第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1) 業績

2015年3月にランバクシー・ラボラトリーズLtd.がサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.に吸収合併されたことにより、連結除外となりました。前連結会計年度はランバクシーグループを非継続事業と区分し、売上収益、営業利益及び税引前利益の金額はランバクシーグループを除いた継続事業のみの金額を表示しております。

 

当社グループの当連結会計年度(自 2015年4月1日 至 2016年3月31日)の売上収益は、671億円増収の9,864億円(前連結会計年度比7.3%増)となりました。日本・米国・アジアにおける主力品の伸長及び為替の寄与等により、増収となりました。

営業利益は、560億円増益の1,304億円(前連結会計年度比75.2%増)となりました。研究開発費が増加したものの、売上総利益の増加並びに販売費及び一般管理費の減少等により、増益となりました。

税引前利益は、425億円増益の1,224億円(前連結会計年度比53.1%増)となりました。サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.株式売却手数料の支払等に伴う金融費用の増加により、営業利益の増益幅よりも小幅な増益となりました。

継続事業からの当期利益は、368億円増益の804億円(前連結会計年度比84.5%増)となりました。

親会社の所有者に帰属する当期利益は、2,398億円減益の823億円(前連結会計年度比74.5%減)となりました。前連結会計年度にランバクシー・ラボラトリーズLtd.がサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.に吸収合併されたことによる子会社合併差益2,787億円(税効果考慮後)があったため、大幅減益となりました。

 

地域別の売上収益は次のとおりであります。

 

① 日本

日本の売上収益は、5,745億円(前連結会計年度比4.6%増)となりました。

国内医薬では、ジェネリック医薬品の処方拡大による影響があったものの、ネキシウム、メマリー、テネリア、リクシアナ、プラリア、ランマーク、エフィエント等の伸長により、売上収益は4,991億円(前連結会計年度比4.6%増)となりました。この売上収益には、ジェネリック事業を主に取り扱う第一三共エスファ㈱の売上収益、並びに北里第一三共ワクチン㈱及びジャパンワクチン㈱等が取り扱うワクチン事業の売上収益が含まれております。なお、オルメテックOD錠(口腔内崩壊錠)及びスクエアキッズ(百日せき、ジフテリア、破傷風及びポリオを予防する4種混合ワクチン)を2015年12月に新発売いたしました。

合成抗菌剤レボフロキサシン原薬輸出を中心とした輸出医薬の売上収益は、187億円(前連結会計年度比13.1%減)となりました。

第一三共ヘルスケア㈱が取り扱うヘルスケア事業の売上収益は、534億円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。なお、同社はスキンケア領域における通信販売事業基盤を強化するため、2015年11月に㈱アイムの全株式を取得いたしました。

 

<日本の主な売上構成>

 (単位:億円)

区分

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

増減

国内医薬

4,770

4,991

221

4.6%

輸出医薬

215

187

△28

△13.1%

ヘルスケア

478

534

55

11.6%

 

<国内医薬主力品売上収益>

(単位:億円)

製品名

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

増減

ネキシウム
抗潰瘍剤

693

824

131

18.8%

オルメテック
高血圧症治療剤

763

739

△25

△3.2

ロキソニン
消炎鎮痛剤

(うちロキソニンテープ)

495

(311)

481

(318)

△14

△2.8

メマリー
アルツハイマー型認知症治療剤

368

424

56

15.3%

クラビット
合成抗菌剤

278

184

△95

△34.0

レザルタス

高血圧症治療剤

184

182

△2

△1.3

オムニパーク

造影剤

172

169

△3

△1.9

テネリア

2型糖尿病治療剤

76

165

90

118.9%

アーチスト

高血圧・狭心症・

慢性心不全症治療剤

181

151

△30

△16.8

イナビル

抗インフルエンザウイルス剤

166

140

△26

△15.4

メバロチン
高コレステロール血症治療剤

162

134

△27

△16.9

リクシアナ

抗凝固剤

36

130

94

262.6%

プラリア

骨粗鬆症治療剤

73

125

51

70.1%

ランマーク

がん骨転移による骨病変治療剤

102

124

22

22.0%

ユリーフ

排尿障害治療剤

115

118

3

2.8%

エフィエント

抗血小板剤

7

49

42

613.5%

 

② 北米

北米の売上収益は、2,754億円(前連結会計年度比19.8%増)となりました。現地通貨ベースでは22億9千2百万米ドル(前連結会計年度比9.6%増)となりました。

第一三共Inc.では、ベニカー/ベニカーHCT、エイゾール、ウェルコール、サベイサが減収となりましたが、トライベンゾール、エフィエント及び2015年4月より共同販促を開始したモバンティックが増収に寄与いたしました。

ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.では、ヴェノファーが横ばいでしたが、インジェクタファーが増収に大きく貢献いたしました。

なお、第一三共Inc.では、今後の米国市場での疼痛、がん、循環代謝を含む専門性の高い領域における新製品の発売に備えるため、営業体制を変革することといたしました。より効率的かつ機動的な体制への移行を目指し、その一環として1,000名規模の人員削減を実施いたしました。

 

<第一三共Inc.主力品売上収益>

(単位:百万米ドル)

製品名

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

増減

ベニカー/ベニカーHCT
高血圧症治療剤

700

661

△39

△5.6%

エイゾール
高血圧症治療剤

166

164

△2

△1.1

トライベンゾール
高血圧症治療剤

103

103

1

0.5%

ウェルコール
高コレステロール血症治療剤

・2型糖尿病治療剤

431

403

△29

△6.6

エフィエント
抗血小板剤

(共同販促収入)

160

173

13

8.0%

サベイサ

抗凝固剤

6

4

△3

△41.1

モバンティック
オピオイド誘発性便秘薬

(共同販促収入)

-

17

17

-%

 

<ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.主力品売上収益>

(単位:百万米ドル)

製品名

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

増減

ヴェノファー
鉄欠乏性貧血治療剤

260

260

△0

△0.1

インジェクタファー

鉄欠乏性貧血治療剤

69

155

86

123.2%

 

③ 欧州

欧州の売上収益は、747億円(前連結会計年度比5.2%減)、現地通貨ベースでは5億6千4百万ユーロ(前連結会計年度比0.7%減)となりました。セビカーHCT、エフィエント及び当連結会計年度に新発売いたしましたリクシアナが増収要因となりましたが、オルメテック/オルメテックプラス、セビカーが減収となりました。

 

<第一三共ヨーロッパGmbH主力品売上収益>

(単位:百万ユーロ)

製品名

前連結会計年度

(自 2014年4月1日

至 2015年3月31日)

当連結会計年度

(自 2015年4月1日

至 2016年3月31日)

増減

オルメテック/オルメテックプラス
高血圧症治療剤

272

248

△24

△9.0%

セビカー
高血圧症治療剤

127

124

△2

△1.9

セビカーHCT
高血圧症治療剤

71

73

1

1.9%

エフィエント
抗血小板剤

(共同販促収入)

34

41

6

18.3%

リクシアナ

抗凝固剤

-

12

12

-%

 

④ その他の地域

その他の地域の売上収益は、618億円(前連結会計年度比0.5%増)となりました。

中国、韓国等において主力品が伸長いたしました。

なお、ベネズエラの経済情勢の悪化を踏まえて、同国の通貨ボリバルの換算レートを変更したことにより、第一三共ベネズエラS.A.の売上収益は前連結会計年度比79億円減収の2億円となりました。

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、328億円増加の2,222億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益1,224億円、減価償却費及び償却費443億円及び減損損失47億円等の非資金項目のほか、法人所得税の支払等による資金の減少により、1,743億円の収入(前連結会計年度比315億円の収入増加)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資及び子会社の取得等により、60億円の支出(前連結会計年度比153億円の支出減少)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得、配当金の支払及び借入金の返済等により、1,229億円の支出(前連結会計年度比93億円の支出減少)となりました。

 

(3) サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.株式売却について

2014年4月、当社は、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.がランバクシー・ラボラトリーズLtd.を吸収合併し、その対価としてランバクシー・ラボラトリーズLtd.の株式1株に対しサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の株式0.8株を当社が受領する契約を締結いたしました。

2015年3月、合併手続の完了により当社はサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の株式を約9%所有し、子会社合併差益2,787億円(税効果考慮後)を非継続事業からの当期利益に計上いたしました。

2015年4月、当社はサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.株式をさらなる企業価値向上の観点から3,785億円で全株売却し、当連結会計年度において、本取引に係る売却損215億円(税効果考慮後)をその他の包括利益に計上いたしました。

 

(4) IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項

(のれんの償却)

 日本基準では、のれんは、その効果が発現すると見積もられる期間で償却することとしておりましたが、IFRSでは、IFRS移行日以降、のれんの償却を行っておりません。

(無形資産)

 日本基準では、技術導入契約の一時金等の支出は、費用として認識しておりましたが、IFRSでは、IAS第38号による無形資産の定義を満たすものについては資産化しております。

(金融収益及び金融費用)

 日本基準では、資本性金融商品の売却損益を純損益にて認識しておりましたが、IFRSでは、資本性金融商品の公正価値の変動を純損益ではなく、その他の包括利益として表示することを選択しております。

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬事業

558,906

111.2

合計

558,906

111.2

 (注)1.金額は正味販売価格によっております。

2.上記金額には消費税等を含めておりません。

 

(2) 受注状況

 当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。

(3) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

医薬事業

986,446

107.3

合計

986,446

107.3

 (注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

アルフレッサホールディングス

株式会社及びそのグループ会社

172,251

18.7

182,593

18.5

マッケソン社

138,514

15.1

164,957

16.7

カーディナルヘルス社

91,523

9.9

121,245

12.3

2.上記金額には消費税等を含めておりません。

3【対処すべき課題】

現在、当社が対処すべき課題は次のとおりであります。

 

(1) 経営課題1:2017年度パテントクリフの克服

主力製品である高血圧症治療剤オルメサルタン等のパテントクリフを克服するため、売上回復と利益創出に取り組み、2017年度の売上収益9,400億円、営業利益1,000億円の目標達成を目指して参ります。

売上回復への取り組みとしては、抗凝固剤エドキサバンや日本の主力製品、さらには米国ルイトポルド事業の成長を加速させて参ります。

利益創出への取り組みとしては、2015年度までに実施した施策に加え、さらなるコスト削減・効率化を推進し、営業利益1,000億円の確保を目指して参ります。

 

(2) 経営課題2:持続的成長基盤の確立

持続的成長基盤を確立するため、2020年度の売上収益1兆1千億円、営業利益1,650億円、ROE 8%以上を目指して参ります。また、2020年度時点で5年以内に市場投入し、かつピーク時売上収益1,000億円以上を期待できる後期開発品を3~5品目保有することを目指して参ります。

2020年度の目標を達成するため、次の事業戦略を実行して参ります。

 

① 事業戦略

(ⅰ) エドキサバンの成長

グローバルな上市戦略の着実な展開、確立された製品特性の継続的訴求、製品力強化を目的とした新規エビデンスの創出を進めて参ります。日本では製品力と質の高い営業力によってNo.1製品に育成し、欧州では提携会社との協業も利用し、欧州全域で本格的に展開を図り、エドキサバンの成長を加速し、2020年度の売上収益1,200億円以上の主力品に育てて参ります。

 

(ⅱ) がん事業の立上げ・確立

後期開発品の上市によってがん事業を立上げ、初期開発品の着実な開発推進、外部資源の獲得による製品・開発品の充実、新組織によるがん研究開発の加速を図り、売上収益を2020年度400億円以上、2025年度3,000億円規模の事業に育てて参ります。

 

(ⅲ) 日本No.1カンパニーとして成長

日本No.1カンパニーとして、イノベーティブ医薬品事業の強みを活かし、そこにワクチン事業、ジェネリック事業、OTC事業の3つの事業を加え、予防、セルフメディケーション、治療までの様々な社会的ニーズ、医療ニーズへ的確に対応することにより、名実共にNo.1カンパニーとして成長することを目指して参ります。

 

(ⅳ) 米国事業の拡大

第一三共Inc.では、モバンティック、CL-108、ミロガバリンによって、疼痛領域での事業拡大を図り、2020年度の売上収益1,000億円以上を目指して参ります。

ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.では、鉄注射剤のインジェクタファーとジェネリック注射剤を伸長させ、2020年度の売上収益1,500億円を目指して参ります。

 

(ⅴ) SOCを変革する先進的新薬の継続的創出

疾患のターゲットとして、がんを重点領域と定め、疼痛、中枢神経系疾患、心不全・腎障害、希少疾患を次世代領域と位置付け、研究組織をバイオベンチャーモデルへ転換するとともに、パートナリング、オープンイノベーション、トランスレーショナルリサーチを利用してSOCを変革する先進的新薬創出を目指して参ります。また、核酸医薬や細胞治療等先進的技術の治療応用実現を進めて参ります。

 

(ⅵ) 利益創出力の強化

利益創出力の強化として2015年度までに実施した取り組みに加え、今回の中期経営計画期間中に、グローバルレベルでの生産体制の最適化及び調達機能の強化を進めて参ります。同時にグループ全体に亘る大幅なコスト削減・効率化を行い、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費の見直しを進め、利益創出力の強化を図って参ります。

 

② 成長投資と株主還元等の考え方

第4期中期経営計画期間中のキャッシュの創出と使途については、成長投資を優先しつつ、株主還元も充実していく方針であります。

当連結会計年度末における手元流動性約7千億円に、今後研究開発費控除前のフリー・キャッシュ・フローと資産スリム化によって生みだすキャッシュを加えた約2兆2千億円が5カ年計画の原資となります。成長投資として研究開発に9,000億円、事業開発に5,000億円、残りを株主還元、設備投資、運転資金に充当する考えであります。

 

③ 株主還元方針

株主還元策としては、総還元性向を期間中100%以上、配当金は普通配当を年間70円以上に増配する方針であります。配当は安定的に行い、自己株式取得を機動的に実施して参ります。

(注)総還元性向:(配当金の総額+自己株式の取得総額)/親会社の所有者に帰属する当期利益

 

(3) 株式の大量取得を目的とする買付けに対する基本的な考え方

当社は、株式の大量取得を目的とする買付けが行われる場合、それに応じるか否かは、株主の皆様の判断に委ねられるものと考えており、経営権の異動を通じた企業活動の活性化等の意義を否定するものではありません。したがって、当社は買収防衛策を予め定めておりません。

しかし、一般に高値売抜け等の不当な目的による企業買収の提案があり、それが当社の企業価値・株主共同の利益の向上に資さない場合には、当社としてその提案に対抗することは当然の責務と認識しております。そのため、当社は株式取引や株主の異動状況等を常に注視しており、実際に当社株式の大量取得を目的とした買付者が出現した場合には、社外の専門家を交えて買収提案の評価を行い、当社の企業価値・株主共同の利益への影響を慎重に判断し、これに資さない場合には、個別の案件に応じた適切な対抗措置を講じて参ります。

 

4【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであり、既知もしくは未知のリスク、不確実性又はその他の要因により、実際の結果とは乖離する可能性があります。

 

(1) 特定製品への依存に関するリスク

当連結会計年度において、オルメサルタンの売上収益は、当社連結売上収益の28.8%を占めております。オルメサルタンについて、特許の保護期間の満了(当該特許の保護期間は米国では2016年10月まで、日本及び欧州では2017年2月まで)及びその他の要因が発生して売上が減少した場合には、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。

 

(2) 訴訟に関するリスク

公正取引に関する事案の他、事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題等に関し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。

当社、第一三共Inc.及び第一三共U.S.ホールディングスInc.並びにForest Laboratories, LLC(本社:米国ニューヨーク州)及びその関係会社は、オルメサルタンメドキソミルを含有する製剤(米国製品名「ベニカー」等)の服用により、スプルー様腸疾患(重症下痢等を主な症状とする疾患)等が発現したと主張する方々から、米国連邦裁判所及び州裁判所において複数の訴訟を提起されております。

上記の訴訟の結果によっては、当社及び当社の連結子会社に損害が生じる可能性がありますが、現時点で金額を合理的に見積ることはできません。

 

(3) 法規制、医療費抑制策等行政動向に関するリスク

国内医療用医薬品は、薬事行政の下、種々の規制を受けております。薬価基準の改定をはじめとして、医療制度や健康保険に関する行政施策の動向によっては、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。また、海外においても同様に、医薬品として各種の規制を受けており、行政施策の動向による悪影響を受けることがあ
ります。

第一三共Inc.は、主力品のプロモーション活動の一環として行った医師講演施策に関し、米国司法省より調査を受け、同省及びその他政府機関との間で和解に至りました。本和解に基づき、第一三共Inc.は、前連結会計年度に約39百万米ドルの和解金を支払うと共に、保健福祉省監察総監室との間で法令遵守に関する協定(Corporate Integrity Agreement)を締結いたしました。当社グループは、世界各国において今後とも一層厳しく法令遵守の徹底に努めて参ります。

 

(4) 企業買収等に関するリスク

当社は、研究開発等の分野における事業展開の一環として、企業買収又は資本提携等を実施することがあります。これらの企業買収等にあたり、当社は対象会社又は提携相手に関するデューデリジェンスを行い、当該企業買収等で期待できる効果を算定するよう努めております。しかし、対象会社の経営環境や事業の変化、デューデリジ
ェンスにおいて判明しなかった情報等に起因して、当該企業買収等において期待されていた買収効果が実現されない可能性があり、その場合、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。

当社は、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.がランバクシー・ラボラトリーズLtd.を吸収合併し、その対価として当社がサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.の株式を受領することについて、2014年4月にサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.との間で契約を締結し、2015年3月24日(クロージング日)に完了いたしました。

当社は、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.との間の本合併に関する契約に基づき、ランバクシー・ラボラトリーズLtd.のクロージング日前の品質問題等に関し、米国連邦政府又は州政府に支払う罰金及び損害等が、クロージング日から7年経過するまでの間にサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.等に生じた場合、その63.5%について325百万米ドルを上限として補償する義務の履行を求められる可能性があります。なお、当社は取得したサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.株式を2015年4月にすべて売却しておりますが、上記契約は継続しております。

 

(5) 研究開発・他社とのアライアンス等に関するリスク

新薬候補品の研究開発には、多額の費用と長い年月が必要でありますが、その間に期待された有用性が確認できず研究開発を中止する可能性があります。また、臨床試験で良好な結果が得られても承認審査基準の変更により承認が得られなくなる可能性があります。さらに、第三者との研究開発に係る提携に関して契約条件の変更・解消
等が起こった場合、研究開発の成否に悪影響を及ぼすことがあります。

北里第一三共ワクチン㈱は、2011年に厚生労働省の「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業(第2次事業)」の「細胞培養法ワクチン実生産施設整備等推進事業」の事業者に採択され、2014年3月末までに、6ヶ月以内に4,000万人分のワクチンを供給できる体制を構築する計画でありましたが、ワクチン抗原の精製過程における収率低下等の要因により、本供給体制を達成できていない状況にありました。その後の製造工程の見直しによる収率改善により、4,000万人分のワクチン供給体制を構築する見込みであります。

 

(6) 製造・仕入れに関するリスク

製品の一部は当社グループの工場において独自の技術により製造しており、また、商品及び原材料の一部には特定の取引先にその供給を依存している品目があります。このため、何らかの理由により製造活動や仕入れが遅延又は停止した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。医薬品は医薬品医療機器法の規制の下で製造しておりますが、品質問題の発生により製品回収等を行うことになった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。

 

(7) 副作用発現や他社競合等製品販売に関するリスク

予期していなかった副作用の発現、同領域の他社製品との競合や特許切れによる後発品の参入、特に特許切れ後の安価なジェネリック医薬品の発売等は、当社医薬品の売上を減少させる要因となり、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。販売及び技術導出入契約の満了、契約条件の変更・解消等が起こった場合、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。さらに、特許期間内においてもジェネリック医薬品の申請が可能である米国等先進諸国における後発品拡大の影響や、公的保険、民間保険会社との交渉結果次第では、仮に製品として発売されても、研究開発投資に見合う売上・利益を確保できない可能性があります。

 

(8) 知的財産に関するリスク

当社グループの事業活動が他者の特許等知的財産権に抵触する場合、事業の断念や係争の可能性があります。一方、第三者が当社グループの特許等知的財産権を侵害すると考えられる場合は、その保護のため訴訟を提起する場合があり、それらの動向は経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。とくに先進諸国での後発品拡大を背景に、訴訟提起を含め、当社グループの知的財産に関するリスクが一層増大する可能性があります。

 

(9) 海外における事業展開に関するリスク

当社は、医薬品の開発、販売等の分野で、海外においても積極的に事業を展開しており、このような海外事業においては、当該地域における政治不安や経済情勢の悪化等の地政学的な要因、当該地域の法規制に抵触するリスク、現地の労使関係等に関するリスクが存在します。これらのリスクが顕在化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。

 

(10) 災害等の発生による事業活動に関するリスク

地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等の損害が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社グループは、2011年3月に発生した東日本大震災での経験を踏まえ、有事の際に速やかな業務復旧を図り、医療体制維持のため医薬品の品質確保と安定供給に努めるべく、事業継続計画(BCP)を刷新いたしました。BCPにおいては、主力品を中心とした事業継続の観点、及び緊急性のある薬剤や代替品のない薬剤といった社会的意義のある薬剤の供給を速やかに実施するという観点から、優先すべき品目の見直しを行いました。

また、サプライチェーンにおいては、東日本大震災時の復旧期間を参考にしつつ、地震の発生確率を加味した復旧期間のリスク評価を行い、予防策、支援策、代替策等を適宜更新しております。

 

(11) 環境問題に関するリスク

医薬品の研究、製造の過程等で使われる化学物質のなかには、人の健康や生態系に悪影響を与える物質も含まれています。当社では医薬品等の管理には万全を期しておりますが、万一、当社グループが、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等に関し環境に深刻な影響を与えていると判断された場合、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。

 

(12) 金融市況及び為替変動に関するリスク

株式市況の低迷により保有する株式の売却損や評価損が生じ、金利動向により退職給付債務の増加等が生じる可能性があります。また、為替相場の変動により、不利な影響を受ける可能性があります。当社グループはグローバルに事業を展開し、生産・販売・輸出入を行っておりますので、為替相場の変動は経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあります。

 

(13) その他のリスク

上記のほか、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすことがあるリスクとしては、ネットワークウイルス等によるコンピュータシステムの休止、機密情報の漏洩や役職員の不正、株価や金利の変動、資金調達のリスク等が考えられます。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入

契約会社名

相手先

国名

技術内容

対価

契約期間

第一三共㈱

(当社)

アムジェン社

アメリカ

抗RANKL抗体「デノスマブ」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

一定料率の実施料

自 2007年7月

至 2027年6月

第一三共㈱

(当社)

イノシマブ社

シンガポール

ヒト化抗EGFRモノクロナール抗体抗がん剤「ニモツズマブ」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

自 2006年7月

至 上市後10年

(以後1年ごとの自動更新)

シマブ社

キューバ

第一三共㈱

(当社)

アーキュール社

アメリカ

抗悪性腫瘍剤「ARQ197」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

一定料率の実施料

自 2008年12月

至 実施料の支払満了日

第一三共㈱

(当社)

エル・オー・シー・エル・ファーマ社

アメリカ

制吐剤配合麻薬性鎮痛剤「CL-108」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

一定料率の実施料

自 2014年8月

至 開発又は販売の中止日

第一三共㈱

(当社)

トランスレーショナル・サイエンシズ社

アメリカ

血栓溶解剤「TS23」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

一定料率の実施料

自 2015年9月

至 対象特許の満了日

第一三共㈱

(当社)

メディミューン社

アメリカ

鼻腔噴霧インフルエンザ弱毒生ワクチンに関する技術

契約一時金

マイルストーン

自 2015年9月

至 上市後10年

第一三共Inc.

(連結子会社)

ジェンザイム社

アメリカ

高脂血症治療剤「ウェルコール」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

一定料率の実施料

自 1999年12月

至 対象特許の満了日

ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.

(連結子会社)

バイフォー社

スイス

貧血治療剤「ヴェノファー」に関する技術

製品購入価格

自 1997年12月

至 2030年12月

 (注)第一三共㈱とアンプリミューン社の自己免疫疾患治療剤「AMP-110」に関する共同研究開発並びにグローバルにおける臨床開発、製造及び販売に関する独占的オプション権に関する契約は、2015年9月に終了しております。

 

(2) 技術導出

契約会社名

相手先

国名

技術内容

対価

契約期間

第一三共㈱

(当社)

イーライ・リリー社

アメリカ

虚血性疾患治療剤「エフィエント(プラスグレル)」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

一定料率の実施料

自 2001年6月

至 対象特許の満了日

プレキシコンInc.

(連結子会社)

ロシュ社

スイス

転移性悪性黒色腫治療薬「ゼルボラフ(ベムラフェニブ)」に関する技術

契約一時金

マイルストーン

一定料率の実施料

自 2006年9月

至 対象特許の満了日又は上市後12年のうち何れか遅く到来する日

 

(3) 販売契約等(導入)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の内容

契約期間

第一三共㈱

(当社)

田辺三菱製薬㈱

日本

同社の血糖降下剤「テネリア」及び「カナグル」の日本国内における共同販促

自 2012年3月

至 上市後10年

(以後1年ごとの自動更新)

第一三共㈱

(当社)

メルツ・ファーマシューティカルズ社

ドイツ

同社のアルツハイマー型認知症治療剤「メマリー」の日本国内における独占販売

自 1997年12月

至 上市後10年

第一三共㈱

(当社)

アストラゼネカ社

スウェーデン

同社のプロトンポンプ阻害剤「ネキシウム」の日本国内における独占販売及び共同販促

自 2010年10月

至 上市後10年

(以後は何れかが12ヶ月前通知により解約する日)

第一三共㈱

(当社)

ジーイー・ヘルスケア社

ノルウェー

同社の非イオン性造影剤「オムニパーク」の日本国内における独占販売

自 1987年3月

至 販売終了の日

第一三共㈱

(当社)

ユーシービー・バイオファーマ社

ベルギー

同社のてんかん治療薬「ラコサミド」の日本国内における独占販売及び共同販促

自 2014年11月

至 上市後10月

第一三共㈱

(当社)

キッセイ薬品工業㈱

日本

同社の排尿障害治療剤「ユリーフ」の日本国内における共同販売

自 2004年6月

至 販売中止日

第一三共㈱

(当社)

エフ・ホフマン・ラ・ロシュ社

スイス

同社の高血圧症治療剤「アーチスト」の日本国内における独占販売

自 1989年7月

至 商標使用の終了日

第一三共㈱

(当社)

サノフィ㈱

日本

同社のインフルエンザ菌b型による感染症予防小児用ワクチン「アクトヒブ」の日本国内における販売

自 2008年11月

至 2018年12月

(協議更新)

第一三共Inc.

(連結子会社)

アストラゼネカ社

イギリス

オピオイド(麻薬性鎮痛薬)誘発性便秘薬「モバンティック」の米国内における共同販促

自 2015年3月

至 年間販売額が一定基準を下回ったとき

 

(4) 販売契約等(導出)

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の内容

契約期間

第一三共ヨーロッパGmbH

(連結子会社)

メナリーニ社

イタリア

血圧降下剤「オルメテック(オルメサルタン)」の欧州における共同販売

自 2001年6月

至 2020年12月

ルイトポルド・ファーマシューティカルズInc.

(連結子会社)

フレゼニウス・ユーエスエイ・マニュファクチャリング社

アメリカ

貧血治療剤「ヴェノファー」の米国内における販売

自 2008年11月

至 2018年10月

第一三共ノーザンヨーロッパGmbH

(連結子会社)

メルク社

アメリカ

抗凝固剤「リクシアナ(エドキサバン)」の欧州一部地域における独占販売

自 2016年2月

至 2026年2月又は対象特許の満了日のうち何れか遅く到来する日

 

(5) 業務委託契約

契約会社名

相手方の名称

国名

契約の内容

契約期間

第一三共㈱

(当社)

㈱日立製作所

日本

IT業務の同社への委託

自 2014年4月

至 2017年3月

 

6【研究開発活動】

当社グループは、革新的医薬品の迅速かつ継続的な創出に向けた取り組みを推進しており、循環代謝領域・がん領域・先端領域を重点領域と定め、ファーストインクラス・ベストインクラス品目の創出に注力した取り組みを実施して参りました。

加えて、他社との提携やオープンイノベーションの拡充、バイオ医薬品事業への本格参入に向けた研究開発の強化やワクチンの研究開発も推進して参りました。

また、研究開発力の強化策の一つとして、研究開発ユニットを低コスト体質へ転換し、開発プロジェクトへの投資効率を高める取り組みも進めております。この一環としてグローバル研究開発体制を見直し、欧州子会社U3ファーマGmbH及び英国子会社第一三共ディベロップメントLtd.の閉鎖を決定いたしました。

主な研究開発プロジェクトや進捗状況、及び今後の研究開発体制は、次のとおりであります。

 

(1) 主な研究開発プロジェクト

① プラスグレル

 日本では、2014年より経皮的冠動脈形成術を伴う虚血性心疾患の適応症で製品名エフィエントとして販売しておりますが、虚血性脳血管障害患者を対象としたフェーズ3試験を推進しております。

 また、米国で実施していた小児鎌状赤血球症患者を対象としたフェーズ3試験結果を米国食品医薬品局(以下「FDA」という。)に提出しております。これにより180日間の独占販売期間延長が認められることを期待しております。

② エドキサバン

 当期末時点で、日本、米国に続き、スイス、イギリス、ドイツ、アイルランド、オランダ、韓国において販売を開始しております。さらに、台湾で承認を取得し、中国、香港、タイ、オーストラリア、カナダ、ブラジル、トルコにおいて承認申請中であります。

 また、2015年6月より、がんに合併し静脈血栓塞栓症を発症した患者を対象としたHokusai-VTE Cancer試験を実施しております。

③ ミロガバリン

 米欧で線維筋痛症患者を対象としたフェーズ3試験を推進しており、日本・アジアでは、糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者及び帯状疱疹後神経痛患者を対象としたフェーズ3試験を推進しております。

④ ペキシダルチニブ

 米欧で腱滑膜巨細胞腫(以下「TGCT」という。)患者を対象としたフェーズ3試験を推進中ですが、2015年10月、同剤はFDAよりTGCTの治療における「画期的治療薬 (Breakthrough Therapy)」に指定されました。

 また、抗PD1抗体を含む他剤との併用での進行性固形がん患者を対象としたフェーズ1/2a試験を推進しております。

⑤ ワクチン

 2015年4月に、テルモ㈱との共同開発による皮内投与型季節性インフルエンザワクチンについて国内製造販売承認申請を行いました。

 また、2015年9月に、アストラゼネカ社の子会社である米国メディミューン社と鼻腔噴霧インフルエンザ弱毒生ワクチンの国内開発・販売に関するライセンス契約を締結し、申請準備をしております。

 

(2) 主な研究開発提携等及び関連プロジェクトの進捗等

① てんかん治療薬ラコサミドの国内製造販売承認申請

 2014年11月、ユーシービージャパン㈱と、同社が開発したてんかん治療薬ラコサミドに関する共同商業化契約を締結いたしました。2015年6月、同社は、成人てんかん患者の部分発作に対する他の抗てんかん薬との併用療法を適応として同剤の国内製造販売承認申請を行いました。同社は、同剤の臨床試験結果について2015年米国てんかん学会で発表しており、主要評価項目での有用性を示すことができました。同剤の製造は同社が行い、販売・流通は当社が担当し、プロモーション活動は両社共同で実施する予定であります。

血栓溶解剤DS-9231/TS23の導入

 2015年9月、米国トランスレーショナル・サイエンシズInc.との間で、現在フェーズ1試験中の同社血栓溶解剤TS23について、独占的ライセンス契約を締結いたしました。本契約により、当社は、全世界でのTS23の独占的開発及び商業化に関する権利を有し、開発業務を同社より引継ぎ、自社開発品DS-9231として開発して参ります。

 血栓症領域において当社は、慢性期の薬剤として抗血小板剤プラスグレル及び抗凝固剤エドキサバンを有しております。急性期の薬剤については血栓溶解剤として自社開発中のDS-1040にこのたび導入したDS-9231を加えることにより、開発パイプラインを充実させるとともに、血栓領域のポートフォリオ拡充を目指して参ります。

制吐剤配合麻薬性鎮痛剤CL-108のフェーズ3試験における所期目的達成

 2014年8月、米国チャールストン・ラボラトリーズInc.から制吐剤配合の麻薬性鎮痛剤CL-108を導入いたしました。中等度から重度の急性疼痛及びオピオイド誘発性悪心・嘔吐の低減を目指したフェーズ3試験が2015年10月に終了し、2つの主要評価項目で所期の目的を達成し、2016年3月に同社が承認申請いたしました。

④ エタネルセプト バイオ後続品の国際共同フェーズ3試験における所期目的達成

 米国コヒーラス・バイオサイエンシス社とCHS-0214(エタネルセプト(遺伝子組換え)バイオ後続品)の共同開発を推進しておりますが、今般、メトトレキサートによる治療では効果が不十分な関節リウマチ患者を対象とした国際共同フェーズ3試験において、先行バイオ医薬品であるエンブレル®との同等性基準を満たし、所期の目的を達成いたしました。引き続き、日本における承認申請に向けた活動を進めて参ります。

⑤ がん治療ウイルス(G47Δ)の「先駆け審査指定制度」対象品目への指定

 当社と東京大学医科学研究所 藤堂具紀教授(以下「藤堂教授」という。)が共同で申請したがん治療用ウイルス(G47Δ)が、2015年度に始まった医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品の先駆け審査指定制度の対象品目に指定されました。藤堂教授は、今回指定を受けたG47Δを用いたウイルス療法により、悪性神経膠腫を対象としたフェーズ2試験を2015年に開始しております。

⑥ 核酸医薬(DS-5141b)のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療を目指した国内臨床試験開始

 当社は、㈱Orphan Disease Treatment Instituteと共同開発中のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下「DMD」という。)治療剤(DS-5141b、以下「本剤」という。)の最初の臨床試験(国内でのフェーズ1・2試験)を今般開始いたしました。本剤は、極めて重篤な伴性劣性の遺伝性希少疾患であるDMDの治療が期待される核酸医薬品であります。2020年までに国内製造販売承認を取得することを目標に、開発を進めております。

⑦ エピジェネティクスを標的とするEZH1/2二重阻害剤(DS-3201b)のフェーズ1試験開始

 当社は、国立研究開発法人国立がん研究センター及び国立大学法人東京大学と、血液がんに対する新規分子標的薬としてヒストンメチル化酵素EZH1/2二重阻害剤(DS-3201b)を共同開発し、この度、成人T細胞白血病リンパ腫を含む悪性リンパ腫患者に対するフェーズ1試験を開始いたしました。

⑧ 創薬共同研究公募(TaNeDS)

 当社は、オープンイノベーションの一環として、2011年度から創薬共同研究の公募(TaNeDS)を日本国内アカデミアの研究者を対象に実施し、2013年度からは海外(ドイツ、スイス、オーストリア)においても、大学及び研究機関の研究者を対象に、創薬共同研究の公募(TaNeDS Global Program)を実施しており、2015年度も選考の結果、複数の共同研究を開始しております。

 

(3) 2025年ビジョンに向けた研究開発体制の見直し

 「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を2025年ビジョンとして掲げ、その達成に向け、2016年4月に研究開発体制の見直しを実施いたしました。

 重点領域である、がん領域の研究開発を加速するため、研究と臨床開発の組織をグローバルに一体化したオンコロジーRDサブユニットを新設し、責任者を新たに外部から採用いたしました。

 また、疼痛、中枢神経系疾患、心不全・腎障害、希少疾患を次世代領域と位置付け、次世代領域の研究組織もバイオベンチャーモデルに転換いたしました。薬理と合成、あるいは薬理とバイオの両機能を有した領域毎の小組織をつくり、迅速な意思決定を可能とすることで、研究スピードの加速・生産性の向上を目指して参ります。

 なお、当連結会計年度の研究開発費は、2,087億円(前連結会計年度比9.4%増)となり、売上収益に対する研究開発費の比率は、21.2%となりました。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2016年6月20日)現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループは、積極的なグローバル事業の展開による企業価値の向上に資するために、基準とすべき会計及び財務報告のあり方を検討した結果、資本市場における財務情報の国際的な比較、グループ内での会計処理の統一、グローバル市場における資金調達手段の多様化等を目的として、2014年3月期よりIFRSを適用しております。

当社グループの連結財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としており、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要な会計方針」に記載しております。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上収益

売上収益は、前連結会計年度に比べ671億円(+7.3%)増収の9,864億円となりました。日本においてジェネリック医薬品の処方拡大による影響があったものの、抗潰瘍剤ネキシウム、抗凝固剤リクシアナ等の伸長や、米国・アジアにおける主力品の伸長及び為替の寄与もあり、増収となりました。

② 売上原価

売上原価は、前連結会計年度に比べ45億円(△1.4%)減少の3,186億円となりました。売上収益の増収に伴い増加した一方、前連結会計年度に連結子会社プレキシコンInc.における抗悪性腫瘍剤ゼルボラフの営業権の減損処理(350億円)があったため、減少いたしました。当連結会計年度についても、原価低減への取り組みを継続的に実施しております。

③ 販売費及び一般管理費、研究開発費

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ24億円(△0.7%)減少の3,288億円となりました。研究開発費は、前連結会計年度に比べ180億円(+9.4%)増加の2,087億円、対売上収益研究開発費比率は21.2%となりました。当社グループは、今後とも収益動向を踏まえた研究開発活動の効率化を進めると同時に、企業価値の向上と将来にわたる成長力獲得を目指した積極的な研究開発投資を実施して参ります。

④ 営業利益

これらの結果、営業利益は前連結会計年度に比べ560億円(+75.2%)増益の1,304億円、対売上収益営業利益率は13.2%となりました。

⑤ 税引前利益

税引前利益は、前連結会計年度に比べ425億円(+53.1%)増益の1,224億円となりました。

⑥ 法人所得税費用

法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ56億円(+15.4%)増加の420億円となりました。

⑦ 継続事業からの当期利益

継続事業からの当期利益は、前連結会計年度に比べ368億円(+84.5%)増益の804億円となりました。

⑧ 親会社の所有者に帰属する当期利益

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ2,398億円(△74.5%)減益の823億円となりました。前連結会計年度にランバクシー・ラボラトリーズLtd.がサン・ファーマシューティカル・インダストリーズLtd.に吸収合併されたことによる子会社合併差益2,787億円(税効果考慮後)があったため、大幅減益となりました。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

① 財政状態

当連結会計年度末における資本合計は1兆2,335億円(前連結会計年度末比735億円減少)、資産合計は1兆9,005億円(前連結会計年度末比818億円減少)、親会社所有者帰属持分比率は64.8%(前連結会計年度末65.8%)となりました。資本合計は、当期利益の計上がある一方で、自己株式の取得等により、減少いたしました。資産合計は、借入金の返済等により、資本合計と比較して減少額が大きくなっております。

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、期首に比べ328億円増加の2,222億円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益1,224億円、減価償却費及び償却費443億円及び減損損失47億円等の非資金項目のほか、法人所得税の支払等による資金の減少により、前連結会計年度に比べ315億円収入増加の1,743億円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資及び子会社の取得等により、前連結会計年度に比べ153億円支出減少の60億円の支出となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得、配当金の支払及び借入金の返済等により、前連結会計年度に比べ93億円支出減少の1,229億円の支出となりました。

③ 資金需要

当社グループでは、今後もグローバル市場での事業展開を加速するため、グローバルにおいて研究開発活動、ライセンス活動を継続するとともに、自社販売体制をより一層拡充して参ります。当社グループは、引き続き財務の健全性を保ち、営業活動によるキャッシュ・フローの創出によって、当社グループの成長に必要な資金調達が可能であると考えております。