当連結会計年度のわが国の経済情勢を顧みますと、新興国経済の減速感が和らぐもとで輸出・生産面が持ち直したほか、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、緩やかな回復基調となりました。
世界経済は、新興国の一部に弱さが残るものの、全体としては緩やかに成長いたしました。
金融資本市場では、国内の10年国債利回りは、平成28年9月に実施が決定された日銀の長短金利操作付き量的・質的金融緩和や米国大統領選挙後の米国金利上昇などを背景に同年11月以降マイナス圏を脱し、その後概ね横ばいに推移しました。日経平均株価は、EU離脱を支持する平成28年6月下旬の英国国民投票の結果を受け、投資家のリスク回避姿勢が一時的に強まったこと等を背景に、15,000円台を割る場面もみられたほか、米国トランプ政権の政策動向により相場は不安定となりましたが、国内企業業績が堅調に推移したことから、一時19,000円台まで持ち直すなど底堅い動きとなりました。
物流業界におきましては、eコマース市場の拡大に伴い、宅配便等の小型物品の配送市場が拡大する一方、受取人の不在などによる再配達の増加により、労働力不足への対応が必要となっているほか、サービス品質に対するお客さまニーズの高まりに対応し、各社がサービスの向上に努めるなど厳しい競争下にあります。郵便事業におきましては、インターネットの普及により、引き続き郵便物等の減少傾向が続いております。なお、労働市場の逼迫等を背景に、人件費単価の上昇等も進んでおります。
銀行業界におきましては、当連結会計年度は、全国の銀行における預金が対前期比増加となり、貸出金も6年連続で増加しました。金融システムは全体として安定性を維持しており、金融緩和の環境下で金融機関の資金調達に大きな問題は生じておりません。
生命保険業界におきましては、少子高齢化や単身世帯化の進展、ライフスタイルの変化等を背景としたお客さまのニーズの多様化、選別志向の高まりなどがみられる中、それらに対応する販売チャネルの強化や商品の開発を行うことでお客さまの自助努力を支援するという生命保険業界の役割はますます大きくなってきているといえます。
当連結会計年度、当社グループは、「日本郵政グループ中期経営計画 ~新郵政ネットワーク創造プラン2017~」の2年目として、トータル生活サポート企業の実現に向けた「成長・発展に向けた飛躍」の年と位置づけ、上場企業グループとしてグループ企業価値の向上に取り組んでいく中で、昨今の経営環境を踏まえ、引き続き、「グループの成長・発展に向けた収益力の拡大」、「グループ経営基盤強化のための生産性向上」及び「上場企業としての企業統治と資本戦略」の3点に重点を置いて取り組んでまいりました。
そして、当社グループのコーポレートガバナンスを強化するため、透明性を確保するとともに、適正な事業運営に向けて内部統制の強化を推進し、当社におきましては、持株会社として、グループ各社のコンプライアンス・プログラムの策定・推進の状況及び各社の内部監査態勢・監査状況を的確に把握し、必要となる支援・指導を行ってまいりました。
郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保並びに郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ各社の経営の基本方針の策定及び実施の確保に努めました。また、集約により効率性が高まる間接業務をグループ各社から受託して実施するほか、病院及び宿泊事業の経営改善を進めました。
さらに、グループ各社が提供するサービスの公益性及び公共性の確保やお客さま満足度の向上に取り組むとともに、当社グループの社会的責任を踏まえたCSR活動や東日本大震災及び平成28年熊本地震の復興支援にも、当社グループが一丸となって取り組んでまいりました。
これらの取り組みの結果、当連結会計年度における連結経常収益は13,326,534百万円(前期比931,006百万円減)、連結経常利益は795,237百万円(前期比171,003百万円減)となりました。直近の実績を基礎としたトール社の損益見通しにより減損テストを実施した結果、当連結会計年度の連結処理において、のれん及び商標権(以下「のれん等」といいます。)の全額並びに有形固定資産の一部を減損損失として計上したことによる特別損失及び契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純損失は28,976百万円(前期は425,972百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。
各事業セグメント別の事業の経過及び成果は、以下のとおりであります。
郵便・物流事業につきましては、収益力の強化に向けた取り組みとして、年賀状をはじめとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービス、手紙の楽しさを伝える活動や、Webレター及びWebレタックスのサービス拡充等により、郵便の利用の維持・拡大を図るとともに、研修・教育の実施等により誤配達を防止する等、品質の向上に努めました。国際郵便については、品質向上に加え、クールEMSの差出郵便局を拡大する等、利用拡大に取り組みました。さらに、平成28年10月からは、主に越境EC事業者向けに、国際eパケットライトの取扱いを試行的に開始しました。そのほか、国内の郵便物が減少傾向にある中、労働力不足による賃金単価の上昇や各種制度的負担の増大に対応し、郵便の安定的なサービス提供を維持するため、平成28年6月から、内国郵便の料金割引の一部を変更したほか、国際郵便料金の一部について改定を行いました。
ゆうパック事業及びゆうメール事業については、品質管理の徹底に努めたほか、コンビニ受取の拡大、郵便局窓口受取サービスの開始、宅配ロッカー(はこぽす)及び戸建住宅向け新型宅配ボックスの普及推進の取り組みなどによる受取利便性の高いサービスの推進を図るとともに、中小口のお客さまに対する営業の強化、お客さまの幅広いニーズに一元的に対応できる営業体制の構築に努めました。また、平成28年10月には、ゆうパケット基本運賃を新設し、小型物品配送サービスを拡充しました。
さらに、デジタルメッセージサービス(「MyPost(マイポスト)」)について、政府の進めるマイナポータルとの連携やワンストップサービスへの対応に向けて取り組みました。
生産性の向上・ネットワーク価値向上に向けた取り組みとしては、ネットワークの最適化・高度化を目指し、集配局の内務作業の集中・機械化処理を行うため、新たな地域区分郵便局として、平成29年1月に山口郵便局、同年2月に静岡郵便局、同年3月に岩手郵便局を開局する等、郵便・物流ネットワーク再編を推進しました。また、郵便局の業務効率の向上を目指し、引き続き、集配業務の生産性の向上、輸送効率の向上に取り組んだほか、業務運行に必要な労働力を確保できるよう、地域ごとの状況を踏まえた効果的な募集活動及び定着に向けた取り組みを行いました。
これらの取り組みの結果、当連結会計年度、郵便・物流事業におきましては、前連結会計年度にマイナンバー関連郵便物の差出があった影響や年賀・国際郵便が減少しましたが、料金割引の見直しなどによる郵便の取扱収入の増加や、ゆうパック・ゆうメールの増加などにより前期並みの収益を確保しました。また、減価償却費の増加や事業税外形標準課税の税率引上げなどの影響により経費が増加した一方、上記の要因による郵便物の減少の関連等に伴い人件費が減少したことにより費用が減少し、経常収益は1,933,087百万円(前期比18,609百万円減)、経常利益は14,324百万円(前期比9,400百万円減)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における郵便・物流事業の営業収益は1,929,928百万円(前期比483百万円増)、営業利益は12,053百万円(前期比1,729百万円増)となりました。
また、日本郵便(単体)における当事業年度の総取扱物数は郵便物が177億3,042万通(前期比1.7%減)、ゆうメールが35億6,285万個(前期比2.6%増)、ゆうパックが6億3,242万個(前期比9.1%増)となりました。
※ 日本郵便において、営業外収益、営業外費用に含まれていた郵便局等の賃貸取引については、当連結会計年度より営業収益、営業原価並びに販売費及び一般管理費に含めて表示する方法に変更しており、前期比については表示方法の変更に伴う組替え後の数値により記載しております。
区分 |
前事業年度 |
当事業年度 |
|||
物数(千通・千個) |
対前期比(%) |
物数(千通・千個) |
対前期比(%) |
||
総数 |
22,082,281 |
0.2 |
21,925,689 |
△0.7 |
|
|
|
|
|
|
|
郵便物 |
18,029,855 |
△0.9 |
17,730,418 |
△1.7 |
|
|
内国 |
17,980,998 |
△0.9 |
17,683,959 |
△1.7 |
|
普通 |
17,426,341 |
△1.3 |
17,193,956 |
△1.3 |
|
第一種 |
8,463,874 |
△0.8 |
8,411,787 |
△0.6 |
|
第二種 |
6,315,097 |
△1.3 |
6,276,453 |
△0.6 |
|
第三種 |
220,464 |
△4.2 |
211,316 |
△4.1 |
|
第四種 |
18,802 |
△5.7 |
17,728 |
△5.7 |
|
年賀 |
2,351,237 |
△3.3 |
2,236,551 |
△4.9 |
|
選挙 |
56,866 |
14.5 |
40,121 |
△29.4 |
|
特殊 |
554,657 |
15.4 |
490,003 |
△11.7 |
|
国際(差立) |
48,857 |
4.9 |
46,459 |
△4.9 |
|
通常 |
24,913 |
△15.6 |
26,942 |
8.1 |
|
小包 |
4,758 |
56.6 |
4,116 |
△13.5 |
|
国際スピード郵便 |
19,187 |
36.6 |
15,400 |
△19.7 |
荷物 |
4,052,425 |
5.3 |
4,195,272 |
3.5 |
|
|
ゆうパック |
579,877 |
10.0 |
632,421 |
9.1 |
|
ゆうメール |
3,472,549 |
4.6 |
3,562,851 |
2.6 |
(注) 1.第一種郵便物、第二種郵便物、第三種郵便物及び第四種郵便物の概要/特徴は、以下のとおりであります。
種類 |
概要/特徴 |
第一種郵便物 |
お客さまがよく利用される「手紙」(封書)のことであります。一定の重量及び大きさの定形郵便物とそれ以外の定形外郵便物に分かれます。また、郵便書簡(ミニレター)、特定封筒(レターパックライト)及び小型特定封筒(スマートレター)も含んでおります。 |
第二種郵便物 |
お客さまがよく利用される「はがき」のことであります。通常はがき及び往復はがきの2種類があります。年賀郵便物の取扱期間(12/15~1/7)以外に差し出された年賀はがきを含んでおります。 |
第三種郵便物 |
新聞、雑誌など年4回以上定期的に発行する刊行物で、日本郵便の承認を受けたものを内容とするものであります。 |
第四種郵便物 |
公共の福祉の増進を目的として、郵便料金を低料又は無料としているものであります。通信教育用郵便物、点字郵便物、特定録音物等郵便物、植物種子等郵便物、学術刊行物郵便物があります。 |
2.年賀は、年賀郵便物(年賀特別郵便(取扱期間12/15~12/28)及び12/29~1/7に差し出された年賀はがきで消印を省略したもの)の物数であります。
3.選挙は、公職選挙法に基づき、公職の候補者又は候補者届出政党から選挙運動のために差し出された通常はがきの物数であります。別掲で示しております。
4.特殊は、速達、書留、特定記録、本人限定受取等の特殊取扱(オプションサービス)を行った郵便物の物数の合計であります。交付記録郵便物用特定封筒(レターパックプラス)及び電子郵便(レタックス、Webゆうびん、e内容証明)を含んでおります。
5.ゆうパックは、一般貨物法制の規制を受けて行っている宅配便の愛称であります。配送中は、追跡システムにより管理をしております。なお、ゆうメールに含めていたゆうパケットの物数については、平成28年10月より、ゆうパックに含めて表示する方法に変更しました。これに伴い、当事業年度においては平成28年10月以降の物数に、また、前事業年度においては平成27年10月以降の物数にそれぞれ当該変更を反映しております。なお、前事業年度の対前期比についても、平成26年10月以降の物数に当該変更を反映した前々事業年度の物数との比較で算出しております。
6.ゆうメールは、一般貨物法制の規制を受けて行っている3kgまでの荷物の愛称であります。主に冊子とした印刷物やCD・DVDなどをお届けするもので、ゆうパックより安値でポスト投函も可能な商品であります。
金融窓口事業につきましては、収益力の強化に向けた取り組みとして、委託元であるゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険と連携した研修を通じた社員の営業力強化や、例年に比べ多く満期を迎えた定額貯金の再預入や投資信託の販売を通じ、金融預かり資産重視の営業スタイルの更なる浸透を図ったほか、簡易生命保険誕生100周年施策を契機とした新契約拡大、新規利用顧客の拡大を図りました。また、がん保険等の提携金融サービスについても、研修等を通じ、社員の営業力強化に取り組むとともに、平成28年10月には引受条件緩和型医療保険の取扱局を拡大しました。物販事業については、他社との提携等により、商品の拡充・開発を行うとともに、販売チャネルの多様化を推進しました。不動産事業については、JPタワーやJPタワー名古屋、平成28年4月に開業したKITTE博多等による事務所、商業施設、住宅や駐車場などの賃貸事業等を推進しました。
主なプロジェクトの概要は以下のとおりです。
名称 |
土地面積 |
延床面積 |
簿価 |
|
|
持分シェア |
土地等 |
建物他 |
|||||
JPタワー |
約11 |
約212 |
310,298 |
227,783 |
82,515 |
共同事業 |
大宮JPビルディング |
約6 |
約45 |
11,869 |
3,903 |
7,966 |
単独事業 |
JPタワー名古屋 |
約12 |
約180 |
50,723 |
10,945 |
39,778 |
共同事業 |
KITTE博多 |
約5 |
約64 |
23,694 |
7,385 |
16,308 |
単独事業 |
(注) 平成29年3月31日時点
また、郵便局ネットワークの最適化のため、郵便局の新規出店、店舗配置の見直し等に引き続き取り組みました。郵便局の現金取扱いに関して、機器の増配備により資金管理体制の充実を図るとともに、郵便局への訪問支援や関連ツールの充実等による業務品質の向上に取り組みました。
そのほか、地域住民の利便性の向上に資することを目的とした「郵便局のみまもりサービス」の本格展開に向けた検討を進めました。
これらの取り組みの結果、当連結会計年度、金融窓口事業におきましては、かんぽ生命保険の新契約の増加を主因として受託手数料が増加したことに加えて提携金融サービスの収益増などにより収益が増加しました。また、減価償却費の増加や事業税外形標準課税の税率引上げなどの影響により経費が増加した一方、各種効率化施策などで人件費が減少したことにより費用が減少し、経常収益は1,387,957百万円(前期比16,718百万円増)、経常利益は64,167百万円(前期比23,605百万円増)となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における金融窓口事業の営業収益は1,386,456百万円(前期比26,111百万円増)、営業利益は63,334百万円(前期比24,034百万円増)となりました。
※ 日本郵便において、営業外収益、営業外費用に含まれていた郵便局等の賃貸取引については、当連結会計年度より営業収益、営業原価並びに販売費及び一般管理費に含めて表示する方法に変更しており、前期比については表示方法の変更に伴う組替え後の数値により記載しております。
支社名 |
営業中の郵便局(局) |
|||||||
前事業年度末 |
当事業年度末 |
|||||||
直営の郵便局 |
簡易 郵便局 |
計 |
直営の郵便局 |
簡易 郵便局 |
計 |
|||
郵便局 |
分室 |
郵便局 |
分室 |
|||||
北海道 |
1,208 |
1 |
282 |
1,491 |
1,208 |
1 |
278 |
1,487 |
東北 |
1,884 |
1 |
631 |
2,516 |
1,886 |
1 |
619 |
2,506 |
関東 |
2,393 |
0 |
182 |
2,575 |
2,394 |
0 |
179 |
2,573 |
東京 |
1,477 |
0 |
5 |
1,482 |
1,478 |
0 |
6 |
1,484 |
南関東 |
953 |
0 |
77 |
1,030 |
954 |
0 |
78 |
1,032 |
信越 |
977 |
0 |
335 |
1,312 |
977 |
0 |
329 |
1,306 |
北陸 |
672 |
0 |
177 |
849 |
672 |
0 |
178 |
850 |
東海 |
2,050 |
2 |
342 |
2,394 |
2,050 |
2 |
328 |
2,380 |
近畿 |
3,098 |
6 |
338 |
3,442 |
3,096 |
6 |
334 |
3,436 |
中国 |
1,753 |
2 |
481 |
2,236 |
1,752 |
2 |
476 |
2,230 |
四国 |
933 |
0 |
223 |
1,156 |
932 |
0 |
224 |
1,156 |
九州 |
2,508 |
2 |
933 |
3,443 |
2,503 |
2 |
925 |
3,430 |
沖縄 |
177 |
0 |
23 |
200 |
175 |
0 |
24 |
199 |
全国計 |
20,083 |
14 |
4,029 |
24,126 |
20,077 |
14 |
3,978 |
24,069 |
国際物流事業につきましては、資源価格の下落及び中国経済・豪州経済の減速等を受け、トール社の業績が悪化していることから、平成29年1月に経営陣を刷新し、人員削減や部門の統廃合等によるコスト削減策を中心に、業績回復・将来の成長への基盤を整えるための経営改善策を講じているところです。
当連結会計年度、国際物流事業におきましては、上記のとおり、経営改善の取り組みを行っているところですが、資源価格の下落及び中国経済・豪州経済の減速等による影響を受け、豪州国内物流事業の不振を主な原因として収益性が低下し、経常収益は644,979百万円、経常損失は414百万円となりました。なお、日本郵便の当連結会計年度における国際物流事業については、営業収益は644,416百万円、営業利益(EBIT)は5,642百万円となりました。
なお、前連結会計年度より「国際物流事業」セグメントを新設し、平成27年7月からのトール社の損益を当社グループの連結業績に反映しているため、前期比は記載しておりません。
銀行業につきましては、ゆうちょ銀行において、「顧客基盤の確保と手数料ビジネスの強化」、「サテライト・ポートフォリオの資産内容充実など運用の高度化・多様化」、「内部管理態勢の充実・経営基盤の強化」に取り組みました。
「顧客基盤の確保と手数料ビジネスの強化」については、日本郵便(約24,000局の郵便局)と協働し、お客さまとの安定的で持続的な関係を深め、「総預かり資産」の拡大に努めたほか、資産運用商品販売の拡大・ATM事業の強化などの手数料ビジネスの強化に取り組みました。
地域金融機関との連携を通じて地域経済活性化に貢献する取り組みとして、平成28年7月、平成28年熊本地震からの復旧・復興を目的とする「九州広域復興支援投資事業有限責任組合」に、同年11月には北海道地方・九州地方における地域経済活性化ファンドに参加することを決定しました。このほか、日本郵便とともに、平成29年1月から、仙台市・熊本市において、手数料無料ですぐに入会が可能な、地域版Visaプリペイドカード「mijica(ミヂカ)」を発行しております。
「サテライト・ポートフォリオの資産内容充実など運用の高度化・多様化」については、ALM(資産・負債の総合管理)では、国債運用を中心に主に金利リスクを取って、安定的収益の確保を目指すベース・ポートフォリオと、国際分散投資等により主に信用・市場リスクを取って、売買益を含む収益の積み上げを図るサテライト・ポートフォリオの二つを基軸に、運用の高度化・多様化、市場環境に応じたポートフォリオの組替えの取り組みを継続しました。具体的には、低金利継続の影響によるベース・ポートフォリオの収益の減少に対応し、サテライト・ポートフォリオでは、海外の投資適格債を中心とした外国証券投資の拡大に加え、外国証券投資に活用するため、外貨資金の調達手段の多様化を進めました。さらに、成長が見込まれる未上場企業等へ投資するプライベート・エクイティ、不動産ファンド、ヘッジファンドなどのオルタナティブ資産への投資を始めました。
「内部管理態勢の充実・経営基盤の強化」については、「コンプライアンスなくして会社は存続し得ない」との強い信念のもと、各種研修等を通じたコンプライアンス意識の更なる浸透や、資産運用商品販売における顧客保護等管理態勢の強化に取り組んだほか、コーポレートガバナンスの充実に向けた取り組みとして、取締役会の実効性に関する分析・評価を実施するなど、取締役会の実効性の更なる向上等に努めました。
ゆうちょ銀行は、平成29年3月31日に、「顧客本位の良質な金融サービスの提供」「地域への資金の循環等」「資金運用の高度化・多様化」の3点を基軸に、ゆうちょ銀行の更なる企業価値の向上の観点から、「口座貸越サービス」「地域金融機関との連携に係る業務等」「市場運用関係業務」を内容とする新規業務の認可申請を行い、同年6月19日に認可を取得いたしました。なお、上記の新規業務の認可申請時に、平成24年9月3日に行った相対による法人向け貸付、住宅ローン等の個人向け貸付などを内容とする認可申請については、取り下げております。
これらの取り組みの結果、当連結会計年度、銀行業におきましては、年度末時点のゆうちょ銀行の貯金残高は179,434,686百万円(前期末比1,562,699百万円増)となりました。金利が低位で推移するなど厳しい経営環境下、資金運用収益は国債利息の減少を主因に減少した一方、その他業務収益は外国為替売買益の増加等により増加しました。経常収益は1,897,292百万円(前期比71,694百万円減)、経常利益は442,117百万円(前期比39,857百万円減)となりました。
なお、ゆうちょ銀行における国内・国際業務部門別開示などの詳細な状況については、下記「(参考)銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況」に記載のとおりであります。
(参考)銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の状況
国内業務部門・国際業務部門別収支の内訳は次のとおりとなりました。
当事業年度は、国内業務部門においては、資金運用収支は804,038百万円、役務取引等収支は85,883百万円、その他業務収支は688百万円となりました。
国際業務部門においては、資金運用収支は419,508百万円、役務取引等収支は736百万円、その他業務収支は99,402百万円となりました。
この結果、国内業務部門、国際業務部門の相殺消去後の合計は、資金運用収支は1,223,546百万円、役務取引等収支は86,619百万円、その他業務収支は100,091百万円となりました。
種類 |
期別 |
国内業務部門 |
国際業務部門 |
相殺消去額(△) |
合計 |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
||
資金運用収支 |
前事業年度 |
970,588 |
390,477 |
― |
1,361,065 |
当事業年度 |
804,038 |
419,508 |
― |
1,223,546 |
|
うち資金運用収益 |
前事業年度 |
1,248,620 |
545,998 |
63,401 |
1,731,217 |
当事業年度 |
1,046,541 |
596,691 |
75,719 |
1,567,512 |
|
うち資金調達費用 |
前事業年度 |
278,032 |
155,520 |
63,401 |
370,151 |
当事業年度 |
242,503 |
177,183 |
75,719 |
343,966 |
|
役務取引等収支 |
前事業年度 |
90,401 |
737 |
― |
91,139 |
当事業年度 |
85,883 |
736 |
― |
86,619 |
|
うち役務取引等収益 |
前事業年度 |
122,223 |
795 |
― |
123,019 |
当事業年度 |
118,688 |
776 |
― |
119,465 |
|
うち役務取引等費用 |
前事業年度 |
31,821 |
58 |
― |
31,879 |
当事業年度 |
32,805 |
40 |
― |
32,845 |
|
その他業務収支 |
前事業年度 |
5,178 |
△5,301 |
― |
△122 |
当事業年度 |
688 |
99,402 |
― |
100,091 |
|
うちその他業務収益 |
前事業年度 |
6,357 |
6,596 |
― |
12,953 |
当事業年度 |
2,453 |
111,918 |
― |
114,371 |
|
うちその他業務費用 |
前事業年度 |
1,178 |
11,897 |
― |
13,076 |
当事業年度 |
1,764 |
12,516 |
― |
14,280 |
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引、「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.資金調達費用は、金銭の信託運用見合費用(前事業年度4,776百万円、当事業年度4,779百万円)を控除しております。
3.「国内業務部門」、「国際業務部門」間の内部取引は、「相殺消去額(△)」欄に表示しております。
当事業年度の資金運用勘定の平均残高は200,321,045百万円、利回りは0.78%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は190,443,114百万円、利回りは0.18%となりました。
国内・国際別に見ますと、国内業務部門の資金運用勘定の平均残高は193,991,919百万円、利回りは0.53%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は184,991,156百万円、利回りは0.13%となりました。
国際業務部門の資金運用勘定の平均残高は48,252,687百万円、利回りは1.23%となりました。また、資金調達勘定の平均残高は47,375,519百万円、利回りは0.37%となりました。
ⅰ 国内業務部門
種類 |
期別 |
平均残高 |
利息 |
利回り |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
(%) |
||
資金運用勘定 |
前事業年度 |
192,120,047 |
1,248,620 |
0.64 |
当事業年度 |
193,991,919 |
1,046,541 |
0.53 |
|
うち貸出金 |
前事業年度 |
2,681,909 |
25,091 |
0.93 |
当事業年度 |
3,081,133 |
17,741 |
0.57 |
|
うち有価証券 |
前事業年度 |
109,010,368 |
1,116,543 |
1.02 |
当事業年度 |
92,901,349 |
926,690 |
0.99 |
|
うち債券貸借取引 |
前事業年度 |
8,586,952 |
7,958 |
0.09 |
当事業年度 |
8,318,619 |
1,471 |
0.01 |
|
うち預け金等 |
前事業年度 |
39,310,383 |
35,624 |
0.09 |
当事業年度 |
47,723,014 |
24,916 |
0.05 |
|
資金調達勘定 |
前事業年度 |
184,078,165 |
278,032 |
0.15 |
当事業年度 |
184,991,156 |
242,503 |
0.13 |
|
うち貯金 |
前事業年度 |
177,868,069 |
232,795 |
0.13 |
当事業年度 |
179,251,855 |
200,373 |
0.11 |
|
うち債券貸借取引 |
前事業年度 |
8,650,599 |
7,337 |
0.08 |
当事業年度 |
8,385,284 |
844 |
0.01 |
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引であります。
2.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,440,503百万円、当事業年度2,646,066百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,440,503百万円、当事業年度2,646,066百万円)及び利息(前事業年度4,734百万円、当事業年度4,778百万円)を控除しております。
3.預け金等は、譲渡性預け金、日銀預け金、コールローン、買入金銭債権であります。「ⅱ 国際業務部門」「ⅲ 合計」においても同様であります。
4.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「ⅱ 国際業務部門」「ⅲ 合計」においても同様であります。
ⅱ 国際業務部門
種類 |
期別 |
平均残高 |
利息 |
利回り |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
(%) |
||
資金運用勘定 |
前事業年度 |
40,910,445 |
545,998 |
1.33 |
当事業年度 |
48,252,687 |
596,691 |
1.23 |
|
うち貸出金 |
前事業年度 |
2,614 |
11 |
0.43 |
当事業年度 |
2,151 |
7 |
0.35 |
|
うち有価証券 |
前事業年度 |
40,072,765 |
541,079 |
1.35 |
当事業年度 |
48,099,311 |
595,384 |
1.23 |
|
うち債券貸借取引 |
前事業年度 |
― |
― |
― |
当事業年度 |
― |
― |
― |
|
うち預け金等 |
前事業年度 |
777,583 |
4,704 |
0.60 |
当事業年度 |
81,553 |
968 |
1.18 |
|
資金調達勘定 |
前事業年度 |
38,370,177 |
155,520 |
0.40 |
当事業年度 |
47,375,519 |
177,183 |
0.37 |
|
うち貯金 |
前事業年度 |
― |
― |
― |
当事業年度 |
― |
― |
― |
|
うち債券貸借取引 |
前事業年度 |
5,500,853 |
25,895 |
0.47 |
当事業年度 |
4,674,255 |
40,697 |
0.87 |
(注) 1.「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度10,333百万円、当事業年度184百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度10,333百万円、当事業年度184百万円)及び利息(前事業年度41百万円、当事業年度0百万円)を控除しております。
ⅲ 合計
種類 |
期別 |
平均残高(百万円) |
利息(百万円) |
利回り (%) |
||||
小計 |
相殺消去額(△) |
合計 |
小計 |
相殺消去額(△) |
合計 |
|||
資金運用勘定 |
前事業年度 |
233,030,492 |
32,530,225 |
200,500,267 |
1,794,619 |
63,401 |
1,731,217 |
0.86 |
当事業年度 |
242,244,607 |
41,923,561 |
200,321,045 |
1,643,232 |
75,719 |
1,567,512 |
0.78 |
|
うち貸出金 |
前事業年度 |
2,684,524 |
― |
2,684,524 |
25,103 |
― |
25,103 |
0.93 |
当事業年度 |
3,083,285 |
― |
3,083,285 |
17,748 |
― |
17,748 |
0.57 |
|
うち有価証券 |
前事業年度 |
149,083,133 |
― |
149,083,133 |
1,657,623 |
― |
1,657,623 |
1.11 |
当事業年度 |
141,000,661 |
― |
141,000,661 |
1,522,075 |
― |
1,522,075 |
1.07 |
|
うち債券 |
前事業年度 |
8,586,952 |
― |
8,586,952 |
7,958 |
― |
7,958 |
0.09 |
当事業年度 |
8,318,619 |
― |
8,318,619 |
1,471 |
― |
1,471 |
0.01 |
|
うち預け金等 |
前事業年度 |
40,087,966 |
― |
40,087,966 |
40,329 |
― |
40,329 |
0.10 |
当事業年度 |
47,804,568 |
― |
47,804,568 |
25,885 |
― |
25,885 |
0.05 |
|
資金調達勘定 |
前事業年度 |
222,448,342 |
32,530,225 |
189,918,117 |
433,553 |
63,401 |
370,151 |
0.19 |
当事業年度 |
232,366,676 |
41,923,561 |
190,443,114 |
419,686 |
75,719 |
343,966 |
0.18 |
|
うち貯金 |
前事業年度 |
177,868,069 |
― |
177,868,069 |
232,795 |
― |
232,795 |
0.13 |
当事業年度 |
179,251,855 |
― |
179,251,855 |
200,373 |
― |
200,373 |
0.11 |
|
うち債券 |
前事業年度 |
14,151,453 |
― |
14,151,453 |
33,233 |
― |
33,233 |
0.23 |
当事業年度 |
13,059,539 |
― |
13,059,539 |
41,542 |
― |
41,542 |
0.31 |
(注) 1.金銭の信託に係る収益及び費用を「その他経常収益」「その他経常費用」に計上しておりますので、資金運用勘定は金銭の信託の平均残高(前事業年度2,450,837百万円、当事業年度2,646,250百万円)を控除し、資金調達勘定は金銭の信託運用見合額の平均残高(前事業年度2,450,837百万円、当事業年度2,646,250百万円)及び利息(前事業年度4,776百万円、当事業年度4,779百万円)を控除しております。
2.「国内業務部門」、「国際業務部門」間の内部取引は、「相殺消去額(△)」欄に表示しております。
ハ.国内・国際別役務取引の状況
当事業年度の役務取引等収益は119,465百万円、役務取引等費用は32,845百万円となりました。
種類 |
期別 |
国内業務部門 |
国際業務部門 |
相殺消去額(△) |
合計 |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
||
役務取引等収益 |
前事業年度 |
122,223 |
795 |
― |
123,019 |
当事業年度 |
118,688 |
776 |
― |
119,465 |
|
うち預金・貸出業務 |
前事業年度 |
33,986 |
― |
― |
33,986 |
当事業年度 |
34,612 |
― |
― |
34,612 |
|
うち為替業務 |
前事業年度 |
62,192 |
713 |
― |
62,906 |
当事業年度 |
62,269 |
688 |
― |
62,957 |
|
うち代理業務 |
前事業年度 |
2,641 |
― |
― |
2,641 |
当事業年度 |
2,709 |
― |
― |
2,709 |
|
役務取引等費用 |
前事業年度 |
31,821 |
58 |
― |
31,879 |
当事業年度 |
32,805 |
40 |
― |
32,845 |
|
うち為替業務 |
前事業年度 |
3,638 |
15 |
― |
3,653 |
当事業年度 |
3,802 |
11 |
― |
3,814 |
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引、「国際業務部門」は外貨建取引であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
○ 預金の種類別残高(末残)
種類 |
期別 |
国内業務部門 |
国際業務部門 |
相殺消去額(△) |
合計 |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
||
預金合計 |
前事業年度 |
177,871,986 |
― |
― |
177,871,986 |
当事業年度 |
179,434,686 |
― |
― |
179,434,686 |
|
流動性預金 |
前事業年度 |
63,834,943 |
― |
― |
63,834,943 |
当事業年度 |
67,994,923 |
― |
― |
67,994,923 |
|
うち振替貯金 |
前事業年度 |
13,874,601 |
― |
― |
13,874,601 |
当事業年度 |
13,052,115 |
― |
― |
13,052,115 |
|
うち通常貯金等 |
前事業年度 |
49,571,866 |
― |
― |
49,571,866 |
当事業年度 |
54,550,845 |
― |
― |
54,550,845 |
|
うち貯蓄貯金 |
前事業年度 |
388,475 |
― |
― |
388,475 |
当事業年度 |
391,963 |
― |
― |
391,963 |
|
定期性預金 |
前事業年度 |
113,852,874 |
― |
― |
113,852,874 |
当事業年度 |
111,280,733 |
― |
― |
111,280,733 |
|
うち定期貯金 |
前事業年度 |
11,441,153 |
― |
― |
11,441,153 |
当事業年度 |
10,065,156 |
― |
― |
10,065,156 |
|
うち定額貯金等 |
前事業年度 |
102,410,683 |
― |
― |
102,410,683 |
当事業年度 |
101,215,576 |
― |
― |
101,215,576 |
|
その他の預金 |
前事業年度 |
184,168 |
― |
― |
184,168 |
当事業年度 |
159,029 |
― |
― |
159,029 |
|
譲渡性預金 |
前事業年度 |
― |
― |
― |
― |
当事業年度 |
― |
― |
― |
― |
|
総合計 |
前事業年度 |
177,871,986 |
― |
― |
177,871,986 |
当事業年度 |
179,434,686 |
― |
― |
179,434,686 |
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引、「国際業務部門」は外貨建取引であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「流動性預金」=振替貯金+通常貯金等+貯蓄貯金
「通常貯金等」=通常貯金+特別貯金(通常郵便貯金相当)
4.「定期性預金」=定期貯金+定額貯金等+特別貯金(教育積立郵便貯金相当)
「定額貯金等」=定額貯金+特別貯金(定額郵便貯金相当)
5.貯金は銀行法施行規則の負債科目「預金」に相当するものであります。「振替貯金」は「当座預金」、「通常貯金」は「普通預金」、「貯蓄貯金」は「貯蓄預金」、「定期貯金」は「定期預金」に相当するものであります。「定額貯金」は「その他の預金」に相当するものでありますが、「定期性預金」に含めております。
6.特別貯金は管理機構からの預り金で、管理機構が公社から承継した郵便貯金に相当するものであります。
7.特別貯金(通常郵便貯金相当)は管理機構からの預り金のうち、管理機構が公社から承継した定期郵便貯金、定額郵便貯金、積立郵便貯金、住宅積立郵便貯金、教育積立郵便貯金に相当する郵便貯金で満期となったものなどであります。
ⅰ 業種別貸出状況(末残・構成比)
業種別 |
前事業年度 |
当事業年度 |
||
金額(百万円) |
構成比(%) |
金額(百万円) |
構成比(%) |
|
国内(除く特別国際金融取引勘定分) |
2,538,749 |
100.00 |
4,064,120 |
100.00 |
農業、林業、漁業、鉱業 |
― |
― |
― |
― |
製造業 |
51,808 |
2.04 |
― |
― |
電気・ガス等、情報通信業、運輸業 |
83,769 |
3.29 |
75,811 |
1.86 |
卸売業、小売業 |
― |
― |
10,518 |
0.25 |
金融・保険業 |
1,525,987 |
60.10 |
1,311,274 |
32.26 |
建設業、不動産業 |
12,112 |
0.47 |
14,062 |
0.34 |
各種サービス業、物品賃貸業 |
26,132 |
1.02 |
23,044 |
0.56 |
国、地方公共団体 |
638,140 |
25.13 |
2,440,005 |
60.03 |
その他 |
200,799 |
7.90 |
189,404 |
4.66 |
国際及び特別国際金融取引勘定分 |
3,300 |
100.00 |
― |
― |
政府等 |
― |
― |
― |
― |
金融機関 |
― |
― |
― |
― |
その他 |
3,300 |
100.00 |
― |
― |
合計 |
2,542,049 |
― |
4,064,120 |
― |
(注) 1.「国内」とは本邦居住者に対する貸出、「国際」とは非居住者に対する貸出であります。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.「金融・保険業」のうち管理機構向け貸出金は、前事業年度末1,216,710百万円、当事業年度末951,200百万円であります。
ⅱ 外国政府等向け債権残高(国別)
該当事項はありません。
○ 有価証券残高(末残)
種類 |
期別 |
国内業務部門 |
国際業務部門 |
相殺消去額(△) |
合計 |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
金額(百万円) |
||
国債 |
前事業年度 |
82,255,654 |
― |
― |
82,255,654 |
当事業年度 |
68,804,989 |
― |
― |
68,804,989 |
|
地方債 |
前事業年度 |
5,856,509 |
― |
― |
5,856,509 |
当事業年度 |
6,082,225 |
― |
― |
6,082,225 |
|
短期社債 |
前事業年度 |
204,995 |
― |
― |
204,995 |
当事業年度 |
233,998 |
― |
― |
233,998 |
|
社債 |
前事業年度 |
10,362,715 |
― |
― |
10,362,715 |
当事業年度 |
10,752,831 |
― |
― |
10,752,831 |
|
株式 |
前事業年度 |
1,390 |
― |
― |
1,390 |
当事業年度 |
1,390 |
― |
― |
1,390 |
|
その他の証券 |
前事業年度 |
― |
45,395,569 |
― |
45,395,569 |
当事業年度 |
1,942 |
52,915,071 |
― |
52,917,013 |
|
うち外国債券 |
前事業年度 |
― |
19,829,503 |
― |
19,829,503 |
当事業年度 |
― |
20,143,467 |
― |
20,143,467 |
|
うち投資信託 |
前事業年度 |
― |
25,520,966 |
― |
25,520,966 |
当事業年度 |
― |
32,726,722 |
― |
32,726,722 |
|
合計 |
前事業年度 |
98,681,264 |
45,395,569 |
― |
144,076,834 |
当事業年度 |
85,877,377 |
52,915,071 |
― |
138,792,448 |
(注) 1.「国内業務部門」は円建取引、「国際業務部門」は外貨建取引であります。ただし、円建対非居住者取引については、「国際業務部門」に含めております。
2.ゆうちょ銀行は、海外店及び海外子会社を有しておりません。
3.投資信託の投資対象は主として外国債券であります。
銀行業を行う当社の子会社であるゆうちょ銀行(単体)の自己資本比率は、銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)に定められた算式に基づき算出しております。
なお、ゆうちょ銀行は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
単体自己資本比率(国内基準)
|
(単位:億円、%) |
|
平成29年3月31日 |
1.自己資本比率(2/3) |
22.22 |
2.単体における自己資本の額 |
86,169 |
3.リスク・アセット等の額 |
387,798 |
4.単体総所要自己資本額 |
15,511 |
(注) 単体総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
資産の査定は、「金融機能の再生のための緊急措置に関する法律」(平成10年法律第132号)第6条に基づき、ゆうちょ銀行の貸借対照表の社債(当該社債を有する金融機関がその元本の償還及び利息の支払の全部又は一部について保証しているものであって、当該社債の発行が金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第3項に規定する有価証券の私募によるものに限る。)、貸出金、外国為替、その他資産中の未収利息及び仮払金、支払承諾見返の各勘定に計上されるもの並びに貸借対照表に注記することとされている有価証券の貸付けを行っている場合のその有価証券(使用貸借又は賃貸借契約によるものに限る。)について、債務者の財政状態及び経営成績等を基礎として次のとおり区分するものであります。
破産更生債権及びこれらに準ずる債権とは、破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て等の事由により経営破綻に陥っている債務者に対する債権及びこれらに準ずる債権をいう。
危険債権とは、債務者が経営破綻の状態には至っていないが、財政状態及び経営成績が悪化し、契約に従った債権の元本の回収及び利息の受取りができない可能性の高い債権をいう。
要管理債権とは、3カ月以上延滞債権及び貸出条件緩和債権をいう。
正常債権とは、債務者の財政状態及び経営成績に特に問題がないものとして、上記イ.からハ.までに掲げる債権以外のものに区分される債権をいう。
資産の査定の額
債権の区分 |
平成28年3月31日 |
平成29年3月31日 |
金額(億円) |
金額(億円) |
|
破産更生債権及びこれらに準ずる債権 |
― |
― |
危険債権 |
― |
― |
要管理債権 |
― |
― |
正常債権 |
26,454 |
41,454 |
ゆうちょ銀行単体情報のうち、参考として損益の概要を掲げております。
損益の概要
|
前事業年度 (百万円)(A) |
当事業年度 (百万円)(B) |
増減(百万円) (B)―(A) |
業務粗利益 |
1,452,082 |
1,410,256 |
△41,825 |
資金利益 |
1,361,065 |
1,223,546 |
△137,519 |
役務取引等利益 |
91,139 |
86,619 |
△4,520 |
その他業務利益 |
△122 |
100,091 |
100,213 |
うち外国為替売買損益 |
△1,471 |
99,395 |
100,867 |
うち国債等債券損益 |
1,846 |
△2,454 |
△4,300 |
経費(除く臨時処理分) |
△1,066,184 |
△1,056,168 |
10,015 |
人件費 |
△125,423 |
△125,328 |
95 |
物件費 |
△865,169 |
△854,369 |
10,800 |
税金 |
△75,591 |
△76,470 |
△879 |
業務純益(一般貸倒引当金繰入前) |
385,897 |
354,087 |
△31,810 |
一般貸倒引当金繰入額 |
― |
10 |
10 |
業務純益 |
385,897 |
354,098 |
△31,799 |
臨時損益 |
96,100 |
87,987 |
△8,112 |
株式等関係損益 |
3,232 |
88 |
△3,143 |
金銭の信託運用損益 |
93,867 |
82,930 |
△10,937 |
不良債権処理額 |
― |
△102 |
△102 |
個別貸倒引当金純繰入額 |
― |
△102 |
△102 |
貸倒引当金戻入益 |
0 |
- |
△0 |
償却債権取立益 |
39 |
34 |
△5 |
その他臨時損益 |
△1,039 |
5,035 |
6,075 |
経常利益 |
481,998 |
442,085 |
△39,912 |
特別損益 |
△1,109 |
△1,488 |
△379 |
固定資産処分損益 |
△1,103 |
△529 |
573 |
減損損失 |
△5 |
△958 |
△953 |
税引前当期純利益 |
480,888 |
440,596 |
△40,292 |
法人税、住民税及び事業税 |
△152,528 |
△133,287 |
19,241 |
法人税等調整額 |
△3,291 |
4,954 |
8,245 |
法人税等合計 |
△155,819 |
△128,332 |
27,486 |
当期純利益 |
325,069 |
312,264 |
△12,805 |
(注) 1.業務純益=業務粗利益-経費(除く臨時処理分)-一般貸倒引当金繰入額
2.臨時損益とは、損益計算書中「その他経常収益・費用」から一般貸倒引当金繰入額を除き、金銭の信託運用見合費用及び退職給付費用のうち臨時費用処理分等を加えたものであります。
3.「金銭の信託運用見合費用」とは、金銭の信託取得に係る資金調達費用であり、金銭の信託運用損益が臨時損益に計上されているため、業務費用から控除しているものであります。
4.国債等債券損益=国債等債券売却益+国債等債券償還益-国債等債券売却損-国債等債券償還損-国債等債券償却
5.株式等関係損益=株式等売却益-株式等売却損-株式等償却
6.金額が損失又は費用には△を付しております。
生命保険業につきましては、かんぽ生命保険において、平成28年に創業100周年を迎えた簡易生命保険の「簡易な手続きで、国民の基礎的生活手段を保障する」という社会的使命を受け継ぎつつ、「いつでもそばにいる。どこにいても支える。すべての人生を守り続けたい。」との経営理念を掲げ、簡易で小口な商品とあたたかいお客さまサービスの提供に取り組みました。当連結会計年度においては、以下の施策を中心に取り組みました。
引受けから支払いまで簡易・迅速・正確に行う態勢整備については、平成28年4月に営業用携帯端末機を利用した保険契約のペーパーレス申込みを導入しました。また、平成29年1月に基幹系システムを更改しました。この更改により、システム品質、開発生産性、業務効率を向上いたします。さらに、保険金支払審査業務の品質向上やお支払いの早期化のため、平成29年3月より、IBM Watsonを保険金支払審査業務に本格導入いたしました。
販売チャネルの営業力強化については、簡易生命保険誕生100周年記念キャンペーンやライフプラン相談会等を活用し、お客さまとの接点拡大による販売強化などを行いました。
お客さまニーズに対応した商品開発やご高齢のお客さまへのサービスの充実については、お客さまとのすべての接点をご高齢のお客さまの目線で業務改革し、安心感、信頼感のあるご高齢のお客さまにやさしいサービスをご提供することで、今後拡大するご高齢のお客さま層において真にお客さまから選ばれるよう、「かんぽプラチナライフサービス」を推進いたしました。また、市場金利の低下及び長寿化の進展を踏まえ、平成28年8月に、予定利率と予定死亡率を見直し、保険料の改定を実施いたしました。改定後の保険料は、保険料が引上げとなるご契約については引上げ幅を抑制することとし、主にご高齢でご加入いただくご契約や、死亡保障を主とする商品については保険料を引き下げました。
運用収益力の向上については、マイナス金利政策導入の影響による市場金利の低下を受け、安定的な利ざやを確保するために、外国債券・株式を中心にリスク性資産への投資を拡大いたしました。
内部管理態勢の強化については、募集品質向上に係る取り組みとして、平成28年4月より、ご高齢のお客さまを契約者とするお申込みについては、契約者さま、被保険者さま宛に、「お申込内容確認のご案内」を送付しております。
加えて、統合的リスク管理態勢の高度化を進めており、これにより財務の健全性の維持と資本効率の向上を図りつつ、安定的な利益の確保、持続的な企業価値の向上を目指しました。
そのほか、平成28年3月に第一生命ホールディングス株式会社との間で包括的な業務提携を結んでおり、「海外生命保険事業」、「資産運用事業」、「新商品・IT領域における共同研究」の3領域で協力いたしました。
これらの取り組みの結果、当連結会計年度、生命保険業におきましては、個人保険244万1千件、金額7,847,481百万円、個人年金保険1万件、金額39,797百万円の新契約を獲得しましたが、保有契約の減少等により、経常収益は8,659,444百万円(前期比946,299百万円減)、経常利益は279,777百万円(前期比131,726百万円減)となりました。
なお、かんぽ生命保険における保険引受及び資産運用の状況などの詳細な状況については、下記「(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況」に記載のとおりであります。
(参考)生命保険業を行う当社の子会社であるかんぽ生命保険の状況
(下表(a)イ.~ニ.の個人保険及び個人年金保険には、かんぽ生命保険が管理機構から受再している簡易生命保険契約を含みません。)
区分 |
前事業年度末 |
当事業年度末 |
||
件数(千件) |
金額(百万円) |
件数(千件) |
金額(百万円) |
|
個人保険 |
15,350 |
44,406,257 |
17,150 |
50,097,987 |
個人年金保険 |
1,367 |
3,476,492 |
1,363 |
3,131,186 |
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始前契約の年金支払開始時における年金原資と年金支払開始後契約の責任準備金額を合計したものであります。
区分 |
前事業年度 |
当事業年度 |
||
件数(千件) |
金額(百万円) |
件数(千件) |
金額(百万円) |
|
個人保険 |
2,397 |
7,168,485 |
2,441 |
7,847,481 |
個人年金保険 |
63 |
219,721 |
10 |
39,797 |
(注) 個人年金保険の金額は、年金支払開始時における年金原資であります。
|
|
(単位:百万円) |
|
区分 |
前事業年度末 |
当事業年度末 |
|
個人保険 |
2,863,561 |
3,207,988 |
|
個人年金保険 |
656,079 |
569,359 |
|
合計 |
3,519,640 |
3,777,348 |
|
|
うち医療保障・ |
293,413 |
333,857 |
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額。)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
|
|
(単位:百万円) |
|
区分 |
前事業年度 |
当事業年度 |
|
個人保険 |
485,374 |
507,988 |
|
個人年金保険 |
105,100 |
19,429 |
|
合計 |
590,474 |
527,417 |
|
|
うち医療保障・ |
49,588 |
55,739 |
(注) 1.年換算保険料とは、1回あたりの保険料について保険料の支払方法に応じた係数を乗じ、1年あたりの保険料に換算した金額であります(一時払契約等は、保険料を保険期間等で除した金額。)。
2.医療保障・生前給付保障等には、医療保障給付(入院給付、手術給付等)、生前給付保障給付(特定疾病給付、介護給付等)、保険料払込免除給付(障がいを事由とするものは除きます。特定疾病罹患、介護等を事由とするものを含みます。)等に該当する部分の年換算保険料を計上しております。
(参考)かんぽ生命保険が管理機構から受再している簡易生命保険契約の状況
(1) 保有契約高
区分 |
前事業年度末 |
当事業年度末 |
||
件数 (千件) |
保険金額・年金額 (百万円) |
件数 (千件) |
保険金額・年金額 (百万円) |
|
保険 |
16,973 |
46,114,524 |
14,412 |
38,605,449 |
年金保険 |
2,576 |
932,109 |
2,235 |
799,116 |
(注) 計数は、管理機構における公表基準によるものであります。
(2) 保有契約年換算保険料
|
|
(単位:百万円) |
|
区分 |
前事業年度末 |
当事業年度末 |
|
保険 |
2,167,911 |
1,771,625 |
|
年金保険 |
884,630 |
762,884 |
|
合計 |
3,052,541 |
2,534,509 |
|
|
うち医療保障・ |
445,288 |
402,322 |
(注) かんぽ生命保険が管理機構から受再している簡易生命保険契約について、上記ハ.に記載しております個人保険及び個人年金保険の保有契約年換算保険料と同様の計算方法により、かんぽ生命保険が算出した金額であります。
区分 |
前事業年度末 |
当事業年度末 |
||||
金額(百万円) |
構成比(%) |
金額(百万円) |
構成比(%) |
|||
現預金・コールローン |
2,216,037 |
2.7 |
1,510,137 |
1.9 |
||
買現先勘定 |
― |
― |
― |
― |
||
債券貸借取引支払保証金 |
3,008,591 |
3.7 |
3,520,722 |
4.4 |
||
買入金銭債権 |
430,150 |
0.5 |
27,561 |
0.0 |
||
商品有価証券 |
― |
― |
― |
― |
||
金銭の信託 |
1,644,547 |
2.0 |
2,127,042 |
2.6 |
||
有価証券 |
63,610,890 |
78.0 |
63,486,273 |
79.0 |
||
|
公社債 |
59,821,039 |
73.4 |
57,658,115 |
71.8 |
|
|
株式 |
984 |
0.0 |
59,305 |
0.1 |
|
|
外国証券 |
3,688,822 |
4.5 |
4,351,731 |
5.4 |
|
|
|
公社債 |
3,688,822 |
4.5 |
4,346,732 |
5.4 |
|
|
株式等 |
― |
― |
4,998 |
0.0 |
|
その他の証券 |
100,044 |
0.1 |
1,417,122 |
1.8 |
|
貸付金 |
8,978,437 |
11.0 |
8,060,902 |
10.0 |
||
|
保険約款貸付 |
95,629 |
0.1 |
118,141 |
0.1 |
|
|
一般貸付 |
829,027 |
1.0 |
873,720 |
1.1 |
|
|
機構貸付 |
8,053,780 |
9.9 |
7,069,040 |
8.8 |
|
不動産 |
123,747 |
0.2 |
119,011 |
0.1 |
||
|
うち投資用不動産 |
― |
― |
― |
― |
|
繰延税金資産 |
712,615 |
0.9 |
852,263 |
1.1 |
||
その他 |
819,378 |
1.0 |
633,157 |
0.8 |
||
貸倒引当金 |
△772 |
△0.0 |
△658 |
△0.0 |
||
合計 |
81,543,623 |
100.0 |
80,336,414 |
100.0 |
||
|
うち外貨建資産 |
3,949,417 |
4.8 |
4,753,649 |
5.9 |
(注) 1.機構貸付とは、管理機構(簡易生命保険勘定)への貸付であります。
2.不動産については、土地・建物・建設仮勘定を合計した金額を計上しております。
|
|
(単位:%) |
|
区分 |
前事業年度 |
当事業年度 |
|
現預金・コールローン |
0.05 |
0.00 |
|
買現先勘定 |
― |
― |
|
債券貸借取引支払保証金 |
― |
― |
|
買入金銭債権 |
0.26 |
0.23 |
|
商品有価証券 |
― |
― |
|
金銭の信託 |
3.37 |
3.49 |
|
有価証券 |
1.66 |
1.52 |
|
|
うち公社債 |
1.63 |
1.59 |
|
うち株式 |
― |
5.23 |
|
うち外国証券 |
2.10 |
0.61 |
貸付金 |
2.19 |
2.10 |
|
|
うち一般貸付 |
1.51 |
1.30 |
不動産 |
― |
― |
|
一般勘定計 |
1.62 |
1.50 |
|
|
うち海外投融資 |
2.22 |
0.82 |
(注) 1.利回り計算式の分母は帳簿価額ベースの日々平均残高、分子は経常損益中、資産運用収益-資産運用費用として算出した利回りであります。
2.一般勘定計には、有価証券信託に係る資産を含めております。
3.海外投融資とは、外貨建資産と円建資産の合計であります。
基礎利益は、保険料等収入、保険金等支払金、事業費等の保険関係の収支と、利息及び配当金等収入を中心とした運用関係の収支からなる、生命保険会社の基礎的な期間損益の状況を表す指標であります。
かんぽ生命保険の当事業年度における基礎利益は、390,070百万円となりました。
|
|
(単位:百万円) |
|
項目 |
前事業年度 |
当事業年度 |
|
基礎利益 |
(A) |
464,285 |
390,070 |
キャピタル収益 |
|
46,180 |
141,677 |
金銭の信託運用益 |
44,939 |
56,535 |
|
売買目的有価証券運用益 |
― |
― |
|
有価証券売却益 |
1,241 |
85,142 |
|
金融派生商品収益 |
― |
― |
|
為替差益 |
― |
― |
|
その他キャピタル収益 |
― |
― |
|
キャピタル費用 |
41,748 |
192,860 |
|
金銭の信託運用損 |
― |
― |
|
売買目的有価証券運用損 |
― |
― |
|
有価証券売却損 |
1,592 |
124,734 |
|
有価証券評価損 |
― |
― |
|
金融派生商品費用 |
1,511 |
20,599 |
|
為替差損 |
402 |
3,362 |
|
その他キャピタル費用 |
38,242 |
44,163 |
|
キャピタル損益 |
(B) |
4,432 |
△51,182 |
キャピタル損益含み基礎利益 |
(A)+(B) |
468,717 |
338,887 |
臨時収益 |
123,864 |
120,819 |
|
再保険収入 |
― |
― |
|
危険準備金戻入額 |
123,864 |
120,819 |
|
個別貸倒引当金戻入額 |
― |
― |
|
その他臨時収益 |
― |
― |
|
臨時費用 |
179,558 |
180,359 |
|
再保険料 |
― |
― |
|
危険準備金繰入額 |
― |
― |
|
個別貸倒引当金繰入額 |
― |
― |
|
特定海外債権引当勘定繰入額 |
― |
― |
|
貸付金償却 |
― |
― |
|
その他臨時費用 |
179,558 |
180,359 |
|
臨時損益 |
(C) |
△55,694 |
△59,539 |
経常利益 |
(A)+(B)+(C) |
413,023 |
279,347 |
(注) 1.金銭の信託に係るインカム・ゲインに相当する額(前事業年度:38,242百万円、当事業年度:44,130百万円)を「その他キャピタル費用」に計上し、基礎利益に含めております。
2.金融派生商品に係るインカム・ゲインに相当する額(当事業年度:33百万円)を「その他キャピタル費用」に計上し、基礎利益に含めております。
3.「その他臨時費用」には、保険業法施行規則第69条第5項の規定により責任準備金を追加して積み立てた額(前事業年度:179,558百万円、当事業年度:180,359百万円)を記載しております。
生命保険会社は将来の保険金等の支払いに備えて責任準備金を積み立てており、通常予測できる範囲のリスクについては責任準備金の範囲内で対応できます。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、規制当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末におけるかんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,290.6%と高い健全性を維持しております。
|
|
(単位:百万円) |
||
項目 |
前連結会計年度末 |
当連結会計年度末 |
||
ソルベンシー・マージン総額 |
(A) |
5,547,846 |
5,425,821 |
|
|
資本金等 |
|
1,438,806 |
1,490,882 |
|
価格変動準備金 |
|
782,268 |
788,712 |
|
危険準備金 |
|
2,374,846 |
2,254,027 |
|
異常危険準備金 |
|
― |
― |
|
一般貸倒引当金 |
|
71 |
59 |
|
(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ |
|
505,374 |
399,297 |
|
土地の含み損益×85%(マイナスの場合100%) |
|
△3,474 |
103 |
|
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額 |
|
6,975 |
6,064 |
|
全期チルメル式責任準備金相当額超過額 |
|
442,977 |
486,674 |
|
負債性資本調達手段等 |
|
― |
― |
|
全期チルメル式責任準備金相当額超過額及び負債性 |
|
― |
― |
|
控除項目 |
|
― |
― |
|
その他 |
|
― |
― |
リスクの合計額 〔{(R12+R52)1/2+R8+R9}2+(R2+R3+R7)2〕1/2+R4+R6 |
(B) |
706,591 |
840,767 |
|
|
保険リスク相当額 |
R1 |
159,046 |
153,070 |
|
一般保険リスク相当額 |
R5 |
― |
― |
|
巨大災害リスク相当額 |
R6 |
― |
― |
|
第三分野保険の保険リスク相当額 |
R8 |
78,262 |
69,104 |
|
少額短期保険業者の保険リスク相当額 |
R9 |
― |
― |
|
予定利率リスク相当額 |
R2 |
170,717 |
158,838 |
|
最低保証リスク相当額 |
R7 |
― |
― |
|
資産運用リスク相当額 |
R3 |
476,029 |
631,036 |
|
経営管理リスク相当額 |
R4 |
17,681 |
20,240 |
ソルベンシー・マージン比率 (A)/{(1/2)×(B)}×100 |
|
1,570.3% |
1,290.6% |
(注) 保険業法施行規則第86条の2、第88条及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
ⅰ EVについて
エンベディッド・バリュー(以下「EV」といいます。)は対象事業に割り当てられた、資産及び負債から生じる株主への分配可能な利益の価値の見積りであります。ただし、将来の新契約から生じる価値は含みません。この価値は、修正純資産及び保有契約価値で構成されるものであります。
修正純資産は株主に帰属すると考えられる純資産(時価)であり、必要資本とフリー・サープラスで構成されるものであります。
保有契約価値は、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益の評価日時点の現在価値であり、必要資本を維持するための費用等を控除したものであります。
生命保険契約は、一般に販売時に多くのコストが発生するため、一時的には損失が発生するものの、契約が継続することで、将来にわたり生み出される利益によりそのコストを回収することが期待される収支構造となっております。現行の法定会計では、このような収支構造をそのまま各年度の損益として把握しておりますが、EVは、全保険期間を通じた損益を現在価値で評価することとなるため、現行の法定会計による財務情報では不足する情報を補うことができる指標の一つと考えております。
ⅱ EEVについて
EVの開示に関する一貫性と透明性の改善を図る目的で、平成16年5月にヨーロッパの主要保険会社のCFO(最高財務責任者)の集まりである、CFOフォーラムが、ヨーロピアン・エンベディッド・バリュー(以下「EEV」といいます。)原則及び指針(ガイダンス)を制定いたしました。
平成28年5月には、CFOフォーラムによってEEV原則の改正が公表され、EVに平成28年1月から施行された欧州ソルベンシーⅡ等の計算で用いた計算手法及び前提の使用が許容されるようになりました。
ⅲ EEVの計算手法
今回のEEVの計算には、市場整合的手法を用いております。この手法は、資産又は負債から発生するキャッシュ・フローを市場で取引されている金融商品と整合的に評価するものであります。
かんぽ生命保険は、郵政民営化法に基づき、平成19年10月1日に発足しました。また、平成19年9月末までに契約された簡易生命保険契約は、管理機構に承継されるとともに、管理機構が負う保険責任のすべてについて、かんぽ生命保険が受再しております。
かんぽ生命保険は、管理機構との再保険契約において、簡易生命保険契約を他の保険契約と区分して管理すること(簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金も区分して管理すること)、簡易生命保険契約から生じた利益(危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益も含んでおります。)も区分して管理すること、及び管理機構が簡易生命保険契約に対して既に約款で約束している確定配当所要額と再保険損益(確定配当所要額及び法人税等を除いたこの区分における利益)の8割の合計額を、管理機構へ再保険配当をすることを定めております。EEVの計算においては、この管理機構への再保険配当を差し引いた後の利益を反映しております。
このように管理機構への再保険配当の原資に、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金の戻入による利益が含まれることから、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金は修正純資産には含めておらず、将来において戻入する前提で保有契約価値に含めて計算しております。
かんぽ生命保険のEEVは以下のとおりであります。
|
|
(単位:億円) |
||
|
前事業年度末 |
当事業年度末 |
増減 |
|
EEV |
31,510 |
33,556 |
2,046 |
|
|
修正純資産 |
18,943 |
19,652 |
709 |
|
保有契約価値 |
12,567 |
13,904 |
1,336 |
|
|
|
|
|
|
|
前事業年度 |
当事業年度 |
増減 |
新契約価値 |
1,927 |
368 |
△1,558 |
(注) 1.前事業年度末EEV及び前事業年度新契約価値の計算において、リスク・フリー・レートの超長期の金利の補外方法を、市場データの最終年限以降のフォワード・レートを一定にする方法から長期均衡的なフォワード・レート(ultimate forward rate)(以下「終局金利」といいます。)を用いた方法で再評価しております。この再評価による影響額は、保有契約価値で4,327億円の増加、新契約価値で253億円の増加となっております。
2.新契約価値の計算において、前事業年度までは保有契約とは独立に新契約単独の損益に基づいて計算する方式(以下「スタンドアロン方式」といいます。)を採択しておりましたが、当事業年度からは新契約を獲得した場合の保有契約全体の損益に基づいて計算したEVと、新契約を獲得しなかった場合の保有契約全体の損益に基づいて計算したEVの差とする方式(以下「マージナル方式」といいます。)に変更しております。
なお、一貫性のある評価を行うため、前事業年度の新契約価値についても同様の方法により再評価しております。この再評価による影響額は、491億円の増加となっております。
ⅰ 修正純資産
修正純資産は、資産の市場価値のうち、契約者に対する負債及びその他の負債の価値を超過する部分であり、株主に帰属すると考えられる価値であります。当期純利益による増加と負債中の内部留保(価格変動準備金及び危険準備金の合計)の積増しを主な理由として、当事業年度末における修正純資産は前事業年度末から増加しております。修正純資産の内訳は以下のとおりであります。
|
|
(単位:億円) |
||
|
前事業年度末 |
当事業年度末 |
増減 |
|
修正純資産 |
18,943 |
19,652 |
709 |
|
|
純資産の部計(注1) |
14,724 |
15,274 |
549 |
|
価格変動準備金(注2) |
1,464 |
1,402 |
△61 |
|
危険準備金(注2) |
3,631 |
4,152 |
520 |
|
その他(注3) |
764 |
526 |
△237 |
|
上記項目に係る税効果 |
△1,641 |
△1,703 |
△61 |
(注) 1.計算対象に子会社を含めているため、かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.簡易生命保険契約に係る部分を除いております。
3.保険契約に係らない有価証券、貸付金及び不動産の含み損益並びに一般貸倒引当金並びに退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)を計上しております。
当事業年度末の修正純資産を計算する際に除いた保険契約に係る部分は以下のとおりであります。
|
|
(単位:億円) |
||
|
会社合計 |
保険契約に |
修正純資産 |
|
修正純資産 |
97,518 |
77,865 |
19,652 |
|
|
純資産の部計(注1) |
15,274 |
― |
15,274 |
|
価格変動準備金(注2) |
7,887 |
6,484 |
1,402 |
|
危険準備金(注2) |
22,540 |
18,388 |
4,152 |
|
その他(注3) |
83,746 |
83,219 |
526 |
|
上記項目に係る税効果 |
△31,929 |
△30,226 |
△1,703 |
(注) 1.かんぽ生命保険の連結貸借対照表の純資産の部合計を計上しております。ただし、その他の包括利益累計額合計を除いております。また、自己株式に計上している株式給付信託が保有するかんぽ生命保険の株式の帳簿価額を加えております。
2.保険契約に係る部分(②)は、簡易生命保険契約に係る部分のみとなります。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
3.有価証券、貸付金及び不動産の含み損益並びに一般貸倒引当金並びに退職給付の未積立債務(未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異)を計上しております。
ⅱ 保有契約価値
保有契約価値は、保有契約の評価日時点における価値を表したもので、保有契約及び保有契約に係る資産から将来発生すると見込まれる株主への分配可能な利益を現在価値に割り引いております。金利上昇を主な理由として、当事業年度末における保有契約価値は前事業年度末から増加しております。保有契約価値の内訳は以下のとおりであります。
将来利益の計算において保険契約に係る資産は簿価評価しております。また、簡易生命保険契約に係る危険準備金及び価格変動準備金が将来において戻入する前提で、その戻入による利益を含めて計算しております。「ロ.簡易生命保険契約について」をご参照ください。
|
|
(単位:億円) |
||
|
前事業年度末 |
当事業年度末 |
増減 |
|
保有契約価値 |
12,567 |
13,904 |
1,336 |
|
|
確実性等価将来利益現価 |
18,751 |
19,601 |
850 |
|
オプションと保証の時間価値 |
△4,172 |
△4,082 |
89 |
|
必要資本を維持するための費用 |
△0 |
△0 |
△0 |
|
ヘッジ不能リスクに係る費用 |
△2,011 |
△1,614 |
396 |
(注) 前事業年度末の保有契約価値の計算において、リスク・フリー・レートの超長期の金利の補外方法を、従来の市場データの最終年限以降のフォワード・レートを一定にする方法から終局金利を用いた方法に変更しております。これに伴い、終局金利の実現に関する不確実性をヘッジ不能リスクに係る費用に反映する等しております。
ⅲ 新契約価値
新契約価値は、当期間に獲得した新契約の契約獲得時点における価値を表したものであります。評価に用いられた金利の低下を主な理由として、当事業年度における新契約価値は前事業年度から減少しております。新契約価値の内訳は以下のとおりであります。
|
|
(単位:億円) |
||
|
前事業年度 |
当事業年度 |
増減 |
|
新契約価値 |
1,927 |
368 |
△1,558 |
|
|
確実性等価将来利益現価 |
2,012 |
970 |
△1,042 |
|
オプションと保証の時間価値 |
△85 |
△417 |
△332 |
|
必要資本を維持するための費用 |
△0 |
△0 |
△0 |
|
ヘッジ不能リスクに係る費用 |
△0 |
△183 |
△183 |
(注) 1.前事業年度の新契約価値の計算において、リスク・フリー・レートの超長期の金利の補外方法を、従来の市場データの最終年限以降のフォワード・レートを一定にする方法から終局金利を用いた方法に変更しております。これに伴い、終局金利の実現に関する不確実性をヘッジ不能リスクに係る費用に反映する等しております。
2.新契約価値の計算において、前事業年度まではスタンドアロン方式を採択しておりましたが、当事業年度からはマージナル方式に変更しております。
なお、一貫性のある評価を行うため、前事業年度の新契約価値についても同様の方法により再評価しております。
なお、新契約マージン(新契約価値の保険料収入現価に対する比率)は以下のとおりであります。
|
|
(単位:億円) |
|
|
前事業年度 |
当事業年度 |
増減 |
新契約価値 |
1,927 |
368 |
△1,558 |
保険料収入現価(注) |
57,054 |
60,587 |
3,532 |
新契約マージン |
3.38% |
0.61% |
△2.77ポイント |
(注) 将来の収入保険料を、新契約価値の計算に用いたリスク・フリー・レートで割り引いております。
|
|
|
(単位:億円) |
|
|
修正純資産 |
保有契約価値 |
EEV |
|
前事業年度末EEV |
18,943 |
8,240 |
27,183 |
|
① 金利の補外方法の変更 |
― |
4,327 |
4,327 |
|
前事業年度末EEV(再評価後) |
18,943 |
12,567 |
31,510 |
|
② 前事業年度末EEVの調整 |
△336 |
― |
△336 |
|
前事業年度末EEV(調整後) |
18,607 |
12,567 |
31,174 |
|
③ 当事業年度新契約価値 |
― |
368 |
368 |
|
④ 期待収益(リスク・フリー・レート分) |
△22 |
900 |
877 |
|
⑤ 期待収益(超過収益分) |
8 |
209 |
218 |
|
⑥ 保有契約価値からの移管 |
1,379 |
△1,379 |
― |
|
|
うち前事業年度末保有契約 |
1,650 |
△1,650 |
― |
|
うち当事業年度新契約 |
△271 |
271 |
― |
⑦ 前提条件(非経済前提)と実績の差異 |
△36 |
△133 |
△170 |
|
⑧ 前提条件(非経済前提)の変更 |
― |
227 |
227 |
|
⑨ 前提条件(経済前提)と実績の差異 |
△283 |
1,143 |
859 |
|
当事業年度末EEV |
19,652 |
13,904 |
33,556 |
ⅰ 金利の補外方法の変更
リスク・フリー・レートの超長期の金利の補外方法を、従来の市場データの最終年限以降のフォワード・レートを一定にする方法から終局金利を用いた方法に変更することによる影響となります。これに伴い終局金利の実現に関する不確実性をヘッジ不能リスクに係る費用に反映する等しております。
ⅱ 前事業年度末EEVの調整
かんぽ生命保険は当事業年度において336億円の株主配当金を支払っており、修正純資産がその分減少しております。
ⅲ 当事業年度新契約価値
新契約価値は、当事業年度に新契約を獲得したことによる契約獲得時点における価値を表わしたものであり、契約獲得に係る費用を控除した後の金額が反映されております。なお、平成28年11月28日に公布された「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律」に基づく消費税率の引き上げ時期の変更(以下「税制の改正」といいます。)を織り込んでおります。
ⅳ 期待収益(リスク・フリー・レート分)
保有契約価値の計算にあたっては、将来の期待収益をリスク・フリー・レートで割り引いておりますので、時間の経過とともに割引の影響が解放されます。これには、オプションと保証の時間価値、必要資本を維持するための費用及びヘッジ不能リスクに係る費用のうち当事業年度分の解放を含んでおります。修正純資産からは、対応する資産からリスク・フリー・レート分(△0.154%)に相当する収益が発生しております。
ⅴ 期待収益(超過収益分)
EEVの計算にあたっては、将来の期待収益としてリスク・フリー・レートを用いておりますが、実際の会社はリスク・フリー・レートを超過する利回りを期待しております。この項目は、その期待される超過収益を表しております。
ⅵ 保有契約価値からの移管
当事業年度に実現が期待されていた利益が、保有契約価値から修正純資産に移管されます。これには、前事業年度末の保有契約から期待される当事業年度の利益と、当事業年度に獲得した新契約からの、契約獲得に係る費用を含めた当事業年度の損益が含まれております。
これらは保有契約価値から修正純資産への振替えであり、EEVの金額には影響しません。
ⅶ 前提条件(非経済前提)と実績の差異
前事業年度末の保有契約価値の計算に用いた前提条件(非経済前提)と、当事業年度の実績の差額であります。
ⅷ 前提条件(非経済前提)の変更
前提条件(非経済前提)を更新したことにより、翌事業年度以降の収支が変化することによる影響であります。主な増加要因は、直近の死亡率動向を前提に反映したことによるものであります。
当項目には、税制の改正による影響を反映(保有契約価値が48億円の増加)しております。
なお、新契約価値に反映された税制の改正の影響は当項目には含まれておりません。
ⅸ 前提条件(経済前提)と実績の差異
市場金利やインプライド・ボラティリティ等の経済前提が、前事業年度末EEV計算に用いたものと異なることによる影響であります。当該影響は、当事業年度の実績及び翌事業年度以降の見積もりの変更を含んでおります。
主に金利上昇により、修正純資産は283億円減少し、保有契約価値は1,143億円増加しております。
前提条件を変更した場合のEEVの感応度は以下のとおりであります。感応度は、一度に1つの前提のみを変化させることとしており、同時に2つの前提を変化させた場合の感応度は、それぞれの感応度の合計とはならないことにご注意ください。
|
(単位:億円) |
|
前提条件 |
EEV |
増減額 |
当事業年度末EEV |
33,556 |
― |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 |
35,607 |
2,050 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 |
30,553 |
△3,002 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) |
29,427 |
△4,129 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 |
32,696 |
△860 |
感応度5:事業費率(維持費)10%減少 |
35,133 |
1,576 |
感応度6:解約失効率10%減少 |
33,822 |
265 |
感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下 |
34,659 |
1,103 |
感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下 |
32,330 |
△1,226 |
感応度9:必要資本を法定最低水準に変更 |
33,556 |
0 |
感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇 |
32,990 |
△566 |
感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇 |
32,164 |
△1,392 |
感応度1から4について、修正純資産の変動額は以下のとおりであります。また、感応度5から11については、保有契約価値のみの変動額となります。
|
|
(単位:億円) |
前提条件 |
増減額 |
(参考) |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 |
△659 |
△25,358 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 |
163 |
12,856 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) |
695 |
27,540 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 |
△81 |
△1,644 |
(注) 参考値として、会社合計の資産の含み損益の増減額(税引後に換算)を示しております。なお、EEVの計算にあたって、保険契約に係る部分の資産の含み損益については、修正純資産ではなく、保有契約価値の計算に含めて評価しております。
新契約価値の感応度
|
(単位:億円) |
|
前提条件 |
新契約価値 |
増減額 |
当事業年度新契約価値 |
368 |
― |
感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇 |
1,650 |
1,281 |
感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下 |
△689 |
△1,058 |
感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし) |
△1,568 |
△1,937 |
感応度4:株式・不動産価値10%下落 |
368 |
― |
感応度5:事業費率(維持費)10%減少 |
658 |
290 |
感応度6:解約失効率10%減少 |
435 |
66 |
感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下 |
458 |
90 |
感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下 |
368 |
△0 |
感応度9:必要資本を法定最低水準に変更 |
368 |
― |
感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇 |
300 |
△67 |
感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇 |
365 |
△2 |
ⅰ 感応度1:リスク・フリー・レート50bp上昇
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp上昇した場合の影響を表しております。債券・貸付金等、金利の変動により時価が変動する資産を再評価するとともに、将来の運用利回りや割引率を変動させて保有契約価値を再計算しております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについては、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅱ 感応度2:リスク・フリー・レート50bp低下
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、リスク・フリー・レートが0%を下回る場合は0%としております。ただし、50bp低下前のリスク・ フリー・レートが0%を下回る場合はその値をそのまま使用しております。これは従来からの開示と同じ方式となります。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについては、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅲ 感応度3:リスク・フリー・レート50bp低下(低下後の下限なし)
(ⅰ)リスク・フリー・レート(フォワード・レート)が各年限とも50bp低下した場合の影響を表しております。なお、感応度2と異なり、リスク・フリー・レートの正負を判定せず、下限を設けずに50bp低下させております。
(ⅱ)リスク・フリー・レートについては、補外開始年度以降は終局金利を変えずに補外しております。
ⅳ 感応度4:株式・不動産価値10%下落
株式及び不動産の評価日時点の価格が10%下落した場合の影響を表しております。
ⅴ 感応度5:事業費率(維持費)10%減少
事業費率(契約維持に係るもの)が10%減少した場合の影響を表しております。
ⅵ 感応度6:解約失効率10%減少
解約失効率が10%減少(基本となる解約失効率に90%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅶ 感応度7:保険事故発生率(死亡保険)5%低下
死亡保険について、保険事故発生率(死亡率・罹患率)が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅷ 感応度8:保険事故発生率(年金保険)5%低下
年金保険について、保険事故発生率が5%低下(基本となる保険事故発生率に95%を乗じた水準)した場合の影響を表しております。
ⅸ 感応度9:必要資本を法定最低水準に変更
必要資本を法定最低水準(ソルベンシー・マージン比率200%水準)に変更した場合の影響を表しております。
ⅹ 感応度10:株式・不動産のインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、株式オプションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
ⅺ 感応度11:金利スワップションのインプライド・ボラティリティ25%上昇
オプションと保証の時間価値の計算に使用する、金利スワップションのインプライド・ボラティリティが25%上昇した場合の影響を表しております。
EEVの計算においては、リスクと不確実性を伴う将来の見通しを含んだ多くの前提条件を使用し、それらの多くは個別会社の管理能力を超えた領域に属するものであります。また、将来の実績がEEVの計算に使用した前提条件と大きく異なる場合もあり得ます。
これらの理由により、本EEV開示は、EEV計算に用いられた将来の税引後利益が達成されることを表明するものではなく、使用にあたっては、十分な注意を払っていただく必要があります。
かんぽ生命保険では、保険数理に関する専門知識を有する第三者機関(アクチュアリー・ファーム)に、EEVについて検証を依頼し、意見書を受領しております。
上記各報告セグメントにおける事業のほか、病院事業については、地域医療機関との連携や救急患者の受入の強化等による増収対策、委託契約見直しによる経費削減、また、経営改善が見込めない逓信病院(1カ所※)を閉院する等、個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めているところですが、患者数の減少等により、営業収益21,245百万円(前期比1,317百万円減)、営業損失5,581百万円(前期は5,249百万円の営業損失)となりました。
また、宿泊事業については、営業推進態勢の強化、リニューアル工事やサービス水準向上による魅力ある宿づくりを継続的に進めるとともに、費用管理による経費削減等の経営改善に取り組んでいるところですが、熊本地震等の影響もあり、営業収益26,270百万円(前期比1,839百万円減)、営業損失2,477百万円(前期は1,985百万円の営業損失)となりました。
※ 平成28年3月 大阪北逓信病院
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は当期首から5,084,517百万円増加し、53,225,675百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動においては、銀行業における資金の運用や調達、生命保険業における保険料の収入や保険金の支払等の結果、991,123百万円の支出(前期は787,989百万円の収入)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動においては、銀行業及び生命保険業における有価証券の売却、償還による収入等及び有価証券の取得による支出等の結果、6,300,698百万円の収入(前期比5,311,353百万円の収入減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動においては、当社の配当金の支払等の結果、225,199百万円の支出(前期比163,147百万円の支出増)となりました。
銀行持株会社としての当社の連結自己資本比率は、銀行法第52条の25の規定に基づき、銀行持株会社が銀行持株会社及びその子会社の保有する資産等に照らしそれらの自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第20号)に定められた算式に基づき、連結ベースについて算出しております。
なお、当社は、国内基準を適用のうえ、信用リスク・アセットの算出においては標準的手法を採用しております。
当連結会計年度末における連結自己資本比率は、23.80%となりました。
連結自己資本比率(国内基準)
|
(単位:億円、%) |
|
当連結会計年度末 |
1.連結自己資本比率(2/3) |
23.80 |
2.連結における自己資本の額 |
106,046 |
3.リスク・アセット等の額 |
445,509 |
4.連結総所要自己資本額 |
17,820 |
(注) 連結総所要自己資本額は、上記3.に記載しているリスク・アセット等の額に4%を乗じた額であります。
保険持株会社としての当社の連結ソルベンシー・マージン比率は、保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
ソルベンシー・マージン比率とは、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断するための行政監督上の指標の一つであります。
この比率が200%を下回った場合は、規制当局によって早期是正措置がとられます。逆にこの比率が200%以上であれば、健全性の一つの基準を満たしていることになります。
当連結会計年度末における連結ソルベンシー・マージン比率は、922.0%となりました。
項目 |
前連結会計年度末 (百万円) |
当連結会計年度末 (百万円) |
|||
連結ソルベンシー・マージン総額 |
(A) |
19,247,504 |
19,375,176 |
||
|
資本金又は基金等 |
|
11,376,850 |
11,580,137 |
|
|
価格変動準備金 |
|
782,268 |
788,712 |
|
|
危険準備金 |
|
2,374,846 |
2,254,027 |
|
|
異常危険準備金 |
|
― |
― |
|
|
一般貸倒引当金 |
|
458 |
376 |
|
|
(その他有価証券評価差額金(税効果控除前)・繰延ヘッジ損益 |
|
3,803,168 |
3,817,559 |
|
|
土地の含み損益×85%(マイナスの場合100%) |
|
81,516 |
108,968 |
|
|
未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の合計額 |
|
385,417 |
338,720 |
|
|
負債性資本調達手段、保険料積立金等余剰部分 |
|
442,977 |
486,674 |
|
|
|
保険料積立金等余剰部分 |
|
442,977 |
486,674 |
|
|
負債性資本調達手段等 |
|
― |
― |
|
|
不算入額 |
|
― |
― |
|
少額短期保険業者に係るマージン総額 |
|
― |
― |
|
|
控除項目 |
|
― |
― |
|
|
その他 |
|
― |
― |
|
連結リスクの合計額 〔{(R12+R52)1/2+R8+R9}2+(R2+R3+R7)2〕1/2+R4+R6 |
(B) |
3,539,898 |
4,202,494 |
||
|
保険リスク相当額 |
R1 |
159,046 |
153,070 |
|
|
一般保険リスク相当額 |
R5 |
― |
― |
|
|
巨大災害リスク相当額 |
R6 |
― |
― |
|
|
第三分野保険の保険リスク相当額 |
R8 |
78,262 |
69,104 |
|
|
少額短期保険業者の保険リスク相当額 |
R9 |
― |
― |
|
|
予定利率リスク相当額 |
R2 |
170,717 |
158,838 |
|
|
最低保証リスク相当額 |
R7 |
― |
― |
|
|
資産運用リスク相当額 |
R3 |
3,014,609 |
3,711,234 |
|
|
経営管理リスク相当額 |
R4 |
345,743 |
326,050 |
|
連結ソルベンシー・マージン比率 (A)/{(1/2)×(B)}×100 |
|
1,087.4% |
922.0% |
(注) 保険業法施行規則第210条の11の3、第210条の11の4及び平成23年金融庁告示第23号の規定に基づいて算出しております。
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業及び生命保険業を中心とした広範囲な事業を営んでおり、生産、受注といった区分による表示が困難であることから、「生産、受注及び販売の状況」については、「1 業績等の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
① 当社グループの経営理念及び経営方針
(a) グループ経営理念
郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献します。
(b) グループ経営方針
・ お客さまの生活を最優先し、創造性を発揮しお客さまの人生のあらゆるステージで必要とされる商品・サービスを全国ネットワークで提供します。
・ 企業としてのガバナンス、監査・内部統制を確立しコンプライアンスを徹底します。
・ 適切な情報開示、グループ内取引の適正な推進などグループとしての経営の透明性を実現します。
・ グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
・ 働く人、事業を支えるパートナー、社会と地域の人々、みんながお互い協力し、社員一人ひとりが成長できる機会を創出します。
② 当社グループの経営戦略等
当社グループは、平成27年4月に、新たに平成27年度から平成29年度を計画期間とする「日本郵政グループ中期経営計画 ~新郵政ネットワーク創造プラン2017~」を発表いたしました。「主要三事業の収益力と経営基盤の強化」、「ユニバーサルサービスの責務の遂行」、「上場を見据えたグループ企業価値の向上」の3点を中期的なグループ経営方針とし、その上で、現在当社グループが直面している「更なる収益性の追求」、「生産性の向上」、「上場企業としての企業統治と利益還元」という新たな3つの課題を克服するため、当社グループが一丸となって、郵便・物流事業の反転攻勢や郵便局ネットワークの活性化などの「事業の成長・発展のための戦略」、ITの活用や施設・設備への投資などの「ネットワークの拡大、機能の進化を支えるグループ戦略」に取り組み、将来にわたって「トータル生活サポート企業」として発展していくことを目指しております。
当社といたしましては、平成29年度におきましても、郵便、貯金及び保険のユニバーサルサービスの確保並びに郵便局ネットワークの維持・活用による安定的なサービスの提供等という目的が達成できるよう、グループ各社の経営の基本方針の策定及び実施の確保に努めてまいります。
そして、当社グループの企業価値向上を目指し、上記方針を踏まえたグループ各社の収益力強化策や更なる経営効率化等が着実に進展するよう、グループ運営を行ってまいります。あわせて、当社グループが抱える経営課題については、持株会社として、グループ各社と連携を深めながら必要な支援を行い、その解消に努めてまいります。コーポレートガバナンスの強化のため、グループ全体の内部統制に努めるとともに、コンプライアンス水準の向上を重点課題として、グループ各社に必要となる支援・指導を行い、不祥事再発防止等につきましても、取り組みを推進・管理してまいります。
さらに、引き続き、グループ各社が提供するサービスの公益性及び公共性の確保や、お客さま満足度の向上に取り組むとともに、当社グループの社会的責任を踏まえたCSR活動や東日本大震災・平成28年熊本地震の復興支援に、グループ各社とともに取り組んでまいります。
金融2社株式の売却については、当社としましては、郵政民営化法に従い、最終的には当社が保有するすべての金融2社株式を売却する方針ですが、その前提として、金融2社株式の売却に伴う当社と金融2社との資本関係の変化が、金融2社の経営状況並びに当社及び日本郵便に課されているユニバーサルサービス確保の責務の履行に与える影響を見極める必要があります。そこで、当社としましては、まずは、金融2社の経営状況及びユニバーサルサービス確保の責務の履行への影響が軽微と考えられる、当社の保有割合が50%程度となるまで、段階的に売却を進めることとしております。なお、金融2社株式の2分の1以上を処分することにより、郵政民営化法により課せられている新規業務に係る規制が認可制から届出制へと緩和されることになります。
また、政府も当社株式の売却収入を東日本大震災に係る復興債の償還費用の財源に充てることを目的として、当社株式の売却を段階的に進めていくことが予想されますが、当社及び金融2社の企業規模に鑑みれば、3社の時価総額は相当程度の規模になることが想定されるため、3社の株式を短期間で大規模に売却することは、株式市場の需給の観点からは容易ではないと考えられます。従って、当社としましては、金融2社株式をいつまでに売却するかを明確に示すことはできませんが、株式市場の動向等の条件が許す限り、まずは、保有割合が50%程度となるまで、段階的に売却を進めてまいります。
金融2社株式の売却に伴う手取金については、上場時の売却においては、その売却手取金を平成27年12月に実施した自己株式の取得の資金に充てましたが、今後の売却においては、その売却手取金を適切な投資機会に対して資本を投下し、企業価値の向上を図るとともに、必要に応じ、自己株式の取得を行うことにより資本効率の維持・向上を図ります。
金融2社株式の売却に伴う事業ポートフォリオの移行を実現するための手段として、当社グループ及びグループ各社の企業価値向上に資するような積極的な業務提携やM&Aも行ってまいります。
なお、当社グループにおいては、上場企業として株主への利益還元の基礎となる当期純利益を意識すべきと考えていることから、主要な経営指標として親会社株主に帰属する当期純利益を採用しています。
(2) 経営環境及び対処すべき課題
当社グループにおける経営環境については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1) 業績」の記載をご参照ください。
各事業セグメント別の対処すべき課題は、以下のとおりであります。
① 郵便・物流事業
郵便・物流事業におきましては、次の収益増加及び生産性向上・ネットワーク価値向上に向けた取り組みを行います。
(a) 収益増加に向けた取り組み
郵便・物流事業につきましては、引き続き、年賀状をはじめとしたスマートフォン等を使ったSNS連携サービスや手紙の楽しさを伝える活動の展開等により、郵便の利用の維持・拡大を図るとともに、受取利便性の高いサービスの推進、中小口のお客さまに対する営業の強化、お客さまの幅広いニーズに一元的に対応できる営業体制の構築に取り組みます。
また、郵便物の減少が続く中、機械化等による生産性向上や各種コスト削減に取り組むものの、近年の人件費単価の上昇等により郵便事業の収支が悪化している状況を踏まえ、今後も安定的なサービスの提供を維持するため、平成29年6月に郵便料金等の一部を改定しております。
さらに、デジタルメッセージサービス(「MyPost(マイポスト)」)については、その利用定着を図るとともに、政府の進めるマイナポータルとの連携やワンストップサービスに取り組みます。
なお、過去5事業年度の郵便、ゆうメール及びゆうパックの取扱物数の推移は以下のとおりとなります。
|
|
|
|
(単位:百万通・百万個) |
|
|
平成25年3月期 |
平成26年3月期 |
平成27年3月期 |
平成28年3月期 |
平成29年3月期 |
郵便 |
18,862 |
18,572 |
18,189 |
18,030 |
17,730 |
ゆうメール |
3,101 |
3,324 |
3,320 |
3,473 |
3,563 |
ゆうパック |
382 |
428 |
527 |
580 |
632 |
(注) ゆうメールに含めていたゆうパケットの物数については、平成28年10月より、ゆうパックに含めて表示する方法に変更しました。これに伴い、平成27年3月期以降については、それぞれ10月以降の物数に当該変更を反映しております。
(b) 生産性向上・ネットワーク価値向上に向けた取り組み
ネットワークの最適化・高度化を目指し、集配局の内務作業の集中・機械化による郵便・物流ネットワーク再編に引き続き取り組みます。
また、郵便局の業務効率の向上を目指し、引き続き、集配業務の生産性の向上、輸送効率の向上に取り組むほか、業務運行に必要な労働力を確保できるよう、地域ごとの状況を踏まえた効果的な募集活動及び定着に向けた取り組みを行います。
② 金融窓口事業
金融窓口事業におきましては、次の収益増加及び生産性向上・ネットワーク価値向上に向けた取り組みを行います。
(a) 収益増加に向けた取り組み
銀行窓口業務及び保険窓口業務をはじめとする金融サービスにつきましては、金融2社と連携した研修を通じた社員の営業力強化や、投資信託の販売を通じ、金融預かり資産重視の営業スタイルの更なる浸透や新契約拡大、新規利用顧客の拡大を図ります。また、がん保険等の提携金融サービスにつきましても、研修等を通じ、社員の営業力強化に取り組みます。
物販事業につきましては、他社との提携等により、商品の拡充・開発を行うとともに、販売チャネルの多様化を推進します。
不動産事業につきましては、JPタワー等による事務所、商業施設、住宅や保育施設などの賃貸事業等を推進します。
また、引き続き、地域住民の利便性の向上に資することを目的とした「郵便局のみまもりサービス」の本格展開に向けた取り組みを行います。
(b) 生産性向上・ネットワーク価値向上に向けた取り組み
ネットワークの最適化・高度化を目指し、郵便局の新規出店、店舗配置の見直し等を通じた郵便局ネットワークの最適化に取り組みます。郵便局の現金取扱いに関して、機器の増配備により資金管理体制の充実を図るとともに、郵便局への訪問支援や関連ツールの充実等による業務品質の向上に取り組みます。
③ 国際物流事業
国際物流事業におきましては、資源価格の下落及び中国経済・豪州経済の減速等を受け、当連結会計年度においてのれん等その他を減損損失として計上いたしました(当連結会計年度におけるのれん等その他の減損損失の計上については、上記、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1) 業績」の記載をご参照ください。)。このような状況を受け、平成29年1月に実施したトール社経営陣の刷新に加え、部門の統廃合・簡素化といった組織体制の見直しや、それに伴う人員削減のほか、サービス品質の向上など、トール社の業績回復・将来の成長への基盤を整えるための対策に取り組みます。
当社グループとしましては、引き続きトール社をグローバル展開のための中核と位置づけ、グループの企業価値向上に資するよう、経営改善策を実行していきます。
④ 銀行業
ゆうちょ銀行は、郵便局のネットワークを中心としたリテール営業力が支える安定した資金調達や、強固な資本基盤、またこれらの特性を活かしたALM・運用戦略によって、安定的な利益を創出してまいりましたが、引き続き、厳しい経営環境下、全社一丸となって中期経営計画に盛り込んだ課題に取り組んでまいります。
特に、金利が低位で推移することにより、国債運用等のベース・ポートフォリオの収益減少が見込まれますが、安定的な利益を確保するため、手数料ビジネスの強化、国際分散投資等のサテライト・ポートフォリオの収益拡大、経費の効率的使用に注力します。
(a) 顧客基盤の確保と手数料ビジネスの強化
ゆうちょ銀行は、日本郵便(郵便局)を基盤とするリテール営業力を活用し、お客さまのニーズに適う商品・サービスを提供して、引き続きのご利用を促進します。
また、資産運用コンサルタントの増員・育成等によるリテール営業力の一層の強化と、お客さまの資産運用ニーズや投資経験にあわせた投資信託や変額年金保険等の資産運用商品を提案し、お客さまの資産運用ニーズを広くくみ取るため、郵便局の店舗網の更なる活用、人材育成支援により販売態勢を強化します。
ATM・決済サービスは、引き続き、ATMの戦略的な配置や、全国のファミリーマート店舗への小型ATMの設置を推進するとともに、送金決済サービスを拡充してお客さまの利便性の向上を図ります。
こうした取り組みにより、金利変動による影響を受けにくい手数料ビジネスの強化を図ります。
(b) 地域経済活性化への貢献
地域金融機関との連携による地域経済活性化ファンドへの出資は、今後も拡大します。ファンドを通じてゆうちょ銀行の資金を地域に還元することで、地域経済の活性化に貢献します。さらに、ファンド出資に係る知見の蓄積や専門人材の育成により、態勢強化を図るとともに、地域経済活性化ファンド以外の分野での連携についても、引き続き、ビジネス開拓・協働等に取り組んでまいります。
(c) サテライト・ポートフォリオの資産内容充実など運用の高度化・多様化
ベース・ポートフォリオでは、低金利環境の長期化により、資金運用を取り巻く環境は非常に厳しい状況にあるものの、中長期的な安定収益の確保を目指し、金利動向に応じて機動的に運用します。
サテライト・ポートフォリオでは、収益の向上を目指し、国際分散投資に加え、新たな投資領域である、プライベート・エクイティ、不動産ファンド、ヘッジファンドなどのオルタナティブ投資の推進を図るとともに、既存の投資領域についても、相場動向に応じた機動的な運用に努めます。あわせて、引き続き、外貨資金の調達手段の多様化に取り組むとともに、専門的人材の採用・育成により運用態勢を強化します。
一方、リスク管理も、ストレス・テストの充実など将来の課題を見据え、高度化を目指します。また、オルタナティブ投資の推進に伴い、リスク管理態勢を強化するほか、外貨流動性リスク管理強化等に取り組みます。
(d) 経費の効率的使用
お客さまサービスの向上やゆうちょ銀行の成長に資する分野への投資は積極的に行う一方で、既定経費の削減やBPR(業務プロセスの変革による生産性の向上)を推進するなど、一層の経費の効率的使用に努めます。
(e) 内部管理態勢の充実・経営インフラの整備
各種研修等を通じたコンプライアンス意識の更なる浸透や、顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)を実現するための方針を定めた上で、資産運用商品販売等においてその実践に努め、企業価値向上に向けた内部管理態勢の一層の強化に取り組みます。また、Fin Tech(金融とITの融合)への対応等、経営インフラの整備を図ります。
⑤ 生命保険業
かんぽ生命保険は、引き続き「お客さまから選ばれる真に日本一の保険会社を目指す」という方針のもと、持続的な成長に必要な経営基盤を確立してまいります。また、お客さまからの信用と信頼をいただけるよう日々努力を続けることが、「お客さま本位の業務運営」の実現につながるものと考え、平成29年4月に公表した「お客さま本位の業務運営に関する基本方針」を実践し、かんぽ生命保険の強みであるお客さまからの親近感、信頼感をさらに高めてまいります。
(a) 引受けから支払いまで簡易・迅速・正確に行う態勢整備
基幹系システムの更改を出発点とし、事務・システムの品質・生産性向上をさらに強固なものにしてまいります。
また、保険金支払審査業務及びコールセンター業務にIBM Watsonを導入いたしました。
今後も、このような最先端テクノロジーの活用等により、簡易・迅速・正確な事務・システムの構築をさらに推進するとともに、将来の成長・発展の基礎となるシステム開発力を強化してまいります。
(b) 販売チャネルの営業力強化
お客さま本位の募集活動の徹底により、お客さまの意向に適切にお応えし、真にお客さまにご満足いただける契約を結んでまいります。加えて、研修などによる営業人材の育成、キャンペーンの活用やライフプラン相談会等の推進によって営業機会を増大し、新契約を確保してまいります。
また、法人営業の更なる拡大を目指し、平成29年4月には、大企業を対象とした法人営業開拓、大規模団体設置及び職域営業に係る対応等を円滑に行うため、法人営業開発部を設置いたしました。これにより、大企業・大規模職域マーケットの開拓など、新たなマーケットの取り込みに取り組んでまいります。
(c) お客さまニーズに対応した商品開発、ご高齢のお客さまへのサービスの充実
保障性を重視した販売を強化するため、平成29年3月に新商品の認可を申請しました。
また、平成29年4月には、標準責任準備金を計算するための利率である標準利率が引き下げられたことを踏まえ、予定利率の改定を行うと同時に、主に入院特約の保険料の引下げを行うなど、保険料の総合的な改定を実施しております。貯蓄性の商品を中心に値上げとなりますが、保障性の商品については値下げになるものもあり、保険本来の保障の魅力を訴求した販売力に磨きをかけてまいります。
さらに、「かんぽプラチナライフサービス」のより一層の推進により、ご高齢のお客さまにやさしい、あたたかいビジネスモデルを追求してまいります。
(d) 運用収益力の向上
市場環境の変化に適切に対応するため、引き続き、リスク性資産への投資拡大による利回り確保や、オルタナティブへの投資拡大による運用対象の拡大、運用態勢の強化といった課題に継続的に取り組み、安定的な利益創出を目指してまいります。
(e) 内部管理態勢の強化
経営の根幹である「募集品質の確保、コンプライアンスの徹底」を図り、「お客さまの声」を経営に活かす取り組みを推進するとともに、上場会社としてコーポレートガバナンスの更なる高度化に取り組んでまいります。加えて、経営の健全性・適切性を確保するため、内部監査態勢及びリスク管理態勢の更なる強化に取り組んでまいります。
(参考)
過去の新契約、保有契約の件数の推移は下記のようになります。
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(単位:万件) |
契約の種類 |
平成25年3月期 |
平成26年3月期 |
平成27年3月期 |
平成28年3月期 |
平成29年3月期 |
新契約(個人保険) |
220 |
223 |
238 |
239 |
244 |
簡易生命保険 |
2,693 |
2,319 |
1,995 |
1,697 |
1,441 |
かんぽ生命保険 |
987 |
1,166 |
1,353 |
1,535 |
1,715 |
(注) 平成19年10月1日の民営化時の簡易生命保険契約は5,517万件でした。
以下において、当社及び当社グループの事業内容、経営成績、財政状態等に関する事項のうち投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクを例示しておりますが、これらに限定されるものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク
1.事業環境に関するリスク
(1) 経済情勢その他の事業環境の変動に伴うリスク
当社グループが行う事業のうち、郵便・物流事業、金融窓口事業、銀行業、生命保険業等は、その収益の多くが日本国内において生み出されるものであるため、主として国内における金利の動向、金融市場の変動、消費税増税、少子高齢化の進展、eコマース市場の動向、賃金水準の変動、不動産価格の変動、預金水準等の影響を受けます。また、当社グループは、国際物流事業において、日本郵便の子会社であるトール社が、豪州を中心に、アジア太平洋地域等におけるフォワーディング、コントラクト物流(3PL)等の国際的な事業活動を行っており、各国・地域における経済情勢・金融市場その他事業環境の変動による影響を受けます。したがって、かかる国内外の経済情勢・金融市場その他事業環境の変動により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります(金利の動向に係るリスクについては、下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (4) 国際物流事業に関するリスク ⑤ 金利変動のリスク」、「Ⅲ.銀行業に関するリスク (1) 市場リスク ① 金利リスク」及び「Ⅳ.生命保険業に関するリスク (2) 資産運用に関するリスク ① 国内金利に関する市場リスク」の記載を、郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスクについては、下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (1) 郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスク」をそれぞれご参照ください。)。
例えば、我が国においては、長期に亘る少子高齢化の影響を受け、生産年齢人口が減少し続けており、こうした状況のもと、貯蓄の減少、保険契約の減少、経済規模の縮小による郵便物数の減少等が生じた場合には、当社グループ全体の事業規模が縮小する可能性があります。これらの事情により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 他社との競合に関するリスク
当社グループが行う事業は、いずれも、激しい競争状況に置かれております。当社グループと競合関係にある同業他社は、当社グループより優れた商品構成、サービス、価格競争力、事業規模、シェア、ブランド価値、顧客基盤、資金調達手段、事業拠点、ATMや物流拠点その他のインフラ又はネットワーク等を有する可能性があります。
例えば、日本郵便が行っている郵便・物流事業についても、信書便事業者や他の物流事業者等と競合関係にあり、他社の提供するサービスへの乗り換えが発生した場合、又は、競争激化により当社の事業、シェア若しくは収益の動向が当社グループの想定どおりに進捗しなかった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、ゆうちょ銀行が行っている銀行業、及びかんぽ生命保険が行っている生命保険業は、同業他社等と競合関係にあります。今後、両社が金融サービスに対する顧客ニーズの変化や市場構造の変化等に適切に対応できなかった場合、又は、両社が競合他社に対して優位に立てない場合等においては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、近年では、国内外の各業界において統合や再編、業務提携が積極的に行われているほか、参入規制の緩和や業務範囲の拡大等の規制緩和が行われております。当社グループ各社が市場構造の変化に対応できなかった場合や規制緩和や新規参入が想定以上に進んだ場合は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、当社グループの郵便事業と競合する一般信書便事業については、民間事業者による信書の送達に関する法律(以下「信書便法」といいます。)に基づき、一定の参入条件が課された許可制とされており、現時点において同事業に参入している民間事業者はおりません。しかしながら、信書便法の改正等により、信書便事業の業務範囲の拡大や参入条件が変更されるなど参入規制が緩和された場合には、新規事業者の参入により競争が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、平成27年6月に改正信書便法が成立し、特定信書便役務の範囲の拡大等の改正が行われております。
(3) 大規模災害等の発生に伴うリスク
当社グループは、日本全国にわたる幅広い事業活動に加えて、トール社が国際的な事業活動を行っており、各国・地域における地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の大規模自然災害、新型インフルエンザやエボラ出血熱等の感染症の大流行、戦争、テロリズム、武力衝突等の人的災害、水道、電気、ガス、通信・金融サービス等に係る社会的インフラの重大な障害や混乱等の発生、又は当社グループの店舗、その他の設備や施設の損壊その他正常な業務遂行を困難とする状況等が生じた場合、当社グループの業務の全部若しくは一部が停止し、又は、運営に支障をきたすおそれがあり、また、設備やインフラの回復、顧客等の損失の補償等のために長期の時間及び多額の費用を要する可能性があります。
また、かかる状況下において当社グループの業務が円滑に機能していたとしても、かかる状況の発生に伴う経済・社会活動の沈滞等の影響を受け、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
特に、当社グループは生命保険子会社としてかんぽ生命保険を保有していることから、大地震その他の大規模災害や新型インフルエンザのような感染症の大流行を原因として大量の死者が出た場合に、かんぽ生命保険による保険給付に関し、通常の想定を超える債務を負うリスクにさらされております。同社は、保険業法の基準に従って危険準備金を積み立てておりますが、予想を超える大規模災害等の発生により危険準備金を超えるような保険金・給付金の支払いが発生した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
2.法的規制・法令遵守等に関するリスク
(1) 法的規制及びその変更に関するリスク
当社グループは業務を行うにあたり、以下のような各種の法的規制等の適用を受けております。
これらの規制により、当社グループは、同業他社に比して、新規事業の展開や既存事業の拡大、低収益分野からの撤退又は縮小が制約されるため、競争力を失い、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループに適用のある法令等の改正や新たな法的規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会等の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
① 郵便法等に基づく規制
郵便法上、郵便事業は当社の連結子会社である日本郵便が独占的に行うこととされておりますが、郵便約款の変更や業務委託の認可制、全国一律料金制度、定形郵便物の料金制限、郵便料金の届出制(第三種郵便物及び第四種郵便物については認可制)といった、本事業特有の規制又は他の事業や他社とは異なる規制を受けております。
② 銀行法及び保険業法に基づく規制
当社グループの銀行業及び生命保険業においては、これらの事業に一般的に適用される銀行法及び保険業法といった金融業規制を受けております。
(a) ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険に対する規制
銀行業を営む当社の連結子会社であるゆうちょ銀行及び生命保険業を営む当社の連結子会社であるかんぽ生命保険(両社について、以下「金融2社」と総称します。)は、それぞれ銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の監督を受けており、内閣総理大臣からの委任を受けた金融庁長官による、法令違反等による免許取消し並びに業務の健全性かつ適切な運営を確保する等のために必要があると認めるときの業務停止及び立入検査等を含む広範な監督に服しております。
ゆうちょ銀行は、銀行法及び関連業規制に基づき、法令により定められた業務以外の業務を営むことができず、また、自己資本の充実度合いを図る基準である自己資本比率について、単体自己資本比率(国内基準)を4.0%以上に維持すること等が必要とされています。また、かんぽ生命保険は、保険業法及び関連業規制に基づき、法令に基づき定められた業務以外の業務を行うことができず、また、大災害や株価の大暴落など、通常の予測を超えて発生するリスクに対応できる「支払余力」を有しているかどうかを判断する指標の一つであるソルベンシー・マージン比率を200%以上に維持すること等が必要とされています。平成29年3月31日現在、ゆうちょ銀行の単体自己資本比率は22.22%、かんぽ生命保険の連結ソルベンシー・マージン比率は1,290.6%であり、いずれも法令上の規制比率に比べ相当程度高い水準を確保しておりますが、近時の金融市場の状況に対応したリスク性資産の増加により、これらの比率は低下傾向にあることに加え、保有有価証券等の価値の低下、これらの比率の算出方法の変更、比率に係る規制の変更、新たな規制の導入等により、単体自己資本比率又は連結ソルベンシー・マージン比率が更に低下する可能性があり、当該比率が規制比率を下回るような場合には、規制当局から、報告又は資料の提出や、業務の縮小等を含む改善措置が求められる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(b) 日本郵便に対する規制
日本郵便は、当社グループの金融窓口事業に関連して、ゆうちょ銀行を所属銀行とする銀行代理業者として、また、かんぽ生命保険を所属保険会社等とする生命保険募集人として、銀行法及び保険業法に基づき、金融庁の監督に服しております。
また、日本郵便は、銀行代理業者として、法令により定められた業務以外の業務を営むことができず、また、分別管理義務、銀行代理業務を行う際の顧客への説明義務、断定的判断の提供等の一定の禁止行為等の規制を受けております。また、生命保険募集人として、顧客に対する説明義務、虚偽説明等の一定の禁止行為等の規制を受けております。
日本郵便が上記規制に違反する等した場合には、規制当局から、許可又は登録の取消しや業務の一部又は全部の停止を命ぜられる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(c) 当社に対する規制
当社自身も銀行持株会社及び保険持株会社として、銀行法及び保険業法に基づき金融庁の監督に服するとともに、当社の連結自己資本比率(国内基準)を4.0%以上に維持すること及び当社の連結ソルベンシー・マージン比率を200%以上に維持すること等が必要とされるほか、顧客の利益保護のための体制の整備や事業年度毎の規制当局に対する業務報告書等の提出の義務等を負っております。
なお、平成29年3月31日現在、当社の連結自己資本比率は23.80%、連結ソルベンシー・マージン比率は922.0%であり、いずれも法令上の規制比率に比べ相当程度高い水準を確保しておりますが、近時の金融市場の状況に対応したリスク性資産の増加により、これらの比率は低下傾向にあることに加え、保有有価証券等の価値の低下、これらの比率の算出方法の変更、比率に係る規制の変更等により、連結自己資本比率又は連結ソルベンシー・マージン比率が更に低下する可能性があり、当該比率が規制比率を下回るような場合には、規制当局から、報告又は資料の提出や、業務の縮小等を含む改善措置が求められる可能性があり、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(d) 事業の前提となる許認可
当社グループは、主として以下のような許認可等を受けております。
許認可等の名称 |
根拠条文 |
会社名 |
有効期限 |
許認可等の取消事由等 |
銀行持株会社の認可 |
銀行法第52条の17第1項 |
日本郵政株式会社 |
なし |
同法第52条の34第1項 |
保険持株会社の認可 |
保険業法第271条の18第1項 |
日本郵政株式会社 |
なし |
同法第271条の30第1項 |
銀行代理業の許可 |
銀行法第52条の36第1項 |
日本郵便株式会社 |
なし |
同法第52条の56第1項 |
生命保険募集人の登録 |
保険業法第276条 |
日本郵便株式会社 |
なし |
同法第307条第1項 |
銀行業の免許 |
銀行法第4条第1項 |
株式会社ゆうちょ銀行 |
なし |
同法第26条第1項、第27条、第28条 |
生命保険業の免許 |
保険業法第3条第4項 |
株式会社かんぽ生命保険 |
なし |
同法第132条第1項、第133条、第134条 |
現時点におきましては、上記許認可等が取消しとなるような事由は生じておりませんが、将来、何らかの理由により、各法が定める取消事由等に該当し、所管大臣より許認可の取消処分等を受けることとなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 当社グループ固有に適用される規制等
当社及び日本郵便は、郵政民営化法等に基づき、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持する法律上の義務を負っています(かかる義務に基づき郵便局ネットワークを通じて行われる役務提供を、以下「ユニバーサルサービス」といいます。)。
ユニバーサルサービスについては、平成25年10月に、総務大臣が「郵政事業のユニバーサルサービス確保と郵便・信書便市場の活性化方策の在り方」について、その諮問機関である情報通信審議会郵政政策部会に諮問を行い、同審議会において、平成27年9月28日に答申が出されました。
答申において、ユニバーサルサービスの確保について、短期的には、「日本郵政及び日本郵便は自らの経営努力により現在のサービスの範囲・水準の維持が求められる」、「また、国は、ユニバーサルサービス確保に向けたインセンティブとなるような方策について検討することが必要である」、中長期的には、「郵政事業を取り巻く環境の変化やこれに応じた国民・利用者が郵政事業に期待するサービスの範囲・水準の変化も踏まえて、ユニバーサルサービスの確保の方策やコスト負担の在り方について継続的に検討していくことが必要」とされています。
答申を受けて実施される政府の施策の内容によっては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、情報通信審議会は郵政事業のユニバーサルサービスコストの試算を行っておりますが、審議会が独自に試算したものであり、当社グループが作成したものではありません。
また、当社及び日本郵便は、それぞれ日本郵政株式会社法及び日本郵便株式会社法に基づき、新規業務、株式の募集、取締役の選解任及び監査役の選解任(当社のみ)、事業計画の策定、定款の変更、合併、会社分割、解散等を行う場合には、総務大臣の認可(ただし、日本郵便の新規業務については総務大臣への届出)が必要とされています。また、金融2社は、銀行法又は保険業法に基づく規制に加え、同種の業務を営む事業者との対等な競争条件を確保するため、郵政民営化法に基づき、新規業務、他の金融機関等の子会社化、合併、会社分割、事業の譲渡及び譲受け、廃業並びに解散等を行う場合には、内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要とされているほか、銀行業における預入限度額規制、生命保険業における加入限度額規制(各限度額規制の詳細については、上記「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 事業に係る主な法律関連事項 ③ 郵政民営化法」の記載をご参照ください。)が課される等、同業他社とは異なる規制が課されております。
④ WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)による政府調達ルール
公社を承継した機関として、当社、日本郵便、金融2社が政府調達協定その他の国際約束の適用を受ける物品等を調達する場合には、国際約束に定める手続の遵守が求められます。当社グループ各社の作為又は不作為により、かかるこれらのルールを遵守できなかった場合には、調達行為が成立しない、あるいは調達行為に遅れが発生する可能性があり、当初想定していた計画が実施できないなど、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 個人情報その他の機密情報の漏えいに関するリスク
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等を営んでおり、多くの顧客や取引先等から様々な情報を取得し保有しております。これらの情報については、郵便法、銀行法、保険業法、金融商品取引法等のほか、個人情報の保護に関する法律等に基づき適切に取り扱うことが求められております。
近年、企業・団体が保有する個人情報等の漏えいや不正なアクセス、サイバー攻撃等が多発しております。
当社グループが保有する個人情報その他の機密情報が外部に漏えいした場合には、損害賠償や当該事案に対応するための費用、行政処分、社会的信用の毀損による顧客の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 訴訟その他法的手続に関するリスク
当社グループは、事業の遂行に関して、訴訟、行政処分その他の法的手続が提起又は開始されるリスクを有しており、一部ではありますが人事処遇や勤務管理などの人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等に関連する訴訟等を、当社グループの従業員等から提起されております。かかる訴訟等の解決には相当の時間及び費用を要する可能性があるとともに、社会的関心・影響の大きな訴訟等が発生した場合、当社グループに対して損害賠償の支払等が命じられる場合等不利な判断がなされた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 不正・不祥事に関するリスク
当社グループは、法令その他諸規則等を遵守すべく、コンプライアンスの水準向上及び内部管理態勢の強化を経営上の最重要課題の一つとして位置づけ、グループ各社の役員・従業員に対して適切な指示、指導及びモニタリングを行う態勢を整備するとともに、不正行為等の防止のために予防策を講じておりますが、かかる態勢・予防策が常に十分な効果を発揮するという保証はなく、当社グループの役員・従業員による法令その他諸規則等の違反、社内規程・手続等の不遵守、不正行為、事故、不祥事等が生じる可能性があります。当社グループにおいては、従業員による顧客預金等の横領等が発覚し、日本郵便及び金融2社が、平成21年12月、金融庁、総務省より、内部管理態勢の充実・強化に関する業務改善命令、犯罪の再発防止に関する監督上の命令を受けましたが、当社グループはかかる業務改善命令等を受けて、犯罪の防止に向けた内部管理態勢の強化を図った結果、平成27年12月に金融庁の業務改善命令に基づく報告義務が、また、平成28年12月に総務省の監督上の命令に係る報告義務がそれぞれ解除されました。当社グループの役員・従業員その他の関係者による違法行為、不正、不祥事、反社会的勢力との取引等が発生した場合には、被害者等に対して損害賠償責任を負い、刑事罰又は監督官庁からの行政上の処分を受ける可能性があるほか、当社グループの社会的信用が毀損するおそれもあります。かかる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 社会的信用の低下に関するリスク
当社グループは、あまねく全国に広がる郵便局ネットワークを通じて、多数の郵便物・荷物の配達や金融サービスの提供を行っております。
当社グループの商品、サービス、事業、従業員、提携先又は委託先企業に関連して、郵便物の管理上の不備・遅配・誤配及び破棄・紛失等、配達員による交通事故、銀行口座やクレジットカードの不正利用、キャッシュカードの盗難等の犯罪、サイバー攻撃等によるシステム・トラブルや個人情報の漏えい、不正行為、反社会的勢力との取引、労働問題、事故、業務上のトラブル、社内規程・手続違反、不祥事等が発生した場合には、当社グループ及び当社グループ各社が提供するサービスに対する社会的信用が低下し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループ又は当社グループが行っている事業全般に対する風評・風説が、報道機関・市場関係者への情報伝播、インターネット上の掲示板やSNSへの書込み等により拡散した場合、また、報道機関により否定的報道が行われた場合には、仮にそれらが事実に基づかない場合であっても、当社グループが提供するサービスの公益性、事業規模、社会における認知度・注目度等を背景に、当社グループは、顧客や市場関係者等から、否定的理解・認識をされ、又は、強い批判がなされる可能性があり、それにより当社グループ、商品、サービス、事業のイメージ・社会的信用が毀損し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
3.事業運営に関するリスク
(1) 固定費負担に関するリスク
当社及び日本郵便は、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、郵便局ネットワークを維持する法律上の義務を負っています(上記「2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」の記載をご参照ください。)。当社及び日本郵便は、かかるユニバーサルサービス提供義務に基づき、郵便、銀行、保険の各サービスを、全国に広がる郵便局ネットワークを通じて全国の顧客に提供しております。そのため、当社グループの郵便・物流事業及び金融窓口事業においては、全国各地の郵便局及び配送拠点等に係る設備費、車両費等の多額の固定費に加え、膨大な数の郵便局員その他の従業員の給与等の人件費が発生しており、労使交渉等により従業員への給与が増額された場合には、それが比較的小さな増額である場合でも、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、高齢化による社会保障負担の増大や厚生年金保険料率、雇用保険料率及び健康保険組合保険料率の引き上げなどによる福利厚生費の上昇も想定されます。
当社及び日本郵便は、今後、地方における過疎化の進展、企業活動又は個人の消費活動の縮小、電子メール等インターネットやウェブサイトを通じた通信手段、金融サービスの普及等を背景に、当社グループが郵便局を通じて提供するサービスの利用が減少した場合であっても(下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (2) 郵便物等の減少に関するリスク」の記載をご参照ください。)、ユニバーサルサービスを維持する法的義務があり、収益性の低い事業又は拠点等を縮小する等の対応が制限されているため、かかる方法により固定費を削減することが困難となる可能性があります。従って、上記の事情等により当社グループが郵便局を通じて提供するサービスに対する需要が減少し、郵便物や荷物の取扱数量又は郵便局窓口での金融・保険商品の販売量が減少した場合、当社グループの提供する商品及びサービスの内容、対象若しくは対価を変更し若しくはその提供を中止し、又は、郵便局ネットワークを縮小するなどの対応ができず、又は、制約され、かかる固定費に見合った収益を上げられない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 郵便局等に係る設備の老朽化に関するリスク
日本郵便は、全国各地に所在する郵便局等多数の建物を保有しており、その中には老朽化の進んだ古い建物が多数含まれており、日本郵便はかかる設備等に対して、必要な老朽化対策工事を集中的に行っており、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、老朽化対策工事の対象となる日本郵便の建物の一部には、アスベストが使用されていることが判明しており、今後多くの建物でアスベストの存在が確認され、法令に基づく飛散防止措置としてアスベストの除去を行うことが必要となった場合には、多額のアスベスト除去費用及び関連の工事費用が生じる可能性があります。
(3) リスク管理方針及び手続の有効性に係るリスク
当社グループは、リスク管理に関する規程を定め、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を実施しております。しかしながら、当社グループのリスク管理は、過去の経験・データに基づいて構築されているため、将来発生するリスクを正確に予測することができず、新しい業務分野への進出や外部環境の変化等によりリスク管理が有効に機能しない可能性があります。
また、当社グループがリスク管理の方針及び手続を策定する際、参考又は前提とした情報が真実性、正確性、完全性又は合理性に欠ける場合には、当社グループのリスク管理の有効性に悪影響を与える可能性があります。
さらに、当社グループの事業に内在するリスクを管理するためには、膨大な取引や事象の適切な記録、審査、調査等に係る方針及び手続の有効性や効率性等が重要ですが、かかる方針や手続が万全とは言えない可能性があります。
当社グループは、経営環境、リスクの状況等の変化に応じ、リスク管理態勢全般について随時見直しを行い、万全のリスク管理態勢を構築するよう努めておりますが、当社グループのリスク管理態勢が有効に機能しない場合や、欠陥が発生した場合等には、当社が予期していなかった損失を被る可能性や、当社グループ各社が行政処分を受ける可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの事業拡大に伴い、リスク管理態勢の増強も必要となりますが、事業の拡大に比してリスク管理態勢の拡充が十分ではない場合等においては、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 情報通信システムに関するリスク
当社グループの郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業のそれぞれにおいて、コンピュータシステムは、顧客や各種決済機構等のシステムとサービスの提供に必要なネットワークで接続されるなど極めて重要な機能を担っております。これらについて、地震、噴火、津波、台風、洪水、大雪、火災等の自然災害やテロリズム等の外的要因に加えて、人的過失、事故、停電、ハッキング、コンピュータウィルスの感染、サイバー攻撃、システムの新規開発・更新における瑕疵、通信事業者等の第三者の役務提供の瑕疵等により重大なシステム障害や故障等が発生する可能性があります。こうしたシステムの障害、故障等が生じた場合に、業務の停止・混乱等及びそれに伴う損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損、対応や対策に要する費用等が発生することにより、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、基幹ITシステムを含む当社グループのITシステムのアップグレードを行っており、かつ、新規のシステム投資を行うこともありますが、かかる作業の遅延、失敗、多額の費用発生により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 優秀な人材の確保に関するリスク
当社グループにおいては、郵便・物流事業に従事する配達又は運送に係る車両の運転手を必要としておりますが、昨今の労働力不足により十分な数の運転手の確保が困難となる可能性があります。
また、当社グループは、銀行業務、保険業務、保険数理、資産運用、会計、金融業規制、法令遵守、IT等に係る資格、高度の専門性及び経験を有する有能な人材を必要としており、新規採用・中途採用を通じ、人材の確保に努めるとともに、グループ中期経営計画のグループ戦略の一つとして人材育成戦略を掲げ、かかる人材の育成にも努めております。併せて、女性の労働力確保を含め、ダイバーシティ・マネジメントを推進することとしており、多様な社員が個性や能力を十分に発揮し活躍できるよう、制度や環境の整備等に努めております。しかしながら、当社グループが魅力的な条件を提供できず、有資格者や有能で熟練した人材の採用若しくは育成及び定着を図ることができなかった場合、又は、適切な育成環境を整備できない場合や、人事処遇や労務管理等の人事労務上の問題や職場の安全衛生管理上の問題等が発生した場合には、当社グループの事業の競争力若しくは業務運営の効率性が損なわれ、又は人材の多様性を確保することができず、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) グループ外の企業との資本・業務提携・外部委託及び企業買収に伴うリスク
当社グループは、American Family Life Assurance Company of Columbus、ジオポスト、レントングループ、三井住友信託銀行株式会社、野村ホールディングス株式会社等の当社グループ外の企業との間で、様々な業務に関し、資本提携、業務提携、外部委託を行っております。このようなグループ外の資本・業務提携先、外部委託先との間における、戦略上若しくは事業上の問題又は目標の変更や当社グループとの関係の変化等により、期待通りのシナジー効果が得られない可能性も否定できません。このような場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性や当社グループが行った投資を回収できない可能性があります。
また、資本・業務提携先、外部委託先において、業務遂行上の問題が生じ、商品・サービスの提供等に支障をきたす場合、顧客情報等の重要な情報が漏えいする等の事故、違法行為、不正行為、不祥事等が発生した場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが、他の企業を買収するに当たっては、買収先企業や買収先事業を効果的かつ効率的に当社グループの事業と統合できない可能性、買収先企業の重要な顧客、仕入先、その他関係者との良好な関係を維持できない可能性、買収資産の価値が毀損し、損失が発生する可能性などがあります。このような事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、トール社の買収に関するリスクについては、「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (4) 国際物流事業に関するリスク ① トール社買収に起因する減損の計上及び同社の買収に関するリスク」の記載をご参照ください。
(7) 業務範囲の拡大等に伴うリスク
当社及び金融2社は、新たな収益機会を得るために新規業務を行う場合、内閣総理大臣及び総務大臣の認可を得る必要があるなど、当社グループによる新規事業の展開を含む業務範囲の拡大には一定の制約が伴います(上記「2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」の記載をご参照ください。)。
例えば、金融2社は新商品又は新サービスの導入にあたって、郵政民営化法に基づく認可を取得する必要がありますが、当該認可が得られない可能性や認可取得のために各社の計画どおりの時期又は内容で新商品を投入又は新サービスを提供できない可能性があります。
また、当社グループが、業務範囲を拡大することができたとしても、限定的な経験しか有していない業務分野に進出した場合、競争の激しい分野に進出した場合や業務拡大により過度の人的・物的負担が生じた場合等において、業務範囲の拡大が功を奏する保証はなく、当初想定した成果をもたらさず、又は損失が発生する可能性があります。
さらに、日本郵便は、アジア市場への展開を中心に、国際的な物流事業を手掛ける総合物流事業者として、事業の収益性を高めるため、トール社の買収、ジオポスト及びレントングループとの事業提携による国際宅配事業への進出など国際的な事業展開を推進しております。しかしながら、当該地域における法制度・税制、経済・政治情勢の悪化、市場成長性の鈍化、競争の激化、為替の変動、伝染病の流行による混乱、海外における業務提携先や取引先との関係の悪化、訴訟・規制当局による行政処分等、海外における事業展開には、これに内在する様々なリスクが存在します。かかるリスクが顕在化した場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、トール社の買収に関するリスクについては、下記「Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク (4) 国際物流事業に関するリスク ① トール社買収に起因する減損の計上及び同社の買収に関するリスク」の記載をご参照ください。
(8) 中期経営計画に関するリスク
当社グループは「日本郵政グループ中期経営計画~新郵政ネットワーク創造プラン2017~」を策定し、郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業、銀行業、生命保険業等の業務に係る中期的な事業戦略・方針を定めております。
しかしながら、これらの施策については、当社グループの各事業における目標を達成できない可能性があるとともに、本「4 事業等のリスク」に記載の各リスク等が内在しています。また、将来においても、当社グループによる上記施策の実施を阻害するリスクが高まったり新たなリスクが生じたりする可能性もあります。さらに、上記中期経営計画は、国内外の市場金利、為替、株価、経営環境(現在予定されている消費税増税や法人税減税を含みます。)、競争状況、営業費用等多くの前提に基づいて作成されております。当社グループの施策が奏功しなかった場合、又は、当社グループの採用した前提と異なる状況が生じた場合には、当該計画における目標を達成できない可能性があります(既に本書提出日時点において同中期経営計画策定時に想定していた金融市況及び経済情勢等からの乖離が生じています。このうち、市場金利に係る前提と異なる状況の発生(マイナス金利等)については、下記「Ⅲ.銀行業に関するリスク (1) 市場リスク ① 金利リスク」及び「Ⅳ.生命保険業に関するリスク (2) 資産運用に関するリスク ① 国内金利に関する市場リスク」の記載をご参照ください。)。
また、当社は将来的な国際会計基準(IFRS)の適用を検討しており、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
4.財務に関するリスク
(1) 固定資産の減損損失に関するリスク
当社グループは、郵便・物流事業、金融窓口事業及び国際物流事業を中心に、多額の固定資産を所有しております。経営環境の変化や収益性の低下等により投資額の回収が見込めなくなった場合には、減損損失を計上することが必要となり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 繰延税金資産に関するリスク
当社グループは、現行の会計基準に従い、将来の課税所得見積りを合理的に行った上で、貸借対照表において繰延税金資産を計上しておりますが、将来の課税所得見積額の変更や税制改正に伴う税率の変更等により、繰延税金資産の全部又は一部に回収可能性がないと判断した場合、繰延税金資産が減額され、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 退職給付債務に関するリスク
当社グループの退職給付費用及び債務は、将来の退職給付債務算出に用いる年金数理上の前提条件に基づいて算出しておりますが、金利環境の急変等により、実際の結果が前提条件と異なる場合、又は、前提条件に変更があった場合には、退職給付費用及び債務が増加する可能性があります。また、当社グループにおいて退職給付制度を改定した場合にも、追加的負担が発生する可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、従業員の退職が一定期間に集中するような場合には、退職給付金の支払いのために多額の資金が必要となり、その結果、通常業務又は設備投資等への資金充当の柔軟性に制約が生じる可能性があります。
(4) 管理会計等に係る内部管理に関するリスク
本書には、日本の会計基準によらず外部監査を受けていない管理会計等に基づく数値・分析等が含まれております。当社は、これらについても正確性の確保に努めておりますが、有効でない場合等には、当該数値等の信頼性に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅱ.郵便・物流事業、金融窓口事業、国際物流事業に関するリスク
(1) 郵便・物流事業における経営環境の変化に関するリスク
郵便・物流事業においては、近年のeコマース市場の拡大に伴う宅配便需要の急激な増加とこれによる労働力の不足といった経営環境の急激な変化が顕在化しており、他の主要な物流事業者等においては、基本運賃や大口顧客向け特約運賃の値上げを含む契約条件の改定、配達時間帯や再配達に係るサービス内容の見直し、労働環境又は労働条件の改善のための取り組みを行っているものも見受けられます。当社グループがこのような経営環境の変化に適時かつ適切に対応できなかった場合、当社グループの競争力、収益性、人材の確保等に影響し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 郵便物等の減少に関するリスク
電子メール、SNSやスマートフォンの普及に加え、当社グループの顧客におけるコスト削減を目的とした、請求書や取引明細書等の電子メール送信・WEB閲覧の浸透等の影響により、郵便物数は年々減少を続けており、今後もかかる傾向は継続することが予想されます。また、当社グループの郵便・物流事業における重要な収益の柱となっている年賀状の配達数も年々減少傾向にあり、国民の生活様式や社会慣行の変化等の要因により、今後も減少傾向が進む可能性があります。また、日本郵便は、人件費単価の上昇や、大型の郵便物等の増加を背景とした持戻り・再配達の増加等に伴い、平成29年6月1日付で、第二種郵便物及び定形外郵便物の料金並びにゆうメールの運賃の改定を行いました。今般又は将来の郵便料金等の改定により、当社グループが取り扱う郵便物等の数に影響を及ぼす可能性があります。これらの事情により、当社グループの郵便・物流事業において取り扱う郵便物等の数が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融2社からの金融窓口業務の受託に関するリスク
日本郵便が金融2社との間で締結している銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等に基づく平成29年3月期における各社からの受託手数料は、それぞれ6,124億円及び3,927億円であり、それぞれ当社グループの金融窓口事業セグメントにおける経常収益の約44%及び約28%を占めており、かかる受託手数料は今後も当社グループの金融窓口事業における収益の重要な部分を占めることとなるものと考えられます。受託手数料は、銀行法・保険業法に定められたアームズレングスルール等を遵守することが求められており、恣意的な変更が行われることは想定しておりませんが、今後、上記各窓口業務契約等が、合理的な理由に基づき受託手数料の額を減額する又は対象となる業務の範囲を限定する等、日本郵便にとって不利に改定された場合には、当社グループの金融窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。また、特にゆうちょ銀行から受け取る受託手数料については、ゆうちょ銀行の直営店での業務コストをベースに、日本郵便での取扱実績に基づいて委託業務コストに見合う額が算出されるため、ゆうちょ銀行において業務コストの削減が行われた場合には、当社グループの金融窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。さらに、これらの受託手数料の一定部分は、日本郵便において取り扱われた業務の量にかかわらず一定の計算方法により算定されるものとされていますが、今後仮に金融2社が日本郵便における業務量に比例する受託手数料の割合を高めようとする場合には、当社グループの金融窓口事業における収益に影響を与える可能性があります。
当社グループとしては、今後も簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務が、利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的に利用できるようにするとともに、将来にわたりあまねく全国において公平に利用できることが確保されるよう、日本郵便と金融2社との関係を引き続き強化していく所存であり、当社が金融2社の株式を処分したことにより当社による両社への影響力が低下・消滅した場合においてもこの関係は変わるものではないと当社としては考えております。しかし金融2社はユニバーサルサービスの提供に係る法的義務を負うものではなく(上記「Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク 2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」の記載をご参照ください。)、金融2社が、郵便局ネットワークに代替する販売チャネル(例えば、ATMの相互利用、オンライン取引、グループ外の企業への委託を含みますがこれらに限られません。)をより重視するようになった場合等や、窓口業務の健全・適切な運営確保の観点から特段の事由が生じた場合等、銀行窓口業務契約等及び保険窓口業務契約等の解除が発生した場合には、当社グループの金融窓口事業の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 国際物流事業に関するリスク
① トール社買収に起因する減損の計上及び同社の買収に関するリスク
日本郵便は平成27年5月に、トール社の発行済株式のすべてを買収総額6,093億円で取得いたしましたが、資源価格の下落並びに中国経済及び豪州経済の減速等を受けて、平成29年3月期のトール社の業績が大きく悪化したことに伴い、当社の平成29年3月期の連結決算において、国際物流事業に係るのれん及び商標権の全額3,923億円並びに有形固定資産の一部80億円(合計4,003億円)の特別損失(減損損失)を計上いたしました。上記「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 経営環境及び対処すべき課題 ③ 国際物流事業」に記載のとおり、このような状況を受け、当社グループでは、平成29年1月にトール社の経営陣を刷新し、人員削減や部門の統廃合等によるコスト削減施策を中心に、トール社の業績回復・将来の成長への基盤を整えるための対策を講じているところですが、かかる経営改善策が功を奏せず、トール社の業績が改善しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、トール社はこれまで複数のM&Aを行い、事業統合を実施している過程にありますが、当社グループとの事業統合も含め統合が予定通り進捗しない場合には、複数のビジネス・ユニットによる取引先の競合やオペレーションの重複等が解消されないこと、複雑な業務及び設備、並びに異なる地理的エリアに存する多様な企業風土と異なる言語に基づく従業員を十分に管理できないこと、トール社と競合関係にある同業他社が、トール社より優れた革新的な商品、サービスを提供することで、トール社のマーケットシェア及び利益が低減すること、自然災害、事故等により、基幹ITシステム、主要な輸送手段、倉庫が損害等を受けること、更には、買収時に発見できなかった問題が発生すること等により、当社グループとして想定した買収効果を得ることができない可能性や当社グループ又はトール社の既存事業に負の効果を及ぼす可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、上記のとおり、平成29年3月期においてトール社の買収にかかるのれん及び商標権については全額減損損失を計上したことにより、のれん及び商標権に関して追加の減損損失が発生することはありませんが、今後トール社の業績が更に悪化する場合には、トール社の保有する物流設備その他の固定資産についても減損損失を計上し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、このような当社グループの国際的な事業展開に伴うリスクについては、「Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク 3.事業運営に関するリスク (7) 業務範囲の拡大等に伴うリスク」の記載もご参照ください。
② 資源価格の下落及び豪州経済の減速等に関するリスク
国際物流事業におけるトール社の事業は、豪州国内物流事業、国際フォワーディング事業及びコントラクト事業(3PL)に区分されるところ、特に豪州国内物流事業の業績は、資源価格を中心とする豪州経済による影響を大きく受けております。今後も豪州経済の低迷が継続し、又は更に悪化した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ トール社に適用される規制等
国際物流事業を担うトール社は、豪州を中心に、アジア太平洋地域等におけるフォワーディング、コントラクト物流(3PL)等の国際的な事業活動を行っており、各国・地域の事業許可や租税に係る法・規制、運送、貿易管理、贈収賄防止、独占禁止、為替規制、環境、各種安全確保等の法・規制の適用を受けております。法令等の改正や新たな法規制等により、当社グループの競争条件が悪化したり、事業活動の一部が制限又は変更を余儀なくされた場合は、新たな対応費用の増加、収益機会等の喪失等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 為替変動のリスク
国際物流事業を担うトール社の連結財務諸表は外貨建て(豪ドル)で作成されていることから、大幅な為替相場の変動が生じた場合、外貨建ての資産・負債等が当社の連結財務諸表作成のために円換算される際に為替相場の変動による影響を受けるため、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 金利変動のリスク
トール社は、継続的に設備投資等を行っており、投資にあたっては自己資金を投入しているほか、金融機関からの借入等に依存する割合も少なくありません。トール社による金融機関からの借入等の利息は、将来の金利動向によっては資金調達コストの上昇による影響を受け、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 不動産事業に関するリスク
当社グループは、金融窓口事業において、事務所・商業施設・住宅等の賃貸・管理事業のほか、分譲住宅事業等の不動産事業を営んでおり、営業・投資を目的とする不動産を所有しております。しかし、国内外の景気動向又は特定地域の経済状況や人口動向等の変化により、不動産価格や賃貸料が下落し、又は、空室率が上昇する可能性があります。さらに、当社グループが保有する不動産を活用した不動産開発においては、法的規制の変更、建築資材の価格や工事労務費の高騰、大規模災害等の発生等の影響を受ける可能性があります。これらの事象により、当社グループの不動産事業の収益や費用に影響を及ぼし、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅲ.銀行業に関するリスク
(1) 市場リスク
ゆうちょ銀行が保有する金融資産・負債の多くは、市場の変動による価値変化等を伴うものであります。ゆうちょ銀行では、中期的に安定的収益の確保を図ることを目的に、資産・負債を総合管理するALM(Asset Liability Management)の他、ストレス・テストや損益シミュレーション等を実施することにより、市場リスク等を適切に管理するよう努めておりますが、大幅な市場変動等によりかかる管理が十分に機能しない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、また、中期的な安定的収益の確保を目的とした外国証券、オルタナティブ投資等への運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性もあります。
① 金利リスク
ゆうちょ銀行が保有する日本国債(平成29年3月末日現在、68.8兆円・ゆうちょ銀行の総資産額の32%)を始めとする金融資産と、定額貯金を始めとする貯金や外貨を含む市場性調達の負債の期間や金利更改サイクル等には、差異が存在します。このため、金利(長期や短期の金利)の変動は、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、平成28年1月の日本銀行による「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」政策や同年9月21日の金融政策決定会合で導入が決定された「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」政策の影響等により、当連結会計年度末現在において、日本国債の一部の金利がマイナスとなる等市場金利は非常に低い水準にあり、さらに、今後の金融政策の動向によりかかる金利水準が長期に亘り継続し又は低下する場合、運用収益の減少に比して、相対的に貯金の調達コストが減少しないことにより、資金粗利鞘が減少し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、市場金利の変動は、日本国債を始めとするゆうちょ銀行の債券ポートフォリオ等の価値に影響を及ぼします。例えば、国内外の景気変動、中央銀行の金融政策、日本国政府の財政運営やその信認の変化等、様々な要因により市場金利が上昇した場合、保有する債券等の価値下落によって評価損・減損損失や売却損等が生じ、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、定額貯金(平成29年3月末日現在、101.2兆円・総貯金額の56%(特別貯金(民営化前に預入された定額郵便貯金相当)を含む。)。預入から6か月経過後は払戻し自由、3年までは6か月ごとの段階金利、それ以降は固定金利の10年満期・複利貯金)について、急激な市場金利上昇等により、事前のリスク管理の想定を超える貯金流出や預け替えが発生した場合にも、計画以上の運用原資の減少や調達コストの上昇を通じて、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 為替リスク
ゆうちょ銀行は、収益源泉・リスクの分散を目的に、運用の高度化・多様化の一環として国際分散投資を進め、外国証券の保有が増加(平成29年3月末日現在、その他の証券(外国債券や主な投資対象が外国債券である投資信託等で構成)は52.9兆円・ゆうちょ銀行の総資産額の25%)しておりますが、外貨建て資産の一部については為替リスクを軽減するヘッジを行わない、又は短期のヘッジを行うことがあります。その結果、大幅な為替相場の変動が発生した場合、ヘッジしていない部分に差損が発生し、又はヘッジコストが上昇すること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 株式価格変動リスク
ゆうちょ銀行は、直接又は金銭の信託や投資信託を通じて間接的に、市場性のある株式を保有することがあることから、国内外の経済状況又は市場環境の悪化や低迷等によって株価が低下する場合には、保有株式に評価損・減損損失や売却損等が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場流動性リスク
経済状況の著しい悪化や金融市場の混乱、銀行・金融業界全体の社会的信用や信認が低下する場合等には、ゆうちょ銀行が国内外の市場で取引・決済ができなくなることや、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされること等により、損失を被る可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 資金流動性リスク
ゆうちょ銀行の業績や財政状態の悪化、風評等の発生や、予期せぬ資金流出、運用と調達の期間のミスマッチ(差異)等、また、ゆうちょ銀行の収益力・信用力の低下、日本国債の格下げ等の影響を受けたゆうちょ銀行の格付の引き下げにより、円貨・外貨の必要資金確保が困難になる、又は、通常よりも著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより、損失を被る可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 信用リスク
ゆうちょ銀行の取引先や、ゆうちょ銀行が保有する社債等の負債性証券の発行者その他の投資先、貸出先の債務者等において、国内外の経済情勢(景気・信用状況等)や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、不祥事等の発生、その他不測の事態により、財政状態が急激に悪化する可能性があります。その結果、ゆうちょ銀行の与信関係費用が増加、ゆうちょ銀行が保有する負債性証券等の価値が下落すること等により、当社グループの事業、業績、財政状態及び自己資本の状況に影響を及ぼす可能性や、中期的な安定的収益の確保を目的とした外国証券への運用、プライベート・エクイティその他のオルタナティブ投資等、運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性があります。
(5) オペレーショナル・リスク等
ゆうちょ銀行の業務においては、事務リスク、システムリスク、情報資産リスク、訴訟等に係るリスク、人事リスク、レピュテーショナル・リスク、法令違反等に係るリスク、災害リスク等のオペレーショナル・リスクが存在します。ゆうちょ銀行が、これらのオペレーショナル・リスクを適切に管理できず、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 代理店を通じた営業に係るリスク
ゆうちょ銀行は、銀行代理業務の委託契約等に基づき日本郵便に銀行代理業務等を委託しています。ゆうちょ銀行の店舗24,060店舗(平成29年3月31日現在)のうち23,826店舗が代理店(郵便局)となっており、ゆうちょ銀行の貯金残高の約9割が代理店で開設された口座への預入による等、ゆうちょ銀行の事業は、代理店である日本郵便の郵便局ネットワークによる営業に大きく依拠しています(下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。
従って、コミュニケーション手段の多様化、競合するネットワークやサービスの利便性向上等により、ゆうちょ銀行の代理店である郵便局の利用者数や利用頻度が減少したり、代理店で取り扱うゆうちょ銀行の商品・サービスの種類や代理店数が減少した場合、また、ゆうちょ銀行の代理店業務に従事する従業員の確保やその教育が十分でない場合、郵便局で取り扱う競合商品との競争が激化する場合、日本郵便が人材等のリソースをゆうちょ銀行の商品・サービス以外に優先的に配分する場合等においては、ゆうちょ銀行の貯金等や新商品等の販売が伸びず、当社グループの銀行業における業務及び業績に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態にも影響を及ぼす可能性があります。
また、ゆうちょ銀行は、上記の銀行代理業務の委託契約等に基づき、相当額の委託手数料を日本郵便に対して支払っておりますが、当該委託手数料の算定方法その他の条件がゆうちょ銀行と日本郵便との間の合意により見直されたり、当該契約等が解除され代替委託先等を適時に確保できない場合、当社グループの銀行業における業務及び業績に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 事業環境等に係るリスク
① ユニバーサルサービスの提供に係るリスク
ゆうちょ銀行は、日本郵便との間で銀行窓口業務契約を締結しており、日本郵便は全国の郵便局で、ゆうちょ銀行の基本的な商品・サービスを、日本郵便株式会社法に基づくいわゆるユニバーサルサービス提供に係る法的責務の履行として提供しています(下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。ゆうちょ銀行は、法令上この責務を直接負わないものの、郵便局で使用するATM・窓口端末機など銀行委託業務に係るITシステムの導入・運行コストとともに(なお、当該ITシステムはゆうちょ銀行が所有)、同業務に従事する日本郵便の従業員の指導・教育等を通じ、ユニバーサルサービス提供に係る一定のコストを負担しております。
なお、銀行窓口業務契約は、期限の定めがなく、また、本契約に定める特段の事由が生じた場合等を除き、当事者の合意がない限り、解除できないものと定めています。また、ゆうちょ銀行の定款には、日本郵便と銀行窓口業務契約を締結する旨規定しているため、当該契約を終了させる場合には、ゆうちょ銀行の定款の変更を要します。従って、日本郵便がユニバーサルサービスの提供責務を果たすために必要と考える限り、ゆうちょ銀行は、各郵便局でゆうちょ銀行の基本的な商品・サービスの提供を継続することとなり、その結果、より収益性の高い業務や地域への経営資源配分が制約されること等により、当社グループの銀行業における業務及び業績に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 経済・社会情勢、市場に係るリスク
ゆうちょ銀行が行う当社グループの銀行業は、その収益の多くが日本国内での貯金調達や国内外での有価証券運用によって得られており、国内外の景気・信用状況や人口動態等の経済・社会情勢、金利・為替等の市場の変動・悪化が、当社グループの銀行業における業績及び財政状態に影響を及ぼし、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。例えば、消費税率の引き上げによる家計の可処分所得の低下や、少子高齢化に伴い、日本の貯蓄率・預金水準が低下し、ゆうちょ銀行の貯金残高が減少する可能性があります。また、国内外の金融市場に混乱等が生じた場合、ゆうちょ銀行の事業の低迷や資産内容の悪化、資金調達力・資産流動性の低下等が生じる可能性があります。このような場合、中期的な安定的収益の確保を目的とした運用の高度化・多様化が、目的に即した結果を生まない可能性もあります。
(8) 事業戦略・経営計画に係るリスク
ゆうちょ銀行は、郵便局ネットワークをメインチャネルとして、お客さま満足度No.1のサービスを広く国民各層に提供する「最も身近で信頼される銀行」、また、適切なリスク管理の下で運用の高度化・多様化を推進し、安定的収益を確保する「本邦最大級の機関投資家」を目指しております。
しかしながら、これらに向けたゆうちょ銀行の事業戦略・経営計画は、各種のリスクにより実施が困難となり、又は有効でなくなる可能性があります。また、事業戦略・経営計画の策定時に前提とした各種の想定が想定通りとならないこと等により、当初計画した成果が得られない可能性もあります。特に、市場(金利・為替等)・経済情勢(景気・信用状況等)等が計画策定時の想定通り安定推移しなかった場合、例えば、市場金利の低下による運用利回りの減少によってベース・ポートフォリオの収益計画が達成できない可能性や、国際分散投資等の高度化・加速、サテライト・ポートフォリオの拡大を継続していく中で、適切なポートフォリオ分散を達成できない可能性、より高いリスクを有する運用資産の増加によって価格変動リスクを受けやすくなり、ゆうちょ銀行の事業、業績及び財政状態に及ぼす影響が大きくなる可能性があります。さらに、平成29年3月期第2四半期以降に満期が集中している定額貯金の再預入や、投資信託の販売、運用・リスク管理・営業等の人材確保・育成が、想定通り進捗しなかった場合、総預かり資産の拡大等の計画が達成できなくなる可能性があります。
Ⅳ.生命保険業に関するリスク
(1) ユニバーサルサービスの提供に関するリスク
上記「Ⅰ.当社グループ全般に関するリスク 2.法的規制・法令遵守等に関するリスク (1) 法的規制及びその変更に関するリスク ③ 当社グループ固有に適用される規制等」のとおり、郵政民営化法上、当社及び日本郵便は、ユニバーサルサービスの提供義務を負っており、日本郵便は、郵政民営化法上のかかる規定を遵守するため、かんぽ生命保険と生命保険募集・契約維持管理業務委託契約及び保険窓口業務契約を締結してかんぽ生命保険の保険代理業務を受託し、全国の各郵便局において、かんぽ生命保険の商品及びサービスを提供しております(下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。特に、保険窓口業務契約は、期間の定めのない契約であり、特段の事情がない限りかんぽ生命保険から一方的に解除することはできないこととされております。また、かんぽ生命保険の定款上、かんぽ生命保険は日本郵便との間で、保険窓口業務契約を締結する旨の規定が存在し、当該契約を終了させる場合にはかんぽ生命保険の定款変更が必要となります。従って、かんぽ生命保険が日本郵便との間の保険窓口業務契約を終了させるには、これらの手続等を充足する必要があります。
このように、かんぽ生命保険が、ユニバーサルサービスの提供義務を負う日本郵便との間で、解除することが困難な保険窓口業務契約を締結することで、日本郵便がユニバーサルサービスを提供する上での関連保険会社としての地位を維持する契約上の義務を負うため、当社グループの生命保険事業における柔軟な事業展開が困難となり、結果として当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 資産運用に関するリスク
① 国内金利に関する市場リスク
かんぽ生命保険では、保険契約の引受けによって生じる負債に見合った運用資産を適切に管理し、損益の安定を図る目的で、資産と負債のバランスを考慮してリスクコントロールを行う、ALM(Asset Liability Management:資産・負債の総合的な管理)を行っております。かんぽ生命保険がALMを適切に行えなかった場合又はかんぽ生命保険のALMによって対処可能な程度を超えて市場環境が大きく変動した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
特に、かんぽ生命保険の資産構成においては、円金利資産の割合が高く、かんぽ生命保険の契約者に対する債務のデュレーションが運用資産より長期であることから、資産と負債のデュレーションのミスマッチによる国内金利の変動リスクを有しております。
具体的には、平成28年2月の日本銀行によるマイナス金利政策導入以降、低金利環境が継続しておりますが、かんぽ生命保険が既に保有している保険契約の予定利率は変わらないことから、当初想定していた運用収益が確保できない、あるいは逆ざや(資産運用ポートフォリオの平均運用利回りが既契約の責任準備金の積立てに用いた予定利率を下回る現象)となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、国内金利が現在の水準より上昇した場合には、資産運用利回りが上昇することにより、利息収入などの収益が向上する一方、債券価格の下落等による評価損・減損が発生する可能性があります。加えて、保険契約者がより高い収益を得られる別の金融商品へ資金を移動させることにより、保険契約の解約が増加する可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② ①以外の市場リスク
かんぽ生命保険の保有する外貨建資産に係る為替リスクがヘッジされていない部分について、為替相場の変動が発生した場合や、為替リスクをヘッジしていたとしても、国内外の金利差拡大によりヘッジコストが高まり、これまでの条件でロールによる為替予約ができなくなった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、外国金利の変動により、かんぽ生命保険の保有する外国証券の価値が下落した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、かんぽ生命保険は市場性のある株式を保有していることから、株価が下落した場合には、保有株式に評価損や売却損が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 信用リスク
かんぽ生命保険の取引先・投資先・かんぽ生命保険が保有する負債性証券の発行者において、国内外の景気動向や特定の業種を取り巻く経営環境の変化、不祥事の発生、国家間紛争等その他不測の事態により、財政状態が悪化した場合には、信用リスク及び与信関係費用が増加し、又はかんぽ生命保険が保有する負債性証券の価値が下落すること等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 市場流動性・資金繰りに関するリスク
① 市場流動性リスク
金融市場の混乱等により、市場において正常に金融商品の取引・資金決済ができなくなった場合や、通常よりも著しく不利な価格での取引を余儀なくされることになった場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、国内外の金融市場及び経済状況の悪化等により、市場の流動性が減退した場合は、かんぽ生命保険の保有する資産の売却可能性や価値が減少する可能性があります。
② 資金繰りリスク
かんぽ生命保険の財務内容の悪化等による新契約の減少に伴う保険料収入の減少、大量解約に伴う解約返戻金支出の増加、巨大災害に伴う保険金の大量支払による資金流出等により資金繰りが悪化し、資金の確保に通常よりも著しく低い価格での資産売却を余儀なくされることにより損失を被った場合には、当社グループの業務運営、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 商品の集中に関するリスク
かんぽ生命保険の取り扱う商品は、個人向け生命保険に集中しております。個人向け生命保険については、国内の雇用水準及び家計所得水準、代替商品であるその他の商品に対する相対的魅力、保険会社の財務健全性、社会的信用に対する一般的な認識、出生率及び高齢化等日本の人口構成に影響を与える長期的な人口動態等の要因が、新規契約数や既存契約の解約率に影響を与え、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 日本の人口動態に関するリスク
昭和40年代半ば以降、日本の出生率は総じて徐々に低下する傾向にあり、現在は世界で最低の水準にあります。これらの結果、15歳から64歳までの人口は減少傾向が続いており、この傾向が、日本国内における生命保険の総保有契約高の減少の主要な要因であると考えております。また、国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、15歳から64歳までの人口は、今後も減少し続けるであろうと予測しております。かんぽ生命保険の顧客基盤は中高年層に強みがありますが、もし、これらの傾向が続き、青壮年層における生命保険に対する需要が減少する場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 保険料設定に関するリスク
かんぽ生命保険は、保険の種類及び内容、契約時の被保険者の年齢、性別、保険金額等を考慮して、計算基礎率(予定死亡率、予定利率、予定事業費率)等に基づいて保険料を設定しておりますが、実際の死亡率が事前に設定した予定死亡率を超過した場合、実際の運用利回りが事前に設定した予定利率を下回った場合、実際の経費が事前に設定した予定事業費を超過した場合には、保険期間中の保険料等の受取総額を、保険金・経費等の支払総額が上回ることにより損失が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
他方、かんぽ生命保険は、標準利率の引下げ等を受け、平成28年8月及び平成29年4月に商品の予定利率を引き下げ、保険料の値上げを実施しておりますが、今後も保険料の値上げを行う可能性があります。かかる保険料の値上げにより、かんぽ生命保険による新契約獲得数が減少する場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 責任準備金の積立に関するリスク
かんぽ生命保険は、日本の生命保険会社として、保険業法及び関連業規制に基づき、保険料収入の大部分を、責任準備金として将来の保険金等の支払いに備えて積み立てております。責任準備金は、かんぽ生命保険の負債の最も大きな部分を占めているものであり、各保険契約の保障対象となる事象の起こる頻度や時期、保険金等支払額、資産運用額等につき一定の前提を置き、これらに基づく見積りによって計算されるものであります。これらの前提と実際の結果が乖離した場合や環境の変化により将来乖離が見込まれる場合には、責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、責任準備金の積立水準に関するガイドラインや標準利率・標準生命表は、規制当局である金融庁等によって定められているものですが、これらに変更があった場合には、保険料見直しや責任準備金の積増しが必要となる可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 契約者配当準備金に関するリスク
かんぽ生命保険が確保すべき契約者配当準備金は費用として扱われ、これにより各事業年度における純利益が減少します。かんぽ生命保険は契約者配当準備金の繰入額の決定について裁量を有しており、その水準については、かんぽ生命保険商品の競争力、業績、ソルベンシー・マージン比率等の様々な要素を考慮して判断しておりますが、その水準によっては、かんぽ生命保険株主への配当原資の額、事業、業績及び財政状態又はかんぽ生命保険の株式価値に影響を及ぼす可能性があります。
なお、かんぽ生命保険が管理機構から受再している簡易生命保険契約については、「旧簡易生命保険契約に基づく保険責任に係る再保険契約」において、かんぽ生命保険が引き受けた保険契約と区分してその収益及び費用を経理するものとし、簡易生命保険契約の再保険損益の8割を契約者配当準備金に繰り入れることとしております。また、再保険配当の計算方法の変更の必要性について、毎事業年度、管理機構とかんぽ生命保険間で協議することとされておりますが、本契約締結以降、当該計算方法が変更されたことはなく、当連結会計年度末現在において変更の予定もありません。
(9) 保険金の支払いに関するリスク
かんぽ生命保険は、正確・迅速な保険金等のお支払いが生命保険会社の根幹業務であるとの認識の下、支払管理態勢の強化、お客さまサポートの充実に取り組んでおりますが、何らかの理由により、規制当局又はかんぽ生命保険が支払管理態勢の強化が不十分であると判断した場合には、各種改善策を講じる可能性があり、当社グループの社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) オペレーショナルリスク
かんぽ生命保険の業務においては、事務リスク、システムリスク、情報漏えいリスク、コンプライアンス違反、不正・不祥事に関するリスク、従業員、代理店、業務委託先、保険契約者等の不正により損害を被るリスク等のオペレーショナルリスクが存在します。かんぽ生命保険がこれらのオペレーショナルリスクを適切に管理できず、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業務運営、社会的信用、事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 生命保険契約者保護機構への負担金及び国内の他の生命保険会社の破綻に係るリスク
かんぽ生命保険は、生命保険契約者保護機構(以下「保護機構」といいます。)への負担金支払義務を負っております。保護機構は、破綻した生命保険会社の保険契約者を保護することを目的としており、破綻した生命保険会社から他の生命保険会社へ保険契約を移転する際に、資金援助を実施しております。保護機構への負担金額は保険料収入及び責任準備金の額などに応じて決められるため、かんぽ生命保険の保険料収入及び責任準備金の額が他の生命保険会社に比して増加した場合、負担金が増加する可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、日本の他の生命保険会社の破綻は、日本の生命保険業界全体の評価にも悪影響を与え、保険契約者の生命保険業界全体に対する信用を損ない、これにより当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(12) 格付けの低下に関するリスク
かんぽ生命保険は、格付会社より格付けを取得しておりますが、かんぽ生命保険の財務内容の悪化等により格付けが引き下げられた場合、新規契約の減少、既存契約の解約の増加等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅴ.宿泊事業・病院事業に関するリスク
当社の営む宿泊事業及び病院事業においては、自然災害、事故、火災、食中毒等から生じる潜在的な損失の発生、損害賠償責任、行政処分等のリスクを内包しています。
また、少子高齢化に伴う近時の医療費削減の流れは、病院事業の収益性に影響を及ぼす可能性があります。
宿泊事業・病院事業について、近年継続して営業損失を計上していることから、個々の施設(又は病院)の状況を踏まえ、増収対策や経費削減による経営改善を進めていることに加え、宿泊事業においては施設配置の見直しも行ったところですが、今後も厳しい状況が続く見通しです。
Ⅵ.郵政民営化に関するリスク
平成27年11月4日に、日本国政府及び当社は、グローバル・オファリングにより、それぞれが保有する当社の株式及び金融2社の株式について、その発行済株式(ゆうちょ銀行については、自己株式を除きます。)の約11%の売出を行いました。また、当社は、平成27年10月19日開催の取締役会決議に基づき、同年12月3日に、自己株式の取得を実施しました。その結果、当連結会計年度末現在において、日本国政府は当社の発行済株式の約80%(自己株式を除く議決権割合は約88%)を、当社はゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の発行済株式のそれぞれ約74%(自己株式を除く議決権割合は約89%)及び89%を保有しています。
郵政民営化法に基づき、日本国政府が保有する当社の株式は、できる限り早期に処分するものとされており(ただし、日本国政府による当社株式の保有割合は常に3分の1を超えるものとされております。)、また、当社が保有する金融2社の株式についても、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、その全部をできる限り早期に処分するものとされております。当社では、上記趣旨に沿って、まずは、金融2社株式の保有割合が50%程度となるまで、段階的に売却することとしています。
以下では、かかる日本国政府による当社株式の売却と、当社による金融2社株式の売却に起因する当社グループの事業等のリスクのうち主要なものを記載しております。
(1) 持分の減少による連結業績への影響並びに事業の規模及び範囲の縮小に関するリスク
平成29年3月期におけるゆうちょ銀行の営む銀行業及びかんぽ生命保険の営む生命保険業におけるセグメント利益及びセグメント資産の各合計額は、当社グループのセグメント利益及びセグメント資産の各合計額(「その他」に区分されるものを除きます。)のそれぞれ約90%及び約98%を占めております。郵政民営化法に基づき、当社が金融2社の株式を処分した場合、当社の連結財務諸表の親会社株主に帰属する当期純利益及び非支配株主持分を除く純資産の額に反映される金融2社の純利益及び純資産の額が、減少することになります。金融2社の議決権の過半数を保有している間は連結対象となりますが、当面の処分方針に従い保有割合が50%程度となるまで売却し、金融2社の議決権の過半数を保有しないこととなった場合には、連結対象となるかについて他の要件とも併せて検討することとなります。なお、金融2社が連結対象から外れた場合、連結貸借対照表上、金融2社の資産、負債を合算しなくなるため、当社グループの資産、負債の規模が減少することになります。さらに、金融2社が持分法適用関連会社からも外れた場合は、金融2社株式は「その他有価証券」となり毎期時価で評価することになり、原則として評価差額は「その他有価証券評価差額金」として純資産に計上することになります。
なお、当社の連結財務諸表に対する金融2社の収益・利益が与える影響については、以下のとおりと想定しております。
① 金融2社持分比率が50%を超える場合、及び金融2社持分比率が40%~50%で当社連結対象となる場合
金融2社の収益が当社連結収益に寄与します。また、金融2社の利益が持分比率に応じて当社連結利益に寄与します。
② 金融2社持分比率が20%~50%で持分法適用となる場合
金融2社の利益が持分比率に応じて当社連結利益に寄与します。
③ 金融2社持分比率が20%未満の場合
金融2社からの配当収入があれば、当該収入が当社連結収益・利益に寄与します。
また、上記のとおり、当社が保有する金融2社の株式は、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、その全部をできる限り早期に処分するものとされているところ、当社が金融2社の株式を処分しその持分が低下するにつれて、当社グループの事業は、金融2社以外の事業に集中することになり、当該各事業における収益の悪化が、当社グループの事業、業績及び財政状態に、より影響を及ぼすことになります。また、金融2社に対する持分が低下又は消滅することにより、当社グループの財務の健全性又はキャッシュ・フローが悪化し、当社グループの資金調達能力が制限される可能性があります。
当社は、金融2社株式の売却手取金を有効に活用し企業価値の向上に努める所存ですが、金融2社からの配当収入に代わる利益を得られない場合には、当社の配当原資が確保できないおそれがあり、また上記の金融2社の当社連結利益への影響の低下を通じて当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 議決権割合の減少による影響力の低下及び少数株主との利益相反に関するリスク
当社は、平成27年11月4日の金融2社株式の売出しの実施後においても、金融2社の議決権を保有する親会社であり、当社の利益とその他の少数株主の利益は相反する可能性があります。会社法上、取締役及び執行役は、会社及び少数株主を含む総株主の利益のために業務を行う義務を負っているため、金融2社における意思決定は、常に当社の意向に沿った、又は、当社グループの利益に資するものとなるとは限りません。また、当社が金融2社の株式の2分の1以上又は3分の1超を処分した場合には、株主総会における普通決議又は特別決議を要する事項につき、当社が単独で可決することができなくなる可能性があります。
また、当社は、平成30年3月期末までの間は連結配当性向50%以上を目安に、安定的な1株当たり配当を目指してまいりますが(下記「第4 提出会社の状況 3 配当政策」の記載をご参照ください。)、当社の配当の原資は金融2社からの配当収入に依存しており、当社が金融2社の株式を処分することにより当社の金融2社の意思決定に及ぼす影響力が低下した場合等においては、当社は金融2社から当社の期待する配当収入を得られる保証はありません。
従って、当社が金融2社の株式を処分することにより、当社の金融2社に対する議決権割合が減少した場合には、当社が金融2社の意思決定に及ぼしうる影響はその処分割合に応じて限定的となり、金融2社の意思決定は、当社グループの意向に沿った、又は、当社グループの利益に資するものとはならない可能性があります。
(3) 日本国政府との関係が希薄化することに関するリスク
金融2社は、その唯一の株主を当社、当社の唯一の株主を日本国政府とする上場前の状態にあっても、日本国政府その他の公的機関から何らの保証その他の信用補完を受けていたわけではありませんが、当社が金融2社の親会社ではなくなることに伴い、金融2社と日本国政府との関係が弱まった場合には、顧客等が、金融2社の経済的信用力が低下した、又は、ゆうちょ銀行の貯金及びかんぽ生命保険の商品のリスクが上昇したという誤認や錯誤を有することとなる可能性があります。実際の金融2社の経済的信用力等とは無関係であるにも関わらず、かかる誤認や錯誤が社会に広く伝播した場合等においては、顧客等によるゆうちょ銀行の既存貯金の引き出し又は貯金の減少、かんぽ生命保険との新規契約の差し控えや既存契約の解約、その他金融2社との取引量の低下を招き、その結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 日本国政府との利益相反に関するリスク
当連結会計年度の末日現在において、日本国政府は当社株式の議決権(自己株式を除く。)の約88%を保有しており、日本国政府は当社の株主総会において、普通決議事項及び特別決議事項のいずれについても、単独で可決することが可能です。また、当社及び日本郵便は、日本郵政株式会社法及び日本郵便株式会社法に基づき、新規業務、株式の募集、取締役の選解任及び監査役の選解任(当社のみ)、事業計画の策定、定款の変更、合併、会社分割、解散等を行う場合には、総務大臣の認可(ただし、日本郵便の新規業務については総務大臣への届出)が必要とされています。また、金融2社は、郵政民営化法に基づき、新規業務、他の金融機関等の子会社化、合併、会社分割、事業の譲渡及び譲受け、廃業並びに解散等を行う場合には、内閣総理大臣及び総務大臣の認可が必要とされています。
当社グループの事業その他に関する日本国政府の利益は、当社のその他の株主の利益と相反する可能性があり、日本国政府が、株主としての経済的利益よりも公共政策上の判断等を優先した場合等には、当社グループのその他の株主の利益に反する支配権又は影響力の行使がなされる可能性があります。なお、郵政民営化法により、日本国政府は当社株式をできる限り早期に処分することが規定されておりますが、その具体的な時期及び処分割合を予想することは困難であり、また、同法により当社株式の発行済株式総数の3分の1超に相当する株式については日本国政府が引き続き保有することが規定されていることから、日本国政府による当社株式の処分完了後も日本国政府は3分の1超の当社株式保有者として引き続き当社に重要な影響を及ぼしうることになります。
(5) 当社による金融2社株式の売却時期に関するリスク
郵政民営化法に基づき、当社は金融2社の株式の全部を処分することが規定されております。金融2社株式の処分時期について、具体的な期限の定めはないものの、その処分に際しては、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービスの責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に処分することとされています。金融2社株式の処分時期については、かかる要素を勘案して当社取締役会において決定しますが、現時点において、決まっておらず、その時期によっては当社の株主全体の利益とは一致しない可能性があります。従って、当社は、金融2社株式の処分を、適切な時期に適切な条件で実行することができない可能性があります。
郵政民営化法に基づく規制については、当社が金融2社の株式を2分の1以上処分した場合には、金融2社に対する新規業務に係る規制は認可制から届出制へと緩和されます。さらに、当社が金融2社の株式を全部処分した場合又は2分の1以上を処分した旨を総務大臣が内閣総理大臣に通知した日以後に、内閣総理大臣及び総務大臣が他の金融機関等との間の適正な競争関係及び利用者への役務の適切な提供を阻害するおそれがないと認め、その旨が決定した場合には、金融2社に対する新規業務に係る規制、他の金融機関等の子会社化、合併、会社分割、事業の譲渡及び譲受け、廃業並びに解散等を行う場合の規制、銀行業における預入限度額規制、生命保険業における加入限度額規制等の適用は廃止されることになります。しかしながら、金融2社の上場後における当社による金融2社株式の売却の時期及び売却の規模は未確定であり、また、金融2社株式の処分に係る郵政民営化法の定めの変更、株式市場の動向等により、金融2社の株式の処分が予定通りに進まない場合には、かかる上乗せ規制の撤廃が行われず、当社の期待する金融2社の経営の自由度の拡大等が実現しない可能性があります。
(6) 金融2社株式の売却損失の発生に関するリスク
金融2社株式の売却収入が、売却に係る当社が保有する金融2社株式の帳簿価額を下回った場合には、売却される株式の帳簿価額と売却収入の差額について、当社の損益計算書に売却損失として計上する必要があり、その結果、当社の事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、平成29年3月31日現在、当社が保有するゆうちょ銀行株式の帳簿価額は5,780,141百万円、かんぽ生命保険株式の帳簿価額は890,039百万円です。
一方、連結財務諸表においては、金融2社株式の売却収入が、売却による当社の持分の減少額を下回った場合には、売却による当社の持分の減少額と売却収入の差額を、連結貸借対照表の資本剰余金から減少させる必要があり、その結果、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。また、金融2社が持分法適用関連会社となり、金融2社株式の売却収入が、売却による当社の持分の減少額を下回った場合には、売却による当社の持分の減少額と売却収入の差額について、連結損益計算書に売却損失として計上する必要があります。さらに、金融2社が子会社及び持分法適用関連会社ではなくなり、金融2社株式の売却収入が、売却に係る当社が保有する金融2社株式の帳簿価額を下回った場合には、売却される株式の帳簿価額と売却収入の差額について、連結損益計算書に売却損失として計上する必要があります。以上の結果、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、平成27年11月4日の金融2社株式の売出しにおいては、ゆうちょ銀行株式の売却に伴い、当社の損益計算書における関係会社株式売却損126,236百万円及び当社の連結貸借対照表における資本剰余金351,922百万円の減少が発生し、かんぽ生命保険株式の売却に伴い、当社の損益計算書における関係会社株式売却益32,796百万円及び当社の連結貸借対照表における資本剰余金17,754百万円の減少が発生しております。
(7) 当社の商標等の金融2社による継続使用に関するリスク
当社及び事業子会社が締結した、「日本郵政グループ運営に関する契約」(以下「グループ運営契約」といいます。グループ運営契約の詳細は、下記「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)に基づき、事業子会社は、当社による金融2社株式の処分後も、引き続き「日本郵政」ブランド及び関連商標の使用を継続する予定です。
そのため、金融2社株式の売却後も、金融2社における業績の低迷、従業員の不祥事その他の理由により金融2社の社会的信用が毀損された場合には、当社グループの社会的信用及び「日本郵政」のブランド・イメージに悪影響を及ぼす可能性があり、また、当社グループのコンプライアンス又は内部統制の十分性又は有効性に疑義があるものと受け止める可能性があり、かかる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、グループ運営契約に基づき、金融2社から、当社グループに属することによる利益の対価としてブランド価値使用料を受け取っており、当社による金融2社株式の保有割合にかかわらず、金融2社がそれぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行又は同条第3項に定める関連保険会社である限り、収受することを想定しております。しかしながら、金融2社が関連銀行又は関連保険会社に該当しないこととなりグループ運営契約そのものを適用しないこととなった場合、若しくは重大な経済情勢の変化等に起因してブランド価値使用料の算定方法が変更された場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
Ⅶ.金融2社との関係について
(1) 当社と金融2社との関係について
① 当社グループにおける金融2社の位置づけ
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の金融2社は、現在、日本郵便が金融のユニバーサルサービス提供に係る責務を果たすために営む銀行代理業又は保険募集等に係る業務委託契約を日本郵便との間でそれぞれ締結しており、それぞれ当社グループにおいて、日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行として銀行業セグメント又は同条第3項に定める関連保険会社として生命保険業セグメントを担っております。
グループ会社として相互に連携・協力し、シナジー効果を発揮するため、当社及び金融2社は、「日本郵政グループ協定」及び「日本郵政グループ運営に関する契約」(いずれも平成27年4月1日発効。以下「グループ協定等」といいます。)を締結しており、その存続期間は、金融2社が日本郵便と締結している上記の業務委託契約が解除されるまでとしております。なお、これらの契約の解除は、当社による金融2社の株式売却と連動しておりません。
② 金融2社とのグループ協定等
当社は、金融2社を含む事業子会社との間で、グループ協定等を締結し、グループ共通の理念、方針、その他グループ運営に係る基本的事項について合意しております(グループ協定等の詳細については「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。)。
グループ協定等に基づき、事業子会社に関するグループ運営は、当社が中心となって行っておりますが、金融2社の独立性を確保する観点から、金融2社については事前承認ルールを採用せず、グループ運営を適切・円滑に行うために必要な事項や法令等に基づき管理等が必要となる事項について、事前協議又は報告を求めています。
③ 金融2社との人的関係
本書提出日現在において、当社の役員1名(長門正貢)が、グループ経営体制の強化、及び金融2社のトップマネジメント強化のため、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の役員(非常勤)を兼任しております。また、ゆうちょ銀行の役員1名(池田憲人)及びかんぽ生命保険の役員1名(植平光彦)がグループ経営体制の強化のため、ゆうちょ銀行の役員1名(田中進)及びかんぽ生命保険の役員1名(加藤進康)が、国が資本金の2分の1以上を出資している法人である当社として国会において各子会社に関する専門的な質問への答弁対応の必要があると考えているため、当社の役員(非常勤)を兼任しております(当社の役員の状況については「第4 提出会社の状況 5 役員の状況」をご参照ください。)。
④ 金融2社との取引等
当社と金融2社との平成29年3月期における主な取引等は以下のとおりであります。
取引等内容 |
取引等先 |
金額 (百万円) |
取引等条件の決定方法等 |
ブランド価値使用料 |
ゆうちょ銀行 |
4,091 |
「5 経営上の重要な契約等 (1) 日本郵政グループ協定等」をご覧ください。 |
システム利用料(※) |
ゆうちょ銀行 |
14,133 |
システムの提供にかかる必要経費に一定の利益率を乗じた金額を、日本郵便及び金融2社が、利用状況等に応じて負担する。 |
貯金旧勘定 |
ゆうちょ銀行 |
8,371 |
郵政民営化法第122条の規定により、ゆうちょ銀行が当社に対して金銭の交付(貯金旧勘定交付金)を行うもの。 |
配当金 |
ゆうちょ銀行 |
166,851 |
将来に向けた安定的な企業成長を実現するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元を株主である当社に対して行うもの。 なお、ゆうちょ銀行は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うこととしている。 |
ブランド価値使用料 |
かんぽ生命保険 |
3,259 |
「5 経営上の重要な契約等 (1) 日本郵政グループ協定等」をご覧ください。 |
システム利用料(※) |
かんぽ生命保険 |
1,636 |
システムの提供にかかる必要経費に一定の利益率を乗じた金額を、日本郵便及び金融2社が、利用状況等に応じて負担する。 |
配当金 |
かんぽ生命保険 |
29,904 |
将来に向けた安定的な企業成長を実現するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた利益還元を株主である当社に対して行うもの。 なお、かんぽ生命保険は、会社法第459条の規定に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うこととしている。 |
(※) PNETサービス、情報系共用システムサービス及び人事関係システムサービスの利用料(日本郵政インフォメーションテクノロジー株式会社との取引を含む。)
(2) 日本郵便と金融2社との関係について
当社の子会社である日本郵便は、ゆうちょ銀行から銀行窓口業務等の委託、また、かんぽ生命保険から保険窓口業務等の委託を受けており、これらの業務は金融窓口事業セグメントの収益の大部分を占めることから、両社の経営方針に変更が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、平成29年3月期末現在の日本郵便に対する金融2社の関係につきましては、次のとおりであります。
① 人的関係
日本郵便では、銀行窓口業務及び保険窓口業務における営業施策の企画・立案、推進管理を金融2社と協力して行うとともに、両社から販売支援・業務指導を受けるなど、一体的な営業体制を構築することを目的として、人事交流を行っております。
② 取引関係
日本郵便と金融2社との平成29年3月期における主な取引は、以下のとおりであります。
取引内容 |
取引先 |
金額 (百万円) |
取引条件等の決定方法等 |
銀行代理業の業務に係る受託手数料の受取 |
ゆうちょ銀行 |
612,465 |
銀行代理業等の委託業務に関連して発生する原価を基準に決定 |
保険代理業務の業務に係る受託手数料の受取 |
かんぽ生命保険 |
392,768 |
募集手数料については、代理店方式を採用している他の生命保険会社の例に準じて設定。維持・集金手数料については、業務量に応じた計算により額を設定 |
郵便料金等の受取 |
ゆうちょ銀行 |
18,066 |
一般の利用者の料金と同一の条件で取引 |
かんぽ生命保険 |
6,967 |
||
土地・建物等の賃貸 |
ゆうちょ銀行 |
7,216 |
不動産鑑定評価の考え方に基づき決定 |
かんぽ生命保険 |
2,606 |
||
シェアードサービス利用料の受取 |
ゆうちょ銀行 |
3,010 |
必要経費に加え、利用状況、他企業における平均的な利益率を勘案し両社交渉により手数料率等を決定 |
かんぽ生命保険 |
1,370 |
(※1) 営業店等の施設の賃貸、社員用社宅関連業務の提供等
(※2) グループ内物流業務の提供等
当社は、上記のような当社及び日本郵便と金融2社との契約関係・人的関係・取引関係に基づき、金融2社を含む当社グループの企業価値を最大化していく方針ですが、金融2社と当社及び日本郵便とのシナジー効果を実現できない可能性があり、また、金融2社と当社及び日本郵便との利益相反を適切に管理できない可能性があります。さらに、将来の金融2社株式の追加処分などによって、かかる関係に変更が生じる又はかかる関係による当社グループの企業価値の最大化がさらに困難となる可能性があります。
(1) 日本郵政グループ協定等
① 日本郵政グループ協定等の締結について
当社は、事業子会社との間で、「グループ協定等」を締結しております。
グループ協定等において、当社及び事業子会社が、グループ共通の理念、方針その他のグループ運営(グループ全体の企業価値の維持・向上のための諸施策の策定及びその遂行をいいます。)に係る基本的事項について合意することにより、金融2社の上場後においても、引き続きグループ会社が相互に連携・協力し、シナジー効果を発揮する体制を維持しております。グループ協定等の締結は、グループ会社、ひいてはグループ全体の企業価値の維持・向上に寄与していると考えております。
② ブランド価値使用料について
グループ協定等に基づき、当社は、事業子会社からブランド価値使用料を受け取っております。ブランド価値使用料は、当社グループに属することにより、当社グループが持つブランド力を自社の事業活動に活用できる利益の対価、すなわち、郵政ブランドに対するロイヤリティの性格を有するものです。
当社グループに属することによる利益が事業子会社の業績に反映されていることを前提とし、事業子会社が享受する利益が直接的に反映される指標を業績指標として採用し、業績指標に一定の料率を掛けて額を算定することとしております。
ブランド価値使用料の額の具体的な算定方法は次のとおりです。
日本郵便 :連結営業収益(トール社連結分を除く。)(前年度) ×0.20%
ゆうちょ銀行 :貯金残高(前年度平均残高) ×0.0023%
かんぽ生命保険 :保有保険契約高(前年度末) ×0.0036%
この算定方法は、重大な経済情勢の変化等、特段の事情が生じない限り変更しないこととしております。
なお、各社から当社に支払われた平成29年3月期のブランド価値使用料は、次のとおりです。
|
|
|
|
(単位:億円) |
|
日本郵便 |
ゆうちょ銀行 |
かんぽ生命保険 |
合計 |
ブランド価値使用料 |
61 |
40 |
32 |
135 |
③ 金融2社株式の処分後のグループ協定等について
郵政民営化法第7条第2項の規定により、当社が保有する金融2社の株式は、その全部を処分することを目指し、金融2社の経営状況、ユニバーサルサービス提供に係る責務の履行への影響等を勘案しつつ、できる限り早期に、処分することとされていますが、当社による金融2社の議決権所有割合にかかわらず、金融2社は、それぞれ日本郵便株式会社法第2条第2項に定める関連銀行又は同条第3項に定める関連保険会社である限り、グループ協定等を維持するものと考えております。
(2) 銀行窓口業務契約及び保険窓口業務契約(期間の定めのない契約)
日本郵便は、日本郵便株式会社法第5条の責務として、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的にかつあまねく全国において公平に利用できるようにするユニバーサルサービス義務を果たすために、ゆうちょ銀行との間で、銀行窓口業務契約を締結(平成24年10月1日)するとともに、かんぽ生命保険との間で、保険窓口業務契約を締結(平成24年10月1日)しております。
銀行窓口業務契約では、日本郵便が、ゆうちょ銀行を関連銀行として、通常貯金、定額貯金、定期貯金の受入れ及び普通為替、定額小為替、通常払込み、電信振替の取引を内容とする銀行窓口業務を営むこととしております。
保険窓口業務契約では、日本郵便が、かんぽ生命保険を関連保険会社として、普通終身保険、特別終身保険、普通養老保険及び特別養老保険の募集並びにこれらの保険契約に係る満期保険金及び生存保険金の支払の請求の受理の業務を営むこととしております。
なお、本契約は、期限の定めのない契約であり、特段の事由が生じた場合等を除き、当事者の合意がない限り解除することはできないものと定めております。
(3) 銀行代理業に係る業務の委託契約及び金融商品仲介業に係る業務の委託契約並びに生命保険募集・契約維持管理業務委託契約
① 銀行代理業に係る業務の委託契約及び金融商品仲介業に係る業務の委託契約(期間の定めのない契約)
日本郵便は、ゆうちょ銀行との間で、銀行代理業に係る業務の委託契約(平成19年9月12日(締結)、平成20年4月22日(変更)、平成24年10月1日(変更))、金融商品仲介業に係る業務の委託契約(平成19年9月12日(締結)、平成24年10月1日(変更))を締結しております。
日本郵便が、銀行代理業に係る業務の委託契約に基づいて行う業務は、上記(2)の銀行窓口業務契約で定めた業務を含め、銀行代理業務、手形交換業務、告知事項確認業務等であります。
日本郵便が、金融商品仲介業に係る業務の委託契約に基づいて行う業務は、金融商品仲介業務、本人確認事務等であります。
なお、本契約は、期限の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、本契約を解除する旨の協議を申し入れることができ、書面による通知により解除することができるものと定めておりますが、銀行窓口業務に該当する業務については、上記(2)の契約に定めがある場合を除くほかは、本契約の定めるところによります。
② 生命保険募集・契約維持管理業務委託契約(期間の定めのない契約)
日本郵便は、かんぽ生命保険との間で、生命保険募集・契約維持管理業務の委託契約を締結(平成19年9月12日(締結)、平成24年10月1日(変更)、平成26年9月30日(変更)、平成28年3月31日(変更))しております。
日本郵便が、生命保険募集・契約維持管理業務の委託契約に基づいて行う業務は、上記(2)の保険窓口業務契約で定めた業務を含め、保険契約の締結の媒介、保険金、年金、返戻金、貸付金及び契約者配当金等の支払等であります。
なお、本契約は、期限の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、本契約を解除する旨の協議を申し入れることができ、書面による通知により解除することができるものと定めておりますが、保険窓口業務に該当する業務については、上記(2)の契約に定めがある場合を除くほかは、本契約の定めるところによります。
(4) 郵便貯金管理業務委託契約及び簡易生命保険管理業務委託契約等(期間の定めのない契約)
ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険は、管理機構の業務である郵便貯金管理業務(公社から承継した郵便貯金の管理に関する業務等)及び簡易生命保険管理業務(同簡易生命保険契約の管理に関する業務等)の一部(払戻し、利息支払等)について、管理機構とそれぞれ郵便貯金管理業務委託契約、簡易生命保険管理業務委託契約を締結し委託を受けております。
また、ゆうちょ銀行は管理機構との間で郵便貯金資産(郵便貯金管理業務の経理を区分する郵便貯金勘定に属する資産)の運用のための貯金に係る契約を、かんぽ生命保険は管理機構との間で簡易生命保険契約の再保険に係る契約をそれぞれ締結しております。
さらに、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険は、管理機構との間で管理機構が保有する郵便貯金の預金者、簡易生命保険の契約者及び地方公共団体に対する貸付金の総額に相当する額について、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの借入金として管理機構がそれぞれ債務を負うものとする契約を締結しております。
なお、郵便貯金管理業務委託契約、簡易生命保険管理業務委託契約及び簡易生命保険契約の再保険に係る契約の変更又は解除は、総務大臣の認可が必要とされております。
(5) 郵便貯金管理業務の再委託契約及び簡易生命保険管理業務再委託契約
① 郵便貯金管理業務の再委託契約(期間の定めのない契約)
ゆうちょ銀行は、日本郵便との間で、ゆうちょ銀行が管理機構から受託している郵便貯金管理業務について、日本郵便が郵便貯金管理業務の一部を営むこととする郵便貯金管理業務の再委託契約(平成19年9月12日(締結)、平成20年9月30日(変更)、平成24年10月1日(変更))を締結しております。
なお、本契約は、期間の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、本契約を解除する旨の協議を申し入れることができ、書面により本契約の解除を通知することができるものと定めております。
② 簡易生命保険管理業務再委託契約(期間の定めのない契約)
かんぽ生命保険は、日本郵便との間で、かんぽ生命保険が管理機構から受託している簡易生命保険管理業務について、日本郵便が簡易生命保険管理業務の一部を営むこととする簡易生命保険管理業務再委託契約(平成19年9月12日(締結)、平成24年10月1日(変更))を締結しております。
なお、本契約は、期間の定めのない契約であり、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、事業運営上の合理的な理由により本契約を解約する旨、書面による通知を行い、解約することができるものと定めております。
(6) 総括代理店委託契約(1年ごとの自動更新)
かんぽ生命保険は、かんぽ生命保険を保険者とする生命保険契約の募集を行う簡易郵便局に対する指導・教育等について、日本郵便と総括代理店契約(平成19年9月12日(締結)、平成24年10月1日(変更))を締結しております。
なお、本契約は、契約当事者のいずれか一方から、6カ月前までに、事業運営上の合理的な理由により本契約を解約する旨、書面による通知を行い、解約することができるものと定められております。また、生命保険募集・契約維持管理業務委託契約(上記(3)②)が解除された場合は、予告なしに解除することができるものと定められております。
(参考1) ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険からの委託手数料
日本郵便は、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険との間で、上記(2)、(3)、(5)、(6)に係る業務の対価としての委託手数料の算定方法等を定めております。
ゆうちょ銀行とは、委託手数料支払要領を締結しており、ゆうちょ銀行直営店での業務コストをベースに、日本郵便での取扱実績に基づいて委託業務コストに見合う額を算出し、郵便局維持に係る「窓口基本手数料」、平均貯金残高に応じて支払われる「貯金の預払事務等」、送金決済取扱件数に応じて支払われる「送金決済その他役務の提供事務等」、資産運用商品の販売額及び平均投信残高に応じて支払われる「資産運用商品の販売事務等」の手数料を設定しています。
これに一定基準以上の実績の確保や事務品質の向上のため、成果に見合った「営業品質・事務報奨」を合わせた手数料となっています。
かんぽ生命保険とは、代理店手数料規程等を定めており、募集した新契約に応じて支払われる「募集手数料」、簡易生命保険契約の継続に応じて支払われる「継続手数料」、保有契約件数等に応じて支払われる「維持・集金手数料」、総括代理店契約業務に対して支払われる「総括代理店手数料」が設定されています。
また、一定基準以上の実績の確保や契約維持管理のための活動促進等のため、成果に見合った「ボーナス手数料」等のインセンティブ手数料が設定されています。
なお、募集手数料は複数年、継続手数料は最長10年の分割払いとなっており、維持・集金手数料に設定されている単価は、実地調査に基づく所要時間や、これに係る人件費等を基に算出されており、原則3年ごとに改正を実施しております。
過去5年間の手数料推移は以下のとおりです。
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(単位:億円) |
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平成25年3月期 |
平成26年3月期 |
平成27年3月期 |
平成28年3月期 |
平成29年3月期 |
ゆうちょ銀行 |
6,095 |
6,072 |
6,024 |
6,094 |
6,124 |
かんぽ生命保険 |
3,785 |
3,671 |
3,603 |
3,783 |
3,927 |
(注) かんぽ生命保険の平成28年3月期以前の手数料額合計には営業支援金を含んでいるため、かんぽ生命保険が本書提出日と同日付で提出する有価証券報告書に記載されている手数料額と一致しません。
なお、営業支援金とは、保険商品の募集促進を目的として覚書に基づきかんぽ生命保険から日本郵便に提供(金額は両社の協議により決定)されるものであり、日本郵便はその使途についてはかんぽ生命保険に報告します。
(参考2) 管理機構と契約している業務委託契約の関係は以下のとおりになります。
① 郵便貯金管理業務委託契約
② 簡易生命保険管理業務委託契約
(7) 郵便局局舎の賃貸借契約
日本郵便は、日本郵便の営業所である郵便局を関係法令に適合するように設置するため、15,342局の郵便局局舎(平成29年3月31日現在)について賃貸借契約を締結しております。このうち従業員等との間で賃貸借契約を締結している局舎の数が5,085局となっておりますが、これは明治初期の国家財政基盤が不安定な時代にあって、予算的な制約を乗り越え、郵便を早期に全国に普及させるため、地域の有力者が業務を請け負い、郵便局の局舎として自宅を無償提供したことが起源となっているものです。また、昭和23年4月に従業員の局舎提供義務が廃止されたことに伴い、すべての郵便局局舎について賃貸借契約を締結することといたしました。その後、郵便局の新規出店、店舗配置の見直し等を通じた郵便局ネットワークの最適化を推進しており、賃貸借契約についても必要に応じて見直しを行い、現在に至っております。
郵便局局舎の賃借料については、従業員等との賃貸借契約を含め、積算法又は賃貸事例比較法に基づき算定しており、定期的に不動産鑑定士による検証等の見直しを実施しています。最近5年間の賃借料総額の実績は、平成24年度分622億円、平成25年度分613億円、平成26年度分600億円、平成27年度分600億円、平成28年度分597億円になっています。
一部の郵便局局舎の賃貸借契約については、日本郵便の都合で、その全部又は一部を解約した場合で、貸主が当該建物を他の用途に転用することが出来ず損失を被ることが不回避な場合には、貸主から補償を求めることが出来る旨を契約書に記載しております。解約補償額は、貸主が郵便局局舎に対して投資した総額のうち、解約時における未回収投資額を基礎に算出することとしておりますが、平成29年3月31日現在、発生する可能性のある解約補償額は87,418百万円です。なお、日本郵便の都合により解約した場合であっても、局舎を他用途へ転用する等のときは補償額を減額することから、全額が補償対象とはなりません。
賃貸借契約の契約期間は、平成22年6月までに締結した契約については1年間の自動更新となっておりますが、これまで郵便局局舎は長期間、使用しているという実態を踏まえ経済合理性の観点から、長期賃貸を前提とした契約内容に見直しを行ったため、平成22年7月以降に締結する契約については、税法上の耐用年数に10年を加えた年数としております。
(8) 簡易郵便局との窓口業務等の委託契約
日本郵便は、簡易郵便局受託者(平成29年3月31日現在、3,885者)との間で、郵便窓口業務及び印紙の売りさばきに関する業務の委託契約、荷物の運送の取扱いに関する業務の委託契約、銀行代理業に係る業務の再委託契約、郵便貯金管理業務の再再委託契約、生命保険契約維持管理業務の再委託契約、簡易生命保険管理業務の再再委託契約及びカタログ販売等業務に係る委託契約(受託者によっては各契約の一部)を締結しております。なお、簡易郵便局との窓口業務等の委託契約の期間は3年間であります。
また、かんぽ生命保険は、簡易郵便局受託者(平成29年3月31日現在、599者)との間で、生命保険募集委託契約を締結しております。
(参考) 簡易郵便局受託者の資格については、簡易郵便局法の規定により、禁錮以上の刑に処せられた者で、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しないもの等を除く、以下の者でなければならないと定められております。
① 地方公共団体
② 農業協同組合
③ 漁業協同組合
④ 消費生活協同組合(職域による消費生活協同組合を除く。)
⑤ ①から④までの者のほか、十分な社会的信用を有し、かつ、郵便窓口業務及び印紙の売りさばきに関する業務を適正に行うために必要な能力を有する者
該当事項はありません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績の分析
当連結会計年度の連結経常収益は、銀行事業収益は金利が低位で推移するなど厳しい経営環境下、前期比71,937百万円減の1,895,552百万円、生命保険事業収益は保有契約の減少等により、前期比946,281百万円減の8,659,363百万円となりました。一方、郵便事業収益は郵便の取扱収入、ゆうパック・ゆうメールの増加や、受託業務手数料の増加等により前期比100,784百万円増の2,524,315百万円となりましたが、連結経常収益は、前期比931,006百万円減の13,326,534百万円となりました。連結経常利益に、特別利益、特別損失(のれん等その他の減損損失、生命保険業における価格変動準備金繰入額等)、契約者配当準備金繰入額等を加減した親会社株主に帰属する当期純損失は28,976百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益425,972百万円)となりました。
当連結会計年度において、資源価格の下落及び中国経済・豪州経済の減速等を受け、トール社の業績は前年実績を下回る水準で推移しており、今後の業績見通しを見直した結果、将来キャッシュ・フローが大幅に減少する見込みとなったことから、のれん等及び有形固定資産の一部の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額である400,328百万円(のれん368,213百万円、商標権24,113百万円、有形固定資産8,002百万円)を減損損失として特別損失に計上しております。
このような状況を受け、平成29年1月にトール社の経営陣を刷新し、人員削減や部門の統廃合等によるコスト削減施策を中心に、業績回復・将来の成長への基盤を整えるための対策を講じているところです。
当社としましては、引き続きトール社をグローバル展開のための中核と位置づけ、早急に業績を回復しグループの企業価値向上に資するよう構造改革を進めていきます。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
前期比 |
経常収益 |
14,257,541 |
13,326,534 |
△931,006 |
郵便事業収益 |
2,423,530 |
2,524,315 |
100,784 |
銀行事業収益 |
1,967,489 |
1,895,552 |
△71,937 |
生命保険事業収益 |
9,605,645 |
8,659,363 |
△946,281 |
その他経常収益 |
260,875 |
247,302 |
△13,572 |
経常利益 |
966,240 |
795,237 |
△171,003 |
特別利益 |
15,200 |
10,268 |
△4,932 |
特別損失 |
132,493 |
481,938 |
349,444 |
うち、減損損失 |
13,396 |
419,479 |
406,082 |
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△) |
425,972 |
△28,976 |
△454,949 |
なお、セグメント別の状況については「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (1) 業績」をご参照ください。
(2) 財政状態の分析
① 資産の部
資産の部合計は、前連結会計年度末比1,215,465百万円増の293,162,545百万円となりました。
主な要因は、現金預け金5,054,507百万円の増、銀行業及び生命保険業における債券貸借取引支払保証金1,307,807百万円の増の一方、銀行業及び生命保険業における有価証券5,399,809百万円の減、銀行業及び生命保険業におけるコールローン718,837百万円の減によるものです。
② 負債の部
負債の部合計は、前連結会計年度末比1,436,972百万円増の278,207,964百万円となりました。
主な要因は、銀行業における貯金1,914,130百万円の増、銀行業及び生命保険業における債券貸借取引受入担保金1,811,324百万円の増の一方、生命保険業における責任準備金2,187,268百万円の減によるものです。
③ 純資産の部
純資産の部合計は、前連結会計年度末比221,506百万円減の14,954,581百万円となりました。
主な要因は、銀行業及び生命保険業等における繰延ヘッジ損益269,442百万円の増の一方、利益剰余金231,801百万円の減、銀行業及び生命保険業等におけるその他有価証券評価差額金213,018百万円の減によるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況については、「第2 事業の状況 1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(4) 経営者の問題意識と今後の方針
当社は、日本郵便、ゆうちょ銀行及びかんぽ生命保険の経営の基本方針の策定及び実施の確保並びに株主としての権利の行使を行うとともに、グループ各社が個別に実施するよりもグループ内で1カ所に集約したほうが効率的な実施が見込まれる間接業務を事業子会社等から受託して実施することにより事業子会社等の業務を支援するほか、病院及び宿泊施設の運営等を行うことにより、郵政ネットワークの安心、信頼を礎として、民間企業としての創造性、効率性を最大限発揮しつつ、お客さま本位のサービスを提供し、地域のお客さまの生活を支援し、お客さまと社員の幸せを目指します。
また、経営の透明性を自ら求め、規律を守り、社会と地域の発展に貢献できるよう努めていくことを基本として会社経営を行っていきます。なお、その業務の運営に当たっては、日本郵政株式会社法第5条第1項に規定される、郵便の役務、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務並びに簡易に利用できる生命保険の役務を利用者本位の簡便な方法により郵便局で一体的にかつあまねく全国において公平に利用できるようにする責務を果たしてまいります。
当社グループの企業価値向上を目指し、子会社の収益力強化策や更なる経営効率化等が着実に進展するようグループ運営を行い、当社グループ各社が抱える経営課題については、持株会社として、各社と連携を深めながら、必要な支援を行い、その解消に努めます。