当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」としています。
(1)業績
①当連結会計年度の連結業績の概況
世界経済は、先進国を中心に緩やかな成長が継続する一方、米国の金融政策正常化による影響や、原油価格の動向、中国を始めとした新興国・資源国経済の減速等により、先行きに対する不透明感が増すなか、総体的に勢いを欠く状況となっています。今後も緩やかな成長が期待されますが、これらの世界景気下振れリスクには引き続き注視が必要です。
国内経済は、外需環境の悪化や緩慢な個人消費等の影響を受け、足踏み状態となっています。今後は、所得・雇用環境の着実な改善により、総じて緩やかな成長が期待されますが、年初来の急速な円高により、輸出企業を中心とした企業業績の下振れ及びそれに伴う景況感の悪化が懸念されます。
このような経営環境の中で、当連結会計年度における当社グループの受注高は、航空宇宙事業やガスタービン・機械事業などで増加した一方で、船舶海洋事業やプラント・環境事業などで減少したことなどにより、全体では前年に比べて減少となりました。売上高については、航空宇宙事業や車両事業を中心に増収となりました。利益面については、航空宇宙事業やガスタービン・機械事業などの増益により、営業利益、経常利益は増益となったものの、第3四半期に特別損失として海外事業関連損失を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。
この結果、当社グループの連結受注高は前期比192億円減少の1兆6,936億円、連結売上高は前期比549億円増収の1兆5,410億円、営業利益は前期比87億円増益の959億円、経常利益は前期比89億円増益の932億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比55億円減益の460億円となりました。
当連結会計年度の連結セグメント別業績の概要は以下のとおりです。
②当連結会計年度のセグメント別業績概要
船舶海洋事業
連結受注高は、防衛省向け潜水艦や深海救難艇などを受注した前期に比べ808億円減少の983億円となりました。
連結売上高は、LPG運搬船の建造量増加などにより、前期に比べ45億円増収の948億円となりました。
営業損益は、受注工事損失引当金の繰入などにより前期に比べ106億円悪化し、79億円の営業損失となりました。
車両事業
連結受注高は、国内向け・海外向けともに大きな変動は無く前期並みの1,321億円となりました。
連結売上高は、シンガポールや台湾などの海外向け売上が増加したことなどにより、前期に比べ251億円増収の1,466億円となりました。
営業利益は、売上の増加などにより前期に比べ32億円増益の92億円となりました。
航空宇宙事業
連結受注高は、防衛省向けの増加などにより、前期に比べ1,072億円増加の4,642億円となりました。
連結売上高は、防衛省向けの増加や民間航空機向け分担製造品が高水準を維持したことに加え、円安の影響などにより、前期に比べ267億円増収の3,518億円となりました。
営業利益は、売上の増加などにより前期に比べ93億円増益の456億円となりました。
ガスタービン・機械事業
連結受注高は、航空エンジン分担製造品やガスエンジンの増加などにより、前期に比べ531億円増加の2,889億円となりました。
連結売上高は、航空エンジン分担製造品の増加などにより、前期に比べ176億円増収の2,364億円となりました。
営業利益は、売上の増加などにより前期に比べ56億円増益の169億円となりました。
プラント・環境事業
連結受注高は、大口の海外向けプラントを受注した前期に比べ646億円減少の1,387億円となりました。
連結売上高は、海外向け大型プラントの増加などにより、前期に比べ145億円増収の1,356億円となりました。
営業利益は、売上の増加などにより前期に比べ19億円増益の85億円となりました。
モーターサイクル&エンジン事業
連結売上高は、インドネシアほか新興国向け二輪車が減少したものの、先進国向け二輪車や四輪車が増加した結果、前期に比べ43億円増収の3,335億円となりました。
営業利益は、売上の増加などにより前期に比べ8億円増益の157億円となりました。
精密機械事業
連結受注高は、油圧機器の減少などにより、前期に比べ30億円減少の1,331億円となりました。
連結売上高は、油圧機器の減少などにより、前期に比べ26億円減収の1,331億円となりました。
営業利益は、油圧機器の売上の減少及び収益性の低下などにより前期に比べ23億円減益の85億円となりました。
その他事業
連結売上高は、建設機械事業の譲渡などにより、前期に比べ354億円減収の1,088億円となりました。
営業利益は、建設機械事業の譲渡などにより、前期に比べ10億円減益の28億円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当期末における現金及び現金同等物(以下「資金」)は前期比98億円減の378億円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、前期比415億円減の860億円となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益748億円、減価償却費490億円であり、支出の主な内訳は、法人税等の支払額251億円、たな卸資産の増加による支出197億円です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前期比67億円増の741億円となりました。これは主に有形及び無形固定資産の取得によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は、前期比337億円減の234億円でした。これは主に配当金の支払によるものです。
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前期比増減(%) |
船舶海洋 |
96,648 |
+7.4 |
車両 |
128,212 |
+6.3 |
航空宇宙 |
293,350 |
+8.0 |
ガスタービン・機械 |
225,780 |
+7.4 |
プラント・環境 |
123,883 |
+7.8 |
モーターサイクル&エンジン |
243,622 |
△3.4 |
精密機械 |
117,003 |
△1.8 |
その他 |
127,465 |
△22.5 |
合計 |
1,355,966 |
+0.9 |
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれていない。
2 金額は、生産高(製造原価)によっている。
(2)受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 |
受注高 (百万円) |
前期比増減 (%) |
受注残高 (百万円) |
前期比増減 (%) |
船舶海洋 |
98,394 |
△45.0 |
259,921 |
△1.6 |
車両 |
132,133 |
+0.5 |
375,729 |
△7.4 |
航空宇宙 |
464,286 |
+30.0 |
608,352 |
+24.5 |
ガスタービン・機械 |
288,903 |
+22.5 |
381,787 |
+13.4 |
プラント・環境 |
138,775 |
△31.7 |
255,944 |
+0.1 |
モーターサイクル&エンジン |
333,595 |
+1.3 |
- |
- |
精密機械 |
133,191 |
△2.2 |
26,358 |
+0.1 |
その他 |
104,407 |
△25.7 |
17,863 |
△37.3 |
合計 |
1,693,687 |
△1.1 |
1,925,957 |
+6.6 |
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれていない。
2 モーターサイクル&エンジン事業については、主として見込み生産を行っていることから、受注高について売上高と同額とし、受注残高を表示していない。
3 セグメント間の取引については、受注高及び受注残高から相殺消去している。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前期比増減(%) |
船舶海洋 |
94,888 |
+5.0 |
車両 |
146,646 |
+20.6 |
航空宇宙 |
351,858 |
+8.2 |
ガスタービン・機械 |
236,445 |
+8.0 |
プラント・環境 |
135,668 |
+12.0 |
モーターサイクル&エンジン |
333,595 |
+1.3 |
精密機械 |
133,175 |
△1.9 |
その他 |
108,817 |
△24.5 |
合計 |
1,541,096 |
+3.6 |
(注)1 上記金額には、消費税等は含まれていない。
2 販売高は、外部顧客に対する売上高である。
3 最近2連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
防衛省 |
220,745 |
14.9 |
227,333 |
14.8 |
民間航空機株式会社 |
144,310 |
9.7 |
159,683 |
10.4 |
[会社の経営の基本方針]
当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げています。2016年3月には、「陸・海輸送システム、航空輸送システム、エネルギー環境、ロボメック(ROBO・MECH/産業機器から改称)の4分野を主な事業分野として、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り開く企業グループを目指す」ことをビジョンとして定めました。
また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、先端的な研究開発と革新的な設備投資を持続的に行い、将来に亘る企業価値の向上を図ること、すなわち「Kawasaki-ROIC経営(以下、ROIC経営)」の推進を経営の基本方針に掲げ、収益性・安定性・成長性を重視した事業ポートフォリオの構築に取り組んでいきます。
[目標とする経営指標]
目標とする経営指標は、利益(営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)及び資本効率を測る指標である投下資本利益率( ROIC = EBIT(税引前利益 + 支払利息)÷ 投下資本(有利子負債 + 自己資本))としています。
そして、当社グループが有する事業を細分化したビジネスユニット(以下、BU)毎にROIC管理を行い、ROICがハードルレート(最低限確保すべき水準)を下回るBUは、それを上回る時期とそのための課題を明確にした上で具体的施策を展開しています。一方、既にROICがハードルレートを上回っているBUは業界トップクラスのROICの達成、又は経済的付加価値の増加に取り組むことにより、当社グループ全体の企業価値向上を図ることとしています。
これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率( ROE = 親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本 )の向上も図っていきます。
[中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]
世界経済の先行き不透明感の高まり、為替の円高シフト等により、当社グループを取り巻く事業環境は厳しくなっていますが、あるべき姿(ビジョン、10年程度先の数量イメージ)の実現に向けて、2016年度から2018年度を対象期間とする新たな中期経営計画(以下、「中計2016」)を策定しました。
中計2016では、「ROIC経営」の深化を基本方針とし、コア・コンピタンス(収益力の源泉・競争優位性)の強化により、将来に亘る企業価値向上を目指していきます。成長分野(航空輸送、ロボット、エネルギー)への投資を積極的に行うとともに、技術の結集によりシナジー効果を高め、将来の新製品・新事業を見据えた技術の差別化、更には、情報通信技術の活用による新たなサービス事業等に重点的に取り組んでいきます。
1.ROIC経営の深化による企業価値の更なる向上
「何を」「どうすれば」企業価値向上に繋がるのか、セグメント毎に事業特性を踏まえつつ、従業員が理解しやすいものとなるよう、日々の業務との関連性を重視した指標を定め、その達成に向けて全員参加型のROIC経営を進めていきます。また、選定した指標はリスクマネジメントにも活用し、企業価値の更なる向上に繋げていきます。
2.キャッシュ・フロー重視の経営
企業価値を高めていくために、収益力の強化に加え、将来の成長に向けた開発や設備投資を着実に実行しつつ、フリー・キャッシュ・フローの創出を目指しています。特に、営業キャッシュ・フローの獲得を課題として掲げており、入金条件の改善やサプライチェーンの効率化による資産の圧縮など、運転資本の効率化に向けた具体的な施策を展開していく方針です。
3.リスクマネジメントの徹底
短期的な為替相場や景気の変動などに対しては、その影響を適時把握し効率的なリスクマネジメントに繋げていきます。一方、中長期的には、自己資本の充実に加え、価格や生産拠点の見直し、外部環境に左右されにくい高付加価値製品の開発等に取り組んでいます。また、主要プロジェクトのバランスシートやキャッシュ・フローのモニタリング等により、プロジェクト開始後のリスクマネジメントを徹底していきます。
4.コーポレートガバナンス体制の強化とエンゲージメントの重視
コーポレートガバナンス・コード及びスチュワードシップ・コードの趣旨を踏まえ、常に当社にふさわしいコーポレートガバナンス体制を継続的に検討するとともに、資本市場との質の高い対話を継続していくことで、企業価値向上に努めていきます。
5.人財開発とダイバーシティの尊重
人財のグローバル化をはじめ、高度な知識と経験を有する人財の獲得・育成・活用、若年層に対する技術・技能の伝承等に注力しています。また、女性の活躍推進や育児支援策をはじめとしたワークライフバランス(仕事と生活の調和)の向上、障がい者が働きやすい職場と仕事を確保するための特例子会社の設立など、ダイバーシティ(多様性)を尊重した職場環境の整備にも努めています。
なお、個別事業における課題については以下のとおりです。
① 船舶海洋事業
坂出工場・南通中遠川崎船舶工程有限公司・大連中遠川崎船舶工程有限公司の一体運営による収益最大化、神戸工場は潜水艦関連を中心に安定的な事業運営、オフショア船事業の縮小
② 車両事業
最先端の技術開発・新型車両など、顧客ニーズに適合した技術・製品による競争力強化、人財育成によるシステムインテグレーション能力の更なる向上、メンテナンス・改造等のストック型ビジネスの拡大、海外生産・海外調達及びパートナーシップの活用などグローバルな最適事業遂行体制の構築
③ 航空宇宙事業
P-1固定翼哨戒機・C-2輸送機の修理・部品供給を含めた量産体制の確立及び派生型機への展開、ボーイング787分担製造品の増産、派生型への対応及び777Xの開発、量産立ち上げ
④ ガスタービン・機械事業
高効率の産業用ガスタービン・ガスエンジンをベースとしたエネルギーソリューション事業の展開、海外展開の推進、民間航空機用ジェットエンジンの新機種開発の推進及び増産対応
⑤ プラント・環境事業
既存製品の高度化による競争力強化と新製品・新技術の早期事業化、海外パートナーシップ強化による新興国・資源国を中心とした海外事業の拡大、人財育成強化によるエンジニアリング力の更なる向上及び大型プロジェクトの着実な完遂
⑥ モーターサイクル&エンジン事業
“Kawasaki”らしい魅力ある強いモデルの継続投入、顧客価値に根ざした高いブランドの実現、回復基調にある先進国市場での更なるプレゼンスの向上、新興国市場におけるブランド力の一層の強化及び新規市場開拓、連結ベースのマネジメントの徹底効率化
⑦ 精密機械事業
油圧機器のショベル分野における高シェアの維持・拡大とショベル以外の建設機械/農業機械分野向けの拡販、ロボット分野におけるシステム提案力強化と海外生産体制整備・拡大、医療ロボットなど将来へ向けた新規分野への継続的な取り組み
(注)上記の将来に関する記述は、現時点で入手可能な情報に基づき判断したものであり、その達成を当社として約束する趣旨のものではありません。
有価証券報告書に記載した事業の状況、設備の状況、経理の状況のうち、当社グループの経営成績、株価及び財務状況等、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには下記のようなものがあります。なお、記載事項のうち将来に関する事項は当連結会計年度末(平成28年3月31日)現在において当社グループが判断したものです。
当社グループは、グローバルかつ持続的な事業運営を可能とする全社的リスク管理の取組みに必要な体制を整え、当社グループにおける重要リスクを以下のとおり認識した上で、リスク発生の回避及びリスク顕在化時の影響の極小化に努めています。
(1)政治・経済情勢
当社グループは、日本国内はもとより米州・アジア・欧州をはじめ世界各地で事業展開をしており、それぞれの地域における政治・経済情勢の影響を受けます。
先進国の政治・経済の動向に加えて、原油をはじめとする資源価格の変動に伴う新興国の政治・経済の動向が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)為替レートの変動
当連結会計年度における当社グループの連結売上高に占める海外向け売上高は58%であり、米国ドル、ユーロ等の外貨建取引が多く存在します。外貨建取引については、総原価に占める外貨建コストの比率を高める等の為替変動リスクの軽減を図るとともに、為替動向を考慮しながら計画的に為替予約等のヘッジを行っていますが、製造拠点の多くが日本国内に立地しているため、海外取引に関わるリスクを負っています。
(3)カントリーリスク
当社グループは、海外市場における事業の拡大を図っており、製品・サービスの輸出に加えて、海外での現地生産やプラント等の建設工事、販売・調達等の活動をグローバルに展開しています。製品仕向地や生産・工事・販売・調達等を行う国や地域での紛争・政情不安・デフォルト、貿易制裁、宗教・文化の相違、特殊な労使関係等により、円滑な業務遂行が妨げられ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)個別受注プロジェクト管理
当社グループは、お客様との個別契約に基づき受注する案件が多く、請負金額が大きい工事等の重要な案件については、受注契約前に本社においてリスク分析やリスクへの対応等の十分な検討を行っています。しかし、当初想定できなかった政治・経済情勢の変動等による資材費や労務費の高騰、設計変更や工程の混乱等によって、当初見積り以上にコストが膨らみ、当該案件の損益悪化が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)大規模災害
当社グループは、台風、地震、洪水、パンデミック等の各種大規模災害に対して発生時の損失を最小限に抑えるため、事業継続計画(BCP)の策定、緊急連絡体制の整備、定期的な点検や訓練の実施等を進めています。しかし、このような災害による人的・物的被害の発生や資材・物流の停滞等が、当社グループの事業活動(特に工場における生産活動)に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、災害による損害が損害保険等で十分にカバーされる保証はありません。
(6)情報セキュリティ
当社グループは、業務を通じて入手した取引先の機密情報や個人情報、また設計・技術・営業等の事業活動に係る機密情報を多数保有しています。これらの情報を保護するため、管理体制の整備や教育、情報セキュリティシステムの構築等を行い、情報漏えい防止に努めています。しかし、コンピュータウィルスの感染、不正アクセスや盗難、その他不測の事態により機密情報が消失、もしくは社外に漏えいした場合、当社グループの業績や信用・評判等に影響を及ぼす可能性があります。
(7)人財の確保
当社グループの各職場で長年培ってきた技術・技能を有する優秀な人財の多くが退職時期を迎え、我が国の少子化の進行とも相まって当社グループの事業活動や競争力の維持が阻害される可能性があります。その中で、積極的な採用活動を行い優秀な人財の確保に努めるとともに、技術・技能の伝承や人財の育成に努めていますが、計画どおり人財の確保・育成ができない場合、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(8)資金調達
当社グループは、将来見通しを含めた金利動向等を勘案して資金調達を実施し、低金利・安定資金の確保に努めていますが、金利の変動をはじめとする金融市場の動向は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)アライアンス
当社グループは、国内外の幅広い事業分野において、他社と業務提携、合弁事業等のアライアンス関係を築いています。これらの実施にあたっては、事前に収益性や投資回収の可能性について様々な観点から十分に検討を行っていますが、市場環境の変化、事業競争力の低下、相互の経営戦略の見直し等を理由として、アライアンス等が解消又は変更された場合、あるいは目論見どおりの効果を実現できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法令・規制
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、国内外各地で関連する法令・規制の適用を受けます。このため、その遵守の徹底はもちろんのこと、グローバル企業倫理指針を制定し、コンプライアンス体制の強化を図っています。しかし、これらの対策を講じても、個人的な不正行為を含むコンプライアンスリスクの発生を完全に予防することは困難であり、重大な法令違反等が発生した場合には多額の過料・課徴金による損失や業務停止命令による受注機会損失の可能性があるほか、これに伴う社会的評価の低下が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)環境規制
当社グループは、国内外に製造設備を多数保有しており、各種環境規制の対象となる有害物質を使用している事業所やグループ会社があります。これらの有害物質の管理については万全の注意を払い、万一外部に流出した場合でもその影響を最小限に抑制するための各種対策を講じていますが、想定外の事態により環境への悪影響が発生した場合には、社会的評価の低下を招くとともに工場の操業停止や損害賠償責任等が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12)品質管理
当社グループは、品質や安全に関する法令・規則の遵守に努めるとともに、製品の品質確保や製品安全、機械安全のリスクアセスメントを通じて、常に信頼性の向上に努めています。しかし、外注先のグローバル化や複数化による品質リスクの高まり、人的リソース不足や外注依存による技術・技能の空洞化等から、製品の品質に起因する事故、あるいはクレームやリコールにより、損害賠償や訴訟費用等の多額のコストが発生することで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが支払う損害賠償額が製造物責任賠償保険(PL保険)でカバーされる保証はありません。
(13)労働安全衛生
当社グループは、各事業所及び建設工事現場等における労働安全衛生管理には万全の対策を講じていますが、不測の事故、職場環境の不備・欠陥等により重大な労働災害や健康被害が発生した場合には、生産活動等に支障をきたすとともに社会的評価の低下を招き、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)資材調達
当社グループは、原材料・部品・機器等を国内外の多くの取引先から調達しており、安定した調達を行うため原材料や部品等の市場動向を注視するとともに、取引先の品質管理を徹底しながら特定の取引先への過度の集中を避け複数化を図っています。しかし、取引先が限定される特殊性のある原材料や部品の調達が滞ることで当社グループの生産活動に支障を来たしたり、原材料・部品等の価格が高騰した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)研究開発
当社グループの研究開発活動に係る情報は、「第2 事業の状況 6研究開発活動」に記載しています。これらの研究開発は、多額の費用と研究期間を要するため、研究開発が計画どおり進まず実用化の機会を喪失したり、市場ニーズとの不整合が生じ実用化に至らなかったり、実用化しても十分な成果が得られず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(16)知的財産
当社グループは、保有する特許権や実用新案権等の知的財産の適切な管理・保全に努めています。しかし、保有する知的財産が多岐にわたるため、第三者による侵害を完全に防止できない可能性があります。また、当社グループの製品や技術が他社等の知的財産を侵害し、損害賠償等を請求され、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(17)関係会社
当社グループは、多数の関係会社を有しています。これら関係会社は当社と相互に密接な協力体制を築く一方、独立会社として自主的な経営を行っているため、その事業の動向や結果が、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)技術援助契約(導入)
契約会社名 |
契約の相手方・国籍 |
契約の対象品目 |
対価 |
契約の始期・終期 |
川崎重工業㈱ (当社) |
Lockheed Martin Corporation (米国) |
P-3C 対潜哨戒機 |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ (3)技術資料代 (4)技術者訓練費 |
昭和53年6月30日 (平成31年8月31日まで) |
Boeing Intellectual Property Licensing Company (米国)(注)1 |
CH-47 ヘリコプタ |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ (3)技術資料代 (4)技術者訓練費 (5)技術者招へい費 |
昭和60年1月14日 (平成31年7月22日まで) |
|
AgustaWestland Limited(英国) (注)2 |
EH-101 ヘリコプタ |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ (3)技術資料代 |
平成16年9月12日 (平成28年9月11日まで) |
|
Honeywell International Inc. (米国) |
T55-L- 712、712 Aターボシャフトエンジン |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ (3)技術資料代 (4)アニュアルフィー |
昭和59年12月12日 (平成35年5月31日まで) |
|
Saab Kockums AB (スウェーデン) (注)3 |
スターリング エンジン |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ (3)技術指導料 |
平成2年9月30日 (平成52年12月31日まで) |
|
MAN Diesel & Turbo (デンマーク) |
2サイクル陸舶用ディーゼル エンジン |
(1)ロイヤルティ (2)技術資料代 (3)技術者招へい費 (4)技術者訓練費 |
昭和56年5月18日 (平成33年12月31日まで) |
|
Turbomeca S.A. (フランス) |
RTM322 ターボシャフトエンジン |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ |
平成15年12月26日 (平成28年12月31日まで) |
|
Rolls-Royce Power (英国) |
舶用ガスタービンモジュール |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ (3)技術者招へい費 |
平成3年8月28日 (平成28年11月30日まで) |
(注)1 Boeing Intellectual Property Licensing Companyは、Boeing Management Companyより平成23年1月に社名変更している。
2 AgustaWestland Limitedは、AgustaWestland International Limitedより平成24年1月に社名変更している。
3 Saab Kockums ABは、ThyssenKrupp Marine Systems ABより平成26年7月に社名変更している。
(2)技術援助契約(供与)
契約会社名 |
契約の相手方・国籍 |
契約の対象品目 |
対価 |
契約の始期・終期 |
川崎重工業㈱ (当社) |
TECNICAS REUNIDAS, S.A. (スペイン) |
LNGタンク |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ (3)技術者訓練費 (4) 技術者派遣費 |
平成18年5月3日 (平成28年5月2日まで) |
南通中遠川崎船舶工程有限公司 (中国)(注) |
13,360TEU コンテナ船 |
(1)イニシャルペイメント (2)ロイヤルティ |
平成24年3月27日 (8隻目の引渡し日まで) |
|
ENSEADA INDUSTRIA NAVAL S.A. (ブラジル)(注) |
造船所の建設、ドリルシップ建造に関する技術 |
(1) イニシャルペイメント (2) ロイヤルティ (3) 技術者訓練費 (4) 技術者派遣費
|
平成24年5月4日 (平成29年5月3日まで) |
(注)南通中遠川崎船舶工程有限公司及びENSEADA INDUSTRIA NAVAL S.A.は、持分法適用関連会社である。
当連結会計年度は「中計2013」を締め括る年度として、当社グループの有する技術を結集して技術のシナジーを追求しつつ、事業部門と本社技術開発本部とが一体となって、「新製品・新事業」の開発に取り組みました。また、新たな顧客価値の創造を目指し、次世代の「新製品・新事業」を産み出すための基盤技術や、水素サプライチェーンを含む各種機器・システム全般の開発にも力を入れています。
当連結会計年度における研究開発費は436億円であり、各事業セグメント別の主な研究開発の内容及び費用は以下のとおりです。
船舶海洋事業
コア・コンピタンスである低温・高圧ガス技術や潜水艦技術を強化するとともに、天然ガスと重油双方を燃料とする2元燃料エンジンを搭載した新船型LNG運搬船や、海洋分野に向けたAUV※などの水中機器の開発に注力しています。また、水素サプライチェーンの構築に向け、世界初となる液化水素運搬船の実証船開発にも注力しています。
当事業に係る研究開発費は8億円です。
(※ AUV: Autonomous Underwater Vehicle)
車両事業
台車主構造にCFRPを採用し、エネルギーコスト削減や走行安全性・乗り心地向上に寄与する新世代の鉄道車両用台車「efWING※」の機能向上・量産化に向けた開発を行っています。また軽量構体の開発をはじめとした高速化技術や、IoT技術などを活用した車両・台車のインテリジェント化技術、アジア新興国での生産を念頭においたグローバル標準車両の開発に取り組んでいます。更に自社開発の大容量ニッケル水素電池システム「ギガセル®」や、停電時の非常走行を実現する鉄道システム用地上蓄電設備「BPS※」の製造技術向上・低コスト化にも注力しています。
当事業に係る研究開発費は12億円です。
(※ efWING: enviromentally friendly Weight-Saving Innovative New Generation Truck)
(※ BPS: Battery Power System)
航空宇宙事業
次期航空機事業への展開を目指し、P-1固定翼哨戒機/XC-2次期輸送機の近代化・派生型、回転翼機の近代化・派生型、及びロケット衛星フェアリングなどの宇宙機器・システムなどの研究開発を実施するとともに、航空機開発に不可欠な基盤技術の強化を図りました。また、ボーイング777Xなど、次世代民間航空機の生産効率を向上させる自動化・ロボット化技術の開発や、更なる将来を見据えた新材料、新装備システム、革新生産技術などにも注力しています。
当事業に係る研究開発費は43億円です。
ガスタービン・機械事業
ガスタービン部門では、天然ガス燃料の消費量低減やCO2排出量削減のため、工場などで発生する副生水素ガスを混焼するガスタービンに加え、新たに100%の水素を燃料とし、水や蒸気を用いずに低NOx燃焼が可能な水素専焼ドライ・ロー・エミッション(DLE)燃焼技術を開発しました。また航空機エンジンについて、ギア関連技術や革新的な加工技術に関する研究開発に注力しています。
機械部門は、舶用ディーゼルから排出される大気汚染物質を削減するシステム「K-ECOS※」を開発しました。また発電市場向けとして、世界最高の効率と環境性能を誇る大型ガスエンジンの更なる効率向上に向けた技術開発を進めています。
当事業に係る研究開発費は41億円です。
(※ K-ECOS: Kawasaki-ECO System)
プラント・環境事業
世界的な資源有効利用や環境重視のニーズの高まりに対応し、バイオマスなどの未利用燃料を利用できるボイラの改良開発や、ごみ焼却炉の燃焼制御技術の高度化を継続実施中です。また、最新のICT技術や3Dデータを活用した製品の設計・生産プロセスの最適化への取り組みを推進しています。
更に、水素サプライチェーンの構築に向けて、産業用として初となる純国産独自開発の水素液化システムの開発や、液化水素貯蔵・揚荷基地の技術実証を推進しています。
当事業に係る研究開発費は11億円です。
モーターサイクル&エンジン事業
Kawasakiのブランド力強化を目指し、レース活動で得たノウハウを市販モデルにフィードバックし、更なる性能向上を果たした「Ninja ZX-10R」や、Zシリーズの中で最も軽量・コンパクトなスーパーネイキッドモデル「Z125 / Z125 PRO」などの新機種開発を行いました。更に、新興国から先進国まで幅広いユーザを魅了する世界戦略車の新機種開発も進めています。
当事業に係る研究開発費は133億円です。
精密機械事業
油圧機器部門では、ショベル分野における圧倒的なシェア維持を目指し、油圧ポンプ・モータ、コントロール弁などの更なる高性能化や、燃費と操作性の更なる向上を目指した新たな油圧システムの開発に取り組んでいます。また、ショベル以外の建設機械分野や農業機械分野への拡販も見据え、産業車両の油圧変速システムや、それに適した小型軽量・高効率な油圧ポンプ・モータの開発を行いシリーズ展開を進めています。
ロボット部門では、省人化・自動化ニーズに対応すべく、人と産業用ロボットとが共存・協調して安全に作業ができるロボットとして、双腕スカラロボット「duAro」や、大型製品や資材・建材等の超重量物の搬送ニーズに応える超重可搬ロボットなどの開発を行いました。更に、将来市場の大きな伸びが期待される医療・ヘルスケア分野への展開を目指し、医療用ロボットの研究開発にも取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は61億円です。
本社部門・その他
本社技術開発本部は、当社グループの将来に亘る企業価値の向上を目指し、各BUのコア・コンピタンスの強化を図るとともに、事業部門と一体となって「新製品・新事業」開発に取り組んでいます。
また、次の世代の「新製品・新事業」開発に備え、新たな顧客価値創造の源となる基盤技術の育成・強化を進めるとともに、ICT/IoT活用によるものづくり改革や新たなサービス事業の創出についても、技術開発本部と事業部門が協力して取り組んでいます。
更に、国のエネルギー基本計画に盛り込まれている「水素を本格的に利活用する社会(“水素社会”)」の実現を見据え、水素の製造から輸送・貯蔵、利用までのサプライチェーンの早期構築に向けた技術開発を、事業部門と連携して積極的に推進しています。
これら本社部門・その他に係る研究開発費は124億円です。
(1)経営成績
当連結会計年度における連結売上高は、航空宇宙事業や車両事業などの増収により、前連結会計年度比3.6%増加の1兆5,410億円となりました。
営業利益は、航空宇宙事業やガスタービン・機械事業などの増益により、前連結会計年度比10.0%増加し、959億円となりました。
(2)財政状態
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末比5.1%減少し、1兆179億円となりました。これは主として、受取手形及び売掛金の減少によります。固定資産は、設備投資による有形固定資産の増加を主因に、前連結会計年度末比2.2%増加し、6,025億円となりました。
この結果、総資産は前連結会計年度末比2.5%減少の1兆6,204億円となりました。
(負債)
負債全体では、短期借入金などの減少を主因に、前連結会計年度末比3.2%減少し、1兆1,748億円となりました。
(純資産)
純資産の部については、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加、配当金の支払による減少や円高に伴う為替換算調整勘定の減少等により、前連結会計年度末並みの4,456億円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。