当連結会計年度におけるわが国の経済は、アベノミクスの取組みのもと、雇用・所得環境が改善し、緩やかな回復基調が続いたものの、6月に英国の国民投票でEU離脱が支持され、11月には米国の大統領選挙で次期大統領が決定されるなど、政治状況が大きく変化し、株式市場や債券市場、原油市場や外国為替市場などにも重大な影響を及ぼしました。このような状況の中、世界の経済情勢は不安定に推移し、先行き不透明な状況が続きました。
原油市場においては、新興国経済の減速などによる供給過多が懸念される中、ドバイ原油価格は、1月に1バレル20ドル台まで落ち込んだものの、その後年央にかけては、OPEC(石油輸出国機構)加盟国及び非OPEC産油国による減産に向けた活発な議論、米国や新興国における底堅い需要による原油在庫の低下などを背景に、概ね1バレル40ドルから50ドルの範囲内で比較的安定して推移しました。その後、11月末にOPECで8年ぶりに減産合意がなされたことなどを受け、年末に向けて1バレル50ドルを上回って推移しました。
外国為替相場は、年初は1ドル120円台で始まったものの、英国の国民投票の結果や米国の利上げ観測の後退などを受け、次第に円高が進行し、8月には一時1ドル100円を切る水準にまで達しました。その後も暫く円高の基調が続いたものの、11月の米国大統領選挙の結果を受け、再び大きく円安に転じ、1ドル116円台での越年となりました。
(原油価格、為替レートの状況)
|
|
ドバイ原油 |
為替レート |
|
平成27年12月期 連結会計年度 |
50.8 |
121.1 |
|
平成28年12月期 連結会計年度 |
41.4 |
108.8 |
|
増 減 |
△9.4 |
△12.3 |
※各数値は該当期間の平均値によります。
このような経営環境のもと、当社グループの売上高は1兆7,260億円(前連結会計年度比20.7%の減収)となりました。
損益面につきましては、営業利益は464億円(前連結会計年度比586億円の増益)、経常利益は478億円(前連結会計年度比611億円の増益)となりました。これは主に、前連結会計年度においてはたな卸資産評価損が発生していたのに対し、当連結会計年度においては評価益が発生したことに起因するものです。なお、たな卸資産評価の影響等を除いた場合の経常利益相当額は366億円(前連結会計年度比49億円の減益)となりました。
特別損益につきましては、固定資産売却益や補助金収入等の特別利益を減損損失や固定資産処分損等の特別損失が上回った結果、71億円の純損失となり、税金等調整前当期純利益は406億円(前連結会計年度比619億円の増益)となりました。この結果、法人税・住民税及び事業税、法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は169億円(前連結会計年度比443億円の増益)となりました。
各セグメント別の経営成績は次の通りです。
①石油事業
原油調達に関しましては、引き続きサウジ・アラムコ社を中心とする中東産油国及びシェルグループと連携を行うとともに、ロシアや南米をはじめ中東地域以外からの調達も機動的に行い、調達先の多様化を進め、原油市場の情勢を勘案しつつ当社グループ製油所全体にとって最適な調達となるよう努めました。
製造・供給面におきましては、安全かつ安定的な操業を最優先としながらも、国内外の需要動向や製品市況の変化に機敏に対応し、収益を最大化するべく当社グループ製油所全体の最適生産に努めました。当連結会計年度におきましては、当社グループ内の2製油所で大規模な定期修理を実施したこともあり、ガソリン・軽油・ジェット燃料などの燃料油の輸出数量は前連結会計年度に比し大きく減少しましたが、このような状況下でも、収益最大化のため、収益機会を捉え機動的な製品輸出を実施しました。
国内における燃料油販売に関しましては、少子高齢化や低燃費車の普及、産業用燃料におけるエネルギー転換などの構造的要因により、需要が減少していく状況にありますが、原油価格の下落に伴い石油製品価格も低下したことなどから、需要減退ペースは近年に比し鈍化しました。このような中、当社では、中期経営アクションプランに掲げる「石油事業の収益力強化」を実現するため、「製品及びサービスの差別化」に継続して取り組み、業界最強クラスのポイント還元率を誇る「Shell Starlex Card」、高性能プレミアムガソリン「Shell V-Power」、異業種間共通ポイントサービス「Ponta」などの販売促進施策を精力的に展開しました。この結果、当社におけるガソリン・灯油・軽油・重油などを合計した燃料油販売数量は、国内の需要減退ペースに比し堅調に推移し、前連結会計年度を上回る販売数量を達成しました。
加えて、当連結会計年度においては、サービスステーションをご利用になるドライバー世帯の方々をターゲットとした、家庭向けの低圧電力供給プラン「ガソリンが10円/L安くなる電気(ドライバーズプラン)」を4月から導入し、石油事業と電力事業のシナジー効果を追求しました。差別化された特色ある電気料金プランを打ち出すことで、多くのお客様から高い評価をいただいております。
燃料油以外の付加価値製品に関しましては、長寿命や省燃費といったお客様のニーズに合致した自動車用・工業用の潤滑油・グリースや、環境対応型・景観対応型アスファルトの販売活動を、引き続き精力的に展開しました。潤滑油においては、優れた酸化安定性とエンジン保護性能を有し、海外でも入手できる利便性を兼ね備えた高性能ディーゼルエンジン油「シェル リムラ R4X 15W-40」、天然ガス由来の高性能基油を使用し長寿命・低スラッジ・消泡性などを備えた高性能タービン油「シェル ターボ S4X 32」を発売するなど、差別化された高付加価値製品の販売をさらに強化しました。アスファルトにおいても、国内唯一の総合アスファルトメーカーとしての強みを活かし、作業性・施工性が大幅に改善されると好評を得ている「キャリメックスART」の技術をカラー舗装用アスファルトに応用した新製品「ニューメロウファルトA」を導入するなど、高付加価値製品の販売に注力しました。
石油化学事業につきましては、アジア最大の需要国である中国の経済情勢が安定化してくる中、旺盛な需要に支えられ、製品マージンは総じて堅調に推移しました。5月には、昭和四日市石油株式会社の四日市製油所において、ミックスキシレンやベンゼンの増産を目的とする不均化装置が完成し、6月に商業運転を開始しました。
以上の取組みに加え、研究開発分野では、エネルギーソリューション事業との連携など、事業の垣根を越えた技術的協力を行った結果、ガス拡散電極(*1)を用いた人工光合成技術で水と二酸化炭素から炭化水素を直接合成することに世界で初めて成功しました。この技術は、二酸化炭素という温室効果ガスを、クリーンな太陽光エネルギーの活用により有用な資源に変換するものであり、将来に向けて持続可能な社会の実現に大きく貢献する可能性を秘めています。引き続き、実用化に向けて研究開発を進めてまいります。
このような取組みの結果、石油事業の売上高は1兆5,955億円(前連結会計年度比22.2%の減収)、営業利益は538億円(前連結会計年度比576億円の増益)となりました。たな卸資産評価の影響等を除いた場合の連結営業利益相当額は、厳しい事業環境の中でも先述の取組みの結果、安定的な収益を確保し426億円となりましたが、前連結会計年度比では83億円の減益となりました。
*1 ガス拡散電極
:水と気体状態の二酸化炭素を同時に触媒に接触させる構造の電極です。
②エネルギーソリューション事業
太陽電池事業につきましては、当社の100%子会社であるソーラーフロンティア株式会社を中心に事業展開を行っておりますが、国内外ともに厳しい事業環境が続きました。
国内においては、再生可能エネルギー固定価格買取制度の改定に伴い、パネル販売価格が下落しましたが、海外市場と比較すると依然として収益性が高く、住宅用販売を中心に引き続き需要の拡大が見込まれることから、特に注力すべき市場として販売活動に精力的に取り組みました。住宅用販売については、パネル販売のみにとどまらず、パワーコンディショナーや蓄電池などの周辺機器を含むシステム販売を行うことで高い収益性を見込めることから、新規代理店及び住宅メーカーへの営業活動や、既存代理店への販売促進活動を強化しました。また、非住宅用販売については、再生可能エネルギー固定価格買取制度の設備認定を受けているものの、着工に至っていない産業用発電案件に対して、ソーラーフロンティア製品への切り替えを提案する活動も実施しました。これらの取組みの結果、当連結会計年度の国内向けパネル販売数量は、前連結会計年度と同水準を維持しました。
海外においては、円高の影響による収益性の悪化に鑑み、下半期に販売の抑制を行った結果、当連結会計年度の海外向けパネル販売数量は、前連結会計年度を下回りました。
プロジェクト開発から設計、資金調達、建設、運営、売却までを一貫して手掛けることで高い付加価値を生み出すBOT事業(Build(建設)、Own(所有)、Transfer(売却)の略称)も継続して推進し、当連結会計年度においては、国内外合計で100MW弱のプロジェクト案件を売却し、前連結会計年度を大幅に上回る売却益を得ました。加えて、既に開発着手を決定しているプロジェクト案件についても、国内外で鋭意建設を進めております。
パネル生産面では、主力の国富工場(宮崎県、公称年産能力900MW)が安定的に高い稼働率を維持するとともに、生産コストの低減も着実に推進しました。最新の量産技術を導入し、大幅なコスト低減を可能にする東北工場(宮城県、公称年産能力150MW)についても、6月から商業生産へ移行し、製品出荷を開始しました。同工場では、引き続き、更なる稼働率向上に向けて、各種取組みを行っております。
これらの取組みにより、当連結会計年度におけるBOT事業向け出荷も含むパネル出荷数量は、前連結会計年度比で若干増加したものの、円高の影響や市場価格の下落の影響により国内向け、海外向けともに販売単価が下落したことで、結果として営業損失となりました。
電力事業につきましては、当連結会計年度において、当社が出資する高効率大型天然ガス火力発電所「扇島パワーステーション」の3号機(発電能力40.7万KW)が計画どおり2月に稼働を開始したほか、平成27年11月に稼働を開始した、木質ペレットとパームヤシの種殻を主燃料とする「京浜バイオマス発電所」(発電能力4.9万KW)も通年で高い稼働率を維持しました。さらに、その他の既存の自社発電所も、年間を通じて安定的かつ効率的な稼働を維持したことで、当連結会計年度の当社グループ発電所の合計発電量は、前連結会計年度比で約20%増加しました。
このような自社発電能力の拡大に合わせ、電力販売の拡大も精力的に行いました。当連結会計年度においては、国内電力小売りが全面自由化されたことから、当社も低圧電力小売り販売事業に参入しました。4月に、サービスステーションをご利用になるドライバー世帯の方々をターゲットとした「ガソリンが10円/L安くなる電気(ドライバーズプラン)」を、7月には、車を運転しないご家庭でもおトクに電気が使える「昼はもちろん夜に差が出る電気(ホームプラン)」を、さらに11月には、大型エアコンやモーターなどをご利用になるお客様向けの「低圧電力プラン」を順次導入し、新たに市場開放された低圧電力小売り市場においても速やかに販売体制を整えました。加えて、より安定的な収益基盤を確保するため、小売りや卸売り、取引所経由での販売といった複数の販売チャネル間で最適な販売ポートフォリオを構築するべく、各種の施策に取り組みました。これらの活動により、当連結会計年度における電力事業の営業利益は、前連結会計年度比で増益となりました。
このような取組みの結果、エネルギーソリューション事業の売上高は1,213億円(前連結会計年度比1.5%の増収)、営業損失は91億円(前連結会計年度比10億円の増益)となりました。
③その他
その他事業につきましては、建設工事や自動車用品の販売、当社所有のオフィスビルの賃貸などを行っており、その売上高は92億円(前連結会計年度比12.7%の増収)、営業利益は17億円(前連結会計年度比0億円の減益)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べ337億円増加し、491億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次の通りです。
ア)営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、809億円の純収入となりました(前年同期は748億円の純収入)。これは、主に税金等調整前当期純利益及び減価償却費等の増加要因が、売上債権の増加及びたな卸資産の増加等の減少要因を上回ったことによるものです。
イ)投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動によるキャッシュ・フローは、165億円の純支出となりました(前年同期は436億円の純支出)。これは、主に有形固定資産の取得及び長期貸付けによる支出等の減少要因が、短期貸付金の減少等の増加要因を上回ったことによるものです。
ウ)財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少と配当金支払等により、337億円の純支出となりました(前年同期は561億円の純支出)。なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は、前連結会計年度末に比して177億円減少し、1,376億円となりました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
石油事業 |
629,930 |
△33.9% |
|
エネルギーソリューション事業 |
72,820 |
△8.1% |
(注) 1 上記の金額は、石油事業は製品生産金額、エネルギーソリューション事業は販売金額により記載しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループでは、主要製品について受注生産を行っておりません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
石油事業 |
1,595,529 |
△22.2 |
|
エネルギーソリューション事業 |
121,300 |
1.5 |
|
その他 |
9,245 |
12.7 |
|
合計 |
1,726,075 |
△20.7 |
(注) 1 「主要な相手先別販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3 各事業の販売実績の金額は、外部顧客への売上高を記載しております。
(1) 対処すべき課題
石油事業におきましては、少子高齢化の進行、低燃費車の普及、省エネルギー化の推進などによる石油製品の国内需要低下が構造的な問題として継続する中、将来において国内需給バランスの悪化が危惧されています。これを背景に、第二次高度化法が告示され、石油精製元売り各社は、平成29年3月末までに製油所の残油処理能力の向上を果たす義務が課されました。当社グループは、既にコスモ石油株式会社との四日市地域における事業提携により、本義務を満たす方策を決定済みであり、上記期限までに実行する予定です。かかるアクションを通じて、単に第二次高度化法へ対応するだけにとどまらず、国内への石油製品の安定供給体制を十分に確保しつつ、さらに効率性を高め、競争力を強化してまいります。また、平成29年度は、当社グループ製油所において大規模な定期修理が予定されており、安全操業に向けた取組みを徹底すると同時に、環境配慮や競争力向上に向けた投資を積極的に行ってまいります。石油製品の販売におきましても、これまで展開してまいりました差別化戦略をさらに推進するとともに、長期的な視点で今後のサービスステーションモデルの検討を進めてまいります。
太陽電池事業におきましては、国内市場において産業用メガソーラー発電所向けの新規需要が鈍化しているほか、外国為替の変動やパネル販売価格の下落で収益性が低下しているといった課題があります。その一方で、システムコストの低減により、国内の住宅用太陽光発電におけるグリッドパリティ(太陽光発電などの再生可能エネルギーの発電コストが、通常の系統電力のコストと同等となること)はほぼ達成されているほか、経済産業省が推進するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)支援事業などを背景に、将来的に住宅用需要は拡大していく見込みです。さらに、独自の技術に基づくCIS薄膜太陽電池(*1)は、平成23年に国富工場が稼働を開始して以降も、現在に至るまで継続してパネルの出力(変換効率)が向上しており、将来に向けても更なる出力改善と生産コストの低減が期待できます。このような状況を踏まえ、将来にわたり安定した需要と高い収益性が見込まれる国内ルーフトップ市場(*2)へ注力するべく、平成29年7月に、住宅専用太陽光発電システム「SmaCIS(スマシス)」の発売を予定しております。また、新たな市場の開拓やビジネスモデルの構築を目指し、研究開発を加速させ、戦略商品の投入を進めてまいります。
電力事業におきましては、少子高齢化や省エネルギー化の推進などで国内電力需要は漸減傾向にありますが、電力市場の自由化により、当社のような競争力のある自社発電源を有する事業者にとっては、今後も十分に成長余地があると考えております。引き続き、競争力がある電源の開発・確保を検討していくとともに、より安定的で収益性の高い販売ポートフォリオの構築に向けて取り組んでまいります。
以上のように、各事業分野で諸課題に全力で取り組むとともに、出光興産株式会社との経営統合を実現し、「屈指の競争力を有する業界のリーディングカンパニー」及び「日本発の新しいエネルギー企業」として最大限の飛躍を遂げるべく邁進してまいります。
*1 CIS薄膜太陽電池
:銅(Copper)、インジウム(Indium)、セレン(Selenium)を主成分として、当社の独自技術で生産する次世代太陽電池であり、実環境下での発電能力やデザイン性に優れ、カドミウムを含まず環境に優しいことが特徴です。
*2 国内ルーフトップ市場
:国内の屋根に設置される太陽光発電システムの市場の総称であり、一般家庭向けの住宅用と、工場・商業施設などの産業用に大別されます。経済産業省が推進するZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を背景に省エネ対応が期待されており、太陽光発電システム需要も着実に伸長するとみられています。
このような企業活動を進める根底として、当社グループが求めるコンプライアンスとは、単なる法令遵守にとどまらず、社会が求める価値観や倫理観に基づき「誠実」「公正」かつ「他を思いやること」を念頭に行動することであり、社会的責任を果たし持続的成長を実現するため、グループ全体で統一的基準に則り「ぶれないコンプライアンス活動」を継続することが重要であると考えております。今後も引き続き、当社が定める「行動原則」と「健康、安全、危機管理および環境保全(HSSE)に関する基本方針」をグループ全体で共有し、その周知徹底を図ってまいります。
(2) 中期経営アクションプランについて
当社は、中期経営アクションプラン(以下「本アクションプラン」といいます。)において、「石油事業の収益力強化」、「太陽電池事業の競争力強化」、「電力事業の展開」、「成長の芽の育成」を戦略の柱として掲げ、平成25年度から平成29年度までの5年間を実施期間として、これらの戦略を継続的に実行してまいりました。
本アクションプランは、石油事業において、国内最高の収益性を確立すること、太陽電池事業において、グローバル市場でも十分に競争力を有する事業体制を構築すること、電力事業において、発電源を多様化しつつスピード感をもって発電能力を拡大していくことを企図しています。
平成28年度までの4年間において、当社は、「ダントツプロジェクト」を通じた構造的コスト削減やサプライチェーンの各分野における付加価値向上の実現、コスモ石油株式会社との連携を通じた第二次高度化法対応と当社グループ製油所における競争力向上、高性能プレミアムガソリン「Shell V-Power」などの販売促進を通じた差別化戦略の推進を実行してまいりました。
平成29年度は、本アクションプラン実行の最終年度として、これまで実行してきた施策の効果を確実に生み出し、当社の競争力を確固たるものにし、強靭な収益体質を有する総合エネルギー企業となることを目指してまいります。
なお、当社は、先述のとおり、現在、出光興産株式会社との間で経営統合の実現に向けた協議を継続して進めております。経営統合が実現した後の中期的な経営戦略につきましては、別途改めて策定し、株主の皆様にお知らせいたします。
当社グループでは、事業等のリスクのチェック・管理体制を整備し、リスクの低減に努めておりますが、当社グループの事業の状況及び経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項には、下記各項のものがあります。
なお、下記リスクは当連結会計年度末において当社グループが判断したものであり、リスクのすべてではありません。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
(1) エネルギー需要及び製品市況の影響に関するリスク
国内における石油製品に対する需要は、わが国の経済情勢、国内エネルギー需給等の影響を受けて変動します。また、国内の石油製品市場は、需要動向、業界他社との価格競争、海外の石油製品価格、他のエネルギーとの相対的価格競争力の変化等の影響を受けます。太陽電池市況も需給バランスの状態、業界他社との価格競争に影響されます。
これらの変動要因は、輸出を含め当社グループが販売する製品の数量及び価格にも影響を与え、損益変動の要因となります。
(2) 原油、原材料価格及び為替相場の変動に関するリスク
① 販売マージン及び運転資金への影響
当社グループの国内石油製品の売上原価は、原油価格及び外国為替相場の変動の影響を受けるため、これらの影響を国内における製品その他の販売価格に反映させることを基本としております。また、太陽電池製品の売上原価も、原材料価格及び外国為替相場の変動の影響を受けるため、これらの影響を国内外における製品の販売価格に反映させることを基本としております。しかしながら、国内外の市場環境等により売上原価の変動を販売価格に反映することが困難な場合には、損益変動の要因となります。
また、原油、原材料の価格の上昇あるいは為替の急激な変動により必要運転資金が増大する可能性があります。
② たな卸資産評価の影響
当社グループでは、たな卸資産の評価を主として総平均法で行っており、原油・原材料・製品価格が下落した場合は、期初の相対的に高価なたな卸資産の影響により売上原価が押し上げられ、損益に対するマイナス要因となります。一方、原油・原材料・製品価格が上昇した場合は、期初の相対的に安価なたな卸資産の影響により売上原価が押し下げられ、損益に対するプラス要因となる等、原油・原材料・製品価格の変動が財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(3) 原油、原材料の調達元に関するリスク
当社グループは、原油の大半を海外とりわけ中東から調達しております。産油国ならびに国際的な政治情勢の変動等の事由により原油調達に支障が生じ、適切な代替供給源を確保することが出来ない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、太陽電池は原材料に希少金属を使用しており、供給地の予期せぬ事情等で原材料調達に支障が生じる場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(4) 他社との競合、あるいは技術革新に関するリスク
当社グループは、国内において石油事業を中心に従来からの精製設備や給油所数の過剰状態に加え、国内石油製品需要の減退により他社との激しい競争にさらされております。太陽電池事業においては技術革新が急速に進行しており、これに伴い技術標準やコスト競争力の優位性が変化し、国内外の他社との競合状況も影響を受けます。これに対応すべく当社グループは、戦略的提携・協業を含め、今後とも競争力の維持・向上に努めますが、当社グループがこのような競争環境下において効率的な事業運営が出来ない、あるいは戦略的提携・協業から十分な成果が得られない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(5) 事業活動にかかる環境規制及び税の賦課等に関するリスク
将来、我が国において二酸化炭素の排出量や化石燃料の消費に対する数量規制及びその他の新たな環境規制が導入された場合には、追加の設備投資や費用負担が増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
太陽電池事業においては、各国政府の補助金政策の変更が、国内外の太陽電池の需要動向に影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(6) 災害、事故等に起因する事業活動の停止、制約等に関するリスク
当社グループでは、HSSE管理規程により健康(Health)、安全(Safety)、危機管理(Security)及び環境保全(Environment)に関する基本事項を定めて、安全操業の徹底を図り、さらに損害保険の付保、危機管理計画書や事業継続計画書の作成並びにその訓練等により自然災害発生時や新型インフルエンザ等の感染症の流行時のリスクの極小化に努めておりますが、製油所や太陽電池工場をはじめとする当社グループの各拠点が、想定を超えた災害等の事態に見舞われた場合には操業に支障が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、重大な労働災害、設備事故等が発生した場合や情報システムに障害が発生した場合にも、事業活動の停止、制約等により、同様の影響を与える可能性があります。
(7) 内部統制システム構築に関するリスク
当社グループでは、従来から行動原則担当役員の任命、独占禁止法遵守規程の履行、リスク管理体制の構築・運営、内部監査等の実施により、コンプライアンスの強化に努めております。
しかし、当社グループが構築した内部統制システムが有効に機能せず、コンプライアンス上のリスクが完全に回避できない事態が生じた場合には、ステークホールダーの信頼を失い、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(8) 知的財産権に関するリスク
技術開発の競争に加え、知的財産権戦略がますます重要となる中、専門部署を設けノウハウを含む知的財産権の管理体制や防御対策強化に努めておりますが、対応に不十分な分野が生じた場合には、知的財産権の侵害等の紛争やノウハウの流出が生じる可能性があり、これらは当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(9) 製造物責任に関するリスク
当社グループは厳正な品質管理基準に基づき製品を製造しておりますが、万が一製品に欠陥が発生した場合に備えて保険に加入しています。しかしながら予期せぬ事情で大規模なリコールや訴訟が発生した場合には、法的責任を負う可能性がある他、ブランドイメージの低下を招き、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(10) 個人情報の管理に関するリスク
当社グループは、製品販売等の事業に関連して顧客情報をはじめとする個人情報を取得して利用しており、その取り扱いについては社内管理体制を構築し、細心の注意を払っておりますが、これらが何らかの理由により流出したり悪用されたりした場合には、法的責任を負う可能性がある他、ブランドイメージの低下を招き、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(11) 退職給付に関するリスク
当社グループの退職給付債務及び費用は、数理評価計算によって算出され、割引率等の基礎率や年金資産の長期期待運用収益率がその前提条件として設定されております。基礎率等に関する実際の数値が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、その影響は累計され、将来にわたって規則的に認識されることになるため、退職給付債務の金額及び将来期間において認識される費用に影響を与えることになります。
|
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約の種類 |
契約内容 |
効力発生日 |
|
昭和シェル石油株式会社(当社) |
シェル・ブランズ・インターナショナル・アー・ゲー |
スイス |
商標等 |
特定の事業のブランディングに関する商標等のライセンス契約 |
平成28年12月19日 |
|
同上 |
シェル・インターナショナル・ペトロリウム・カンパニー・リミテッド |
英国 |
潤滑油事業 |
潤滑油製品に関する技術交流及び研究開発、OEMとの関係、並びにサービスの相互提供等に関する契約 |
平成28年12月19日 |
|
同上 |
シェル・ケミカルズ・ジャパン株式会社 |
日本 |
事業賃貸借 |
石油製品等国際トレーディング事業の賃貸とオペレーションの一体化に関する基本合意 |
平成19年8月1日 |
|
同上 |
シェル・グローバル・ソリューションズ・インターナショナル・ビー・ブイ |
オランダ |
技術役務契約 |
1 石油精製及び石油製品の製造事業に関する一般的技術役務の提供 2 上記事業に関する技術的助言・役務の提供 |
平成19年1月1日 |
|
同上 |
サウジ・アラビアン・オイル・カンパニー(サウジ・アラムコ社) |
サウジアラビア |
原油供給契約 |
原油供給に関する基本合意 |
平成16年8月31日 |
(注) 平成28年12月19日付で主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社が異動したことに伴い、当社とザ・シェル・ペトロリウム・カンパニー・リミテッド及びザ・アングロ・サクソン・ペトロリウム・カンパニー・リミテッドとの間の平成16年8月24日付「提携関係の維持に関する基本合意」(商標の使用や研究開発、経営ノウハウの共有、人材交流等の提携関係を維持することについての基本合意)、並びに当社とシェル・ブランズ・インターナショナル・アー・ゲーとの間の平成20年1月1日付「商標等使用契約」(商標の使用許諾、石油関連技術の提供、共同研究開発及び成果の扱い、並びに業務全般にわたる一般的情報の提供等に関する契約)はそれぞれ終了し、当社とシェル・ブランズ・インターナショナル・アー・ゲーとの間の「特定の事業のブランディングに関するライセンス契約」、並びに当社とシェル・インターナショナル・ペトロリウム・カンパニー・リミテッドとの間の「潤滑油事業枠組契約」が、同日付でそれぞれ効力を生じております。
当社グループの主な研究開発活動の概要は次の通りであり、試験・研究開発費(含む減価償却費)の総額は56億円です。
(1) 石油事業(研究開発費:12億円)
当社グループはエネルギー企業として持続可能な社会の実現を目指し、これまで築いてきた技術開発力を活用し、石油事業に関する研究開発活動を中央研究所にて行っています。
潤滑油・グリースの商品開発では、長寿命、省燃費、省エネルギーといったお客様のニーズに合致した自動車用・工業用の商品開発、及び更なるIT化や環境低負荷の実現につながる「次世代」の潤滑油、グリースの基礎技術開発にも力を入れております。また、施工時の温度や臭気を大幅に低減させたアスファルト等の高付加価値アスファルトの商品開発にも取り組んでいます。
ガソリンや軽油などの燃料油に関しては、燃料組成・性状が新たなエンジン技術の性能に及ぼす影響を解明する研究や、変化が進んでいる石油製品需要構造への対応を目的とした技術開発を進めています。舶用燃料低硫黄化に向けた技術開発にも取り組んでいます。
将来のエネルギーや材料は地球温暖化対策につながることが求められており、二酸化炭素を活用する技術に注目し研究開発を強化しています。その一つとして、太陽光エネルギーを利用し水と二酸化炭素から有用物質を直接合成する人工光合成技術の研究に取り組んでいます。平成28年12月には、ガス拡散電極を用いて太陽光エネルギーのみで常温常圧下、二酸化炭素を炭化水素などの有用資源へ直接変換することに世界で初めて成功し、これをプレスリリースしました。また、植物由来のセルロース類を原料として用いた二酸化炭素の排出量削減効果の高いバイオ燃料を低コストで製造する技術の開発にも取り組んでいます。
(2) エネルギーソリューション事業、その他(研究開発費:43億円)
太陽電池事業においては、次世代太陽電池と呼ばれているCIS薄膜太陽電池(銅、インジウム、セレンを使用した薄膜太陽電池)を製造販売しております。平成28年6月には新量産技術を実現する東北工場が商業生産を開始し、宮城県内のお客様を限定して受注を開始しました。また主力工場の国富工場において変換効率を約16%にまで高めた高出力商品の生産を開始し、宮崎工場においてもSmart(スマート)に住宅の屋根に設置できるCIS薄膜太陽光電池として、住宅用市場向けの新商品「SmaCIS(スマシス)」の生産を平成29年4月より開始する予定です。研究開発面では、変換効率の向上などの基礎研究と平行して、軽量新型モジュールなどの次世代技術にも注力しています。
(1) 経営成績
当社グループの売上高は1兆7,260億円(前連結会計年度比20.7%の減収)となりました。
損益面につきましては、営業利益は464億円(前連結会計年度比586億円の増益)、経常利益は478億円(前連結会計年度比611億円の増益)となりました。これは主に、前連結会計年度においてはたな卸資産評価損が発生していたのに対し、当連結会計年度においては評価益が発生したことに起因するものです。なお、たな卸資産評価の影響等を除いた場合の経常利益相当額は366億円(前連結会計年度比49億円の減益)となりました。
特別損益につきましては、固定資産売却益や補助金収入等の特別利益を減損損失や固定資産除却損等の特別損失が上回った結果、71億円の純損失となり、税金等調整前当期純利益は406億円(前連結会計年度比619億円の増益)となりました。この結果、法人税・住民税及び事業税、法人税等調整額ならびに非支配株主に帰属する当期純利益を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は169億円(前連結会計年度比443億円の増益)となりました。
(2) 財政状態
① 連結貸借対照表分析
当連結会計年度末の連結総資産は9,761億円となり、前連結会計年度末に比べ184億円増加しました。これは、主に、現金及び預金や売掛金が増加したためです。連結純資産は、前連結会計年度末に比べ8億円減少して2,425億円となりました。これは繰延ヘッジ損益を計上したこと等によるものです。
連結負債合計は、前連結会計年度末に比べて192億円増加して7,336億円となりました。これは、主に、買掛金が増加したためです。なお、有利子負債残高は1,376億円となり、前連結会計年度末に比べ177億円減少しております。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は22.7%となりました。また、期末発行済株式数に基づく1株当たり純資産は、前連結会計年度末の591.10円から587.56円となりました。
② 資金調達
当社グループの短期資金需要は、主に原材料・製品の仕入及びそれに付随する租税等に係るものであり、長期資金需要は、主に製油所や太陽電池製造工場等の設備投資に係るものですが、その必要な資金については、事業活動により稼得するキャッシュ・フローを充当し、不足する部分については、市場環境や金利動向等を総合的に勘案しながら、金融機関からの借入及び社債により調達しております。
③ 連結キャッシュ・フロー分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、809億円の純収入となりました(前年同期は748億円の純収入)。これは、主に税金等調整前当期純利益及び減価償却費等の増加要因が、売上債権の増加及びたな卸資産の増加等の減少要因を上回ったことによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、165億円の純支出となりました(前年同期は436億円の純支出)。これは、主に有形固定資産の取得及び長期貸付けによる支出等の減少要因が、短期貸付金の減少等の増加要因を上回ったことによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少と配当金支払等により、337億円の純支出となりました(前年同期は561億円の純支出)。なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は、前連結会計年度末に比して177億円減少し、1,376億円となりました。
当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは、次の通りです。
|
|
平成24年12月期 |
平成25年12月期 |
平成26年12月期 |
平成27年12月期 |
平成28年12月期 |
|
自己資本比率(%) |
20.3 |
23.2 |
23.1 |
23.2 |
22.7 |
|
時価ベースの 自己資本比率(%) |
14.9 |
31.0 |
38.1 |
38.9 |
41.9 |
|
キャッシュ・フロー 対有利子負債比率(倍) |
6.3 |
2.3 |
2.9 |
2.1 |
1.7 |
|
インタレスト・カバレッジレシオ(倍) |
9.7 |
23.8 |
20.8 |
28.7 |
38.2 |
(注) 自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額 (*1)/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(*2)/営業キャッシュ・フロー(*3)
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い (*3)
各指標は、いずれも連結の財務数値により計算しています。
*1 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
*2 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
*3 営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業キャッシュ・フロー及び利息の支払額をそれぞれ使用しております。
④ 特定融資枠契約
当社は、運転資金の効率的な調達を行うため、取引銀行で組成される融資シンジケート団と極度額1,500億円の特定融資枠契約(コミットメントライン契約)、及びみずほ銀行と特定融資枠契約(当座勘定貸越契約)100億円を締結しております。
なお、当連結会計年度末において、特定融資枠契約にかかる借入残高はありません。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因
「4 事業等のリスク」に記載の通りです。