第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度におけるわが国経済は、政府・日銀による各種政策の効果により、企業収益や雇用情勢は改善傾向となり、個人消費も底堅く持ち直しの動きが見られるなど、景気は緩やかな回復基調となりました。しかしながら、海外経済の不確実性が依然として残るなど、先行きは不透明な状況で推移いたしました。

このような経済情勢の中、当社(連結子会社を含む)は、将来の大きな飛躍に向け、財務健全性を確保しつつ、既存事業・プロジェクトの強化、当社の強みを生かすことのできる新規領域への積極的進出や成長領域への重点投資を実施し、収益性、効率性双方の向上の実現を目指した、中期3か年経営計画「STEP TO THE NEXT STAGE」を推進しております。

当連結会計年度の営業収益は、当社の不動産賃貸業が堅調に推移したことや、㈱東急レクリエーションを前連結会計年度末に連結子会社化したことによる増加などにより、1兆1,173億5千1百万円(前年同期比2.4%増)、営業利益は、779億7千4百万円(同3.3%増)となりました。経常利益は、支払利息の減少などにより、764億4千9百万円(同9.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、672億8千9百万円(同21.8%増)となりました。

セグメントの業績は以下のとおりであり、各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含んで記載しております。なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。

(交通事業)

ホーム上の安全対策については、当社において、2020年までに東横線・田園都市線・大井町線全64駅にホームドアを設置する計画を前倒し、2019年度までに設置することを目指しております。当連結会計年度は、東横線都立大学駅、田園調布駅、大倉山駅、大井町線緑が丘駅、尾山台駅など9駅での利用を開始いたしました。また田園都市線ではホームドア整備において課題となっていた6ドア車両の4ドア車両への置き換えを順次進めております。

踏切の安全対策では、3D式障害物検知装置を東横線、大井町線などの15カ所に設置いたしました。また大規模地震への備えとして、被害が甚大となる恐れのある高架橋柱の耐震補強工事を実施いたしました。

利便性・快適性向上の面では、渋谷駅において、本年3月、ハチ公広場につながる出口8番に上下エスカレーターを新設、ヒカリエ1改札と宮益坂中央改札間の改札外スロープに動く歩道を新設いたしました。また道玄坂改札口付近とスクランブル交差点周辺の出口6番付近をつなぐエレベーターや渋谷地下街とハチ公改札口付近をつなぐ上下エスカレーターの新設工事に着手いたしました。また三軒茶屋駅や雪が谷大塚駅などでさらなるバリアフリー工事に着手したほか、戸越銀座駅では「木になるリニューアル」として、環境に配慮しながら駅舎の内外装をリニューアルいたしました。

 

当社の鉄軌道業における輸送人員は、前連結会計年度に比べて、二子玉川ライズ2期の開業効果などにより、定期で1.8%、定期外で0.5%増加し、全体でも1.3%の増加となりました。

連結子会社の輸送人員は、伊豆急行㈱で0.6%減少、上田電鉄㈱で1.1%増加いたしました。

バス業では、東急バス㈱の輸送人員が0.2%増加いたしました。

交通事業全体の営業収益は、当社の鉄軌道業において、輸送人員が増加したことなどにより、2,074億9千4百万円(同3.4%増)となったものの、安全対策工事等による費用が増加したことなどにより、営業利益は、267億6百万円(同8.8%減)となりました。

(当社の鉄軌道業の営業成績)

種別

単位

第147期

第148期

27.4.1~28.3.31

28.4.1~29.3.31

営業日数

366

365

営業キロ程

キロ

104.9

104.9

客車走行キロ

千キロ

147,837

148,372

輸送人員

定期外

千人

461,956

464,259

定期

千人

686,613

698,764

千人

1,148,569

1,163,023

旅客運輸収入

定期外

百万円

75,499

75,834

定期

百万円

61,736

62,787

百万円

137,235

138,621

運輸雑収

百万円

14,401

14,199

収入合計

百万円

151,636

152,820

一日平均収入

百万円

414

419

乗車効率

51.3

51.6

 

 

(注)    乗車効率の算出方法

乗車効率

輸送人員

×

平均乗車キロ

×  100

客車走行キロ

平均定員

 

 

(不動産事業)

不動産事業では、「東急多摩田園都市」の開発をはじめとする「街づくり」を事業活動の中心におき、さまざまな領域での不動産事業を総合的に展開しております。

本年4月、当社を代表企業とした4社が出資する渋谷宮下町リアルティ㈱は複合施設「渋谷キャスト(SHIBUYA CAST.)」を開業いたしました。都心における多様な居住スタイルを促進するとともに、渋谷と原宿を結ぶ旧渋谷川遊歩道(キャットストリート)の起点に、多くのクリエイターが行き交い、活動する創造拠点として整備したもので、オフィスフロアは満室稼働でスタートいたしました。また来年秋開業予定の東横線跡地開発「渋谷駅南街区プロジェクト」の施設名称は「渋谷ストリーム(SHIBUYA STREAM)」に決定いたしました。引き続き2019年度開業予定の「渋谷駅街区東棟」をはじめとした大規模開発を着実に進めてまいります。

当連結会計年度は、「二子玉川ライズ」をはじめ、「渋谷ヒカリエ」「たまプラーザ テラス」「東急キャピトルタワー」など、オフィスやショッピングセンターなどの営業は堅調に推移いたしました。また駅や駅周辺の開発に合わせて鉄道施設の上部や用地の活用も積極的に行っており、大井町駅構内では昨年4月に「エトモ大井町」を、同年11月には中目黒駅周辺の高架下空間に商業施設「中目黒高架下」を開業いたしました。

不動産事業全体の営業収益は、当社の不動産販売業において、前年度の大型集合住宅(マンション)販売の反動減などにより、1,722億8千8百万円(同13.4%減)となったものの、当社の不動産賃貸業において、「二子玉川ライズ」などの賃貸収入が堅調に推移したことなどにより、営業利益は、299億8千5百万円(同6.7%増)となりました。

 

(生活サービス事業)

当社は、生活サービス事業を街の生活基盤として沿線価値の向上に寄与するものと位置づけるとともに、収益力の向上に取り組んでまいりました。同事業は、魅力ある施設づくりに加えて、お客さまの期待を上回る商品やサービスの提供に努めるとともに、交通事業、不動産事業をはじめとする各事業との相乗効果を発揮するため、グループ間連携をさらに促進しております。

百貨店業の㈱東急百貨店では、東急百貨店東横店の「東急フードショー」を昨年6月にリニューアルオープン、㈱ながの東急百貨店では長野店の長野駅前開店50周年を迎え、店内改装を順次進めてまいりました。

チェーンストア業の㈱東急ストアでは、既存店売上が好調に推移するとともに、昨年8月に「東急ストア  フードステーション用賀店」を出店いたしました。また「東急ストアネットスーパー」の商品を、田園都市線たまプラーザ駅周辺の東急グループ各施設で受け取ることが出来るサービスを、昨年12月から試験的に開始いたしました。

ショッピングセンター業の㈱東急モールズデベロップメントは昨年10月、㈱東急百貨店の100%子会社である㈱クイーンズイーストを子会社化いたしました。みなとみらい線みなとみらい駅直結の複合施設「クイーンズスクエア横浜」内で両社がそれぞれ運営するショッピングセンターを統合し、本年から順次リニューアルをしてまいります。また本年4月には同社のSHIBUYA109事業について、最先端の流行発信や文化創造を続けるブランド力の強化を目的に、SHIBUYA109事業に特化した㈱SHIBUYA109エンタテイメントを会社分割により設立いたしました。

電力小売事業の㈱東急パワーサプライは昨年4月からの国内電力小売事業の全面自由化に合わせて一般家庭に向けた電力サービスの提供を開始いたしました。

ケーブルテレビ事業のイッツ・コミュニケーションズ㈱は、昨年4月に電気とセットでお得な割引プラン「イッツコムでんき割」の適用を開始いたしました。また全国CATV局・民泊事業者へスマートホームサービスを展開しております。

映像事業の㈱東急レクリエーションは昨年3月の連結子会社化により、当社とより強固な資本関係を構築することで、東急グループにおけるエンタテイメント領域を担う役割の拡大を図ってまいりました。

生活サービス事業全体の営業収益は、チェーンストア業の㈱東急ストアにおいて、既存店売上が好調に推移したことや、映像事業の㈱東急レクリエーションの連結子会社化による増加などにより、6,891億6千9百万円(同7.0%増)、営業利益は、148億1千7百万円(同10.3%増)となりました。

(ホテル・リゾート事業)

ホテル業の㈱東急ホテルズでは、渋谷の3ホテル(セルリアンタワー東急ホテル、渋谷エクセルホテル東急、渋谷東急REIホテル)とザ・キャピトルホテル東急の合計で、外国人宿泊比率が東京都内平均に比べて高い状況が継続するなどインバウンドのプラスの影響があり、客室部門を中心に好調に推移いたしました。

昨年11月には「長野東急REIホテル」を開業いたしました。新浦安・湾岸エリアへの「(仮称)東京ベイ東急ホテル」をはじめとする出店計画を発表したほか、来年秋開業予定の「渋谷ストリーム」の約180室のシティホテルは、同社が運営者となる予定です。同社は当連結会計年度末現在、直営ホテル35店舗を展開しております。

ホテル・リゾート事業全体の営業収益は、ホテル業の㈱東急ホテルズにおいて、高稼働を維持したことに加え、販売単価も増加したことなどにより、1,055億2百万円(同1.6%増)、営業利益は、61億1千1百万円(同36.2%増)となりました。なお、㈱東急ホテルズ直営店舗の客室稼働率は、84.4%(同0.5P減)となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は398億2千3百万円となり、前連結会計年度に比べて30億8千6百万円減少いたしました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益778億8百万円に減価償却費769億8千6百万円、法人税等の支払額311億3千8百万円などを調整し、1,263億5千6百万円の収入となりました。前連結会計年度に比べ、法人税等の支払額が増加したことなどにより、32億5千9百万円の収入減となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出1,401億7千1百万円などがあり、1,323億1千万円の支出となりました。前連結会計年度に比べ、固定資産の取得による支出が減少したものの、固定資産の売却による収入が減少したことなどにより、107億3百万円の支出増となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入などにより、30億7千8百万円の収入となりました。

2【生産、受注及び販売の状況】

当社グループの各事業は、受注生産形態をとらない事業が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

このため生産、受注及び販売の状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1)業績」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

東急グループは、大正11年の「目黒蒲田電鉄株式会社」設立に始まり、平成29年3月末現在、221社8法人で構成され、東京急行電鉄はその中核企業として、鉄道事業を基盤とした「街づくり」を事業の根幹に置きつつ、長年にわたって、皆さまの日々の生活に密着したさまざまな領域で事業を進めております。また、財団・社会活動、東急会活動などを通して、社会貢献活動や環境活動へも積極的に取り組むなど、地域社会に根ざした事業活動により、企業としての社会的責任を果たしてまいりました。

平成9年には「美しい時代へ」をスローガンに、人々の多様な価値観に対応した「美しい生活環境の創造」をグループ理念として掲げ、各社の「自立」を前提に、互いに連携しあい、相乗効果を生み出す「共創」を推し進め、信頼され愛される東急ブランドの確立を目指しております。さらに平成12年4月には、21世紀においても持続的に成長する東急グループを目指し、「東急グループ経営方針」を策定いたしました。この経営方針は、東急グループの中核企業としての当社の立場を強く打ち出すもので、「当社による東急グループガバナンスの確立」「東急グループ内外とのアライアンスによる成長」「コンプライアンス経営によるリスク管理」の3点から構成され「東急グループ経営方針の基本姿勢」とそれに基づく「東急グループ経営方針の実行施策」を大きな骨子としております。

(2)目標とする経営指標・中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

当社および連結子会社では「安全」をすべての事業の根幹と位置づけ、安全の確保が最大かつ最重要の責務であり、不変の経営課題であると認識しております。また人口動態・ライフスタイルの変化についても、長期的・多面的に取り組むことにより、「選ばれる沿線」を実現していかなくてはなりません。そのような中、以下の取り組みを進めることで、企業の持続的成長を果たし、企業価値の最大化に努めてまいります。

① 中期3か年経営計画“STEP TO THE NEXT STAGE”

当社および連結子会社は、将来の大きな飛躍に向け、財務健全性を確保しつつ、既存事業・プロジェクトの強化、当社の強みを生かすことのできる新規領域への積極的進出や成長領域への重点投資を実施し、収益性、効率性双方の向上の実現を目指した、平成27年度を初年度とする中期3か年経営計画「STEP TO THE NEXT STAGE」を策定いたしました。

この経営計画につきましては、「次なる飛躍へのステップとして、沿線を深耕するとともに、新たな成長にチャレンジする」を基本方針とし、前中期計画に引き続き「東急沿線が“選ばれる沿線”であり続ける」「“ひとつの東急”として強い企業集団を形成する」という2つの長期ビジョンの実現を目指し、具体的には次の4つの重点施策を実施してまいります。

(重点施策)

1)「安心感と満足感のより一層の充実」

ホームや踏切などの安全性を高める設備の充実や、事故・異常時における対応力強化を通じ、更に安心で安全な鉄道を追求するとともに、交通・リテール・生活サービスを一体的に展開させ、広域の移動を促進、街や地域を活性化させてまいります。

2)「沿線開発と不動産事業の更なる推進」

沿線再開発に加え、駅周辺における総合開発を引き続き推進するとともに、沿線資産活用コンサルティング事業の強化や投資循環型事業モデルによる賃貸事業の更なる拡充を図ってまいります。

3)「ライフスタイル&ワークスタイル・イノベーションの推進」

ライフスタイル・イノベーションについては、新たに取り組む電力小売事業を含めた東急グループのさまざまな家ナカサービスを便利に、お得に利用できるよう「バンドル化」いたします。また、鉄道やバスで貯まる「交通ポイント」など、TOKYUポイントの新たなサービスを導入し、お客さまに新たな生活価値を提供してまいります。

ワークスタイル・イノベーションについては、当社が関わる開発プロジェクトにおいて創造・交流施設を整備し、多様なワークスタイルへの対応をサポートすると同時に、当社グループ内におけるダイバーシティマネジメントや、社内起業家育成制度などを推進し、社員がいきいきと輝ける環境づくりを実現してまいります。

 

4)「グループ経営資源を活かした新たな取り組み」

リテール事業では、各連結リテール事業を束ねる「リテール事業部」を設置し、強力なヘッドクオーター機能を置くことにより、グループとしての総合力を発揮できる体制を構築いたします。

インバウンド施策では、羽田空港アクセスの向上や観光・貸切バス網の拡充、免税・多言語対応、観光コーディネート機能の強化など、インバウンド旅客を渋谷や沿線地域、国内グループ施設へ誘致する環境を整備してまいります。

ホテル事業は、お客さま視点でホテルブランドを再編するとともに、インバウンド需要を見据え、大都市や観光拠点での新規出店を推進してまいります。

海外展開では、東南アジアにおける経済成長力を取り込むため、これまで国内外の事業から培ったノウハウを活用し、現地パートナーとの連携などによる事業推進・事業機会の拡大を図ってまいります。

(配当政策)

当社は、株主の皆さまへの適切な利益還元を経営上の重要政策と位置づけ、配当政策として、本経営計画期間中、連結自己資本配当率(※)2%を目処におき、安定・継続的な配当を実施することとしております。

※  配当金総額÷期中平均連結自己資本×100

② CSR経営とコーポレートガバナンスの充実

当社および連結子会社は、かねてより企業市民として、その社会的責任の重要性を認識し、グループ全体でコンプライアンスに取り組むとともに、地球環境保全活動や各種社会貢献活動を継続するなど、CSR経営を積極的に推進しております。今後も、時代の変化に即したCSR活動を推進し、さまざまなステークホルダーの皆さまとのコミュニケーションをより一層緊密にするとともに、経営の透明性、業務の適正性を向上させるべく実効的なコーポレートガバナンスの充実を図ってまいります。

(3)株式会社の支配に関する基本方針

当社は財務及び事業の方針の決定を支配する者のあり方に関する基本方針を定めており、その内容等(会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項)は次のとおりであります。

① 当社の財務及び事業の基本的方針

当社は、平成12年4月、「21世紀においても持続的に成長する東急グループ」を目指して「東急グループ経営方針」を策定し、グループ再編を積極的に進めるとともに、財務的な課題の克服に努めてまいりました。次いで平成17年4月より成長戦略に軸足を移し、持続的成長の基盤確立に努め、平成27年度からは、「次なる飛躍へのステップとして、沿線を深耕するとともに、新たな成長にチャレンジする」を基本方針とする中期3か年経営計画に取り組んでおります。

当該計画は、渋谷再開発など大型開発プロジェクトの完成を見据えた長期的な視点に立ち、将来の大きな飛躍に向け、財務健全性を確保しつつ、既存事業・プロジェクトの強化、当社の強みを生かすことのできる新規領域への積極的進出や成長領域への重点投資を実施し、収益性、効率性双方の向上を実現することを目的としております。

このように長期的な視点に立った経営計画を推進し、当社が企業価値・株主の共同の利益を保全・確保し向上させていくためには、以下の各項目を実行することが不可欠と考えており、より一層これらの実現に努めてまいります。

1)当社の鉄道事業は極めて公共性の高い事業領域に属しており、お客さまの安全確保を第一義とした全社的推進体制を確保すること

2)安全性および利便性の向上を目指した中長期的な投資を継続的に行い、それを可能とする経営の安定性を確保すること

3)長期的な視点に立ち、沿線開発と不動産事業の更なる推進を継続するとともに、広域の移動を促進、街や地域を活性化させるべく、交通・リテール・生活サービスなどグループの各事業が一体的に展開すること

4)子会社の少数株主の利益を損なわないように配慮しつつ、グループの各事業を全体最適の観点から一元的にマネジメントすることができるよう、当社が強力なグループガバナンスを発揮すること

5)株主の皆さま、お客さま、沿線住民の方々、行政機関、関係事業者、債権者、そして従業員やその家族といった事業にとって重要なステークホルダー全般との信頼関係を維持向上させること

 

② 当社の支配に影響を与える株式の大量取得行為について

当社の株式は上場されており、当社株式の大量取得を目的とする買付であっても、それが当社の企業価値・株主の共同の利益に資すると判断される限り否定されるべきものではありません。また、株式会社の支配権の移転を伴う買収提案について対抗措置をとるべきとの判断には、最終的には合理的手続きを経て確定される株主全体の意思が反映されるべきものと考えております。

しかしながら、株式の大量取得行為の中にはその目的・手法などから見て、企業価値・株主の共同の利益に対して明白な侵害をもたらすもの、例えば短期的な利益追求を目的とすることなどにより鉄道事業の安全確保に悪影響を及ぼす可能性があるもの、また、買収を二段階で行い、最初の買付に応じなければ不利益になる、あるいはそのような危惧を抱かせる状況を作り出し、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの等、不適切な方法による、あるいは不適切な者による企業買収の存在は否定できません。また、株式の大量取得行為の提案がなされた場合において、これの是非を判断する十分な情報や代替案を株主の皆さまが持ち合わせていないにも関わらず、そのまま買収が行われてしまう場合もあり得ます。

当社事業にとって重要なステークホルダーの利益を考慮しつつ、このような買収から企業価値・株主の共同の利益を守り、これらに資するよう行動することは、当社の経営を負託された者として当然の責務であると認識しております。

現時点において、当社は具体的にこのような買収の脅威にさらされているとの認識はありませんが、当社株式の取引や株主の異動の状況を常にチェックするとともに、当社株式を大量に取得しようとする者が出現した場合に、判断の客観性を担保しつつ、企業価値・株主の共同の利益を保全・確保および向上させるために必要な措置が取れるよう、社内における体制を整え、役割分担や行うべき対応を明確にしております。

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。なお、当社グループ(当社及び連結子会社)は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存であります。

本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。なお、以下の記載は、当社グループの事業等のリスクをすべて網羅することを意図したものではないことにご留意下さい。

(1)自然災害

当社グループは、大規模地震や台風等の自然災害の発生を想定したさまざまな施策を講じておりますが、大規模な自然災害が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2)事故等

当社グループは、事故、テロ等の不法行為による災害、設備や情報システムの故障、食品、建設工事等の品質問題、その他の理由によるトラブルの発生を想定したさまざまな施策を講じておりますが、重大な事故等が発生し、人的被害や事業の中断等が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3)コンプライアンス

当社グループは、鉄軌道事業、不動産事業をはじめとする各種事業において、関係法令を遵守し、企業倫理に従って事業を行っておりますが、これらに反する行為が発生し、社会的信頼を損なった場合には、お客さまや取引先の離反等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4)経営環境変化

①  法的規制

当社グループは、鉄軌道事業、不動産事業をはじめとする各種事業において、鉄道事業法、建築基準法等の法令・規則等の適用を受けておりますが、これらの法的規制が変更された場合には、規制を遵守するための費用の増加や活動の制限により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

②  経済情勢

当社グループは、当社鉄道沿線地域に経営資源が集中しており、同地域の消費動向の悪化、人口の減少、人口動態の変化(少子高齢化)等が起こった場合には、収益が減少し、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、「中期3か年経営計画」を策定し、各種施策を実施しておりますが、経済情勢の変化等によって、これらの計画が予定通り進捗しない場合や、想定した収益や期待した効果を生まない場合があり、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

③  地価下落

当社グループは、事業遂行上必要な多くの不動産(販売用及び事業用)を保有しており、不動産市況の低迷その他の理由に起因して不動産価格が下落した場合には、収益の減少や評価損、売却損の計上により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

④  株価下落

当社グループは、株式等の投資有価証券を保有しており、企業年金資産、退職給付信託等においても多くの株式・債券等を保有しており、株式・債券市況の低迷や投資先の自己資本の悪化等が生じた場合には、評価損や売却損の計上により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑤  金利上昇

当社グループは、これまで鉄軌道事業をはじめとする各事業の必要資金の多くを、社債や金融機関からの借入により調達しており、有利子負債(※)は総資産に比して高い水準にあるため、固定金利による調達や有利子負債の抑制を行っていますが、市場金利が上昇した場合や、格付機関が当社の格付けを引き下げた場合には、相対的に金利負担が重くなったり、資金調達の条件が悪化したりすることにより、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥  国際情勢

当社グループは、国内のみならずベトナム等の海外においても事業活動を行っており、紛争又は戦争、テロ事件、伝染病の流行などの国際情勢の変化が生じた場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、為替相場に変動があった場合には、当社グループの円貨での業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

※  有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計

5【経営上の重要な契約等】

当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等はありません。

6【研究開発活動】

当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は、3億7千6百万円であり、セグメントごとの研究開発費は、交通事業が3億6千8百万円、生活サービス事業が7百万円であります。

主な研究開発活動は、㈱東急総合研究所において、経済、社会、地域等に関する消費研究や消費構造、消費者の意識・行動に関する調査・研究を行っております。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

(1)経営成績

①  営業収益及び営業利益

当連結会計年度の営業収益は、当社の不動産賃貸業が堅調に推移したことや、㈱東急レクリエーションを前連結会計年度末に連結子会社化したことによる増加などにより、前連結会計年度の1兆914億円から258億円増加し1兆1,173億円、営業利益は、前連結会計年度の754億円から24億円増加の779億円となりました。

②  営業外損益及び経常利益

営業外収益は、持分法による投資利益が増加したことなどにより、前連結会計年度の127億円から12億円増加し、140億円となりました。営業外費用は、固定資産解体費が減少したことなどにより、前連結会計年度の182億円から26億円減少し、155億円となりました。この結果、経常利益は、前連結会計年度の700億円から64億円増加の764億円となりました。

③  特別損益及び親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益は、固定資産売却益が減少したことなどにより、前連結会計年度の265億円から144億円減少し、121億円となりました。特別損失は、前年度に計上した固定資産解体費の反動などにより、前連結会計年度の221億円から113億円減少し、107億円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の744億円から33億円増加の778億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の552億円から120億円増加し、672億円となりました。

(2)財政状態

当連結会計年度末の総資産は、当社の設備投資による有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末の2兆925億円から560億円増加し、2兆1,486億円となりました。

負債は、未払法人税等が減少したものの、有利子負債(※)が増加したことなどにより、前連結会計年度末の1兆4,692億円から9億円増加し、1兆4,702億円となりました。

純資産は、自己株式の取得などがあったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末の6,232億円から550億円増加し、6,783億円となりました。

この結果、自己資本比率は29.2%となり、前連結会計年度末に比べ1.6ポイント上昇いたしました。また、1株当たり純資産額は517.38円となりました。

(3)キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、1,263億円の収入となりました。主に法人税等の支払額が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ32億円の収入減となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、1,323億円の支出となりました。主に固定資産の取得による支出が減少したものの、固定資産の売却による収入が減少したことなどにより、前連結会計年度に比べ107億円の支出増となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、30億円の収入となりました。主に社債の発行による収入が増加したことなどにより、前連結会計年度に比べ83億円の支出減となりました。

営業活動によって獲得された1,263億円のキャッシュは、主に設備投資として投資活動に振り向けられるとともに有利子負債(※)の削減のため財務活動に振り向けられました。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は398億円となり、前連結会計年度末に比べて30億円減少いたしました。

※  有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計