第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月22日)現在において、当社グループが判断したものであります。 

 

(1) 経営理念、経営方針

当社グループでは以下のとおり、「東武グループ経営理念」、「東武グループ経営方針」を定めております。

① 東武グループ経営理念

東武グループでは、「奉仕」「進取」「和親」を経営の拠り所としています。

「奉仕」:東武グループは、東武グループの全ての事業が社会に支えられていることを深く自覚し、豊かな社会の実現に貢献します。

「進取」:東武グループは、現状に甘んじることなく、常に研鑚に励み、時代を切り開く開拓者精神をもって新たな挑戦を続けます。

「和親」:東武グループは、人の和や環境との調和をもとに事業の発展と従業員の幸福を図り、社会の進展に寄与します。

 

② 東武グループ経営方針

お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域の発展に貢献する企業グループとして、安全・安心を根幹に「運輸」「レジャー」「不動産」「流通」等の事業を多角的、複合的に展開します。

お客様の視点に立ち、質の高い先進性や独創性あふれるサービスを提供し、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指します。

事業を通じて安定的に利益を創出しながら、環境にも配慮した経営を進め、お客様の生活を担う企業グループとして地域社会とともに持続的に発展することにより、企業の社会的責任を果たします。

 

 

(2) 経営環境、対処すべき課題

経済情勢は、政府の景気対策等を背景に、企業収益や雇用情勢に改善が見られるなど、緩やかな回復基調ではありますが、個人消費や住宅建設に力強さが見られないほか、海外諸国における政策転換等、先行きは未だ不透明な状況であります。

このような情勢ではありますが、当社グループは社会インフラのひとつである鉄道事業を中心に沿線のお客様の生活を支え、地域のさらなる発展に全力を尽くしてまいります。

当社グループは、これまで鉄道事業や各事業を通じて、街と街、人と街、鉄道ネットワークを活用した相互直通運転、そして各社の協力を得て実現したSL復活運転プロジェクト等、たくさんの「つなぐ」で沿線発展の一端を担ってまいりました。これからも「つなぐ」を「惹きつける力」と「稼ぐ力」へと進化させ、定住人口の増加と交流人口の拡大による地域の活性化と沿線の価値向上を目指してまいります。

また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催とその後を見据え、急伸するインバウンド需要の取り込みによる収益拡大等、将来の成長に向けた種蒔き育成期と位置づけた「東武グループ中期経営計画2017~2020」により中期的な経営目標を定め、事業を推進しております。同計画にもとづき、持続的な成長への投資や成長分野の開拓を積極的に推進するとともに、財務健全性を堅持しつつ、株主還元の一層の充実をはかってまいります。

同計画の2年目となる2018年度においては、通勤車両の新造やリニューアルの実施、東武アーバンパークラインの複線化工事の推進等の利便性向上のほか、ホームドア設置、連続立体交差事業の推進等の安全投資を実施いたします。また、ターミナル駅や主要駅における駅ビル建設、商業施設の大規模なリニューアル工事を推進するなど、沿線開発の深耕により豊かな沿線生活環境の整備をはかってまいります。さらに、各設備の多言語化対応や「TOBU FREE Wi-Fi」の拡大などにより、急伸するインバウンドの受け入れ体制をグループ全体で強化するとともに、立地ごとの特性を活かした新規ホテルの建設等を推進してまいります。

 

(3) 当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について

① 基本方針の内容

当社は、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上に向けた取り組みを一層推進してまいりますが、昨今、わが国の株式市場等においては、買付の対象となる会社の経営陣の賛同を得ることなく、一方的に大量の株式の買付を強行するといった事例も散見されております。

 

もとより、当社は、株式の大量買付であっても、当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。

しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上に対する明白な侵害をもたらすもの、株主様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主様が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの等、対象会社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上に資さない場合も想定されます。

当社では、継続的な企業価値および株主共同の利益の確保・向上のためには、経営の根底にある「安全・安心」を提供し続けることや運輸事業を営む者としての公共的使命に関する基本的な考え方を、今後も引き続き維持・推進していくとともに、中長期的な視点に立った経営を推進していくことが、不可欠であると考えます。

このような経営が、当社株式の大量買付を行う者により短期的な利益のみを追求するような経営に変わるようなことがあれば、当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上は損なわれることになります。

こうした事情に鑑み、当社取締役会は、当社株式に対する不適切な買付により企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上が毀損されることを防止するためには、買付に応じるべきか否かを株主様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提案するために必要な情報や時間を確保すること、および株主様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とするための体制を、平時において整えておくことが必要不可欠と考えております。

 

② 具体的な取り組み

(ⅰ)会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取り組み

当社グループは、お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域の発展に貢献する企業グループとして、「運輸」、「レジャー」、「不動産」、「流通」等の事業を多角的、複合的に展開しており、この事業活動の根幹にあるものが「安全・安心」の提供であり、さらに、事業を通じて安定的に利益を創出しながら、環境にも配慮した経営を進め、お客様の生活を担う企業グループとして地域社会とともに持続的に発展することにより、企業の社会的責任を果たすことが重要であると認識しております。すべての事業における信頼の基礎である「安全・安心」を提供し続けるとともに、運輸事業を営む者としての公共的使命に関する基本的な考え方を今後も維持し続けることが、当社グループ全体の根幹をなすものと考えております。

さらに、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指す「東武グループ経営方針」のもと、将来に向けた持続的な成長を目指すべく、長期的な視点から「経営の基本的な方向性」等を示した「長期経営構想」と、これに基づく4か年の具体的な取組みを示した「中期経営計画」を策定いたしました。当社グループでは、中長期的な視点に立ったロードマップを描き、持続的な成長に向けた投資を積極的に推進するとともに、財務健全性を堅持しつつ、株主還元の一層の充実をはかることで、引き続き企業価値および株主共同の利益の確保・向上をはかってまいる所存であります。

 

(ⅱ)基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み

当社は、2018年6月22日開催の定時株主総会において「当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)の導入について承認を得ております。

本プランは、当社株式等の大量買付行為が行われる場合に、株主様が適切な判断をするために必要・十分な情報と時間を確保するとともに、買収者との交渉の機会を確保することなどにより、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上を目的としています。

本プランは、当社が発行者である株券等について、保有者およびその共同保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付、または当社が発行者である株券等について、公開買付に係る株券等の株券等所有割合およびその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付(以下「買付等」と総称し、買付等を行おうとする者を「買付者等」といいます。)を対象とします。

 

当社の株券等について買付等が行われる場合、当該買付等に係る買付者等には、買付内容等の検討に必要な情報および本プランに定める手続を遵守する旨の誓約文言等を記載した書面の提出を求めます。その後、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員のみから構成される独立委員会が買付者等から提出された情報や、当社取締役会が必要に応じて提出する買付者等の買付等の内容に対する意見およびその根拠資料、当該買付等に対する代替案について、評価・検討するものとします。独立委員会は、必要に応じて、独立した第三者の助言を得たうえ、買付等の内容の検討、当社取締役会の提示した代替案等の検討、買付者等との協議・交渉、当社取締役会等を通じた株主に対する情報開示等を行います。

独立委員会は、買付者等が本プランに定められた手続を遵守しなかった場合、または買付等の内容の検討等の結果、買付者等による買付等が企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上に対する明白な侵害をもたらす恐れのある買付等であるなど、本プランに定める要件のいずれかに該当し、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、新株予約権の無償割当てを実施すべき旨の勧告を行います。なお、独立委員会は、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合でも、新株予約権の無償割当てを実施することについて株主総会の決議を経ることが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を行います。この新株予約権は、1円を下限とし当社株式1株の時価の2分の1の金額を上限とする金額の範囲内で、当社取締役会が新株予約権無償割当て決議において定める金額を払い込むことにより、原則として当社株式1株を取得することができるものですが、買付者等による権利行使が認められないという行使条件が付されています。また、当社が買付者等以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得することができる旨の取得条項が付されており、当社がかかる条項に基づく取得をする場合、新株予約権1個と引換えに、対象株式数に相当する数の当社株式を交付することができるものとします。当社取締役会は、独立委員会の上記勧告を最大限に尊重して新株予約権無償割当ての実施または不実施等の決議をするものとします。ただし、当社取締役会は、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議する旨決議するものとします。当社取締役会は、上記決定を行った場合には速やかに、当該決議の概要その他当社取締役会が適切と判断する事項について情報開示を行います。

本プランの有効期間は2018年6月22日開催の定時株主総会終了後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。ただし、有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において本プランに係る新株予約権の無償割当てに関する事項の決定についての取締役会への上記委任を撤回する旨の決議が行われた場合、または、当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとします。

本プラン導入後であっても、新株予約権無償割当てが実施されていない場合、株主の皆様に直接具体的な影響が生じることはありません。他方、新株予約権無償割当てが実施された場合、株主の皆様が新株予約権行使の手続を行わないとその保有する株式の価値は希釈化される場合があります(ただし、当社が当社株式を対価として新株予約権の取得を行った場合、その保有する株式の希釈化は生じません。)。

 

(ⅲ)具体的取り組みに対する当社取締役会の判断およびその理由

前記②(ⅰ)に記載した取り組みは、いずれも当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上に資する具体的方策として策定されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。

また、本プランは前記②(ⅱ)記載のとおり、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上させる目的をもって導入されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。とくに、本プランは当社の株主総会において決議がなされ導入しているため、株主意思を重視するものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員のみから構成される独立委員会を設置し、本プランの発動に際しては必ず独立委員会の判断を得ることが必要とされていること、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を得ることができるとされていること、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議するとされていること、本プランは有効期間を約3年間と定め、有効期間の満了前であっても当社の株主総会または取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その公正性・客観性が担保されており、合理性を有し、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに運輸事業の安全性、公共性および利用者の利益の確保・向上に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月22日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 法的規制

東武鉄道が展開している鉄道事業においては、鉄道事業法第3条により、路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の認可を受けなければなりません。同様に、運賃の設定・変更についても同法第16条により、鉄道事業者は旅客運賃等の上限を定め、国土交通大臣の許可を受けなければならず、国土交通大臣は、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して認可しております(総括原価方式)。また、認可を受けた運賃等の上限の範囲内で運賃等を設定・変更する場合は、国土交通大臣に届け出ることとなっております。

このため、法制度の変更や運賃改定の結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、鉄道事業以外の当社グループ会社が展開する各種事業においても、様々な法令・規則等の規制の適用を受けており、これら法的規制が変更された場合には、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 少子高齢化傾向

現在、わが国において少子高齢化が進んでおり、東武沿線においても、地域によって差はあるものの、少子高齢化を伴う人口減少が進行するものと推測されます。

当社グループは、鉄道事業を中心に東武沿線を主たるマーケットとして事業を展開しているため、人口減少や少子高齢化の進行は、長期的には当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 経済情勢

当社グループは、各事業において継続的に設備投資を行っておりますが、これらの必要資金は主として社債や金融機関からの外部借入れによって調達しているため、今後、金利が上昇基調になった場合には、金利負担の増大を招くことにより、当社グループの業績および財務状況に影響を与える可能性があります。

また、消費増税や電気料金の値上げなどで生じる経済情勢の変化によっては、当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 個人情報の管理

当社グループでは、各事業において顧客の個人情報を含むデータベースを管理しております。これらの情報については、情報の取得および利用に際しての社内での保護規程を定めるとともに、管理体制を整備し、関係者の情報管理を徹底させるほか、情報処理を社外に委託する場合も秘密保持契約の整備、監督の強化を行う等、取扱には充分に留意しておりますが、何らかの原因により情報が流出した場合には、当社グループの信用の失墜につながり、業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 自然災害等

当社が展開している鉄道事業においては、安全確保はお客様の信頼を得るうえで最も重要であり、万全を期しておりますが、不慮の事故、天災およびテロ・戦争の発生等外的要因により、安全確保が難しい状況に陥った場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、天候不順や伝染病等の発生により、観光施設・レジャー施設の集客状況が悪化した場合には、レジャー事業を中心に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、上記は当社グループの事業等について予想される主なリスクを例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

(業績等の概要)

(1) 業績の状況

当期のわが国経済は、企業収益や雇用情勢に改善が見られ、景気は緩やかな回復基調にありましたが、個人消費や住宅建設に力強さが見られないなど、先行き不透明な状況で推移いたしました。

このような情勢下にありまして、当社グループでは、グループの新たな成長へ向けて、長期的な視点から「経営の基本的な方向性」等を示した「長期経営構想」と、これにもとづく4か年の具体的な取組みを示した「中期経営計画」を策定いたしました。本計画にもとづき、当社グループの持続的な成長に向けた投資を積極的に推進するとともに、財務健全性を堅持しつつ、株主還元の一層の充実をはかってまいりました。

当期の連結業績は、営業収益は569,519百万円(前期比0.1%増)、営業利益は66,645百万円(前期比2.5%減)、経常利益は62,286百万円(前期比0.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は36,025百万円(前期比0.3%減)となりました。

セグメント情報の業績を示すと、次のとおりであります。

なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。また、各セグメントの営業成績のうち「調整額」は内部取引消去額を表しております。

 

(運輸事業)

鉄道業におきまして、当社では、安全を最優先に、より多くのお客様にご利用いただけるよう、様々な取組みを進めております。

安全面では、竹ノ塚駅付近、清水公園~梅郷間およびとうきょうスカイツリー駅付近の高架化工事を進めたほか、ホーム上の安全対策として、川越駅においてホームドア(可動式ホーム柵)の使用を3月より開始するとともに、池袋駅においても工事を進め、2018年4月よりホームドアの使用を開始いたしました。さらに、特にご利用者数が多い区間および1日のご利用者数が5万人以上の全駅(すでに設置済みの駅を含め計40駅)にホームドアを設置する方針を決定いたしました。また、大規模災害に備えた駅舎等の耐震補強工事を進めたほか、沿線の消防と連携した異常時総合訓練等、従業員に対し安全に関する様々な教育を継続して実施いたしました。

営業面では、新型特急「リバティ」の運行開始や、特急「りょうもう」号を全列車久喜駅停車としたこと等により、特急列車の利便性を高め、より多くのお客様にご利用いただき増収をはかりました。また、鉄道会社8社および沿線地域など関係各所にご支援・ご協力いただきSL「大樹」の営業運転を開始したほか、新駅「東武ワールドスクウェア」の開業により、日光・鬼怒川エリアにおいて、新たな交流人口を創出するとともに、回遊性を高めることで、同エリアのさらなる活性化と増収をはかりました。さらに、東京都と連携し、浅草・東京スカイツリーエリアの賑わいの創出と回遊性の向上を目的として、東武スカイツリーライン隅田川橋梁のライトアップを開始いたしました。また、訪日外国人観光客のさらなる増加を想定し、受け入れ体制を強化するため、従業員を対象とした英語教育の継続実施、各駅における「多言語電話通訳サービス」の新たな導入、池袋駅の「東武ツーリストインフォメーションセンター池袋」および東武日光駅の「日光コンシェルジュ」の新設をそれぞれ行ったほか、浅草駅等において8言語に対応した新型自動券売機を導入いたしました。

なお、2016年5月に東上線中板橋駅~大山駅間において発生した列車脱線事故につきましては、第三者機関による調査協力のもと、2017年10月に調査結果にもとづく再発防止策を講じております。また、2018年1月に公表されました運輸安全委員会の鉄道事故調査報告書の内容を真摯に受け止め、再発防止策を確実に実施し、より安全な鉄道を目指してまいります。

バス・タクシー業におきまして、東武バスセントラル㈱では、㈱はとバスと共同で「東京駅~日光・鬼怒川定期観光コース(SL『大樹』乗車コース)」を新設したほか、東武バス日光㈱では、京浜急行バス㈱と共同で空港連絡バス「鬼怒川温泉・日光~羽田空港・横浜線」の運行を開始し、それぞれ日光・鬼怒川エリアへの誘客に努めました。

運輸事業全体としては、貨物運送業において経営の効率化と収益力の強化を目的に事業の一部を譲渡した一方、鉄道業においてダイヤ改正により特急ご利用のお客様が増加したこと等により、営業収益は215,802百万円(前期比0.2%減)、営業利益は41,167百万円(前期比1.2%増)となりました。

 

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

鉄道業

164,958

1.6

バス・タクシー業

31,093

△3.2

貨物運送業

20,357

△10.6

小計

216,408

△0.4

調整額

△605

営業収益計

215,802

△0.2

 

 

(提出会社の鉄道業成績)

種別

単位

第197期

第198期

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

営業日数

 

365

365

営業キロ

 

キロ

463.3

463.3

客車走行キロ

 

千キロ

275,550

274,780

 

定期

千人

592,493

599,335

輸送人員

定期外

316,389

321,147

 

908,881

920,482

 

定期

百万円

66,031

66,672

旅客収入

定期外

79,850

81,636

 

145,881

148,308

運輸雑収

 

14,787

14,984

収入合計

 

160,668

163,291

1日平均収入

 

440

447

乗車効率

 

32.6

31.7

 

(注) 1 乗車効率の算出方法

  乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)÷(客車走行キロ×平均定員)×100

  乗車効率とは、客車走行車両定員に対する旅客輸送量を見るためのものであります。

2 定期外旅客収入は、特急料金及び着席整理料金、SL・DL座席指定料金を含んでおります。

 

 

 


 

(レジャー事業)

スカイツリー業におきまして、「東京スカイツリー®」では、新ライティング「幟(のぼり)」の点灯開始に加え、人気アニメ「進撃の巨人」や華やかな舞台で多くの人々を魅了してきた「宝塚歌劇」とタイアップした企画の開催等により、話題性の向上による幅広い層への誘客をはかりました。また、東海道新幹線と展望台入場券等のパッケージ旅行商品を展開し、関西・東海地区からの一層の来場促進をはかりました。

ホテル業におきまして、「東武ホテルレバント東京」等では、客室の改修や海外オンライン旅行会社への営業強化により、外国人宿泊客のさらなる取り込みをはかりました。また、2020年の開業に向けて、当社の重点エリアである日光においては国内外富裕層をターゲットとした「ザ・リッツ・カールトン日光」の、同じく重点エリアである銀座においては外国人宿泊客をターゲットとした「ACホテル・バイ・マリオット東京銀座」の建設工事にそれぞれ着手するとともに、観光とビジネスの両ニーズを併せ持つ浅草および川越においては宿泊主体型ホテルの開業計画を決定いたしました。

旅行業におきまして、東武トップツアーズ㈱では、スポーツに関するマーケティング会社ニールセン スポーツ ジャパン㈱と業務提携を行いました。これにより、2020年に向けたスポーツ大会の盛り上げに関する事業の実施や、2021年以降を見据えた、スポーツ観戦等を主な目的とした観光旅行に関する営業施策を推進してまいります。

遊園地・観光業におきまして、「東武動物公園」では、人気アニメとコラボレーションした様々な企画を実施したほか、「東武ワールドスクウェア」では、建造物や台湾ランタンをライトアップさせた「イルミネーションin東武ワールドスクウェア」を開催し、それぞれ誘客に努めました。

レジャー事業全体としては、営業収益は78,620百万円(前期比2.4%増)、営業利益は6,907百万円(前期比1.7%増)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

遊園地・観光業

5,441

8.2

スポーツ業

11,014

△0.4

旅行業

21,950

2.3

ホテル業

18,615

8.1

飲食業

8,777

△5.1

スカイツリー業

14,431

0.6

小計

80,232

2.4

調整額

△1,611

営業収益計

78,620

2.4

 

 

 

(不動産事業)

スカイツリータウン業におきまして、「東京ソラマチ®」では、テレビCMをはじめとした積極的な広告宣伝の展開や季節に応じた各種イベントの開催等によりさらなる誘客をはかりました。また、ファッションフロアのリニューアルや、外国人観光客の利便性向上を目的に、複数店舗におけるお買い上げ金額を合算して免税手続きをすることができる一括免税カウンター「TAX REFUND COUNTER(タックス リファンド カウンター)」をオープンするなど、増収に向けた施設の魅力向上をはかりました。

不動産賃貸業におきまして、当社では、当社沿線最大規模となる駅ナカ商業施設「EQUiA(エキア)北千住」等をオープンし、安定的な収益確保および沿線価値の向上をはかりました。また、沿線の定住人口増加と当社の住宅事業のブランドである「ソライエ」の認知度向上を目的に、賃貸マンションの新ブランド「Solaie I'll(ソライエ アイル)」を立ちあげるとともに、若い世代の当社沿線への移住促進を目的に、当社が保有する賃貸マンションを「Solaie I'll 下赤塚」としてリニューアルし、賃貸を開始いたしました。また、新たに賃貸マンションを取得し、恒常的な収益の確保をはかりました。さらに、子育て世代のご家族が住みやすい環境を整備するため、北千住駅や曳舟駅周辺に保育所を開設するとともに、首都圏内3か所でサテライトオフィスを開設いたしました。

不動産分譲業におきまして、当社では、沿線価値向上と沿線定住人口増加を目的として、「ソライエ船橋塚田」(船橋市北本町)等の分譲マンションや、分譲戸建住宅「ソライエ清水公園アーバンパークタウン」(野田市清水公園東)を販売いたしました。

不動産事業全体としては、マンション販売戸数の縮小等により、営業収益は53,649百万円(前期比3.9%減)、営業利益は12,637百万円(前期比12.2%減)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

不動産賃貸業

36,906

7.6

不動産分譲業

4,673

△50.7

スカイツリータウン業

12,355

△0.3

小計

53,935

△4.0

調整額

△286

営業収益計

53,649

△3.9

 

 

(流通事業)

流通業におきまして、㈱東武百貨店では、池袋店において「ニトリ東武池袋店」を、船橋店において「ビックカメラ船橋東武店」をそれぞれ誘致し、品揃えの幅を広げることで、お客様の来店機会の創出に努めました。また、㈱東武宇都宮百貨店では、宇都宮店において、和洋菓子売場を「和洋菓子スイーツテラス」としてリニューアルし、地元で人気の洋菓子店や東日本初・北関東初出店となる話題性の高い和洋菓子店等を誘致することで、新規顧客の獲得をはかりました。東武商事㈱では、北千住駅をはじめ4か所でコンビニエンスストアをオープンし、増収に努めました。

流通事業全体としては、経営の効率化を目的に、㈱東武百貨店における売場の一部賃貸化実施や経費の低減に努めたこと等により、営業収益は192,808百万円(前期比1.1%減)、営業利益は2,209百万円(前期比16.4%増)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

流通業

192,808

△1.1

調整額

営業収益計

192,808

△1.1

 

 

(その他事業)

建設業におきまして、東武建設㈱では、宇都宮市においてマンションの建設工事を、東武谷内田建設㈱では、嵐山町において公共施設の建設工事を、東武緑地㈱では、久喜市においてマンションの造園工事をそれぞれ完成させました。

そのほか、東武ビルマネジメント㈱では、港区においてオフィスビルの設備管理業務を受注するなど、増収に努めました。

その他事業全体としては、営業収益は96,896百万円(前期比2.5%増)となり、営業利益につきましては、建設業における原材料費等の上昇により4,902百万円(前期比20.9%減)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

建設業

57,452

△0.4

その他業

39,902

6.0

小計

97,355

2.1

調整額

△459

営業収益計

96,896

2.5

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ9,106百万円減少し25,011百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、税金等調整前当期純利益57,470百万円に減価償却費52,499百万円等を加減算した結果91,967百万円となり、前連結会計年度と比べて4,497百万円の資金流入の増加となりました。これは、主に固定資産除却損の増加の一方、たな卸資産の増加等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は66,951百万円となり、前連結会計年度と比べて11,069百万円の資金流出の増加となりました。これは、主に有形及び無形固定資産の取得による支出が増加したこと等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は34,111百万円となり、前連結会計年度と比べて4,204百万円の資金流出の増加となりました。これは、主に長期借入金の増加の一方、自己株式を取得したこと等によるものです。

 

(3) 財政状態の状況

総資産は、有形固定資産の取得による増加等により1,619,264百万円となり、前連結会計年度末と比べ21,531百万円(前期比1.3%増)の増加となりました。

負債は、負担金工事の進捗による前受金が増加したこと等により1,158,681百万円となり、前連結会計年度末と比べ3,721百万円(前期比0.3%増)の増加となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により460,582百万円となり、前連結会計年度末と比べ17,810百万円(前期比4.0%増)の増加となりました。

 

(4) 生産、受注及び販売の状況

当社グループのサービス、生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種のサービス、製品であっても、その内容、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

そのため生産、受注及び販売の状況については、「(業績等の概要) (1) 業績の状況」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月22日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成にあたり経営者は、資産・負債及び報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わねばなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

① 株式等の投資

当社グループが保有する株式等の有価証券については、将来の株式市況の悪化または投資対象会社の業績不振等により時価の著しい下落が生じた際には、損失の計上が必要となる場合があります。

② 不動産の保有

当社グループが保有する販売用不動産については、地価の下落や市況悪化等により時価の下落が生じた場合には、損失の計上が必要になります。また、事業用不動産については、当初見込んだ収益が得られなかった場合、または将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額などの前提条件に変更があった場合には、減損損失の計上が必要になります。

③ 退職給付費用及び債務

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。したがって、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。

④ 繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得の計画に基づき慎重にかつ実現(回収)可能な範囲において繰延税金資産を計上しておりますが、将来において既に計上している繰延税金資産の全部または一部を実現(回収)できないと判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できないと判断した繰延税金資産を取崩すとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額に加算し、当期純利益を減少させる場合があります。同様に、現時点で評価性引当額として繰延税金資産を計上していない項目について、将来においてその全部または一部を実現(回収)できると判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できると判断した金額を繰延税金資産として計上するとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額から控除し、当期純利益を増加させる場合があります。

 

(2) 経営成績の分析

① 営業収益

子会社数の減や事業譲渡に伴う収益規模の縮減、不動産業でマンションの販売供給戸数の減等があったものの、鉄道業のダイヤ改正に伴う特急利用者の増等による収入増や雇用情勢の堅調な推移による定期収入増が寄与したこと、また、金谷ホテルの連結への通期寄与等により、営業収益は569,519百万円(前期比0.1%増)となりました。

② 営業利益

退職給付費用において、数理計算上の差異および過去勤務費用の費用処理年数の短縮に伴う費用増や、バス・タクシー業、貨物運送業における燃料単価の上昇等により、営業利益は66,645百万円(前期比2.5%減)となりました。

③ 経常利益

営業外収益については、少額工事負担金等が増加したこと等により、4,868百万円(前期比7.2%増)となりました。

営業外費用については、元本減や利率の低下による支払利息の減等により、9,228百万円(前期比14.1%減)となり、経常利益は62,286百万円(前期比0.3%増)となりました。

 

④ 親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益については、警送事業譲渡に係る株式売却益を計上したこと等により、10,989百万円(前期比21.6%増)となりました。

特別損失については、固定資産の除却が増加したこと等により、15,805百万円(前期比10.1%増)となりました。

これらの結果、税金等調整前当期純利益を57,470百万円(前期比1.2%増)計上し、法人税等を控除した当期純利益は37,139百万円(前期比0.0%減)となりました。また、ここから非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は36,025百万円(前期比0.3%減)となりました。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「(業績等の概要) (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであり、営業活動で得た資金と借入金等による資金調達をもとに、安全対策を中心とした設備投資を行うとともに、差引フリー・キャッシュ・フローを有利子負債の削減に充当いたしました。なお、会社法第165条第2項の規定による定款の定めにもとづく自己株式の取得(9,999百万円)を行い、取得した全株式について消却致しました。

有利子負債(有価証券消費貸借預り金を除く)の当連結会計年度の残高は、前連結会計年度から9,446百万円減少し、790,290百万円となりました。

 

(4) 財政状態の分析

当連結会計年度の財政状態の状況については、「(業績等の概要) (3) 財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

当社は、「東武グループ中期経営計画2017~2020」において、2020年度の目標経営指標を連結営業利益675億円、親会社株主に帰属する当期純利益386億円としております。同計画の初年度である2017年度においては、新型特急「リバティ」の運行開始やSL復活運転開始等新たな輸送サービスの提供、新型通勤車両の新造、東武アーバンパークラインの複線化工事の推進等の利便性向上のほか、ホームドア設置、連続立体交差事業の推進等の安全投資を実施いたしました。また、駅ビルの建設、商業施設のリニューアル工事を推進するなど、沿線開発を深耕することでより豊かな沿線生活環境の整備をはかったほか、急伸するインバウンドの受け入れ体制をグループ全体で強化し、あわせて観光・ビジネス需要に応える新規ホテルの建設等を実施してまいりました。この結果、目標経営指標達成に向け、概ね順調に推移いたしております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

5 【研究開発活動】

該当事項はありません。