第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

 

 

前連結会計年度
(百万円)

百分比

当連結会計年度
(百万円)

百分比

増減
(百万円)

増減率

 

増減率
(現地通貨
ベース)

売上高

762,047

100.0%

777,687

100.0%

15,640

2.1%

 

△2.0%

  国内売上高

377,272

49.5%

365,615

47.0%

△11,657

△3.1%

 

△3.2%

  海外売上高

384,774

50.5%

412,072

53.0%

27,297

7.1%

 

△0.9%

営業利益

49,644

6.5%

27,613

3.6%

△22,030

△44.4%

 

 

経常利益

51,426

6.7%

29,239

3.8%

△22,186

△43.1%

 

 

当期純利益

26,149

3.4%

33,668

4.3%

7,519

28.8%

 

 

 

(注)  主要為替レートは、105.86円/米ドル、140.43円/ユーロ、17.20円/中国人民元です。

 

当連結会計年度の国内経済は、政府の経済政策が下支えとなって緩やかな回復が続きましたが、後半の円安を背景とした物価上昇などにより消費マインドが足踏み状態となり、個人消費は弱い回復となりました。一方、当連結会計年度の世界経済は、欧州債務問題の継続などの影響や中国における経済成長の減速が見られたものの、全体として緩やかに回復しました。国内及び海外の化粧品市場は、各地域の経済動向にほぼ連動しています。国内化粧品市場は、後半に向かって回復傾向が見られたものの、消費税増税前の駆け込み需要の反動影響が大きかったこともあり、年間では前年を下回りました。欧州の化粧品市場は前年並み、米州及びアジアでは堅調な成長を持続しました。

当社の当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比2.1%増収の777,687百万円となりました。国内売上高は消費税増税前の駆け込み需要の反動影響により前連結会計年度比3.1%の減収となり、海外売上高は現地通貨ベースでは前連結会計年度比0.9%減収、円換算後では為替レートが円安傾向で推移したことにより前連結会計年度比7.1%の増収となりました。

営業利益は、国内での売上減に伴う差益減や、前連結会計年度の計画達成に伴う国内社員の賞与増による人件費の増加、海外でのマーケティング投資強化や中国を中心としたアジアにおける流通在庫水準の適正化、アメリカ物流センターのトラブルによる費用増等による利益減から、前連結会計年度比44.4%減益の27,613百万円となりました。

経常利益は、前連結会計年度比43.1%減益の29,239百万円となりました。

当期純利益は、営業利益の減少やベアエッセンシャル社の顧客関連無形資産等の減損損失があったものの、デクレオール及びカリタブランドの譲渡に伴い特別利益を計上したこと等により、前連結会計年度比28.8%増益の33,668百万円となりました。

 

報告セグメントごとの業績は次のとおりです。

 

売上高(外部顧客への売上高)

 

 

前連結会計年度
(百万円)

構成比

当連結会計年度
(百万円)

構成比

増減
(百万円)

増減率

 

増減率
(現地通貨
ベース)

国内化粧品事業

349,718

45.9%

339,294

43.6%

△10,424

△3.0%

 

△3.0%

グローバル事業

402,213

52.8%

427,899

55.0%

25,685

6.4%

 

△1.3%

その他

10,114

1.3%

10,493

1.4%

379

3.7%

 

3.7%

合計

762,047

100.0%

777,687

100.0%

15,640

2.1%

 

△2.0%

 

 

セグメント利益(営業利益)

 

 

前連結会計年度
(百万円)

売上比
(注)

当連結会計年度
(百万円)

売上比
(注)

増減
(百万円)

増減率

 

 

国内化粧品事業

39,460

11.2%

30,039

8.8%

△9,420

△23.9%

 

 

グローバル事業

7,659

1.9%

△4,687

△1.1%

△12,347

 

 

その他

2,081

13.8%

2,234

14.6%

153

7.4%

 

 

消去又は全社

442

26

△415

 

 

合計

49,644

6.5%

27,613

3.6%

△22,030

△44.4%

 

 

 

(注)  売上比は、売上高(セグメント間の内部売上高又は振替高を含む。)に占める営業利益の比率を記載しています。

 

①  国内化粧品事業

国内化粧品事業の売上高は339,294百万円(前連結会計年度比3.0%減収)となりました。化粧品事業・ヘルスケア事業ともに、消費税増税前の駆け込み需要の反動によるマイナス影響が大きかったこともあり、前連結会計年度を下回りました。一方で、下期には化粧品事業においてブランドの刷新や新規導入などにより中・高価格帯を中心に回復傾向に転じたほか、2014年10月より訪日外国人観光客等に対する消費税の免税対象品に化粧品が加わったことをきっかけにインバウンド売上が大きく拡大するなど、2015年度に向けて明るい兆しが見られました。

 

(化粧品事業)

化粧品事業では、2013年度に開始したマーケティング改革プロジェクトを継続し、2014年度からは“ICHIGANプロジェクト”として研究開発、商品開発、生産、コーポレートスタッフ、営業などすべての社員が一丸となってブランドの価値をお客さまにお届けする活動を続けてきました。その結果、大人のハリ肌をめざす保湿ケアブランド「エリクシール」や、上質で新しいオトナの美しさを実現するメーキャップブランド「マキアージュ」の店頭売上が伸長するなど、確かな手ごたえを得ることができました。さらに、シニア女性のインサイトを徹底的に追求して発売したシニア向け総合ブランド「プリオール」も好評を博しました。また、最高級ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」やグローバルブランド「SHISEIDO」の売上も好調に推移しました。

このように、中・高価格帯が回復傾向にある一方で、低価格帯化粧品、シャンプーなどのトイレタリーやメンズカテゴリーの売上は厳しい競争環境の中で苦戦し、課題を残しました。マーケティング改革プロジェクトの一環として取り組み成果を出している“ICHIGANプロジェクト”を一過性のもので終わらせず、常に全社一丸となってお客さまにブランド価値を伝えていく“ICHIGANマーケティング”に進化させるとともに、残された課題である低価格帯・トイレタリー・メンズ領域の強化による売上拡大をめざします。その皮切りとして、2015年3月にヘアケアブランド「TSUBAKI」を一新しました。

 

(ヘルスケア事業)

ヘルスケア事業では、消費税増税前の駆け込み需要の反動影響等により、事業全体の売上は前連結会計年度を下回りましたが、美容食品の中心ブランド「ザ・コラーゲン」や顔の肌トラブルを治療する医薬品ブランド「イハダ」を全面リニューアルしたことにより、これらのブランドの売上が拡大しました。

 

セグメント利益(営業利益)は、売上減に伴う差益減に加え、賞与増による人件費の増加などにより、前連結会計年度比23.9%減益の30,039百万円となりました。

 

 

②  グローバル事業

グローバル事業の売上高は、現地通貨ベースでは前連結会計年度比1.3%の減収でしたが、円換算後では為替レートが円安傾向で推移したことにより427,899百万円 (前連結会計年度比6.4%増収)となりました。

 

(化粧品事業)

米州では、メーキャップアーティストブランド「NARS」やフレグランス事業が好調を継続したほか、2014年に発売した美容液「アルティミューン」がヒットを記録したグローバルブランド「SHISEIDO」、ブランド初のリキッドファンデーション「BARESKIN」が好調に推移した「bareMinerals」などが売上成長を牽引しました。

欧州では、ドイツやイタリアなど市場環境が厳しかった一部の主要国で苦戦しましたが、「narciso rodriguez」などのデザイナーズフレグランスが堅調に推移しました。

最重点市場である中国では、事業の再構築に向け、お客さま起点のマーケティング実践に向けたお客さまセグメンテーションプロジェクトを開始し、ブランドポートフォリオの見直しを行うとともに、流通在庫水準の適正化を実施しました。中国以外のアジアにおいても同様に流通在庫水準の適正化を進めたため、アジア全体の売上は現地通貨ベースで前連結会計年度を下回りました。一時的に売上は減少しましたが、店頭売上と出荷が健全に連動する環境が整ったことなどにより、2015年度以降の成長に向けた道筋をつけることができました。

新興国については、1958年の販売開始以来、代理店を通じたビジネスで順調に売上を伸ばしてきたインドネシアにおいて、事業基盤の強化を狙いに子会社を設立し、直接オペレーションを開始しました。なお、2014年12月末時点で、グローバルブランド「SHISEIDO」の展開地域は世界89の国と地域(日本を含む)となっています。

 

(プロフェッショナル事業)

プロフェッショナル事業では、2010年よりアジアの市場開拓に注力しており、当連結会計年度も中国、韓国、台湾で高い売上成長となりましたが、デクレオール及びカリタブランドの譲渡による売上減の影響が大きく、事業全体の売上は前連結会計年度を下回りました。

 

セグメント利益(営業利益)は、マーケティング投資を強化したことに加え、アメリカ物流センターのトラブルに伴う費用増やギリシャでの返品引当、中国・アジアにおける流通在庫水準の適正化による利益減などにより、前連結会計年度から12,347百万円減少し、4,687百万円の営業損失となりました。

 

③  その他

その他の売上高は、10,493百万円(前連結会計年度比3.7%の増収)となりました。レストラン・小売販売ともに好調であった飲食業での売上伸長に加え、フロンティアサイエンス事業が堅調に推移したことから、前連結会計年度を上回りました。

 

(フロンティアサイエンス事業)

フロンティアサイエンス事業では、医薬品や化粧品の原料として販売するヒアルロン酸に加え、美容皮膚研究から生まれた医療機関向け化粧品の「2e(ドゥーエ)」や「ナビジョン」の売上が引き続き好調に推移したことなどから、事業全体の売上は前連結会計年度を上回りました。

 

(その他の事業)

飲食業を展開する株式会社資生堂パーラーでは、空港専用商品を開発するなどの取組みの結果、デパートや駅・空港売店等での小売販売部門が好調に推移しました。レストラン部門も順調に売上を伸ばしたことから、同社として過去最高の売上を計上しました。さらに、2013年10月にリニューアルオープンした最高級フレンチレストラン「ロオジエ」が2014年度も引き続き好調に推移した結果、飲食業の売上が前連結会計年度を上回りました。

 

セグメント利益(営業利益)は、売上高の増加に伴う差益増により、前連結会計年度比7.4%増益の2,234百万円となりました。

 

 (2) キャッシュ・フローの状況

 

 

前連結会計年度(百万円)

当連結会計年度(百万円)

増減(百万円)

営業活動による
キャッシュ・フロー

84,320

32,134

△52,185

投資活動による
キャッシュ・フロー

△16,799

11,538

28,338

財務活動による
キャッシュ・フロー

△47,462

△58,419

△10,956

現金及び現金同等物
期末残高

110,163

100,807

△9,355

 

 

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ9,355百万円減少し、100,807百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益(49,038百万円)に減価償却費(33,353百万円)、のれん償却額(4,726百万円)などの非資金費用や、売上債権の減少(11,173百万円)があった一方、事業譲渡益(22,268百万円)、たな卸資産の増加(11,625百万円)、仕入債務の減少(8,586百万円)、法人税等の支払額(24,693百万円)などにより、前年同期と比べ52,185百万円減少の32,134百万円の収入となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資による支出(26,774百万円)があったものの、デクレオール及びカリタブランドの事業譲渡による収入(29,823百万円)などにより、前年同期と比べ28,338百万円増加の11,538百万円の収入となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの増加(23,039百万円)があった一方、長期借入金の返済による支出(20,917百万円)、社債の償還による支出(50,000百万円)や配当金の支払額(7,988百万円)などにより、前年同期と比べ10,956百万円減少の58,419百万円の支出となりました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

国内化粧品事業

72,907

6.4

グローバル事業

95,652

13.1

その他

1,883

△5.9

合計

170,443

9.9

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去していません。

2  金額は製造原価によっています。

3  上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(2) 受注状況

当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

国内化粧品事業

339,294

△3.0

グローバル事業

427,899

6.4

その他

10,493

3.7

合計

777,687

2.1

 

(注) 1  セグメント間取引については相殺消去しています。

2  上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 

3 【対処すべき課題】

文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2015年6月23日)現在における当社グループの将来に関する見通し及び計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。

 

(2015年度から2017年度までの3カ年計画)

2015年度から2017年度までの事業基盤再構築の期間の中でも、2015年度、2016年度にマーケティングと研究開発への投資を強化し、成長を実現するための基盤をつくり上げます。これらの投資強化と同時に、その実現のための原資を確保するべく、引き続き構造改革にも取り組みます。

特に、全社でマーケティングに取り組む“グローバルマーケティングカンパニー”への進化、お客さまへの新たな価値を生み出すためのイノベーション強化、そしてこれらを支える人材・組織の強化に重点的に取り組みます。

この3カ年では、日本を収益基盤に、海外を成長ドライバーに位置づけ、最終年度である2017年度の連結売上高9,000億円超、営業利益500~600億円を目標とし、ROEは9~10%をめざします。

 

(アクティブコンシューマーのニーズに応えるブランドポートフォリオの再構築)

社会や消費活動が多様化し、自身の選択眼で消費を行う“アクティブコンシューマー”が一層存在感を増す中、当社では、そのようなお客さまのニーズに応え、お客さまとつながり、愛され続けるブランドをつくることが重要であると考えています。お客さまの求める価値をベースに、ポートフォリオ上で重なり合うブランドやお客さまニーズの低いブランドを整理・統合することで、幅広いお客さまのニーズに応えつつ無駄のないブランド投資を実現し、強いブランドづくりを進めます。

これに向け、ブランド改廃ルールの明確化を行うなどブランドのライフサイクルマネジメントを徹底し、一定の売上規模と収益性をクリアし続けるブランドを厳選していきます。当社のこれまでのブランドではカバーしきれないお客さまのニーズにお応えするために必要であれば、M&Aによるブランドの獲得も検討していきます。

また、当社の象徴的なブランドである「SHISEIDO」について、ブランドのアイデンティティーとイメージの強化を行います。まず、コーポレートロゴとしての「SHISEIDO」について、“アクティブ”“躍動感”“前向き”“エネルギーに満ちた”といった印象を強め、存在感を高めるために、デザインを変更しました。さらに、ブランドイメージの統一の観点などからSHISEIDOの社名を使用できるブランドの範囲を検討し、今後は、グローバルブランド「SHISEIDO」と「SHISEIDO Professional」の2つのブランドで使用していくこととしました。これら以外のブランドについては、「マキアージュ」や「エリクシール」など、それぞれのブランド名やロゴを前面に出してブランド価値を訴求していきます。

そして、ブランドの価値をお客さまにお伝えする最前線に立ちブランド強化の鍵を握るビューティーコンサルタントの活性化や優秀な人材の確保をねらいに、日本や中国においてビューティーコンサルタント体制の見直しを行います。日本においては、正社員としての採用や契約社員から正社員への登用を促進するほか、成果を出した者に報いることができる評価・処遇制度への改定などを行います。

 

(マトリクス新組織体制への移行)

2016年度からの本格稼働をめざし、2015年度から、ブランド軸と地域軸のマトリクス新組織体制への移行を開始します。これは、“Think Global, Act Local(グローバルな視点で考えながら、現地・現場に密着した活動を進める)”の考え方のもと、強いブランドを育成し、各エリアに適したマーケティングを実行するための改革です。

お客さまの接点タイプ別に、当社の事業をプレステージ、コスメティクス、パーソナルケア、プロフェッショナル等のブランド事業に区分し、さらに全世界の地域・市場を日本、中国、アジア、米州、欧州、トラベルリテールに区分した上で、それぞれの掛け合わせで最適な組織体制を構築していきます。

マトリクス新組織体制への移行にあたっては、“現地・現場主義”“フラット”“スピード”“アカウンタビリティ”という4つの要素を重視していきます。これまでのように各地域に“販売会社”を作るのではなく、その地域の事業活動のすべてについて責任と権限を持つ“地域ごとの本社”を作る“地域本社制”を導入し、現地・現場のニーズとノウハウを最大限に活かし、現地で研究開発、商品開発、マーケティング、営業活動を行うことができる体制を構築していきます。

その一環として、日本国内では、これまで本社と販売会社に分かれて存在していた商品開発やマーケティング、営業の機能を集約化して日本地域本社とします。

 

(イノベーションを生み出すための研究開発の強化)

研究開発においては、先進の基礎技術を基にした革新的な製品開発を推進し、マーケティングとの連動・融合を図ります。現在、連結売上高に占める研究開発費の比率は1.8%ですが、2020年度にはこれを2.5%へと拡大し、全世界の研究所の人員を現在の約1,000名から1,500名まで増員します。

また、研究開発分野においても現地化を進めます。日本・中国・東南アジア(タイ)・ヨーロッパ(フランス)・アメリカの各研究所の規模を拡大し、お客さまインサイトに基づく研究開発を世界各地で行う体制を整備します。これにより、今まで以上に現地ニーズを捉えた製品開発を実現し、現地でのマーケティングとの連携も強化していきます。

一方で、将来の成長を支えるための基礎・基盤研究の拠点は、引き続き当社のオリジンである日本に置き、この分野を徹底的に強化していきます。このための新たな研究拠点として、グローバルイノベーションセンター(仮称)を横浜・みなとみらい21地区に設立し、ここにダイバーシティに富んだ研究開発人材を集め、世界中の叡智を結集することで、イノベーションの創出を加速します。なお、グローバルイノベーションセンター(仮称)は、2018年度末に稼働開始の予定です。

  

(成長への礎を築き、投資原資を生み出すための構造改革)

2014年度から着手した構造改革をより強力に世界全地域で推進し、原価、マーケティングコスト、在庫/サプライチェーンマネジメント、バックオフィスコスト、人件費・生産性の各項目の合計で2017年度までに300~400億円の投資原資を捻出していきます。

この構造改革で得られた投資原資は、店頭の整備や化粧品サンプル、広告宣伝など、お客さまに直接届く投資や研究開発投資等に振り向けていき、売上成長の加速につなげていきます。

  

(グローバルコンプライアンスの確立)

企業が社会に存在価値を認められ、持続的な成長を実現するには、帰属する社会や地球環境が健全な状態であることが不可欠となります。当社が100年先も輝き続ける会社であるためには、事業環境の健全な発展や地球環境の保全に努めるだけでなく、取引先をはじめとするビジネスパートナーともその認識を共有し、共に課題の解決に取り組むことが必要であると考えています。サプライチェーンのグローバル化に伴い、取引先におけるさまざまな問題の発生を回避しながら、安全性や品質を確保した資材調達等を行うことがますます重要となっており、これに対応するため、当社では“人権”“法令遵守”“労働慣行”“知的財産の保護及び機密の保持”“環境保全”及び“公正な取引”の6つの項目について定めた「資生堂サプライヤー行動基準」を策定・運用しています。国内外のサプライヤーとの間でこの行動基準の遵守のための覚書を締結するとともに、国内の主要取引先についてはアンケート等を通じて遵守状況を確認しています。

また、全世界のグループ会社で直面するさまざまなリスクを洗い出し、評価し、事前に備えておくこと、そしてリスク発生時に速やかに対応して被害を極小化することを可能とするための仕組みづくりと、その維持に努めています。また、社内外に複数の相談窓口や通報窓口を設置・運用することで、不正行為の早期発見と未然防止を図っています。

これらの取組みを含め、資生堂グループのコンプライアンス活動は、当社の取締役会が直轄するCSR委員会ですべて統括しており、今後も継続的に状況の変化を把握し、必要な対策を講じることでグローバルでのコンプライアンス体制を強化していきます。

 

(社会の課題と期待に応える取組み)

当社では、企業の社会的責任(CSR)について、リスクを最小化して企業価値を守り、企業の存続を確保することに主眼を置いた基本的なCSR活動と、企業価値を高めて成長に結びつけることができる資生堂らしいCSR活動に取り組んでいます。資生堂らしいCSR活動には、新しい美しさや豊かな暮らしの提案、社会貢献活動も含まれており、資生堂グループの強みを活かすことができる“女性・化粧(美容)”“文化”“環境”の3つを主な活動領域と定めています。

特に、当社は国際的ガイドラインであるWEPs(女性のエンパワーメント原則)への署名企業として、女性の社会的地位の向上や活躍支援について主導的な役割を果たしていくことが重要な使命の一つと捉えています。2016年度中に資生堂グループにおける国内の女性リーダー比率30%を達成することをめざすなど、自社における男女共同参画の促進に加え、次世代の指導的女性研究者の育成に貢献するため、自然科学分野を専攻する女性研究者への研究支援活動を行っています。さらに、2013年より国際協力機構(JICA)の助成金支援を受けて実施してきた、バングラデシュの農村部における女性の社会進出を支援する活動を、今後も継続していくこととしています。この活動は、現地の女性のエンパワーメントを通じて当社のイノベーションも実現していくものです。これまでに、“水・汗に触れても紫外線防御効果が落ちずに高まる”という日やけ止めの新技術の開発の端緒を得るなど成果を上げています。

環境面では、環境活動の柱である「商品のライフサイクル全体での環境対応」に向け、レフィル対応商品の積極的な開発・採用に引き続き取り組むほか、全世界でのCO2排出量の削減をめざした取組みや生物多様性の保全のための取組みを継続していきます。

また、文化面での活動として行っている芸術文化支援(協賛)活動なども継続していきます。

 

 

4 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあり、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項と考えています。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2015年6月23日)現在において当社グループが判断したものですが、ここに掲げられている項目に限定されるものではありません。

 

(1) ブランド「SHISEIDO」の価値の低下

当社グループでは、国内外の事業活動においてブランド「SHISEIDO」を共有し、ブランド価値の向上に努めていますが、不測の事態によるブランド価値の低下が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) お客さま対応

当社グループは、お客さまとの関係を重視しています。企業理念「Our Mission, Values and Way」の「Our Way」及び「資生堂グループ倫理行動基準」で、お客さまの満足と信頼が得られるように行動する旨を明示し、周知徹底を図っています。しかしながら、お客さまの満足や信頼を損なうこととなる不測の事態が生じた場合には、当社グループのブランド価値が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 戦略的投資活動

当社グループは、中国を含むアジア等の戦略市場への投資、M&A及び新規事業・新規市場への事業拡大等の戦略的投資活動の推進に際して、意思決定のために必要かつ十分な情報収集をした上で検討を実施し、合理的な意思決定を行っています。しかしながら、予期し得ない種々の環境変化等により、当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 化粧品業界の競争環境

当社グループの属する化粧品業界は、グローバル規模で競争が激しくなっています。成熟した国内市場での同業他社との競争激化をはじめ、グローバルコンペティターのプレステージ市場での影響力拡大、さらには他業界からの新規参入など競争環境はますます厳しくなってきています。また、海外市場でも当社グループが成長戦略の柱として位置付ける中国を含むアジア市場等において、グローバルコンペティターが積極的なM&Aやマーケティング活動を展開し、消費者の認知度を高め市場シェアの拡大を図るなど、競争環境が一層厳しくなってきています。したがって、当社グループがこの競争環境に的確に対処できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 海外での事業活動

当社グループは2015年3月末時点で海外89の国と地域(日本を含む)での事業活動を行っており、連結売上高に占める海外売上高比率は年々伸長し、当連結会計年度では53.0%に至っています。海外での事業活動において、予期し得ない経済的・政治的・社会的な突発事態の発生、テロ・戦争・内乱の勃発、新型インフルエンザ等伝染病の流行による社会的・経済的混乱、異常気象や天候不順等が、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、海外売上に関する詳細は、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  注記事項  (セグメント情報等)」として開示しています。

 

 

(6) 市場リスク

①  原材料価格

当社グループ製品の原材料は、国際市況の影響を受け、地政学的リスク、新興国の需要増加や投機資金の流入に伴う需給バランス、天候不順、為替レートの変動等に伴い市況価格が変動します。当社グループでは、原材料価格の上昇に対する継続的な原価低減活動などにより、その影響を軽減する努力を続けています。しかしながら、予想を超える市況価格の変動が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

②  為替

当社グループは、輸出入取引等を行うことに伴う外貨建て決済について、為替レートの変動リスクを負っています。当社グループでは、販売地域に対応する生産体制を築き、輸出入取引のボリュームを抑えること等で為替変動に対するヘッジを行っていますが、リスクが完全に回避されるわけではありません。また、海外連結子会社及び持分法適用関連会社の現地通貨建ての報告数値は、連結財務諸表作成時に円換算することから、収益が費用を上回っている状況では、外貨に対して円高が進むと経営成績にマイナス影響を与えます。さらに、当社の海外連結子会社及び持分法適用関連会社への投資は、円高が進行すると為替換算調整勘定を通じて自己資本を減少させます。不測の為替変動が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

③  株価

当社グループは、当連結会計年度末時点で時価のある株式を保有しており、株価の変動リスクを負っています。株価の動向次第では評価損益の増減及び減損のリスクがあります。また、当社の企業年金では、年金資産の一部を時価のある株式で運用しており、株価の下落は年金資産の目減りを通じて年金費用を増加させ経営成績にマイナス影響を与えます。不測の事態が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、有価証券に関する詳細は、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等 注記事項 (有価証券関係)」に開示しています。

 

(7) 市場ニーズへの適合

新製品・新ブランドの開発・育成及びマーケティング活動が市場ニーズに適合しているかどうかが当社グループの売上及び利益に大きな影響をもたらします。当社グループでは、市場ニーズに応えるため、魅力的な新製品・新ブランドの開発、マーケティング活動による新製品・新ブランド及び現行主力品・既存ブランドの強化・育成、市場ニーズに応えられなくなった既存品・既存ブランドの撤退を継続的に行っています。しかしながら、当該活動はその性質上、さまざまな要因による不確実性が伴うため、当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、研究開発活動に関する詳細は、「第2  事業の状況  6  研究開発活動」に開示しています。

 

(8) 特定の取引先等

当社グループの主要事業である国内化粧品事業においては、小売・流通チャネルにおいて大きな変化が生じており、この変化に対する当社グループの対応が的確ではなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 法規制等に関するリスク

当社グループは、薬事法をはじめとする法規制や、品質に関する基準、環境に関する基準、会計基準や税法等、事業展開している国内外のさまざまな法規制等の適用を受けています。当社グループはコンプライアンス(法令遵守)とCSRに基づく倫理的行動に万全を期していますが、今後、これらの法規制等が変更された場合、また予測できない法規制等が新たに設けられた場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 重要な訴訟等

当連結会計年度において、当社グループに重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されていませんが、将来、重要な訴訟等が発生し、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 情報セキュリティに関するリスク

当社グループが保有する顧客情報や機密情報等の情報資産の保護については、さまざまな対策を講じています。具体的には、「個人情報保護規程」「機密情報管理規程」及び「情報システム管理規程」を定め、これらの遵守を徹底し、お客さまの個人情報を慎重に取り扱い、各種情報資産の保護を行っています。また、個人情報保護を適切に行っている企業の証である「プライバシーマーク(JIS規格)」の認証を取得しています。しかしながら、予期し得ない不正アクセスによる情報漏洩等が発生した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 災害・事故等

当社グループでは、大規模な地震の発生など災害・事故発生時の生産・物流及び販売の中断による損失を最小化するため、生産拠点、物流拠点、情報システム及び本社を事業継続の重要拠点と位置付け、事業継続計画(BCP)の構築を行っています。しかしながら、想定を超える災害・事故等の発生により、製造・物流及び販売の中断が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(重要な資産の譲渡及び重要な契約の締結)

当社の子会社であるBEAUTÉ PRESTIGE INTERNATIONAL S.A.(ボーテ プレステージ インターナショナル。以下、BPI社)は、PUIG, S.L.(プーチ)との間で、BPI社がライセンスを受けて展開してきたJean Paul GAULTIER(ジャン ポール ゴルチエ)のフレグランスに関する知的財産権の譲渡に関する契約を2015年4月9日に締結しました。

詳細については、「第5  経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」をご参照ください。 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、さまざまな技術の融合により、世界中のお客さまの「美と健康」を実現する画期的な商品、サービスの実現をめざしています。横浜市のリサーチセンターをはじめ、東京都港区のビューティークリエーション研究センター、米州(米国)、欧州(フランス)、中国、東南アジア(タイ)の各拠点において、研究開発活動を推進しています。また、新たに毛髪再生医療の事業化に向けた研究開発に取り組む資生堂細胞加工培養センターを神戸市に開設しました。これら各拠点での研究内容は高く評価されており、化粧品科学技術の最も権威ある研究発表会 IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)では、IFSCC Conference 2013に引き続き、2014年10月フランス パリにて開催のIFSCC Congress 2014にて、顔の形が加齢とともに大きく変化する悩みに対し、加齢とともに肌の弾力が衰え、顔の形状を支えられなくなることが大きな原因となっていることの解明に対し、通算23回目の賞を受けました。これは世界の化粧品メーカーの中で最多受賞回数となります。加えて、市場拡大が著しい中国で開催された、第10回中国化粧品学術研討会におきましても、1等賞を受賞しました。これは通算5回目となります。
  このように世界中のお客さまに向けた安心・安全、高品質な商品の創出に向けた技術の積み重ねは、世界の化粧品業界をリードしています。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は14,226百万円(売上高比1.8%)であり、各事業別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、以下のとおりです。なお、基礎研究などの各事業に直接配賦できない費用4,422百万円が含まれます。

 

(1) 国内化粧品事業

お客さまに、より美しい肌と美しい生活を実現していただくために、基礎的な皮膚科学・界面科学の研究から化粧品原料素材の開発、製品の開発・評価、美容法の開発、さらにはお客さまが言葉に表しにくいような感覚や気持ちの領域など、幅広い研究開発を行っています。
  スキンケアでは、最新のコラーゲン研究の結果と、シワやたるみを立体的に計測する手法、年代ごとの肌計測、年齢による皮膚内のコラーゲン線維状態(IFSCC最優秀賞技術の進化)やうるおい状態の可視化手法や3Dデータを用いた毛穴解析など高度な観察技術による知見を集約し、ブランド生誕30年を迎え刷新した「エリクシール」に採用しました。
  メーキャップでは、肌に負担感がなく、軽く空気感のある素肌のような質感に注目しました。美容液水と当社で最も軽い無重力級のパウダーを空気と混ぜ合わせた軽いムースをゆっくりプレス・乾燥させる製法を実現しました。この技術は美容液成分をたっぷり含んだ軽いパウダーを軽い力でスポンジにとることができ、ふわっと溶け込むように肌にフィットするパウダリーファンデーションとして「マキアージュ」に採用しました。
  シャンプー・コンディショナーでは、「地肌のやわらかさは、美しい髪の大きなカギを握っている」ことに着目し、お客さまの「髪と地肌のやわらかさ」を求める意識に寄り添うべく、「椿麹つけこみ美容」という新しいコンセプトを「TSUBAKI」に採用しました。
  ヘルスケア事業では、美と健康をつなぐ食品を中心とした研究開発を進めており、コラーゲン研究の成果を「ザ・コラーゲン」に応用しました。
  当事業に関わる研究開発費は6,503百万円です。
 

 

(2) グローバル事業

「ハイ・クオリティ」を追求する海外化粧品に対応するために、当社独自の高度なサイエンスと最先端テクノロジーに立脚した製品の開発を推進しています。
  スキンケアでは、肌への刺激や肌内部に侵入した異物や肌内部で発生した肌トラブルを引き起こす因子により、健やかな肌状態が損なわれることを解明しました。現代の女性の肌は紫外線や乾燥、ストレスなど様々なダメージにさらされており、これをはねかえすことで肌本来の美しさを取り戻せるという考えのもと、研究を進めました。前述の研究を含め、20年間の肌と免疫の研究を続けた結果をもとに見い出した知見を「アルティミューン」に採用し、世界中のお客さまにお届けしました。また、中国女性1,500名以上の肌調査を行い、老化関連酵素ゼラチナーゼの量が、紫外線ケア商品の使用頻度や日照時間の地域差に関連することを解明しました。この研究は資生堂(中国)研究開発中心有限公司(資生堂中国リサーチセンター)が中心となり進めた成果であり、中国専用ブランドの「オプレ」に応用しました。
  サンケアでは、肌に塗ることで、水や汗に含まれるミネラルによって水をはじく撥水性を高めるとともに、日やけ止め剤表面の細かい凹凸が均一かつ滑らかになり、塗布膜を強化する技術を開発しました。これはこれまでの常識を覆す革新的な日やけ止めの新技術「ウェットフォース」として「資生堂パーフェクトUVプロテクション」に採用しました。
  プロフェッショナル事業では、デバイス(温熱、音波振動、赤色LEDの3つの機能)により基剤をすみずみまで浸透させる技術を「アデノバイタル」に採用し、サロン専用メニューとして、抜け毛・薄毛でお悩みのお客さまに提供しました。
  当事業に関わる研究開発費は3,254百万円です。

 

(3) その他

フロンティアサイエンス事業では、医療用医薬品、化粧品・医薬品原料、クロマトグラフィー、美容皮膚医療などの研究開発を進めています。
  当事業に関わる研究開発費は45百万円です。

 

その他の活動としては、新たなイノベーションに向けた取組みを進めています。動物実験によらない価値開発を促進するため、ヒト由来の培養細胞(細胞株)で化学物質のアレルギー性を正確、迅速かつ低コストで調べる皮膚感作性試験代替法「h-CLAT」の基本技術に関する特許使用を無償化しました。また、動物実験削減の一助となる本技術を世界共通の公定法とすべく、「OECDテストガイドライン」化を積極的に進めています。
  また、経済産業省の委託事業であるファインバブル基盤技術研究開発事業に、産・官・学連携の一員として参画しました。ファインバブル(微細気泡、マイクロ・ナノバブル)は、日本発の革新的技術として、 医療、農業、化学など様々な分野で応用され始めており、当社では化粧品での展開可能性を探っています。
  加えて、「イノベーションに最も適した国」「起業、創業の精神に満ちあふれた国」の実現に向け内閣府が進めている革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)に参画しています。当社が得意とする肌の可視化計測技術を深めることによる、社会的な貢献に向けた研究に取り組んでいます。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における財政状態及び経営成績の分析は次のとおりです。

なお、文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2015年6月23日)現在における当社グループの将来に関する見通し及び計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載していますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えています。

 

①  有形固定資産

当社グループでは、有形固定資産の簿価について、それが回収できなくなる可能性を示す兆候がある場合には、減損の有無を判定しています。この判定は、事業用資産についてはグルーピングした各事業単位の将来キャッシュ・フローの見積りに基づいて、遊休資産については個別に比較可能な市場価格に基づいて行っています。経営者は将来キャッシュ・フロー及び回収可能価額の見積りは合理的であると考えていますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、将来キャッシュ・フローや回収可能価額が減少し、減損損失が発生する可能性があります。

 

②  のれん、商標権及びその他の無形固定資産

当社グループでは、のれん、商標権及びその他の無形固定資産について、減損の判定を行っています。のれん、商標権及びその他の無形固定資産の公正価値の見積りや減損判定に当たっては、外部専門家などによる評価を活用しています。公正価値の見積りは、主に割引キャッシュ・フロー方式により行いますが、この方式では、将来キャッシュ・フロー、割引率など、多くの見積り・前提を使用しています。これらの見積り・前提は、減損判定や認識される減損損失計上額に重要な影響を及ぼす可能性があります。経営者は、当該判定における公正価値の見積りは合理的であると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化によって見積りが変更されることにより、公正価値が下落し、減損損失が発生する可能性があります。

 

③  有価証券

当社グループでは、その他有価証券のうち、取得原価に比べ時価または実質価額が著しく下落したものについては、回復可能性があると判断される場合を除き、減損処理を行っています。時価のあるものについては、決算日現在の時価が取得原価に比べて50%以上下落した場合には回復可能性はないものと判断し、30%以上50%未満下落した場合には当該有価証券の発行会社の財政状態及び経営成績を勘案し、回復可能性を判断しています。時価のないものについては、発行会社の財政状態の悪化により、実質価額が取得原価に比べて50%以上下落した場合には、回復可能性があると判断できる場合を除き、減損処理を行っています。経営者は、回復可能性の判断が適切なものであると判断していますが、回復可能性ありと判断している有価証券についても、将来、時価の下落または投資先の財政状態及び経営成績の悪化により、減損損失が発生する可能性があります。

 

④  繰延税金資産

当社グループでは、回収可能性がないと判断される繰延税金資産に対して評価性引当額を設定し、適切な繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産の回収可能性は各社、各納税主体で十分な課税所得を計上するか否かによって判断されるため、その評価には、実績情報とともに将来に関する情報が考慮されています。経営者は、当該計上額が適切なものであると判断していますが、将来の予測不能な事業上の前提条件の変化に伴う各社、各納税主体の経営悪化により、繰延税金資産に対する評価性引当額を追加で設定する可能性があります。

 

 

⑤  退職給付費用及び債務

当社グループの主要な退職給付制度は、日本における企業年金制度及び退職一時金制度です。従業員の退職給付費用及び債務は、割引率、退職率、死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等を含む前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件は年に一度見直しています。割引率と長期期待運用収益率は、退職給付費用及び債務を決定する上で、重要な前提条件です。割引率は一定の格付けを有し、安全性の高い長期社債の期末における市場利回りを基礎として決定しています。長期期待運用収益率は年金資産の種類毎に期待される収益率の加重平均に基づいて決定しています。経営者は、これらの前提条件は適切であると考えていますが、実際の結果との差異や前提条件の変更が将来の退職給付費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

①  概要

当社グループは、2014年度を抜本的な改革に向けた準備の年と位置づけ、“お客さま起点のマーケティング実行力とブランド力の強化”“組織と企業風土の革新”“経営基盤の強化”に取り組みました。また、新たな長期ビジョンと2015年度からスタートする中期経営計画の策定を進め、2014年12月17日に中長期戦略としてVISION 2020を発表しました。

なお、売上高、営業利益のセグメントの分析については、「1  業績等の概要  (1)業績」に記載しています。

 

②  売上高

売上高は、前連結会計年度に比べ2.1%増収(現地通貨ベースでは同2.0%減収)の777,687百万円となりました。国内売上高は消費税増税前の駆け込み需要の反動影響により前連結会計年度比3.1%の減収となり、海外売上高は7.1%の増収(現地通貨ベースでは0.9%減収)となりました。

 

③  売上原価、販売費及び一般管理費
(売上原価)

売上原価は、前連結会計年度に比べ3.6%増加の196,433百万円となりました。売上高に対する比率は前連結会計年度より0.3ポイント上昇し25.2%となりました。これは主に国内の生産終了品増に伴う返品調整引当金増によるものです。

 

(販売費及び一般管理費)

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ5.9%増加の553,640百万円となりました。売上高に対する比率は、2.6ポイント増加し71.2%となりました。その内訳は次のとおりです。

(イ) マーケティングコスト

マーケティングコスト(広告費及び売出費)の売上高に対する比率は23.4%と前連結会計年度に比べ1.2ポイント増加しました。国内は駆け込み需要に向けて強化していた前連結会計年度に比べると減少した一方で、海外はマーケティング投資を強化したことから増加しました。

 

(ロ) 人件費

人件費の売上高に対する比率は、0.6ポイント増加し24.5%となりました。国内において前連結会計年度の計画達成に伴い賞与が増加したことが主な要因です。

 

(ハ) 経費

経費(その他の費用)の売上高に対する比率は、0.8ポイント増加し22.1%となりました。現在、進めているマトリクス組織への再編や事業構造改革等プロジェクトの先行投資が主な要因です。

 

(ニ) M&A関連償却費

M&A関連償却費の売上高に対する比率は、前連結会計年度と同水準の1.2%となりました。

 

 

販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は前連結会計年度に比べ5.1%増加の14,226百万円となり、売上高に対する比率は1.8%となりました。なお、研究開発活動についての詳細は、「6  研究開発活動」として開示しています。

 

④  営業利益

営業利益は、国内での売上減に伴う差益減や、前期の計画達成に伴う国内社員の賞与増による人件費の増加、海外でのマーケティング投資強化や中国を中心としたアジアにおける流通在庫水準の適正化、アメリカ物流センターのトラブルによる費用増等による利益減から、前連結会計年度に比べ44.4%減益の27,613百万円となりました。売上高営業利益率は2.9ポイント悪化の3.6%となりました。

 

⑤  営業外損益

営業外損益は、前連結会計年度に比べ8.7%減少の1,626百万円の収益となりました。

 

⑥  経常利益

経常利益は、営業利益が減少したことから、前連結会計年度に比べ43.1%減益の29,239百万円となりました。

 

⑦  特別損益

特別損益は、前連結会計年度の999百万円の損失に対し、19,798百万円の利益となりました。当連結会計年度は、ベアエッセンシャル社の顧客関連無形資産等の減損損失があったものの、デクレオール及びカリタブランドの譲渡に伴い事業譲渡益を計上しています。

 

⑧  税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ2.8%減益の49,038百万円となりました。

 

⑨  法人税等(法人税等調整額を含む)

法人税等は、前連結会計年度に比べ40.9%減少の12,811百万円となりました。

 

⑩  少数株主利益

少数株主利益は、前連結会計年度に比べ1.1%減少の2,558百万円となりました。

 

⑪  当期純利益

当期純利益は、前連結会計年度に比べ28.8%増益の33,668百万円となりました。

1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の65.65円から84.44円となりました。

なお、ROE(自己資本利益率)については、前連結会計年度の8.4%から1.0ポイント好転し9.4%となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「4  事業等のリスク」として開示しています。

 

(4) 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しについては、「1  業績等の概要」及び「3  対処すべき課題」として開示しています。

 

 

(5) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

①  資金調達と流動性マネジメント

当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能な財務体質を維持すべく、ベンチマークとなる有利子負債比率は25%を目安としており、大型投資案件による資金調達が必要となった場合には、経営動向や財務状況及び市場環境などを勘案して、最適な方法でタイムリーに実施します。

手元流動性については、連結売上高の1.5ヵ月程度をひとつの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金、有価証券の総額は121,869百万円となり、手元流動性は連結売上高の1.9ヵ月分となりました。

一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は、主に2010年3月のベアエッセンシャル社買収に係る資金調達により106,897百万円となっています。国内普通社債の発行登録枠の未使用枠1,200億円、当社及び欧米子会社2社を発行体とするプログラム型シンジケート・ローンの未使用枠3.0億米ドル、並びに米国子会社のCPプログラムの未使用枠1.0億米ドルなどを有し、資金調達手段は分散化されています。

当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。

 

②  格付け

当社グループは、流動性及び資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、グローバルな資本市場から円滑な資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下「ムーディーズ」という。)及びスタンダード&プアーズ・レーティング・ジャパン株式会社(以下「S&P」という。)の2社より格付けを取得しています。

 

2015年5月31日現在の債券格付けの状況(長期/短期)は以下のとおりです。

 

 

ムーディーズ

S&P

長期

A2(見通し:安定的)

A-(見通し:安定的)

短期

P-1

A-2

 

 

③  資産及び負債・純資産
(資産)

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ2.8%増加の823,636百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ3.1%増加の415,069百万円となりました。

固定資産は、デクレオール及びカリタブランドの譲渡により減少したものの、為替影響により、前連結会計年度末に比べ2.5%増加の408,567百万円となりました。

(負債)

当連結会計年度末の負債は、社債の償還などにより、前連結会計年度末に比べ6.4%減少の414,267百万円となりました。

有利子負債の詳細は、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  ⑤連結附属明細表」に記載しています。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、株主資本の増加に加え為替換算調整勘定が増加したことなどにより、前連結会計年度末に比べ14.1%増加の409,369百万円となりました。

1株当たり純資産額は、前連結会計年度末に比べて120.58円増加し970.00円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末の42.2%から4.8ポイント上昇し47.0%となりました。

 

 

キャッシュ・フローについては、「1  業績等の概要  (2)キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

 

(キャッシュ・フロー指標の推移)

 

 

2011年
3月期
第111期

2012年
3月期
第112期

2013年
3月期
第113期

2014年
3月期
第114期

2015年
3月期
第115期

自己資本比率(%)

41.6

40.3

40.1

42.2

47.0

時価ベースの自己資本比率(%)

77.5

78.9

73.8

90.3

103.3

債務償還年数(年)

2.9

3.5

4.4

1.8

3.3

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

32.8

27.3

22.5

47.5

24.2

 

(注) 1  自己資本比率  :  (純資産の部合計-新株予約権-少数株主持分)/総資産

    時価ベースの自己資本比率  :  株式時価総額/総資産

    債務償還年数  :  有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

    インタレスト・カバレッジ・レシオ  :  営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い

2  各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

3  株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。

4  有利子負債は、連結貸借対照表上に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の「利息の支払額」を使用しています。

5  当社グループの米州子会社における、店頭販売活動に関する見本品・販促物の会計処理は、従来、取得時に資産計上し、顧客へ出荷した時点で費用処理していましたが、グループ内の会計処理の統一を図るために、第112期より取得時費用処理に変更しました。当該会計処理の変更は遡及適用され、第111期の連結財務諸表について遡及処理しています。

6 第114期より、「従業員給付」(国際会計基準第19号 2011年6月16日改訂)を一部の連結子会社において適用し、確定給付負債の純額の変動の認識方法の変更等を行っています。当該会計方針の変更は遡及適用され、第113期の関連する主要な経営指標等については遡及処理後の数値を記載しています。

 

(6) 経営者の問題認識と今後の方針について

当社は、2020年度を一つの節目とし、それまでに何に取り組み、どのような会社になるのかといったビジョンをまとめ、2014年12月17日に中長期戦略 VISION 2020として発表しました。

当社は、2020年度までに“成長エネルギーが充満した会社”“若々しさがみなぎる会社”“世界中で話題になる会社”“若者があこがれてやまない会社”そして“多様な文化が混じりあう会社”となることをめざし、これを実現することで、社会に存在価値が認められ、100年先も輝き続ける会社となるための原型をつくり上げていきます。そのために、化粧品を主軸に据えつつ美しい生活文化の創造にかかわる周辺事業にまで事業ドメインを拡大すること、グローバル化を推進すること、そして資生堂の強さの源泉であるイノベーション力を強化していくことに取り組んでいきます。

定量的な目標としては、2020年度の連結営業利益を1,000億円超、ROEを12%以上と定めました。これらの目標を達成するために、連結売上高は1兆円レベルまで引き上げることをめざします。

具体的な戦略推進にあたっては、2015年度から2017年度までの最初の3年間を事業基盤の再構築の期間と位置づけ、ブランド強化、マーケティング・研究開発投資の拡大、組織・人事制度改革、中国・アジア・トラベルリテール・Eコマースの強化、全社構造改革に取り組みます。2018年度から2020年度までの3年間を成長加速のための新戦略に取り組む期間と位置づけ、新ブランドの導入、M&A、投資継続・リターンの獲得、グローバル体制の構築、新興国・未進出エリア開拓、ビジネスモデルの見直し・刷新に取り組みます。

なお、取組みの詳細は「3 対処すべき課題」に記載しています。