第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 当連結会計年度(2017年1月1日から2017年12月31日)における世界経済は、欧米を中心に全般的に緩やかな持ち直し基調となりました。しかしながら、米国の政策運営、中国経済の動向、朝鮮半島の政治情勢、英国EU離脱に係る諸問題等、世界経済をとりまく不確実性は高く、今後の動向を注視していく必要があります。

 このような情勢下、3ヵ年中期経営計画T-2018の2年目となった当期では、計画初年度で取り組んだ「構造改革」の成果を活かし、成長戦略に軸足を移してまいりました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は前期比19.9%増の1,062億5千2百万円となりました。営業利益は前期比大幅増の114億8千6百万円となりました。経常利益は前期比大幅増の132億4千9百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は118億1千6百万円となりました(前期は79億2千9百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)。
 

セグメント別の業績は次のとおりです。
 

[カーボンブラック事業部門]

 対面業界であるタイヤ業界及び自動車業界の堅調な推移、原料油価格変動分の価格改定実施、昨年の構造改革
の効果現出等により前期比増収増益となりました。

 この結果、当事業部門の売上高は前期比26.6%増の478億2千8百万円となり、営業利益は前期比44.4%増の68億6千8百万円となりました。
 

[黒鉛電極事業部門]

 黒鉛電極事業は構造的な需給不均衡による販売価格の下落を続けてきましたが、世界的な電極需要回復と主要原材料の供給不足を背景に、当期後半より電極市況は好転いたしました。しかしながら当期における前期比増益は主に構造改革の効果現出によるもので、本格的な売価改善の影響は翌期以降となります。

 2017年11月より北米のTOKAI CARBON GE HOLDING LLCを連結対象としており、売上高21億8千万円を当期に織り込んでおります。

 この結果、当事業部門の売上高は前期比14.0%増の236億1千万円となり、営業利益は17億4千8百万円となりまし
た(前期は12億9千万円の営業損失)。

 

[ファインカーボン事業部門]

 一般産業用市場が堅調に推移するなか、太陽電池及び半導体市場も好調を維持しており、黒鉛素材、CVD/CC製品の需要が増加しております。これにより当社の生産設備は高稼働を維持しており、昨年度実施した合理化の効果現出や製品価格の上昇により、前期比増収増益となりました。
 この結果、当事業部門の売上高は前期比11.8%増の144億4千7百万円となり、営業利益は17億3千8百万円となりました(前期は18億2千5百万円の営業損失)。

 

[工業炉及び関連製品事業部門]

 工業炉の売上高は、主要な需要先である情報技術関連業界向け及びエネルギー関連業界向けとも設備投資が進んだことから前年比大幅増となりました。発熱体その他製品の売上高は、中国の電力インフラ向けが減少したものの、電子部品業界向け及びガラス業界向けの需要が堅調に推移したため前期比増となりました。

 営業利益については、工業炉の増収並びに発熱体事業における中国子会社の収益改善等が寄与し前期比増となりました。

 この結果、当事業部門の売上高は前期比30.1%増の68億2千3百万円となり、営業利益は前期比160.0%増の13億4千2百万円となりました。

 

[その他事業部門]

摩擦材
 産業用ロボットを含む工作機械、建設機械、鉱山機械等の需要が増え摩擦材販売は好調に推移しました。
 この結果、摩擦材の売上高は前期比14.0%増の86億7千1百万円となりました。
負極材
 世界的な環境規制強化に伴い電気自動車市場が拡大しておりリチウムイオン二次電池用負極材の販売量も増加いたしました。

 この結果、負極材の売上高は、前期比12.3%増の46億4千万円となりました。
その他
 不動産賃貸等その他の売上高は、前期比18.3%増の2億3千万円となりました。

 以上により、当事業部門の売上高は前期比13.5%増の135億4千2百万円となり、営業利益は前期比64.3%増の8億5
千8百万円となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比63億7千6百万円減の221億4千5百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。


(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益となったことなどにより収入が増加したものの、たな卸資産の増加などにより収入が減少し、前連結会計年度比69億6千2百万円収入減の、105億4千3百万円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出などにより、前連結会計年度比104億1千6百万円支出増の、140億3千9百万円の支出となりました。


(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は、短期借入金の増加などにより、前連結会計年度比30億7千9百万円支出減の、45億3千4百万円の支出となりました。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

カーボンブラック事業

46,865

147.7

黒鉛電極事業

22,863

118.6

ファインカーボン事業

14,429

108.4

工業炉及び関連製品事業

6,865

143.8

報告セグメント計

91,023

131.7

その他事業

13,111

117.0

合計

104,135

129.7

(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

2. 金額は、販売価格によっております。

3. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

なお、工業炉及び関連製品については、受注生産を行っております。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

工業炉及び関連製品事業

10,834

222.2

5,544

363.5

10,834

222.2

5,544

363.5

(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

2. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

カーボンブラック事業

47,828

126.6

黒鉛電極事業

23,610

114.0

ファインカーボン事業

14,447

111.8

工業炉及び関連製品事業

6,823

130.1

報告セグメント計

92,709

121.0

その他事業

13,542

113.5

合計

106,252

119.9

(注)1. セグメント間取引については、相殺消去しております。

2. 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 今後のわが国経済は、世界経済が緩やかに成長推移することが見込まれるなか、引き続き回復基調で推移することが期待されますが、朝鮮半島情勢、米国政権の内向きの政策、中国経済の量から質への転換による経済動向、テロの拡散脅威等の不確実性に鑑み、今後の動向を十分注視し、経済の変調に対し迅速に対応できる体制を整える必要があります。

 当社関連業界においては、黒鉛電極における世界的な需要の回復と主要原料であるニードルコークスの需給逼迫による電極価格の高騰、世界的に堅調な自動車生産に支えられたカーボンブラック市況の回復、並びにファインカーボンにおける太陽電池及び半導体市場の好調に支えられた需要の回復等、前年と比較して事業環境が大きく変化しました。このような情勢下、当社グループは、中期経営計画T-2018初年度の構造改革による成果に加え、事業環境に恵まれたこともあり数値目標として掲げた2018年の売上高1,100億円、営業利益90億円、ROS8%以上、ROIC6%
以上については、売上高を除き一年前倒しで達成しました。

 2018年は、T-2018の主要課題でもある「社内意識改革」、「技術力の復権」に引き続き取り組む一方、既存事業の収益性向上に加え、市場拡大が見込まれる負極材事業への取り組み、新製品開発による新規事業創出等、当社グループの事業領域拡大を図ります。2017年11月に買収した米国のTOKAI CARBON GE HOLDING LLCを加えた日米独のグローバル3極体制の早期立ち上げは、2018年の最重要課題の一つですが、戦略投資枠を活用したM&A戦略の次の一手、次期中期経営計画を展望した成長戦略の策定にも取り組んでまいります。

 経営管理に関する課題については、コンプライアンスを重視した経営は最低限の要件と認識しており、不確実性の高い経営環境下、内外グループ会社を含めたリスク管理体制の拡充も課題です。上場企業として持続的な成長を果たすため、取締役会による実効性のある経営監督体制の構築等、コーポレート・ガバナンス強化についても引き続き努めてまいります。また、このような様々な課題に対応していくための人材育成・強化にも取り組んでまいります。

 当社グループは、企業理念である「信頼の絆」のもと、四つの行動指針(価値創造力、公正、環境調和、国際性)に従い、中長期的な企業価値の向上を目指すことにより、お客様、株主をはじめとするステークホルダーの皆様の期待に応え、企業としての社会的責任(CSR)を果たしてまいります。

 

 

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2018年3月29日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 金融・経済環境に関するリスク

① 事業を取り巻く内外経済環境

当社グループは、日本のみならず、アジア、欧米において事業活動を展開しておりますので、世界経済の動向が当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。今後の内外経済は、緩やかな回復が期待されますが、米国新政権の政策を含めリスク要因も多く、世界経済が想定に反して悪化する場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 為替レートの変動

当社グループは、原材料の輸入、製品輸出等、国際的な事業活動を行っていることから、為替レートの変動が当社グループ業績に影響を与えます。また、当社海外子会社の外貨建財務諸表の円換算に利用する為替レート変動も、当社連結決算に影響を与えます。当社グループの場合、特に影響の大きい、米ドル・ユーロに対する円高は、グループ業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響を及ぼす傾向にあります。

 

③ 資金調達

当社グループは、資金調達の安定性及び流動性の保持を重視した財務運営に努めておりますが、日本を含めた世界の主要な金融市場で混乱が発生した場合、計画通りに資金調達を行うことができない可能性があります。また有利子負債の増加、金利上昇、当社グループの信用格付低下等は、支払利息増大や資金調達余力低下を通じて、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 原材料調達

当社グループは、国内外の多数のサプライヤーから原材料を調達し、安定的な原材料確保と最適な価格の維持に努めておりますが、今後の世界経済動向によって、原材料調達価格が上昇し、これを販売価格に適正に転嫁できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 保有有価証券

当社グループは、事業機会の創出・維持や取引・協業関係の構築・維持・強化等を通じ、中長期的な企業価値向上が図れると判断した場合に、取引先等の株式を取得・保有することがあるため、当社グループが保有する株式の大幅な市場価格の下落は、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 業界・事業に関連するリスク

① 競合他社との競争

当社グループは、各事業分野において、様々な企業との厳しい競争環境下にあり、この結果、多くの製品は価格低下圧力に晒されております。当社グループとしては、原価低減や効率性の向上、技術力の追求等の努力を重ねていきますが、十分な成果が上がらない場合には、マーケットシェアの低下、販売価格の引き下げ等による売上高と利益率の低下を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、市況の変動が著しい電極事業については、その動向が当社グループ業績に与える影響が大きいと思われます。

 

② 国際的な事業展開

当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略の一つとしていますが、国際的な事業展開においては、経済・為替の不確実性に加え、政情不安、法制・規制の想定外の変更、宗教・文化の相違、現地での労使問題等、国内事業と異なる様々なリスクが伴います。当社グループがこのようなリスクに適切に対処できない場合は、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 研究開発

当社グループは、持続的な企業価値向上のため不可欠との認識の下、富士研究所を中心に、次世代技術に係る研究開発とその事業化に努めておりますが、当社グループが、将来の市場ニーズに応える新技術をタイムリーに開発できない場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

④ 買収・業務提携、戦略的投資

当社グループは、成長戦略の一環として、企業買収、業務提携、戦略的投資につき、積極的に取り組む方針としておりますが、経営環境・前提条件の変化等の理由により、当初想定した結果が得られない可能性もあり、予測される将来キャッシュ・フロ-の低下により、のれんの減損が必要になる等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

⑤ 特定業界への依存

当社グループの売上の6割程度は、ゴム業界、鉄鋼業界に集中しており、当該業界の景況が悪化するような場合には、売上高と利益率の低下等を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 有能な人材の確保

当社グループの競争力と将来性は、マネジメントはもちろん、研究・開発・技術・製造、販売、企画・管理等、各部門における専門的知識や技能を持った有能な人材の確保・育成にかかっていますが、人材確保に係る競争も厳しくなっています。有能な人材の採用・育成が想定通りに進まない場合、有能な社員の社外流出を防げないような場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) その他のリスク

① 法的規制・訴訟

当社グループは国内外において、各種の法令・規制に則り、事業活動を行っております。グループ全体として法令遵守の徹底を図っておりますが、新たな法規制の導入や法規制の想定外の変更により、事業活動に対する制約、コストの増加等を通じ、当社グループ業績に悪影響を与える可能性があります。また、当社グループがこれらの法規制に抵触したと当局が判断した場合には、当社グループが課徴金等の行政処分、刑事処分、訴訟等の対象となり、当社グループの社会的評価が低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 環境規制

当社グループは、国内外において、大気汚染、水質汚濁、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、省エネルギー・地球温暖化対策等に関し、様々な環境関連法規制の適用を受け、これに対応しております。将来、新たな環境に関する規制が導入された場合や既存の規制が厳格化された場合、当社グループがこれらの法規制に抵触したと当局が判断した場合等には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権

当社グループは、知的財産を重要な経営資源と位置付け、第三者の知的財産権に対する侵害の予防と当社グループが保有する知的財産権の保護に努めておりますが、見解の相違等の理由により、第三者から特許等への抵触を理由として差止訴訟、損害賠償訴訟等を提起された場合、第三者による知的財産権侵害により当社グループの競争優位性が侵害を受けた場合等には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 災害・事故

当社グループは、製造業の基本である安全と工場災害防止に注力しておりますが、地震、津波、台風、洪水等の自然災害や、火災、爆発事故、テロ攻撃といった事象が発生し、当社グループ拠点の従業員、設備、情報システム等が大きな損害を被った場合、当社事業活動に影響を与え、物的・人的な損害費用を発生させ、社会的評価を失墜させることにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 品質・PL

当社グループは、主要な国内生産拠点においては、品質マネジメントシステム(ISO9001)を取得し、品質管理に関する規定、規格及び作業標準等を定めて製品の品質に万全を期すよう努めておりますが、予測し難い原因により、重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起等が発生した場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 情報セキュリティ

当社グループは、事業遂行にあたりグループとして保有している、生産技術・研究開発・調達・販売等の機密情報につき、厳正な管理に努めていますが、コンピュータウィルスへの感染、サイバー攻撃等の不正アクセス、その他不測の事態等により、機密情報が紛失・漏えいした場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2017年9月28日開催の臨時取締役会において、黒鉛電極メーカーであるSGL GE Holding GmbHから、その米国事業を担うSGL GE Carbon Holding LLCの全株式を取得し子会社とすることを決議するとともに、同年10月2日に株式譲渡契約を締結しました。

 

6【研究開発活動】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社の開発・技術部門と連携のもと、富士研究所、知多研究所、防府研究所が主体となり、基礎研究をベースにした新製品の開発、生産技術研究及び既存製品の高性能化、品質改良等諸研究開発を積極的に推進しております。

なお、当社グループの研究開発活動の内容及び金額は、特定のセグメントに関連付けることが困難であるため、一括して記載しております。

 

(主な研究開発の内容)

当社において、成長分野に位置するファインカーボン、ファインセラミックスは優れた材料特性を有し、用途は多岐にわたりますが、近年、エネルギー関連、半導体、エレクトロニクス、環境分野への伸びが著しく、これらのハイテクニーズに合った製品の開発を行っております。

培った技術を基に、リチウムイオン二次電池用カーボン負極材、インクジェットプリンター用水性カーボンブラック等への研究開発投資を行っております。

東海高熱工業㈱においては、「T-2018」中期経営計画の成長戦略の基盤づくりとして、取り組んできた成果を確実にビジネスに結びつける活動を行っております。

そのうえで、他社にはない差別化製品を工業炉、炭化けい素発熱体ともに開発中です。両分野のシナジー効果も図り、二次電池製造、電子部品の製造メーカー向けに商品化を進めております。さらには、継続的に新製品を創出するため、開発部門と工場との連携を強化することにより、マーケティング・サンプル試作・新商品の市場投入のスピードアップを推進してまいります。

 

(研究開発費の金額)

当連結会計年度の研究開発費は14億8千2百万円であります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間の収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っております。ただし、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますので、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の売上高は、カーボンブラック事業を主体とした販売数量増加と売価上昇及び為替円安が寄与したことなどにより、前期比19.9%増の1,062億5千2百万円となりました。

売上原価率は、主要3事業(カーボンブラック、電極、ファインカーボン)においてマージンが改善したこと及び構造改革効果による固定費の減少などにより、前期比7.5ポイントダウンの73.8%となりました。これにより、売上総利益は前期比68.7%増の278億9千万円となりました。

販売費は、売上高が増加したものの、前期は取引先業績悪化による貸倒引当金繰入額の計上があったことから、前期比4.6%減の45億4千2百万円となりました。一般管理費は、前期は研究開発費において一括費用計上を行ったため減少したものの、電極事業における北米生産拠点の取得による費用の発生及び労務費などが増加したことなどにより、前期比11.5%増の118億6千万円となりました。販売費及び一般管理費合計では前期比6.5%増の164億3百万円となり、対売上高比率は前期比2.0ポイントダウンの15.4%となりました。これにより、営業利益は前期比大幅増の114億8千6百万円となりました。

営業外収益については、持分法適用会社の業績が順調に推移していることから持分法による投資利益が増加したことなどにより、前期比36.1%増の28億4千9百万円となりました。営業外費用については、円安が進行したため為替差損が減少したこと及び借入金の返済に伴い支払利息が減少したことなどにより、前期比28.6%減の10億8千7百万円となりました。

特別利益については、固定資産売却益25億6千7百万円、関係会社清算益5億2千2百万円及び投資有価証券売却益5千8百万円を計上しております。特別損失については、関係会社株式売却損3億7千3百万円及び関係会社出資金売却損9千6百万円を計上しております。この結果、税金等調整前当期純利益は159億2千7百万円(前期は79億3千8百万円の税金等調整前当期純損失)となりました。

法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前期比大幅増の38億5千4百万円となり、法人税等の負担率は24.2%となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は118億1千6百万円(前期は79億2千9百万円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

また、当連結会計年度末の総資産については、電極事業における北米生産拠点の取得による増加及びのれんが計上されたことなどにより、前期末比241億4千8百万円増の1,829億7千2百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度のROA(総資産経常利益率)は、前期比6.8ポイントアップの7.8%となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、4「事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、1「業績等の概要」(2) キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

② 財務政策

当社グループは、現在、運転資金及び設備投資資金について内部資金又は借入により資金調達することとしております。当連結会計年度末の借入金残高は161億4千4百万円となっております。

また、当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、貸出コミットメント契約を締結しており、当連結会計年度末の未使用残高は100億円となっております。

当社グループは、その健全な財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能であると考えております。