第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「MOTION & CONTROLを通じ、円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざすとともに、グローバルな活動によって国を越えた人と人の結びつきを強める」という企業理念のもと、

 ①世界をリードする技術力によって、顧客に積極的提案を行う

 ②社員一人ひとりの個性と可能性を尊重する

 ③柔軟で活力のある企業風土で時代を先取りする

 ④社員は地域に対する使命感をもとに行動する

 ⑤グローバル経営をめざす

という経営姿勢により社会に貢献する企業を目指していきます。

 

(2) 目標とする経営指標

安定的な収益力を表わすものとして営業利益率を重視するとともに、資産の効率性を追求して株主資本利益率(ROE)とネットD/Eレシオの向上を目指します。

 

(3) 企業価値の向上

当社グループは、創立100周年を契機に策定した「NSKビジョン2026(あたらしい動きをつくる。)」の下、2016年度から2018年度迄の第5次中期経営計画を進めています。この中期経営計画では、「次の100年に向けた進化のスタート」をスローガンとし、「オペレーショナル・エクセレンス(競争力の不断の追求)」と「イノベーション&チャレンジ(あたらしい価値の創造)」を方針に据えて、持続的成長、収益基盤の再構築、新成長領域確立の3つの経営課題に取り組んでいます。

なお、「オペレーショナル・エクセレンス(競争力の不断の追求)」の施策として、

 ・事業の競争力の追求

 ・効率経営の追求

 ・人づくり、モノつくり

「イノベーション&チャレンジ(あたらしい価値の創造)」の施策としては、

 ・次の成長への種まき

 ・モノつくりの革新

 ・新商品、新領域技術の開発

を推進しています。

 

当社グループは、当社事業を通じ機械製品のエネルギーロスを削減することで、地球環境の保全と持続可能な社会の発展に向けた貢献を果たすために、環境経営のレベルアップに取り組んでいます。

また、関連法令を遵守すると共に社会の一員としての高い倫理観を持って行動することで、顧客や地域社会等の様々なステークホルダーから信頼される企業として発展し続けることを目指しており、コンプライアンス強化の取り組みとして更なる体制・制度の整備、教育・啓発の徹底を図っています。

加えて当社は、執行と監督の役割を明確にすることにより、経営の透明性と健全性を高め、公正で迅速な意思決定を行うために機関設計として指名委員会等設置会社を採用しています。持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しコーポレートガバナンス・コード等の社会的な要請を踏まえたガバナンス体制の強化に取り組んでいます。

 

 

(4)「当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針」について

 

① 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

 

当社は、資本市場に公開された株式会社であるため、当社株式の大量の買付行為がなされた場合にそれに応じるべきか否かは、最終的には株主の皆様のご判断に委ねられるべきであると考えます。

しかしながら、近年のわが国の資本市場の状況を考慮すると、株主の皆様に対する必要十分な情報開示や熟慮のための機会が与えられることなく、あるいは当社取締役会が意見表明を行い、代替案を提示するための情報や時間が提供されずに、突如として、株式の大量の買付行為が強行される可能性も否定できません。このような株式の大量の買付行為の中には、真摯に合理的な経営を行う意思が認められないもの等、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を毀損する買付行為もあり得ます。

かかる当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を毀損する当社株式の大量の買付行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として不適切であると考えます。

 

② 当社の財産の有効な活用、適切な企業集団の形成その他の基本方針の実現に資する特別な取り組みの概要

 

(イ)中期経営計画等による企業価値向上への取り組み

 

当社の中期経営計画等による企業価値向上への取り組みについては、上記(3)企業価値の向上に記載のとおりです。

 

(ロ)コーポレートガバナンスに関する取り組み

 

当社は、社会的責任を果たし、企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を確保し、持続的に向上させるため、経営に関する意思決定の透明性と健全性の向上に積極的に取り組んできました。2004年に当時の委員会等設置会社に移行する以前から、執行役員制度の導入、社外取締役の招聘及び任意の報酬委員会・監査委員会の設置をしてきました。現在、当社は指名委員会等設置会社であり、指名・監査・報酬の3つの委員会は、それぞれ社内取締役と過半数を占める社外取締役で構成され、経営に関する意思決定の透明性と健全性の確保に大きな役割を果たしています。

なお、当社の社外取締役については全員を独立役員として東京証券取引所に届け出ています。

 

③ 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みの概要

 

当社は、2008年6月25日開催の当社定時株主総会において、当社株式の大量買付行為に関する対応策を導入し、その後、2011年6月24日及び2014年6月25日開催の当社定時株主総会において継続し、2017年6月23日開催の当社定時株主総会において株主の皆様のご賛同を得て当社株式の大量買付行為に関する対応策(以下「本プラン」といいます。)を導入しています。本プランの概要は、以下のとおりです。

なお、本プランの詳細につきましては、当社ウェブサイト
(http://www.nsk.com/jp/company/governance/index.html#tab4)に掲載しています、2017年5月23日付「当社株式の大量買付行為に関する対応策(買収防衛策)の継続に関するお知らせ」をご参照ください。

 

(イ)本プランの対象となる大量買付行為

 

本プランは、特定株主グループの議決権割合を20%以上とすることを目的とする当社株券等の買付行為(具体的な買付方法の如何を問いません。以下同じとします。)、または結果として特定株主グループの議決権割合が20%以上となる当社株券等の買付行為を適用対象とします。但し、あらかじめ当社取締役会が同意した買付行為は、本プランの適用対象からは除外します。なお、本プランの適用を受ける買付行為を以下「大量買付行為」といい、大量買付行為を行いまたは行おうとする者を以下「大量買付者」といいます。

 

(ロ)大量買付ルールの設定

 

ⅰ.意向表明書の事前提出

大量買付者には、大量買付行為の実行に先立ち、当社代表執行役社長宛に、本プランに定められた所定の手続(以下「大量買付ルール」といいます。)に従う旨の誓約等を日本語で記載した意向表明書をご提出いただきます。

 

ⅱ.本必要情報の提供

当社取締役会は、上記ⅰ.の意向表明書受領後10営業日(初日不算入)以内に、大量買付者から提供していただくべき、大量買付行為に対する株主の皆様のご判断及び当社取締役会の評価、検討等のために必要かつ十分な情報(以下「本必要情報」といいます。)を記載したリスト(以下「本必要情報リスト」といいます。)を当該大量買付者に対して交付します。大量買付者には、当社代表執行役社長宛に、本必要情報リストに従って十分な情報を提供していただきます。

なお、大量買付ルールの迅速な運用が確保されるよう、当社取締役会が大量買付者に対して本必要情報リストを交付した日から60日(初日不算入)(以下「情報提供要請期間」といいます。)を経過しても当社が求める情報が提供されない場合には、その時点で当社取締役会は、本必要情報の提供に係る大量買付者とのやり取りを打ち切り、下記ⅲ.記載の当社取締役会による評価、検討等を開始します。但し、大量買付者から合理的な理由に基づく延長要請があった場合、または大量買付行為の内容及び態様等、本必要情報の提供状況等を考慮して合理的に必要であると当社取締役会が判断した場合には、当社取締役会は、情報提供要請期間を最長30日間(初日不算入)延長することができるものとします(なお、当該延長は一度に限るものとします。)。

 

ⅲ.取締役会による評価期間の設定等

当社取締役会は、本必要情報の提供完了後、または情報提供要請期間満了後、大量買付行為の内容に応じて最長60日間または最長90日間(いずれの場合も初日不算入)を当社取締役会による評価、検討、交渉、意見形成、代替案立案のための期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)として設定します。但し、当社取締役会が、当初設定した取締役会評価期間内に当社取締役会としての意見を取りまとめることができないことについてやむを得ない事由がある場合には、当社取締役会は、独立委員会に対して、取締役会評価期間の延長の是非について諮問し、その勧告を最大限尊重した上で、当社取締役全員が出席する取締役会の全会一致の決議により、取締役会評価期間を合理的に必要な範囲内で、最長30日間(初日不算入)延長できるものとします(なお、当該延長は一度に限るものとします。)。

大量買付行為は、取締役会評価期間満了後にのみ開始されるものとします。

 

(ハ)対抗措置の発動

 

大量買付者が大量買付ルールを遵守した場合、当社取締役会は、仮に当該大量買付行為に反対であったとしても、反対意見の表明等を行うことはあり得るものの、原則として、当該大量買付行為に対する対抗措置は発動しません。

但し、当該大量買付行為が当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なうおそれがあると合理的に認められる場合には、取締役会評価期間満了後に、株主総会を開催し、大量買付行為に対し、対抗措置を発動すべきか否かを株主の皆様のご判断に委ねることができるものとします。

また、当社取締役会は、大量買付者がいわゆるグリーンメイラーである場合、大量買付者の提案する買収の方法が、いわゆる強圧的二段階買付けに代表される、構造上株主の皆様の判断の機会または自由を制約し、事実上、株主の皆様に当社株券等の売却を強要するおそれがある場合等、大量買付行為が一定の類型に該当し、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なうものであると合理的に認められる場合には、例外的に対抗措置を発動することがあります。

これに対して、大量買付者が大量買付ルールを遵守しない場合には、具体的な買付方法の如何にかかわらず、当社取締役会は、当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、対抗措置を発動する場合があります。

但し、当社取締役会が、株主の皆様のご意思を確認することが実務上可能であり、かつ、当社取締役会が株主の皆様のご意思を確認するために株主総会を開催し、対抗措置を発動することの是非について株主の皆様にご判断いただくことが適切であると合理的に判断した場合には、取締役会評価期間満了後に、株主総会を開催し、大量買付行為に対し、対抗措置を発動することの是非について株主の皆様のご判断に委ねるものとします。

当社取締役会が、株主総会を開催し、対抗措置を発動することの是非について株主の皆様にご判断いただく場合には、大量買付者は、当該株主総会終結時まで、大量買付行為を開始してはならないものとします。

なお、当社は、本プランにおける対抗措置として、原則として、新株予約権無償割当てを行います。

 

(ニ)独立委員会の設置及び諮問等の手続

 

ⅰ.独立委員会の設置

取締役会評価期間を延長するか否か、対抗措置を発動するか否か、及び発動した対抗措置を維持するか否かについては、当社取締役会が最終的な判断を行います(但し、対抗措置の発動の是非について株主総会を招集する場合には、当該株主総会の決議に従います。)が、その判断の合理性及び公正性を担保するために、当社取締役会から独立した組織として、独立委員会を設置しています。独立委員会の委員は、3名以上とし、独立社外取締役その他独立性が認められる弁護士、税理士、公認会計士、学識経験者、投資銀行業務に精通している者、他社の取締役または執行役として経験のある社外者等の中から当社取締役会が選任するものとし、有価証券報告書提出日現在における独立委員会の委員は、社外取締役4名及び弁護士1名です。

 

ⅱ.対抗措置の発動手続

当社取締役会が対抗措置の発動を判断するに当たっては、その判断の合理性及び公正性を担保するために、以下の手続を経ることとします(但し、対抗措置の発動の是非について株主総会を招集する場合は、この限りではありません。)。

まず、当社取締役会は、対抗措置の発動に先立ち、独立委員会に対して対抗措置の発動の是非について諮問し、独立委員会は、当社取締役会に対して対抗措置の発動の是非について勧告を行います。当社取締役会は、対抗措置を発動するか否かの判断に際して、独立委員会による勧告を最大限尊重するものとします。

また、対抗措置の発動に係る当社取締役会の決議は、当社取締役全員が出席する取締役会において、全会一致により行うものとします。

 

(ホ)本プランの有効期間

 

本プランの有効期間は、2017年6月23日開催の当社定時株主総会終了後3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(2020年6月に開催予定の定時株主総会の終結の時まで)とし、以降、本プランの継続(一部修正した上での継続を含みます。)については、3年ごとに定時株主総会の承認を得ることとします。

 

④ 上記②の取り組みについての取締役会の判断及びその理由

 

上記②の取り組みは、当社の中長期的な企業価値の向上のための基本的な取り組みの一環であり、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を向上させることを目的として実施しているものです。

従いまして、上記②の取り組みは上記①の基本方針に沿うものであり、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えています。

 

⑤ 上記③の取り組みについての取締役会の判断及びその理由

 

上記③の取り組みは、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を確保・向上させることを目的として、大量買付者に対して、大量買付行為に関する必要な情報の提供、及び、その内容の評価・検討等に必要な期間の確保を求めるために導入されるものです。また、上記③の取り組みは、そのような情報提供と検討等の期間の確保の要請に応じない大量買付者、及び、当社の企業価値ひいては株主の皆様の共同の利益を著しく損なうおそれがあると合理的に認められる大量買付行為を行おうとする大量買付者に対して対抗措置を発動できることとすることで、これらの大量買付者による大量買付行為を防止するものであり、よって、上記①の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みです。

さらに、上記③の取り組みにおいては、大量買付者が大量買付ルールを遵守している場合において対抗措置を発動しようとする場合には、原則として、株主総会を開催して、対抗措置を発動することの是非について株主の皆様にご判断いただくこととしており、また、大量買付者が大量買付ルールを遵守していない場合を含め、当社取締役会が対抗措置の発動を決議する場合には、対抗措置の発動に先立ち、独立委員会に対して対抗措置の発動の是非について諮問し、その勧告を最大限尊重した上で、社外取締役を含む取締役全員が出席する当社取締役会において、全会一致により行うこととしており、当社取締役会の恣意的な判断を排し、上記③の取り組みの合理性及び公正性を確保するための様々な制度及び手続が確保されているものです。

従いまして、上記③の取り組みは上記①の基本方針に沿うものであり、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えています。

 

 


 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性がある主なリスクには以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月22日)現在において判断したものです。

 

(1) 国、地域、産業の経済状況

当社グループは、グローバルに広範囲の国と地域で製品を製造、販売しています。また、取引先も自動車をはじめとする多岐の産業にわたっています。従いまして、これらの国、地域または産業における経済状況の変化は、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 市場変化への対応と競争環境

当社グループ製品の販売は、厳しさを増す企業間競争や取引先のグローバル展開等、急速な市場環境の変化にさらされています。

例えば、産業機械事業における標準玉軸受に関しましては、中国地場の軸受メーカーの台頭は汎用品のグローバルな市場価格の下落となってあらわれてきています。当社グループは高品質軸受分野における事業の拡大や技術サービスの向上等、価格面以外での競争力強化を図っていますが、中国軸受メーカー等の低価格品の急速な伸張は、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、自動車事業におきましては、取引先のグローバルな生産展開や車種及び仕様の世界共通化等の変化に対応して、グローバルな供給拠点を有することが取引の必要条件となる場合も出てきています。当社グループは早くから海外における競争力のある生産拡充を進めていますが、事業または地域によっては、進出の遅れによる販売機会の逸失や需要変動への対応が遅れることにより、当社グループの業績と財務状況へ悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 特定分野への依存

当社グループは、販売全体の約7割を自動車軸受及び自動車部品が占め、また、精密機器関連製品におきましては半導体製造装置産業、工作機械産業向け販売比率が高い等、特定需要分野への依存率が高くなっています。産業機械軸受、精密機器関連製品におきまして需要の裾野の広い一般産業機械分野やアフターマーケット向けの相対的販売比率を高め、依存度の高い分野の需要の下方変動による影響の緩和を図っていますが、高依存度の特定産業分野における急激な需要の縮小は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 取引先の信用リスク

当社グループの販売は大手の比較的安定した取引先向けの比率が高く、売上債権等にかかる回収リスクは全体としては軽微であると認識しています。また、貸倒れが懸念される債権につきましては、回収可能性を勘案して引当金を計上しています。

取引先の信用状況に関しましては、常日頃から情報収集の体制を築いていますが、予測していない事業環境の変化等による債権回収リスクが発生する可能性はあります。取引先の信用力低下、債務不履行等が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 事業提携

当社グループはグローバルに複数の企業との提携によって事業を行い、相互の経営資源の有効活用を図るとともに、技術開発、生産活動等において提携効果の創出に取組んでいます。しかしながら、提携先の経営戦略の変更、財務状況の悪化等により期待した効果を実現できない場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 特定供給元への依存

当社グループは原材料並びに部品の調達につきましては併注を基本とし、1社に偏った供給依存を回避する方針を原則としています。しかしながら、その特性によっては技術的に供給元が限定される場合もあり、供給元の生産能力不足や品質不良または火災、地震等の自然災害、あるいは倒産その他の理由により必要な調達が出来なくなり、当社グループ製品の取引先への供給に支障をきたすリスクもあります。このような場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 原材料の価格上昇

国際的な景気動向、需給関係の影響などにより、鉄鉱石、原料炭、スクラップ、原油等の原材料価格は大きく変動し、原材料の価格上昇局面では、当社グループの製品に使用する原材料及び部品の値上りが懸念されます。当社グループでは、国際調達やVA/VE活動などを通じて原価低減に努めると同時に、原材料費上昇分の製品価格への転嫁に努めますが、コストアップを吸収できない場合には、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 品質問題

当社グループの製品は多くの産業分野や最終製品で使用され、かつ高精度の機能を必要とする部位や自動車、鉄道車両、航空機等、人命を担う最終製品にも多く使用されています。当社グループは品質の重要性を認識し高い品質保証体制を確立していますが、万が一大規模なリコールや製造物賠償責任訴訟につながるような製品の不具合が起きた場合には、多大な費用の発生や社会的信用の低下等につながる危険性があり、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループはグローバルな製造物賠償責任保険及び一部の製品に関するリコール保険に加入していますが、損害賠償等の損失を十分にカバーできるとは限りません。

 

(9) 新製品開発

当社グループの新製品開発活動は、収益拡大のための重要な課題である新製品の市場への投入を目的に進めています。当社グループの製品に対する市場からの開発ニーズはその多様性を増し、ニーズの変化する速度も以前に増して速くなってきています。

新製品開発は製品が市場から評価され、販売されてはじめて収益に寄与しますが、新製品開発には以下にあげるものをはじめ、様々なリスクが存在しており、これらのリスクが回避できない場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

① 当社グループが市場ニーズを正確に捉えきれず、開発した新製品の販売が目標に達しない可能性があります。

② 製品開発と量産化の遅れにより、当社グループの製品の販売が低下する可能性があります。

③ 競合他社の開発品または技術が知的財産権として保護され、当社の新製品開発を阻害する可能性があります。

④ 当社グループが新たに開発した製品を代替する他社の新技術製品が出現する可能性があります。

 

(10) 知的財産権

当社グループは、開発した技術を特許等の知的財産権として権利化することが重要と考え、事業競争力維持拡大のために、国内外で知的財産権を取得しています。

しかしながら、知的財産権の重要性が増すに従い、以下のケースが発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性を完全に排除できるものではありません。

① 当社グループの知的財産権に対し、無効請求等を起こされる場合。

② 事業展開のためには、第三者の知的財産権につき実施許諾を得る必要があり、ロイヤルティの支払いが生じる場合、又は実施許諾が得られない場合。

③ 第三者により知的財産権侵害の主張をされる場合。

④ 特定の国または地域において、法的実効性が必ずしも十分でないため、不正競争品を効果的に排除できない場合。

 

(11) 海外事業展開

当社グループはグローバルに事業を展開しており、当連結会計年度における海外売上高は概ね6割強です。これらの海外市場での事業には、以下に掲げるような海外事業展開に共通のリスクがあります。

① 各国政府の予期しない法律または規制の変更

② 社会・政治及び経済状況の変化または治安の悪化

③ 輸送の遅延、電力等のインフラの障害

④ 為替制限、為替変動

⑤ 各種税制の不利な変更または課税

⑥ 保護貿易諸規制の発動

⑦ 異なる商習慣による取引先の信用リスク等

⑧ 異なる雇用制度、社会保険制度

⑨ 労働環境の変化や人材の採用と確保の難しさ

⑩ 疫病の発生

 

(12) 災害・テロ等

当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点が地震、洪水、火災、雪害、原発事故、新型感染症の発生等の災害やテロ攻撃または政治情勢の変化に伴う社会的混乱による物的・人的被害を受けた場合、当社グループの生産・販売活動に悪影響が及ぶ可能性があります。

また、火災、自然災害等による被害につきましては保険によりその全てが補償されるわけではありません。災害及びテロへの対策は重要な経営課題の1つであり、被害を最小化するための事前対策及び事業を継続するための対策を実施していますが、完全にリスクを回避することは困難です。

 

(13) コンプライアンス

当社グループでは、法令・倫理遵守(コンプライアンス)の徹底を目的に「NSK企業倫理規則」を制定し最も重要と考えられる以下の16項目についてコンプライアンスのための行動指針を定め、イントラネット等による掲示・配布、eラーニングや集合研修等による教育を通じて役員・従業員に周知することにより、コンプライアンス・リスクの軽減を図っています。しかしながら、このような対策にもかかわらず、従業員の不注意や誤った認識等によりコンプライアンス違反が発生し、それに伴い当社グループが刑事上、民事上、行政上の責任を負い、さらには社会的信用を失い、また経済的損害を受ける可能性がないとは言えません。

① 競争法の遵守

② 輸出入関係法令の遵守

③ 贈収賄行為の禁止(接待、贈答などの取扱い)

④ 公的機関との取引及び政治献金の取扱い

⑤ 正確な記録及び処理

⑥ インサイダー取引の禁止

⑦ 知的財産権の取扱い

⑧ 違法行為・反社会的行為の禁止

⑨ 会社財産の保護

⑩ 企業秘密・個人情報の取扱い

⑪ お客様との関わり

⑫ 調達取引先との関わり

⑬ 競合他社の信用毀損行為の禁止

⑭ 差別の禁止と健全な職場環境の整備

⑮ 労働における基本的権利の尊重

⑯ 地球環境の保全

 

当社及び当社の一部子会社は、過去における製品の取引に関して競争法違反の疑いがあるとして海外の関係当局による調査等を受けており、当社グループは、これに対して全面的に協力しています。

 

(14) 訴訟対応

当社並びに当社の日本、米国、カナダ及び欧州の一部子会社は、米国及びカナダにおいて、他の被告らとともに、原告である軸受製品等の購入者の代表者等から複数の集団訴訟の提起を受けています。原告は、被告らが共謀してこれらの国において軸受製品等の取引に関する競争を制限した等と主張し、被告らに対して損害賠償、対象行為の差止めをはじめとする請求を行っています。なお、当社並びに当社の日本及び米国の一部子会社は、米国において、集団訴訟の原告の一部である間接購入者等との間で和解に合意しています。また、当社及び当社の欧州の一部子会社は、英国において、他の被告らとともに、原告である一部顧客から過去の欧州競争法違反行為に関連して損害賠償請求訴訟の提起を受けておりましたが、2018年3月15日(現地時間)付で原告との間で和解に合意しました。

これらの詳細につきましては、後記「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等][連結財務諸表注記] 28.偶発事象(2) 訴訟事項等」をご参照ください。

当社又は当社の子会社若しくは関係会社は、上記訴訟と同種又は類似の訴訟等を今後提起される可能性があります。当社グループとしましては、原告等による請求に対して、適切に対処していきます。また、当社グループは、上記訴訟等の状況に応じて、原告等との間で個別に和解の可能性も検討していきます。

なお、当社グループは製造業であり、製品の取引に関する訴訟が提起される可能性があります。特に製造物責任に関する訴訟リスクを負っていると言えます。

製造物責任に関する訴訟に至った場合の応訴と賠償につきましては、当社グループは製造物賠償責任保険に加入していますので、保険が適用される場合もありますが、この保険は無制限、無条件に当社グループの賠償負担を担保するものではありません。

また、当社グループは、今後、上記のほかにも訴訟の提起を受ける可能性があります。これらの場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性も否定できません。

 

(15) 情報システム

当社グループは、販売・製造・物流・研究開発・会計を含む様々な業務の運営を管理・サポートするため、様々なネットワーク及びシステムを利用しています。これらシステムには十分な安全対策を施していますが、ハッカーからのサイバー攻撃、外部システム提供者のサービス停止、天災等により障害が発生した場合は、復旧に長時間を要する可能性があります。このような事態が生じた場合、生産活動・物流管理・販売活動などに支障をきたすと共に、製品出荷の混乱により顧客の生産計画に影響を及ぼし、損害賠償や顧客の信頼を損なう可能性があります。

 

(16) 情報管理

当社グループは、多くの重要情報や個人情報を適切な手続きに基づき入手し利用しています。これら情報の外部への流出及び目的以外への利用等が起こらないよう、情報セキュリティーポリシーを定め周知徹底及び運用を図っています。しかし、サイバー攻撃等、予期せぬ事態により流出する可能性は皆無ではありません。このような事態が生じた場合、重要な業務の中断や、法的請求、社会的信用の失墜、その対応のために生じる多額の費用負担等のリスクが存在しています。 その結果、当社グループのブランドイメージや経営、財政状態及びキャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 情報開示及び株主利益

当社グループは適時開示に関わる運用体制を整備し、会社情報の公正かつ適時適切な開示及び財務報告の信頼性の確保等に努めていますが、法令・通達等の制定・変更あるいは証券取引所のルール改定等、社会的要請の変化への適切な対応が十分でない場合、情報開示の適切性を欠き、市場での株主価値の下落並びに株主にとっての不利益を招来する可能性がないとは言えません。

また、金融商品取引法に基づく財務報告に係る内部統制の有効性の評価又は監査において、開示すべき重要な不備を指摘される可能性もないとは言えません。

 

 

(18) 環境問題

当社グループの事業活動は、大気汚染、水質汚濁、環境負荷物質、廃棄物処理、地球温暖化防止、エネルギーなどに関する様々な環境関連法令の適用を受けています。当社グループは環境保全活動を重要な経営方針のひとつとして掲げ、環境マネジメントシステムの充実を図っており、これまで重大な環境問題を生じさせたことはありません。しかし、将来不測の事態により環境問題が生じ、損害の賠償、製品の回収、生産の停止、浄化等の費用負担、罰金等の行政処分を受けることや社会的信用を失墜する可能性、あるいは新しい規制が施行され多額の費用負担が生じる可能性がないとは言えません。

 

(19) 人材確保

当社グループは競争力を維持するため、優秀な人材を継続的に確保・採用し、育成することが必要であると考えています。各分野での有能な人材確保における競争は高まっており、当社グループが人材を確保し育成できない場合には、事業の拡大にも支障をきたし、悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(20) 労使関係及び労働環境

当社グループは安定した労使関係の構築に努めています。日本におきましては労使協議会を定期的に開催し、職場環境、労働条件の改善について協議しており、労使関係の悪化による事業リスクは少ないと考えています。しかし、海外においては、労使慣行の相違が存在し、また法制度の変化、経済環境の変化、社会環境の変化等予期せぬ事象を起因とした労使関係の悪化、労働争議の可能性があり、その場合には事業の遂行に制約が生じる可能性があります。

また、安全で働きやすい職場環境作りを目指して取組んでいますが、設備の不具合、作業者の標準作業の不遵守等により、労働災害が発生する可能性があります。特に重大な労働災害が発生した場合には、事業に悪影響を及ぼす恐れがあります。

 

(21) 為替及び金利の変動

当社グループはグローバルに販売及び生産等の事業活動を展開しており、外貨建商取引及び投資活動等の損益は為替変動の影響を受けます。また、有利子負債の削減を軸に財務体質の強化に努めていますが、金利上昇は支払利息の増加を招き、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループは為替変動及び金利変動の悪影響を軽減すべく、外貨建債権債務の均衡を図り、また、社内規定に従い必要に応じヘッジ取引を行っていますが、その影響を完全に回避できるとは限りません。

さらに、為替変動により、売上高が目減りしたり、材料・部品の仕入れ価格が上昇し、製造コストに悪影響を及ぼす可能性もあります。

その他、海外関係会社の財務諸表は主に現地通貨で表示されていますが、連結財務諸表の作成の際に円換算しています。従いまして、現地通貨における価値が変わらない場合でも、円換算後の当社グループの資産及び負債、収益及び費用は為替変動の影響を受けます。

 

(22) 退職後給付

当社及び一部の国内子会社は、従業員の退職後給付に充てるため、確定給付型の年金制度及び退職一時金制度を有しています。また英国等の海外子会社でも確定給付型の制度が一部存続しています。

当社グループの退職給付費用、確定給付制度債務及び制度資産は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。従いまして、その前提条件の変更や制度資産の運用成績の悪化、信託している株式の株価下落、並びに会計基準の変更等が当社グループの業績及び財務状況へ悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当社は、2016年11月8日に創立100周年を迎えました。当社グループの企業理念の実現に向けて、創立100周年から10年後の2026年に目指していく姿を「NSKビジョン2026(あたらしい動きをつくる。)」として策定しました。

この「NSKビジョン2026」の下、当社グループは2016年度から2018年度迄の第5次中期経営計画を進めています。この中期経営計画では、「次の100年に向けた進化のスタート」をスローガンとし、「オペレーショナル・エクセレンス(競争力の不断の追求)」と「イノベーション&チャレンジ(あたらしい価値の創造)」を方針に据えて、持続的成長、収益基盤の再構築、新成長領域確立の3つの経営課題に取り組んでいます。

当連結会計年度の世界経済を概観すると、日本経済は消費の持ち直しや雇用情勢の着実な改善もあり、緩やかに回復しました。米国経済は雇用者数の増加や設備投資の増加を受け、引き続き堅調に推移しました。欧州では、消費の拡大や設備投資の緩やかな増加を受け、ユーロ圏を中心に回復傾向となりました。また、中国は各種政策効果もあり底堅く推移しました。その他アジアでは、各国で緩やかな回復の動きがみられました。

このような経済環境下、当連結会計年度の売上高は1兆203億38百万円と前期に比べて7.5%の増収となりました。営業利益は978億75百万円(前期比+49.8%)、税引前利益は972億48百万円(前期比+52.9%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は693億12百万円と前期に比べて52.1%の増益となりました。

 

当社グループのセグメントごとの市場環境と業績は次のとおりです。

 

(産業機械事業)

産業機械事業の回復が続いています。当社グループの状況を地域別にみると、日本では、工作機械及び電機向けを中心に増収となりました。米州は半導体製造装置や一般産業機械向けの売上高が増加しました。欧州においては、工作機械やアフターマーケット向けを中心に増収となりました。中国では、電機及びアフターマーケット向けが堅調に推移し売上高が増加しました。その他アジアにおいては、半導体製造装置向けを中心に需要の回復が続き増収となりました。

この結果、産業機械事業の売上高は2,662億49百万円(前期比+17.3%)、営業利益は283億33百万円(前期比+93.3%)となりました。

 

(自動車事業)

自動車事業は緩やかな拡大が続きました。当社グループの状況を地域別にみると、日本では、トランスミッション向けを中心に売上高が増加しました。米州は米国市場の減速により減収となりました。欧州は堅調な自動車販売を受け増収となりました。中国では、販売構成の影響もあり売上高は微増に留まりました。その他アジアにおいては、インドを中心に売上高が増加しました。

この結果、自動車事業の売上高は7,235億64百万円(前期比+3.9%)、営業利益は659億63百万円(前期比+2.1%)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は1,312億83百万円となり、前連結会計年度末に比べて82億89百万円減少しました。

 

    当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られたキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて158億10百万円増加し、837億46百万円の収入となりました。主な収入の内訳は、税引前利益972億48百万円、減価償却費及び償却費467億85百万円であり、一方で主な支出の内訳は、売上債権の増加124億64百万円、棚卸資産の増加103億82百万円、仕入債務の減少111億16百万円、法人所得税の支払額188億35百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動に使用されたキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて12億41百万円減少し、530億1百万円の支出となりました。主な支出の内訳は、有形固定資産の取得による支出613億97百万円であり、一方で主な収入の内訳は、その他の金融資産の売却及び償還による収入169億41百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動に使用されたキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて86億9百万円減少し、398億4百万円の支出となりました。主な収入の内訳は、長期借入れによる収入120億円、社債の発行による収入200億円であり、一方で主な支出の内訳は、長期借入金の返済による支出486億87百万円、配当金の支払額174億38百万円です。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループの販売・生産品目は極めて広範囲かつ多種多様であり、また見込み生産を行う製品もあるため、生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。このため、販売及び生産の状況については、「①財政状態及び経営成績の状況」に関連づけて記載しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年6月22日)現在において当社グループが判断したものです。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、連結財務諸表規則第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しています。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告金額及び偶発資産・負債の開示、並びに報告期間における収益・費用の報告金額に影響を与えるような見積り・予測を必要とします。結果として、このような見積りと実績が異なる場合があります。

なお、連結財務諸表作成にあたっての重要な会計方針等は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1) [連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 3.重要な会計方針の要約」に記載のとおりです。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(経営成績)

当連結会計年度における当社グループの経営成績の分析は次のとおりです。

 

当社グループでは、世界経済の緩やかな回復傾向の中で各事業セグメントの業績は好調に推移し、売上高及び営業利益ともに過去最高を更新することができました。

産業機械事業では、工作機械・半導体・電機などの各セクター向けが好調に推移し、旺盛な需要に伴う物量増加を背景に、売上高・営業利益ともに大きく伸ばすことができました。能力増強投資等により生産力強化を行うとともに、高付加価値製品や高収益セクターへ注力することでポートフォリオの改善を行い、収益力強化を進めております。今後も、市場におけるプレゼンスの中長期的拡大のため、成長分野に注力し、収益性を伴う事業の拡大を図っていきます。

また、自動車事業においては、グローバルに自動車生産台数の緩やかな拡大が継続し、特に日本のパワートレインビジネスが好調に推移したことで、過去最高の売上高を更新しました。材料価格の上昇などのコスト増要因はありましたが、生産性向上やその他の費用削減につとめたことにより、営業利益も9%台の利益率を維持することができました。今後も、パワートレインビジネスによる成長継続と、これまで蓄積してきた要素技術と新たに取組む技術開発によって、EV・自動運転などの自動車新技術への貢献を目指していきます。

 

 

(経営成績に重要な影響を与える要因)

当社グループの事業展開、経営成績及び財務状況等に重要な影響を与えるリスク要因については、「2[事業等のリスク]」に記載のとおりです。

 

(資本の財源及び資金の流動性)
(a) 財政状態の分析

資産合計は1兆923億10百万円となり、前連結会計年度末に比べて483億55百万円増加しました。主な増加は売上債権及びその他の債権162億45百万円、棚卸資産112億42百万円、有形固定資産226億91百万円、退職給付に係る資産92億2百万円であり、主な減少はその他の金融資産(流動)103億30百万円です。負債合計は5,312億96百万円となり、前連結会計年度末に比べて276億47百万円減少しました。主な増加は繰延税金負債58億23百万円であり、主な減少は仕入債務及びその他の債務84億15百万円、その他の金融負債(流動)20億72百万円、金融負債(非流動)142億30百万円、退職給付に係る負債58億17百万円、引当金(非流動)32億10百万円です。資本合計は5,610億14百万円となり、前連結会計年度末に比べて760億3百万円増加しました。主な増加は親会社の所有者に帰属する当期利益 693億12百万円、その他の資本の構成要素206億49百万円です。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて50億61百万円増加し5,113億46百万円となり、また、流動負債は、前連結会計年度末に比べて106億42百万円減少し3,079億60百万円となりました。その結果、流動比率は、前連結会計年度末の1.59倍に対して1.66倍となりました。有利子負債につきましては、有利子負債総額は前連結会計年度末から164億91百万円減少して2,509億8百万円となり、純有利子負債(有利子負債残高から現金及び現金同等物残高を差し引いたもの)は前連結会計年度末から82億2百万円減少し1,196億24百万円となりました。ネットD/Eレシオは、前連結会計年度の0.28から0.22となりました。1株当たり親会社所有者帰属持分は、前連結会計年度の873.11円から1,016.30円へ増加しました。また親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度の44.2%から49.2%となりました。

 

(b) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2[事業の状況]3[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。また、資本的支出の状況については、「第3[設備の状況]」に記載のとおりです。

 

(c) 財政政策

当社グループは現在、自己資金及び借入れ等により資金調達することとしています。運転資金につきましては、借入れによる資金調達を行う場合、期限が一年以内の短期借入金で、各々の連結会社が使用する現地通貨で調達することが一般的です。2018年3月末現在、短期借入金の残高は620億39百万円となっています。また、生産設備などの長期資金は、主として長期借入金及び社債で調達しています。2018年3月末現在、長期借入金・社債の残高は1,888億68百万円となっており、内訳は金融機関からの借入金1,088億68百万円、無担保社債800億円となっています。

今後も当社グループは、財務及び収益体質の強化により、有利子負債の削減を目指します。当社グループは、その健全な財務状況、営業活動によりキャッシュ・フローを生み出す能力、コミットメントライン契約150億円及びコマーシャルペーパー発行枠500億円などにより、当社グループの成長を維持するために必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能と考えています。

 

(3) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報

(並行開示情報)

IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに関する項目との差異に関する事項につきまして、当社は日本基準に基づく連結財務諸表を作成しておらず、差異の金額を算定することが困難であるため、以下の通り概算値を記載しています。

 

 

① 表示方法の変更

日本基準では、営業外収益、営業外費用、特別利益及び特別損失に表示していた項目を、IFRSでは財務関連項目を金融収益又は金融費用へ、それ以外の項目については、持分法による投資利益、その他の営業費用等へ表示しています。

 

② 退職給付に係る費用

日本基準では、発生した数理計算上の差異及び過去勤務費用をその他の包括利益として認識した後に、一定の期間で償却していました。IFRSでは、発生した数理計算上の差異はその他の包括利益として認識し、過去勤務費用は純損益として認識することが求められています。

この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、売上原価、販売費及び一般管理費が約42億円減少しています。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

(1) 基本方針

当社グループは、企業理念に定める「円滑で安全な社会に貢献し、地球環境の保全をめざす」を実現するため、お客様や社会のニーズを的確にとらえ、4つのコアテクノロジー(トライボロジー(摩擦・潤滑)技術、材料技術、解析技術、メカトロ技術)を駆使した製品や技術の開発を進めています。これらの開発活動を通して、高機能・新機能製品をタイムリーに市場へ供給することにより、省エネルギー、CO2排出抑制など地球環境保全を図るとともに、安全・安心な社会の実現に貢献します。

 

(2) 研究開発の成果

 

産業機械事業

当社グループは、持続可能な社会の実現に向けて、産業機械の効率改善に役立つ製品を開発しています。周囲からの異物侵入を防ぐ密封性と機械効率を向上させる低フリクションを両立させた深溝玉軸受用「低フリクション高密封シール」を開発し、信頼性の向上と共に、大幅な省エネの実現に貢献しています。高効率・高精度化が進む工作機械においては、ナットサイズのコンパクト化要求が高い欧州向けにドイツ工業規格(DIN)に準拠した、高速性と静音性の向上及び安定した作動特性を可能にする「欧州工作機械向け高速・静音こま式ボールねじ」を開発しました。また、生産性向上を目指す「インダストリー4.0」の動きに対応するため、工作機械用精密軸受を対象とした2次元コード軸受情報取得アプリを開発しました。これにより、お客様に製品情報を提供し、その生産や設計の効率向上に貢献すると共に、模造品対策強化として軸受の真贋判定を可能にしています。

NSKのメカトロ技術を適用した製品として、一つのボディで二つの独立した回転運動を出力する「2軸一体型モータ」では、コンパクト化のニーズに応え、従来開発品に対して体積および設置面積の半減を実現しました。

 

自動車事業

当社グループは、自動車の省燃費、省電費、小型軽量、安全性向上に貢献する製品開発を行っています。自動車の環境対応が進む中、ピックアップトラックや大型SUV、商用車などの車両でも燃費低減が重要な課題となっており、ハブ軸受のユニット化と低フリクション技術を適用した「高機能円すいころハブユニット軸受」を開発し、省燃費と信頼性向上に貢献します。また、新たな熱処理技術を開発することで、標準的なISO規格鋼で長寿命を可能にした、自動車用変速機向け「長寿命転がり軸受」を開発しました。これによりグローバルでの鋼材調達を容易にすると共に、軸受の小型軽量化を可能にし、省燃費・省電費に貢献しています。

自動車の電動化への対応として、「静音スラストニードル軸受」を開発し、電気自動車(以下、EV)やプラグインハイブリッド車のモータ走行時の静音性向上に貢献しています。充電1回あたりの航続距離が短いという、EVの課題を解決するため、当社は東京大学や東洋電機製造株式会社と共同で、インホイールモータで走行する車両に道路から直接ワイヤレス給電する技術を開発し、世界で初めて実証実験に成功しました。また、全く新しいコーナーモジュールである「バリオリンク サスペンション」は、ボールねじで伸縮する複数のサスペンションアームで構成され、自動車の動きをコントロールし、高度な安全性、快適性を実現します。当社グループは、開発で得た知見に基づき、車両のみならずインフラを含め、自動車の電動化及び自動運転に最適なシステムの探索を進め、その構成部品の商品化を目指します。

 

当連結会計年度の研究開発費はグループ全体で170億59百万円であり、その内訳は、産業機械事業35億32百万円、自動車事業132億22百万円、その他3億5百万円です。

 

なお、主な成果は次のとおりです。

(産業機械事業)

・ 深溝玉軸受用「低フリクション高密封シール」

・ 「欧州工作機械向け高速・静音こま式ボールねじ」

・ 工作機械用精密軸受情報取得アプリ

・ 「2軸一体型モータ」の小型化

 

(自動車事業)

・ ピックアップトラックや大型SUV、商用車などの自動車向け「高機能円すいころハブユニット軸受」

・ 自動車用変速機向け「長寿命転がり軸受」

・ 自動車の電動化ニーズを支える 「静音スラストニードル軸受」

・ 世界初 道路からインホイールモータへの走行中ワイヤレス給電に成功

・ 自動車の動きをコントロールする「バリオリンク サスペンション」