第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループを取り巻く事業環境は、映像事業については、ミラーレスカメラ市場は拡大するものの、デジタル一眼レフカメラ市場は引き続き縮小し、デジタルカメラ市場全体としても縮小する見通しです。精機事業については、今期はFPD装置事業において、10.5世代パネル向けの活発な設備投資が見込まれますが、投資一巡の影響もあり、今後は市場動向を慎重に見極める必要があります。ヘルスケア事業については、注力している再生医療関連や眼科診断分野は、将来成長が見込まれるものの、収益貢献にはまだ時間を要すると考えております。産業機器・その他の事業については、今後の成長市場領域の見極めを行ってまいります。

このような環境下、引き続き2016年11月に発表した構造改革プランに基づき、売上成長から収益力強化への戦略転換を図るため、以下の方針に従い、各施策に取り組んでいきます。

■ 全社で収益性の改善・向上を目的とした「選択と集中」を実施
■ 開発・販売・生産体制をグローバル規模で最適化
■ 事業の構造改革に合わせた本社機構スリム化

あわせて、持続的に高い企業価値を創造する企業へ生まれ変わるため、以下の抜本的な体質改善に継続して取り組みます。

■ ポートフォリオ経営の推進
■ 資本効率を重視した経営指標に基づく事業運営と現場への展開
■ コーポレートガバナンスの変革

なお、成長戦略を織り込んだ新中期経営計画は、構造改革終了後の2019年4月のスタートを目指して、改めて発表する予定です。

一方、環境経営につきましては、数十年先の未来を見据え、世界の状況や、限りある資源を使用して製品を製造・販売しているという事業の性質から、2016年4月、「低炭素社会の実現」「資源循環型社会の実現」「健康で安全な社会の実現」の3つの柱を「ニコン環境長期ビジョン」として策定しました。そしてその実現に向け、例えば「サプライチェーン全体で、CO2排出量を2013年度比26%削減する」といった2030年までに取り組むことを「ニコン環境中期目標」に定め、達成に向けて様々な施策を展開しています。

当社グループの環境への取り組みの詳細はサステナビリティ報告書をご参照ください。

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの業績は、今後起こり得るさまざまな要因による大きな影響を受ける可能性があります。以下には、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 事業の特殊な環境・事情

映像事業の主要製品であるデジタルカメラの市場は、地域毎の景気変動の影響を受け、大きく変動する可能性があります。また、他のデジタル機器等、競合製品の市場拡大によりデジタルカメラの需要がさらに減少する可能性があります。

精機事業が扱うFPD露光装置の需要は、フラットパネル市場の動向に依存していますが、フラットパネルが供給過剰となった場合には価格下落が発生し、急激に露光装置の需要も落ち込む可能性があります。また、半導体露光装置の対象市場としている半導体産業は、ビジネスサイクルの変動が大きい産業として特徴付けられております。近年最終製品の多様化によってその傾向は弱まってはいるものの、市場において半導体デバイスが供給過剰となった際には、半導体メーカーの設備投資抑制による露光装置需要の減少という事態が生じるリスクがあり、その時期、期間、変動幅の正確な予測は困難であります。これに加え、当業界の顧客行動の特徴として、発注後も繰延べやキャンセルを行うといったことがあり、需要の減退期にはたな卸資産増となりやすい構造を抱えております。

ヘルスケア事業が扱う生物顕微鏡の需要は、官公庁の研究開発予算や民間企業の研究開発の動向により影響を受けやすくなっております。

産業機器・その他の事業のうちの産業機器事業は半導体・電気・電子部品・自動車・工作機械等さまざまな産業の景気、設備動向に影響を受けやすい構造となっております。

こうした事業環境の変化は、結果として当社グループの収益と財政状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。 

 

② 調達

当社グループは、それぞれの事業において、原材料、基幹部品、生産委託した製品完成品等を特定の仕入先に依存している場合があります。当社グループではこうした特定仕入先と密接な関係を保ちながら、安定的な調達に努めておりますが、大地震等の天災地変、品質問題、特定仕入先の政策変更や倒産・経営破綻等により調達に重大な支障をきたした場合や仕入価格が高騰した場合には、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、奴隷労働や紛争鉱物等の人権にかかわる社会的課題への対応や環境に配慮した企業活動など、ESGの観点で仕入先に対してもCSR調達の推進・徹底を図っておりますが、仕入先における不備により、調達に支障をきたした場合、当社グループの事業が影響を受けるだけでなく、レピュテーションに関しても影響を及ぼし、結果として当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定顧客への依存

精機事業の顧客であるフラットパネル業界では、各社の競争が激しさを増しており、業界再編の動きも現れています。また、半導体業界では、拡大する設備投資規模と多彩化する技術開発に対応するため、合併・提携等の動きが進んでおります。さらに、保有する技術力や製造するデバイスの特性によって、各社における競争状況の優劣が明確になり、淘汰が進み、特定の顧客への依存度が高くなりつつあります。このような状況において、当社グループの主要顧客が設備投資計画を変更し、急激に発注量を減少させたり競合他社へ転注させた場合、または、何らかの事情により顧客の債務支払いに支障が生じた場合には、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 新製品開発力及び開発投資負担

当社グループの主力事業は厳しい競争下にあり、高度な研究開発の継続による新製品の開発が常に求められております。そのため、当社グループの収益の変動にかかわらず、製品開発のための投資を常に継続する必要があります。

映像事業においては、デジタルカメラを取り巻く技術的環境の進歩は速く、高度化・多様化も進み、新技術・新製品の開発には継続した投資が必要となります。しかし、投資の成果が十分に上がらず新製品、次世代技術の開発や市場投入がタイムリーに行えない場合や、より高機能なデジタル機器への急激な需要シフト等の変化がある場合、収益が減少する可能性があります。また、競合他社に新技術の特許を取得されることにより、生産・販売の停止や、ロイヤリティー支払いによる利益率低下の危険性があり、収益に影響が生じる可能性があります。

精機事業においては、新製品、次世代技術の開発や市場投入がタイムリーに行えない場合や当社グループが開発した技術が市場に受け入れられなかった場合、収益が減少する可能性があります。また、競合他社に新技術の特許を取得されることにより、生産・販売の停止や、ロイヤリティー支払いによる利益率低下の危険性があり、あるいは競合他社装置の新技術採用が、当社装置価格の低下を招くといった可能性もあります。FPD露光装置において新たな企業参入や新技術の導入があった場合、さらなる競争激化が予想され、収益に影響が生じる可能性があります。

また、ヘルスケア事業においては、新規分野への先行投資を継続的に行う必要がありますが、成果が十分に上がらない場合や、開発した技術・製品が収益の向上に結びつかない可能性があります。

 

⑤ 価格競争の激化

映像事業の主要製品であるデジタルカメラは、市場の成熟化に伴い、競合他社が低価格攻勢に出てくる可能性があります。

FPD露光装置及び半導体露光装置においては、先端技術開発が進む一方で競合他社が低価格攻勢に出てくる可能性があります。

 

⑥ 海外での事業展開

当社グループの生産及び販売活動は、その多くを日本国外に依存しております。そのため、事業展開する国内外において、輸出入に関するさまざまな法律・税制及び規制の変更による影響を受けます。さらに海外での事業展開においては、政治体制・経済環境の変動、暴動・テロ・戦争・感染症等による社会の混乱、災害等による水・電力・通信網等のインフラストラクチャーや物流機能の障害、人材の採用困難及び流出等のリスクにより、事業活動に大きな障害や損失が生じる可能性があります。これらが生産や販売の制約となり、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 為替相場の変動によるリスク

当社グループは、売上げに占める海外売上収益比率が85.7%と高く、海外市場への依存が大きくなっております。このため、当社グループでは売上規模と販売地域に応じた適切な為替ヘッジを行っておりますが、外国為替相場が急激または大幅に変動した場合は、当社グループの外貨建てで取引されている製品・サービスの売上げと収益並びに海外連結子会社の損益及び資産・負債の日本円換算額に影響を与えます。

 

 

⑧ M&A、業務提携、戦略的投資に関するリスク

当社グループは他社と業務提携、合弁事業、戦略的投資といった形態で関係を構築して事業を行っています。また、他社を買収することもあります。

これらは事業ポートフォリオの最適化、事業基盤の拡大や技術開発のために重要であり、当社はそれらの会社と目標を共有し、その達成に向けて協力するよう努めております。

しかしながら、そうした協力体制が構築できない場合、また、構築したとしても事業環境や競合他社の動向等により所期の成果が十分もたらされない可能性があります。また、協力体制の構築や業務統合に計画以上の時間を要することもあります。その場合、収益と財政状況に悪影響を及ぼしたり、投資価値が毀損されたりする可能性があります。

また、適切な買収や出資の対象会社を見つけたとしても、契約締結に至らない場合も収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 資金調達リスク

当社グループは、資金需要に応じ、長短バランスや直接間接金融のバランスを考慮して資金調達を実施しておりますが、金融市場環境が悪化した場合は、資金調達の際に金利上昇や資金調達手段が限定される等の影響を受ける可能性があります。また、業績の悪化により当社社債等の格付けが下方修正された場合にも、同様に当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 知的財産権の保護及び訴訟に関するリスク

当社グループは、製品開発に伴って多くの知的財産権を取得し、これを保有しております。場合によっては、その知的財産権を他社にライセンス供与しております。これら知的財産権の維持・保護については最善の努力をしておりますが、当社グループの知的財産権を他社が無断使用すること等に起因して提訴に至った場合、大きな訴訟費用が発生する可能性があります。

また、当社グループは、第三者の知的財産権を侵害しないよう十分な配慮のもとに製品開発を行っておりますが、他社、個人等より、その知的財産権を侵害したとして提訴される可能性もあります。これらの事態が発生した場合には、当社グループの収益と財政状況に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ キーパーソンの確保と人材・ノウハウの流出

当社グループは、高度な技術等専門知識及び能力を有する社員によって支えられており、市場での激しい競争に打ち克つにはこうした人材の確保がますます重要になっております。しかしながら、何らかの要因によりさらなる雇用流動化が生じた場合は、これらの主要な人材が退職し、その知識・ノウハウが社外に流出する可能性があります。こうした知識・ノウハウの流出の影響を最小限にするべく、社内における固有技術・技能の伝承と標準化・共有化を推進しております。また、海外においても、優秀な現地人材の確保が重要でありますが、特に労働流動性が高い地域における人材流出の危険性は高いと考えられます。

当社グループの事業においては技術革新の速度が早く、人材育成のためには長期にわたる教育と訓練が必須であり、主要な人材流出の補充が困難な場合も考えられ、結果として当社グループの将来の成長、収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑫ 情報の流出

当社グループは、技術情報等の重要な情報や取引先の企業情報並びに多くの顧客またはその他関係者の個人情報を保有しております。これらの情報への外部からのアクセス制御の徹底や保管セキュリティレベルの向上を図るとともに、情報取り扱いに関する社内規程の整備、従業員教育等を実施しております。しかしながら、万一、技術情報をはじめとした会社の機密情報が流出した場合、当社グループの企業価値を毀損する可能性があり、また企業情報及び個人情報が流出した場合には、当社グループの信頼を毀損するだけでなく、流出の影響を受けた取引先、顧客、従業員またはその他関係者から損害賠償を請求される可能性があります。そのような場合、信用回復のための諸活動をはじめ、対象企業や個人への補償、再発防止措置の実施等が必要になり、そのために多大なコストを要し、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

⑬ 製品及びサービスにおける欠陥の発生

当社グループの製品及びサービスについては、国内外のグループ会社及び生産委託先にて高度の品質保証体制を確立し、顧客に対して高精度の機能を高い信頼性をもって提供しております。しかしながら、万一、製品又はサービスに欠陥が発生したことにより顧客に損失をもたらした場合は、修理費用、賠償責任、リコール、製品等の廃棄等による多額のコスト発生や、ブランドに対する信頼感の低下により当社グループ製品及びサービスに対する顧客の購買意欲の低減を招くおそれがあり、収益と財政状況に悪影響を与える可能性があります。

 

⑭ 自然災害等の発生

大地震・火災・洪水や渇水等の自然災害(異常気象、気象変動に起因するものを含む)や新型インフルエンザ等感染症の拡大への対策には充分に注意を払い、BCP(事業継続計画)を策定しておりますが、当社グループの開発・製造拠点並びに調達先等に壊滅的な損害が生じた場合、操業が中断し、生産や出荷に遅延が生じるおそれがあります。これにより、売上げが減少し、事業の復旧に多大な費用が生じた場合、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑮ ブランド価値の毀損

「ニコンブランド」は、長年に亘る誠実な企業経営とお客様の信頼に応えた製品・サービスの提供により培ってきたものであり、その価値の保護、増大に十分努めております。しかしながら、当社グループの技術や製品・サービスに関する否定的な評判・評価が世間に流布されることによって信用が低下し、ニコンブランドの価値が毀損された場合、収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑯ 環境規制

当社グループは、エネルギー、温室効果ガス、大気、水、有害化学物質、製品や電池、容器包装材のリサイクル、廃棄物などさまざまな環境に関する法令及び規制等の適用を受けています。法規制遵守のために必要な処置を講じていますが、将来は、これらがさらに強化される可能性や、または、過去の環境責任が発生する可能性があります。そのための対応費用が多額となった場合には、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

当連結会計年度の経済情勢は、米国、欧州ともに底堅い個人消費などに支えられ回復傾向が継続し、中国も持ち直しの動きが続きました。また、我が国経済も世界経済の成長と内需に支えられて緩やかな拡大基調にありました。

事業別では、映像事業においては、レンズ交換式デジタルカメラ市場及びコンパクトデジタルカメラ市場は縮小傾向が続きました。精機事業においては、FPD関連分野及び半導体関連分野ともに、設備投資は好調に推移しました。ヘルスケア事業においては、バイオサイエンス分野は海外の政府予算執行遅延の影響等により低調に推移した一方、眼科診断分野では網膜画像診断機器市場が堅調に推移しました。

 

当社グループは、当連結会計年度を2016年11月に発表した構造改革の「第2フェーズ」と位置付け、「映像事業の収益モデル強化」、「半導体装置事業の黒字化実現」、「経営体質改善への本格的な着手」の3つを経営方針とし、各施策に取り組んできました。映像事業では、高付加価値製品への選択と集中を進めるとともに、開発・生産・販売体制の最適化に取り組みました。半導体装置事業では、事業戦略の抜本的な見直しを実施し、黒字体質を定着させるため事業基盤を強化しました。また、全社的な施策として、ポートフォリオ経営を始動するとともに、ROE/ROICといった経営指標を軸とした経営体質と管理プロセスの見直しを進め、ガバナンス体制の強化にも努めました。

 これらの結果、当社グループの連結業績は、売上収益は7,170億78百万円、前期比321億96百万円(4.3%)の減少となりましたが、構造改革関連費用の減少等により、営業利益は562億36百万円、前期比554億63百万円(7,166.6%)の増加となり、親会社の所有者に帰属する当期利益は347億72百万円、前期比308億5百万円776.6%)の増加となりました。

 

事業のセグメント別の業績は次のとおりであります。

なお、第2四半期連結累計期間より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」をご参照ください。前連結会計年度との比較にあたっては、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えて行なっております。

 

① 映像事業

レンズ交換式デジタルカメラは、全体での販売台数は減少したものの、高精細な描写と高速連続撮影を両立させたデジタル一眼レフカメラ「D850」が好調に推移し、高級機の売上げを大きく伸ばしました。

コンパクトデジタルカメラは、高性能アウトドアモデル「COOLPIX W300」など高付加価値製品の販売に注力しましたが、市場が縮小するなか、販売台数は大幅に減少しました。

これらの結果、当事業の売上収益は3,607億3百万円前期比5.8%の減少となりましたが、選択と集中への事業戦略転換や生産子会社Nikon Imaging (China) Co., Ltd.の操業停止など構造改革による収益性改善に努めた結果、営業利益は302億22百万円前期比76.2%の増加となりました。

 
② 精機事業

FPD露光装置分野では、中小型パネル用装置の販売台数減少により減収減益となりましたが、4Kテレビや今後普及が期待される8Kテレビ向けの液晶パネル、有機ELパネル等の量産に適した第10.5世代プレートサイズ対応装置「FX-103S」を2018年2月に発表し、計画どおり販売しました。

半導体露光装置分野では、構造改革による効率化と収益重視の運営方針への転換を進め、計画どおり黒字化を達成しました。

これらの結果、当事業の売上収益は2,263億34百万円前期比8.7%の減少となりましたが、構造改革関連費用を計上した前期との比較では、営業利益は533億93百万円前期比296.6%の増加となりました。

 

 

③ ヘルスケア事業

バイオサイエンス分野では、海外における政府予算執行遅延の影響等により減収となりました。コストダウン等の効果もあり生物顕微鏡は一定の収益性を維持しましたが、新事業立ち上げ費用の増加等により減益となりました。

眼科診断分野では、世界的に堅調な市況の下、販売強化策を講じたことにより増収となりましたが、新事業への先行投資の影響により、減益となりました。

これらの結果、当事業の売上収益は568億18百万円前期比1.8%の増加となり、営業損失は32億63百万円前期は6億60百万円の営業損失)となりました。

なお、当事業においては、米国のAthersys, Inc.と、日本における脳梗塞の治療を目的に治験が進められている体性幹細胞再生医薬品MultiStemの商用化に向けた受託生産契約を締結したほか、米国のBerkeley Lights, Inc.と細胞関連分野の強化に向けた戦略的な業務提携を行いました。

※:MultiStemは、Athersys, Inc.による米国及びその他の国における登録商標又は商標です。

 

④ 産業機器・その他

産業機器事業では、世界的な市況の回復を受け、CNC画像測定システム及びX線検査装置を中心に増収となりました。

カスタムプロダクツ事業では、固体レーザーが減収となりましたが、光学部品と特注機器が増収となりました。

ガラス事業では、FPDフォトマスク基板や光学素材の拡販を進め、増収となりました。

この結果、これらの事業の売上収益は732億22百万円前期比17.3%の増加となり、営業利益は50億26百万円前期比35.1%の増加となりました。

なお、構造改革の施策の一環として製品群の戦略的な見直しを行い、イタリアのASF Metrology s.r.l.にCMM(Coordinate Measuring Machines:接触式三次元測定機)事業を譲渡しました。

 

(注) 事業別の営業損益には、当社グループ内取引において生じた損益を含んでおります。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、国内の希望退職や中国の生産子会社の操業停止による割増退職金等の支払があった一方、税引前利益562億57百万円の計上に加え、高水準なFPD露光装置の受注により前受金が659億70百万円増加したことにより1,250億82百万円の収入(前期は973億42百万円の収入)となりました。

当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出により348億8百万円の支出(前期は406億93百万円の支出)となりました。

当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、主に2018年1月に償還期限を迎えた第18回無担保社債の償還や配当金の支払により199億70百万円の支出(前期は155億22百万円の収入)となりました。

また、現金及び現金同等物に係る換算差額は9億13百万円の減少となりました。
 この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ693億92百万円増加し、3,884億38百万円となりました。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

(百万円)

前期比(%)

映像事業

231,939

△12.3

精機事業

125,601

△0.3

ヘルスケア事業

27,642

△12.9

産業機器・その他

47,611

13.1

合計

432,792

△6.8

 

(注) 金額は製造者販売価格によって算出し、付属品仕入額を含み、消費税等は含んでおりません。

 

 

(2) 受注状況

当社グループは見込生産を主としておりますので記載を省略しております。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2017年4月1日

至 2018年3月31日)

(百万円)

前期比(%)

映像事業

360,703

△5.8

精機事業

226,334

△8.7

ヘルスケア事業

56,818

1.8

産業機器・その他

73,222

17.3

合計

717,078

△4.3

 

(注) 金額には、消費税等は含んでおりません。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループは、資本市場における財務情報の国際的な比較可能性の向上や、グループ内の会計基準統一による経営基盤の強化を目指し、2017年3月期有価証券報告書における連結財務諸表からIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって採用する重要な会計方針及び見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」をご参照ください。

 

(2) 財政状態の分析

当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末に比べて799億92百万円増加し、1兆983億43百万円となりました。これは主に、現金及び現金同等物が693億92百万円、売上債権及びその他の債権が83億4百万円、棚卸資産が151億53百万円及び非流動資産のその他の金融資産が株式の時価上昇等により64億98百万円それぞれ増加した一方、のれん及び無形資産が67億66百万円、繰延税金資産が95億28百万円それぞれ減少したためです。

当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末に比べて446億1百万円増加し、5,248億2百万円となりました。これは主に、未払法人所得税が80億円及び前受金が652億37百万円それぞれ増加した一方、社債の償還等により流動負債の社債及び借入金が114億1百万円、前連結会計年度末に計上していた希望退職者への退職加算金等に関する未払費用が、当連結会計年度中に支払われたことで、その他の流動負債が173億88百万円それぞれ減少したためです。

当連結会計年度末における資本の残高は、前連結会計年度末に比べて353億91百万円増加し、5,735億41百万円となりました。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により利益剰余金が280億80百万円、在外営業活動体の換算差額の増加や保有する株式の時価上昇等によりその他の資本の構成要素が70億71百万円それぞれ増加したためです。

 

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(3) 経営成績の分析

当連結会計年度における売上収益は7,170億78百万円前連結会計年度は7,492億73百万円)となり、321億96百万円減少しました。これは、主に映像事業において、レンズ交換式デジタルカメラ及びコンパクトデジタルカメラの販売台数が減少、また精機事業のFPD露光装置分野において、中小型パネル用装置の販売台数が減少したことによるものです。

売上原価は4,041億70百万円前連結会計年度は4,431億53百万円)となり、389億83百万円減少しました。これは、主に映像事業及び精機事業のFPD露光装置分野における販売台数が減少したことによるものです。

販売費及び一般管理費は2,486億83百万円前連結会計年度は2,475億48百万円)となり、11億35百万円増加しました。これは、主に広告宣伝費及び販売促進費等の販売経費が減少した一方、減価償却費及び償却費等が増加したことによるものです。

その他営業収益は主に固定資産売却益の増加により1億8百万円増加の37億14百万円となった一方、その他営業費用は主に構造改革関連費用の減少により497億2百万円減少の117億2百万円となりました。

これらの結果、営業利益は554億63百万円増加562億36百万円前連結会計年度は7億74百万円)となりました。

税引前利益は営業利益554億63百万円増加と為替差損の増加などにより金融費用が増加したことから531億90百万円増加562億57百万円前連結会計年度は30億68百万円)となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は法人所得税費用214億22百万円の計上により347億72百万円前連結会計年度は39億67百万円)となりました。なお、今後の事業環境の見通しと当社グループの課題につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」を、またセグメント別の分析は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1)業績」をそれぞれご参照ください。

 

 

以上の記載事項のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月28日)現在において判断したものであります。また、分析に記載した実績値は1百万円未満を四捨五入して記載しております。

 

(注) セグメント別の営業利益は、当グループ内取引において生じた損失額(総額2億81百万円)を含んでおり、また各セグメントに配賦されない全社損失288億59百万円は含んでおりません。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、運転資金や設備投資資金について、現在保有する現金や預金に加え、営業キャッシュ・フローを源泉とした資金で賄うことを原則としております。国内外のグループ会社が保有する資金をグローバル・キャッシュ・マネージメント・システムにより効率的に管理し、各グループ会社の運転資金や設備投資資金のため、グループ内の資金を有効活用しております。

当社グループの資金状況は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しておりますとおり、当連結会計年度における営業活動におけるキャッシュ・フローは1,250億82百万円の収入となり、投資活動におけるキャッシュ・フローは348億8百万円の支出であったため、902億75百万円のプラスのフリー・キャッシュ・フローとなりました。

なお、当連結会計年度後1年間の設備投資計画は300億円を予定しており、主に生産能力の増強と設備の合理化を図るためのものであります。当該設備投資の資金は、主に営業キャッシュ・フローを源泉とした資金の範囲で賄うことを予定しております。設備投資計画の詳細につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」をご参照ください。 

 

(経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報)

  IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、次のとおりであります。

 

当連結会計年度(自 2017年4月1日 至 2018年3月31日)

(A) 無形資産

日本基準においては、研究開発費について、発生時に費用処理しておりましたが、IFRSにおいては一定の要件を満たす開発費について資産計上し、見積耐用年数にわたって償却しております。この結果、当連結会計年度の販売費及び一般管理費がIFRSでは日本基準に比べ、402百万円減少しております。

(B) のれん

日本基準においては、のれんの償却について、償却年数を見積もり、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSにおいては移行日以降の償却を停止しております。この結果、当連結会計年度の販売費及び一般管理費が、IFRSでは日本基準に比べ、2,740百万円減少しております。

 

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループでは、各事業部門の開発担当部門が光学本部、研究開発本部、生産本部と連携しながら研究開発を推進しております。なお、2018年4月1日付で、全社の技術戦略を統括する役員を選任し、中長期計画と連動した技術戦略を立案し、研究開発の全体最適化を図っております。

当社グループは、「光利用技術」と「精密技術」の2つの中核技術を基軸に、デジタル技術や制御技術、情報通信技術など、多彩な技術をクロスオーバーすることで、要素技術開発から商品開発、生産技術開発に至るまで上記体制の下に積極的な研究開発活動に取り組んでおり、当連結会計年度の研究開発投資は607億4百万円でありました。なお、当社グループは開発投資の一部について資産化を行っており、研究開発投資には無形資産に計上された開発費を含んでおります。

当連結会計年度における主な開発状況は次のとおりであります。

 

① 映像事業

レンズ交換式デジタルカメラでは、有効画素数4575万画素と最高約9コマ/秒の高速連写性能を実現した D850 を開発しました。ニコンデジタル一眼レフカメラで初めて採用した裏面照射型CMOSセンサーが入射光を効率的にフォトダイオードに導き、D5 と同じ画像処理エンジン EXPEED5 との連携で、高画素、高速性能とISO64-25600を両立させています。さらに、機構ブレ・シャッター音を一切排除してディテールを余さず捉えることのできるサイレント撮影も可能にしました。また、4K UHD(3840×2160)での動画撮影の実現はもちろん、フルHD動画撮影時にはドラマチックな映像表現が可能となるスローモーション動画をカメラまかせで撮影することができます。

交換レンズでは、ニコンFXフォーマットデジタル一眼レフカメラ対応の超望遠ズームレンズ AF-S NIKKOR 180-400mm f/4E TC1.4 FL ED VR を開発しました。ワイド端180mmから、一眼レフカメラ用NIKKORレンズで初めて搭載した内蔵1.4倍テレコンバーターによる超望遠560mmの焦点距離までを1本でカバーします。光学系には、色収差を効果的に補正する蛍石レンズと8枚のEDレンズを使用して、絞り開放から撮像範囲周辺部まで高い解像力を発揮するとともに、ナノクリスタルコートをはじめとする高性能な低反射コーティングにより、ゴーストやフレアを徹底的に抑えた抜けの良いクリアーな高画質を実現しています。

なお、当事業に係る研究開発投資の金額は234億60百万円であります。

 

② 精機事業

FPD露光装置分野においては、高精細大型パネルの生産に最適な露光装置 FX-103SH/103S を開発しました。
本装置においては、露光シーケンス、キャリブレーションシーケンスを刷新することで、 FX-101S に対して高タクトタイムを達成しています。 FX-103SH においては、FX-86SH2 で開発した独自の解像度向上技術を適用した照明系とマルチレンズシステムを第10.5世代向けに最適化し、さらにマスクたわみやプレート平面度などの誤差を最適に補正する新たなオートフォーカスシステムを搭載しています。これにより、2.2マイクロメートルの高解像度を達成しながら、広い実用焦点深度を確保しました。

半導体露光装置分野においては、お客様のニーズに応えるため、新型投影レンズ、アライメントシステムのマーク検出・計測能力の強化により、装置間重ね合わせ精度(MMO:Mix and Match Overlay)2.3ナノメートル以下、スループット毎時270枚以上(96shots)の生産性を実現したNSR-S631Eに対して、さらなる高精度、高生産性を実現するためのソフトウエア、及びハードウエアの開発を実施しました。

なお、当事業に係る研究開発投資の金額は143億円であります。

 

 

③ ヘルスケア事業

バイオサイエンス分野においては、高解像度での観察を可能にする超解像顕微鏡 N-SIM の後継機種として、 N-SIM S を開発しました。高速駆動デバイスを使用した照明装置により撮像速度を従来の約10倍に向上し、約0.067秒/枚の高速な画像取得によりライブセルの素早い動きを超解像で高速にとらえます。研究用倒立顕微鏡 ECLIPSE Ti2-E をプラットホームにして、長時間の観察でも振動によるブレのない安定的な環境で画像を取得することができます。

眼科診断分野においては、子会社の英国Optos Plcと共に、ニコンの光学技術、特性を活かした超広角眼底撮影(Ultra-widefield)、光干渉断層撮影(Optical Coherence Tomography)の機能を有した網膜画像診断機器の製品開発を加速しました。

なお、当事業に係る研究開発投資の金額は79億51百万円であります。

 

④ 産業機器・その他

産業機器事業においては、多関節アーム型三次元測定機MCAxシリーズ用のハンドヘルドスキャナー ModelMakerH120 を開発しました。ModelMaker H120 は、新開発の光学系を搭載し、秒間取得点数300,000(最大450,000)の高速なスキャンを実現するほか、低ノイズの青色レーザーを搭載し、従来では困難だった詳細な形状取得を行うことができます。また、スキャン中に自動的に表面条件(色及び反射率)の変化をモニターし、レーザー出力とセンサー設定をリアルタイムにコントロールするデータ処理機能 ESP4 を搭載し、部品表面の色や模様を問わず、正確なスキャンを行うことが可能となっています。これにより、生産現場での効率的な3D計測やリバースエンジニアリングに大きく貢献します。

なお、これらの事業に係る研究開発投資の金額は149億92百万円であります。

 

(注) 事業別に記載している研究開発投資の金額には、内部消去額を含んでおります。