(1)業績
当連結会計年度の自動車業界を取り巻く事業環境は、米国経済の回復やユーロ圏の底打ち、日銀の金融緩和を受けた円高是正などで景気の回復傾向が強まる一方、米国の量的金融緩和縮小を巡る新興国経済の動揺、中国の経済成長鈍化、一部新興国における政治・経済の混乱、新たに加わったウクライナ問題という地政学的リスクなど、依然として不安要因を抱えた状況にあった。
また、当社グループの中期経営計画「ジャンプ2013」において、当期は最終年度に当たるが、同計画の基本方針である「成長と飛躍」の実現に向け、「新興市場・環境対応」と「収益レベルの底上げ」に鋭意取り組んできた。
このような事業環境の中、当連結会計年度の売上高は、2兆934億円(前年度比+2,783億円、同+15%)となった。
営業利益は、販売費や研究開発費などの増加があった一方、為替が好転したことに加え、コスト削減策を確実に実行した結果、1,234億円(前年度比+560億円、同+83%)となった。経常利益は、1,295億円(前年度比+356億円、同+38%)、当期純利益は、1,047億円(前年度比+667億円、同+176%)となり、営業利益、経常利益、当期純利益のすべての利益項目で過去最高益となった。
当連結会計年度の販売台数(小売)は、合計で1,047千台(前年度比+60千台、同+6%)となった。
地域別には、日本では、登録車が前年度を下回った一方、軽自動車は昨年6月より発売した新型『eKワゴン』『eKカスタム』に加え、今年2月に発売した『eKスペース』が好調に推移しており、143千台(前年度比+9千台、同+7%)となった。
北米では新型『アウトランダー』、新型『ミラージュ』の新車効果により97千台(前年度比+12千台、同+14%)となった。
欧州では、『アウトランダーPHEV』などの新車効果により202千台(前年度比+21千台、同+11%)となった。
アジアについては、タイで2012年12月にファーストカーバイヤープログラムが終了した反動や、政情混乱による需要の低迷などにより減少したが、広汽三菱汽車有限公司を中心に中国が大きく伸長したことに加え、フィリピン・インドネシアでは過去最高を記録したことで、地域全体で344千台(前年度比-13千台、同-4%)となった。
その他地域では、豪州・ニュージーランド、中南米、中東アフリカ地域ともに前年度を上回り、地域全体で261千台(前年度比+31千台、同+14%)となった。
当社の報告セグメントの業績は次のとおりである。
① 自動車
当連結会計年度における自動車セグメントの売上高は、2兆812億円(前年度比+2,761億円、同+15%)となり、営業利益は1,219億円(前年度比+569億円)となった。
② 金融
当連結会計年度における金融セグメントの売上高は、122億円(前年度比+21億円、同+21%)となり、営業利益は15億円(前年度比-9億円)となった。
なお、当社及び連結子会社の所在地を基礎として区分した業績は次のとおりである。
① 日本
売上高は、売上台数の増加により、1兆7,444億円(前年度比+2,998億円、同+21%)となり、営業利益も為替の円高是正影響やコスト低減効果も加わり、684億円(前年度比+591億円、同+639%)となった。(増収、増益)
② 北米
売上高は、売上台数の増加や為替の円高是正影響により、2,673億円(前年度比+922億円、同+53%)となり、営業利益も27億円となった。(増収、黒字化)
③ 欧州
売上高は、為替の円高是正影響や高額車両の増加により、1,287億円(前年度比+79億円、同+7%)となったが、営業利益は費用の増加などにより、82億円(前年度比-31億円、同-27%)となった。 (増収、減益)
④ アジア・その他の地域
売上高は、主にアセアン地域の売上台数増加により、8,562億円(前年度比+55億円、同+1%)となったが、営業利益は販売費用の増加や採算の良い車種の販売減少などにより480億円(前年度比-77億円、同-14%)となった。(増収、減益)
(注)売上台数及び売上高、営業損益は連結財務諸表の注記事項(セグメント情報等)の補足情報の内容を記載している。具体的には、日本については当社及び国内連結子会社、海外については、各地域に所在する海外連結子会社の業績を説明している。
(2)キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況については、営業活動によるキャッシュ・フローは、2,104億円の収入となった。 (前年度は1,722億円の収入)
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより814億円の支出となった。 (前年度は1,143億円の支出)
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出などにより、821億円の支出となった。 (前年度は83億円の支出)
その結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、4,117億円となった。
(前年度末残高は3,612億円)
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績は次のとおりである。
|
当連結会計年度 数量(台) |
前連結会計年度比(%) |
国 内 |
637,079 |
131.5 |
海 外 |
631,894 |
99.2 |
合計 |
1,268,973 |
113.1 |
(2)受注状況
当社は、大口需要等特別の場合を除き、見込生産を行っている。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 |
前連結会計年度比(%) |
||
数量(台) |
金額(百万円) |
数量 |
金額 |
|
自動車 |
1,047,084 |
2,081,212 |
106.0 |
115.3 |
金融 |
- |
12,157 |
- |
120.9 |
調整額 |
- |
38 |
- |
- |
合計 |
1,047,084 |
2,093,409 |
106.0 |
115.3 |
(注)1. 調整額は、セグメント間取引消去によるものである。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりである。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
三菱商事株式会社 |
272,076 |
15.0 |
272,020 |
13.0 |
3. 上記金額は、消費税等を含んでいない。
当社グループは、平成17年度からの「再生計画」以降、「ステップアップ2010」を経て、「ジャンプ2013」にて永年の課題としてきた優先株の処理を完了し、普通株式への復配を実現する環境を整えることができた。今後を展望すると、自動車業界を取り巻く事業環境は、短期的には国内において消費増税による駆け込み需要の反動減は避けられないものの、海外景気の持ち直しから、一定の改善が見込まれる。一方で、成長市場である新興国の政治・経済の不安定、先進国市場の中長期的な停滞、為替レートの変動、メーカー間の競争激化などのリスクに晒されている。
このような状況の中で当社グループは、新中期経営計画「ニューステージ2016」を「新たな成長ステージ」での経営計画と位置付けている。「新たな成長ステージ」においては、「戦略商品投入による売上高の増大」、「三菱自動車らしさの追求」、「アセアン地域の生産体制強化」、「新興国に強みを持つSUV系ブランドの確立」、「協業を通じた経営リソースの有効活用」といった5つの基本方針の下、以下の主要項目に取り組み、新中期経営計画の達成を目指す。
① 戦略商品投入による売上高の増大
② 次世代技術開発の推進
③ 地域戦略の深掘り
④ 事業構造の改革
⑤ 安定した経営基盤の確保
⑥ 品質改革への取り組み
新中期経営計画「ニューステージ2016」を達成するための課題としては、「ジャンプ2013」で実行した、タイ、中国、ロシアでの新工場立上げや合弁会社での生産開始といった事業強化策からの収益を確実に得ることに加え、当社が強みとするピックアップトラック・SUV・クロスオーバー系車種を戦略商品として活かしながら、世界的に高まりを見せる環境対応技術や安全対策技術等に対するニーズにも確実に応えていくこと、アジア市場における中長期的な成長を確実に販売に繋げること、そして、新中期経営計画の先も見据えて新興市場での体制強化や先行研究・先端技術開発を着実に実行することであると認識している。
新中期経営計画の初年度にあたる平成26年度においては、戦略商品の第一弾として新型のピックアップトラックを投入する。また、フィリピンでの今後の自動車市場の成長を見据え、ミツビシ・モーターズ・フィリピンズ・コーポレーションの本社・工場を、平成26年3月に同社が買収した工場に移転し生産体制の再構築を図ることで、同国での事業基盤をより強固なものとする。
更に、全社的な活動として「カスタマーファースト・プログラム」も継続していく。
以上の取り組みにおいて当社は、コンプライアンスを最優先に考え、お客様や社会からの信頼を損なうことの無い誠実な企業として、社会や環境への配慮を強化していく。
また、内部統制システムの不断の見直しを行うことで、一層のガバナンスの強化を図り、法令遵守、業務執行の適正性・効率性の確保等に向けた改善、充実に努めていく。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがある。
(1)国内外の経済情勢及び社会情勢の影響
当社グループの当連結会計年度売上高に占める海外売上高比率は約8割であり、日本のほか、当社グループの今後の地域戦略の中心を担うアセアン諸国その他の新興市場国等の経済情勢及び社会情勢が変化した場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。また、海外市場における事業展開には、法制や税制の変更、政治・経済情勢の変化、インフラの未整備、人材確保の困難性、テロ等の非常事態、伝染病の流行等といったリスクが内在しており、当該リスクの顕在化により、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(2)自動車業界の競争激化の影響
自動車業界は過剰生産能力等を背景として、世界的な競争が熾烈化しており、価格競争などにより販売インセンティブや効果的な広告宣伝活動が販売促進及びマーケットシェアの維持に不可欠になっている。こうした価格競争や販売インセンティブ等の増加は当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
また、自動車業界の競争の熾烈化に伴い、新製品の開発サイクルがより短期的となっている中、価格、品質、安全性等の様々な面で顧客のニーズを捉えた新製品を適時・適切に提供できない場合、また当社の戦略商品が市場に十分に受け入れられない場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。さらに、当社グループが競争力の維持強化に向けた施策を今後効果的に講じることができない場合には、製品の需要の低下等により、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(3)自然災害や事故等の影響
当社グループは、日本及び世界各地に製造拠点等の設備を有しており、当該各地で大規模な地震・台風・洪水等の自然災害や火災等の事故、感染症の発生により、当社グループ又はその取引先の操業の中断等の重大な支障をきたす場合がある。これらは発生可能性が高く当社グループ事業へ影響が大きいと想定されるシナリオに基づき事業継続計画・災害対策の取組整備を進めているが、想定を超える規模で発生した場合は当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(4)法規制等の影響
当社グループは、事業を展開する各国において地球環境保護や製品の安全性に関連する規制等、様々な法規制の適用を受けており、当社グループが当該法規制に適応し又はこれを遵守できない場合、またそれにより制裁を受けた場合、改正・強化された新たな規制への適応又は遵守のために多額の費用が生じる場合などは当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(5)製品の原価変動の影響
当社グループは、多数の取引先から原材料及び部品等を購入し、製品の製造を行っており、需要及び市況変動により当社製品の製造原価が上昇した場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(6)為替変動の影響
当社グループの当連結会計年度売上高に占める海外売上高比率は約8割であり、このうち外貨建債権債務については為替予約等によりリスク低減に努めているが、為替相場が変動した場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(7)調達金利変動の影響
当社の連結有利子負債残高(短期借入金及び長期借入金の合計額)は、平成26年3月末時点で2,224億円であり、同日時点での当社の連結現預金残高は4,501億円であるため、その影響は一部軽減されるものの、今後の金融情勢の変化による調達金利の変動により当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(8)計画前提と現実との相違等により中期経営計画における目標を達成できない場合の影響
当社グループは、中期経営計画を策定し、中期的な事業戦略を定めているが、中期経営計画の前提が現実と異なることとなった場合、また、本項記載の他のリスクが顕在化した等の場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(9)製品の品質・安全性の影響
当社グループによる製品の品質向上及び安全性の確保の努力にかかわらず、製品の欠陥又は不具合によるリコール又は改善対策等が大規模なものとなり、又は大規模な製造物責任を追及された場合には、多額の費用負担、当社製品への評価及び需要の低下等により、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(10)訴訟等の影響
当社グループが、事業を遂行していく上で、ユーザー、取引先や第三者との間で訴訟等が発生し、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
また、現時点で係争中の訴訟等についての判決等が当社グループの主張や予測と異なる結果となった場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
当社は、平成22年2月20日、当社のエジプトにおける旧販売会社であるMASRIA Co. Ltd(以下「原告」)から、当社による同社との販売店契約の解約について、9億米ドルの損害賠償請求を含む訴訟(以下「本訴訟」)を提起されている。本訴訟につき平成22年10月26日に第一審裁判所、平成24年7月3日に控訴審裁判所において、それぞれ、原告の訴えを却下する旨の判決があったが、原告がこれに対し、平成24年7月21日付でエジプト最高裁判所に上告したため、本訴訟は上告審に係属中である。
当社による販売店契約の解約は、当該契約の定めに従ってなされた合法的なものであり、原告の請求原因には合理性がないことなどから、現時点において、本訴訟は当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼすものではないと判断している。
(11)他企業との提携の影響
当社グループは、事業を展開する上で国内外の自動車メーカーをはじめ、他社と様々な提携活動を行っているが、提携先固有の事情、提携先との協議の不調等、当社グループの管理できない要因により、提携の目的を十分に達成できない場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(12)特定調達先への依存の影響
当社グループは、原材料及び部品等を多数の取引先から調達している。より高い品質、技術をもったものをより競争力のある価格で調達しようとする場合、発注が特定の調達先に集中することがある。また特別な技術を要する部品等については、提供できる調達先が限定されることがある。そのため、予期せぬ事由によりそれらの調達先からの供給が停止した場合又は適時に競争力のある価格で調達ができない場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(13)顧客、取引先等の信用リスクの影響
当社グループは、顧客や、販売業者、金融事業によるリース先等の取引先の信用リスクを有している。かかる信用リスクに基づく損失が当社グループの想定を上回る場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(14)知的財産権侵害の影響
当社グループは、他社製品との差別化のため、技術・ノウハウ等の知的財産を保護するとともに、第三者の知的財産権に対する侵害の予防に努めている。しかしながら、第三者が当社グループの知的財産を不当に使用した類似商品を製造・販売したり、世界各国における法規制上、当社グループの知的財産権の保護に限界があることで販売減少や訴訟費用が発生した場合、あるいは、予期せぬ第三者の知的財産権侵害のために製造販売の中止、賠償金支払、当社製品への評価及び需要の低下等が生じた場合、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
(15)情報技術及び情報セキュリティの影響
当社グループの運営や製品等に利用する情報技術及びネットワークやシステムについては、ハッカーやコンピュータウィルスによる攻撃、不正使用やインフラ障害等により支障を来たすおそれがあり、その結果、当社グループの経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。当社グループは、個人情報を含むグループ内外の機密情報を保有しており、当該情報が不正に外部に流出した場合、当社グループの社会的信用及び経営成績又は財政状態に重大な影響を及ぼす可能性がある。
契約会社名 |
相手方 |
契約の内容 |
契約締結日 |
|
名称 |
国籍 |
|||
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
中国航天汽車有限責任公司 |
中国 |
中国における自動車用エンジン事業に関して瀋陽航天三菱汽車発動機製造有限公司を設立する契約 |
平成9年5月15日 |
|
瀋陽建華汽車発動機有限公司 |
中国 |
|
|
|
三菱商事株式会社 |
日本 |
|
|
|
エムシーアイシー持株有限公司 |
マレーシア |
|
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
ハルピン東安発動機製造公司 |
中国 |
中国における自動車用エンジン事業に関してハルピン東安汽車発動機製造有限公司を設立する契約 |
平成10年6月16日 |
|
ハルピン飛機製造公司 |
中国 |
|
|
|
ハルピン東安動力股份有限公司 |
中国 |
|
|
|
三菱商事株式会社 |
日本 |
|
|
|
エムシーアイシー持株有限公司 |
マレーシア |
|
|
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
日産自動車株式会社
スズキ株式会社 |
日本
日本 |
ジヤトコ株式会社に関する株主間の権利義務等を定めた契約 |
平成19年3月15日 |
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
福建省汽車工業集団有限公司 中華汽車工業股份有限公司 |
中国
台湾 |
車両の生産・販売等、東南(福建)汽車工業有限公司の合弁事業に関する契約 |
平成18年3月27日 |
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
プジョー・シトロエン・オートモビルズ・エス・エイ |
フランス |
ロシアで車両を生産するための合弁事業に関する基本契約 |
平成20年5月19日 |
三菱自動車工業株式会社 (当社) |
広州汽車集団股份有限 公司 三菱商事株式会社 |
中国
日本 |
中国における車両の生産・販売等、広汽三 菱汽車有限公司の合弁事業に関する契約 |
平成24年9月5日 |
当社グループはお客様の期待と社会の要請に応えるため、「環境への貢献」「走る歓び」「確かな安心」を追求する次世代テクノロジー「@earth TECHNOLOGY」を技術キーワードに研究開発を推進している。研究開発体制については、日本では「技術開発センター」および「EV技術センター」を中心に、デザイン・新技術の先行研究・設計・試験を行っている。また北米・欧州・中国・タイに有する海外R&D拠点との連携により、市場特性を踏まえたグローバルな商品開発を行っている。
「環境への貢献」については、持続可能なクルマ社会の実現に向け、次世代EV/PHEV技術の開発や新型MIVEC*1エンジン、クリーンディーゼルエンジン、ダウンサイジング直噴ターボエンジン、車体・コンポーネントの軽量化など、燃費向上技術の開発を推進している。特に電動車両技術に関しては、長距離走行と環境性能を両立させた、当社独自の『プラグインハイブリッドEVシステム』を搭載した『アウトランダーPHEV』が、2013-2014日本カー・オブ・ザ・イヤー「イノベーション部門賞」(環境、安全その他の革新技術を持つクルマ)、『プラグインハイブリッドEVシステム』が2014年次RJCテクノロジー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど高い評価を得ている。引き続き電動化技術のリーディングカンパニーを目指し開発に取り組んでいる。
「走る歓び」については、走行性能と環境性能を両立する次世代エンジンの開発や、当社が得意とする四輪駆動の統合制御技術『S-AWC*2』の進化などに継続して取り組んでおり、電動車両も含め逐次他の車種へも活用・展開していく。特にモータドライブと『S-AWC』の融合を「e-EVOLUTION」と位置付け、走る喜びと環境性能を両立すべく開発を推進している。
「確かな安心」については、お客様に安心してお乗りいただける安全性を実現するため、当社の先進予防安全技術である『e-Assist*3(イーアシスト)』、衝突安全技術である衝突安全強化ボディ『RISE*4(ライズ)』などの開発に取り組んでいる。これらの各種安全技術への継続した取り組みにより、『アウトランダー』が国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)によって行われる、平成24年度自動車アセスメント(JNCAP)で最高評価の「JNCAPファイブスター賞」を受賞した。また、そのJNCAPファイブスター賞受賞車のうち、評価得点がこれまでの最高得点を超えたクルマに与えられる「JNCAP大賞」も受賞した。北米では米国IIHS(道路安全保険協会)の衝突安全性評価において、『アウトランダー』が2年連続で最高評価となる「2014トップセーフティピック+」に認定され、欧州では同車に搭載の『衝突被害軽減ブレーキシステム(Forward Collision Mitigation System:FCM)』が「ユーロNCAPアドバンスド賞」を受賞した。
その他、快適な室内環境(乗り心地、静粛性、利便性向上など)を提供するための技術開発、車内でのスマートフォン等の情報機器との接続技術の開発にも取り組んでいる。
*1:MIVEC:Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control system
*2:S-AWC:Super All Wheel Control
*3:e-Assist:以下3つの機能で構成。
渋滞での走行時でも、先行車との車間を維持しながらの走行を可能とする「レーダークルーズコントロールシステム(Adaptive Cruise Control System:ACC)」、先行車との車間距離が急に縮まった場合、自動ブレーキによって衝突の回避、または被害の軽減をサポートする「衝突被害軽減ブレーキシステム(Forward Collision Mitigation System:FCM)」、走行中の車線から逸脱しそうな場合に、ドライバーに警報で注意を促す「車線逸脱警報システム(Lane Departure Warning System:LDW)」。
*4:RISE:Reinforced Impact Safety Evolution
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費(自動車事業)は36,714百万円である。
平成25年4月から平成26年3月にかけて発売した主な新商品は次のとおりである。
1. 「軽自動車の枠を超える上質感」「快適空間と運転のしやすさ」「優れた燃費性能」を備えたトールワゴンタイプの新型軽自動車『eKワゴン』『eKカスタム』を発売した。
新型『eKワゴン』『eKカスタム』は、三菱自動車と日産自動車の合弁会社NMKVが企画・開発した軽自動車の第1弾で、三菱自動車の50年以上にわたる軽自動車づくりのノウハウと、NMKVによる新たなマーケティング手法により、今の時代に求められる「いい軽」(eK = excellent K-car)を追求。軽自動車の経済性や扱いやすさといった普遍的な価値に加え、従来の軽自動車にないクオリティを備えた新型軽トールワゴンである。主な商品特徴を以下に挙げる。
(1)「軽自動車の枠を超える上質感」
①エクステリア
ボディサイドのダイナミックな3本のキャラクターライン「トリプルアローズライン」と、流れるようなルーフラインを特徴とした、伸びやかで躍動感あるデザインとし、これまでの軽自動車にはない、立体的で上質感あるデザインとした。
②インテリア
インストルメントパネルに、上質なピアノブラック調のセンターパネルを配し、先進的で操作性に優れるタッチパネル式オートエアコンを採用(『eKワゴン』の「E」類別を除く)。
(2)「快適空間と運転のしやすさ」
①快適空間
約99%*5の紫外線カット率を実現した99%UVカットガラスをフロントドアガラスに採用(『eKワゴン』の「E」類別を除く)。
*5:三菱自動車初(自社調べ。ISO9050基準。)
②運転のしやすさ
シフトレバーを「R(後退)」に入れると、車両後方の映像をルームミラー内のモニターに表示するリヤビューモニター付ルームミラーを『eKワゴン』の「G」、『eKカスタム』の「G」「T」類別に標準装備した。また急な坂道での発進時、ブレーキペダルからアクセルペダルに踏み換える間、自動でブレーキを最大2秒間保持して車体のずり下がりを防止する、ヒルスタートアシスト*6を採用した(『eKワゴン』の「E」類別、『eKカスタム』の「T」類別を除く)。
*6:三菱自動車軽初
(3)「優れた燃費性能」
①エンジン
『eKワゴン』と『eKカスタム』の「M」「G」類別の2WD車では、減速時(約13km/h以下)からアイドリングを停止させ、ガソリンの消費を抑えるコーストストップ機能付*7の新しい「オートストップ&ゴー」を採用し、軽トールワゴンでクラストップレベルの低燃費29.2km/L*8(JC08モード燃料消費率、国土交通省審査値)を実現した。
*7:三菱自動車初
*8:類別、駆動方式により採用システム、燃費数値は異なる。
②トランスミッション・車体
INVECS-Ⅲ*9 CVT(副変速機付)を採用した。また、ボディは高張力鋼板の採用率を8%から56%へと大幅に拡大するとともに、リンフォース類の小型化や薄肉化といった構造の合理化により、先代『eKワゴン』に対して約10%の軽量化を実現。その他の細部にわたる軽量化と合わせ、トールワゴン化などによる重量増を相殺。
*9:三菱自動車軽初 Intelligent & Innovative Vehicle Electronic Control System(学習機能付シフト制御)
2. 「快適」「便利」「安心」をキーワードに新型eKシリーズ第2弾となるスーパーハイトワゴンタイプの新型軽自動車『eKスペース』を発売した。新型『eKスペース』は、“「いい軽」(eK = excellent K-car)を創ろう”と平成13年に開発した初代『eKワゴン』に込めた想いはそのままに、今の時代に求められる「いい軽」を追求し、現在の軽乗用車の30%以上を占めるスーパーハイトワゴン市場に投入したモデルである。主な商品特徴を以下に挙げる。
(1)パッケージング
軽自動車の限られたスペースを最大限に活用し、軽乗用車最大級の室内高(1400mm)と室内長(2235mm)を実現。また後席には、軽自動車最長 260㎜の「リヤシートスライド(左右分割式)」や、簡単な操作でシートを足元に格納できる「左右独立フラット格納機構」の採用により、乗員数や荷物の大きさや量に合わせた多彩なシートアレンジが可能。
(2)快適・便利な機能装備
広い室内空間を一層快適にするため、室内の空気を循環させるクラス初*10「リヤサーキュレーター」を標準装備した(「E」類別を除く)。これにより冷房の風をこれまで届きにくかった後席にも送ることができ、特に夏場の快適性を向上させた。またリヤドアガラスに日射しを遮る高い遮光性能を実現した「ロールサンシェード」を標準装備した(「E」類別を除く)。
*10:軽スーパーハイトワゴンクラス(全高1700mm以上かつエンジンをボンネット内に配置した軽自動車)
3. 上記のほかに、安全・機能装備の充実や、内外装の差異化、燃費向上を図った商品を一部機種に設定し発売した。
当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容である。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成している。この連結財務諸表の作成に当り、連結会計年度末日における資産・負債の計上および偶発資産・負債の開示、ならびに報告期間における収益・費用の計上に影響を与える見積りおよび仮定設定を行っている。これらの見積りは、過去の実績や合理的と考えられる方法に基づき行われているが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合がある。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているが、特に次の重要な会計方針が当社グループの連結財務諸表における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えている。
①製品保証引当金
当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、過去の実績を基礎に将来の保証見込みを加味して計上している。実際の製品不良率または修理コストが見積りと異なる場合、アフターサービス費用の見積額の修正が必要となる可能性がある。
②貸倒引当金
当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上している。経済状況の変化等により顧客の財務状態が悪化し、その支払能力が低下した場合には、追加引当が必要となる可能性がある。米国の金融連結子会社では、保有している販売金融債権をその保有目的に応じて満期保有目的および販売目的に区別している。満期保有目的の販売金融債権については、将来の回収不能見込額を貸倒引当金として計上しており、また、販売目的の販売金融債権は、将来の見込キャッシュ・フローを基礎に時価を算定し、取得原価と時価との差額を貸倒引当金として計上している。従って、将来、回収不能見込額または見込キャッシュ・フローの算定の前提条件が変わった場合等、将来の損益に影響を与えることがある。
③退職給付費用及び債務
従業員退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されている。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率および年金資産の長期収益率などが含まれている。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼす。
④オペレーティング・リース資産及びバイバック資産の評価
米国の連結子会社は、オペレーティング・リース取引およびバイバック取引を行っている。これらの取引は、契約終了時に顧客が車両を返却した場合、中古車市場でこれを売却している。連結会計年度末日時点における当該資産は、償却原価または中古車市場相場の価額のいずれか低い方で評価しているが、実際に中古車を売却した時点で売却価額が大きく変動した場合、将来の損益に影響を与えることがある。
⑤繰延税金資産の評価
当社グループでは、繰延税金資産について、回収可能性が高いと考えられる金額へ減額するために評価性引当金を控除し、純額を計上している。評価性引当金は、将来の課税所得およびタックスプランニング等を勘案し算定しており、繰延税金資産の全部または一部を将来回収できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産の調整額を費用として計上している。また、繰延税金資産の計上金額を上回る繰延税金資産を将来回収できると判断した場合、繰延税金資産への調整により当該判断を行った期間に利益を増加させることとしている。
⑥投資有価証券の評価
当社グループは、価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式を保有している。当社グループは、投資有価証券の評価を一定期間ごとに見直し、その評価が取得原価または減損後の帳簿価額を一定率以上下回った場合、減損処理を実施している。将来の市況悪化または投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失または帳簿価額の回収不能が発生した場合、減損処理の実施が必要となる可能性がある。
⑦固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損会計の適用に際し、資産を工場単位または事業拠点単位等にグルーピングし、各グループの単位で将来キャッシュ・フローを見積っている。将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回った場合、回収可能価額まで帳簿価額を減額している。将来この回収可能価額が減少した場合、減損損失が発生し、損益に影響を与えることがある。
(2) 当連結会計年度の経営成績の分析
「第2 事業の状況 1.業績等の概要(1)業績」の記載を参照。
(3) 資本の財源及び資金の流動化についての分析
「第2 事業の状況 1.業績等の概要(2)キャッシュ・フロー」の記載を参照。
(4)今後の方針について
「第2 事業の状況 3.対処すべき課題」の記載を参照。