第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

 平成28年の世界経済は、一部新興国で景気の減速が見られましたが、欧米を中心に全般的に緩やかな持ち直し基調となりました。しかしながら世界経済をとりまく様々な不確実性は高く、その回復の行方は注視していく必要があります。

 このような経営環境のもと、当社グループは当期を初年度とする3ヵ年中期経営計画T-2018をスタートさせました。2018年(平成30年)の業績目標として、売上高1,100億円、営業利益90億円、ROS(売上高営業利益率)8%以上、ROIC(投下資本利益率)6%以上を掲げ、「事業再構築」と「社内意識改革」からなる構造改革による成長基盤の確立に取り組んでまいりました。2016年(平成28年)は構造改革の施策として、①ファインカーボン事業における等方性黒鉛の生産能力削減と製造品目の絞り込み②要員の最適化③黒鉛電極事業における一層のダウンサイズと業界再編への取り組み④カーボンブラック事業の中国拠点における生産能力縮小と高付加価値製品主体の生産体制への移行⑤全社的な80億円規模の在庫削減⑥部門間の壁を打破した社内コミュニケーションの改善等に取り組みました。これらの構造改革には大きな痛みを伴いますが、強靭な利益体質への移行のためには不可避な措置であると判断し、実行してまいりました。

 この結果、当連結会計年度の売上高は前期比15.5%減の885億8千万円となりました。営業利益は前期比72.3%減の11億3千1百万円となりました。経常利益は前期比60.6%減の17億2百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純損失は79億2千9百万円となりました(前期は24億8千4百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)。

 

 セグメント別の業績は次のとおりです。

 なお、当社グループは当連結会計年度より、注記事項(セグメント情報等)に記載のとおり、「事業セグメントの区分方法の変更」及び「事業セグメントの利益又は損失の測定方法の変更」を行っております。前期比では、前期を新事業区分に組み替えて計算しております。

 

[カーボンブラック事業部門]

 カーボンブラック事業の売上高は、原料油価格下落に伴う売価の下落により前期比減収となりました。原料油価格は当期より反転の兆しを見せたものの前期の水準にまでは戻りませんでした。一方で、販売数量自体は堅調に推移し、中国及びタイ子会社の労務費、償却費削減等を含めたマージン大幅改善により大幅な増益となりました。

 この結果、当事業部門の売上高は前期比18.3%減の377億6千4百万円となり、営業利益は前期比305.9%増の47億5千5百万円となりました。

 

[黒鉛電極事業部門]

 中国鋼材の過剰生産に端を発する各地域での電炉鋼生産減少等の影響もあり、黒鉛電極の構造的な需給不均衡は改善されず、競争が厳しくなるなか販売価格は下落を続けました。これに加え、円高の進行もあり、売上高、営業利益ともに大幅な減少となりました。

この結果、当事業部門の売上高は前期比23.2%減の207億1千4百万円となり、営業損失は12億9千万円(前期は25億3千9百万円の営業利益)となりました。

 

[ファインカーボン事業部門]

 半導体市場及び一般産業用黒鉛材市場は堅調に推移しており、太陽電池市場は中国を中心に回復しているものの、特殊炭素用黒鉛材の供給能力は依然として需要を上回っており厳しい競争環境にあります。このような状況のもと、当事業部門は要員削減を含む合理化を実施し、生産能力の削減のみならず、製造品目絞り込み、在庫削減等の施策を進めてまいりました。また当期においては、取引先の業績悪化に伴う貸倒引当金繰入等約8億円と長期在庫の評価損約3億円の計上等により、営業利益が大幅に減少いたしました。

 この結果、当事業部門の売上高は前期比13.7%減の129億2千5百万円となり、営業損失は18億2千5百万円(前期は1億1千2百万円の営業利益)となりました。

 

[工業炉及び関連製品事業部門]

 工業炉の売上高は、主要な需要先である情報技術関連業界向けが前期並みに推移したことに加え、一部エネルギー関連業界の設備投資があったため前期比増となりました。発熱体その他製品の売上高は、中国及び新興国の電力インフラ向けが堅調に推移したものの、耐火物の需要減等の影響により前期比減となりました。営業利益は、棚卸資産の除却と製品保証費用を計上したことにより前期比減となりました。

 この結果、当事業部門の売上高は前期比0.6%増の52億4千3百万円となり、営業利益は前期比23.7%減の5億1千6百万円となりました。

 

[その他事業部門]

摩擦材

 中国の需要低迷による建設機械の生産量落ち込みや、農業機械の生産減等の影響を受け、摩擦材の販売数量が前期比落ち込みました。

 この結果、摩擦材の売上高は前期比7.6%減の76億6百万円となりました。

その他

 不動産賃貸等その他の売上高は、リチウムイオン二次電池用負極材の販売数量が増加したことにより前期比32.7%増の43億2千5百万円となりました。

 以上により、当事業部門の売上高は前期比3.8%増の119億3千2百万円となり、営業利益は前期比23.3%減の5億2千2百万円となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比56億2百万円増の285億2千1百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。


(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は、たな卸資産の減少などにより収入が増加したものの、税金等調整前当期純損失となったことなどにより収入が減少し、前連結会計年度比31億7百万円収入減の、175億5百万円の収入となりました。


(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は、投資有価証券の売却による収入の減少などにより、前期31億8千9百万円の収入から、36億2千2百万円の支出となりました。


(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は、短期借入金及び長期借入金の返済による支出の減少、長期借入れによる収入の減少などにより、前連結会計年度比73億1千3百万円支出減の、76億1千3百万円の支出となりました。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

カーボンブラック事業

31,737

73.1

黒鉛電極事業

19,270

73.4

ファインカーボン事業

13,310

84.6

工業炉及び関連製品事業

4,774

91.2

報告セグメント計

69,092

76.2

その他事業

11,202

102.9

合計

80,295

79.1

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

なお、工業炉及び関連製品については、受注生産を行っております。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

工業炉及び関連製品事業

4,876

86.0

1,525

78.0

4,876

86.0

1,525

78.0

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

カーボンブラック事業

37,764

81.7

黒鉛電極事業

20,714

76.8

ファインカーボン事業

12,925

86.3

工業炉及び関連製品事業

5,243

100.6

報告セグメント計

76,648

82.1

その他事業

11,932

103.8

合計

88,580

84.5

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3【対処すべき課題】

(1) 対処すべき課題

 今後のわが国経済は、世界経済の回復を背景に緩やかに回復することが期待されますが、米国新大統領の政策運営が世界経済に与える影響、中国経済の動向、テロの脅威の増大、英国EU離脱に係る諸問題などのリスク要因も多く、今後の動向には充分注意を払う必要があります。当社関連業界においては、中国鋼材在庫積み上がりによる電炉鋼稼働率低下、供給能力過多による中国製品の輸出拡大等により事業環境は引き続き厳しくなっております。

 このような情勢下、当社グループは、中期経営計画T-2018の初年度となる当期、「事業再構築」と「社内意識改革」からなる構造改革に取り組み、前述の通り、事業再構築を中心とする経営基盤強化、資本効率の改善に成果をあげることができました。今後、以下取り組みを通じ、中期経営目標として掲げた2018年(平成30年)の売上高1,100億円、営業利益90億円、ROS8%以上、ROIC6%以上の達成に向け、総力を挙げてチャレンジしてまいります。

 2017年(平成29年)は、「社内意識改革」に加え、全事業部の生産技術に横串を刺すべく2015年(平成27年)に新設した技術本部を中心に、「技術力の復権」にも取り組む一方、構造改革から成長戦略へ、軸足を移していきます。足元の業況が厳しい黒鉛電極事業部門・ファインカーボン事業部門については、引き続き、収益性改善に向けた事業再構築への取り組みが必要となりますが、更なる当社事業拡大には、既存事業における成長戦略のみならず、事業領域の拡大が不可欠との認識の下、次世代製品事業の強化と新たな事業の創出にも積極的に取り組んでまいります。

 経営管理に係る課題に目を転じれば、コンプライアンスを重視した経営は最低限の要件であり、不確実性の高い経営環境下、内外グループ会社を含めたリスク管理体制の拡充も課題です。上場企業として持続的な成長を果たすため、取締役会による実効性のある経営監督体制の構築等、コーポレート・ガバナンス強化にも努めます。また、このような様々な課題に対応していくための人材育成・強化にも真正面から取り組んでまいります。

 当社グループは、企業理念である「信頼の絆」のもと、四つの行動指針(価値創造力、公正、環境調和、国際性)に従い、中長期的な企業価値の向上を目指すことにより、お客様、株主をはじめとするステークホルダーの皆さまの期待に応え、企業としての社会的責任(CSR)を果たしていきます。

 

(2) 株式会社の支配に関する基本方針

 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要は、以下のとおりであります。

〈基本方針の内容〉

 当社は、金融商品取引所に株式を上場している会社として、市場における当社株式の自由な取引を尊重し、特定の者による当社株式の大規模買付行為であっても、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資するものである限り、これを一概に否定するものではありません。また、最終的には株式の大規模買付提案に応じるかどうかは株主の皆様の決定に委ねられるべきであると考えています。

 しかしながら、株式の大規模買付提案の中には、たとえばステークホルダーとの良好な関係を保ち続けることができない可能性があるものなど、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を損なうおそれのあるものや、当社グループの価値を十分に反映しているとは言えないもの、あるいは株主の皆様が最終的な決定をされるために必要な情報が十分に提供されないものもありえます。

 そのような提案に対して、当社取締役会は、株主の皆様から負託された者の責務として、株主の皆様のために、必要な時間や情報の確保、株式の大規模買付提案者との交渉などを行う必要があると考えております。

 当社は、上記基本方針に基づき、2008年(平成20年)に「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」を導入致しましたが、2014年(平成26年)2月10日開催の取締役会において、同3月28日開催の第152回定時株主総会終結の時をもって、当該買収防衛策を継続しないことを決議しております。ただし、当社は、当該買収防衛策の非継続後も当社株式の大規模買付が行われた際には、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上のために、積極的な情報収集と適時開示に努めるとともに、その時点において適切な対応を実施してまいります。

 

 

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成29年3月29日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 金融・経済環境に関するリスク

① 事業を取り巻く内外経済環境

当社グループは、日本のみならず、アジア、欧米において事業活動を展開しておりますので、世界経済の動向が当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。今後の内外経済は、緩やかな回復が期待されますが、米国新政権の政策を含めリスク要因も多く、世界経済が想定に反して悪化する場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 為替レートの変動

当社グループは、原材料の輸入、製品輸出等、国際的な事業活動を行っていることから、為替レートの変動が当社グループ業績に影響を与えます。また、当社海外子会社の外貨建財務諸表の円換算に利用する為替レート変動も、当社連結決算に影響を与えます。当社グループの場合、特に影響の大きい、米ドル・ユーロに対する円高は、グループ業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響を及ぼす傾向にあります。

 

③ 原材料調達

当社グループは、国内外の多数のサプライヤーから原材料を調達し、安定的な原材料確保と最適な価格の維持に努めておりますが、今後の世界経済動向によって、必要な原材料が確保できない場合や原材料調達価格が上昇し、これを販売価格に適正に転嫁できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 保有有価証券

当社グループは、事業機会の創出・維持や取引・協業関係の構築・維持・強化等を通じ、中長期的な企業価値向上が図れると判断した場合に、取引先等の株式を取得・保有することがあるため、当社グループが保有する株式の大幅な市場価格の下落は、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 業界・事業に関連するリスク

① 競合他社との競争

当社グループは、各事業分野において、様々な企業との厳しい競争環境下にあり、この結果、多くの製品は価格低下圧力に晒されております。当社グループとしては、原価低減や効率性の向上、品質や信頼性の向上、技術力の追求等の努力を重ねていきますが、十分な成果が上がらない場合には、マーケットシェアの低下、販売価格の引き下げ等による売上高と利益率の低下を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 国際的な事業展開

当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略の一つとしていますが、国際的な事業展開においては、経済・為替の不確実性に加え、政情不安、法制・規制の想定外の変更、宗教・文化の相違、現地での労使問題等、国内事業と異なる様々なリスクが伴います。当社グループがこのようなリスクに適切に対処できない場合は、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 研究開発

当社グループは、持続的な企業価値向上のため不可欠との認識の下、富士研究所を中心に、次世代技術に係る研究開発とその事業化に努めておりますが、当社グループが、将来の市場ニーズに応える新技術をタイムリーに開発できない場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 買収・業務提携、戦略的投資

当社グループは、成長戦略の一環として、企業買収、業務提携、戦略的投資につき、積極的に取り組む方針としておりますが、経営環境・前提条件の変化等の理由により、当初想定した結果が得られない可能性もあり、予測される将来キャッシュ・フロ-の低下により、のれんの減損が必要になる等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

⑤ 特定業界への依存

当社グループの売上の6割程度は、ゴム業界、鉄鋼業界に集中しており、当該業界の景況が悪化するような場合には、売上高と利益率の低下等を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 有能な人材の確保

当社グループの競争力と将来性は、マネジメントはもちろん、研究・開発・技術・製造、販売、企画・管理等、各部門における専門的知識や技能を持った有能な人材の確保・育成にかかっていますが、人材確保に係る競争も厳しくなっています。有能な人材の採用・育成が想定通りに進まない場合や有能な社員の社外流出を防げないような場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) その他のリスク

① 法的規制・訴訟

当社グループは国内外において、各種の法令・規制に則り、事業活動を行っております。グループ全体として法令遵守の徹底を図っておりますが、新たな法規制の導入や法規制の想定外の変更により、事業活動に対する制約、コストの増加等を通じ、当社グループ業績に悪影響を与える可能性があります。また、当社グループがこれらの法規制に抵触したと当局が判断した場合には、当社グループが課徴金等の行政処分、刑事処分、訴訟等の対象となり、当社グループの社会的評価が低下し、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

② 環境規制

当社グループは、国内外において、大気汚染、水質汚濁、土壌・地下水汚染、廃棄物処理、省エネルギー・地球温暖化対策等に関し、様々な環境関連法規制の適用を受け、これに対応しております。将来、新たな環境に関する規制が導入された場合や既存の規制が厳格化された場合、当社グループがこれらの法規制に抵触したと当局が判断した場合等には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権

当社グループは、知的財産を重要な経営資源と位置付け、第三者の知的財産権に対する侵害の予防と当社グループが保有する知的財産権の保護に努めておりますが、見解の相違等の理由により、第三者から特許等への抵触を理由として差止訴訟、損害賠償訴訟等を提起された場合、第三者による知的財産権侵害により当社グループの競争優位性が侵害を受けた場合等には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 災害・事故

当社グループは、製造業の基本である安全と工場災害防止に注力しておりますが、地震、津波、台風、洪水等の自然災害や、火災、爆発事故、テロ攻撃といった事象が発生し、当社グループ拠点の従業員、設備、情報システム等が大きな損害を被った場合、当社事業活動に影響を与え、物的・人的な損害費用を発生させ、社会的評価を失墜させることにより、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、新たに締結した経営上の重要な契約等はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社の開発・技術部門と連携のもと、富士研究所、知多研究所、防府研究所、田ノ浦研究所、茅ヶ崎研究所が主体となり、基礎研究をベースにした新製品の研究、応用工業化技術開発及び既存製品の高度化、品質改良等諸研究開発を積極的に推進しております。

なお、平成28年12月11日付で田ノ浦研究所を廃止し、その業務を田ノ浦工場へ統合したほか、茅ヶ崎研究所を富士研究所茅ヶ崎分室とする組織変更を行いました。

また、当社グループの研究開発活動の内容及び金額は、特定のセグメントに関連付けることが困難であるため、一括して記載しております。

 

(主な研究開発の内容)

当社において、成長分野に位置するファインカーボン、ファインセラミックスは優れた材料特性を有し、用途は多岐にわたりますが、近年、エネルギー関連、半導体、エレクトロニクス、環境分野への伸びが著しく、これらのハイテクニーズに合った製品の開発を行っております。

培った技術を基に、リチウムイオン電池用カーボン負極材、インクジェットプリンター用水性カーボンブラック等への研究開発投資を行っております。

東海高熱工業㈱においては、「T-2018」中期経営計画の成長戦略の基盤づくりとして、取り組んできた成果を確実にビジネスに結びつける活動を行っております。

そのうえで、他社にはない差別化製品を工業炉、炭化けい素発熱体ともに開発中です。両分野のシナジー効果も図り、2次電池製造、電子部品の製造メーカー向けに商品化を進めております。さらには、継続的に新製品を創出するため、開発部門と工場との連携を強化することにより、マーケティング・サンプル試作・新商品の市場投入のスピードアップを推進してまいります。

 

(研究開発費の金額)

当連結会計年度の研究開発費は22億4千9百万円であります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

なお、当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益又は当期純損失」を「親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失」としております。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間の収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っております。ただし、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますので、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の売上高は、円高の進行のほか、カーボンブラック事業において販売数量は堅調に推移したものの原料油価格下落に伴い売価が下落したこと及び黒鉛電極事業において構造的な需給不均衡が改善されない中で競争に厳しさが増していることなどにより、前期比15.5%減の885億8千万円となりました。

売上原価率は、カーボンブラック事業においてマージンが改善したものの、黒鉛電極事業における販売価格の下落などにより、前期比0.3ポイントアップの81.3%となりました。これにより、売上総利益は前期比17.2%減の165億2千9百万円となりました。

販売費は、貸倒引当金繰入額の計上が生じたものの、売上高が減少したことに伴い、前期比2.1%減の47億6千2百万円となりました。一般管理費は、研究開発費において一括費用計上を行ったため増加したものの、労務費などが減少したことにより、前期比3.4%減の106億3千5百万円となりました。販売費及び一般管理費合計では前期比3.0%減の153億9千8百万円となり、対売上高比率は前期比2.3ポイントアップの17.4%となりました。これにより、営業利益は前期比72.3%減の11億3千1百万円となりました。

営業外収益については、受取利息及び受取配当金の減少などにより、前期比5.6%減の20億9千4百万円となりました。営業外費用については、借入金の返済に伴い支払利息が減少したこと及び円高が進行したものの売掛金等が減少したため為替差損が減少したことなどにより、前期比23.4%減の15億2千3百万円となりました。

特別利益については、固定資産売却益13億8千万円を計上しております。特別損失については、減損損失107億7百万円及び特別退職金3億1千4百万円を計上しております。この結果、税金等調整前当期純損失は79億3千8百万円(前期は67億2千6百万円の税金等調整前当期純利益)となり、親会社株主に帰属する当期純損失は79億2千9百万円(前期は24億8千4百万円の親会社株主に帰属する当期純利益)となりました。

また、当連結会計年度末の総資産については、当社グループ全体で在庫削減に取り組んだこと及び当社並びに連結子会社において減損損失を計上したことなどにより、前期末比252億5千万円減の1,588億2千4百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度のROA(総資産経常利益率)は、前期比1.2ポイントダウンの1.0%となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、4「事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4) 戦略的現状と見通し

 戦略的現状と見通しについては、3「対処すべき課題」(1) 対処すべき課題に記載のとおりであります。

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、1「業績等の概要」(2) キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

② 財務政策

当社グループは、現在、運転資金及び設備投資資金について内部資金又は借入により資金調達することとしております。当連結会計年度末の借入金残高は170億4千8百万円となっております。

また、当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、貸出コミットメント契約を締結しており、当連結会計年度末の未使用残高は200億円となっております。

当社グループは、その健全な財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能であると考えております。

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針については、3「対処すべき課題」(1) 対処すべき課題に記載のとおりであります。