第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

当期のわが国経済は、各種経済対策を背景に、企業収益の改善や民間設備投資の持ち直しがみられ、雇用・所得環境が改善する中で個人消費も底堅く推移するなど、全体として緩やかな景気の回復が続きました。

このような状況のもと、当社グループでは各事業にわたり積極的な営業活動を行った結果、営業収益は5,231億8千7百万円と、前連結会計年度に比べ79億6千3百万円の増加(前期比1.5%増)となりました。これに伴い、営業利益は493億7千7百万円と、前連結会計年度に比べ52億5千7百万円の増加(前期比11.9%増)となったほか、経常利益につきましても420億6千1百万円と、前連結会計年度に比べ56億9千5百万円の増加(前期比15.7%増)となりました。また、当期純利益は250億4千8百万円と、前連結会計年度に比べ53億7千3百万円の増加(前期比27.3%増)となりました。

セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

① 運輸業

運輸業につきましては、安全を第一に快適で良質な輸送サービスを提供することが最も重要な社会的責任であると捉え、「安全管理規程」の適正な運用に基づく輸送の安全を確保するための取組みを継続的に推進しております。その一環として、当社及びグループ会社では、それぞれの交通機関としての特性に応じて災害や事故発生に備えた訓練等を実施したほか、各種設備投資をはじめとする安全の質を高める諸施策を鋭意進めました。

鉄道事業につきましては、輸送面において、最重要課題である当社線近郊区間の複々線化の早期完成に向け、工事中区間の東北沢~世田谷代田間において、昨年3月の地下化以降進めてきた地上の旧鉄道施設の撤去工事が概ね完了したほか、緩行線トンネル構築に向けた下北沢駅周辺での掘削工事に着手するなど、鋭意工事の進捗を図りました。また、近郊区間の各駅停車10両編成化計画に基づくホーム延伸工事を推進し、本年3月のダイヤ改正より、多摩線内において一部の各駅停車が10両編成での運転を開始いたしました。

営業面においては、テレビコマーシャルやウェブサイトを活用した宣伝展開により、ロマンスカーの利用促進や箱根地区への旅客誘致を図りました。また、小田急外国人旅行センターにおいて「春節限定箱根フリーパス」の積極的な販売に努めたほか、江ノ島電鉄㈱が台湾鉄路管理局と観光連携協定を締結し、台湾・平渓線との共同送客を開始するなど、グループが一体となってインバウンド施策を推進いたしました。さらに、行楽シーズンにおける臨時列車の運行や各種キャンペーンの展開を通じて大山エリアの活性化に努めたほか、富士山の世界文化遺産登録を記念した企画を実施するなど、輸送需要の喚起を図りました。

施設面においては、列車運行の安全性を一層高めるため、当社線に新列車制御システム「D-ATS-P」を導入する工事の進捗を図ったほか、運行異常時等における情報伝達の迅速化を図るため、デジタル列車無線を導入する工事を推進いたしました。また、当社において、行先案内表示装置の全駅設置に向けた工事やホーム上家増設工事を進め、駅施設の充実を図ったほか、全駅での公衆無線LANサービスの開始や箱根地区までを一体に捉えた駅ナンバリングの導入などにより、利便性の更なる向上に努めました。

自動車運送事業につきましては、各社において、環境に配慮した新型車両の導入を積極的に進め、排出ガスの低公害化や輸送サービスの向上を図りました。また、小田急バス㈱が登戸営業所開設に伴いダイヤ改正を実施したほか、小田急箱根高速バス㈱が箱根線の早朝・深夜便を拡充するなど、各社でお客さまのニーズを捉えた諸施策を実施し、利便性の向上に努めました。

以上の結果、雇用環境の改善や観光需要の増加等により、鉄道事業において定期・定期外ともに輸送人員が増加したほか、自動車運送事業や箱根エリアの各社においても好調に推移いたしました。加えて、鉄道事業等における消費増税に伴う定期券等の先買いの影響があったことなどから、営業収益は1,726億9千8百万円と、前連結会計年度に比べ30億8千8百万円の増加(前期比1.8%増)となりました。

営業利益につきましては、自動車運送事業などで費用が増加したものの、283億8百万円と、前連結会計年度に比べ18億6千4百万円の増加(前期比7.0%増)となりました。

(業種別営業成績表)

業種別

当連結会計年度

(25.4.1~26.3.31)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

鉄道事業

129,202

1.5

自動車運送事業

39,376

1.7

タクシー事業

2,973

1.0

航路事業

1,864

9.5

索道業

2,137

20.0

その他運輸業

1,049

2.4

消去

△3,906

営業収益計

172,698

1.8

(提出会社の鉄道事業運輸成績表)

種別

単位

当連結会計年度

(25.4.1~26.3.31)

 

対前期増減率(%)

営業日数

 

365

0.0

営業キロ

 

キロ

120.5

0.0

客車走行キロ

 

千キロ

173,212

0.1

 

定期

千人

453,754

2.8

輸送人員

定期外

282,243

0.8

 

735,997

2.0

 

定期

百万円

45,736

2.5

旅客運輸収入

定期外

68,575

0.9

 

114,311

1.5

運輸雑収

 

3,613

△0.5

運輸収入合計

 

117,925

1.5

乗車効率

 

48.4

(注) 乗車効率の算出方法

乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)/(客車走行キロ×平均定員)×100

② 流通業

百貨店業につきましては、㈱小田急百貨店において、グループをあげたインバウンド施策の一環として「小田急スーベニアショップ」を新宿店に期間限定で開設するなど、増加する外国人旅行客の需要喚起を図りました。また、オンラインショッピングサイトの特性を活かした独自性の高い品揃えを実現することで、幅広い顧客へのアプローチに努めたほか、各店で地域物産展などの各種営業施策を積極的に展開するなど、収益の向上に努めました。さらに、かねてより進めてきた新宿店における空調用熱源設備や町田店におけるエスカレーターの更新工事が完了するなど、施設の充実を図りました。

ストア業等につきましては、小田急商事㈱において、創業50周年を記念したイベントを開催し、運営する各業態の店舗活性化を通じた顧客の維持・獲得に努めました。また、スーパーマーケット「Odakyu OX」の小田原店、相武台店が新規開業するなど、事業基盤の拡充を図るとともに、商品宅配サービスの受付時間延長や対象エリア拡大を実施し、利便性向上に努めました。

以上の結果、ストア業等においてホームセンターが減収となったものの、「Odakyu OX」での新規店舗の開業や既存店における売上の回復に加え、百貨店業において引き続き新宿店で高額商品を中心に好調に推移したことなどから、営業収益は2,251億7千1百万円と、前連結会計年度に比べ15億2千2百万円の増加(前期比0.7%増)となりました。一方、営業利益につきましては、百貨店業における費用の増加やストア業等の減収などもあり、36億7千万円と、前連結会計年度に比べ1億4千2百万円の減少(前期比3.7%減)となりました。

(業種別営業成績表)

業種別

当連結会計年度

(25.4.1~26.3.31)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

 

小田急百貨店新宿店

91,393

3.2

 

小田急百貨店町田店

40,565

△2.7

百貨店業

小田急百貨店藤沢店

14,864

△1.2

 

その他

7,469

0.4

 

154,292

1.0

ストア業等

 

78,171

△0.1

消去

 

△7,292

営業収益計

225,171

0.7

 

③ 不動産業

不動産分譲業につきましては、小田急不動産㈱において、「リーフィア町田小山ヶ丘」や「リーフィア世田谷梅丘」などの戸建住宅のほか、「リーフィアレジデンス麻生片平」やグッドデザイン賞を受賞した「リーフィアレジデンス等々力」をはじめとするマンションを分譲するなど、積極的な営業活動を実施いたしました。

不動産賃貸業につきましては、当社において、相武台前駅北口に直結する商業施設「小田急マルシェ相武台」が昨年7月に開業したほか、海老名駅東口に直結する複合施設「(仮称)小田急海老名駅東口ビル」の建設工事に鋭意取り組みました。また、本年5月の開業に向け本厚木ミロード中央館から東口商店街にかけてのリニューアル工事の進捗を図るなど、施設の充実及び活性化を図る施策を推進いたしました。

以上の結果、不動産分譲業において住宅販売が堅調に推移し、販売戸数が増加したことなどから、営業収益は644億6千6百万円と、前連結会計年度に比べ36億9千4百万円の増加(前期比6.1%増)となりました。また、営業利益につきましても、125億2千万円と、前連結会計年度に比べ21億4千9百万円の増加(前期比20.7%増)となりました。

(業種別営業成績表)

業種別

当連結会計年度

(25.4.1~26.3.31)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

不動産分譲業

28,923

15.9

不動産賃貸業

40,401

△1.6

その他

288

△1.3

消去

△5,146

営業収益計

64,466

6.1

 

④ その他の事業

ホテル業につきましては、㈱ホテル小田急が運営する「ハイアット リージェンシー 東京」において、訪日外国人客の増加や国内旅行需要の高まりを背景に、主に個人利用客の取り込みに注力することで、安定した客室稼働率と収益の確保に努めました。また、㈱小田急リゾーツが運営する「小田急箱根ハイランドホテル」では、新館「森のレジデンス」が完成し、本館改修工事も完了したことで、本年3月にグランドオープンを迎えたほか、㈱ホテル小田急サザンタワーが運営する「小田急ホテルセンチュリーサザンタワー」において、客室のリニューアル工事を引き続き推進するなど、施設の魅力向上に努めました。

レストラン飲食業につきましては、㈱小田急レストランシステム及びジローレストランシステム㈱において、新規業態の開発とあわせ、両社で17店舗の新規出店、8店舗の改装を実施するなど、集客力の強化を図りました。このほか、当社における新たな収益源の創出及び環境負荷の低減に向けた取組みとして、喜多見地区において「再生可能エネルギー固定価格買取制度」を活用した太陽光発電事業を開始いたしました。

以上の結果、ホテル業において国内・海外からの宿泊者数増加により宿泊部門を中心に好調に推移したことなどから増収となったものの、旅行業やビル管理・メンテナンス業で減収となったことなどから、営業収益は958億7千5百万円と、前連結会計年度に比べ4億1千4百万円の減少(前期比0.4%減)となりました。一方、営業利益につきましては、ホテル業において減価償却費が減少したことなどから47億6百万円と、前連結会計年度に比べ13億9千8百万円の増加(前期比42.3%増)となりました。

 

(業種別営業成績表)

業種別

当連結会計年度

(25.4.1~26.3.31)

営業収益(百万円)

対前期増減率(%)

 

ハイアット リージェンシー 東京

11,050

7.3

 

ホテルセンチュリー静岡

3,116

0.0

ホテル業

小田急ホテルセンチュリー

サザンタワー

3,216

8.6

 

その他

9,275

10.8

 

26,657

7.7

レストラン飲食業

20,057

△0.5

旅行業

6,284

△3.9

ビル管理・メンテナンス業

19,105

△4.6

その他

28,933

△1.1

消去

△5,162

営業収益計

95,875

△0.4

(2) キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは税金等調整前当期純利益390億3百万円に減価償却費や法人税等の支払額などを加減した結果、736億3千8百万円の資金収入となりました。これにより、前連結会計年度に比べ、21億5千5百万円の資金収入の増加となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、230億5千万円の資金支出となり、固定資産の取得による支出が減少したことなどから前連結会計年度に比べ、116億9千8百万円の資金支出の減少となりました。この結果、これらを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは505億8千7百万円の資金収入となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還などにより500億5千2百万円の資金支出となりました。これにより、前連結会計年度に比べ、122億8千1百万円の資金支出の増加となりました。

これらの結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ5億7千7百万円増加し、304億3千8百万円となりました。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

当社グループの主たる事業は、鉄道事業を中核とする運輸業、百貨店業を中核とする流通業、建物の賃貸、土地及び建物の販売を行う不動産業及びその他の事業であり、役務の提供を主体とする事業の性格上、生産及び受注の状況を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

そのため生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。

3【対処すべき課題】

(1) 中長期的な経営戦略

当社は、今後のグループ経営の方向性を明確にするために、以下のとおり「グループ経営理念」を掲げ、この理念を実現しグループ価値の最大化を図ることを経営の基本方針としております。

 

<グループ経営理念>

1 経営理念

小田急グループは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献します。

2 経営方針

私たちは、日々の業務を誠実に遂行することで経営理念を実現し、社会とともに持続的に発展します。これを小田急グループの社会的責任(CSR)と定め、以下の経営方針を掲げます。

① 外部環境に自ら適応し、常にお客さま起点で行動します。

② 様々なネットワークを通じて、お客さまの期待に応えるために協働します。

③ 関わりあう人々と協調することで、適正で調和のとれた経営に努めます。

④ 自主・自律と相互の信頼に基づき、誇りと喜びをもって、互いに高め合い成長できる活気に満ちた企業を目指します。

 

当社では、「グループ経営理念」の実現とグループ価値の最大化を目指すために、グループとしてのあるべき将来像や各社の使命・役割を示したグループ事業ビジョン「Value Up 小田急」を策定しております。

グループ各社は、「グループ経営理念」及び「Value Up 小田急」に示された事業成長の方向性に従って、それぞれの役割を確実に実行し、自主自立のもと個々の事業が価値を高めるとともに、グループの協働を通じて将来にわたるキャッシュ・フローを最大化させ、更なるグループ価値・沿線価値の向上を目指してまいります。なお、これを進めるにあたっては、グループの経営資源を最大限に活用し、資産収益性を向上させることが重要であることから、グループ全体としてはROA・ROE・有利子負債/EBITDA倍率といった経営指標を重視しております。

(「Value Up 小田急」で定めた当社グループの提供価値)

「グループ経営理念」を実現し、グループ価値の最大化を図っていくために、「Value Up 小田急」では当社グループがお客さまに提供する価値を次のように定めております。

「沿線エリアに広がる都市と自然の恵みを活かし、人々の生活シーンにおいて、『安心、便利、快適』を基本に、一つでも多くの『上質と感動』を提供します。」

(当社グループの全体戦略)

「Value Up 小田急」では、以下に掲げる項目を当社グループの全体戦略としております。

① 事業の選択と集中

重点分野や将来性のある成長分野に対して経営資源を重点配分する一方で、採算性や提供価値創出の観点から事業継続が困難と判断される場合には、事業の改廃を果断に行ってまいります。また、グループ価値向上に向け、外部パートナーとの連携やM&Aにも積極的に取り組んでまいります。

② 自主自立下の既存事業強化

グループ各事業が自力で他社と競争し、持続的に事業成長を果たすことを目指してまいります。そのために、グループの各事業において変化する事業環境に機敏に対応し、市場に適応した事業構造を構築していくことで外部競争力を高めてまいります。

③ グループの協働

自主自立した各事業がお互いの強みを出し合い、お客さま視点に立って連携することで競合にはないサービスを生み出し、強固な事業基盤を築いてまいります。

(3つの事業領域の設定)

「Value Up 小田急」では、お客さまの生活シーンに応じて「ドアツードア」、「ライフスタイル」、「リビングスペース」という3つの事業領域を設定しております。これらの領域において個々の事業がサービスの質的向上により競争力を高めるとともに、新規事業などによるサービスメニューの充実や沿線エリアの面的充実を進めることで事業成長を志向します。また、個々の事業が自らの強みを出し合い協働することでグループ全体最適を図ります。

① ドアツードア

お客さまの出発地から目的地までの移動シーンにおける価値向上を目指し、引き続き複々線化工事を鋭意推進していくほか、駅施設のユニバーサルデザイン化や鉄道・バス・タクシーの連携による交通ネットワークの強化を推進することで、競争優位を確立してまいります。

② ライフスタイル

お客さまの生活・ビジネスに必要な消費・事業活動の価値向上を目指し、店舗施設の新設やリニューアルなどを推進することで、沿線エリアの魅力向上を図ってまいります。

③ リビングスペース

住宅やオフィスなど、お客さまの生活全般における居住・滞在シーンの価値向上を目指し、リフォームをはじめとする住宅関連事業の強化を図ることで、お客さまにお選びいただける沿線を目指してまいります。

なお、小田急沿線のさらなる活性化に向け、3つの事業領域が一体となって相乗効果を発揮する「エリア戦略」を推進してまいります。具体的には、「新宿」「箱根」「江の島・鎌倉」の各エリアについては、国内・海外からの広域集客拠点として、情報発信や販促施策などの諸施設を推進してまいります。その他の沿線エリアについては、これを7つに区分し、それぞれの特性に応じた事業展開や街づくりなどを推進することで、沿線市場における事業強化を目指してまいります。

(2) 対処すべき課題

当社グループでは、お客さまの「かけがえのない時間(とき)」と「ゆたかなくらし」の実現に貢献することを経営理念とし、その実現を通じて社会とともに持続的に発展していくことが当社グループの社会的責任(CSR)であると捉えております。経営理念の実現を目指すため、グループ全体の将来像や各事業の役割を示した事業ビジョン「Value Up 小田急」を策定しており、これに示された事業成長の方向性に従って、グループ各社がそれぞれの役割を確実に実行し、自主自立のもと個々の事業価値を高めるとともに、グループの協働を通じて更なるグループ価値・沿線価値の向上を目指してまいります。

このグループ経営理念、グループ事業ビジョンのもと、当社グループにおいては以下の内容を重要な経営課題として認識し取り組んでまいります。

 

(運輸業における安全対策の強化)

運輸業においては、安全を第一に快適で良質な輸送サービスを提供することが最も重要な社会的責任であると捉え、各社で制定している「安全管理規程」に基づき、安全の重要性を強く認識し日々の業務にあたるとともに、事故防止対策を含めた安全管理体制の継続的な確認や見直し・改善を実施し、その強化を図ってまいります。

また、施設面の安全対策としては、当社で進めている新列車制御システム「D-ATS-P」の導入工事について、平成27年の全線運用開始を目指し、既にその使用を開始している多摩線や江ノ島線に続き、小田原線においても順次進めてまいります。さらに、当社において大規模地震に備えた鉄道構造物の耐震補強工事を一層推進するほか、各社で設備更新工事や台風、大雪等への対策を進めるなど、安全の質を高める諸施策に積極的に取り組んでまいります。

 

(当社線近郊区間の複々線化事業の早期完成)

当社では、ラッシュピーク時間帯の混雑緩和や所要時間の短縮など快適な輸送サービスを実現するための抜本的な輸送改善策として、近郊区間の複々線化事業に全力をあげて取り組んでおります。今後につきましては、平成29年度中の複々線での営業運転開始、並びに平成30年度中の事業完了を目指し、工事中区間の東北沢~世田谷代田間において、京王井の頭線橋梁架替工事と並行して緩行線トンネルの構築工事を推進するなど、事業の進捗に努めてまいります。

 

(沿線市場における事業強化)

主要な事業エリアである当社線沿線の価値を向上させるため、保有する経営資源を活用した開発計画を推進するとともに、将来の人口動態を見据えた事業強化策を推進してまいります。

下北沢地区の在来線地下化により創出された線路跡地の土地利用については、世田谷区内のゾーニング構想を踏まえ、良好な街づくりに貢献すべく、関係機関との協議を進めてまいります。また、海老名駅周辺では、同駅東口において複合賃貸施設の建設工事を推進するとともに、JR相模線海老名駅との間に位置する当社保有地の開発に向けた具体的検討を進めてまいります。なお、向ヶ丘遊園の跡地利用については、昨今の事業環境を勘案した結果、平成22年に策定した基本計画を見直すことといたしました。今後は、平成16年に川崎市と締結した基本合意を踏まえ、再度川崎市と協議しながら新たな跡地の利用計画を策定してまいります。

さらに、今後も学童保育施設を拡充するとともに、サービス付き高齢者向け住宅、介護付き有料老人ホームの整備を積極的に進め、幅広い世代に対して暮らしやすい環境を提供することで、沿線エリアの更なる活性化に努めてまいります。

(広域からの集客による収益拡大)

当社線沿線は、交通アクセスに優れた都市部や自然豊かな観光地など、多様な魅力を擁する恵まれた事業環境を有しており、これらグループ特有の経営資源を活かし、国内外を問わず広域からの集客を促進することで、収益の拡大を目指してまいります。このうち、最も重要な事業拠点である新宿エリアについては、商業施設の活性化や賃貸事業の強化など、より強固な事業基盤の確立に向けた取組みを引き続き進めてまいります。また、箱根エリアや江の島・鎌倉エリアでは、ハード・ソフト両面の整備を推進することで受け入れ体制を強化し、積極的なプロモーション活動を通じて誘客に努めるほか、大山エリアの更なる活性化にも取り組んでまいります。

 

(グループ各事業の有機的連携強化)

当社線沿線の魅力を一層高める新たな価値を創造すべく、当社グループが運営する各事業の有機的連携を強化し、相乗効果の発揮に努めてまいります。

その一環として、本年4月には、暮らし全般に関わる相談を一括で受け付け、当社グループをはじめとするサービス提供会社へ取り次ぐ生活支援サービス「小田急くらしサポート」を世田谷エリアにて開始いたしました。また、小田急ポイントカードにつきましては、各種キャンペーンの展開やPASMOとの連携を通じて魅力向上に取り組むとともに、引き続き当社グループを中心にポイントサービスを利用できる加盟店の拡大やサービスの拡充を進めてまいります。

 

(内部統制システムの充実・強化)

内部統制システムにつきましては、当社グループの社会的責任(CSR)を果たすために必要不可欠な要素であるとの認識のもと、会社法に定める「内部統制システム構築の基本方針」の取締役会決議を踏まえ、常勤役員からなる「内部統制委員会」を中心に据えて、引き続きその体制の充実・強化にグループをあげて取り組んでまいります。このうち、リスクマネジメントにつきましては、「リスクマネジメント委員会」を中心とした全社横断的な体制のもと、自然災害をはじめとするリスク顕在化への対応力向上を図っていくほか、グループレベルでのリスク管理体制の強化に努めてまいります。また、コンプライアンスにつきましては、リスクマネジメントの一環として位置づけ、グループ全体として守るべき行動規範や各事業固有の問題を反映した行動基準のもと、諸施策の継続的な改善や教育の実施などによる意識の向上を通じて、その体制の一層の強化を図ってまいります。

 

(環境に配慮した取組みの推進)

当社グループでは、環境に配慮した取組みの推進を重要な経営課題と位置づけ、「小田急グループ環境戦略」に基づき、事業と一体となった取組みを積極的に推進しております。

その一環として、当社では、地球温暖化対策や列車運行に係る騒音・振動の低減策を進めるとともに、エネルギー効率に優れた鉄道の利点を活かしたPR活動を実施するなど、引き続き環境負荷の低減に向けた取組みに注力してまいります。また、各種媒体を活用した「小田急沿線自然ふれあい歩道」に係る情報発信や当社線沿線の自然環境保全活動などを通じて、自然との共生に鋭意取り組んでまいります。

 

これらの課題に向けた取組みを着実に遂行することで、「日本一暮らしやすい沿線」を目指してまいります。

 

(3) 会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針等

① 基本方針の内容

当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者は、当社の財務及び事業の内容や当社の企業価値の源泉を十分に理解し、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に確保、向上していくことを可能とする者である必要があると考えております。

公開会社である当社の株式については、株主及び投資家のみなさまによる自由な取引が認められている以上、当社取締役会としては、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方は、最終的には株主全体の意思により決定されるべきであり、特定の者の大規模な買付けに応じて当社株式を売却するか否かは、最終的には当社株主の判断に委ねられるべきものだと考えております。また、当社は、当社株式について大規模な買付けがなされる場合であっても、これが当社の企業価値・株主共同の利益に資するものであれば、これを否定するものではありません。

しかしながら、株式の大規模な買付けの中には、その目的等から見て重要な営業用資産を売却処分するなど企業価値・株主共同の利益を損なうことが明白であるもの、買収に応じることを株主に強要するおそれがあるもの、買収提案の内容や買収者自身について十分な情報を提供しないもの、被買収会社の取締役会が買収提案を検討し代替案を株主に提供するための時間的余裕を与えないもの、被買収会社が買収者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買収者との協議・交渉を必要とするものなど、被買収会社の企業価値・株主共同の利益に資さないものも少なくありません。

特に、当社の企業価値の源泉は、(ア).安全輸送を担う技術と人材、(イ).長年にわたって構築された沿線エリアのお客さま・自治体等との信頼関係、(ウ).(ア)、(イ)を基礎として長期間にわたり醸成されてきた「小田急ブランド」にあると考えておりますが、当社株式の大規模な買付けを行う者は、当社の財務及び事業の内容を理解するのは勿論のこと、かかる当社の企業価値の源泉に対する理解が必要不可欠です。かかる当社の企業価値の源泉を理解したうえで、これらを中長期的に確保し、向上させることができなければ、当社の企業価値・株主共同の利益は毀損されることになります。また、買収者からの大規模な買付けの提案を受けた際に、株主のみなさまが最善の選択を行うためには、当社の企業価値を構成する有形無形の要素を適切に把握するとともに、買収者の属性、大規模な買付けの目的、買収者の当社の事業や経営についての意向、お客さま、取引先及び従業員等のステークホルダーに対する対応方針等の買収者の情報も把握したうえで、大規模な買付けが当社の企業価値・株主共同の利益に及ぼす影響を判断する必要があり、かかる情報が明らかにされないまま大規模な買付けが強行される場合には、当社の企業価値・株主共同の利益が毀損される可能性があります。

当社としては、このような当社の企業価値・株主共同の利益に資さない大規模な買付けを行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であり、このような者による大規模な買付けに対しては必要かつ相当な対抗措置を講じることにより、当社の企業価値・株主共同の利益を確保する必要があると考えております。

② 会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取組

昭和2年4月に新宿~小田原間の営業を開始して以来、当社グループは、鉄道事業をはじめとする運輸業を基軸に、長期的な視点にたち、小田急線沿線地域を中心として、流通、不動産、ホテル、レストランなど暮らしに密着した様々な事業を営むとともに、沿線エリアの発展に寄与する様々な施策を実施することにより、企業価値・株主共同の利益の持続的向上に努めてまいりました。当社グループは、「お客さまの“かけがえのない時間(とき)”と“ゆたかなくらし”の実現に貢献します。」という経営理念のもと、重要な経営課題に取り組むにあたっては、当社グループの経営資源を最大限に活用し、資産収益性を向上させることが重要であることから、当社の企業価値・株主共同の利益の確保・向上のため、「グループ経営理念」及び「Value Up 小田急」に示された事業成長の方向性に従って、それぞれの役割を確実に実行し、自主自立のもと個々の事業が価値を高めるとともに、当社グループの協働を通じて将来にわたるキャッシュ・フローを最大化させ、更なる企業価値・沿線価値の向上を目指してまいります。また、当社におけるコーポレート・ガバナンスの強化については、重要な戦略を効率的かつ迅速に決定、実行していく機能と、業務執行に対する監督機能の強化という点を重要課題として認識し、各種施策に取り組んでおります。

③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを

防止するための取組み

ア 当社株式の大規模買付行為に関する対応策の継続の目的

当社取締役会は、基本方針に定めるとおり、当社の企業価値・株主共同の利益に資さない大規模な買付けを行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えております。そして、こうした不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止し、当社の企業価値・株主共同の利益に反する大規模な買付けを抑止するためには、当社株式に対する大規模な買付けが行われる際に、当社取締役会が株主のみなさまに代替案を提案したり、あるいは株主のみなさまがかかる大規模な買付けに応じるべきか否かを判断するために必要な情報や時間を確保すること、株主のみなさまのために交渉を行うこと等を可能とする仕組みが必要不可欠であると判断いたしました。

イ 当社株式の大規模買付行為に関する対応策の概要

 当社は、平成21年6月26日開催の定時株主総会決議に基づき「当社株式の大規模買付行為に関する対応策」(以下「本プラン」といいます。)を継続的に導入しましたが、本プランの有効期間が平成24年6月28日開催の当社定時株主総会(以下「同定時総会」といいます。)の終結の時までとされていたため、この本プランの失効に先立ち、平成24年5月22日開催の取締役会及び同定時総会において、本プランを継続することを決定いたしました。なお、本プランの有効期間は、同定時総会終了後から平成27年3月期に係る当社定時株主総会の終結時までです。

本プランは、(ア).当社が発行する株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付けその他の取得、もしくは、(イ).当社が発行する株券等について、公開買付けを行う者の株券等所有割合及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付けのいずれかに該当する買付けその他の取得もしくはこれに類似する行為又はこれらの提案(以下、あわせて「大規模買付行為」といいます。)を適用対象としています。

本プランでは、当社取締役会が、大規模買付行為を行おうとする者(以下「大規模買付者等」といいます。)に対して本プランに定める大規模買付情報の提供を要請し、当社社外取締役、当社社外監査役及び社外の有識者から構成される独立委員会が当該大規模買付行為の内容の評価、検討等を行うための手続きを定めています。

独立委員会は、(ア).①大規模買付者等が本プランに定められた手続きを遵守せず、又は②大規模買付行為が当社の企業価値・株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすおそれがある場合等本プランに定められる要件に該当すると独立委員会が判断し、かつ(イ).独立委員会が当該大規模買付者等による権利行使は認められないとの行使条件及び当社が当該大規模買付者等以外の者から当社株式と引換えに取得することができる旨の取得条項等が付された新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対し、本新株予約権の無償割当てを実施すべき旨の勧告を行います。当社取締役会は、独立委員会の上記勧告を最大限尊重し、会社法上の機関として、本新株予約権の無償割当ての実施又は不実施に関する決議を行います。当社取締役会が本新株予約権の無償割当ての実施を決議した場合、当社は、本新株予約権を当該決議によって定める全ての株主に対して無償割当ての方法により割り当てます。

④ 上記記載の取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由

上記②記載の取組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるものであり、まさに基本方針の実現に資するものです。したがって、当該取組みは、基本方針に沿い、当社の株主共同の利益に合致するものであり、また、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

また、上記③記載の取組みである本プランは、当社株券等に対する大規模買付行為が行われる場合に、当該大規模買付行為に応じるべきか否かを株主のみなさまが判断することを可能とし、あるいは当社取締役会が代替案を提案するために必要な情報や時間を確保し、株主のみなさまのために買付者等と協議・交渉等を行うこと等を可能とすることにより、当社の企業価値及び株主共同の利益を確保、向上させるための枠組みであり、基本方針に沿うものであると考えております。

さらに、本プランは、(ア).経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針の定める三原則を充足し、また、株式会社東京証券取引所の「有価証券上場規程」第440条に定められる買収防衛策の導入に係る尊重事項を全て充足していること、(イ).株主意思を重視するものであること、(ウ).独立性の高い社外役員等のみから構成される独立委員会の判断が最大限尊重されることとされており、かつその判断の概要については株主のみなさまに情報開示をすることとされていること、(エ).合理的な客観的要件が充足されなければ発動されないように設定されていること、(オ).第三者専門家の意見の取得ができるものであること、(カ).当社取締役の任期は1年であること、(キ).有効期間満了前であっても株主総会又は取締役会によりいつでも廃止することができるものとされていること等の理由から、株主共同の利益を損なうものでなく、また、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

本プランの内容の詳細等につきましては、平成24年5月22日付当社プレスリリース「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)の継続について」をご参照ください。(当社ホームページ:http://www.odakyu.jp/ir/index.html)

4【事業等のリスク】

当社グループでは、「小田急グループリスクマネジメント方針」に基づきグループ全体のリスクマネジメント体制を構築し、企業経営に重大な影響を与えるリスクの対策を検討・推進する取組みを行っております。これらを通じて把握したリスクのうち、投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては、次のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであります。また、以下のリスクは当社グループのすべてのリスクを網羅したものではありませんのでご留意ください。

(1)災害等

① 大規模な地震・津波の発生

当社グループは、大規模地震や津波を想定した様々な施策を講じておりますが、大規模な地震等が発生した場合、当社グループの各事業において、人的被害、建物・設備が損傷する等の直接的被害のほか、電力不足等による営業への制約、消費マインドの冷え込みによる収益の減少といった間接的被害により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループの事業エリアの一部は東海地震に関する地震防災対策強化地域に含まれております。

② 自然災害の発生

当社グループでは、集中豪雨及び暴風等、自然災害の発生を想定した様々な施策を講じておりますが、大規模な自然災害が発生した場合、当社グループの各事業において、人的被害、建物・設備が損傷する等の被害が発生するほか、被害箇所の復旧等に伴う費用の増大等により、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

③ 感染症の流行

当社グループは、鉄道・バス・商業施設など多数のお客さまが利用される施設を多く保有しております。当社グループの事業エリアにおいて、新型インフルエンザ等の感染症が大規模に流行した場合、施設を利用されるお客さまの減少や、鉄道の列車運行等の事業運営に支障をきたすことにより、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2)事故等

① 事故等の発生

当社グループでは、運輸サービス、食品等の安全性の確保、ビル等における火災防止のため様々な取組みを実施しておりますが、人為的なミスや機器の誤作動、テロ等の不法行為等によって大きな事故や火災等が発生した場合、人的被害や事業の中断等が生じるとともに、被害者に対する損害賠償責任や施設の復旧等に伴う費用が発生すること、また、顧客の信頼及び社会的評価の低下により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

② 保有資産及び商品の瑕疵・欠陥

当社グループが保有する資産に、瑕疵や欠陥が見つかった場合又は健康や周辺環境に影響を与える可能性等が指摘された場合、改善・原状復帰、補償等にかかる費用が発生する可能性があります。また、当社グループにおいて販売した商品等について瑕疵や欠陥が見つかった場合についても、改善及び補償等に伴う費用の発生や信用低下等に伴い当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ システム障害の発生

当社グループの事業は、コンピューターシステムや通信ネットワークといった情報システムに大きく依存しています。そのため、事業活動に不可欠なシステムやネットワークの安定稼動に必要な対策を実施していますが、コンピューターウイルス等の第三者による妨害行為、自然災害及び人為的ミス等により重大な障害が発生した場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3)企業の社会的責任等

① コンプライアンス

当社グループでは、コンプライアンスを「法令、社内規則、社会通念等のルールを守るとともに、誠実に事業活動を実践していくための考え方及びその取組み」と定め、推進しておりますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、社会的制裁等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

② 個人情報管理

当社グループはクレジットカード事業を行っているほか、各種事業において顧客情報等の個人情報を保有しております。個人情報については厳正に管理しておりますが、何らかの理由で情報の漏洩等の事態が生じた場合、損害賠償や信用の低下等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

③ 情報開示

当社グループは、それぞれの事業特性に応じた内部統制の整備、運用に努めることで、適時適切な情報開示に取り組んでおりますが、人為的ミス等により不適切な情報開示等があった場合、顧客の信頼及び社会的評価の低下等により、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4)経営環境等

① 人材の確保

当社グループの事業は労働集約型の事業が多く、労働力として質の高い人材の確保が重要となります。そのため、優秀な人材を確保、育成し、働きやすい職場環境の確保と健全な労働環境の維持に努めておりますが、これを達成できない場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

② 法的規制

当社グループは、鉄道事業法、道路運送法、大規模小売店舗立地法、建築基準法等の各種法令や排ガス規制をはじめとした公的規制のもと様々な事業を展開しておりますが、これらの法令・規制、特に東京都・神奈川県における諸制度の変更は当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、鉄道事業における運賃制度については以下のとおりであります。

鉄道運送事業者は、旅客の運賃の上限を定め、又は変更しようとする場合、国土交通大臣の認可を受けなければならないことが法定されております(鉄道事業法第16条第1項)。

また、その上限の範囲内での運賃等の設定・変更並びに特急料金等その他の料金の設定・変更については、事前の届出で実施できることとなっております(鉄道事業法第16条第3項及び第4項)。

 

③ 金利の変動

当社グループは鉄道事業を中心に継続的な設備投資を行っているため、借入金や社債等により資金を調達しております。よって、金利の変動及び当社の格付の変更が、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

④ 重要な訴訟

当社の鉄道事業に関し、電車の走行に伴う騒音・振動に関する民事訴訟が提起されており、この訴訟の結果によっては、業績及び列車運行等に影響を与える可能性があります。

また、当社の複々線化事業に関連するものとして、関東地方整備局長を被告とする行政訴訟(代々木上原~梅ヶ丘間における都市計画事業認可の無効確認)が提起されております。

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

6【研究開発活動】

該当事項はありません。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に際し、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収入・費用の金額並びに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。重要な会計方針及び見積りには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

① たな卸資産の評価

当社グループは、多くのたな卸資産を保有しており、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 平成18年7月5日)を適用しております。また、当社では複々線化事業により取得した用地を固定資産に計上しておりますが、工事が終了した区間の当該用地など分譲用と判断した土地については、たな卸資産に振替えたうえで同様に評価しております。

② 有価証券の減損

当社グループは、金融機関や取引先の有価証券を保有しております。これらのうち、時価のある有価証券については、時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には減損処理を行い、30~50%程度下落した場合には回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。

これらの有価証券は価格変動リスクを負っているため、損失が発生する可能性があります。

③ 固定資産の減損

当社グループは、多くの固定資産を保有しております。これらの固定資産の回収可能価額については、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額など多くの前提条件に基づき算出しているため、前提条件が変更された場合には、損失が発生する可能性があります。

 

④ 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について実現可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当額を計上しております。評価性引当額は将来年度の課税所得の見込額等を考慮して計上しますが、将来の業績変動により課税所得の見込額が減少又は増加した場合には、評価性引当額の追加計上又は取り崩しが必要となる場合があります。

⑤ 退職給付債務及び費用

従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される諸前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び長期期待運用収益率などが含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響する可能性があります。

(2) 財政状態及び経営成績

(財政状態)

総資産は1兆2,443億4千4百万円となり、前連結会計年度末と比べ201億5千7百万円減少いたしました。これは、固定資産における減価償却が進んだことなどによるものであります。また、負債の部は、9,767億7千万円となり、前連結会計年度末と比べ、421億8千5百万円減少いたしました。これは、主に社債の償還等によるものであります。

純資産の部は、2,675億7千3百万円となり、当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことなどから、前連結会計年度末と比べ220億2千8百万円増加いたしました。

(経営成績)

① 営業収益及び営業利益

当連結会計年度は、各事業にわたり積極的な営業活動を行った結果、営業収益は5,231億8千7百万円と、前連結会計年度に比べ79億6千3百万円の増加(前期比1.5%増)となりました。これに伴い、営業利益は493億7千7百万円と、前連結会計年度に比べ52億5千7百万円の増加(前期比11.9%増)となりました。なお、各セグメントの営業収益及び営業利益の分析については、「1 業績等の概要」に記載しております。

② 営業外損益及び経常利益

営業利益の増加に加え、支払利息の減少などにより営業外損益が改善したことから、経常利益は420億6千1百万円(前期比15.7%増)となりました。

③ 特別損益及び当期純利益

当連結会計年度の特別損益は、前連結会計年度に比べて29億8千7百万円の改善となりました。これは、前期に比べ、固定資産の減損処理に伴う特別損失が減少したことによるものであります。

これらの結果、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は390億3百万円となり、ここから法人税等及び少数株主利益を控除した当期純利益は250億4千8百万円(前期比27.3%増)となりました。

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① 設備投資による資本の投下

当社グループは、鉄道事業において、安全防災対策に積極的に取り組みながら、快適且つスピーディーな鉄道運行の実現に努めているほか、他の事業においても、各エリア戦略の具現化による沿線価値の向上を目指して継続的な設備投資を実施しております。当連結会計年度においては総額469億2千万円の設備投資を実施いたしました。

なお、各セグメントの設備投資等の概要については、「第3 設備の状況」の「1 設備投資等の概要」に記載しております。

 

② 資金調達

当社グループの資金調達は、鉄道事業における設備投資に対する㈱日本政策投資銀行からの借入金のほか、社債及び民間金融機関からの借入金など、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。また、現在推進中の複々線化工事については、「特定都市鉄道整備積立金制度」や鉄道建設・運輸施設整備支援機構の「民鉄線方式」などの公的助成制度を活用しております。

なお、当社グループでは資金効率向上のため、キャッシュマネジメントシステム(CMS)を導入し、資金繰の波動により、短期的な資金需要が発生する場合には、極力グループ内資金を活用するほか、コマーシャルペーパー(CP)の発行も行っております。

③ 資金の流動性

当社グループは、鉄道事業や流通業を中心に日々の収入金があることから、必要な流動性資金は十分に確保しており、これらの資金をCMSにより集中管理することでグループ内において有効に活用しております。

(4) 経営指標

当社グループでは、「3 対処すべき課題」で記載しましたとおり、経営指標としてROA・ROEのほか、健全性指標として有利子負債/EBITDA倍率を重視しております。当連結会計年度については、以下のとおりであります。

(ROA・ROE)

 

前連結会計年度

(%)

当連結会計年度

(%)

ROA(総資産営業利益率)(注)

3.5

4.1

ROE(自己資本当期純利益率)(注)

9.2

10.9

(注) 総資産、自己資本からその他有価証券の時価評価による影響額を除いて算出しております。(有利子負債/EBITDA倍率)

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

借入金・社債

664,752

631,593

鉄道・運輸機構長期未払金(注1)

141,605

131,260

有利子負債計(注2)

806,358

762,854

EBITDA(注3)

94,543

98,028

有利子負債/EBITDA倍率

8.5倍

7.8倍

(注) 1 鉄道・運輸機構長期未払金は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 ⑤ 連結附属明細表〔借入金等明細表〕」における鉄道・運輸機構長期未払金の額とは異なり、上表では消費税等相当額を加えております。

2 リース債務及び社内預金は除いております。

3 EBITDAは、営業利益に減価償却費を加えたものであります。