第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものである。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社は、経営の基本となる考え方を示す「グループ経営理念」の下に、高品質の商品、素材、サービスを通じ、お客様に最高の利便性と快適性を提供し続ける企業として、技術基盤の向上に挑戦するとともに、資本の論理の経営を徹底し、企業価値の最大化を目指す。また、高い倫理性と公正な競争をベースとしたフェアな企業活動、タイムリーで適切な情報開示と説明責任の遂行、地球環境への積極的対応、地域社会への積極的貢献などを、グループ共通の行動指針とし徹底して実行するとともに、グループ内での情報の共有化の徹底や時々の課題解決に最適な柔構造の組織運営の徹底など、当社の良き伝統である「フラット&スピードの経営」の一層の高度化を図り、グループ全体の収益力向上、事業拡大に全力を尽くしていく。

 

(2)目標とする経営指標

企業価値の最大化を経営の最重要課題のひとつとして位置づけ、FCF(フリーキャッシュフロー)、DVA(ダイキン流経済的付加価値)、ROA(総資本利益率)、ROE(株主資本利益率)など「率の経営」指標を経営管理の重要指標として、積極的な事業展開と経営体質の強化を推進している。特に企業価値の源泉であり、同時に全ての管理指標を向上させる総合指標としてFCFを最重視し、収益の増加、投資効率向上策にあわせて、売上債権及び在庫の徹底圧縮など運転資本面からもキャッシュフローを創出すべく取り組んでいく。

 

(3)中期的な会社の経営戦略

一昨年(平成28年)、当社グループは、平成32年度を目標年度とする戦略経営計画“FUSION20(フュージョン・トゥエンティ)”を策定した。新興国を中心とする需要の拡大や気候変動への影響など世界の様々な課題を踏まえながら、空調や化学など既存事業の強化と、事業領域の拡大や事業構造の転換に挑戦して、環境・省エネを初めとした顧客・社会の課題解決に貢献する新しい価値を生み出し、事業を通じて社会の持続可能な発展に貢献していく。

 

(4)企業集団の対処すべき課題

今後の世界経済については、米国の税制改正が消費・投資を牽引するほか、日本や欧州などの先進国経済も設備投資が回復して堅調さを維持すると見込まれるなど、緩やかな成長が続く見通しである。ただ、米国トランプ政権の保護主義政策、北朝鮮や中東の地政学リスクといった要因から、先行きに不透明感も漂っている。

このような事業環境のもと、当社グループは、本年(平成30年)のグループ年頭方針を「一人ひとりが壁を乗り越え、強みを結集して、新たなテーマに挑戦しよう」と定め、成果創出を目指していく。

具体的には、継続的に取り組んでいる販売力・営業力の強化、商品開発・生産・調達・品質力の向上、人材力強化などに磨きをかけ、さらなる成長に向けたテーマを推進するとともに、固定費の削減にも取り組んでいく。中でもテクノロジー・イノベーションセンターを中心に世界主要拠点での差別化技術・商品の創出を加速していくなど、中長期での持続的発展に向けた事業拡大に努めてまいる所存である。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがある。

なお、以下に記載の内容は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 主要市場での政治・経済状況及び製品需給の急激な変動

当社グループは、開発・生産・販売・調達などの事業活動をグローバルに展開しており、事業を展開している各々の地域・市場における政治・経済動向や、より厳しい環境規制の導入、競合他社との競争激化、素材価格の高騰等の事業環境の変化は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

また、当社はグッドマン社(平成24年度買収完了)などを始めとする企業買収や海外代理店の買収、生産拠点の設立などの投資・出資を行い、生産・販売網のさらなる拡充とグループ全体の収益向上を図っているが、その進捗状況によっては当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(2) 冷夏及び天候不順に伴う空調需要の変動

当社グループの事業内容は、空調・冷凍機事業が連結売上高の89.6%を占めていることから、世界の主要マーケットでの気象情報や需要動向の把握に努めるとともに、その変化に対して影響を最小限にとどめるべくフレキシブルな生産方式や販売政策を採っているが、冷夏及び天候不順に伴う空調需要の変動の大きさによっては業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(3) 為替相場の大幅な変動

当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は平成30年3月期76.3%であり、今後もグローバル展開の加速により、海外売上高の割合がさらに増加する見込みである。連結財務諸表の作成にあたっては、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目を円換算している。従って、換算時の為替レートにより、これらの項目は、各地域の現地通貨における価値が変わらなかったとしても円換算後の価値が影響を受けることになる。また、部材の調達、商品やサービスについて外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によって製造コストや売上高に影響する可能性がある。当社グループでは、これらの為替リスクを回避するため、短期的には為替予約等によりリスクヘッジを行っており、中長期的には為替変動に連動した最適調達・生産分担の構築、通貨毎の輸出入バランス化等により為替変動に左右されない体質の実現に取り組んでいるが、これにより当該リスクを完全に回避できるものではない。

 

(4) 重大な品質クレーム

当社グループでは国内外を問わず生産する全ての商品について、万全の品質管理に努めている。

新商品の開発については、設計・生産技術・購買・サプライヤーを開発の前段階から巻き込んだ四位一体となった同時並行の協業展開へとプロセスの革新を進め、品質、コスト、さらには開発スピードの革新を図っている。また、予期せぬ品質クレームに備え賠償保険に加入しているが、重大な品質クレームが発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(5) 重大な生産トラブル

当社グループでは国内外を問わず全ての工場の設備の予防保全に努めるとともに、特に化学事業については、設備の安全審査、保安管理体制等の強化を図っている。また、生産トラブルに関しては、設備の損傷や逸失利益のための保険に加入しているが、重大な生産トラブルが発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(6) 保有する有価証券の時価の大幅な変動

当社グループの保有する有価証券は、主に取引先との相互の事業拡大や取引関係の強化のために保有しているものであるが、株式市況の動向や取引先の経営破綻等によって当社グループの業績に影響する可能性がある。

 

 

(7) 固定資産の減損

当社グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上している。これらの資産については、今後の業績動向や時価の下落等によって、期待されるキャッシュ・フローを生み出さない状況により、減損処理が必要となる場合がある。これらの処理が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

(8) 自然災害

地震・台風・洪水等の自然災害が発生した場合、当社グループの生産、販売、物流拠点に影響が出ることで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(経営成績等の状況の概要)

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当期の世界経済は、期末に金融・為替市場の乱高下があったものの、実体経済は堅調な拡大が続いた。米国経済は個人消費や設備投資の拡大により底堅く推移した。欧州経済は個人消費の回復が景気を下支えした。アジア・新興国経済は先進国の景気拡大により輸出が持ち直し、総じて安定した成長が続いた。中国経済についてもインフラ投資や輸出が拡大し、安定的に成長した。わが国経済は雇用環境が改善し、個人消費や設備投資の回復基調が続いた。

このような事業環境のもと、当社グループは、平成29年のグループ年頭方針を「揺るぎない基軸に新たな力を融合し、グループ一丸で企業価値を高めよう」と定め、世界各地域での空調主要商品の販売拡大や化学事業の推進、全社を挙げてのコストダウンに取り組み、売上高・利益の確保に努めた。平成32年度を目標年度とする戦略経営計画“FUSION20(フュージョン・トゥエンティ)”の2年目としても着実に成果創出を図った。

当期の業績については、売上高は2兆2,905億60百万円(前期比12.1%増)となった。利益面では、営業利益は2,537億39百万円(前期比10.0%増)、経常利益は2,550億19百万円(前期比10.4%増)となった。米国における税制改正により法人税等が減少した影響もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は1,890億51百万円(前期比22.8%増)となった。

 

セグメントごとの経営成績を示すと、次のとおりである。

 

①  空調・冷凍機事業

空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前期比11.9%増の2兆528億84百万円となった。営業利益は、前期比7.0%増の2,234億63百万円となった。

国内業務用空調機器の業界需要は、設備投資と建築着工が堅調に推移したことにより、前期を上回った。当社グループは、店舗・オフィス用では、主力商品である『Eco-ZEAS(エコジアス)』をはじめとするスカイエアシリーズに加え、個別運転が可能でスリム設計のマルチエアコン『machi(マチ)マルチ』を新たにラインナップし、同市場の需要を取り込み販売を拡大した。また、ビル用マルチエアコンでは、事務所や工場などの好調な需要を背景にした『VRV』シリーズの販売拡大により、売上高は前期を上回った。

国内住宅用空調機器の業界需要は、夏季前半が猛暑であった上期に引き続き、下期も堅調に推移し、前期を上回った。当社グループは、独自の加湿機能を搭載する高級機種『うるさら7(セブン)』に加え、中級機種の販売を拡大し、売上高は前期を上回った。

米州では、堅調な需要に加えて、販売戦略が奏功し、地域全体の売上高は前期を上回った。住宅用空調機器は、ハリケーンによる影響はあったが、販売網の拡大・強化に取り組んだ結果、売上高は前期を上回った。ライトコマーシャル機器(中規模ビル向け業務用空調機器)は、ビル用マルチ商品でシリーズ別・ルート別の販売施策を展開した結果、売上高は前期を上回った。 大型ビル(アプライド)空調分野は、原材料市況悪化等の厳しい状況の中、販売網強化や商品ラインナップの拡充によりアプライド機器の販売とサービス事業を拡大した。また、中南米の空調エンジニアリング会社買収により中南米での販売も伸ばし、売上高は前期を上回った。

 

中国では、個人消費・民間需要は依然として堅調であり、成長は地方都市に拡大している。当社グループは市場の変化に合わせて個人消費を取り込み、販売網を地方都市に拡大した。これらの結果、全地域・全商品で販売を拡大し、売上高は前期を上回った。足元の原材料価格高騰に対しては、部品の内作化や生産性向上などによりコストダウンを推進し、営業利益も前期を上回った。住宅用市場では、独自専売店「プロショップ」を中心に提案力・工事力を強化し、新たな生活スタイルを創造する住宅用マルチエアコン「ニューライフマルチシリーズ」を中心に中高級住宅市場を重点に販売を拡大した。業務用市場では、省エネ性・設計自由度を向上させた業務用マルチエアコン『VRV-X』を重点に販売を拡大した。顧客の多様なニーズに対応した総合提案力を強化し、ビルから一般店舗、新築から更新まで幅広く市場を攻略した。さらに設計事務所・デベロッパーへのスペックイン活動や大手ユーザーへの直接提案を強化し、前期を上回る引合いを獲得した。アプライド空調機器市場では、米国系メーカーに対抗して商品ラインナップを拡充し、さらにサービス事業を強化し、販売を拡大した。

アジア・オセアニアでは、地域全体の売上高は前期を上回った。東南アジアの住宅用空調機器は、第1四半期の天候不順により販売が落ち込んだが、第2四半期以降の販売が前期を上回り、年間では売上高は前期並みとなった。東南アジアの業務用空調機器では、販売店網の拡充等により、売上高は前期を上回った。インドでは、販売店網の拡充等により、住宅用空調機器及び業務用空調機器ともに売上高は前期を大きく上回った。

欧州では、堅調な景気を背景に、地域全体の売上高は前期を上回った。住宅用空調機器では、フランス、スペイン等の主要国での販売が堅調に推移した。最大市場のイタリアにおいても流通在庫が適正化するなど事業環境も好転し、住宅用マルチ商品の販売強化策等で販売も回復したが、上期での売上高が前年同期を下回っていたため、年間の売上高は前期並みとなった。一方、業務用空調機器では、堅調な建築着工及び更新需要の取り込みと店舗向け空調機器の新商品投入効果等により販売は好調に推移し、売上高は前期を上回った。また、ヒートポンプ式温水暖房機器では、専任販売体制の強化と新商品の投入により、フランスをはじめ欧州主要各国での販売を伸ばし、売上高は前期を上回った。

中東・アフリカでは、地政学的な政情不安、原油価格下落と各国の緊縮財政の影響で政府系物件の受注が落ち込む中、サウジアラビア等で民間中小物件や更新物件の受注を強化したことにより、売上高は前期を上回った。トルコでは一昨年のクーデター未遂以降の政情不安は沈静化し、堅調な個人消費と住宅用空調機器、暖房機器の販売強化により、売上高は前期を大きく上回った。

舶用事業は、海上コンテナ冷凍装置の販売台数増加により、売上高は前期を上回った。

 

②  化学事業

化学事業セグメント合計の売上高は、前期比16.8%増の1,831億47百万円となった。営業利益は、前期比39.4%増の255億10百万円となった。

フッ素樹脂は、米国市場でのLAN電線用途需要が減少したものの、国内・中国・アジアを中心に半導体関連需要が好調に推移し、フッ素樹脂全体での売上高は前期を上回った。また、フッ素ゴムについても、世界各地域で自動車関連分野での需要が堅調に推移し、売上高は前期を大きく上回った。

化成品のうち、撥水撥油剤は中国・アジア地域で新商品への切替えが進み、売上高は前期を上回った。表面防汚コーティング剤は、中国・アジア地域での需要伸び悩み等の影響により、売上高は前期を下回った。半導体洗浄用途向けのエッチャントは、関連需要が好調なアジアでの販売が伸長し、売上高は前期を大きく上回った。これらの結果、化成品全体では売上高は前期を上回った。

フルオロカーボンガスについては、原材料価格高騰及び需給逼迫に対応した欧州を中心とする価格改定により、ガス全体の売上高は前期を大きく上回った。

 

③  その他事業

その他事業セグメント合計の売上高は、前期比5.2%増の545億29百万円となった。営業利益は、前期比26.8%増の47億56百万円となった。

産業機械用油圧機器は、国内及び米国市場が堅調に推移し、売上高は前期を上回った。建機・車両用油圧機器は、国内及び米国主要顧客向け販売が堅調に推移し、売上高は前期を上回った。

特機部門では、防衛省向け砲弾・誘導弾用部品の売上高は前期を下回った。在宅酸素医療用機器の売上高は前期並みとなった。

電子システム事業では、主力商品の設計・開発分野向けデータベースシステムにおいて、グローバルでの品質管理や設計開発期間の短縮といった顧客ニーズに合致する商品開発を進め、売上高は前期並みとなった。

 

 

総資産は、2兆4,899億53百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,338億5百万円増加した。

流動資産は、受取手形及び売掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べて779億26百万円増加し、1兆2,378億11百万円となった。

固定資産は、投資有価証券の時価変動による増加等により、前連結会計年度末に比べて558億78百万円増加し、1兆2,521億42百万円となった。

負債は、長期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べて549億7百万円減少し、1兆1,656億32百万円となった。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,887億12百万円増加し、1兆3,243億21百万円となった。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の47.2%から52.1%となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の3,802.10円から4,433.62円となった。

また、有利子負債については、長期借入金の減少等により、前連結会計年度に比べて550億59百万円減少し、5,543億70百万円となり、有利子負債比率(有利子負債/総資産)は、25.9%から22.3%へ減少した。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動では、法人税等の支払額の増加等により、前連結会計年度に比べて439億23百万円収入が減少し、2,237億40百万円の収入となった。投資活動では、連結子会社買収による支出の減少等により、前連結会計年度に比べて13億64百万円支出が減少し、1,274億58百万円の支出となった。財務活動では、短期借入金の減少等により、前連結会計年度に比べて204億11百万円支出が増加し、939億54百万円の支出となった。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べて399億54百万円減少し、129億33百万円のキャッシュの増加となった。

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

空調・冷凍機事業

1,548,244

9.6

化学事業

166,798

19.0

その他事業

49,125

4.5

合計

1,764,168

10.3

 

(注) 1  金額は販売価格による。

2  上記の金額には、消費税等は含まれていない。

 

(2) 受注状況

当社グループの製品は、大部分見込み生産であるため、受注高及び受注残高の記載は省略した。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

空調・冷凍機事業

2,052,884

11.9

化学事業

183,147

16.8

その他事業

54,529

5.2

合計

2,290,560

12.1

 

(注) 1  セグメント間の取引については相殺消去している。

2  いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略した。

3  上記の金額には、消費税等は含まれていない。

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

以下に記載の内容については、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれている。

なお、連結財務諸表作成にあたっての重要な会計方針等は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりである。

 

(2) 財政状態

①資産

総資産は、2兆4,899億53百万円となり、前連結会計年度末に比べて1,338億5百万円増加した。

流動資産は、受取手形及び売掛金の増加等により、前連結会計年度末に比べて779億26百万円増加し、1兆2,378億11百万円となった。

固定資産は、投資有価証券の時価変動による増加等により、前連結会計年度末に比べて558億78百万円増加し、1兆2,521億42百万円となった。

 

②負債及び純資産

負債は、長期借入金の減少等により、前連結会計年度末に比べて549億7百万円減少し、1兆1,656億32百万円となった。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加等により、前連結会計年度末に比べて1,887億12百万円増加し、1兆3,243億21百万円となった。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の47.2%から52.1%となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の3,802.10円から4,433.62円となった。

 

(3) 経営成績

①売上高

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比12.1%増の2兆2,905億60百万円となった。

空調・冷凍機事業では、米州・欧州・アジアを中心に海外での販売が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比11.9%増の2兆528億84百万円となった。

化学事業では、半導体関連や自動車関連等の需要が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比16.8%増の1,831億47百万円となった。

その他事業全体では、産業機械用油圧機器や建機・車両用油圧機器が国内及び米国市場で堅調に推移し、売上高は前連結会計年度比5.2%増の545億29百万円となった。

 

②営業費用、営業利益

売上原価は、前連結会計年度比13.6%増加し、1兆4,917億31百万円となった。

販売費及び一般管理費については、前連結会計年度比9.0%増加し、5,450億89百万円となった。人件費の増加が主な要因である。

以上の結果、営業利益は前連結会計年度比10.0%増の2,537億39百万円となった。

なお、セグメントの営業損益については、空調・冷凍機事業では、前連結会計年度比7.0%増の2,234億63百万円の営業利益となり、化学事業では、前連結会計年度比39.4%増の255億10百万円の営業利益となり、その他事業は前連結会計年度比26.8%増の47億56百万円の営業利益となった。

 

③営業外損益、経常利益

営業外損益は、持分法による投資利益の計上額が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて10億35百万円増加し、12億79百万円のプラスとなった。

経常利益は、前連結会計年度比10.4%増の2,550億19百万円となった。

 

④特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益

特別損益は、関係会社整理損の計上等により、前連結会計年度に比べて27億58百万円減少し、31億62百万円のマイナスとなった。

親会社株主に帰属する当期純利益は、米国における税制改正により法人税等が減少した影響もあり、前連結会計年度比22.8%増の1,890億51百万円となった。

 

(4) キャッシュ・フロー

営業活動では、法人税等の支払額の増加等により、前連結会計年度に比べて439億23百万円収入が減少し、2,237億40百万円の収入となった。投資活動では、連結子会社買収による支出の減少等により、前連結会計年度に比べて13億64百万円支出が減少し、1,274億58百万円の支出となった。財務活動では、短期借入金の減少等により、前連結会計年度に比べて204億11百万円支出が増加し、939億54百万円の支出となった。これらの結果に為替換算差額を加えた現金及び現金同等物の当連結会計年度の増減額は、前連結会計年度末に比べ399億54百万円減少し、129億33百万円のキャッシュの増加となった。

資金の調達は、内部留保の蓄積を基本とし、自己資金中心に行うことを原則としているが、必要に応じ、金融機関からの借入や社債等で調達している。
 当連結会計年度では、金融機関からの長期借入によって、45,180百万円を調達し、投資資金の一部に充当した。

 

キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりである。

 

 

平成26年3月期

平成27年3月期

平成28年3月期

平成29年3月期

平成30年3月期

自己資本比率(%)

39.9

45.3

46.3

47.2

52.1

時価ベースの自己資本比率(%)

83.9

103.7

112.1

138.8

137.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (年)

3.9

4.1

2.7

2.3

2.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

18.0

16.8

25.9

26.8

20.9

 

 

(注)  自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

 

※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出している。

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出している。

※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用している。

※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としている。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用している。

 

4 【経営上の重要な契約等】

提出会社

(1) 合弁契約

 

相手先

国名

契約内容

契約期間

アルケマ アジア エスエイエス

フランス共和国

HFC125の製造・販売に関する合弁契約

自  平成19年8月1日
至  合弁会社設立から50年後

アルケマ チャイナ インベストメント カンパニー リミテッド

中華人民共和国

アルケマ アジア エスエイエス

フランス共和国

新冷媒の販売に関する合弁契約

自  平成19年8月1日
至  合弁会社設立から50年後

中蛍集団有限公司

中華人民共和国

無水フッ酸の製造・販売に関する合弁契約

自  平成19年8月14日
至  合弁会社設立から50年後

珠海格力電器股有限公司

中華人民共和国

空調機用基幹部品の製造・販売に関する合弁契約

自  平成21年2月18日
至  合弁会社設立から20年後

珠海格力電器股有限公司

中華人民共和国

金型の製造・販売に関する合弁契約

自  平成21年2月18日
至  合弁会社設立から20年後

ダンフォス パワー ソリューションズ インク

アメリカ合衆国

建機車両用油圧機器の製造・販売に関する合弁契約

自  平成24年10月30日
至  定めなし

 

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、世界規模での地球温暖化やエネルギー問題への関心の高まりを受け、地球環境問題に対して積極的に貢献し事業拡大するべく、先端的な研究開発に取り組んでいる。

平成27年には、ダイキングループの技術・商品開発の中核施設として、グループ内はもちろんのこと、産産・産学・産官協業など世界中の知恵を融合し、最先端のコア技術・基盤技術の研究開発と、顧客に新しい付加価値を提供する差別化商品の開発を行うテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を開所した。

また、欧州・中国をはじめ、グローバル各拠点の開発機能も強化しており、国内の研究開発部門で生み出した新技術を利用し、現地ニーズに合った商品の開発を行っている。

加えて昨年(平成28年)には、最先端技術が集積するシリコンバレーに、技術探索拠点としてテクノロジー・オフィスを設置した。

これらの取組みにより、研究開発の大幅な効率化とスピードアップを図り、グローバル各地域で差別化商品を生み出していく。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費は、620億50百万円であり、当連結会計年度における各事業別の主要な取り組みと成果及び研究開発費は次の通りである。

 

①  空調・冷凍機事業

住宅用空調機器の壁掛形エアコン『うるさら7』において、風が人に当たりにくい快適気流の「冷房時のサーキュレーション気流、暖房時の垂直気流」、冷房時の温度と湿度を双方コントロールする「プレミアム冷房」等で快適な空間を実現し好評を得ているが、この快適空間を素早く実現させるため、運転開始時の圧縮機制御、気流制御に磨きをかけ、冷房時における快適空間到達時間を40%短縮した。

また、インテリアの多様化・個性化に伴い、部屋内に常設するエアコンの室内機の大型化や表面の樹脂によりインテリアとマッチしにくい等の状況がある中、省エネ基準を達成しながら業界最薄の厚さ185㎜を実現し、室内機の質感にも拘り、『うるさら7』に搭載している快適な機能も継承した『risora(リソラ)』を平成30年3月に発売した。

住宅設備機器において、近年の高齢化や居室空調の普及に伴い、洗面・廊下等の非居室と居室の温度差が大きく、ヒートショックを起こすリスクが高まっていることに着目し、小空間に設置可能な業界最小サイズの小空間マルチカセット形エアコン『ココタス』を平成30年2月に発売した。従来の天井埋込カセット形に比べ、化粧パネルを約68%小型化したコンパクト室内機を実現している。また、多様化するライフスタイルに応じて、今までの非居室に『ココタス』を設置することで居室化し、住空間を個性豊かに変える新しい発想のエアコンとして新しいライフスタイルを提案していく。

業務用空調機器において、都市部に多い狭小地への設置に対応した店舗・オフィス用マルチエアコンを平成29年4月に発売した。限られた場所でも搬入・設置しやすい軽量コンパクトな横吹形室外機を採用し、従来のビル用マルチエアコン室外機に比べ設置面積を最大58%削減して小型化を実現した。容量は4馬力から12馬力まで幅広く揃え、ビル用マルチエアコンの全室内機に接続、個別運転を可能とし、幅広い用途の建物に対応している。

また、同時期に店舗・オフィス用エアコン『FIVE STAR ZEAS』を新発売し、利用者から施工者まですべての人の使いやすさを追求した「直感リモコン」を採用した。快適性・省エネ性・利便性を考慮した多くの機能を搭載することにより、複雑化したリモコンを見直し、高齢者や訪日外国人でも直感で操作できる使いやすさを実現した。

ビル用マルチエアコン室内機において、工場等の作業空間の対人空調として一人ひとりを快適にする『マルチキューブ』エアコンの発売を開始した。キューブ型のコンパクト室内機に大型のプロペラファンを搭載し、冷房時の吹出し温度制御を行うことで個人に合わせたスポット空調を行うことが可能となった。1台ごとに運転・停止が可能で無駄な稼働とそれに伴う電気代のロスが抑えられる。また、長尺配管により大空間のレイアウトにも自在な対応が可能となった。従来型の工場ライン空調ではダクト吹出しであったものを『マルチキューブ』を採用することでダクト工事が不要で据付や生産ライン変更に対しても柔軟な移設対応が可能となった。

アプライド機器においては、北米では、小型ゾーン向けのエアハンドリングユニットを平成29年6月に発売した。また、大風量ファンコイルも平成29年10月に発売した。さらに、顧客ニーズに応えるため、高効率型の水冷スクリューチラーを平成29年4月に発売した。

欧州では、平成29年5月に高外気対応インバータスクリューチラーを中東向けに開発した。また、昨年発売した高効率インバータスクリューチラーのオプション(マリーン、ヒートリカバリー)対応機や急速に需要が高まるHFO冷媒対応機を平成30年1月に開発した。その他、平成30年に発効する規制強化(エコデザイン)に対応するため、ミニチラー・スクロールチラーの効率アップや熱回収需要に対応する冷温水同時取出しチラーの開発を行った。

中国では、チラー性能に対する新GB規制が施行され、基準値が変更されたことに伴い、既存単段圧縮機(WSC)の性能改善のため、モデルチェンジを実施した。

 

空調・冷凍機事業に係る研究開発費は、540億54百万円である。

 

②  化学事業

化学事業の研究開発は、豊富なフッ素素材や多岐にわたるフッ素化学関連技術を元に新商品開発及び用途開発を行っている。

フッ素樹脂・ゴムではフッ素材料が得意とする耐熱性や耐薬品性・誘電特性などを活かし、自動車・半導体・ワイヤー&ケーブル(IT分野)などでの差別化新商品研究を行っている。その他に撥水撥油性を活かしたテキスタイル処理剤の開発、防汚性を活かした情報端末用指紋付着防止剤、フッ素の非粘着性・耐薬品性を活かしたコーティング材料、さらには含フッ素化合物の機能性を活かした医薬中間体の受託合成など、フッ素に関する幅広い研究開発を行っている。冷媒分野では、環境規制対応の次世代冷媒に開発を継続している。

これらの開発に加え、周辺事業領域の研究開発や用途開発としては、フィルム等の加工品や他素材との複合材料開発、先端材料研究としてはメディカル分野・光学分野・環境分野・電池エネルギー分野などで新たな部材・デバイスビジネスの探索を進めることによってフッ素化学グローバルNo.1、オンリーワンのケミカルソリューション事業展開を目指している。特に次世代パワー半導体分野では、独自のフッ素樹脂を用いることでポリプロピレンと比べ誘電率が約5倍となるフィルムコンデンサー用の新素材を開発した。

これらの研究開発を加速・推進するべく、化学事業部では新商品開発の確実な実行を担い、TICにおいては、化学事業につながる次世代テーマの探索を実施している。

また、市場が拡大する東南アジアでは、販売・技術系サポート・マーケティング機能を持つダイキン・ケミカル・サウスイーストアジア社を設立し、顧客ニーズに合わせた商品開発と顧客開拓を加速し、フッ素化学事業の更なる拡大を図る。

 

化学事業に係る研究開発費は、61億68百万円である。

 

③  その他事業

油機関連では、油圧技術とインバータ技術を融合させた商品であるハイブリッド油圧システムの特徴を活かし、従来の油圧システムではなし得ない省エネ性と高機能を実現している。また、国内外での採用拡大に取り組む中低圧・小容量市場に加え、高圧・大容量市場への用途開発を進めている。

プレスなどの産業機械向けの「スーパーユニット」は工場の電力削減の切り札として省エネ性で高い評価を得ており、低騒音、発熱低減、タンク油量削減による作業環境改善や環境負荷低減にも寄与している。

また、電動に匹敵する高い応答性と省エネ性を実現した成形機向けの大型システムも市場に投入し、異電圧電源対応などアジア各国、その他の地域特性に合わせた機種シリーズを拡充し、各地域での採用が進んでおり、プレスなど、他の用途でのグローバル展開、拡販も進めている。

さらに、特殊車両用の省エネシステムについても開発を進めており、車両向けの油圧ハイブリッドシステムが実機採用されている。

このように従来油圧システムに加えて、その枠を超えた先進的な環境対応商品をグローバルに提供する商品と技術の開発を進めている。

特機関連では、主に防衛省向け砲弾・誘導弾用部品に関する研究を行っている。

 

その他事業に係る研究開発費は、18億27百万円である。