(1) 業績
当連結会計年度のわが国経済は、政府による経済政策や日本銀行による金融緩和などにより円安・株高傾向が継続し、企業収益に改善が見られ、基調としては緩やかな回復が継続した一方で、消費税増税後の個人消費の回復について、一部弱さが見られました。
当不動産業界におきましては、賃貸オフィス市場については、都心部において空室率が一段と低下し、一部では賃料水準の上昇が見られるなど、回復への動きが継続いたしました。分譲住宅市場については、建築費高騰等の懸念材料があるものの、低金利の継続等もあり、契約率は引き続き堅調に推移いたしました。また、不動産投資市場については、良好な資金調達環境を背景とした積極的な物件取引が続くなど、活発に推移いたしました。
このような事業環境のもと、当連結会計年度における当社グループの連結業績につきましては、当連結会計年度よりSPCを連結子会社化したことに伴い、ビル等事業における賃貸収益が大幅に増加したこと等により、営業収益は2,370億4千9百万円(前期2,200億2千6百万円、前期比7.7%増)、営業利益は305億5千9百万円(前期293億6千1百万円、前期比4.1%増)と、前連結会計年度比で増収増益となりました。また、SPCの連結子会社化による金融コストの増加等により、経常利益は173億1千7百万円(前期219億5千9百万円、前期比21.1%減)となった一方、当期純利益については、ビル等事業において「大手町タワー」(東京都千代田区)や「中野セントラルパーク」(東京都中野区)の一部売却に伴う固定資産売却益を計上したこと等により、829億4千4百万円(前期101億2千1百万円、前期比719.5%増)となりました。
なお、当連結会計年度から報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度の実績値については新セグメントに組み替えて表示しております。
各セグメントの業績の概況は以下の通りであります。
① ビル等事業
ビル等事業においては、当社が提供する施設をご利用いただくお客様に「安全・安心・快適」を感じていただくため、「安全水準の向上」「ソフトサービスの向上」に注力するとともに、大規模物件等の稼働率向上を図り、収益基盤の強化に取り組んでまいりました。
当連結会計年度においては、連結子会社化したSPCが保有する「大手町タワー」、「東京スクエアガーデン」(東京都中央区)が通期稼働したことに伴い賃貸収益が増加したこと及び販売用不動産を売却したこと等により、大幅な増収増益となりました。
この結果、営業収益は1,092億8千3百万円(前期664億7千5百万円、前期比64.4%増)、営業利益は294億4千4百万円(前期254億9千3百万円、前期比15.5%増)となりました。
なお、当連結会計年度より持分法適用関連会社化したSPCから「グランフロント大阪」(大阪市北区)を取得しております。
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||||
数量等 |
営業収益 (百万円) |
数量等 |
営業収益 (百万円) |
|||
ビル等賃貸 |
建物賃貸面積 |
437,958㎡ |
31,851 |
建物賃貸面積 |
695,060㎡ |
62,043 |
(うち転貸面積 |
124,359㎡) |
(うち転貸面積 |
104,236㎡) |
|||
不動産売上 |
|
1件 |
800 |
|
5件 |
22,983 |
管理受託等 |
- |
21,899 |
- |
24,136 |
||
SPC配当収益 |
- |
11,924 |
- |
119 |
||
営業収益計 |
- |
66,475 |
- |
109,283 |
||
営業利益 |
- |
25,493 |
- |
29,444 |
② 住宅事業
住宅事業においては、分譲マンションブランド「Brillia(ブリリア)」のブランドアイデンティティである「洗練された住まい」「住んでからの安心」の実現に向け、厳選した用地取得とお客様志向の商品企画を徹底するとともに、当社分譲住宅に関する様々なお問い合わせを24時間365日受け付けるグループ総合窓口、「Brilliaオーナーズダイヤル」を開設するなど、お客様満足度の向上に資するサービスの提供にも注力してまいりました。
当連結会計年度においては、マンション分譲で「Brillia City 横浜磯子」(横浜市磯子区)、「Brillia ときわ台 Solaie Residence」(東京都板橋区)、「Brillia 本郷三丁目」(東京都文京区)等を売上に計上いたしましたが、年間売上計上戸数が前連結会計年度に比べ減少したこと等により減収減益となりました。
この結果、営業収益は876億7千4百万円(前期1,135億2千3百万円、前期比22.8%減)、営業利益は38億4千1百万円(前期76億6千7百万円、前期比49.9%減)となりました。
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||||
数量等 |
営業収益 (百万円) |
数量等 |
営業収益 (百万円) |
|||
住宅分譲 |
|
1,914戸 |
92,951 |
|
1,376戸 |
65,573 |
住宅賃貸 |
建物賃貸面積 |
162,582㎡ |
6,267 |
建物賃貸面積 |
164,921㎡ |
6,256 |
(うち転貸面積 |
45,520㎡) |
(うち転貸面積 |
47,531㎡) |
|||
マンション管理受託 |
管理戸数 |
46,889戸 |
5,723 |
管理戸数 |
51,140戸 |
6,142 |
その他 |
- |
8,582 |
- |
9,702 |
||
営業収益計 |
- |
113,523 |
- |
87,674 |
||
営業利益 |
- |
7,667 |
- |
3,841 |
③ その他事業
その他事業においては、時間貸駐車場事業において積極的に新規駐車場の開設を行ったほか、余暇事業においてスーパー銭湯を運営するここち湯㈱を取得いたしました。また、不動産流通事業において法人仲介では、企業が利用・所有する不動産に対する有効活用等の提案営業(CRE営業)を強化し、個人仲介では需要拡大が見込まれる湾岸エリアに新たな拠点を設ける等、仲介事業の拡大に努めてまいりました。なお、前連結会計年度にリフォーム事業を分割し、ビル等事業及び住宅事業に統合いたしました。
当連結会計年度においては、不動産流通事業及び時間貸駐車場事業において好調に推移したこと等により、増益となりました。
これらの結果、営業収益は400億9千1百万円(前期400億2千7百万円、前期比0.2%増)、営業利益は51億2千3百万円(前期36億8千2百万円、前期比39.1%増)となりました。
なお、海外事業において従来の中国事業に加え、成長著しいアジア新興国における事業機会の模索を目的として、新たにシンガポールにTokyo Tatemono Asia Pte. Ltd.を設立いたしました。
区分 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||||
数量等 |
営業収益 (百万円) |
数量等 |
営業収益 (百万円) |
|||
不動産流通事業 |
- |
10,210 |
- |
12,107 |
||
余暇事業 |
- |
11,971 |
- |
13,544 |
||
リフォーム事業 |
- |
1,852 |
- |
- |
||
時間貸駐車場事業 |
車室数 |
45,423室 |
12,586 |
車室数 |
46,246室 |
13,072 |
その他 |
- |
3,406 |
- |
1,367 |
||
営業収益計 |
- |
40,027 |
- |
40,091 |
||
営業利益 |
- |
3,682 |
- |
5,123 |
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、当連結会計年度よりSPCを連結子会社化したことにより593億7千9百万円増加、営業活動により47億9千万円減少、投資活動により2,577億9千8百万円増加、財務活動により2,777億8千7百万円減少したこと等により、前連結会計年度末比で346億3千5百万円増加し、869億7百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は以下の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の減少は、47億9千万円(前期比269億2千5百万円減少)となりました。これは主に、たな卸資産の増加、法人税等の支払いによる資金の減少があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の増加は、2,577億9千8百万円(前期比2,207億1千4百万円増加)となりました。これは主に、固定資産の取得による資金の減少があった一方、固定資産の売却収入、出資金の売却収入による資金の増加があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は、2,777億8千7百万円(前期比2,306億6千7百万円減少)となりました。これは主に、有利子負債の返済、連結子会社化したSPCが行った少数株主への配当金の支払いや払戻しによる資金の減少があったことによるものであります。
生産、受注及び販売の状況については、「1 業績等の概要」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
当社グループは、2012年から2014年を最終年度とするグループ中期経営計画「Re-Start~自己変革への挑戦~」を推進し、「選択と集中の構造改革」と「バリューチェーンの最適化」を軸とした変革を図ることで、収益力と財務体質を強化し、将来の飛躍に向けた足場固めを図ってまいりました。
ビル等事業では、長期に亘り事業を推進してまいりました大規模プロジェクトの「大手町タワー」、「東京スクエアガーデン」、「中野セントラルパーク」等を計画通り竣工・稼働させ、資産ポートフォリオの強化を実現するとともに、住宅事業では、多摩ニュータウンにおける日本最大規模の建替えプロジェクトの実現など、高度なノウハウを活かした事業に注力したほか、M&A等も活用し、シニア事業への本格的な取り組みを開始いたしました。
この結果、本計画の定量目標につきましては、財務体質の強化を優先したことにより、連結D/Eレシオは目標を達成いたしましたが、連結営業利益は目標を下回ることとなり、今後更なる収益力の強化が必要と認識しております。
|
目標 |
実績 |
連結営業利益 |
350億円 |
305億円 |
連結D/Eレシオ |
3倍 |
2.6倍 |
今後の我が国は、人口の減少・シニアマーケットの拡大とともに、ソフト・サービスに対する要求水準の高度化・多様化が見込まれます。
また、当不動産業界におきましては、不動産ストック市場の増加、不動産投資市場における投資対象アセットの多様化が見込まれる一方、用地取得の競争激化に伴う地価高騰や建築費の高止まり等が懸念されます。
このような事業環境の中、当社グループは、2015年度から2019年度の5年間を対象とする、新たなグループ中期経営計画「次も選ばれる東京建物グループへ~革新的なグループシナジーで驚きの価値提供を~」を策定いたしました。お客様から“次も選ばれる”ため、当社グループの多様な事業の有機的な協働により、ハード面のクオリティだけではなく、上質なソフトやサービスを追求した事業展開を行うことで、“お客様が驚きを感じられる魅力あふれる価値”の提供を行います。また、定量目標として、連結営業利益500億円を目指してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 不動産市況の動向
今後、景気の動向により、賃貸オフィス市場において企業の業績悪化に伴うオフィスニーズの減退が起こる場合、また、分譲住宅市場において顧客の購買意欲の低下が起こる場合等、不動産市況の動向が、当社グループの事業展開、業績等に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。
(2) 当社事業に関連する法制、税制等の制定・改定等
当社グループの事業は、各種法令のほか、各自治体が制定した条例、税制等の規制並びに影響を受けているため、将来において、これらの関連法制、条例、税制等が制定・改廃された場合には、新たな義務の発生、費用負担の増加、権利の制限等の発生により、当社グループの事業展開、業績や財政状態、所有資産の価値に影響を及ぼす可能性があります。また、税務申告において税務当局との見解の相違が生じた場合は、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金利の変動
当社グループは、有利子負債の99%を長期による借入とする安定的な資金調達を行うとともに、ほぼ全ての長期借入について金利を固定化し、金利変動による影響を極力少なくするべく対処しておりますが、金利が上昇した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼし、また当社グループ所有資産の価値低下につながる可能性があります。
(4) 天災等の発生
地震・風水害等の天災地変、戦争、暴動、テロ、その他突発的な事故の発生により、当社グループ所有資産の価値低下や当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 株式市場の動向
当社グループは、市場性のある株式を保有しておりますが、株式市場が下落し、保有株式の価値が大幅に下落した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
該当事項はありません。
該当事項はありません。
文中における将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は1兆3,194億6千5百万円となり、前連結会計年度末比で3,813億3百万円の増加となりました。これは、SPCを連結子会社化したことに伴う有形固定資産の増加等によるものであります。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は1兆136億5千7百万円となり、前連結会計年度末比で3,377億7千2百万円の増加となりました。これは、SPCを連結子会社化したことに伴う有利子負債の増加等によるものであります。有利子負債残高(リース債務除く)は7,482億7千3百万円(前期末比3,135億1千万円の増加)となっております。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は3,058億8百万円となり、前連結会計年度末比で435億3千1百万円の増加となりました。これは、当期純利益のほか、SPCを連結子会社化したこと等によるものであります。
(2) 経営成績の分析
(営業収益・営業利益・経常利益)
前連結会計年度に比べてマンションの売上計上戸数は減少したものの、当連結会計年度より連結子会社化したSPC(以下「連結対象SPC」という。)が保有する「大手町タワー」や「東京スクエアガーデン」が通期稼働したこと等により賃貸収益が大幅に増加するとともに、当社が保有する販売用のオフィスビル等を売却したことにより不動産売上高が増加いたしました。その一方で、連結対象SPCの借入金や社債に係る支払利息及び借入手数料等の金融コストが増加したこと等により、営業収益は前連結会計年度比170億2千2百万円増の2,370億4千9百万円、営業利益は前連結会計年度比11億9千7百万円増の305億5千9百万円、経常利益は前連結会計年度比46億4千1百万円減の173億1千7百万円となりました。
(特別損益)
特別損益では、特別利益に連結対象SPCが「大手町タワー」や「中野セントラルパーク」の一部を売却したことに伴う固定資産売却益及び連結対象SPCの少数株主から出資持分を取得したことに伴う負ののれん発生益等を計上し、特別損失に賃貸マンション及び商業施設等に係る減損損失並びに連結対象SPCが借入金を期限前に返済したことで発生した借入金繰上返済費用を計上いたしました。
この結果、当期純利益は前連結会計年度比728億2千2百万円増の829億4千4百万円となりました。
各セグメントの業績概要については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要」をご参照下さい。