第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

当連結会計年度における経済環境を顧みますと、景気は総じて緩やかな回復基調が続きました。地域別に見ますと、米国では個人消費が好調に推移し、雇用者数も堅調に伸びたことから、景気拡大が続きました。欧州においては、景気は持ち直しの動きが続いているものの、ロシア経済の不振、財政問題の再燃など不透明感が拭えない状況が続いています。中国は成長率が鈍化しましたが、インドでは景気が持ち直し、ASEAN地域なども緩やかな回復が続きました。日本は、消費税率引き上げ後の落ち込みがあったものの、円安効果による輸出環境の改善、政府による各種政策効果や原油安などもあり、景気は総じて緩やかな回復基調で推移しました。

このような状況の中、エプソンの主要市場につきましては、以下のとおりとなりました。

インクジェットプリンターの需要は、前期に対し、欧州については堅調に推移したものの、消費税率引き上げにともなう個人消費の回復の遅れから日本で縮小したほか、北米も若干減少しました。大判インクジェットプリンターの需要は、日本が若干減少したものの、欧州が横ばいとなったほか、米州については堅調に推移しました。シリアルインパクトドットマトリクスプリンター(SIDM)の需要は、米州・欧州に加え、徴税需要が一巡した中国も縮小傾向となりました。POSシステム関連製品の需要は、米州・欧州ともに前期並みとなりました。プロジェクターの需要は、上期におけるサッカーワールドカップ特需を含め、米州およびアジアで増大するなど、堅調に推移しました。

電子デバイス製品の主要なアプリケーションの市場では、携帯電話の需要は、従来型は減速が続いた一方、スマートフォンの需要は堅調に推移しました。デジタルカメラ市場の需要は低調でした。

精密機器製品に関連する市場では、ウオッチの需要は、日本が消費税率引き上げにともなう駆け込み需要の反動から高価格品を中心に一時的に縮小しましたが、後半には緩やかに回復してきました。米州と欧州は堅調に推移しました。また、産業用ロボットの需要はスマートフォンや自動車関連向けを中心に増加し、ICハンドラーの需要も堅調に推移しました。

このような状況のもとで、エプソンは、2013年3月に「SE15後期 新中期経営計画」(以下「新中期計画」という。)を策定し、新中期計画の3カ年(2013年度~2015年度)においては、長期ビジョン「SE15」で掲げた戦略の基本的な方向性は堅持しつつ、「売上高成長を過度に追わず、着実に利益を生み出すマネジメントの推進」を基本方針とし、安定的な利益およびキャッシュの創出を最優先した経営を行っており、そのために、既存事業領域では商品構成の見直しとビジネスモデルの転換を図り、新規事業領域では積極的な市場開拓に取り組んでまいりました。

なお、当連結会計年度の米ドルおよびユーロの平均為替レートはそれぞれ109.93円および138.77円と前年度に比べ、米ドルでは10%の円安、ユーロでは3%の円安で推移しました。

以上の結果、新中期計画の2年目となる当連結会計年度の業績につきましては、売上収益は1兆863億円(前期比7.7%増)、事業利益は1,012億円(同12.4%増)、営業利益は1,313億円(同65.2%増)、税引前利益は1,325億円(同70.0%増)、当期利益は1,127億円(同33.6%増)となりました。

 

※ 事業利益は、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出しております。

 

報告セグメントごとの業績は、次のとおりです。

 

(情報関連機器事業セグメント)

プリンティングシステム事業の売上収益は、為替影響もあり増加となりました。製品別の内容は以下のとおりです。

インクジェットプリンターは、インクカートリッジモデルが数量減少となったものの、大容量インクタンクモデルが、商品ラインアップ強化によりエマージングエリアを中心に大幅な売上収益の拡大を果たしました。また本格的なビジネス領域への参入も進み、ビジネス系商品ラインアップが充実すると同時に、新しいビジネスモデルとして、機器・インク・保守サービスを一定の料金でご利用いただける課金ビジネスを日本で開始しました。さらに消耗品につきましても、プリンター本体の市場稼働台数の構成改善効果により売上増となりました。

大判インクジェットプリンターは、大判写真・色校正(プルーフ)印刷市場向け製品が引き続き好調で、業務フォト市場は、小型で高性能な新機種により本体・インクとも売上が増加しました。インクジェット捺染市場はアパレルから小物グッズ、インテリア系まで応用領域が拡大し、またカスタムやオリジナルのTシャツ作成の需要が高まったため布地に直接印刷できる製品の普及が進み、販売地域の拡大が進みました。

ページプリンターは、高付加価値製品中心へ販売を絞り込んだことにより数量減少となった結果、売上は減少しました。

SIDMは、徴税需要が一巡した中国に加え、米州・欧州などで数量減少となりましたが、為替による増収影響およびアジアにおける低価格機種の販売増により売上は前期並みとなりました。

POSシステム関連製品は、欧州を中心とした数量増加、オンデマンドでインハウス印刷を実現するラベルプリンターの拡販により売上増となりました。

ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は、為替影響もあり増加となりました。液晶プロジェクターは、高機能製品ラインアップの拡充が進み、またサッカーワールドカップ特需と教育市場向け販売増が寄与し、米州やアジアにおいて大幅に販売を伸ばし売上増となりました。

情報関連機器事業セグメントのセグメント利益につきましては、主要製品の売上増加に為替影響も加わり増益となりました。

以上の結果、情報関連機器事業セグメントの売上収益は9,072億円(前期比7.9%増)、セグメント利益は1,336億円(前期比8.0%増)となりました。

 

(デバイス精密機器事業セグメント)

マイクロデバイス事業の売上収益は、為替による増収影響もあり増加となりました。製品別の内容は以下のとおりです。

水晶デバイスは、ATおよび音叉型の価格下落が進行したことから売上減少となりました。半導体は、内需およびシリコンファンドリーを含む外販向けの数量増加により売上増加となりました。

プレシジョンプロダクツ事業の売上収益は、ウオッチの高価格品の販売増加による平均販売単価の上昇効果や為替影響などにより増加となりました。

デバイス精密機器事業セグメントのセグメント利益につきましては、為替による増収影響もあり増益となりました。

以上の結果、デバイス精密機器事業セグメントの売上収益は1,562億円(前期比5.1%増)、セグメント利益は148億円(前期比36.7%増)となりました。

 

(センサー産業機器事業セグメント)

センサー産業機器事業セグメントの売上収益は増加となりました。製品別の内容は以下のとおりです。

FA機器では、産業用ロボットはアジア向けの受注増により売上増加となったほか、ICハンドラーはスマートフォン向け半導体業界からの受注増があり売上増加となりました。

センサー産業機器事業セグメントのセグメント利益につきましては、主に産業用ロボットの売上増加により増益となりました。

以上の結果、センサー産業機器事業セグメントの売上収益は233億円(前期比44.6%増)、セグメント損失は90億円(前期は99億円のセグメント損失)となりました。

センサー産業機器事業セグメントについては、新規事業領域として新商品の開発や市場開拓などに注力しており、先行的な投資や費用が発生しているため、セグメント損失を計上しております。エプソンは、センサー産業機器事業を、強みを生かし独創の商品・サービスをお客様にお届けすることができる重要領域として位置づけ、今後も強化に取り組んでまいります。

 

(その他)

その他の売上収益は13億円(前期比4.2%増)、セグメント損失は3億円(前期は2億円のセグメント損失)となりました。

 

(調整額)

報告セグメントに帰属しない新規事業および基礎研究に関する研究開発費や本社機能に係る費用を中心とした販売費及び一般管理費の計上などにより、報告セグメントの利益の合計額との調整額が△378億円(前期の調整額は△343億円)となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、1,088億円の収入(前期は1,148億円の収入)となりました。これは当期利益が1,127億円であったのに対し、減価償却費及び償却費の計上449億円などによる増加要因があった一方で、退職給付に係る負債の減少253億円、棚卸資産の増加192億円などによる減少要因があったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産および無形資産の取得による支出427億円があったものの、一部の所有資産の売却などにより、327億円の支出(前期は412億円の支出)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期・長期借入金および社債の純減421億円ならびに配当金の支払128億円などにより、553億円の支出(前期は565億円の支出)となりました。

以上の結果、当連結会計年度の現金及び現金同等物の期末残高は、2,453億円(前期は2,115億円)となりました。

 

(3)並行開示情報

 IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに関する項目との差異に関する事項

(退職後給付に係る費用)

 エプソンは、日本基準の下で、発生した数理計算上の差異および過去勤務費用を一定の期間で償却しておりました。IFRSでは、確定給付制度の負債または資産の純額の再測定は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。過去勤務費用は、制度改訂または縮小が発生した時、あるいは関連するリストラクチャリング費用または解雇給付を認識した時の、いずれか早い方の期において純損益として認識しております。また、退職給付債務の数理計算上の仮定が相違するため、退職給付費用を追加認識しております。

 この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、前連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費が6,435百万円減少、その他の包括利益が13,086百万円増加しております。また、当連結会計年度の売上原価、販売費及び一般管理費および金融費用が6,247百万円増加、その他の営業収益が30,071百万円増加、その他の包括利益が1,512百万円減少しております。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

前期比(%)

情報関連機器事業(百万円)

886,416

107.9

デバイス精密機器事業(百万円)

152,960

111.4

センサー産業機器事業(百万円)

23,973

159.3

 報告セグメント計(百万円)

1,063,350

109.2

その他(百万円)

592

78.9

合計(百万円)

1,063,942

109.2

(注)1.上記金額は、販売価格により示しており、セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.上記金額には、外注製品仕入高等が含まれております。

 

(2)受注実績

 エプソンでは、製品の性質上、原則として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

前期比(%)

情報関連機器事業(百万円)

906,701

107.8

デバイス精密機器事業(百万円)

150,292

104.4

センサー産業機器事業(百万円)

23,182

145.2

 報告セグメント計(百万円)

1,080,176

107.9

その他(百万円)

808

90.6

合計(百万円)

1,080,984

107.9

(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。

2.上記金額には、消費税等は含まれておりません。

3.総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。

3【対処すべき課題】

(1)対処すべき課題

エプソンは、2013年3月に「SE15後期 新中期経営計画」(以下「新中期計画」という。)を策定しました。新中期計画の3カ年(2013年度~2015年度)においては、長期ビジョン「SE15」で掲げた戦略の基本的な方向性は堅持しつつ、「売上高成長を過度に追わず、着実に利益を生み出すマネジメントの推進」を基本方針とし、安定的な利益およびキャッシュの創出を最優先した経営を行っており、そのために、既存事業領域では商品構成の見直しとビジネスモデルの転換を図り、新規事業領域では積極的な市場開拓に取り組む方針です。そして、エプソンは、2016年度からの次期中期計画において、「コンシューマー向けの画像・映像出力機器中心の企業」から「プロフェッショナル向けを含む新しい情報ツールや設備をクリエイトし、再び力強く成長する企業」へと脱皮することを目指し、新中期計画の3カ年ではその基礎を築き、着実に歩みを進めることとしています。

エプソンを取り巻く経営環境を概観すると、新興国の一部では経済成長に鈍化傾向が見られる一方で、米国を中心とする先進国の景気はおおむね回復傾向にあり、不透明感を残しながらも世界経済は全般的には引き続き成長する見通しです。また、持続可能な産業・経済活動への転換などが進展するなか、こうした動きを背景として社会の変容が進むことにより、エプソンが実現すべきお客様価値も変わっていくものと考えられます。

エプソンは、このような経営環境のもと、引き続き独創のコア技術に基づき強みを発揮できる以下の4つの領域に経営資源を集中し、事業領域の拡大や次世代を担う新規事業の強化を図ることにより、再び力強く成長する企業への転換を進めます。そのうえで、資本コストを一層意識した経営を実践することにより、できるだけ早いタイミングでROS(事業利益※/売上収益)10%、ROE(当期利益/親会社所有者帰属持分)10%以上を継続的に達成することを目指してまいります。

 

※事業利益とは、国際会計基準(IFRS)の適用にあたり、エプソンが独自に開示する利益であり、日本基準の営業利益とほぼ同じ概念の利益です。

 

(各領域での取り組み)

<プリンティング>

プリンティングにおいては、エプソン独自のマイクロピエゾ技術により、新次元のプリンティング環境を創造します。インクジェットプリンターについては、ホーム市場向けに印刷量がより多い傾向にある上位モデルの販売強化などに取り組むほか、引き続き新興国市場のニーズに適応した商品ラインアップの拡充を図ります。また、本格的なオフィス市場向けに最先端のピエゾヘッドを搭載したモデルを順次発売するとともに、新しいビジネスモデルとして課金ビジネスを強化し、競争力のさらなる向上に取り組みます。このほか、屋外看板や食品包装フィルム印刷および捺染印刷などの商業・産業・業務向けプリンティングについても、従来のアナログ印刷からインクジェットプリンターによるデジタル印刷への転換が進むなか、生産工程短縮化や環境負荷低減などといった新たなお客様価値を創出することにより、将来の成長に向けた柱としてさらに強化します。また、ビジネスシステムについては、既存領域でのシェア№1の座を堅持しつつ、新たな需要の開拓により、着実な収益成長を実現してまいります。

 

<ビジュアルコミュニケーション>

ビジュアルコミュニケーションにおいては、マイクロディスプレイ技術による全く新しいビジュアルコミュニケーションを創造します。液晶プロジェクターについては、エプソンはリーディングカンパニーとして高い販売シェアを有していますが、ホームやビジネス向けの既存領域に加え、強化領域である高光束や超短焦点・短焦点モデルでのポジショニングを一層高めるために、ソリューション提案力や販売体制の強化などにより、事業拡大と収益力の向上を図ります。また、スマートグラスについては、人の生活を革新するポテンシャルを持った商品として、シースルーやハンズフリーといった特長を最大限に生かし、コンシューマー向け以外に産業分野でも新たな用途や価値の創出に取り組みます。

 

<生活の質向上>

生活の質向上においては、高精度のセンシング技術により、人々の生活を豊かにする新しい価値を創造します。エプソンは、リスト型のGPS機能付ランニング機器や脈拍計など、新しいセンシング機器による新規ビジネスの創出を進めてきましたが、引き続き半導体技術と水晶デバイス技術の融合によるセンシング技術およびウオッチ事業で培ったノウハウや技術力を生かし、お客様の豊かな生活基盤を実現していきます。今後、多様化する市場に向けた効率的な商品開発体制の構築に取り組み、また、クラウドの技術も組み合わせることにより、健康・スポーツ・医療の分野で人々の豊かな生活に貢献するウエアラブル機器を提供するとともに、設備やインフラの管理などの産業分野においても全く新しい形の、人や生活に密着したデータを可視化・活用する革新的なツールを創出し、新たな成長ドライバーとしてまいります。

 

<ものづくり革新>

ものづくり革新においては、ロボティクス技術により、エプソンはスカラロボットや小型6軸ロボットなどの精密組立てロボットの分野でさまざまな生産現場の自動化に貢献してきました。今後、新興国を中心とする労働人口不足や人件費高騰などといった変化が見込まれるなか、エプソンは、先進のロボティクス技術などにより、今まで自動化が困難であった生産工程での生産性を革新するロボットや生産機器を提供し、次世代のものづくりを実現してまいります。

 

(2)会社の支配に関する基本方針

 当社は、2008年4月30日開催の取締役会において、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を次のとおり定めております。

 

①基本方針の概要

 当社は、当社の株主は市場での自由な取引を通じて決まるものと考えます。したがって、当社の財務および事業の方針の決定を支配することが可能な数の株式を取得する買付提案に応じるか否かの判断は、最終的には株主の皆様のご意思に委ねられるべきものと考えます。

 当社は、企業価値や株主共同の利益を確保・向上させていくためには、役職員が一体となって価値創造に向けて取り組むことや、創業以来の風土を大切にしながら創造と挑戦を続けていくこと、お客様の信頼を維持・獲得していくことが不可欠と考えております。

 しかし、株式の大量取得行為のなかには、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保し、向上させることにならないものも存在します。当社は、このような不適切な株式の大量取得行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適当ではなく、このような者による大量取得行為に対しては必要かつ相当な手段をとることにより、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保する必要があると考えます。

 

②基本方針の実現に資する取組みの概要

1)基本方針の実現に資する特別な取組み

 2013年度を初年度とする「SE15後期 新中期経営計画」では、長期ビジョン「SE15」で掲げた戦略の基本的な方向性は堅持しつつ、「売上高成長を過度に追わず、着実に利益を生み出すマネジメントの推進」を基本とし、安定的な利益およびキャッシュの創出を最優先した経営を行っております。

 今後、エプソンは独自の強みを発揮できる領域に経営資源を集中し、事業領域の拡大や次世代を担う新規事業の強化を図ることにより、再び力強く成長する企業への転換を進めてまいります。

 

2)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 当社は、当社の企業価値・株主共同の利益を確保し、向上させることを目的として、2008年6月の定時株主総会において導入し、2011年6月の定時株主総会において更新した当社株式の大量取得行為に関する対応策について、2014年6月24日の定時株主総会において、旧対応策を形式的な文言の修正をしたうえで更新することについて株主の皆様のご承認をいただきました(以下、更新後のプランを「本プラン」という。)。

 本プランは、当社株券等に対する大量買付が行われた際に、当該買付に応じるべきか否かを株主の皆様が判断し、あるいは当社取締役会が株主の皆様に代替案を提案するために必要な時間および情報を確保するとともに、株主の皆様のために、大量買付者と協議交渉などを行うことを可能とすることにより、当社の企業価値・株主共同の利益に反する大量買付を抑止することを目的としております。具体的には、当社の発行済株式総数の20%以上となる株券等の買付または公開買付けを実施しようとする買付者に、意向表明書ならびに株主の皆様の判断および特別委員会の評価・検討などのため必要かつ十分な情報を事前に当社取締役会へ提出すること、本プランに定める手続きを遵守することを求めております。そのうえで、当該買付行為が、本プランに従わない場合や、当社の企業価値・株主共同の利益を侵害する買付であると判断された場合は、当該買付行為を阻止するための対抗措置を発動するプランとなっております。

 一方、当社取締役会は、対抗措置の発動について、取締役会の恣意的判断を排除するため、独立性の高い社外者などから構成される特別委員会の判断を経ることとしております。特別委員会は、買付内容の検討、当社取締役会への代替案などの情報の請求、株主の皆様への情報開示、買付者との交渉などを行います。特別委員会は、対抗措置発動の要否を当社取締役会に勧告し、当社取締役会はその勧告を最大限尊重し、対抗措置の発動または不発動に関する決議を速やかに行うこととしております。

 

③具体的取組みに対する当社取締役会の判断およびその理由

 上記② 1)に記載した取組みは、当社の企業価値・株主共同の利益を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであり、基本方針の実現に資するものです。

 また、本プランは、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させる目的をもって導入(更新)されたものであり、上記①に記載した基本方針に沿うものです。特に、本プランは、株主総会において株主の皆様のご承認を得たうえで導入(更新)されたものであること、その内容として合理的な客観的発動要件が設定されていること、当社経営陣から独立性の高い者のみから構成される特別委員会が設置されており、対抗措置の発動に際しては必ず特別委員会の判断を経ることが必要とされていること、特別委員会は当社の費用で第三者専門家の助言を得ることができるとされていること、有効期間が導入(更新)から約3年と定められたうえ、取締役会によりいつでも廃止できるとされていることなどにより、その公正性・客観性が担保されており、高度の合理性を有し、企業価値ひいては株主共同の利益に資するものであって、当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。

 

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、エプソンは、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避および発生した場合の対応に努める方針です。

また、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてエプソンが判断したものです。

 

(1)プリンターの売上変動による業績への影響について

2015年3月期における情報関連機器事業セグメントの売上収益9,072億円は、エプソンの連結売上収益1兆863億円の8割強を占めており、そのなかでもホーム市場向けのほか、新興国市場・オフィス市場向けや商業・産業向けのインクジェットプリンターを中心とする各種プリンターとこれらの消耗品が売上収益および利益の多くを占めています。したがって、これらのプリンターおよび消耗品の売上収益が変動した場合には、エプソンの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)他社との競合について

(販売における影響)

エプソンの主力製品であるプリンターやプロジェクターをはじめとする製品全般について、他社との競合の激化により、販売価格の低下や低価格品への需要のシフトおよび販売数量の減少などの影響を受けることがあります。

エプソンでは、これらの状況に対して、各市場での顧客ニーズに対応した製品や高付加価値製品およびサービスの提供に取り組むとともに、設計・開発の効率化やコストダウンなどにより製造コストの削減に努め、かかる販売価格の低下や販売数量の減少に対処していく方針です。

しかしながら、今後、これらの施策が成功する保証はなく、エプソンがかかる販売価格の低下などに効果的に対応できない場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(テクノロジーにおける影響)

エプソンの販売する一部の製品については、他社のテクノロジーと競合しており、例えば、次のような事例があります。

・インクジェットプリンターにおけるエプソンのマイクロピエゾ方式(※1)と他社のサーマルインクジェット方式(※2)との競合

・プロジェクターにおけるエプソンの3LCD(三板透過型液晶)方式(※3)と他社のDLP方式(※4)などとの競合

エプソンは、これらのエプソンの製品において採用している方式について、現時点では競合他社の方式に対する技術的な優位性があると考えていますが、消費者によるエプソンの技術に対する評価が変化した場合や、エプソンの技術と競合するほかの革新的な技術が出現した場合などには、エプソンの競争優位性が損なわれ、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

※1 マイクロピエゾ方式とは、ピエゾと呼ぶ圧電素子を伸縮させて、インク滴をノズルから噴射させるエプソン独自のインクジェット技術をいいます。

※2 サーマルインクジェット方式とは、インクに熱を加えることで発生する気泡の圧力により、インク滴を噴射する技術をいいます。なお、バブルジェット方式といわれることもあります。

※3 3LCD(三板透過型液晶)方式とは、ライトバルブに高温ポリシリコンTFT液晶パネルを用いる方式であり、光源から出射された光を特殊な鏡を使って赤・緑・青の3原色に分離し、各色専用のLCDで映像を作った後、無駄なく再合成し投影します。

※4 DLP方式とは、表示デバイスにDMD(Digital Micromirror Device)を用いる方式です。DMDとは、ミクロンサイズの微極小な鏡が多数並んだ半導体で、1つの鏡が1画素に対応し光源からの光を反射することで映像を投影します。なお、DLPおよびDMDは、米国テキサス・インスツルメンツ社の登録商標です。

(新たな競合の発生)

エプソンは、現在、高度な技術力、豊富な資金力または強固な財務基盤を有する大企業あるいは市場における認知度、供給力または価格競争力を有する国内外の企業との間で競合関係にありますが、これらに加え、将来、ほかの企業が、ブランド力、技術力、資金調達力、マーケティング力、販売力および低コストの生産能力などを生かしてエプソンの事業領域へ新規参入してくる可能性もあります。

 

(3)経営環境などの急激な変化について

エプソンは、現在、独自の強みを生かすことが可能であるとともに、今後の拡大が見込まれる分野として、「プリンティング」「ビジュアルコミュニケーション」「生活の質向上」「ものづくり革新」の4つの領域に経営資源を集中し、持続的な成長を実現する事業基盤の構築・強化に取り組んでいます。この実現に向けて、エプソンでは、長期ビジョンや中期的な経営計画などに基づく施策を展開していますが、技術の優位性が競争力にとって大変重要な要素であると考えており、創業以来の独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独創のコア技術を進化させるとともに、これらをプラットフォームとして融合することにより、顧客ニーズに対応した製品の開発・製造およびサービスの提供を行っています。

しかしながら、エプソンが経営資源を集中しているこれらの製品の属する市場は、一般的に技術革新の速度が速いとともに製品ライフサイクルが短く、また、世界景気の変動にともなうエプソンの主要市場における需要・投資動向が、エプソンの製品の販売に影響を及ぼす可能性があるほか、現在推進している中期計画や事業戦略が必ずしも成功する保証はありません。

エプソンでは、各市場や顧客のニーズの把握に努め、製品市場予測による中・長期的な研究開発や投資を行うほか、開発・設計のプラットフォーム化などにより、既存製品から新製品への迅速かつ円滑な移行などにも取り組んでいく方針です。

しかしながら、今後、市場でのニーズや技術革新の変化に適切に対応できない場合、景気後退などにより需要が回復しない場合および主要市場における急激な需要変動に適切に対応できない場合などには、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について

インクジェットプリンターの主な消耗品であるインクカートリッジは、エプソンの売上収益および利益にとって相当重要なものとなっています。インクカートリッジなどのインクジェットプリンター用消耗品については、第三者によりエプソンのプリンター本体で使用することができる代替品が供給されています。これらの第三者からの代替品は、一般的にエプソンの純正品よりも廉価で販売されており、また、先進国市場と比較して新興国市場においてより流通している状況にあります。

エプソンは、こうした第三者によるインクジェットプリンター用消耗品の販売について、純正品としての高い品質の訴求のほか、大容量インクタンクを搭載したモデルの販売など、各市場における顧客ニーズに的確に対応したインクジェットプリンターを提供し、顧客の利便性をさらに高めることにより、引き続き顧客価値の実現を図っていく方針です。また、エプソンが保有するインクカートリッジに係る特許権および商標権の侵害に対しては、適宜、法的措置を講じていく方針です。

しかしながら、これらの施策が必ずしも有効である保証はなく、将来において代替品の販売が拡大し、純正品のシェア低下にともなう販売数量の減少やこれに対応するための販売価格の引下げなどにより、インクカートリッジの売上収益が減少した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外での事業展開について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、2015年3月期の連結売上収益のうち7割強は海外における売上収益が占めています。エプソンは、中国、インドネシア、シンガポール、マレーシアおよびフィリピンなどのアジア地域をはじめ、アメリカやイギリスなどにも生産拠点を有し、販売会社も世界各地域に設立しています。また、2015年3月末における海外従業員数はエプソンの全従業員数の7割強を占めています。

エプソンでは、こうしたグローバルな事業展開は地域ごとの市場ニーズを的確にとらえたマーケティング活動を可能とし、また、製造コストの削減およびリードタイムの短縮によるコスト競争力の確保など、事業上の多くのメリットがあると考えています。一方で、海外における製造・販売に関しては、各国政府の製造・販売に係る諸法令・規制、社会・政治および経済状況の変化、輸送の遅延、電力などのインフラの障害、為替制限、熟練労働力の不足、地域的な労働環境の変化、税制変更、保護貿易諸規制、そのほかエプソンの製品の輸出入に対する諸法令・規制など、海外事業展開に不可避のリスクがあります。

 

(6)特定の仕入先からの部品などの調達について

エプソンは、第三者から一部の部品などを調達していますが、一般的に長期仕入契約を締結することなく継続的な取引関係を維持しています。また、エプソンは、部品などに関して複数社からの調達を原則としていますが、特定の部品などについては、他社からの代替調達が困難であるため、1社のみからの調達となる場合があります。エプソンでは、品質の維持・改善やコスト低減活動などに調達先と協同で取り組むことなどにより、安定的かつ効率的な調達活動を展開していく方針ですが、仮にこれらの調達先からの供給の不足や供給された部品などの品質不良などにより、製造・販売活動に支障を来たした場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)品質問題について

エプソンの製品保証の有無および内容は顧客との個別の契約により異なります。エプソンの製品に不良品または規格に適合しないものがあった場合には、エプソンは当該製品の無償での交換または修理など、不良品を補償するコストを負担し、また、当該製品が人的被害または物的損害を生じさせた場合には、製造物責任などの責任を負う可能性があります。

このほか、エプソンの製品の性能に関し適切な表示または説明がなされなかったことを理由として、顧客などに対し責任を負うことや、改良のためのコストが発生する可能性があります。さらに、エプソンの製品にこのような品質問題が発生した場合には、エプソン製品への信頼性を損ない、顧客の喪失または当該製品への需要の減少などにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産権について

エプソンにとって、特許権およびそのほかの知的財産権は競争力維持のために非常に重要です。エプソンは、自らが必要とする多くの技術を自社開発してきており、それを国内外において特許権、商標権およびそのほかの知的財産権として、あるいは他社と契約を締結することにより、製品および技術上の知的財産権を設定し保持しています。また、知的財産権の管理業務に人員を重点的に配置し、知的財産権の強化を図っています。

しかしながら、次のような知的財産権に関する問題が発生した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

・エプソンが保有する知的財産権に対して異議申立や無効請求などがなされる可能性、その結果、当該知的財産権が無効と認められる可能性

・第三者間での合併または買収の結果、従来、エプソンがライセンスを付与していない第三者がライセンスを保有し、その結果、エプソンが知的財産権の競争優位性を失う可能性

・第三者との合併または買収の結果、従来、エプソンの事業に課せられなかった新たな制約が課せられる可能性およびこれらを解決するために支出を強いられる可能性

・エプソンが保有する知的財産権が競争上の優位性をもたらさない、またはその知的財産権を有効に行使できない可能性

・エプソンまたはその顧客が第三者から知的財産権の侵害を主張され、その解決のために多くの時間とコストを費やし、または経営資源などの集中が妨げられることになる可能性

・第三者からの侵害の主張が認められた場合に多額の賠償金やロイヤリティの支払い、該当技術の使用差し止めなどの損害が発生する可能性

・エプソンの従業員などにより発明などに対する報酬に関する訴訟が提起され、その解決のために多くの時間とコストを強いられる可能性、その結果、多額の報酬の支払いが決定される可能性

 

(9)環境問題について

エプソンは、国内外において製造過程で発生する廃棄物および大気中への排出物などについて、さまざまな環境規制を受けています。エプソンでは、環境保全活動を重要な経営方針の一つとして掲げ、「環境ビジョン2050」と中期施策に基づき、環境負荷を低減した製品の開発・製造、使用エネルギー量の削減、使用済み製品の回収・リサイクルの推進、国際的な化学物質規制(主には欧州のRoHS指令やREACH規制)への対応および環境管理システムの改善など、あらゆる側面から環境保全活動に取り組んでいく方針です。こうした取り組みの結果、エプソンでは、これまで重大な環境問題が発生したことはありませんが、将来において環境問題が発生し、損害の賠償や浄化などの費用負担、罰金または生産中止などの影響を受ける可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が必要となる可能性があり、このような事態が実現した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)人材の確保について

エプソンの高度な新技術・新製品の開発・製造には、国内外における優秀な人材の確保が重要ですが、これらの人材の獲得競争は激しいものとなっています。エプソンは、役割に基づいた処遇制度の導入や現地人材の積極的な登用などにより、優秀な人材の確保に努めていますが、仮にこれらの人材を十分に採用または雇用し続けることができない場合や、技術などの継承が適切にできない場合には、エプソンの事業計画の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)為替変動について

エプソンの売上収益の相当部分は、米ドルおよびユーロなどの外貨建てとなっています。エプソンは、海外調達の拡大および生産拠点の海外移転などを進めたことにより米ドル建ての費用が増加し、米ドル建ての売上収益と費用はおおむね拮抗していますが、ユーロ建ての売上収益は依然としてユーロ建ての費用よりもかなり多い状況にあります。また、エプソンは、為替変動リスクをヘッジするために為替予約取引などを行っていますが、米ドルおよびユーロなどの外国通貨の日本円に対する為替変動は、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)年金制度について

エプソンの設けている確定給付型の制度として、確定給付企業年金制度および退職一時金制度があります。

エプソンは、確定給付型の退職年金制度について、年金資産の運用収益率の低下や受給権者の増加といった状況を踏まえ、今後の環境変化に適応するとともに、将来にわたり安定的に維持運営することを目的として2014年4月に制度改定を実施しましたが、年金資産の運用成績の変動および退職給付債務の数理計算の基礎となる割引率の見積数値の変動などが発生した場合には、エプソンの財政状態および業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)独占禁止法令に基づく手続について

エプソンは、グローバルに事業を展開しており、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律など、国内外の独占禁止法令に基づく手続の対象となることがあります。海外の関係当局も特定の業界などを対象に調査または情報収集を行うことがあり、その一環としてエプソンも市場状況および販売方法一般に関する調査などを受けることがあります。これらの調査・手続が実施された場合や関連法規の違反があった場合には、エプソンの販売活動に支障が生じ、またはエプソンの社会的信用を損なうこともしくは多額の制裁金が課されることなどにより、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社および関係する連結子会社は、現在、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に基づき、欧州委員会そのほかの競争法関係当局による調査を受けていますが、現時点においてかかる調査の結果および終結の時期を予測することは困難です。

 

(14)重要な訴訟について

エプソンは、プリンティングソリューションズ事業、ビジュアルコミュニケーション事業およびウエアラブル・産業プロダクツ事業などに係る各製品の開発、製造、販売およびこれらに付帯するサービスの提供を主な事業として、国内外において事業活動を展開していますが、その事業の特性上、知的財産権、製造物責任、独占禁止法、環境規制などに関連して訴訟が提起される場合や、法的手続が開始される可能性があります。

有価証券報告書提出日現在、エプソンに係争している重要な訴訟は、次のとおりです。

ドイツでは、PCやプリンターなどのデジタル機器が著作物の複製を可能にしているとして、著作権者に代わり著作権料を徴収する団体であるVerwertungsgesellschaft Wort(以下「VG Wort」という。)が、デジタル機器を輸入販売する各社に対して著作権料の支払いを求める一連の訴訟を提起しています。

エプソンにおいては、シングルファンクションプリンターについて、2004年1月に当社の連結子会社であるEpson Deutschland GmbH(以下「EDG」という。)が、VG Wortにより著作権料の支払いを求める民事訴訟を提起されました。かかる訴訟の第1審では当該プリンターが著作権料の賦課の対象となるという判断がなされ、当該プリンターの1分間当たりの印刷可能枚数に応じ、1台当たり10ユーロから256.70ユーロまでの料率による著作権料の支払いをEDGに対し命じる判決が下されましたが、第2審および連邦最高裁判所では原告側の請求が棄却され、原告は、かかる判決を不服として憲法裁判所に上訴しました。これに対して、2010年12月に憲法裁判所は、2008年8月の連邦最高裁判所の判決がドイツ連邦憲法第14条に定める権利を侵害していると判断し、連邦最高裁判所の判決を破棄するとともに、審理を連邦最高裁判所に差し戻すという判断を下しました。その後、2011年7月に連邦最高裁判所は、本件を欧州司法裁判所に付託する手続をとり、2012年10月から審理が開始されましたが、2013年6月に欧州司法裁判所は、EU加盟国がプリンターやPCの製造業者に対して著作権料を課すことを認める旨の判断を示しました。これを受け、2014年7月に連邦最高裁判所においても、プリンターやPCが著作権料の賦課対象であるとの判決があり、具体的な著作権料率に関して、高等裁判所にて再審理が開始されました。

なお、エプソンを含む各企業および業界団体は、こうした著作権料の適用範囲の拡大に反対の姿勢を示しています。

また、当社の連結子会社であるEpson Europe B.V.(以下「EEB」という。)は、2010年6月にベルギーにおける著作権料徴収団体であるLa SCRL REPROBEL(以下「REPROBEL」という。)に対して、マルチファンクションプリンターに関する著作権料の返還などを求める民事訴訟を提起しました。その後、REPROBELがEEBを提訴したことにより、これら二つの訴訟は併合され、かかる訴訟の第1審ではEEBの主張を棄却する判決がなされましたが、EEBは、これを不服として上訴する方針です。

このほか、当社および関係する連結子会社は、液晶ディスプレイの価格カルテル嫌疑に基づき、米国において取引先などから民事訴訟を提起されています。

現時点において上記の訴訟の結果および終結の時期を予測することは困難ですが、訴訟または法的手続の結果によっては、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)財務報告に係る内部統制について

エプソンは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築および運用を図っています。エプソンでは、財務報告に係る内部統制の構築および運用を重要な経営課題の一つとして位置付け、グループを挙げて関係会社の管理体制などの点検・改善などに取り組んでいますが、常に有効な内部統制システムを構築および運用できる保証はなく、また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、上記の対応が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制の不備または開示すべき重要な不備が発生した場合には、エプソンの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(16)他社との提携について

エプソンは、事業戦略の選択肢の一つとして、他社と業務提携などを行うことがあります。しかしながら、当事者間における提携などの見直しにともない、提携関係が解消される可能性があるほか、提携内容の一部変更が行われる可能性があります。また、提携などによる事業戦略が必ずしも想定どおり成功し、エプソンの業績に寄与する保証はありません。

 

(17)災害などについて

エプソンは、研究開発、調達、製造、物流、販売およびサービスの拠点を世界に展開していますが、これらの地域において予測不可能な自然災害、新型インフルエンザなどの新興感染症の流行、コンピュータウィルスの感染、顧客データの漏洩、社内重要基幹システムの障害発生、部品調達先などの罹災によるサプライチェーン上の混乱、戦争・テロなどが発生した場合には、エプソンの業績に影響を及ぼす可能性があります。

特にエプソンの主要な事業拠点が所在する長野県中部には、東海地震発生時の大規模被災の可能性が高いとされる「地震防災対策強化地域」に指定されている市町村が多く存在し、また、糸魚川静岡構造線に沿った活断層帯があるなど、地震発生リスクが比較的に高い地域です。

エプソンでは、2002年4月に東海地震の防災対策強化地域が見直されたことを受けて地震対策の見直しを行い、防災訓練などの地震防災計画や事業継続計画の策定などにより、かかる災害にともなう影響の軽減に向けた対応を可能な範囲において行っています。

しかしながら、長野県中部に大規模な地震が発生した場合には、これらの施策にもかかわらず、エプソンが受ける影響は甚大なものになる可能性があります。

なお、エプソンは、地震により発生する損害に対しては地震保険を付保しているものの、その補償範囲は限定されています。

 

(18)法規制または許認可などについて

エプソンは、日本国内および諸外国・地域において多様な事業を展開しており、各国および各事業におけるコンプライアンスに関する体制強化と社内的な啓蒙活動などを通じて各種の法規制に対応するように努めていますが、今後の事業拡大に際しては公的機関などを含む新規顧客への営業活動の強化のほか、健康・医療などの新規分野の開拓にも取り組む必要があるため、これらの活動に関係する各種の法規制やコンプライアンス(法令遵守)への対応が一層求められることがあります。

エプソンでは、引き続きコンプライアンスを重要な経営方針の一つとして位置付け、適宜、未然防止・制御活動を展開していく方針ですが、今後、例えば、腐敗防止法規制、広告・表示規制、個人情報保護・プライバシー規制などにおいて、関係法令などへの抵触またはそのおそれが生じた場合や、より厳格な法規制の導入や関係当局による法令運用の強化が行われた場合には、エプソンの社会的信用が毀損されるとともに、多額の制裁金を課せられるほか、事業活動に制約が生じるおそれがあり、これらの法規制を遵守するための費用が増加するなど、エプソンの業績や今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

5【経営上の重要な契約等】

相互技術援助契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

当社

Hewlett-Packard Company

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2012年5月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

International Business Machines
Corporation

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年4月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Microsoft Corporation

アメリカ

情報関連機器およびこれに用いるソフトウエアに関する特許実施権の許諾

2006年9月29日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Eastman Kodak Company

アメリカ

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2006年10月1日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Xerox Corporation

アメリカ

電子写真およびインクジェットプリンターに関する特許実施権の許諾

2008年3月31日から許諾特許の権利満了日まで

当社

Texas Instruments Incorporated

アメリカ

半導体および情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年4月1日から2018年3月31日まで

当社

キヤノン株式会社

日本

情報関連機器に関する特許実施権の許諾

2008年8月22日から許諾特許の権利満了日まで

 

6【研究開発活動】

 エプソンは、創業以来の独自の強みである「省・小・精の技術」を源泉とする「マイクロピエゾ」「マイクロディスプレイ」「センシング」「ロボティクス」の独創のコア技術を徹底的に極め、これらをあらゆるお客様に提供できるように共通化(プラットフォーム化)し、お客様の期待を超える価値を実現する製品・サービスを作り出すことを目指して研究開発活動を行っています。

 この基本方針のもと、事業部開発部門では、短期から長期的視野で市場における位置付けを強化するために、コア技術の開発および技術基盤の共通化を行っています。一方、本社開発部門では、既存技術に加えて、新規事業創出および事業革新を目指した新たなコア技術・技術基盤の開発に取り組んでいます。

 当連結会計年度の研究開発費総額は478億円であり、各セグメントの内訳は、情報関連機器事業が244億円、デバイス精密機器事業が45億円、センサー産業機器事業が52億円、その他および全社が135億円です。

 各セグメントの主な開発成果は、次のとおりです。

 

(情報関連機器事業セグメント)

 プリンティングシステム事業においては、カラリオ・プリンターの新製品として、デジタルカメラやスマートフォンで撮影した写真のプリントのほか、スマートフォン用アプリを使ってオリジナルのシールやラベル印刷および年賀状が簡単に作成できる小型プリンターを発売しました。本製品は、幅249㎜×奥行176㎜×高さ85㎜の手のひらに乗るコンパクトサイズで、縦置き収納も可能なため、使いたい時に本棚などの収納スペースから取り出して、リビングのテーブルなど、好きな場所で使用できます。

 また、給紙・搬送ローラーの小型化、基板分割による高密度レイアウト、本体フレームのアルミ化による軽量化と強度の両立などにより、内蔵バッテリー搭載(※1)でクラス最小・最軽量(※2)を実現した、当社初のモバイルインクジェットプリンターを発売しました。本製品は、タブレット端末と共にビジネスバッグに入れて外出先に手軽に持ち運べ、使用しない時はデスクの引出しに収納できるコンパクトサイズです。

 このほか、ボトル・パッケージに貼って商品をアピールする「商品ラベル」や、部材や化学品などの製造現場で商品の視認性を高める「識別ラベル」などを印刷する、カラーインクジェットラベルプリンターを発売しました。本製品は、昨年度開発した「PrecisionCore(プレシジョンコア)プリントヘッド」の使用領域を拡大した、当社として国内初となる「PrecisionCoreラインヘッド」を採用しており、最大300㎜/秒の高速印刷と解像度600dpi×1,200dpiの高画質印刷を実現し、必要な時に必要な数だけ印刷するオンデマンド印刷により、1種類あたり1,000枚程度のラベルが必要なお客様向けにラベルの内製化を可能とするものです。

 ビジュアルコミュニケーション事業においては、文教向けプロジェクターの新製品として、指によるタッチで直観的な操作が可能な電子黒板機能内蔵の超短焦点壁掛け対応モデルを発売しました。本製品は、投写画面上で指を使って、電子黒板のツールボタンの操作や画面の拡大・縮小、スクロールなどを直観的に行うことができ、矢印・三角・丸など、授業の注目度を高める簡単な描写も可能です。また、ペンで書いて指で消す、といった従来の板書に近い操作も可能となりました。

 また、ホームシアタープロジェクターの新製品として、レーザー光源を当社として初めて採用するとともに、「4K エンハンスメントテクノロジー」(※3)搭載により4K映像コンテンツに対応したモデルを開発しました。本製品は、シーンの切り替えなどで暗転する場面では、瞬時に明るさ0(ゼロ)lmの完全な漆黒「パーフェクトブラック」(※4)を実現します。

※1 満充電(初期値)で、カラー約50枚、もしくはモノクロ約100枚の印刷が可能(使用状況に応じて異なります)。

※2 国内A4インクジェットプリンターとして。2014年6月現在、当社調べ。サイズ:幅309㎜×奥行154㎜×高さ61㎜、質量:約1.6㎏。

※3 1画素を斜めに0.5画素シフトさせることで、解像度を2倍にして4K解像度を実現する技術。

※4 外光や照明光を遮断した完全な暗室において、スクリーン上の明るさ0(ゼロ)lmを実現。

 

(デバイス精密機器事業セグメント)

 マイクロデバイス事業においては、1.2Vで動作する低消費電力16ビットフラッシュメモリー内蔵マイコンシリーズにおいて、産業分野や住宅設備に使われるガス警報器、人感センサー、電子鍵などの小型センサー端末や、スマートフォンとの連携を前提としたウエアラブル機器向けに特化したマイコンを製品化しました。本製品は、液晶表示用の回路を省くことにより、従来品比で表面積の最大87%削減を実現しました。

 

センサー産業機器事業セグメント

 腕に装着するだけで脈拍を計測し、運動強度、カロリー収支、睡眠やこころの状態を知ることができる活動量計として「PULSENSE(パルセンス)」を発売しました。本製品は、加速度計測だけでなく、当社独自技術の高精度脈拍センサーを搭載し、血中のヘモグロビンが光を吸収する性質を利用して、手首の血管にLED光を照射し、血流の変化により脈拍数を計測します。また、計測したすべてのデータは、PC・スマートフォン用専用アプリに転送することで細かく表示・分析することができます。なお、脈拍の連続計測は約36時間であり、エクササイズから睡眠まで1日の生活をしっかり記録する常時計測が可能です。

 また、旺盛な需要が続くスマートフォン用ICの検査に最適なモデルとして、新型のICテストハンドラーを発売しました。本製品は、従来機種の基本的な特徴を継承しながら、ICの多ピン化に対応してICを検査用ソケットに押し込む標準加圧を高めました。このほか、装置内部でICを搬送するハンドの構成も、Inline4サイト(※5)、SQ4サイト(※6)の両方に対応し、さらに8サイト(※7)へのアップグレードにも対応できるなど、柔軟な検査環境を構築可能です。

※5 直列に並んだ4個のICを同時に検査する仕様。

※6 2×2の配列で並んだ4個のICを同時に検査する仕様。

※7 8個のICを同時に検査する仕様。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績の分析

(売上収益)

 売上収益は、前連結会計年度と比較して779億円(7.7%)増加し、1兆863億円となりました。

 報告セグメントごとの売上収益は、次のとおりです。

 情報関連機器事業セグメントの売上収益は9,072億円となり、前連結会計年度と比較して660億円(7.9%)増加しました。変動要因として寄与が大きかったものは、以下のとおりです。

 インクジェットプリンターは、インクカートリッジモデルが数量減少となったものの、大容量インクタンクモデルが商品ラインアップ強化によりエマージングエリアを中心に大幅な売上収益の拡大を果たしました。また本格的なビジネス領域への参入も進み、ビジネス系商品ラインアップが充実すると同時に、新しいビジネスモデルとして、機器・インク・保守サービスを一定の料金でご利用いただける課金ビジネスを日本で開始しました。さらに消耗品につきましても、プリンター本体の市場稼働台数の構成改善効果により売上増となりました。大判インクジェットプリンターは、大判写真・色校正(プルーフ)印刷市場向け製品が引き続き好調で、業務フォト市場は小型で高性能な新機種により本体・インクとも売上が増加しました。インクジェット捺染市場はアパレルから小物グッズ、インテリア系まで応用領域が拡大し、またカスタムやオリジナルのTシャツ作成の需要が高まったため布地に直接印刷できる製品の普及が進み、販売地域の拡大が進みました。ページプリンターは、高付加価値製品中心へ販売を絞り込んだことにより数量減少となった結果、売上は減少しました。SIDMは、徴税需要が一巡した中国に加え、米州・欧州などで数量減少となりましたが、為替による増収影響およびアジアにおける低価格機種の販売増により売上は前期並みとなりました。POSシステム関連製品は、欧州を中心とした数量増加、オンデマンドでインハウス印刷を実現するラベルプリンターの拡販により売上増となりました。ビジュアルコミュニケーション事業の売上収益は、為替影響もあり増加となりました。液晶プロジェクターは、高機能製品ラインアップの拡充が進み、またサッカーワールドカップ特需と教育市場向け販売増が寄与し、米州やアジアにおいて大幅に販売を伸ばし売上増となりました。その結果、セグメント全体で為替影響もあり、情報関連機器事業セグメントの売上収益は増加しました。

 デバイス精密機器事業セグメントの売上収益は1,562億円となり、前連結会計年度と比較して75億円(5.1%)増加しました。変動要因として寄与が大きかったものは、以下のとおりです。

 水晶デバイスは、ATおよび音叉型の価格下落が進行したことから売上減少となりました。半導体は、内需およびシリコンファンドリーを含む外販向けの数量増加により売上増加となりました。ウオッチは、高価格品の販売増加による平均販売単価の上昇効果や為替影響などにより増加となりました。

 センサー産業機器事業セグメントの売上収益は233億円となり、前連結会計年度と比較して72億円(44.6%)増加しました。FA機器では、産業用ロボットはアジア向けの受注増により売上増加となったほか、ICハンドラーはスマートフォン向け半導体業界からの受注増があり売上増加となりました。

 「その他」の売上収益は13億円となり、前連結会計年度と比較して4.2%増加しました。

 

(売上原価・売上総利益)

 売上原価は、前連結会計年度と比較して445億円(6.9%)増加し、6,904億円となりました。売上原価の増加は、為替影響のほか、増収にともない材料費や加工費が増加したことなどによるものです。

 以上の結果、売上総利益は、前連結会計年度と比較して333億円(9.2%)増加し、3,959億円となりました。

 

(販売費及び一般管理費・事業利益)

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して221億円(8.1%)増加し、2,946億円となりました。販売費及び一般管理費の増加は為替影響のほか、業績改善にともなう賞与を中心とした人件費が増加したことなどによるものです。

 以上の結果、事業利益は、前連結会計年度と比較して111億円(12.4%)増加し、1,012億円となりました。

 

 報告セグメントごとのセグメント利益(事業利益)は、以下のとおりです。

 情報関連機器事業セグメントのセグメント利益は、前連結会計年度と比較して98億円(8.0%)増加し、1,336億円となりました。これは為替影響に加え、主要製品の売上増加などの影響によるものです。

 デバイス精密機器事業セグメントのセグメント利益は、前連結会計年度と比較して39億円(36.7%)増加し、148億円となりました。これは為替を含む増収影響によるものです。

 センサー産業機器事業セグメントのセグメント利益は、前連結会計年度の99億円の損失に対して、90億円の損失となり、9億円の損失減少となりました。これは主に、産業用ロボットの増益によるものです。

 「その他」のセグメント利益は、前連結会計年度の2億円の損失に対して、3億円の損失となりました。

 調整額は、主に特許料収入と、報告セグメントに帰属しない新規事業および基礎研究に関する研究開発費や本社機能に係る費用を中心とした販売費及び一般管理費が計上されており、前連結会計年度の343億円の損失に対して、378億円の損失となり、35億円の損失増加となりました。

 

(その他の営業収益・その他の営業費用・営業利益)

 その他の営業収益は、前連結会計年度と比較して339億円(565.3%)増加し、399億円となりました。その他の営業収益の増加は、確定給付企業年金制度改定にともなう過去勤務費用減少の影響300億円および所有資産の売却などによるものです。

 その他の営業費用は、前連結会計年度と比較して67億円(40.7%)減少し、98億円となりました。その他の営業費用の減少は、前連結会計年度は為替差損が92億円であったのに対して、当連結会計年度は為替差損が25億円となったことによるものです。

 以上の結果、営業利益は、前連結会計年度と比較して518億円(65.2%)増加し、1,313億円となりました。

 

(金融収益・金融費用)

 金融収益は、前連結会計年度と比較して5億円(21.7%)増加し、32億円となりました。金融収益の増加は、受取利息の増加などによるものです。金融費用は、前連結会計年度と比較して21億円(47.6%)減少し、23億円となりました。金融費用の減少は、支払利息の減少などによるものです。

 

(税引前利益)

 以上の結果、税引前利益は、前連結会計年度と比較して545億円(70.0%)増加し、1,325億円となりました。

 

(法人所得税費用)

 当連結会計年度の法人所得税費用は、前連結会計年度と比較して279億円増加し、186億円となりました。これは主に、法人税等調整額の計上が前連結会計年度の△278億円から△45億円となったことによります。

 

(当期利益)

 以上の結果、当期利益は、前連結会計年度と比較して283億円(33.6%)増加し、1,127億円となりました。

 

(2)流動性および資金の源泉

(キャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して60億円減少し、1,088億円の収入となりました。これは主に、当期利益の増加による影響283億円、法人所得税費用の増加による影響279億円などの増加要因があった一方で、退職給付に係る負債の減少による影響205億円、棚卸資産増加による影響176億円、法人所得税の支払額の増加による影響169億円、仕入債務減少による影響121億円などの減少要因があったことによるものです。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して支出額が85億円減少し、327億円の支出となりました。これは主に、投資不動産の売却による収入の増加137億円によるものです。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して支出額が11億円減少し、553億円の支出となりました。これは主に、配当金の支払額が93億円増加となった一方で、有利子負債の純増減が104億円の減少となったことによるものです。

 以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度と比較して338億円増加し、2,453億円となりました。なお、手元流動性は十分に確保しております。

 短期借入金、長期借入金および社債の合計額は、有利子負債全体の返済を進めたことにより、前連結会計年度と比較して345億円減少し、1,859億円となりました。

 長期借入金(1年以内に返済予定のものを除く)の当連結会計年度末残高は505億円であり、加重平均利率は0.70%、返済期限は2017年までに到来します。これらの借入金は、無担保での銀行借入を中心に調達しております。

(財務状況)

 資産合計は、前連結会計年度末と比較して973億円増加し、1兆62億円となりました。これは主に、棚卸資産の増加388億円、現金及び現金同等物の増加338億円、売上債権及びその他の債権の増加131億円などによるものです。

 負債合計は、前連結会計年度末と比較して351億円減少し、5,089億円となりました。これは主に、仕入債務及びその他の債務が165億円増加した一方、短期・長期借入金および社債の純減にともなう流動負債および非流動負債に含まれるその他の金融負債の減少362億円、また確定給付企業年金制度の改定などにともなう退職給付に係る負債の減少251億円などによるものです。

 親会社の所有者に帰属する持分合計は、前連結会計年度末と比較して1,319億円増加し4,943億円となりました。これは主に、利益剰余金の増加986億円および円安進行にともなう在外営業活動体の換算差額の変動を含むその他の資本の構成要素の増加333億円によるものです。

 運転資本(流動資産から流動負債を差し引いた金額)は、前連結会計年度末と比較して703億円増加の2,949億円となりました。

 総資産に対する有利子負債の比率は、前連結会計年度の24.3%から18.5%に低下しました。