第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当連結会計年度の販売台数(小売)は合計で926千台(前年度比△122千台、同△12%)となった。
 日本では、下期回復してきたものの燃費試験関連問題直後の上期の落ち込みが大きく、前年度比22%減の80千台となった。

 北米では、『アウトランダー』の販売が堅調に推移したことにより、前年度比2%増の138千台となった。

 欧州では、経済情勢の厳しいロシアでの落ち込みが続いていることに加え、オランダ等で税制恩典変更の影響から『アウトランダーPHEV』が大きく減ったことなどにより、地域全体で前年度比13%減の179千台となった。

 アジアでは、現地生産化した『アウトランダー』の販売が好調に推移した中国で前年度を上回ったが、アセアンも含めたアジア全体では前年度比2%減少の315千台となった。

その他地域では、資源安の影響が続く中東・中南米が落ち込み、前年度比24%減の214千台となった

 当連結会計年度の売上高は、1兆9,066億円(前年度比△3,612億円、同△16%)となった
 営業利益は、販売台数減少の影響に為替の悪化や市場措置費用の増加も加わったが、コスト低減努力により、51億円(前年度比△1,333億円、同△96%)の黒字を確保した。経常利益は、89億円(前年度比△1,321億円、同△94%)、親会社株主に帰属する当期純利益は、主に燃費試験関連損失として1,655億円を特別損失に計上したことなどから、△1,985億円(前年度比△2,711億円)となった

 

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、営業活動によるキャッシュ・フローは、458億円の支出となった。(前年度は1,977億円の収入)

投資活動によるキャッシュ・フローは、731億円の支出となった。(前年度は172億円の収入)

財務活動によるキャッシュ・フローは、2,104億円の収入となった。(前年度は1,229億円の支出)

その結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は、10月20日の日産自動車株式会社からの第3者割当増資もあり、5,559億円となった。(前年度末残高は4,624億円)

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当連結会計年度における生産実績は次のとおりである。

 

当連結会計年度

数量(台)

前連結会計年度比(%)

国 内

531,471

81.4

海 外

547,875

98.7

   アジア

532,875

108.8

   その他

15,000

62.8

合計

1,079,346

89.4

(注)1. 生産実績は、当社及び連結子会社の完成車(国内はKDを含む)の生産台数を示し、他社へのOEM供給及び共同開発車の当社生産分を含む。

2. 海外生産台数には、従来統計に含めていた中国での現地ブランド車を平成24年4月の統計より含めない。

 

(2)受注状況

 当社は、大口需要等特別の場合を除き、見込生産を行っている。

(3)販売実績

 当連結会計年度における販売実績は、次のとおりである。

 

当連結会計年度

前連結会計年度比(%)

数量(台)

金額(百万円)

数量

金額

国 内

180,588

297,313

73.3

72.0

海 外

926,265

1,609,316

93.2

86.8

   北米

168,684

297,139

109.7

91.5

   欧州

224,656

433,482

96.5

84.2

   アジア

316,700

433,536

97.6

89.8

   オセアニア

83,719

202,591

102.7

94.9

   その他

132,506

242,568

65.9

75.9

合計

1,106,853

1,906,632

89.3

84.1

   (注)1. 販売実績は、外部顧客の所在地別の当社及び連結子会社の完成車及びKDパックの卸売り台数を示す。

          2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりである。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

三菱商事株式会社

266,744

11.8

271,865

14.3

        3. 上記金額は、消費税等を含んでいない。

 

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1)経営環境

グローバル化する自動車産業においては、成熟国地域における燃費と排ガス浄化の両立、ハイレベルのIT技術を要する予防安全技術の高度化、コネクティッド・カーのような付加価値に関わる性能の向上が求められており、将来において更なる研究開発の高度化、長期化、開発競争の激化が予想される。

具体的に、環境規制については、成熟国市場・新興国市場を問わず規制の強化が進む流れにあり、当社においても、これら環境規制を充たすための内燃機関車の研究開発や、電気自動車・プラグインハイブリッド車の商品力強化に向けた研究開発費及び設備投資の増加が見込まれる。

また、高度化した予防安全技術やコネクティッド・カーといった領域では、大規模な自動車部品・電機メーカーから高付加価値な部品を購入するために、これまで以上に長い開発期間と大規模購入が必要となる。

 

(2)経営方針及び対処すべき課題等

① 信頼回復への取組み

過去の品質問題に加え、燃費試験における不正行為を行ったことを重く受け止め、内部統制・ガバナンスの抜本的改革・強化に着手した。

まず、コミュニケーションの円滑化や意思決定の迅速化を図るため、旧来のピラミッド型組織を機能軸で再編し、組織のフラット化と階層の簡素化を実施した。また、意思決定の効率化と責任の明確化を目的に、取締役会の権限委譲先を経営会議からCEO に変更し、経営会議をCEO の諮問機関に位置付け、また各階層に対する詳細な権限委譲規定を制定した。さらに、コンプライアンスとオペレーションのリスクを管理し、ガバナンス向上策について定期的に取締役会へ報告を行うグローバルリスクコントロール担当役員を任命した。法令に基づく内部統制の対応を各々強化・効率化するべく、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制はCFO直下のJ-SOX推進会議にて対応し、会社法に基づく内部統制はCEOを委員長とする新たな体制の内部統制委員会にて推進する体制とした。また、平成28年7月1日付で設置した事業構造改革室にて、開発プロセスの見直し等、31項目の再発防止策を着実に実施している。また、不正行為が判明した開発部門を中心に社内の組織・仕組み・文化・技術の改革を柱に据えた抜本的な構造改革「Performance Revolution (PRev)活動」を推進しており、この活動を開発部門以外に広げていく考えである。

今後もコンプライアンスを最優先に考え、一層のガバナンス強化を図り、法令の遵守、業務執行の適正性・効率性の確保等に向けた改善、充実により、お客様や社会からの早期の信頼回復に不断の努力を続けていく所存である。

 

② V字回復に向けて

平成29年度はV字回復を目指し、次期中期経営計画の初年度を迎える、当社にとっては正念場となる。会社の成長を遂げるためには大きく2つの経営課題がある。

まずは、売上高の増大である。成長は、会社に必要な推進力であり、事業の効率化とともに継続的に取り組んでいく。適切な価格設定とグレード構成による販売や、マーケティング戦略強化によるブランド向上、明快な評価基準による分析を基にした販売会社の業績強化が求められている。また、新型車の立ち上がり品質を開発及び生産の両面で担保することも重要である。これらを当事業年度に構築したトップマネジメントによる徹底した月次損益の管理により、利益の出せる損益体質への改善を進めていく。

最後に、日産自動車株式会社とともに、コストの節減と設備や開発等に関わるリソースの共用を中心として、短・中期的なシナジー効果の創出を加速化していく。当社は、ルノー・日産自動車株式会社とともに年間販売台数1,000万台規模を有する世界第3位のアライアンスに加わることで、大きなシナジー効果の享受の可能性を手に入れた。これまで、当社では選択と集中を推進してきたが、限られたリソースの中で、自力で他社と競っていける分野に投資をしてきた。今後はアライアンスの力により、製品開発、購買、技術、生産、市場拡大及びサービス等の分野における機会の拡大が可能となる。自動運転やコネクティッド・カー、更なる電動化といった新技術の資産を活用し、より魅力的な商品や技術をお客様に提供していくことが当社にとって最大限にポテンシャルを発揮するチャンスとなる。

 

 

 

4【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがある。

なお、将来に関する事項については別段の記載のない限り、本有価証券報告書の提出日現在において判断したものである。

 

(1)国内外の経済情勢及び社会情勢の影響

当社グループの前連結会計年度売上高に占める海外売上高比率は約8割であり、日本のほか、当社グループの今後の地域戦略の中心を担うアセアン諸国その他の新興市場国等の経済情勢及び社会情勢が変化した場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。また、海外市場における事業展開には、法制や税制の変更、政治・経済情勢の変化、インフラの未整備、人材確保の困難性、テロ等の非常事態、伝染病の流行等といったリスクが内在しており、当該リスクの顕在化により、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(2)自動車業界の競争激化の影響

自動車業界は過剰生産能力等を背景として、世界的な競争が熾烈化しており、価格競争などにより販売インセンティブや効果的な広告宣伝活動が販売促進及びマーケットシェアの維持に不可欠になっている。こうした価格競争や販売インセンティブ等の増加は当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

また、自動車業界の競争熾烈化に伴い、新製品の開発サイクルがより短期的となっている中、価格、品質、安全性等の様々な面で顧客のニーズを捉えた新製品を適時・適切に提供出来ない場合、また当社の戦略商品が市場に十分に受け入れられない場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。さらに、当社グループが競争力の維持強化に向けた施策を今後効果的に講じることが出来ない場合には、製品の需要の低下等により、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(3)自然災害や事故等の影響

当社グループは、日本及び世界各地に製造拠点等の設備を有しており、当該各地で大規模な地震・台風・洪水等の自然災害や火災等の事故、感染症の発生により、当社グループ又はその取引先の操業の中断等の重大な支障をきたす場合がある。これらは発生可能性が高く当社グループ事業へ影響が大きいと想定されるシナリオに基づき事業継続計画・災害対策の取組整備を進めているが、想定を超える規模で発生した場合は当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(4)法規制等の影響

当社グループは、事業を展開する各国において地球環境保護や製品の安全性に関連する規制等、様々な法規制の適用を受けており、当社グループが当該法規制に適応し又はこれを遵守できない場合、またそれにより制裁を受けた場合、改正・強化された新たな規制への適応又は遵守のために多額の費用が生じる場合などは当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

平成28年4月に判明した当社製車両の燃費試験における不正行為に関して、連結で1,655億円、単体で1,672億円の特別損失を計上し、当社製品の販売への影響等が生じる等、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響が生じたが、特別調査委員会による客観的かつ徹底した事実関係の調査を行い、再発防止策を策定し平成29年4月1日までに実施した。

 

(5)製品の原価変動の影響

当社グループは、多数の取引先から原材料及び部品等を購入し、製品の製造を行っており、需要及び市況変動により当社製品の製造原価が上昇した場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(6)為替変動の影響

当社グループの前連結会計年度売上高に占める海外売上高比率は約8割であり、このうち外貨建債権債務については為替予約等によりリスク低減に努めているが、為替相場が変動した場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(7)計画前提と現実との相違等により中期経営計画における目標を達成できない場合の影響

当社グループは、中期経営計画を策定し、中期的な事業戦略を定めているが、中期経営計画の前提が現実と異なることとなった場合、また、本項記載の他のリスクが顕在化した等の場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(8)製品の品質・安全性の影響

当社グループによる製品の品質向上及び安全性の確保の努力にかかわらず、製品の欠陥又は不具合によるリコール又は改善対策等が大規模なものとなり、又は大規模な製造物責任を追及された場合には、多額の費用負担、当社製品への評価及び需要の低下等により、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(9)訴訟等の影響

当社グループが、事業を遂行していく上で、ユーザー、取引先や第三者との間で訴訟等が発生し、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

また、現時点で係争中の訴訟等についての判決等が当社グループの主張や予測と異なる結果となった場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

当社は、平成22年2月20日、当社のエジプトにおける旧販売会社であるMASRIA Co., Ltd(以下「原告」)から、当社による同社との販売店契約の解約について、9億米ドルの損害賠償請求を含む訴訟(以下「本訴訟」)を提起されている。本訴訟につき、平成22年10月26日に第一審裁判所、平成24年7月3日に控訴審裁判所において、それぞれ、本訴訟の裁判管轄がエジプトの裁判所にはないことを理由として原告の訴えを却下する旨の判決があったが、原告がこれに対し、平成24年7月21日付でエジプト最高裁判所に上告したため、本訴訟は上告審に係属中である。

本訴訟の裁判管轄がエジプトの裁判所にないことは、前記販売店契約上明らかであること、また、実質的にも、当社による販売店契約の解約は、当該契約の定めに従ってなされた合法的なものであり、原告の請求原因には合理性がないことなどから、現時点において、本訴訟は当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼすものではないと判断している。

 

(10)特定調達先への依存の影響

当社グループは、原材料及び部品等を多数の取引先から調達している。より高い品質、技術をもったものをより競争力のある価格で調達しようとする場合、発注が特定の調達先に集中することがある。また特別な技術を要する部品等については、提供できる調達先が限定されることがある。そのため、予期せぬ事由によりそれらの調達先からの供給が停止した場合又は適時に競争力のある価格で調達ができない場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(11)顧客、取引先等の信用リスクの影響

当社グループは、顧客や、販売業者、金融事業によるリース先等の取引先の信用リスクを有している。かかる信用リスクに基づく損失が当社グループの想定を上回る場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(12)知的財産権侵害の影響

当社グループは、他社製品との差別化のため、技術・ノウハウ等の知的財産を保護するとともに、第三者の知的財産権に対する侵害の予防に努めている。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似商品を製造・販売したり、世界各国における法規制上、当社グループの知的財産権の保護に限界があることで販売減少や訴訟費用が発生した場合、あるいは、予期せぬ第三者の知的財産権侵害のために製造販売の中止、賠償金支払、当社製品への評価及び需要の低下等が生じた場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

 

(13)情報技術及び情報セキュリティの影響

当社グループの運営や製品等に利用する情報技術及びネットワークやシステムについては、ハッカーやコンピュータウィルスによる攻撃、不正使用やインフラ障害等により支障を来たすおそれがあり、その結果、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。当社グループは、個人情報を含むグループ内外の機密情報を保有しており、当該情報が不正に外部に流出した場合、当社グループの社会的信用及び経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。

5【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手方

契約の内容

契約締結日

名称

国籍

三菱自動車工業株式会社

(当社)

中国航天汽車有限責任公司

中国

中国における自動車用エンジン事業に関して瀋陽航天三菱汽車発動機製造有限公司を設立する契約

平成9年5月15日

 

瀋陽建華汽車発動機有限公司

中国

 

 

三菱商事株式会社

日本

 

 

 

エムシーアイシー持株有限公司

マレーシア

 

 

三菱自動車工業株式会社

(当社)

ハルピン東安発動機製造公司

中国

中国における自動車用エンジン事業に関してハルピン東安汽車発動機製造有限公司を設立する契約

平成10年6月16日

 

ハルピン飛機製造公司

中国

 

 

ハルピン東安動力股份有限公司

中国

 

 

 

三菱商事株式会社

日本

 

 

 

エムシーアイシー持株有限公司

マレーシア

 

 

三菱自動車工業株式会社

(当社)

日産自動車株式会社

 

スズキ株式会社

日本

 

日本

ジヤトコ株式会社に関する株主間の権利義務等を定めた契約

平成19年3月15日

三菱自動車工業株式会社

(当社)

福建省汽車工業集団有限公司

中華汽車工業股份有限公司

中国

 

台湾

 

車両の生産・販売等、東南(福建)汽車工業有限公司の合弁事業に関する契約

平成18年3月27日

三菱自動車工業株式会社

(当社)

プジョー・シトロエン・オートモビルズ・エス・エイ

フランス

ロシアで車両を生産するための合弁事業に関する基本契約

平成20年5月19日

三菱自動車工業株式会社

(当社)

広州汽車集団股份有限

公司

三菱商事株式会社

中国

 

日本

中国における車両の生産・販売等、広汽三

菱汽車有限公司の合弁事業に関する契約

平成24年9月5日

三菱自動車工業株式会社

(当社)

PT Krama Yudha

三菱商事株式会社

インドネシア

日本

インドネシアで車両を生産するための合弁事業に関する契約

平成27年3月24日

三菱自動車工業株式会社

(当社)

日産自動車株式会社

 

日本

 

日産自動車株式会社との資本業務提携に関する契約

平成28年5月25日

 

 

6【研究開発活動】

 当社は、お客様の期待と社会の要請に応えるため、「環境への貢献」「走る歓び」「確かな安心」を追求する次世代テクノロジー「@earth TECHNOLOGY」を技術キーワードに掲げ、研究開発を推進している。研究開発体制については、日本では「技術開発センター」および「EV技術センター」があり、デザイン・技術の先行研究・設計・試験を行っている。また、北米・欧州・中国・タイに有する海外R&D拠点との連携により、市場特性を踏まえたグローバルな技術/商品開発を行っている。今後は、日産とのアライアンスの中で三菱自動車としての特長付けをより明確にし、基本技術の共有など協業シナジー効果を十分に発揮できるように、技術/商品開発を進めていく。

「環境への貢献」については、持続可能なクルマ社会の実現に向け、次世代電動車両技術や次世代エンジン(ダウンサイジング直噴ターボエンジン、クリーンディーゼルエンジン)の開発、車体・コンポーネントの軽量化など、燃費向上技術を開発推進している。特に、電動車両技術に関しては、長距離走行と環境性能を両立させた、当社独自の『プラグインハイブリッドEVシステム(PHEV)』を搭載した『アウトランダーPHEV』がお客様から高い評価を得ており、引き続き電動車両技術のリーディングカンパニーを目指し開発に取り組んでいる。

「走る歓び」については、走行性能と環境性能を両立する次世代エンジンの開発や、当社が得意とする四輪駆動の統合制御技術『S-AWC*1』の進化などの開発に継続して取り組んでいる。これらの技術は、電動車両も含め逐次他の車種へも活用・展開していく。特に、モータードライブと『S-AWC』の融合を「e-EVOLUTION」と位置付け、走る歓びと環境性能の両立を目指して開発を推進している。

「確かな安心」については、お客様に安心してお乗りいただける安全性を実現するため、当社の先進予防安全技術である『e-Assist*2(イーアシスト)』、衝突安全技術である衝突安全強化ボディ『RISE*3(ライズ)』などの開発に取り組んでいる。これらの安全技術への継続した取り組みにより、タイにおける生産・販売会社ミツビシ・モーターズ・タイランド(MMTh)で生産している新型ミッドサイズSUV『パジェロスポーツ』が、アセアン地域における新車安全性能評価プログラムである2016年「ASEAN NCAP(The New Car Assessment Program for Southeast Asia)」の成人乗員保護評価において、最高評価である5★を獲得し、当社の最新ミッドサイズSUVの高い安全性能を証明した。

その他、快適な室内環境(乗り心地,静粛性,利便性向上など)を提供するための技術開発、車内でのスマートフォン等の情報機器との接続技術の開発にも取り組んでいる。

 2016年度は、当社製車両の燃費試験における不正行為において、お客様をはじめとする全てのステークホルダーにご迷惑をおかけした。今後、コンプライアンスを徹底し、お客様にとって魅力ある商品開発をすることで、信頼回復を図っていく。

*1:S-AWC:Super All Wheel Control
*2:e-Assist:以下の機能で構成され、ドライバーの安全な走りをアシストする。

・衝突被害軽減ブレーキシステム(Forward Collision Mitigation System:FCM)「アウトランダー/同PHEV,パジェロスポーツに搭載」
先行車と衝突の危険がある場合、自動ブレーキによって衝突の回避、または被害の軽減をサポートする。

(歩行者検知機能はアウトランダー/同PHEVにのみ搭載)

・低車速域衝突被害軽減ブレーキシステム(FCM-City)「eKシリーズ,ミラージュに搭載」
低速走行時(約5~約30km/h)先行車と衝突の危険がある場合、自動ブレーキによって衝突の回避、
または被害の軽減をサポートする。

・車線逸脱警報システム(Lane Departure Warning System:LDW)「アウトランダー/同PHEVに搭載」
走行中の車線から逸脱しそうな場合に、ドライバーに警報で注意を促す。

・レーダークルーズコントロールシステム(Adaptive Cruise Control System:ACC)「アウトランダー/同PHEV,パジェロスポーツに搭載」
渋滞での走行時でも、先行車との車間を維持しながらの走行を可能とする。

・後側方死角警報システム 「アウトランダー/同PHEV,パジェロスポーツに搭載」
死角になり易い斜め後方に車両がいた場合、ドライバーにドアミラーのインジケーターで注意を促す。

・誤発進抑制機能「前進&後退時:アウトランダーPHEV,パジェロスポーツ」「前進時:eKシリーズ,ミラージュに搭載」
シフトやペダルの操作ミスによる急発進を抑制する。

*3:RISE:Reinforced Impact Safety Evolution

 

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費(自動車事業)は577億円である。平成28年4月から平成29年3月にかけて発売した主な新商品は次のとおりである。

 

1. 軽自動車『eKスペース』を大幅改良して発売した。フロントデザインを大幅に変更するとともに、後席の空気を循環させるリヤサーキュレーターに「ナノイー」*4機能を追加するなど、快適性と利便性を向上させた。主な商品特長を以下に挙げる。

(1) エクステリアデザイン

標準モデル、カスタムモデルとも、フロントデザインを大幅に変更し、標準モデルはいっそう親しみやすいデザインに、カスタムモデルは三菱自動車のフロントデザインコンセプト「ダイナミック・シールド」を採用して力強く存在感のあるデザインとした。

   (2) 機能装備

『eKスペース』の特長装備である後席の空気を循環させるリヤサーキュレーターに、肌や髪にやさしい弱酸性の「ナノイー」を放出する機能を採用した。また、消臭機能(イノドールクイック瞬感消臭®*5)を追加した消臭シート生地を新たに採用した。タバコや食べ物、汗、ペットなどの幅広い臭いをセラミックスで瞬時に吸着し、金属イオンの働きで臭い成分を分解できる。

(いずれも標準モデルの「M」「M e-Assist」を除く)

*4:ナノイー(nanoe)=nano-technology+electric 最先端のテクノロジーから生まれた“水に包まれている電気を帯びたイオン”のこと。「nanoe」、「ナノイー」及び「nanoe」マークは、パナソニック株式会社の商標。

*5:「イノドールクイック瞬感消臭®」はセーレン株式会社の登録商標。
ごく一部の特殊な臭いによっては消臭効果が弱い場合がある。

 

2. プラグインハイブリッドEV『アウトランダーPHEV』およびミッドサイズSUV『アウトランダー』を一部改良して発売した。『アウトランダーPHEV』については、充電制御の改良に加え、EV走行を優先させる新機能を採用した。さらに、両車種ともに予防安全機能を向上させた。また、「スマートフォン連携ディスプレイオーディオ[SDA:Smartphone Link Display Audio]」を両車種に装備した。主な商品特長を以下に挙げる。

   (1) プラグインハイブリッドEVシステム(『アウトランダーPHEV』)

駆動用バッテリーの電力消費を抑える「バッテリーセーブモード」、充電する「バッテリーチャージモード」に加え、EV走行を優先させ、可能な限りエンジン始動を抑える「EVプライオリティモード」を新たに設定した。さらに、充電制御を改良することで、約80%までの急速充電時間を約30分から約25分に短縮した。

   (2) 予防安全技術「e-Assist」(『アウトランダー/同PHEV』共通)

「衝突被害軽減ブレーキ[FCM:Forward Collision Mitigation system]」のセンサーをミリ波レーダーからカメラとレーザーレーダーを併用したシステムにすることで、歩行者検知機能を追加するとともに、衝突回避性能を向上させた(ミリ波レーダーは、「レーダークルーズコントロール[ACC:Adaptive Cruise Control system]」に使用)。また、「車線逸脱警報システム[LDW:Lane Departure Warning system]」の警報精度を向上させるとともに警報タイミングを最適化させた。

さらに、「後側方車両検知警報システム(レーンチェンジアシスト機能付)[BSW:Blind Spot Warning/LCA:Lane Change Assist]」、「後退時車両検知警報システム[RCTA:Rear Cross Traffic Alert]」、「オートマチックハイビーム[AHB:Automatic High Beam system]」を新たに採用した。

(いずれも「20G」「24G」「M」グレードを除く)

   (3) 機能装備(『アウトランダー/同PHEV』共通)

ディスプレイオーディオにスマートフォンとの連携機能を追加した「スマートフォン連携ディスプレイオーディオ[SDA]」をアウトランダーPHEV最上級グレード「S Edition」に標準設定、その他グレードにメーカーオプション設定とした(「M」グレードを除く)。車の中でiPhone*6*7を使うためのより優れた、安全な方法「Apple CarPlay」*7に対応した。さらに、高度な音声認識でGoogleマップTM*7など各種アプリの操作が可能な「Android AutoTM*8にも対応している。

*6:iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されている。

*7:Apple CarPlay、iPhoneは米国その他の国で登録されたApple Inc.の商標。

*8:Android Auto、Google マップはGoogle Inc.の商標または登録商標。

 

3. 上記のほかに、安全・機能装備の充実や、内外装の差異化、燃費向上を図った商品を一部機種に設定し発売した。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容である。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 (1)重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成している。この連結財務諸表の作成に当り、連結会計年度末日における資産・負債の計上および偶発資産・負債の開示、ならびに報告期間における収益・費用の計上に影響を与える見積りおよび仮定設定を行っている。これらの見積りは、過去の実績や合理的と考えられる方法に基づき行われているが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合がある。
 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているが、特に次の重要な会計方針が当社グループの連結財務諸表における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えている。

①燃費試験関連損失引当金

当社は、燃費試験に関連した損失に備えるため、当連結会計年度末において合理的に見積ることが可能な金額を計上している。

②製品保証引当金

当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い過去の実績を基礎に将来の保証見込みを加味して計上している。実際の製品不良率または修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性がある。

③貸倒引当金

当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上している。経済状況の変化等により顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合には、追加引当が必要となる可能性がある。

④退職給付費用及び債務

従業員退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されている。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率および年金資産の長期収益率などが含まれている。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼす。

⑤繰延税金資産の評価

当社グループでは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当金を控除し、純額を計上している。評価性引当金は、将来の課税所得およびタックスプランニング等を勘案し算定しており、繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上している。また、繰延税金資産の計上金額を上回る繰延税金資産を将来回収できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることとしている。

⑥投資有価証券の評価

当社グループは、価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式を保有している。当社グループは、投資有価証券の評価を一定期間ごとに見直し、その評価が取得原価または減損後の帳簿価額を一定率以上下回った場合、減損処理を実施している。将来の市況悪化または投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失または帳簿価額の回収不能が発生した場合、減損処理の実施が必要となる可能性がある。

⑦固定資産の減損

当社グループは、固定資産の減損会計の適用に際し、資産を工場単位または事業拠点単位等にグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っている。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額している。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、損益に影響を与えることがある。

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

「第2 事業の状況 1.業績等の概要(1)業績」の記載を参照。

(3) 資本の財源及び資金の流動化についての分析

「第2 事業の状況 1.業績等の概要(2)キャッシュ・フロー」の記載を参照。

(4)今後の方針について

 「第2 事業の状況 3.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の記載を参照。