第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、“Bringing value to life.”という企業理念のもと具体的には、次の4項目を経営方針に掲げて活動しています。

(お客様とともに)

 お客様から選ばれ信頼されるパートナーであり続けるために、現場第一に徹し、創意工夫に努め、新たな価値の創造を追求します。

(株主・投資家の皆様とともに)

 公正かつ透明な経営を実践し、効率的な事業活動を通じて、企業価値の増大を目指します。

(社会とともに)

 良き企業市民として積極的に社会の課題に取り組み、環境の保全をはじめとして、より良い地球社会の実現に貢献します。

(グループ社員とともに)

 グローバル企業として、社員の多様性と挑戦する気概を尊重し、人材育成に力を注ぎ、夢と誇りを持って働ける日本郵船グループを目指します。

 

(2) 中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標

 当社グループは、海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。そしてこの企業理念に基づき、平成30年3月に新中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定し、①事業ポートフォリオの最適化(ドライバルク事業の抜本的見直しとコンテナ船統合会社の成功等)、②運賃安定型事業の積み上げ(物流・自動車船・自動車物流事業のシナジー構築等による強化とLNG・海洋事業の強化等)、③効率化、新たな価値創出(Digitalization and Greenへの取り組みを通じた次世代の成長分野の開拓等)を基本戦略として、長期的な企業価値の増大を達成すべく全力で取り組みます。

 

(“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標)

 

2017年度実績

(ご参考)

中期目標

(2022年目途)

経常利益

280億円

700~1,000億円

ROE

3.8%

min 8.0%

自己資本比率

27.0%

min 30.0%

D/Eレシオ

1.78

1.50以下

 

(キャッシュ・フロー)

営業活動による

キャッシュ・フロー

890億円(単年)

5,700億円(5カ年累計)

投資活動による

キャッシュ・フロー

1,379億円(単年)

5,200億円(5カ年累計)

 

(前提)

為替レート

111.19円/US$

105.00円/US$

燃料油価格

US$341.41/MT

HSFO US$320/MT

LSGO US$620/MT

*HSFO = High Sulphur Fuel Oil, LSGO = Low Sulphur Gas Oil

 

(株主還元策)

 当社は、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題のひとつとして位置づけています。将来の市況変動に耐え得る内部留保の水準にも留意しつつ、業績の見通しや連結配当性向25%を目安に、利益配分を決定する方針です。

 

(3)会社の対処すべき課題

①安定と成長の戦略

 当社グループは、本年3月に新中期経営計画“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しました。株主をはじめとするすべてのステークホルダーや社会から必要とされる企業であり続けるために、常に新たな価値を創造し、社会や環境の課題解決に貢献していくことが当社の責務であると考えています。海運や物流といった「モノ運び」の役割に限定することなく新たなものに挑戦していくという信念のもと、当社の企業理念を構成する基本理念を“Bringing value to life.”と再定義しました。

 創業より130年を超えた現在、業界市況や事業環境の変動に止まらず、激変する世界情勢や絶え間ない社会の変容、そして国境なき経済や資本市場に翻弄されることなく、永続的に成長を遂げることの重さを実感しています。そのためにできることとして、当社が10年後にあるべき姿に真摯に向き合い議論を深めた結果、責任ある事業活動を通じて積極的に社会や環境の課題を解決し、絶えず半歩先の精神で新たな価値を創出して安定的な収益構造を確立し、正のスパイラルをもたらすことが不可欠である、との結論に至りました。新中期経営計画の行き着く先を見据え、資産流動化とコスト削減により有利子負債を削減しつつ財務の健全性を堅持します。既存事業の拡充に加えて情報技術・環境分野を中心とした新規投資の実現及び成長分野への投資により積極的に将来キャッシュ・フローを創出することで、資本効率とROE(自己資本利益率)を向上させ、長期的な企業価値の増大を達成すべく全力で取り組みます。

 

 上記に基づき、以下のような具体的施策に取り組みます。

 まず、事業ポートフォリオの最適化により、ボラティリティへの耐性を強化します。ドライバルク輸送部門においては、市況耐性の高い不定期船事業を構築し、情報通信技術等を活用した効率的な配船・運航によるコスト削減、提案型営業による顧客とのパートナーシップ強化で収益構造を改善します。コンテナ船部門では、定期コンテナ船事業の統合により効率性とスケールメリットを追求する戦略へ転換します。

 また、成長分野である物流事業、自動車船・自動車物流事業及び重点投資分野であるLNG・海洋事業を強化し、運賃安定型事業の積み上げを推進します。物流事業においては、成長産業と新興市場を核に総合物流サービスの拡大、選択と集中による戦略投資、当社グループの経営基盤を活かした顧客ニーズに対応するサービスの深化により競争力の強化に努めます。自動車輸送部門においては、デジタル技術を活用した輸送・荷役の効率化と積極的な環境対応を図り、自動車産業の構造変化を見据えた高度な完成車物流の実現を目指します。エネルギー輸送事業においては、新興国需要への対応を強化し、世界で先行する船舶用LNG燃料の供給・販売事業を推進し、海洋事業では、技術力に基づく重点投資を行い、変化するエネルギー需要や新たなニーズに対応する新規事業への参画も含め事業を拡充します。

 これまでの技術研究開発を通じオペレーション効率化を進めてきましたが、Digitalization and Greenによる事業変革に取り組みます。最新のデジタル技術を駆使し、サプライチェーン全体の最適化を目指しながらCO₂削減など環境負荷を低減し、社会的責任を果たします。また、再生可能エネルギーをテーマに次世代へ向けた新たな価値創出を目指します。

 

②ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組み

 当社グループは、グローバルな視野を持って企業の社会的責任を果たすべく、「ガバナンス」の強化を図り、「安全」「環境」「人材」を経営の最重要課題に位置付け、ESGに対して積極的に取り組みます。

 企業経営の健全性と透明性をより高めるために、コンプライアンス意識の向上、内部統制の強化、グループガバナンスの一層の充実を図り、積極的な情報開示に努めます。

 船舶の安全運航などのオペレーションの安全性は当社グループのあらゆる事業の根幹であり、安全推進活動に継続して取り組みます。また、環境保全に関しては、パリ協定をふまえた温暖化防止に向けた取組みとして、船舶から排出されるCO₂排出量の中長期削減目標を策定しました。最適運航のさらなる深度化や重油に代わる新燃料としてCO₂・SOx・NOx排出量削減が可能となるLNG燃料への転換を積極的に進めます。バラスト水処理装置の搭載や燃料油に含まれる硫黄分の規制強化、シップリサイクルなどの様々な環境規制への対応に取り組みます。

 さらに、当社グループの基本理念を支える“NYKグループ・バリュー”(誠意・創意・熱意)の実践を通じて、誇りを持って働ける職場づくりの実現を目指し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めます。当社グループは、新中期経営計画においてESGの経営戦略への統合を掲げており、事業活動を通して、国連で採択された持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)の達成や社会・環境課題の解決に貢献します。

 

 

 

2【事業等のリスク】

当社グループの定期船事業、航空運送事業、物流事業、不定期専用船事業、不動産業、その他の事業の事業活動において、世界各国の経済情勢、政治的又は社会的な要因等により、当社グループの事業や業績が影響を受ける可能性があります。当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)重大な事故等による影響について

当社グループは、“Bringing value to life.”という企業理念のもと、世界中で船舶及び航空機を運航・管理しています。これらの安全運航及び環境保護対策を最重要課題と認識し、船舶においては独自の安全運航管理システム「NAV9000」による品質保証活動を実施するなど、安全運航に努めています。船舶をはじめ各現場での実行状況は、社長を委員長とする「安全・環境対策推進委員会」で定期的にレビューされ、安全品質レベルを更に向上・改善させるシステムが構築されており、また、緊急事態に際しては、適切な対応ができる体制を整えています。しかしながら、もし不測の事故、特に油濁その他の環境汚染、乗務員又は乗客の死傷、船舶の喪失又は損傷等につながる重大な事故等が発生した場合、もしくは海賊・テロ事案等保安事件が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

 

(2)海運市況・荷動き等の変動による影響について

当社グループは、海運市況の変動に左右されない安定的な営業収益の確保に努めていますが、世界の経済動向、国際間の荷動き、競争激化、船腹需給バランス等の影響により、運賃収入及び傭船料収入などが大きく変動する可能性があり、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

特に、海上運賃は、船腹需給の不均衡により大幅に変動する傾向にあります。一方、船腹の供給が需要を上回ると、市場における傭船料の水準が下落する可能性があります。

なお、船腹の需要に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。

・世界的、地域的な政治動向及び経済状況

・当社グループが運搬するエネルギー資源、原材料及び商品の需要及び在庫水準

・工場のグローバル化

・海上輸送及びその他の輸送方法の変化並びに代替輸送手段の発展

・環境及びその他の規制の動向

一方、船腹の供給に影響を及ぼす可能性のある要因には、以下のものがあります。

・新造船の竣工により増加する船腹量

・老齢船の解撤により減少する船腹量

・港及び運河の混雑又は閉鎖

・環境規制及び船舶の耐用年数を制限する可能性のあるその他の規制の変更又は基準を充たす船舶の増減

 

 当社グループは、長期の安定契約に重点を置いており、船隊の多くを船舶の保有又は長期傭船により調達しています。しかしながら、その船隊規模に見合った貨物の長期契約が十分に獲得できない場合、それら船舶は短期契約による運航に供することとなり、運賃水準が大幅に下落すると、船舶の運航により得られる収益が、保有船の固定費用を十分にまかなうことができず、その結果として当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(3)為替レートの変動による影響について

当社グループの事業においては、外貨建て取引の収入が多く、為替レートの変動が損益に影響を与える可能性があります。収入と費用の通貨を一致させる施策を進めるとともに、為替予約や通貨スワップ等のヘッジ取引により、為替レート変動の影響の軽減に努めています。また、当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、海外の連結子会社の財務諸表を円換算しており、為替レートが変動した場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(4)燃料油価格の変動による影響について

当社グループは、世界中で当社グループが運航する船舶及び航空機に使用される燃料油を常時購入しています。

燃料油費用は、当社グループの定期船事業、不定期専用船事業及び航空運送事業における費用の大きな割合を占めています。燃料油の価格水準及び入手可能量は、世界的な原油需給、外国為替市場の変動、産油国やOPECの動向、環境規制の状況、戦争その他の多くの要因により変動し、これらの動向を正確に予測することは困難です。当社グ

ループとして、燃料油調達地域の分散及びデリバティブ取引を利用した燃料油の価格ヘッジ、燃料油の消費量節減等の対策を講じて業績に与える影響の軽減に努めていますが、かかる対策は限定的であり、価格の変動又は供給不足から十分に影響を軽減できない可能性があります。また、今後も環境規制の拡大・強化に伴い、船舶は環境負荷の低い良質な燃料の使用が求められ、結果として価格が割高な燃料油を調達せざるを得ない可能性があります。具体的には、2020年から強化される低硫黄燃料規制への対応として、従来よりも高コストの規制適合燃料を使用せねばならず、従来の高硫黄燃料を継続使用するためには脱硫装置を搭載する本船改造設備投資が必要であり、燃料費もしくは設備投資費などの大幅なコストアップが予想されます。当社グループは、運賃値上げ又は燃油サーチャージの適用といった方法で、全ての通常燃料油の価格上昇を転嫁できていないため、燃料油価格の変動により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(5)グローバルな事業展開による影響について

当社グループの活動の範囲は、世界各地に及んでおり、各々の地域における経済状況等により影響を受ける可能性があります。具体的には、以下に掲げるいくつかのリスクが内在しています。

・政治的又は経済的要因

・事業・投資許可、租税、為替管制、国際資産の没収、独占禁止、通商制限など公的規制の影響

・他社と合弁・提携する事業の動向により生じる影響

・戦争、暴動、テロ、海賊、伝染病、ストライキ、コンピューターウイルス、その他の要因による社会的混乱

・地震、津波、台風等の自然災害の影響

・各国規制・制裁などの把握不全

これらリスクに対しては、グループ内での情報収集、外部コンサルタント起用等を通じ、その予防・回避に努めていますが、これらの事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループは、コンテナ船事業において、他の海運会社との戦略的提携である「ザ・アライアンス」のメンバーとなっています。当社グループは、コンテナ船事業の効率的かつグローバルなネットワークを保つために、かかるアライアンスが必要であると考えています。しかしながら、アライアンスの活動には、均一の安全・運航基準及び管理方針・手続を維持する難しさ、アライアンス統合及び解散の可能性、アライアンスに加盟している会社の撤退又はアライアンスによって必ずしも期待していた結果が得られない可能性といったリスクを伴います。当社グループがかかる要因に適切に対処できない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 当社グループの船舶の安全な運航のためには、優秀な船員を確保することが特に重要となります。当社グループの船員のほとんどは、アジアの国々(例えばフィリピンやインド)の外国人です。当社グループは、優秀な船員を確保するために、教育と訓練の提供及び他の国からの採用など、様々な手段を取ってきましたが、将来において、適切な費用で必要な技術水準を持った船員を十分に確保できるという保証はありません。例えば、平成20年のリーマン・ショック前の数年間、海上輸送への需要が高かった時期においては、船員を雇用するための人件費が大幅に増加しました。必要な船員を合理的な費用で雇用、維持できない場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。加えて、戦争や政治的な要因が、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があり、さらに船員を含む当社グループの従業員の一部は、労働組合に所属しており、当社グループの従業員によってストライキ、業務停止又はサボタージュが行われた場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。また、例えば北米などの港湾施設でストライキが行われた場合など、当社グループ従業員以外の第三者によるストライキ又は業務停止によっても、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、中東を含め世界中の紛争・テロ及び北朝鮮問題等のリスクによる影響を受けます。また、海賊被害は近年減少していますが、今もなお海賊行為が発生するマラッカ・シンガポール海峡、セルベス・スールー海、西アフリカ沿岸及びソマリア海賊襲撃エリアであるアデン湾、アラビア海、インド洋などを航行しています。当社グループでは、関係機関からの情報収集及びアデン湾地域では海上自衛隊の護衛を受けるなど、海賊行為について対策を講じていますが、テロ及び海賊の襲撃を受けた場合、あるいは政情不安及び戦闘などが起こった場合、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。今後、これら水域が通常の戦争保険除外地域として指定された場合(一部水域は既に指定されています。)には、保険料の水準及び保険金の支払いに影響を与える可能性があります。

 

(6)システム開発・運用における事故等による影響について

当社グループは、その業務遂行には、ITの円滑な運用は今や欠かせない企業基盤となっており、地震・火災等の罹災に際しても、また、サイバー攻撃に対しても、システムの安全及び安定稼動の確保に努めています。システムダウンに至った場合でも、その速やかな復旧を図るべく、努めていますが、システムダウンが一定期間以上に及び、お客様への情報提供及び業務処理が滞ることとなった場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(7)環境保全、安全・保安対策に係る規制強化等による影響について

当社グループが事業を行う各地域において、当社グループの船舶は安全運航及び海難事故の防止に関する国際法を遵守する必要があります。加えて、環境保護、輸出入、税金及び為替に関する地域固有の法令及び規制を遵守する必要があります。

当社グループは、環境保全活動及び物流サプライチェーンの安全・保安対策の重要性を認識しつつ、グローバルに事業を展開・拡大しています。例えば、バラスト水管理のための処置装置の搭載、藻、貝類、蛾等の船体付着物の移動防止に関する規制への対応、省エネ運航によるCO₂排出量削減、低硫黄燃料使用によるSOx排出量削減、NOx排出低減のため電子制御エンジン導入などの環境保全対策を実施しています。

今後、地球温暖化や大気汚染の防止、生物多様性の維持などの環境保全、安全・保安対策に対する規制の強化及び社会の期待の高まりなどにより、これらに関連する対策費用が増加した場合や、特定の地域における法令又は規制を遵守することが困難となった場合には、当該地域における当社グループの事業運営が制限され、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(8)航空運送事業に係る影響について

 当社グループの航空運送事業においては、活動範囲が世界各地に及んでおり、「安全は全てに優先する」という安全方針に基づき、全社的安全推進体制を構築し、安全運航の確保に努めています。しかしながら、乗務員の死傷、航空機の喪失又は損傷等につながる重大な航空機事故が発生した場合や、各々の地域における政情不安、テロ、及び自然災害等が発生した場合、もしくは航空機の稼働を著しく低下させる事由が発生した場合には、貨物輸送の遅延・不能、運送契約の解除、債務不履行、過料、訴訟、罰金、営業制限、保険料の引き上げ、評判及び顧客関係の悪化といった事態に直面する可能性があり、かかるリスクを保険で適切にカバーできない場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

航空貨物の運賃は、貨物を輸送するスペースと荷動きの不均衡により大幅に変動する可能性があります。競争激化による航空運賃の下落の他、為替レートや航空燃料油価格の変動によっても、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

航空運送事業の業務遂行には、ITの円滑な運用は今や欠かせない企業基盤となっているため、システムの安全及び安定稼働の確保に努めていますが、システムダウンが一定期間以上に及ぶ場合には、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

航空機を運航する当社グループ会社は、航空運送事業者として国際条約、二国間協定、IATA(国際航空運送協会)の決定事項その他の国際的取り決めに従って国際航空運送事業を営んでおり、当社グループの航空運送事業は運賃及び料金の設定に関し独占禁止法の制約を受ける場合があります。また、米国を中心に世界規模で航空保安強化に係る法規制が進むなか、保安対策費用の増加が見込まれます。加えて、民間国際航空の分野では環境負荷低減の取り組みが着実に進行しており、規制強化などによって対策費用が増加した場合は、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(9)取引先との関係に係る影響について

 当社グループのドライバルカー部門及びタンカー部門においては、取引先との長期契約に重点を置いています。かかる長期契約には、決定された運賃、使用船腹量及び費用調整条項が定められ、市場環境の変化による影響を安定化させるのに役立っています。しかしながら、当社グループが長期契約を結んでいる一部の取引先の経営状態等が悪化し、取引先が契約条項の全部又は一部の履行を継続できなくなる可能性があります。一方当社グループは、かかる長期契約上の義務を履行するにあたって、第三者からの傭船によって船舶を調達する場合があります。傭船先の一部が、傭船期間終了前に当社グループとの契約を履行できなくなる可能性があり、これによって他の船舶を調達するための費用が発生する可能性もあります。今後このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。なお、長期契約は市況の変動による影響を軽減できる反面、市況の上昇局面においても直ちに高い運賃を請求できなくなります。

 当社グループの重要な取引先には、自動車メーカー、製鉄会社、製紙会社、電機メーカー、公共事業会社や小売業者等が含まれています。仮に、重要な取引先との間の取引規模が縮小したり、重要な取引先を失うようなことがあれば、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(10)投資計画に係る影響について

当社グループは、船隊や航空機の整備等に係る投資を計画し、実行していますが、今後の世界経済の状況や海運市況及び公的規制等の動向によって、これらが計画どおりに進捗しない場合、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

新造船の発注から竣工までには数年の年月を要し、その間の需要の変化も一つの要因です。大型の造船計画に伴う納入遅延の可能性や、造船所における労働争議、造船所の経営難など造船所自体に関わる要因によっても左右されます。

 

(11)金利動向による影響について

当社グループは、船舶や航空機、輸送関連施設等の取得に係る設備投資需要や事業活動に係る運転資金需要に対し、内部資金を充当する他、外部から資金を調達しています。これらの外部資金については、現在、変動金利で調達する部分もあり、金利環境を勘案の上、金利固定化等により、金利変動による影響の軽減に努めていますが、将来の金利変動によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(12)運航船舶等の処分に関する影響について

当社グループは、海運市況の著しい変動、及び運航する船舶や航空機の新技術開発・導入に起因する陳腐化あるいは安全規制・諸規則の変更等による物理的使用制限等により、当社グループが保有する船舶や航空機を売却する場合、又は当社グループが傭船する船舶の傭船契約解約を実施する場合があります。その結果、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

船舶又は航空機を売却する際、常に有利な条件で売却できる保証はなく、またそもそも売却できない可能性もあります。市況が低迷し、船舶及び航空機の市場価格が下落しているときに、減価償却が済んでいない船舶及び航空機を簿価より低い価格で売却しなければならない場合もあり、その場合売却損を計上する可能性もあります。また、売却をしない場合でも、現在の市場低迷が回復せず、又は更に悪化した場合、船舶、航空機その他の資産の価値が下落して評価損を被る可能性があります。

傭船契約を解約する場合は、船主と協議の上、違約金を支払う可能性があります。

 

(13)投資有価証券における評価損による影響について

当社グループは、有価証券の評価基準及び評価方法として、投資有価証券のうち時価のあるものについては決算日前1ヶ月の市場価格の平均等に基づく時価法を採用しています。株式市況の変動等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(14)退職給付制度による影響について

当社グループは、確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度、厚生年金基金制度及び退職一時金制度を設けています。年金制度の変更、年金資産運用の状況及び退職給付会計において設定される前提条件の変更等により、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

(15)繰延税金資産の回収可能性の評価における影響について

当社グループは、将来の課税所得の見積りに基づいて、繰延税金資産の回収可能性を評価していますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産を減額し、税金費用を計上することになります。

その結果、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

 

 

(16)訴訟その他の法定手続の発生について

当社グループの定期船事業、航空運送事業、物流事業、不定期専用船事業、不動産業、その他の事業の事業活動において、各種の訴訟や規制当局による調査及び処分に関するリスクを有しています。以下の事例も含め、訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの業績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。

当社グループは、平成24年9月以降自動車等の貨物輸送に関して独占禁止法違反の疑いがあるとして、複数の海外当局の調査対象となっています。

また、完成自動車車両等の海上輸送について、主要自動車船社と共同して運賃を設定したとして、請求金額を特定しないまま損害賠償及び差し止め等を求める集団民事訴訟を、米国その他の地域にて提起されていますが、現時点ではこれらの調査・訴訟の結果を合理的に予測することは困難です。

 

なお、上記は当社グループが事業を継続する上で、予想される主なリスクを具体的に例示したものであり、これらに限定されるものではありません。

 

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。

(1)経営成績の状況

 

(単位:億円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率

売上高

19,238

21,832

2,593

13.5

売上原価

17,367

19,524

2,156

12.4

販売費及び一般管理費

2,052

2,029

△22

△1.1

営業利益

△180

278

459

経常利益

10

280

269

親会社株主に帰属する当期純利益

△2,657

201

2,859

 

平均為替レート

108.76円/US$

111.19円/US$

2.43円 円安

平均消費燃料油価格

US$253.75/MT

US$341.41/MT

US$87.66 高

 

 海運を取り巻く状況は、コンテナ船部門では、供給は前年に引き続き高い水準で推移し、スポット運賃の回復はやや足踏み状態となりましたが、貨物需要に支えられ荷動きは安定的に推移しました。ドライバルク部門では、未だ船腹過剰状態の解消には至っていませんが、鉄鉱石、石炭、穀物の荷動きが揃って増加し、市況は改善しました。非海運事業では、物流事業は仕入れコストの高止まりなどにより低迷しましたが、航空運送事業は荷動きが全般的に活況を呈しました。

 

 これらの結果、当期の業績につきましては、売上高2兆1,832億円営業利益278億円経常利益280億円、親会社株主に帰属する当期純利益は201億円の利益計上となり業績は大幅に改善しました。

 

 なお、為替レートと消費燃料油価格の変動は以下のとおりです。

 

0102010_001.png

0102010_002.png

(注) 為替レート・消費燃料油価格とも、当社社内値です。

 

<セグメント別概況>

 当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。

(単位:億円)

 

 

売上高

経常利益

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

増減率

前連結

会計年度

当連結

会計年度

増減額

一般貨物

輸送事業

定期船事業

5,859

6,914

1,055

18.0

△127

108

235

航空運送事業

819

978

159

19.4

26

18

△8

物流事業

4,613

5,123

509

11.0

76

23

△52

不定期専用船事業

7,177

7,956

778

10.9

△41

96

138

その他事業

不動産業

94

79

△14

△15.9

120

26

△94

その他の事業

1,466

1,723

256

17.5

△14

31

46

 

<定期船事業>

 コンテナ船部門では、北米航路では荷動きは堅調であったものの、大型の新造船の竣工に伴う供給の増加の影響もあり、スポット運賃の回復はやや足踏み状態となりました。欧州航路では上期において荷動きが回復し、需給バランスが改善しましたが、下期には全体的に荷動きが減速しました。

 サービス面では、当社を含む5社からなる「ザ・アライアンス」で各サービスの効率化を進め、利便性と競争力の維持、強化に努めました。コスト面では、引き続き積載効率の追求、燃費効率に優れた新造14,000TEU型コンテナ船の投入、航路事情に即した最適経済運航及び配船を軸として船費や運航費の圧縮に努めました。また、効率的なコンテナ運用をはじめとする諸施策により貨物費の削減にも努め、収益性と市況耐性を高めました。国内・海外コンテナターミナルの総取扱量は前連結会計年度比で増加し、定期船事業全体で業績は大幅に改善し、前連結会計年度比増収となり利益を計上しました。

 さらに市場における競争力を高めてコンテナ船事業を安定的かつ持続的に運営するため、当社は川崎汽船㈱、㈱商船三井と定期コンテナ船事業の統合を行い、新会社OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.は平成30年4月にサービスを開始しました。

 

<航空運送事業>

 航空運送事業は、燃料油価格の上昇、整備費の増加及び機材トラブルなどがあったものの、旺盛な貨物需要により年間を通じて良好なマーケットとなり、運賃は上昇しました。また、コードシェアを活用するなど効率的なオペレーションに努めたことで、輸送量も増加しました。

 前連結会計年度には機材の発注をキャンセルしたことに伴う為替差益の計上があったため、前連結会計年度比増収減益となりましたが、一時要因を除くと大幅な改善となりました。

 

<物流事業>

 航空貨物取扱事業は、仕入れコストの高止まりが継続しましたが、事業の見直しの結果、特に日本において粗利が改善しました。海上貨物取扱事業は、取扱量は増加したものの、仕入れコスト上昇局面において粗利の改善に時間を要しました。ロジスティクス事業は、米州の内陸輸送の取扱低迷と人件費高騰の影響を受け低調となりました。内航輸送事業は、年間を通じて荷動きは堅調に推移しました。

 以上の結果、物流事業全体で前連結会計年度比増収減益となりました。

 また、当社は連結子会社である郵船ロジスティクス㈱を平成30年2月1日付で完全子会社としました。なお、同社は平成30年1月29日付で上場廃止となりました。

 

<不定期専用船事業>

 自動車輸送部門では、原油価格の低迷を背景として減少した資源国・新興国向け輸送量の回復が遅れていますが、北米、欧州、アジア地域などへの輸送需要は堅調で完成車海上輸送台数は前連結会計年度を上回りました。自動車物流では、中国やインド、欧州を中心とした既存事業は概ね順調に推移し、また、ベルギーの完成車ターミナルに風力発電用風車の設置を決定するなど、環境に優しい「グリーンターミナル」の積極的なグローバル展開を推進しています。

 ドライバルク部門は、解撤よりも新造船の竣工数が上回り、船腹過剰の本格的な解消に至らなかったものの、鉄鉱石、石炭、穀物の荷動きが揃って増加し、市況は回復傾向が続いています。このような状況下、引き続き長期契約の獲得に努めるとともに、効率的な運航の徹底を進めるなどのコスト削減に取り組みました。さらに、貨物の組合せや配船の工夫によりバラスト航海を減らすなど、収支の向上を図りました。

 リキッド部門では、VLCC(大型原油タンカー)は荷動きは好調であったものの、新造船の供給圧力が需要増を上回ったため市況は悪化しました。石油製品タンカー及びLPG船は新造船の竣工による供給の増加が多く、それぞれ市況は低迷しました。LNG船は安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移し、海洋事業もFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップやシャトルタンカーが順調に稼動しました。

 以上の結果、不定期専用船事業全体で業績は改善し、前連結会計年度比増収となり利益を計上しました。

 

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<不動産業、その他の事業>

 不動産業は、前連結会計年度の出資先による信託受益権売却による一時収益の剥落により、前連結会計年度比減収減益となりましたが、一時要因を除くと業績は安定的に推移しました。

 その他の事業は、客船事業は5月の大型連休前後の集客が低迷したものの、夏場以降の国内外クルーズ販売が総じて堅調でした。また、舶用燃料油販売事業の業績が回復し、化学品製造販売や石油備蓄基地における海技活用事業、電気・機械工事事業も好調であったため、前連結会計年度比で増収となり利益を計上しました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて341億円減1,032億円となりました。

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益420億円、減価償却費878億円、利息の支払額△174億円等により890億円(前年同期279億円)となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△1,379億円(前年同期△1,446億円)となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入や社債の発行等により175億円(前年同期19億円)となりました。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

 当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。

①販売実績

 当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

定期船事業

691,433

118.0

航空運送事業

97,826

119.4

物流事業

512,332

111.0

不定期専用船事業

795,606

110.9

不動産業

7,941

84.1

その他の事業

172,300

117.5

2,277,440

113.7

消去

(94,238)

119.2

合計

2,183,201

113.5

(注)1.売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。

2.上記金額には消費税等は含まれていません。

 

②主要航路及び就航実績

 海運業における当社の各航路の就航状況は次のとおりです。

定期船部門(コンテナ船)

航路

延航海数

前事業年度

当事業年度

アジア/欧州

304

408

アジア/北米西岸

518

556

アジア/北米東岸(スエズ経由)

231

154

アジア/北米東岸(パナマ経由)

61

149

アジア/北米西岸/北米東岸/欧州

193

97

北米東岸/欧州

152

404

アジア/豪州

49

49

アジア/ニュージーランド

52

51

アジア/豪州/ニュージーランド

143

176

アジア/ハワイ/中南米西岸

232

189

中米西岸/北米西岸

64

53

アジア/南米東岸

123

91

アジア/アフリカ

93

96

南米東岸/北米東岸

59

52

アジア域内(東アジア)

1,642

1,487

アジア域内(西アジア)

666

795

合計

4,582

4,807

 

 

不定期船部門

航路

積荷

延航海数

前事業年度

当事業年度

米州方面

自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、塩、コークス、その他

385

434

アフリカ方面

自動車、チップ、鉄鉱石、その他

54

47

中東方面

自動車、その他

166

143

インド方面

石炭、鉄鉱石、その他

5

4

アジア方面

自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、その他

393

472

オセアニア方面

自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、その他

680

695

欧州方面

自動車、その他

112

114

ロシア方面

石炭、その他

18

18

三国間

自動車、石炭、チップ、鉄鉱石、塩、その他

758

810

合計

 

2,571

2,737

 

 

タンカー部門

 

定期貸船・他社運航共有船

航路

延航海数

 

 

延隻数

前事業年度

当事業年度

 

 

前事業年度

当事業年度

アラビア湾/日本

290

(126)

260

(110)

 

定期貸船に供した社船

25

26

東南アジア/日本

38

(38)

49

(49)

 

共有先の運航または

定期貸船に供した共有船

6

7

西・北豪州/日本

51

(50)

54

(54)

 

定期貸船に供した他社船

237

207

中国/日本

4

(3)

(-)

 

合計

268

240

三国間

132

(54)

118

(57)

 

 

 

 

その他

23

(16)

38

(28)

 

 

 

 

合計

538

(287)

519

(298)

 

 

 

 

(注) ( )内はLNG船及びLPG船の延航海数です。

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。

① 収益の認識

 当社グループの海運業収益は、コンテナ船に関しては複合輸送進行基準、それ以外は主として航海完了基準によっています。海運業以外の事業に関しては、役務が提供された時点で収益を認識することを基本とした合理的な基準を採用しています。

 

② 貸倒引当金

 当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 

③ 投資の評価について

 当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。

 

④ 減価償却資産の償却

 当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。

 

⑤ 退職給付

 従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。

 

⑦ 固定資産の減損

 当社グループは、原則として事業用資産においては管理会計上の区分でありかつ投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。

 

(2)経営成績の分析

 「1.経営成績等の状況の概要 (1)経営成績の状況」をご参照ください。

 当社グループは、平成30年4月から開始する5カ年の新しい経営計画として “Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”を策定しています。当連結会計年度においては、経営計画の達成状況を判断するための客観的な指標等がないため、平成29年度の達成・進捗状況を記載していません。“Staying Ahead 2022 with Digitalization and Green”の利益・財務目標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標」をご参照ください。

 

(3)財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、有形固定資産の増加などにより前連結会計年度末に比べ277億円増加し、2兆719億円となりました。負債合計額は、社債の発行などにより前連結会計年度末に比べ314億円増加1兆4,837億円となりました。純資産の部では、第130期定時株主総会の決議に基づいた資本剰余金から利益剰余金への振替えもあり、資本剰余金は1,203億円減少した一方、利益剰余金が1,429億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が5,518億円となり、これに非支配株主持分363億円を加えた純資産の合計は、5,882億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は1.78となりました。なお、D/Eレシオ算定上の有利子負債は連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、借入金、社債及びリース債務を対象としています。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

① キャッシュ・フローの状況

 「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

② 資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの定期船事業や不定期専用船事業運営に関する海運業費用です。この中には貨物費・燃料費・港費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては船舶・航空機投資や物流設備・ターミナル設備等への投資があります。当連結会計年度中に2,004億円の設備投資を行っています。

 

③ 財務政策

 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶・航空機に関してはリース等を活用しています。

 当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。このほか物流・ターミナル施設等設備投資についても同様に将来のキャッシュ・フローにあわせた安定的な資金等を投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。平成30年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は7,963億円で、通貨は円のみならず米ドル、ユーロ等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、平成30年3月31日現在1,750億円となっています。

 当社グループは、資金の流動性確保に努めており、平成30年6月20日現在1,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、シンジケーション方式等による金融機関からの円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。

 なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。平成30年6月20日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「A」、格付投資情報センター(R&I):「BBB+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。

 

 

 

4【経営上の重要な契約等】

 当社は、川崎汽船株式会社及び株式会社商船三井と、平成28年10月31日に締結した定期コンテナ船事業(海外ターミナル事業を含む)の統合を目的とした事業統合契約及び株主間契約に基づき、新会社を設立しました。新会社による定期コンテナ船事業のサービスは平成30年4月1日より開始しています。

 

OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(新会社)の概要

 出資額  :3,000百万USドル(平成30年4月2日時点)

 出資比率 :川崎汽船株式会社 31%

       株式会社商船三井 31%

       当社       38%

 

5【研究開発活動】

 当社グループは、安全運航と環境の保護に資する技術開発に積極的に取り組んでいます。完全子会社である㈱MTIを核として、気象・海象データ、運航データ等のビッグデータを活用し、燃費性能向上、及び最適運航を目指す技術開発や、船内プラントの状態監視・故障予知のための研究開発を行っています。また、サイバーセキュリティをはじめとした、ネットワーク化・自動化に関する先端技術の研究も行っています。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は1,097百万円です。