第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当連結会計年度における世界経済は、アジア地域では、中国やタイ、インドネシアにおいて景気に減速傾向がみられたものの、米国においては、景気の緩やかな回復基調が続きました。

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善傾向にあるものの、個人消費や設備投資に伸び悩みがみられました。

 当社グループを取り巻く事業環境は、為替水準が前年度に対して円高で推移したほか、銅価格をはじめとする主要金属の価格下落や、国内におけるセメント需要の減少の影響等がありました。

 このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画(2014-2016年度)「Materials Premium(マテリアル・プレミアム)2016~No.1企業集団への挑戦~」において全社成長戦略として掲げている「成長基盤の強化」、「グローバル競争力の強化」及び「循環型ビジネスモデルの追求」に基づき引き続き諸施策を実施し、海外事業の強化や事業の選択と集中を図ってまいりました。

 この結果、当連結会計年度は、連結売上高は1兆3,040億68百万円(前年度比8.0%減)、連結営業利益は597億61百万円(同15.1%減)、連結経常利益は639億25百万円(同11.8%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は283億52百万円(同53.8%減)となりました。

 セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の報告セグメントごとの営業利益は、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。

 

(セメント事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,975

1,775

△199

(△10.1%)

営業利益

201

209

7

(3.9%)

経常利益

197

205

8

(4.1%)

 

 国内では、人手不足等による工事の遅れや首都圏における民需の停滞等の影響により、市場全体の需要は減少し、販売数量は減少しました。また、事業再編により、売上高が減少しました。

 米国では、生コンの販売数量は、南カリフォルニア地区における積極的な拡販活動により、増加しました。また、生コン販売数量増加により、セメントの販売数量は増加しました。なお、販売価格の見直しを実施したことから、セメントの販売価格は上昇しました。

 中国では、重度の大気汚染の対策として、セメント工場等において生産活動が制限されたことや山東省における不動産投資関連の需要が減少したことなどから、販売数量は減少しました。なお、事業全体のセメント生産量は、11.6百万トン(前年度並み)となりました。

 以上により、前年度に比べて事業全体の売上高は減少したものの、営業利益は増加しました。経常利益は、営業利益が増加したことから、増加しました。

 

(金属事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

6,887

6,294

△592

(△8.6%)

営業利益

242

173

△68

(△28.4%)

経常利益

270

275

4

(1.7%)

 銅地金は、為替水準が前年度に対して円高で推移したことや硫酸価格の下落の影響等により、減収減益となりました。なお、事業全体の電気銅生産量は、543千トン(前年度比31千トン増産)となりました。

 金及びその他の金属は、鉱石中の含有量の減少により減産となったものの、コスト削減等により、減収増益となりました。

 銅加工品は、自動車向け製品等の販売数量が増加したものの、円高等により、減収増益となりました。

 以上により、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、受取配当金及び持分法による投資利益が増加したことから、増加しました。

 

(加工事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,516

1,434

△82

(△5.4%)

営業利益

160

117

△42

(△26.5%)

経常利益

149

99

△50

(△33.8%)

 超硬製品は、海外の販売が減少したことに加えて、為替水準が前年度に対して円高で推移した影響により、減収減益となりました。

 高機能製品は、自動車向け製品の販売が北米で堅調に推移したものの、国内の販売が減少したことから、減収減益となりました。

 以上により、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことから、減少しました。

 

(電子材料事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

702

630

△71

(△10.2%)

営業利益

31

24

△7

(△22.9%)

経常利益

63

28

△35

(△55.8%)

 機能材料及び化成品は、スマートフォン用LSI向け製品及びパワーモジュール向け製品の販売が減少したものの、半導体装置関連製品及びハイブリッド自動車向け化成品の販売が堅調に推移したことなどから、減収増益となりました。

 電子デバイスは、情報・通信機器向け製品の販売が減少したものの、家電向け製品及び光通信機器向け製品の販売が増加したことから、増収増益となりました。

 多結晶シリコンは、販売が減少したことから、減収減益となりました。

 以上により、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことに加えて、持分法による投資利益が減少したことから、減少しました。

 

(アルミ事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,586

1,559

△27

(△1.7%)

営業利益

43

78

35

(82.2%)

経常利益

36

74

38

(105.4%)

 飲料用アルミ缶は、ボトル缶の販売数量が増加したほか、原材料コストが低下しました。

 アルミ圧延・加工品は自動車向け製品の販売数量が増加しました。一方、売上高は地金相場の下落により減少しました。

 事業全体では、エネルギーコストが低下しました。

 以上により、前年度に比べて事業全体の売上高は減少し、営業利益は増加しました。経常利益は、営業利益が増加したことから、増加しました。

 

(その他の事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

2,432

2,182

△250

(△10.3%)

営業利益

103

101

△2

(△2.0%)

経常利益

99

71

△27

(△27.8%)

 エネルギー関連は、一部の水力発電所の更新工事終了により、売電量が増加しました。一方、石炭及び原子力関連の販売が減少したことから、減収増益となりました。

 家電リサイクルは、処理量は堅調に推移したものの、有価物処分単価の変動の影響により、減収減益となりました。

 エネルギー関連及び家電リサイクル以外の事業は、合算で減収減益となりました。

 以上により、前年度に比べてその他の事業全体の売上高及び営業利益は減少しました。経常利益は、営業利益が減少したことに加えて、持分法による投資損失が増加したことから、減少しました。

 なお、原子力・エンジニアリング関連部門の受注高は、835億円(前年度比228億円増)、受注残高は、425億円(同245億円増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益に加え、売上債権の減少などにより、1,155億円の収入(前期比31億円の収入減少)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に係る支出等により、265億円の支出(前期比34億円の支出減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動や投資活動の結果、889億円の収入となり、この収入を借入金の返済に充当したことなどにより、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、157億円の支出(前期比1,047億円の支出減少)となりました。

 以上に、換算差額等による増減を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、1,326億円(前期末比741億円の増加)となりました。

2【生産、受注及び販売の状況】

 「1 業績等の概要 (1) 業績」において、各事業のセグメント情報に関連付けて記載しております。

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

1.全社課題

 今後の世界経済につきましては、米国の経済成長の堅調な推移が期待されるものの、足許で米国の一部指標で減速傾向がみられるほか、朝鮮半島の政治情勢、中国経済の下振れや欧米の政治動向の影響等が懸念され、世界経済の先行きが不透明な状況にあります。

 今後のわが国経済につきましては、雇用・所得環境の改善が続き、景気の緩やかな回復が継続することが期待されるものの、海外の政治や経済の動向がわが国の景気の下振れリスクとなる可能性があります。

 今後の当社グループを取り巻く事業環境につきましては、輸出の増加等を背景とした国内景気の回復傾向がみられる一方で、足許の為替の円高、原油価格の上昇、主要金属価格の推移の不透明さ等が懸念されます。

 こうしたなかで、当社グループは、以下のとおり、10年後を見据えた「長期経営方針」と2017年度から2019年度までを対象とした「中期経営戦略」を策定し、企業価値の向上に向けて、諸施策を実施してまいります。

 

(1) 長期経営方針

 当社グループは、「人と社会と地球のために」という企業理念のもと、「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、循環型社会に貢献するリーディングカンパニー」をビジョンとしております。

 このビジョンの実現に向けて、長期経営方針として、中長期の目標(目指す姿)及び全社方針を以下のとおり定めております。

<中長期の目標(目指す姿)>

・国内外の主要マーケットにおけるリーディングカンパニー

・高い収益性・効率性の実現

・市場成長率を上回る成長の実現

<全社方針>

・事業ポートフォリオの最適化

・事業競争力の徹底追求

・新製品・新事業の創出

 

(2) 中期経営戦略(2017年度から2019年度)における経営方針

 中期経営戦略では、長期経営方針に定める全社方針を以下のとおり推進いたします。なお、当社の前中期経営計画の課題である「外部環境変化への対応」及び「戦略重視の体制づくり」を推進するため、従来の財務計画主体の「中期経営計画」から、成長戦略の立案・実行に重点を置いた「中期経営戦略」に変更いたしました。

a.事業ポートフォリオの最適化

 当社グループの事業を「安定成長事業」、「成長促進事業」及び「収益改善事業」の3つのカテゴリーに分け、各事業の特性に適した方向性を定め、課題を明確化した上で、事業の選択と集中を推進し資本効率の改善を図ります。安定成長事業は、セメント事業、金属(製錬)事業、リサイクル事業及び再生可能エネルギー事業で、コスト競争力の維持・向上等により、事業基盤の強化を図ります。成長促進事業は、金属(銅加工)事業及び加工事業で、周辺分野の事業展開やグローバル事業展開を図り、市場成長率を上回る成長を目指します。収益改善事業は、電子材料事業及びアルミ事業で、課題の解決に向け迅速に取り組み、今後の成長の方向性を定めます。

b.事業競争力の徹底追求

 コーポレート部門による支援体制の拡充により技術経営資源を最適活用し、事業部門の「ものづくり」の改善・革新等を行います。これにより、事業環境の変化を先取りし、他社よりも一歩抜きんでた存在になるための「別格化」や新製品・新製造技術の開発等の「新展開」を図り、事業競争力を徹底追求してまいります。

c.新製品・新事業の創出

 将来の収益基盤となる新しいビジネスの創出のため、当社グループが捉えるべき重要な社会ニーズを「次世代自動車」、「IoT・AI」及び「持続可能な豊かな社会の構築」とし、持続的成長の核となる新製品・新事業を創出・育成してまいります。

 

 また、以下を重点戦略とし、具体的施策を推進いたします。

・イノベーションによる成長の実現

・循環型社会の構築を通じた価値の創造

・成長投資を通じた市場プレゼンスの拡大

・継続的な改善を通じた効率化の追求

 

2.事業別課題

●セメント事業

 国内では、オリンピック関連やリニア中央新幹線(一部区間)建設工事等の大型プロジェクト工事が本格化する見通しであることから、2017年度のセメント国内需要は、前年度を上回る42,000千トン程度を想定しております。このような状況のもと、当社としては、大型プロジェクト需要を確実に取り込み、販売数量の確保に努めてまいります。

 米国では、民間部門の建設需要の増加がけん引する形でセメント・生コン需要の回復基調が継続すると見込んでおります。これらを背景に、セメント・生コンの販売数量の増加及び更なる価格の改定を実現させ、増収増益を目指します。

 

●金属事業

 足許の銅相場は堅調に推移しているものの、為替や株式市況と併せて、今後の動向を注視してまいります。

 銅加工品は、自動車向け製品等の需要が引き続き安定して推移すると見込まれます。

 このような状況のもと、引き続きエネルギーコストや固定費圧縮による損益分岐点の引き下げにより、相場環境に左右されない強固な体質への転換を進めてまいります。また、銅製錬においては、国内外の製錬所の安定操業に努めるとともに、金銀滓(E-Scrap)の処理量増加や取扱いが困難な廃棄物等を処理できる体制を構築するなど、リサイクル事業を拡大し、収益の改善を図ってまいります。銅加工品については、引き続き技術力と開発力を活かした合金開発を迅速に進めて販売競争力を高め、収益力を強化してまいります。

 

●加工事業

 超硬製品は、中国や北米の市場に回復の兆しがみられるなか、中長期的にも主要顧客である自動車関連産業や航空機関連産業を中心として需要が拡大すると見込まれます。このような状況のもと、営業拠点や製造拠点の増設や販売網の拡充を進めることに加え、産業別の受注活動に力点を置き、エンドユーザー向け直接販売の拡大を図るなど、営業活動の強化に努めてまいります。更に、主原料であるタングステンの安定調達に向けて、リサイクル比率の向上を図るなど、原料調達ソースの多様化に引き続き取り組んでまいります。

 高機能製品は、主要製品である焼結部品について、自動車関連産業の成長によって需要が拡大すると見込まれます。今後も生産拠点の生産性向上を図ることを基軸に、収益拡大に努めてまいります。

 

●電子材料事業

 機能材料及び化成品は、半導体装置関連製品の販売が引き続き堅調に推移することが予想されます。また、パワーモジュール向け製品の需要は増加しており、受注機会の増加が見込まれます。今後も各市場において顧客のニーズを先取りして、コアとなる技術力の活用並びに販売競争力及び顧客への提案力強化により、収益力強化に努めてまいります。

 電子デバイスは、情報・通信機器向け製品の販売が減少しておりますが、家電向け製品及び光通信機器向け製品の拡販により販売が堅調に推移しております。また、新型SPD(Surge Protective Device)を拡販していく予定としております。今後も新製品の早期投入及び一層のコスト削減により事業体質の強化に取り組んでまいります。

 多結晶シリコンは、安全で効率的な操業体制を確立し、品質向上、コスト削減に努め、需要低迷時でも収益を確保できる事業基盤の構築に努めてまいります。

 

●アルミ事業

 飲料用アルミ缶は、通常缶の安定受注に努めるとともに、戦略商品であるアルミボトル缶の販売の拡大を図ります。また、原材料の有利調達、品質の安定化及びコスト削減を推進してまいります。

 アルミ圧延・加工品は、国内では缶材、自動車向け製品及び電子材料向け製品の受注確保に努めるとともに、海外では需要増加が見込まれる自動車向け製品の拡販に取り組んでまいります。

 また、使用済みアルミ缶のリサイクル事業を積極的に推進してまいります。

 

 以上の諸施策の実施により、当社グループの総力を結集し、複合事業体の価値創造を推進してまいる所存であります。

 

3.会社の支配に関する基本方針

(1) 会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

 当社の支配権は、原則として当社株式の市場での自由な取引により決定されるべきものであり、株式の大規模買付等(下記(3)②(イ)において定義されます。以下同じとします。)の提案に応じるか否かのご判断についても、原則として、個々の株主の皆様の自由なご意思が尊重されるべきであると考えております。

 しかしながら、株式の大規模買付等の中には、企業価値・株主共同の利益、ひいては中長期的な株主価値(以下、単に「中長期的な株主価値」といいます。)を著しく損なう可能性のあるものや株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれのあるものなど、当社の中長期的な株主価値に資さないものも想定されます。また、当社は、当社株式の大規模買付等を行う者が、当社を取り巻く経営環境を正しく認識し、当社の企業価値の源泉を理解した上で、これを中長期的に確保し、向上させなければ、当社の中長期的な株主価値は毀損される可能性があると考えております。

 更に、株主の皆様の投資行動の自由をできる限り尊重すべきであることは言うまでもありませんが、当社としては、現在のわが国の公開買付制度は、株主の皆様が一定の大規模買付等に応じるか否かをご判断されるために必要な情報を取得し、検討するための時間と手続が必ずしも十分ではなく、中長期的な株主価値が害される可能性もあると考えております。

 以上のことから、当社は、上記のような当社の中長期的な株主価値を毀損する可能性のある大規模買付等を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては適切ではないものと考えております。このため、当社は、当社の中長期的な株主価値に反する大規模買付等を抑止するため、当社株式の大規模買付等が行われる場合に、不適切な大規模買付等でないかを株主の皆様がご判断するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者と交渉等を行ったりするための枠組みが必要であると考えております。

 

(2) 基本方針の実現に資する特別な取り組みの内容の概要

 当社は、当社の淵源である金属・石炭の鉱山事業で培った技術等をもとに様々な分野において事業を展開してきました。その結果、現在では、セメント、金属、加工、電子材料及びアルミ等の事業を行う複合事業集団となっております。また、当社は、様々な事業活動を通して社会に貢献することを企業理念の基本とし、これまで、総合素材メーカーとして、人々が生活する上で欠くことのできない基礎素材を世の中に供給してきました。更に、環境負荷の低減や循環型社会システム構築への貢献を目指し、豊かな社会をつくるために不断の努力を行ってまいりました。当社は、事業活動の発展はもとより、社会との共生も図りながら、株主、従業員、顧客、地域社会、サプライヤーその他多数の関係先を含むステークホルダーの皆様から更なる信頼を得ることにより、中長期的な株主価値の確保・向上に努めてまいりたいと考えております。

 このようななかにあって、当社グループは、中期経営計画(2014-2016)「Materials Premium 2016 ~No.1企業集団への挑戦~」において掲げている「成長基盤の強化」、「グローバル競争力の強化」及び「循環型ビジネスモデルの追求」という3つの全社成長戦略に基づき、諸施策を実施してまいりました。

 また、当社グループは、10年後を見据えた長期経営方針において、中長期の目標(目指す姿)を「国内外の主要マーケットにおけるリーディングカンパニー」、「高い収益性・効率性の実現」及び「市場成長率を上回る成長の実現」とし、その達成に向けた全社方針を「事業ポートフォリオの最適化」、「事業競争力の徹底追求」及び「新製品・新事業の創出」としております。今後も引き続き、2017年度から2019年度までを対象とした「中期経営戦略」に基づき、企業価値の向上に向けて、全社方針の推進のための諸施策を実施してまいります。

 

(3) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みの概要

 当社は、上記(2)記載の企業理念と諸施策のもと、今後も当社の中長期的な株主価値の最大化を追求してまいりますが、その一方で、上記(1)記載のような当社の中長期的な株主価値を毀損する可能性がある大規模買付等が行われる可能性も否定できないと考えております。そこで、当社は、2016年5月12日開催の当社取締役会において、「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」を従前のものから一部改定した上で更新すること(改定後の対応策を以下「新対応策」といいます。)を決議し、同年6月29日開催の当社第91回定時株主総会において、株主の皆様のご承認をいただきました。

 新対応策の概要は、次のとおりであります。なお、新対応策の詳細につきましては、2016年5月12日付のプレスリリース「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の更新について」において公表しておりますので、以下の当社ホームページをご参照下さい。

 http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/news/press/2016/16-0512b.pdf

①新対応策の基本方針

 当社は、中長期的な株主価値の確保・向上を目的として、当社株式の大規模買付等を行い、または行おうとする者に対し、遵守すべき手続を設定し、これらの者が遵守すべき手続があること、及び、これらの者に対して一定の場合には当社が対抗措置を発動することがあり得ることを事前に警告すること、並びに、一定の場合には当社が対抗措置を実際に発動することをもって当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)といたします。

②新対応策の内容

(イ)対象となる大規模買付等

 新対応策は、以下のa.またはb.に該当する当社株券等の買付けまたはこれに類似する行為(以下「大規模買付等」といいます。)がなされる場合を適用対象といたします。大規模買付等を行い、または行おうとする者(以下「買付者等」といいます。)は、予め新対応策に定められる手続に従わなければならないものといたします。

a.当社が発行者である株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付け

b.当社が発行者である株券等について、公開買付けに係る株券等の株券等所有割合及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付け

(ロ)意向表明書の当社への事前提出

 買付者等には、大規模買付等の実行に先立ち、当社取締役会に対して、新対応策に定める手続を遵守する旨の誓約文言等を日本語で記載した書面(以下「意向表明書」といいます。)を提出していただきます。

(ハ)情報の提供

 意向表明書をご提出いただいた場合には、当社は、買付者等に対して、当初提出していただくべき情報を記載した「情報リスト」を発送いたします。買付者等には、かかる「情報リスト」に従って十分な情報を当社に提出していただきます。

 また、上記の「情報リスト」の発送後60日間を、当社取締役会が買付者等に対して情報の提供を要請し、買付者等が情報の提供を行う期間(以下「情報提供要請期間」といいます。)として設定し、情報提供要請期間が満了した場合には、直ちに取締役会評価期間(下記(ホ)において定義されます。以下同じとします。)を開始するものといたします。ただし、買付者等から合理的な理由に基づく延長要請があった場合には、情報提供要請期間を必要に応じて最長30日間延長することができるものといたします。他方、当社取締役会は、買付者等から提供された情報が十分であると判断する場合には、情報提供要請期間満了前であっても、直ちに買付者等に情報提供完了通知(下記(ニ)において定義されます。以下同じとします。)を行い、取締役会評価期間を開始するものといたします。

(ニ)情報の開示

 当社は、買付者等から大規模買付等の提案がなされた事実とその概要を開示いたします。また、株主の皆様のご判断に必要であると認められる情報がある場合には、適切と判断する時点で開示いたします。

 また、当社は、買付者等による情報の提供が十分になされたと当社取締役会が認めた場合には、速やかにその旨を買付者等に通知(以下「情報提供完了通知」といいます。)するとともに、その旨を開示いたします。

(ホ)取締役会評価期間の設定

 当社取締役会は、情報提供完了通知を行った後または情報提供要請期間が満了した後、大規模買付等の評価・検討を開始いたします。当社取締役会による評価、検討、交渉、意見形成及び代替案立案のための期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)は、大規模買付等の態様に応じて最長60日間または最長90日間といたします。

 ただし、取締役会評価期間は当社取締役会が必要と認める場合または独立委員会の勧告を受けた場合には最長30日間延長できるものといたします。

(へ)独立委員会に対する諮問

 新対応策においては、対抗措置の発動等に当たって、当社取締役会の恣意的判断を排除するため、当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される独立委員会を設置しております。

 当社取締役会は、買付者等が新対応策に定める手続を遵守しなかった場合、または買付者等による大規模買付等が当社の中長期的な株主価値を著しく損なうものであると認められる場合であって、対抗措置を発動することが相当であると判断する場合には、対抗措置の発動の是非について、独立委員会に対して諮問するものといたします。

(ト)対抗措置の発動に関する独立委員会の勧告

 独立委員会は、当社取締役会から対抗措置の発動の是非に関する諮問があった場合には、当社取締役会に対して、対抗措置の発動の是非に関する勧告を行うものといたします。

(チ)取締役会の決議

 当社取締役会は、上記(ト)の独立委員会の勧告を最大限尊重し、対抗措置の発動に関する決議を行うものといたします。

(リ)株主意思確認総会の開催

 当社取締役会は、以下の場合には、株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、株主総会を開催し、対抗措置の発動に関する議案を付議するものといたします(かかる株主総会を以下「株主意思確認総会」といいます。)。

a.独立委員会が対抗措置の発動についての勧告を行うに際して、対抗措置の発動に関し株主総会の承認を予め得るべき旨の留保を付した場合

b.当社取締役会が、株主の皆様のご意思を確認することが相当であると判断した場合

 当社取締役会は、株主意思確認総会の決議に従って、対抗措置の発動に関する決議を行うものといたします。

(ヌ)大規模買付等の開始時期

 買付者等は、当社取締役会が株主意思確認総会を招集することを決定した場合には、当社取締役会が株主意思確認総会の決議に基づく対抗措置不発動の決議を行うまでは、大規模買付等を開始することはできないものといたします。また、株主意思確認総会が招集されない場合においては、取締役会評価期間の経過後にのみ大規模買付等を開始することができるものといたします。

(ル)対抗措置の中止または撤回

 当社取締役会は、対抗措置の発動を決議した場合であっても、以下の場合には、当該対抗措置の中止または撤回について、独立委員会に諮問するものといたします。

a.買付者等が大規模買付等を中止もしくは撤回した場合

b.当該対抗措置を発動するか否かの判断の前提となった事実関係等に変動が生じ、かつ、当社の中長期的な株主価値の確保・向上という観点から、当該対抗措置を維持することが相当でないと考えられる状況に至った場合

 当社取締役会は、独立委員会の勧告を最大限尊重し、当該対抗措置を維持することが相当でないと判断するに至った場合には、当該対抗措置の中止または撤回を決議いたします。

(ヲ)新対応策における対抗措置の具体的内容

 新対応策に基づいて発動する対抗措置は、原則として新株予約権の無償割当てといたします。

 当該新株予約権は、割当て期日における当社の株主に対し、その所有する当社普通株式1株につき1個の割合で割り当てられます。また、当該新株予約権には、買付者等別途定める要件に該当する非適格者は行使することができないという行使条件のほか、当社が非適格者以外の者が所有する新株予約権を取得し、これと引き替えに新株予約権1個につき1株の当社普通株式を交付することができる旨の取得条件等が付されることが予定されております。

(ワ)新対応策の有効期間、廃止及び変更

 新対応策の有効期間は、2019年6月開催予定の当社第94回定時株主総会終結の時までといたします。

 なお、かかる有効期間の満了前であっても、以下の場合には、新対応策はその時点で廃止されるものといたします。

a.当社の株主総会において新対応策を廃止する旨の議案が承認された場合

b.当社の取締役会において新対応策を廃止する旨の決議が行われた場合

 また、当社は、法令等の改正に伴うもの等の形式的な事項について、基本方針に反しない範囲で、新対応策を変更する場合があります。

 

(4) 上記(2)の取り組みが、上記(1)の基本方針に沿い、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないことに関する取締役会の判断及びその理由

 上記(2)の取り組みを通じて、当社の中長期的な株主価値を確保・向上させ、それを当社株式の価値に適正に反映させていくことにより、当社の中長期的な株主価値に反する大規模買付等は困難になるものと考えられ、上記(2)の取り組みは、上記(1)の基本方針に沿うものであると考えております。

 従って、上記(2)の取り組みは、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

 

(5) 上記(3)の取り組みが、上記(1)の基本方針に沿い、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないことに関する取締役会の判断及びその理由

 上記(3)の取り組みは、十分な情報の提供と十分な検討等の期間の確保の要請に応じない買付者等、及び当社の中長期的な株主価値を著しく損なう大規模買付等を行おうとする買付者等に対して対抗措置を発動できることとすることで、これらの買付者等による大規模買付等を防止するものであり、上記(1)の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みであります。また、上記(3)の取り組みは、当社の中長期的な株主価値を確保・向上させることを目的として、買付者等に対して、当該買付者等が実施しようとする大規模買付等に関する必要な情報の事前の提供、及びその内容の評価・検討等に必要な期間の確保を求めるために実施されるものです。更に、上記(3)の取り組みにおいては、株主の皆様のご意思を確認する手続の導入、独立性の高い委員により構成される独立委員会の設置及びその勧告の最大限の尊重、合理的かつ客観的な対抗措置発動要件の設定、株主意思確認総会の決議に基づく対抗措置の発動等の、当社取締役会の恣意的な判断を排し、上記(3)の取り組みの合理性及び公正性を確保するための様々な制度及び手続が確保されているものであります。

 従って、上記(3)の取り組みは上記(1)の基本方針に沿うものであり、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

4【事業等のリスク】

 当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、幅広い事業を展開しているため、業績及び財政状態は国内外の政治・経済・天候・市況・為替動向・法令等、様々な要因の影響を受けます。特に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2017年6月28日)現在において判断したものであります。

(1)事業再編

 当社グループは、事業の選択と集中を推進しており、収益性の高い事業には積極的に経営資源を投入するとともに、他社との提携も視野に入れた、事業の見直し、再編、整理に積極的に取り組んでおります。この過程において、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(2)市場・顧客動向

 当社グループは、様々な業界に対し、製品及びサービスを提供しておりますが、世界経済情勢の変化や顧客の市場の急速な変化と顧客の市場占有率の変化、顧客の事業戦略または商品展開の変更により、当社グループの製品等の販売が影響を受ける可能性があります。特に自動車及びIT関連業界は激しい価格及び技術開発競争にさらされており、当社グループは各般に亘るコストダウン、新製品・技術の開発に努めておりますが、業界と顧客市場の変化に的確に対応できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)非鉄金属相場、為替相場の変動等

 金属事業においては、主な収益源である外貨建の出資鉱山からの配当金及び製錬費等が非鉄金属相場、為替相場の変動や買鉱条件により影響を受けます。なお、たな卸資産に関しては、鉱石の調達から地金生産・販売に至る期間において、原料代に非鉄金属相場、為替相場の変動リスクを有します。

 また、アルミ事業、加工事業等の非鉄金属原材料、セメント事業の石炭等も国際商品であり、これら原材料及び原燃料の調達価格が非鉄金属や石炭等の相場、為替相場、海上運賃等の変動の影響を受けます。

(4)半導体市況の動向

 当社グループは、半導体業界向けに電子材料、多結晶シリコン等を供給しており、半導体市況の動向により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(5)有利子負債

 2017年3月期において、当社グループの有利子負債は5,282億円(短期借入金、1年以内償還予定の社債、社債、長期借入金の合計額。注記なき場合は以下同様)、総資産に対する割合は27.8%となっております。たな卸資産圧縮、資産売却等により財務体質改善に努めておりますが、今後の金融情勢が当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

(6)債務保証

 当社グループは、連結会社以外の関連会社等の金銭債務に対して、2017年3月期において288億円の債務保証を引き受けております。将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(7)保有資産の時価の変動

 保有する有価証券、土地、その他資産の時価の変動などにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

 

(8)退職給付費用及び債務

 従業員の退職給付費用及び債務は主に数理計算上で設定される前提条件に基づき算出しております。これらの前提条件は、従業員の平均残存勤務期間や日本国債の長期利回り、更に信託拠出株式を含む年金資産運用状況を勘案したものでありますが、割引率の低下や年金資産運用によって発生した損失が、将来の当社グループの費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。

(9)環境規制等

 当社グループは、国内外の各事業所において、環境関連法令に基づき、大気、排水、土壌、地下水等の汚染防止に努め、国内の休廃止鉱山については、鉱山保安法に基づき、坑廃水による水質汚濁の防止や集積場の安全管理等、鉱害防止に努めております。しかし、関連法令の改正や温室効果ガスの排出に対する数量規制等がなされた場合は、当社グループにおいて新たな費用負担が発生する可能性があります。

(10)海外活動等

 当社グループは、海外32の国・地域に生産及び販売拠点等を有しており、また、海外売上高も連結売上高の42.3%を占めておりますが、各国の政治・経済情勢や為替相場等のほか、貿易・通商規制、鉱業政策、環境関連規制、税制、その他予期しない法律または規制の変更及びその解釈の相違や現地提携先・パートナーの経営方針変更等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(11)知的財産権

 当社グループでは、知的財産権の重要性を認識し、その保護に努めておりますが、保護が不十分であった場合あるいは違法に侵害された場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。他方、他社の有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、万が一、他社の有する知的財産権を侵害したと認定され、損害賠償等の責任を負担する場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(12)製品の品質

 当社グループでは、高品質の製品の提供を目指し、品質管理には万全を期しております。しかし、予期しない事情により、大規模な製品回収等となった場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(13)労働安全衛生、設備事故等

 当社グループでは、労働安全衛生・防災保安管理体制といったソフト面と、運転・保守管理と設備安全化といったハード面の両面から労働災害及び生産設備等の事故防止の徹底を図っておりますが、万が一、重大な労働災害や設備事故等が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(14)情報管理

 当社グループでは、個人情報の取扱を含め情報管理の徹底を図っておりますが、万が一、情報漏洩等が発生した場合は、社会的信用失墜等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(15)訴訟等

 国内及び海外の現在または過去の事業に関連して、当社グループが現在当事者となっており、若しくは将来当事者となることのある訴訟、紛争、その他法的手続きに係る判決、和解、決定等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(16)電力調達

 原子力発電所の稼動停止に伴う輸入化石燃料費の増加や再生可能エネルギー賦課金の増加等による電気料金の値上げにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(17)その他

 上記のほか、取引慣行の変化、テロ・戦争・疫病・地震・洪水等の自然災害や不測の事態の発生により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

当社は、ルバタ・エスポー社及び同社子会社2社との間で、株式取得及び事業譲受により同社グループのSpecial Products事業部門を取得することに係る株式譲渡契約を2016年9月28日付で締結し、当社子会社であるMMCカッパープロダクツ社を通じて、同事業部門を2017年5月2日付で取得しております。

詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発活動は、基本的には各事業の基幹となる分野の研究を当社単独で、あるいは連結会社と連携をとりながら行い、各社固有の事業及びユーザーニーズに応える研究についてはそれぞれが単独で行っております。当社グループの研究開発としては、各セグメントと開発部が協力して、グループ開発の全体最適化を進めて、盤石な技術基盤の確立を図ってまいります。また、既存事業の技術・開発支援を行うとともに、これからの新事業や新材料を創りだす等のイノベーションを推進してまいります。当社グループには、プロセス型事業とプロダクト型事業があり、それらに応じた研究開発を行ってまいります。特にプロダクト型事業においては、より顧客視点を重視したマーケティングを行うことによって、自社の製品、技術及びサービスの差別化を図ってまいります。

 なお、研究開発費の総額は、11,344百万円であります。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

(1)セメント事業

 セメント事業カンパニーにおける研究開発は、ディビジョンラボであるセメント研究所を中心とし、テーマを中央研究所と共同または分担する効率的体制で実施しており、主な内容は次のとおりであります。

 なお、研究開発に当たっては各事業所との連携により成果の早期移管を実現しております。また、他事業部との連携や、関係会社、大学等との共同研究を推進しております。

・セメント工場の安定操業及び廃棄物・副産物の利用拡大に関する技術開発

・セメント製造における省エネルギーに関する技術開発

・ニーズに対応したコンクリート技術開発

・コンクリート構造物の維持補修に関する技術開発

 研究開発費の金額は、819百万円であります。

(2)金属事業

 製錬事業の研究開発は、グループ会社を含む国内各事業所と当社の中央研究所、生産技術及び製錬部製錬技術開発センターとの緊密な連携により効率的に進めており、開発・製造が一体となって取り組んでおります。生産性向上・コスト低減、リサイクル技術の強化、湿式プロセスの改善を目的として研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・各種製錬プロセスの解析及び開発

・銅、貴金属及びレアメタルリサイクル技術の開発

・湿式プロセスを用いたメタル回収・精製技術の開発

 また、銅加工事業では、当社の中央研究所及び銅加工技術部銅加工開発センターを中心とし、基盤技術の強化はもとより、製造プロセスの研究開発や新材料の研究開発を中心テーマとして研究開発活動を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・高導電性端子コネクター用銅合金及び製造プロセス開発

・各種シミュレーション技術の開発と応用(鋳造/加工/組織制御/熱処理)

・ROX素材を活かしたプロセス及び商品開発
 (※ROX:SCR法により製造される無酸素銅荒引銅線)

 研究開発費の金額は、1,286百万円であります。

(3)加工事業

 当社の中央研究所、筑波製作所、岐阜製作所、明石製作所、連結子会社である日本新金属㈱、三菱日立ツール㈱及び㈱ダイヤメットを中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・工具材料である超硬合金・サーメット・CBN焼結体の材料開発、硬質皮膜のコーティング技術開発

・刃先交換式切削工具、機能性コーティング膜を有する超硬ドリル・エンドミルの設計及び開発

・精密工具、微細加工用工具の開発、IT市場向け超精密耐摩耗工具、鉱山・都市開発工具の開発

・超硬工具の主原料であるタングステンカーバイド粉の開発

・廃超硬工具スクラップからタングステンを回収・分離するリサイクル技術の研究開発

・医療分野用途の発砲金属の研究開発

・エコカー部品を中心とした高精度、高強度機械部品の開発

・ハイブリッド車・EV車等エコカー向けのリアクトルコア、モーターコアの開発

・自動車の電動化・低燃費化に伴い要求が高まる耐熱・耐食軸受の開発

 研究開発費の金額は、499百万円であります。

(4)電子材料事業

 当社の中央研究所、三田工場、三菱マテリアル電子化成㈱、セラミックス工場、四日市工場で機能材料、化成品、電子デバイス、多結晶シリコン各分野の研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・高機能スパッタリングターゲット材の開発

フラットパネルディスプレイ用材料の開発

・高機能・超低アルファ線はんだ材の開発

・高信頼性絶縁回路基板の開発

・MEMS用圧電体膜ゾルゲル液の開発

・自動車用LEDヘッドランプモジュールの開発

・導電性、光機能性を有した粉体とその応用製品の開発

半導体プロセス並びに電子材料用フッ素系材料の開発

・親水撥油特性を有するフッ素系化合物の開発

・大型シリコン部材の開発

サージアブソーバの開発

・チップサーミスタ、サーミスタセンサの開発

・チップアンテナの開発

・高品位多結晶シリコンの開発

 研究開発費の金額は、927百万円であります。

(5)アルミ事業

 ユニバーサル製缶㈱開発部・技術部並びに三菱アルミニウム㈱研究開発部を中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・缶胴、ボトル、缶蓋及びキャップの軽量化・用途拡大

・印刷技術、加飾技術の高度化

生産設備の生産効率向上及び増速化

成形性に優れる缶材の開発

・自動車軽量化を目的とした板・押出材の開発

・各種熱交換器用素材の開発

・エレクトロニクス分野における板・箔材の開発

・素材製造技術、用途に応じた加工・成型・接合・表面処理技術の向上

・各種シミュレーション技術の開発

 研究開発費の金額は、2,624百万円であります。

(6)その他の事業

 当社のエネルギー事業(那珂エネルギー開発研究所等を含む)においては、エネルギー関連(原子力、地熱等)に関する技術開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・転換・再転換や再処理等原子燃料サイクルの高度化に係る技術開発

・原子燃料サイクル技術を活用した有価金属等精製抽出に係る技術開発

・福島原発事故に伴う廃棄物や放射性廃棄物の処理、処分、リサイクル等の技術開発

・地熱抗井内の気液二相流の非定常流れの数値解析

 研究開発費の金額は、333百万円であります。

 また、各セグメントにおける研究開発以外に、当社の中央研究所では、情熱と、顧客視点、スピードをキーワードにイノベーションをおこしていくことを研究開発の運営方針として、これまでに蓄積してきた材料の分析評価やコンピュータ解析による材料・プロセス・製品開発支援などの基盤技術と、反応プロセス、金属・加工、界面・薄膜のコア技術を活用した開発を行っております。足許では、各事業のNo.1・オンリーワンに貢献する新製品・新技術をタイムリーに生み出してまいります。中長期的には、事業の柱となる新事業開発を推進し、長期的には夢のある将来技術にも果敢にチャレンジしてまいります。主なテーマは以下のとおりであります。

・セメントキルンの廃棄物増処理設計技術

・次世代自動車の耐高電圧・大電流用Cu-Mg系固溶強化型銅合金

・レーザーを用いた高精度切削工具の精密形態形成技術

・高硬度鋼切削加工用コーテッドCBN材種

・パワーデバイス制御用Agフリー銅回路付きセラミックス絶縁基板

・次世代パワーモジュール用焼結型接合材料

・屈曲性を備えた世界最薄フレキシブルサーミスタセンサ

・インフラ設備など電源回路防護素子の高サージ耐量円筒型ガスアレスタ

・薄型テレビのリサイクル用分解システム

・高効率なレアアース磁石回収精製技術

 研究開発費の金額は、4,852百万円であります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(2017年6月28日)現在において判断したものであります。

(1) 当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析

① 経営成績

 当連結会計年度における経営成績の概況については、「1 業績等の概要」に記載しております。

② 財政状態

 当連結会計年度末の総資産残高は、前期末比 1,035億円(5.8%)増加し、1兆8,969億円となりました。流動資産は、現金及び預金の増加等により、前期末比 849億円(10.9%)増加の 8,674億円となりました。固定資産は、投資有価証券の増加等により、前期末比 186億円(1.8%)増加の 1兆294億円となりました。

 負債残高は、前期末比 383億円(3.3%)増加し、1兆1,867億円となりました。流動負債は、短期借入金の増加等により、前期末比 103億円(1.5%)増加の 7,066億円となりました。固定負債は、社債の増加等により、前期末比 280億円(6.2%)増加の 4,800億円となりました。なお、借入金に社債、コマーシャル・ペーパーを加えた有利子負債残高については、前期末比 19億円(0.4%)増加の 5,282億円となりました。

 純資産残高は、親会社株主に帰属する当期純利益による利益剰余金の増加等により、前期末比 651億円(10.1%)増加の 7,101億円となりました。

 この結果、連結ベースの自己資本比率は、前期末の31.0%から32.8%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は 4,238.35円から 4,743.27円に増加しました。

 

(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「4 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(3) 事業戦略と見通し

 「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

(4) 流動性の管理方針

 当社グループは、キャッシュマネージメントシステムの導入等によるグループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上に努めております。

 当社グループの資金の状況については、「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

(5) 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社グループの経営陣は、収益力、有利子負債等グループの財政状況を認識し、現在の事業規模及び入手可能な情報に基づき経営資源の最も効率的な運用を行い、企業価値を最大限に高めるべく努めております。

 

 

(6) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しておりますが、その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループが採用している重要な会計方針(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載)のうち、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。

① 貸倒引当金、関係会社事業損失引当金の計上

 当社グループの保有する債権または関係会社への投資に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積もり、引当金を計上しておりますが、将来、債務者や被出資者の財務状況が悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。

② 有価証券の減損処理

 当社グループの保有する株式については、時価のある有価証券、時価のない有価証券ともに、合理的な判断基準を設定の上、減損処理の要否を検討しております。従って、将来、保有する株式の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。

③ 固定資産の減損処理

 当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 平成14年8月9日))及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号 平成15年10月31日)を適用しております。将来、経済環境の著しい悪化や市場価格の著しい下落の発生如何によっては、減損損失を計上する可能性があります。

④ 繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。