第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度のわが国経済は、景気の一部に改善の遅れも見られましたが、政府の経済政策を下支えとして企業収益や雇用環境等が改善するなど、一年を通じた経済全体の基調としては緩やかな回復が継続いたしました。

 当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、空室率の更なる低下や賃料水準の上昇傾向が継続するなど、引き続き堅調に推移いたしました。分譲住宅市場については、エリア等による二極化が一層鮮明になりつつありますが、低金利や税制面での後押しもあり、都心部を中心に需要は底堅く推移いたしました。また、不動産投資市場については、オフィスの他ホテルや物流施設についても取引が活発に行われ、特に都心部では取得競争の過熱から価格高騰が継続いたしました。

 このような事業環境のもと、当連結会計年度における当社グループの連結業績につきましては、住宅事業における分譲マンションの売上計上戸数が前連結会計年度に比べて減少した一方、ビル事業及びアセットサービス事業における販売用不動産売上の計上等により営業収益は2,544億9千8百万円(前期2,600億1千2百万円、前期比2.1%減)、営業利益は363億6千3百万円(前期344億3千9百万円、前期比5.6%増)と前連結会計年度比で減収増益となりました。また、海外事業における持分法投資利益の増加及び金融収支の改善等により、経常利益は306億3千5百万円(前期247億9千6百万円、前期比23.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は197億4千2百万円(前期163億5千9百万円、前期比20.7%増)となりました。

 なお、当連結会計年度から報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度の実績値については新セグメントに組み替えて表示しております。

 各セグメントの業績の概況は以下の通りであります。

 

① ビル事業

 ビル事業においては、「HUMAN BUILDING ~いつも、真ん中に人。~」を掲げ、引き続き現場力の強化・お客様満足度の向上、グループシナジーを発揮した収益機会の創出などに取り組むとともに、「豊島区旧庁舎跡地再開発プロジェクト」(東京都豊島区)や「東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業」(東京都中央区)など、新たな成長に向けたプロジェクトを着実に進めてまいりました。

 当連結会計年度においては、販売用不動産の売却による不動産売上の増加に加え、「東京建物日本橋ビル」(東京都中央区)が通期稼働し、都市型コンパクト商業施設「FUNDES(ファンデス)神保町」(東京都千代田区)が新規稼働するなど、ビル賃貸において堅調に推移したほか、管理受託等収益の増加等により前連結会計年度比で増収増益となりました。

 この結果、営業収益は1,034億1千9百万円(前期969億4千2百万円、前期比6.7%増)、営業利益は310億9千4百万円(前期272億2千2百万円、前期比14.2%増)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

ビル賃貸

建物賃貸面積

694,437㎡

63,542

建物賃貸面積

699,923㎡

64,600

(うち転貸面積

 107,539㎡)

(うち転貸面積

107,218㎡)

不動産売上

 

  2件

8,902

 

  2件

13,350

管理受託等

24,497

25,469

営業収益計

96,942

103,419

営業利益

27,222

31,094

 

② 住宅事業

 住宅事業においては、お客様評価NO.1を目指して、「製・販・管」の一体化による「Brillia(ブリリア)」のトータルコミュニケーションブランド化に引き続き注力し、品質・サービスの向上、収益力強化に取り組んでまいりました。

 当連結会計年度においては、住宅分譲で「Brillia 早稲田 諏訪通り」(東京都新宿区)、「ベイズ タワー&ガーデン」(東京都江東区)、「Brillia 文京江戸川橋」(東京都文京区)等を売上に計上しましたが、分譲マンションの竣工戸数が前連結会計年度に比べて少なく、売上計上戸数が大幅に減少した影響等により、前連結会計年度比で減収減益となりました。

 この結果、営業収益は798億5千8百万円(前期980億7千6百万円、前期比18.6%減)、営業利益は62億7千1百万円(前期104億6千5百万円、前期比40.1%減)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

住宅分譲

 

 1,528戸

78,841

 

   711戸

63,423

住宅賃貸

建物賃貸面積

81,997㎡

4,083

建物賃貸面積

77,883㎡

3,133

マンション管理受託

管理戸数

49,484戸

6,472

管理戸数

53,010戸

6,758

その他

8,678

6,543

営業収益計

98,076

79,858

営業利益

10,465

6,271

 

③ アセットサービス事業

 アセットサービス事業においては、不動産流通事業においてアセットソリューション機能を活かしたCRE営業(企業が利用・保有する不動産に対する有効活用の提案営業)の更なる強化を図るとともに、買取再販事業による収益力の強化に注力いたしました。また、駐車場事業においては、引き続きM&Aを活用するなど、業容の拡大に取り組みました。

 当連結会計年度においては、アセットソリューションにおける買取再販の売上高の増加に加え、駐車場事業においてM&Aを実施し、車室数が増加したこと等により前連結会計年度比で増収増益となりました。

 これらの結果、営業収益は526億6千8百万円(前期477億8千9百万円、前期比10.2%増)、営業利益は53億8千3百万円(前期44億1千7百万円、前期比21.9%増)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

仲介

999件

3,450

924件

3,464

アセットソリューション(注)

24,449

26,733

賃貸管理等

2,945

3,376

駐車場運営

車室数

  61,743室

16,943

車室数

  65,546室

19,094

営業収益計

47,789

52,668

営業利益

4,417

5,383

(注)取得した不動産の付加価値を向上させて再販する買取再販業務を主に行っております。

 

 

④ その他

 その他においては、ホテル・ゴルフ・温浴施設等の余暇事業において、お客様満足度の向上を図るとともに、愛犬同伴型リゾート施設「レジーナリゾート伊豆無鄰」(静岡県伊東市)、「レジーナリゾート軽井沢御影用水」(長野県北佐久郡)を開業するなど、独自のノウハウを活かした事業に注力いたしました。また、シニア事業においては、引き続き良質なサービスの拡充と向上に努めるとともに、サービス付き高齢者向け住宅「グレイプス辻堂西海岸」(神奈川県藤沢市)を新たに開業するなど、事業規模の拡大を図りました。

 当連結会計年度においては、余暇事業における販売用不動産評価損の減少等により前連結会計年度比で営業損失が減少いたしました。

 これらの結果、営業収益は185億5千2百万円(前期172億2百万円、前期比7.8%増)、営業損失は1億4千6百万円(前期 営業損失13億9千2百万円)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

営業収益

(百万円)

営業収益

(百万円)

クオリティライフ事業(注)

15,907

17,186

その他

1,295

1,365

営業収益計

17,202

18,552

営業損失(△)

△1,392

△146

(注)余暇事業及びシニア事業を統合した事業となります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により387億8千3百万円増加、投資活動により530億2千4百万円減少、財務活動により90億5百万円増加したこと等により、前連結会計年度末比で51億6千4百万円減少し、420億5千3百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、387億8千3百万円(前期比170億2千万円増加)となりました。これは主に、長期前払費用の増加による資金の減少があった一方、税金等調整前当期純利益、減価償却費、たな卸資産の減少による資金の増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、530億2千4百万円(前期比317億7千3百万円減少)となりました。これは主に、固定資産の売却収入による資金の増加があった一方、固定資産の取得による資金の減少及び不動産特定共同事業出資受入金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の増加は、90億5百万円(前期比491億8千2百万円増加)となりました。これは主に、社債の償還による資金の減少があった一方、借入金の増加及び社債の発行による資金の増加があったことによるものであります。

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

 生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

3【対処すべき課題】

今後のわが国経済は、雇用・所得環境の改善が続くなか、各種政策効果もあり緩やかな回復基調が継続していくことが期待されますが、海外の政治経済動向や金融資本市場の影響も懸念され、安定的な成長を持続できるかどうかは不透明であります。

こうしたなか、当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場につきましては、企業収益の改善等を背景に引き続き賃料の上昇傾向が期待される一方、分譲住宅市場につきましては、お客様による物件の選別化傾向が強まり、更なる二極化の進行が懸念されます。不動産投資市場につきましては、引き続き活発な取引が期待されますが、価格の高騰に伴う投資マインドの変化については十分留意していく必要があります。

このような事業環境のもと、当社グループは、2015年度に策定したグループ中期経営計画「次も選ばれる東京建物グループへ」(2015〜2019年度)に基づき、財務バランスを意識した「戦略的な投資」と「ソフト・サービスの強化」を実施するとともに、これらを着実に推進するためのグループシナジーの発揮により、収益力の強化を図ってまいります。

ビル事業におきましては、高度化・多様化するお客様ニーズに適確に対応するため、グループ一体となったサービス強化を進めるとともに、都市再開発事業の着実な推進や将来の事業化に向けた用地取得のほか、インバウンド需要に向けた宿泊特化型ホテルの開発等にも積極的に取り組んでまいります。住宅事業におきましては、製・販・管一体化によるソフト・サービス水準の向上等によりお客様評価を高め、「Brillia(ブリリア)」ブランドの価値向上を図るとともに、デベロッパーとしての経験・ノウハウを活かした建替え事業等に一層注力してまいります。不動産流通事業におきましては、活発な投資市場を背景に当社グループのアセットソリューション機能を活用した更なる収益力の強化を、また、駐車場事業におきましては、M&A等も活用した管理車室数の拡大をそれぞれ目指してまいります。更に、シニア事業におけるサービス付き高齢者向け住宅の開発や、余暇事業における愛犬同伴型リゾート施設の拡充に加え、女性の社会進出に応えるべく、保育事業にも新たに取り組んでまいります。海外事業におきましては、中国での分譲事業、シンガポールでのオフィス再開発事業に加え、アジア新興国での新たな事業展開を目指してまいります。

これからも街づくりを通じた社会貢献を進めるとともに、多様な事業の有機的な協働によりソフトやサービスの強化を図り、「驚きの価値提供」を通じて、お客様に「次も選ばれる」企業グループを目指して鋭意取り組んでまいります。

 

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 不動産市況の動向

 今後、景気の動向により、賃貸オフィス市場において企業の業績悪化に伴うオフィスニーズの減退が起こる場合、また、分譲住宅市場において顧客の購買意欲の低下が起こる場合等、不動産市況の動向が、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(2) 当社事業に関連する法制、税制等の制定・改定等

 当社グループの事業は、各種法令のほか、各自治体が制定した条例、税制等の規制に影響を受けているため、将来において、関連する法令、条例、税制等が制定・改廃された場合には、新たな義務の発生、費用負担の増加、権利の制限等により、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。また、税務申告において税務当局との見解に相違が生じた場合は、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金利の変動

 当社グループは、有利子負債の99%を長期による借入等とする安定的な資金調達を行うとともに、ほぼ全ての長期借入について金利を固定化し、金利変動による影響を極力少なくするべく対処しておりますが、金利が上昇した場合には、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(4) 天災等の発生

 地震・風水害等の天災地変、戦争、暴動、テロ、その他突発的な事故の発生により、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(5) 株式市場の動向

 当社グループは、市場性のある株式を保有しており、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。

 

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は1兆3,145億5千8百万円となり、前連結会計年度末比で174億4千6百万円の増加となりました。これは、有形固定資産及び長期前払費用の増加等によるものであります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は9,889億6千5百万円となり、前連結会計年度末比で43億8千3百万円の増加となりました。これは、有利子負債の増加及び不動産特定共同事業出資受入金の減少等によるものであります。なお、有利子負債残高(リース債務除く)は7,273億2百万円(前期末比199億4千5百万円の増加)となっております。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は3,255億9千3百万円となり、前連結会計年度末比で130億6千2百万円の増加となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益等によるものであります。

 

(2) 経営成績の分析

 当連結会計年度においては、前連結会計年度に比べ分譲マンション計上戸数が減少したことにより減収となったものの、ビル事業やアセットサービス事業における投資家向け物件売却益の増加や賃貸収益の伸びに加え、金利コストの縮小や海外事業における持分法投資利益の計上等により、大幅な増益となりました。この結果、営業収益は前連結会計年度比55億1千3百万円減の2,544億9千8百万円、営業利益は前連結会計年度比19億2千4百万円増の363億6千3百万円、経常利益は前連結会計年度比58億3千8百万円増の306億3千5百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比33億8千2百万円増の197億4千2百万円となりました。

 各セグメントの業績概要については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。