当期の世界経済は、米国では堅調な個人消費が景気を下支えした。欧州景気は緩やかな回復基調にあるものの、地政学リスクなどがマイナス要因となった。新興国経済は、中国や資源国を中心に減速した。
わが国経済は、設備投資をはじめとする内需が堅調に推移したが、海外経済の減速が景気の下押し要因となった。
このような事業環境のもと、当社グループは、平成27年のグループ年頭方針を「未来を創造し、変化の時代を勝ち抜こう」と定め、年初よりグローバル各地域にて需要の創出に取り組んだ。特に独自の販売網を構築し、差別化商品を矢継ぎ早に投入するなどの事業展開を行った中国やアジアでの空調事業を中心に、主要製品・サービスを拡販してきた。さらには全社を挙げてトータルコストダウンをより一層推進するなど、平成27年度を最終年度とする戦略経営計画“FUSION15(フュージョン・フィフティーン)”の目標達成に向けコア戦略テーマの完遂、収益拡大に努めた。
当期の業績については、米州・アジアを中心に海外での販売が好調に推移したことに加え、主に米ドルを中心とした通貨の円安による円貨換算額の増加により、売上高は2兆436億91百万円(前期比6.7%増)となった。営業利益は2,178億72百万円(前期比14.3%増)、経常利益は2,095億36百万円(前期比7.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,369億86百万円(前期比14.5%増)となった。
当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加や仕入債務の増加等により、前連結会計年度に比べて657億62百万円増加し、2,261億86百万円のキャッシュの増加となった。投資活動では、固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度に比べて281億62百万円減少し、1,054億93百万円のキャッシュの減少となった。財務活動では、前連結会計年度に社債の発行による収入があったこと等により、前連結会計年度に比べて23億48百万円減少し、854億21百万円のキャッシュの減少となった。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べて42億55百万円増加し、2,912億5百万円となった。
また、有利子負債については、長期借入金の減少等により、前連結会計年度に比べて534億32百万円減少し、6,089億80百万円となり、有利子負債比率(有利子負債/総資産)は、29.3%から27.8%へ減少した。
セグメントごとの業績を示すと、次のとおりである。
① 空調・冷凍機事業
空調・冷凍機事業セグメント合計の売上高は、前期比6.8%増の1兆8,280億12百万円となった。営業利益は、前期比13.7%増の1,937億85百万円となった。
国内業務用空調機器では、建築着工の伸び悩みから、業界需要は前期を下回る水準で推移した。当社グループも、低調な業界需要の影響を受け販売台数は前期を下回ったが、全シリーズに新冷媒HFC32(R32)を採用した店舗・オフィス用エアコン『FIVE STAR ZEAS(ファイブスタージアス)』、『Eco-ZEAS(エコジアス)』及び大型空調機(アプライド製品)の販売拡大に取り組み、売上高は前期並みとなった。
国内住宅用空調機器では、夏・冬の商戦時の天候不順はあったが、前期の業界需要が不振であったことから、年間での業界需要は前期並みとなった。当社グループは、ルームエアコン『うるさら7(セブン)』のブランド力を活かし、全シリーズでの販売拡大に取り組み、前期並みの売上高となった。
欧州では、夏季の好天により主力の南欧・中欧市場の需要が急拡大した中、現地生産の強みを活かすタイムリーな商品供給と季節を通じて販売活動の強化に取り組んだことにより、住宅用空調機器の売上高は前期を大きく上回った。業務用空調機器でも、イギリス・ドイツでの建築需要の回復に減速がみられる中、各国での販売店訪問の強化やプロジェクトのフォローアップの強化により、売上高は前期を上回った。また、ヒートポンプ式温水暖房機器でも、環境規制強化による需要拡大をとらえ、主力のフランス市場を中心に販売を伸ばした。新興国市場においては、中東・アフリカでは、湾岸諸国での原油価格低迷の長期化や、地政学リスクの高まりを背景に、下半期において顧客都合による大型物件の遅延が発生したが、中小型物件の受注強化に取り組んだこと及び遅延物件の出荷が進んだ結果、売上高は前期を大きく上回った。また、トルコ・ロシアでも受注活動を強化したことにより、売上高は前期を上回った。
中国では、大型投資・不動産物件の減少など厳しい事業環境が続いたが、当社グループは、底堅い個人消費を取り込むため小売・街売に注力した。上半期は景気減速の影響もあったが、下半期以降は新製品の投入などにより販売は前期並みに回復し、さらに部品の内作化を軸としたコストダウン及び原材料市況軟化・為替効果を取り込み、当期の地域全体の売上高は前期並みを確保し、営業利益は前期を上回った。住宅用空調機器は、小売・街売向け専売店「プロショップ」の強みである提案力・工事力を活かし、顧客に様々な生活スタイルを提供する「ニューライフマルチシリーズ」を拡販した。住宅用空調機器の売上高は前期並みとなったが、需要が堅調な中高級住宅市場で住宅用マルチエアコンが販売を牽引し、下半期以降の売上高は前期を上回った。業務用・大型ビル空調機器は、景気減速の影響のあるなか、需要が比較的堅調な店舗・一般事務所の改装ニーズの取り込みを図り、下半期は回復基調となったが、売上高は前期を下回った。
アジア・オセアニアでは、販売店網の強化に取り組んだ結果、地域全体の売上高は前期を上回った。特に、ベトナム・インドネシアでは中間層の伸びに伴い拡大している住宅用空調機器の需要を着実に取り込み、前期から売上高を大幅に伸ばした。
米州では、地域全体の売上高は前期を上回った。住宅用空調機器の業界需要は、省エネ性能に関する法規制強化の前期駆け込み需要の反動及び暖冬影響により、前期を下回ったが、当社機器売上高は前期を上回った。ライトコマーシャル機器(中規模ビル向け業務用空調機器)は、ルート別の販売施策を展開し、売上高は前期を上回った。アプライド機器は、前期を上回る需要水準の中、エアハンドリングユニット・チラー等の機器販売とサービス事業、中南米での販売を伸ばし、売上高は前期を上回った。
舶用事業では、海上コンテナ冷凍装置の販売増加により、売上高は前期を上回った。
② 化学事業
化学事業セグメント合計の売上高は、前期比8.5%増の1,622億85百万円となった。営業利益は、前期比24.6%増の206億20百万円となった。
フッ素樹脂は、中国市場における競合他社の低価格販売による攻勢や、通信基地向け電線用途等での販売減、さらには米国市場における競合他社や中国・インド生産品の低価格販売による影響があるものの、日本・アジアを中心とした半導体関連の需要が好調に推移し、売上高は前期を上回った。また、フッ素ゴムについても、欧州の堅調な自動車関連需要、アジア及び米国での拡販等により売上高は前期を上回った。
化成品は、撥水撥油剤の新規市場参入等により、米国・中国を中心に販売が伸長し、売上高は前期を上回った。タッチパネル等に用いられる表面防汚コーティング剤は、堅調な需要に支えられ、売上高は前期を上回った。半導体洗浄用途向けのエッチング剤は、関連需要が好調な日本・アジアでの販売が伸長し、売上高は前期を上回った。中間体は医薬や液晶用途向けが好調な欧州での販売が大きく伸長した。これらを受けて、化成品全体での売上高は前期を上回った。
フルオロカーボンガスについては、中国での市況悪化に対応し販売を抑制したため、売上高は前期を下回ったが、ソルベイ社より買収した欧州ガス事業が新たに加わったことにより、ガス全体の売上高は前期を大きく上回った。
③ その他事業
その他事業セグメント合計の売上高は、前期比2.0%減の533億93百万円となった。営業利益は、前期比1.5%減の35億29百万円となった。
産業機械用油圧機器は、米国市場が堅調に推移したが、国内及びアジア市場の需要停滞の影響により、売上高は前期並みとなった。建機・車両用油圧機器は、国内主要顧客の米国向け需要が堅調に推移したが、国内需要は排ガス規制前の駆け込み需要の反動影響があり、売上高は前期並みとなった。
特機部門では、在宅酸素医療用機器の販売は堅調に推移したが、防衛省向け砲弾の売上高は減少した。
電子システム事業では、IT投資が緩やかに増加しつつある中、設計・開発分野向けデータベースシステムを中心に販売を伸ばした。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 | 生産高(百万円) | 前年同期比(%) |
空調・冷凍機事業 | 1,349,846 | 3.9 |
化学事業 | 145,377 | 9.7 |
その他事業 | 48,470 | △0.8 |
合計 | 1,543,694 | 4.2 |
(注) 1 金額は販売価格による。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていない。
当社グループの製品は、大部分見込み生産であるため、受注高及び受注残高の記載は省略した。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 | 販売高(百万円) | 前年同期比(%) |
空調・冷凍機事業 | 1,828,012 | 6.8 |
化学事業 | 162,285 | 8.5 |
その他事業 | 53,393 | △2.0 |
合計 | 2,043,691 | 6.7 |
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去している。
2 いずれの相手先についても総販売実績に対する割合が100分の10未満のため、相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合の記載を省略した。
3 上記の金額には、消費税等は含まれていない。
今後の世界経済については、米国は個人消費が景気を下支えするほか、欧州経済も緩やかな回復基調を維持する見通しである。新興国経済は、中国や資源国を中心に減速傾向にある。
わが国経済は、低金利を背景に住宅投資が堅調に推移する一方で、海外経済の減速が景気の下押し要因となる見通しである。
このような事業環境のもと、当社グループは、本年(平成28年)のグループ年頭方針を「一人ひとりが足場を固め 強みを磨いて 大きく前進しよう」と定め、先行き不透明な世界情勢の中、成果創出をめざしていく。
具体的には、継続的に取り組んでいる販売力・営業力の強化、商品開発・生産・調達・品質力の向上、人材力強化などに磨きをかけ、さらなる成長に向けたテーマを推進するとともに、固定費の削減にも取り組んでいく。中でも昨年新設したテクノロジー・イノベーションセンターを中心に差別化技術・商品の創出を加速していくなど、中長期での持続的発展に向けた事業拡大に努めていく所存である。
当社グループの財政状態、経営成績等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがある。
なお、以下に記載の内容は、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1) 主要市場での政治・経済状況及び製品需給の急激な変動
当社グループは、全世界で商品やサービスを提供しており、日本、欧米、中国を含むアジア地域などの市場における政治・経済動向が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
特に、ヨーロッパにおける新たな空調機器の生産拠点の設立や代理店買収、中国においても生産・販売会社を設立するなど海外での積極的な事業展開を図っており、各地域における経済状況の悪化、素材価格の高騰によるコストの上昇や競合他社との競争激化等、事業環境の変化により業績に影響を及ぼす可能性がある。
また米国において、当社は、平成24年11月1日(米国現地時間)にグッドマン社(グッドマン グローバル グループ インク 本社:米国テキサス州ヒューストン市)の買収に関する全ての手続きを完了した。なお、本件買収にかかる買収価額(グッドマン社の借入の借換分を含む)は37億ドルであった。
本件の買収により、米国の住宅用空調・業務用空調市場に対して、グッドマン社の最大規模の販売網に当社の環境技術を融合した環境先進商品を投入し、北米空調市場において新たな潮流を起こすことで環境貢献と事業拡大の両立を図る。さらに、グッドマン社の持つローコスト経営ノウハウを、新興国・ボリュームゾーンの市場に展開するとともに、先進国を含めたグループ全体の収益体質の改革に取り組むことで、一層の競争力向上を図るが、その進捗状況によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(2) 冷夏及び天候不順に伴う空調需要の変動
当社グループの事業内容は、空調・冷凍機事業が連結売上高の89.4%を占めていることから、世界の主要マーケットでの気象情報や需要動向の把握に努めるとともに、その変化に対して影響を最小限にとどめるべくフレキシブルな生産方式や販売政策を採っているが、冷夏及び天候不順に伴う空調需要の変動の大きさによっては業績に影響を及ぼす可能性がある。
(3) 為替相場の大幅な変動
当社グループの連結売上高に占める海外売上高の割合は平成28年3月期75.4%であり、今後もグローバル展開の加速により、海外売上高の割合がさらに増加する見込みである。連結財務諸表の作成にあたっては、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目を円換算している。従って、換算時の為替レートにより、これらの項目は、各地域の現地通貨における価値が変わらなかったとしても円換算後の価値が影響を受けることになる。また、部材の調達、商品やサービスについて外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によって製造コストや売上高に影響する可能性がある。当社グループでは、これらの為替リスクを回避するため、短期的には為替予約等によりリスクヘッジを行っており、中長期的には為替変動に連動した最適調達・生産分担の構築、通貨毎の輸出入バランス化等により為替変動に左右されない体質の実現に取り組んでいるが、これにより当該リスクを完全に回避できるものではない。
(4) 重大な品質クレーム
当社グループでは国内外を問わず生産する全ての商品について、万全の品質管理に努めている。
新商品の開発については、設計・生産技術・購買・サプライヤーを開発の前段階から巻き込んだ四位一体となった同時並行の協業展開へとプロセスの革新を進め、品質、コスト、さらには開発スピードの革新を図っている。また、予期せぬ品質クレームに備え賠償保険に加入しているが、重大な品質クレームが発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(5) 重大な生産トラブル
当社グループでは国内外を問わず全ての工場の設備の予防保全に努めるとともに、特に化学事業については、設備の安全審査、保安管理体制等の強化を図っている。また、生産トラブルに関しては、設備の損傷や逸失利益のための保険に加入しているが、重大な生産トラブルが発生した場合には当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(6) 保有する有価証券の時価の大幅な変動
当社グループの保有する有価証券は、主に取引先との相互の事業拡大や取引関係の強化のために保有しているものであるが、株式市況の動向や取引先の経営破綻等によって当社グループの業績に影響する可能性がある。
(7) 固定資産の減損
当社グループは、事業用の資産や企業買収の際に生じるのれんなど様々な有形・無形の固定資産を計上している。これらの資産については、今後の業績動向や時価の下落等によって、期待されるキャッシュ・フローを生み出さない状況により、減損処理が必要となる場合がある。これらの処理が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
(8) 自然災害
地震・台風等の自然災害が発生した場合、当社グループの生産、販売、物流拠点に影響が出ることで、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性がある。
提出会社
(1) 業務提携契約
相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期間 |
パナソニック㈱ | 日本 | 空調事業の下記分野に関する提携についての基本合意 ①生産 ②開発 ③購買 ④圧縮機 ⑤リサイクル ⑥その他 | 自 平成11年11月22日 至 平成28年11月21日 |
(注)上記契約については、契約期間を「自 平成11年11月22日 至 平成27年11月21日」から「自 平成11年11月
22日 至 平成28年11月21日」に変更している。
(2) 合弁契約
相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期間 |
アルケマ アジア エスエイエス | フランス共和国 | HFC125の製造・販売に関する合弁契約 | 自 平成19年8月1日 |
アルケマ チャイナ インベストメント カンパニー リミテッド | 中華人民共和国 | ||
アルケマ アジア エスエイエス | フランス共和国 | 新冷媒の販売に関する合弁契約 | 自 平成19年8月1日 |
中蛍集団有限公司 | 中華人民共和国 | 無水フッ酸の製造・販売に関する合弁契約 | 自 平成19年8月14日 |
珠海格力電器股份有限公司 | 中華人民共和国 | 空調機用基幹部品の製造・販売に関する合弁契約 | 自 平成21年2月18日 |
珠海格力電器股份有限公司 | 中華人民共和国 | 金型の製造・販売に関する合弁契約 | 自 平成21年2月18日 |
ダンフォス パワー ソリューションズ インク | アメリカ合衆国 | 建機車両用油圧機器の製造・販売に関する合弁契約 | 自 平成24年10月30日 |
連結子会社
(1) 買収に関する契約
会社名 | 相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期間 |
アメリカン エアフィルター カンパニー インク | フランダース インベストメント ホールディングス エルエルシー | アメリカ合衆国 | フランダース ホールディングス エルエルシーの買収に関する契約 | 自 平成28年2月9日 至 定めなし |
当社グループは、世界規模での地球温暖化やエネルギー問題への関心の高まりを受け、地球環境問題に対して積極的に貢献し事業拡大するべく、先端的な研究開発に取り組んでいる。
昨年(平成27年)には、ダイキングループの技術・商品開発の中核施設として、グループ内はもちろんのこと、産産・産学・産官協業など世界中の知恵を融合し、最先端のコア技術・基盤技術の研究開発と、顧客に新しい付加価値を提供する差別化商品の開発を行うテクノロジー・イノベーションセンター(TIC)を開所した。
TICには、従来、空調におけるヒートポンプ技術、インバータ技術に加え、環境建築・再生可能エネルギー領域、材料加工領域での新商品開発に取り組んできた環境技術研究所と、最先端のIT(情報技術)活用により、空調制御システムの開発と空調を軸とした省エネソリューションビジネスの研究を行ってきたソリューション商品開発センターを統合した。また、空調生産本部で空調商品の開発に携わる技術者や、化学研究開発センターでフッ素の新たな用途開発、高機能材料、環境社会に適合する材料の開発に取り組んでいた技術者の一部も糾合した。
また、欧州・中国をはじめ、グローバル各拠点の開発機能も強化しており、国内の研究開発部門で生み出した新技術を利用し、現地ニーズに合った商品の開発を行っている。
これらの取組みにより、研究開発の大幅な効率化とスピードアップを図り、グローバル各地域で差別化商品を生み出していく。
当連結会計年度におけるグループ全体の一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費は、461億38百万円であり、当連結会計年度における各事業別の主要な取り組みと成果及び研究開発費は次の通りである。
① 空調・冷凍機事業
住宅用空調機器の壁掛形エアコン『うるさら7』においては、外気温度マイナス15℃においても定格暖房性能を発揮する寒冷地仕様と同じ高い暖房性能を発揮し、更にはエアコン下の壁から床への「垂直気流」を業界で初めて実現し、人に当たりにくい気流制御で床暖房のような快適な簡易輻射暖房を実現した。無給水加湿は継続して搭載しており、適度な湿度コントロールと適度な温度コントロール、気流コントロールで今までに無い快適さを実現した。冷房は温湿度コントロールと0.5℃単位での細かな制御の「プレミアム冷房」と天井から冷気が降り注ぐ「サーキュレーション気流」を搭載しており、年間を通して快適性を維持できる唯一のエアコンを発売した。
業務用空調機器において、平成27年10月に店舗・オフィス用エアコン『FIVE STAR ZEAS』を発売した。更新ニーズに応えるため、熱交換器に交換効率の高いオールアルミ製の「ダブルマイクロチャネル熱交換器」を採用し、高い省エネ性を実現した。従来のインバータエアコンの更新でも約70%の消費電力を削減すると共に、使用する冷媒量の削減により地球温暖化への影響を約76%低減し、更には環境負荷の少ない新冷媒HFC32(R32)に対応した室内機の品揃えを大幅に拡充した。業務用エアコンにおいて特に重要視される「省エネ」「環境」「快適」「安心設計」「施工性」の5つの視点で最高級を追求した『FIVE STAR ZEAS』シリーズの更なる普及を目指す。
ビル用マルチエアコンにおいては、建物全体のエネルギー消費を正味ゼロにするネット・ゼロ・エネルギー・ビルの実現に向け、年間運転効率を大幅に向上した『VRV X』シリーズを発売した。低負荷時の運転効率を大幅に向上した新型スクロール圧縮機と、熱負荷に合わせて全自動で冷媒温度をコントロールする新しい冷媒制御を搭載することで年間の消費電力量を大幅に削減した。更に外気温度50℃という厳しい環境下での冷房運転が可能になり、また、配管接続の自由度も高めることで多用な設置状況に対応した。
住宅用空気清浄機では、部品の工夫・配置の工夫をゼロから見直し、全く新しい住宅用空気清浄機を発売した。今までの前面から奥行き方向へ部品配置していたものを下から上へと部品を積み上げる配置に変更し、タワー型のような形状として設置面積が従来の20%削減され、人が聞こえる運転音も大幅に低減し、スタイリッシュな形状に合わせて性能向上も実現した。
北米では、新型空冷インバータスクリューチラーを平成27年12月に発売し、ボリュームゾーン向け空冷スクロールチラーの容量拡大を行った。
中国では、モジュールチラーや二段ターボ冷凍機は更新需要向けの機種拡充を行い、磁気軸受ターボ冷凍機は高IPLV市場に向けた機種を展開した。水冷スクリューチラーはACインバータ化を行い、空冷スクリューチラーはマイクロチャネル化を行った。
欧州では、高効率チラーの更なる普及のために空冷INVスクリューチラーをモデルチェンジした。マイクロチャネル熱交換器を搭載し、制御ニーズ対応のため簡易台数制御機能の標準ラインナップ化を行った。
空調・冷凍機事業に係る研究開発費は、397億64百万円である。
② 化学事業
化学事業の研究開発は、豊富なフッ素素材や多岐にわたるフッ素化学関連技術を元に新商品開発及び用途開発を行っている。
フッ素樹脂・ゴムではフッ素材料の得意とする耐熱性や耐薬品性、誘電特性などを活かし、自動車・半導体・ワイヤー&ケーブル(IT分野)などでの差別化新商品研究を行っている。フッ素の非粘着性・耐薬品性を活かしたコーティング材料開発では、当期京セラ㈱と共同開発したフライパン用塗料(セラミック技術とフッ素技術を組み合わせた塗料)を上市している。また、撥水撥油性を活かしたテキスタイル処理剤、カーペット処理剤の開発、さらには含フッ素化合物の機能性を活かした液晶関連材料の開発や、医薬中間体の受託合成研究など、フッ素に関する幅広い研究を行っている。
これらの素材開発に加え、周辺事業領域の研究開発や用途開発としてはフィルム等の加工品や他素材との複合材料開発、先端材料研究としてはメディカル分野・光学分野・環境分野などで新たな部材・デバイスビジネスの探索を進めることによってフッ素化学グローバルNo.1、オンリーワンのケミカルソリューション事業展開を目指している。特に電池エネルギー分野では、リチウム二次電池の高容量化・安全性向上にフッ素材料が欠かせないとみて、電解液・添加剤・正極バインダー・ガスケット等の開発に注力している。
冷媒分野では、グローバルでの事業拡大に向けてソルベイ社の生産拠点を買収し、また、環境規制対応の次世代冷媒の開発も実施し、ビル向け・家庭向け空調機器はもちろんのこと、自動車向けにも本格的に進出していく。
これらの研究開発を加速し、推進するべく、「化学研究開発センター」では切れ目のない新商品開発・次世代大型テーマの創出を主に担い、「テクニカルサービス部」ではユーザーからの要求に迅速に対応した中・短期集中テーマの確実な実行を担っている。また、今期開所したTICにおいては、化学事業につながる次々世代テーマの探索を実施している。
化学事業に係る研究開発費は、49億57百万円である。
③ その他事業
油機関連では、大容量シリーズ化と用途開発を進めており、油圧技術とインバータ技術を融合させた商品であるハイブリッド油圧システムの特徴を活かし、従来の油圧システムではなし得ない省エネ性と高機能を実現している。
プレスなどの産業機械向けの「スーパーユニット」は工場の電力削減の切り札として省エネ性で高い評価を得ており、低騒音、発熱低減、タンク油量削減による作業環境改善や環境負荷低減にも寄与している。
また、電動に匹敵する高い応答性と省エネ性を実現した成形機向けの大型システムも市場に投入し、異電圧電源対応などアジア各国、その他の地域特性に合わせた機種シリーズを拡充し、各地域での採用が進んでおり、プレスなど、他の用途でのグローバル展開、拡販も進めている。
さらに、建設機械用や特殊車両用の省エネシステムについても開発を進めており、ショベル向けの油圧ハイブリッドシステムが実機採用されている。
このように従来油圧システムに加えて、その枠を超えた先進的な環境対応商品をグローバルに提供する商品と技術の開発を進めている。
特機関連では、主に防衛省向け砲弾・誘導弾用部品に関する研究を行っている。
その他事業に係る研究開発費は、14億16百万円である。
以下に記載の内容については、当連結会計年度末現在において判断したものである。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。当連結会計年度末における資産、負債及び純資産の計上、当連結会計年度における収益、費用の計上については、現況や過去の実績に基づいた合理的な基準による見積りが含まれている。
なお、連結財務諸表作成にあたっての重要な会計方針等は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりである。
(2) 財政状態
①資産
総資産は、2兆1,911億5百万円となり、前連結会計年度末に比べて728億84百万円減少した。
流動資産は、商品及び製品の減少等により、前連結会計年度末に比べて158億45百万円減少し、1兆667億68百万円となった。
固定資産は、のれんの償却や投資有価証券の時価変動等により、前連結会計年度末に比べて570億38百万円減少し、1兆1,243億36百万円となった。
②負債及び純資産
負債は、長期借入金の返済による減少等により、前連結会計年度末に比べて620億42百万円減少し、1兆1,536億35百万円となった。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加の一方、配当金の支払いによる減少や為替換算調整勘定の変動等により、前連結会計年度末に比べて108億41百万円減少し、1兆374億69百万円となった。
この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の45.3%から46.3%となり、1株当たり純資産額は前連結会計年度末の3,511.34円から3,473.54円となった。
(3) 経営成績
①売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比6.7%増の2兆436億91百万円となった。
空調・冷凍機事業では、米州・アジアを中心に海外での販売が好調に推移したことに加え、円安による円貨換算額の増加もあり、売上高は前連結会計年度比6.8%増の1兆8,280億12百万円となった。
化学事業では、中国市場等において競合他社による低価格販売の影響があるものの、半導体関連や自動車関連等の需要が好調に推移し、売上高は前連結会計年度比8.5%増の1,622億85百万円となった。
その他事業全体では、産業機械用油圧機器は米国市場で堅調に推移したが、防衛省向け砲弾の売上高が減少したこと等により、売上高は前連結会計年度比2.0%減の533億93百万円となった。
②営業費用、営業利益
売上原価は、前連結会計年度比5.3%増加し、1兆3,321億15百万円となった。
販売費及び一般管理費については、前連結会計年度7.5%増加し、4,937億4百万円となった。従業員給与手当の増加が主な要因である。
以上の結果、営業利益は前連結会計年度比14.3%増の2,178億72百万円となった。
なお、セグメントの営業損益については、空調・冷凍機事業では、前連結会計年度比13.7%増の1,937億85百万円の営業利益となり、化学事業では、前連結会計年度比24.6%増の206億20百万円の営業利益となり、その他事業は前連結会計年度比1.5%減の35億29百万円の営業利益となった。
③営業外損益、経常利益
営業外損益は、為替差損の計上額が増加したこと等により、前連結会計年度に比べて119億82百万円減少し、83億35百万円のマイナスとなった。
経常利益は、前連結会計年度比7.9%増の2,095億36百万円となった。
④特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益
特別損益は、投資有価証券売却益の減少等により、前連結会計年度に比べて16億26百万円減少し、33億53百万円のマイナスとなった。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比14.5%増の1,369億86百万円となった。
(4) 流動性及び資金の源泉
営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加や仕入債務の増加等により、前連結会計年度に比べて657億62百万円増加し、2,261億86百万円のキャッシュの増加となった。投資活動では、固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度に比べて281億62百万円減少し、1,054億93百万円のキャッシュの減少となった。財務活動では、前連結会計年度に社債の発行による収入があったこと等により、前連結会計年度に比べて23億48百万円減少し、854億21百万円のキャッシュの減少となった。この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ42億55百万円増加し、2,912億5百万円となった。
キャッシュ・フロー指標のトレンドは下記のとおりである。
| 平成24年3月期 | 平成25年3月期 | 平成26年3月期 | 平成27年3月期 | 平成28年3月期 |
自己資本比率(%) | 43.3 | 35.6 | 39.9 | 45.3 | 46.3 |
時価ベースの自己資本比率(%) | 56.5 | 61.9 | 83.9 | 103.7 | 112.1 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率 (年) | 8.7 | 6.8 | 3.9 | 4.1 | 2.7 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) | 6.9 | 15.3 | 18.0 | 16.8 | 25.9 |
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出している。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出している。
※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用している。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としている。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息支払額を使用している。