第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度の世界経済は、中国をはじめとするアジア新興国における景気減速等が懸念されたものの、先進国を中心に緩やかな回復基調となりました。
  また日本経済は、雇用・所得環境の改善により緩やかな回復傾向にあるものの、英国のEU離脱問題や米国大統領選挙結果等により為替相場や株式市場が大きく変動する等、不安定に推移いたしました。

 

このような状況の中で、「JTEKT GROUP VISION」で掲げた「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」を目指し、「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」の3本柱を中心に、当社グループ一丸となって取り組みを進めてまいりました。

また、平成28年1月にジェイテクト設立10周年を迎えたことを機に、環境変化や競争激化を乗り越えて「JTEKT GROUP VISION」を達成するためのジェイテクトグループ共通の価値観を、「JTEKT WAY」として明文化いたしました。今後は、当社グループの文化として定着させるべく、浸透を図ってまいります。

 

各事業の概況は、以下のとおりです。
 ステアリング事業においては、グローバルな競争が一層厳しさを増す中で、そのベースとなる取り組みとして、グローバル商談対応力の強化、お客様を設計段階からサポートするフロント・ローディング活動を着実に進めるとともに、基幹部品の内製化や製造工程における省機化・省人化をはじめとした抜本的なコスト低減活動を強力に推進してまいりました。また、お客様ニーズの多様化に伴う商品構成の変化や、さらなる機能安全・小型軽量・省燃費対応、加えて将来の自動車の自動運転化を見据えた技術開発に、従来以上にスピードをあげて取り組んでまいりました。生産供給体制の面では、今後成長が見込まれるインド市場において、経営の効率化・競争力強化を推し進め、事業基盤をより強固なものとするため、SONA KOYO STEERING SYSTEMS LIMITED社(本社:インド共和国ニューデリー市)の株式を追加で取得する売買契約を締結いたしました。当該契約に基づく追加取得と公開買付けを実施した結果、SONA KOYO STEERING SYSTEMS LIMITED社は平成29年6月23日には当社の子会社となりました。
 なお、平成29年4月28日には、ステアリング用コラムの競争力強化及びシステム提案力強化を図るため、株式会社タチエス(以下、タチエス)及び富士機工株式会社(以下、富士機工)との間で、当社による富士機工の完全子会社化を目的とした公開買付け及びタチエスによる富士機工のシート事業の取得について合意いたしました。
 さらに北アフリカでのステアリング製品の供給体制を整備するために、モロッコ王国での生産に向け準備を開始いたしました。

 

駆動事業においては、ステアリング事業と連携したフロント・ローディング活動や各商品の原価低減活動の強化、効率的なグローバル生産供給体制の構築を進めるとともに、カーメーカーの車両企画に合わせ最適な車両運動性能を実現するドライブラインシステムサプライヤーとして、駆動システム開発力の強化、将来のニーズを見据えた開発を推進してまいりました。

 

軸受(ベアリング)事業においては、事業環境が一層厳しい状況下でも競争力を維持・向上させていくために、事業体質の強化に重点を置き、各種取り組みを進めてまいりました。従来より進めている世界各地域での構造改革においては、欧米をはじめとして一定の成果が出始めており、残る日本においても抜本的な収益性向上に向けて取り組みを進めております。香川工場、亀山工場においては、工作機械・メカトロニクス事業が手掛けるIoE(Internet of Everything)のノウハウを活用し、故障検知、無人自動搬送等を一部実現しております。また、販売面では、重要顧客への対応力強化及び市販向けの品揃え・物流の強化に努めてまいりました。商品開発面においては、例えば、ニードルローラーベアリングにおけるグローバルでの開発体制を構築するなど、高付加価値商品の開発を加速してまいりました。

 

 

工作機械・メカトロニクス事業においては、当社グループ内の強みを集約し、総合生産ラインビルダーとして導入から稼動・保守、オーバーホールまで、設備のライフサイクルに合わせてサポートできる体制の強化を進めるとともに、お客様のニーズにタイムリーにお応えするため、新商品のリリースを進めてまいりました。研削盤においては、インドにおける現地生産の開始及び熟練技能者のカンやコツ、経験に頼らず高度な加工が可能な小型汎用円筒研削盤GE3iの市場リリースを行いました。また、IoT時代をリードすべく、生産設備に接続しデータ収集・蓄積・解析を行うことができるオープンプラットフォームモジュール「TOYOPUC-AAA」を開発し、平成28年11月に東京ビッグサイトで開催された第28回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2016)に出展、今春よりTOYODAブランドの工作機械に標準搭載を開始しております。

 

当連結会計年度の連結業績につきましては、円高の影響等で販売が大幅に減少したこと等により、売上高は1兆3,183億10百万円と前連結会計年度に比べて816億77百万円、率にして5.8%の減収となりました。利益につきましては減収及び円高の影響等により、営業利益は774億42百万円と前連結会計年度に比べて44億81百万円、率にして5.5%の減益となり、経常利益は780億96百万円と前連結会計年度に比べて31億64百万円、率にして3.9%の減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、475億22百万円と前連結会計年度に比べて11億49百万円、率にして2.4%の減益となりました。

セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。

「機械器具部品」につきましては円高の影響等でステアリング、軸受の販売が大幅に減少したこと等により、売上高は1兆1,619億51百万円と前連結会計年度に比べて731億88百万円、率にして5.9%の減収となりました。営業利益につきましては、減収及び円高の影響等により、676億89百万円と前連結会計年度に比べて35億74百万円、率にして5.0%の減益となりました。

「工作機械」につきましては、国内での販売減少等により、売上高は1,563億58百万円と前連結会計年度に比べて84億89百万円、率にして5.1%の減収となりました。営業利益につきましては、97億77百万円と前連結会計年度に比べて10億71百万円、率にして9.9%の減益となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

連結キャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フローは992億77百万円の資金の増加となりましたが、前連結会計年度に比べて108億47百万円の収入の減少となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは680億66百万円の資金の減少となり、前連結会計年度が599億23百万円の資金の減少であったことに比べて81億42百万円の支出の増加となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは221億4百万円の資金の減少であり、前連結会計年度が493億1百万円の資金の減少であったことに比べて271億97百万円の支出の減少となりました。これらに換算差額等を加減算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は702億7百万円となり、前連結会計年度末に比べて85億39百万円の増加となりました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

生産高(百万円)

前年同期比(%)

機械器具部品

1,103,851

96.2

工作機械

101,842

84.4

合計

1,205,694

95.1

 

(注) 1 金額は平均販売価格によっております。

2 上記の金額には、外注加工費及び購入部品費が含まれております。

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 受注状況

当社グループの販売高の大部分を占める、自動車業界向け部品については、納入先から提示される生産計画を基に、当社グループの生産能力等を勘案して生産を行っております。

なお、工作機械の受注状況は以下のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

工作機械

115,480

96.8

47,622

119.8

 

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3) 販売実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

機械器具部品

1,161,951

94.1

工作機械

156,358

94.9

合計

1,318,310

94.2

 

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

2 主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前連結会計年度

(自 平成27年4月1日

至 平成28年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

トヨタ自動車㈱

227,925

16.3

228,730

17.4

 

 

 

3 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 当社グループは、企業理念である「社会の信頼に応え、モノづくりを通じ て、人々の幸福と豊かな社会づくりに貢献する」を体現するために、当社グループの目指す姿を定義した「JTEKT GROUP VISION」、共有すべき価値観としての「JTEKT WAY」を定義し、これらをベースに日々の企業活動を実践しております。

 「JTEKT GROUP VISION」においては、目指す姿として「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」を掲げ、その実現に向けて、お客様の期待を超える「価値づくり」、世界を感動させる「モノづくり」、自らが“考動”する「人づくり」の3本柱を中心に取り組むことを定義しております。

 「JTEKT WAY」は平成28年4月1日に制定し、過去より受け継ぎ今後も伝えていくべき価値観として「和して厳しく」「技に夢を求めて」、当社グループの“考動”のベースとなる価値観として「お客様視点」「当事者意識」「たゆまぬ改善」の計5つを定めており、平成29年度は、引き続きグループ全従業員に行き渡るよう浸透活動を展開してまいります。

 


 

 

(2) 長期的な会社の経営戦略

平成29年度版の中期経営計画においては、経営基盤の確立や構造改革等、先延ばししてはならないものは安易にローリングせず計画どおりやり切り、市場環境の変化に応じて見直しをかけるべきものは、5年先を見据えて計画を更新することとしました。また、中長期的には、情報技術革新のスピードが一層速まる中、各事業において次世代の主力となる事業、商品の弾込め施策を加速させるとともに、平成28年4月に新設した新規事業企画室では、平成29年4月にさらにリソーセスを充実させ、新規事業推進部と名称を改めて、既存事業にとらわれない新たなビジネスの早期事業化に向けた取り組みを進めております。
 
 各事業の方針は以下の通りです。
 
 ステアリング事業においては、世界No.1サプライヤーとしてお客様に最高の価値を提供し続けるために、基幹部品であるステアリング用コラムの技術開発力・原価低減を含めた生産力の強化、成長が見込まれるインド市場におけるプレゼンスの向上に取り組みます。また、今後も急増する下流アシストタイプの商品力強化、将来に向けた市場トレンドの大きな変化に対する対応力の強化に努め、グローバルトップシェアの地位をさらに磐石なものにしてまいります。
 
 駆動事業においては、ドライブラインのシステムサプライヤーとして、世界のリーディングカンパニーへ飛躍するため、ステアリングと連携したグローバル商談対応力の強化、画期的な原価低減活動を強力に推進するとともに、他社との協業を含めた駆動システムとしての対応力強化と将来に向けた新分野の商品開発を加速してまいります。
 
 軸受(ベアリング)事業においては、長寿命・ユニット化・超高速・高信頼性を特長とする高付加価値商品の開発とタイムリーな市場投入により、Koyoブランドを世界トップブランドへ押し上げてまいります。営業面では、特に、産業機械・市販分野におけるグローバル販売体制をさらに強化し、各分野のニーズに適したタイムリーな品揃えを強化してまいります。また、生産力の面では、構造改革を各地域で手を緩めることなく着実に推し進め、特に国内工場での体質強化の早期成果出しを図ってまいります。生産技術革新の取り組みを拡大し、完全自動化・無人化ライン確立に向けた取り組みを促進してまいります。
 
 工作機械・メカトロニクス事業においては、お客様から信頼される真の総合生産ラインビルダーとして、当社グループの総力をあげてカスタマーサービス・エンジニアリング力、システムエンジニアリング力を強化し、お客様をトータルでサポートする体制の構築を進めてまいります。また、「モノ」から「コト」へ、人やサービス等も含めた全てをつなげるIoE(Internet of Everything)の事業基盤を固め、まずは、社内の工場での実証を進め、当社オリジナルの先進的な商品・サービスを早期に投入できるようスピードを上げて取り組んでまいります。
 
 また、これらの事業戦略を中長期で支える基盤構築として、全社全業務の業務改革による抜本的な業務効率化、グローバルでの計画的な人材育成の仕組み構築、方針管理の強化、強靭な財務体質の構築に、引き続き取り組んでまいります。

 

(3) 経営環境

世界経済は、米国において底堅い経済成長が継続し、欧州においても英国のEU離脱をはじめとする政治情勢を巡る不透明感があるものの、緩やかな経済成長が続く見通しです。中国及びアセアン、南米等の国・地域においても、先進国の着実な成長の波及や景気刺激策の効果等から、緩やかな回復を続ける見込みです。日本経済についても、内外需要の増加を背景に緩やかな景気回復が続く見込みですが、地政学的リスク等による為替変動を含む経営環境の変化は続くものと見られ、注視していく必要があります。

このような経営環境の中、当社グループは、「JTEKT GROUP VISION」で掲げた「No.1 & Only One -より良い未来に向かって-」の実現に向け、引き続き「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」の3本柱を中心に、当社グループ一丸となって取り組みを進めてまいります。

 

(4) 対処すべき課題

翌連結会計年度の主な課題としては、引き続き各国の政情不安をはじめとする世界的な経済状況の変化へのフレキシブルな対応に加え、各事業で推進している構造改革の成果出し、国内においては、固定費の増加、一部の生産性改善の遅れを主要因とする単体収益の悪化等への対応が挙げられます。また、当期においては、製品の品質保証に関連する特別損失を計上しており、従来にもまして製品の品質確保への取り組みを強化していくことが急務であります。これらの課題に対し、当社グループ一丸となって対策を推進するとともに、将来にわたり競争力を維持するために高付加価値商品の開発加速、国内の少子高齢化による労働環境の変化を見据えた働き方の高度化やその環境整備に注力してまいります。

なお、当社及び当社の一部子会社は、過去の軸受(ベアリング)等の取引に関し、海外の競争当局の調査を受けており、平成29年6月に、当社は韓国公正取引委員会より、韓国独占規制及び公正取引に関する法律に違反する行為があったとの認定を受けました。ただし、当該認定に対する課徴金は免除されております。また、一連の競争当局による決定等に関連し、米国及びカナダにおいて、当社及び当社の一部子会社に対して損害賠償を求める集団訴訟を提起されておりましたが、当期において一部原告と和解合意に至りました。
  当社グループは、今後も再発防止に向けたコンプライアンス徹底の取り組みを継続し、信頼回復に向け一層の努力をしてまいります。

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの事業等に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

(1) 災害

当社グループは東海・東南海・南海地震や暴風、豪雨等の大規模自然災害及び火災、疾病発生を想定し、災害発生時の被害の最小化を図るために各種事前対策、発生時対策を講じております。しかしながらこれらにより、罹災時リスクの一掃を図ることは難しいものと考えております。取引先の罹災による生産活動停止等の外部要因も含め、当社グループの業績は災害による影響を受けることがあります。

 

(2) 経済状況

当社グループは、欧州、米州、アジア等多くの国・地域で製品の生産と販売活動を展開しており、また取引先も多岐の産業分野に属しております。従いまして、当社グループの事業は、生産、販売している特定の国・地域の経済状況の変動や、取引先の属する産業の景気変動の影響を受けることがあります。

 

(3) 自動車業界及び自動車市場への依存

当社グループは機械器具部品(主力製品:ステアリング、ベアリング等)及び工作機械等の製造販売を主な事業としております。

ステアリングは、自動車の進行方向を自由に変えるためのハンドル操作を適切にタイヤに連動させる操舵装置であり、大半を自動車業界向けに製造販売しております。ベアリングは、各産業において広く使用される部品であり、その役割は軸を円滑に回転させ、摩擦によるエネルギー損失や発熱を減少させる重要な要素部品であります。当社グループでは、売上高の過半が自動車業界向けであります。工作機械につきましても、その受注は自動車業界からのものが中心であります。

なお、当社の筆頭株主であるトヨタ自動車株式会社との取引金額は、連結売上高の17.4%を占めております。

また、当社グループは、日本をはじめグローバルな自動車の需要見通し及び顧客より提示される自動車の販売見通し等を総合的に検討し、判断の上で経営資源の効率的な投入を行っておりますが、将来の需要が現在の見通しどおりに推移する保証はありません。

これらのことから、当社グループの業績は自動車業界及び自動車市場の動向による影響を受けることがあります。

 

(4) 為替レートの変動

当社グループは、欧州、米州、アジア等多くの国・地域で製品の生産と販売活動を展開しております。海外の関係会社の財務諸表は現地通貨で作成されておりますが、連結財務諸表の作成のために円換算しております。従いまして、現地通貨における価値が変わらなくとも、円換算後の当社グループの連結財務諸表は為替レートの変動による影響を受けます。

また、当社グループが日本で生産し、輸出する事業においては、他の通貨に対する円高は、相対的な価格競争力を低下させる可能性があります。当社グループは為替予約等により短期的な為替変動リスクの軽減を図っておりますが、それによって、全てのリスクを排除することは不可能であります。

従いまして、当社グループの業績は、為替レートの変動の影響を受けることがあります。

 

(5) 価格競争

自動車業界における価格競争はたいへん厳しいものとなっており、当社グループは、各製品及び市場において、競争の激化に直面すると予想されます。競争先には他自動車部品メーカーがあり、その一部は当社グループよりも低コストで製品を提供しております。さらに、モータリゼーションの進展に伴い、新しい競合先の台頭又は既存競合先の連携により、競合先が市場での大きなシェアを急速に獲得する可能性があります。

当社グループは、技術的に進化した高品質で高付加価値な自動車関連製品を送り出す世界的なリーディングメーカーであると考える一方で、将来においても有効に競争できるという保証はありません。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 製品開発力等の競争力

当社グループの事業は、同業他社との激しい企業間競争に晒されております。一方、近年、顧客のニーズは多様化し、かつ開発期間の短縮も求められております。当社グループとしては製品開発力の強化はもちろんのこと、生産準備期間の短縮、生産の仕組改革等さまざまな面から施策を講じて顧客の要求を満たすべく努力しております。しかしながらこれらの施策が顧客のニーズを満足させ、将来にわたって常に他社を上回る競争力を保持し続けることができるかどうかは予測困難であります。経営資源の効率的な投入、組織再編等、競争力強化に向けてさまざまな施策を講じておりますものの、当社グループの業績は企業間競争の影響を受けることがあります。

 

 

(7) 新製品開発

当社グループは継続して斬新で魅力ある新製品を開発できると考えておりますが、新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクが含まれます。

・新製品と新技術への投資に必要な資金と資源を、今後十分充当できる保証はありません。

・長期的な投資と大量の資源投入が、新製品又は新技術の創造につながる保証はありません。

・当社グループが顧客からの支持を獲得できる新製品又は新技術を正確に予想できるとは限らず、またこれ   らの製品の販売が成功する保証はありません。

・技術の急速な進歩と市場のニーズの変化により、当社グループの製品が時代遅れになる可能性があります。

・現在開発中の新技術の商品化の遅れにより、市場の需要について行けなくなる可能性があります。

上記のリスクをはじめとして、当社グループが業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品を開発できない場合には、将来の成長と収益性を低下させ、当社グループの業績又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 海外事業展開

当社グループはグローバルな事業展開を行っており、連結売上高に占める海外売上高の割合は、61.3%を占めております。海外での事業展開におきましては、事業活動に係る内部要因リスク以外に、政治的又は経済的に不利な要因の発生、社会的共通資本(インフラ)が未整備であることによる事業活動への影響、潜在的に不利な税制変更、人材採用の難しさや労務問題、自然災害や疾病の発生、社会的又は経済的混乱等のリスクが内在しており、これらのリスクを排除することは不可能であります。

従いまして、当社グループの業績は、海外事業展開における潜在的リスクの影響を受けることがあります。

 

(9) 品質問題

当社グループは、「品質」を経営の最重要事項の一つとして掲げ、さまざまな取り組みを行っております。しかしながら、製品の開発・製造等における品質上のリスクの全てを将来にわたって完全に排除することは、困難なものと認識しております。また、製品保証引当金による会計上の手当て、保険加入による製造物責任等のリスクヘッジも行っておりますが、訴訟等により高額の賠償請求を受けた場合には、十分にカバーできないケースも想定されます。

これらに伴う社会的信用の低下、取引停止等も含め、当社グループの業績は品質問題の影響を受けることがあります。

 

(10) 原材料や部品の調達

当社グループは、製品の製造に使用する原材料や部品を複数のグループ外の供給元から調達しております。これらの供給元とは、取引基本契約を締結し、安定的な取引を行っておりますが、市況の変化による価格の高騰や品不足、供給元の生産能力不足や火災、倒産、東日本大震災、熊本地震のような自然災害等の理由により原材料や部品の調達に支障をきたす可能性があります。その場合、当社グループの業績は、当社グループ製品の製造原価の上昇や生産停止等により影響を受けることがあります。

 

(11) 知的財産権

当社グループは、これまでの製品開発において蓄積してきた技術を知的財産権として権利化し、活用してまいりましたが、無体物に関わる権利という特殊性から、全ての国・地域にわたり知的財産権として活用することは困難な状況にあります。従いまして、第三者が当社グループの知的財産権を使って類似した製品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また、当社グループは第三者の知的財産権を尊重した対応をしておりますが、全ての権利を完全に事前調査できない可能性もあり、将来的に当社グループが第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。

これらのことから、当社グループの業績は、知的財産権問題の影響を受けることがあります。

 

(12) 法的手続

当社グループは事業活動において、継続的なコンプライアンスの実践に努めております。しかしながら、当社及び当社の一部子会社は、現在、軸受(ベアリング)等の取引に関して、海外の競争当局より競争法違反の疑いがあるとして調査を受けております。

従いまして、当社グループの業績は、当該調査の結果等により、影響を受けることがあります。

 

(13) 訴訟

当社グループは機械器具部品及び工作機械を製造販売するメーカーであり、製造物責任に関する訴訟リスクを負っております。当社グループは、保険付保等の一定のリスクヘッジを行っておりますが、それによって賠償負担をすべてカバーするものではありません。

また、一連の競争当局による決定等に関連し、米国及びカナダにおいて、当社及び当社の一部子会社に対して損害賠償を求める集団訴訟が提起されており、当社又は当社の子会社もしくは関連会社は、今後、同種の訴訟を提起される可能性があります。

上記以外の訴訟についても、そのリスクを全て排除することは不可能であります。

これらのことから、当社グループの業績は訴訟の影響を受けることがあります。

 

(14) 戦略的提携及び企業買収

当社グループは、事業拡大や競争力の強化などを目的として、事業戦略の一環としてM&Aや資本参加、資本提携などを行っております。買収や提携後の事業計画の進捗が当初見通しに比べ大幅に遅れる場合には、当社グループの業績又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
 

5 【経営上の重要な契約等】

今後成長が見込まれるインド市場において、経営の効率化・競争力強化を推し進め、事業基盤をより強固なものとするため、当社は、以下のとおり、当社の持分法適用の関連会社であるSONA KOYO STEERING SYSTEMS LIMITED社(本社:インド共和国ニューデリー市)の株式について、筆頭株主であるSONA AUTOCOMP HOLDING LIMITED社が保有する株式を取得する売買契約を締結いたしました。

(1)取得株式数:49,914,664 株

(2)取得価格:4,192百万インドルピー(73億円)

 

なお、平成29年5月18日に株式の追加取得が完了し、20.1%であった当社の出資比率は45.2%になりました。また、当該契約に基づく追加取得の他に公開買付を実施しており、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等」の注記事項(重要な後発事象)に記載のとおり、同社を子会社化しております。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、JTEKT GROUP VISION「No.1 & Only One —より良い未来に向かって—」を平成26年4月に策定し、必要な要素として「価値づくり」「モノづくり」「人づくり」という三本の柱を掲げております。その中の「価値づくり」が技術の分野では特に重要であり、ステアリング、駆動系部品、軸受、工作機械・メカトロ商品を中心に、まだない価値をつくり続けるという想いを込めて、研究開発活動を推進しております。
 お客様の期待を超えるような新しい価値を生み出し続けるために、先を見据えた将来の商品に繋げる基盤要素研究に取り組んでおります。その内容は強い技術領域をさらに進化・融合させるもので、トライボロジー(潤滑、摩擦、摩耗等を対象とする科学技術)・材料技術、超精密加工技術、システム制御技術、要素・基盤技術等をベースにしております。また、「地球にやさしい、安全・安心・快適」な新商品をスピーディかつ確実に提供することを目的に、成長分野を視野に入れた積極的な研究開発に取り組んでおります。
 なお、当連結会計年度における研究開発費は482億13百万円であり、各セグメントにおける研究開発活動の状況は、次のとおりであります。

(1) 機械器具部品

①ステアリング事業

ステアリング事業では、自動車の低燃費/高機能化に貢献できる電動パワーステアリングの全ラインアップを品揃えしており(Only One)、また、グローバルシェアは25%を超え世界トップであります(No.1)。今後も社会やお客様のニーズにお応えした商品を提供するため、次世代商品の開発に取り組んでまいります。当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
 ボールねじ機構を介して操舵力を直接出力軸へ伝えるラックパラレルタイプ電動パワーステアリング(RP-EPS)を当連結会計年度後半に量産を開始いたしました。これにより当社の電動パワーステアリングの競争力を高め、従来の油圧パワーステアリングが搭載されていた車種領域にも、電動パワーステアリングを採用していただくことにより、低燃費/高機能化に貢献してまいります。また、高度運転支援システム(ADAS)が進む中、自動運転の実現に向けたステアバイワイヤ(SBW)方式のステアリングシステムの開発も推進してまいります。

②駆動事業

駆動事業では、走行安定性・安全性向上へのニーズに対応を図る一方で、燃料電池車(FCV)向けの高圧水素供給バルブと減圧弁の開発等、環境に貢献した技術開発にも取り組んでおります。当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。
 表面処理を改良することにより耐焼付き性が向上し、その結果、しゅう動面の面積を小さくすることが可能となり、小型軽量化を実現したトルセンを量産いたしました。さらに、しゅう動面に微細溝を付与することにより、お客様の高い静粛性への要求にお応えいたしました。また、ドライブラインのシステムサプライヤーとして、インホイルモータなど将来へ繋がる技術開発も進めてまいります。

③軸受(ベアリング)事業

軸受事業では、環境規制への対応、高効率化のニーズが強くなる中、将来を見据えた長期ビジョンを描き、これまで培ってきた基盤技術をさらに進化・深化させ、新たな商品の創造に取り組んでおります。当連結会計年度における主な成果は、次のとおりであります。
 自動車用ベアリングでは、年々厳しさを増す環境規制に対応するため、当社の強みである低トルク化技術を用いた商品群を「LFTシリーズ」としてラインアップいたしました。
 玉軸受では、CVTなど変速機に使用される円すいころ軸受からの置き換えを見込んだ「高アキシアル荷重対応低トルク玉軸受」を開発いたしました。足回りを支えるハブユニットにおいては、SUVやピックアップトラック用の「低トルク・高耐摩耗性テーパードローラハブユニット」を開発いたしました。
 産業機器用ベアリングでは、省エネルギー化、メンテナンスフリー化のニーズに応える「モータ用低トルク長寿命深溝玉軸受」を開発いたしました。グリースを最適化することにより、従来よりも大幅な低トルク化と長寿命化を実現しております。また、医療・介護用のロボットの小型化、減速機の高容量化・高剛性化といった市場ニーズに対応する「超小型円すいころ軸受」を開発いたしました。
 これからも、新たな視点で、継続的に新商品を開発し、お客様にお届けいたします。

 

(2) 工作機械

工作機械では、研削盤、マシニングセンタ、ギヤスカイビングセンタ、制御システムとIoE(Internet of Everything)の各分野において、戦略的に商品力強化を図ってまいりました。お客様に信頼される真のラインビルダーを目指し、モノづくり、コトづくりを通じてバリューを提供してまいります。

当連結会計年度の主な成果としては、次のとおりであります。

①研削盤

研削盤のトップメーカーとしてお客様の生産活動により貢献するため、主力商品であるCNC円筒研削盤のモデルチェンジを実施いたしました。中型の「GE4i」シリーズに続き、当連結会計年度は「誰でも簡単に高度なモノづくりができる機械」をコンセプトに、小型の「GE3i」シリーズのモデルチェンジを行い、幅広いお客様にお使い頂けるよう3モデルをラインアップいたしました。
ⅰ)GE3i:高精度ベースマシン
ⅱ)GE3i-PRO:「プロフェッショナルハンドル」搭載
ⅲ)GE3i-HYPER:超硬の荒加工等、高負荷研削を実現するコンパクトなハイパワー仕様

②マシニングセンタ

エネルギー、農建機、航空機、工作機械等の大型量産部品加工にクラス最大の工作物サイズを誇る超大型横形マシニングセンタFH1600SW5iを開発、これにより横形マシニングとしてパレットサイズ400~1600mmまで幅広いバリエーションから最適な機械を選択頂けるようになりました。
  また本機は、大型クイル主軸を有し、門形マシニングセンタと横中ぐり盤の2台を必要とする加工工程を1台に集約することを可能とし、2016年日刊工業新聞社十大新製品賞日本力賞を受賞いたしました。

③ギヤスカイビングセンタ

中型歯車向けGS300H、大型歯車向けGS700Hに続き、昨年度は自動車の小型量産歯車向けにGS200Hを新規に開発。量産対応として主軸・構造体の剛性を大幅に向上させ、従来工法ギヤシェーパに対し加工時間を1/4に短縮。また小型サイズ化により、中型GS300Hに対しフロアスペースを半減いたしました。

④制御システム・IoE

人と設備が協調し、人の知恵が働く、人が主役のスマートファクトリーと位置づけ、品質・保全・生産の3つの軸において、現場の困りごとをITで解決する、OT(Operational Technology)とITを融合したIoTに取り組んでおります。昨年11月に開催された工作機械見本市(JIMTOF 2016)では、IoT導入の4つのステップを定義し、それぞれのステップでIoTソリューションを提案いたしました。さらに刈谷工場及び数社の中小企業に対してスマートファクトリー化を実施した具体事例を紹介し、好評を得ることができました。
  翌連結会計年度はさらに、東京・香川・亀山の工場全体をスマートファクトリー化する取り組みを推進しながら、ロボット革命イニシアティブ協議会(RRI)、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)といった日本が推進している委員会にも参画し、日本のモノづくりの強化に貢献いたします。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成しており、その作成にあたっては、会計方針の選択、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りにおいて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる結果となることがあります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針については、第5「経理の状況」の連結財務諸表の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

① 退職給付に係る負債

退職給付費用及び債務は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算出されており、これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率や年金資産の期待運用収益率等の見積りが存在しております。したがって、実際の結果が前提条件と異なる場合、あるいは前提条件が変更された場合には、その影響は累積され、将来にわたって規則的に償却されるため、将来の退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。

② 繰延税金資産

当社グループは繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存することから、その見積額が減少した場合は繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。

③ 有価証券の減損処理

当社グループは得意先及び金融機関の株式を保有しており、これらの株式は株式市場の価格変動リスクを負っているため、合理的な基準に基づいて有価証券の減損処理を行っております。したがって、将来、株式市場の悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価額に反映されていない損失又は簿価額の回収不能が発生した場合、評価損を計上する可能性があります。

④ 製品保証引当金

当社グループは製品納入後に発生する製品保証費用の支出に充てるため、過去のクレーム発生割合を基礎にして当連結会計年度に対応する発生予想額を計上しております。クレームの発生割合は不確実な面が多く、実際の製品保証費用は見積額と異なることがあり、将来の製品保証費用及び債務に影響を与える可能性があります。

⑤ 環境対策引当金

当社グループは建物及び設備等に使用されているアスベスト及びポリ塩化ビフェニル(PCB)の除去、処分等に係る支出に備えるため、今後発生すると見込まれる費用を計上しておりますが、将来において法規制の強化や社会状況の変化によって更なる費用負担が生じる可能性があります。

 

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上高

当連結会計年度の売上高は1兆3,183億10百万円と前連結会計年度に比べて816億77百万円(5.8%)の減収となりました。

機械器具部品におきましては、円高の影響等でステアリング、軸受の販売が大幅に減少したこと等により、1兆1,619億51百万円と前連結会計年度に比べて731億88百万円(5.9%)の減収となりました。

工作機械におきましては、国内での販売減少等により、1,563億58百万円と前連結会計年度に比べて84億89百万円(5.1%)の減収となりました。

② 営業利益

当連結会計年度の営業利益は、減収及び円高の影響等により、774億42百万円と前連結会計年度に比べて44億81百万円(5.5%)の減益となりました。

なお、売上高営業利益率は5.9%と前連結会計年度並みであります。

③ 営業外収益及び費用

営業外収益及び費用につきましては、6億53百万円の利益となりました。為替差損益の改善等により、6億62百万円の損失であった前連結会計年度と比べて、収支が改善しました。

④ 経常利益

以上により、当連結会計年度の経常利益は780億96百万円と前連結会計年度に比べて31億64百万円(3.9%)の減益となりました。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① 財政状態

当連結会計年度末における総資産は、受取手形及び売掛金や設備投資による有形固定資産の増加等により、1兆1,178億51百万円と前連結会計年度末に比べて420億15百万円の増加となりました。負債につきましては、社債の発行等により、6,049億45百万円と前連結会計年度末に比べて91億76百万円の増加となりました。また、純資産につきましては、利益剰余金の増加等により、5,129億6百万円と前連結会計年度末に比べて328億39百万円の増加となりました。

なお、1株当たり純資産額は前連結会計年度の1,327円34銭から1,422円08銭に増加いたしました。

また、有利子負債については、1,868億21百万円と前連結会計年度末に比べて33億59百万円減少しました。

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、702億7百万円と前連結会計年度末に比べて、85億39百万円の増加となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは992億77百万円の資金の増加となりましたが、前連結会計年度に比べて108億47百万円の収入の減少となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは固定資産の取得による支出等により680億66百万円の資金の減少となり、前連結会計年度が599億23百万円の資金の減少であったことに比べて81億42百万円の支出の増加となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは221億4百万円の資金の減少であり、前連結会計年度が493億1百万円の資金の減少であったことに比べて271億97百万円の支出の減少となりました。