第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

平成26年の世界経済は、民間需要を中心に順調な拡大基調が続く米国に加え、欧州においても英国を中心に景気の持ち直しが見られるなど、概して緩やかな回復傾向が続きました。しかし他方では、年末にかけてギリシャ政局の不安定さを起点とする南欧地域の債務危機再発の危険性、中国及び新興国経済の成長率鈍化や、タイ、ウクライナ、中東などにおける地政学的リスクによる経済低迷といった不透明な要素も色濃くなりました。わが国経済は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動から景気は一時的に減速し、実質賃金の伸びを欠いたものの、各種経済政策による経済環境の安定や円安傾向の定着を背景に、企業業績や雇用の改善、個人消費の回復、企業の設備投資の持ち直しなどが見られ、緩やかな景気回復傾向が持続しました。

このような状況のなか、当社グループの3ヵ年中期経営計画「T-2015」の2年目にあたる当期においては、引き続きコスト競争力の強化、海外事業の拡大、研究開発の促進などに取り組み、一定の進展を図ることができました。海外事業の拡大の一手として平成26年4月に買収し当社の連結子会社としたカナダのカーボンブラックメーカーCancarb Limitedは、ニッチな市場において圧倒的な優位性を持ち、今後、収益への貢献やシナジー効果が期待されます。また、当社グループの対面業界であるゴム製品、鉄鋼、半導体、情報技術関連、産業機械などの各業界におきましては、自動車関連分野では堅調な回復基調が続き、その他の分野でも引き続き緩やかな回復傾向が見られました。

この結果、当連結会計年度の売上高は前期比13.5%増の1,145億7千6百万円となりました。損益面におきましては、カーボンブラックの国内外市場への安価な中国製品の流入や黒鉛電極の価格低迷等の影響を受けましたが、連結子会社となったCancarb Limitedの業績寄与や、コスト低減を引き続き推し進めたことなどにより、営業利益は前期比123.7%増の37億3百万円となりました。経常利益は前期比34.2%増の41億8千万円となり、当期純利益は前期比111.2%増の25億6千2百万円となりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

[カーボンブラック事業部門]

日本において、対面業界である自動車及びタイヤ産業は、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要を受け夏ごろまで好調に推移しました。カーボンブラック需要は、その後の駆け込み需要の反動による影響は小さく、一時的に弱含みであったものの、年間を通じて概ね堅調に推移しました。主要な市場である日本及びタイへの安価な中国製品の流入は続きましたが、北米を中心とした緩やかな景気回復を受け、販売数量は前期比で増加しました。

以上により、当事業部門の売上高は前期比22.1%増の548億3千6百万円となり、営業利益はCancarb Limitedの業績寄与や国内の価格改定等により前期比24.5%増の28億1千1百万円となりました。

 

[炭素・セラミックス事業部門]

黒鉛電極

世界粗鋼生産は前年を上回る水準で推移し、対面業界である電炉鋼の生産も同様に推移しました。黒鉛電極の需要は、北米、欧州、日本においては前年を上回る水準で推移しましたが、当社の主要市場であるアジアにおいては、鉄鋼需要の落ち込みや、供給過剰が続く中国からの鋼材流入の影響等を受け黒鉛電極需要が低迷した結果、販売数量は前期比若干の増加に留まりました。販売価格については、黒鉛電極の需給不均衡が解消されないまま国内外とも弱含みで推移しましたが、外貨建て輸出売上の円安効果もあり黒鉛電極の売上高は、前期比2.1%増の300億8千8百万円となりました。

ファインカーボン

対面業界の回復に伴い全般的に需要は緩やかな回復基調で推移しました。地域別では、米国は、半導体用やポリシリコン向けの需要増に加え一般産業用も堅調に推移しました。欧州は、主力の一般産業用が堅調に推移していましたが、年後半からはロシア・ウクライナ情勢の影響による景気の下振れ懸念が現れてきました。アジアは、日本での需要の伸び悩みがあるものの、韓国はLED用が概ね好調であり、中国は需要回復が見られる太陽電池用をはじめ、一般産業用やLED用も堅調に推移しました。この結果、円安効果も受けファインカーボンの売上高は前期比14.7%増の143億9千9百万円となりました。

以上により、当事業部門の売上高は前期比5.9%増の444億8千7百万円となり、営業利益は、円安効果もあり前期比1,031.1%増の12億6千9百万円となりました。

 

[工業炉及び関連製品事業部門]

工業炉の売上高は、主な需要先である情報技術関連業界において一部に回復の兆しが見られたことや、大型工事の受注により前期比で大幅な増加となりました。発熱体その他関連製品の売上高は、国内における一部電子部品業界の旺盛な需要と、中国におけるガラス業界が堅調に推移したことに支えられ前期比微増となりました。

以上により、当事業部門の売上高は前期比10.9%増の46億7千1百万円となり、営業利益は前期比59.1%増の6億2千6百万円となりました。

 

[その他事業部門]

摩擦材

主な需要先である建設機械業界向けは、平成24年後半以降続く需要低迷から未だ本格回復には至らず、販売数量はスポット需要による微増に留まりました。一方、農業機械向けの需要は好調な北米市場に支えられ販売数量は増加し、二輪車、四輪車向けの販売数量も堅調に推移しました。この結果、摩擦材の売上高は前期比6.1%増の86億1千万円となりました。

その他

不動産賃貸等その他の売上高は、リチウムイオン二次電池用負極材の販売数量が増加したことにより前期比17.9%増の19億6千9百万円となりました。

以上により、当事業部門の売上高は前期比8.1%増の105億8千万円となり、営業利益は、売上増と操業度の改善により前期比大幅改善となる3億6千8百万円となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比13億7百万円減の147億3千8百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。


(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は、仕入債務の増加などにより、前連結会計年度比3億7千6百万円収入増の119億8千3百万円の収入となりました。


(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は、子会社株式の取得による支出の増加などにより、前連結会計年度比132億3千6百万円支出増の240億2千7百万円の支出となりました。


(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は、長期借入れによる収入の増加などにより、前連結会計年度比82億8千7百万円収入増の97億2千8百万円の収入となりました。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

カーボンブラック事業

55,392

123.7

炭素・セラミックス事業

45,706

115.7

工業炉及び関連製品事業

5,057

123.0

報告セグメント計

106,156

120.1

その他事業

7,906

108.3

合計

114,062

119.2

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 金額は、販売価格によっております。

3 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(2) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

なお、工業炉及び関連製品については、受注生産を行っております。

セグメントの名称

受注高

(百万円)

前年同期比(%)

受注残高

(百万円)

前年同期比(%)

工業炉及び関連製品事業

5,330

133.9

1,595

170.0

5,330

133.9

1,595

170.0

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

カーボンブラック事業

54,836

122.1

炭素・セラミックス事業

44,487

105.9

工業炉及び関連製品事業

4,671

110.9

報告セグメント計

103,995

114.1

その他事業

10,580

108.1

合計

114,576

113.5

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 上記金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3【対処すべき課題】

(1) 対処すべき課題

 今後のわが国経済は、海外景気の下振れなどによる景気減速の懸念はあるものの、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が一巡する中で、政府の各種政策効果や個人消費の回復に支えられ、景気は拡大基調に向かうことが期待されます。

 このような情勢のなか、当社グループは、引き続き「炭素材料のグローバルリーダー」への道を歩み、企業理念である「信頼の絆」のもと、四つの行動指針(価値創造力、公正、環境調和、国際性)に従い、企業価値の向上を目指します。次期が最終年となる3ヵ年中期経営計画「T-2015」では、現時点までに一定の進展を見ることができました。数値目標である平成27年の売上高1,400億円、ROS(売上高営業利益率)11%、ROA(総資産経常利益率)8%の達成は遺憾ながら厳しい状況にありますが、取組み課題である既存事業の成長と開発の促進、各事業の業際の深堀り、グローバル展開の加速、M&A(合併・買収)やアライアンスを通した事業領域の拡大に引き続き注力してまいります。

 また、中長期ビジョンとして、当社創立100周年を迎える平成30年(2018年)には「真のグローバル百年企業」として、イノベーションを通じた企業体質の強化を図り、収益力のある企業を目指してまいります。

 更に今後も、メーカーの基本である安全確保、品質管理、環境保全には一層の注意を払っていく所存であり、投資家との対話の促進を通じたコーポレートガバナンスの充実を図り、地域貢献を中心としたCSR(企業の社会的責任)活動の強化にも引き続き努めてまいります。また、金融商品取引法に基づく財務報告にかかる内部統制報告制度の運用、評価、改善により企業基盤の強化にも取り組んでいく所存です。

 

(2) 業務の適正を確保するための体制の整備

 当社は、業務の適正を確保するための体制の整備について基本方針を以下のとおり定めております。

①取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

(a)取締役会において「企業理念」、「行動指針」、「企業倫理綱領」などの基本方針を定め、法令遵守を基本とする職務の執行を徹底する。

(b)法令・定款に従い、取締役会において、重要な業務の執行を決定するとともに、取締役の職務の執行を監督する。

(c)内部監査の実施によりコンプライアンスに対する指摘、勧告を行う。

(d)コンプライアンス確保のための教育、監査、指導を実施する。

(e)組織的又は個人的な法令違反行為等の早期発見と是正及びコンプライアンス経営の強化に資することを目的とした「内部通報制度」を適正に運用する。

(f)「企業倫理綱領」に基づき、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢及び団体とは、断固として対決し、不当、不法な要求には一切応じない毅然とした態度で対応する。

②取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制

(a)『文書取扱規則』及び『電子情報管理規則』に従い、取締役の職務執行に係る情報を文書又は電磁的媒体(以下、文書等という。)に記録、保存し、管理を行う。

(b)取締役及び監査役が、取締役の職務執行に係る情報の文書等を効率的に閲覧・検索できる体制を整備する。

(c)情報開示は、『情報開示基本方針』に従い、重要な決定を行ったときは、その事実をすみやかに適時適切に開示する。

③損失の危険の管理に関する規程その他の体制

(a)重大な災害、事故等の不測の事態が発生したときには、『緊急事態発生時の対応指針』に基づき、迅速で適正な危機対応を行う。

(b)業務運営上の損失の危険を回避するため、経理・財務管理、取引先管理、輸出管理、環境・防災管理、品質管理、情報管理及び投資管理等に関連する規程・規則を制定・整備し、適正に運用する。

(c)その他潜在的な事業リスクを低減・回避するため、日常的なリスク管理を各担当部署が実施し、その結果を取締役会ほか経営に対して報告し、リスクの把握と改善に努める。

④取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制

(a)当社は、執行役員制度を導入し、取締役と執行役の役割等を明確にすることにより、機動的かつ迅速に業務等の執行を推進する。

(b)取締役、社員が共有する全社的な目標として3事業年度を期間とする中期経営計画を策定、具体化するため毎事業年度上半期、下半期の予算を策定し、総合計画会議の場で目標の確認と方針を定める。

(c)月次、四半期、半期、年次ごとの財務報告を作成し、その実績、分析等を取締役会に報告する。

(d)取締役及び業務担当執行役員で構成する経営会議、その他投資委員会、総合計画会議等重要な会議において、重要事項につき審議する。

⑤使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

(a)「企業理念」、「行動指針」、「企業倫理綱領」、「倫理・コンプライアンス行動基準」を周知徹底する。

(b)法令遵守に関する研修や教育を推進する。

(c)内部監査の適正実施によるコンプライアンスに対する指摘、勧告を行う。

(d)組織的又は個人的な法令違反行為等の早期発見と是正及びコンプライアンス経営の強化に資することを目的とした「内部通報制度」を適正に運用する。

(e)「企業倫理綱領」に基づき、市民社会の秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力及び団体とは、断固として対決し、不当、不法な要求には一切応じない毅然とした態度で対応する。

⑥当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制

 当社のグループ会社は、グループ共通の理念、行動指針に基づき経営され、事業目的の遂行と企業集団としての経営効率化の向上に資するよう『関係会社管理規程』に従い、当社のグループ会社の定期的な計画、財務状況の報告と重要案件の事前報告・協議等を行い、業務の適正を確保する。

⑦監査役がその職務を補助すべき使用人を置くことを求めた場合における当該使用人に関する事項及びその使用人の取締役からの独立性に関する事項

 当社は、監査役から「職務を補助すべき使用人」を置くことを求められた場合、必要に応じて、監査役の業務補助のための監査役スタッフの新設及び既設の内部監査の機能強化を検討する。

⑧取締役及び使用人が監査役に報告をするための体制その他の監査役への報告に関する体制及びその他監査役の監査が実効的に行われるための体制

(a)会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、取締役が直ちに監査役会に報告する。

(b)監査役は、法令に従い取締役会に出席するほか、経営会議、投資委員会等重要な会議に出席し、必要に応じて取締役や使用人からその職務の執行状況を聴取する。

(c)監査役は、稟議書ほか重要な報告書等を閲覧する。

(d)監査役、監査法人及び監査室との間でそれぞれ相互に意思疎通及び情報交換を図る。

⑨財務報告の信頼性を確保するための体制

 当社は、「財務報告に係る内部統制システム基本方針」、「財務報告に係る内部統制規程」に基づき整備・運用を行い、その仕組みが適正に機能することを継続的に評価し、必要な是正を行い、当社及び当社のグループ会社の財務報告の信頼性を確保する。

 

(3) 株式会社の支配に関する基本方針

 当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要、及び基本方針実現のための取組みの具体的内容の各概要、並びに各取組みに関する当社取締役会の判断及びその理由は、以下のとおりであります。

 なお、当社は、平成26年2月10日開催の取締役会において、平成26年3月28日開催の第152期事業年度に係る定時株主総会終結の時をもって、「当社株式の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)」を継続しないことを決議しております。

①基本方針の内容

 当社は、金融商品取引所に株式を上場している会社として、市場における当社株式の自由な取引を尊重し、特定の者による当社株式の大規模買付行為であっても、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資するものである限り、これを一概に否定するものではありません。また、最終的には株式の大規模買付提案に応じるかどうかは株主の皆様の決定に委ねられるべきであると考えています。

 しかしながら、株式の大規模買付提案の中には、たとえばステークホルダーとの良好な関係を保ち続けることができない可能性があるものなど、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を損なうおそれのあるものや、当社グループの価値を十分に反映しているとは言えないもの、あるいは株主の皆様が最終的な決定をされるために必要な情報が十分に提供されないものもありえます。

 そのような提案に対して、当社取締役会は、株主の皆様から負託された者の責務として、株主の皆様のために、必要な時間や情報の確保、株式の大規模買付提案者との交渉などを行う必要があると考えております。

②基本方針実現のための取組み

(a)基本方針の実現に資する特別な取組み

(中期経営計画による企業価値向上への取組み)

  当社は大正7年(1918年)の創立以来、90余年にわたり炭素業界のパイオニアかつそのリーディングカンパニーとして歩み続け、カーボンブラック事業、製鋼用黒鉛電極事業、ファインカーボン事業、摩擦材事業並びに工業炉及び関連製品事業を通じて社会の発展に寄与してまいりました。この間当社は顧客をはじめとするステークホルダーとの長い信頼関係を築くとともに、それに支えられて独自の知識経験を積み上げながら首尾一貫して持続的成長を真摯に追求してまいりました。

  この歴史を踏まえながら、更なる成長を追求するため、当社グループは「信頼の絆」という企業理念のもとに、「価値創造力」、「公正」、「環境調和」、「国際性」を行動の基本方針とし、あるべき企業像を「炭素材料のグローバルリーダー」として掲げ、積極的なグローバル展開と技術革新を追求しております。具体的には3年ごとの中期経営計画Tシリーズで具体的な目標を設定しております。

  平成24年を最終年度とする「T-2012」では、厳しい経営環境により売上高などの数値目標は達成できなかったものの、コストダウンや生産効率の改善などで進展を見ることができました。

 次期が最終年となる「T-2015」では、現時点までに一定の進展を見ることができました。数値目標である平成27年の売上高1,400億円、ROS(売上高営業利益率)11%、ROA(総資産経常利益率)8%の達成は遺憾ながら厳しい状況にありますが、取組み課題である既存事業の成長と開発の促進、各事業の業際の深堀り、グローバル展開の加速、M&A(合併・買収)やアライアンスを通した事業領域の拡大に引き続き注力してまいります。

 また、中長期ビジョンとして、当社創立100周年を迎える平成30年(2018年)には「真のグローバル百年企業」として、イノベーションを通じた企業体質の強化を図り、収益力のある企業を目指してまいります。

(コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方)

  当社はコーポレートガバナンスの充実を経営上の重要な課題と位置づけ、企業倫理と法令遵守を徹底するとともに、リスク管理を含めた内部統制システムを整備し、経営の効率化、透明性を確保することに努めております。具体的施策として、当社は監査役制度を採用しております。監査役は4名で構成され、内2名は社外監査役であり、取締役会その他の重要な会議に出席し、取締役や執行役員等からその職務の執行状況を聴取するほか、経営トップとも定期的に意見交換を行い、公正な経営監視体制をとっております。また経営の監督機能と業務執行の分離を図る目的で平成11年より執行役員制を導入しております。

  取締役8名(うち1名は社外取締役)からなる取締役会は経営の基本方針を決定しております。取締役会は経営戦略についての意思決定機関であるとの明確な位置づけのもとに運営し、原則として月1回開催し、法令で定められた事項や重要事項の決定を行い、業務執行状況の報告を受けております。平成19年3月からは経営環境の変化に対応し、最適な経営体制を機動的に構築するために取締役の任期を2年から1年に変更しております。

(b)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

  当社は、当社株式の大量買い付けが行われた際には、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上のために、積極的な情報収集と適時開示に努めるとともに、必要に応じて、会社法その他関係法令等の許容する範囲内において、適切な措置を講じるものとします。

③取締役会の判断及びその判断に係る理由

(a)前述②(a)の取組みは、当社の企業価値を継続的かつ持続的に向上させるための具体的方策として策定されたものであるので、前述①の基本方針に沿い、株主の共同の利益を損なうものではなく、かつ当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しております。

(b)前述②(b)の取組みは、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上のために、会社法その他関係法令等の許容する範囲内での具体的方策として策定されたものであるので、前述①の基本方針に沿い、株主の共同の利益を損なうものではなく、かつ当社役員の地位の維持を目的とするものではないと判断しております。

4【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として次のようなものがあります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成27年3月27日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 製品需要に関する内外市場の経済状況

当社グループは、国内外の市場に積極的に販売活動を展開し、またアジアと欧米に生産拠点をおき、グローバルに事業を展開しております。したがって、世界経済や日本経済の変動が、当社グループ製品の販売に影響を与えます。当社グループでは、生産性の向上やコスト削減を推進し、事業環境の変化に影響されにくい体質づくりを目指しておりますが、これら関連業界の需要減や販売各地域での景気減退が当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業活動

当社グループは、海外市場への展開を推進しており、当社グループの当期の連結売上高に占める海外売上比率は53.5であります。この海外展開に関するリスクとして、市場における政治経済情勢の悪化、輸入における法規制、予期せぬ法令の改変、治安の悪化、暴動、テロ、戦争などの発生が考えられます。これらが当社グループの経営成績や財政状況などに影響を及ぼす可能性があります。特に、中国ではカーボンブラックはタイヤなどの需要拡大に合わせ生産・販売拠点を置き、またファインカーボンについても太陽電池や半導体関連黒鉛素材の需要増に対応し加工・販売拠点を設けるなど、それぞれ業務拡充に努めていることから、中国における政治や経済状況の変化は、特に当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

(3) 為替レートの変動

当社グループは、海外への製品販売や、海外からの原料購入などにおいて外貨建取引がありますので、為替レート変動による影響を受けます。為替予約などによる相場変動のリスクヘッジを行っているものの、急激な為替レートの変動は、業績に影響を与える可能性があります。当社グループの外貨建取引の現状では、主な通貨である米ドル・ユーロに対する円高は業績に悪影響を及ぼし、円安は業績に好影響を及ぼす傾向にあります。

(4) 価格競争

当社グループは、主たる事業である炭素製品のリーディングカンパニーとして、高品質と大幅なコスト低減を両立させた製品を提供し、その優位性を強化し、高収益体質の実現を目指しております。しかし、競合他社の製品力強化、販売価格の引き下げなどにより、当社グループの製品が厳しい価格競争にさらされ、マーケットシェアの低下や売上高の減少により、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(5) 原材料価格の上昇

当社グループは、国内外の複数のサプライヤーから原材料を調達し、安定的な原材料確保と最適な価格の維持に努めておりますが、今後世界の経済動向によっては、原材料価格が大きく変動する可能性があります。そのような場合、当社グループでは、コストダウンの強化、製品価格への転嫁、新規サプライヤーの開拓などにより業績への影響を最小限にする取組みを行いますが、原材料の調達が極めて困難になった場合や更に原材料価格が上昇した場合は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(6) 競争優位性及び研究開発製品

当社グループが展開する各事業においては、当社グループと同種の製品を供給する競合会社が存在します。当社グループでは競争優位性を維持できるよう、対象とする市場分野を慎重に選択したうえで、研究開発・事業化に努めております。しかし、技術や顧客ニーズの変化に適切に対応できなかった場合や、その開発期間が長期化した場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7) 知的財産権

当社グループは、さまざまな特許や商標などの知的財産権を保有、もしくは権利を取得しております。また、それらを厳しく管理し、他社からの侵害にも常に注意を払っております。しかし、当社グループの保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの自社製品などが他人の知的財産権を侵害した場合には損害賠償などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(8) 環境規制

当社グループは資源とエネルギーを大量に使用する環境負荷の高い事業を主に行っております。したがって、環境負荷低減のための設備設置、管理体制の充実、生産性向上などに取り組んでおりますが、今後更に環境に関する規制や社会の要請する環境責任が高まることにより、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

(9) 保有有価証券

当社グループは、金融機関や取引先会社などの株式を保有しているため、株式市況の変動により影響を受ける可能性があります。株式価格の変動リスクについては特別のヘッジ手段を用いておりません。なお、有価証券に係る時価に関する情報は、「第5 経理の状況」の「1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(有価証券関係)」及び「2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(有価証券関係)」に記載しております。

(10) 法的規制等

当社グループは、法令遵守を基本として事業活動を進めておりますが、国内、国外を問わずさまざまな法的規制などを受けており、今後、環境・リサイクル関連や輸出入関連などで、更なる厳しい規制が実施されることが考えられます。そのような場合、事業活動に対する制約の拡大やコストの増加も予想され、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(11) 係争事件等

当社グループの財政状態及び経営成績などに重大な影響を及ぼす可能性のある係争事件などが新たに生じる可能性は少ないですが、今後そのような係争事件などが発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。

(12) 大規模災害

当社グループは、製造業の基本であります安全と工場災害防止に注力しておりますが、大地震、大津波、台風、大洪水やテロなどにより、生産活動の停止や社会インフラの大規模な損壊など予想を超える状況が発生した場合、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、平成26年1月20日開催の取締役会において、TransCanada Corporationの子会社であるTransCanada PipeLines Limitedの保有するCancarb Limitedの発行済株式の全て、及びTransCanada Corporationのグループ会社であるTransCanada Energy Ltd.が所有する排熱処理設備を取得することについて決議したとともに、同日付でTransCanada Pipelines Limitedと株式譲渡契約を締結し、TransCanada Energy Ltd.と資産譲渡契約を締結しました。

 本株式譲渡契約に基づき、平成26年4月15日付でCancarb Limitedの株式を取得し、連結子会社としました。また、本資産譲渡契約に基づき、同日付でTransCanada Energy Ltd.が所有する排熱処理設備を取得しました。

 

 当社は、上記Cancarb Limited株式及び排熱処理設備取得に係る支払資金の調達方法として、平成26年3月17日付で株式会社三菱東京UFJ銀行と180億円を借入枠とするコミットメント・タームローン契約(契約期間 平成26年3月17日から平成27年3月9日)を締結しました。なお、調達した180億円のうち103億円は金融機関からの長期借入金へ借換えております。

 

6【研究開発活動】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社の開発・技術部門と連携のもと、富士研究所、知多研究所、防府研究所、田ノ浦研究所、茅ヶ崎研究所が主体となり、基礎研究をベースにした新製品の研究、応用工業化技術開発及び既存製品の高度化、品質改良等諸研究開発を積極的に推進しております。

なお、当社グループの研究開発活動の内容及び金額は、特定のセグメントに関連付けることが困難であるため、一括して記載しております。

 

(主な研究開発の内容)

当社において、成長分野に位置するファインカーボン、ファインセラミックスは優れた材料特性を有し、用途は多岐にわたりますが、近年、エネルギー関連、半導体、エレクトロニクス、環境分野への伸びが著しく、これらのハイテクニーズに合った製品の開発を行っております。

培った技術を基に、リチウムイオン電池用カーボン負極材、インクジェットプリンター顔料用水性カーボンブラック、燃料電池セパレータ等への研究開発投資を行っております。

東海高熱工業㈱において、開発製品として環境・エネルギー関連市場を中心に省エネ設備及び東海高熱工業㈱独自の新技術を付加したセラミック電子部品の熱処理炉など多方面にわたり他社との差別化製品の展開を強力に進めております。

また、材料面では、東海高熱工業㈱の固有技術である炭化けい素発熱体、炭化けい素構造材料及び窒化けい素材料をベースに新製品、新用途開発の積極的な展開を図っております。

 

(研究開発費の金額)

当連結会計年度の研究開発費は18億8千2百万円であります。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間の収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っております。ただし、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますので、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

当連結会計年度の売上高は、カーボンブラックの国内外市場への安価な中国製品の流入や黒鉛電極の価格低迷等はありましたが、対面業界で緩やかな需要回復が見られたことや、Cancarb Limitedの新規連結、円安による増収効果により、前期比13.5%増の1,145億7千6百万円となりました。

売上原価率は、黒鉛電極やファインカーボンの販売数量増加に対応した操業度の上昇などにより、前期比1.2ポイントダウンの83.7%となりました。これにより売上総利益は前期比22.2%増の186億5千1百万円となりました。

販売費は、売上高の増加に伴い前期比7.1%増の48億7千4百万円となりました。一般管理費は、Cancarb Limitedの新規連結及び同社取得に伴うのれん償却などにより、前期比11.2%増の100億7千2百万円となりました。販売費及び一般管理費合計では前期比9.8%増の149億4千7百万円となり、対売上高比率は前期比0.5ポイントダウンの13.0%となりました。これにより、営業利益は前期比123.7%増の37億3百万円となりました。

営業外収益については、持分法投資利益の増加などにより、前期比3.8%増の29億6千9百万円となりました。営業外費用については、貸倒引当金繰入額の計上、Cancarb Limitedの新規連結などにより、前期比77.8%増の24億9千2百万円となりました。この結果、経常利益は前期比34.2%増の41億8千万円となりました。

特別利益については、固定資産売却益1億7千9百万円を計上しております。特別損失については、減損損失1千4百万円を計上しております。この結果、税金等調整前当期純利益は前期比48.5%増の43億4千5百万円となりました。

法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前期比3.0%減の17億4千9百万円となり、法人税等の負担率は40.2%となりました。この結果、当期純利益は前期比111.2%増の25億6千2百万円となりました。

また、当連結会計年度の総資産については、Cancarb Limitedの新規連結及び同社取得に伴うのれん、顧客関連資産の計上などにより、前期末比270億1千1百万円増の2,104億3千9百万円となりました。

以上の結果、当連結会計年度のROA(総資産経常利益率)は、前期比0.3ポイントアップの2.1%となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、4「事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4) 戦略的現状と見通し

当社グループの方向性を明確なものとし、中長期的な戦略を定め、不断の変革を実行していくため、当社グループは平成25年を初年度とする3ヵ年中期経営計画「T-2015」を策定しました。その中で、数値目標である平成27年の売上高1,400億円、ROS(売上高営業利益率)11%、ROA(総資産経常利益率)8%の達成は遺憾ながら厳しい状況にありますが、取組み課題である既存事業の成長と開発の促進、各事業の業際の深堀り、グローバル展開の加速、M&A(合併・買収)やアライアンスを通した事業領域の拡大に引き続き注力してまいります。

また、中長期ビジョンとして、当社創立100周年を迎える平成30年(2018年)には「真のグローバル百年企業」として、イノベーションを通じた企業体質の強化を図り、収益力のある企業を目指してまいります。

(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローの状況については、1「業績等の概要」(2) キャッシュ・フローの状況に記載のとおりであります。

② 財務政策

当社グループは、現在、運転資金及び設備投資資金について内部資金又は借入により資金調達することとしております。当連結会計年度末の借入金残高は382億9千万円となっております。

また、当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、貸出コミットメント契約を締結しており、当連結会計年度末の未使用残高は180億円となっております。

当社グループは、その健全な財政状態、営業活動によるキャッシュ・フローを生み出す能力により、当社グループの成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金を調達することが可能であると考えております。

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針については、3「対処すべき課題」(1) 対処すべき課題に記載のとおりであります。