第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度における世界経済は、中国やインド等の新興国において経済成長の鈍化傾向が継続したものの、米国において景気が緩やかに回復したことなどから、全体として持ち直しに向かいました。

 当連結会計年度におけるわが国経済は、公共投資が底堅く推移したことに加えて、雇用・所得環境の改善や消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響等により、個人消費が増加したことなどから、景気が緩やかに回復しました。

 当社グループを取り巻く事業環境は、銅をはじめとする主要金属の海外相場が下落した一方で、円高の為替水準が修正されたため事業全般にわたってその影響があったほか、震災復興工事の本格化や住宅建設工事等の増加によりセメントの需要が堅調に推移しました。

 このような状況のもと、当社グループは、中期経営計画(2011-2013年度)「Materials Premium(マテリアル・プレミアム)2013 ~新たなる創造を目指して~」の基本コンセプトとしている「成長戦略と財務体質改善の両立」並びに成長戦略として掲げている「海外市場、特に新興国市場への展開」及び「複合事業体として特徴のあるシナジーの創出」に基づき引き続き諸施策を実施し、アジアを中心とした生産・販売拠点の拡充や事業の選択と集中等を図ってまいりました。

 この結果、当連結会計年度は、連結売上高は1兆4,147億96百万円(前年度比9.9%増)、連結営業利益は662億81百万円(同26.3%増)、連結経常利益は769億2百万円(同3.3%増)、連結当期純利益は525億51百万円(同42.2%増)となりました。

 セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

 なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の報告セグメントごとの営業利益は、有限責任 あずさ監査法人の監査を受けておりません。

 

(セメント事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,647

1,901

254

(15.4%)

営業利益

142

191

48

(34.3%)

経常利益

140

188

47

(34.2%)

 

 セメント事業は、国内では、震災復興工事の本格化に加えて、その他の災害復旧工事、再開発工事、マンション等住宅建設工事の増加等により全国的に需要が堅調に推移したことから、販売数量が増加しました。海外では、米国において、民間設備投資及び住宅関連の需要が堅調に推移したことに加えて、中国において、山東省における高速鉄道工事及び新空港建設工事等により需要が増加したことから、販売数量が増加しました。なお、事業全体のセメント生産量は、12.4百万トン(前年度比0.6百万トン増産)となりました。

 以上の結果、事業全体の売上高及び営業利益は、前年度に比べて増加しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が増加したことから、前年度に比べて増加しました。

 

(銅事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

6,227

6,963

735

(11.8%)

営業利益

177

232

55

(31.0%)

経常利益

391

365

△25

(△6.6%)

 銅地金は、銅の海外相場が下落した一方で、円高修正の影響がありました。また、インドネシア・カパー・スメルティング社において、鉱石供給元鉱山の操業トラブルや操業停止を伴う定期炉修の実施の影響があったものの、直島製錬所において、定期炉修がなかったことにより増産となったことから、増収増益となりました。なお、事業全体の電気銅生産量は、513千トン(前年度比4千トン増産)となりました。

 金及びその他の金属は、円高修正の影響があったものの、鉱石中の含有量の減少等により減産となったことなどから、減収減益となりました。

 銅加工品は、自動車向け製品等の販売が増加したことから、増収増益となりました。

 以上の結果、事業全体の売上高及び営業利益は、前年度に比べて増加しました。

 事業全体の経常利益は、受取配当金が減少したことから、前年度に比べて減少しました。

 

(加工事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,366

1,458

92

(6.8%)

営業利益

107

140

33

(30.7%)

経常利益

106

139

33

(31.8%)

 超硬製品は、海外子会社での販売促進及び円高修正により販売が増加したことに加えて、生産性向上によるコスト低減により、増収増益となりました。

 高機能製品は、航空機関連市場における需要及び自動車向け製品の販売が増加したものの、円高修正により仕入れコストが上昇しました。また、事業の選択と集中を進めるなかで㈱タマダイが平成25年12月に、三菱マテリアルシーエムアイ㈱が平成26年1月にともに子会社でなくなったことから、減収減益となりました。

 以上の結果、事業全体の売上高及び営業利益は、前年度に比べて増加しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が増加したことから、前年度に比べて増加しました。

 

(電子材料事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

686

677

△8

(△1.3%)

営業利益

48

40

△8

(△16.8%)

経常利益

34

21

△12

(△36.6%)

 機能材料は、スマートフォン用ディスプレイ向け製品の販売が堅調に推移したものの、半導体関連市場における需要が低迷したことなどから、減収減益となりました。

 電子デバイスは、白物家電向け製品の販売が増加したことに加えて、コスト削減効果及び円高修正の影響等により、増収増益となりました。

 多結晶シリコン及び化成品は、四日市工場が平成26年1月9日に発生した爆発火災事故を受けて操業を停止したことにより多結晶シリコンの販売が減少したことなどから、減収減益となりました。

 以上の結果、事業全体の売上高及び営業利益は、前年度に比べて減少しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が減少したことに加えて、持分法による投資利益が減少したことから、前年度に比べて減少しました。

 

(アルミ事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

1,466

1,515

48

(3.3%)

営業利益

61

55

△6

(△9.9%)

経常利益

55

47

△7

(△14.3%)

 アルミ缶は、ビール系飲料向けを中心に通常缶の需要が増加したものの、ブラックコーヒー及び茶系飲料向けのボトル缶の需要が減少しました。

 アルミ圧延・加工品は、缶材及び太陽電池向け製品の需要が増加したことに加えて、エコカー補助金制度終了の影響により当連結会計年度前半に減少した自動車向け製品の需要が、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響により増加しました。

 事業全体では、円高修正によりエネルギーコスト及び原材料コストが上昇しました。

 以上の結果、事業全体の売上高は前年度に比べて増加し、営業利益は減少しました。

 事業全体の経常利益は、営業利益が減少したことから、前年度に比べて減少しました。

 

(その他の事業)

(単位:億円)

 

 

前期

当期

増減(増減率)

売上高

3,489

3,801

311

(8.9%)

営業利益

69

80

10

(15.6%)

経常利益

108

95

△13

(△12.0%)

 エネルギー関連は、石炭の販売が増加したものの、除染事業の販売が増加した原子力関連においてコストが上昇したことに加えて、新規地熱開発案件の調査費用が増加したことから、増収減益となりました。

 E-waste(使用済みの電子電気製品)リサイクルは、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響により処理量が増加したことに加えて、有価物回収量の増加やコスト削減効果等により、増収増益となりました。

 貴金属は、宝飾関連の販売が減少したものの、第1四半期に金の海外相場が大きく下落したことにより金地金の販売量が増加したことから、増収増益となりました。

 なお、原子力・エンジニアリング関連部門の受注高は、654億円(前年度比64億円増)、受注残は、287億円(同107億円増)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、業績が堅調に推移したことなどにより、1,029億円の収入(前期比13億円の収入増加)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に係る支出等により、448億円の支出(前期比436億円の支出減少)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動や投資活動の結果、580億円の収入となり、この収入を借入の返済に充当したことなどにより、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、693億円の支出(前期比330億円の支出増加)となりました。

以上に、換算差額等による増減を加えた結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、620億円(前期末比12億円の減少)となりました。

2【生産、受注及び販売の状況】

 「1 業績等の概要」の「(1)業績」において、各事業のセグメント情報に関連付けて記載しております。

3【対処すべき課題】

1.全社課題

 今後の世界経済につきましては、中国やその他新興国経済の先行きに不確実性がみられるものの、先進国を中心に緩やかに回復していくことが予想されます。

 今後のわが国経済につきましては、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が見込まれるものの、企業収益及び雇用・所得環境の改善等により、内需が底堅く推移するとみられることから、景気の緩やかな回復が継続することが期待されます。

 今後の当社グループを取り巻く事業環境につきましては、国内景気が回復傾向にあるなかで、復興需要の本格化等を背景としたセメントの需要が引き続き期待される一方で、銅をはじめとする主要金属の海外相場が足許では下落傾向にあることが懸念されます。

 また、平成26年1月9日に四日市工場において重大な労働災害が発生したことから、グループ全体において安全管理体制の一層の強化を図ることが最重要課題であると認識しております。

 こうしたなかにありまして、当社グループは、次のとおり、2020年代初頭までを視野に入れた「長期経営方針」と2014年度から2016年度までを対象とした中期経営計画(2014-2016)「Materials Premium 2016 ~No.1企業集団への挑戦~」を策定しております。

 

(1) 長期経営方針

   近年、世界経済の複雑化、社会ニーズの多様化、技術革新スピードの加速化など、事業環境が大きく変化するなか、当社グループは、「人と社会と地球のために」という企業理念を確実に実現していくため、2020年代初頭に向けて、「ユニークな技術により、地球に新たなマテリアルを創造し、循環型社会に貢献するNo.1企業集団」となることを目指してまいります。

   当社グループの各事業は、この方針のもと、当社グループならではの技術により、価値ある製品・サービス等を創造し、その業界・市場において重要な地位を占める存在となるよう取り組んでまいります。

 

(2) 中期経営計画(2014年度から2016年度)における経営方針

   中期経営計画「Materials Premium 2016」は、長期経営方針に掲げる「No.1企業集団」となるための基盤強化に注力する第一段階の位置付けにあり、以下の各事項を全社成長戦略として定めております。

 

  ①成長基盤の強化

   「安全と健康は全てに優先する」を最重要事項として、安全管理体制の強化と安全風土・文化の醸成を図り、事業の成長に資する安定的な操業体制の構築に努めてまいります。

   また、M&Aや海外生産・販売拠点の拡充を中心に3カ年合計で1,000億円の戦略投資を実施することで成長を加速させるとともに、事業の継続的な選択と集中により収益力を向上させ、引き続き財務体質の改善を進めてまいります。

 

  ②グローバル競争力の強化

   既存の海外生産・販売拠点の拡充と新興国を中心とした新規生産・販売拠点の展開に注力することにより、成長するグローバル市場を獲得してまいります。

   また、特に自動車・エレクトロニクス産業を対象とした戦略的なマーケティングの実施により、新たな顧客や市場を開拓することで競争力を向上させてまいります。

 

  ③循環型ビジネスモデルの追求

   当社グループでは各事業において、川上(資源)から川中(素材)・川下(加工品)まで幅広く事業展開しておりますが、廃棄物を上流へ循環させ再利用するビジネスモデルを更に追求してまいります。

   また、従来処理が困難だった廃棄物についても、「マテリアル・プレミアム」(複合事業体として特徴のあるシナジー)を活かし再利用の促進に努め、社会の持続的な発展に寄与してまいります。

 

2.事業別課題

●セメント事業

 国内セメント事業につきましては、震災復興をはじめとする経済対策による公共投資や、企業収益の改善を背景とした民間設備投資の持ち直しがみられるなど、官需・民需とも堅調であるものの、工事現場の人手不足等が継続する見通しにあるため、平成26年度のわが国におけるセメントの需要は前年度を僅かに上回る48,000千トンと見込まれております。このような状況のもと販売・供給体制を整え、セメントの需要が想定以上に増加した場合においても確実に対応し、販売数量の確保に努めてまいります。

 米国セメント事業につきましては、米国経済の緩やかな回復を受け、引き続き民間を中心として需要が回復する見通しにあるため、米国三菱セメント社において、生コンクリート事業を行うロバートソン・レディ・ミックス社向けを中心とする販売を通じて、販売数量の増加と価格の改定に取り組むとともに、ロバートソン・レディ・ミックス社の事業及び資産を最大限活用することにより、米国セメント・生コンクリート事業の効率的な事業運営を行い、収益拡大に努めてまいります。

 中国セメント事業につきましては、山東省において引き続き堅調な官需・民需が見込まれるなか、安定供給を図るとともに販売価格の改定に取り組み、収益力の強化に努めてまいります。

 

●銅事業

 銅鉱石は、鉱山の供給能力が拡大しているため、需給が緩和するものと見込まれます。足許の銅相場は下落傾向にありますが、為替や株式市況と併せて、今後の動向を注視してまいります。

 銅加工品は、消費税率引き上げにより、自動車向け製品及び電子材料向け製品の需要が一時的に減少し、その後、緩やかに回復することが見込まれます。

 このような状況のもと、銅事業全般では、引き続きエネルギー使用効率向上や固定費圧縮による損益分岐点の引き下げにより、相場環境に左右されない強固な体質の構築を進めてまいります。また、銅製錬においては、国内外製錬所の安定操業に努めるとともに、取り扱いが困難とされる廃棄物等の処理体制を構築することなどにより、リサイクル事業を拡大し、廃棄物の処理料収入等を増加させて収益力を強化してまいります。銅加工品においては、引き続き技術力と開発力を活かした合金開発を迅速に進めて販売競争力を高め、収益力を強化してまいります。

 なお、平成26年4月1日付で、貴金属事業に区分していた貴金属地金の販売等を銅事業の区分に統合し、それに伴い銅事業は金属事業に名称変更しております。今後は、貴金属地金の生産、販売を一元的に管理することにより、業務の効率化と収益力の強化を図ってまいります。

 

●加工事業

 超硬製品は、新興国の経済成長に総じて減速感が継続しているほか、欧米では地域毎に需要回復のペースにばらつきがあるものの、受注環境は全体としては回復傾向にあり、中長期的にも主要顧客である自動車関連産業や航空機関連産業を中心として需要が拡大することが見込まれます。このような状況のもと、高能率・高精度な商品開発と技術サービス体制を一層強化し、総合工具メーカーとして顧客のニーズに対応してまいります。販売面においては、新興国を中心に販売拠点の増設等により販売網の拡充を進め、営業活動の強化に努めてまいります。また、超硬製品の主原料であるタングステンの安定調達に向けて、リサイクル比率の向上等、原料調達ソースの多様化に引き続き取り組んでまいります。

 高機能製品は、㈱タマダイ及び三菱マテリアルシーエムアイ㈱が子会社でなくなったことに加えて、平成26年7月を目途にMMCスーパーアロイ㈱が合弁会社化により連結子会社から持分法適用関連会社となることから、短期的には減収減益となることが予想されますが、自動車関連産業の成長により、焼結部品の需要が拡大することが見込まれます。このような状況のもと、海外における焼結部品新工場の円滑な操業開始や、既存工場の新製品の立ち上げに加えて、日本における生産技術強化を背景とした品質改善、生産性向上によるコスト削減を実現し、収益拡大に努めてまいります。

 

●電子材料事業

 機能材料は、スマートフォン用ディスプレイ向け製品や太陽電池向け製品の販売が堅調に推移することが予想されますが、半導体関連製品の需要は不透明な状況にあります。また、ハイブリッド自動車向け製品の需要が好調に推移することに加えて、自動車以外の産業向け製品の需要が増加することも見込まれます。今後も各市場において、コアとなる技術力の活用並びに販売競争力及び顧客への提案力強化により、収益力強化に努めてまいります。

 電子デバイスは、白物家電向け製品の販売が堅調に推移しているものの、中国経済の先行きについては成長の減速が懸念され、需要が不透明な状況にあります。今後も、新興国における販売体制の強化、新製品の早期投入及び一層のコスト削減により、事業体質の強化に取り組んでまいります。

 多結晶シリコン及び化成品は、爆発火災事故が発生した四日市工場において、事故調査委員会の提言を踏まえた再発防止策を策定するとともに、関係官庁等のご指導も仰ぎながら、安全な操業の再開に努めてまいります。

 

●アルミ事業

 アルミ缶は、国内飲料市場全体の大幅な需要増加は期待できないものの、通常缶の一層の安定受注に努めるとともに、ブラックコーヒー及び茶系飲料分野向けに戦略商品であるアルミボトル缶の積極的な販売の拡大を図ってまいります。また、原料の有利調達、品質の安定化及びコスト削減等も積極的に推進してまいります。

 アルミ圧延・加工品は、国内では大幅な需要増加は期待できないものの、缶材、自動車向け製品及び電子材料向け製品の受注確保に努めるとともに、海外では需要増加が見込まれる自動車向け製品の拡販に取り組んでまいります。

 また、従来より当社グループで取り組んでいる使用済みアルミ缶のリサイクル事業を積極的に推進し、循環型社会の構築に貢献してまいります。

 

 以上の諸施策の実施により、当社グループの総力を結集し、複合事業体の価値創造を推進してまいる所存であります。

 

3.会社の支配に関する基本方針

(1) 会社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

 当社の支配権は、原則として当社株式の市場での自由な取引により決定されるべきものであり、株式の大規模買付等(下記(3)②(イ)において定義されます。以下同じとします。)の提案に応じるか否かのご判断についても、原則として、個々の株主の皆様の自由なご意思が尊重されるべきであると考えております。

 しかしながら、株式の大規模買付等の中には、企業価値・株主共同の利益、ひいては中長期的な株主価値(以下、単に「中長期的な株主価値」といいます。)を著しく損なう可能性のあるものや株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれのあるものなど、当社の中長期的な株主価値に資さないものも想定されます。また、当社は、当社株式の大規模買付等を行う者が、当社を取り巻く経営環境を正しく認識し、当社の企業価値の源泉を理解した上で、これを中長期的に確保し、向上させなければ、当社の中長期的な株主価値は毀損される可能性があると考えております。

 更に、株主の皆様の投資行動の自由をできる限り尊重すべきであることはいうまでもありませんが、当社としては、現在のわが国の公開買付制度は、株主の皆様が一定の大規模買付等に応じるか否かをご判断されるために必要な情報を取得し、検討するための時間と手続が必ずしも十分ではなく、中長期的な株主価値が害される可能性もあると考えております。

 以上のことから、当社は、上記のような当社の中長期的な株主価値を毀損する可能性のある大規模買付等を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては適切ではないものと考えております。このため、当社は、当社の中長期的な株主価値に反する大規模買付等を抑止するため、当社株式の大規模買付等が行われる場合に、不適切な大規模買付等でないかを株主の皆様がご判断するために必要な情報や時間を確保したり、株主の皆様のために買付者と交渉等を行ったりするための枠組みが必要であると考えております。

 

(2) 基本方針の実現に資する特別な取り組みの内容の概要

 当社は、当社の淵源である金属・石炭の鉱山事業で培った技術等をもとに様々な分野において事業を展開してきました。その結果、現在では、セメント、銅、加工、電子材料、資源・リサイクル、アルミ及び貴金属等の事業を行う複合事業集団となっております。また、当社は、様々な事業活動を通して社会に貢献することを企業理念の基本とし、これまで、総合素材メーカーとして、人々が生活する上で欠くことのできない基礎素材を世の中に供給してきました。更に、環境負荷の低減や循環型社会システム構築への貢献を目指し、豊かな社会をつくるために不断の努力を行ってまいりました。当社は、事業活動の発展はもとより、社会との共生も図りながら、株主、従業員、顧客、地域社会、サプライヤーその他多数の関係先を含むステークホルダーの皆様から更なる信頼を得ることにより、中長期的な株主価値の確保・向上に努めてまいりたいと考えております。

 このようななかにあって、当社グループは、中期経営計画(2011-2013年度)「Materials Premium(マテリアル・プレミアム)2013 ~新たなる創造を目指して~」の基本コンセプトとしている「成長戦略と財務体質改善の両立」並びに成長戦略として掲げている「海外市場、特に新興国市場への展開」及び「複合事業体として特徴のあるシナジーの創出」に基づき、諸施策を実施してまいりました。

 また、当社グループは、2020年代初頭に向けた長期経営方針において、「ユニークな技術により、地球に新たなマテリアルを創造し、循環型社会に貢献するNo.1企業集団」を目指すこととしております。今後は、「No.1企業集団」の実現に向け、中期経営計画(2014-2016)「Materials Premium 2016 ~No.1企業集団への挑戦~」において、「成長基盤の強化」、「グローバル競争力の強化」及び「循環型ビジネスモデルの追求」を全社成長戦略とし、諸施策を実施してまいります。

 

(3) 基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みの概要

 当社は、上記(2)記載の企業理念と諸施策のもと、今後も当社の中長期的な株主価値の最大化を追求してまいりますが、その一方で、上記(1)記載のような当社の中長期的な株主価値を毀損する可能性がある大規模買付等が行われる可能性も否定できないと考えております。そこで、当社は、平成25年5月10日開催の当社取締役会において、「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)」を従前のものから一部改定した上で更新すること(改定後の対応策を以下「新対応策」といいます。)を決議し、同年6月27日開催の当社第88回定時株主総会において、株主の皆様のご承認をいただきました。

 新対応策の概要は、次のとおりであります。なお、新対応策の詳細につきましては、平成25年5月10日付のプレスリリース「当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)の更新について」において公表しておりますので、以下の当社ホームページをご参照下さい。

 http://www.mmc.co.jp/corporate/ja/01/01/13-0510.pdf

①新対応策の基本方針

 当社は、中長期的な株主価値の確保・向上を目的として、当社株式の大規模買付等を行い、または行おうとする者に対し、遵守すべき手続を設定し、これらの者が遵守すべき手続があること、及び、これらの者に対して一定の場合には当社が対抗措置を発動することがあり得ることを事前に警告すること、並びに、一定の場合には当社が対抗措置を実際に発動することをもって当社株式の大量取得行為に関する対応策(買収防衛策)といたします。

②新対応策の内容

(イ)対象となる大規模買付等

 新対応策は、以下のa.またはb.に該当する当社株券等の買付けまたはこれに類似する行為(以下「大規模買付等」といいます。)がなされる場合を適用対象といたします。大規模買付等を行い、または行おうとする者(以下「買付者等」といいます。)は、予め新対応策に定められる手続に従わなければならないものといたします。

a.当社が発行者である株券等について、保有者の株券等保有割合が20%以上となる買付け

b.当社が発行者である株券等について、公開買付けに係る株券等の株券等所有割合及びその特別関係者の株券等所有割合の合計が20%以上となる公開買付け

(ロ)「意向表明書」の当社への事前提出

 買付者等には、大規模買付等の実行に先立ち、当社取締役会に対して、新対応策に定める手続を遵守する旨の誓約文言等を日本語で記載した書面(以下「意向表明書」といいます。)を提出していただきます。

(ハ)情報の提供

 意向表明書をご提出いただいた場合には、当社は、買付者等に対して、当初提出していただくべき情報を記載した「情報リスト」を発送いたします。買付者等には、かかる「情報リスト」に従って十分な情報を当社に提出していただきます。

 また、上記の「情報リスト」の発送後60日間を、当社取締役会が買付者等に対して情報の提供を要請し、買付者等が情報の提供を行う期間(以下「情報提供要請期間」といいます。)として設定し、情報提供要請期間が満了した場合には、直ちに取締役会評価期間(下記(ホ)において定義されます。以下同じとします。)を開始するものといたします。ただし、買付者等から合理的な理由に基づく延長要請があった場合には、情報提供要請期間を必要に応じて最長30日間延長することができるものといたします。他方、当社取締役会は、買付者等から提供された情報が十分であると判断する場合には、情報提供要請期間満了前であっても、直ちに情報提供要請期間を終了し、取締役会評価期間を開始するものといたします。

(ニ)情報の開示

 当社は、買付者等から大規模買付等の提案がなされた事実とその概要を開示いたします。また、株主の皆様のご判断に必要であると認められる情報がある場合には、適切と判断する時点で開示いたします。

 また、当社は、買付者等による情報の提供が十分になされたと当社取締役会が認めた場合には、速やかにその旨を買付者等に通知(以下「情報提供完了通知」といいます。)するとともに、その旨を開示いたします。

(ホ)取締役会評価期間の設定

 当社取締役会は、情報提供完了通知を行った後または情報提供要請期間が満了した後、大規模買付等の評価・検討を開始いたします。当社取締役会による評価、検討、交渉、意見形成及び代替案立案のための期間(以下「取締役会評価期間」といいます。)は、大規模買付等の態様に応じて最長60日間または最長90日間といたします。

 ただし、取締役会評価期間は当社取締役会が必要と認める場合または独立委員会の勧告を受けた場合には最長30日間延長できるものといたします。

(へ)独立委員会に対する諮問

 新対応策においては、対抗措置の発動等に当たって、当社取締役会の恣意的判断を排除するため、当社の業務執行を行う経営陣から独立した者のみから構成される独立委員会を設置しております。

 当社取締役会は、買付者等が新対応策に定める手続を遵守しなかった場合、または買付者等による大規模買付等が当社の中長期的な株主価値を著しく損なうものであると認められる場合であって、対抗措置を発動することが相当であると判断する場合には、対抗措置の発動の是非について、独立委員会に対して諮問するものといたします。

 

(ト)対抗措置の発動に関する独立委員会の勧告

 独立委員会は、当社取締役会から対抗措置の発動の是非に関する諮問があった場合には、当社取締役会に対して、対抗措置の発動の是非に関する勧告を行うものといたします。

(チ)取締役会の決議

 当社取締役会は、上記(ト)の独立委員会の勧告を最大限尊重し、対抗措置の発動に関する決議を行うものといたします。

(リ)株主意思確認総会の開催

 当社取締役会は、以下の場合には、株主総会の開催が著しく困難な場合を除き、株主総会を開催し、対抗措置の発動に関する議案を付議するものといたします(かかる株主総会を以下「株主意思確認総会」といいます。)。

a.独立委員会が対抗措置の発動についての勧告を行うに際して、対抗措置の発動に関し株主総会の承認を予め得るべき旨の留保を付した場合

b.当社取締役会が、株主の皆様のご意思を確認することが相当であると判断した場合

 当社取締役会は、株主意思確認総会の決議に従って、対抗措置の発動に関する決議を行うものといたします。

(ヌ)大規模買付等の開始時期

 買付者等は、当社取締役会が株主意思確認総会を招集することを決定した場合には、当社取締役会が株主意思確認総会の決議に基づく対抗措置不発動の決議を行うまでは、大規模買付等を開始することはできないものといたします。また、株主意思確認総会が招集されない場合においては、取締役会評価期間の経過後にのみ大規模買付等を開始することができるものといたします。

(ル)対抗措置の中止または撤回

 当社取締役会は、対抗措置の発動を決議した場合であっても、以下の場合には、当該対抗措置の中止または撤回について、独立委員会に諮問するものといたします。

a.買付者等が大規模買付等を中止もしくは撤回した場合

b.対抗措置を発動するか否かの判断の前提となった事実関係等に変動が生じ、かつ、当社の中長期的な株主価値の確保・向上という観点から、発動した対抗措置を維持することが相当でないと考えられる状況に至った場合

 当社取締役会は、独立委員会の勧告を最大限尊重し、当該対抗措置を維持することが相当でないと判断するに至った場合には、当該対抗措置の中止または撤回を決議いたします。

(ヲ)新対応策における対抗措置の具体的内容

 新対応策に基づいて発動する対抗措置は、原則として新株予約権の無償割当てといたします。

 当該新株予約権は、割当て期日における当社の株主に対し、その所有する当社普通株式1株につき1個の割合で割当てられます。また、当該新株予約権には、買付者等別途定める要件に該当する非適格者は行使することができないという行使条件のほか、当社が非適格者以外の者が所有する新株予約権を取得し、これと引き替えに新株予約権1個につき1株の当社普通株式を交付することができる旨の取得条件等が付されることが予定されております。

(ワ)新対応策の有効期間、廃止及び変更

 新対応策の有効期間は、平成28年6月開催予定の当社第91回定時株主総会終結の時までといたします。

 なお、かかる有効期間の満了前であっても、以下の場合には、新対応策はその時点で廃止されるものといたします。

a.当社の株主総会において新対応策を廃止する旨の議案が承認された場合

b.当社の取締役会において新対応策を廃止する旨の決議が行われた場合

 また、当社は、法令等の改正に伴うもの等の形式的な事項について、基本方針に反しない範囲で、新対応策を変更する場合があります。

 

(4) 上記(2)の取り組みが、上記(1)の基本方針に沿い、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないことに関する取締役会の判断及びその理由

 上記(2)の取り組みを通じて、当社の中長期的な株主価値を確保・向上させ、それを当社株式の価値に適正に反映させていくことにより、当社の中長期的な株主価値に反する大規模買付等は困難になるものと考えられ、上記(2)の取り組みは、上記(1)の基本方針に沿うものであると考えております。

 従って、上記(2)の取り組みは、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

(5) 上記(3)の取り組みが、上記(1)の基本方針に沿い、株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないことに関する取締役会の判断及びその理由

 上記(3)の取り組みは、十分な情報の提供と十分な検討等の期間の確保の要請に応じない買付者等、及び当社の中長期的な株主価値を著しく損なう大規模買付等を行おうとする買付者等に対して対抗措置を発動できることとすることで、これらの買付者等による大規模買付等を防止するものであり、上記(1)の基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取り組みであります。また、上記(3)の取り組みは、当社の中長期的な株主価値を確保・向上させることを目的として、買付者等に対して、当該買付者等が実施しようとする大規模買付等に関する必要な情報の事前の提供、及びその内容の評価・検討等に必要な期間の確保を求めるために実施されるものです。更に、上記(3)の取り組みにおいては、株主の皆様のご意思を確認する手続の導入、独立性の高い委員により構成される独立委員会の設置及びその勧告の最大限の尊重、合理的かつ客観的な対抗措置発動要件の設定、株主意思確認総会の決議に基づく対抗措置の発動等の、当社取締役会の恣意的な判断を排し、上記(3)の取り組みの合理性及び公正性を確保するための様々な制度及び手続が確保されているものであります。

 従って、上記(3)の取り組みは上記(1)の基本方針に沿うものであり、当社の株主の皆様の共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

4【事業等のリスク】

 当社グループは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、幅広い事業を展開しているため、業績及び財政状態は国内外の政治・経済・天候・市況・為替動向・法令等、様々な要因の影響を受けます。特に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、次のようなものがあります。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(平成26年6月27日)現在において判断したものであります。

(1) 事業再編

 当社グループは、事業の選択と集中を推進しており、収益性の高い事業には積極的に経営資源を投入するとともに、他社との提携も視野に入れた、事業の見直し、再編、整理に積極的に取り組んでおります。この過程において、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(2) 市場・顧客動向

 当社グループは、様々な業界に対し、製品及びサービスを提供しておりますが、世界経済情勢の変化や顧客の市場の急速な変化と顧客の市場占有率の変化、顧客の事業戦略または商品展開の変更により、当社グループの製品等の販売が影響を受ける可能性があります。特に自動車及びIT関連業界は激しい価格及び技術開発競争にさらされており、当社グループは各般に亘るコストダウン、新製品・技術の開発に努めておりますが、業界と顧客市場の変化に的確に対応できない場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 非鉄金属相場、為替相場の変動等

 金属事業においては、主な収益源である外貨建の出資鉱山からの配当金及び製錬費等が非鉄金属相場、為替相場の変動や買鉱条件により影響を受けます。なお、たな卸資産に関しては、鉱石の調達から地金生産・販売に至る期間において、原料代に非鉄金属相場、為替相場の変動リスクを有します。
 また、アルミ事業、加工事業等の非鉄金属原材料、セメント事業の石炭等も国際商品であり、これら原材料及び原燃料の調達価格が非鉄金属や石炭等の相場、為替相場、海上運賃等の変動の影響を受けます。

(4) 半導体市況の動向

 当社グループは、半導体業界向けに電子材料、多結晶シリコン等を供給しているほか、持分法適用関連会社である㈱SUMCOにおいて半導体用シリコンウェーハ事業を行っており、半導体市況の動向により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(5) 有利子負債

 平成26年3月期において、当社グループの有利子負債は6,498億円(短期借入金、1年以内償還予定の社債、社債、長期借入金の合計額。注記なき場合は以下同様)、総資産に対する割合は36.5%となっております。たな卸資産圧縮、資産売却等により財務体質改善に努めておりますが、今後の金融情勢が当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

(6) 資金調達に関する重要事項

 当社グループの借入金のうち、シンジケート・ローン等に、その契約上一定水準以上の株主資本維持等を確約しているものがあります。当社または当社グループが財務状況悪化等により、これら確約を果たせない事態になった場合は、期限前弁済義務が生じる恐れがあり、その後の対応如何により、当社グループの資金調達に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 債務保証等

 当社グループは、連結会社以外の関連会社等の金銭債務に対して、平成26年3月期において330億円の債務保証等を引き受けております。将来、これら債務保証の履行を求められる状況が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(8) 保有資産の時価の変動

 保有する有価証券、土地、その他資産の時価の変動などにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(9) 退職給付費用及び債務

 従業員の退職給付費用及び債務は主に数理計算上で設定される前提条件に基づき算出しております。これらの前提条件は、従業員の平均残存勤務期間や日本国債の長期利回り、更に信託拠出株式を含む年金資産運用状況を勘案したものでありますが、割引率の低下や年金資産運用によって発生した損失が、将来の当社グループの費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。

(10) 環境規制等

 当社グループは、国内外の各事業所において、環境関連法令に基づき、大気、排水、土壌、地下水等の汚染防止に努め、国内の休廃止鉱山については、鉱山保安法に基づき、坑廃水による水質汚濁の防止や集積場の安全管理等、鉱害防止に努めております。しかし、関連法令の改正や温室効果ガスの排出に対する数量規制等がなされた場合は、当社グループにおいて新たな費用負担が発生する可能性があります。

(11) 海外活動等

 当社グループは、海外26の国・地域に生産及び販売拠点等を有しており、また、海外売上高も連結売上高の34.8%を占めておりますが、各国の政治・経済情勢や為替相場等のほか、貿易・通商規制、鉱業政策、環境関連規制、税制、その他予期しない法律または規制の変更及びその解釈の相違や現地提携先・パートナーの経営方針変更等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(12) 知的財産権

 当社グループでは、知的財産権の重要性を認識し、その保護に努めておりますが、保護が不十分であった場合あるいは違法に侵害された場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。他方、他社の有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、万が一、他社の有する知的財産権を侵害したと認定され、損害賠償等の責任を負担する場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(13) 製品の品質

 当社グループでは、高品質の製品の提供を目指し、品質管理には万全を期しております。しかし、予期しない事情により、大規模な製品回収等となった場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(14) 労働安全衛生、設備事故等

 当社グループでは、労働安全衛生・防災保安管理体制といったソフト面と、運転・保守管理と設備安全化といったハード面の両面から労働災害及び生産設備等の事故防止の徹底を図っておりますが、万が一、重大な労働災害や設備事故等が発生した場合は、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(15) 情報管理

 当社グループでは、個人情報の取扱を含め情報管理の徹底を図っておりますが、万が一、情報漏洩等が発生した場合は、社会的信用失墜等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(16) 訴訟等

 国内及び海外の現在または過去の事業に関連して、当社グループが現在当事者となっており、若しくは将来当事者となることのある訴訟、紛争、その他法的手続きに係る判決、和解、決定等により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(17) 電力調達

 原子力発電所の稼動停止に伴う電力の供給不安及び輸入化石燃料費の増加や再生可能エネルギー賦課金の増加等による電気料金の値上げにより、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

(18) その他

 上記のほか、取引慣行の変化、テロ・戦争・疫病・地震等の自然災害や不測の事態の発生により、当社グループの業績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

(1)当社は、当社連結子会社である三菱マテリアルツールズ㈱との間で、平成26年4月1日付をもって、当社を吸収合併存続会社、同社を吸収合併消滅会社とする吸収合併を行うことを内容とする契約を、平成25年9月25日付で締結しました。

(2)当社は、Hemlock Semiconductor Corporation株式について、Dow Corning Corporationとの間で、平成25年11月27日に譲渡契約を締結し、同28日に譲渡しました。

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動は、基本的には各事業の基幹となる分野の研究を当社単独で、あるいは連結会社と連携をとりながら行い、各社固有の事業及びユーザーニーズに応える研究についてはそれぞれが単独で行っております。研究開発の内容としては、既存事業の領域拡大を主体としながら、当社事業の基礎となる材料の基盤技術とコア技術の高度化、最先端技術の育成を進めております。また、新興国市場をターゲットとした開発テーマにも重点的に取り組み、各セグメントと開発部門が協力して、お客さまにとって魅力ある新製品や新規プロセスの開発に取り組んでおります。今後の技術・開発戦略としては、当社グループで保有する素材・加工・リサイクル技術を有効活用することで、開発のスピードアップと技術・製品の差別化を図ります。特に、自動車、エレクトロニクス、エネルギー、環境リサイクル分野の次期ニーズを取り込み、中長期的に事業の柱となる新事業開発を推進してまいります。

 なお、研究開発費の総額は、10,986百万円であります。

セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

セメント事業

セメント事業カンパニーにおける研究開発は、ディビジョンラボであるセメント研究所を中心とし、テーマを中央研究所と共同または分担する効率的体制で実施しております。また、研究実施においては各事業所との連携により成果の早期移管を実現しております。国内外のセメント事業基盤強化と成長のため、廃棄物や副産物の利用拡大、CO削減・省エネルギー、生産コスト削減、新製品開発などの研究に取り組んでおります。さらに、マテリアル・プレミアム実現に向けた他事業部との連携や、関係会社との共同研究を推進するとともに、セメント関連技術の進展に貢献するため、大学との共同研究や国からの委託事業や補助事業も実施しております。主な研究成果は次の通りです。

・廃せっこうボード利用技術の開発

・銅スラグ細骨材の製造方法と用途開発

・塩害劣化構造物のメンテナンス工法開発

・コンクリートの乾燥収縮量推定に関する研究

 研究開発費の金額は、766百万円であります。

銅事業

 銅製錬事業では、生産性向上・コスト低減、リサイクル技術の強化、湿式プロセスの開拓、高機能新材料の生産増強を目的として研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。
 なお、研究開発は国内事業所と当社の中央研究所及び製錬部製錬技術開発センターとの緊密な連携により効率的に進めており、開発・製造が一体となって取り組んでおります。

・各種製錬プロセスの解析及び開発

・銅、貴金属及びレアメタルリサイクル技術の開発

・湿式プロセスを用いた高機能新材料製造技術の開発

 また、銅加工事業では、基盤技術の強化はもとより、製造プロセスの研究開発や新材料の研究開発を中心テーマとして研究開発活動を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・高性能端子コネクター用銅合金及び製造プロセス開発

・各種シミュレーション技術の開発と応用(鋳造/加工/組織制御/熱処理)

・ROX素材を活かしたプロセス及び商品開発
 (※ROX:SCR法により製造される無酸素銅荒引銅線)

 研究開発費の金額は、1,488百万円であります。

加工事業

 当社の中央研究所、筑波製作所、岐阜製作所、明石製作所、日本新金属㈱を中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・CVD・PVDコーティング技術、超硬合金・サーメット・CBN焼結体の材料開発

・刃先交換式切削工具、機能性コーティング膜を有する超硬ドリル・エンドミルの開発

・廃超硬工具からタングステンを回収・分離する技術の開発

・IT市場向け超精密耐摩耗工具、微細加工用工具の開発

・ハイブリッド・EV用リアクトルコアの開発

・タングステンカーバイド粉の開発

・耐熱・耐食用焼結含油軸受の開発

・蓄電池用等の発泡金属の研究開発

・航空機ジェットエンジン部材の合金開発、生産技術開発

 研究開発費の金額は、834百万円であります。

電子材料事業

 当社の中央研究所、三田工場、セラミックス工場、四日市工場、三菱マテリアル電子化成㈱で機能材料・電子デバイス・多結晶シリコン・化成品各分野の研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・高機能・超低アルファ線はんだ材の開発

・高機能スパッタリングターゲット材の開発

・高信頼性絶縁回路基板の開発

・フラットパネルディスプレイ用材料の開発

・大型シリコン部材の開発

・高品位多結晶シリコンの開発

・導電性、光機能性を有した粉体とその応用製品の開発

・半導体プロセス並びに電子材料用フッ素系材料の開発

・チップサーミスタ、サーミスタセンサの開発

・サージアブソーバの開発

・チップアンテナの開発

 研究開発費の金額は、918百万円であります。

アルミ事業

 ユニバーサル製缶㈱開発部・技術部並びに三菱アルミニウム㈱研究開発部を中心に研究開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・缶胴、ボトル、缶蓋及びキャップの軽量化・用途拡大

・印刷技術、加飾技術の高度化

生産設備の生産効率向上及び増速化

成形性に優れる缶材の開発

・自動車軽量化を目的とした板・押出材の開発

・各種熱交換器用素材の開発

・エレクトロニクス分野における板・箔材の開発

・素材製造技術、用途に応じた加工・成型・接合・表面処理技術の向上

・各種シミュレーション技術の開発

 研究開発費の金額は、2,778百万円であります。

その他の事業

 当社のエネルギー事業(那珂エネルギー開発研究所等を含む)においては、エネルギー関連(原子力、地熱等)に関する技術開発を行っており、主な内容は次のとおりであります。

・燃料製造・再処理等原子燃料サイクルの高度化に係る技術開発

・原子燃料サイクル技術を活用した有価金属等精製抽出に係る技術開発

・福島原発事故に伴う廃棄物や放射性廃棄物の処理、処分、リサイクル等の技術開発

・シミュレーション技術を利用した地熱貯留槽管理技術の開発

 研究開発費の金額は、28百万円であります。

 また、各セグメントにおける研究開発以外に、当社の中央研究所では、これまでに蓄積してきた材料の分析評価やコンピュータ解析による材料・プロセス・製品開発支援などの基盤技術と、反応プロセス、金属・加工、界面・薄膜のコア技術を活用した開発を行っています。具体的には、各カンパニーと協力して保有技術の展開を図る足許のテーマと、将来の大きな環境変化を先取りして柔軟に対応する中長期のテーマに取り組んでおります。主なテーマは以下のとおりであります。

・次世代パワーモジュール用高性能絶縁回路基板

・耐応力緩和特性に優れた自動車端子コネクター用高性能銅合金

・排気再循環システムの高温測定用ワイドレンジサーミスタ材料

・超高圧技術を用いた工具材料

・屈曲性を備えた世界最薄フレキシブルサーミスタセンサ

・高精度切削工具の精密形態形成技術

・次世代二次電池用材料と評価技術

・パワコンやインバータ用静音高効率リアクトル用圧粉コア

・セメントキルンの廃棄物増処理設計技術

・貴金属製錬プロセスの改良技術

・高効率フッ素低減化排水処理技術

 研究開発費の金額は、4,172百万円であります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容は、原則として連結財務諸表に基づいて分析した内容であります。

 本項においては、将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は有価証券報告書提出日(平成26年6月27日)現在において判断したものであります。

(1) 当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析

① 経営成績

当連結会計年度における経営成績の概況については、「1 業績等の概要」に記載しております。

② 財政状態

 当連結会計年度末の総資産残高は、前期末比 332億円(1.8%)減少し、1兆7,785億円となりました。流動資産は、貸付け金地金の減少等により、前期末比 44億円(0.6%)減少の 7,744億円となりました。固定資産は、投資有価証券の減少等により、前期末比 287億円(2.8%)減少の 1兆40億円となりました。

 負債残高は、前期末比 927億円(6.9%)減少し、1兆2,527億円となりました。流動負債は、短期借入金の減少等により、前期末比 578億円(7.3%)減少の 7,385億円となりました。固定負債は、社債の減少等により、前期末比 349億円(6.4%)減少の 5,142億円となりました。なお、借入金に社債、コマーシャル・ペーパーを加えた有利子負債残高については、前期末比 431億円(6.2%)減少の 6,498億円となりました。

 純資産残高は、当期純利益による利益剰余金の増加等により、前期末比 594億円(12.8%)増加の 5,257億円となりました。

 この結果、連結ベースの自己資本比率は、前期末の22.4%から25.7%となり、期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は 309.17円から 348.54円に増加しました。

 

(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について

   「4 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

(3) 事業戦略と見通し

 当社グループは平成26年5月12日に「長期経営方針」及び中期経営計画(2014-2016)「Materials Premium 2016 ~No.1企業集団への挑戦~」を公表しました。

 当社グループは長期経営方針において目標とする「No.1企業集団」の実現に向け、当社グループならではの技術により、価値ある製品・サービス等を創造し、その業界・市場において重要な地位を占める存在となるよう取り組んでまいります。

 

 各事業部門の具体的な事業戦略は以下の通りです。

 

 セメント事業

 旺盛な国内需要への安定供給および米国事業の拡大、新興国への展開により、環太平洋地域におけるメジャープレーヤーを目指します。

 

 金属事業

 鉱山開発投資、製錬事業におけるリサイクル事業の強化、銅加工事業では新興国における拡販により、収益性の改善を図ります。

 

 加工事業

 自動車、航空機、医療分野への拡販、振興国を中心とした販売網、生産拠点の拡充により、世界シェアの拡大を目指します。

 

 電子材料事業

 ユニークで高付加価値戦略製品の短期開発と戦力化を実現するために、マーケティング主導による研究開発を推進します。また、シリコン事業全体について、早期経営安定化を図ります。

 

 アルミ事業

 熱交換器用押出多穴管・板材の海外拠点増強ならびに飲料用アルミ缶製造ラインの高速化により増産体制を構築します。

 

(4) 流動性の管理方針

 当社グループは、キャッシュマネージメントシステムの導入等によるグループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上に努めております。

 当社グループの資金の状況については、「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

(5) 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社グループの経営陣は、収益力、有利子負債等グループの財政状況を認識し、現在の事業規模及び入手可能な情報に基づき経営資源の最も効率的な運用を行い、企業価値を最大限に高めるべく努めております。

 

(6) 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しておりますが、その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用等、開示に影響を与える判断と見積りが必要となります。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループが採用している重要な会計方針(「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載)のうち、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼす事項であると考えております。

① 貸倒引当金、投資損失引当金、関係会社事業損失引当金の計上

 当社グループの保有する債権または関係会社への投資に係る損失が見込まれる場合、その損失に充てる必要額を見積もり、引当金を計上しておりますが、将来、債務者や被出資者の財務状況が悪化した場合、引当金の追加計上等による損失が発生する可能性があります。

② 有価証券の減損処理

 当社グループの保有する株式については、時価のある有価証券、時価のない有価証券ともに、合理的な判断基準を設定の上、減損処理の要否を検討しております。従って、将来、保有する株式の時価や投資先の財務状況が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性があります。

③ 固定資産の減損処理

 当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」(「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(企業会計審議会 平成14年8月9日))及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号 平成15年10月31日)を適用しております。将来、経済環境の著しい悪化や市場価格の著しい下落の発生如何によっては、減損損失を計上する可能性があります。

④ 繰延税金資産の回収可能性

 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して将来の課税所得を合理的に見積もっております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、課税所得がその見積り額を下回る場合、繰延税金資産が取崩され、税金費用が計上される可能性があります。