第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

業績の概要については「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。

2【生産、受注及び販売の状況】

ソニーの生産・販売品目は極めて多種多様であり、エレクトロニクス機器、ゲーム機やゲームソフト、音楽・映像ソフト等は、その性質上、原則として見込生産を行っています。なお、ソニーはエレクトロニクス5分野(エレクトロニクスはMC分野、G&NS分野、IP&S分野、HE&S分野、及びデバイス分野の合計)においては、市場の変化に柔軟に対応して生産活動を行っていることから、生産状況は販売状況に類似しています。このため生産及び販売の状況については「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」におけるエレクトロニクス5分野の業績に関連付けて示しています。

3【対処すべき課題】

 ソニーのマネジメントが認識している経営課題とそれに対処するための取り組みは以下のとおりです。

 

 米国では原油価格の下落による回復基調から引き続いての成長が、日本では2014年4月の消費税率引き上げにともない消費者需要に一部マイナスの影響があったものの積極的な金融緩和政策や消費税率再引き上げの延期による緩やかな景気拡大がそれぞれみられますが、他方で、原油価格の下落と地政学的緊張によるロシア経済の急減速や、中国における成長の鈍化とそれにともなうアジア新興国の外需の弱まりといった不安要因があり、全体として景気の先行きは不透明な状況です。

 

 ソニーをとりまく経済環境は、主にエレクトロニクス事業における、競合他社からの価格低下の圧力、一部の主要製品における市場の縮小及び商品サイクルの短期化といった要因によって不透明性が増しています。

 

 これらの状況の下、ソニーは2015年2月18日に中期経営方針を発表し、株主資本利益率(以下「ROE」)を最も重視する経営指標に据え、中期経営計画の最終年度となる2017年度に、ソニーグループ連結で、ROE10%以上、営業利益5,000億円以上を達成することを目標とし、以下の基本方針のもと、高収益企業への変革を進めていきます。

 

事業運営の基本方針

・ 一律には規模を追わない収益性重視の経営

・ 各事業ユニットの自立と株主視点を重視した経営

・ 事業ポートフォリオの観点から各事業の位置づけを明確化

 

 事業の特性、市場環境などを踏まえ、各事業を、事業ポートフォリオの観点から「成長牽引領域」、「安定収益領域」、「事業変動リスクコントロール領域」と位置付けた上で、ソニーグループ全体のROE目標に紐づいた、事業ごとの投下資本利益率(以下「ROIC」)の目標値を設定し、収益性を重視した事業運営を行います。

 

(1)成長牽引領域:

 デバイス分野、G&NS分野、映画分野、音楽分野を、2015年度から3年間のソニーの利益成長を牽引していく領域と位置付け、成長に向けた施策の実行と積極的な資本投下を行い、それによって売上成長と利益拡大をめざしていきます。

 デバイス分野においては、CMOSイメージセンサー増産のための設備投資や技術開発投資により、競争力のさらなる強化を図ります。G&NS分野ではプレイステーション®プラットフォームと「プレイステーション®ネットワーク」の顧客数の拡大に注力します。映画分野では、メディアネットワーク事業において、視聴率の向上、放送チャネルの拡充により視聴者の拡大を図るとともに、テレビ番組制作事業の強化、映画事業の収益性の改善を行っていきます。音楽分野においては、成長するストリーミング市場への注力などを進めていきます。

 

(2)安定収益領域:

 IP&S分野、HE&S分野におけるビデオ&サウンド事業は安定収益領域として、着実な利益計上とキャッシュ・フロー創出を重視した経営を行います。

 この領域では、市場全体の成長は見込めないものの、コモディティ化しない一定規模の市場において、ソニーは高性能ミラーレス一眼カメラやハイレゾリューション・オーディオなどに代表される新しい付加価値の提案を引き続き行っていきます。既存の技術アセットを活用し大規模な投資は行わず、固定費の最適化や在庫コントロールの強化により、利益と投下資本効率の最大化を図ります。

 

(3)事業変動リスクコントロール領域:

 HE&S分野におけるテレビ事業、MC分野においては、事業の変動性や競争環境を踏まえ、リスクの低減と利益の確保を最優先とした事業運営を行います

 価格競争が激しく、コモディティ化が進んでいる市場ではあるものの、ソニーの技術やデバイスにより、商品のさらなる付加価値向上を図ります。また、地域や商品を厳選することにより、投下資本を抑え、安定した利益を確保できる事業構造を構築します。加えて、事業環境の変化に応じ、他社との提携などの選択肢を継続して検討していきます。

 

 なお、金融分野については、生命保険、損害保険、銀行、介護の各事業において、今後も高品質なサービスを提供していくことで、高い顧客満足度を実現し、持続的かつ安定的な業容拡大と利益成長をめざします。

 また、2018年度以降も安定的に高収益を生み出すため、既にG&NS分野におけるゲーム事業や金融分野で成功している安定した顧客基盤やプラットフォームをベースとした「リカーリング型事業モデル」を、G&NS分野におけるネットワークサービス事業、映画分野におけるメディアネットワーク事業、及びIP&S分野におけるデジタルイメージング事業の製品のうち交換レンズ、アクセサリーなどにおいてさらに強化していきます。

 新規領域としての医療事業では、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ㈱における外科用硬性内視鏡システムなどの開発を順調に進めています。

 

新しい組織及び人事の体制

 高収益企業への変革を着実に実施するため、組織体制と経営チームの再編を行います。

 各事業において、①結果責任・説明責任の明確化、②持続的な利益創出を念頭に置いた経営、③意思決定の迅速化と事業競争力の強化を徹底するため、現在当社内の事業部門となっている事業について、順次分社化を実施していく方針です。

 

グローバル環境計画「Road to Zero」

ソニーは、2010年4月に環境計画「Road to Zero」を発表しました。ソニーは、持続可能な社会の実現をめざし、2050年までに自らの事業活動及び製品のライフサイクルを通して、「環境負荷ゼロ」を達成することを長期的ビジョンとして掲げています。ソニーは、継続的なイノベーションとオフセット・メカニズムの活用を通じて、この長期ビジョン達成をめざします。環境計画「Road to Zero」においては、以下の4つの目標を柱とした総合的なロードマップを設定しています。

・ 気候変動について、エネルギーの使用を削減し、温室効果ガスの排出ゼロをめざす。

・ 資源について、重点資源の新材利用ゼロをめざし、廃棄物を最小化し、水を適正利用する。また回収リサイクルを継続推進する。

・ 化学物質について、予防的措置を通じた化学物質の環境に対するリスクの最小化と特定の物質の削減・代替推進を行う。

・ 生物多様性について、事業活動と地域社会貢献活動を通じて、生物多様性の維持・回復を推進する。

 

上記目標のうち、気候変動については具体的には下記を含む中期目標を設定しています。

・ ソニーグループ全体の事業所から排出されるCO換算温室効果ガスの絶対量を、2015年度までに2000年度比で30%削減をめざす。

・ 製品の消費電力を2015年度までに2008年度比で一台あたり30%削減をめざす。

グローバル環境計画「Road to Zero」及び環境への取り組みの詳細は、ソニーのCSRレポート

(http://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr_report/)をご参照ください。

 

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあると考えております。なお、当該事項は、本書提出日現在において入手し得る情報にもとづいて判断したものです。

 

(1) ソニーはエレクトロニクス事業を中心に一層激化する競争を克服しなければなりません。

 ソニーのエレクトロニクス事業は、新規参入を含む競合他社と、価格や機能を含む様々な要素で競い合っています。イメージセンサーのように、現在圧倒的な競争力を持つ分野においても競合他社がソニーの技術力に追い付き、その優位性を保てなくなる可能性もあります。また、コンスーマーエレクトロニクス事業においては、変化し一層多様化する消費者の嗜好に訴求する製品を作るため、あるいは、消費者の多くがソニーと同種の製品をすでに所有しているという状況に対処するために、ソニーはより優れた技術を開発し、消費者の嗜好を予測し競争力ある価格と特長を持った、魅力的で差異化された製品を迅速に開発する必要があります。ソニーは、様々なコンスーマー製品において、一層激化する競合企業との価格競争、小売業者の集約化及び製品サイクルの短期化による価格低下圧力の高まりに直面しています。ソニーの業績は、変化し一層多様化する消費者の嗜好に合った製品を、効率的に開発し、様々な販売チャネルを通じて、競争力のある価格で提供し続けるソニーの能力に依存しています。もし、ソニーが技術的、あるいはその他の競争力を持つ分野においてその優位性を保てなくなる場合、ソニーのコンスーマー製品に対して頻繁に影響を及ぼす価格下落について効果的に予測し対応できない場合、既存の事業モデルあるいは消費者の嗜好が変化した場合、又はコンスーマー製品の平均販売単価の下落スピードが製造原価削減のスピードを上回った場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) ソニーは、競争力を維持し消費者の需要を喚起するため、新製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの頻繁な導入及び切り替えを適切に管理しなければなりません。

 ソニーは、非常に変化が激しく厳しい競争環境におかれているコンスーマーエレクトロニクス製品やネットワークサービス、ならびに携帯電話業界において、成熟市場及び成長市場の両方で、製品、イメージセンサーなどの半導体やコンポーネント、サービス、及び技術を導入し、これらを拡充することにより、消費者の需要を喚起し続けていく必要があります。新製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの導入及び切り替えの成功は、開発をタイムリーにかつ成功裡に完了させること、市場における認知度、ソニーが効果的なマーケティング戦略を企画・実行する能力、ソニーが新製品や生産立ち上げにともなうリスクを管理できる能力、新製品のためのアプリケーションソフトウエアが入手できること、予測される製品需要に沿って購入契約や在庫水準を効果的に管理できること、予測される需要を満たす適正な数量及びコストの製品を確保できること、導入初期における新製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの品質その他の問題に関するリスクなど、数多くの要素に依拠しています。また、競争力を維持するためには、ソニーが、技術革新に対応し、既存の製品やサービスの機能を統合・強化した製品やサービスに対する消費者需要の変化に応えていくことも重要です。したがって、新たな製品、半導体やコンポーネント、及びサービスの頻繁な導入及び切り替えを適切に管理できない場合、ソニーの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 新しい製品やサービスへの消費者の需要のシフトが、ソニーの既存の製品やサービスの売上に悪影響を与える可能性があります。

 技術革新にともない、新しい製品やサービスに消費者の需要がシフトした結果、ソニーが強みを持つ製品やサービスの市場が縮小することがあります。例えば、近年、イメージセンサーやプロセッサ、メモリなどのコンポーネント技術やモバイル製品向けOS技術の向上や、大容量通信インフラ及びネットワークやクラウドサービスなどの技術の進化・拡大に加えて、ダウンロードアプリケーションやソーシャルメディアが進化した結果、それまで別個の製品として購入されてきた携帯用音楽プレーヤーや家庭用ビデオカメラ、コンパクトデジタルカメラならびに携帯用ゲームハードウエアなどからスマートフォンへの需要がシフトし、同様にPCや携帯用ゲームハードウエアからタブレット端末へ需要がシフトしています。その結果として、ソニーはPC事業を2014年7月に譲渡しました。スマートフォンやそれに組み込まれるイメージセンサーといった製品についても、顧客の嗜好の変化や新しく競争力のある技術の導入によって、現在の旺盛な需要が継続するという保証はありません。このような状況において、ソニーは、魅力的な新しい製品やサービスを提供するとともに、既存の製品やサービスの付加価値向上を継続して図ることで消費者の需要の変化に対応する必要があります。ソニーがこれらの製品やサービスを提供できない場合、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(4) ソニーは、より高度に専門化した企業や経営資源において優位性を有する企業との競争にさらされています。

 ソニーは、業種の異なる複数のビジネス分野に従事しており、さらにそれぞれの分野において数多くの製品・サービス部門を有するため、大規模な多国籍企業から、数少ないビジネス領域に特化し高度に専門化した企業にいたるまで、業界の既存企業や新規参入企業など広範囲な他企業と競争しています。加えて、ソニーの外部委託生産パートナーが、現在ソニーの供給業者として生産している製品の市場に自社ブランドで参入し、当該市場で競合相手となる可能性もあります。また、既存の及び潜在的な競合他社がソニーより高度な財務・技術・労働・マーケティング資源を有する可能性があり、いくつかの事業領域で競合他社と同程度の資金投入や投資もしくは製品の値下げを行うことができない可能性もあります。さらに、ソニーの金融分野における各社は、財務、マーケティングなどの経営資源において優位性を有する競合他社と有効に競争できない可能性があります。このように、既存及び新規参入の競合他社に対して効率的に対応できない場合、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) ソニーの研究開発投資が想定した成果をもたらさない可能性があります。

 ソニーは、消費者の嗜好の変化や急速な技術革新という特徴をもつ厳しい市場で競争しています。技術革新が進み、技術的な模倣が比較的に容易になったことにより、新しい製品やサービスが陳腐化するスピードが早まり、熾烈な競争と継続的な価格下落につながる傾向が強まっています。このような環境の下、ソニーは、製品の競争力を強化するため、特にイメージセンサー及びゲーム&ネットワークサービス(以下「G&NS」)分野といった成長分野において、高水準の研究開発投資を継続的に行っている一方で、成熟していると考えられる、あるいは成長余地が限られている市場における費用を抑制する予定です。しかしながら、ソニーが成長市場を特定し、その市場の主たる傾向を成功裡に評価できる保証はなく、このような研究開発投資が革新的な技術を生み出さなかったり、想定した成果を十分迅速にもたらさなかったり、又は競合企業が技術開発に先行する可能性があります。その結果、市場のニーズに合った競争力のある新製品やサービスをタイムリーに商品化できない場合、ソニーの業績及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) ソニーの事業構造の変革は多額の費用を必要としますが、その目的が達成できない可能性があります。

 ソニーは、収益性、事業の自立性、株主価値、事業ポートフォリオ全体の中で明確に定義された各事業の位置づけに焦点を当てた経営体質強化施策を継続して実施しています。ソニーは2012年度、2013年度及び2014年度にそれぞれ775億円、806億円及び980億円の構造改革費用を計上しました。2015年度には、約350億円の構造改革費用を計上する見込みですが、景気後退の影響や、事業売却を含む不採算事業からの撤退などにより、追加的にもしくは将来において多額の構造改革費用を計上する可能性があります。これらの構造改革費用は、主として、売上原価、販売費及び一般管理費、又はその他の営業損益(純額)に計上され、ソニーの営業損益及び当社株主に帰属する当期純損益に悪影響を及ぼします(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『20 構造改革にかかる費用』参照)。ソニーは、製造オペレーションの合理化、低コスト国への生産移管・集約、外部委託生産の活用に継続的に取り組んでいます。また、ソニーはグループ全体の販売費及び一般管理費の削減、間接部門及び情報処理業務の外部委託化、セールス&マーケティング、生産、物流、調達、品質、研究開発などの機能にわたって、ビジネスプロセスの最適化に向け継続的に取り組んでいます。

 内的又は外的な要因により、前述の構造改革施策による効率性の向上及びコスト削減が予定どおり実現しない可能性があり、また構造改革による効果が現れたとしても市場環境の予想以上の悪化により、収益性の改善が予定している水準に達しない可能性もあります。構造改革の目的達成を妨げ得る内的な要因には、構造改革計画の変更、利用可能な経営資源を効果的に用いて構造改革を実行できないこと、事業部門間の連携ができないこと、新しい業務プロセスや戦略の実行の遅れ、構造改革実施後のビジネスオペレーションを効果的に管理及び監視できないこと、などがあります。一方、外的な要因には、例えば、労働規制、労働組合との間の協約、及び日本における労働慣行を含む地域ごとの法律や規制上の制約による、追加的又は予期せぬ負担などがあり、これらの影響により、ソニーが構造改革を計画どおりに実行できない可能性があります。構造改革プログラムを完全に成功裡に実行できない場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。加えて、構造改革費用の支出により、営業キャッシュ・フローが減少する可能性があります。

 

(7) ソニーによる買収、第三者との合弁ならびに出資は成功しない可能性があります。

 ソニーは、技術獲得や効率的な新規事業開発のため、又は事業の競争力強化のため、買収、第三者との合弁及びその他の戦略的出資を積極的に実施しています。また、ソニーは、投下資本の軽減、営業費用の削減、ならびにリスクの第三者との共有による軽減を目的として、これまでに第三者との合弁を実施してきましたが、今後もその可能性があります。さらに、ソニーは、当初の目的を既に達成したなどの理由により、合弁事業の持分を売却したり、合弁パートナーの持分を買収したりすることがあります。例えば、ソニーは、2012年2月、Telefonaktiebolaget LM Ericsson(以下「エリクソン」)との携帯電話の製造・販売に関する合弁会社であるSony Ericsson Mobile Communications ABにおいてエリクソンが保有する持分50%を取得し、同社をソニーの完全子会社としました。

 ソニーが事業買収を実施し、それを統合するにあたり、多額の費用が生じる可能性があります。加えて、ソニーは、戦略上の目的や予定していた売上増加及び費用削減を実現できない可能性や、買収先事業において核となる人材を確保できない可能性もあります。また、買収した事業に関連する債務を承継することにより、ソニーの業績は悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、現在、いくつかの合弁会社や戦略的パートナーシップに出資を行っており、また、将来新たな出資を行う可能性があります。ソニーと相手企業が競争状況の変化や、戦略や文化の違い、シナジー実現の失敗その他の理由により共通の財務目的を達成できない場合、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、ソニーと相手企業が共通の財務目的を達成する過程にあったとしても、パートナーシップの期間中、ソニーの業績に短期的又は中期的な悪影響を及ぼす可能性があります。これらの合弁や戦略的出資企業について、ソニーが利害の対立に直面するリスクやキャッシュ・フローへの支配権を含む合弁及びその他の戦略的出資に対する支配権を十分に確保できないリスクがあり、またソニー固有の技術やノウハウが漏洩するリスクも増加します。また、ソニーブランドを使用する合弁会社の行為もしくは事業活動により、ソニーの評判が傷つけられる可能性があります。さらに、合弁事業の業績などの結果によっては、ソニーは追加的な出資や債務保証を求められる可能性や、合弁事業の相手企業の買収、売却あるいは、合弁解消に至る可能性もあります。加えて、持分法適用関連会社への投資価値が投資簿価を下回り、それが一時的でないと判断される場合には、ソニーは減損を計上することになり、契約その他の理由によりそれらの会社の株式等を処分できない場合には、損失が膨らむ可能性があります。

 

(8) ソニーには、生産能力増強のための設備投資もしくは出資を回収できないリスクがあります。

 ソニーは、エレクトロニクス事業において、製造設備に対する投資を継続的に行っています。こうした例として、特にスマートフォンに使用するイメージセンサーの旺盛な需要に対応する目的で行うイメージセンサー製造設備に対する追加投資があげられます。ソニーは、2014年3月にルネサスエレクトロニクス㈱から半導体関連資産を約75億円で取得し、ソニーセミコンダクタ㈱山形テクノロジーセンターを設立しました。ソニーは、イメージセンサーの生産能力増強のために2014年度に約440億円を投資し、2015年度にも約2,100億円を投資する見込みです。しかしながら、予期せぬ市場環境の変化にともない需要が減少し、想定した販売規模を達成できない場合、あるいは供給過剰により製品の単価が下落した場合、ソニーがこうした設備投資もしくは出資の一部又は全部について、回収することができない、あるいは回収できるとしても想定より長い期間を要する可能性があります。特に、イメージセンサーについては、売上の多くをスマートフォンに依存しており、スマートフォン市場における消費者の需要及び競争環境、あるいは主要顧客の営業方針、業績及び財政状態によっては、想定した販売規模が達成できない可能性があります。これらの場合、当該設備投資もしくは出資を行った資産が減損の対象になり、ソニーの収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) ソニーの売上や収益性は卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者の業績に影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者に依存しており、その多くが競合他社の製品を同時に取り扱っています。例えば、ソニーモバイルコミュニケーションズ㈱は多くの国でスマートフォンの販売について携帯電話キャリアを通じた販売に依存しています。多くの卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者の業績及び財政状態は、オンライン小売業者との競争や低迷する経済環境に悪影響を受けてきました。

 ソニーは、卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者に対して、これらの業者がソニーの製品を市場に導入し、販売を促進するインセンティブを与えるプログラムに資金を投入しています。しかしながら、それらのプログラムによって消費者が競合他社の製品の代わりにソニー製品を買うように促されることで、大きな利益や追加収入を生むことを保証するものではありません。また、携帯電話キャリアを通じて販売されるソニーのスマートフォンは、キャリアからの補助金を受ける場合がありますが、今後もそのような補助金が継続する保証はなく、また、これらのキャリアとの契約更新、あるいは別のキャリアとの契約を締結するにあたって、従来と同額の補助金で合意できる保証はありません。

 ソニーは多くの製品を自社のオンラインストアや直営店を通じて消費者に直接販売しています。一部の卸売事業者や小売事業者はソニーの直接販売が、彼らのソニー製品の販売代理店や再販売事業者としての営業上の利害と対立すると受け取る可能性があります。そのような場合には、再販売事業者がソニー製品を取り扱ったり、販売するためにリソースを投入する意欲を阻害したり、ソニー製品の取り扱いを限定的なものにとどめたり、中止したりする可能性があります。

 これらの卸売事業者や小売事業者ならびにその他の再販売事業者の財政状態が悪化したり、これらの事業者がソニー製品を取り扱うことを中止したり、ソニー製品に対する需要が不透明になるなどの要因により、これらの事業者がソニー製品の発注やマーケティング、販売奨励金、販売を減少させるような場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(10) 外部のビジネスパートナーへの依存度が高まることにより、ソニーの、財務上のリスク、ブランドイメージや評判を傷つけるリスク、及びその他のリスクが高まる可能性があります。

 限られた経営資源の中で迅速な事業展開や業務効率化を図る必要性が高まっていることから、ソニーは部品及びコンポーネント、ソフトウエア、ならびにネットワークサービスに関して、外部の供給業者及びビジネスパートナーへの依存度が高まっています。また、モバイル製品及びテレビ向けのアンドロイドOSなどのソフトウエア技術や、サービスを提供する外部のビジネスパートナーにも依存しています。このような外部依存の結果、ソニーの製品やサービスが、部品及びコンポーネント、ソフトウエア、又はネットワークサービスに関する品質問題の影響を受ける可能性があります。加えて、外部のソフトウエア技術への依存は、ソニーが製品を競合の製品と差異化することをより困難にする可能性があります。また、ソニーの製品及びサービスに使用される外部の部品及びコンポーネント、ソフトウエア、ならびにネットワークサービスが、著作権又は特許侵害で訴訟を受ける可能性があります。さらに、ソニーをとりまく経済環境は、特にエレクトロニクス事業における、競合他社からの価格低下の圧力、一部の主要製品における市場の縮小及び商品サイクルの短期化といった要因によって不透明性が増しています。このような環境において、外部のビジネスパートナーが、ソニー製品やサービスに対するサポートを打ち切ったり、契約条件を変更したり、ソニーの製品やサービスではなく、ソニー以外の競合他社及びエレクトロニクス分野以外の顧客への製品やサービスを優先したりする可能性があります。部品及びコンポーネント、ソフトウエア、ならびにネットワークサービスに関する外部の供給業者及びビジネスパートナーへの依存に起因する問題は、ソニーの業績や、ブランドイメージ又は評判に悪影響を及ぼすことがあります。また、ソニーではコンスーマーエレクトロニクス事業において、製品や部品の供給に関し外部委託生産を活用しています。ソニーがこのような外部委託関係を円滑に運営できない場合、又は自然災害、サイバー攻撃、あるいはその他の事象がソニーのビジネスパートナーに影響を及ぼす場合、ソニーの生産活動に支障を与える可能性があります。また、ソニーは目標生産量や品質水準に到達できない、又はソニー固有の技術やノウハウが漏洩するリスクが生じる可能性があります。加えて、ソニーは、資材調達・物流・販売・データ処理・人事・経理その他のサービスなど広範囲な業務を外部のビジネスパートナーに委託しています。外部のビジネスパートナーが法規制を十分に遵守しなかった場合や、第三者の知的所有権を侵害した場合、もしくは事故、自然災害、サイバー攻撃、あるいは経営破綻によりその事業やサービスが停止した場合には、ソニーの事業に影響を及ぼす可能性もあります。さらに、ビジネスパートナーの情報セキュリティへの侵害があった場合、ソニーの専有情報、知的財産ならびに従業員の情報、及びソニーの顧客、供給業者ならびにその他のビジネスパートナーに関連するデータを含むソニーのビジネス情報への不正なアクセスが行われる可能性があります。

 

(11) ソニーは市況変動が大きい部品やコンポーネントの調達及び需要変動の大きい製品、部品やコンポーネントの在庫管理を効率的に行う必要があります。

 エレクトロニクス事業において、ソニーはモバイル製品向けチップセットなどの半導体や液晶パネルなど、大量の部品やコンポーネントを自社製品に使用しています。これら部品やコンポーネントの供給量や価格の変動は、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。例えば、部品やコンポーネントの供給不足や、原材料の価格変動が生じた場合、これらの価格が高騰しソニーの製品原価が上昇する可能性があります。また、ソニーが一社に調達を依存している部品やコンポーネントが供給不足になったり、その出荷が遅延した場合や、カスタムコンポーネントの生産能力に限界があったり、新しい技術を使用する製品やコンポーネントの初期生産能力に制約がある場合には、ソニー又はビジネスパートナーの生産事業所での稼動調整又は稼働停止の可能性があります。

 ソニーは消費者需要の予測にもとづいて事前に決定した生産量及び在庫計画に沿って部品やコンポーネントを発注していますが、そうした消費者需要の変動は大きく、また予測が難しいものです。不正確な消費者需要予測や不充分な経営管理により在庫不足もしくは過剰在庫が発生し、その結果生産計画に混乱が生じて売上の機会損失や在庫調整につながる可能性もあります。ソニーでは、部品、コンポーネントや製品が陳腐化したり、在庫が使用見込みを上回ったり、もしくは在庫の帳簿金額が正味実現可能価額を上回る場合、在庫の評価減を行います。例えば、過去にソニーは、一部のチップセットや半導体、液晶パネルの不足により製品に対する消費者需要を満たせなかったことがあり、また、一部の半導体や液晶パネルで過剰在庫を抱えた際にそれらの部品やコンポーネントの価格が低下したために在庫の評価減を計上した経験もあります。さらに、2013年度においては、PC事業収束の発表にともない、将来の生産終了によって余剰となった手元部品在庫の評価減174億円や仕入先の発注済部品に対する補償費用80億円を計上しました。2014年度においては、PlayStation®TV(以下「PS TV」)の販売台数が当初の想定に達しなかったため、PlayStation®Vita(以下「PS Vita」)及びPS TV用の部品に対する評価減112億円を計上しました。さらに、過去においては自然災害により供給業者が影響を受け、その結果、部品及びコンポーネントの供給不足が発生したことがあり、将来も同様の状況に起因する供給不足が発生する可能性があります。過去にこのような売上機会の損失及び在庫調整、ならびに部品及びコンポーネントの供給不足がソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼしたことがあり、将来も及ぼす可能性があります。

 

(12) ソニーの売上及び収益性は、ソニーの主要市場の経済や雇用などの動向に敏感です。

 ソニーの売上及び収益性は、ソニーが事業を営む主要市場の経済、雇用、その他の動向に敏感です。これらの市場が深刻な景気後退に陥り、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。2014年度のソニーの売上高及び営業収入(以下「売上高」)において、日本、欧州、米国における構成比はそれぞれ27.2%、23.5%、18.6%でした。

 ソニーの業績は、消費者及び法人顧客の需要や、小売事業者・卸売業者及び再販売事業者の業績に依存しています。ソニーの主要市場における経済状況の悪化や今後悪化するという見通しにより、最終消費者の購買、消費意欲が低下した結果、消費が低迷する可能性があります。また、キャッシュ・フローの不足、資金調達の困難、消費者の需要減などから経営が悪化した法人顧客やそのほかのビジネスパートナーからのソニーの製品やサービスに対する需要が減少する可能性があります。経営が悪化した法人顧客によるソニーに対する義務の不履行も、ソニーの業績やキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性もあります。ソニーの外部供給業者も同様の困難を被り、ソニーに対する契約義務の履行能力に影響を受ける可能性があります。その結果、ソニーが競争的な価格で製品やサービスを調達できなくなる場合には、ソニーの業績に悪影響が及ぶ可能性があります。

 また、世界的な景気動向は、その他の様々な影響を与える可能性があります。例えば、構造改革費用の積み増し、年金及びその他の退職給付債務にかかる費用の増加及び追加的な資金拠出、資産の減損の追加的な計上などを通じて、ソニーの業績、財政状態及びキャッシュ・フローに悪影響を及ぼしたことがあり、将来も及ぼす可能性があります。

 

(13) ソニーの業績及び財政状態は外国為替変動の影響を受ける可能性があります。

 ソニーの製品の多くは開発、製造された国・地域と異なる国・地域で販売されるため、ソニーの業績と財政状態は外国為替相場の変動に影響を受けます。例えば、エレクトロニクス事業においては、研究開発費や本社間接費は主に円で、原材料、部品及びコンポーネントの調達や外部委託生産を含む製造費用は主に米ドル及び円で発生しています。売上は日本・米国・欧州・中国・新興国市場を含むその他地域に分散して発生し、それぞれの地域の通貨で計上されています。結果として、(現在の状況においては)特に米ドルに対する大幅な円安及びユーロ安や、ユーロに対する大幅な円高はソニーの業績に悪影響を及ぼしたことがあり、今後も及ぼす可能性があります。また、ソニーの連結損益計算書は世界中の各子会社の現地通貨ベースの業績を円換算して作成されていることから、外国為替相場の変動が、かかる換算にともないソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。さらに、近年では中国や新興国市場を含むその他地域におけるビジネス拡大とともに、これら地域の通貨の米ドル及び円に対する為替レートの変動の影響も大きくなっています。中長期的な為替レート水準の変化は、ソニーの経営資源のグローバルな配分を妨げたり、研究開発、資材調達、生産、物流、販売活動を、為替レート変化の影響後でも収益をあげられるように遂行する能力を低下させる可能性があります。

また、ソニーは、輸出入取引により生じる短期の外貨建債権債務(純額)の大部分を取引予定の事前にヘッジしていますが、かかるヘッジ活動によっても、為替レートの変動リスクを完全に取り除くことはできません。

さらに、ソニーの連結貸借対照表は世界中の各子会社の現地通貨ベースの資産及び負債を円換算して作成されるため、米ドルやユーロならびにその他の外国通貨に対して円高が進行すると、ソニーの自己資本に悪影響を与える可能性があります。

 

(14) 格付けの低下や国際金融市場における深刻かつ不安定な混乱状況は、ソニーの資金調達や資金調達コストに悪影響を及ぼす可能性があります。

 近年、ソニーの業績及び財政状態の悪化は、ソニーの信用格付け評価にマイナスの影響を及ぼしてきました。将来、ソニーの業績及び財政状態が再び悪化した場合、格付けのさらなる低下に結びつく可能性があります。こういった格付けの低下は、資金調達コストの上昇を招き、ソニーのコマーシャルペーパー(以下「CP」)及び中長期債市場からの受諾可能な条件での調達に悪影響を与える可能性があります。

 また、国際金融市場が深刻かつ不安定な混乱状況に陥った場合、金融その他の資産価格全般に下落圧力が生じたり、資金調達に影響が生じる可能性があります。従来、ソニーは、営業キャッシュ・フロー、CP及び中長期債などのその他の債券の発行、銀行やその他の融資機関からの借入金などにより資金を調達してきました。しかしながら、将来にわたってこのような資金源から受諾可能な条件でソニーの必要を満たすのに十分な資金調達が可能となる状況が継続するという保証はありません。

 その結果、ソニーは弁済期限到来時のCPや中長期債の返済、その他事業遂行上必要ある場合や必要な流動性を賄うために、金融機関と契約しているコミットメントラインや資産の売却など代替的な資金源を活用する可能性がありますが、そのような資金源から受諾可能な条件でソニーの必要を満たすのに十分な資金調達ができない可能性があります。その結果、ソニーの業績、財政状態及び流動性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) ソニーは、様々な国で事業を行うことのリスクにさらされています。

 ソニーは、世界各地において事業活動を行っており、このような国際的な事業遂行には課題が生じることもあります。例えば、エレクトロニクス事業において、中国やその他のアジアの国々において製品、部品及びコンポーネントを生産、調達しているため、これらの地域外の市場に製品を供給するのに必要な時間が長くなり、変化する消費者需要に対応することがより難しくなる可能性があります。さらにソニーは、複数の国において、ソニーにとって望ましくない政治的・経済的な要因により、事業を企画・管理する上で困難に直面する可能性があります。この例としては、武力紛争、外交関係の悪化、当該国・地域内での文化的・宗教的な摩擦、期待される行動規範からの逸脱、現地の各種法規制や貿易政策及び税法の不遵守、ならびに十分なインフラの欠如などがあります。加えて、特に、主要な市場及び地域における現地部品調達規制・事業及び投資許認可要件・為替管理・輸出入管理・資産国有化・海外での事業及び投資からの利益の本国送金制限などの現地の法規制や貿易政策及び税法の変更は、ソニーの業績に影響を与える可能性があります。例えば、ソニーやパートナーが生産活動を行う中国やその他の国々において、労働争議の発生及び労働法制や政策の変更など労働環境が著しく変化した場合、ソニーの製品及び部品の生産や出荷の妨害、人件費の高騰あるいは優秀な従業員の不足が発生することなどにより、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。不安定な国際又は国内政治・軍事情勢が今後生じた場合、ソニーやそのビジネスパートナーの事業活動が阻害されたり、消費者の購買意欲を低下させたりすることにより、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、一部の国において、前述の要因や、自然災害及び疫病などその他の要因による混乱から回復するのに要する時間が長くなる可能性があります。さらに、ソニーの事業活動にとって新興国市場はより一層重要になってきているため、ソニーが前述のリスクの影響を受けやすくなった結果、業績及び財政状態に悪影響を被る可能性があります。

 

(16) ソニーの成功は、技術やマネジメントなどの分野における有能な人材の採用・確保に依存しています。

 ソニーが、ますます競争が激しくなる市場において、ネットワーク関連製品、ゲーム機やソフトウエア、映像や音楽などのコンテンツ、又は金融商品を含む製品やサービスの開発、設計、製造、マーケティング及び販売において継続的に成功を収めるためには、経営陣やその他のマネジメント、ハードウエアやソフトウエアエンジニアなどクリエイティブで有能な人材を惹きつけ確保することが必要となります。しかしながら、このような有能な人材に対する需要は強く、ソニーが将来の事業に必要な人材を採用・確保できない可能性があります。加えて、事業分離や構造改革ならびにその他の事業構造変革の施策により、経験豊かな人材やノウハウが意図せず喪失してしまう可能性があります。そのような事態が生じた場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(17) ソニーはハードウエア、ソフトウエア、エンタテインメント・コンテンツ、ならびにネットワークサービスの競争力を向上させるための、異なる事業ユニット間の事業戦略及びオペレーションの統合に成功しない可能性があります。

 ソニーは、市場における差異化を図り、それにより、売上の拡大及び収益性の向上を図るために、ハードウエア、ソフトウエア、エンタテインメント・コンテンツ、ならびにネットワークサービスの統合を促進させることが不可欠であると考えています。しかしながら、この戦略は、ネットワークサービス技術の継続的な発展(ソニー内外を問わず)、ソニーの様々な事業ユニットや販売チャネルにおける戦略及びオペレーション上の連携と適切な優先順位付け、業界内や、ネットワークに接続可能なソニーの製品や事業ユニット間における技術やインターフェース規格の標準化に依存しています。さらに、新規参入企業も多く、継続的に変化する厳しい競争環境において、消費者にとって革新的で魅力あるユーザーインターフェースをもち、ネットワークプラットフォームにシームレスに接続可能なハードウエアを、より高い性能かつ競争力のある価格で提供し続ける必要があります。また、ソニーは競争力があり差異化された、ソニー自身の、又は主要な映画製作及びテレビ制作会社、音楽レーベル会社、ゲーム制作会社や出版社などの第三者からライセンスを受けた、音楽・映像・ゲームコンテンツを提供することが不可欠であると考えています。ソニーがこの戦略の実行に成功しない場合、ソニーの評判、競争力及び収益性に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) ソニーのオンライン上の事業活動は、法規制の対象となっており、これによりオペレーションにかかるコストが増加したり活動が制限されたりする可能性があります。

 ソニーは、エレクトロニクス及びエンタテインメント製品の販売・マーケティング、エンタテインメント領域に関するネットワークサービス、金融サービス、インターネットプロバイダサービスなど、オンライン上の事業活動を広範囲にわたって行っており、関連する法規制による制約を受けています。この法規制には、プライバシー、消費者保護、重要インフラ保護、侵害の告知、データの保存及び保護、データの越境・移転、コンテンツ及び放送関連規制、名誉毀損、年齢確認その他のオンライン上の児童保護、アクセスのしやすさ、cookieなどのソフトウエアの最終ユーザーのPC又は他の情報端末へのインストール、価格設定、広告(成人及び児童向け)、租税、著作権や商標権、販促、及び課金などに関わるものが含まれています。これらの法規制(オンライン上の事業活動に対処するために制定された法規制やインターネット普及以前に制定されたものを含むその他のオンライン上の事業活動にも適用される法規制)の運用は、各国により異なり、また、多くの場合、法規制そのものが不明確・不確定であったり、今後変更されたりする可能性があります。ソニーはこれらの法規制遵守のために多額の費用を計上する可能性があります。また、これらの法規制を遵守できなかった場合、多額の罰金、その他の法的責任、ソニーの評判への悪影響などが生じる可能性があります。さらに、これらの法規制遵守のために行われるオンライン上の事業活動の変更や制限はソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。加えて、関連する法規制の変更を予測できなかった場合、オンライン上の事業活動を保護する法令の変更が生じた場合、又はこのような保護範囲を狭めるような解釈を裁判所が行った場合、ソニーの法的責任に対するリスクが増加し、法規制遵守のための費用の増加もしくは一部のオンライン上の事業活動に対する制限につながる可能性があります。

 

(19) ゲームハードウエアを始めとするコンスーマー製品の売上は特に消費者需要の季節性の影響を受けます。

 ソニーのG&NS分野が提供するハードウエア(「プレイステーション 4」、「プレイステーション 3」、ならびにPS Vitaなど)は種類が比較的少ない上に、これら及びその他の製品の需要に占める年末商戦の比率が高くなります。ソニーのその他のコンスーマー製品も年末商戦需要に依存しています。その結果、特にこの時期において、他社との競争状況や市場環境の変化、有力ゲームソフトタイトルを含むコンスーマー製品の発売遅延、ハードウエアの供給不足などが生じた場合、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(20) ネットワークサービスを含むG&NS分野の売上及び収益性はプラットフォームの普及の成否に依存しており、この普及はソニー及び外部の事業者により制作されるものを含むソフトウエアラインアップの充実度の影響を受けています。

 G&NS分野の売上及び収益性には、プラットフォームの普及の成否が重要な影響を及ぼします。この普及は、ソニー及び第三者により制作されたものを含む魅力的なソフトウエアの品揃えや、ネットワーク・ゲーム、クラウド・ゲームやデジタルコンテンツの配信を含むオンラインサービスが消費者に提供されるか否かに影響されます。外部のゲームソフトウエアの開発事業者や開発・販売事業者がソフトウエアの開発や供給を定期的に実施し続ける保証はなく、全く実施されない可能性もあります。ソフトウエア開発の中断や遅れ、又は新しいオンラインサービスの提供の遅れはソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(21) ソニーの映画、音楽及びG&NS分野などのコンテンツ事業は、増加し続ける違法デジタルコピーや違法ダウンロードの影響を受けています。

 デジタル技術、デジタルメディアの利用、ならびに世界的なインターネットの普及により、ソニーの映画、音楽及びG&NS分野などのコンテンツ(発売前のものも含む)の著作権を違法デジタルコピー及び偽造から保護することが難しくなってきました。特に、コンテンツ著作権者の許可なくインターネットやその他のサービス経由でデジタルメディアファイルの複製、転送やダウンロードが可能なソフトウエア及び技術によって、高品質なデジタルメディアファイルの不正な作成、送信や再配信がより簡単にできるようになってきているため、従来の著作権をベースとするビジネスモデルが逆風を受け、脅かされ続けています。こうしたコンテンツの不正入手が可能であることは、正規製品の売上減少や売価の低下圧力につながり、ソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。ソニーは、知的財産の保護支援、映画、テレビ番組、音楽、ゲームなどの正規のデジタル配信のための新しいサービスの開発や著作権のあるコンテンツの不正なデジタル配信への対抗のために費用を計上しており、今後も引き続き費用を計上します。こうした動向はソニーの短期的な費用の増加にもつながり、また、想定している効果を達成できない可能性もあります。

 

(22) 映画及び音楽分野の業績は、消費者に全世界で受け入れられるかどうか及び競合作品やその他の娯楽の有無により変動します。

 映画及び音楽分野の業績は、作品が消費者に全世界で受け入れられるかどうかという予測が難しい要因に左右され、変動する可能性があります。映画作品やテレビ番組の製作・制作ならびに番組の放送は、それらの作品が消費者にどの程度受け入れられるか分かる前に多額の投資を行わなければなりません。同様に、音楽分野でもアーティスト自身やその作品が消費者にどう受け入れられるか確定する前に多額の投資を行わなければなりません。さらに、映画及び音楽分野における作品の商業的な成功は、同時期もしくは近接した時期に公開された他の競合作品、ならびに、それらに代わり、消費者が享受できる娯楽及びレジャー活動に影響を受ける可能性があります。特に大型期待作品をはじめ、映画作品やテレビ番組の業績が想定を下回った場合、公開もしくは放映した年度の映画分野の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、作品の公開当初の業績と、それに続く映像ソフトやテレビ局など流通市場から得られる収入には高い相関性がみられることから、将来における映画分野の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。同様に、音楽作品の業績が想定を下回った場合、作品をリリースした年度の音楽分野の業績に対して、悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(23) エンタテインメント・コンテンツの製作・制作、取得ならびにマーケティング費用の高騰は、音楽及び映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 音楽分野の成功は消費者に長期にわたって受け入れられるアーティスト、ソングライター及び楽曲版権のカタログの発掘及び育成に大きく依存しており、有能な新規アーティストやソングライターを発掘・育成できない場合、音楽分野の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。音楽業界各社間における販売競争の激化に加え、このようなアーティストを発掘し、契約を締結し維持するための競争も激化しています。映画分野では、トップ・タレントに対する高い需要が映画作品やテレビ番組の製作・制作費用の高騰につながっています。映画作品やテレビ番組を獲得するための競争は激しく、映画作品やテレビ番組の取得費用が上昇する可能性があります。映画分野の作品の製作・制作費用及び取得費用の増加は、これらのマーケティング費用の増加とともに、映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(24) 音楽及び映像パッケージメディア売上の継続的な減少や消費者による新たな技術の受容は、音楽及び映画分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 CD、DVDならびにブルーレイディスクなどのパッケージメディアフォーマットの全般的な成熟化や、デジタル配信への移行、小売事業者の展示スペースをめぐる競争の激化などの業界全体の動向により、音楽及び映像パッケージメディア売上が全地域で減少しており、今後も減少する可能性があります。加えて、急速な技術変化や消費者による新たな技術の受容は、消費者がエンタテインメント作品を取得し視聴するタイミングや方法に影響を与えています。デジタルダウンロード及び定額利用によるストリーミング配信など、エンタテインメント・コンテンツの新しい販売形態が現れているものの、これらの新しい販売経路からの収入は、パッケージメディア売上の減少を十分に補完しない可能性があります。このような状況は、音楽及び映画分野、ディスク製造事業の業績に影響を与えてきており、今後も影響を与える可能性があります。さらに、直近の音楽業界において、デジタル収入の最大部分を占めるデジタルダウンロードの売上が年々減少しています。この減少が加速した場合、あるいはストリーミング配信がこの減少を相殺するのに十分な利用者を獲得できない場合、音楽分野の業績は悪影響を受ける可能性があります。

 

(25) 広告市場の変化、あるいはテレビ放送契約を更新できないこともしくは更新時における条件悪化により、映画分野の業績が悪影響を受ける可能性があります。

 広告市場の景気は特定の広告主や業界の経済的見通し、広告主の支出の優先順位、及び一般的な経済状態によって変動し、映画分野のテレビ事業の収入に悪影響を与える可能性があります。世界的なテレビネットワークを含む映画分野のテレビ事業の売上のかなりの部分は、多様なプラットフォーム上での広告収入が占めています。そのため、広告市場に対する宣伝広告支出額全体が減少した場合、映画分野のメディアネットワーク収入に直接的な悪影響を与える可能性があります。映画分野の売上には、顧客である米国内外のテレビネットワークから得られる映画作品やテレビ番組の放映権収入が含まれます。広告市場の景気が後退した場合、これら外部のテレビネットワークの広告収入や視聴料収入が低迷し、ソニーの映像コンテンツの放映権収入に悪影響を与える可能性があります。

 さらに、世界的なテレビネットワークでの放映は、外部のケーブルテレビ、衛星テレビやその他の放送システムに依存しています。これらの放送ネットワーク業者とのテレビ放送契約を更新できないこともしくは更新時における契約条件の悪化は、映画分野における世界的なテレビネットワークからの広告収入や視聴料収入に悪影響を与える可能性があります。

 

(26) 映画分野の業績はストライキによる影響を受ける可能性があります。

 映画分野及びその供給業者の一部は、脚本家、監督、俳優、その他のアーティストや専門職・技術スタッフなど、労働協約が適用される、映画作品やテレビ番組の企画・製作に欠かせない専門的技能を有する労働組合員に依存しています。新たな合意や契約締結にいたる見通しが不確実であること、又はそれらが成立しないことによってもたらされる労働組合によるストライキが生じた場合、あるいはストライキ、サボタージュやロックアウトの可能性が生じた場合、製作活動の遅延や停止を招く可能性があります。こうした遅延や停止は、その期間の長さによっては、将来予定されている映画やテレビ番組作品の公開の遅延や中断をもたらす可能性があり、映画分野の業績やキャッシュ・フローに悪影響を及ぼす可能性があります。また、労働協約が合意に至らない場合や好ましくない条件で更新された場合、映画分野における費用が増加し、業績に悪影響を与える可能性があります。

 

(27) 金融分野は、法規制が厳格な業界で事業を遂行しており、新しい法令や監督官庁の施策などが、事業遂行の自由度を妨げ、ソニーの金融分野の業績に悪影響を与える可能性があります。

 ソニーの金融分野は、日本における保険や銀行といった法規制や監督の厳格な業界で事業を行っています。法規制・政策などの将来における改正・変更や、それが与える影響は予測が不可能であり、また、こうしたことが法規制遵守に対応するための費用の増加や事業活動に対する制約にもつながる可能性があります。ソニーという共通のブランドを用いて各会社が事業を行っているため、ソニーの金融分野のいずれかの事業において法規制違反などが発生した場合には、ソニーの金融分野における事業全体の評判に悪影響を及ぼす可能性があります。また、法規制遵守のための追加費用が生じ、ソニーの金融分野の業績に悪影響を与える可能性もあります。なお、ソニー株式会社は、連結子会社であるソニーフィナンシャルホールディングス㈱(以下「SFH」)から財務支援又は融資ローンの形態による資金を受け取ることに関し、日本の監督官庁の指針による制約を受けています。これらの指針が変更された場合、ソニー株式会社がSFHから資金を受け取り使用することに関しさらに制約を受ける可能性があります。

 

(28) ソニーの業績及び財政状態は、株価の下落により、特に金融分野において悪影響を受ける可能性があります。

 金融分野において、ソニー生命保険㈱(以下「ソニー生命」)は株式に加え、時価が株価指数変動の影響を受ける債券型の複合金融商品を保有しています。株価の下落により、ソニー生命の保有する株式の減損及び売却した場合には売却損が計上される可能性があります。また、株式の売却益の減少や売却損の増加、ならびに当該複合金融商品の未実現利益の減少や未実現損失の増加により、ソニーの金融分野の業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。さらに、米国会計基準では、変額保険の最低死亡保証にかかる責任準備金の評価に用いる保険数理上の前提と、繰延保険契約費の償却費見直しも求められています。このため、ソニー生命の特別勘定資産運用利回りの悪化時には、責任準備金の追加計上や繰延保険契約費の前倒し償却が必要となる可能性もあります。その場合、ソニーの業績に悪影響を与える可能性があります。

 金融分野以外において、ソニーが保有している株式の公正価値の下落は、現金支出をともなわない減損損失の計上につながることもあります。その場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 

(29) 金融分野の業績及び財政状態は、金利の変動により悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーの金融分野においては、生命保険事業及び損害保険事業における保険引受債務、ならびに銀行事業における預金、借入金その他の債務など、各事業の負債の状況に鑑み、運用資産を適切に管理するため、資産負債管理(以下「ALM」)を行っています。ALMは、長期的な資産負債のバランスを考慮しながら、安定的な収益を確保することを目的としています。ソニーの金融分野がALMを適切に遂行できない場合、あるいはALMにより合理的に対処することができるレベルを超えて市場環境に大きな変化があった場合には、ソニーの金融分野の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特にソニー生命においては、通常、契約者に対して負う債務の期間が、長期日本国債を中心とした運用資産の投資期間よりも長期であるため、低金利の状況においては、残存する保険契約の予定利率(責任準備金計算用)は一般的に変化しない一方で、ソニー生命の投資ポートフォリオからの収益が減少する傾向があります。その結果、ソニー生命の収益性と保険契約債務を履行し続ける長期的な能力に悪影響が生じる可能性があります。

 

(30) 金融分野の投資ポートフォリオは、株価及び金利変動リスク以外の様々なリスクにさらされています。

 ソニーの金融分野では日本の短期国債や地方債、国内社債、外国公社債、国内株式、貸付金、不動産など、様々な投資資産を保有する一方、安定した投資収益を確保するため、日本の長期国債を中心とした資産ポートフォリオを構成しています。金利及び株価変動リスクに加え、ソニーの金融分野の投資ポートフォリオは、為替リスク、信用リスク及び不動産投資リスクなど、様々なリスクにさらされており、そのようなリスクが金融分野の業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、ソニー銀行㈱(以下「ソニー銀行」)では、2015年3月末において住宅ローンが貸出金の90.5%又は総資産の51.8%を占めており、ソニー銀行の住宅ローンに関して不良債権が増加したり、担保設定されている不動産の価値が減少した場合、ソニー銀行の貸出金ポートフォリオの信用力に悪影響を及ぼし、これにより与信関係費用が増加する可能性があります。

 

(31) ソニーの金融分野において、保険金・給付金の支払い実績が見積りと乖離することにより、将来の責任準備金の積み増しを余儀なくされる場合があります。

 ソニーの生命保険事業及び損害保険事業においては、保険業法及び保険業法施行規則に従い、将来の保険金・給付金の支払いに備えた責任準備金を積み立てています。これらの責任準備金は、保険契約の保障対象となる事象の頻度や時期、支払うべき保険金・給付金の額、保険料収入を原資に購入される資産の運用益など、多くの前提と見積りにもとづいて計算されています。これらの前提と見積りは本質的に不確実なものであるため、最終的に支払うべき保険金・給付金の額や支払時期、又は保険金・給付金の支払いより前に、保険契約債務に対応した資産が想定していた水準に達するかどうかを正確に判断することは困難です。保険契約の保障対象となる事象の頻度と時期及び支払う保険金・給付金の額は、以下のようなコントロール困難な多くのリスクと不確実な要素に影響されます。

死亡率、疾病率など、計算の前提と見積りの根拠となる傾向の変化

信頼に堪えるデータの入手可能性、及びそのデータを正確に分析する能力

適切な料率・価格設定手法の選択と活用

法令上の基準、保険金査定方法及び医療費の変化

 保険事業における実績が計算の前提条件や見積りよりも大きく悪化した場合、責任準備金の積立てが不足する可能性があります。また、責任準備金の積立水準に関するガイドラインや基準などに変更があった場合には、より厳しい計算の前提や見積り又は保険数理計算にもとづいて責任準備金の積み増しが必要となる可能性があります。これら責任準備金の繰入額の増加は、金融分野における業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

 さらに、日本における大地震などの大規模災害や感染症などの疫病の発生により、責任準備金の積み立て前提を超える保険金の支払が生じた場合、もしくは、何らかの要因によって、最低保証付きの変額個人年金保険にかかるリスクヘッジの有効性が損なわれた場合など、金融分野の業績及び財政状態は悪影響を受ける可能性があります。

 

(32) ソニーの設備や情報システムは、大規模な災害、停電、違法行為などにより、被害を受ける可能性があります。また、これらの予期できない大惨事にともなうサプライチェーンや生産活動の混乱及び法人顧客からの需要減などがソニーの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの本社及び半導体生産設備のような最先端デバイス製造拠点の多くは、他国よりも地震のリスクが比較的高い日本の国内にあります。日本において大地震が起きた場合、特にソニーの本社がある東京や、完成品の製造事業所が所在する東海地方及び半導体製造事業所が所在する九州地方及び東北地方で起きた場合には、建物や機械設備、棚卸資産や、製造事業所における生産活動の中断などを含めて、ソニーの事業は東日本大震災時よりも大きな被害を受ける可能性があります。また、ネットワークや情報通信システムインフラ、研究開発、資材調達、製造、映画やテレビ番組の製作・制作、物流、販売、ならびにオンラインやその他のサービスに使用されるソニーや外部サービスプロバイダ及びビジネスパートナーの世界各地にあるオフィスや設備は、自然災害、伝染病などの疫病、テロ行為、サイバー攻撃、大規模停電、大規模火災などの予期できない大惨事により、破壊されたり、一時的に機能が停止したり、混乱に陥ったりする可能性があります。これらのオフィスや設備のいずれかが前述の大惨事により重大な損害を受けた場合、営業活動の停止、設計・開発・生産・出荷・売上計上の遅れ、オフィスや設備の修繕・置換えにかかる多額の費用計上などが生じる可能性があります。加えて、ソニーに原材料、部品及びコンポーネントを供給する事業者がかかる大惨事の被害を受けた場合、原材料、部品及びコンポーネントの供給が滞り、それによりソニーの製造拠点は稼働調整や停止を余儀なくされ、出荷が滞り新製品の導入が遅れるなどの影響を受ける可能性があります。また、ソニーは、原材料、部品及びコンポーネントの価格高騰や法人顧客の需要減少の影響を受ける可能性があります。これらにより、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 加えて、ソニーの営業活動においてコンピュータシステムやネットワーク及びオンラインサービスの役割がさらに重要になりつつあるなか、ソフトウエア又はハードウエアの欠陥など、前述のもしくはそれ以外の予測できない出来事から生じるコンピュータシステムやネットワーク及びオンラインサービス停止のリスクが高まっています。例えば、2014年度において、サイバー攻撃によりソニーの映画分野のネットワーク及びITインフラに深刻な障害が生じました。この結果、ソニーの映画分野及び、その結果としてソニーは、2014年度第3四半期において、四半期の連結業績報告についての規制当局の定める期限までに、財務諸表を作成することができませんでした。

 類似した出来事が発生した場合、主要な事業オペレーションの停止、財務報告あるいは設計・開発・生産・出荷・売上計上の遅れ、設備やネットワーク及び情報システムのセキュリティ強化や修繕・置換えにかかる多額の費用計上などが生じる可能性もあり、さらに、ソニーが加入している保険はその結果発生する費用や損失を十分に補填できない可能性があります。また、ソニーが将来、十分な保険契約を維持できない可能性や、支払保険料が増加する可能性があります。これらの場合には、ソニーの業績及び財政状態に悪影響がある可能性があります。

 

(33) ソニーのネットワーク上にある、あるいは外部のサービスプロバイダやビジネスパートナーのネットワーク上にある、ソニーが保有あるいは管理しているデータの消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又はこれらの情報への不正なアクセスがあった場合、あるいはソニーの情報セキュリティに対するその他の侵害があった場合、その情報の保管の場所や形式にかかわらず、ソニーのブランドイメージ及び評判や事業への悪影響がある可能性や、ソニーが法的な、あるいは規制当局に対する責任を追及される可能性があります。

 ソニーの専有情報、知的財産ならびに従業員の情報を含む、ただしそれらに限定されないソニーのビジネス情報や、顧客、供給業者ならびにその他のビジネスパートナーに関連するデータを含む情報の取得、保管、処理、転送に使用するコンピュータシステムやネットワーク、ならびにオンラインサービスといった情報技術を広範に活用することは、ソニーならびに外部のサービスプロバイダ及びビジネスパートナーにとって業務上不可欠です。ソニーの、あるいは第三者の情報技術のシステムを通じて取得、保管、処理、あるいは転送される情報のセキュリティは、悪意をもった第三者や人為的もしくは自然の事象により侵害を受けたり、ソニーもしくは外部のサービスプロバイダやその他のビジネスパートナーの従業員の故意又は不注意による行為もしくは不作為の影響を受けたりする可能性があります。サイバー攻撃がますます高度化し、悪意をもった第三者がより容易にツールやリソースを利用できるようになりつつあることから、不正な侵入を防止あるいは検知したり、不正な侵入に対応したり、データへのアクセスを制限したり、データの破壊、改変、あるいは流出を防止したり、そういった攻撃の悪影響を抑制したりするためにソニーが行っている対策、セキュリティへの取り組みや管理が、不正アクセスに対して、完全に安全な情報セキュリティを確保できる保証はありません。その結果、知的財産といった専有情報、従業員の情報、顧客、供給業者やその他のビジネスパートナーに関連するデータを含むソニーのビジネス情報の消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又は承諾を得ない第三者によるアクセスが発生し、ソニー、あるいは外部のサービスプロバイダ及びその他のビジネスパートナーの情報システムが破壊される可能性があります。また、悪意を持った第三者が、ソニーが認知することなく、外部のビジネスパートナーのネットワーク、及びその結果として外部のビジネスパートナーの情報にアクセスするためのプラットフォームとして、ソニーのネットワークに不正にアクセスする可能性があります。ソニーは過去に、高度かつ明確に標的を定めた攻撃の対象になったことがあります。例えば、2014年度に、ソニーの映画分野がサイバー攻撃の対象となり、結果的に従業員やその他の情報を含むソニーのビジネス情報が不正にアクセスされ、窃取され、漏洩され、データが破壊されました。加えて、ソニーのネットワークサービス及びオンラインゲーム事業ならびに複数の子会社のウェブサイトが様々な意図や専門性を持つ個人や集団によってサイバー攻撃の対象となり、いくつかの事例においては、顧客情報が不正にアクセスされ、実際に窃取され、又は窃取の可能性が生じ、漏洩されました。

 加えて、ソニーあるいはその代理で第三者が保有あるいは管理しているソニーのビジネス情報及びその他のデータは、それらがネットワーク上に保管されていない場合でも、またそれらのデータの保管の場所や形式にかかわらず、悪意をもった第三者や人為的もしくは自然の事象により侵害を受けたり、消失、破壊、漏洩、悪用、改変、又はこれらの情報への不正なアクセスといった形で、ソニーの従業員もしくは外部のサービスプロバイダの故意又は不注意による、行為もしくは不作為の影響を受ける可能性があります。

 さらに、ソニーもしくはそのサービスプロバイダやビジネスパートナーが提供するネットワーク製品やオンラインサービスを含む製品やサービスの機密性、完全性ならびに可用性が、悪意を持つ第三者や人為的もしくは自然の事象により侵害を受ける可能性や、ソニーの従業員、外部のサービスプロバイダやビジネスパートナーの故意又は不注意による作為もしくは不作為による影響を受ける可能性があります。例えば、ソニーのオンラインサービスやウェブサイトは、高度な技術を持ち潤沢なリソースを有する第三者などによるDoS(サービス停止)攻撃やその他の攻撃の対象となったことがあります。

 サイバー攻撃の結果であるか否かにかかわらず、ソニーが保有あるいは管理する、あるいはソニーの代理で保有あるいは管理されているデータについてのいかなる消失、破壊、漏洩、悪用、改変、あるいは不正なアクセスや、ソニーの製品やサービスの停止を含むソニーの情報セキュリティに対するその他の侵害の結果、システムの破損の修復、外部専門家の雇用、新たな人員の配置、従業員の教育、ならびに不正にアクセスされたデータの所有者である第三者に対する補償や報奨金を含む多額の復旧費用がかかる可能性があります。加えて、ソニーのネットワークやオンラインサービスへの破壊行為によって、ネットワーク及びオンラインサービスに依存している事業が重大な打撃を受け、その結果、売上の喪失、ビジネスパートナー及びその他の第三者との関係の悪化、ならびに顧客の維持や顧客の勧誘の失敗に結びつく可能性があります。サイバー攻撃であるか否かにかかわらず、情報セキュリティが侵害された場合には、知的財産を含む専有情報の不正漏洩、改変、破壊あるいは悪用による競争力の低下にともなう売上の喪失や、顧客の維持や顧客の勧誘の失敗、重要なビジネスプロセスや情報セキュリティシステムの破壊、あるいは経営陣の関心や経営資源の分散につながる可能性があります。さらに、これらの破壊や侵害行為がメディアの報道に悪影響をもたらし、ソニーのブランドイメージや評判を傷つける可能性があります。また、ソニーは訴訟、及び規制当局による調査や規制措置を含む法的措置の対象となる可能性や、付帯的な法的費用や将来的な調停、判決、罰金の対象となる可能性があります。ソニーが加入しているサイバー攻撃に対する保険は費用や損失の全額を補填できない可能性があり、したがって、サイバー攻撃がソニーの業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。たとえ実際に情報セキュリティへの侵害がなくても、ますます高度化し増加しつつあるサイバー攻撃への対策には、将来、これらの防止、検知、対応、管理のための、あるいはその他の多額の費用がかかる可能性があります。これらの費用には、サイバー攻撃に対する新たな技術の導入、外部専門家の雇用、新たな人員の配置や従業員の教育などが含まれます。これらの費用も、ソニーの事業、業績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(34) 現在もしくは将来における訴訟及び規制当局による法的手続が不利な結果に終わった場合、ソニーの事業が悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、様々な国において事業の遂行に関して、訴訟及び規制当局による法的手続に服するリスクにさらされています。訴訟及び規制当局による法的手続は、ソニーに多額かつ不確定な損害賠償や事業活動の制約をもたらすことがあります。その発生の可能性や影響の程度を予測するには相当の期間を要する場合があります。例えば、公正な競争に反する市場慣行に関する政府の監督が、訴訟や規制当局による法的手続につながる可能性があります。多大な法的責任や規制当局による不利な措置が課された場合や、訴訟及び規制当局による法的手続への対応に多大なコストがかかった場合、ソニーの事業活動や業績、財政状態、キャッシュ・フロー及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(35) ソニーは製品品質や製造物責任による財務上のリスクや評判を損なうリスクにさらされています。

 急速な技術の進化や、モバイル製品及びオンラインサービスに対する需要増にともない、コンスーマー製品、ノンコンスーマー製品、部品及びコンポーネント、半導体、ソフトウエア、ならびにネットワークサービスなどのソニーの製品・サービスは一層高機能かつ複雑になっています。ソニー製品品質を維持しても、技術の急速な進展や、モバイル製品及びオンラインサービスの需要増加に対応できない可能性があり、製造物責任問題に関するリスクが高まる可能性があります。その結果、評判に悪影響を及ぼし、製品回収やアフターサービスなどの費用が発生する可能性があります。また、根拠のあるなしにかかわらず、ソニーの製品に関連する安全性の問題に関する申立て又は訴訟は、直接的に、もしくはソニーのブランドイメージや高品質な製品やサービスを提供する企業という評価への影響の結果として、ソニーの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの問題は、ソニーが製造したか否かに関係なく、ソニーが直接顧客に販売する製品のみならず、半導体を含むソニー製の部品が搭載された他社製品においても生じる可能性があります。

 

(36) ソニーの業績及び財政状態は退職給付債務により悪影響を受ける可能性があります。

 ソニーは、確定給付年金制度に関する会計基準に従い、確定給付年金制度ごとの予測給付債務から年金制度資産の公正価値を差し引いた金額を未積立年金債務として認識しています。年金数理純損益については、従業員の平均残存勤務年数にわたり規則的に償却することにより年金費用に含めています。運用収益の悪化による年金制度資産価値の減少や、割引率の低下、昇給率の増加やその他の年金数理計算前提となる比率の変動による予測給付債務増加にともない未積立年金債務が増加し、その結果、売上原価又は販売費及び一般管理費として計上される年金費用が増加する可能性があります。

 ソニーの業績及び財政状態は、国内及び海外年金制度の積立状況から悪影響を受ける可能性があります。特にソニーの年金の大部分を占める国内年金は約30%を持分証券に投資しており、不利な株式市場環境及びクレジット市場のボラティリティが、ソニーの年金制度資産及び将来見積年金負債に対して悪影響を与える可能性があります。その結果として、ソニーの業績及び財政状態は、悪影響を受ける可能性があります。

 さらにソニーの業績及び財政状態は、日本の確定給付企業年金法の年金積立要求により悪影響を受ける可能性があります。この確定給付企業年金法により、ソニーは定期的な財政再計算や年次の財政決算を含む年金財政の検証を行うことが求められています。年金制度資産の公正価値に対して法定の責任準備金が超過した場合、また法令もしくは特別な政令などにより猶予された期間内に制度資産の公正価値が回復しない場合には、ソニーは年金制度への追加拠出が必要となり、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。同様に、海外の年金制度資産についても各国の法令にもとづき追加拠出が必要となる場合、キャッシュ・フローを減少させる可能性があります。また、今後、法令が定める掛金の更新にともなって年金制度資産の長期期待収益率などの前提を見直した際、年金への拠出金の水準が引上げられ、ソニーのキャッシュ・フローに対して悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(37) 繰延税金資産に対して評価性引当金を計上している税務管轄におけるさらなる損失の発生、ソニーが繰延税金資産を最大限に利用できないこと、追加的な税金負債あるいは税率の変動が当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーは、日本及び様々な税務管轄において法人税を課されており、通常の営業活動において最終的な税額の決定が不確実な状況が多く生じ、このような状況が長期間に及ぶ場合もあります。ソニーの税金引当や税金資産、税金負債の帳簿価額の計算は高度な判断と見積り(将来の課税所得の見積りを含む)を必要とします。

 繰延税金資産は、税務管轄ごとに評価されます。一部の税務管轄において、ソニーは繰越欠損金に対応するものを含めた繰延税金資産のうち、50%超の可能性をもって回収可能ではないと結論付けられたものに対して評価性引当金を計上しています。2015年3月31日時点において、ソニーは主に(1)日本の当社とその連結納税グループ及び日本の一部子会社の地方税、(2)米国のSony Americas Holding Inc.とその連結納税グループ、(3)スウェーデンのSony Mobile Communications AB、ならびに(4)英国のSony Europe Limitedにおいて評価性引当金を計上しています。評価性引当金を計上した税務管轄において損失を計上し続けた場合、税金費用の戻し入れは計上されず、当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、ソニーが税務戦略を実行できない場合、営業活動や税務戦略から繰越欠損金を使用するために充分な課税所得を適切な税務管轄内で将来に生み出せない場合、あるいは繰越欠損金の使用を法的に制限される場合に、繰延税金資産は未使用のまま消滅、又は回収できず、将来において利用可能な税金支出の減額ができなくなる可能性があります。評価性引当金を計上せずに残存している繰延税金資産のいずれかが、50%超の可能性をもって未使用のまま消滅し将来の課税所得と相殺することができない場合や他の理由で回収ができない場合には、ソニーは追加の評価性引当金を認識しなければならず、税金費用が増加します。繰延税金資産が未使用のまま消滅した時点あるいは追加の評価性引当金が計上された期間において、当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 繰延税金資産及び評価性引当金の評価において、連結会社間の移転価格に関して調整される不確実な税務ポジションの決定が重要な要素となります。ソニーは、日本及び様々な税務管轄において法人税を課されており、通常の営業活動において連結会社間を含む多くの取引がありますが、最終的な税額の決定は不確実です。ソニーは、税務当局から税務申告に対して継続的な調査を受けており、その結果、法人税の引当の妥当性を決定する税務調査の結果を受けて起こり得る悪影響を定期的に評価しています。これらの評価には高度な判断が要求され、翌期以降に追加的な証拠が入手可能になることにより、ソニーの不確実な税務ポジションの最終的な結果とそれにともなう評価性引当金の計上が、当社株主に帰属する当期純損益及びソニーの財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 一部の税務管轄において、繰越欠損金の使用は翌期以降の課税所得に対する一定の水準に制限されています。したがって、ソニーは、課税所得が発生した税務管轄において、重要な繰越欠損金があるにも関わらず税金の支払いが発生するため税金費用を計上し、その後も利用可能な繰越欠損金を保有し続ける可能性があります。

 上記に加え、ソニーの将来における実効税率は、法定税率の変更や異なる法定税率が適用される各国での利益の割合の変化、又は繰越欠損金及び繰越税額控除の使用制限や制約を含む租税法規の改正やそれらの解釈の変更などにより不利な影響を受ける可能性があります。

 

(38) ソニーは、営業権、無形固定資産もしくはその他の長期性資産の減損を計上する可能性があります。

 ソニーは多くの営業権、無形固定資産及びエレクトロニクス事業における製造施設及び設備を含む長期性資産を保有しています。これらの資産については、業績の悪化や時価総額の減少、減損の判定に用いられる高度な判断を必要とする見積り・前提の変更により、減損を計上する可能性があります。ソニーは、営業権及び耐用年数が確定できない無形固定資産について、年一回第4四半期に減損の判定を行い、また、設定された事業計画の下方修正や実績見込みの大幅な変更、あるいは外的な市場や産業固有の変動などの要因や兆候による減損判定の必要性を継続的に評価しています。保有しかつ使用する長期性資産及び処分予定の長期性資産の回収可能性は、個々の資産又は資産グループの簿価が回収できなくなる可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に検討されます。資産又は資産グループの帳簿価額が減損していると判断された場合、簿価が公正価値を超える部分について、減損を認識します。2013年度において、ソニーはデバイス分野における電池事業の長期性資産の減損321億円、その他分野における日本及び米国以外のディスク製造事業の長期性資産及びディスク製造事業全体の営業権の減損256億円、ならびにその他分野におけるPC事業の長期性資産の減損128億円を計上しました。また、2014年度において、モバイル・コミュニケーション分野に関連する営業権の減損1,760億円を計上しました。このような減損損失の計上は、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(39) ソニーは第三者の知的財産権の侵害を追及され、重大な損害賠償責任を負う可能性があります。

 ソニーの製品は広範囲にわたる技術を利用しています。その技術が第三者の保有する知的財産権を侵害しているという主張がソニーに対してなされており、今後なされる可能性もあります。特に、市場競争が激しくなり、一層多くの知的財産を用いた新規技術やより高度な技術が製品に搭載されることで、自らの製品やサービスを守るため、あるいは競争優位を追求するための事業戦略として、競合他社又はそれ以外の特許権者からかかる主張がなされる可能性があります。かかる主張により、和解やライセンス契約の締結あるいは多額の損害賠償金を支払うことが必要となった場合や、ソニーの製品の一部について一時的又は恒久的に市場での販売が差し止められることとなった場合は、ソニーの事業活動や業績、財政状態及び評判に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(40) ソニーは第三者の知的財産権につき必要なライセンスを継続して取得できない可能性があります。また、ソニーの事業遂行に必要な知的財産権につき、継続して十分な保護を受けたり、行使したりできない可能性があります。

 多くのソニー製品は第三者の特許その他の知的財産権のライセンス供与を受けて設計されています。過去の経験や業界の慣行により、将来的に必要かつビジネスに有効な様々な知的財産権のライセンスの供与を受け又は更新できるとソニーは考えていますが、全く供与されない、又は受諾可能な条件で供与されない可能性があります。そのような場合には、ソニーは、製品の設計変更や、営業・販売の断念を余儀なくされる可能性があります。さらに、ソニーの知的財産権は、これらに関して紛争が生じたり、無効にされたりする可能性があります。また、ソニーの知的財産権が、ソニーの競争力を維持するうえで十分ではない可能性があります。そのような場合、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(41) ソニーは、環境や労働安全衛生、人権などの社会的責任に関する広範な法規制の対象となっており、これによりオペレーションにかかるコストが上昇したり、ソニーの活動が制限されたり、評判に影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーは、大気汚染、水質汚染、有害物質の使用の管理、廃止、削減や一部製品の省エネ、廃棄物管理、製品や電池、包装材料のリサイクル、土壌浄化、従業員や消費者の安全衛生、調達や生産工程における人権侵害といった課題に関する法規制を含む、特に環境や労働安全衛生、人権などの社会的責任に関する広範囲な法規制の対象となっています。例えば、ソニーは以下のような法規制を遵守することが求められています。

有害物質の使用規制の指令(“The Restriction of Hazardous Substances“RoHS”Directive”)、電気・電子機器の廃棄に関する指令(“The Waste Electrical and Electronic Equipment“WEEE”Directive”)、エネルギー関連製品に対するエコデザイン要求指令(“The ecodesign requirements for Energy-related Products(“ErP”)Directive”)、ならびに化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則(“The Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals“REACH”regulation”)など、EUが施行した環境に関する法規制

温室効果ガス排出量に関する開示、温室効果ガス排出削減、炭素税やエレクトロニクス製品の省エネなど気候変動問題に関する法規制や政策

米国のドッド・フランク・ウォール街改革及び消費者保護に関する法律の第1502条により、ソニーが製造する製品の機能又は生産に必要な「紛争鉱物とその派生物」に関して年次情報開示の必要があります。「紛争鉱物」とは、スズ鉱石(cassiterite)、タンタル鉱石(columbite-tantalite)、金(gold)、タングステン鉱石(wolframite)と、米国政府によってコンゴ民主共和国あるいはその周辺国で紛争の資金源になると規定されたその他の鉱物を指します。

 

 加えて、企業の社会的責任に対する消費者の関心が全世界的に高まり、特にアジア地域で操業するエレクトロニクス業者や製品の製造/設計委託業者における労働環境を含む労働慣行に関する関心が持たれています。

 これらの社会的責任に関する法規制がより強化され、また将来新たな法規制が導入される可能性があります。さらに、新興国を含むその他の国々において、上記と同様の環境に対する法規制が施行されつつあり、その結果、ソニーにおいて法規制の遵守にかかる費用が増加する可能性があります。また、様々な分野における既存又は新たな法規制にソニーが対応していないとみなされた場合には、罰金、刑罰、法的制裁、その他の費用や原状回復義務の対象になる可能性があり、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、法規制を遵守できない場合や、消費者の関心が高まっているこれらの問題にソニーが適切な対応をとることができないとみなされた場合には、それが法的に求められているかどうかに関わらず、ソニーの評判が傷つけられる可能性があります。その結果、消費者が製品の購入にあたって他社製品を選択する場合にも、ソニーの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 PS3®及びPS4™ハードウエアを含むソニーのDVDビデオプレーヤー機能付製品は、米国のMPEG LA LLC及びDolby Laboratories Licensing Corporationとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、DVD規格上特定されている技術に関する特許に大きく依存しています。PS3®及びPS4™ハードウエアを含むソニーのブルーレイディスク™プレーヤー機能付製品は、DVD規格上特定されている技術に関する上記の特許に加え、米国のMPEG LA LLC、AT&T Inc.及びOne-Blue, LLCとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、ブルーレイディスク規格上特定されている技術に関する特許にも大きく依存しています。また、ソニーのスマートフォン製品は、MPEG LA LLC、AT&T Inc.及びVia Licensing Corporationとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、特定のコーデック規格上の技術に関する特許、ならびに米国のQualcomm Incorporatedとのライセンス契約にもとづきライセンスを供与されている、通信規格団体により特定されているCDMA関連技術に関する特許に大きく依存しています。

 

6【研究開発活動】

 ソニーは、2014年5月の経営方針説明会にて、デバイス技術及び情報処理技術のそれぞれの領域で、ソニーが強みをもっている技術を一層強化し、エレクトロニクスのコア事業の差異化を実現するとともに、ホーム及びモバイルの領域で、「ライフスタイルを変える」「人々の生活をより豊かにする」新規製品・サービスの創造を行っていくことを発表しました。

 具体的には、デバイス技術については、イメージセンサー、バッテリー及び低消費電力技術に、情報処理技術については認識、ナチュラルUI及び信号処理技術に注力し、これらの技術をもとに家庭などの空間で自由に映像や音楽を楽しみ、必要な情報にアクセスできる「Life Space UX(ライフ スペース ユーエックス)」と、モバイル領域における「ウェアラブル」の開発を進めていきます。

 

 デバイス技術及び情報処理技術の開発加速を目的に、2014年4月1日付の機構改革において、ソニー本社が直轄する研究開発組織である、R&D プラットフォーム及びソフトウェア設計本部を統合してRDS プラットフォームに再編し、デバイス&マテリアル研究開発本部、システム研究開発本部を新設しました。

 RDS プラットフォームは、人々に感動をもたらすためにクリエイティビティを発揮して、イノベーションを引き起こすことをミッションとし、最先端技術を追求しそれらを統合することで、新しい顧客価値を創造します。

 

 2014年度の研究開発費は、前年同期に比べ17億円(0.4%)減少の4,643億円となりました。金融分野を除く売上高に対する比率は前年同期の6.9%から6.5%になりました。この減少は、主に、その他分野におけるPC事業収束にともなう減少ならびに、IP&S分野及びHE&S分野において、ソニーのエレクトロニクス事業におけるAV/IT市場の規模が縮小したことにともなうコスト削減への取り組みによるものです。一方、イメージセンサー事業の拡大にともない、成長領域であるデバイス分野における研究開発費が増加しました。

 

 研究開発費の主な内訳は次のとおりです。

項目

2013年度

(億円)

2014年度

(億円)

増減率

(%)

MC

834

910

+9.1

G&NS

887

891

+0.5

IP&S

615

569

△7.5

HE&S

549

487

△11.3

デバイス

971

1,055

+8.7

コーポレートR&D

421

381

△9.5

 

 なお、2014年度の主な研究開発活動及び成果には、以下のものがあげられます。

 

 ソニーは、明るいシーンから暗いシーンまで広いダイナミックレンジにより被写体を鮮明に映し出す35mmフルサイズセンサー搭載のミラーレス一眼カメラ『α7S』を発売しました。

 『α7S』に搭載される新開発の有効約1220万画素35mmフルサイズ Exmor®(エクスモア)CMOSイメージセンサーは、入射光量に合わせて入力される信号のレベルをセンサー内部で最適化することにより、常用ISO感度100~102400、拡張50~409600という全ての感度領域で、幅広いダイナミックレンジを実現。圧倒的な高感度・低ノイズに加えて、階調豊かな高画質撮影を可能にします。

 新開発CMOSイメージセンサーの高速化と画像処理エンジンBIONZ X®(ビオンズ エックス)の組み合わせにより、フルHD及び4K出力において、世界で初めてフルサイズセンサーで画素加算のない全画素読出しを実現し、モアレやジャギーを抑えた、より解像感の高い動画画質を実現します。

 『α7S』の高い感度性能は静止画撮影で大きな効果を発揮し、暗所での撮影時の低ノイズ表現や、暗所でのスポーツシーンなどこれまで撮影が困難とされていたシーンで、高感度、低ノイズで高速シャッタースピードを活用するなど撮影の幅が大きく広がります。

 『α7S』は、高速・高精度AFを実現するファストインテリジェントAFを搭載し、「空間被写体検出」AFアルゴリズムを採用することで、フォーカシングのためのレンズ駆動を最適にコントロールします。イメージセンサーの感度特性が大幅に進化したことにより、今まで合焦できなかったような環境下でも合焦可能になり、静止画・動画それぞれにおいて様々なシーンで高品位かつスムーズなフォーカシングを実現します。

 

 ソニーは、「2015 International CES」(国際家電ショー:2015年1月6日~1月9日、米国ネバダ州ラスベガス)において、液晶テレビ ブラビア®の商品力強化と新たな顧客価値の提案をめざし、画質の徹底追求と使い勝手の向上を実現するテレビの商品プラットフォームを新規開発し、2015年に順次発売する新しいラインアップで採用していくことを発表しました。

 液晶テレビ ブラビアのさらなる高画質を実現するために、4KプロセッサーX1を新規開発し、4Kラインアップに導入します。4KプロセッサーX1は、液晶テレビ ブラビアの高画質を支える、精細感、色域、コントラストの三大要素全てを大幅に向上させる、総合的な画質エンハンスプロセッサーです。

 4KプロセッサーX1は、4K画像に対しては新たに搭載したソニー独自の4K用データベースを用いた処理により、これまでにない精細感を実現します。また、4Kアップコンバート時には、4K対応超解像エンジン4K X-Reality® PROの能力を強化して、微細な図形をより正しく描写したり、ノイズ低減を向上させたりするなど、高品位の4K画質を実現します。

 色域に関しては、トリルミナス®ディスプレイの表示性能を余すところなく引き出すよう、入力された画像の色相・明度・彩度をより詳細に分析してカラーマネジメントを行い、全ての色に対して、より自然に近い深い色あいを再現します。

 コントラストに関しては、つややかな光の輝きを再現する高輝度新技術X-tended Dynamic Range®(エクステンディッドダイナミックレンジ)の能力を最大限に発揮させるべく、信号のダイナミックレンジを広げる処理を効果的に行うことで、さらなるきらめき感を実現します。

 映像コンテンツが多様化する一方、スマートフォンやタブレットなどのモバイル機器による映像視聴や、様々なサービス・アプリの利用が加速しており、モバイル機器との連携はテレビの使い勝手を決める重要な要素のひとつとなっています。Google社(米国)のAndroid™が、テレビやスマートウェアなどに対応カテゴリーを拡大することに合わせ、ブラビアでその最新プラットフォームを採用し、テレビとモバイル機器のこれまでにないシームレスな連携を実現します。これにより、音声入力・検索などAndroidスマートフォンの使い勝手でブラビアを操作できるようになります。

 加えて、様々な映像コンテンツにストレスなくアクセスできる、ソニー独自のユーザーインターフェースであるワンフリックエンタテインメントを進化させ、これをAndroid TVと組み合わせることにより、ブラビアならではの差異化された使い勝手を提供します。

 

 ソニーは、CDを上回る情報量を持つハイレゾリューション・オーディオ(以下「ハイレゾ」)対応のデジタルミュージックプレーヤー ウォークマン® 『NW-ZX2』を発売しました。

 『NW-ZX2』は、徹底した高音質化を追求する最上位のハイレゾ対応ウォークマンとして、高音質再生を支える独自技術を搭載したモデルで、ハイレゾ音源の豊かな音の広がりをより高品位できめ細やかに再現します。

 ハイレゾ音源再生に重要なアンプには、ソニー独自開発のフルデジタルアンプS-Master®をハイレゾ音源再生に最適化した、S-Master HX®を搭載しました。高域を含めた全帯域でノイズや歪みを低減し、切れのある力強い低音からより繊細な高音まで豊かに再現します。

 加えて、CDやMP3などの圧縮音源の高音域を補完し、サンプリング周波数とビットレートを本来の数値より高めることで、最大192kHz/24bit相当まで拡張してハイレゾ相当にアップスケールするDSEE HX™も搭載し、CDやMP3などの圧縮音源もより臨場感あふれる高音質で楽しむことができます。

 また、Bluetoothのワイヤレス音楽再生においては、新たに、従来の技術と比べ約3倍の情報量を伝送可能な新開発の高音質コーデックLDAC®(エルダック)に対応することで、ワイヤレス接続時でもより高音質なサウンドを楽しむことができます。

 

 ソニーは、対応スマートフォンやタブレットと専用アプリケーションを組み合わせ、ライフログ(日常の記録)を活用するスマートウェアの新商品として、『SmartBand Talk SWR30』を発売しました。

 『SmartBand Talk SWR30』は、曲面型電子ペーパーをディスプレイに採用し、常時表示で高い視認性を実現しました。太陽光の下でも高い視認性を保ち、3日間の電池持ち(スタンバイ時)を可能にします。腕にフィットする曲面型ディスプレイ上で、Lifelog アプリケーションに反映された行動履歴やコミュニケーション情報等を確認できます。

 ハンズフリー通話とボイスコントロール機能により、『SmartBand Talk SWR30』はライフログの進捗確認や情報取得・操作を実現します。ボイスコントロールへの対応により、その場で必要とする情報を音声でのウェブ検索を通じてスムーズに入手することが可能です。また、メッセージ受信時には、スマートフォンと連携した本体に音声でメッセージを残すことで、音声メッセージが文字として変換され、スマートフォンを鞄から取り出すことなく、相手のスマートフォンに返信することが可能です。

 『SmartBand Talk SWR30』には、加速度センサー及び気圧計センサーを搭載。これにより、階段の上り下りの歩数やアウトドアで楽しむ運動等の高低差をログとして残しながら、より正確な消費カロリーを計測することができます。

 多様なセンシング技術を通じ、歩行や運動、睡眠等のモーショナル(動的)な活動から、写真や音楽、通話やSNS、思い出に残しておきたい瞬間等のエモーショナル(感情的)な活動まで一日の活動全般をLifelog アプリケーション上に可視化することで、ユーザーに、自身の過去、現在を振り返り、次の行動へのヒントを得るきっかけを提供します。

 

 ソニーは、「プレイステーション 4」(PS4™)の魅力を高めるバーチャルリアリティ(VR)システムとして、ゲーム体験をさらに豊かにする「Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)」(以下「Morpheus」)を開発しました。

 バイザースタイルのMorpheusのヘッドマウントユニットを頭部に被ると、プレイヤーの眼前に迫力のある広大な3D空間が出現します。ゲームを開始するとヘッドセットユニットに内蔵された加速度センサーならびにジャイロセンサーに加えて、PlayStation®Cameraがプレイヤーの頭部の動きや位置を正確に検知し、コントローラーで操作することなくプレイヤーの意のままに映像が360度全方向にリアルタイムに変化します。これによりプレイヤーはあたかもゲームの仮想世界の中に入りこんでいるかのような体験が可能です。また、PlayStation®Move(PS Move)モーションコントローラを使用するゲームでは、例えば映像内にプレイヤーの手と剣などの武器を再現し、それらを自在に動かしながら闘うなどのアクションを実現します。

 MorpheusのVRヘッドセットには、解像度1920×RGB×1080の5.7インチ有機ELディスプレイ(以下「OLED」)を採用しました。これにより視野角が向上するとともに、映像の残像感やブレを大幅に低減させることが可能になり、細緻に描き出されたゲームの仮想世界に入りこんでいるような感覚を高めます。MorpheusのOLED採用にともない、映像表示が120fps(frame per second)に対応し、システムソフトウエアをアップデートすることによりPS4™本体からの120fps映像出力が可能になるので、Morpheusが仮想世界を非常に滑らかに表現し、自分自身がゲームの世界の中に存在するかのような体験をより自然に楽しむことができます。

 さらに音響面では独自の3Dオーディオ技術を採用しました。Morpheusは、前後左右からの音に加えて、上空を旋回するヘリコプターの飛行音や階段を登ってくる足音など、上下からの音もプレイヤーの頭部の向きに対応してリアルタイムに変化します。360度に広がる世界の中に立体的な音響効果が加わって、さらなる臨場感をゲームプレイにもたらします。

 

 ソニーは、細胞分析の手法として業界初となる、細胞の動きを非染色・非侵襲で定量評価する、動き検出技術を応用したコンセプトのセルモーションイメージングシステム『SI8000』シリーズを発売します。

 近年、創薬、再生医療、個別化医療の領域では、iPS細胞やES細胞などの幹細胞に対する医学・生物学研究の発展により、薬効薬理試験や疾患の原因解明を、細胞を用いて行う手法に注目が集まっています。

 ソニーは、自社の強みであるイメージング技術を応用し、細胞の機能を評価するソニー独自の「細胞の動き解析アルゴリズムMotion Vector Prediction Method (以下「MVP法」)」を開発しました。これによって正確かつ高速に細胞の動きを検出することが可能となり、また、検出した動きの情報を用いることで、細胞の挙動を定量化するための様々なパラメータを算出することが可能になります。

 通常の培養状態のまま細胞を撮影し、その動画をMVP法により解析することで、従来は実現が困難とされてきた、特殊な培養容器や染色試薬を必要としない画期的な細胞機能評価ソリューションを実現しました。創薬・個別化医療・再生医療領域において、細胞を含めた生体組織を対象とした研究に、この分析手法を用いることで、従来では得られなかった知見をもたらすことが期待されます。

 本システムでは、心筋細胞など動きを有する細胞において拍動伝播を可視化することができるため、不整脈を引き起こすような細胞間結合の異常や薬剤による影響を検証することや、ヒトiPS細胞由来の疾患モデル細胞について、その表現型を動きの観点から定量評価するなど、細胞評価における多くの利用シーンが想定されます。

 また、創薬や再生医療の研究などで、細胞に対する染色を避けたい場合においても、非染色での細胞評価を可能にします。

 ソニーは、世界最高感度を実現した車載カメラ向けCMOSイメージセンサー『IMX224MQV』を商品化します。本製品を皮切りに、将来の自動運転車に向けて市場の拡大が見込まれる車載用途のCMOSイメージセンサーの開発を積極的に進めていきます。

 『IMX224MQV』は、光を電子に変換する効率を高めたフォトダイオードを採用するとともに、電子から電圧への変換効率を高めた回路を搭載することで、従来比約2倍の世界最高感度 2,350mV(標準値 F5.6)を実現しました。加えて、最大72dB(デシベル)まで電気信号の増幅が可能なプログラマブルゲインアンプの搭載により、最低被写体照度0.005ルクスを達成し、星明かりよりもさらに暗い闇夜の道でも、高画質なカラー映像の撮影を可能にしました。

 また『IMX224MQV』は、従来の複数回露光のWDR(ワイドダイナミックレンジ)方式と比較して、露光時間を拡張することができるWDR方式に対応しており、対応ISP(Image Signal Processor)との組み合わせにより、低照度領域の画質を改善することができます。

 さらに、目に見えない近赤外領域の光に対する感度を向上した画素構造を採用したことで、近赤外用LEDを照射しながら撮影するシステムで使用した場合に、被写体の認識精度を高めることが可能となります。

 今後ソニーは、業務用・民生用のデジタルイメージング機器にとどまることなく、撮影画像をもとに被写体との距離や動き、形状、色など、様々な情報を取得し識別する「センシング領域」にも注力し、車載用途をはじめとした、イメージセンサーの新たな市場を開拓していきます。

 

 ソニーは、空間そのものを活用して体験を創出するという、新たなコンセプト「Life Space UX」を提案し、IFA2014(国際家電ショー:2014年9月5日~9月10日、ドイツ、ベルリン)にて、既存サイズの電球にスピーカーを内蔵し、スマートフォンなどの携帯端末をワイヤレス接続して、家中をどこでも音楽空間に変える「LED電球スピーカー」と、コンパクトなキューブデザインと防水対応で冷蔵庫のドアやお風呂場などに設置でき、約23インチサイズの映像投写とタッチ操作が可能な「ポータブル超短焦点プロジェクター」をコンセプトモデルとして紹介しました。

 ソニーは「Life Space UX」を通じて、場所や機器の制約を超えて、より自然に、より自由に、生活の一部としてエンタテインメントコンテンツを楽しめる環境を考え、空間そのものが新しい体験を創出することをめざし、豊かなライフスタイルを提案します。

 

 株式会社産業革新機構、株式会社ジャパンディスプレイ、ソニー及びパナソニック株式会社(以下「パナソニック」)は、有機ELディスプレイパネルの量産開発加速及び早期事業化を目的として、ソニー及びパナソニックが有する有機ELディスプレイパネルの研究開発の機能を統合し、株式会社JOLED(以下「JOLED」)を設立することに合意、2015年1月5日にJOLED発足となりました。

 JOLEDは、ソニー、パナソニックが持つ有機EL成膜技術、酸化物半導体技術、フレキシブルディスプレイ技術等の世界最高水準にある有機ELディスプレイパネル技術とリソースを結集することで、有機ELディスプレイ分野におけるリーディングカンパニーとなることをめざします。

 

 ソニーは、「積層型CMOSイメージセンサーの開発と量産化」で、公益財団法人大河内記念会から「第61回(平成26年度)大河内記念生産特賞」を受賞しました。

 今回の受賞は、高画質化、小型化、高機能化が進むスマートフォンなどに向けて、小型ながらも高感度や高速性などの撮像機能を大幅に向上させた積層型CMOSイメージセンサーExmor RS®(エクスモア アールエス)を開発し、その量産化と実用化を実現したことが高く評価されたものです。

 Exmor RS®は、従来のイメージセンサーの支持基板の代わりに論理回路が形成されたチップを用い、その上に画素部分を重ね合わせた、独自の「積層型構造」を採用した裏面照射型CMOSイメージセンサーです。論理回路部と画素部を高精度に接着する技術など、ソニー独自の技術により実用化に至りました。

 この度ソニーが受賞した「大河内記念生産特賞」は、生産技術、高度生産方式等の研究により得られた優れた発明または考案に基づく産業上の特に顕著な業績をあげた事業体に贈られる賞です。

 今後もソニーは、イメージセンサーの技術を磨き続け、産業の発展に貢献する生産技術を確立することなどに取り組んでいきます。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

(1)重要な会計方針及び見積り

 米国会計原則にしたがった連結財務諸表の作成は、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、及び報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような、マネジメントによる見積り・前提を必要とします。ソニーは、継続的に、過去のデータ、将来の予測及び状況に応じ合理的と判断される範囲での様々な前提にもとづき見積りを評価します。これらの評価の結果は、他の方法からは容易に判定しえない資産・負債の簿価あるいは費用の報告金額についての判断の基礎となります。実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。ソニーは、会社の財政状態や業績に重要な影響を与え、かつその適用にあたってマネジメントが重要な判断や見積りを必要とするものを重要な会計方針であると考えます。ソニーは、以下に述べる項目を会社の重要な会計方針として考えています。

投資

 ソニーの投資は、原価法あるいは持分法により会計処理されている負債及び持分証券を含みます。投資価値に一時的でない下落が認められた場合は減損を認識し、その投資は公正価値まで評価減されます。ソニーは、個々の有価証券の一時的でない減損を判定するため、投資ポートフォリオを定期的に評価しています。公正価値の下落が一時的であるか否かを判断するにあたっては、公正価値が取得原価を下回っている期間及びその程度、発行企業の財政状態、業績、事業計画及び将来見積キャッシュ・フロー、公正価値に影響するその他特定要因、発行企業の信用リスクの増大、ソブリンリスクならびに公正価値の回復が見込まれるのに十分な期間までソニーが保有し続けることができるか否かなどを考慮します。

 公正価値が容易に算定できる売却可能証券の減損の判定において、公正価値が長期間(通常6ヵ月間)取得価額に比べ20%以上下落した場合、公正価値の下落が一時的でないと推定されます。この基準は、その公正価値の下落が一時的でない有価証券を判定する兆候として採用されています。公正価値の下落が一時的でないと推定された場合でも、下落期間又は下落率を上回る、公正価値の下落が一時的であることを裏付ける十分な根拠があれば、この下落は一時的であると判断されます。一方で、公正価値の下落が20%未満又は長期間下落していない場合でも、公正価値の下落が一時的でないことを示す特定要因が存在する場合には、減損が認識されることがあります。

 満期保有目的の負債証券に一時的でない減損が発生した場合、損益に認識される一時的でない減損の金額は、この負債証券を売却する意思があるかどうか、又は償却原価まで価値を回復する前にこの負債証券の売却が必要となる可能性の方が高いかどうかに左右されます。負債証券がこのいずれかの基準を満たす場合、損益に認識される一時的でない減損金額は、減損測定日における負債証券の償却原価と公正価値の差額全額です。これらの2つの基準を満たさない負債証券の一時的でない減損については、損益に認識される正味金額は償却原価とソニーの将来キャッシュ・フローの最善の見積りを、負債証券の減損前における計算上の実効金利を用いて割り引くことにより計算される正味現在価値の差額にあたる信用損失です。減損測定日における負債証券の公正価値と正味現在価値の差額は累積その他の包括利益に計上されます。一時的でない減損が損益に認識された負債証券の未実現損益は累積その他の包括利益の独立した項目として計上されます。

 投資の公正価値の下落が一時的であるか否かの判定は、多くの場合、主観的であり、発行企業の業績予想、事業計画及び将来キャッシュ・フローに関するある特定の前提及び見積りが必要とされます。したがって、現在、投資価値の下落が一時的であると判断している有価証券について、継続的な業績の低迷、将来の世界的な株式市況の大幅悪化あるいは市場金利変動の影響等の事後情報の評価にもとづき、将来、公正価値の下落が一時的でないと判断され、投資の未実現評価損が費用として認識され将来の収益を減額する場合があります。

棚卸資産の評価

 ソニーは低価法により棚卸資産を評価します。棚卸資産原価と正味実現可能価額(すなわち、通常の事業過程における見積販売価格から、合理的に予測可能な完成及び処分までの費用を控除した額)の差額を評価減計上します。ソニーは、部品や製品が陳腐化したり、在庫量が使用見込みを上回ったり、又は在庫の帳簿価額が正味実現可能価額を上回る場合、在庫の評価減を行います。市場環境が予測より悪化してさらなる値下げが必要な場合には、将来において追加の評価減計上が必要となります。

長期性資産の減損

 ソニーは、保有して使用される長期性資産及び処分予定の長期性資産又は資産グループの簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合には、減損の有無を検討しています。保有して使用される長期性資産は割引前将来キャッシュ・フローと長期性資産又は資産グループの簿価を比較することにより減損の検討が行われています。この検討は、主として製品カテゴリーごと(例:液晶テレビ)、特定の場合には、企業ごとの将来キャッシュ・フローの見積りにもとづいて行われます。資産又は資産グループの簿価が減損していると判断された場合、簿価が公正価値を超える部分について、減損を認識します。公正価値は将来見積キャッシュ・フロー(純額)の現在価値、又は比較可能な市場価格により算定しています。この手法は、将来見積キャッシュ・フロー(その支払・受取時期を含む)、将来見積キャッシュ・フロー固有のリスクを反映した割引率、永続価値(ターミナル・バリュー)を決定する際に適用される永続成長率、適切な市場における比較対象の決定、比較対象に対してプレミアムあるいはディスカウントが適用されるべきかどうかの決定など多くの見積り・前提を使用します。

 マネジメントは将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積りは合理的であると考えています。しかしながら、ソニーのビジネスや前提条件の予測不能な変化によって見積りが変更となることにより、将来キャッシュ・フローや公正価値が減少し、長期性資産の評価に悪影響を与える可能性があります。

 

企業結合

 ソニーは取得法の適用時に、みなし取得価格を識別可能資産及び引受負債に割り当て、残余の取得価格は営業権として計上しています。取得価格の割当では、識別可能資産及び引受負債、特に無形固定資産の公正価値の決定に重要な見積りが使用されます。通常、独立した外部の第三者が評価プロセスに関与します。重要な見積り及び前提は、収益及び将来キャッシュ・フローの計上時期及び金額、将来キャッシュ・フローに固有のリスクを反映した割引率、ならびにターミナル・バリューを決定する際に適用される永久成長率等を含みます。

 見積りや前提には固有の不確実性が含まれるため、この取得価格は異なる金額で評価され、取得資産及び引受負債に割り当てられる可能性があります。実際の結果が異なる可能性があること又は予想しない事象及び状況はこのような見積りに影響を与える可能性があることから、営業権を含む取得資産の減損損失の計上又は引受負債の増加が必要となる可能性があります。

 

営業権及びその他の無形固定資産

 営業権及び耐用年数が確定できない非償却性無形固定資産は償却せず、年一回第4四半期及び減損の可能性を示す事象又は状況の変化が生じた時点で減損の判定を行います。減損の可能性を示す事象とは、設定された事業計画の下方修正や実績見込みの大幅な変更、あるいは外的な市場や産業固有の変動などで、それらはマネジメントにより定期的に見直されています。営業権及び非償却性無形固定資産の減損判定において、ソニーは報告単位及び非償却性無形固定資産の公正価値がその帳簿価額を下回る可能性が50%超でないことを証明できる事象又は状況の存在についての定性的評価を最初に行うことが認められています。報告単位とは、ソニーの場合、オペレーティング・セグメントあるいはその一段階下のレベルを指します。ソニーは、報告単位及び非償却性無形固定資産の公正価値がその帳簿価額を下回る可能性が50%超であると判断しない場合、その後の営業権及び非償却性無形固定資産の減損判定を行う必要がなくなります。しかしながら、ソニーが別の判断をするか、又は定性的評価を行わない場合は、二段階での減損判定手続の第一ステップを行う必要があります。2015年3月31日において、ソニーは営業権の定性的評価を行わず、二段階での手続により減損判定を行いました。

 第一ステップは、報告単位の見積公正価値とその報告単位の営業権を含む帳簿価額とを比較することにより、減損の可能性を判定するために行われます。報告単位の公正価値がその帳簿価額を上回る場合、その報告単位の営業権は減損していないとみなされ、第二ステップは行われません。報告単位の帳簿価額がその公正価値を上回る場合には、減損金額を測定するため、営業権の減損判定のための第二ステップを行います。営業権の減損判定のための第二ステップでは、報告単位の営業権の公正価値と帳簿価額を比較し、帳簿価額がその公正価値を超過する場合には、その超過分を減損損失として認識します。営業権の公正価値は企業結合において認識される営業権の金額と同様の方法により決定されます。すなわち、その報告単位があたかも企業結合により取得され、その公正価値が報告単位を取得するために支払われた買収価格であるかのように、公正価値を報告単位の全ての資産・負債(未認識の無形固定資産を含む)に配分します。非償却性無形固定資産の減損判定は、その無形固定資産の公正価値と帳簿価額との比較により行います。無形固定資産の帳簿価額が公正価値を超過する場合には、その超過分を減損損失として認識します。

 営業権の減損判定の第一ステップにおける報告単位の公正価値や、第二ステップにおける報告単位の個々の資産・負債(未認識の無形固定資産を含む)の公正価値の決定は、その性質上、判断をともなうものであり、多くの場合、重要な見積り・前提を使用します。同様に、非償却性無形固定資産の公正価値の決定においても、見積り・前提が使用されます。これらの見積り・前提は減損が認識されるか否かの判定及び認識される減損金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。これらの減損判定において、ソニーは、社内における評価を行い、またマネジメントが妥当と判断する場合には第三者による評価を活用するとともに、一般に入手可能な市場情報を考慮に入れています。報告単位及び非償却性無形固定資産の公正価値は通常、割引キャッシュ・フロー分析により算定しています。この手法は、将来見積キャッシュ・フロー(その支払・受取時期を含む)、将来キャッシュ・フロー固有のリスクを反映した割引率、永続成長率、類似企業の決定、類似企業に対してプレミアムあるいはディスカウントが適用されるべきかどうかの決定等多くの見積り及び前提を使用します。将来キャッシュ・フローの見積りに加えて、報告単位の公正価値を決定する際の将来キャッシュ・フローに使用する最も重要な前提は、割引率と、割引キャッシュ・フロー分析に使用するターミナル・バリューを決定する際に適用される永続成長率の二つです。営業権の減損判定のための割引キャッシュ・フロー分析に使用された割引率は、それぞれの報告単位に対する特定リスク要因と同様に、市場及び産業データを考慮します。ターミナル・バリューを決定するためにそれぞれの報告単位に使用される永続成長率は、一部の報告単位はより長期の予測期間を使用するものの、通常は当初の3ヵ年予測期間の後、過去の経験、市場及び産業データにもとづいて設定しています。

 以下に記載するものを除き、営業権及び非償却性無形固定資産を持つ報告単位の公正価値が帳簿価額を超過したため、減損が生じていないと考え、減損判定の第二ステップは行なわれず、その結果、営業権及び非償却性無形固定資産の重要な減損の計上はありませんでした。営業権の減損を判定する際に、営業権を持たない報告単位も含めて、報告単位の公正価値の総額に対するソニーの時価総額を考慮し、適切なコントロール・プレミアムとともに、個々の報告単位に配分されない全社に帰属する資産と負債も考慮しました。

 2014年度において、ソニーはMC分野の営業権の減損損失176,045百万円及びその他分野の営業権の減損損失1,090百万円を計上しました。これは当該報告単位の公正価値の減少によるものです。当該報告単位の公正価値は、将来キャッシュ・フローの見積現在価値にもとづき算定されています。

 

 2015年3月31日現在のセグメントごとの営業権の帳簿価額は以下のとおりです。

 

 

金額

(単位:百万円)

G&NS

154,399

IP&S

6,059

デバイス

37,762

映画

224,239

音楽

132,369

金融

2,314

その他

4,113

合計

561,255

 

 マネジメントは、営業権の減損判定に使用した将来キャッシュ・フロー及び公正価値の見積りは合理的であると考えています。しかしながら、将来の予測不能なビジネスの前提条件の変化による、将来キャッシュ・フローや公正価値の下落を引き起こすような見積りの変化が、これらの評価に不利に影響し、結果として、将来においてソニーが営業権及びその他の無形固定資産の減損を認識することになる可能性があります。2014年度の減損判定における公正価値の計算の感応度分析を実施するため、ソニーはそれぞれの報告単位の見積公正価値が10%下落したと仮定して計算を行いました。その結果、公正価値の10%下落により営業権の減損判定の第一ステップが不合格となる報告単位はありませんでした。

退職年金費用

 従業員の退職年金費用及び債務は、最新の統計数値にもとづく割引率、退職率及び死亡率を含む特定の前提条件に加え、年金制度資産の長期期待収益率及びその他の要因にも左右されます。特に割引率と長期期待収益率は、期間退職・年金費用及び退職給付債務を決定する上で、二つの重要な前提条件です。前提条件は、少なくとも年に一度、又はこれらの重要な前提条件に重大な影響を与えるような事象の発生又は状況の変化があった場合に評価されます。

 米国会計基準にしたがって、前提条件と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来認識される退職年金費用及び退職給付債務に影響します。マネジメントはこれらの前提条件が適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が、ソニーの退職給付債務及び将来の退職年金費用に影響を及ぼす可能性があります。

 ソニーの主要な年金制度は国内年金制度です。個別の海外年金制度に関して、年金制度資産及び退職給付債務の国内及び海外総額にとって重要性のあるものはありません。

 ソニーは2015年3月31日現在の国内年金制度の退職給付債務の決定において、1.0%の割引率を適用しました。割引率は、現在利用可能かつ退職給付債務の満期までの期間において利用可能であると見込まれる高格付けの債券の収益率情報を使用し、給付の見込支払額と時期を考慮して決定されます。この収益率情報には、公表されている市場情報及び複数の格付け機関から提供される数値が使用されています。この1.0%の割引率は2013年度に使用された1.4%から0.4ポイントの低下となり、昨今の日本における市場金利状況を反映しています。

 年金制度資産の長期期待収益率を決定するため、ソニーは、現在及び見込みの資産配分に加え、様々な種類の年金制度資産に関する過去及び見込長期収益率も考慮しています。ソニーの年金運用方針は、退職給付債務の性質が長期的であることにより見込まれる債務の増加や変動リスク、各資産クラスの収益とリスクの分散及びその相関を考慮して定められます。各資産の配分は、慎重かつ合理的に考慮した流動性及び投資リスクの水準に沿って、収益を最大化するように設定されます。年金運用方針は、直近のマーケットのパフォーマンス及び過去の収益を適切に考慮して定められているのに対し、ソニーが使用する運用前提条件は、対応する退職給付債務の性質が長期的であるのに合わせて長期的な収益を達成できるように設定されています。国内年金制度における2014年3月31日及び2015年3月31日現在の年金資産の長期期待収益率は、それぞれ3.0%でした。2013年度及び2014年度の実際の収益率は、それぞれ8.8%及び11.4%でした。実際の収益率が見込み収益率を上回った要因としては、年間を通じて株式市場が好調であったことに加え、円安による外貨建て資産時価が高くなったことなどが挙げられます。実際の結果と年金制度資産の長期期待収益との差異は、累積され、退職年金費用の一部として将来の平均残存勤務年数にわたって償却されます。その結果、毎年の退職年金費用のボラティリティが軽減されています。2014年3月31日及び2015年3月31日現在における、ソニーの国内年金制度についての年金制度資産の損失を含む年金数理純損失は、それぞれ2,370億円及び2,185億円でした。2014年度において、退職給付債務の決定に使用した割引率が前年を下回った影響があったものの、年金制度資産の実際の収益率が長期期待収益率を大幅に上回ったことにより、年金数理純損失は減少しました。

 以下の表は、他の前提条件を2015年3月31日より一定とした場合の、2015年度における国内年金制度の割引率と年金制度資産の長期期待収益率の変動による影響を表しています。

 

前提条件の変更

予測給付債務

退職年金費用

純資産

(税効果後)

割引率

 

 

 

0.25ポイント増/0.25ポイント減

-/+325億円

-/+15億円

+/-10億円

年金制度資産の長期期待収益率

 

 

 

0.25ポイント増/0.25ポイント減

-/+17億円

+/-12億円

 

 

繰延税金資産の評価

 繰延税金資産の帳簿価額は、入手可能な証拠にもとづいて50%超の可能性で回収可能性がないと考えられる場合、評価性引当金の計上により減額することが要求されます。したがって、繰延税金資産にかかる評価性引当金計上の要否は、繰延税金資産の回収可能性に関連するあらゆる肯定的及び否定的証拠を適切に検討することにより定期的に評価されます。この評価に関するマネジメントの判断は、それぞれの税務管轄ごとの当期及び累積損失の性質、頻度及び重要性、不確実な税務ポジションを考慮した将来の収益性予測、税務上の簿価を超える資産評価額、繰越欠損金の法定繰越可能期間、過去における繰越欠損金の法定繰越可能期間内の使用実績、繰越欠損金及び繰越税額控除の期限切れを防ぐために実行される慎重かつ実行可能な税務戦略を特に考慮します。

 日本の当社及び一部子会社、米国のSony Americas Holding Inc.(以下「SAHI」)及びその連結納税グループ、スウェーデンのSony Mobile Communications AB、英国のSony Europe Limited(以下「SEU」)及び他の税務管轄における一部の会社は、それぞれ累積で税引前損失を計上しています。累積損失の計上は、繰延税金資産の回収可能性を評価するにあたり、繰延税金資産に対する評価性引当金は計上不要であると判断することが困難な重要な否定的証拠とみなされます。

 当社、SAHI、㈱ソニー・コンピュータエンタテインメント、Sony Computer Entertainment Europe Limited及びSEUに関して回収可能とみなされている繰延税金資産の金額は、連結会社間の移転価格に関して50%超の可能性をもって調整される不確実な税務ポジションを考慮しています。これらの移転価格は、米国、英国及び日本での二国間事前確認制度(Bilateral Advance Pricing Agreements、以下「APAs」)の申請を受けて、関係する政府間で検討されています。ソニーは、貸借対照表日時点での様々な法人間の繰延税金資産の配分や金額を含む税務処理に関して、これらの政府間交渉による最終的な結果を見積もることが要求されます。ソニーは見積もられた税金費用を、通常これらの手続の進捗や移転価格の税務調査の進捗に応じて見直し、必要に応じて見積りを調整しています。

 事前確認制度による交渉は、マネジメントによる損益配分の現在の見積評価と異なる結果となる場合があり、その配分がソニーの繰延税金資産の金額又は回収可能性に有利もしくは不利な影響をもたらし、評価性引当金の計上金額が見直される可能性があります。その結果、追加的な証拠が入手可能となり、不確実な税務ポジションに対する引当とともに評価性引当金の評価を調整する可能性があります。

 繰延税金資産の評価に関する見積りは、貸借対照表日時点で適用されている税制や税率にもとづいており、また、ソニーの財務諸表及び税務申告書で認識されている事象に関して将来に起こり得る税務上の結果についてのマネジメントの判断と最善の見積り、様々な税務戦略を実行する能力、一定の場合においての将来の結果に関する予測、事業計画及びその他の見込を反映しています。ソニーが事業を行っているそれぞれの税務管轄における現在の税制や税率の改正は、実際の税務上の結果に影響を与える可能性があり、市場経済の悪化やマネジメントによる構造改革の目標未達は、将来における業績に影響を与える可能性があります。そして、これらのいずれかが、繰延税金資産の評価に影響を与える可能性があります。将来の結果が計画を下回る場合、APAsの交渉が現在の損益配分に関する予想と異なる結果となる場合、及び税務戦略の選択肢が実行可能ではなくなる場合や売却を予定する資産の価値が税務上の簿価を下回ることになる場合には、繰延税金資産を回収可能額まで減額するために、将来において追加的な評価性引当金の計上が要求される可能性があります。一方、将来の業績改善やビジネス構造の変革といった他の要因によって、関連する質的要因や不確実性を考慮した上で、税金費用の戻し入れをともなう評価性引当金の取崩しが計上される可能性があります。現在の見込において予想していないこれらの要因や変化は、評価性引当金が計上又は取崩される期間において、ソニーの業績又は財政状態に重要な影響を与える可能性があります。

映画会計

 映画会計においては、作品ごとの予想総収益を見積もる過程でマネジメントの判断が必要となります。この予想総収益の見積りは次の2点において重要となります。第一に、映画作品が製作され関連する費用が資産化される際に、その繰延映画製作費の公正価値が減損し、回収不能と見込まれる額を評価減する必要があるかどうかを決定するため、マネジメントは発生時に費用化される配給関連費用を含む追加で発生する費用を控除した予想総収益を見積もる必要があります。第二に、ある映画作品に関する売上原価として認識される繰延映画製作費の額は、その映画作品がそのライフサイクルにおいて様々な市場で公開されることから、予想総収益に対する当該年度の収益実績額の割合にもとづいています。

 マネジメントが各作品の予想総収益を見積もる際に基礎とするのは、同種の過去の作品の収益、主演俳優あるいは女優の人気度、その作品の公開される予測映画館数、DVD、テレビ放映及びその他の付随マーケットでの期待収益ならびに将来の売上に関する契約などです。この見積りは、各作品の直近までの実現収益及び将来予測収益にもとづいて定期的に見直されます。例えば、公開当初数週間の劇場収入が予想を下回った場合には、通常、劇場、DVD、及びテレビ放映の生涯収益などを下方に修正することになります。そのような下方修正を行わなかった場合、当該期間における映画製作費の償却費の過少計上になる可能性があります。

保険契約債務

 保険契約債務は、主として個人保険契約に関連しており、保有する契約から将来発生が予測される債務に見合う額が引当てられています。これらの債務はマネジメントの高度な判断と見積りを必要とし、将来の資産運用利回り、罹患率、死亡率及び契約脱退率等についての予測にもとづき平準純保険料式の評価方法により算定されます。保険契約債務は1.5%から4.5%の範囲の利率を適用して計算されており、市場環境や期待投資利益などの要素が反映されています。保険契約債務の見積りに使用される罹患率、死亡率及び契約脱退率は、保険子会社の実績あるいは保険数理上の種々の統計表に拠っています。通常は、これらの前提条件は契約時に固定されますが、前提条件と実績が大きく異なる場合、あるいは前提条件を大きく変更する場合には、ソニーは保険契約債務の追加計上を必要とする可能性があります。

生命保険ビジネスにおける契約者勘定

 生命保険ビジネスにおける契約者勘定は、勘定預り金累積元本に付与利息を加えたものから、引出額、経費及び危険保険料を差し引いた額を表しており、ユニバーサル保険及び投資契約等から構成されています。ユニバーサル保険には、利率変動型終身保険及び変額保険が含まれています。利率変動型終身保険に対する付与利率は1.9%から2.0%です。変額保険については、保険契約の価値は投資ユニットの観点から表示されます。各ユニットは資産ポートフォリオに関連しており、ユニットの価値の増減は、関連する資産ポートフォリオの価値にもとづいています。投資契約には、主に一時払養老保険契約、一時払学資保険契約及び年金開始後契約が含まれています。投資契約に対する付与利率は、0.1%から6.3%です。

(2)経営成績の分析

営業概況

 

 

2013年度

(億円)

2014年度

(億円)

増減率

(%)

売上高及び営業収入

77,673

82,159

+5.8

持分法による投資利益(損失)

△74

39

営業利益

265

685

+158.7

税引前利益

257

397

+54.3

当社株主に帰属する当期純損失

△1,284

△1,260

 

連結業績

売上高

 2014年度の売上高及び営業収入(以下「売上高」)は、前年度比5.8%増加の8兆2,159億円となりました。この増収は、主に、為替の影響、「プレイステーション 4」(以下「PS4TM」)が好調なG&NS分野の大幅な増収、イメージセンサーが好調なデバイス分野の大幅な増収によるものです。一方、主にPC事業を収束したことによりその他分野の売上高は大幅に減少しました。売上高の内訳の詳細については、後述の「分野別営業概況」をご参照ください。

 2014年度の米ドル、ユーロに対する平均円レートはそれぞれ109.9円、138.8円となり、前年度の平均レートに比べ、米ドルに対しては8.8%、ユーロに対しては3.2%の円安となりました。

 (後述の「売上原価」、「研究開発費」及び「販売費及び一般管理費」に関する売上高に対する比率分析において、「売上高」については、売上高のうち、純売上高及び営業収入のみが考慮されており、金融ビジネス収入は除かれています。これは、「金融ビジネス費用」は連結財務諸表上、売上原価や販売費及び一般管理費とは別に計上されていることによります。さらに、後述の比率分析のうち、セグメントに関するものについては、セグメント間取引を含んで計算されています。)

 

売上原価、販売費及び一般管理費、その他の営業損益(純額)

 2014年度の売上原価は、前年度に比べ1,351億円(2.6%)増加して5兆2,751億円となり、売上高に対する比率は前年度の75.8%から73.9%に改善しました。この増加にはG&NS分野におけるPlayStation®Vita(以下「PS Vita」)やPlayStation®TV (以下「PS TV」)用の部品に対する評価減112億円も含まれています。

 研究開発費(売上原価に全額含まれる)は、前年度に比べ17億円(0.4%)減少の4,643億円となり、売上高に対する比率は、前年度の6.9%に対して2014年度は6.5%になりました。

 販売費及び一般管理費は、構造改革により人件費が減ったものの、主に円安の影響により、前年度に比べ829億円(4.8%)増加して1兆8,115億円になりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は当年度において25.5%となり、前年度は25.4%であったことから、ほぼ前年度並みとなりました。

 その他の営業損益(純額)は、前年度に比べ1,330億円(273.3%)悪化し、1,817億円の損失を計上しました。この大幅な悪化は、全社(共通)及びセグメント間取引消去に含まれる御殿山テクノロジーセンターの土地及び建物の一部売却にともなう売却益148億円があったものの、主にMC分野において営業権の減損判定の結果、MC事業の公正価値の減少にともない、営業権の減損1,760億円を計上したことによるものです。なお、2013年度は、その他分野におけるエムスリー㈱株式の一部売却益128億円が含まれますが、デバイス分野における電池事業の長期性資産の減損321億円、日本及び米国以外のディスク製造事業の長期性資産及びディスク製造事業全体の営業権の減損256億円、ならびにPC事業の長期性資産の減損128億円がその他分野に計上されていました。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『21 連結損益計算書についての補足情報』参照)

 

持分法による投資損益

 営業損益に含まれる持分法による投資損益は、前年度の74億円の損失に対し、2014年度は39億円の利益となりました。この損益改善は、その他分野に含まれるインタートラスト・テクノロジー社の持分法投資損益の改善などによるものです。

 

営業損益

 2014年度の営業利益は、前年度比421億円増加し、685億円となりました。この大幅な増益は、主に、デバイス分野、G&NS分野、ならびにHE&S分野の大幅な損益改善によるものです。一方、MC分野では営業権の減損1,760億円を計上したことなどにより、大幅に損益が悪化しました。

 2014年度の構造改革費用(純額)は、前年度に比べ174億円増加し、980億円となりました。また、PC事業収束にともなう費用は、前年度に比べ187億円減少し、396億円(うち、構造改革費用は196億円)になりました。2014年度のPC事業収束に関する損失の内訳は以下のとおりです。

 

 

 

その他

全社(共通)及び

セグメント間取引消去

連結

前年度比

増減額

 

 

億円

億円

億円

億円

(ア)

構造改革費用

118

78

196

△213

(イ)

その他のサービス費用など *

200

200

+26

PC事業収束にともなう費用(ア、イの合計)

318

78

396

△187

PC事業収束にともなう費用を除く営業損失 **

△239

239

+94

PC事業の営業損失合計

△557

△78

635

+282

*  その他のサービス費用などにはPC事業の顧客サポートにともなう給与及び人件費などが含まれています。

** 2014年度のPC事業収束にともなう費用を除く営業損失には、過去実績にもとづく配賦によりPC事業に計上された販売会社の固定費が含まれています。

 

その他の収益及び費用

 2014年度のその他の収益は、前年度から174億円(40.9%)減少し、251億円となりました。一方、その他の費用は前年度に比べ107億円(24.7%)増加し、539億円となりました。その他の収益からその他の費用を差し引いた純額は、前年度に比べ281億円悪化し、288億円の費用となりました。これは主に、為替差損(純額)の増加及び投資有価証券売却益の減少によるものです。前年度の投資有価証券売却益には、㈱スカパーJSATホールディングス株式の売却益74億円が含まれていました。

 為替差損(純額)は、前年度に比べ113億円(122.6%)拡大し、205億円を計上しました。この為替差損の増加は、主に、ソニーの締結している通常のデリバティブ契約が、想定される取引の為替変動のリスクを低減したものの、特に2014度後半における大幅な米ドル高から生じた損失によるものです。なお、受取利息及び配当金は前年度に比べ38億円(22.6%)減少して129億円となりました。支払利息は前年度に比べ1億円(0.6%)増加し、236億円となりました。

 

税引前利益

 2014年度の税引前利益は、前年度に比べ140億円(54.3%)増加し、397億円となりました。

 

法人税等

 2014年度の法人税等は、887億円となり、実効税率は日本の法定税率を上回りました。これは主に、税率の低い海外子会社において利益が増加したこと、ならびに日本の法人税率の引き下げにともなう繰延税金負債の取り崩しにより一部税金費用の戻し入れを計上した一方で、繰延税金資産に対し評価性引当金を計上しているソニー株式会社及び一部の子会社において計上した損失に対して税金費用の戻し入れを計上しなかったこと、ならびに当年度に計上された税務上損金に算入されない営業権の減損によるものです。なお、税金に関する米国会計基準にしたがって、その他の包括利益の計上にともない一部税金費用の戻し入れを計上しました。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『22 法人税等』参照)

 

当社株主に帰属する当期純損益

 当社株主に帰属する当期純損失(非支配持分に帰属する当期純利益を除く)は、前年度に比べ24億円縮小し、1,260億円となりました。

 非支配持分に帰属する当期純利益は、前年度に比べ174億円増加し、2014年度は770億円の利益となりました。この増加は主に、非支配持分が40%であるSFHにおいて利益が増加したことによるものです。

 基本的及び希薄化後1株当たり当社株主に帰属する当期純損失はいずれも前年度の124.99円の損失に対し、2014年度は113.04円の損失になりました。(1株当たり当社株主に帰属する当期純損益の詳細については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『23 基本的及び希薄化後EPSの調整表』参照)

分野別営業概況

 以下の情報はセグメント情報にもとづきます。各分野の売上高及び営業収入は、セグメント間取引を含みます。(「第5 経理の状況」 連結財務諸表注記『29 セグメント情報』参照)

 

ビジネスセグメント情報

売上高及び営業収入

 

 

 

2013年度

(億円)

2014年度

(億円)

増減率(%)

MC

11,918

13,233

+11.0

G&NS

10,439

13,880

+33.0

IP&S

7,412

7,200

△2.9

HE&S

11,686

12,073

+3.3

デバイス

7,730

9,578

+23.9

映画

8,296

8,787

+5.9

音楽

5,033

5,446

+8.2

金融

9,938

10,836

+9.0

その他

8,580

4,911

△42.8

全社(共通)及びセグメント間取引消去

△3,359

△3,786

連結合計

77,673

82,159

+5.8

 

営業利益(損失)

 

 

 

2013年度

(億円)

2014年度

(億円)

増減率(%)

MC

126

△2,204

G&NS

△188

481

IP&S

263

547

+107.7

HE&S

△255

201

デバイス

△124

931

映画

516

585

+13.4

音楽

502

590

+17.4

金融

1,703

1,933

+13.5

その他

△1,361

△1,034

小計

1,182

2,029

+71.6

全社(共通)及びセグメント間取引消去*

△917

△1,344

連結合計

265

685

+158.7

 

 * 全社(共通)及びセグメント間取引消去には、各セグメントに配賦されない本社の構造改革費用及びPC事業の収束に付随して発生した販売会社の規模縮小にともなう構造改革費用が含まれています。また、ソニーモバイルの支配権取得時にエリクソンから取得した無形資産である知的財産権のクロスライセンス契約等の知的財産の償却費を含むその他本社費用が含まれています。

 

MC分野

 2014年度のMC分野の売上高は、高付加価値モデルへの注力による製品ミックスの改善や為替の影響などにより、前年度比11.0%増加し、1兆3,233億円となりました。

 営業損益は、前年度の126億円の利益に対し、当年度は2,204億円の損失となりました。前述の製品ミックスの改善がありましたが、当分野において営業権の減損1,760億円*を計上したことに加え、コストの米ドル建て比率が高いことによる米ドル高の悪影響などにより損益が悪化しました。

* ソニーは2014年7月にMC分野の中期計画の見直しに着手し、2014年9月にMC分野における実績や事業環境の変化、及びモバイル事業の市場や競争環境が大きく変化したことを踏まえ、MC分野の中期計画を変更しました。この新しい中期計画では、一部地域における戦略の見直しや、高付加価値ラインアップへの集中を含み、以前の中期計画と比べて将来キャッシュ・フローが低くなる見込みです。その結果、MC事業の公正価値が減少していると判断しました。

 

 主要製品の売上台数は以下のとおりです。

 

主要製品の売上台数

 

 

 

2013年度

(万台)

2014年度

(万台)

台数増減

(万台)

増減率(%)

スマートフォン

3,910

3,910

0

0

 

G&NS分野

 2014年度のゲーム分野の売上高は、前年度比33.0%増加し、1兆3,880億円となりました。当年度において、「プレイステーション 3」(以下「PS3®」)のハードウエア及びソフトウエアは減収となりましたが、主に、PS4TMのハードウエアの販売台数の増加、ネットワークサービス収入の大幅な増加、為替の影響、ならびにPS4TMのソフトウエアの増収により、分野全体で大幅な増収となりました。

 営業損益は、前年度の188億円の損失に対し、当年度は481億円の利益となりました。PS3®のソフトウエアの減収による影響、コストの米ドル建て比率が高いことによる米ドル高の損益に対する悪影響、及びPS VitaやPS TV用の部品に対する評価減112億円の計上がありましたが、主に前述の増収の影響により、分野全体で大幅な損益改善となりました。なお、前年度には、一部のPC向けソフトウエアタイトルの評価減62億円が計上されていました。

 

 ゲーム事業に含まれる各ハードウエア及びソフトウエアに関する売上台数・本数は以下のとおりです。

 

各ハードウエアに関する売上台数及びソフトウエア売上高

 

 

ハードウエア売上台数

2013年度

(万台)

2014年度

(万台)

台数増減

(万台)

増減率(%)

据置型ハードウエア(PS4TM、PS3)

1,460

1,790

+330

+22.6

携帯型ハードウエア(PS Vita及びPSP)

410

330

△80

△19.5

 

 

2013年度

(億円)

2014年度

(億円)

増減率(%)

ソフトウエア(売上高)*

3,840

4,600

+19.8

 

* ソフトウエア売上高には、G&NS分野におけるパッケージソフトウエア及びネットワークソフトウエアの売上高を含みます。

 

 

IP&S分野

 2014年度のIP&S分野の売上高は、為替の影響、及びデジタルカメラ*における高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善がありましたが、市場縮小の影響によりデジタルカメラ及びビデオカメラの販売台数が大幅に減少したことなどにより、前年度比2.9%減少し、7,200億円となりました

 営業利益は、前年度比284億円増加し、547億円となりました。前述のデジタルカメラ及びビデオカメラの減収の影響がありましたが、販売費及び一般管理費の削減や為替の好影響、及び前述の高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善などにより、前年度に比べ、分野全体で大幅な増益となりました。

 

 製品部門別の外部顧客向け売上高及び主要製品の売上台数は以下のとおりです。

 

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2013年度

(百万円)

構成比

(%)

2014年度

(百万円)

構成比

(%)

増減率

(%)

デジタルイメージング・プロダクツ

442,723

60.0

432,594

60.4

△2.3

プロフェッショナル・ソリューション

277,417

37.6

271,903

38.0

△2.0

その他

17,334

2.4

11,761

1.6

△32.2

合計

737,474

100.0

716,258

100.0

△2.9

 

主要製品の売上台数

 

 

 

2013年度

(万台)

2014年度

(万台)

台数増減

(万台)

増減率

(%)

デジタルカメラ *

(デジタルイメージング・プロダクツ事業)

1,150

850

△300

△26.1

 

* デジタルカメラは、コンパクトデジタルカメラ、レンズ交換式一眼カメラ、及びレンズスタイルカメラを含みます。

 

HE&S分野

 2014年度のHE&S分野の売上高は、前年度比3.3%増加し、1兆2,073億円となりました。オーディオ・ビデオは減収となりましたが、主に、為替の影響及びテレビの増収により、分野全体で増収となりました。液晶テレビの販売台数は、中南米と中国において大幅に減少しましたが、北米、日本及び欧州において大幅に増加し、全体で増加しました。

 営業損益は、前年度の255億円の損失に対し、当年度は201億円の利益となりました。コストの米ドル建て比率が高いことによる米ドル高の悪影響がありましたが、主に、コスト削減及び高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善などにより、分野全体で大幅な損益改善となりました。

 なお、テレビについては、売上高は、前年度比10.7%増加の8,351億円となりました。この増収は、主に、前述の販売台数の増加及び為替の影響によるものです。営業損益*については、コストの米ドル建て比率が高いことによる米ドル高の悪影響がありましたが、コスト削減及び高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善などにより、前年度の257億円の損失に対し、当年度は83億円の利益となりました。

* 分野全体に含まれる構造改革費用は製品カテゴリーには配賦されておらず、テレビの営業損失には含まれていません。

 

 製品部門別の外部顧客向け売上高及び主要製品の売上台数は以下のとおりです。

 

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2013年度

(百万円)

構成比

(%)

2014年度

(百万円)

構成比

(%)

増減率

(%)

テレビ

754,308

64.7

835,068

69.3

+10.7

オーディオ・ビデオ

400,828

34.4

366,050

30.4

△8.7

その他

10,871

0.9

3,804

0.3

△65.0

合計

1,166,007

100.0

1,204,922

100.0

+3.3

 

主要製品の売上台数

 

 

 

2013年度

(万台)

2014年度

(万台)

台数増減

(万台)

増減率

(%)

液晶テレビ

1,350

1,460

+110

+8.2

 

デバイス分野

 2014年度のデバイス分野の売上高は、前年度比23.9%増加し、9,578億円となりました。この増収は、主に、モバイル機器向けの需要増加によるイメージセンサーの大幅な増収、為替の影響、ならびにカメラモジュールの大幅な増収によるものです。なお、外部顧客に対する売上高は、前年度比29.8%増加しました

 営業損益は、前年度の124億円の損失に対し、当年度は931億円の利益となりました。この大幅な損益改善は、主に、前述のイメージセンサーの増収の影響、前年度に電池事業において321億円の長期性資産の減損を計上したこと、ならびに為替の好影響によるものです

 

 製品部門別の外部顧客向け売上高は以下のとおりです。

 

製品部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2013年度

(百万円)

構成比

(%)

2014年度

(百万円)

構成比

(%)

増減率

(%)

半導体

336,845

57.8

496,694

65.6

+47.5

コンポーネント

243,751

41.8

253,020

33.4

+3.8

その他

2,493

0.4

7,010

0.9

+181.2

合計

583,089

100.0

756,724

100.0

+29.8

 

棚卸資産

 エレクトロニクス5分野合計(MC分野、G&NS分野、IP&S分野、HE&S分野、及びデバイス分野の合計)の2014年度末の棚卸資産は、前年度末比576億円(9.3%)減少の5,612億円となりました。

 

外部顧客に対する売上高の地域別分析

 エレクトロニクス5分野合計の2014年度の外部顧客に対する地域別売上高は、前年度に比べ、日本で1%、米国で31%、欧州で24%、中国で17%、アジア・太平洋地域(日本及び中国を除く)では12%、その他地域では1%の増加となりました。全地域の合計で15%の増加となりました。

 日本においては、タブレットなどの売上が増加しました。米国及び欧州においては、ゲーム事業などの売上が増加しました。中国においては、イメージセンサーや電池などの売上が増加しました。アジア・太平洋地域では、イメージセンサーなどの売上が増加しました。その他地域では、テレビなどの売上が減少しましたが、スマートフォンなどの売上が増加しました。

 

地域別の生産状況

 エレクトロニクス5分野合計の2014年度の年間全生産高の約60%が自社生産、約40%が社外への生産委託によるものです。

 年間自社生産高のうち、約35%は日本における生産であり、デジタルカメラ、家庭用ビデオカメラ、液晶テレビ、業務用機器、半導体、コンポーネント(電池、記録メディアなど)などを生産しました。日本の年間自社生産高のうち約80%は輸出されました。中国における生産高は年間自社生産高の約40%で、そのうちの約75%は輸出されました。日本と中国を除いたアジアでは年間自社生産高の約25%を生産し、そのうちの約65%が米州、日本、欧州、中国向けに出荷されました。年間自社生産高の5%未満が米州と欧州で生産され、ほとんどがそれぞれ生産された地域で販売されました。

 

映画分野

 映画分野の業績は、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、米国を拠点とするSony Pictures Entertainment(以下「SPE」)の円換算後の業績です。ソニーはSPEの業績を米ドルで分析しているため、一部の記述については「米ドルベース」と特記してあります。

 2014年度の映画分野の売上高は、前年度比5.9%増加し、8,787億円となりました(米ドルベースでは4%の減収)。米ドルベースでの減収は、主に、映画製作及びテレビ番組制作の減収によるものです。映画製作は、前年度に比べ劇場公開作品数が少なかったことによる劇場興行収入の減少などにより減収となりました。テレビ番組制作の減収は、前年度に「Wheel of Fortune」を含むSPEが制作するクイズ番組に関するライセンス契約につき対象範囲を拡大した上で更新したことによるものです。メディアネットワークは、前年度及び当年度における事業買収にともなうデジタルゲーム収入及び広告収入の増加により、前年度に比べ増収となりました。

 営業利益は、米ドルに対する円安の好影響により、前年度比69億円増加し、585億円となりました。米ドルベースの営業損益は、ほぼ前年度並みでした。前年度において「ホワイトハウス・ダウン」及び「アフター・アース」の劇場興行収入が想定を下回ったことに対し、当年度の劇場興行収入が堅調だった好影響がありました。また、構造改革費用が前年度に比べ、減少しました。一方、前年度には、SPEが保有していた音楽出版カタログの売却益の計上、当年度には前述のテレビ番組制作の減収及びインドのテレビネットワークにおける番組制作・購入費及び広告宣伝費の増加の影響もありました。

 なお、当年度において、2014年11月に認識したSPEのネットワーク及びITインフラに対するサイバー攻撃に関連して、主に調査及び復旧のための費用約41百万米ドル(49億円)を計上しました。

 

 2014年度末の未認識の放映権収入は約14億米ドルでした。すでに完成した映画作品やテレビ番組を放送局に提供する契約を放送局との間で締結しているため、SPEは今後10年間この金額を収入として計上することができると見込んでいます。現在の収益認識の基準にもとづきSPEでは放映権収入は放送可能となった年度において、放映権収入として認識しています。

 

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2013年度

(百万円)

構成比

(%)

2014年度

(百万円)

構成比

(%)

増減率

(%)

映画製作

422,255

50.9

434,254

49.6

+2.8

テレビ番組制作

247,568

29.9

252,456

28.8

+2.0

メディアネットワーク

158,845

19.2

189,604

21.6

+19.4

合計

828,668

100.0

876,314

100.0

+5.7

 

音楽分野

 音楽分野の業績は、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、米国を拠点とするSony Music Entertainment(以下「SME」)の円換算後の業績、円ベースで決算を行っている日本の㈱ソニー・ミュージックエンタテインメントの業績、及びソニーが株式の50%を保有する音楽出版事業の合弁会社であり、全世界にある子会社の業績を米ドルベースで連結している、米国を拠点とするSony/ATV Music Publishing LLC(以下「Sony/ATV」)の円換算後の業績を連結したものです。

 2014年度の音楽分野の売上高は、主に米ドルに対する円安の好影響により、前年度比8.2%増加し、5,446億円となりました(前年度の為替レートを適用した場合、ほぼ前年度並み)。前年度の為替レートを適用した場合、世界的なパッケージメディア及びデジタルダウンロードの売上の減少がありましたが、デジタルストリーミング配信売上の増加による影響などがあり、分野全体の売上高はほぼ前年度並みとなりました。当年度にヒットした作品には、ワン・ダイレクションの「フォー」、AC/DCの「ロック・オア・バスト」、メーガン・トレイナーの「タイトル」、乃木坂46の「透明な色」、マイケル・ジャクソンの「エスケイプ」などがあります。

 営業利益は、前年度比88億円増加し、590億円となりました。これは、円安の好影響、EMI Music Publishingを中心とした持分法による投資利益の増加、ならびに広告宣伝費の減少などによるものです。

 

ビジネス部門別の外部顧客向け売上高

 

 

 

2013年度

(百万円)

構成比

(%)

2014年度

(百万円)

構成比

(%)

増減率

(%)

音楽制作

347,684

70.7

383,350

71.8

+10.3

音楽出版

66,869

13.6

70,959

13.3

+6.1

映像メディア・プラットフォーム

77,505

15.7

79,677

14.9

+2.8

合計

492,058

100.0

533,986

100.0

+8.5

 

金融分野

 ソニーの金融分野には、SFH及びSFHの連結子会社であるソニー生命保険㈱(以下「ソニー生命」)、ソニー損害保険㈱(以下「ソニー損保」)、ソニー銀行㈱(以下「ソニー銀行」)等の業績が含まれています。

 以下に掲載されているソニー生命の業績は米国会計原則に則ったものであり、SFH及びソニー生命が日本の会計原則に則って個別に開示している業績とは異なります。

 

 2014年度の金融ビジネス収入は、主にソニー生命の増収により、前年度比9.0%増加し、1兆836億円となりました。ソニー生命の収入は、当年度の日本の株式相場の上昇幅が前年度を上回ったことなどにともない特別勘定における運用損益が改善したことに加え、保有契約高の拡大にともない保険料収入が増加したことなどから、前年度比9.6%増加し、9,671億円となりました。

 営業利益は、主にソニー生命の増益により、前年度に比べ230億円増加し、1,933億円となりました。ソニー生命の営業利益は、一般勘定における運用損益が改善したことに加え、前述の日本の株式相場の上昇にともな

い変額保険の最低保証にかかる責任準備金繰入額が減少したことなどから、前年度に比べ183億円増加し、

1,780億円となりました。

 

金融分野を分離した経営成績情報

 以下の表は、金融分野の経営成績情報及び金融分野を除くソニー連結の経営成績情報です。この金融分野を分離した要約情報は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則では要求されていませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこの情報を金融分野を除く業績の分析に用いており、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引(非支配持分を含む)を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約損益計算書(3月31日に終了した1年間)

 

金融分野

金融分野を除くソニー連結

ソニー連結

 

2013年度

2014年度

2013年度

2014年度

2013年度

2014年度

科目

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金融ビジネス収入

993,846

1,083,629

988,944

1,077,604

純売上高及び営業収入

6,780,504

7,141,492

6,778,322

7,138,276

売上高及び営業収入

993,846

1,083,629

6,780,504

7,141,492

7,767,266

8,215,880

金融ビジネス費用及び営業費用

821,218

889,540

6,921,294

7,218,528

7,733,397

8,151,253

持分法による投資利益(損失)

△2,336

△782

△5,038

4,703

△7,374

3,921

営業利益(損失)

170,292

193,307

△145,828

△72,333

26,495

68,548

その他の収益・費用-純額

2

7,800

△20,987

△754

△28,819

税引前利益(損失)

170,294

193,307

△138,028

△93,320

25,741

39,729

法人税等その他

54,161

42,184

53,290

63,094

154,110

165,709

金融分野の当期純利益

116,133

151,123

金融分野を除くソニー連結の当期純損失

△191,318

△156,414

当社株主に帰属する当期純損失

△128,369

△125,980

 

その他分野

 2014年度の売上高は、前年度比42.8%減少し、4,911億円となりました。この大幅な減収は、主にPC事業収束によるものです。

 営業損失は、前年度に比べ327億円縮小し、1,034億円となりました。前年度においてエムスリー㈱株式の一部売却にともなう売却益128億円が計上されていましたが、当年度はPC事業の営業損失が縮小したことなどにより、損失が縮小しました。なお、前年度の営業損失には、日本及び米国以外のディスク製造事業の長期性資産ならびにディスク製造事業全体の営業権の減損256億円が計上されていました。

 

構造改革

 厳しい経営環境の中、ソニーは、エレクトロニクス事業の再生を実現するため、様々な変革に取り組んでいます。本社・販売会社についてもコスト削減に取り組み、この削減にともなう効果として、2015年度では2013年度比で約1,000億円以上の固定費削減を見込んでいます。

 2014年度の構造改革費用は、前年度の806億円に対し、980億円となりました。(2014年度の金額には、構造改革に関する資産の減価償却費73億円が含まれています。前年度には、構造改革に関する資産の減価償却費を50億円計上しました。)2014年度の構造改革費用は、前年度比174億円(21.6%)増加しました。2014年度の980億円の費用のうち533億円は人員関連の費用です。連結損益計算書上、この費用は主に販売費及び一般管理費に計上されています。人員関連の費用は前年度に比べ27.4%増加しました。2014年度の構造改革費用は、主に、エレクトロニクス事業及び本社の構造改革によるものです。

(「第2 事業の状況」で記載している構造改革費用は、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『20 構造改革にかかる費用』に記載されている「構造改革に関連する資産の減価償却費」を含んでいます。)

 

為替変動とリスク・ヘッジ

 2014年度の米ドル、ユーロに対する平均円レートはそれぞれ109.9円、138.8円と前年度の平均レートに比べ米ドルは8.8%、ユーロは3.2%の円安となりました。

 2014年度の連結売上高は、前年度に比べ5.8%増加し、8兆2,159億円となりました。前年度の為替レートを適用した場合、ほぼ前年度並みとなりました。前年度の為替レートを適用した場合の情報については、この章の最後の注記をご参照ください。

 連結営業利益は、前年度に比べ421億円増加し、685億円となりました。一方、前年同期の為替レートを適用した場合は、前年同期に比べ約370億円の増加となります。連結営業損益における為替変動の好影響は、主にエレクトロニクス5分野において生じたものです。

 前述の5分野ごとの為替変動による売上高及び営業損益への影響については、以下の表をご参照ください。また、詳細については、「業績等の概況」の分野別概況における各分野の分析をご参照ください。為替の影響が大きかった分野やカテゴリーについて、その影響に言及しています。

 

 

 

2013年度

2014年度

増減

前年同期の為替レートを適用した場合の増減

為替変動による影響額

 

 

(億円)

(億円)

 

 

(億円)

MC分野

売上高

11,918

13,233

+11.0%

+7%

+453

 

営業利益(損失)

126

△2,204

△2,330億円

△2,396億円

+66

G&NS分野

売上高

10,439

13,880

+33.0%

+25%

+865

 

営業利益(損失)

△188

481

+669億円

+820億円

△151

IP&S分野

売上高

7,412

7,200

△2.9%

△7%

+339

 

営業利益

263

547

+284億円

+172億円

+111

HE&S分野

売上高

11,686

12,073

+3.3%

△2%

+646

 

営業利益(損失)

△255

201

+456億円

+650億円

△194

デバイス分野

売上高

7,730

9,578

+23.9%

+16%

+612

 

営業利益(損失)

△124

931

+1,055億円

+681億円

+374

 

 なお、映画分野の売上高は前年度比5.9%増加の8,787億円となりましたが、米ドルベースでは、約4%の減収でした。音楽分野の売上高は前年度比8.2%増加の5,446億円となりましたが、前年度の為替レートを適用した場合、ほぼ前年度並みでした。詳細な分析は、「経営成績の分析」の「映画分野」及び「音楽分野」をご参照ください。ソニーの金融分野は、円ベースのSFHを連結しています。同分野の事業のほとんどが日本で行われていることから、ソニーは金融分野の業績の分析を円ベースでのみ行っています。

 2014年度において、米ドルに対する1円の円高の影響は、売上高では約500億円の減少、営業損益では約30億円の増加と試算されます。ユーロに対する1円の円高の影響は、売上高では約100億円、営業損益では約60億円の減少と試算されます。(「第2 事業の状況」『4 事業等のリスク』参照)

 ソニーの連結業績は、主に生産地と販売地の通貨が異なることから生ずる為替変動リスクにさらされています。これらの変動によるリスクを軽減するため、ソニーは一貫したリスク管理方針に従い、先物為替予約、通貨オプション契約を含むデリバティブを利用しています。ソニーが行っているこれらのデリバティブは、主に当社及び当社の子会社の予想される外貨建て取引及び外貨建て売上債権や買入債務から生じるキャッシュ・フローの為替変動によるリスクを低減するために利用されています。

 ソニーは、総合的な財務サービスを当社及び当社の子会社・関連会社に提供することを目的として、Sony Global Treasury Services Plc(以下「SGTS」)をロンドンに設立しています。為替変動リスクにさらされている当社及び全ての子会社が、リスク・ヘッジのための契約をSGTSとの間で結ぶことがソニーの方針となっており、当社及び当社の子会社のほとんどはこの目的のためにSGTSを利用しています。為替リスク集中の原則にもとづき、SGTSとソニー㈱がソニーグループ全体の相殺後のほとんどの為替変動リスクをヘッジしています。ソニーの方針として、金融機関との為替デリバティブ取引は、リスク管理のため、原則としてSGTSに集中しております。SGTSはグループ外の信用の高い金融機関との間で外国為替取引を行っています。ほとんどの外国為替取引は、実際の輸出入取引が行われる前の予定された取引や債権・債務に対して行われます。一般的には、実際の輸出入取引が行われる1ヵ月前から3ヵ月前までの間にヘッジを行っています。ソニーは金融機関との外国為替取引を主にヘッジ目的のために行っています。ソニーは、金融分野を除き、売買もしくは投機目的でこれらのデリバティブを利用していません。金融分野においては、主にALMの一環としてデリバティブを活用しています。

 また、特にエレクトロニクス5分野では、為替変動が業績に与える影響を極力小さくするために、海外において市場により近い地域での資材・部品調達、設計、生産を推進しています。

 キャッシュ・フローヘッジとして指定されたデリバティブの公正価値変動は、当初累積その他の包括利益に計上され、ヘッジ対象取引が損益に影響を与える時点で損益に振替えられます。一方、ヘッジ会計の要件を満たさない先物為替予約、通貨オプション契約、及びその他のデリバティブは時価評価され、その変動は、ただちにその他収益・その他費用に計上されます。2014年度末における外国為替契約の想定元本の合計及び資産に計上された公正価値(純額)の合計は、それぞれ2兆1,843億円、83億円となっています(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『15 デリバティブ及びヘッジ活動』参照)。

注:この章において、前年度の為替レートを適用した場合の売上高は、2014年度の現地通貨建て月別売上高に対し、前年度の月次平均レートを適用して計算した売上高を指しています。為替変動による営業利益(損失)への影響は、前年度為替レートを適用した売上高から、前年度為替レートを適用した売上原価ならびに販売費及び一般管理費を差し引いた形で見込まれています。前年度の為替レートを適用した場合の、売上原価、販売費及び一般管理費は、今年度の現地通貨建て月別原価ならびに販売費及び一般管理費に対し、前年度の月次平均レートを適用して計算した原価ならびに販売費及び一般管理費を指しています。なお、MC分野においては、ユーロベースで集計した上で、前年度の為替レートを適用した金額を算出しています。映画分野及び音楽分野のSME及びSony/ATVにおいては、ドルベースで集計した上で、前年度の為替レートを適用した金額を算出しています。前年度の為替レートを適用した場合の売上高及び営業利益(損失)は、米国会計基準に則って開示されるソニーの財務諸表を代替するものではありません。しかしながら、前年度の為替レートを適用した場合の売上高及び営業利益(損失)は、投資家の皆様にソニーの営業概況を理解頂くための有益な分析情報と考えております。

 

所在地別の業績

 所在地別の業績は、企業のセグメント及び関連情報に関する開示にもとづく地域(顧客の所在国)別情報について、前述の「分野別営業概況」に含め関連付けて分析的に記載しています(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『29 セグメント情報』参照)。

 

 

(3)財政状態の分析

 

資産

 2014年度末の総資産は、前年度末に比べ5,006億円(3.3%)増加し、15兆8,343億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の総資産は、前年度末に比べ1,903億円(3.1%)減少し、5兆9,420億円となりました。金融分野では7,419億円(7.9%)増加し、10兆899億円となりました。

 

流動資産

 2014年度末の流動資産は、前年度末に比べ70億円(0.2%)減少し、4兆1,979億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の流動資産は、前年度末比790億円(2.6%)減少し、2兆9,116億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結の現金・預金及び現金同等物は、前年度末に比べ642億円(8.0%)減少し、2014年度末において7,419億円となりました。これは主に、財務活動によるキャッシュ・フローの支払超過額が、営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フロー合計の受取超過額を上回ったことによるものです(後述の「キャッシュ・フローの状況の分析」参照)。

 金融分野を除いたソニー連結の受取手形及び売掛金(貸倒・返品引当金控除後)は、前年度末に比べ297億円(3.4%)増加し、8,938億円となりました。一方、為替の影響を除くと3%減少しました。この減少は主に、PC事業の収束によるものです。

 金融分野を除いたソニー連結のその他流動資産は、主に棚卸資産が減少したことにより、前年度末比441億円(3.3%)減少し、1兆2,726億円となりました。

 棚卸資産は、前年度末に比べて685億円(9.3%)減少し、6,654億円となりました。

 金融分野における2014年度末の流動資産は、主にソニー生命において有価証券が増加したことにより前年度末比721億円(5.9%)増加の1兆2,886億円となりました。

 

投資及び貸付金

 投資及び貸付金は、前年度末に比べ6,123億円(7.7%)増加し、2014年度末において8兆5,314億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結の投資及び貸付金は、前年度末に比べ141億円(3.7%)増加し、3,952億円となりました。

 2014年度末の金融分野の投資及び貸付金は、前年度比6,505億円(8.6%)増加の8兆2,177億円となりました。これは主として、ソニー生命において投資及び貸付金が増加したことによるものです(後述の「投資有価証券」参照)。

 

有形固定資産(減価償却累計額控除後)

 2014年度末の有形固定資産は、前年度末に比べ107億円(1.4%)減少し、7,393億円となりました。

 2014年度の金融分野を除いたソニー連結の有形固定資産は、前年度比123億円(1.7%)減少の、7,207億円となりました。2014年度の設備投資額(有形固定資産の増加額)は、前年度に比べ20億円(1.2%)増加し、1,634億円となりました。

 金融分野の有形固定資産は、前年度末に比べ2億円(1.5%)増加し、2014年度末において173億円となりました。

 

その他の資産

 2014年度末のその他の資産は、ソニー生命における保有契約高の増加による繰延保険契約費の増加があったものの、MC分野における営業権の減損1,760億円の計上などにより、前年度末比1,235億円(5.7%)減少し、2兆606億円になりました(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『10 営業権及び無形固定資産』と『11 保険関連科目』参照)。

 

 

負債

 2014年度末の流動負債及び固定負債合計は、前年度末に比べ3,542億円(2.8%)増加し、12兆9,006億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の流動負債及び固定負債合計は、前年度末に比べ2,210億円(5.1%)減少し、4兆935億円となり、金融分野では5,738億円(6.9%)増加し、8兆8,407億円となりました。

 

流動負債

 2014年度末の流動負債は、前年度末に比べ380億円(0.8%)減少し、4兆7,456億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の流動負債は、前年度末に比べ447億円(1.6%)減少し、2014年度末において2兆6,695億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結の短期借入金及び1年以内に返済期限が到来する長期借入債務は、前年度末に比べ1,564億円(42.1%)減少し、2,152億円となりました。これは主に、第25回無担保社債の償還(1,100億円)などの長期借入債務の返済があったことによるものです。

 金融分野を除いたソニー連結の支払手形及び買掛金は、主にPC事業収束の影響により、前年度末比906億円(12.7%)減少し、6,222億円となりました。

 2014年度末の金融分野の流動負債は、前年度末比67億円(0.3%)増加の2兆784億円となりました。

 

固定負債

 2014年度末の固定負債は、前年度末に比べ3,922億円(5.1%)増加し、8兆1,550億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結の固定負債は、前年度末に比べ1,764億円(11.0%)減少し、1兆4,240億円となりました。また、金融分野を除いたソニー連結の長期借入債務は、前年度末に比べ2,043億円(23.3%)減少し、6,711億円となりました。この減少は、2017年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債が転換したこと、長期借入債務が流動負債へ振替えられたことなどによるものです。2014年度末の金融分野の固定負債は、前年度末に比べ5,671億円(9.2%)増加し、6兆7,623億円となりました。これは、ソニー生命における保有契約高の増加により保険契約債務が増加したことなどによるものです。

 

有利子負債

 2014年度末の短期借入金と長期借入債務を合わせた有利子負債残高合計は、前年度に比べ3,608億円(27.9%)減少し、9,336億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の有利子負債残高合計は、前年度に比べ3,608億円(28.9%)減少し、8,863億円となりました。

 

償還可能非支配持分

 2014年度末の償還可能非支配持分は、前年度に比べ11億円(27.5%)増加し、52億円となりました。

 

当社株主に帰属する資本

 2014年度末の当社株主に帰属する資本は、前年度に比べ589億円(2.6%)増加し、2兆3,171億円となりました。利益剰余金は、当社株主に帰属する当期純損失1,260億円の計上により、前年度末比1,265億円(13.5%)減少の8,138億円となりました。一方、累積その他の包括利益は、主に外貨換算調整額608億円を計上したことにより、前年度末に比べ663億円(14.7%)改善し、3,853億円の損失となりました。なお、2014年度末の当社株主に帰属する資本比率は、前年度末の14.7%から0.1ポイント悪化して14.6%になりました。

 

金融分野を分離した財務情報

 以下の表は、金融分野の財務情報、金融分野を除くソニー連結の財務情報、及びソニー連結の財務情報です。この情報は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則では要求されていませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこの情報を金融分野を除く業績の分析に用いており、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引(非支配持分を含む)を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

 

要約貸借対照表

(単位:百万円)

金融分野

金融分野を除く

ソニー連結

ソニー連結

 

2013年度

2014年度

2013年度

2014年度

2013年度

2014年度

資産

 

 

 

 

 

 

 

流動資産

1,216,517

1,288,614

2,990,587

2,911,602

4,204,886

4,197,901

 

現金・預金及び現金同等物

240,332

207,527

806,134

741,886

1,046,466

949,413

 

有価証券

828,944

933,424

3,622

3,307

832,566

936,731

 

受取手形及び売掛金(貸倒・返品引当金控除後)

7,618

7,266

864,178

893,847

871,040

899,902

 

その他

139,623

140,397

1,316,653

1,272,562

1,454,814

1,411,855

 

繰延映画製作費

275,799

305,232

275,799

305,232

 

投資及び貸付金

7,567,242

8,217,715

381,076

395,189

7,919,011

8,531,353

 

金融ビジネスへの投資(取得原価)

111,476

111,476

 

有形固定資産

17,057

17,305

732,953

720,694

750,010

739,285

 

その他の資産

547,100

566,216

1,640,385

1,497,805

2,184,014

2,060,560

 

繰延保険契約費

497,772

520,571

497,772

520,571

 

その他

49,328

45,645

1,640,385

1,497,805

1,686,242

1,539,989

 

9,347,916

10,089,850

6,132,276

5,941,998

15,333,720

15,834,331

負債及び資本

 

 

 

 

 

 

 

流動負債

2,071,670

2,078,414

2,714,163

2,669,475

4,783,614

4,745,590

 

短期借入金

6,148

6,351

371,606

215,175

377,754

221,525

支払手形及び買掛金

712,829

622,215

712,829

622,215

銀行ビジネスにおける顧客預金

1,890,023

1,872,965

1,890,023

1,872,965

その他

175,499

199,098

1,629,728

1,832,085

1,803,008

2,028,885

固定負債

6,195,243

6,762,310

1,600,384

1,424,028

7,762,850

8,155,024

長期借入債務

44,678

44,460

875,440

671,104

916,648

712,087

未払退職・年金費用

22,404

24,534

262,558

274,220

284,963

298,753

保険契約債務その他

5,848,044

6,381,886

5,848,044

6,381,886

その他

280,117

311,430

462,386

478,704

713,195

762,298

償還可能非支配持分

4,115

5,248

4,115

5,248

金融分野の株主に帰属する資本

1,079,740

1,247,840

金融分野を除くソニー連結の株主に帰属する資本

1,722,743

1,733,233

当社株主に帰属する資本

2,258,137

2,317,077

非支配持分

1,263

1,286

90,871

110,014

525,004

611,392

9,347,916

10,089,850

6,132,276

5,941,998

15,333,720

15,834,331

 

投資有価証券

 売却可能証券及び満期保有目的証券に区分されるものの未実現評価損益は次のとおりです。

 

項目

2015年3月31日現在(単位:百万円)

取得原価

未実現

評価益

未実現

評価損

公正価値

金融ビジネス:

 

 

 

 

売却可能証券

 

 

 

 

負債証券

 

 

 

 

ソニー生命

994,629

152,019

△109

1,146,539

ソニー銀行

698,822

17,329

△1,028

715,123

その他

38,609

91

△9

38,691

持分証券

 

 

 

 

ソニー生命

13,701

16,458

30,159

ソニー銀行

その他

730

1,819

2,549

満期保有目的証券

 

 

 

 

負債証券

 

 

 

 

ソニー生命

4,891,826

826,535

△103

5,718,258

ソニー銀行

8,285

348

8,633

その他

69,184

8,991

78,175

6,715,786

1,023,590

△1,249

7,738,127

金融ビジネスを除くその他のビジネス:

 

 

 

 

売却可能証券

62,684

109,154

△751

171,087

満期保有目的証券

62,684

109,154

△751

171,087

 

 

 

 

 

連結合計

6,778,470

1,132,744

△2,000

7,909,214

 

 2015年3月31日現在、ソニー生命が保有する負債証券の未実現評価損の総額は2億円でした。ソニー生命は、原則として、国内外の公社債に投資しており、その多くはStandard & Poor's Ratings Services(以下「S&P」)、Moody's Investors Service(以下「ムーディーズ」)等の格付け会社によりBBB、又は同等以上に格付けされています。

 2015年3月31日現在、ソニー銀行が保有する負債証券の未実現評価損の総額は10億円でした。このうち12ヵ月超継続して未実現評価損の状況にある有価証券に関するものは6.2%です。ソニー銀行は、原則として、日本の国債、社債及び外国債券に投資しており、その多くはS&P、ムーディーズ等の格付け会社によりBBB、又は同等以上に格付けされています。

 これらの未実現評価損は多数の有価証券から構成されており、個々の有価証券の未実現評価損に金額的な重要性はありません。さらに、個々の公正価値の下落金額及び下落率とも僅少であり、公正価値の下落は一時的であると判定されていることから、これらの未実現評価損を認識した有価証券の中に、減損の基準に合致したものはありません。

 2015年3月31日現在、ソニー生命が保有する償還期日を有する有価証券のうち、未実現評価損(2億円)を有するものの満期日は、以下のとおりです。

 

1年以内                    100.0%

1年超5年以内               -

5年超10年以内         -

10年超                     -

 

 2015年3月31日現在、ソニー銀行が保有する償還期日を有する有価証券のうち、未実現評価損(10億円)を有するものの満期日は、以下のとおりです。

 

1年以内                     41.9%

1年超5年以内              43.4%

5年超10年以内         7.4%

10年超                    7.3%

 

 2013年度及び2014年度において、ソニー生命が計上した売却可能証券の実現利益(純額)は、それぞれ4億円及び93億円です。

 ソニーは通常の事業において、多くの非公開会社の株式を長期の投資有価証券として保有し、これらは投資有価証券その他に含まれています。2015年3月31日におけるこれらの非公開会社に対する投資の簿価合計は650億円です。非上場会社の持分証券は公正価値が容易に算定できない場合、主に取得原価で計上されています。非上場会社に対する投資の価値が下落したと評価され、その下落が一時的でないと判断される場合は直ちに減損を認識し、公正価値まで評価減を行います。

 2013年度及び2014年度において実現した減損は、総額でそれぞれ18億円及び9億円計上されました。このうち、2013年度及び2014年度において、それぞれ2億円及び1億円が、金融分野の子会社により金融ビジネス収入として計上されています。金融分野の子会社以外の実現した減損額は、主として金融分野以外の戦略投資に関するもので、その他の費用として計上されています。この戦略投資は、主にソニーが新技術の開発及びマーケティングのために戦略的関係を有する日本及び米国所在の企業に関するものです。これらの減損の計上は、過去2年間において、これら新技術の開発及び販売に成功しなかったため、これらの企業の業績が以前の見通しより悪化したことにより、これらの企業の公正価値の下落が一時的でないと判断されたことにもとづくものです。個々の減損につき、金額的に重要性のあるものはありません。

 有価証券の減損が生じたと判断された場合には、その公正価値にもとづく価額まで評価減を行います。活発な市場における取引価格が入手可能な有価証券の公正価値は、減損の判断が行われた時点での未調整の取引価格にもとづき測定されます。前述以外の有価証券の公正価値は通常、類似特性を持った有価証券の取引価格にもとづき測定され、もしくは、価格決定モデル、割引キャッシュ・フロー法、又は市場参加者が価格決定に使用するであろう前提に関するマネジメントの重要な判断もしくは見積りを必要とする類似評価手法を用いて算定されます。過去2年間において計上された減損は、個々の有価証券に固有な要因及び状況によるもので、他の有価証券に対して重要な影響を与えるものではありません。

 金融分野の投資額は主にソニー生命とソニー銀行により構成されています。2015年3月31日現在、ソニー生命、ソニー銀行の投資額はそれぞれ金融分野全体の投資額の約89%及び約9%を占めています。

 

 

借入債務、オペレーティング・リースによる最低賃借料、契約債務及び偶発債務

 2015年3月31日現在におけるソニーの既発債務及び契約債務は以下のとおりです。(「注記」は、連結財務諸表注記)

 

項目

期限別支払額(単位:百万円)

合計

1年未満

1年以上

3年未満

3年以上

5年未満

5年以上

 

既発債務及び契約債務

 

 

 

 

 

 

短期借入債務(注記12)

62,008

62,008

 

長期借入債務(注記9、12)

 

 

 

 

 

 

キャピタル・リース債務

66,880

37,413

17,987

8,074

3,406

 

その他長期借入債務

804,724

122,104

313,041

345,573

24,006

 

その他長期借入債務に係る利息

26,578

8,048

11,148

4,646

2,736

 

オペレーティング・リース取引による最低賃借料(注記9)

286,464

60,082

78,829

38,908

108,645

 

契約債務(注記28)

 

 

 

 

 

 

映画作品及びテレビ番組の製作又は配給権購入のための予定支払額

126,925

58,954

59,857

8,114

 

音楽アーティストならびに音楽ソフトやビデオの制作・販売会社との長期契約

63,479

24,816

21,768

8,314

8,581

 

広告宣伝の権利に関する長期スポンサーシップ契約

26,779

7,159

17,020

2,050

550

 

その他の契約債務

172,158

116,176

35,711

15,608

4,663

 

生命保険ビジネスにおける保険契約債務その他及び契約者勘定(注記11) *

17,642,136

406,494

910,080

987,703

15,337,859

 

総未認識税務ベネフィット(注記22) **

157,345

1,414

 

合計

19,435,476

904,668

1,465,441

1,418,990

15,490,446

 

*  生命保険ビジネスにおける保険契約債務その他及び契約者勘定の期限別支払額は、保険契約者等に対する将来の予測支払額です。これらの支払額は罹患率、死亡率及び契約脱退率等の予測にもとづいて算定されています。上記の金額は割引現在価値ではありません。上記の合計金額の17兆6,421億円は、主として金銭の時間的価値の違いにより、連結貸借対照表の計上額である6兆3,387億円より大きくなっています。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『11 保険関連科目』参照)

** 総未認識税務ベネフィットの合計額は、未認識税務ベネフィットに関する会計基準にもとづく総未認識税務ベネフィットに関する負債を示しています。ソニーは、この負債のうち14億円は、1年以内に解決する
と予想しています。それ以外の残高の1,559億円については、様々な税務当局との合意の時期の不確実性により、その解決時期を合理的に見積もることはできません。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『22 法人税等』参照)

 

 以下の項目は、上記の表及び下記の2015年3月31日現在における契約債務の総額には含まれていません。

• 将来における年金支払の合計額については、現時点では確定できないため、含まれていません。なお、ソニーは2015年度において、給付建年金制度に対して日本国内制度で約120億円、海外制度で約50億円を拠出する予定です。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『16 年金及び退職金制度』参照)

• 金融子会社が提供する、顧客に対する貸付契約にもとづく貸付の未実行残高は、現時点では顧客による借入金額を予測できないため、上記の表には含まれていません。なお、2015年3月31日現在、これらの貸付未実行残高は約254億円です。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『28 契約債務、偶発債務及びその他』参照)

• 特定の部品組立業者及び生産受託業者からの購入は、ソニーにおける製造のための供給の継続及び最善の価格を達成するために通常の業務過程に組み込まれており、典型的な拘束力を有する購入義務ではないことから含まれていません。購入義務は、ソニーに対して法的拘束力を有する、物品あるいはサービスの購入に関する契約義務として定義されます。これらの義務には購入数量や価格、取引時期に関する条項など、重要な条項が含まれますが、違約金の支払をともなわずに解約できる契約は含まれません。購入には、ソニーが特定の部品組立業者との間で締結している、これらの部品組立業者のために部品を含む物品を調達し、関連する再購入の際に支払から控除する契約が含まれます。これにより、在庫リスクを最小化する、ソニーのフレキシブルなサプライチェーン・マネジメントと、これらの会社との間における相互に利点のある調達関係の実現が可能となります。業界の慣行にしたがい、ソニーが提供する需要予測や生産計画にもとづき、部品組立業者から技術的基準を満たす部品の購入を行っています。

 

 ソニーはこれらの資金需要のために、保有資金やそれぞれのビジネスの営業活動から得た資金を充当し、可能であればグループ内資金融通を行った上、必要があればCPプログラム、社債発行や銀行のクレジットラインにもとづき資金を調達します。

 

 訴訟及び製品保証を含む保証債務については、「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『28 契約債務、偶発債務及びその他』をご参照ください。

 

オフバランス取引

 ソニーは流動性と資金調達手段の確保、及びクレジットリスクを軽減するためにオフバランス取引を行っています。

 これらの取引は、ソニーが売掛債権に対する支配を放棄したことから、金融資産の譲渡に関する会計基準にもとづき売却として会計処理されます。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『7 金融資産の移転』参照)また、一部の売掛債権売却プログラムには変動持分事業体(以下「VIE」)が関与していますが、ソニーは第一受益者ではないためこれらのVIEを連結対象とはしていません。(「第5 経理の状況」連結財務諸表注記『24 変動持分事業体』参照)

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フロー:2014年度において営業活動から得た現金・預金及び現金同等物(純額)は、前年度比905億円(13.6%)増加し、7,546億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、3,037億円の受取超過となり、前年度比464億円(18.1%)の受取の増加となりました。これは主に、非資金調整項目(有形固定資産の減価償却費及び無形固定資産の償却費、その他の営業損、繰延税額、ならびに持分法による投資損失)を加味した後の当期純利益が、前年度に比べ改善したことによるものです。加えて、前年度に比べ、棚卸資産の減少額が拡大したこと、受取手形及び売掛金が増加から減少へ転じたことなどのキャッシュ・フローを改善させる要因がありました。一方で、支払手形及び買掛金が増加から減少に転じたことなどのキャッシュ・フローを悪化させる要因もありました。

 金融分野では4,597億円の受取超過となり、前年度比462億円(11.2%)の増加となりました。この増加は、主にソニー生命における保有契約高の拡大にともなう保険料収入の増加によるものです

 

 投資活動によるキャッシュ・フロー:2014年度において投資活動に使用した現金・預金及び現金同等物(純額)は、前年度比709億円(10.0%)減少し、6,396億円となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、1,036億円の支払超過となり、前年度比94億円(9.9%)の支払の増加となりました。これは、主に固定資産や投資有価証券の売却にともなう収入が前年度に比べ減少したことによるものです。2014年度の固定資産や投資有価証券の売却には、ソニー㈱本社の土地のソニー生命への売却(この取引はセグメント間取引)、御殿山テクノロジーセンターの土地及び建物の一部売却ならびに㈱スクウェア・エニックス・ホールディングスの株式の売却が含まれます。

 金融分野では5,369億円の支払超過となり、前年度比793億円(12.9%)の支払の減少となりました。この減少は、主にソニー生命における投資及び貸付が前年度に比べて減少したことに加え、投資有価証券の売却にともなう収入が前年度に比べて増加したことによるものです。一方で、ソニー生命によるソニー㈱本社の土地の購入(この取引はセグメント間取引)といったキャッシュ・フローを悪化させる要因もありました。この取引は連結財務諸表では相殺消去されます。

 金融分野を除く営業活動及び投資活動による連結キャッシュ・フローの2014年度における受取超過の合計*は、前年度比371億円(22.8%)増加し、2,000億円の受取超過となりました。

 

 財務活動によるキャッシュ・フロー:2014年度において財務活動による現金・預金及び現金同等物(純額)は、前年度の2,079億円の受取超過に対し、2,632億円の支払超過となりました。

 金融分野を除いたソニー連結では、3,154億円の支払超過となり、前年度比2,752億円(683.9%)の支払の増加となりました。これは、主に前年度に個人向け普通社債の発行を行ったことに加え、2014年度において、前年度に比べ長期借入の返済額(純額)が増加したことによるものです。

 金融分野では444億円の受取超過となり、前年度比1,971億円(81.6%)の受取の減少となりました。これは、主にソニー生命における顧客預り金の増加幅が前年度に比べて縮小したことによるものです。

 

 現金・預金及び現金同等物:以上の結果、為替変動の影響を加味した2015年3月末の現金・預金及び現金同等物期末残高は9,494億円となりました。金融分野を除いたソニー連結の2015年3月末における現金・預金及び現金同等物期末残高は、2014年3月末に比べ642億円(8.0%)減少し、7,419億円となりました。2014年12月末比では990億円(15.4%)の増加となりました。ソニーは各子会社に資金余剰、もしくは資金不足が生じた場合にはSGTSを通じてグローバルに資金の貸し借りを行うことでグループ内の資金を有効活用するシステムを整えています。一部の地域において資金の移動が現地の法律により制限されることはありますが、影響を受ける金額は軽微と考えています。(「第2 事業の状況」『7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析』の『(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析』の“キャッシュ・マネジメント”を参照)なお、ソニーではこの他に円換算で総額7,766億円の未使用の金融機関とのコミットメントラインを保持しており、十分な流動性を継続的に確保していると考えています。金融分野の2015年3月末における現金・預金及び現金同等物期末残高は、2014年3月末に比べ328億円(13.6%)減少し、2,075億円となりました。2014年12月末比では830億円(28.6%)の減少となりました。

 

* ソニーは、その経営指標として用いる「金融分野を除く営業活動及び投資活動による連結キャッシュ・フローの合計」を開示情報に含めています。この情報は、金融分野を除く事業が流動性の保持、借入金の返済、及び配当金の支払いに必要な資金を確保できるかを評価するために重要な情報と考えています。この情報は金融分野を分離したキャッシュ・フロー情報をもとに作成しています。これらのキャッシュ・フロー情報はソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則で要求されているものではなく、また米国会計原則に則って作成されているものではありません。金融分野の大部分を構成する、日本で上場している金融持株会社のSFHと傘下の子会社は独自に流動性を確保しているため、金融分野のキャッシュ・フローはこの情報に含まれていません。この情報は他の企業の開示情報と比較できない可能性があります。また、この指標は負債返済に必要な元本返済支出の控除は行っておらず、裁量支出に使用可能な残余キャッシュ・フローを表しているものではないという限界があります。したがって、ソニーはこの情報を連結キャッシュ・フロー計算書に対する補足情報として、投資や利用可能な融資枠、及び流動性に関する情報とあわせて開示しており、連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。

 連結キャッシュ・フロー計算書と「金融分野を除く営業活動及び投資活動による連結キャッシュ・フローの合計」の差異の照合調整表は以下のとおりです。

科目

2013年度

金額(億円)

2014年度

金額(億円)

連結キャッシュ・フロー計算書上の営業活動から得た

現金・預金及び現金同等物(純額)

6,641

7,546

連結キャッシュ・フロー計算書上の投資活動に使用した

現金・預金及び現金同等物(純額)

△7,105

△6,396

 

△464

1,150

控除:金融分野における営業活動から得た

現金・預金及び現金同等物(純額)

4,136

4,597

控除:金融分野における投資活動に使用した

現金・預金及び現金同等物(純額)

△6,162

△5,369

消去 **

67

78

金融分野を除く営業活動及び投資活動から得た

連結キャッシュ・フローの合計

1,629

2,000

 

**  消去は主にセグメント間の配当金の支払いです。

 

金融分野を分離したキャッシュ・フロー情報(監査対象外)

 以下の表は、金融分野のキャッシュ・フロー情報、金融分野を除くソニー連結のキャッシュ・フロー情報、及びソニー連結のキャッシュ・フロー情報です(監査対象外)。このキャッシュ・フロー情報は、ソニーの連結財務諸表の作成に用いられた米国会計原則では要求されていませんが、金融分野はソニーのその他の分野とは性質が異なるため、ソニーはこの情報を金融分野を除く業績の分析に用いており、このような表示が連結財務諸表の理解と分析に役立つと考えています。なお、以下の金融分野と金融分野を除くソニー連結の金額には両者間の取引(非支配持分を含む)を含んでおり、これらの相殺消去を反映した後のものがソニー連結の金額です。

 

要約キャッシュ・フロー計算書

 

金融分野

金融分野を除く

ソニー連結

ソニー連結

 

2013年度

2014年度

2013年度

2014年度

2013年度

2014年度

科目

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

金額(百万円)

営業活動から得た現金・預金

及び現金同等物(純額)

413,555

459,719

257,224

303,659

664,116

754,640

投資活動に使用した現金・預金及び現金同等物(純額)

△616,223

△536,920

△94,279

△103,630

△710,502

△639,636

財務活動から得た(財務活動に使用した)現金・預金及び現金同等物(純額)

241,450

44,396

△40,236

△315,415

207,877

△263,195

為替相場変動の現金・預金及び現金同等物に対する影響額

58,614

51,138

58,614

51,138

現金・預金及び現金同等物純増加・減少(△)額

38,782

△32,805

181,323

△64,248

220,105

△97,053

現金・預金及び現金同等物

期首残高

201,550

240,332

624,811

806,134

826,361

1,046,466

現金・預金及び現金同等物

期末残高

240,332

207,527

806,134

741,886

1,046,466

949,413

 

(5)資本の財源及び資金の流動性についての分析

 以下の基本方針及び数値情報は、独自に流動性を確保している金融分野を除いたソニーの連結事業にもとづいて説明しています。なお、金融分野については当該項目の最後に別途説明しています。

 

流動性マネジメントと資金の調達

 ソニーは、事業活動に必要な流動性を保ちながら健全なバランスシートを維持することを財務の重要な目標と考えています。ソニーは、現金・預金及び現金同等物(以下「現預金等」。ただし、国の規制等で資金の移動に制約があるものを除く)及びコミットメントラインの未使用額を合わせた金額を流動性として位置づけており、連結月次売上高の50%及び半年以内に期限が到来する債務返済額の合計額を、十分にカバーできる流動性を通年にわたり維持することを基本方針としています。

 流動性の保持に必要な資金は、営業活動及び投資活動(資産売却を含む)によるキャッシュ・フローの合計及び現預金等でまかないますが、ソニーは必要に応じて金融・資本市場からの資金調達を行う能力も有しています。また金融・資本市場の流動性がなくなった場合でも、ソニーは現預金等及び金融機関とのコミットメントラインを使用することによって十分な流動性を維持することができると現時点では考えています。

 ソニーは、主として当社及びSGTSを通じて、金融・資本市場からの資金調達を行っています。

 当社及びSGTSは運転資金需要に対応するため、市場環境によって左右されることはありますが、日本・米国・欧州の各市場へアクセス可能なコマーシャルペーパー(以下「CP」)のプログラム枠を有しています。2014年度末時点で当社とSGTSは、円換算で合計8,605億円分のCPプログラム枠を保有していますが、2014年度は年間を通じてCPの発行実績はありません。

 ソニーは通常は上記の普通社債、CPに加え、シンジケートローンを含めた銀行借入などの手段を通じて調達を行っています。市場が不安定な混乱状況に陥り、前述の手段により十分な資金調達ができなくなった場合に備え、ソニーは、多様な金融機関との契約によるコミットメントラインも保持しています。2014年度末の未使用のコミットメントラインの総額は円換算で7,766億円です。未使用のコミットメントラインの内訳は、日本の銀行団と結んでいる4,750億円の円貨コミットメントライン(2016年11月満期)、日本の銀行団と結んでいる1,500百万米ドルの複数通貨建コミットメントライン(2018年12月満期)、外国の銀行団と結んでいる1,010百万米ドルの複数通貨建コミットメントライン(2015年4月満期。2015年4月3日、金額を475百万米ドルに変更し、2016年3月満期に更新。)であり、全て当社及びSGTSが借入主体となっています。これらの目的は、金融・資本市場の混乱期においても機動的・安定的な資金調達を可能とし十分な流動性を確保することです。

 グループ全体の主要な資金調達に関する金融機関との契約において、ソニーの格付けが低下した場合に、強制的に早期弁済を求められるものはありません。また、これら契約のうち一部のコミットメントライン契約については、ソニーの格付けにより借入コストが変動する条件が含まれているものがありますが、未使用のコミットメントラインからの借入を禁ずる条項を含んでいるものはありません。また、ほとんどの借入金に使途制限はありませんが、例外として一部に米国連邦準備制度理事会などの規制に従い、米国の証券取引所に上場されている有価証券や米国の店頭市場において取引されている有価証券の取得に関して使途制限があります。

 

格付け

 ソニーは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、金融・資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、安定した一定水準の格付けの維持を重要な経営目標の一つと位置づけています。

 ソニーは、グローバルな資本市場から円滑な資金調達を行うにあたり、スタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン㈱(以下「S&P」)及びムーディーズ・ジャパン㈱(以下「ムーディーズ」)の2社より格付けを取得しています。また、日本国内の資本市場からの調達にあたっては、日本の格付会社である㈱格付投資情報センター及び㈱日本格付研究所からも格付けを取得しています。

 またソニーは現時点において、引き続き金融・資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持していると考えています。(将来の格付け低下によるリスクについては、「第2 事業の状況」『4 事業等のリスク』参照)

 

キャッシュ・マネジメント

 ソニーはSGTSを中心にグローバルな資金管理を行っています。資本取引に規制があり資金移動を制限されている国や地域は一部存在しますが、大部分の子会社における資金の過不足は、SGTSにより純額ベースで運用又は調達しています。ソニーは資金の効率化をめざし、各子会社に資金余剰が出た場合はSGTSに預け、また各子会社に資金不足が生じた場合にはSGTSを通じて資金の貸し借りを行うことで、余剰資金を活用し、外部借入を削減することができます。関係会社間の効率的な資金移動が制限されている国や地域では、ソニーはSGTSの外に資金を残していますが、必要な流動性資金はキャッシュ・フローや外部からの借入(もしくはその両方)によって調達しています。ソニーは、海外に所在する移動を制限されている資金が、ソニー全体の流動性や財務状況ならびに業績に重大な影響を与えるとは考えていません。

 

金融分野

 SFH、ソニー生命、ソニー損保、ならびにソニー銀行の各マネジメントは、業務の遂行にともなう支払義務を履行するのに十分な流動性を確保することが重要だと認識しています。ソニー生命、ソニー損保、ならびにソニー銀行は、法令(保険業法及び銀行法など)や金融庁及びその他関係規制当局の定める各種規制を遵守することに加え、それに準拠した社内規程を制定、運用しながら、十分な現預金等を準備し、支払能力を確保することに努めています。ソニー生命及びソニー損保は、受取保険料を主な資金の源泉とし、有価証券を中心とした投資を行うにあたり、保険金等の円滑な支払等に十分な水準の流動性を確保しています。ソニー銀行は、顧客からの円貨・外貨建て預金を主な資金の源泉とし、住宅ローンを中心とする貸出と主に市場性のある有価証券投資を行う中で、円滑な決済等に必要な水準の流動性を確保しています。外貨建て顧客預金で得られた資金は、同じ通貨建の金融商品に投資されています。

 なお、金融分野の子会社は、保険業務、銀行業務の公共性から、その信用を維持し、契約者や預金者の保護を確保することが保険業法、銀行法で定められております。したがって、金融分野の子会社と金融分野以外のソニーグループ会社間で資金の貸借を行うことは厳格に制限されており、金融分野の子会社は、上記のSGTSを介したグローバルなキャッシュ・マネジメントからも隔離されています。