末においては2,818億円でした。

翌連結会計年度の見通し

 翌連結会計年度の資金の源泉については、当社グループが立替えた、お客様の携帯端末代金の回収の増加が見込まれるものの、法人税等の支払の増加が見込まれることなどから、営業活動によるキャッシュ・フローは減少する見通しです。投資活動によるキャッシュ・フローについては、設備投資等により6,900億円と予想しています。設備投資及び合理的に見積もることができるもの以外の投資活動によるキャッシュ・フローについては、現時点では予想が困難であることから、投資活動によるキャッシュ・フローの予想には含めていません。

 

  (3)会計方針に関する事項

①最重要な会計方針及び見積り

 連結財務諸表の作成には、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。連結財務諸表の注記3には、当社グループの連結財務諸表の作成に用いられる主要な会計方針が記載されています。いくつかの会計方針については、特に慎重さが求められています。なぜなら、それらの会計方針は、財務諸表に与える影響が大きく、また経営者が財務諸表を作成する際に用いた見積り及び判断の根拠となっている条件や仮定から、実際の結果が大きく異なる可能性があるためです。当社の経営者は会計上の見積りの選定及びその動向ならびに最重要の会計方針に関する以下の開示について、独立会計監査人ならびに当社の監査役と協議を行いました。当社の監査役は、取締役会及びいくつかの重要な会議に出席して意見を述べるほか、取締役による当社の職務執行を監査し、計算書類等を監査する法的義務を負っています。最重要な会計方針は以下のとおりです。

(a)有形固定資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産の耐用年数

 当社グループの携帯電話事業で利用されている基地局、アンテナ、交換局、伝送路等の有形固定資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産は財務諸表上に取得価額または開発コストで計上され、見積耐用年数にわたって減価償却が行われています。当社グループは、各年度に計上すべき減価償却費を決定するために、有形固定資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産の耐用年数を見積もっています。当連結会計年度及び前連結会計年度に計上された減価償却費の合計は、それぞれ7,187億円、7,002億円でした。耐用年数は、資産が取得された時点で決定され、またその決定は、予想される使用期間、類似資産における経験、定められた法律や規則に基づくほか、予想される技術上及びその他の変化を考慮に入れています。無線通信設備の見積耐用年数は概ね8年から16年となっています。自社利用のソフトウェアの見積耐用年数は最長5年としています。技術上及びその他の変化が当初の予想より急速に、あるいは当初の予想とは異なった様相で発生したり、新たな法律や規制が制定されたり、予定された用途が変更された場合には、当該資産に設定された耐用年数を短縮する必要があるかもしれません。結果として、将来において減価償却費の増加や損失を認識する可能性があります。当連結会計年度及び前連結会計年度において、有形固定資産、自社利用のソフトウェア及びその他の無形固定資産の見積耐用年数の見直しは経営成績や財政状態に重大な影響がありませんでした。

(b)長期性資産の減損

 当社グループは有形固定資産ならびに電気通信設備に関わるソフトウェアや自社利用のソフトウェア及び有線電気通信事業者の電気通信施設利用権といった識別可能な無形固定資産からなる供用中の長期性資産(営業権及び非償却性無形資産を除く)について、その帳簿価額が回復不能であることを示唆する事象や環境の変化がある場合は、随時減損認識の要否に関する検討を行っています。減損のための分析は、耐用年数の分析とは別途に行われますが、それらはいくつかの類似の要因によって影響を受けます。減損の検討の契機となる事項のうち、当社グループが重要であると考えるものには、その資産を利用する事業に関係する以下の傾向または条件が含まれています(ただし、これらの事項に限定されるわけではありません)。

・資産の市場価値が著しく下落していること
・当期の営業キャッシュ・フローが赤字となっていること
・競合技術や競合サービスが出現していること
・キャッシュ・フローの実績、または見通しが著しく下方乖離していること
・契約数が著しく、あるいは継続的に減少していること
・資産の使用方法が変更されていること
・その他のネガティブな業界動向あるいは経済動向

 上記またはその他の事項が1つ以上存在し、または発生していることにより、特定の資産の帳簿価額が回復可能ではないおそれがあると判断した場合、当社グループは、予想される耐用年数にわたってその資産が生み出す将来のキャッシュ・インフローとアウトフローを見積もっています。当社グループの割引前の予想将来純キャッシュ・フロー合計の見積りは、過去からの状況に将来の市場状況や営業状況に関する最善の見積りを加えて行っています。割引前の予想将来純キャッシュ・フローの合計額が資産の帳簿価額を下回る場合には、資産の公正価値に基づき減損処理を行っています。こうした公正価値は、取引市場が確立している場合の市場価格、第三者による鑑定や評価、あるいは割引キャッシュ・フローに基づいています。実際の市場の状況や当該資産が供用されている事業の状況が経営者の予測より悪い、もしくは契約数が経営者の計画を下回っているなどの理由によりキャッシュ・フローの減少を招くような場合には、従来減損を認識していなかった資産についても減損認識が必要となる可能性があります。当連結会計年度及び前連結会計年度においては長期性資産に関する減損損失を計上しましたが、その影響は軽微です。

(c)営業権及び耐用年数が確定できない無形固定資産の減損

 当社グループの営業権は、主として2002年11月に実施した株式交換により地域ドコモ8社の非支配持分を取得し、完全子会社化したことにより認識されたものです。さらに近年、新領域への展開を目的としたマジョリティ出資を実施しており、当該マジョリティ出資により認識された営業権が増えています。これにより当連結会計年度末の残高は2,625億円となっています。また、耐用年数が確定できない無形固定資産の当連結会計年度末の残高は135億円となっています。

 当社グループは、企業結合により認識した営業権及び耐用年数が確定できない無形固定資産については、年1回主に3月31日時点で、また、減損の可能性を示す事象又は状況が生じた場合にはその時点で、減損テストを実施しています。減損テストは、事業セグメントまたはそれより一段低いレベルの報告単位毎に、二段階の手続きによって実施しています。減損テストの第一段階では、報告単位の公正価値と営業権を含む簿価とを比較しています。報告単位の公正価値は主に割引キャッシュ・フロー法を用いて算定しています。報告単位の簿価が公正価値を上回る場合には、減損額を測定するため、第二段階の手続きを行っています。第二段階では、その報告単位の営業権の簿価と営業権の公正価値を比較し、簿価が公正価値を上回っている金額を減損として認識します。また、耐用年数が確定できない無形固定資産の減損テストに関しては、耐用年数が確定できない無形固定資産の公正価値と簿価を比較し、簿価が公正価値を上回る場合減損損失が計上されます。公正価値の算定において、営業権及び耐用年数が確定できない無形固定資産について対象となる報告単位の事業計画などに基づき、当該報告単位の生み出す将来キャッシュ・フローを見積っています。将来キャッシュ・フローの割引現在価値を算定する際に、異なる見積りや前提条件が用いられた場合、営業権の評価も異なったものとなる可能性があり、それに伴い将来追加的な減損処理が必要となる可能性があります。

 報告単位である国内携帯電話事業は、1,335億円の金額的に最も重要な営業権を有しており、携帯電話事業セグメントに含まれています。当該報告単位の公正価値は、当連結会計年度及び前連結会計年度の減損テストの第一段階の手続きにおいて、十分に簿価を超過していると判定されています。また、その他の報告単位が有する残りの営業権の公正価値も、簿価を十分に超過しているか、もしくは重要性がないと考えています。報告単位の公正価値は、主に将来の事業計画に基づいた割引キャッシュ・フロー法により見積もられ、その計画は過去実績や最新の中長期的な見通しを基に作成されていますが、現時点で予期しない事象により将来の営業利益が著しく減少した場合、当該報告単位の予測公正価値に不利な影響を及ぼすことがあります。

 当連結会計年度は営業権の減損損失はありませんでした。前連結会計年度においては73億円の減損損失を計上しています。報告単位の公正価値は割引キャッシュ・フロー法によって測定しています。

(d)投資の減損

 当社グループは、国内外の他企業に対して投資を行っています。それらの投資は出資比率、投資先への影響力、上場の有無により持分法、原価法及び公正価値に基づいて会計処理を実施しています。過去において、当社グループはいくつかの「関連会社投資」について多額の減損処理を実施し、その減損額をそれぞれの会計期間における「持分法による投資損益(△損失)」に計上しました。今後においても「関連会社投資」及び「市場性のある有価証券及びその他の投資」について同様の減損が発生する可能性があります。また、今後、投資持分の売却に際して多額の売却損益を計上する可能性もあります。当連結会計年度末において、「関連会社投資」の簿価は4,245億円、「市場性のある有価証券及びその他の投資」の簿価は1,719億円でした。当社グループの主要な投資先は、三井住友カード株式会社、インドのTTSL及びフィリピンのPLDTであり、当連結会計年度末において、いずれも「関連会社投資」に区分されています。

 当該投資において価値の下落またはその起因となる事象が生じたかどうか、また生じた場合は、価値の下落が一時的かどうかの評価、判定を行う必要があります。当社グループは、投資の簿価が回復できない可能性を示唆する事象や環境の変化が発生したときは、常に減損の要否について検討を行っています。減損の検討の契機となる事項のうち、当社グループが重要であると考えるものは、以下のとおりです(ただし、これらの事項に限定されるわけではありません)。

・投資先企業株式の市場価格が、著しくあるいは継続的に下落していること
・投資先の当期の営業キャッシュ・フローが赤字となっていること
・投資先の過去のキャッシュ・フローの実績が計画に比べ著しく低水準なこと
・投資先によって重要な減損または評価損が計上されたこと
・公開されている投資先関連会社株式の市場価格に著しい変化が見られること
・投資先関連会社の競合相手が損失を出していること
・その他のネガティブな業界動向あるいは経済動向

 当社グループは、投資の価値評価に際し、割引キャッシュ・フローによる評価、外部の第三者による評価、ならびに入手可能である場合は市場の時価情報を含む様々な情報を活用しています。回収可能価額の算定には、投資先企業の事業業績、財務情報、技術革新、設備投資、市場の成長及びシェア、割引率及びターミナル・バリューなどの推定値が必要になる場合があります。投資の価値評価を実施した結果、一時的ではない、投資簿価を下回る価値の下落が認められた場合は、減損損失を計上しています。このような減損処理時の投資の公正価値が新たな投資簿価となっています。「関連会社投資」の評価損は連結損益計算書の「持分法による投資損益(△損失)」に、「市場性のある有価証券及びその他の投資」の評価損は「営業外損益(△費用)」にそれぞれ含まれています。当連結会計年度及び前連結会計年度に実施した関連会社投資の価値評価において、一時的ではない価値の下落に伴う減損処理を実施しています。

 当連結会計年度及び前連結会計年度において、TTSLを含む関連会社投資の減損額はそれぞれ、513億円及び259億円でした。これらの投資先の価値を見積もるにあたり、重要な観察不可能なインプット値として加重平均資本コストを使用しており、当連結会計年度の主要な値は12.6%、前連結会計年度は11.3%~15.9%でした。

 TTSL においては、業界を取り巻く最近の経済・金融状況により、投資の価値に一時的ではない下落が生じていないかを判断するため、TTSLの事業の見通しを検討しました。前連結会計年度においてインドの移動通信事業者間の料金競争が激化したことやその当時の長期的な見通しを踏まえると、TTSLの見積将来キャッシュ・フローは著しい下方修正となり、回収可能価額は投資簿価を著しく下回り減損が一時的ではないと判断したため、TTSLに係る減損損失68億円を認識しました。当連結会計年度は、インドにおける周波数の入札価格高騰により周波数の維持・獲得に伴いコストが増大する等、事業リスクが高まったことにより、TTSLの見積将来キャッシュ・フローは更なる下方修正となりました。また、高まる事業リスクと直近のTTSLの業績を反映して加重平均資本コストは12.6%に増加し、TTSLの見積りキャッシュ・フローに当該加重平均資本コストを適用した結果、一時的ではない価値の下落であると判断し、512億円の減損損失を認識しました。

 「(1)営業成績 ②当連結会計年度の業績」に記載の通り、当社グループは、TTSLの株式を売却する予定ですが、TTSL株式の売却時または記載した条件での取引が実現しない場合、損益を認識する場合があります。

 「市場性のある有価証券及びその他の投資」については、当連結会計年度及び前連結会計年度において数社への投資に対して一時的ではない価値の下落に伴う減損処理を実施しており、それぞれ31億円及び109億円の減損損失を計上しました。

 当社グループは、減損実施後の投資簿価については公正価値に近似していると考えていますが、投資価値が投資簿価を下回っている期間や、予測される回収可能価値等の条件次第では、将来追加的な減損処理が必要となる可能性があります。

(e)ポイントプログラム引当金

 当社グループは、携帯電話の利用などに応じて付与するポイントと引き換えに、当社グループの商品購入時の割引等の特典を提供する「ドコモポイントサービス」を実施しており、お客様が獲得したポイントについて「ポイントプログラム引当金」を計上しています。当連結会計年度末及び前連結会計年度末におけるポイントプログラム引当金は短期、長期合わせてそれぞれ1,164億円及び1,440億円でした。また、当連結会計年度及び前連結会計年度において計上されたポイントプログラム経費は、それぞれ708億円及び747億円でした。

 ポイントプログラム引当金の算定においては、将来の解約等による失効部分を反映したポイント利用率等の見積りが必要となります。実際のポイント利用率が当初見積りよりも多い場合などにおいて、将来において追加的な費用の計上や引当金の計上を実施する必要が生じる可能性があります。当連結会計年度末におけるポイントプログラム引当金の算定において、その他全ての仮定を一定としたままで、ポイント利用率が1%上昇した場合、約14億円の引当金の追加計上が必要となります。

(f)年金債務

 当社グループは、従業員非拠出型確定給付年金制度である規約型企業年金制度を設けており、ほぼ全従業員を加入対象としています。また、従業員拠出型確定給付年金制度であるNTTグループの企業年金基金制度にも加入しています。

 年金費用及び年金債務の数理計算にあたっては、割引率、年金資産の長期期待収益率、長期昇給率、平均残存勤務年数等の様々な判断及び見積りに基づく仮定が必要となります。その中でも割引率及び年金資産の長期期待収益率を数理計算上の重要な仮定であると考えています。割引率については、償還期間が年金給付の見積り期間と同じ期間に利用可能な格付けの高い固定利付債券の市場利子率に基づいて適正な率を採用しています。また、年金資産の長期期待収益率については、現在及び将来の年金資産のポートフォリオや、各種長期投資の過去の実績利回りの分析を基にした期待収益とリスクを考慮して決定しています。これらの仮定について、当社グループは毎年検討を行っているほか、重要な影響を及ぼすことが想定される事象または投資環境の変化が発生した場合にも見直しの検討を行っています。

当連結会計年度末及び前連結会計年度末における予測給付債務を決める際に用いられた割引率ならびに当連結会計年度及び前連結会計年度における年金資産の長期期待収益率は次のとおりです。

 

前連結会計年度
2012年4月1日から
2013年3月31日まで

当連結会計年度
2013年4月1日から
2014年3月31日まで

規約型企業年金制度

 

 

 割引率

1.5%

1.4%

 年金資産の長期期待収益率

2.0%

2.0%

 実際収益率

約9%

約9%

NTT企業年金基金制度

 

 

 割引率

1.5%

1.4%

 年金資産の長期期待収益率

2.5%

2.5%

 実際収益率

約12%

約10%

 

 当社グループの規約型企業年金制度の予測給付債務は、当連結会計年度末で2,061億円、前連結会計年度末で2,148億円でした。当社グループの従業員に係る数理計算を基礎として算出されたNTT企業年金基金制度の予測給付債務は当連結会計年度末で1,169億円、前連結会計年度末で1,169億円でした。予測給付債務は、その実績との差異及び仮定の変更により大きく変動する可能性があります。仮定と実績との差異に関しては、米国会計基準に基づき、その他の包括利益累積額として認識された年金数理上の差異のうち、予測給付債務もしくは年金資産の公正価値のいずれか大きい方の10%を超える額が従業員の予測平均残存勤務期間にわたって償却されます。

 

 当社グループの規約型企業年金制度及びNTT企業年金基金制度において、その他全ての仮定を一定としたままで、当連結会計年度末の割引率及び年金資産の長期期待収益率を変更した場合の状況を示すと次のとおりです。

(単位:億円)

仮定の変更

予測給付債務

年金費用
(税効果考慮前)

その他の包括利益
(△損失)累積額
(税効果考慮後)

規約型企業年金制度

 

 

 

 割引率が0.5%増加/低下

△90/95

3/△3

60/△63

 年金資産の長期期待収益率が0.5%増加/低下

-

△5/4

-

NTT企業年金基金制度

 

 

 

 割引率が0.5%増加/低下

△110/121

2/△1

76/△75

 年金資産の長期期待収益率が0.5%増加/低下

-

△4/3

-

 

年金債務算定上の仮定などについては、連結財務諸表注記16を合わせてご参照下さい。

(g)収益の認識

 当社グループは、契約事務手数料収入を繰り延べ、契約者の見積平均契約期間にわたって収益を認識する方針を採用しています。関連する直接費用も、契約事務手数料収入の額を上限として、同期間にわたって繰延償却しています。収益及びサービス原価の計上額は、契約事務手数料及び関連する直接費用、ならびに計上額算定の分母となる契約者との予想契約期間によって影響を受けます。収益及び費用の繰延を行うための契約者の予想契約期間の見積りに影響を与える要因としては、解約率、新たに導入されたまたは将来導入が予想され得る競合商品、サービス、技術等が挙げられます。現在の償却期間は、過去のトレンドの分析と当社グループの経験に基づき算定されています。当連結会計年度及び前連結会計年度において、それぞれ163億円及び296億円の契約事務手数料収入及び関連する直接費用を計上しました。当連結会計年度末及び前連結会計年度末の繰延契約事務手数料収入は、727億円及び951億円となっています。

②最近公表された会計基準

 2014年5月28日、米国財務会計基準審議会(Financial Accounting Standards Board)は、会計基準アップデート(Accounting Standards Update)2014-09「(トピック606):顧客との契約から生じる収益」を公表しました。当該基準は、企業が、約束した財又はサービスの顧客への移転の対価として権利を得ると見込んでいる金額を認識することを要求しています。当該基準が適用になると、現在の米国会計基準の収益認識に係るガイダンスの大部分が当該基準の内容に置き換わります。当該基準は、当社グループにおいて、2017年4月1日に開始する連結会計年度より適用されます。なお、早期適用は認められていません。
  当社グループは、当該基準が当社グループの連結財務諸表及び関連する注記に与える影響の検討を行っていますが、移行方法の選択は実施しておらず、現行の財務報告に与える影響の算定も実施していません。

 

 上記の記述には、上記記載の各要因、市場・業界の状況、及びかかる状況下での当社グループの業績に関する経営陣の想定や認識に基づく将来の見通しに関する記述を含んでいます。当社グループの実際の業績は、これらの予測と大きく異なる可能性もあり、また市場・業界の状況の変化、競争、ならびに「第2 事業の状況 4 事業等のリスク」で記載の他の要因・リスク等の様々な要因・不確実性に影響される可能性があります。さらに、想定外の事象及び状況が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性もあります。このため、上述の予測が正確であるという保証は不可能であり、いたしかねます。