第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 当連結会計年度における世界経済は、アジア地域では、中国等における経済成長の鈍化傾向が継続したものの、米国において着実な景気回復が続いたことから、全体としては緩やかに回復しました。

 当連結会計年度におけるわが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動があった一方で、雇用・所得環境の改善等がみられ、全体としては緩やかな回復基調が続きました。

 当社グループを取り巻く事業環境は、建設工事の遅れや銅をはじめとする主要金属の海外相場下落といったマイナス要因があった一方で、事業全体において円安進行の影響がありました。

 このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画(2014-2016年度)「Materials Premium(マテリアル・プレミアム)2016 ~No.1企業集団への挑戦~」において全社成長戦略として掲げている「成長基盤の強化」、「グローバル競争力の強化」及び「循環型ビジネスモデルの追求」に基づき引き続き諸施策を実施し、アジアを中心とした新規海外拠点設立や事業の選択と集中等を図ってまいりました。

 この結果、当連結会計年度は、連結売上高は1兆5,172億65百万円(前年度比7.2%増)、連結営業利益は718億71百万円(同8.4%増)、連結経常利益は810億93百万円(同5.5%増)、連結当期純利益は561億47百万円(同6.8%増)となりました。

 セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 当連結会計年度より、報告セグメントの変更等を行っております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりです。なお、以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後の区分に組み替えた数値で比較しております。

 なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の報告セグメントごとの営業利益は、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。

 

(セメント事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,901

1,933

31

(1.6%)

営業利益

191

173

△17

(△9.0%)

経常利益

188

167

△20

(△11.1%)

 

 セメントは、国内では、建設業における人手不足等による公共工事の入札不調や民間工事の遅れに加えて、住宅工事の減少等の影響から、総需要は減少となり、輸出向けを除く販売数量は減少しました。米国では、南カリフォルニア地区における年初及び年末の天候不順の影響による建設工事の遅れ及び販売価格を重視した営業政策により、販売数量は減少しました。中国では、山東省における高速鉄道工事及び新空港建設工事等による需要が引き続き堅調に推移したものの、不動産投資関連の需要が減少したことなどから、販売数量は減少しました。なお、事業全体のセメント生産量は、12.0百万トン(前年度比0.3百万トン減産)となりました。

 また、セメント及び生コン販売価格改定により米国において売上高の増加があった一方で、操業コストの増加がありました。

 以上の結果、前年度に比べて事業全体の売上高は増加し、営業利益は減少しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が減少したことなどから、前年度に比べて減少しました。

 

(金属事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

7,281

8,116

834

(11.5%)

営業利益

239

248

8

(3.7%)

経常利益

380

328

△51

(△13.6%)

 銅地金は、国内製錬所における電力コスト等の操業コスト上昇に加えて、直島製錬所において定期炉修を実施したものの、インドネシア・カパー・スメルティング社が大幅に増産したことから、増収増益となりました。なお、事業全体の電気銅生産量は、555千トン(前年度比41千トン増産)となりました。

 金及びその他の金属は、鉱石中の含有量の増加により増産となったことなどから、増収増益となりました。

 銅加工品は、自動車向け製品等の販売が増加したものの、原子力発電設備向け製品の販売が減少したことなどから、増収減益となりました。

 以上の結果、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は増加しました。

 事業全体の経常利益は、受取配当金及び持分法による投資利益が減少したことから、前年度に比べて減少しました。

 

(加工事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,458

1,346

△112

(△7.7%)

営業利益

140

167

26

(18.7%)

経常利益

139

165

25

(18.4%)

 超硬製品は、国内の需要並びに欧米及び東南アジアを中心とした海外の需要が増加したことに加えて、積極的に販売促進に取り組んだ結果、増収増益となりました。

 高機能製品は、自動車向け製品の販売が北米向けを中心に好調を維持したものの、増産体制を整備するなかでコストが増加したことに加えて、平成26年1月に三菱マテリアルシーエムアイ㈱(現日本電産サンキョーシーエムアイ㈱)が子会社でなくなったこと及び平成26年7月にMMCスーパーアロイ㈱(現日立金属MMCスーパーアロイ㈱)が持分法適用関連会社になったことなどから、減収減益となりました。

 以上の結果、前年度に比べて事業全体の売上高は減少し、営業利益は増加しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が増加したことから、前年度に比べて増加しました。

 

(電子材料事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

677

670

△7

(△1.1%)

営業利益

40

44

4

(11.7%)

経常利益

21

72

50

(231.3%)

 機能材料は、半導体製造装置関連製品の販売が堅調に推移したものの、スマートフォン用LSI向け製品及びスマートフォン用ディスプレイ向け製品の販売が減少したことに加えて、ハイブリッド自動車向け製品の販売が減少したことから、増収減益となりました。

 電子デバイスは、白物家電向け製品の販売が増加したことから、増収増益となりました。

 多結晶シリコン及び化成品は、多結晶シリコンの販売が減少したものの、前年度に四日市工場の固定資産について減損損失を計上した結果、減価償却費が減少したことに加えて、化成品の自動車向け製品の販売が増加したことから、減収増益となりました。

 以上の結果、前年度に比べて事業全体の売上高は減少し、営業利益は増加しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が増加したことに加えて、持分法による投資利益が増加したことから、前年度に比べて増加しました。

 

(アルミ事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,515

1,594

78

(5.2%)

営業利益

55

56

1

(2.4%)

経常利益

47

51

3

(8.4%)

 アルミ缶は、ビール系飲料向けを中心に通常缶の需要が増加したことに加えて、ブラックコーヒー及び茶系飲料向けのボトル缶の需要が増加しました。

 アルミ圧延・加工品は、太陽電池向け製品の需要が減少したものの、自動車向け製品の需要が増加しました。

 事業全体ではエネルギーコスト及び原材料コストが上昇しました。

 以上の結果、前年度に比べて事業全体の売上高及び営業利益は増加しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が増加したことなどから、前年度に比べて増加しました。

 

(その他の事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

2,387

2,412

24

(1.0%)

営業利益

73

93

19

(26.6%)

経常利益

80

98

18

(22.5%)

 エネルギー関連は、石炭の販売が減少したものの、原子力関連の販売が増加したことから、減収増益となりました。

 E-waste(使用済みの電子電気製品)リサイクルは、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響縮小により、処理量が減少したことから、減収減益となりました。

 なお、原子力・エンジニアリング関連部門の受注高は、686億円(前年度比31億円増)、受注残高は、296億円(同47億円増)となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、業績が堅調に推移したことなどにより、1,080億円の収入(前期比51億円の収入増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に係る支出等により、423億円の支出(前期比24億円の支出減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動や投資活動の結果、657億円の収入となり、この収入を社債の償還に充当したことなどにより、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、422億円の支出(前期比270億円の支出減少)となりました。

 以上に、換算差額等による増減を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、920億円(前期末比300億円の増加)となりました。

2【生産、受注及び販売の状況】

 「1 業績等の概要 (1) 業績」において、各事業のセグメント情報に関連付けて記載しております。

3【対処すべき課題】

1.全社課題

 今後の世界経済につきましては、中国やその他の新興国の経済に鈍化傾向がみられるものの、全体としては先進国を中心に引き続き緩やかに回復していくことが予想されます。

 今後のわが国経済につきましては、原油価格の低下や円安効果による企業収益及び雇用・所得環境の改善等により、緩やかな景気回復が継続することが期待されます。

 今後の当社グループを取り巻く事業環境につきましては、国内景気が回復傾向にあるなかで、民間住宅投資や大企業を中心とする設備投資が底堅く推移することが期待される一方で、足許で下落傾向にある銅等の主要金属価格の今後の推移は不透明な状況にあります。

 こうしたなかにありまして、当社グループは、次のとおり、2020年代初頭までを視野に入れた「長期経営方針」と2014年度から2016年度までを対象とした中期経営計画(2014-2016)「Materials Premium 2016 ~No.1企業集団への挑戦~」に基づき、企業価値の向上に向けて、諸施策を実施してまいります。

 

(1) 長期経営方針

 近年、世界経済の複雑化、社会ニーズの多様化、技術革新スピードの加速化など、事業環境が大きく変化するなか、当社グループは、「人と社会と地球のために」という企業理念を確実に実現していくため、2020年代初頭に向けて、「ユニークな技術により、地球に新たなマテリアルを創造し、循環型社会に貢献するNo.1企業集団」となることを目指してまいります。

 当社グループの各事業は、この方針のもと、当社グループならではの技術により、価値ある製品・サービス等を創造し、その業界・市場において重要な地位を占める存在となるよう取り組んでまいります。

 

(2) 中期経営計画(2014年度から2016年度)における経営方針

 中期経営計画「Materials Premium 2016」は、長期経営方針に掲げる「No.1企業集団」となるための基盤強化に注力する第一段階の位置付けにあり、以下の各事項を全社成長戦略として定めております。

 

 ①成長基盤の強化

 「安全と健康は全てに優先する」を最重要事項として、安全管理体制の強化と安全風土・文化の醸成を図り、事業の成長に資する安定的な操業体制の構築に努めてまいります。

 また、M&Aや海外生産・販売拠点の拡充を中心に3カ年合計で1,000億円の戦略投資を実施することで成長を加速させるとともに、事業の継続的な選択と集中により収益力を向上させ、引き続き財務体質の改善を進めてまいります。

 

 ②グローバル競争力の強化

 既存の海外生産・販売拠点の拡充と新興国を中心とした新規生産・販売拠点の展開に注力することにより、成長するグローバル市場を獲得してまいります。

 また、特に自動車・エレクトロニクス産業を対象とした戦略的なマーケティングの実施により、新たな顧客や市場を開拓することで競争力を向上させてまいります。

 

 ③循環型ビジネスモデルの追求

 当社グループでは各事業において、川上(資源)から川中(素材)・川下(加工品)まで幅広く事業展開しておりますが、廃棄物を上流へ循環させ再利用するビジネスモデルを更に追求してまいります。

 また、従来処理が困難だった廃棄物についても、「マテリアル・プレミアム」(複合事業体として特徴のあるシナジー)を活かし再利用の促進に努め、社会の持続的な発展に寄与してまいります。

 

2.事業別課題

●セメント事業

 国内セメント事業につきましては、政府による公共事業費の減少を背景として官需が減少する見通しにあるものの、首都圏におけるオリンピック関連工事や、好調な企業収益を背景とした民間設備投資が見込まれることにより、国内の需要は平成26年度からほぼ横ばいで推移するものと予測されます。このような状況のもと、引き続き震災復興・オリンピック関連の大型プロジェクト等の需要を着実に取り込み、販売数量の確保に努めてまいります。

 米国セメント事業につきましては、米国経済の着実な回復を受け、引き続き民間を中心として需要が回復する見通しにあるため、販売数量の増加と価格の改定に努めるとともに、安定操業等による製造コスト削減にも取り組み、収益の拡大を進めてまいります。

 中国セメント事業につきましては、不動産投資関連の需要に回復がみられないことにより市場の競争が激化しているなか、高品質な製品を中心に価格の改定に取り組むとともに、製造・販売コスト削減を進めることで、収益力の強化に努めてまいります。

 

●金属事業

 銅鉱石は、米国経済が着実に回復している一方で、中国等の新興国の経済成長が鈍化傾向にあるため、今後の需給動向は予測し難い状況にあります。

 足許の銅相場は比較的低い水準で推移していますが、為替や株式市況と併せて、今後の動向を注視してまいります。

 銅加工品は、自動車向け製品の需要が引き続き堅調に推移すると見込まれます。

 このような状況のもと、金属事業では、引き続きエネルギーコストや固定費圧縮による損益分岐点の引き下げにより、相場環境に左右されない強固な体質への転換を進めてまいります。また、銅製錬においては、国内外製錬所の安定操業に努めるとともに、取り扱いが困難な廃棄物等を処理できる体制を構築するなど、リサイクル事業を拡大し、廃棄物の処理料収入等を増加させて収益の改善を図ってまいります。銅加工品については、引き続き技術力と開発力を活かした合金開発を迅速に進めて販売競争力を高め、収益力を強化してまいります。

 

●加工事業

 超硬製品は、中国をはじめとする新興国市場に経済成長鈍化に伴う停滞感がみられますが、受注環境は全体としては改善傾向にあり、中長期的にも主要顧客である自動車関連産業や航空機関連産業を中心として需要が拡大すると見込まれます。

 このような状況のもと、超硬製品については、高能率・高精度な商品開発と技術サービス体制を一層強化してまいります。また、新興国を中心に営業拠点の増設や販売網の拡充を進め、営業活動の強化に努めてまいります。更に、超硬製品の主原料であるタングステンの安定調達に向けて、リサイクル比率の向上を図るなど、原料調達ソースの多様化に引き続き取り組んでまいります。

 高機能製品は、平成26年7月にMMCスーパーアロイ㈱が、連結子会社から持分法適用関連会社となったことから、短期的には減収減益となることが予想されますが、自動車関連産業の成長により需要の拡大が見込まれる焼結部品について、海外生産拠点の拡充を推進することで、収益拡大に努めてまいります。

 

●電子材料事業

 機能材料は、太陽電池向け製品の販売について、当面は堅調に推移することが予想される一方で、半導体関連製品の需要は不透明な状況にあります。また、ハイブリッド自動車向け製品は、国内における消費税率引き上げの影響と米国におけるハイブリッド自動車の販売不振による需要減少が予想されますが、一方で自動車以外の産業向け製品の需要増加が見込まれます。今後も各市場において顧客のニーズを先取りして、コアとなる技術力の活用並びに販売競争力及び顧客への提案力強化により、収益力強化に努めてまいります。

 電子デバイスは、中国経済が鈍化傾向にあることにより、足許では白物家電向け製品の販売が減少しておりますが、産業用機器及び車載向け製品の拡販を進めております。今後も新興国における販売体制の強化、新製品の早期投入及び一層のコスト削減により、事業体質の強化に取り組んでまいります。

 多結晶シリコン及び化成品は、平成26年1月9日に発生した爆発火災事故により操業を停止し同年6月30日に操業を再開いたしました四日市工場において、安全管理体制の確立と操業の安定に一層努めてまいります。

 

●アルミ事業

 アルミ缶は、国内飲料市場全体の大きな需要増加は期待できないものの、通常缶の一層の安定受注に努めるとともに、ブラックコーヒー及び茶系飲料分野向けに戦略商品であるアルミボトル缶の積極的な販売の拡大を図ってまいります。更に、原料の有利調達、品質の安定化及びコスト削減等も引き続き積極的に推進してまいります。

 アルミ圧延・加工品は、国内では、缶材、自動車及び電子材料向け製品の安定受注に努めるとともに、海外における自動車向け製品の販売拡大に取り組んでまいります。

 また、従来より当社グループで取り組んでいる使用済みアルミ缶のリサイクル事業を積極的に推進し、循環型社会の構築に貢献してまいります。

 

 以上の諸施策の実施により、当社グループの総力を結集し、複合事業体の価値創造を推進してまいる所存であります。

 

3.会社の支配に関する基本方針

(1) 会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

 当社の支配権は、原則として当社株式の市場での自由な取引により決定されるべきものであり、株式の大規模買付等(下記(3)②(イ)において定義されます。以下同じとします。)の提案に応じるか否かのご判断についても、原則として、個々の株主の皆様の自由なご意思が尊重されるべきであると考えております。

 しかしながら、株式の大規模買付等の中には、企業価値・株主共同の利益、ひいては中長期的な株主価値(以下、単に「中長期的な株主価値」といいます。)を著しく損なう可能性のあるものや株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれのあるものなど、当社の中長期的な株主価値に資さないものも想定されます。また、当社は、当社株式の大規模買付等を行う者が、当社を取り巻く経営環境を正しく認識し、当社の企業価値の源泉を理解した上で、これを中長期的に確保し、向上させなければ、当社の中長期的な株主価値は毀損される可能性があると考えております。

 更に、株主の皆様の投資行動の自由をできる限り尊重すべきであることはいうまでもありませんが、当社としては、現在のわが国の公開買付制度は、株主の皆様が一定の大規模買付等に応じるか否かをご判断されるために必要な情報を取得し、検討するための時間と手続が必ずしも十分ではなく、中長期的な株主価値が害される可能性もあると考えております。

 以上のことから、当社は、上記のような当社の中長期的な株主価値を毀損する可能性のある大規模買付等を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては適切ではないものと考えております。このため、当社は、当社の中長期的な株主価値に反する大規模買付等を抑止するため、当社株式の大規模買付等が行われる場合に、不適切な大規模買付等でないかを株主の皆様がご判断するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者と交渉等を行ったりするための枠組みが必要であると考えております。

 

(2) 基本方針の実現に資する特別な取り組みの内容の概要

 当社は、当社の淵源である金属・石炭の鉱山事業で培った技術等をもとに様々な分野において事業を展開してきました。その結果、現在では、セメント、金属、加工、電子材料、資源・リサイクル及びアルミ等の事業を行う複合事業集団となっております。また、当社は、様々な事業活動を通して社会に貢献することを企業理念の基本とし、これまで、総合素材メーカーとして、人々が生活する上で欠くことのできない基礎素材を世の中に供給してきました。更に、環境負荷の低減や循環型社会システム構築への貢献を目指し、豊かな社会をつくるために不断の努力を行ってまいりました。当社は、事業活動の発展はもとより、社会との共生も図りながら、株主、従業員、顧客、地域社会、サプライヤーその他多数の関係先を含むステークホルダーの皆様から更なる信頼を得ることにより、中長期的な株主価値の確保・向上に努めてまいりたいと考えております。

 このようななかにあって、当社グループは、2020年代初頭に向けた長期経営方針において、「ユニークな技術により、地球に新たなマテリアルを創造し、循環型社会に貢献するNo.1企業集団」を目指すこととしております。今後は、「No.1企業集団」の実現に向け、中期経営計画(2014-2016)「Materials Premium 2016 ~No.1企業集団への挑戦~」において、「成長基盤の強化」、「グローバル競争力の強化」及び「循環型ビジネスモデルの追求」を全社成長戦略とし、諸施策を実施してまいります。

 

(3) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みの概要

 当社は、上記(2)記載の企業理念と諸施策のもと、今後も当社の中長期的な株主価値の最大化を追求してまいりますが、その一方で、上記(1)記載のような当社の中長期的な株主価値を毀損する可能性がある大規模買付等が行われる可能性も否定できないと考えております。そこで、当社は、平成25年5月10日開催の当社取締役会において、「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」を従前のものから一部改定した上で更新すること(改定後の対応策を以下「新対応策」といいます。)を決議し、同年6月27日開催の当社第88回定時株主総会において、株主の皆様のご承認をいただきました。

 新対応策の概要は、次のとおりであります。なお、新対応策の詳細につきましては、平成25年5月10日付のプレスリリース「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の更新について」において公表しておりますので、以下の当社ホームページをご参照下さい。

 http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/01/01/13-0510.pdf

①新対応策の基本方針

 当社は、中長期的な株主価値の確保・向上を目的として、当社株式の大規模買付等を行い、または行おうとする者に対し、遵守すべき手続を設定し、これらの者が遵守すべき手続があること、及び、これらの者に対して一定の場合には当社が対抗措置を発動することがあり得ることを事前に警告すること、並びに、一定の場合には当社が対抗措置を実際に発動することをもって当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)といたします。

②新対応策の内容

(イ)対象となる大規模買付等

 新対応策は、以下のa.またはb.に該当する当社株券等の買付けまたはこれに類似する行為(以下「大規模買付等」といいます。)がなされる場合を適用対象といたします。大規模買付等を行い、または行おうとする者(以下「買付者等」といいます。)は、予め新対応策に定められる手続に従わなければならないものといたします。

a.当社が発行者である株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付け

b.当社が発行者である株券等について、公開買付けに係る株券等の株券等所有割合及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付け

(ロ)「意向表明書」の当社への事前提出

 買付者等には、大規模買付等の実行に先立ち、当社取締役会に対して、新対応策に定める手続を遵守する旨の誓約文言等を日本語で記載した書面(以下「意向表明書」といいます。)を提出していただきます。

(ハ)情報の提供

 意向表明書をご提出いただいた場合には、当社は、買付者等に対して、当初提出していただくべき情報を記載した「情報リスト」を発送いたします。買付者等には、かかる「情報リスト」に従って十分な情報を当社に提出していただきます。

 また、上記の「情報リスト」の発送後60日間を、当社取締役会が買付者等に対して情報の提供を要請し、買付者等が情報の提供を行う期間(以下「情報提供要請期間」といいます。)として設定し、情報提供要請期間が満了した場合には、直ちに取締役会評価期間(下記(ホ)において定義されます。以下同じとします。)を開始するものといたします。ただし、買付者等から合理的な理由に基づく延長要請があった場合には、情報提供要請期間を必要に応じて最長30日間延長することができるものといたします。他方、当社取締役会は、買付者等から提供された情報が十分であると判断する場合には、情報提供要請期間満了前であっても、直ちに情報提供要請期間を終了し、取締役会評価期間を開始するものといたします。

(ニ)情報の開示

 当社は、買付者等から大規模買付等の提案がなされた事実とその概要を開示いたします。また、株主の皆様のご判断に必要であると認められる情報がある場合には、適切と判断する時点で開示いたします。

 また、当社は、買付者等による情報の提供が十分になされたと当社取締役会が認めた場合には、速やかにその旨を買付者等に通知(以下「情報提供完了通知」といいます。)するとともに、その旨を開示いたします。

(ホ)取締役会評価期間の設定

 当社取締役会は、情報提供完了通知を行った後または情報提供要請期間が満了した後、大規模買付等の評価・検討を開始いたします。当社取締役会による評価、検討、交渉、意見形成及び代替案立案のための期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)は、大規模買付等の態様に応じて最長60日間または最長90日間といたします。

 ただし、取締役会評価期間は当社取締役会が必要と認める場合または独立委員会の勧告を受けた場合には最長30日間延長できるものといたします。

(へ)独立委員会に対する諮問

 新対応策においては、対抗措置の発動等に当たって、当社取締役会の恣意的判断を排除するため、当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される独立委員会を設置しております。

 当社取締役会は、買付者等が新対応策に定める手続を遵守しなかった場合、または買付者等による大規模買付等が当社の中長期的な株主価値を著しく損なうものであると認められる場合であって、対抗措置を発動することが相当であると判断する場合には、対抗措置の発動の是非について、独立委員会に対して諮問するものといたします。

(ト)対抗措置の発動に関する独立委員会の勧告

 独立委員会は、当社取締役会から対抗措置の発動の是非に関する諮問があった場合には、当社取締役会に対して、対抗措置の発動の是非に関する勧告を行うものといたします。

(チ)取締役会の決議

 当社取締役会は、上記(ト)の独立委員会の勧告を最大限尊重し、対抗措置の発動に関する決議を行うものといたします。

(リ)株主意思確認総会の開催

 当社取締役会は、以下の場合には、株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、株主総会を開催し、対抗措置の発動に関する議案を付議するものといたします(かかる株主総会を以下「株主意思確認総会」といいます。)。

a.独立委員会が対抗措置の発動についての勧告を行うに際して、対抗措置の発動に関し株主総会の承認を予め得るべき旨の留保を付した場合

b.当社取締役会が、株主の皆様のご意思を確認することが相当であると判断した場合

 当社取締役会は、株主意思確認総会の決議に従って、対抗措置の発動に関する決議を行うものといたします。

(ヌ)大規模買付等の開始時期

 買付者等は、当社取締役会が株主意思確認総会を招集することを決定した場合には、当社取締役会が株主意思確認総会の決議に基づく対抗措置不発動の決議を行うまでは、大規模買付等を開始することはできないものといたします。また、株主意思確認総会が招集されない場合においては、取締役会評価期間の経過後にのみ大規模買付等を開始することができるものといたします。

(ル)対抗措置の中止または撤回

 当社取締役会は、対抗措置の発動を決議した場合であっても、以下の場合には、当該対抗措置の中止または撤回について、独立委員会に諮問するものといたします。

a.買付者等が大規模買付等を中止もしくは撤回した場合

b.対抗措置を発動するか否かの判断の前提となった事実関係等に変動が生じ、かつ、当社の中長期的な株主価値の確保・向上という観点から、発動した対抗措置を維持することが相当でないと考えられる状況に至った場合

 当社取締役会は、独立委員会の勧告を最大限尊重し、当該対抗措置を維持することが相当でないと判断するに至った場合には、当該対抗措置の中止または撤回を決議いたします。

(ヲ)新対応策における対抗措置の具体的内容

 新対応策に基づいて発動する対抗措置は、原則として新株予約権の無償割当てといたします。

 当該新株予約権は、割当て期日における当社の株主に対し、その所有する当社普通株式1株につき1個の割合で割当てられます。また、当該新株予約権には、買付者等別途定める要件に該当する非適格者は行使することができないという行使条件のほか、当社が非適格者以外の者が所有する新株予約権を取得し、これと引き替えに新株予約権1個につき1株の当社普通株式を交付することができる旨の取得条件等が付されることが予定されております。

(ワ)新対応策の有効期間、廃止及び変更

 新対応策の有効期間は、平成28年6月開催予定の当社第91回定時株主総会終結の時までといたします。

 なお、かかる有効期間の満了前であっても、以下の場合には、新対応策はその時点で廃止されるものといたします。

a.当社の株主総会において新対応策を廃止する旨の議案が承認された場合

b.当社の取締役会において新対応策を廃止する旨の決議が行われた場合

 また、当社は、法令等の改正に伴うもの等の形式的な事項について、基本方針に反しない範囲で、新対応策を変更する場合があります。

 

(4) 上記(2)の取り組みが、上記(1)の基本方針に沿い、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないことに関する取締役会の判断及びその理由

 上記(2)の取り組みを通じて、当社の中長期的な株主価値を確保・向上させ、それを当社株式の価値に適正に反映させていくことにより、当社の中長期的な株主価値に反する大規模買付等は困難になるものと考えられ、上記(2)の取り組みは、上記(1)の基本方針に沿うものであると考えております。

 従って、上記(2)の取り組みは、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

(5) 上記(3)の取り組みが、上記(1)の基本方針に沿い、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないことに関する取締役会の判断及びその理由

 上記(3)の取り組みは、十分な情報の提供と十分な検討等の期間の確保の要請に応じない買付者等、及び当社の中長期的な株主価値を著しく損なう大規模買付等を行おうとする買付者等に対して対抗措置を発動できることとすることで、これらの買付者等による大規模買付等を防止するものであり、上記(1)の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みであります。また、上記(3)の取り組みは、当社の中長期的な株主価値を確保・向上させることを目的として、買付者等に対して、当該買付者等が実施しようとする大規模買付等に関する必要な情報の事前の提供、及びその内容の評価・検討等に必要な期間の確保を求めるために実施されるものです。更に、上記(3)の取り組みにおいては、株主の皆様のご意思を確認する手続の導入、独立性の高い委員により構成される独立委員会の設置及びその勧告の最大限の尊重、合理的かつ客観的な対抗措置発動要件の設定、株主意思確認総会の決議に基づく対抗措置の発動等の、当社取締役会の恣意的な判断を排し、上記(3)の取り組みの合理性及び公正性を確保するための様々な制度及び手続が確保されているものであります。

 従って、上記(3)の取り組みは上記(1)の基本方針に沿うものであり、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

4【事業等のリスク】

 当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、幅広い事業を展開しているため、業績及び財政状態は国内外の政治・経済・天候・市況・為替動向・法令等、様々な要因の影響を受けます。特に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(平成27年6月26日)現在において判断したものであります。

(1)事業再編

 当社グループは、事業の選択と集中を推進しており、収益性の高い事業には積極的に経営資源を投入するとともに、他社との提携も視野に入れた、事業の見直し、再編、整理に積極的に取り組んでおります。この過程において、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(2)市場・顧客動向

 当社グループは、様々な業界に対し、製品及びサービスを提供しておりますが、世界経済情勢の変化や顧客の市場の急速な変化と顧客の市場占有率の変化、顧客の事業戦略または商品展開の変更により、当社グループの製品等の販売が影響を受ける可能性があります。特に自動車及びIT関連業界は激しい価格及び技術開発競争にさらされており、当社グループは各般に亘るコストダウン、新製品・技術の開発に努めておりますが、業界と顧客市場の変化に的確に対応できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)非鉄金属相場、為替相場の変動等

 金属事業においては、主な収益源である外貨建の出資鉱山からの配当金及び製錬費等が非鉄金属相場、為替相場の変動や買鉱条件により影響を受けます。なお、たな卸資産に関しては、鉱石の調達から地金生産・販売に至る期間において、原料代に非鉄金属相場、為替相場の変動リスクを有します。
 また、アルミ事業、加工事業等の非鉄金属原材料、セメント事業の石炭等も国際商品であり、これら原材料及び原燃料の調達価格が非鉄金属や石炭等の相場、為替相場、海上運賃等の変動の影響を受けます。

(4)半導体市況の動向

 当社グループは、半導体業界向けに電子材料、多結晶シリコン等を供給しているほか、持分法適用関連会社である㈱SUMCOにおいて半導体用シリコンウェーハ事業を行っており、半導体市況の動向により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(5)有利子負債

 平成27年3月期において、当社グループの有利子負債は6,308億円(短期借入金、1年以内償還予定の社債、コマーシャル・ペーパー、社債、長期借入金の合計額。注記なき場合は以下同様)、総資産に対する割合は33.2%となっております。たな卸資産圧縮、資産売却等により財務体質改善に努めておりますが、今後の金融情勢が当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

(6)資金調達に関する重要事項

 当社グループの借入金のうち、シンジケート・ローン等に、その契約上一定水準以上の株主資本維持等を確約しているものがあります。当社または当社グループが財務状況悪化等により、これら確約を果たせない事態になった場合は、期限前弁済義務が生じる恐れがあり、その後の対応如何により、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

(7)債務保証

 当社グループは、連結会社以外の関連会社等の金銭債務に対して、平成27年3月期において354億円の債務保証を引き受けております。将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(8)保有資産の時価の変動

 保有する有価証券、土地、その他資産の時価の変動などにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(9)退職給付費用及び債務

 従業員の退職給付費用及び債務は主に数理計算上で設定される前提条件に基づき算出しております。これらの前提条件は、従業員の平均残存勤務期間や日本国債の長期利回り、更に信託拠出株式を含む年金資産運用状況を勘案したものでありますが、割引率の低下や年金資産運用によって発生した損失が、将来の当社グループの費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。

(10)環境規制等

 当社グループは、国内外の各事業所において、環境関連法令に基づき、大気、排水、土壌、地下水等の汚染防止に努め、国内の休廃止鉱山については、鉱山保安法に基づき、坑廃水による水質汚濁の防止や集積場の安全管理等、鉱害防止に努めております。しかし、関連法令の改正や温室効果ガスの排出に対する数量規制等がなされた場合は、当社グループにおいて新たな費用負担が発生する可能性があります。

(11)海外活動等

 当社グループは、海外29の国・地域に生産及び販売拠点等を有しており、また、海外売上高も連結売上高の39.5%を占めておりますが、各国の政治・経済情勢や為替相場等のほか、貿易・通商規制、鉱業政策、環境関連規制、税制、その他予期しない法律または規制の変更及びその解釈の相違や現地提携先・パートナーの経営方針変更等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(12)知的財産権

 当社グループでは、知的財産権の重要性を認識し、その保護に努めておりますが、保護が不十分であった場合あるいは違法に侵害された場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。他方、他社の有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、万が一、他社の有する知的財産権を侵害したと認定され、損害賠償等の責任を負担する場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(13)製品の品質

 当社グループでは、高品質の製品の提供を目指し、品質管理には万全を期しております。しかし、予期しない事情により、大規模な製品回収等となった場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(14)労働安全衛生、設備事故等

 当社グループでは、労働安全衛生・防災保安管理体制といったソフト面と、運転・保守管理と設備安全化といったハード面の両面から労働災害及び生産設備等の事故防止の徹底を図っておりますが、万が一、重大な労働災害や設備事故等が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(15)情報管理

 当社グループでは、個人情報の取扱を含め情報管理の徹底を図っておりますが、万が一、情報漏洩等が発生した場合は、社会的信用失墜等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(16)訴訟等

 国内及び海外の現在または過去の事業に関連して、当社グループが現在当事者となっており、若しくは将来当事者となることのある訴訟、紛争、その他法的手続きに係る判決、和解、決定等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(17)電力調達

 原子力発電所の稼動停止に伴う輸入化石燃料費の増加や再生可能エネルギー賦課金の増加等による電気料金の値上げにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(18)その他

 上記のほか、取引慣行の変化、テロ・戦争・疫病・地震等の自然災害や不測の事態の発生により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

(1)当社は、当社連結子会社である三菱マテリアルトレーディング㈱との間で、当社の宝飾品等の販売に関する事業を吸収分割により同社に承継させることを内容とする契約を平成26年9月26日付で締結し、当該吸収分割を平成27年1月1日に実施しました。

(2)当社は、日立金属㈱との間で、同社の完全子会社である日立ツール㈱の発行済株式の51%に相当する株式を当社が取得することを内容とした契約を平成26年9月26日付で締結し、当該株式を平成27年4月1日に取得しました。

(3)当社は、保有する㈱SUMCOの種類株式(優先株式)をすべて処理(償還請求等)するため、その実施に必要な事項を定めた「種類株式の処理に関する覚書」を㈱SUMCO、新日鐵住金㈱及びジャパン・インダストリアル・ソリューションズ第壱号投資事業有限責任組合との間で、平成27年3月3日付で締結しました。なお、当該種類株式は、同覚書の合意事項に従い、同年5月11日に償還を受けました。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発活動は、基本的には各事業の基幹となる分野の研究を当社単独で、あるいは連結会社と連携をとりながら行い、各社固有の事業及びユーザーニーズに応える研究についてはそれぞれが単独で行っております。研究開発の内容としては、既存事業の領域拡大を主体としながら、当社事業の基礎となる材料の基盤技術とコア技術の高度化、最先端技術の育成を進めております。また、新興国市場をターゲットとした開発テーマにも重点的に取り組み、各セグメントと技術開発部が協力して、お客さまにとって魅力ある新製品や新規プロセスの開発に取り組んでおります。当社の技術・開発戦略としては、「顧客視点」と「スピード」をキーワードに、当社グループならではの「ユニークな技術」をベースとして、地球に新たな「マテリアル」すなわちグローバルマーケットで勝ち抜く「差別化された製品・技術」を創造して、「No.1企業集団への挑戦」を支えてまいります。特に、自動車、エレクトロニクス、エネルギー、環境リサイクルの注力分野における次期ニーズを取り込み、中長期的に事業の柱となる新事業開発を推進してまいります。

 なお、研究開発費の総額は、10,530百万円であります。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

(1)セメント事業

 セメント事業カンパニーにおける研究開発は、ディビジョンラボであるセメント研究所を中心とし、テーマを中央研究所と共同または分担する効率的体制で実施しており、主な内容は次のとおりであります。

 なお、研究開発に当たっては各事業所との連携により成果の早期移管を実現しております。また、他事業部との連携や、関係会社との共同開発を推進するとともに、大学との共同研究や国からの委託事業、補助事業も実施しております。

・セメント工場の安定操業及び廃棄物・副産物の利用拡大に関する技術開発

・セメント製造における省エネルギー(CO削減)に関する技術開発

・鉱産品事業に関わる技術開発(石灰石骨材、銅スラグ骨材)

・コンクリートの差別化(高強度、低収縮等)に関する技術開発

・コンクリート構造物のメンテナンス(補修)に関する技術開発

 研究開発費の金額は、827百万円であります。

(2)金属事業

 銅製錬事業の研究開発は、国内事業所と当社の中央研究所及び製錬部製錬技術開発センターとの緊密な連携により効率的に進めており、開発・製造が一体となって取り組んでおります。生産性向上・コスト低減、リサイクル技術の強化、湿式プロセスの開拓、高機能新材料の生産増強を目的として研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・各種製錬プロセスの解析及び開発

・銅、貴金属及びレアメタルリサイクル技術の開発

・湿式プロセスを用いた高機能新材料製造技術の開発

 また、銅加工事業では、当社の中央研究所及び銅加工事業部技術部銅加工開発センターを中心とし、基盤技術の強化はもとより、製造プロセスの研究開発や新材料の研究開発を中心テーマとして研究開発活動を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・高性能端子コネクター用銅合金及び製造プロセス開発

・各種シミュレーション技術の開発と応用(鋳造/加工/組織制御/熱処理)

・ROX素材を活かしたプロセス及び商品開発
 (※ROX:SCR法により製造される無酸素銅荒引銅線)

 研究開発費の金額は、1,374百万円であります。

(3)加工事業

 当社の中央研究所、筑波製作所、岐阜製作所、明石製作所、日本新金属㈱を中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・CVD・PVDコーティング技術、超硬合金・サーメット・CBN焼結体の材料開発

・刃先交換式切削工具、機能性コーティング膜を有する超硬ドリル・エンドミルの開発

・廃超硬工具からタングステンを回収・分離する技術の開発

・IT市場向け超精密耐摩耗工具、微細加工用工具の開発

・タングステンカーバイド粉の開発

・蓄電池用等の発泡金属の研究開発

・ハイブリッド・EV用リアクトルコアの開発

・各用途に合わせた高機能焼結含油軸受の開発

 研究開発費の金額は、591百万円であります。

(4)電子材料事業

 当社の中央研究所、三田工場、セラミックス工場、四日市工場、三菱マテリアル電子化成㈱で機能材料・電子デバイス・多結晶シリコン・化成品各分野の研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・高機能・超低アルファ線はんだ材の開発

・高機能スパッタリングターゲット材の開発

・高信頼性絶縁回路基板の開発

・フラットパネルディスプレイ用材料の開発

・大型シリコン部材の開発

・高品位多結晶シリコンの開発

・導電性、光機能性を有した粉体とその応用製品の開発

・半導体プロセス並びに電子材料用フッ素系材料の開発

・親水撥油特性を有するフッ素系化合物の開発

・チップサーミスタ、サーミスタセンサの開発

・サージアブソーバの開発

・チップアンテナの開発

 研究開発費の金額は、929百万円であります。

(5)アルミ事業

 ユニバーサル製缶㈱開発部・技術部並びに三菱アルミニウム㈱研究開発部を中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・缶胴、ボトル、缶蓋及びキャップの軽量化・用途拡大

・印刷技術、加飾技術の高度化

生産設備の生産効率向上及び増速化

成形性に優れる缶材の開発

・自動車軽量化を目的とした板・押出材の開発

・各種熱交換器用素材の開発

・エレクトロニクス分野における板・箔材の開発

・素材製造技術、用途に応じた加工・成型・接合・表面処理技術の向上

・各種シミュレーション技術の開発

 研究開発費の金額は、2,746百万円であります。

(6)その他の事業

 当社のエネルギー事業(那珂エネルギー開発研究所等を含む)においては、エネルギー関連(原子力、地熱等)に関する技術開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・燃料製造・再処理等原子燃料サイクルの高度化に係る技術開発

・原子燃料サイクル技術を活用した有価金属等精製抽出に係る技術開発

・福島の環境修復のための廃棄物の処理、処分、リサイクル等の技術開発

・シミュレーション技術を利用した地熱貯留槽管理技術の開発

 研究開発費の金額は、26百万円であります。

 また、各セグメントにおける研究開発以外に、当社の中央研究所では、「お客様のニーズ、将来技術トレンドを的確に目利きし、差別化された製品・技術をタイムリーに開発・提供すること」を研究開発の基本方針として、これまでに蓄積してきた材料の分析評価やコンピュータ解析による材料・プロセス・製品開発支援などの基盤技術と、反応プロセス、金属・加工、界面・薄膜のコア技術を活用した開発を行っております。足許では、各事業のNo.1・オンリーワンに貢献する新製品・新技術をタイムリーに生み出してまいります。中長期的には、自動車、エレクトロニクス、エネルギー、環境リサイクルの注力分野における次期ニーズを取り込み事業の柱となる新事業開発を推進し、長期的には夢のある将来技術にも果敢にチャレンジしてまいります。主なテーマは以下のとおりであります。

・セメントキルンの廃棄物増処理設計技術

・自動車コネクター端子用低摩擦めっき

・レーザーを用いた高精度切削工具の精密形態形成技術

・高硬度鋼切削加工用コーテッドCBN材種

・屈曲性を備えた世界最薄フレキシブルサーミスタセンサ

・次世代パワーモジュール用高放熱性絶縁回路基板

・リチウムイオン電池の電解液のフッ素リサイクル技術

 研究開発費の金額は、4,034百万円であります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(平成27年6月26日)現在において判断したものであります。

(1) 当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析

① 経営成績

 当連結会計年度における経営成績の概況については、「1 業績等の概要」に記載しております。

② 財政状態

 当連結会計年度末の総資産残高は、前期末比 1,196億円(6.7%)増加し、1兆8,981億円となりました。流動資産は、現金及び預金の増加等により、前期末比 939億円(12.1%)増加の 8,684億円となりました。固定資産は、投資有価証券の増加等により、前期末比 257億円(2.6%)増加の 1兆297億円となりました。

 負債残高は、前期末比 158億円(1.3%)増加し、1兆2,686億円となりました。流動負債は、支払手形及び買掛金の増加等により、前期末比 392億円(5.3%)増加の 7,778億円となりました。固定負債は、社債の減少等により、前期末比 234億円(4.6%)減少の 4,908億円となりました。なお、借入金に社債、コマーシャル・ペーパーを加えた有利子負債残高については、前期末比 189億円(2.9%)減少の 6,308億円となりました。

 純資産残高は、当期純利益による利益剰余金の増加等により、前期末比 1,038億円(19.8%)増加の 6,295億円となりました。

 この結果、連結ベースの自己資本比率は、前期末の25.7%から29.0%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は 348.54円から 420.36円に増加しました。

 

(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 「4 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(3) 事業戦略と見通し

 当社グループは平成26年5月12日に「長期経営方針」及び中期経営計画(2014-2016)「Materials Premium 2016 ~No.1企業集団への挑戦~」を公表しました。

 当社グループは長期経営方針において目標とする「No.1企業集団」の実現に向け、当社グループならではの技術により、価値ある製品・サービス等を創造し、その業界・市場において重要な地位を占める存在となるよう取り組んでまいります。

 

 各事業部門の具体的な事業戦略は以下のとおりであります。

 

① セメント事業

 旺盛な国内需要への安定供給及び米国事業の拡大、新興国への展開により、環太平洋地域におけるメジャープレーヤーを目指します。

 

② 金属事業

 鉱山開発投資、製錬事業におけるリサイクル事業の強化、銅加工事業では新興国における拡販により、収益性の改善を図ります。

 

③ 加工事業

 自動車、航空機、医療分野への拡販、振興国を中心とした販売網、生産拠点の拡充により、世界シェアの拡大を目指します。

 

④ 電子材料事業

 ユニークで高付加価値戦略製品の短期開発と戦力化を実現するために、マーケティング主導による研究開発を推進します。また、シリコン事業全体について、早期経営安定化を図ります。

 

⑤ アルミ事業

 熱交換器用押出多穴管・板材の海外拠点増強並びに飲料用アルミ缶製造ラインの高速化により増産体制を構築します。

 

(4) 流動性の管理方針

 当社グループは、キャッシュマネージメントシステムの導入等によるグループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上に努めております。

 当社グループの資金の状況については、「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

(5) 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社グループの経営陣は、収益力、有利子負債等グループの財政状況を認識し、現在の事業規模及び入手可能な情報に基づき経営資源の最も効率的な運用を行い、企業価値を最大限に高めるべく努めております。

 

(6) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しておりますが、その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループが採用している重要な会計方針(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載)のうち、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。

① 貸倒引当金、投資損失引当金、関係会社事業損失引当金の計上

 当社グループの保有する債権または関係会社への投資に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積もり、引当金を計上しておりますが、将来、債務者や被出資者の財務状況が悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。

② 有価証券の減損処理

 当社グループの保有する株式については、時価のある有価証券、時価のない有価証券ともに、合理的な判断基準を設定の上、減損処理の要否を検討しております。従って、将来、保有する株式の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。

③ 固定資産の減損処理

 当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 平成14年8月9日))及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号 平成15年10月31日)を適用しております。将来、経済環境の著しい悪化や市場価格の著しい下落の発生如何によっては、減損損失を計上する可能性があります。

④ 繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。