第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度のわが国経済は、8月以降株価が大きく変動し、新興国経済が下振れするなどの影響を受け、年度後半には景気の一部にやや弱い動きも見られましたが、政府の経済政策や日本銀行の金融緩和等により、一年を通じた経済全体の基調としては緩やかな回復が継続いたしました。

 当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、空室率の更なる低下、賃料水準の上昇が顕在化するなど、引き続き回復傾向が継続いたしました。分譲住宅市場については、都心部は好調さを持続しましたが、郊外ではややかげりがみられるなど、二極化の兆しが見えてまいりました。また、不動産投資市場については、物件取引は引き続き高水準で推移し、都心部における取得競争の過熱から、主要地方都市等に投資エリアが拡大する動きも見られました。

 このような事業環境のもと、当連結会計年度における当社グループの連結業績につきましては、大型マンションプロジェクトの竣工等により営業収益は2,600億1千2百万円(前期2,370億4千9百万円、前期比9.7%増)、営業利益は344億3千9百万円(前期305億5千9百万円、前期比12.7%増)と前連結会計年度比で増収増益となりました。また、経常利益は247億9千6百万円(前期173億1千7百万円、前期比43.2%増)となる一方、前連結会計年度に計上した「大手町タワー」(東京都千代田区)の一部売却に伴う固定資産売却益が剥落したこと等により、当期純利益は163億5千9百万円(前期829億4千4百万円、前期比80.3%減)となりました。

 また、当連結会計年度は、東京建物不動産販売㈱を完全子会社化し、同社の住宅販売事業を当社に統合、当社グループのアセットサービス事業を同社に集約するなど、グループ横断的な再編を進め、更なる顧客サービスの向上・収益力の強化を図ってまいりました。

 

 なお、当連結会計年度から、当社グループ内の事業再編に伴い、一部事業のセグメントの区分を変更しており、前連結会計年度の実績値については変更後のセグメント区分に組み替えて表示しております。

 各セグメントの業績の概況は以下の通りであります。

 

① ビル事業

 ビル事業においては、お客様に「安全・安心・快適」を感じていただくため、「HUMAN BUILDING ~いつも、真ん中に人。~」を掲げ、現場力の強化によるソフトサービス・顧客満足度の向上、グループシナジーを発揮した収益機会の創出等に取り組むとともに、「豊島区現庁舎地活用事業」(東京都豊島区)への参画や、「東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業」(東京都中央区)における都市計画手続きの開始等、新たな成長に向けたプロジェクトの推進を着実に進めてまいりました。

 当連結会計年度においては、「東京建物日本橋ビル」(東京都中央区)、都市型コンパクト商業施設「FUNDES(ファンデス)水道橋」(東京都千代田区)が新規稼働するなど、ビル賃貸及び管理受託等において堅調に推移しましたが、前連結会計年度に販売用不動産を売却した影響等により減収減益となりました。

 この結果、営業収益は969億4千2百万円(前期1,092億8千3百万円、前期比11.3%減)、営業利益は272億2千2百万円(前期294億4千4百万円、前期比7.5%減)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

ビル賃貸

建物賃貸面積

695,060㎡

62,043

建物賃貸面積

694,437㎡

63,542

(うち転貸面積

 104,236㎡)

(うち転貸面積

 107,539㎡)

不動産売上

 

  5件

22,983

 

  2件

8,902

管理受託等

24,136

24,311

SPC配当収益

119

186

営業収益計

109,283

96,942

営業利益

29,444

27,222

 

② 住宅事業

 住宅事業においては、「Brillia(ブリリア)」のトータルコミュニケーションブランド化を目指し、「製造」「販売」「管理」のいわゆる「製・販・管」の一体化に向けた体制強化を実施するなど、顧客サービスの向上、収益力の強化に取り組んでまいりました。

 当連結会計年度においては、都心部で大型マンションプロジェクトが竣工し、住宅分譲で「Brillia Tower 池袋」(東京都豊島区)、「Brillia 有明 CityTower」(東京都江東区)、「スカイズ タワー&ガーデン」(東京都江東区)等を売上に計上したこと等により増収増益となりました。

 この結果、営業収益は980億7千6百万円(前期842億4千万円、前期比16.4%増)、営業利益は104億6千5百万円(前期37億1千4百万円、前期比181.8%増)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

住宅分譲

 

 1,376戸

65,573

 

 1,528戸

78,841

住宅賃貸

建物賃貸面積

109,200㎡

4,379

建物賃貸面積

81,997㎡

4,083

マンション管理受託

管理戸数

51,140戸

6,142

管理戸数

49,484戸

6,472

その他

8,144

8,678

営業収益計

84,240

98,076

営業利益

3,714

10,465

 

③ その他事業

 その他事業においては、不動産流通事業においてアセットソリューション機能を東京建物不動産販売㈱に集約し、CRE営業(企業が利用・保有する不動産に対する有効活用の提案営業)のワンストップ化を図るとともに、駐車場事業においてはM&Aを活用して業容の拡大を図るなど、一層の収益力強化に取り組みました。ホテル・ゴルフ・温浴施設等の余暇事業においては、グループ会社の統合を実施し、サービスの向上を図るとともに、愛犬と泊まれるホテル等独自のノウハウを活かした事業に注力しました。また、シニア事業においては、サービス付き高齢者向け住宅の「グレイプス大森西」(東京都大田区)、「グレイプスフェリシティ戸塚」(横浜市戸塚区)、「グレイプス川崎新町」(川崎市川崎区)を開業するなど、新たな収益源の育成を図りました。

 当連結会計年度においては、駐車場事業において㈱マオスを連結子会社化したことに加え、不動産流通事業において私募リートへの物件売却収益を計上したこと等により増収となりましたが、余暇事業において販売用不動産の評価損を計上したこと等により減益となりました。

 これらの結果、営業収益は649億9千2百万円(前期435億2千6百万円、前期比49.3%増)、営業利益は30億2千4百万円(前期39億2千2百万円、前期比22.9%減)となりました。

 

区分

前連結会計年度

当連結会計年度

数量等

営業収益

(百万円)

数量等

営業収益

(百万円)

不動産流通事業

15,542

30,846

駐車場事業

車室数

  46,246室

13,072

車室数

  61,743室

16,943

クオリティライフ事業(注)

13,544

15,907

その他

1,367

1,295

営業収益計

43,526

64,992

営業利益

3,922

3,024

(注)余暇事業及びシニア事業を統合した事業となります。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動により217億6千2百万円増加、投資活動により212億5千万円減少、財務活動により401億7千7百万円減少したこと等により、前連結会計年度末比で396億8千9百万円減少し、472億1千7百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は、217億6千2百万円(前期比265億5千2百万円増加)となりました。これは主に、たな卸資産の増加による資金の減少があった一方、税金等調整前当期純利益、減価償却費、法人税等の還付による資金の増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における投資活動による資金の減少は、212億5千万円(前期比2,790億4千8百万円減少)となりました。これは主に、固定資産の売却収入による資金の増加があった一方、固定資産の取得による資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、401億7千7百万円(前期比2,376億1千万円増加)となりました。これは主に、有利子負債の減少による資金の減少があったことによるものであります。

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

 生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメント業績に関連付けて示しております。

 

 

3【対処すべき課題】

今後のわが国経済は、いわゆるアベノミクスの定着により緩やかな景気拡大が期待される一方、米国の利上げに伴う新興国を中心とした海外経済の減速、中国経済の動向、日本銀行によるマイナス金利政策の導入、あるいは消費税率引き上げの国内経済への影響等についても十分注視していく必要があり、景気動向は予断を許さない環境下にあります。

当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、空室率の低下傾向が定着しつつあり、賃料の本格的な上昇が期待されるとともに、分譲住宅市場については、都心部においては引き続き堅調な需要が見込まれるものの、郊外はやや弱含みに推移する可能性があり、二極化傾向の進展が懸念されます。

このような事業環境のもと、ビル事業におきましては、グループ一体となって一層の現場力強化に取り組み、住宅事業におきましては、製・販・管の一体化を具体的な顧客サービスの向上に繋げるとともに、ブリリアのリノベーション事業(中古マンションの買取再販事業等)の強化等、新しい取り組みについても積極的に推進してまいります。また、その他事業におきましては、駐車場事業、余暇事業、シニア事業等につきましては、顧客サービスの向上を軸として積極的に拡大していく方針であり、不動産流通事業につきましては、グループシナジーを活用したアセットソリューション機能の更なる向上を目指し邁進してまいります。

2016年度は中期経営計画の2年目にあたりますが、これからも引き続き街づくりを通じた社会貢献を進めるとともに、多様な事業の有機的な協働によりソフトやサービスの強化を図り、「驚きの価値提供」を通じて、お客様に「次も選ばれる」企業グループを目指して鋭意取り組んでまいります。

 

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 不動産市況の動向

 今後、景気の動向により、賃貸オフィス市場において企業の業績悪化に伴うオフィスニーズの減退が起こる場合、また、分譲住宅市場において顧客の購買意欲の低下が起こる場合等、不動産市況の動向が、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(2) 当社事業に関連する法制、税制等の制定・改定等

 当社グループの事業は、各種法令のほか、各自治体が制定した条例、税制等の規制並びに影響を受けているため、将来において、これらの関連法制、条例、税制等が制定・改廃された場合には、新たな義務の発生、費用負担の増加、権利の制限等の発生により、当社グループの事業展開、業績や財政状態、所有資産の価値に影響を及ぼす可能性があります。また、税務申告において税務当局との見解の相違が生じた場合は、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 金利の変動

 当社グループは、有利子負債の99%を長期による借入とする安定的な資金調達を行うとともに、ほぼ全ての長期借入について金利を固定化し、金利変動による影響を極力少なくするべく対処しておりますが、金利が上昇した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。

 

(4) 天災等の発生

 地震・風水害等の天災地変、戦争、暴動、テロ、その他突発的な事故の発生により、当社グループ所有資産の価値低下や当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 株式市場の動向

 当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。

 

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 財政状態の分析

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は1兆2,971億1千2百万円となり、前連結会計年度末比で223億5千2百万円の減少となりました。これは、現金及び預金の減少、連結の範囲の変更による固定資産の減少並びに販売用不動産の取得等によるものであります。

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は9,845億8千1百万円となり、前連結会計年度末比で290億7千5百万円の減少となりました。これは、有利子負債の減少並びに不動産特定共同事業出資受入金の増加等によるものであります。有利子負債残高(リース債務除く)は7,073億5千6百万円(前期末比409億1千6百万円の減少)となっております。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は3,125億3千万円となり、前連結会計年度末比で67億2千2百万円の増加となりました。これは、当期純利益のほか、土地再評価差額金の増加及び少数株主持分の減少等によるものであります。

 

(2) 経営成績の分析

(営業収益・営業利益・経常利益)

 当連結会計年度においては、収益性の高い大規模マンションプロジェクトの計上やアセットサービス事業における物件売却等により、営業収益は前連結会計年度比229億6千2百万円増の2,600億1千2百万円、営業利益は前連結会計年度比38億7千9百万円増の344億3千9百万円となりました。また、金融コストの低減等により、経常利益は前連結会計年度比74億7千9百万円増の247億9千6百万円となりました。

(特別損益)

 特別損益では、特別利益において前連結会計年度に計上した「大手町タワー」の一部売却に伴う固定資産売却益が剥落したこと等により、前連結会計年度比で大きく減少しました。特別損失においては、賃貸ビル及びゴルフ場施設等に係る減損損失を計上しました。

 この結果、当期純利益は前連結会計年度比665億8千4百万円減の163億5千9百万円となりました。

 各セグメントの業績概要については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。

 

(3) キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。