当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用情勢に改善が見られ、景気は緩やかな回復基調にありましたが、個人消費や住宅建設に力強さが見られないなど、先行き不透明な状況で推移いたしました。
このような情勢下にありまして、当社グループでは、安全・安心を根幹に、活力に富んだ暮らしやすく訪れたい東武沿線の実現を目指す「東武グループ経営方針」のもと、「東武グループ中期経営計画2014~2016」にもとづき、将来にわたる持続的成長に向けて、訪日外国人観光客向けサービスの拡充をはじめ交流人口の創出に努めるなど、各事業において経営基盤の強化に取り組みました。
当期の連結業績は、営業収益は574,334百万円(前期比1.5%減)、営業利益は64,399百万円(前期比21.1%増)、経常利益は56,006百万円(前期比21.4%増)となったものの、昨年9月における大雨災害の復旧費用を計上したこと等により親会社株主に帰属する当期純利益は27,277百万円(前期比11.0%減)となりました。
セグメント情報の業績を示すと、次のとおりであります。
なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。また、各セグメントの営業成績のうち「調整額」は内部取引消去額を表しております。
鉄道業におきまして、当社では、安全を最優先に、より多くのお客様にご利用いただけるよう、様々な取り組みを進めております。
安全輸送面では、さらなる安全性向上をはかるため、「東上線新運転保安システム」について、前期の川越市~小川町間に続き、池袋~川越市間においても導入いたしました。ホーム上の安全対策としては、和光市駅の東上線側ホームにおいてもホームドア(可動式ホーム柵)の使用を開始いたしました。また、竹ノ塚駅付近や清水公園~梅郷間の高架化工事を進めたほか、大規模災害に備えた防災対策工事として高架橋耐震補強工事等を推進いたしました。さらに、沿線の消防や警察等と連携した避難誘導訓練やテロ対応合同訓練、また大規模地震に備えた列車の一旦停止訓練等、従業員に対して安全に関する様々な教育を継続して実施いたしました。なお、関東・東北豪雨の際には、9月9日から10日にかけて複数の路線において橋桁流出等の被災をいたしましたが、輸送の安全に万全を期し、お客様の安全を確保いたしました。さらに、公共交通機関の担い手としての使命のもと、運休区間において代行バスによる輸送を速やかに確保するとともに、復旧作業を進め10月7日までに全線にて運転を再開いたしました。
営業面では、東武アーバンパークラインおよび東上線においてダイヤ改正を実施いたしました。東武アーバンパークラインでは、沿線価値の向上を目的に、大宮~春日部間において急行列車の運行を新たに開始いたしました。東上線では、座席定員制列車「TJライナー」について、朝の通勤時間帯に上り(池袋行き)の運行を新たに開始するとともに、深夜時間帯に下りの運行を増やすことでお客様の利便性向上と増収に努めました。また、日中時間帯を中心に、東京メトロ副都心線・東急東横線・横浜高速みなとみらい線直通列車について、東上線内の急行運転を開始し、東京副都心や横浜方面への速達性を向上いたしました。交流人口の創出に向けた取り組みとしては、日光東照宮四百年式年大祭を記念し、特別塗装列車「日光詣スペーシア」の運行等を実施したほか、外国人観光客向けサービス拡充策として、駅ならびに特急「スペーシア」および特急「りょうもう」の車内において、無料でインターネットをご利用いただける公衆無線LANサービス「TOBU FREE Wi-Fi」の提供を順次推進しております。さらに、日本と台湾との間における観光交流人口の増加を見据えて、台湾鉄路管理局と友好鉄道協定を締結し、台北駅構内に当社沿線のPRコーナーを設置するなど誘客に努めました。そのほか、日光・鬼怒川地区等沿線観光地の活力創出を目的として、平成29年度を目途に約50年ぶりの蒸気機関車(SL)の復活運転に向けた取り組みを進めており、乗務員等の養成を開始いたしました。
バス・タクシー業におきまして、東武バスウエスト㈱では、ふじみ野駅、志木駅からそれぞれ大型ショッピングモールを結ぶ2路線を新設いたしました。また、東武バスセントラル㈱および東武バスウエスト㈱では、「スカイツリーシャトル®お台場線」の運行を開始いたしました。
運輸事業全体としては、営業収益は216,631百万円(前期比2.2%増)となり、さらに原油価格下落にともなうバス・タクシー業等における燃料費低減効果もあり営業利益は37,649百万円(前期比21.7%増)となりました。
(営業成績)
業種別 | 当連結会計年度 | |
営業収益(百万円) | 前期比(%) | |
鉄道業 | 161,462 | 1.7 |
バス・タクシー業 | 32,673 | 1.8 |
貨物運送業 | 23,542 | 6.3 |
小計 | 217,679 | 2.2 |
調整額 | △1,047 | ― |
営業収益計 | 216,631 | 2.2 |
(提出会社の鉄道業成績)
種別 | 単位 | 第195期 | 第196期 | |
(自 平成26年4月1日 至 平成27年3月31日) | (自 平成27年4月1日 至 平成28年3月31日) | |||
営業日数 |
| 日 | 365 | 366 |
営業キロ |
| キロ | 463.3 | 463.3 |
客車走行キロ |
| 千キロ | 268,555 | 268,522 |
| 定期 | 千人 | 576,266 | 588,349 |
輸送人員 | 定期外 | 〃 | 308,781 | 315,411 |
| 計 | 〃 | 885,047 | 903,760 |
| 定期 | 百万円 | 64,534 | 65,754 |
旅客収入 | 定期外 | 〃 | 77,676 | 79,033 |
| 計 | 〃 | 142,210 | 144,787 |
運輸雑収 |
| 〃 | 15,403 | 15,107 |
収入合計 |
| 〃 | 157,613 | 159,894 |
1日平均収入 |
| 〃 | 431 | 436 |
乗車効率 |
| % | 32.7 | 33.3 |
(注) 乗車効率の算出方法
乗車効率=延人キロ(駅間通過人員×駅間キロ程)÷(客車走行キロ×平均定員)×100
乗車効率とは、客車走行車両定員に対する旅客輸送量を見るためのものであります。
スカイツリー業におきまして、「東京スカイツリー®」では、映画「スター・ウォーズ」最新作の公開を記念した特別企画の開催や、夜間の天望デッキ®において、窓ガラスを巨大スクリーンに仕立て迫力ある映像を投影する新しい演出空間「SKYTREE ROUND THEATER™(スカイツリー ラウンド シアター)」をオープンするなど、魅力向上による集客力強化をはかりました。また、強風時における営業継続が可能となるよう、天望シャトル(エレベーター)の改修工事を進め、当期においては計2基の改修を完成させました。
旅行業におきまして、東武トップツアーズ㈱では、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会と「東京2020スポンサーシッププログラム」において東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会オフィシャル旅行サービスパートナーとして契約を締結いたしました。また、訪日旅行者数の伸長が顕著であるタイに現地法人を開設することで、当社沿線およびグループ施設のPRをはじめ、外国人観光客の訪日旅行に対する営業強化をはかりました。
ホテル業におきまして、外国人宿泊客のさらなる取り込みをはかるため、「コートヤード・マリオット銀座東武ホテル」では、欧米からのビジネス客のニーズに、また、「成田東武ホテルエアポート」では、アジアからの家族旅行客のニーズに応じて、客室の一部リニューアルを実施し、増収に努めました。
遊園地・観光業におきまして、「東武動物公園」では、昨年生まれたホワイトタイガーの赤ちゃんの一般公開を開始したほか、ヒグマの生き生きとした様子をご覧いただける生態展示型施設「ヒグマの森」をオープンいたしました。「東武ワールドスクウェア」では、新たなミニチュア展示物「台北101」を展示するとともに、台湾との相互誘客イベントを開催するなど積極的な活動が評価され、台湾交通部観光局より「台湾観光貢献賞」を受賞いたしました。
レジャー事業全体としては、東京スカイツリーのエレベーター改修工事による影響もあり、営業収益は79,006百万円(前期比0.8%減)となったものの、ホテル業における増収による増益のほか、飲食業をはじめとして経営の効率化に努めたことにより、営業利益は8,208百万円(前期比2.6%増)となりました。
(営業成績)
業種別 | 当連結会計年度 | |
営業収益(百万円) | 前期比(%) | |
遊園地・観光業 | 5,254 | 5.8 |
スポーツ業 | 11,722 | △6.3 |
旅行業 | 22,026 | 5.4 |
ホテル業 | 17,091 | 1.8 |
飲食業 | 9,776 | △2.5 |
スカイツリー業 | 15,110 | △8.4 |
小計 | 80,981 | △0.9 |
調整額 | △1,975 | ― |
営業収益計 | 79,006 | △0.8 |
スカイツリータウン業におきまして、「東京ソラマチ®」では、「春節ショッピングキャンペーン」を開催したほか免税対応店舗を増やすなど、外国人観光客の誘客と増収に努めました。
不動産賃貸業におきまして、当社では、保有資産の有効活用による長期的かつ安定的な収益確保を目的に、東武豊洲ビルをデータセンターとして建て替え、新たに賃貸を開始いたしました。また、駅および周辺施設の充実と増収を目的に、成増駅の駅ビルおよび橋上店舗を一体的に改修し、「EQUiA(エキア)成増」としてリニューアルオープンいたしました。そのほか、子育て世代のご家族が住みやすい環境を整備するため、高架下等の駅近くへ保育施設の誘致を積極的に進め、当社沿線に誘致した保育施設は、平成28年4月1日現在で合計12か所となりました。
不動産分譲業におきまして、当社では、沿線価値向上と沿線定住人口増加を目的として、「ソライエ柏豊四季」(柏市豊四季)等の分譲マンション、「ソライエ清水公園アーバンパークタウン」(野田市清水公園東)等の分譲戸建住宅および東松山市あずま町等の土地を販売いたしました。そのほか、沿線への人口流入促進策として、シニア世帯が所有する住宅を借り上げ、子育て世帯に貸し出す「住みかえ支援事業」を開始いたしました。
不動産事業全体としては、マンション販売戸数の縮小等により、営業収益は54,505百万円(前期比4.1%減)となったものの、前期に行った分譲土地の評価減の反動により、営業利益は14,002百万円(前期比47.2%増)となりました。
(営業成績)
業種別 | 当連結会計年度 | |
営業収益(百万円) | 前期比(%) | |
不動産賃貸業 | 33,741 | △1.7 |
不動産分譲業 | 8,361 | △16.1 |
スカイツリータウン業 | 12,753 | △1.5 |
小計 | 54,857 | △4.2 |
調整額 | △352 | ― |
営業収益計 | 54,505 | △4.1 |
流通業におきまして、㈱東武百貨店では、池袋店において、より多くのお客様にご来店いただけるよう、「Good Restaurants ~食べたいものが必ず見つかる池袋のメインダイニング~」をコンセプトに、11階から15階までのレストラン街について全面改装を行い、都内百貨店最大級となる46店舗を揃えたレストラン街へとリニューアルいたしました。また、㈱東武宇都宮百貨店では、宇都宮店、大田原店および栃木市役所店において、共同で「栃木県縦断ウルトラバーゲン」を開催し、県内全域での誘客強化に取り組みました。東武商事㈱では、柏駅構内等3か所でコンビニエンスストアをオープンし、増収に努めました。
流通事業全体としては、消費税増税後から続く個人消費の伸び悩みにより、営業収益は199,442百万円(前期比2.7%減)、営業利益は395百万円(前期比37.6%減)となりました。
(営業成績)
業種別 | 当連結会計年度 | |
営業収益(百万円) | 前期比(%) | |
流通業 | 199,442 | △2.7 |
調整額 | ― | ― |
営業収益計 | 199,442 | △2.7 |
建設業におきまして、東武緑地㈱では、柏市においてショッピングモールの造園工事を完成させました。また、東武谷内田建設㈱では、墨田区において美術館の建設工事を進めたほか、東武建設㈱では、宇都宮市において複合ビルの建設工事を受注いたしました。
そのほか、東武ビルマネジメント㈱では、壬生町において大学施設の清掃および設備管理業務を受注し、増収に努めました。
その他事業全体としては、連結子会社の一部において原油価格の下落にともなう販売額の減少等もあり、営業収益は91,027百万円(前期比4.8%減)、営業利益は5,235百万円(前期比11.4%増)となりました。
(営業成績)
業種別 | 当連結会計年度 | |
営業収益(百万円) | 前期比(%) | |
建設業 | 55,447 | △4.3 |
その他業 | 36,743 | △5.9 |
小計 | 92,190 | △5.0 |
調整額 | △1,162 | ― |
営業収益計 | 91,027 | △4.8 |
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,406百万円増加し32,477百万円となりました。
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、税金等調整前当期純利益46,580百万円に減価償却費52,912百万円等を加減算した結果78,114百万円となり、前連結会計年度と比べて16,710百万円の資金流入の減少となりました。これは、主に棚卸資産の減少等によるものです。
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は63,593百万円となり、前連結会計年度と比べて79,309百万円の資金流出の減少となりました。これは、主に有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したこと等によるものです。
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は12,102百万円となり、前連結会計年度と比べて58,932百万円の資金流出の増加となりました。これは、主に短期及び長期借入金の純増減額が減少したこと等によるものです。
当社グループのサービス、生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種のサービス、製品であっても、その内容、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
そのため生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(1) 対処すべき課題
経済情勢の先行きは、訪日外国人需要等もあり、景気は緩やかな回復基調にあるものの、個人消費の伸び悩みや海外経済の下振れへの懸念等により、未だ不透明であります。
このような情勢ではありますが、社会インフラのひとつである鉄道事業を中心とした沿線のお客様の生活を支える企業グループとして、さらなる地域の発展と暮らしの快適性・利便性の向上に全力を尽くす所存であります。
平成28年度につきましては、「東武グループ中期経営計画2014~2016」の最終年度を迎えることから、各種目標数値を達成すべく、同計画における施策を着実に実行し、さらなる収益向上に取り組むほか徹底した経営効率化をはかってまいります。
また、中長期にわたり経営基盤を強化し、さらなる企業価値向上をはかるため、東京スカイツリータウンを含めた各既存事業の収益力の強化に注力することに加え、2020年も見据えた今後の収益源となる事業創出に取り組み、将来にわたる持続的成長を目指してまいります。
鉄道事業におきましては、社会構造の変化等を踏まえたうえで、安全輸送体制のさらなる充実と沿線ネットワークの活用等お客様のニーズに合った質の高い輸送サービスの提供により、鉄道需要を創出・拡大してまいります。
また、東京スカイツリータウンにおきましては、観光立国日本のシンボルとして「にぎわい」と「活力」を継続すべく、来場者の維持拡大に向け積極的な販売促進施策を展開し、継続的な収益力強化をはかってまいります。加えて、観光戦略の展開にあたっては、東京スカイツリータウンや世界遺産の日光をはじめとした沿線各地の既存観光資源を活かすとともに、新たな観光資源の発掘など、沿線の自治体とも連携したうえで、国内はもとより世界に目を向けた誘客施策を推進することにより、交流人口の増加につなげ沿線と地域の活性化をはかってまいります。さらに、沿線の生活価値向上に向けて、沿線居住者やお客様に対して、地域資源を活かしつつ魅力あるサービスを提供してまいります。
(2) 当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針について
① 基本方針の内容
当社は、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに当社の基幹事業である運輸業における輸送の安全を確保するための取り組みを一層推進してまいりますが、近時、わが国の株式市場等においては、買付の対象となる会社の経営陣の賛同を得ることなく、一方的に大量の株式の買付を強行するといった事例がみられるようになりました。
もとより、当社は、株式の大量買付であっても、当社の株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に資するものであれば、これを一概に否定するものではありません。
しかしながら、株式の大量買付の中には、その目的等から見て企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上に対する明白な侵害をもたらすもの、株主様に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主様が買付の条件等について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの等、対象会社の企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上に資さないものも少なくありません。
当社は、信頼の確立、成長基盤の確立を基に継続的に企業価値および株主共同の利益を確保・向上させていくために、経営の根底にある「安全・安心」の提供や鉄道事業者としての公共的使命に関する基本的な考え方を、今後も引き続き維持・推進していくことが不可欠であると考えます。
東武グループでは、「東武グループ中期経営計画2014~2016」を策定し、前中期経営計画「東武グループ中期経営計画2010~2013」期間中に実現した東京スカイツリータウンプロジェクトを含めた各事業の収益基盤の強化に注力することに加え、2020年も見据えた今後の収益源となる事業創出に取り組み、将来にわたる持続的成長を目指しております。
このような経営戦略が、当社株式の大量買付を行う者により短期的な利益のみを追求するような経営に変わるようなことがあれば、当社の企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上は損なわれることになります。
こうした事情に鑑み、当社取締役会は、当社株式に対する不適切な買付により当社の企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上が毀損されることを防止するためには、買付に応じるべきか否かを株主様が判断し、あるいは当社取締役会が代替案を提案するために必要な情報や時間を確保すること、および株主様のために買付者等と交渉を行うこと等を可能とするための体制を、平時において整えておくことが必要不可欠と考えております。
② 具体的な取り組み
(ⅰ)会社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取り組み
当社の株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に向けて、当社を中核とする東武グループは、信頼の確立と成長基盤の確立を基に事業活動を推進しておりますが、この事業活動の根幹にあるものが「安全・安心」の提供であり、すべての事業における信頼の基礎である「安全・安心」を提供し続けることが、東武グループ全体の企業価値および株主共同の利益の確保・向上の根幹をなすものと考えております。
また、当社は、東武グループの中長期的な成長のため運輸事業を中心に、レジャー、不動産、流通、その他の各セグメントにおいて収益拡大を継続できる経営基盤の強化に努めることで、引き続き企業価値および株主共同の利益の確保・向上をはかってまいる所存であります。
(ⅱ)基本方針に照らして不適切な者によって会社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組み
当社は、平成27年6月26日開催の定時株主総会において「当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)の導入について承認を得ております。
本プランは、当社株式等の大量買付行為が行われる場合に、株主様が適切な判断をするために必要・十分な情報と時間を確保するとともに、買収者との交渉の機会を確保することなどにより、当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全を確保・向上させることを目的としています。
本プランは、当社が発行者である株券等について、保有者およびその共同保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付、または当社が発行者である株券等について、公開買付に係る株券等の株券等所有割合およびその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付(以下「買付等」と総称し、買付等を行おうとする者を「買付者等」といいます。)を対象とします。
当社の株券等について買付等が行われる場合、当該買付等に係る買付者等には、買付内容等の検討に必要な情報および本プランに定める手続きを遵守する旨の誓約文言等を記載した書面の提出を求めます。その後、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員のみから構成される独立委員会が買付者等から提出された情報や、当社取締役会が必要に応じて提出する買付者等の買付等の内容に対する意見およびその根拠資料、当該買付等に対する代替案について、評価・検討するものとします。独立委員会は、必要に応じて、独立した第三者の助言を得たうえ、買付等の内容の検討、当社取締役会の提示した代替案等の検討、買付者等との協議・交渉、当社取締役会等を通じた株主に対する情報開示等を行います。
独立委員会は、買付者等が本プランに定められた手続を遵守しなかった場合、または買付等の内容の検討等の結果、買付者等による買付等が企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全の確保・向上に対する明白な侵害をもたらす恐れのある買付等であるなど、本プランに定める要件のいずれかに該当し、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、新株予約権の無償割当てを実施すべき旨の勧告を行います。なお、独立委員会は、新株予約権の無償割当てを実施することが相当であると判断した場合でも、新株予約権の無償割当てを実施することについて株主総会の決議を経ることが相当であると判断した場合には、当社取締役会に対して、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を行います。この新株予約権は、1円を下限とし当社株式1株の時価の2分の1の金額を上限とする金額の範囲内で、当社取締役会が新株予約権無償割当て決議において定める金額を払い込むことにより、原則として当社株式1株を取得することができるものですが、買付者等による権利行使が認められないという行使条件が付されています。また、当社が買付者等以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得することができる旨の取得条項が付されており、当社がかかる条項に基づく取得をする場合、新株予約権1個と引換えに、対象株式数に相当する数の当社株式を交付することができるものとします。当社取締役会は、独立委員会の上記勧告を最大限に尊重して新株予約権無償割当ての実施または不実施等の決議をするものとします。ただし、当社取締役会は、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議する旨決議するものとします。当社取締役会は、上記決定を行った場合には速やかに、当該決議の概要その他当社取締役会が適切と判断する事項について情報開示を行います。
本プランの有効期間は平成27年6月26日開催の定時株主総会終了後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです。ただし、有効期間の満了前であっても、当社の株主総会において本プランに係る新株予約権の無償割当てに関する事項の決定についての取締役会への上記委任を撤回する旨の決議が行われた場合、または、当社取締役会により本プランを廃止する旨の決議が行われた場合には、本プランはその時点で廃止されるものとします。
本プラン導入後であっても、新株予約権無償割当てが実施されていない場合、株主の皆様に直接具体的な影響が生じることはありません。他方、新株予約権無償割当てが実施された場合、株主の皆様が新株予約権行使の手続きを行わないとその保有する株式の価値は希釈化される場合があります(ただし、当社が当社株式を対価として新株予約権の取得を行った場合、その保有する株式の希釈化は生じません。)。
(ⅲ)具体的取り組みに対する当社取締役会の判断およびその理由
前記②(ⅰ)に記載した取り組みは、いずれも当社の企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に資する具体的方策として策定されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。
また、本プランは前記②(ⅱ)記載のとおり、企業価値および株主共同の利益ならびに輸送の安全を確保・向上させる目的をもって導入されたものであり、当社の基本方針に沿うものです。とくに、本プランは当社の株主総会において決議がなされ導入しているため、株主意思を重視するものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社の業務執行を行う経営陣から独立している委員のみから構成される独立委員会を設置し、本プランの発動に際しては必ず独立委員会の判断を得ることが必要とされていること、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を得ることができるとされていること、独立委員会から、株主総会を招集し、新株予約権の無償割当ての実施に関する議案を諮ることの勧告を受けた場合には、実務面を含め株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、速やかに株主総会を招集し、新株予約権による無償割当ての実施に関する議案を付議するとされていること、本プランは有効期間を約3年間と定め、有効期間の満了前であっても当社の株主総会または取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その公正性・客観性が担保されており、合理性を有し、企業価値および株主共同の利益の確保・向上ならびに輸送の安全の確保・向上に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成28年6月29日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 法的規制
東武鉄道が展開している鉄道事業においては、鉄道事業法第3条により、路線及び鉄道事業の種別ごとに国土交通大臣の認可を受けなければなりません。同様に、運賃の設定・変更についても同法第16条により、鉄道事業者は旅客運賃等の上限を定め、国土交通大臣の許可を受けなければならず、国土交通大臣は、能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して認可しております(総括原価方式)。また、認可を受けた運賃等の上限の範囲内で運賃等を設定・変更する場合は、国土交通大臣に届け出ることとなっております。
このため、法制度の変更や運賃改定の結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、鉄道事業以外の当社グループ会社が展開する各種事業においても、様々な法令・規則等の規制の適用を受けており、これら法的規制が変更された場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 少子高齢化傾向
国立社会保障・人口問題研究所が平成24年1月に発表した将来推計人口(中位推計)によると、日本の総人口は同推計の出発点である平成22年以後長期の人口減少過程に入るとされております。東武沿線においても、地域によっては全国平均からは遅行するものの、少子高齢化を伴う人口減少が進行するものと推測されます。
当社グループは、鉄道事業を中心に東武沿線を主たるマーケットとして事業を展開しているため、人口減少や少子高齢化の進行は、長期的には当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 経済情勢
当社グループは、各事業において継続的に設備投資を行っておりますが、これらの必要資金は主として社債や金融機関からの外部借入れによって調達しているため、今後、金利が上昇基調になった場合には、金利負担の増大を招くことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
また、消費増税や更なる電気料金の値上げなどで生じる経済情勢の変化によっては、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 個人情報の管理
当社グループでは、各事業において顧客の個人情報を含むデータベースを管理しております。これらの情報については、情報の取得および利用に際しての社内での保護規程を定めるとともに、管理体制を整備し、関係者の情報管理を徹底させるほか、情報処理を社外に委託する場合も秘密保持契約の整備、監督の強化を行う等、取扱には充分に留意しておりますが、何らかの原因により情報が流出した場合には、当社グループの信用の失墜につながり、業績に影響を与える可能性があります。
(5) 自然災害等
当社が展開している鉄道事業においては、安全確保はお客様の信頼を得るうえで最も重要であり、万全を期しておりますが、不慮の事故、天災およびテロ・戦争の発生等外的要因により、安全確保が難しい状況に陥った場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、天候不順や伝染病等の発生により、観光施設・レジャー施設の集客状況が悪化した場合には、レジャー事業を中心に、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記は当社グループの事業等について予想される主なリスクを例示したものであり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成28年6月29日)現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成にあたり経営者は、資産・負債及び報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを行わねばなりません。これらの見積りについては、過去の実績や状況等に応じ合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。
① 株式等の投資
当社グループが保有する株式等の有価証券については、将来の株式市況の悪化または投資対象会社の業績不振等により時価の著しい下落が生じた際には、損失の計上が必要となる場合があります。
② 不動産の保有
当社グループが保有する販売用不動産については、地価の下落や市況悪化等により時価の下落が生じた場合には、損失の計上が必要になります。また、事業用不動産については、当初見込んだ収益が得られなかった場合、または将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額などの前提条件に変更があった場合には、減損損失の計上が必要になります。
③ 退職給付費用及び債務
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されております。したがって、前提条件または制度に変化や変更が生じた場合には、退職給付費用及び退職給付債務に影響を及ぼす可能性があります。
④ 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得の計画に基づき慎重にかつ実現(回収)可能な範囲において繰延税金資産を計上しておりますが、将来において既に計上している繰延税金資産の全部または一部を実現(回収)できないと判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できないと判断した繰延税金資産を取崩すとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額に加算し、当期純利益を減少させる場合があります。同様に、現時点で評価性引当額として繰延税金資産を計上していない項目について、将来においてその全部または一部を実現(回収)できると判断した場合には、当該判断を行った連結会計年度において、実現(回収)できると判断した金額を繰延税金資産として計上するとともに、同額を法人税等調整額として法人税、住民税及び事業税の金額から控除し、当期純利益を増加させる場合があります。
(2) 経営成績の分析
① 営業収益
鉄道業における消費税増税に伴う先買いの反動減の戻りと雇用情勢改善に伴う定期収入が堅調に推移したものの、百貨店業で改装工事に伴う来店者数の減少や大型商業施設の競合、一部子会社での決算期変更の反動減による減収等により、営業収益は574,334百万円(前期比1.5%減)となりました。
② 営業利益
営業費において退職給付会計に係る会計基準変更時差異の償却終了による退職給付費用の減少等により、営業利益としては64,399百万円(前期比21.1%増)となりました。
③ 経常利益
営業外収益については、当社における受取配当金が減少したこと等により、4,591百万円(前期比16.2%減)となりました。
営業外費用については、当社における支払利息が減少したものの、金融手数料の増加等により、12,985百万円(前期比3.9%増)となり、経常利益は56,006百万円(前期比21.4%増)となりました。
④ 親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益については、前期の特別目的会社資産売却に伴う受取配当金の反動減等により、12,854百万円(前期比18.5%減)となりました。
特別損失については、大雨による災害損失の発生や固定資産除却損の増加等により、22,281百万円(前期比413.0%増)となりました。
これらの結果、税金等調整前当期純利益を46,580百万円(前期比19.1%減)計上し、法人税等を控除した当期純利益は28,596百万円(前期比10.5%減)となりました。また、ここから非支配株主に帰属する当期純利益を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は27,277百万円(前期比11.0%減)となりました。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要」に記載のとおりであり、営業活動で得た資金と借入金等による資金調達をもとに、安全対策を中心とした設備投資を行うとともに、差引フリー・キャッシュ・フローを有利子負債の削減に充当いたしました。
なお、有利子負債(有価証券消費貸借預り金を除く)の当連結会計年度の残高は、前連結会計年度から6,560百万円減少し、823,474百万円となりました。