第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 経営方針及び経営戦略等

当社グループは、人々の生活を豊かにすることをビジョンに掲げ、その実現のために、独自性に溢れ、革新的なクルマやサービスを創造し、その目に見える優れた価値を、アライアンスのもとに全てのステークホルダーに提供していくことを目指していく。

当社グループは、平成29年11月8日に、今後6年間どのような成長を果たし、その先の更なる成長へ向けてどのように準備を進めるのかを念頭に、新しい中期計画「Nissan M.O.V.E. to 2022」を発表した。当該中期計画は、当社グループが常に前進し、進化を果たしていくことを表し、以下のドライバーにより構成されている。

・Mobility(モビリティー)

・Operational Excellence(オペレーション・エクセレンス)

・Value to Customers(カスタマーバリュー)

・Electrification(電動化)

「Nissan M.O.V.E. to 2022」のミッションとしては、これまで「日産パワー88」で築いた強固な事業基盤をもとに、ルノー及び三菱自動車とのアライアンスの利点を活かし、以下を目指す。

① 健全な収益性と安定したフリー・キャッシュ・フローを確保しながら、持続可能な成長を実現する。

② 「技術の日産」のDNAを活かし、自動車産業における技術及びビジネスの進化をリードする。

当社と三菱自動車工業 (株) は、両社のシナジーを探求・促進・調整・奨励することを使命とする、折半出資の合弁会社「Nissan-Mitsubishi B.V.」(以下、「NMBV」)を平成29年6月にオランダに設立した。NMBVの設立時取締役会は、会長兼CEOのカルロス・ゴーン、西川 廣人、益子 修の3名で構成される。NMBVは、シナジー創出への貢献の対価としてフィーを受け取り、オペレーション費用や同社取締役・従業員の報酬の支払いに加え、シナジー創出に貢献する各社の従業員に対しインセンティブを負担する。

当社グループは、これから先10年から15年の間に本格的に訪れるであろう大きな技術革新、そしてそれに伴う市場やお客様の変化を見据え、「Nissan M.O.V.E. to 2022」に取り組むことによりそのミッションを果たしていく。

 

(2) 事業上及び財務上の対処すべき課題

当連結会計年度における事業上及び財務上の対処すべき課題は、次のとおりである。

平成29年9月に行われた国土交通省による立入検査により、当社グループにおける国内の車両製造6工場での完成検査工程において発覚した不適切な取り扱いについて、当社グループは平成29年11月17日に実態調査及び再発防止策検討結果を、平成30年3月9日に再発防止策の実施状況を同省に報告した。

当社グループは今後、しっかりと安全確保を第一に、第三者による調査の実施、再発防止の検討を行い、策定した再発防止策の確実な実施を進め、お客様、関係者をはじめとするすべてのステークホルダーの皆様の信頼回復に全社一丸となって取り組んでいる。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成30年6月28日)現在において当社グループが判断したものである。

 

1.世界経済や景気の急激な変動

(1) 経済状況

当社グループの製品・サービスの需要は、それらを提供している国又は地域の経済状況の影響を強く受けている。従って、日本、中国、アメリカ、メキシコ、ヨーロッパ、アジア、中南米、中近東、アフリカなど当社グループの主要な市場における経済や景気及びそれに伴う需要の変動については、正確な予測に努め必要な対策を行っているが、世界同時不況など予測を超えた急激な変動がある時は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 

(2) 資源エネルギー情勢

原油価格の高騰など資源やエネルギー情勢の急激な変化により当社グループの製品・サービスに対する需要も大きく変動する。ガソリン価格が上昇すれば燃費の良い製品に需要がシフトすることが予測され、更に上昇すれば全体の需要は低下することも予測される。予測を超えた急激な変動がある時は業績の悪化や機会損失の発生等、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

 

2.自動車市場における急激な変動

自動車業界は世界規模で非常に厳しい競争にさらされている。当社グループもその競争に打ち勝つべく、お客様のニーズにあった製品を素早く提供できるように技術開発・商品開発や販売戦略において努力しているが、お客様ニーズに合う製品をタイムリーに提供できなかった場合や、環境や市場の変化への対応が不十分な場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。

例えば、成熟市場では人口の減少や少子高齢化の進行により需要が減退したり変化したりする一方で、新興市場では大きく需要が増える可能性もある。これらはビジネスチャンスとして当社グループに有利な結果をもたらす可能性もある一方、特定商品や特定地域への過度な依存が発生し、次なる変化への対応が十分に行われない場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

また、近年、自動運転技術が製品に搭載され販売されてきているが、完全自動運転など、この技術が安全で付加価値を生む新たな製品として成立すれば、次世代に向けた大きな成長・発展の機会となる。そのためには、公道走行における新たなルール作りが不可欠であり、各国規制当局との連携、自動車メーカー並びに関連技術を有する会社同士での協調が極めて重要である。その一方で、新技術の開発という点では、各国、メーカー共に激しい競争状態にもあり、開発費負担の増大、車両コストの増加等により、当社グループの業績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。

今後、カーシェアリング、ライドシェアリング、ロボットタクシーといった業態の普及に伴い、「自動車メーカーがハードウエアとしてのクルマを製造・販売し、お客様はそのクルマを購入・所有・使用する」という従来のビジネスモデルが大きく変革していくことが想定される。

 また、付加価値の中心がハードウエアとしてのクルマの性能から、クルマに関連したサービスも含め、お客様にどのような体験を提供できるのかといったソフトウエアの方に移っていくことも想定される。

その結果、ソフトウエアの部分での魅力が差異化のポイントとなり、予てより当社の強みであったクルマというハードウエアを開発・量産するというノウハウや専門性がそれ程の付加価値を生まないものとなっていく可能性もある。

これら想定される変革を見据えて、従来の自動車業界以外からの競争相手の参入も相次いでいる。

こういった動きに対して当社グループでは、ハードウエアの進化(電動化、インテリジェント化、自動運転化、コネクティビティ機能の強化)、ソフトウエアの強化(コネクテッド機能の強化により新たな付加価値の提案)を目指し、積極的な開発投資、多様な人材の採用と育成、異業種企業との戦略的な連携、スタートアップ企業との協業によるオープンイノベーションの推進等の対策を進めている。

 

しかしながら、我々の想定を超えた速度や範囲で変革が起き、そのような変化に対して十分に対応できない場合には、我々は新たな競争相手に対して優位性を保つことができず、競争力を失う可能性もある。

 

3.金融市場に係るリスク

(1) 為替レートの変動

当社グループは世界20カ国・地域で完成車の生産を行い、170カ国以上の国々で販売している。原材料や部品、サービスの調達も多くの国で行っている。

当社の連結財務諸表は日本円で表示するため、一般的に他の通貨に対する円高は当社グループの業績に悪影響を及ぼし、反対に円安は好影響をもたらすことになる。また、当社グループが生産を行う地域の通貨価値が上昇した場合、それらの地域の生産コストを押し上げ、当社グループの競争力の低下をもたらす可能性がある。

 

(2) 通貨、金利ならびにコモディティ価格のリスクヘッジ

市場金利の上昇や自身の格付け低下による調達コストの上昇は当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

また、当社グループは外貨建債権債務の為替変動のリスク回避、変動金利で調達した有利子負債の金利変動リスク回避及び、コモディティの価格変動リスク回避を目的として、デリバティブ取引を行うことがある。こうしたデリバティブ取引によりリスクを回避することができる一方で、為替変動、金利変動、コモディティ価格の変動によってもたらされる利益を享受できないという可能性もある。

 

(3) 有価証券の価格変動

当社グループは、戦略的な理由や取引関係維持、キャッシュマネジメント等の理由により市場性のある有価証券を保有する場合があり、それらの有価証券の価格変動リスクを負っている。このため株価や債券価格の変動は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

 

(4) 資金の流動性

金融市場に通常の想定を超える環境変化が発生した場合においても、当社グループでは十分な資金の流動性を確保できるよう社内規定を整備し、内部資金の蓄積や金融機関とのコミットメントライン、調達手段や調達地域の多様化等、あらゆる資金捻出・調達ソースの確保に取り組んでいる。しかしながら市場環境に予期せぬ大規模な変化が発生した場合には、当初計画通りの資金調達に支障をきたす可能性があり、当社グループの業績及び財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。

 

(5) 販売金融事業のリスク

販売金融事業は当社グループにとって重要なビジネスのひとつである。グローバル販売金融ビジネスユニットは、徹底したリスク管理により高い収益性と健全な財務状態を維持しながら自動車販売を強力にサポートしている。しかし、販売金融には、金利変動リスク、残存価格変動リスク、信用リスク等のリスクが避けられない。これらのリスクが予想を超えて顕在化した場合には当社グループの業績と財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。

 

(6) 取引先の信用リスク

当社グループは販売会社、金融機関、サプライヤーなど様々な地域の数多くの取引先と取引を行っており、取引先の債務不履行などが発生するリスクに晒されている。当社グループは、これらの取引先の財務情報をもとに継続的な評価を行うことで、かかるリスクを削減するよう努めている。しかしながら、世界的な経済危機をきっかけにした、販売会社、金融機関及びサプライヤーの経営破たんのような予期せぬ事態が発生した場合には、当社グループの業績と財務状況に負の影響を及ぼす可能性がある。

 

(7) 退職給付費用及び債務

当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されている。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。

 

 

4. 事業戦略や競争力維持に係るリスク

(1) 国際的活動及び海外進出に関するリスク

当社グループの販売は世界170カ国以上、完成車の生産も20の国と地域で行っており、今後も新興国を中心に更に拡大していく可能性がある。海外市場への事業進出の際には以下に掲げるようなリスクの検討も十分行っているが、進出した先で予期しないリスクあるいは想定を超えるリスクが顕在化した場合には計画通りの操業度や収益性を実現できず、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

・ 不利な政治的又は経済的要因

・ 法律又は規制の変更

・ 法人税、関税その他税制の変更

・ ストライキ等の労働争議

・ 優秀な人材の採用と定着の難しさ

・ テロ、戦争、クーデター、デモ、暴動、大規模自然災害、伝染病、その他の要因による社会的混乱

 

(2) 研究開発活動

当社グループが開発する技術は、世の中のニーズに即し、有用かつ現実的で使い易いものでなくてはならない。この目的のため当社グループは、将来のニーズを予測し、優先順位をつけ、新技術の開発に投資している。しかし、予測を超えた環境の変化や世の中のニーズの変化、相対的な開発競争力の低下により、最終的にお客様にその新技術が受け入れられない可能性もあり、その結果当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 

(3) 他企業との提携等

当社グループはより高い競争力を短期間で獲得するために優れた技術を有する他の企業と戦略的に提携することがある。しかしながら、当該分野の市場環境や技術動向の変化、提携先との活動の進捗状況によっては予定した成果を享受できない可能性もあり、その結果当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(4) 製品・サービスの品質

当社グループは、優れた品質の製品・サービスを提供するため、開発・製造から販売・サービスまできめ細かい管理体制を敷き最善の努力を傾けている。しかしながら、より高い付加価値を提案するための新技術の採用は、それが十分に吟味されたものであっても、後に製造物責任や製品リコールなど予期せぬ品質に係る問題を惹起することがある。また、今後自動運転技術が発展し、かつ広く普及していった場合は、運転者の関与の希薄化に伴い、より製造者側の責任が問われるようになることも想定される。製造物責任については賠償原資を確保するため一定の限度額までは保険に加入しているが、必ずしもすべての損害が保険でカバーされるとは限らない。またお客様の安全のため実施したリコールが大規模なものになった場合には多額のコストが発生するだけでなく、ブランドイメージが低下する等、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 

(5) 環境や安全に関する規制、企業の社会的責任

自動車業界は、排出ガス基準、CO2/燃費基準、騒音、化学物質管理、リサイクル、水資源等、環境や安全に係る様々な規制の影響を受けており、これらの規制はより一層厳格になってきている。気候変動に影響を与えるCO2は、2015年のパリ協定採択以後、事業活動、商品、調達を含むバリューチェーン全体の削減に向けた枠組みが強化されている。特にクルマの使用時に排出されるCO2量は、企業活動に伴う排出量に比較して著しく多く、全体の80%を占めることから、気候変動による規制等のリスクが生じる可能性がある(バリューチェーン全体のCO2排出量154,040 kton-CO2のうち、販売したクルマの使用時の排出量が127,666 kton-CO2、いずれも2016年度実績)。法規制を遵守することは当然であるが、企業の社会的責任として自主的により高い目標を掲げ取組んでいる分野も増えている。当社グループは競合他社に対する優位性を保つため中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2022」を掲げ、環境に対する継続的な取り組みを社内外にコミットしているが、開発や投資の負担は増加しており、これらコストの増加は当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

また、上記取組みを行ったとしても、株主やお客様等のステークホルダーから、他社との比較において優位性を持たないと評価された場合には株価や販売に負の影響を及ぼし、その結果当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 

 

(6) 重要な訴訟等

当社グループが事業活動を進めていく中で、取引先や第三者との間で様々な訴訟に発展することがある。それら訴訟については、当社グループ側の主張又は予測と異なる結果となるリスクは避けられず、場合によっては当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 

(7) 知的資産保護の限界

当社グループは、他社製品と差異化できる技術とノウハウを保持している。これらの技術とノウハウは今後の当社グループの発展には不可欠なものである。これらの資産の保護については最善の努力を傾注しているが、特定の地域ではその保護が困難であり、又は限定的にしか保護されない状況にある。

当社グループは、このような特定の地域での知的資産を保護し、当社グループの知的活動の成果を守る活動を強化すること、さらには新たな知的資産を蓄積することを狙いとして、専門の部署を設け、ブランドの保護・創造活動を行っているが、第三者が当社グループの知的資産を侵害して類似した製品を製造・販売することを防止できない可能性がある。

 

(8) 優秀な人材の確保

当社グループでは人材は最も重要な財産と考え、グローバルで優秀な人材を採用するとともに、十分に能力を発揮してもらうため人材育成の充実や公平で透明性の高い評価制度の実現にも力を入れている。しかしながら優秀な人材確保のための競争は厳しく、計画通りに採用や定着化が進まなかった場合は、長期的に当社グループの競争力が低下する可能性がある。

 

(9) コンプライアンス、レピュテーション

2017年に発生した、当社国内車両製造工場における完成検査に係る不適切取扱いの案件を受けて、このような案件を二度と起こさないようにし、失った信頼の回復を図るために、第三者による調査の実施、再発防止策の検討を行い、策定した再発防止策の確実な実施に、全社一丸となって取り組んでいる。

しかしながらコンプライアンスの問題は全ての従業員のあらゆる行動にかかわっており、従業員一人一人がコンプライアンスの重要性を本当の意味で理解し、常に意識して行動することが定着しない限りは案件の発生を完全に防止することは困難である。

さらに守るべき法令やルールは年々増加している一方で企業の社会的責任に対する社会の期待も増大している。仮に、企業の社会的責任に照らして不適切な行為を行ったのが2次3次以降のサプライヤーや販売者であったり、あるいは当社グループが想定した販売ルート以外で流通した製品に関連するものであっても、当社グループ自身が社会的責任を追及され、対応の内容や迅速性が不十分な場合には当社グループの社会的信用や評判に悪い影響を及ぼし、売上の減少等、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

 

5.事業の継続

(1) 大規模災害

日本を本拠とする当社グループにとって、現在そして今後も最大のリスクのひとつであり続けるものに地震リスクがある。当社グループでは、地震リスクマネジメントに関する基本方針を設定するとともに、主要な経営会議メンバーで構成されるグローバルベースの地震対策組織を設置している。また、工場などの建屋や設備などの耐震補強も積極的に推進している。しかし、想定を超えた大規模な地震により大きな損害が発生し、操業を中断せざるを得ないような場合は、当社グループの業績と財務状況に大きな影響を及ぼす可能性がある。

また、地震以外にも、台風や洪水、噴火、新型インフルエンザの流行等様々なリスクを想定し、事前の予防対策及び発生時の緊急対応体制の整備等を行っているが、想定を超えた規模で発生した場合などは当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

東日本大震災や熊本地震等の災害を契機として、下記のような従来想定していなかった様々なリスクも顕在化した。

・ 計画停電の実施や長期に亘る電力不足により、工場の操業が大きく制限されるリスク

・ 原子力発電所からの放射能汚染による立入制限や避難指示により、対象地域内の工場やサプライヤーが復旧又は操業できないリスク

・ 放射能汚染を理由とする、部品・製品の受け入れ制限や遅延のリスク、及び風評による売れ行き低下のリスク

・ 「南海トラフ巨大地震」等で想定される、従来の高さと範囲を大きく超える津波のリスク

・ 日本国内各地に数多く存在する活断層型の地震によりサプライヤーが被災し、工場の操業が大きく制限されるリスク

当社グループではこれら顕在化した問題に対しても一つ一つ対策を検討・実行し、問題解決の努力を続けているが、当社グループだけでは対応できない問題も多く、また、対応のためのコストも発生するため、業績や財務状況に対する影響は避けられない可能性がある。

 

(2) 原材料及び部品の購入

当社グループは事業の構造上、多数の取引先から原材料や部品及びサービスを購入している。また、最近は新技術の導入に伴い、産出量が少ないだけでなく産出が特定の国や地域に限られる希少金属の使用も増えている。需給バランスの急激な変動や産出国における政情の変化等により予期せぬ市況変動が起こった場合は、必要な原材料・部品等を継続的安定的に確保出来なくなる可能性もあり、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

 

(3) 特定サプライヤーへの依存

より高い品質や技術をより競争力ある価格で調達しようとすると、発注が特定のサプライヤーに集中せざるを得ないことがある。また、特別な技術を要するものについてはそもそも提供できるサプライヤーが限定されることもある。当社では、2次3次以降のサプライヤーを含めてサプライチェーンの見直しを行い、その強化に取組んでいるが、予期せぬ事由によりサプライヤーからの供給が停止したり、遅延や不足が生じた時は、当社グループの操業も停止し、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

 

(4) 情報システムに係るリスク

当社グループの殆ど全ての業務は情報システムに依存しており、システムやネットワークも年々複雑化高度化している。今や、これらシステムネットワークのサービス無くしては業務の遂行は到底不可能である。この状況に対して大規模な自然災害、火災、停電等の事故は引き続き当該システムに対して脅威であり、更にコンピュータウイルスへの感染やより巧妙化しているサイバー攻撃など人為的な脅威も急激に高まっている。

当社グループではそれらのリスクに備え事業継続計画(BCP)の策定、セキュリティ対策の向上等、ハード面・ソフト面両方に亘る様々な対策を実施している。しかしながら、想定を超える災害の発生、サイバー攻撃の発生やウイルス等への感染が発生した場合には、システムダウンによる業務の停止、重要なデータの消失、機密情報や個人情報の盗取や漏えい等のインシデントを引き起こす可能性がある。その結果、当社グループの業績や信頼性に対する評判、財務状況に影響を及ぼす可能性がある。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概況は次のとおりである。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度のグローバル全体需要は前年度比1.9%増の9,352万台となった。当社グループのグローバル販売台数は前年度比2.6%増の577万台に達し、売上高11兆9,512億円と前連結会計年度に比べ2,312億円(2.0%)の増収となった。営業利益は5,748億円と前連結会計年度に比べ1,674億円(22.6%)の減益となった。

営業外損益は1,755億円の利益となり、前連結会計年度に比べ530億円の増益となった。その結果、経常利益は7,503億円となり、前連結会計年度に比べ1,144億円(13.2%)の減益となった。特別損益は396億円の損失となり、前連結会計年度に比べ1,401億円悪化した。税金等調整前当期純利益は7,107億円と前連結会計年度に比べ2,545億円(26.4%)の減益となった。親会社株主に帰属する当期純利益は7,469億円となり、前連結会計年度に比べ834億円(12.6%)の増益となった。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動により1兆713億円増加、投資活動により1兆1,477億円減少、財務活動により368億円増加した。また、現金及び現金同等物に係る換算差額により45億円増加した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に対し351億円(2.8%)減少の1兆2,060億円となった。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

 

会社所在地

生産台数(台)

増減

前年同期比

前連結会計年度

当連結会計年度

(台)

(%)

 日  本

1,015,033

985,541

△29,492

△2.9

 米  国

990,938

899,483

△91,455

△9.2

 メキシコ

863,915

787,876

△76,039

△8.8

 英  国

518,471

487,269

△31,202

△6.0

 スペイン

124,880

98,579

△26,301

△21.1

 ロシア

39,475

50,921

11,446

29.0

 タ  イ

116,794

133,937

17,143

14.7

 インドネシア

25,465

19,134

△6,331

△24.9

 フィリピン

3,772

6,523

2,751

72.9

 インド

317,347

239,043

△78,304

△24.7

 南アフリカ

30,590

32,733

2,143

7.0

 ブラジル

51,265

95,714

44,449

86.7

 エジプト

16,733

16,598

△135

△0.8

合計

4,114,678

3,853,351

△261,327

△6.4

 

(注) 台数集約期間は平成29年4月から平成30年3月までである。

 

b.受注状況

当社グループの受注生産は僅少なので受注状況の記載を省略する。

 

c.販売実績

 

仕向地

販売台数(連結売上台数:台)

増減

前年同期比

前連結会計年度

当連結会計年度

(台)

(%)

 日  本

 

535,747

564,264

28,517

5.3

 北  米

 

2,163,031

2,049,310

△113,721

△5.3

 

内、米国

1,604,053

1,520,622

△83,431

△5.2

 欧  州

 

791,482

792,641

1,159

0.1

 アジア

395,333

386,637

△8,696

△2.2

 その他

 

523,161

536,133

12,972

2.5

合計

 

4,408,754

4,328,985

△79,769

△1.8

 

(注) 台数集約期間は、アジアに含まれる中国、台湾は平成29年1月から平成29年12月まで、日本、北米、欧州、その他、並びに中国、台湾を除くアジアは平成29年4月から平成30年3月までである。

 

(2) 経営者の視点による経営成績の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであり、原則として連結財務諸表に基づいて分析したものである。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成30年6月28日)現在において当社グループが判断したものである。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成している。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、第5[経理の状況]の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる事項」に記載しているが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えている。

a.貸倒引当金

当社グループは、売上債権等の貸倒れによる損失に備えるため、回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上している。将来、顧客の財務状況が悪化し、支払能力が低下した場合、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性がある。

b.製品保証引当金

当社グループは、製品のアフターサービスに対する費用の支出に備えるため、保証書の約款に従い、過去の実績を基礎に翌期以降保証期間内の費用見積り額を計上している。当社グループは、製品の安全を最優先課題として、研究開発・製造から販売サービスまで最善の努力を傾けているが、実際の製品の不具合等により発生した保証費用が見積りと異なる場合、引当金の追加計上が必要となる可能性がある。

c.退職給付費用

当社グループの従業員の退職給付に備えるための退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算出されている。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累積され、将来にわたって規則的に認識されるため、一般的には将来期間において認識される費用及び債務に影響を与える可能性がある。

 

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度における経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討結果は、次のとおりである。

(業績)

a.売上高

連結売上高は前連結会計年度に対し2,312億円(2.0%)増加し、11兆9,512億円となった。主な増収要因は、海外売上高における為替の換算影響である。

b.営業利益

連結営業利益は5,748億円、売上高営業利益率は4.8%となった。前連結会計年度の営業利益に対し1,674億円(22.6%)の減益となった。

営業利益の主な減益要因は、コスト削減の努力があったものの、国内の完成検査問題影響、米国の販売会社の在庫調整を含む販売費の増加、そして原材料価格の高騰によるものである。

c.営業外損益

連結営業外損益は1,755億円の利益となり、前連結会計年度の1,225億円の利益に対し、530億円の増益となった。これは主に、持分法による投資利益の増加によるものである。

d.特別損益

連結特別損益は396億円の損失となり、前連結会計年度の1,005億円の利益に対し、1,401億円悪化した。これは主に、前連結会計年度に関係会社株式売却益が計上されていたことによるものである。

e.法人税等

法人税等は△530億円となり、米国の税制改革法の成立により前連結会計年度に比べ3,177億円の減少となった。

f.親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は7,469億円となり、前連結会計年度に比べ834億円(12.6%)の増益となった。

 

(事業セグメント)

a.自動車事業

当社グループの全世界における自動車販売台数(小売り)は、577万台と前連結会計年度に比べ14万4千台(2.6%)の増加となった。日本国内では前年度比4.8%増の58万4千台、中国では前年度比12.2%増の152万台となった。メキシコとカナダを含む北米では前年度比1.8%減の209万1千台、欧州では前年度比2.6%減の75万6千台、その他地域は前年度比1.3%増の81万9千台となった。

自動車事業の業績は、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、11兆279億円と前連結会計年度に比べ1,227億円(1.1%)の増収となった。

営業利益は、3,356億円と前連結会計年度に比べ1,991億円(37.2%)の減益となった。これは主に、コスト削減の努力による増益があったものの、国内の完成検査問題影響、米国の販売会社の在庫調整を含む販売費の増加、そして原材料価格の高騰によるものである。

b.販売金融事業

販売金融事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、1兆1,493億円と前連結会計年度に比べ1,661億円(16.9%)の増収となった。営業利益は2,153億円と前連結会計年度に比べ314億円(17.1%)の増益となった。これは主に、米国の販売金融会社の増益によるものである。

 

 

(地域セグメント)

a.日本

日本国内市場の全体需要は前年度比2.4%増の520万台となった。当社グループの販売台数は、完成検査問題によるリコール、及び一時的な生産・出荷停止の影響があったが、好調な「ノート e-POWER」、「セレナ e-POWER」、新型「日産リーフ」に加え、「デイズ」、「デイズルークス」が販売増に貢献し、前年比4.8%増の58万4千台に達し、市場占有率は前年度比0.2ポイント増の11.2%へと拡大した。日本地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、4兆6,472億円と前連結会計年度に比べ712億円(1.5%)の減収となった。営業利益は2,842億円となり、前連結会計年度に比べ1,259億円(30.7%)の減益となった。主な減益要因は、為替影響による増益があったものの、完成検査問題の影響である。

b.北米

メキシコとカナダを含む北米市場の全体需要は前年度比1.2%減の2,085万台となった。当社グループの販売台数は前年度比1.8%減の209万1千台となり、北米地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、6兆4,219億円と前連結会計年度に比べ702億円(1.1%)の増収となった。営業利益は2,001億円となり、前連結会計年度に比べ876億円(30.5%)の減益となった。主な減益要因は、販売会社の在庫調整を含む販売費の増加及び販売台数の減少である。

米国市場の全体需要は前年度比1.0%減の1,731万台となったが、当社グループの販売台数は「ローグ」、「ローグ スポーツ」が販売を支え、前年度比0.7%増の159万3千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント増の9.2%となった。

c.欧州

欧州市場の全体需要は前年度比2.7%増の1,998万台となったが、ロシアを除く欧州市場の当社グループの販売台数は「キャシュカイ」、「マイクラ」が貢献したものの前年度比4.6%減の65万2千台となり、市場占有率は前年度比0.2ポイント減の3.6%となった。一方、ロシア市場における当社グループの販売台数は、長引く経済不透明感に回復の兆しが見え、前年度比12.0%増の10万5千台となった。欧州地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、2兆920億円と前連結会計年度に比べ1,714億円(8.9%)の増収となった。営業利益は143億円となり、前連結会計年度に比べ395億円の改善となった。主な改善要因は、販売費の増加があったものの、購買コストの削減である。

d.アジア

中国を除くアジア・オセアニア市場の販売台数は前年度比2.8%減の33万1千台となり、アジア・オセアニア地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆5,537億円と前連結会計年度に比べ559億円(3.5%)の減収となった。営業利益は536億円となり、前連結会計年度に比べ83億円(13.5%)の減益となった。

中国市場の全体需要は前年度比1.8%増の2,735万台となった。当社グループの販売台数は、好調な「エクストレイル」、「シルフィ」が販売をけん引し、前年度比12.2%増の152万台となり、市場占有率は前年度比0.6ポイント増の5.6%となった。なお、合弁会社である東風日産有限公司の業績は、持分法による投資利益として営業外利益に計上している。

e.その他

その他市場の当社グループの販売台数は、前年度比1.3%増の81万9千台となった。中南米市場の販売台数は非常に好調で前年度比14.3%増の20万8千台となり、アフリカ他の地域市場の販売台数は前年度比8.8%増の9万6千台となった。中東市場の販売台数は全体需要が前年度比9.2%減少する中、前年度比7.1%減にとどめ18万4千台となった。その他地域におけるセグメント間の内部売上高を含む売上高は、1兆62億円と前連結会計年度に比べ167億円(1.6%)の減収となった。営業損失は140億円となり、前連結会計年度に比べ18億円の改善となった。主な改善要因は、中南米地域における増益である。

 

 

当社グループが平成29年11月8日に発表した中期計画「日産M.O.V.E to 2022」では、6年間で持続可能な成長を実現し、新技術とビジネスの両面で自動車産業をリードしていくことを目指している。当該中期計画は、管理指標のひとつとして、世界の自動車市場の中で現在最も重要な市場のひとつである中国で事業を行う合弁会社の業績を比例連結した営業利益率8%を採用している。6カ年計画の終了までに、この営業利益率を確保しながら、年間売上高を16兆5,000億円へ増加させ、累計2兆5,000億円の自動車事業のフリーキャッシュ・フローを実現することを目標としている。なお、当該中期計画の初年度にあたる当連結会計年度における、中国合弁会社を比例連結したベースでの営業利益率は5.6%、売上高は13兆3,150億円、自動車事業のフリーキャッシュ・フローは4,827億円のプラスとなった。

 

 

(資本の財源及び資金の流動性についての分析)

a.キャッシュ・フローの状況

営業活動

営業活動によって生み出された資金は1兆713億円となり、前連結会計年度の1兆3,355億円に比べて2,642億円減少した。これは主として、販売金融債権の増加幅が小さくなったものの、税金等調整前当期純利益が減少したこと、仕入債務の増加幅が小さくなったことによるものである。

投資活動

投資活動による支出は1兆1,477億円となり、前連結会計年度の1兆3,776億円に比べて2,299億円減少した。これは主として、投資有価証券の取得による支出が減少したことによるものである。

財務活動

財務活動によって生み出された資金は368億円となり、前連結会計年度の3,206億円に比べて2,838億円減少した。これは主として、長期借入による収入が減少したことによるものである。

 

なお、当連結会計年度末における自動車事業の手元資金は有利子負債額を上回り、1兆7,691億円のキャッシュ・ポジションとなり、当連結会計年度における自動車事業のフリーキャッシュ・フローは4,070億円のプラスとなった。

 

b.財務政策

当社グループは、当社財務部にグローバルトレジャラーの機能を持たせ、全世界のグループ会社の財務活動を一括して管理している。またグローバル・キャッシュ・マネジメントにより資金効率を最大限に高める活動を行っている。

当社グループは、研究開発活動、設備投資及び金融事業に投資するために、適切な資金確保を行い、最適な流動性を保持し、健全なバランスシートを維持することを財務方針としている。なお、平成30年度(平成30年4月~平成31年3月)においては、当社グループで5,400億円の設備投資を計画しており、この設備投資に関わる所要資金は自己資金で充当する予定である。

金融市場の急激な環境変化などにより、資金の流動性には注視が必要であるが、当社グループは、現金及び現金同等物に加え、世界の主要銀行とコミットメントライン契約を締結しており、必要とされる充分な流動性を確保していると考えている。

当社グループによる無担保資金調達に係わるコスト及びその発行の可否は、一般に当社グループに関する信用格付けによっている。現在、当社グループの信用格付けは投資適格のレベルとなっているが、これらの格付けは当社グループの債券の売買・保有を推奨するものではない。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手先

国名

契約の内容

契約年月日

日産自動車株式会社

(提出会社)

ルノー

フランス

資本参加を含む自動車事業全般にわたる提携契約

平成11年3月27日

日産自動車株式会社

(提出会社)

ダイムラーAG

ドイツ

資本参加を含む戦略的協力に関する提携契約

平成22年4月7日

ルノー

フランス

日産自動車株式会社

(提出会社)

三菱自動車工業株式会社

日本

資本参加を含む自動車事業全般にわたる提携契約

平成28年5月25日

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、将来にわたって持続性のある車社会の実現に向けて、環境や安全など様々な分野での研究開発活動を積極的に行っている。

当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は4,958億円であった。

当社グループの研究開発体制及び活動成果は次のとおりである。

(1) 研究開発体制

当社グループの日本における研究開発は、日産テクニカルセンター(神奈川県厚木市)を中心に車両開発を日産車体(株)、(株)日産オートモーティブテクノロジー、ユニット開発を愛知機械工業(株)、ジヤトコ(株)などの関係各社が担当し、当社と密接な連携のもとで推進している。

米欧地域においては、米国の北米日産会社、メキシコのメキシコ日産自動車会社、英国の英国日産自動車製造会社、スペインの日産モトール・イベリカ会社において、一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。また、米国の日産総合研究所シリコンバレーオフィスにおいて、自動運転車両の研究、最先端のICT(Information and Communication Technology)技術開発を行っている。

アジア地域では、中国の日産(中国)投資有限公司、東風汽車集団股份有限公司との合弁会社である東風汽車有限公司、台湾の裕隆汽車製造股份有限公司との合弁会社である裕隆日産汽車股份有限公司、タイのアジア・パシフィック日産自動車会社及びインドのルノー日産テクノロジー&ビジネスセンターインディア社において一部車種のデザイン及び設計開発業務を行っている。

また、南米地域のブラジル日産自動車会社、南アフリカの日産サウスアフリカ会社においても現地生産車の一部開発業務を行っている。

ルノー、三菱自動車工業(株)及び当社は2017年9月に発表した中期計画アライアンス2022により、さらなる経営資源の効率化を目指し、次世代技術、プラットフォーム、パワートレインの開発を分担し共用化を加速させている。また、ダイムラーとの戦略的協力関係においては、パワートレインやプラットフォームの共用に取り組んでいる。

 

(2) 新商品の開発状況

国内にて、同一車線自動運転技術「プロパイロット」、先進の自動駐車機能「プロパイロットパーキング」、アクセルペダルだけで加減速する「e-Pedal」搭載の新型「日産リーフ」を発売、「エクストレイル」にプロパイロットを搭載、「セレナ」にe-POWERモデルを追加した。海外では、北米において新型「日産リーフ」を発売、「タイタン」にキングキャブモデルを追加、「ローグ」にプロパイロットを搭載、欧州において、新型「日産リーフ」を発売、中国において、フレームSUV「テラ」、「キックス」、「ナバラ」を発売した。また、インフィニティブランドから「VCターボ」搭載の新型「QX50」を発売、ダットサンブランドからコンパクトクロスオーバー「クロス」を発売した。

 

(3) 新技術の開発状況

環境面においては、中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム2022」の具体的な取り組みとして、「電気自動車(EV)推進」「車両の電動化をはじめとするモノづくりの技術革新」「資源とクルマの価値利用の最大化」「革新的な技術・サービス」によるモビリティと人と社会の新たな関係構築の実現を目指して、技術開発を行っている。

「電気自動車(EV)推進」では、51ヵ国・地域に投入されている「日産リーフ」の販売台数は着実に増加している。2018年3月時点で、「日産リーフ」のグローバル累計販売台数は32万台を突破、「e-NV200」とヴェヌーシア「e30」、東風ブランドを含めた電気自動車全体のグローバル累計販売台数では38万台を超えた。2017年度には航続距離400km(JC08モード)を実現する新型のリチウムイオンバッテリーを搭載した新型「日産リーフ」が日本、米国、欧州で販売され、各地域で高く評価されている。国内では、日本自動車殿堂(JAHFA)にて「カーテクノロジーオブザイヤー」を受賞、米国では2018 CES(Consumer Electronics Show)にて「Best of Innovation award winners for 2018」を、2018 New York International Auto Showにて「2018 World Green Car」を受賞、欧州では、2018 What Car? Awardsにて「Best Electric Car」を受賞した。加えて日産の電気自動車2車種目の「e-NV200」が、2018年3月現在、欧州や日本を含む28ヵ国で発売されている。スペインのバルセロナやオランダのアムステルダムでは「e-NV200」タクシーが運行を始めており、日本でも都市部の貨物配送事業者や地方自治体などさまざまなビジネスシーンで使用されている。

 

 

「車両の電動化」では、2016年度に「ノート」に初搭載したe-POWERを国内向けの「セレナ」に拡大採用して好評を得ており、2017年度省エネ大賞を受賞した。このe-POWER技術は100%モーターで動力を制御し、エンジンは発電のみに特化することで最も効率の良い運転条件で発電が可能となり、クルマが使われる頻度の高い市街地走行時において従来型ハイブリッドシステム車に対し、クラストップの燃費(*1)を実現している。

「モノづくりの技術革新」では、世界初の量産型の可変圧縮比エンジンである「VCターボ」を、インフィニティブランドの新型「QX50」に搭載した。可変圧縮比技術は、ピストンの上死点位置をシームレスに変化させることができるマルチリンクシステムを活用しており、最適な圧縮比に素早く変化させることができ、パワー、力強いトルク、効率性を併せ持つエンジンを実現できる。

新技術適用による車両軽量化も推進している。日産は、高強度と高成形性を両立できる世界初1.2G級を含めた高張力鋼板への置換によって、薄肉化による軽量化を実現している。これまでに発売したインフィニティ「Q50」(日本では「スカイライン」)、北米「ムラーノ」、インフィニティ「Q60」に高張力鋼板への置換を拡大した。この高張力鋼板への置換を今後も推進し、2017年以降発売する新型車で高張力鋼板の適用率を25%まで拡大していく計画である。2017年度にはインフィニティ「QX50」にSHF(Super High Formability)980MPa級超高張力鋼板を世界の自動車メーカーで初めて採用した。これによりドライビングパフォーマンスを向上しながら軽量化を実現している。

「資源とクルマの価値利用の最大化」にも取り組んでいる。EVが送電網(グリッド)とつながり社会と融合することは、エネルギー供給のグリッド全域での最適化に貢献する。現在日本では、「Vehicle to Home(V2H)」の取り組みとして、7,000基以上のEV用パワーコンディショナーが導入されており、家庭、店舗、ビルのエネルギー消費の管理にEVを活用している。また日米欧において、「Vehicle to Building(V2B)」の取り組みとして、多くのEVが建物への電力供給に利用されており、その数は年々増えている。さらに電力会社とのスマートチャージや「Vehicle to Grid(V2G)」の実証実験を行うなど、EVの更なる価値普及に向け取り組みを進めている。

安全面においては、日産車がかかわる死者数を2015年までに1995年比で半減させることを目指し、日本、米国、欧州(英国)で達成している。現在は、2020年までに日本、米国、欧州(英国)でさらに半減させるという高い目標に向かって活動を続けており、死者数を実質ゼロにすることが日産の究極の目標である。目標の達成に向けて、事故そのものの削減が重要と考え、「クルマが人を守る」という考え方“セーフティ・シールド”に基づき、人を危険に近づけないようクルマがサポートする技術開発を進めている。

日本では、予防安全性能アセスメント(JNCAP)にて日産「ノートe-POWER(Xグレード)」が最高評価となるASV++を獲得した。米国では、米国新車アセスメントプログラム(US-NCAP)にてインフィニティ「QX60」、日産「ムラーノ」「アルティマ」「マキシマ」「パスファインダー」が最高評価となる5つ星を獲得した。欧州では、欧州新車アセスメントプログラム(ユーロNCAP)にて、日産「マイクラ(Safety Pack)」が最高評価となる5つ星を獲得した。

さらに、当社は交通事故低減に大きな効果が期待できる自動運転技術の採用を推進している。2016年8月には、高速道路上の単一車線の自動運転技術「プロパイロット」を新型「セレナ」に搭載した。「プロパイロット」は、渋滞走行と長時間の巡航走行の2つのシーンで、アクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動で制御し、ドライバーの負担を軽減する。国内において「プロパイロット」は、2017年に「エクストレイル」と新型「日産リーフ」に新たに採用された。日産は「プロパイロット」の採用をグローバルに進めており、これまでに米国では新型「QX50」、「ローグ」、「日産リーフ」に、欧州では「日産リーフ」、「キャシュカイ」に搭載、2018年3月末までに「プロパイロット」搭載車のグローバル累計販売台数は12万台を突破した。今後、高速道路における複数車線の自動運転を実用化する予定で、自動での車線変更が可能となる。また、当社は2022年までに「プロパイロット」を20車種に搭載し、20の市場に投入する計画を発表しており、2022年までに「プロパイロット」搭載車の販売台数が年間100万台になると見込んでいる。加えて、2018年3月には、無人運転車両を活用した(株)ディー・エヌ・エーと共同開発中の新しい交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」の実証実験を神奈川県横浜市のみなとみらい地区周辺で開始している。

当社グループは、Nissan M.O.V.E.to 2022達成を目指し、今後も競争力のある商品、将来に向けた先端技術等のための研究開発活動に積極的に取り組んでいく。

*1: 発売時点。「セレナ e-POWER」は、26.2km/L(日本基準)