第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度のわが国経済は、政府の経済対策等を背景として、企業収益や雇用・所得環境の改善等により個人消費・民間設備投資が増加するなど、緩やかな回復が継続いたしました。

 当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場につきましては、空室率は低水準で推移し、賃料も緩やかな上昇傾向が継続するなど、堅調に推移いたしました。分譲住宅市場につきましては、エリア等による二極化傾向が強まっておりますが、低金利や諸政策の後押しもあり、都心部を中心に引き続き需要は底堅く推移いたしました。また、不動産投資市場につきましては、良好な資金調達環境を背景に激しい取得競争が続いており、ホテルや物流施設等の取引が拡大する動きも見られました。

 このような事業環境のもと、当連結会計年度における当社グループの連結業績につきましては、住宅事業において都心部の大型タワーマンションを中心に引渡戸数が増加したこと等により営業収益は2,669億8千3百万円(前期2,544億9千8百万円、前期比4.9%増)、営業利益は447億5千7百万円(前期363億6千3百万円、前期比23.1%増)と前連結会計年度比で増収増益となりました。また、金融収支の改善等により、経常利益は394億1千6百万円(前期306億3千5百万円、前期比28.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は225億9千9百万円(前期197億4千2百万円、前期比14.5%増)となりました。

 各セグメントの業績の概況は以下の通りであります。

 

① ビル事業

 ビル事業においては、「豊島区旧庁舎跡地再開発プロジェクト」(東京都豊島区)や「東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業」(東京都中央区)の推進、短期回転型事業や再開発事業を積極化するための物件取得、多様な働き方のニーズに対応するシェアオフィス「+OURS(プラスアワーズ)」の開設等、新たな成長に向けた施策を着実に進める一方、お客様に「安全・安心・快適」を感じていただくためのソフト・ハードの品質確保等に鋭意取り組んでまいりました。

 当連結会計年度においては、前連結会計年度に計上した販売用不動産売上の剥落があったものの、「エンパイヤビル」(東京都中央区)等が新規稼働し、「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」(東京都千代田区)等が通期稼働したほか、稼働率の向上等により賃貸収益が好調に推移するとともに、東京不動産管理㈱の完成工事高の増加や西新サービス㈱の連結子会社化等により、管理受託等収益が増加いたしました。

 この結果、営業収益は1,034億6千2百万円(前期1,034億1千9百万円、前期比0.0%増)、営業利益は319億9千9百万円(前期310億9千4百万円、前期比2.9%増)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

ビル賃貸

建物賃貸面積

699,923㎡

64,600

建物賃貸面積

743,551

67,795

(うち転貸面積

107,218㎡)

(うち転貸面積

 98,345㎡)

不動産売上

 

  2件

13,350

管理受託等

25,469

35,667

営業収益計

103,419

103,462

営業利益

31,094

31,999

 

② 住宅事業

 住宅事業においては、分譲マンションブランド「Brillia(ブリリア)」の価値向上とお客様評価NO.1を目指して、「製」「販」「管」一体となりお客様に寄り添った品質・サービスの向上を通じた収益力強化に取り組んでまいりました。また、賃貸マンションにご入居されるお客様の満足度を更に高める商品企画・サービス提供の徹底を企図し、賃貸マンションブランド「Brillia ist(ブリリア イスト)」を新たに展開することといたしました。

 当連結会計年度においては、住宅分譲で「Brillia Towers 目黒」(東京都品川区)、「Brillia THE TOWER TOKYO YAESU AVENUE」(東京都中央区)、「Brillia City 石神井台」(東京都練馬区)、「Brillia 高輪 The Court」(東京都港区)等を売上に計上いたしました。

 この結果、売上計上戸数が前連結会計年度に比べて大幅に増加したことから、営業収益は1,011億4千万円(前期798億5千8百万円、前期比26.6%増)、営業利益は167億3千9百万円(前期62億7千1百万円、前期比166.9%増)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

住宅分譲

 

   711戸

63,423

 

   974

80,841

住宅賃貸

建物賃貸面積

77,883㎡

3,133

建物賃貸面積

78,991

3,325

マンション管理受託

管理戸数

53,010戸

6,758

管理戸数

92,726

9,939

その他

6,543

7,034

営業収益計

79,858

101,140

営業利益

6,271

16,739

 

③ アセットサービス事業

 不動産流通事業におきましては、CRE営業(企業が保有・利用する不動産に対する有効活用等の提案営業)の強化を図るとともに、更なる収益力の強化に取り組んでまいりました。また、駐車場事業におきましては、業容拡大とともに、お客様満足度の向上、新規物件開発等による収益力の向上に努めてまいりました。

 当連結会計年度においては、駐車場事業が堅調に推移したものの、アセットソリューション事業の売上高が減少した結果、営業収益は402億2千9百万円(前期526億6千8百万円、前期比23.6%減)、営業利益は38億7百万円(前期53億8千3百万円、前期比29.3%減)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

仲介

924件

3,464

969件

4,000

アセットソリューション(注)

26,733

12,033

賃貸管理等

3,376

3,624

駐車場運営

車室数

  65,546室

19,094

車室数

  66,227

20,571

営業収益計

52,668

40,229

営業利益

5,383

3,807

(注)取得した不動産の付加価値を向上させて再販する買取再販業務を主に行っております。

 

 

④ その他

 リゾート事業におきましては、愛犬同伴型リゾート施設「レジーナリゾート旧軽井沢」(長野県北佐久郡)、「レジーナリゾート蓼科」(長野県茅野市)を開業するなど、独自のノウハウを活かした事業に引き続き注力いたしました。クオリティライフ事業におきましては、サービス付き高齢者向け住宅「グレイプス立石」(東京都葛飾区)を新規開業するなど、業容拡大に努めました。また、保育サービスに対する社会的なニーズの高まりに応えるべく、新たに保育事業への取り組みをスタートさせ、「おはよう保育園」3施設を開園いたしました。海外事業におきましては、ミャンマー新投資法に基づく投資許可を受けた第1号の案件として、ミャンマー国ヤンゴン市中心部における大規模複合開発事業に着手いたしました。

 当連結会計年度においては、積極的な新規施設の開業のほか連結子会社が増加した結果、営業収益は221億5千万円(前期185億5千2百万円、前期比19.4%増)と増収になりましたが、新規施設の開業費負担等により5億8千万円の営業損失(前期 営業損失1億4千6百万円)となりました。

 なお、当連結会計年度より一部組織再編を行い、余暇事業及びシニア事業の統合事業であったクオリティライフ事業をシニア事業特化とし、余暇事業についてはリゾート事業へ名称を変更し、独立させております。前連結会計年度の実績値については、新区分に組み替えて表示しております。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

営業収益

(百万円)

営業収益

(百万円)

リゾート事業

14,615

14,264

クオリティライフ事業

2,571

4,801

その他

1,365

3,083

営業収益計

18,552

22,150

営業損失(△)

△146

△580

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により141億9千6百万円減少、投資活動により645億8百万円減少、財務活動により779億9千8百万円増加したこと等により、前連結会計年度末比で8億2千5百万円減少し、412億2千7百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、141億9千6百万円(前期比529億7千9百万円減少)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益及び減価償却費による資金の増加があった一方、たな卸資産の増加による資金の減少があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、645億8百万円(前期比114億8千4百万円減少)となりました。これは主に、固定資産の取得及び関係会社出資金の取得による資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、779億9千8百万円(前期比689億9千3百万円増加)となりました。これは主に、社債の償還による資金の減少があった一方、借入金の増加及び社債の発行による資金の増加があったことによるものであります。

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

 生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループでは、より長期的な視点で持続的な成長を実現するため、2019年度を最終年度とする5年間のグループ中期経営計画「次も選ばれる東京建物グループへ」を2015年度に策定し、その達成に注力しております。「次も選ばれるためのソフトの強化」「独自性や強みを活かした投資」「驚きの価値提供に向けたグループシナジーの発揮」の3つの重点戦略を通じて、成長性に富んだ事業ポートフォリオの構築による収益力強化を図ってまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 グループ中期経営計画の最終年度である2019年度の目標として連結営業利益500億円を掲げております。また、D/Eレシオ3倍、有利子負債/EBITDA倍率13倍を目標達成に向けた財務指標の目途としております。

 

(3)経営環境及び対処すべき課題

 今後のわが国経済は、政府の各種政策効果等を背景に、雇用・所得環境の改善が続き民間需要を中心とした緩やかな景気の回復基調が継続するものと見込まれますが、海外の政治経済動向や金融資本市場の影響に留意する必要があります。

 こうした中、当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場につきましては、国内景気の回復に伴う旺盛なオフィス需要を背景に引き続き空室率が低水準で推移するとともに賃料の上昇傾向の継続が期待されます。分譲住宅市場につきましては、都心部を中心とした堅調な需要に支えられる一方で、販売価格の高止まり等の影響から中古住宅を選択する動きが見られるなどお客様の購買動向の変化等について注視する必要があります。また、不動産投資市場につきましては、低金利等を背景として活況を呈しておりますが、取引価格の高騰など一部には過熱感が見られ今後の投資マインドの動向については一層留意する必要があります。

 このような事業環境のもと、当社グループは、2015年度に策定したグループ中期経営計画に基づき、既存事業の創意工夫による収益力強化と新たな成長分野への積極的な事業展開を着実に実行してまいります。ビル事業における都市再開発事業の推進、オフィスサービスの一層の充実、都市型商業施設・都市型ホテルの開発等に鋭意取り組み、住宅事業における「Brillia(ブリリア)」ブランドの更なる価値向上や不動産流通事業におけるアセットソリューション機能を活用した収益力強化を進めてまいります。更に、駐車場事業における管理車室数の拡大、クオリティライフ事業におけるソフトサービスの充実、リゾート事業における愛犬同伴型リゾート施設の拡充等に取り組んでまいります。新たな成長分野での事業展開につきましては、海外事業の新規エリアへの展開、昨年スタートした保育事業の拡充等へチャレンジしてまいります。

 当社グループは、これからも企業としての社会的責任(CSR)を十分に果たしつつ、多様なステークホルダーとの信頼関係の維持向上により「次も選ばれる」企業グループへと成長すること等を通じて、長期的かつ持続的な企業価値の増大に努めてまいります。

 

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 不動産市況の動向

 今後、景気の動向により、賃貸オフィス市場において企業の業績悪化に伴うオフィスニーズの減退が起こる場合、また、分譲住宅市場において顧客の購買意欲の低下が起こる場合等、不動産市況の動向が、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(2) 当社事業に関連する法制、税制等の制定・改定等

 当社グループの事業は、各種法令のほか、各自治体が制定した条例、税制等の規制に影響を受けているため、将来において、関連する法令、条例、税制等が制定・改廃された場合には、新たな義務の発生、費用負担の増加、権利の制限等により、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。また、税務申告において税務当局との見解に相違が生じた場合は、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金利の変動

 当社グループは、有利子負債の大部分を長期による借入等とする安定的な資金調達を行うとともに、ほぼ全ての長期借入について金利を固定化し、金利変動による影響を極力少なくするべく対処しておりますが、金利が上昇した場合には、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(4) 天災等の発生

 地震・風水害等の天災地変、戦争、暴動、テロ、その他突発的な事故の発生により、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(5) 株式市場の動向

 当社グループは、市場性のある株式を保有しており、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。

 

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は1兆4,410億5千万円となり、前連結会計年度末比で1,264億9千1百万円の増加となりました。これは、販売用不動産(仕掛販売用不動産、開発用不動産含む)及び有形固定資産の増加等によるものであります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は1兆876億3千万円となり、前連結会計年度末比で986億6千5百万円の増加となりました。これは、有利子負債の増加等及び不動産特定共同事業出資受入金の減少等によるものであります。なお、有利子負債残高(リース債務除く)は8,140億3千2百万円(前期末比867億2千9百万円の増加)となっております。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は3,534億1千9百万円となり、前連結会計年度末比で278億2千6百万円の増加となりました。これは、利益剰余金及びその他有価証券評価差額金の増加等によるものであります。

 

(2) 経営成績の分析

 当連結会計年度においては、都心部の大型タワーマンションを中心に引渡戸数が増加したことやビル事業における賃貸収益の堅調な推移等に加え、金融収支の改善等により、増収増益となりました。この結果、営業収益は前連結会計年度比124億8千4百万円増の2,669億8千3百万円、営業利益は前連結会計年度比83億9千3百万円増の447億5千7百万円、経常利益は前連結会計年度比87億8千万円増の394億1千6百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比28億5千6百万円増の225億9千9百万円となりました。

 各セグメントの業績概要については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。