第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当期のわが国経済は、設備投資や雇用情勢に改善が見られ、景気は緩やかな回復基調にありましたが、個人消費や住宅建設の動きに足踏みが見られるなど、先行き不透明な状況で推移いたしました。

このような情勢下にありまして、当社グループでは、安全・安心を根幹に、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指す「東武グループ経営方針」のもと、「東武グループ中期経営計画2014~2016」にもとづき、日光・鬼怒川地区等沿線観光地の活力創出に努めるとともに、台北支社の開設をはじめとした訪日外国人観光客の積極的な誘客施策を進めるなど、将来にわたる持続的成長に向けた取り組みを推進いたしました。

当期の連結業績は、営業収益は568,887百万円(前期比0.9%減)、営業利益は68,335百万円(前期比6.1%増)、経常利益は62,128百万円(前期比10.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は36,137百万円(前期比32.5%増)となり、営業利益および経常利益はそれぞれ過去最高益を更新いたしました。

この結果、中期経営計画における数値目標(営業利益65,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益32,000百万円、売上高営業利益率10%以上、有利子負債/EBITDA倍率7倍程度)を達成いたしました。

セグメント情報の業績を示すと、次のとおりであります。

なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。また、各セグメントの営業成績のうち「調整額」は内部取引消去額を表しております。

 

(運輸事業)

鉄道業におきまして、当社では、安全面において、竹ノ塚駅付近の高架化工事を推進し、下り急行線の高架橋の使用を開始いたしました。また、ホーム上の安全対策として、川越駅においてホームドア(可動式ホーム柵)設置に向けた工事を進めるとともに、同駅を含めホームドアを今後31駅に整備していくことを決定したほか、内方線付き点状ブロックについても西新井駅をはじめ10駅に整備をいたしました。さらに、沿線の消防と連携した避難誘導訓練や、大規模地震に備えた列車の一旦停止訓練等、従業員に対し安全に関する様々な教育を継続して実施いたしました。
 営業面では、前期に実施した東武アーバンパークラインおよび東上線のダイヤ改正が奏功し、大宮駅ご利用のお客様や「TJライナー」ご乗車のお客様がそれぞれ増加するなど、増収に寄与いたしました。また、併結・分割機能を活かし、多線区での運行を可能とすることで、目的地まで乗り換えなくご利用いただける新型特急車両「リバティ」を新造し、2017年4月の営業運転開始に向けた準備を進めました。「東武携帯ネット会員サービス」につきましては、特急券購入時にご希望の座席を選択できる機能を追加するなど、お客様の利便性向上をはかりました。さらに、日光・鬼怒川地区のさらなる活力創出に向け、復活運転するSLにつきましては、列車名称をSL「大樹」に決定したほか、運転ダイヤ、停車駅、運転日等の営業概要を発表するなど、2017年8月の運転開始に向けた準備を順調に進めております。また、人気テーマパーク「東武ワールドスクウェア」への交通利便性を向上させるとともに、日光・鬼怒川地区の観光地としての回遊性を高めることを目的に、2017年7月に鬼怒川線小佐越駅~鬼怒川温泉駅間において新駅「東武ワールドスクウェア」を開業することを決定いたしました。さらに、外国人観光客へのサービス向上に向けた取り組みとして、駅係員によるお客様ご案内用タブレット端末の活用や駅係員・乗務員をはじめ全社員を対象とした英会話研修を実施いたしました。
 なお、5月に東上線中板橋駅~大山駅間において発生した列車脱線事故につきましては、国土交通省の運輸安全委員会による調査に全面的に協力するとともに、当社としても第三者機関に調査協力を依頼し、10月に中間報告を実施いたしました。引き続き調査を継続し原因究明に努めてまいります。関係する皆様には、多大なご迷惑とご心配をおかけしましたことを深くお詫び申しあげます。
 バス・タクシー業におきまして、東武バスウエスト㈱では、空港連絡バス「上尾駅・桶川駅~羽田空港線」の運行を開始し増収に努めました。また、東武バス日光㈱等では、日光・鬼怒川地区において、多言語に対応した券売機や案内看板等を導入し、外国人観光客を中心としたお客様への利便性向上をはかりました。
 運輸事業全体としては、鉄道業において前期に実施したダイヤ改正が奏功し増収となったものの、貨物運送業において取扱量が減少したこと等により営業収益は216,170百万円(前期比0.2%減)となりました。一方、原油価格下落にともなう燃料費低減効果等により営業利益は40,696百万円(前期比8.1%増)となりました。

 

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

鉄道業

162,338

0.5

バス・タクシー業

32,122

△1.7

貨物運送業

22,778

△3.2

小計

217,239

△0.2

調整額

△1,069

営業収益計

216,170

△0.2

 

 

(提出会社の鉄道業成績)

種別

単位

第196期

第197期

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

(自 2016年4月1日

至 2017年3月31日)

営業日数

 

366

365

営業キロ

 

キロ

463.3

463.3

客車走行キロ

 

千キロ

268,522

275,550

 

定期

千人

588,349

592,493

輸送人員

定期外

315,411

316,389

 

903,760

908,881

 

定期

百万円

65,754

66,031

旅客収入

定期外

79,033

79,850

 

144,787

145,881

運輸雑収

 

15,107

14,787

収入合計

 

159,894

160,668

1日平均収入

 

436

440

乗車効率

 

33.3

32.6

 

(注) 1 乗車効率の算出方法

  乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)÷(客車走行キロ×平均定員)×100

  乗車効率とは、客車走行車両定員に対する旅客輸送量を見るためのものであります。

2 定期外旅客収入は、当期については特急料金及び着席整理料金を含んでおります。また、前期については着席整理料金を運輸雑収に含んでいたため、定期外旅客収入については特急料金のみを含んでおります。

 

 


 

 

(レジャー事業)

スカイツリー業におきまして、「東京スカイツリー®」では、天望デッキの窓ガラスを巨大スクリーンに仕立てた「SKYTREE ROUND THEATER®(スカイツリー ラウンド シアター)」における新プログラム「東京スカイツリー®天望歌舞伎」の上映や、人気少女漫画雑誌「りぼん」と連携した展示、ダンスミュージックが流れるイベント「SUPER SKYTREE DISCO(スーパー スカイツリー ディスコ)」を開催するなど様々なコラボレーション企画を実施することで、話題性の創出による幅広い層へ向けた誘客をはかりました。また、日時指定券において、多くのご要望にお応えし天望デッキと天望回廊の入場セット券を設定したほか、朝の時間帯にお得に入場いただける「朝割」を導入いたしました。さらに、前期より推進した天望シャトル(エレベーター)の改修工事を完成させ、台風等を除いた荒天時においても営業できる体制を構築し、改修後はより多くのお客様に来場いただけるようになりました。

ホテル業におきまして、歴史と伝統を有する金谷ホテル㈱をグループ会社とし、当社およびグループ会社との間で連携を深め、新たな誘客ルートの構築をはかりました。さらに、日光レークサイドホテル跡地に世界有数のホテルチェーンであるマリオット・インターナショナルの最高級ブランド「ザ・リッツ・カールトン」を2020年夏に開業させることを決定し、今後さらなる需要増が見込まれる外国人観光客を見据えた取り組みを進めました。
 遊園地・観光業におきまして、「東武動物公園」では、四季を通じて多彩な花々をご覧いただけるよう新たにオープンさせた「ハートフルガーデン」を活用し、「秋のローズフェスティバル2016」や“音楽・映像・光”を融合させた「ウインターイルミネーション」をそれぞれ開催したほか、東武ワールドスクウェアでは、高さ約10メートルの巨大なランタン等を展示する「台湾ランタンフェスティバル」を開催し、それぞれ誘客に努めました。
 レジャー事業全体としては、中長期的経営を見据えた東京スカイツリーのエレベーター改修工事やザ・リッツ・カールトン開業に向けた日光レークサイドホテルの営業休止および天候不順等の影響により、営業収益は76,792百万円(前期比2.8%減)、営業利益は6,791百万円(前期比17.3%減)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

遊園地・観光業

5,028

△4.3

スポーツ業

11,053

△5.7

旅行業

21,455

△2.6

ホテル業

17,226

0.8

飲食業

9,248

△5.4

スカイツリー業

14,339

△5.1

小計

78,352

△3.2

調整額

△1,559

営業収益計

76,792

△2.8

 

 

 

(不動産事業)

スカイツリータウン業におきまして、「東京ソラマチ®」では、季節に応じた各種イベントを開催し、クリスマスにあわせて実施したイルミネーションでは、初めて東京スカイツリー塔体を使ったプロジェクションマッピングを上映したほか、人気キャラクター「星のカービィ」や「ドラえもん」と連携したカフェの誘致やアイススケートリンクの展開により誘客と増収をはかりました。
 不動産賃貸業におきまして、当社では、沿線の生活価値の向上等を目的に、曳舟駅にビルを建設のうえ、当社初の駅直結となる病院を誘致し、2017年4月1日に開院いたしました。また、池袋駅西口地下通路において、大型デジタルサイネージを新たに64面設置し広告を配信することで増収に努めました。そのほか、子育て世代のご家族が住みやすい環境を整備するため、保育所・学童保育室の誘致等をしており、2017年4月1日には合計13施設となりました。
 不動産分譲業におきまして、当社では、沿線価値向上と沿線定住人口増加を目的として「ソライエ船橋塚田」(船橋市北本町)、「ソライエ若葉」(坂戸市関間)等の分譲マンション、「ソライエ清水公園アーバンパークタウン」(野田市清水公園東)等の分譲戸建住宅および滑川町月の輪等の土地を販売いたしました。
 不動産事業全体としては、マンション販売戸数の増加等により、営業収益は55,828百万円(前期比2.4%増)、営業利益は14,394百万円(前期比2.8%増)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

不動産賃貸業

34,306

1.7

不動産分譲業

9,483

13.4

スカイツリータウン業

12,388

△2.9

小計

56,178

2.4

調整額

△349

営業収益計

55,828

2.4

 

 

(流通事業)

流通業におきまして、㈱東武百貨店では、池袋店において、2週間ごとに和洋菓子店6店舗が入れ替わるイベントスペース「HANA 3 TERRACE(ハナサンテラス)」を地下1階にオープンさせることで食品売り場の賑わいの創出をはかったほか、「初夏の大北海道展」をはじめとした各種催事を開催し、誘客と収益確保に努めました。㈱東武宇都宮百貨店では、宇都宮店において、21年ぶりに大規模改装を実施し、栃木県内初出店の11ブランドを揃えたほか、お子様向け遊具を設置した「キッズスクエア」をオープンさせることで、従来のお客様の満足度向上と30代から40代の新規顧客の獲得に努めました。東武商事㈱では、草加駅等3か所でコンビニエンスストアをオープンし、増収に努めました。

流通事業全体としては、個人消費の伸び悩み等により営業収益は194,915百万円(前期比2.3%減)となったものの、㈱東武百貨店において経常的な利益確保に向けた構造改革に努めた結果、営業利益は1,897百万円(前期比379.7%増)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

流通業

194,915

△2.3

調整額

営業収益計

194,915

△2.3

 

 

(その他事業)

建設業におきまして、東武建設㈱では、焼津市においてリゾートホテルの耐震補強および修繕工事を、東武谷内田建設㈱では、墨田区において美術館の建設工事を、東武緑地㈱では、江東区において分譲マンションの植栽工事をそれぞれ完成させました。
 そのほか、東武ビルマネジメント㈱では、港区においてオフィスビルの清掃、警備および設備管理業務を受注したほか、㈱東武セレモニーでは、「東武レクイエム聖殿深谷」をリニューアルオープンし、増収に努めました。
 その他事業全体としては、建設業における完成工事の増加等により、営業収益は94,507百万円(前期比3.8%増)、営業利益は6,196百万円(前期比18.3%増)となりました。

 

(営業成績)

業種別

当連結会計年度
(自 2016年4月1日 至 2017年3月31日)

営業収益(百万円)

前期比(%)

建設業

57,688

4.0

その他業

37,626

2.4

小計

95,315

3.4

調整額

△807

営業収益計

94,507

3.8

 

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ1,640百万円増加し34,118百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、税金等調整前当期純利益56,816百万円に減価償却費52,780百万円等を加減算した結果87,470百万円となり、前連結会計年度と比べて9,356百万円の資金流入の増加となりました。これは、主にたな卸資産の減少等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は55,881百万円となり、前連結会計年度と比べて7,711百万円の資金流出の減少となりました。これは、主に有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したこと等によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は29,907百万円となり、前連結会計年度と比べて17,805百万円の資金流出の増加となりました。これは、主に返済による長期借入金が減少したこと等によるものです。

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

当社グループのサービス、生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種のサービス、製品であっても、その内容、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。

そのため生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2017年6月23日)現在において、当社グループが判断したものであります。 

 

(1) 経営理念、経営方針

当社グループでは以下のとおり、「東武グループ経営理念」、「東武グループ経営方針」を定めております。

① 東武グループ経営理念

東武グループでは、「奉仕」「進取」「和親」を経営の拠り所としています。

「奉仕」:東武グループは、東武グループの全ての事業が社会に支えられていることを深く自覚し、豊かな社会の実現に貢献します。

「進取」:東武グループは、現状に甘んじることなく、常に研鑚に励み、時代を切り開く開拓者精神をもって新たな挑戦を続けます。

「和親」:東武グループは、人の和や環境との調和をもとに事業の発展と従業員の幸福を図り、社会の進展に寄与します。

 

② 東武グループ経営方針

お客様の暮らしに密着した事業を通じて沿線地域の発展に貢献する企業グループとして、安全・安心を根幹に「運輸」「レジャー」「不動産」「流通」等の事業を多角的、複合的に展開します。

お客様の視点に立ち、質の高い先進性や独創性あふれるサービスを提供し、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指します。

事業を通じて安定的に利益を創出しながら、環境にも配慮した経営を進め、お客様の生活を担う企業グループとして地域社会とともに持続的に発展することにより、企業の社会的責任を果たします。

 

 

(2) 経営環境、対処すべき課題

経済情勢は、政府の景気対策等を背景に、企業設備投資や雇用情勢に改善が見られるなど、緩やかな回復基調ではありますが、住宅建設における足踏み・海外諸国における政策転換等、先行きは未だ不透明な状況であります。

このような情勢ではありますが、当社グループは社会インフラのひとつである鉄道事業を中心に沿線のお客様の生活を支え、地域のさらなる発展に全力を尽くしてまいります。

当社グループは、「東武グループ中期経営計画2014~2016」にもとづき、各事業における収益基盤の強化と財務体質の改善に努め、設定した数値目標については全て達成することができました。今後は、持続的な成長への投資や成長分野の開拓を積極的に推進するとともに、財務健全性を堅持しつつ、株主還元の一層の充実をはかってまいります。

また、これまで鉄道事業や各事業を通じ、街と街、人と街、鉄道ネットワークを活用した相互直通運転、そして各社の協力を得た今般のSL復活運転プロジェクト等、たくさんの「つなぐ」で沿線発展の一端を担ってきたように、これからも「つなぐ」を「惹きつける力」と「稼ぐ力」へと進化させ、定住人口の増加と交流人口の拡大による地域の活性化と沿線の価値向上を目指してまいります。

また、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催とその後を見据え、「東武グループ中期経営計画2017~2020」を将来の成長に向けた種蒔き育成期と位置づけ策定いたしました。同計画の初年度である2017年度においては、鉄道事業における新型特急「リバティ」の運行開始やSL復活運転開始等新たな輸送サービスの提供、新型通勤車両の新造、東武アーバンパークラインの複線化工事の推進等の利便性向上のほか、ホームドア設置、連続立体交差事業の推進等の安全投資を実施いたします。また、ターミナル駅や主要駅における駅ビル建設、商業施設の大規模なリニューアル工事を推進するなど、沿線開発を深耕する事でより豊かな沿線生活環境の整備をはかるほか、急伸するインバウンドの受け入れ体制をグループ全体でさらに強化し、あわせて観光・ビジネス需要に応える新規ホテルの建設等を実施してまいります。

 

 

(3) 当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について

① 基本方針の内容

当社は、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに当社の基幹事業である運輸業における輸送の安全を確保するための取り組みを一層推進してまいりますが、近時、わが国の株式市場等においては、買付の対象となる会社の経営陣の賛同を得ることなく、一方的に大量の株式の買付を強行するといった事例がみられるようになりました。

もとより、当社は、株式の大量買付であっても、当社の株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。

しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上に対する明白な侵害をもたらすもの、株主様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主様が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの等、対象会社の企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上に資さないものも少なくありません。

当社は、信頼の確立、成長基盤の確立を基に継続的に企業価値および株主共同の利益を確保・向上させていくために、経営の根底にある「安全・安心」の提供や鉄道事業者としての公共的使命に関する基本的な考え方を、今後も引き続き維持・推進していくことが不可欠であると考えます。

東武グループでは、「東武グループ中期経営計画2014~2016」を策定し、前中期経営計画「東武グループ中期経営計画2010~2013」期間中に実現した東京スカイツリータウンプロジェクトを含めた各事業の収益基盤の強化に注力することに加え、2020年も見据えた今後の収益源となる事業創出に取り組み、将来にわたる持続的成長を目指しております。

このような経営戦略が、当社株式の大量買付を行う者により短期的な利益のみを追求するような経営に変わるようなことがあれば、当社の企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上は損なわれることになります。

こうした事情に鑑み、当社取締役会は、当社株式に対する不適切な買付により当社の企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上が毀損されることを防止するためには、買付に応じるべきか否かを株主様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提案するために必要な情報や時間を確保すること、および株主様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とするための体制を、平時において整えておくことが必要不可欠と考えております。
 

② 具体的な取り組み

(ⅰ)会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取り組み

当社の株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に向けて、当社を中核とする東武グループは、信頼の確立と成長基盤の確立を基に事業活動を推進しておりますが、この事業活動の根幹にあるものが「安全・安心」の提供であり、すべての事業における信頼の基礎である「安全・安心」を提供し続けることが、東武グループ全体の企業価値および株主共同の利益の確保・向上の根幹をなすものと考えております。

また、当社は、東武グループの中長期的な成長のため運輸事業を中心に、レジャー、不動産、流通、その他の各セグメントにおいて収益拡大を継続できる経営基盤の強化に努めることで、引き続き企業価値および株主共同の利益の確保・向上をはかってまいる所存であります。

 

(ⅱ)基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み

当社は、2015年6月26日開催の定時株主総会において「当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)の導入について承認を得ております。

本プランは、当社株式等の大量買付行為が行われる場合に、株主様が適切な判断をするために必要・十分な情報と時間を確保するとともに、買収者との交渉の機会を確保することなどにより、当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全を確保・向上させることを目的としています。

本プランは、当社が発行者である株券等について、保有者およびその共同保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付、または当社が発行者である株券等について、公開買付に係る株券等の株券等所有割合およびその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付(以下「買付等」と総称し、買付等を行おうとする者を「買付者等」といいます。)を対象とします。

 

当社の株券等について買付等が行われる場合、当該買付等に係る買付者等には、買付内容等の検討に必要な情報および本プランに定める手続きを遵守する旨の誓約文言等を記載した書面の提出を求めます。その後、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員のみから構成される独立委員会が買付者等から提出された情報や、当社取締役会が必要に応じて提出する買付者等の買付等の内容に対する意見およびその根拠資料、当該買付等に対する代替案について、評価・検討するものとします。独立委員会は、必要に応じて、独立した第三者の助言を得たうえ、買付等の内容の検討、当社取締役会の提示した代替案等の検討、買付者等との協議・交渉、当社取締役会等を通じた株主に対する情報開示等を行います。

独立委員会は、買付者等が本プランに定められた手続きを遵守しなかった場合、または買付等の内容の検討等の結果、買付者等による買付等が企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上に対する明白な侵害をもたらす恐れのある買付等であるなど、本プランに定める要件のいずれかに該当し、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、新株予約権の無償割当てを実施すべき旨の勧告を行います。なお、独立委員会は、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合でも、新株予約権の無償割当てを実施することについて株主総会の決議を経ることが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を行います。この新株予約権は、1円を下限とし当社株式1株の時価の2分の1の金額を上限とする金額の範囲内で、当社取締役会が新株予約権無償割当て決議において定める金額を払い込むことにより、原則として当社株式1株を取得することができるものですが、買付者等による権利行使が認められないという行使条件が付されています。また、当社が買付者等以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得することができる旨の取得条項が付されており、当社がかかる条項に基づく取得をする場合、新株予約権1個と引換えに、対象株式数に相当する数の当社株式を交付することができるものとします。当社取締役会は、独立委員会の上記勧告を最大限に尊重して新株予約権無償割当ての実施または不実施等の決議をするものとします。ただし、当社取締役会は、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議する旨決議するものとします。当社取締役会は、上記決定を行った場合には速やかに、当該決議の概要その他当社取締役会が適切と判断する事項について情報開示を行います。

本プランの有効期間は2015年6月26日開催の定時株主総会終了後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。ただし、有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において本プランに係る新株予約権の無償割当てに関する事項の決定についての取締役会への上記委任を撤回する旨の決議が行われた場合、または、当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとします。

本プラン導入後であっても、新株予約権無償割当てが実施されていない場合、株主の皆様に直接具体的な影響が生じることはありません。他方、新株予約権無償割当てが実施された場合、株主の皆様が新株予約権行使の手続きを行わないとその保有する株式の価値は希釈化される場合があります(ただし、当社が当社株式を対価として新株予約権の取得を行った場合、その保有する株式の希釈化は生じません。)。

 

(ⅲ)具体的取り組みに対する当社取締役会の判断およびその理由

前記②(ⅰ)に記載した取り組みは、いずれも当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に資する具体的方策として策定されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。

また、本プランは前記②(ⅱ)記載のとおり、企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全を確保・向上させる目的をもって導入されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。とくに、本プランは当社の株主総会において決議がなされ導入しているため、株主意思を重視するものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員のみから構成される独立委員会を設置し、本プランの発動に際しては必ず独立委員会の判断を得ることが必要とされていること、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を得ることができるとされていること、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議するとされていること、本プランは有効期間を約3年間と定め、有効期間の満了前であっても当社の株主総会または取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その公正性・客観性が担保されており、合理性を有し、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

 

4 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2017年6月23日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 法的規制

東武鉄道が展開している鉄道事業においては、鉄道事業法第3条により、路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の認可を受けなければなりません。同様に、運賃の設定・変更についても同法第16条により、鉄道事業者は旅客運賃等の上限を定め、国土交通大臣の許可を受けなければならず、国土交通大臣は、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して認可しております(総括原価方式)。また、認可を受けた運賃等の上限の範囲内で運賃等を設定・変更する場合は、国土交通大臣に届け出ることとなっております。

このため、法制度の変更や運賃改定の結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、鉄道事業以外の当社グループ会社が展開する各種事業においても、様々な法令・規則等の規制の適用を受けており、これら法的規制が変更された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 少子高齢化傾向

現在、わが国において少子高齢化が進んでおり、東武沿線においても、地域によって差はあるものの、少子高齢化を伴う人口減少が進行するものと推測されます。

当社グループは、鉄道事業を中心に東武沿線を主たるマーケットとして事業を展開しているため、人口減少や少子高齢化の進行は、長期的には当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 経済情勢

当社グループは、各事業において継続的に設備投資を行っておりますが、これらの必要資金は主として社債や金融機関からの外部借入れによって調達しているため、今後、金利が上昇基調になった場合には、金利負担の増大を招くことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

また、消費増税や更なる電気料金の値上げなどで生じる経済情勢の変化によっては、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 個人情報の管理

当社グループでは、各事業において顧客の個人情報を含むデータベースを管理しております。これらの情報については、情報の取得および利用に際しての社内での保護規程を定めるとともに、管理体制を整備し、関係者の情報管理を徹底させるほか、情報処理を社外に委託する場合も秘密保持契約の整備、監督の強化を行う等、取扱には充分に留意しておりますが、何らかの原因により情報が流出した場合には、当社グループの信用の失墜につながり、業績に影響を与える可能性があります。

 

(5) 自然災害等

当社が展開している鉄道事業においては、安全確保はお客様の信頼を得るうえで最も重要であり、万全を期しておりますが、不慮の事故、天災およびテロ・戦争の発生等外的要因により、安全確保が難しい状況に陥った場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、天候不順や伝染病等の発生により、観光施設・レジャー施設の集客状況が悪化した場合には、レジャー事業を中心に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、上記は当社グループの事業等について予想される主なリスクを例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

当社の連結子会社の東武デリバリー㈱は、2017年4月4日付で運営する警備輸送事業を綜合警備保障㈱に譲渡することを取締役会で決議し、同日付で株式譲渡に関する契約を締結いたしました。

詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載しております。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2017年6月23日)現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成にあたり経営者は、資産・負債及び報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わねばなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。

① 株式等の投資

当社グループが保有する株式等の有価証券については、将来の株式市況の悪化または投資対象会社の業績不振等により時価の著しい下落が生じた際には、損失の計上が必要となる場合があります。

② 不動産の保有

当社グループが保有する販売用不動産については、地価の下落や市況悪化等により時価の下落が生じた場合には、損失の計上が必要になります。また、事業用不動産については、当初見込んだ収益が得られなかった場合、または将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額などの前提条件に変更があった場合には、減損損失の計上が必要になります。

③ 退職給付費用及び債務

当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。したがって、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。

④ 繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得の計画に基づき慎重にかつ実現(回収)可能な範囲において繰延税金資産を計上しておりますが、将来において既に計上している繰延税金資産の全部または一部を実現(回収)できないと判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できないと判断した繰延税金資産を取崩すとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額に加算し、当期純利益を減少させる場合があります。同様に、現時点で評価性引当額として繰延税金資産を計上していない項目について、将来においてその全部または一部を実現(回収)できると判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できると判断した金額を繰延税金資産として計上するとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額から控除し、当期純利益を増加させる場合があります。

 

(2) 経営成績の分析

① 営業収益

鉄道業で雇用情勢の回復基調により通勤利用者の増加や東上線ダイヤ改正に伴うTJライナーの上り運転開始および下りの増発効果、不動産業でマンションの販売戸数の増加等により増収要素があったものの、百貨店業で婦人服等の衣料品や宝飾等の高額品の低迷、天候不順の影響によるレジャー事業の伸び悩み等により減収となり、営業収益は568,887百万円(前期比0.9%減)となりました。

 

② 営業利益

減収による売上原価の減少および原油価格下落に伴う燃料費等の減少等により、営業利益としては68,335百万円(前期比6.1%増)となりました。

③ 経常利益

営業外収益については、少額工事負担金等が減少したことにより、4,539百万円(前期比1.1%減)となりました。
 営業外費用については、支払利息や金融手数料の減少等により、10,746百万円(前期比17.2%減)となり、経常利益は62,128百万円(前期比10.9%増)となりました。

④ 親会社株主に帰属する当期純利益

特別利益については、工事負担金等受入額の減少等により、9,039百万円(前期比29.7%減)となりました。

特別損失については、固定資産圧縮損の減少や前期における百貨店業の構造改革に伴う退職特別加算金の影響により、14,351百万円(前期比35.6%減)となりました。

これらの結果、税金等調整前当期純利益を56,816百万円(前期比22.0%増)計上し、法人税等を控除した当期純利益は37,141百万円(前期比29.9%増)となりました。また、ここから非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は36,137百万円(前期比32.5%増)となりました。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要」に記載のとおりであり、営業活動で得た資金と借入金等による資金調達をもとに、安全対策を中心とした設備投資を行うとともに、差引フリー・キャッシュ・フローを有利子負債の削減に充当いたしました。

なお、有利子負債(有価証券消費貸借預り金を除く)の当連結会計年度の残高は、前連結会計年度から23,737百万円減少し、799,737百万円となりました。