第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

業績の概要については「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。

2【生産、受注及び販売の状況】

ソニーの生産・販売品目は極めて多種多様であり、エレクトロニクス機器、ゲーム機やゲームソフト、音楽・映像ソフト等は、その性質上、原則として見込生産を行っています。なお、ソニーはエレクトロニクス6分野(エレクトロニクスはMC分野、G&NS分野、IP&S分野、HE&S分野、半導体分野及びコンポーネント分野の合計)においては、市場の変化に柔軟に対応して生産活動を行っていることから、生産状況は販売状況に類似しています。このため生産及び販売の状況については「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」におけるエレクトロニクス6分野の業績に関連付けて示しています。

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 ソニーのマネジメントが認識している経営課題とそれに対処するための取り組みは以下のとおりです。文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

 世界経済の回復は、全体として緩やかな回復が続いたものの世界的に保護主義・自国利益優先主義の流れがみられました。先進国では、米国経済が個人消費の好調と設備投資や輸出の持ち直しにより回復、欧州経済についても英国のEU離脱の影響はあったものの緩やかな回復基調にあります。また新興国では、国際商品市況の緩やかな回復を背景にロシア経済及びブラジル経済が景気後退を脱する一方で、中国経済は、過剰な生産設備の削減等による成長率の鈍化が続いています。さらに、地政学的紛争、政治的不和、テロなどに関連した経済以外の要因による不安が、一部の国や地域にのしかかっており、世界の経済活動に大きな影響を及ぼす可能性もあります。

 

 ソニーをとりまく経済環境は、主にエレクトロニクス事業における、競合他社からの価格低下の圧力、一部の主要製品における市場の縮小及び商品サイクルの短期化といった要因によって不透明性が増しています。

 

 これらの状況の下、ソニーは2015年2月18日に中期経営方針を発表し、株主資本利益率(以下「ROE」)(当社株主に帰属する当期純利益を株主資本で割って算出)を最も重視する経営指標に据え、中期経営計画の最終年度となる2017年度に、ソニーグループ連結で、ROE10%以上、営業利益5,000億円以上を達成することを目標とし、以下の基本方針のもと、高収益企業への変革を進めています。

 

事業運営の基本方針

・ 一律には規模を追わない収益性重視の経営

・ 各事業ユニットの自立と株主視点を重視した経営

・ 事業ポートフォリオの観点から各事業の位置づけを明確化

 

 事業の特性、市場環境などを踏まえ、各事業を、事業ポートフォリオの観点から「成長牽引領域」、「安定収益領域」、「事業変動リスクコントロール領域」と位置付けた上で、ソニーグループ全体のROE目標に紐づいた、事業ごとの投下資本利益率(ROIC)の目標値を設定し、収益性を重視した事業運営を行います。

 

 これを受けて、ソニーは2017年5月23日に2017年度経営方針説明会を開催し、2015年度~2017年度中期経営計画の進捗、及び2018年度以降のソニーの未来への布石として取り組んでいる施策について説明しました。その要旨は以下のとおりです。

 

1. 中期経営計画(2015年度~2017年度)の進捗

 ソニーは、2012年度からの5年間、「ソニーの変革」と「利益創出と成長への投資」をテーマとする経営を行ってきました。2015年度~2017年度の中期経営計画においては、同計画の最終年度となる2017年度に、「ソニーグループ連結でROE10%以上、営業利益5,000億円以上」という数値目標を掲げ、高収益企業への転換に取り組んできました。ソニーは、現時点で、中期経営計画の最終年度となる2017年度の連結営業利益として、20年ぶりの利益水準となる5,000億円を見込んでいます。ソニーは、中期目標を着実に達成した後も持続的に高い収益を上げ、新しい価値を創出し続ける企業をめざします。

 2016年度までの業績改善の主な要因の1つは、コンスーマーエレクトロニクスの再生と考えております。同領域において、当社創業以来のDNAにも通じる「規模を追わず、違いを追う」という方針の下での事業運営を徹底し、安定的な収益貢献が期待できるまでの再生を実現することができました。

 2017年度の経営数値目標を達成し、さらに2018年度以降も持続的な高収益を実現するためには、コンスーマーエレクトロニクスの安定収益に加えて、G&NS分野の収益拡大、モバイル向けイメージセンサー事業の復活、音楽・金融分野の継続的な高い収益貢献及び映画分野の収益改善が鍵となると考えております。

 

<コンスーマーエレクトロニクスの再生>

・ 苦戦が続いたコンスーマーエレクトロニクスの領域においては、「規模を追わず、違いを追う」という方針での事業運営を徹底した結果、安定的な収益貢献が期待できるまでの再生を遂げることに成功しました。

・ 2004年度から連続して多額の営業赤字を計上していたテレビ事業においては、事業規模の拡大による損益改善をめざす方針から脱却し、2011年11月以降は事業規模が従前の目標の半分以下でも損益を均衡させることのできる体制へと事業構造を変革し、同時に商品の付加価値を向上させることによって黒字化を図る戦略に転換しました。これらの改革が奏功し、2016年度の同事業における営業利益率は約5%までに改善しました。

・ デジタルイメージング事業では、急速な環境変化に素早く対応することで、事業の変革に成功しました。スマートフォンの登場などによりデジタルカメラ市場が大きく変化する中、継続的な固定費の削減に努めると同時にレンズ交換式カメラを中心に商品の付加価値を向上させ、高い収益性を保持してきました。

・ 一方、スマートフォン事業においては、徹底した構造改革と商品・販売地域の絞り込みにより、2016年度の黒字化を達成したものの、同事業の収益性には依然課題も残っています。スマートフォンは、お客様との接点が最も多い「ラストワンインチ」の商品であり、カメラ技術を中心にソニーの最新技術の粋を詰め込むことによって「違い」を実現できる事業である一方で、変化と競争が特に激しい領域でもあります。2017年度は、IoT(Internet of Things、モノのインターネット)などモバイルコミュニケーション分野での新規領域の開拓と併せて、急速な環境の変化にも迅速に対応できるよう、慎重な事業運営を行っていきます。

 

<ゲーム&ネットワークサービス分野の収益拡大>

・ 「プレイステーション」及び「プレイステーションネットワーク」のビジネスは引き続き好調に推移しており、2016年度は「プレイステーション 4」(以下、「PS4®」)のハイエンドモデルである「プレイステーション 4 Pro」(以下、「PS4®Pro」)及びPlayStation®VR(プレイステーション ヴィーアール、以下、「PS VR」)の導入にも成功しました。

・ 2017年度のPS4®の販売台数は1,800万台を予定し、2017年度末には累計販売台数が7,800万台に到達する見通しです。プラットフォームが収穫期を迎える中、PS4®Pro、PS VRといったPS4®の世界をさらに楽しくする商品群に加え、数多くの魅力的なソフトウェアタイトルラインナップや多彩なネットワークサービスを投入してまいります。

・ ネットワークビジネスは、お客様と「プレイステーションネットワーク」のつながりをさらに強めることと、ロイヤルカスタマーの拡大を通じ、PS4®のエコシステムをより一層拡充することで、収益貢献を図ります。

・ PS VRの高品質で全く新しいVR体験は、2016年10月の発売以降、世界中のお客様から高く評価いただいています。PS VR対応のゲームについては既に100を超えるタイトルが発売されていますが、ゲームコンテンツにとどまらず、ゲーム以外のVRコンテンツの開発も積極的に推進していきます。

 

<モバイル向けイメージセンサー事業の復活>

・ デバイス領域においては、環境変化への対応スピードと強みのある事業へのフォーカスが必要であるとの認識のもと、大きな損失を生じていたカメラモジュールの事業については、熊本テックで行っていた外販向け高機能カメラモジュール事業の開発・製造の中止と、中国・広州の生産工場の売却を実施しました。

・ モバイル向けイメージセンサー事業においては、2015年度前半に外部顧客の需要に対する十分な供給ができず、逆に2015年度後半からはハイエンドモデルを中心としたスマートフォン市場の成長鈍化の影響から販売が低迷し、業績が急速に悪化しました。この状況を受けて開始した中国系スマートフォンメーカーを中心とした積極的な拡販活動は、2016年度後半からの業績の改善にも寄与しています。

・ 直近のモバイル向けイメージセンサー市場においては複眼化の加速、フロントカメラの高画質化、動画性能の重視、といったトレンドがありますが、これらは、ソニーが得意とする製品領域が拡大していることを示しており、2017年度は大幅な収益改善及び収益貢献を見込んでいます。

・ ソニーのイメージセンサーは、性能、歩留まり、品質においては高い評価を得ていますが、生産リードタイムや製造コストの面においては改善の余地があると認識しています。車載向けの領域を含めて、将来の成長に必要な投資は行っていく方針ですが、大規模な投資に見合ったリターンを創出すべく、さらなる高収益事業への変革をめざしていきます。

 

<音楽・金融分野の継続的な収益貢献>

・ 音楽分野は、アデルやビヨンセなどのアーティストの楽曲が大ヒットし、大きな利益貢献をもたらしています。アーティストの発掘・育成・プロモーションなどの音楽分野の根幹となる事業の実績に加えて、音楽出版事業を営むSony/ATV Music Publishing LLC及びインディーズのデジタル配信を営むOrchard Media,Inc.の完全子会社化を行うなど、有料ストリーミング市場の拡大を見据え、リカーリング型ビジネスの強化に向けた戦略投資も実施しました。事業環境が大きく変化する音楽業界の中で、安定的な収益基盤を確立すると同時に、㈱ソニー・ミュージックエンタテインメントが取り組んでいるアニメやライブビジネスなど、新たな収益源となる事業の創出でも成果をあげている点がこの分野の強みです。

・ 金融分野は、お客様との「ラストワンインチ」の接点を有するソニーブランドを活かしたリカーリング型のサービス事業として安定した高い収益性を堅持すると同時に、既存の業界にソニーが参入することによって変革をもたらす、という事業モデルのイノベーションのDNAも有しています。ソニーが中長期戦略で重視しているポイントを複数備えた、大変重要な事業と捉えています。

 

<映画分野での取組み>

・ 映画分野は、2016年度、映画製作事業における将来の収益計画を見直した結果、1,121億円の営業権の減損を計上し、2017年度の利益見通しも、中期経営計画の立案当初の水準から大きく下回る見通しです。

・ しかし、同分野はソニーにとって引き続き重要な事業と位置付けており、現在は映画製作事業の収益改善に向けた施策の遂行に優先度を上げて取り組んでいます。

・ ネットワーク化が進行し、映像コンテンツの楽しみ方が多様化することにより、魅力的なコンテンツの需要がますます高まっている環境の下、ソニーはコンテンツクリエイターとこれまで以上に強固な関係を構築し、質の高いコンテンツの創出に取り組んでまいります。

・ 映画製作事業は事業モデルの性質から結果が出るまでには一定の時間を要しますが、変革に取り組み、高い収益を創出する事業へ転換させていきます。

 

2. 2018年度以降に向けて

 ソニーは、「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続ける」というミッション、「テクノロジー・コンテンツ・サービスへの飽くなき挑戦で、ソニーだからできる、新たな『感動』の開拓者となる」というビジョンの下、エレクトロニクス、エンタテインメント及び金融の領域で多様な事業を展開しています。そして、これらの多様な事業ドメインを、「SONY」というブランドの下で共通の価値観を持って運営していけることが、ソニーの強みです。

 中長期の持続的成長に向けては、①コンスーマーに向き合い、お客様に感動をもたらす「ラストワンインチ」の存在であり続けること、②一人一人のお客様との継続したお付き合いを通して安定的に収益を拡大していくリカーリング型ビジネスモデルの強化、そして、③ソニーが持つ多様性と新しい事業への挑戦、の3点が特に重要となると考えております。

 

① コンスーマー(KANDO@ラストワンインチ)

・ ソニーは、お客様に最も近い場所(=「ラストワンインチ」)で、映像や音楽など様々な体験のインターフェースになる商品を開発し、世界中のお客様にお届けすることのできるブランドです。2017年春に発表した4K有機ELテレビ「ブラビア」や、世界初のスーパースローモーション機能と4K HDRディスプレイ搭載のスマートフォン「Xperia XZ Premium」、フルサイズミラーレス一眼カメラ「α9」などに代表される、五感を刺激することでお客様の感性に訴え、感動をもたらす「KANDO@ラストワンインチ」を体現する商品を今後もつくり続けていきます。加えて、ソニーが新たな市場を創造すべくグループ一丸となって取り組んでいる領域の一つがVRです。VRはソニーグループが有するカメラや撮影技術、コンテンツ制作力、豊富なエンタテインメント資産などをフルに活用できる領域ととらえており、新たな事業ドメインとして育成する取り組みを行っています。

 

② リカーリング型ビジネスモデルの強化

・ 現行の中期経営計画の一環として、安定した高収益創出のために、お客様との継続したお付き合いを前提としたリカーリング型事業の強化を実行しています。

・ ソニーにおけるリカーリング型事業は、①金融、ネットワークサービス、テレビチャンネル運営事業などのサブスクリプションモデル、②デジタル一眼カメラのレンズやゲームソフトなどの追加購入モデル、③音楽制作、テレビ番組制作などのコンテンツ事業に代表されます。今後は、サブスクリプションモデルをはじめとする、お客様と直接つながるサービス領域の将来性が特に高いと考えています。

・ リカーリング型事業の強化により、各事業の収益モデルを安定化させ、持続的に高収益を生み出すことで、新しい価値を創出し、将来へとつないでいくことができると考えております。

 

③ ソニーが持つ多様性と新しい事業への挑戦

・ ソニーは創業以来、自らの強みと他社の強みを結び付けることで新たな事業に参入し、既存の業界に新たな価値を提供して成長を続けてきました。他社との合弁で事業を開始した音楽事業及び金融事業や、グループ内に抱える多様な事業の知見を持ち寄り新たな事業を創出したゲーム事業などが、その代表例です。また、最近では、オリンパス株式会社との合弁で事業を開始したメディカル事業、LifeSpace UXや新規事業創出プログラム(SAP)などの取り組みを通じて一定の成果が出始めており、今後も多様な事業領域を有する強みを生かし、有望な新規事業の創出を積極的に行っていきます。

・ 優れた外部の研究者やベンチャー企業などとの協業を推進すべく創設したコーポレートベンチャーキャピタル「ソニーイノベーションファンド」は、既に多数の投資実績を生み、将来に向けた布石を打っています。

・ 人工知能(AI)やロボティクスを活用した新たな事業創出の取り組みに関しては、AIにロボティクスという動くもの、そしてセンシングの技術を組み合わせることによって、ソニーの強みを発揮することが可能であると考え、複数のプロジェクトを進めています。

 

 2017年度の数値目標を達成した後も、中長期的に高収益を継続していくためには、ソニーグループとしても、また各事業それぞれにおいても、現状維持ではなく、新しいことへの取り組みを強化していくことが不可欠となります。持続的に利益を創出し、社会に新たな価値を提供し続けるソニーであり続けるべく、「One Sony」で取り組んでまいります。

 

環境中期目標 「Green Management(グリーンマネジメント) 2020」

 2015年6月にソニーは、2016年度~2020年度のグループ環境中期目標 「Green Management(グリーンマネジメント)2020」を策定しました。この中期目標では、以下の3点を注力すべき重点項目とし、環境負荷を低減するための様々な施策を推進しています。

・ エレクトロニクス事業においては、2020年度までに製品の年間消費電力量の平均30%削減(2013年度比)、エンタテインメント事業では、コンテンツの活用を通じて全世界で数億人以上に持続可能性の課題を伝えることをめざすなど、各事業領域で特色を活かした目標を策定し、施策を推進

・ 製造委託先や部品調達先に温室効果ガス排出量や水使用量などの削減を求めるなど、バリューチェーン全体における環境負荷低減の働きかけを強化

・ 再生可能エネルギーの導入を加速

 

 ソニーグループは、2050年までに自社の事業活動及び製品のライフサイクルを通して「環境負荷ゼロ」を達成することを長期的ビジョンとして掲げています。「Green Management 2020」は、「環境負荷ゼロ」達成のために、2020年度までに成し遂げなければならないことを2050年から逆算して定めています。「Green Management 2020」の実行により、「環境負荷ゼロ」達成に向けて環境負荷低減活動をさらに加速していきます。

 

 また、ソニーはWWF(世界自然保護基金)が実施する温室効果ガス排出削減プログラムであるクライメート・セイバーズ・プログラムに2016年度以降も引き続き参加します。気候変動にかかる目標については、その難易度及び進捗状況について、WWF及び第三者認証機関による検証を受けています。

 

 グループ環境中期目標 「Green Management(グリーンマネジメント)2020」及び環境への取り組みの詳細は、ソニーのCSRレポート(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr_report/)をご参照ください。

 

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあると考えております。なお、当該事項は、本書提出日現在において入手し得る情報にもとづいて判断したものです。

 

(1) ソニーはエレクトロニクス事業を中心に一層激化する競争を克服しなければなりません。

 ソニーのエレクトロニクス事業は、新規参入を含む競合他社と、価格や機能を含む様々な要素で競い合っています。イメージセンサーのように、現在ソニーが強い競争力を持つと考える製品においても競合他社がソニーの技術力に追い付き、その優位性を保てなくなる可能性もあります。また、コンスーマーエレクトロニクス事業においては、変化し一層多様化する消費者の嗜好に訴求する製品を作るため、あるいは、消費者の多くがソニーと同種の製品をすでに所有しているという状況に対処するために、ソニーはより優れた技術を開発し、消費者の嗜好を予測し競争力ある価格と特長を持った、魅力的で差異化された製品を迅速に開発する必要があります。ソニーは、様々なコンスーマー製品において、一層激化する競合企業との価格競争、小売業者の集約化及び製品サイクルの短期化による価格低下圧力の高まりに直面しています。ソニーの業績は、変化し一層多様化する消費者の嗜好に合った製品を、効率的に開発し、様々な販売チャネルを通じて、競争力のある価格で提供し続けるソニーの能力に依存しています。もし、ソニーが技術的、あるいはその他の競争力を持つ分野においてその優位性を保てなくなる場合、ソニーのコンスーマー製品に対して頻繁に影響を及ぼす価格下落について効果的に予測し対応できない場合、既存の事業モデルあるいは消費者の嗜好が変化した場合、又はコンスーマー製品の平均販売単価の下落スピードが製造原価削減のスピードを上回った場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) ソニーは、競争力を維持し消費者の需要を喚起するため、既存の製品、半導体、コンポーネント、及びサービスへの影響を管理しながら、新しい製品、半導体、コンポーネント、及びサービスの頻繁な導入及び切り替えを適切に管理しなければなりません。

 ソニーは、非常に変化が激しく厳しい競争環境におかれているコンスーマーエレクトロニクス製品やネットワークサービス、ならびに携帯電話業界において、成熟市場及び成長市場の両方で、製品、イメージセンサーなどの半導体やコンポーネント、サービス、及び技術を導入し、これらを拡充することにより、消費者の需要を喚起し続けていく必要があります。新製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの導入及び切り替えの成功は、開発をタイムリーにかつ成功裡に完了させること、市場における認知度、ソニーが効果的なマーケティング戦略を企画・実行する能力、ソニーが新製品や生産立ち上げにともなうリスクを管理できる能力、新製品のためのアプリケーションソフトウェアが入手できること、予測される製品需要に沿って購入契約や在庫水準を効果的に管理できること、予測される需要を満たす適正な数量の製品を確保できること、導入初期における新製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの品質その他の問題に関するリスクなど、数多くの要素に依拠しています。加えて、スマートフォンやその中のイメージセンサー、ゲーム機器のような既存の製品やサービスの市場は、顧客の嗜好の変化や、新しい、あるいは競合する技術の導入などにより縮小する可能性があります。このような状況において、ソニーは、魅力的な新しい製品やサービスを提供するとともに、既存の製品やサービスの付加価値向上を継続して図ることで消費者の需要の変化に対応する必要があります。したがって、新たな製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの頻繁な導入及び切り替えを適切に管理できない場合、ソニーの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) ソニーは、より高度に専門化した企業や経営資源において優位性を有する企業との競争にさらされています。

 ソニーは、業種の異なる複数のビジネス分野に従事しており、さらにそれぞれの分野において数多くの製品・サービス部門を有するため、大規模な多国籍企業から、数少ないビジネス領域に特化し高度に専門化した企業にいたるまで、業界の既存企業や新規参入企業などの多くの企業と競争しています。加えて、ソニーの外部委託生産パートナーが、現在ソニーの供給業者として生産している製品の市場に自社ブランドで参入し、当該市場で競合相手となる可能性もあります。また、既存の及び潜在的な競合他社がソニーより高度な財務・技術・労働・マーケティング資源を有する可能性があり、いくつかの事業領域で競合他社と同程度の資金投入や投資もしくは製品の値下げを行うことができない可能性もあります。このように、既存及び新規参入の競合他社に対して効率的に対応できない場合、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) ソニーの研究開発投資が想定した成果をもたらさない可能性があります。

 ソニーは、消費者の嗜好の変化や急速な技術革新という特徴をもつ厳しい市場で競争しています。技術革新が進み、技術的な模倣が比較的に容易になったことにより、新しい製品やサービスが陳腐化するスピードが早まり、熾烈な競争と継続的な価格下落につながる傾向が強まっています。このような環境の下、ソニーは、製品の競争力を強化するため、特にイメージセンサー及びゲーム&ネットワークサービス(以下「G&NS」)分野といった成長分野において、高水準の研究開発投資を継続的に行っている一方で、成熟していると考えられる、あるいは成長余地が限られている市場における費用を抑制する予定です。しかしながら、ソニーが成長市場を特定し、その市場の主たる傾向を成功裡に評価できる保証はなく、このような研究開発投資が革新的な技術を生み出さなかったり、想定した成果を十分迅速にもたらさなかったり、又は競合企業が技術開発に先行する可能性があります。その結果、市場のニーズに合った競争力のある新製品やサービスをタイムリーに商品化できない場合、ソニーの業績及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) ソニーの事業構造の変革は多額の費用を必要としますが、その目的が達成できない可能性があります。

 ソニーは、収益性、事業の自立性、株主価値、事業ポートフォリオ全体の中で明確に定義された各事業の位置づけに焦点を当てた経営体質強化施策を継続して実施しています。ソニーは2014年度、2015年度及び2016年度にそれぞれ980億円、383億円及び602億円の構造改革費用を計上しました。2016年度には、電池事業の譲渡にともなう減損423億円が含まれています。2017年度には、約150億円の構造改革費用を計上する見込みですが、景気後退の影響や、事業売却を含む不採算事業からの撤退などにより、追加的にもしくは将来において多額の構造改革費用を計上する可能性があります。例えば、2016年度においては、当初約120億円にとどまると見込まれていた構造改革費用が、最終的に602億円となりました。これは、電池事業の譲渡の決定にともない追加の構造改革費用を計上したことによるものです。これらの構造改革費用は、主として、売上原価、販売費及び一般管理費、又はその他の営業損益(純額)に計上され、ソニーの営業損益及び当社株主に帰属する当期純損益に悪影響を及ぼします(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『20 構造改革にかかる費用』参照)。ソニーは、製造オペレーションの最適化、外部委託生産の活用、グループ全体の販売費及び一般管理費の削減、間接部門及び情報処理業務の外部委託化、セールス&マーケティング、生産、物流、調達、品質、研究開発などの機能にわたるビジネスプロセスの最適化に向けた取り組みを継続的に行っています。

 内的又は外的な要因により、前述の構造改革施策による効率性の向上及びコスト削減が予定どおり実現しない可能性があり、また構造改革による効果が現れたとしても市場環境の予想以上の悪化により、収益性の改善が予定している水準に達しない可能性もあります。構造改革の目的達成を妨げ得る内的な要因には、構造改革計画の変更、利用可能な経営資源を効果的に用いて構造改革を実行できないこと、事業部門間の連携ができないこと、新しい業務プロセスや戦略の実行の遅れ、構造改革実施後のビジネスオペレーションを効果的に管理及び監視できないこと、などがあります。一方、外的な要因には、例えば、許認可等を予定どおりに取得できないことや、労働規制、労働組合との間の協約、及び日本における労働慣行を含む地域ごとの法律や規制上の制約による、追加的又は予期せぬ負担などがあり、これらの影響により、ソニーが構造改革を計画どおりに実行できない可能性があります。構造改革プログラムを完全に成功裡に実行できない場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。加えて、構造改革費用の支出により、営業キャッシュ・フローが減少する可能性があります。例えば、電池事業の株式会社村田製作所(以下「村田製作所」)への譲渡について、当初は2016年度中の取引完了を見込んでいたため、2017年度における電池事業における営業損失及び譲渡にかかる費用の計上を見込んでいませんでしたが、関係当局の審査の進捗状況を踏まえて譲渡に関する日程を変更したため、2017年度においても損失及び費用を計上する見込みです。

 

(6) ソニーによる買収、第三者との合弁ならびに出資は成功しない可能性があります。

 ソニーは、技術獲得や効率的な新規事業開発のため、又は事業の競争力強化のため、買収、第三者との合弁及びその他の戦略的出資を積極的に実施しています。例えば、ソニーは2016年2月に、LTE(Long Term Evolution)技術に特化した製品の開発と販売を行うAltair Semiconductor社を買収しました。また、ソニーは2017年2月に、インド国内外に有力なスポーツネットワークを有するTEN Sports Networkの二段階買収における第一段階の譲渡を完了しました。ソニーは、投下資本の軽減、営業費用の削減、ならびにリスクの第三者との共有による軽減を目的として、これまでに第三者との合弁を実施してきましたが、今後もその可能性があります。さらに、ソニーは、当初の目的を既に達成したなどの理由により、合弁事業の持分を売却したり、合弁パートナーの持分を買収したりすることがあります。例えば、ソニーは、2016年9月に、マイケル・ジャクソン遺産管理財団であるEstate of Michael Jackson(以下「MJ財団」)との音楽出版に関する合弁会社であるSony/ATV Music Publishing LLCにおいてMJ財団が保有する50%の持分を取得し、同社をソニーの完全子会社としました。

 ソニーが事業買収を実施し、それを統合するにあたり、多額の費用が生じる可能性があります。加えて、ソニーは、戦略上の目的や予定していた売上増加及び費用削減を実現できない可能性や、買収先事業において核となる人材を確保できない可能性もあります。また、買収した事業に関連する債務を承継することにより、ソニーの業績は悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、現在、いくつかの合弁会社や戦略的パートナーシップに出資を行っており、また、将来新たな出資を行う可能性があります。ソニーと相手企業が競争状況の変化や、戦略や文化の違い、シナジー実現の失敗その他の理由により共通の財務目的を達成できない場合、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、ソニーと相手企業が共通の財務目的を達成する過程にあったとしても、パートナーシップの期間中、ソニーの業績に短期的又は中期的な悪影響を及ぼす可能性があります。これらの合弁や戦略的出資企業について、ソニーが利害の対立に直面するリスクやキャッシュ・フローへの支配権を含む合弁及びその他の戦略的出資に対する支配権を十分に確保できないリスクがあり、またソニー固有の技術やノウハウが漏洩するリスクも増加します。また、ソニーブランドを使用する合弁会社の行為もしくは事業活動により、ソニーの評判が傷つけられる可能性があります。さらに、合弁事業の業績などの結果によっては、ソニーは追加的な出資や債務保証を求められる可能性や、合弁事業の相手企業の買収、売却あるいは、合弁解消に至る可能性もあります。加えて、持分法適用関連会社への投資価値が投資簿価を下回り、それが一時的でないと判断される場合には、ソニーは減損を計上することになり、契約その他の理由によりそれらの会社の株式等を処分できない場合には、損失が膨らむ可能性があります。

 

(7) ソニーには、生産能力増強のための設備投資もしくは出資を回収できないリスクがあります。

 ソニーは、エレクトロニクス事業において、製造設備に対する投資を継続的に行っています。こうした例として、特にスマートフォンに使用するイメージセンサーの需要に対応する目的で行うイメージセンサー製造設備に対する追加投資があげられます。ソニーは、2015年度に株式会社東芝から半導体関連施設、設備及びその他関連資産を190億円で取得する契約を締結し、2017年3月までにほぼ全ての資産を取得しました。ソニーは、イメージセンサーの生産能力増強のために2016年度に約450億円を投資し、2017年度にも約1,100億円を投資する見込みです。しかしながら、市場環境の変化にともない需要が減少し、想定した販売規模を達成できない場合、あるいは供給過剰により製品の単価が下落した場合、ソニーがこうした設備投資もしくは出資の一部又は全部について、回収することができない、あるいは回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。特に、イメージセンサーについては、売上の多くをスマートフォンに依存しており、スマートフォン市場における消費者の需要及び競争環境、あるいは主要顧客の営業方針、業績及び財政状態によっては、想定した販売規模が達成できない可能性があります。これらの場合、当該設備投資もしくは出資を行った資産が減損の対象になり、ソニーの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) ソニーの売上や収益性は卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者の業績に影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者に依存しており、その多くが競合他社の製品を同時に取り扱っています。例えば、ソニーモバイルコミュニケーションズ㈱は多くの国でスマートフォンの販売について携帯電話キャリアを通じた販売に依存しています。多くの卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者の業績及び財政状態は、オンライン小売業者との競争や低迷する経済環境に悪影響を受けてきました。

 ソニーは、卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者に対して、これらの業者がソニーの製品を市場に導入し、販売を促進するインセンティブを与えるプログラムに資金を投入しています。しかしながら、それらのプログラムによって消費者が競合他社の製品の代わりにソニー製品を買うように促されることで、大きな利益や追加収入を生むことを保証するものではありません。また、携帯電話キャリアを通じて販売されるソニーのスマートフォンは、キャリアからの補助金を受ける場合がありますが、今後もそのような補助金が継続する保証はなく、また、これらのキャリアとの契約更新、あるいは別のキャリアとの契約を締結するにあたって、従来と同額の補助金で合意できる保証はありません。

 ソニーは多くの製品を自社のオンラインストアや直営店を通じて消費者に直接販売しています。一部の卸売事業者や小売事業者はソニーの直接販売が、彼らのソニー製品の販売代理店や再販売事業者としての営業上の利害と対立すると受け取る可能性があります。そのような場合には、再販売事業者がソニー製品を取り扱ったり、販売するためにリソースを投入する意欲を阻害したり、ソニー製品の取り扱いを限定的なものにとどめたり、中止したりする可能性があります。

 これらの卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者の財政状態が悪化したり、これらの事業者がソニー製品を取り扱うことを中止したり、ソニー製品に対する需要が不透明になるなどの要因により、これらの事業者がソニー製品の発注やマーケティング、販売奨励金、販売を減少させるような場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(9) ソニーはグローバルに事業を展開しているため、事業を行っている国において広範な法規制の適用を受けるとともに、企業の社会的責任や調達活動に関する消費者の関心の高まりに直面しています。これらの法規制や消費者の関心は大きく変わる可能性があり、かつ、ソニーの費用の増加、事業活動の制約、評判への悪影響につながる可能性があります。

ソニーは、広告、データ保護、消費者保護、輸出入、腐敗防止、反競争的行為、環境保護、労働安全衛生、労働慣行、人権尊重といった様々な観点から、事業に影響を与える広範囲な法規制の適用を受けます。これらの中には、製造事業所・非製造事業所における温室効果ガス排出削減、大気汚染、水質汚染、及び有害物質の使用に関する法規制、一部製品の省エネ、製品や電池・包装材料のリサイクルに関する法規制、原材料調達に関する法規制、いわゆる現代奴隷に関する法規制、個人を識別できる情報(以下「個人情報」)の収集、使用、保有、保全及び移転に関する法規制などが含まれています。例えば、2018年5月に施行予定の欧州連合一般データ保護規則では、欧州域内の居住者の個人情報の取扱いについて、新たに世界規模での広範な規制を課されることが予定されております。なお、多くのケースにおいて、これらの法規制により、顧客の個人情報だけでなく、ソニーの子会社間での従業員の個人情報の移転も制約を受ける可能性があります。

これらの法規制を遵守することは事業活動における負担をともなうもので、費用が発生する可能性があります。これらの法規制は継続的に制定され、その結果、管轄毎に異なるものとなる可能性があり、その遵守や事業遂行にかかる費用が増加する可能性があります。法規制やその解釈の変更によりこれらの費用が将来増加する可能性があり、その結果として、消費者にとってのソニー製品の魅力の低下、新製品の導入の遅延、あるいはソニーの事業慣行の変更や制約に結びつく可能性があります。ソニーは適用を受ける法規制を遵守するための内規や手続を整備していますが、ソニーの従業員、請負業者、及び代理人がそれらの法規制やソニーの内規や手続に違反しないという保証はなく、ソニーが罰金、刑罰、法的制裁の対象になったり、ソニーの事業遂行への制約や評判への悪影響につながる可能性があります。

 加えて、企業の社会的責任や調達活動に対し、全世界的に規制当局や消費者の注目が高まり、また、これらの事項に関する情報開示の法的規制が強化されています。特に、アジア地域で操業する電子部品の製造事業者や製造/設計委託事業者における労働環境を含む労働慣行に対する関心が持たれています。ソニーは製品の製造に多くの部品や材料を使用しており、それらの部品や材料の供給をサプライヤーに依存しているものの、サプライヤーの調達活動や雇用慣行を直接的に管理していないため、これらの領域における規制の強化や消費者の関心の高まりによって、ソニーの法規制の遵守にかかる費用が増加する可能性があります。こうした消費者の関心の高まりに対してソニーが適切に対処していないとみなされた場合には、それが法的に求められているかどうかに関わらず、消費者が他社の製品を選択することにつながり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 外部のビジネスパートナーへの依存度が高まることにより、ソニーの、財務上のリスク、ブランドイメージや評判を傷つけるリスク、及びその他のリスクが高まる可能性があります。

 限られた経営資源の中で迅速な事業展開や業務効率化を図る必要性が高まっていることから、ソニーは部品及びコンポーネント、ソフトウェア、ならびにネットワークサービスに関して、外部の供給業者及びビジネスパートナーへの依存度が高まっています。また、モバイル製品及びテレビ向けのアンドロイドOSなどのソフトウェア技術や、サービスを提供する外部のビジネスパートナーにも依存しています。その結果、ソニーの製品やサービスが、部品及びコンポーネント、ソフトウェア、又はネットワークサービスに関する品質問題の影響を受ける可能性があります。加えて、外部のソフトウェア技術への依存は、ソニーが製品を競合の製品と差異化することをより困難にする可能性があります。また、ソニーの製品及びサービスに使用される外部の部品及びコンポーネント、ソフトウェア、ならびにネットワークサービスが、著作権又は特許侵害で訴訟を受ける可能性があります。さらに、ソニーをとりまく経済環境は、特にエレクトロニクス事業における、競合他社からの価格低下の圧力、一部の主要製品における市場の縮小及び商品サイクルの短期化といった要因によって不透明性が増しています。このような環境において、外部のビジネスパートナーが、ソニー製品やサービスに対するサポートを打ち切ったり、契約条件を変更したり、ソニーの製品やサービスではなく、ソニー以外の競合他社及びエレクトロニクス分野以外の顧客への製品やサービスを優先したりする可能性があります。部品及びコンポーネント、ソフトウェア、ならびにネットワークサービスに関する外部の供給業者及びビジネスパートナーへの依存に起因する問題は、ソニーの業績や、ブランドイメージ又は評判に悪影響を及ぼすことがあります。また、ソニーではコンスーマーエレクトロニクス事業において、製品や部品の供給に関し外部委託生産を活用しています。ソニーがこのような外部委託関係を円滑に運営できない場合、又は自然災害、サイバー攻撃、あるいはその他の事象がソニーのビジネスパートナーに影響を及ぼす場合、ソニーの生産活動に支障を与える可能性があります。また、ソニーは目標生産量や品質水準に到達できない、又はソニー固有の技術やノウハウが漏洩するリスクが生じる可能性があります。加えて、ソニーは、資材調達・物流・販売・データ処理・人事・経理その他のサービスなど広範囲な業務を外部のビジネスパートナーに委託しています。外部のビジネスパートナーが法規制を十分に遵守しなかった場合や、第三者の知的所有権を侵害した場合、もしくは事故、自然災害、サイバー攻撃、あるいは経営破綻によりその事業やサービスが停止した場合には、ソニーの事業に影響を及ぼす可能性もあります。さらに、ビジネスパートナーの情報セキュリティへの侵害があった場合、ソニーの専有情報、知的財産ならびに従業員の情報、及びソニーの顧客、供給業者ならびにその他のビジネスパートナーに関連するデータを含むソニーのビジネス情報への不正なアクセスが行われる可能性があります。

(11) ソニーは市況変動の大きい環境のなか、部品やコンポーネントの調達及び、製品、部品やコンポーネントの在庫管理を効率的に行う必要があります。

 エレクトロニクス事業において、ソニーはモバイル製品向けチップセットなどの半導体や液晶パネルなど、大量の部品やコンポーネントを自社製品に使用しています。これら部品やコンポーネントの供給量や価格の変動は、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。例えば、部品やコンポーネントの供給不足や、原材料の価格変動が生じた場合、これらの価格が高騰しソニーの製品原価が上昇する可能性があります。また、ソニーが一社に調達を依存している部品やコンポーネントが供給不足になったり、その出荷が遅延した場合や、カスタムコンポーネントの生産能力に限界があったり、新しい技術を使用する製品やコンポーネントの初期生産能力に制約がある場合には、ソニー又はビジネスパートナーの生産事業所での稼動調整又は稼働停止の可能性があります。

 ソニーは消費者需要の予測にもとづいて事前に決定した生産量及び在庫計画に沿って部品やコンポーネントを発注していますが、そうした消費者需要の変動は大きく、また予測が難しいものです。不正確な消費者需要予測や不充分な経営管理により在庫不足もしくは過剰在庫が発生し、その結果生産計画に混乱が生じて売上の機会損失や在庫調整につながる可能性もあります。ソニーでは、部品、コンポーネントや製品が陳腐化したり、在庫が使用見込みを上回ったり、もしくは在庫の帳簿金額が正味実現可能価額を上回る場合、在庫の評価減を行います。例えば、2014年度においては、PlayStation®TV(以下「PS TV」)の販売台数が当初の想定に達しなかったため、PlayStation®Vita(以下「PS Vita」)及びPS TV用の部品に対する評価減112億円を計上しました。さらに、2016年度においては、半導体分野においてモバイル機器向けの一部のイメージセンサーの製品に関する評価減65億円を計上しました。過去においては自然災害により供給業者が影響を受け、その結果、部品及びコンポーネントの供給不足が発生したことがあり、将来も同様の状況に起因する供給不足が発生する可能性があります。過去にこのような売上機会の損失及び在庫調整、ならびに部品及びコンポーネントの供給不足がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼしたことがあり、今後も及ぼす可能性があります。

 

(12) ソニーの売上及び収益性は、ソニーの主要市場の経済動向に敏感です。

 ソニーの売上及び収益性は、ソニーが事業を営む主要市場の経済、雇用、その他の動向に敏感です。これらの市場が深刻な景気後退に陥り、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。2016年度のソニーの売上高及び営業収入(以下「売上高」)において、日本、米国、欧州における構成比はそれぞれ31.5%、22.0%、21.5%でした。

 ソニーの業績は、消費者及び法人顧客の需要や、小売事業者・卸売業者及び再販売事業者の業績に依存しています。ソニーの主要市場における経済状況の悪化や今後悪化するという見通しにより、最終消費者の購買、消費意欲が低下した結果、消費が低迷する可能性があります。また、キャッシュ・フローの不足、資金調達の困難、消費者の需要減などから経営が悪化した法人顧客やそのほかのビジネスパートナーからのソニーの製品やサービスに対する需要が減少する可能性があります。経営が悪化した法人顧客によるソニーに対する義務の不履行も、ソニーの業績やキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性もあります。ソニーの外部供給業者も同様の困難を被り、ソニーに対する契約義務の履行能力に影響を受ける可能性があります。その結果、ソニーが競争的な価格で製品やサービスを調達できなくなる場合には、ソニーの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 また、世界的な景気動向は、その他の様々な影響を与える可能性があります。例えば、構造改革費用の積み増し、年金及びその他の退職給付債務にかかる費用の増加及び追加的な資金拠出、資産の減損の追加的な計上などを通じて、ソニーの業績、財政状態及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼしたことがあり、今後も及ぼす可能性があります。

 

(13) ソニーの業績及び財政状態は外国為替変動の影響を受ける可能性があります。

 ソニーの製品の多くは開発、製造された国・地域と異なる国・地域で販売されるため、ソニーの業績と財政状態は外国為替相場の変動に影響を受けます。例えば、エレクトロニクス事業においては、研究開発費や本社間接費は主に円で、原材料、部品及びコンポーネントの調達や外部委託生産を含む製造費用は主に米ドル及び円で発生しています。売上は日本・米国・欧州・中国・新興国市場を含むその他地域に分散して発生し、それぞれの地域の通貨で計上されています。結果として、特に米ドルに対する大幅な円安及びユーロ安や、ユーロに対する大幅な円高、及び新興国通貨に対する米ドル高はソニーの業績に悪影響をこれまでも及ぼしており、今後も及ぼす可能性があります。また、ソニーの連結損益計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成されていることから、外国為替相場の変動が、かかる換算にともないソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、近年では中国や新興国市場を含むその他地域におけるビジネス拡大とともに、これら地域の通貨の米ドル及び円に対する為替レートの変動の影響も大きくなっています。中長期的な為替レート水準の変化は、ソニーの経営資源のグローバルな配分を妨げたり、研究開発、資材調達、生産、物流、販売活動を、為替レート変化の影響後でも収益をあげられるように遂行する能力を低下させる可能性があります。

また、ソニーは、輸出入取引により生じる短期の外貨建債権債務(純額)の大部分を取引予定の事前にヘッジしていますが、かかるヘッジ活動によっても、為替レートの変動リスクを完全に取り除くことはできません。

さらに、ソニーの連結貸借対照表は世界中の各子会社の現地通貨ベースの資産及び負債を円換算して作成されるため、米ドルやユーロならびにその他の外国通貨に対して円高が進行すると、ソニーの自己資本に悪影響を与える可能性があります。

 

(14) 格付けの低下や国際金融市場における深刻かつ不安定な混乱状況は、ソニーの資金調達や資金調達コストに悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの業績及び財政状態の悪化は、ソニーの信用格付け評価にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。格付けの低下は、資金調達コストの上昇を招き、ソニーのコマーシャルペーパー(以下「CP」)及び中長期債市場からの受諾可能な条件での調達に悪影響を与える可能性があります。

 また、国際金融市場が深刻かつ不安定な混乱状況に陥った場合、金融その他の資産価格全般に下落圧力が生じたり、資金調達に影響が生じる可能性があります。従来、ソニーは、営業キャッシュ・フロー、CP及び中長期債などのその他の債券の発行、銀行やその他の融資機関からの借入金などにより資金を調達してきました。しかしながら、将来にわたってこのような資金源から受諾可能な条件でソニーの必要を満たすのに十分な資金調達が可能となる状況が継続するという保証はありません。

 その結果、ソニーは弁済期限到来時のCPや中長期債の返済、その他事業遂行上必要ある場合や必要な流動性を賄うために、金融機関と契約しているコミットメントラインや資産の売却など代替的な資金源を活用する可能性がありますが、そのような資金源から受諾可能な条件でソニーの必要を満たすのに十分な資金調達ができない可能性があります。その結果、ソニーの業績、財政状態及び流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) ソニーは、様々な国で事業を行うことのリスクにさらされています。

 ソニーは、世界各地において事業活動を行っており、このような国際的な事業遂行には課題が生じることもあります。例えば、エレクトロニクス事業において、中国やその他のアジアの国々において製品、部品及びコンポーネントを生産、調達しているため、これらの地域外の市場に製品を供給するのに必要な時間が長くなり、変化する消費者需要に対応することがより難しくなる可能性があります。さらにソニーは、複数の国において、ソニーにとって望ましくない政治的・経済的な要因により、事業を企画・管理する上で困難に直面する可能性があります。この例としては、武力紛争、外交関係の悪化、当該国・地域内での文化的・宗教的な摩擦、期待される行動規範からの逸脱、現地の各種法規制や貿易政策及び税法の不遵守、ならびに十分なインフラの欠如などがあります。加えて、特に、主要な市場及び地域における現地部品調達規制・事業及び投資許認可要件・為替管理・輸出入管理・資産国有化・海外での事業及び投資からの利益の本国送金制限などの現地の法規制や貿易政策及び税法の変更は、ソニーの業績に影響を与える可能性があります。例えば、ソニーやパートナーが生産活動を行う中国やその他の国々において、労働争議の発生及び労働法制や政策の変更など労働環境が著しく変化した場合、ソニーの製品及び部品の生産や出荷の妨害、人件費の高騰あるいは優秀な従業員の不足が発生することなどにより、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。不安定な国際又は国内政治・軍事情勢が今後生じた場合、ソニーやそのビジネスパートナーの事業活動が阻害されたり、消費者の購買意欲を低下させたりすることにより、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、一部の国において、前述の要因や、自然災害及び疫病などその他の要因による混乱から回復するのに要する時間が長くなる可能性があります。さらに、ソニーの事業活動にとって引き続き重要である一部の新興国市場において前述のリスクの影響を受けやすいことが、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(16) ソニーの成功は、技術やマネジメントなどの分野における有能な人材の採用・確保に依存しています。

 ソニーが、ますます競争が激しくなる市場において、ネットワーク関連製品、ゲーム機やソフトウェア、映画、テレビ番組や音楽などのコンテンツ、又は金融商品を含む製品やサービスの開発、設計、製造、マーケティング及び販売において継続的に成功を収めるためには、経営陣やその他のマネジメント、ハードウェアやソフトウェアエンジニアなどクリエイティブで有能な人材を惹きつけ確保することが必要となります。しかしながら、このような有能な人材に対する需要は強く、ソニーが将来の事業に必要な人材を採用・確保できない可能性があります。加えて、事業分離や構造改革ならびにその他の事業構造変革の施策により、経験豊かな人材やノウハウが意図せず喪失してしまう可能性があります。そのような事態が生じた場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(17) ソニーはハードウェア、ソフトウェア、エンタテインメント・コンテンツ、ならびにネットワークサービスの競争力を向上させるための、異なる事業ユニット間の事業戦略及びオペレーションの統合に成功しない可能性があります。

 ソニーは、市場における差異化を図り、それにより、売上の拡大及び収益性の向上を図るために、ハードウェア、ソフトウェア、エンタテインメント・コンテンツ、ならびにネットワークサービスの統合を促進させることが不可欠であると考えています。例えば、2016年4月、㈱ソニー・コンピュータエンタテインメントとソニー・ネットワークエンタテインメントインターナショナルは、両社の有する全てのハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、ネットワークサービスの各事業組織のオペレーションを統合した新会社「ソニー・インタラクティブエンタテインメントLLC」を設立しました。しかしながら、この戦略は、ネットワークサービス技術の継続的な発展(ソニー内外を問わず)、ソニーの様々な事業ユニットや販売チャネルにおける戦略及びオペレーション上の連携と適切な優先順位付け、業界内や、ネットワークに接続可能なソニーの製品や事業ユニット間における技術やインターフェース規格の標準化に依存しています。さらに、新規参入企業も多く、継続的に変化する厳しい競争環境において、消費者にとって革新的で魅力あるユーザーインターフェースをもち、ネットワークプラットフォームにシームレスに接続可能なハードウェアを、より高い性能かつ競争力のある価格で提供し続ける必要があります。また、ソニーは競争力があり差異化された、ソニー自身の、又は主要な映画製作及びテレビ制作会社、音楽レーベル会社やゲーム制作会社などの第三者からライセンスを受けた、音楽・映像・ゲームコンテンツを提供することが不可欠であると考えています。ソニーがこの戦略の実行に成功しない場合、ソニーの評判、競争力及び収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) ソニーのオンライン上の事業活動は、法規制の対象となっており、これによりオペレーションにかかるコストが増加したり活動が制限されたりする可能性があります。

 ソニーは、エレクトロニクス及びエンタテインメント製品の販売・マーケティング、エンタテインメント領域に関するネットワークサービス、金融サービス、インターネットプロバイダサービスなど、オンライン上の事業活動を広範囲にわたって行っており、関連する法規制による制約を受けています。この法規制には、プライバシー、消費者保護、重要インフラ保護、侵害の告知、データの保存及び保護、データの越境・移転、コンテンツ及び放送関連規制、名誉毀損、年齢確認その他のオンライン上の児童保護、アクセスのしやすさ、cookieなどのソフトウェアの最終ユーザーのPC又は他の情報端末へのインストール、価格設定、広告(成人及び児童向け)、租税、著作権や商標権、販促、及び課金などに関わるものが含まれています。これらの法規制(オンライン上の事業活動に対処するために制定された法規制やインターネット普及以前に制定されたものを含むその他のオンライン上の事業活動にも適用される法規制)の運用は、各国により異なり、また、多くの場合、法規制そのものが不明確・不確定であったり、今後変更されたりする可能性があります。ソニーはこれらの法規制遵守のために多額の費用を計上する可能性があります。また、これらの法規制を遵守できなかった場合、多額の罰金、その他の法的責任、ソニーの評判への悪影響などが生じる可能性があります。さらに、これらの法規制遵守のために行われるオンライン上の事業活動の変更や制限はソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。加えて、関連する法規制の変更を予測できなかった場合、オンライン上の事業活動を保護する法令の変更が生じた場合、又はこのような保護範囲を狭めるような解釈を裁判所が行った場合、ソニーの法的責任に対するリスクが増加し、法規制遵守のための費用の増加もしくは一部のオンライン上の事業活動に対する制限につながる可能性があります。

 

(19) ゲームハードウェアをはじめとするコンスーマー製品の売上は特に消費者需要の季節性の影響を受けます。

 ソニーのG&NS分野が提供するゲーム用のハードウェアや周辺機器は種類が比較的少ない上に、これら及びその他の製品の需要に占める年末商戦の比率が高くなります。ソニーのその他のコンスーマー製品も年末商戦需要に依存しています。その結果、特にこの時期において、他社との競争状況や市場環境の変化、有力ゲームソフトウェアタイトルを含むコンスーマー製品の発売遅延、ハードウェアや周辺機器の供給不足などが生じた場合、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(20) G&NS分野の売上及び収益性は主にプラットフォームの普及の成否に依存しており、この普及はソニー及び外部の事業者により制作されるものを含むソフトウェアラインアップの充実度の影響を受けています。

 G&NS分野の売上及び収益性には、プラットフォームの普及の成否が重要な影響を及ぼします。この普及は、ソニー及び第三者により制作されたものを含む魅力的なソフトウェアの品揃えと、ネットワーク・ゲーム、クラウド・ゲーム及びデジタルコンテンツの配信を含むオンラインサービスとが消費者に提供されるか否かに影響されます。外部のゲームソフトウェアの開発事業者や開発・販売事業者がソフトウェアの開発や供給を定期的に実施し続ける保証はなく、全く実施されない可能性もあります。ソフトウェア開発の中断や遅れ、又は新しいオンラインサービスの提供の遅れはソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(21) ソニーの映画、音楽及びG&NS分野などのコンテンツ事業は、増加し続ける違法デジタルコピーや違法ダウンロードの影響を受けています。

 デジタル技術、デジタルメディアの利用、ならびに世界的なインターネットの普及により、ソニーの映画、音楽及びG&NS分野などのコンテンツ(発売前のものも含む)の著作権を違法デジタルコピー及び偽造から保護することが難しくなってきました。特に、コンテンツ著作権者の許可なくインターネットやその他のサービス経由でデジタルメディアファイルの複製、転送やダウンロードが可能なソフトウェア及び技術によって、高品質なデジタルメディアファイルの不正な作成、送信や再配信がより簡単にできるようになってきているため、従来の著作権をベースとするビジネスモデルが逆風を受け、脅かされ続けています。こうしたコンテンツの不正入手が可能であることは、正規製品の売上減少や売価の低下圧力につながり、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。ソニーは、知的財産の保護支援、映画、テレビ番組、音楽、ゲームなどの正規のデジタル配信のための新しいサービスの開発や著作権のあるコンテンツの不正なデジタル配信への対抗のために費用を計上しており、今後も引き続き費用を計上します。こうした動向はソニーの短期的な費用の増加にもつながり、また、想定している効果を達成できない可能性もあります。

 

(22) 映画及び音楽分野の業績は、消費者に全世界で受け入れられるかどうか、競合作品やその他の娯楽の有無により変動します。

 映画及び音楽分野の業績は、作品が消費者に全世界で受け入れられるかどうかという予測が難しい要因に左右され、変動する可能性があります。映画作品やテレビ番組の製作・制作ならびに番組の放送は、それらの作品が消費者にどの程度受け入れられるか分かる前に多額の投資を行わなければなりません。同様に、音楽分野でもアーティスト自身やその作品が消費者にどう受け入れられるか確定する前に多額の投資を行わなければなりません。さらに、映画及び音楽分野における作品の商業的な成功は、同時期もしくは近接した時期に公開された他の競合作品、ならびに、それらに代わり、消費者が享受できる娯楽及びレジャー活動に影響を受ける可能性があります。特に大型期待作品をはじめ、映画作品やテレビ番組の業績が想定を下回った場合、公開もしくは放映した年度の映画分野の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、作品の公開当初の業績と、それに続く映像ソフトやテレビ局など流通市場から得られる収入には高い相関性がみられることから、将来における映画分野の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。同様に、音楽作品の業績が想定を下回った場合、作品をリリースした年度の音楽分野の業績に対して、悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(23) エンタテインメント・コンテンツの製作・制作、取得ならびにマーケティング費用の高騰は、音楽及び映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 音楽分野の成功は消費者に長期にわたって受け入れられるアーティスト、ソングライター及び楽曲版権のカタログの発掘及び育成に大きく依存しており、有能な新規アーティストやソングライターを発掘・育成できない場合やすでに有名なアーティストやソングライターとの契約を維持できない場合、音楽分野の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。音楽業界各社間における販売競争の激化に加え、このようなアーティストを発掘し、契約を締結し維持するための競争も激化しています。映画分野では、トップ・タレントに対する高い需要が映画作品やテレビ番組の製作・制作費用の高騰につながっています。映画作品やテレビ番組を獲得するための競争は激しく、映画作品やテレビ番組の取得費用が上昇する可能性があります。映画分野の作品の製作・制作費用及び取得費用の増加は、これらのマーケティング費用の増加とともに、映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(24) 新たな技術や配信プラットフォームによる消費行動の受容は、音楽及び映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 急速な技術変化や消費者による新たな技術の受容は、消費者がエンタテインメント作品を取得し視聴するタイミングや方法に影響を与えています。CD、DVDならびにブルーレイディスクなどのパッケージメディアフォーマットの全般的な成熟化や、音楽・映像コンテンツのデジタル配信への移行、小売事業者の展示スペースをめぐる競争の激化などの業界全体の動向により、音楽及び映像パッケージメディア売上が全地域で減少しており、今後も減少する可能性があります。定額利用によるストリーミング配信やデジタルダウンロードといった、デジタル配信からの収入は、パッケージメディア売上の減少を十分に補完しない可能性があります。このような状況は、音楽及び映画分野、ディスク製造事業の業績に影響を与えてきており、今後も影響を与える可能性があります。例えば、2016年度にソニーは、映画分野における映画製作事業の将来の収益見通しを下方修正したことにともない、映画分野の営業権について1,121億円の減損を計上しました。この下方修正は、主に市場縮小の加速により、ホーム・エンタテインメント(BD/DVDなどのパッケージメディアやデジタル販売)事業の収益見通しを従来の見通しから引き下げたことによるものです。また、映画製作事業の将来の収益見通しにはその前提となる公開作品の収益性の低下も織り込んでいますが、その影響は映画製作事業における収益改善施策により、大幅に軽減していくことを見込んでいます。さらに、直近の音楽業界において、デジタルダウンロードの売上が年々減少し続けています。ストリーミング配信がこの減少を相殺するのに十分な利用者を獲得できない場合、音楽分野の業績は悪影響を受ける可能性があります。

 

(25) 広告市場の変化、あるいはテレビ放送契約を更新できないこともしくは更新時における条件悪化により、映画分野の業績が悪影響を受ける可能性があります。

 広告市場の景気は特定の広告主や業界の経済的見通し、広告主の支出の優先順位、及び一般的な経済状態によって変動し、映画分野のテレビ事業の収入に悪影響を与える可能性があります。世界的なテレビネットワークを含む映画分野のテレビ事業の売上のかなりの部分は、多様なプラットフォーム上での広告収入が占めています。そのため、広告市場に対する宣伝広告支出額全体が減少した場合、映画分野のメディアネットワーク収入に直接的な悪影響を与える可能性があります。映画分野の売上には、顧客である米国内外のテレビネットワークから得られる映画作品やテレビ番組の放映権収入が含まれます。広告市場の景気が後退した場合、これら外部のテレビネットワークの収入が低迷し、ソニーの映像コンテンツの放映権収入に悪影響を与える可能性があります。

 さらに、世界的なテレビネットワークでの放映は、外部のケーブルテレビ、衛星テレビやその他の放送システムに依存しています。これらの放送ネットワーク業者とのテレビ放送契約を更新できないこともしくは更新時における契約条件の悪化は、映画分野における世界的なテレビネットワークからの広告収入や視聴料収入に悪影響を与える可能性があります。

 

(26) 映画分野の業績はストライキによる影響を特に受ける可能性があります。

 映画分野及びその供給業者の一部は、脚本家、監督、俳優、その他のアーティストや専門職・技術スタッフなど、労働協約が適用される、映画作品やテレビ番組の企画・製作に欠かせない専門的技能を有する労働組合員に依存しています。新たな合意や契約締結にいたる見通しが不確実であること、又はそれらが成立しないことによってもたらされる労働組合によるストライキが生じた場合、あるいはストライキ、サボタージュやロックアウトの可能性が生じた場合、製作活動の遅延や停止を招く可能性があります。こうした遅延や停止は、その期間の長さによっては、将来予定されている映画やテレビ番組作品の公開の遅延や中断をもたらす可能性があり、映画分野の業績やキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。また、労働協約が合意に至らない場合や好ましくない条件で更新された場合、映画分野における費用が増加し、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(27) 金融分野は、新しい法令や監督官庁の施策などが、事業遂行の自由度を妨げ、ソニーの金融分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 ソニーの金融分野は、日本における保険や銀行といった法規制や監督の厳格な業界で事業を行っています。法規制・政策などの将来における改正・変更や、それが与える影響は予測が不可能であり、また、こうしたことが法規制遵守に対応するための費用の増加や事業活動に対する制約にもつながる可能性があります。ソニーという共通のブランドを用いて各会社が事業を行っているため、ソニーの金融分野のいずれかの事業において法規制違反などが発生した場合には、ソニーの金融分野における事業全体の評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、法規制遵守のための追加費用が生じ、ソニーの金融分野の業績に悪影響を与える可能性もあります。なお、ソニー株式会社は、連結子会社であるソニーフィナンシャルホールディングス㈱(以下「SFH」)から財務支援又は融資ローンの形態による資金を受け取ることに関し、日本の監督官庁の指針による制約を受けています。これらの指針が変更された場合、ソニー株式会社がSFHから資金を受け取り使用することに関しさらに制約を受ける可能性があります。

 

(28) 金融分野の業績及び財政状態は、金利の変動により悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーの金融分野においては、生命保険事業及び損害保険事業における保険引受債務、ならびに銀行事業における預金、借入金その他の債務など、各事業の負債の状況に鑑み、運用資産を適切に管理するため、資産負債の総合管理(以下「ALM」)を行っています。ALMは、長期的な資産負債のバランスを考慮しながら、安定的な収益を確保することを目的としています。ソニーの金融分野がALMを適切に遂行できない場合、あるいはALMにより合理的に対処することができるレベルを超えて市場環境に大きな変化があった場合には、ソニーの金融分野の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特にソニー生命保険㈱(以下「ソニー生命」)においては、通常、契約者に対して負う債務の期間が、長期日本国債を中心とした運用資産の投資期間よりも長期であるため、低金利又はマイナス金利の状況においては、残存する保険契約の予定利率(保険料計算用)は一般的に変化しない一方で、ソニー生命の投資ポートフォリオからの収益が減少する傾向があります。その結果、ソニー生命の収益性と保険契約債務を履行し続ける長期的な能力に悪影響が生じる可能性があります。さらに、最低毎事業年度に1回、責任準備金及び繰延保険契約費の評価に用いる保険数理上の前提の見直しが求められます。このため、金利の変動によりソニー生命の資産運用利回りが悪化した場合、特に利率変動型終身保険において責任準備金の追加計上や繰延保険契約費の前倒し償却が必要となる可能性もあります。その場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(29) ソニーの業績及び財政状態は、株価の下落により、特に金融分野において悪影響を受ける可能性があります。

 金融分野において、ソニー生命では、最低毎事業年度に1回、変額保険の最低死亡保証にかかる責任準備金及び繰延保険契約費の評価に用いる保険数理上の前提の見直しが求められます。このため、株価の下落などでソニー生命の特別勘定の資産運用利回りが悪化した場合には、責任準備金の追加計上や繰延保険契約費の前倒し償却が必要となる可能性もあります。その場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、ソニー生命では、変額保険の最低死亡保証に係る株価下落のリスクに対してヘッジを目的とするデリバティブ取引を実施しております。しかしながら、結果として、想定どおりの効果が得られないことにより、損失の発生・拡大につながる可能性があります。

 金融分野以外において、ソニーが保有している株式の公正価値の下落は、現金支出をともなわない減損損失の計上につながることもあります。その場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(30) 金融分野の投資ポートフォリオは、株価及び金利変動リスク以外の様々なリスクにさらされています。

 ソニーの金融分野では日本の短期国債や地方債、国内社債、外国公社債、国内株式、貸付金、不動産など、様々な投資資産を保有する一方、安定した投資収益を確保するため、日本の長期国債を中心とした資産ポートフォリオを構成しています。金利及び株価変動リスクに加え、ソニーの金融分野の投資ポートフォリオは、為替リスク、信用リスク及び不動産投資リスクなど、様々なリスクにさらされており、そのようなリスクが金融分野の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ソニー銀行㈱(以下「ソニー銀行」)では、2017年3月末において住宅ローンが貸出金の94.3%又は総資産の59.8%を占めており、ソニー銀行の住宅ローンに関して不良債権が増加したり、担保設定されている不動産の価値が減少した場合、貸倒引当金の積み増しが必要となる可能性があります。

 

(31) ソニーの金融分野において、保険金・給付金の支払い実績が見積りと乖離することにより、将来の責任準備金の積み増しを余儀なくされる場合があります。

 ソニーの生命保険事業及び損害保険事業においては、将来の保険金・給付金の支払いに備えた責任準備金を積み立てています。これらの責任準備金は、保険契約の保障対象となる事象の頻度や時期、支払うべき保険金・給付金の額、保険料収入を原資に購入される資産の運用益など、多くの前提と見積りにもとづいて計算されています。これらの前提と見積りは本質的に不確実なものであるため、最終的に支払うべき保険金・給付金の額や支払時期、又は保険金・給付金の支払いより前に、保険契約債務に対応した資産が想定していた水準に達するかどうかを正確に判断することは困難です。保険契約の保障対象となる事象の頻度と時期及び支払う保険金・給付金の額は、以下のようなコントロール困難な多くのリスクと不確実な要素に影響されます。

・ 死亡率、疾病率など、計算の前提と見積りの根拠となる傾向の変化

・ 信頼に堪えるデータの入手可能性、及びそのデータを正確に分析する能力

・ 適切な料率・価格設定手法の選択と活用

・ 法令上の基準、保険金査定方法及び医療費の変化

 保険事業における実績が計算の前提条件や見積りよりも大きく悪化した場合、責任準備金の積立てが不足する可能性があります。また、責任準備金の積立水準に関するガイドラインや基準などに変更があった場合には、より厳しい計算の前提や見積り又は保険数理計算にもとづいて責任準備金の積み増しが必要となる可能性があります。これら責任準備金の繰入額の増加は、金融分野における業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 さらに、日本における大地震などの大規模災害や感染症などの疫病の発生により、責任準備金の積み立て前提を超える保険金の支払が生じた場合など、金融分野の業績及び財政状態は悪影響を受ける可能性があります。

 

(32) ソニーの設備や情報システムは、大規模な災害、停電、違法行為などにより、被害を受ける可能性があります。また、これらの予期できない大惨事にともなうサプライチェーンや生産活動の混乱及び法人顧客からの需要減などがソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの本社及び半導体生産設備のような最先端デバイス製造拠点の多くは、他国よりも地震のリスクが比較的高い日本の国内にあります。日本において大地震が起きた場合、特にソニーの本社がある東京や、完成品の製造事業所が所在する東海地方及び半導体製造事業所が所在する九州地方及び東北地方で起きた場合には、建物や機械設備、棚卸資産や、製造事業所における生産活動の中断などを含めて、ソニーの事業は大きな被害を受ける可能性があります。例えば、2016年4月14日以降に発生した平成28年(2016年)熊本地震の影響で、半導体製造事業所の建物や機械装置、棚卸資産に損傷があり、生産活動が中断しました。半導体部品の供給の遅れの結果、半導体分野及びIP&S分野の2016年度の売上高は、地震の前に見込まれていた水準より減少しました。

 また、ネットワークや情報通信システムインフラ、研究開発、資材調達、製造、映画やテレビ番組の製作・制作、物流、販売、ならびにオンラインやその他のサービスに使用されるソニーや外部サービスプロバイダ及びビジネスパートナーの世界各地にあるオフィスや設備は、自然災害、伝染病などの疫病、テロ行為、サイバー攻撃、大規模停電、大規模火災などの予期できない大惨事により、破壊されたり、一時的に機能が停止したり、混乱に陥ったりする可能性があります。これらのオフィスや設備のいずれかが前述の大惨事により重大な損害を受けた場合、営業活動の停止、設計・開発・生産・出荷・売上計上の遅れ、オフィスや設備の修繕・置換えにかかる多額の費用計上などが生じる可能性があります。加えて、ソニーに原材料、部品及びコンポーネントを供給する事業者がかかる大惨事の被害を受けた場合、原材料、部品及びコンポーネントの供給が滞り、それによりソニーの製造拠点は稼働調整や停止を余儀なくされ、出荷が滞り新製品の導入が遅れるなどの影響を受ける可能性があります。また、ソニーは、原材料、部品及びコンポーネントの価格高騰や法人顧客の需要減少の影響を受ける可能性があります。

 加えて、ソニーの営業活動においてコンピュータシステムやネットワーク及びオンラインサービスの役割がさらに重要になりつつあるなか、ソフトウェア又はハードウェアの欠陥など、前述のもしくはそれ以外の予測できない出来事から生じるコンピュータシステムやネットワーク及びオンラインサービス停止のリスクが高まっています。例えば、2014年度において、サイバー攻撃によりソニーの映画分野のネットワーク及びITインフラに深刻な障害が生じました。

 類似した出来事が発生した場合、主要な事業オペレーションの停止、財務報告あるいは設計・開発・生産・出荷・売上計上の遅れ、設備やネットワーク及び情報システムのセキュリティ強化や修繕・置換えにかかる多額の費用計上などが生じる可能性もあり、さらに、ソニーが加入している保険はその結果発生する費用や損失を十分に補填できない可能性があります。また、ソニーが将来、十分な保険契約を維持できない可能性や、支払保険料が増加する可能性があります。これらの場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響がある可能性があります。

 

(33) ソニーあるいは外部のサービスプロバイダやビジネスパートナーの情報セキュリティに対する侵害又はその他の不正行為があった場合、ソニーのブランドイメージ及び評判や事業への悪影響がある可能性や、ソニーが法的な、あるいは規制当局に対する責任を追及される可能性があります。

 ソニーの専有情報、知的財産ならびに従業員の情報を含む、ただしそれらに限定されないソニーのビジネス情報や、顧客、供給業者ならびにその他のビジネスパートナーに関連するデータを含む情報の取得、保管、処理、転送に使用するコンピュータシステムやネットワーク、ならびにオンラインサービスといった情報技術を広範に活用することは、ソニーならびに外部のサービスプロバイダ及びビジネスパートナーにとって業務上不可欠です。ソニーのビジネス情報は、悪意をもった第三者や人為的もしくは自然の事象により侵害を受けたり、ソニーもしくは外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの従業員の故意又は不注意による行為もしくは不作為の影響を受けたりする可能性があります。サイバー攻撃がますます高度化し、悪意をもった第三者がより容易にツールやリソースを利用できるようになりつつあることから、不正な侵入を防止あるいは検知したり、不正な侵入に対応したり、データへのアクセスを制限したり、データの破壊、改変、あるいは流出を防止したり、そういった攻撃の悪影響を抑制したりするためにソニーが行っている対策、セキュリティへの取り組みや管理が、不正アクセスに対して、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。その結果、ソニーのビジネス情報の消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又は承諾を得ない第三者によるアクセスが発生し、ソニー、あるいは外部のサービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの情報システムが破壊される可能性があります。また、悪意を持った第三者が、ソニーに知られることなく、外部のビジネスパートナーのネットワーク、及びその結果として外部のビジネスパートナーの情報にアクセスするためのプラットフォームとして、ソニーのネットワークに不正にアクセスする可能性があります。ソニーは過去に、高度かつ明確に標的を定めた攻撃の対象になったことがあります。例えば、2014年度に、ソニーの映画分野がサイバー攻撃の対象となり、結果的に従業員やその他の情報を含むソニーのビジネス情報が不正にアクセスされ、窃取され、漏洩され、データが破壊されました。加えて、ソニーのネットワークサービス及びオンラインゲーム事業ならびに複数の子会社のウェブサイトが様々な意図や専門性を持つ個人や集団によってサイバー攻撃の対象となり、いくつかの事例においては、顧客情報が不正にアクセスされ、実際に窃取され、又は窃取の可能性が生じ、漏洩されました。

 加えて、ソニーあるいはその代理で第三者が保有あるいは管理しているソニーのビジネス情報及びその他のデータは、それらがネットワーク上に保管されていない場合でも、またそれらのデータの保管の場所や形式にかかわらず、悪意をもった第三者や人為的もしくは自然の事象により侵害を受けたり、消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又はこれらの情報への不正なアクセスといった形で、ソニーの従業員もしくは外部のサービスプロバイダの故意又は不注意による、行為もしくは不作為の影響を受ける可能性があります。

 さらに、ソニーもしくはそのサービスプロバイダやビジネスパートナーが提供するネットワーク製品やオンラインサービスを含む製品やサービスの機密性、完全性ならびに可用性が、悪意を持つ第三者や人為的もしくは自然の事象により侵害を受ける可能性や、ソニーの従業員、外部のサービスプロバイダやビジネスパートナーの故意又は不注意による作為もしくは不作為による影響を受ける可能性があります。例えば、ソニーのオンラインサービスやウェブサイトは、高度な技術を持ち潤沢なリソースを有する第三者などによるDoS(サービス停止)攻撃やその他の攻撃の対象となったことがあります。

 こうした情報セキュリティに対する侵害等によって、システムの破損の修復、外部専門家の雇用、新たな人員の配置、従業員の教育、ならびに不正にアクセスされたデータの所有者である第三者に対する補償や報奨金を含む多額の復旧費用がかかる可能性があります。加えて、ソニーのネットワークやオンラインサービスへの破壊行為によって、ネットワーク及びオンラインサービスに依存している事業が重大な打撃を受け、その結果、売上の喪失、ビジネスパートナー及びその他の第三者との関係の悪化、ならびに顧客の維持や顧客の勧誘の失敗に結びつく可能性があります。サイバー攻撃であるか否かにかかわらず、情報セキュリティが侵害又はその他の不正行為をされた場合には、知的財産を含む専有情報の不正漏洩、改変、破壊あるいは悪用による競争力の低下にともなう売上の喪失や、顧客の維持や顧客の勧誘の失敗、重要なビジネスプロセスや情報セキュリティシステムの破壊、あるいはマネジメントの関心や経営資源の分散につながる可能性があります。さらに、これらの破壊や侵害行為がメディアの報道に悪影響をもたらし、ソニーのブランドイメージや評判を傷つける可能性があります。また、ソニーは訴訟、及び規制当局による調査や規制措置を含む法的措置の対象となる可能性や、付帯的な法的費用や将来的な調停、判決、罰金の対象となる可能性があります。ソニーが加入しているサイバー攻撃に対する保険は費用や損失の全額を補填できない可能性があり、したがって、サイバー攻撃がソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。たとえ実際に情報セキュリティへの侵害がなくても、ますます高度化し増加しつつあるサイバー攻撃への対策には、将来、これらの防止、検知、対応、管理のための、あるいはその他の多額の費用がかかる可能性があります。これらの費用には、サイバー攻撃に対する新たな技術の導入、外部専門家の雇用、新たな人員の配置や従業員の教育などが含まれます。これらの費用も、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(34) 現在もしくは将来における訴訟及び規制当局による法的手続が不利な結果に終わった場合、ソニーの事業が悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、様々な国において事業の遂行に関して、訴訟及び規制当局による法的手続に服するリスクにさらされています。訴訟及び規制当局による法的手続は、ソニーに多額かつ不確定な損害賠償や事業活動の制約をもたらすことがあります。その発生の可能性や影響の程度を予測するには相当の期間を要する場合があります。例えば、公正な競争に反する市場慣行に関する政府の監督が、訴訟や規制当局による法的手続につながる可能性があります。多大な法的責任や規制当局による不利な措置が課された場合や、訴訟及び規制当局による法的手続への対応に多大なコストがかかった場合、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(35) ソニーは製品品質や製造物責任による財務上のリスクや評判を損なうリスクにさらされています。

 急速な技術の進化や、モバイル製品及びオンラインサービスに対する需要増にともない、コンスーマー製品、ノンコンスーマー製品、部品及びコンポーネント、半導体、ソフトウェア、ならびにネットワークサービスなどのソニーの製品・サービスは一層高機能かつ複雑になっています。ソニーが製品品質を維持しても、技術の急速な進展や、モバイル製品及びオンラインサービスの需要増加に対応できない可能性があり、製造物責任問題に関するリスクが高まる可能性があります。その結果、ソニーの評判に悪影響を及ぼし、製品回収やアフターサービスなどの費用が発生する可能性があります。加えて、既存の製品及びサービスへの販売後のアップグレード、機能の拡充、又は新機能の導入に成功しない可能性や、既存の製品及びサービスを、他の技術及びオンラインサービスと便利かつ効果的に連携させ続けることができない可能性があります。そのため、ソニーの既存の製品及びサービスについて、顧客満足を維持できない可能性や、需要の減少、競争力の低下、あるいは陳腐化を招く可能性があり、その結果、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、根拠のあるなしにかかわらず、ソニーの製品に関連する健康面や安全性の問題に関する申立て又は訴訟は、直接的に、もしくはソニーのブランドイメージや高品質な製品やサービスを提供する企業という評価への影響の結果として、ソニーの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの問題は、ソニーが製造したか否かに関係なく、ソニーが直接顧客に販売する製品のみならず、半導体を含むソニー製の部品が搭載された他社製品においても生じる可能性があります。

 

(36) ソニーの業績及び財政状態は退職給付債務により悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、確定給付年金制度に関する会計基準に従い、確定給付年金制度ごとの予測給付債務から年金制度資産の公正価値を差し引いた金額を未積立年金債務として認識しています。年金数理純損益については、従業員の平均残存勤務年数にわたり規則的に償却することにより年金費用に含めています。運用収益の悪化による年金制度資産価値の減少や、割引率の低下、昇給率の増加やその他の年金数理計算前提となる比率の変動による予測給付債務増加にともない未積立年金債務が増加し、その結果、売上原価又は販売費及び一般管理費として計上される年金費用が増加する可能性があります。

 ソニーの業績及び財政状態は、国内及び海外年金制度の積立状況から悪影響を受ける可能性があります。特にソニーの年金の大部分を占める国内年金は約30%を持分証券に投資しており、不利な株式市場環境及びクレジット市場のボラティリティが、ソニーの年金制度資産及び将来見積年金負債に対して悪影響を与える可能性があります。その結果として、ソニーの業績及び財政状態は、悪影響を受ける可能性があります。

 さらにソニーの業績及び財政状態は、日本の確定給付企業年金法の年金積立要求により悪影響を受ける可能性があります。この確定給付企業年金法により、ソニーは定期的な財政再計算や年次の財政決算を含む年金財政の検証を行うことが求められています。年金制度資産の公正価値に対して法定の責任準備金が超過した場合、また法令もしくは特別な政令などにより猶予された期間内に制度資産の公正価値が回復しない場合には、ソニーは年金制度への追加拠出が必要となり、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。同様に、海外の年金制度資産についても各国の法令にもとづき追加拠出が必要となる場合、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。また、今後、法令が定める掛金の更新にともなって年金制度資産の長期期待収益率などの前提を見直した際、年金への拠出金の水準が引上げられ、ソニーのキャッシュ・フローに対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(37) 繰延税金資産に対して評価性引当金を計上している税務管轄におけるさらなる損失の発生、ソニーが繰延税金資産を最大限に利用できないこと、各国の法令にもとづく繰延税金資産の使用の制限、追加的な税金負債あるいは税率の変動が当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーは、日本及び様々な税務管轄において法人税を課されており、通常の営業活動において最終的な税額の決定が不確実な状況が多く生じ、このような状況が長期間に及ぶ場合もあります。ソニーの税金引当や税金資産、税金負債の帳簿価額の計算は高度な判断と見積り(将来の課税所得の見積りを含む)を必要とします。

 繰延税金資産は、税務管轄ごとに評価されます。一部の税務管轄において、ソニーは繰越欠損金及び繰越税額控除に対応するものを含めた繰延税金資産のうち、50%超の可能性をもって回収可能ではないと結論付けられたものに対して評価性引当金を計上しています。2017年3月31日時点において、ソニーは主に(1)日本の当社とその連結納税グループ及び日本の一部子会社の地方税、(2)米国のSony Americas Holding Inc.とその連結納税グループ、(3)スウェーデンのSony Mobile Communications AB、(4)英国のSony Europe Limited、ならびに(5)ブラジルで操業するいくつかの子会社において評価性引当金を計上しています。評価性引当金を計上した税務管轄において損失を計上し続けた場合、税金費用の戻し入れは計上されず、当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、ソニーが税務戦略を実行できない場合、営業活動や税務戦略から繰越欠損金を使用するために充分な課税所得を適切な税務管轄内で将来に生み出せない場合、繰越欠損金の使用を法的に制限される場合、あるいは各国の税法により繰延税金資産の使用を制限される場合に、繰延税金資産は未使用のまま消滅、又は回収できず、将来において利用可能な税金支出の減額ができなくなる可能性があります。評価性引当金を計上せずに残存している繰延税金資産のいずれかが、50%超の可能性をもって未使用のまま消滅し将来の課税所得と相殺することができない場合や他の理由で回収ができない場合には、ソニーは追加の評価性引当金を認識しなければならず、税金費用が増加します。繰延税金資産が未使用のまま消滅した時点あるいは追加の評価性引当金が計上された期間において、当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 繰延税金資産及び評価性引当金の評価において、連結会社間の移転価格に関して調整される不確実な税務ポジションの決定が重要な要素となります。ソニーは、日本及び様々な税務管轄において法人税を課されており、通常の営業活動において連結会社間を含む多くの取引がありますが、最終的な税額の決定は不確実です。ソニーは、税務当局から税務申告に対して継続的な調査を受けており、その結果、法人税の引当の妥当性を決定する税務調査の結果を受けて起こり得る悪影響を定期的に評価しています。これらの評価には高度な判断が要求され、翌期以降に追加的な証拠が入手可能になることにより、ソニーの不確実な税務ポジションの最終的な結果とそれにともなう評価性引当金の計上が、当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 一部の税務管轄において、繰越欠損金の使用は翌期以降の課税所得に対する一定の水準に制限されています。したがって、ソニーは、課税所得が発生した税務管轄において、重要な繰越欠損金があるにも関わらず税金の支払いが発生するため税金費用を計上し、その後も利用可能な繰越欠損金を保有し続ける可能性があります。同様に、一部の税務管轄において、税額控除の使用は、ある特定の要因の所得との相殺にしか使用できない場合があります。したがって、ソニーは、課税所得が発生した税務管轄において、重要な繰越税額控除があるにも関わらず税金の支払いが発生するため税金費用を計上し、その後も利用可能な繰越税額控除を保有し続ける可能性があります。

 上記に加え、ソニーの将来における実効税率は、法定税率の変更や異なる法定税率が適用される各国での利益の割合の変化、又は売上原価や利息の損金算入制限、及び繰越欠損金や繰越税額控除の使用制限を含む租税法規の改正やそれらの解釈の変更などにより不利な影響を受ける可能性があります。

 

(38) ソニーは、営業権、無形固定資産もしくはその他の長期性資産の減損を計上する可能性があります。

 ソニーは多くの営業権、無形固定資産及びエレクトロニクス事業における製造施設及び設備を含む長期性資産を保有しています。これらの資産については、業績の悪化や時価総額の減少、減損の判定に用いられる高度な判断を必要とする見積り・前提の変更により、減損を計上する可能性があります。営業権及び耐用年数が確定できない非償却性無形固定資産については、年一回第4四半期及び減損の可能性を示す事象又は状況の変化が生じた時点で減損の判定を行います。事象又は状況の変化とは、設定された事業計画の下方修正や実績見込みの大幅な変更、あるいは外的な市場や産業固有の変動などです。なお、国際的な競争環境の激化や技術動向の急激な変化により、減損の判定に用いられる見積り、前提及び判断が変動し、減損の計上の可能性が増加することがあります。保有しかつ使用する長期性資産及び処分予定の長期性資産の回収可能性は、個々の資産又は資産グループの簿価が回収できなくなる可能性を示す事象や状況(営業権や無形固定資産に関する上記の事象や状況を含む)の変化が生じた場合に検討されます。資産又は資産グループの帳簿価額が減損していると判断された場合、簿価が公正価値を超える部分について、減損を認識します。例えば、2014年度において、モバイル・コミュニケーション分野に関連する営業権の減損1,760億円を計上しました。また、2015年度において、半導体分野のカメラモジュール事業で596億円、コンポーネント分野の電池事業で306億円の長期性資産の減損をそれぞれ計上しました。さらに、2016年度において、半導体分野の外販向けの一部の高機能カメラモジュールの開発・製造中止にともなう長期性資産の減損239億円を、映画分野に関連する営業権の減損1,121億円を、それぞれ計上しました。このような減損損失の計上は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(39) ソニーは第三者の知的財産権の侵害を追及され、重大な損害賠償責任を負う可能性があります。

 ソニーの製品は広範囲にわたる技術を利用しています。その技術が第三者の保有する知的財産権を侵害しているという主張がソニーに対してなされており、今後なされる可能性もあります。特に、市場競争が激しくなり、一層多くの知的財産を用いた新規技術やより高度な技術が製品に搭載されることで、自らの製品やサービスを守るため、あるいは競争優位を追求するための事業戦略として、競合他社又はそれ以外の特許権者からかかる主張がなされる可能性があります。かかる主張により、和解やライセンス契約の締結あるいは多額の損害賠償金を支払うことが必要となった場合や、ソニーの製品の一部について一時的又は恒久的に市場での販売が差し止められることとなった場合は、ソニーの評判や業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(40) ソニーは第三者の知的財産権につき必要なライセンスを継続して取得できない可能性があります。また、ソニーの事業遂行に必要な知的財産権につき、継続して十分な保護を受けたり、行使したりできない可能性があります。

 多くのソニー製品は第三者の特許その他の知的財産権のライセンス供与を受けて設計されています。過去の経験や業界の慣行により、将来的に必要かつビジネスに有効な様々な知的財産権のライセンスの供与を受け又は更新できるとソニーは考えていますが、全く供与されない、又は受諾可能な条件で供与されない可能性があります。そのような場合には、ソニーは、製品の設計変更や、営業・販売の断念を余儀なくされる可能性があります。さらに、ソニーの知的財産権は、これらに関して紛争が生じたり、無効にされたりする可能性があります。また、ソニーの知的財産権が、ソニーの競争力を維持するうえで十分ではない可能性があります。そのような場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 PS3®及びPS4®ハードウエアを含むソニーのDVDビデオプレーヤー機能付製品は、米国のDolby Laboratories Licensing Corporationとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、DVD規格上特定されている技術に関する特許に大きく依存しています。PS3®及びPS4®ハードウエアを含むソニーのブルーレイディスク™プレーヤー機能付製品は、DVD規格上特定されている技術に関する上記の特許に加え、米国のMPEG LA LLC及びOne-Blue, LLCとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、ブルーレイディスク規格上特定されている技術に関する特許にも大きく依存しています。また、ソニーのスマートフォン製品は、MPEG LA LLC及びVia Licensing Corporationとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、特定のコーデック規格上の技術に関する特許、ならびに米国のQualcomm Incorporated及び日本の株式会社NTTドコモとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、通信規格団体により特定されているCDMA関連技術に関する特許に大きく依存しています。

 

6【研究開発活動】

 ソニーのミッションは「ユーザーの皆様に感動をもたらし、人々の好奇心を刺激する会社であり続ける」ことです。その実現に向けて、創業精神である「創造と挑戦の理念」に基づき研究開発を行い、お客様との接点である「ラストワンインチ」での顧客価値を創造していきます。時代の変化によりハードウェアに求められる機能は変わっても、お客様との接点であるハードウェアの重要性は変わらず、ここにソニーとしての差異化と新しい成長の源泉があると考えています。ソニーらしいプロダクツやサービスを生み出し続けるための競争優位の源泉となる中核的な技術要素 (クリティカル・コア)は次のとおりです。

•映像と音を極める

ソニー独自の超解像エンジンX-Reality™ PRO、ハイレゾオーディオ技術S-Master HX™、DSEE HX™などの映像・音響技術

•人の心をつなぐ

人々のコミュニケーションを円滑化し、人の心をつなぐためのユーザーインターフェース技術や通信技術

•人の知性を超える

Deep Learningや強化学習などの機械学習技術、音声認識や画像認識などの認識技術、ソニーのイメージセンサーと画像信号処理を組み合わせたコンピュータビジョン技術など

 

 ソニーは、個々の事業の競争力強化及び責任と権限の明確化を目的として事業の分社化を進めてきました。これら事業の分社化と並行して、より機動的なグループ体制の構築をめざし、各事業を支える本社機能及びプラットフォーム機能などの再編も実施してきました。ソニー本社では、技術革新によりソニーの差異化と創造を先導するための研究開発活動(コーポレートR&D)を推進していきます。

 

 2016年度の研究開発費は、前年度に比べ207億円(4.4%)減少の4,475億円となりました。金融分野を除く売上高に対する比率は前年度の6.7%から6.9%になりました。この減少は、主にMC分野において、一律には規模を追わず収益性を重視する経営方針への転換により、コスト削減への取り組みが加速したことによるものです。

 

 研究開発費の主な内訳は次のとおりです。

項目

2015年度

(億円)

2016年度

(億円)

増減率

(%)

MC

781

549

△29.7

G&NS

919

956

+4.0

IP&S

615

586

△4.7

HE&S

448

473

+5.4

半導体

1,204

1,176

△2.3

コンポーネント

157

144

△8.3

コーポレートR&D

313

444

+41.8

 

 なお、2016年度の主な研究開発活動及び成果には、以下のものがあげられます。

 

(1)MC分野

・スマートフォン「Xperia™ XZ Premium (エクスペリア エックスゼット プレミアム)」

 スマートフォンの基本性能を強化する最先端技術を搭載した「Xperia XZ Premium」を開発しました。新開発のメモリー積層型CMOSイメージセンサーにより、最大960fpsのスーパースローモーション機能やPredictive Capture(先読み撮影)機能を実現しました。

 

(2)G&NS分野

・PlayStation®VR (プレイステーション ヴィーアール)

 プレイステーション4 (PS4®)の魅力を高め、ゲーム体験をより豊かにするバーチャルリアリティ(VR)システム「PlayStation®VR」を開発しました。VRヘッドセットに内蔵された様々なセンサーにより検知された頭の動きに応じて、3D映像やオーディオをリアルタイムに変化させ、圧倒的な臨場感と没入感を実現しています。

 

(3)IP&S分野

・レンズ交換式デジタル一眼カメラ『α99 II』

 専用位相差AFセンサーと像面位相差AFセンサーを同時駆動させる「ハイブリッド位相差検出AFシステム」を新たに開発しました。動体予測アルゴリズムを進化させ、ハイブリッド位相差検出AFシステムと組み合わせることで、センサー画面上の広範囲において高精度で高速応答性・追従性に優れた総合力の高いAF性能を達成しました。

 

・超短焦点ホームシアタープロジェクター『VPL-VZ1000』

 壁際の至近距離から最大120インチの4K HDR(ハイダイナミックレンジ)映像を投影し、迫力ある大画面の高画質な映像を楽しめる『VPL-VZ1000』を開発しました。被写体の輪郭や微妙なディテールまでクリアに高精細の4K映像で映し出すことのできる4K SXRD™パネルや、ソニーが十数年培ってきたデータベース型超解像処理LSIを搭載し、きめ細やかで高品位な4K映像を再現しています。

 

・デジタルシネマカメラ CineAlta™(シネアルタ)『F65』

 CineAlta(シネアルタ)『F65』及び米国パナビジョン社と共同開発したデジタルシネマカメラ「ジェネシス」(パナビジョン社製)の開発が評価され、映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences:AMPAS)より2017年の科学技術賞を受賞しました。

 

(4)HE&S分野

・4K有機ELテレビ「A1Eシリーズ」

 4K HDRプロセッサー「X1™ Extreme(エックスワン エクストリーム)」をはじめ、ソニーが培ってきた高画質技術を結集し有機ELパネルの特長を最大限に引き出すことで、現実世界により近い深い黒や明るさの表現が可能になりました。また、ディスプレイを振動させることでテレビの画面から音が直接出力されるアコースティックサーフェス™技術を独自開発し、リアリティあふれる映像体験を実現しました。

 

・ワイヤレスノイズキャンセリングステレオヘッドセット『MDR-1000X』

 CD音源やMP3などの圧縮音源をハイレゾ相当にアップスケーリングする独自技術DSEE HX™をソニーのヘッドホンとして初めて搭載しました。また、ノイズキャンセリング機能では長年培った技術とノウハウをもとに数々の改善を図り、業界最高クラスの性能を実現しました。新開発の「パーソナルNCオプティマイザ―」により個人の状態に合わせて最適なノイズキャンセリング性能が発揮できます。

 

(5)半導体分野

・DRAM搭載3層積層型CMOSイメージセンサー

 業界で初めてDRAMを積層した3層構造の積層型CMOSイメージセンサーを開発しました。本開発では、3層にそれぞれ搭載された回路間のノイズ低減など、設計上の技術的な課題を克服し、ソニーが業界に先駆け長年培ってきた積層型の製造技術や知見を活用することで、高い品質と信頼性を実現しています。

 

・スケーラブルディスプレイシステム「Crystal LED Display」

 独自開発の高画質ディスプレイ技術を用いたディスプレイユニットで構築する、スケーラブルな新方式ディスプレイシステムを開発しました。本技術は、極めて微細なLED素子を配置した画素を、画素毎に駆動させる自発光のディスプレイ方式を用いています。光源サイズを微細化し、画面表面の黒色が占める割合を99%以上に高めることで、明暗両環境における高コントラスト、広視野角、広色域の豊かな映像表現を可能にしています。

 

(6)コーポレートR&D

・Future Lab Program™(フューチャー・ラボ・プログラム)

 研究開発の初期段階でコンセプトプロトタイプをユーザーの皆様に紹介し、フィードバックやインスピレーションを反映しながら技術・研究開発を進化させるプログラムです。現在、2つのプロトタイプを展開しています。"N"は、スマートフォンから目・耳・手を解放し、新しい方法で情報やコミュニケーションを取るユーザーインターフェースデバイス、"T"は、普通のテーブルをタッチスクリーンに変え、リアルとバーチャルを融合させる新しいプロジェクションシステムです。

 

・米国Cogitai社に資本参加

 ソニーは、米国子会社であるSony Corporation of Americaを通じ、人工知能(AI)に特化したスタートアップである米国Cogitai社に資本参加し、同社とディープ・リインフォースメント・ラーニング(深層強化学習)技術に予測・検知技術を応用して、次世代の人工知能に関するアプリケーションや製品群の基礎となる新たな人工知能技術を共同で開発しています。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)重要な会計方針及び見積り

 米国会計原則にしたがった連結財務諸表の作成は、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような、マネジメントによる見積り・前提を必要とします。ソニーは、継続的に、過去のデータ、将来の予測及び状況に応じ合理的と判断される範囲での様々な前提にもとづき見積りを評価します。これらの評価の結果は、他の方法からは容易に判定しえない資産・負債の簿価あるいは費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、これらの見積りと大きく異なる場合があります。ソニーは、会社の財政状態や業績に重要な影響を与え、かつその適用にあたってマネジメントが重要な判断や見積りを必要とするものを重要な会計方針であると考えます。ソニーは、以下に述べる項目を会社の重要な会計方針として考えています。

投資

 ソニーの投資は、原価法あるいは持分法により会計処理されている負債及び持分証券を含みます。投資価値に一時的でない下落が認められた場合は減損を認識し、その投資は公正価値まで評価減されます。ソニーは、個々の有価証券の一時的でない減損を判定するため、投資ポートフォリオを定期的に評価しています。公正価値の下落が一時的であるか否かを判断するにあたっては、公正価値が取得原価を下回っている期間及びその程度、発行企業の財政状態、業績、事業計画及び将来見積キャッシュ・フロー、公正価値に影響するその他特定要因、発行企業の信用リスクの増大、ソブリンリスクならびに公正価値の回復が見込まれるのに十分な期間までソニーが保有し続けることができるか否かなどを考慮します。

 公正価値が容易に算定できる売却可能証券の減損の判定において、公正価値が長期間(通常6ヵ月間)取得価額に比べ20%以上下落した場合、公正価値の下落が一時的でないと推定されます。この基準は、その公正価値の下落が一時的でない有価証券を判定する兆候として採用されています。公正価値の下落が一時的でないと推定された場合でも、下落期間又は下落率を上回る、公正価値の下落が一時的であることを裏付ける十分な根拠があれば、この下落は一時的であると判断されます。一方で、公正価値の下落が20%未満又は長期間下落していない場合でも、公正価値の下落が一時的でないことを示す特定要因が存在する場合には、減損が認識されることがあります。

 満期保有目的の負債証券に一時的でない減損が発生した場合、損益に認識される一時的でない減損の金額は、この負債証券を売却する意思があるかどうか、又は償却原価まで価値を回復する前にこの負債証券の売却が必要となる可能性の方が高いかどうかに左右されます。負債証券がこのいずれかの基準を満たす場合、損益に認識される一時的でない減損金額は、減損測定日における負債証券の償却原価と公正価値の差額全額です。これらの2つの基準を満たさない負債証券の一時的でない減損については、損益に認識される正味金額は償却原価とソニーの将来キャッシュ・フローの最善の見積りを、負債証券の減損前における計算上の実効金利を用いて割り引くことにより計算される正味現在価値の差額にあたる信用損失です。減損測定日における負債証券の公正価値と正味現在価値の差額は累積その他の包括利益に計上されます。一時的でない減損が損益に認識された負債証券の未実現損益は累積その他の包括利益の独立した項目として計上されます。

 投資の公正価値の下落が一時的であるか否かの判定は、多くの場合、主観的であり、発行企業の業績予想、事業計画及び将来キャッシュ・フローに関するある特定の前提及び見積りが必要とされます。したがって、現在、投資価値の下落が一時的であると判断している有価証券について、継続的な業績の低迷、将来の世界的な株式市況の大幅悪化あるいは市場金利変動の影響等の事後情報の評価にもとづき、将来、公正価値の下落が一時的でないと判断され、投資の未実現評価損が費用として認識され将来の収益を減額する場合があります。

棚卸資産の評価

 ソニーは原価と正味実現可能価額とのいずれか低い金額で棚卸資産を評価します。棚卸資産原価と正味実現可能価額(すなわち、通常の事業過程における見積販売価格から、合理的に予測可能な完成及び処分までの費用を控除した額)の差額を評価減計上します。ソニーは、部品や製品が陳腐化したり、在庫量が使用見込みを上回ったり、又は在庫の帳簿価額が正味実現可能価額を上回る場合、在庫の評価減を行います。市場環境が予測より悪化してさらなる値下げが必要な場合には、将来において追加の評価減計上が必要となります。

長期性資産の減損

 ソニーは、保有して使用される長期性資産及び処分予定の長期性資産又は資産グループの簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合には、減損の有無を検討しています。保有して使用される長期性資産は割引前将来キャッシュ・フローと長期性資産又は資産グループの簿価を比較することにより減損の検討が行われています。この検討は、主として製品カテゴリーごと(例:液晶テレビ)、特定の場合には、企業ごとの将来キャッシュ・フローの見積りにもとづいて行われます。資産又は資産グループの簿価が減損していると判断された場合、簿価が公正価値を超える部分について、減損を認識します。公正価値は将来見積キャッシュ・フロー(純額)の現在価値、又は比較可能な市場価格により算定しています。この手法は、将来見積キャッシュ・フロー(その支払・受取時期を含む)、将来見積キャッシュ・フロー固有のリスクを反映した割引率、永続価値(ターミナル・バリュー)を決定する際に適用される永続成長率、適切な市場における比較対象の決定、比較対象に対してプレミアムあるいはディスカウントが適用されるべきかどうかの決定など多くの見積り・前提を使用します。

 マネジメントは将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積りは合理的であると考えています。しかしながら、ソニーのビジネスや前提条件の予測不能な変化によって見積りが変更となることにより、将来キャッシュ・フローや公正価値が減少し、長期性資産の評価に悪影響を与える可能性があります。

 

企業結合

 ソニーは取得法の適用時に、みなし取得価格を識別可能資産及び引受負債に割り当て、残余の取得価格は営業権として計上しています。取得価格の割当では、識別可能資産及び引受負債、特に無形固定資産の公正価値の決定に重要な見積りが使用されます。通常、独立した外部の第三者が評価プロセスに関与します。重要な見積り及び前提は、収益及び将来キャッシュ・フローの計上時期及び金額、将来キャッシュ・フローに固有のリスクを反映した割引率、ならびにターミナル・バリューを決定する際に適用される永続成長率等を含みます。

 見積りや前提には固有の不確実性が含まれるため、この取得価格は異なる金額で評価され、取得資産及び引受負債に割り当てられる可能性があります。実際の結果が異なる可能性があること又は予想しない事象及び状況がこのような見積りに影響を与える可能性があることから、営業権を含む取得資産の減損損失の計上又は引受負債の増加が必要となる可能性があります。

 

営業権及びその他の無形固定資産

 営業権及び耐用年数が確定できない非償却性無形固定資産は、年一回第4四半期及び減損の可能性を示す事象又は状況の変化が生じた時点で減損の判定を行います。事象又は状況の変化とは、設定された事業計画の下方修正や実績見込みの大幅な変更、あるいは外的な市場や産業固有の変動などで、それらはマネジメントにより定期的に見直されています。

 2017年3月31日において、ソニーは営業権の定性的評価を行わず、減損の可能性を判定するために報告単位の見積公正価値とその報告単位の営業権を含む帳簿価額の比較をともなう二段階の定量的手続を行いました。報告単位とは、ソニーの場合、オペレーティング・セグメントあるいはその一段階下のレベルを指します。報告単位の公正価値がその帳簿価額を上回る場合、その報告単位の営業権は減損していないとみなされ、第二ステップは行われません。報告単位の帳簿価額がその公正価値を上回る場合には、減損金額を測定するため、営業権の減損判定のための第二ステップを行います。営業権の減損判定のための第二ステップでは、報告単位の営業権の公正価値と帳簿価額を比較し、帳簿価額がその公正価値を超過する場合には、その超過分を減損損失として認識します。営業権の公正価値は、企業結合により認識される営業権の価額と同じ手法により決定されます。つまり、あたかも報告単位が企業結合により取得され、報告単位の公正価値が取得のために支払われた対価であるかのように、報告単位の公正価値は未認識の無形固定資産を含む全ての資産、負債に割り当てられます。耐用年数が確定できない非償却性無形固定資産の減損判定では、公正価値と帳簿価額を比較し、帳簿価額がその公正価値を超過する場合には、その超過分を減損損失として認識します。

 営業権の減損判定の第一ステップにおける報告単位の公正価値や、第二ステップにおける報告単位の個々の資産・負債(未認識の無形固定資産を含む)の公正価値の決定は、その性質上、判断をともなうものであり、多くの場合、重要な見積り・前提を使用します。同様に、非償却性無形固定資産の公正価値の決定においても、見積り・前提が使用されます。これらの見積り・前提は減損が認識されるか否かの判定及び認識される減損金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 これらの減損判定において、ソニーは、社内における評価を行い、またマネジメントが妥当と判断する場合には第三者による評価を活用するとともに、一般に入手可能な市場情報を考慮に入れています。報告単位及び非償却性無形固定資産の公正価値は通常、割引キャッシュ・フロー分析により算定しています。この手法は、将来見積キャッシュ・フロー(その支払・受取時期を含む)、将来キャッシュ・フロー固有のリスクを反映した割引率、永続成長率、利益倍率、類似企業の決定、類似企業に対してプレミアムあるいはディスカウントが適用されるべきかどうかの決定等多くの見積り及び前提を使用します。営業権を持たない報告単位も含めて、報告単位の公正価値の総額に対するソニーの時価総額を考慮し、適切なコントロール・プレミアムとともに、個々の報告単位に配分されない全社に帰属する資産と負債も考慮します。

 将来見積キャッシュ・フロー(その支払・受取時期を含む)に使用される前提は、それぞれの報告単位における見込み及び中期計画にもとづいており、過去の経験、市場及び産業データ、現在及び見込まれる経済状況を考慮しています。永続成長率は主に中期計画の3ヵ年予測期間後のターミナル・バリューを決定するために使用されています。映画分野の報告単位など、特定の報告単位においては、より長い見込期間、及び予測期間最終年度の見積キャッシュ・フローに適用される利益倍率を用いた出口価格に、コントロール・プレミアムを加味して算定されたターミナル・バリューを使用しています。割引率は類似企業の加重平均資本コストにより算出されています。

 以下に記載するものを除き、営業権を持つ全ての報告単位において、公正価値が帳簿価額を超過していたため、営業権の減損は生じていないとみなされ、第二ステップは行われませんでした。これらの報告単位において公正価値は帳簿価額を少なくとも10%以上超過しています。また、耐用年数の確定できない非償却性資産においても、公正価値が帳簿価額を超過していたため、減損は生じていないとみなされました。

 2016年度において、ソニーは映画分野の営業権の減損損失112,069百万円を計上しました。これは当該報告単位の公正価値の減少によるものです。当該報告単位の公正価値は、将来キャッシュ・フローの見積現在価値にもとづき算定されています。

 2017年3月31日現在のセグメントごとの営業権の帳簿価額は以下のとおりです。

 

 

金額

(単位:百万円)

MC

3,286

G&NS

151,938

IP&S

8,151

半導体

48,069

コンポーネント

4,456

映画

138,153

音楽

166,110

金融

2,375

合計

522,538

 

 上述の中期計画を除く、2016年度の減損判定における、ソニーの報告単位の見積公正価値への影響に関する感応度分析を含む重要な前提の検討は下記のとおりです。

・割引率は5.8%から9.7%の範囲です。他の全ての前提を同一とし、割引率を1%増加させた場合においても、営業権の減損判定の第一ステップが不合格になることはありませんでした。

・MC分野、G&NS分野、IP&S分野、半導体分野、コンポーネント分野及び金融分野の報告単位におけるターミナル・バリューに適用された永続成長率はおおよそ1.0%から1.5%の範囲です。音楽分野の報告単位における中期計画を超える期間の永続成長率は0%から4.0%の範囲、映画分野では4.5%です。他の全ての前提を同一とし、永続成長率を1%減少させた場合においても、営業権の減損判定の第一ステップが不合格になることはありませんでした。

・映画分野の報告単位におけるターミナル・バリューの算定に使用される利益倍率は9.0です。他の全ての前提を同一とし、利益倍率を8.0まで減少させた場合においても、営業権の減損判定の第一ステップが不合格になることはありませんでした。

 マネジメントは、営業権の減損判定に使用した公正価値の見積りに用いられた前提は合理的であると考えています。しかしながら、将来の予測不能なビジネスの前提条件の変化による、将来キャッシュ・フローや公正価値の下落を引き起こすような見積りの変化が、これらの評価に不利に影響し、結果として、将来においてソニーが営業権及びその他の無形固定資産の減損を認識することになる可能性があります。

退職年金費用

 従業員の退職年金費用及び債務は、最新の統計数値にもとづく割引率、退職率及び死亡率を含む特定の前提条件に加え、年金制度資産の長期期待収益率及びその他の要因にも左右されます。特に割引率と長期期待収益率は、期間退職・年金費用及び退職給付債務を決定する上で、二つの重要な前提条件です。前提条件は、少なくとも年に一度、又はこれらの重要な前提条件に重大な影響を与えるような事象の発生又は状況の変化があった場合に評価されます。

 米国会計基準にしたがって、前提条件と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来認識される退職年金費用及び退職給付債務に影響します。マネジメントはこれらの前提条件が適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が、ソニーの退職給付債務及び将来の退職年金費用に影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの主要な年金制度は国内年金制度です。個別の海外年金制度に関して、年金制度資産及び退職給付債務の国内及び海外総額にとって重要性のあるものはありません。

 ソニーは2017年3月31日現在の国内年金制度の退職給付債務の決定において、0.9%の割引率を適用しました。割引率は、現在利用可能かつ退職給付債務の満期までの期間において利用可能であると見込まれる高格付けの債券の収益率情報を使用し、給付の見込支払額と時期を考慮して決定されます。この収益率情報には、公表されている市場情報及び複数の格付け機関から提供される数値が使用されています。この0.9%の割引率は2015年度に使用された0.6%から0.3ポイントの上昇となり、昨今の日本における市場金利状況を反映しています。

 年金制度資産の長期期待収益率を決定するため、ソニーは、現在及び見込みの資産配分に加え、様々な種類の年金制度資産に関する過去及び見込長期収益率も考慮しています。ソニーの年金運用方針は、退職給付債務の性質が長期的であることにより見込まれる債務の増加や変動リスク、各資産クラスの収益とリスクの分散及びその相関を考慮して定められます。各資産の配分は、慎重かつ合理的に考慮した流動性及び投資リスクの水準に沿って、収益を最大化するように設定されます。年金運用方針は、直近のマーケットのパフォーマンス及び過去の収益を適切に考慮して定められているのに対し、ソニーが使用する運用前提条件は、対応する退職給付債務の性質が長期的であるのに合わせて長期的な収益を達成できるように設定されています。国内年金制度における2016年3月31日及び2017年3月31日現在の年金資産の長期期待収益率は、それぞれ3.0%及び2.7%でした。2015年度及び2016年度の実際の収益率は、それぞれ-1.3%及び5.2%でした。実際の収益率が見込収益率を上回った要因としては、主に年度後半に日本国内及び世界的に株式市場が好調だったことが挙げられます。実際の結果と年金制度資産の長期期待収益との差異は、累積され、退職年金費用の一部として将来の平均残存勤務年数にわたって償却されます。その結果、毎年の退職年金費用のボラティリティが軽減されています。2016年3月31日及び2017年3月31日現在における、ソニーの国内年金制度についての年金制度資産の損失を含む年金数理純損失は、それぞれ3,893億円及び3,174億円でした。2016年度において、退職給付債務の決定に使用した割引率が前年度を上回った影響や年金制度資産の実際の収益率が長期期待運用収益率を上回ったことにより、年金数理純損失は減少しました。

 以下の表は、他の前提条件を2017年3月31日より一定とした場合の、2017年度における国内年金制度の割引率と年金制度資産の長期期待収益率の変動による影響を表しています。

 

前提条件の変更

予測給付債務

退職年金費用

当期純利益

割引率

 

 

 

0.25ポイント増/0.25ポイント減

-/+385億円

-/+19億円

+/-13億円

年金制度資産の長期期待収益率

 

 

 

0.25ポイント増/0.25ポイント減

-/+17億円

+/-12億円

 

 

繰延税金資産の評価

 繰延税金資産の帳簿価額は、入手可能な証拠にもとづいて50%超の可能性で回収可能性がないと考えられる場合、評価性引当金の計上により減額することが要求されます。したがって、繰延税金資産にかかる評価性引当金計上の要否は、繰延税金資産の回収可能性に関連するあらゆる肯定的及び否定的証拠を適切に検討することにより定期的に評価されます。この評価に関するマネジメントの判断は、それぞれの税務管轄ごとの当期及び累積損失の性質、頻度及び重要性、不確実な税務ポジションを考慮した将来の収益性予測、税務上の簿価を超える資産評価額、繰越欠損金の法定繰越可能期間、過去における繰越欠損金の法定繰越可能期間内の使用実績、繰越欠損金及び繰越税額控除の期限切れを防ぐために実行される慎重かつ実行可能な税務戦略を特に考慮します。

 日本の当社及び一部子会社、米国のSony Americas Holding Inc.(以下「SAHI」)及びその連結納税グループ、スウェーデンのSony Mobile Communications AB、英国のSony Europe Limited(以下「SEU」)、ブラジルにおける一部子会社及び他の税務管轄における一部の会社は、累積で税引前損失を計上しています。累積損失の計上は、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり、繰延税金資産に対する評価性引当金は計上不要であると判断することが困難な重要な否定的証拠とみなされます。2017年3月31日現在、これらの会社の中には、累積利益の計上となった会社があります。累積利益の計上は、検討されるべき一つの要素ではありますが、評価性引当金を取崩すためには、一貫した利益を計上することがさらに必要となります。

 当社、SAHI、㈱ソニー・インタラクティブエンタテインメント、Sony Interactive Entertainment Europe Limited及びSEUに関して回収可能とみなされている繰延税金資産の金額は、連結会社間の移転価格に関して50%超の可能性をもって調整される不確実な税務ポジションを考慮しています。これらの移転価格は、米国、英国及び日本での二国間事前確認制度(Bilateral Advance Pricing Agreements、以下「APAs」)の申請を受けて、関係する政府間で検討されています。ソニーは、貸借対照表日時点での様々な法人間の繰延税金資産の配分や金額を含む税務処理に関して、これらの政府間交渉による最終的な結果を見積もることが要求されます。ソニーは見積もられた税金費用を、通常これらの手続の進捗や移転価格の税務調査の進捗に応じて見直し、必要に応じて見積りを調整しています。

 事前確認制度による交渉は、マネジメントによる損益配分の現在の見積評価と異なる結果となる場合があり、その配分がソニーの繰延税金資産の金額又は回収可能性に有利もしくは不利な影響をもたらし、評価性引当金の計上金額が見直される可能性があります。その結果、追加的な証拠が入手可能となり、不確実な税務ポジションに対する引当とともに評価性引当金の評価を調整する可能性があります。

 繰延税金資産の評価に関する見積りは、貸借対照表日時点で適用されている税制や税率にもとづいており、また、ソニーの財務諸表及び税務申告書で認識されている事象に関して将来に起こり得る税務上の結果についてのマネジメントの判断と最善の見積り、様々な税務戦略を実行する能力、一定の場合においての将来の結果に関する予測、事業計画及びその他の見込みを反映しています。ソニーが事業を行っているそれぞれの税務管轄における現在の税制や税率の改正は、実際の税務上の結果に影響を与える可能性があり、市場経済の悪化やマネジメントによる構造改革の目標未達は、将来における業績に影響を与える可能性があります。そして、これらのいずれかが、繰延税金資産の評価に影響を与える可能性があります。将来の結果が計画を下回る場合、APAsの交渉が現在の損益配分に関する予想と異なる結果となる場合、及び税務戦略の選択肢が実行可能ではなくなる場合や売却を予定する資産の価値が税務上の簿価を下回ることになる場合には、繰延税金資産を回収可能額まで減額するために、将来において追加的な評価性引当金の計上が要求される可能性があります。一方、将来の業績改善やビジネス構造の変革といった他の要因によって、関連する質的要因や不確実性を考慮した上で、税金費用の戻し入れをともなう評価性引当金の取崩しが計上される可能性があります。現在の見込みにおいて予想していないこれらの要因や変化は、評価性引当金が計上又は取崩される期間において、ソニーの業績又は財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

映画会計

 映画会計においては、作品ごとの予想総収益を見積もる過程でマネジメントの判断が必要となります。この予想総収益の見積りは次の2点において重要となります。第一に、映画作品が製作され関連する費用が資産化される際に、その繰延映画製作費の公正価値が減損し、回収不能と見込まれる額を評価減する必要があるかどうかを決定するため、マネジメントは発生時に費用化される配給関連費用を含む追加で発生する費用を控除した予想総収益を見積もる必要があります。第二に、ある映画作品に関する売上原価として認識される繰延映画製作費の額は、その映画作品がそのライフサイクルにおいて様々な市場で公開されることから、予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合にもとづいています。

 マネジメントが各作品の予想総収益を見積もる際に基礎とするのは、同種の過去の作品の収益、主演俳優あるいは女優の人気度、その作品の公開される予測映画館数、DVD、テレビ放映及びその他の付随マーケットでの期待収益ならびに将来の売上に関する契約などです。この見積りは、各作品の直近までの実現収益及び将来予測収益にもとづいて定期的に見直されます。例えば、公開当初数週間の劇場収入が予想を下回った場合には、通常、劇場、DVD、及びテレビ放映の生涯収益などを下方に修正することになります。そのような下方修正を行わなかった場合、当該期間における映画製作費の償却費の過少計上になる可能性があります。

保険契約債務

 保険契約債務は、主として個人保険契約に関連しており、保有する契約から将来発生が予測される債務に見合う額が引当てられています。これらの債務はマネジメントの高度な判断と見積りを必要とし、将来の資産運用利回り、罹患率、死亡率及び契約脱退率等についての予測にもとづき平準純保険料式の評価方法により算定されます。保険契約債務は1.0%から4.5%の範囲の利率を適用して計算されており、市場環境や期待投資利益などの要素が反映されています。保険契約債務の見積りに使用される罹患率、死亡率及び契約脱退率は、保険子会社の実績あるいは保険数理上の種々の統計表に拠っています。通常は、これらの前提条件は契約時に固定されますが、前提条件と実績が大きく異なる場合、あるいは前提条件を大きく変更する場合には、ソニーは保険契約債務の追加計上を必要とする可能性があります。

生命保険ビジネスにおける契約者勘定

 生命保険ビジネスにおける契約者勘定は、勘定預り金累積元本に付与利息を加えたものから、引出額、経費及び危険保険料を差し引いた額を表しており、ユニバーサル保険及び投資契約等から構成されています。ユニバーサル保険には、利率変動型終身保険及び変額保険が含まれています。利率変動型終身保険に対する付与利率は1.8%から2.0%です。変額保険については、保険契約の価値は投資ユニットの観点から表示されます。各ユニットは資産ポートフォリオに関連しており、ユニットの価値の増減は、関連する資産ポートフォリオの価値にもとづいています。投資契約には、主に一時払養老保険契約、一時払学資保険契約、変額個人年金保険及び年金開始後契約が含まれています。投資契約(変額個人年金保険除く)に対する付与利率は、0.01%から6.3%です。変額個人年金保険については、保険契約の価値は投資ユニットの観点から表示されます。各ユニットは資産ポートフォリオに関連しており、ユニットの価値の増減は、関連する資産ポートフォリオの価値にもとづいています。

(2)経営成績の分析

営業概況

 

 

2015年度

(億円)

2016年度

(億円)

売上高及び営業収入

81,057

76,033

持分法による投資利益

22

36

営業利益

2,942

2,887

税引前利益

3,045

2,516

当社株主に帰属する当期純利益

1,478

733

 

連結業績

売上高

 2016年度の売上高及び営業収入(以下「売上高」)は、前年度比6.2%減少し、7兆6,033億円となりました。これは、主に為替の影響によるものです。前年度の為替レートを適用した場合、モバイル・コミュニケーション(以下「MC」)分野の大幅な減収がありましたが、ゲーム&ネットワークサービス(以下「G&NS」)分野及び半導体分野の大幅な増収などにより、売上高はほぼ横ばいとなりました。売上高の内訳の詳細については、後述の「分野別営業概況」をご参照ください。

 

 (後述の「売上原価」、「研究開発費」及び「販売費及び一般管理費」に関する売上高に対する比率分析において、「売上高」については、売上高のうち、純売上高及び営業収入のみが考慮されており、金融ビジネス収入は除かれています。これは、「金融ビジネス費用」は連結財務諸表上、売上原価や販売費及び一般管理費とは別に計上されていることによります。さらに、後述の比率分析のうち、セグメントに関するものについては、セグメント間取引を含んで計算されています。)

 

売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業損(純額)

 2016年度の売上原価は、前年度に比べ4,139億円減少して4兆7,530億円となり、売上高に対する比率は前年度の73.4%から72.9%に改善しました。当年度の売上原価には、平成28年(2016年)熊本地震(以下「熊本地震」)に関連する費用(純額)154億円が半導体分野に計上されています。(詳細は「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『19 熊本地震』参照)

 研究開発費(売上原価に全額含まれる)は、前年度に比べ207億円減少の4,475億円となり、売上高に対する比率は、前年度の6.7%に対し6.9%になりました。(詳細は「第2 事業の状況」『6 研究開発活動』参照)

 販売費及び一般管理費は、主に円高の影響により、前年度に比べ1,860億円減少して1兆5,060億円になりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は前年度の24.0%から23.1%に改善しました。

 その他の営業損(純額)は、前年度に比べ1,018億円悪化し、1,490億円を計上しました。この大幅な悪化は、主に、映画分野において営業権の減損962百万米ドル(1,121億円)を計上したことによるものです。(詳細は「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『10 営業権及び無形固定資産』参照)当年度のその他の営業損(純額)には、今後実施予定の電池事業の譲渡にともなう減損423億円がコンポーネント分野に、外販向けの一部の高機能カメラモジュールの開発・製造の中止にともなう長期性資産の減損239億円が半導体分野に含まれています。一方、その他分野において、エムスリー㈱の株式の一部売却にともなう売却益372億円が計上されています。なお、前年度のその他の営業損(純額)には、カメラモジュール事業の長期性資産の減損596億円が半導体分野に、電池事業の長期性資産の減損306億円がコンポーネント分野に、Sony Music Entertainment(以下「SME」)が持分法適用会社であったOrchard Media, Inc.(以下「The Orchard」)を100%子会社とした結果、既に保有していた持分51%を公正価値により再評価したことによる利益151百万米ドル(181億円)が音楽分野に含まれていました。また、ロジスティクス事業に関する合弁事業開始に関連して、事業の一部を売却したことによる123億円の売却益が全社(共通)及びセグメント間取引消去に含まれていました。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『21 連結損益計算書についての補足情報』参照)

 

持分法による投資利益

 営業損益に含まれる持分法による投資利益は、前年度に比べ13億円増加し、36億円となりました。

 

営業利益

 2016年度の営業利益は、前年度比55億円減少し、2,887億円となりました。この減益は、MC分野における改善、及びG&NS分野などにおける増益があったものの、主に、映画分野において営業権の減損962百万米ドル(1,121億円)を計上したことによるものです。2016年度の構造改革費用(純額)は、主に前述の電池事業の譲渡にともなう減損の影響により、前年度に比べ220億円増加し、602億円となりました。

 

その他の収益及び費用

 2016年度のその他の収益は、前年度から524億円減少し、144億円となりました。一方、その他の費用は前年度に比べ50億円減少し、515億円となりました。その他の収益からその他の費用を差し引いた純額は、前年度に比べ474億円悪化し、371億円の費用となりました。これは主に、前年度にはオリンパス株式会社の株式の一部売却にともなう468億円の有価証券売却益が計上されていたことによるものです。

 為替差損(純額)は、前年度に比べ16億円増加し、222億円を計上しました。なお、受取利息及び配当金は前年度に比べ10億円減少して115億円となりました。支払利息は前年度に比べ、主に金利の低下により107億円減少し、145億円となりました。

 

税引前利益

 2016年度の税引前利益は、前年度に比べ529億円減少し、2,516億円となりました。

 

法人税等

 2016年度の法人税等は、1,241億円を計上し、実効税率は前年度の31.1%を上回り、49.3%となりました。これは、税務上損金に算入されない営業権の減損を当年度に計上したことなどによるものです。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『22 法人税等』参照)

 

当社株主に帰属する当期純利益

 当社株主に帰属する当期純利益(非支配持分に帰属する当期純利益を除く)は、前年度に比べ745億円減少し、733億円となりました。

 非支配持分に帰属する当期純利益は、前年度に比べ77億円減少し、543億円の利益となりました。この減少は主に、MJ財団の保有する50%の持分を取得し、Sony/ATVを完全子会社化したことによるものです。

 基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前年度の119.40円に対し、2016年度は58.07円、希薄化後1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前年度の117.49円に対し、2016年度は56.89円となりました。(1株当たり当社株主に帰属する当期純損益の詳細については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『23 基本的及び希薄化後EPSの調整表』参照)

 

分野別営業概況

 以下の情報はセグメント情報にもとづきます。各分野の売上高及び営業収入は、セグメント間取引を含みます。(「第5 経理の状況」 連結財務諸表注記『29 セグメント情報』参照)

 

ビジネスセグメント情報

売上高及び営業収入

 

 

 

2015年度

(億円)

2016年度

(億円)

MC

11,275

7,591

G&NS

15,519

16,498

IP&S

6,840

5,796

HE&S

11,590

10,390

半導体

7,391

7,731

コンポーネント

2,246

1,954

映画

9,381

9,031

音楽

6,192

6,477

金融

10,731

10,875

その他

3,322

2,670

全社(共通)及びセグメント間取引消去

△3,430

△2,981

連結合計

81,057

76,033

 

 

営業利益(損失)

 

 

 

2015年度

(億円)

2016年度

(億円)

MC

△614

102

&NS

887

1,356

IP&S

693

473

HE&S

506

585

半導体

145

△78

コンポーネント

△429

△604

映画

385

△805

音楽

865

758

金融

1,565

1,664

その他

17

309

小計

4,019

3,758

全社(共通)及びセグメント間取引消去 *

△1,077

△871

連結合計

2,942

2,887

 

 * 全社(共通)及びセグメント間取引消去には、各セグメントに配賦されない本社の構造改革費用が含まれています。また、ソニーモバイルの支配権取得時にエリクソンから取得した無形資産である知的財産権のクロスライセンス契約等の知的財産の償却費を含むその他本社費用が含まれています。

 

MC分野

 2016年度のMC分野の売上高は、前年度比32.7%減少し、7,591億円となりました。この大幅な減収は、欧州、中近東、及び中南米におけるスマートフォンの販売台数の減少に加え、不採算地域での販売台数を大幅に絞り込んだことなどによるものです。

 営業損益は、前年度の614億円の損失に対し、102億円の利益を計上しました。前述の減収の影響はあったものの、構造改革の効果を含むオペレーション費用の削減、販売地域の絞り込みや高付加価値モデルへの集中による収益性の改善、為替の好影響、及び構造改革費用の減少などにより、大幅な改善となりました。

 

 主要製品の売上台数は以下のとおりです。

 

主要製品の売上台数

 

 

 

2015年度

(万台)

2016年度

(万台)

スマートフォン

2,490

1,460

 

G&NS分野

 2016年度のゲーム分野の売上高は、前年度比6.3%増加し、1兆6,498億円となりました。当年度において、為替の影響及び「プレイステーション 4」(以下「PS4®」)のハードウェアの価格改定の影響などがあったものの、主にネットワークを通じた販売を含むPS4®のソフトウェアの増収及びハードウェアの増収により、分野全体で増収となりました。

営業利益は、前年度比469億円増加し、1,356億円となりました。PS4®のハードウェアの価格改定の影響や、「プレイステーション 3」のソフトウェアの減収の影響があったものの、PS4®のハードウェアのコスト削減、及び前述のPS4®のソフトウェアの増収の影響などにより、分野全体で大幅な増益となりました。

 

 製品部門別の外部顧客向け売上高及び主要製品の売上台数は以下のとおりです。

 

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2015年度

(百万円)

2016年度

(百万円)

ハードウェア

721,829

598,373

ネットワーク

529,318

714,924

その他

228,628

268,271

合計

1,479,775

1,581,568

 

主要製品の売上台数

 

 

 

2015年度

(万台)

2016年度

(万台)

ハードウェアPS4®

1,770

2,000

 

IP&S分野

 2016年度のIP&S分野の売上高は、前年度比15.3%減少し、5,796億円となりました。為替の影響や熊本地震の影響などにより販売台数が減少したことにより、分野全体で大幅な減収となりました。

 営業利益は、前年度比221億円減少し、473億円となりました。為替の悪影響や前述の販売台数減の影響を静止画・動画カメラにおける高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善や費用削減により一部補いましたが、分野全体で大幅な減益となりました。

 製品部門別の外部顧客向け売上高及び主要製品の売上台数は以下のとおりです。

 

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2015年度

(百万円)

2016年度

(百万円)

静止画・動画カメラ

428,777

351,834

その他

248,454

219,665

合計

677,231

571,499

 

主要製品の売上台数

 

 

 

2015年度

(万台)

2016年度

(万台)

デジタルカメラ *(静止画・動画カメラ事業)

610

420

 

* 「主要製品の売上台数」のデジタルカメラは、コンパクトデジタルカメラ、及びレンズ交換式一眼カメラを含みます。

 

HE&S分野

 2016年度のHE&S分野の売上高は、主に為替の影響により前年度比10.4%減少し、1兆390億円となりました。

 営業利益は、前年度比79億円増加し、585億円となりました。為替の悪影響、事業の分社化及び本社機能再編の一環として負担する本社費用、ブランド及び特許権使用によるロイヤリティなどの算出方法を変更したことによる費用の増加*があったものの、主に高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善により、分野全体で増益となりました。

*「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『29 セグメント情報』参照。

 

 製品部門別の外部顧客向け売上高及び主要製品の売上台数は以下のとおりです。

 

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2015年度

(百万円)

2016年度

(百万円)

テレビ

797,764

720,557

オーディオ・ビデオ

354,946

311,771

その他

2,375

1,887

合計

1,155,085

1,034,215

 

主要製品の売上台数

 

 

 

2015年度

(万台)

2016年度

(万台)

液晶テレビ

1,220

1,210

 

半導体分野

 2016年度の半導体分野の売上高は、前年度比4.6%増加し、7,731億円となりました。この増収は、為替の影響、事業規模を縮小したカメラモジュール事業の大幅な減収、及び熊本地震の影響による生産の減少があったものの、モバイル機器向けイメージセンサーの販売数量が大幅に増加したことなどによるものです。なお、外部顧客に対する売上高は、前年度比10.1%増加しました。

 営業損益は、前年度の145億円の利益に対し、当年度は78億円の損失となりました。前述の増収及び前述のカメラモジュール事業の長期性資産の減損計上額が前年度に比べ減少した影響がありましたが、為替の悪影響、前述の熊本地震に関連する費用の計上、モバイル機器向けの一部イメージセンサーの在庫に関する評価減65億円を計上したことなどにより、損益が大幅に悪化しました。

 

コンポーネント分野

 2016年度のコンポーネント分野の売上高は、主に為替の影響や電池事業の減収により、前年度比13.0%減少し、1,954億円となりました。

 営業損失は、前年度比175億円拡大し、604億円となりました。この大幅な損失拡大は、前年度は電池事業において長期性資産の減損306億円を計上したものの、当年度は今後実施予定の電池事業の譲渡にともなう減損423億円の計上があったことや、前述の減収などによるものです。

 

以下の棚卸資産、外部顧客に対する売上高の地域別分析、地域別の生産状況は、エレクトロニクス6分野(MC分野、G&NS分野、IP&S分野、HE&S分野、半導体分野及びコンポーネント分野の合計)に関するものです。

 

棚卸資産

 

2015年度

(億円)

2016年度

(億円)

MC

845

795

G&NS

842

817

IP&S

649

629

HE&S

1,053

1,141

半導体

2,247

2,036

コンポーネント

365

114

エレクトロニクス6分野合計

6,001

5,532

 

 

外部顧客に対する売上高の地域別分析

 

2015年度

2016年度

日本

18.1%

20.1%

米国

20.5%

21.9%

欧州

27.5%

26.1%

中国

9.6%

10.8%

アジア・太平洋地域

14.9%

14.7%

その他地域

9.3%

6.4%

エレクトロニクス6分野合計

100%

100%

 

地域別の生産状況

 以下の表は、エレクトロニクス6分野合計の年間全生産高の自社生産高及び社外への生産委託による生産高の内訳、ならびに年間自社生産高の地域別内訳を示したものです。なお、自社生産高の地域別内訳におけるカッコ内の数値は、各地域からそれ以外の地域に輸出された製品の比率を示しています。

 

自社生産高及び社外への生産委託による生産高の内訳*

 

2015年度

2016年度

自社生産高

61%

66%

社外への生産委託による生産高

39%

34%

エレクトロニクス6分野合計

100%

100%

 

自社生産高の地域別内訳*

 

2015年度

2016年度

日本

37%(86%)

44%(87%)

中国

42%(70%)

33%(69%)

アジア・太平洋地域

19%(55%)

22%(59%)

米州及び欧州

1%(5%以下)

1%(5%以下)

エレクトロニクス6分野合計

100%

100%

*小数点以下を四捨五入して記載しております。したがって、各欄の合計が合計額の欄と一致しない場合があります。

 

映画分野

 映画分野の業績は、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、米国を拠点とするSony Pictures Entertainment Inc.(以下「SPE」)の円換算後の業績です。ソニーはSPEの業績を米ドルで分析しているため、一部の記述については「米ドルベース」と特記してあります。

 2016年度の映画分野の売上高は、主に米ドルに対する円高の影響により、前年度比3.7%減少し、9,031億円となりました(米ドルベースでは5%の増収)。米ドルベースでの増収は、主にテレビ番組制作及びメディアネットワークの増収によるものです。テレビ番組制作の増収は、会員制ビデオ・オン・デマンドからのライセンス収入が増加したことなどによるものです。メディアネットワークは、主に、インド、中南米及び米国での広告収入及び視聴料収入の増加により増収となりました。

 営業損益は、前年度の385億円の利益に対し、当年度は805億円の損失となりました。この大幅な損益の悪化は、主に前述の営業権の減損962百万米ドル(1,121億円)の計上によるものです。加えて、メディアネットワークにおける番組費用及び広告宣伝費の増加、及び映画製作における広告宣伝費の増加の影響もありました。

 2016年度末の未認識の放映権収入は約26億米ドルでした。すでに完成した映画作品やテレビ番組を放送局に提供する契約を放送局との間で締結しているため、SPEは今後10年間この金額を収入として計上することができると見込んでいます。現在の収益認識の基準及びSPEの方針にもとづき、SPEでは各作品が放送可能となった年度において、放映権収入として認識されます。

 

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2015年度

(百万円)

2016年度

(百万円)

映画製作

447,355

409,363

テレビ番組制作

270,115

271,886

メディアネットワーク

218,357

219,981

合計

935,827

901,230

 

音楽分野

 音楽分野の業績は、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、米国を拠点とするSME及びSony/ATV Music Publishing LLC(以下「Sony/ATV」)の円換算後の業績及び、円ベースで決算を行っている日本の㈱ソニー・ミュージックエンタテインメントの業績が含まれています。また、ソニーの持分法適用会社であるEMI Music Publishing(以下「EMI」)の純利益の39.8%が、持分法投資利益として当分野の営業利益に含まれています。

 2016年度の音楽分野の売上高は、前年度比4.6%増加し、6,477億円となりました(前年度の為替レートを適用した場合、11%の増収)。前年度の為替レートを適用した場合の分野全体の売上高は、映像メディア・プラットフォーム及び音楽制作の増収により大幅に増加しましたが、米ドルに対する円高の影響により一部相殺されました。映像メディア・プラットフォームの増収は、日本でのモバイル機器向けゲームアプリケーション「Fate/Grand Order」が好調だったことによるものです。音楽制作は、ストリーミング配信売上の増加により増収となりました。なお、当年度にヒットした音楽作品には、ビヨンセの「レモネード」、ザ・チェインスモーカーズの作品、及びシーアの「ディス・イズ・アクティング」などがあります。

 営業利益は、前年度比107億円減少し、758億円となりました。この減益は、前年度には前述のSMEが既に保有していたThe Orchardの持分51%を公正価値により再評価したことによる利益151百万米ドル(181億円)が計上されていたことなどによるものです。また、米ドルに対する円高の悪影響がありましたが、前述の増収による好影響もありました。

 

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

2015年度

(百万円)

2016年度

(百万円)

音楽制作

412,718

388,948

音楽出版

71,258

66,541

映像メディア・プラットフォーム

118,588

175,278

合計

602,564

630,767

 

金融分野

 ソニーの金融分野には、SFH及びSFHの連結子会社であるソニー生命、ソニー損害保険㈱(以下「ソニー損保」)、ソニー銀行等の業績が含まれています。

 以下に記載されているソニー生命の業績は米国会計原則に則ったものであり、SFH及びソニー生命が日本の会計原則に則って個別に開示している業績とは異なります。

 

 2016年度の金融ビジネス収入は、ほぼ前年度並みの1兆875億円となりました。これは主に、ソニー生命において、保険料収入及び一般勘定における運用益が減少したものの、株式相場の上昇などにともない、特別勘定における運用損益が改善したことによるものです。なお、ソニー生命の収入は、ほぼ前年度並みの9,656億円となりました。

 営業利益は、主にソニー生命の増益により、前年度に比べ99億円増加し、1,664億円となりました。ソニー生命の営業利益は、前年度に比べ155億円増加し、1,543億円となりました。この増益は、一般勘定における有価証券売却益が減少したものの、金利や株式相場の上昇にともない、繰延保険契約費償却額及び責任準備金繰入額が減少したことなどによるものです。

 

金融分野を分離した経営成績情報

 以下の表は、金融分野の経営成績情報及び金融分野を除くソニー連結の経営成績情報です。この金融分野を分離した要約情報は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則では要求されていませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこの情報を金融分野を除く業績の分析に用いており、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引(非支配持分を含む)を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約損益計算書(3月31日に終了した1年間)

 

 

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

 

2015年度

2016年度

2015年度

2016年度

2015年度

2016年度

科目

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金融ビジネス収入

1,073,069

1,087,504

1,066,319

1,080,284

純売上高及び営業収入

7,044,415

6,527,499

7,039,393

6,522,966

売上高及び営業収入

1,073,069

1,087,504

7,044,415

6,527,499

8,105,712

7,603,250

金融ビジネス費用及び営業費用

915,881

917,479

6,909,651

6,412,385

7,813,753

7,318,111

持分法による投資利益(損失)

△645

△3,601

2,883

7,164

2,238

3,563

営業利益

156,543

166,424

137,647

122,278

294,197

288,702

その他の収益・費用-純額

20,755

△22,728

10,307

△37,083

税引前利益

156,543

166,424

158,402

99,550

304,504

251,619

法人税等その他

37,741

47,711

71,451

84,956

156,713

178,330

金融分野の当期純利益

118,802

118,713

金融分野を除くソニー連結の当期純利益

86,951

14,594

当社株主に帰属する当期純利益

147,791

73,289

 

その他分野

 2016年度の売上高は、前年度比19.6%減少し、2,670億円となりました。この大幅な減収は主に、市場縮小に伴いディスク製造事業の売上高が減少したことによるものです。

 営業利益は、前年度比292億円増加し、309億円の利益となりました。この大幅な増益は、主にエムスリー㈱の株式の一部売却にともなう売却益372億円が計上されたことによるものです。

 

構造改革

 厳しい経営環境の中、ソニーはエレクトロニクス事業の再生を実現するため、様々な変革に取り組み、事業や製品カテゴリーからの撤退、従業員数の削減プログラムの実施、販売・間接部門の能率化など、大規模な構造改革を実施しました。例えば、2014年度に本社・販売会社の合理化を行い、2015年度において、2013年度比で1,000億円以上の固定費削減効果を達成しました。2014年度から始まったMC分野での構造改革計画は2016年度までに実質的に完了し、2016年度において、2014年度比で1,200億円以上の研究開発費やマーケティング費用などの経費削減効果を達成しました。また、2016年度において、ソニーと村田製作所は、ソニーグループの電池事業を村田製作所グループが譲り受けることに関し、法的拘束力を有する確定契約を締結しました。ソニーは当該電池事業に関連する資産及び負債を売却予定資産に分類し、公正価値により評価した結果、2016年度において、423億円の減損損失をその他の営業損(純額)に計上しました。

 

 競争環境は今後も一層厳しくなるとみており、事業の規模や環境の変化を考慮して、常にコスト水準や収益構造の見直しを行い、ソニーが適切だと考えるコスト削減を継続します。

 

 2015年度及び2016年度における構造改革に関連する費用(「構造改革に関連する資産の減価償却費」を含む)は以下のとおりです。(詳細は「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『20 構造改革にかかる費用』参照)

 

2015年度

(百万円)

2016年度

(百万円)

構造改革費用

38,259

60,215

 

為替変動とリスク・ヘッジ

 2016年度の米ドル、ユーロに対する平均円レートはそれぞれ108.4円、118.8円と前年度の平均レートに比べ米ドルは10.8%、ユーロは11.6%の円高となりました。

 2016年度の連結売上高は、前年度に比べ6.2%減少し、7兆6,033億円となりました。前年度の為替レートを適用した場合、ほぼ前年並みの売上高となりました。

 連結営業利益は、前年度比55億円減少し、2,887億円となりました。主にエレクトロニクス6分野において為替変動の悪影響が生じました。

 前述の6分野ごとの為替変動による売上高及び営業損益への影響については、以下の表をご参照ください。また、詳細については、「経営成績の分析」の分野別概況における各分野の分析をご参照ください。為替の影響が大きかった分野やカテゴリーについて、その影響に言及しています。

 

 

 

2015年度

2016年度

為替変動による影響額

 

 

(億円)

(億円)

(億円)

MC分野

売上高

11,275

7,591

△378

 

営業利益(損失)

△614

102

+261

G&NS分野

売上高

15,519

16,498

△1,442

 

営業利益

887

1,356

△22

IP&S分野

売上高

6,840

5,796

△551

 

営業利益

693

473

△265

HE&S分野

売上高

11,590

10,390

△1,113

 

営業利益

506

585

△134

半導体分野

売上高

7,391

7,731

△763

 

営業利益(損失)

145

△78

△437

コンポーネント分野

売上高

2,246

1,954

△189

 

営業損失

△429

△604

△39

 

 なお、映画分野の売上高は前年度比3.7%減少の9,031億円となりましたが、米ドルベースでは、前年度比約5%の増収でした。音楽分野の売上高は前年度比4.6%増加の6,477億円となりましたが、前年度の為替レートを適用した場合、約11%の増収でした。詳細な分析は、「経営成績の分析」の「映画分野」及び「音楽分野」をご参照ください。ソニーの金融分野は、円ベースのSFHを連結しています。同分野の事業のほとんどが日本で行われていることから、ソニーは金融分野の業績の分析を円ベースでのみ行っています。

 2016年度のエレクトロニクス6分野において、米ドルに対する1円の円高の影響は、売上高では約220億円の減少、営業損益では約30億円の増加と試算されます。ユーロに対する1円の円高の影響は、売上高では約90億円、営業損益では約50億円の減少と試算されます。(「第2 事業の状況」『4 事業等のリスク』参照)

 ソニーの連結業績は、主に収入と費用において通貨構成が異なることから生ずる為替変動リスクにさらされています。MC分野では、売上高に占める円貨建ての割合が相対的に高い一方で、米ドル建ての製造や部品調達コストが大きな割合を占めていることから、米ドルに対する円高は、営業利益に好影響を及ぼします。G&NS分野では、米ドル建てのコストの割合が高いのに対して、売上高は日本円、米ドル又はユーロで計上されるため、米ドルに対する円高は営業利益に好影響を、ユーロに対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。IP&S分野では、円貨建てのコストの割合が相対的に高いのに対して、新興国での売上高の割合が高いことから、新興国通貨、特に中国元に対する円高は営業利益に悪影響を及ぼします。HE&S分野でも、同じく、新興国通貨に対する円高は営業利益に悪影響を及ぼす一方で、ドル建ての製造コストの割合が高いことから米ドルに対する円高は営業利益に好影響を及ぼします。半導体分野では、米ドル建ての販売契約の割合が高い一方、主に日本で製造を行っていることから、米ドルに対する円高は営業利益に大幅な悪影響を及ぼします。コンポーネント分野では、主な通貨において売上高とコストが比較的バランスしていることにより、営業利益に与える為替変動の影響は軽微です。

 これらの為替変動によるリスクを軽減するため、ソニーは一貫したリスク管理方針に従い、先物為替予約、通貨オプション契約を含むデリバティブを利用しています。ソニーが行っているこれらのデリバティブは、主に当社及び当社の子会社の予想される外貨建て取引及び外貨建て売上債権や買入債務から生じるキャッシュ・フローの為替変動によるリスクを低減するために利用されています。

 ソニーは、総合的な財務サービスを当社及び当社の子会社・関連会社に提供することを目的として、Sony Global Treasury Services Plc(以下「SGTS」)をロンドンに設立しています。為替変動リスクにさらされている当社及び全ての子会社が、リスク・ヘッジのための契約をSGTSとの間で結ぶことがソニーの方針となっており、当社及び当社の子会社のほとんどはこの目的のためにSGTSを利用しています。為替リスク集中の原則にもとづき、SGTSとソニー㈱がソニーグループ全体の相殺後のほとんどの為替変動リスクをヘッジしています。ソニーの方針として、金融機関との為替デリバティブ取引は、リスク管理のため、原則としてSGTSに集中しております。SGTSはグループ外の信用の高い金融機関との間で外国為替取引を行っています。ほとんどの外国為替取引は、実際の輸出入取引が行われる前の予定された取引や債権・債務に対して行われます。一般的には、実際の輸出入取引が行われる1ヵ月前から3ヵ月前までの間にヘッジを行っています。ソニーは金融機関との外国為替取引を主にヘッジ目的のために行っています。ソニーは、金融分野を除き、売買もしくは投機目的でこれらのデリバティブを利用していません。金融分野においては、主にALMの一環としてデリバティブを活用しています。

 また、特にエレクトロニクス6分野では、為替変動が業績に与える影響を極力小さくするために、海外において市場により近い地域での資材・部品調達、設計、生産を推進しています。

 キャッシュ・フローヘッジとして指定されたデリバティブの公正価値変動は、当初累積その他の包括利益に計上され、ヘッジ対象取引が損益に影響を与える時点で損益に振替えられます。一方、ヘッジ会計の要件を満たさない先物為替予約、通貨オプション契約、及びその他のデリバティブは時価評価され、その変動は、ただちにその他収益・その他費用に計上されます。2016年度末における外国為替契約の想定元本の合計及び資産に計上された公正価値(純額)の合計は、それぞれ2兆5,677億円、94億円となっています(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『15 デリバティブ及びヘッジ活動』参照)。

注:この章において、為替変動による売上高への影響は、前年度及び当年度における平均為替レートの変動を主要な取引通貨建て売上高に適用して為替変動影響額を算出しています。為替変動による営業損益への影響は、売上高への為替変動影響額から、同様に算出した主要な取引通貨建て売上原価ならびに販売費及び一般管理費への影響額を差し引いています。また、MC分野では独自に為替ヘッジ取引を実施しており、為替変動による営業損益への影響に同取引の影響が含まれています。また、前年度の為替レートを適用した場合の売上高は、2016年度の現地通貨建て月別売上高に対し、前年度の月次平均レートを適用して計算した売上高を指しています。映画分野及び音楽分野のSME、Sony/ATVならびにEMIにおいては、米ドルベースで集計した上で、前年度の為替レートを適用した金額を算出しています。この情報は米国会計原則に則って開示されるソニーの連結財務諸表を代替するものではありません。しかしながら、これらの開示は、投資家の皆様にソニーの営業概況をご理解頂くための有益な分析情報と考えております。

 

所在地別の業績

 所在地別の業績は、企業のセグメント及び関連情報に関する開示にもとづく地域(顧客の所在国)別情報について、前述の「分野別営業概況」に含め関連付けて分析的に記載しています。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『29 セグメント情報』参照)

 

 

(3)財政状態の分析

 

 以下の表は、金融分野の財務情報、金融分野を除くソニー連結の財務情報、及びソニー連結の財務情報です。この情報は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則では要求されていませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこの情報を金融分野を除く業績の分析に用いており、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引(非支配持分を含む)を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約貸借対照表

 

(単位:百万円)

金融分野

金融分野を除く

ソニー連結

ソニー連結

 

2015年度

2016年度

2015年度

2016年度

2015年度

2016年度

 資産

 

 

 

 

 

 

 

流動資産

1,328,144

1,499,646

2,873,611

2,861,744

4,196,727

4,355,722

 

現金・預金及び現金同等物

233,701

268,382

749,911

691,760

983,612

960,142

 

有価証券 *1

943,195

1,051,441

3,202

946,397

1,051,441

 

受取手形及び売掛金

(貸倒・返品引当金控除後) *2

9,743

10,931

847,788

947,602

853,592

953,811

 

その他

141,505

168,892

1,272,710

1,222,382

1,413,126

1,390,328

 

繰延映画製作費

301,228

336,928

301,228

336,928

 

投資及び貸付金 *3

9,004,981

9,904,576

309,184

285,965

9,234,083

10,111,793

 

金融ビジネスへの投資(取得原価)

111,476

133,514

 

有形固定資産

18,047

21,323

801,485

735,590

820,818

758,199

 

その他の資産 *4

564,357

638,330

1,559,646

1,463,324

2,120,534

2,097,914

 

繰延保険契約費

511,834

568,837

511,834

568,837

 

その他

52,523

69,493

1,559,646

1,463,324

1,608,700

1,529,077

 

10,915,529

12,063,875

5,956,630

5,817,065

16,673,390

17,660,556

 負債及び資本

 

 

 

 

 

 

 

流動負債

2,209,232

2,701,585

2,626,546

2,525,820

4,830,750

5,221,739

 

短期借入金 *5

93,398

411,643

243,543

106,437

336,940

518,079

支払手形及び買掛金

550,964

539,900

550,964

539,900

銀行ビジネスにおける顧客預金

1,912,673

2,071,091

1,912,673

2,071,091

その他

203,161

218,851

1,832,039

1,879,483

2,030,173

2,092,669

固定負債

7,319,461

7,911,233

1,421,128

1,408,880

8,710,752

9,291,337

長期借入債務

34,567

75,511

525,507

609,692

556,605

681,462

未払退職・年金費用

29,082

31,289

433,302

365,427

462,384

396,715

保険契約債務その他 *6

6,910,535

7,465,565

6,910,535

7,465,565

その他

345,277

338,868

462,319

433,761

781,228

747,595

償還可能非支配持分

7,478

12,058

7,478

12,058

金融分野の株主に帰属する資本

1,385,515

1,449,605

金融分野を除くソニー連結の株主に帰属する資本

1,796,891

1,770,632

当社株主に帰属する資本

2,463,340

2,497,246

非支配持分

1,321

1,452

104,587

99,675

661,070

638,176

10,915,529

12,063,875

5,956,630

5,817,065

16,673,390

17,660,556

 

*1 2016年度末の金融分野における有価証券の増加は、主にソニー生命が保有する有価証券が増加したことによるものです。

*2 2016年度末の金融分野を除くソニー連結における受取手形及び売掛金(貸倒・返品引当金控除後)の増加は、主にG&NS分野、映画分野、音楽分野において受取手形及び売掛金が増加したことによるものです。

*3 2016年度末の金融分野における投資及び貸付金の増加は、主にソニー生命において投資及び貸付金が増加したことによるものです。

*4 2016年度末の金融分野を除くソニー連結におけるその他の資産の減少は、主に営業権が減少したことによるものです。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『10 営業権及び無形固定資産』参照)

*5 2016年度末の金融分野における短期借入金の増加は、主にソニー生命において短期借入金が増加したことによるものです。金融分野を除くソニー連結における短期借入金の減少は、主に1年以内に返済期限の到来する長期借入債務を返済したことによるものです。

*6 2016年度末の金融分野における保険契約債務その他の増加は、ソニー生命における保有契約高の増加により保険契約債務が増加したことによるものです。

 

投資有価証券

 売却可能証券及び満期保有目的証券に区分されるものの未実現評価損益は次のとおりです。

 

項目

2017年3月31日現在(単位:百万円)

取得原価

未実現

評価益

未実現

評価損

公正価値

金融ビジネス:

 

 

 

 

売却可能証券

 

 

 

 

負債証券

 

 

 

 

ソニー生命

1,149,125

188,332

△2,772

1,334,685

ソニー銀行

613,954

6,857

△1,686

619,125

その他

59,504

182

△16

59,670

持分証券

 

 

 

 

ソニー生命

25,302

13,660

△370

38,592

ソニー銀行

その他

530

1,517

2,047

満期保有目的証券

 

 

 

 

負債証券

 

 

 

 

ソニー生命

6,066,464

1,522,835

△75,043

7,514,256

ソニー銀行

6,219

87

6,306

その他

75,837

16,064

△449

91,452

7,996,935

1,749,534

△80,336

9,666,133

金融ビジネスを除くその他のビジネス:

 

 

 

 

売却可能証券

32,131

54,760

△7

86,884

満期保有目的証券

32,131

54,760

△7

86,884

 

 

 

 

 

連結合計

8,029,066

1,804,294

△80,343

9,753,017

 

 2017年3月31日現在、ソニー生命が保有する負債証券及び持分証券の未実現評価損の総額は782億円でした。ソニー生命は、原則として、国内外の公社債に投資しており、その多くはStandard & Poor's Ratings Services(以下「S&P」)、Moody's Investors Service(以下「ムーディーズ」)等の格付け会社によりBBB、又は同等以上に格付けされています。

 2017年3月31日現在、ソニー銀行が保有する負債証券の未実現評価損の総額は17億円でした。このうち12ヵ月超継続して未実現評価損の状況にある有価証券に関するものは46.8%です。ソニー銀行は、原則として、日本の国債、社債及び外国債券に投資しており、その多くはS&P、ムーディーズ等の格付け会社によりBBB、又は同等以上に格付けされています。

 これらの未実現評価損は多数の有価証券から構成されており、個々の有価証券の未実現評価損に金額的な重要性はありません。さらに、個々の公正価値の下落金額及び下落率とも僅少であり、公正価値の下落は一時的であると判定されていることから、これらの未実現評価損を認識した有価証券の中に、減損の基準に合致したものはありません。

 2017年3月31日現在、ソニー生命が保有する償還期日を有する有価証券のうち、未実現評価損(778億円)を有するものの満期日は、以下のとおりです。

 

1年以内                      -

1年超5年以内               -

5年超10年以内         -

10年超                    100.0%

 

 2017年3月31日現在、ソニー銀行が保有する償還期日を有する有価証券のうち、未実現評価損(17億円)を有するものの満期日は、以下のとおりです。

 

1年以内                     10.5%

1年超5年以内              57.5%

5年超10年以内         2.0%

10年超                    30.0%

 

 2015年度及び2016年度において、ソニー生命が計上した売却可能証券の実現利益(純額)は、それぞれ193億円及び13億円です。

 ソニーは通常の事業において、多くの非公開会社の株式を長期の投資有価証券として保有し、これらは投資有価証券その他に含まれています。2017年3月31日におけるこれらの非公開会社に対する投資の簿価合計は613億円です。非上場会社の持分証券は公正価値が容易に算定できない場合、主に取得原価で計上されています。非上場会社に対する投資の価値が下落したと評価され、その下落が一時的でないと判断される場合は直ちに減損を認識し、公正価値まで評価減を行います。

 2015年度及び2016年度において実現した減損は、総額でそれぞれ36億円及び76億円計上されました。このうち、2015年度及び2016年度において、それぞれ1億円及び0.5億円が、金融分野の子会社により金融ビジネス収入として計上されています。金融分野の子会社以外の実現した減損額は、主として金融分野以外の戦略投資に関するもので、その他の費用として計上されています。この戦略投資は、主にソニーが新技術の開発及びマーケティングのために戦略的関係を有する日本及び米国所在の企業に関するものです。これらの減損の計上は、過去2年間において、これら新技術の開発及び販売に成功しなかったため、これらの企業の業績が以前の見通しより悪化したことにより、これらの企業の公正価値の下落が一時的でないと判断されたことにもとづくものです。個々の減損につき、金額的に重要性のあるものはありません。

 有価証券の減損が生じたと判断された場合には、その公正価値にもとづく価額まで評価減を行います。活発な市場における取引価格が入手可能な有価証券の公正価値は、減損の判断が行われた時点での未調整の取引価格にもとづき測定されます。前述以外の有価証券の公正価値は通常、類似特性を持った有価証券の取引価格にもとづき測定され、もしくは、価格決定モデル、割引キャッシュ・フロー法、又は市場参加者が価格決定に使用するであろう前提に関するマネジメントの重要な判断もしくは見積りを必要とする類似評価手法を用いて算定されます。過去2年間において計上された減損は、個々の有価証券に固有な要因及び状況によるもので、他の有価証券に対して重要な影響を与えるものではありません。

 金融分野の投資額は主にソニー生命とソニー銀行により構成されています。2017年3月31日現在、ソニー生命、ソニー銀行の投資額はそれぞれ金融分野全体の投資額の約92%及び約7%を占めています。

 

借入債務、オペレーティング・リースによる最低賃借料、契約債務及び偶発債務

 2017年3月31日現在におけるソニーの既発債務及び契約債務は以下のとおりです。(「注記」は、連結財務諸表注記)

 

項目

期限別支払額(単位:百万円)

合計

1年未満

1年以上

3年未満

3年以上

5年未満

5年以上

 

既発債務及び契約債務

 

 

 

 

 

 

短期借入債務(注記12)

464,655

464,655

 

長期借入債務(注記9、12)

 

 

 

 

 

 

キャピタル・リース未払金等

34,224

10,152

12,338

7,794

3,940

 

その他長期借入債務

700,662

43,272

336,968

149,723

170,699

 

その他長期借入債務に係る利息

8,530

4,165

2,942

887

536

 

オペレーティング・リース取引による最低賃借料(注記9)

268,520

54,727

83,842

42,691

87,260

 

契約債務(注記28)

 

 

 

 

 

 

映画作品及びテレビ番組の製作又は配給権購入のための予定支払額

139,006

76,104

55,933

4,446

2,523

 

音楽アーティストならびに音楽ソフトやビデオの制作・販売会社との長期契約

61,660

26,286

18,147

8,872

8,355

 

広告宣伝の権利に関する長期スポンサーシップ契約

13,305

4,826

8,479

 

長期番組供給契約

16,317

7,620

8,697

 

その他の契約債務

113,619

84,971

21,921

5,067

1,660

 

生命保険ビジネスにおける保険契約債務その他及び契約者勘定(注記11) *

21,320,690

470,406

1,024,469

1,149,210

18,676,605

 

総未認識税務ベネフィット(注記22) **

119,529

1,288

 

合計

23,260,717

1,248,472

1,573,736

1,368,690

18,951,578

 

*  生命保険ビジネスにおける保険契約債務その他及び契約者勘定の期限別支払額は、保険契約者等に対する将来の予測支払額です。これらの支払額は罹患率、死亡率及び契約脱退率等の予測にもとづいて算定されています。上記の金額は割引現在価値ではありません。上記の合計金額の21兆3,207億円は、主として金銭の時間的価値の違いにより、連結貸借対照表の計上額である7兆4,138億円より大きくなっています。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『11 保険関連科目』参照)

** 総未認識税務ベネフィットの合計額は、未認識税務ベネフィットに関する会計基準にもとづく総未認識税務ベネフィットに関する負債を示しています。ソニーは、この負債のうち13億円は、1年以内に解決すると予想しています。それ以外の残高の1,182億円については、様々な税務当局との合意の時期の不確実性により、その解決時期を合理的に見積もることはできません。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『22 法人税等』参照)

 

 以下の項目は、上記の表及び下記の2017年3月31日現在における契約債務の総額には含まれていません。

• 将来における年金支払の合計額については、現時点では確定できないため、含まれていません。なお、ソニーは2017年度において、給付建年金制度に対して日本国内制度で約120億円、海外制度で約50億円を拠出する予定です。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『16 年金及び退職金制度』参照)

• 金融子会社が提供する、顧客に対する貸付契約にもとづく貸付の未実行残高は、現時点では顧客による借入金額を予測できないため、上記の表には含まれていません。なお、2017年3月31日現在、これらの貸付未実行残高は約314億円です。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『28 契約債務、偶発債務及びその他』参照)

• 特定の部品組立業者及び生産受託業者からの購入は、ソニーにおける製造のための供給の継続及び最善の価格を達成するために通常の業務過程に組み込まれており、典型的な拘束力を有する購入義務ではないことから含まれていません。購入義務は、ソニーに対して法的拘束力を有する、物品あるいはサービスの購入に関する契約義務として定義されます。これらの義務には購入数量や価格、取引時期に関する条項など、重要な条項が含まれますが、違約金の支払をともなわずに解約できる契約は含まれません。購入には、ソニーが特定の部品組立業者との間で締結している、これらの部品組立業者のために部品を含む物品を調達し、関連する再購入の際に支払から控除する契約が含まれます。これにより、在庫リスクを最小化する、ソニーのフレキシブルなサプライチェーン・マネジメントと、これらの会社との間における相互に利点のある調達関係の実現が可能となります。業界の慣行にしたがい、ソニーが提供する需要予測や生産計画にもとづき、部品組立業者から技術的基準を満たす部品の購入を行っています。

 

 訴訟及び製品保証を含む保証債務については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『28 契約債務、偶発債務及びその他』をご参照ください。

 

オフバランス取引

 ソニーは流動性と資金調達手段の確保、及びクレジットリスクを軽減するためにオフバランス取引を行っています。

 これらの取引は、ソニーが売掛債権に対する支配を放棄したことから、売却として会計処理されます。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『7 金融資産の移転』参照)また、一部の売掛債権売却プログラムには変動持分事業体(以下「VIE」)が関与していますが、ソニーは第一受益者ではないためこれらのVIEを連結対象とはしていません。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『24 変動持分事業体』参照)

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フロー:2016年度において営業活動から得た現金・預金及び現金同等物(純額)は、前年度比602億円(8.0%)増加し、8,093億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、4,458億円の受取超過となり、前年度比1,830億円(69.6%)の受取の増加となりました。この増加は、当期純利益に非資金調整項目(有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費、投資有価証券売却益、ならびにその他の営業損益)を加味した後の金額が前年度に比べて増加したことや、棚卸資産が前年度の増加から減少に転じたことなどによるものです。

 金融分野では3,762億円の受取超過となり、前年度比1,191億円(24.0%)の受取の減少となりました。この減少は、売買目的有価証券の評価損益を加味した当期純利益が前年度に比べて減少したことなどによるものです。

 

 投資活動によるキャッシュ・フロー:2016年度において投資活動に使用した現金・預金及び現金同等物(純額)は、前年度比2,236億円(21.7%)増加し、1兆2,540億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、2,994億円の支払超過となり、前年度比355億円(10.6%)の支払の減少となりました。この減少は、半導体製造設備等の固定資産の購入による支払いが減少したことなどによるものです。

 金融分野では9,532億円の支払超過となり、前年度比2,592億円(37.3%)の支払の増加となりました。この増加は、ソニー生命における投資の売却又は償還及び貸付金の回収が前年度に比べて減少したことなどによるものです。

 金融分野を除く営業活動及び投資活動による連結キャッシュ・フローの当年度における受取超過の合計*は、前年度の支払超過から2,185億円改善し、1,463億円の受取超過となりました。

 

 財務活動によるキャッシュ・フロー:2016年度において財務活動から得た現金・預金及び現金同等物(純額)は、前年度比722億円(19.0%)増加し、4,523億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、前年度の1,448億円の受取超過に対し、当年度は1,734億円の支払超過となりました。当年度においては、普通社債の発行を行った一方で、長期借入金の返済及び、ソニーの100%子会社とするためにEstate of Michael Jacksonが保有していたSony/ATVの50%の持分をソニーが取得したことにともなう支払いがありました。前年度においては、新株式及び転換社債型新株予約権付社債の発行を行いました。

 金融分野では6,116億円の受取超過となり、前年度比3,867億円(171.9%)の受取の増加となりました。この増加は、ソニー生命における短期借入金が増加したことや、ソニー銀行における顧客預り金の増加額が拡大したことなどによるものです。

 

 現金・預金及び現金同等物:以上の結果、為替変動の影響を加味した2017年3月末の現金・預金及び現金同等物期末残高は9,601億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の2017年3月末における現金・預金及び現金同等物期末残高は、2016年3月末に比べ582億円(7.8%)減少し、6,918億円となりました。ソニーは各子会社に資金余剰、もしくは資金不足が生じた場合にはSGTSを通じてグローバルに資金の貸し借りを行うことでグループ内の資金を有効活用するシステムを整えています。一部の地域において資金の移動が現地の法律により制限されることはありますが、影響を受ける金額は軽微と考えています。(「第2 事業の状況」『7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析』の『(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析』の“キャッシュ・マネジメント”を参照)なお、ソニーではこの他に円換算で総額5,244億円(2017年3月末時点)の未使用の金融機関とのコミットメントラインを保持しており、十分な流動性を継続的に確保していると考えています。金融分野の2017年3月末における現金・預金及び現金同等物期末残高は、2016年3月末に比べ347億円(14.8%)増加し、2,684億円となりました。

 

* ソニーは、その経営指標として用いる「金融分野を除く営業活動及び投資活動による連結キャッシュ・フローの合計」を開示情報に含めています。この情報は、金融分野を除く事業が流動性の保持、借入金の返済、及び配当金の支払いに必要な資金を確保できるかを評価するために重要な情報と考えています。この情報は金融分野を分離したキャッシュ・フロー情報をもとに作成しています。これらのキャッシュ・フロー情報はソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則で要求されているものではなく、また米国会計原則に則って作成されているものではありません。金融分野の大部分を構成する、日本で上場している金融持株会社のSFHと傘下の子会社は独自に流動性を確保しているため、金融分野のキャッシュ・フローはこの情報に含まれていません。この情報は他の企業の開示情報と比較できない可能性があります。また、この指標は負債返済に必要な元本返済支出の控除は行っておらず、裁量支出に使用可能な残余キャッシュ・フローを表しているものではないという限界があります。したがって、ソニーはこの情報を連結キャッシュ・フロー計算書に対する補足情報として、投資や利用可能な融資枠、及び流動性に関する情報とあわせて開示しており、連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。

 

 連結キャッシュ・フロー計算書と「金融分野を除く営業活動及び投資活動による連結キャッシュ・フローの合計」の差異の照合調整表は以下のとおりです。

科目

2015年度

金額(億円)

2016年度

金額(億円)

連結キャッシュ・フロー計算書上の営業活動から得た

現金・預金及び現金同等物(純額)

7,491

8,093

連結キャッシュ・フロー計算書上の投資活動に使用した

現金・預金及び現金同等物(純額)

△10,304

△12,540

(1)

△2,813

△4,447

控除:金融分野における営業活動から得た

現金・預金及び現金同等物(純額)(2)

4,953

3,762

控除:金融分野における投資活動に使用した

現金・預金及び現金同等物(純額)(3)

△6,940

△9,532

消去 ** (4)

105

141

金融分野を除く営業活動及び投資活動から得た又は使用した(△)

連結キャッシュ・フローの合計 (1)-(2)-(3)+(4)

△721

1,463

 

**  消去は主にセグメント間の配当金の支払いです。

 

金融分野を分離したキャッシュ・フロー情報(監査対象外)

 以下の表は、金融分野のキャッシュ・フロー情報、金融分野を除くソニー連結のキャッシュ・フロー情報、及びソニー連結のキャッシュ・フロー情報です(監査対象外)。このキャッシュ・フロー情報は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則では要求されていませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこの情報を金融分野を除く業績の分析に用いており、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引(非支配持分を含む)を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約キャッシュ・フロー計算書

 

金融分野

金融分野を除く

ソニー連結

ソニー連結

 

2015年度

2016年度

2015年度

2016年度

2015年度

2016年度

科目

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

営業活動から得た現金・預金

及び現金同等物(純額)

495,283

376,229

262,783

445,770

749,089

809,262

投資活動に使用した現金・預金及び現金同等物(純額)

△694,031

△953,192

△334,900

△299,435

△1,030,403

△1,253,973

財務活動から得た又は使用した(△)現金・預金及び現金同等物(純額)

224,922

611,644

144,751

△173,425

380,122

452,302

為替相場変動の現金・預金及び現金同等物に対する影響額

△64,609

△31,061

△64,609

△31,061

現金・預金及び現金同等物純増加・減少(△)額

26,174

34,681

8,025

△58,151

34,199

△23,470

現金・預金及び現金同等物

期首残高

207,527

233,701

741,886

749,911

949,413

983,612

現金・預金及び現金同等物

期末残高

233,701

268,382

749,911

691,760

983,612

960,142

 

(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 以下の基本方針及び数値情報は、独自に流動性を確保している金融分野を除いたソニーの連結事業にもとづいて説明しています。なお、金融分野については当該項目の最後に別途説明しています。

 

流動性マネジメントと資金の調達

 ソニーは、事業活動に必要な流動性を保ちながら健全なバランスシートを維持することを財務の重要な目標と考えています。ソニーは、現金・預金及び現金同等物(以下「現預金等」。ただし、国の規制等で資金の移動に制約があるものを除く)及びコミットメントラインの未使用額を合わせた金額を流動性として位置づけており、連結月次売上高の50%及び半年以内に期限が到来する債務返済額の合計額を、十分にカバーできる流動性を通年にわたり維持することを基本方針としています。

 流動性の保持に必要な資金は、営業活動及び投資活動(資産売却を含む)によるキャッシュ・フローの合計及び現預金等でまかないますが、ソニーは必要に応じて金融・資本市場からの資金調達を行う能力も有しています。また金融・資本市場の流動性がなくなった場合でも、ソニーは現預金等及び金融機関とのコミットメントラインを使用することによって十分な流動性を維持することができると現時点では考えています。

 ソニーは、主として当社及びSGTSを通じて、金融・資本市場からの資金調達を行っています。

 当社及びSGTSは運転資金需要に対応するため、市場環境によって左右されることはありますが、日本・米国・欧州の各市場へアクセス可能なコマーシャルペーパー(以下「CP」)のプログラム枠を有しています。2016年度末時点で当社とSGTSは、円換算で合計8,366億円分のCPプログラム枠を保有しています。2016年度中の最大月末発行残高は2016年8月の1,300億円でしたが、2016年度末における発行残高はありません。

 ソニーは通常は上記の普通社債、CPに加え、シンジケートローンを含めた銀行借入などの手段を通じて調達を行っています。市場が不安定な混乱状況に陥り、前述の手段により十分な資金調達ができなくなった場合に備え、ソニーは、多様な金融機関との契約によるコミットメントラインも保持しています。2016年度末の未使用のコミットメントラインの総額は円換算で5,244億円です。未使用のコミットメントラインの内訳は、日本の銀行団と結んでいる3,000億円の円貨コミットメントライン(2019年7月満期)、日本の銀行団と結んでいる1,500百万米ドルの複数通貨建コミットメントライン(2018年12月満期)、外国の銀行団と結んでいる500百万米ドルの複数通貨建コミットメントライン(2017年3月満期。2017年4月3日付で、金額を525百万米ドルに変更し、2018年3月満期に更新。)であり、全て当社及びSGTSが借入主体となっています。これらの目的は、金融・資本市場の混乱期においても機動的・安定的な資金調達を可能とし十分な流動性を確保することです。

 グループ全体の主要な資金調達に関する金融機関との契約において、ソニーの格付けが低下した場合に、強制的に早期弁済を求められるものはありません。また、これら契約のうち一部のコミットメントライン契約については、ソニーの格付けにより借入コストが変動する条件が含まれているものがありますが、未使用のコミットメントラインからの借入を禁ずる条項を含んでいるものはありません。また、ほとんどの借入金に使途制限はありませんが、例外として一部に米国連邦準備制度理事会などの規制に従い、米国の証券取引所に上場されている有価証券や米国の店頭市場において取引されている有価証券の取得に関して使途制限があります。

 2016年9月に、当社は総額200,000百万円の無担保普通社債を発行しました。この発行により調達した資金の大半を債務返済資金に充当しました。残りの資金については、2017年7月末までに債務返済資金に充当する予定です。

 

格付け

 ソニーは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、金融・資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、安定した一定水準の格付けの維持を重要な経営目標の一つと位置づけています。

 ソニーは、グローバルな資本市場から円滑な資金調達を行うにあたり、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(以下「S&P」)及びムーディーズ・ジャパン㈱(以下「ムーディーズ」)の2社より格付けを取得しています。また、日本国内の資本市場からの調達にあたっては、日本の格付会社である㈱格付投資情報センター及び㈱日本格付研究所からも格付けを取得しています。

 またソニーは現時点において、引き続き金融・資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持していると考えています。(将来の格付け低下によるリスクについては、「第2 事業の状況」『4 事業等のリスク』参照)

 

キャッシュ・マネジメント

 ソニーはSGTSを中心にグローバルな資金管理を行っています。資本取引に規制があり資金移動を制限されている国や地域は一部存在しますが、大部分の子会社における資金の過不足は、SGTSにより純額ベースで運用又は調達しています。ソニーは資金の効率化をめざし、各子会社に資金余剰が出た場合はSGTSに預け、また各子会社に資金不足が生じた場合にはSGTSを通じて資金の貸し借りを行うことで、余剰資金を活用し、外部借入を削減することができます。関係会社間の効率的な資金移動が制限されている国や地域では、ソニーはSGTSの外に資金を残していますが、必要な流動性資金はキャッシュ・フローや外部からの借入(もしくはその両方)によって調達しています。ソニーは、海外に所在する移動を制限されている資金が、ソニー全体の流動性や財務状況ならびに業績に重大な影響を与えるとは考えていません。

 

金融分野

 SFH、ソニー生命、ソニー損保、ならびにソニー銀行の各マネジメントは、業務の遂行にともなう支払義務を履行するのに十分な流動性を確保することが重要だと認識しています。ソニー生命、ソニー損保、ならびにソニー銀行は、法令(保険業法及び銀行法など)や金融庁及びその他関係規制当局の定める各種規制を遵守することに加え、それに準拠した社内規程を制定、運用しながら、十分な現預金等を準備し、支払能力を確保することに努めています。ソニー生命及びソニー損保は、受取保険料を主な資金の源泉とし、有価証券を中心とした投資を行うにあたり、保険金等の円滑な支払等に十分な水準の流動性を確保しています。ソニー銀行は、顧客からの円貨・外貨建て預金を主な資金の源泉とし、住宅ローンを中心とする貸出と主に市場性のある有価証券投資を行う中で、円滑な決済等に必要な水準の流動性を確保しています。外貨建て顧客預金で得られた資金は、同じ通貨建の金融商品に投資されています。

 なお、金融分野の子会社は、保険業務、銀行業務の公共性から、その信用を維持し、契約者や預金者の保護を確保することが保険業法、銀行法で定められております。したがって、金融分野の子会社と金融分野以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されており、金融分野の子会社は、上記のSGTSを介したグローバルなキャッシュ・マネジメントからも隔離されています。