(1)業績
≪連結業績≫
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
525,026 |
514,164 |
△10,861 |
△2.1 |
(日本) |
187,210 |
187,000 |
△209 |
△0.1 |
(海外) |
337,815 |
327,163 |
△10,651 |
△3.2 |
営業利益 |
81,703 |
76,578 |
△5,124 |
△6.3 |
経常利益 |
73,090 |
68,552 |
△4,538 |
△6.2 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
50,676 |
54,225 |
3,549 |
7.0 |
当期における医療機器市場は、海外では米国を中心に大手医療機器企業による事業売却や買収が発表されるなど、業界再編の動きが見られました。日本では、平成28年4月に薬価・公定価改定が実施され、財源の重点的・効率的な配分に向けて、費用対効果評価が試行導入されるなど、医療経済性へのニーズが高まっています。
このような環境のもと、当社グループは次の5年間を対象とする中長期成長戦略を平成28年12月に策定しました。さらに、この中長期成長戦略を強力に推進するべく、平成29年4月1日からスタートする新経営体制を発表しました。新たに就任した代表取締役会長及び代表取締役社長CEOのもと、日本発のグローバル企業として、持続的かつ収益性のある成長の実現に向けて取り組んでいきます。
当連結会計年度の売上高は、前期比2.1%減の5,142億円となり、営業利益は前期比6.3%減の766億円となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
セグメントの名称 |
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
心臓血管カンパニー |
売上高 |
258,600 |
261,529 |
2,928 |
営業利益 |
61,616 |
60,787 |
△829 |
|
ホスピタルカンパニー |
売上高 |
161,382 |
157,946 |
△3,435 |
営業利益 |
22,613 |
23,772 |
1,159 |
|
血液システムカンパニー |
売上高 |
105,042 |
94,483 |
△10,559 |
営業利益 |
△1,405 |
△2,906 |
△1,500 |
|
調整額 |
売上高 |
- |
205 |
205 |
営業利益 |
△1,121 |
△5,075 |
△3,953 |
(注) 当該セグメントの業績における営業利益は全社費用の配賦後であります。
<心臓血管カンパニー>
日本では、TIS事業におけるアクセスデバイスの販売やニューロバスキュラー事業が好調に推移しましたが、平成27年10月に発売した薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster」の売上寄与の一巡や公定価改定による影響もあり、減収となりました。海外では、TIS事業でアクセスデバイス及びUltimasterの販売が好調に推移し、ニューロバスキュラー事業の売上も為替の影響を除くと二桁伸長となりました。さらに買収した止血デバイス事業等の売上も寄与し、為替の影響をカバーして増収となりました。
その結果、心臓血管カンパニーの売上高は前期比1.1%増の2,615億円となりました。
<ホスピタルカンパニー>
日本では、クローズド(閉鎖式)輸液システム等の輸液ラインや、疼痛緩和、腹膜透析向け製品の販売が堅調に推移しましたが、薬価改定及び前期に実施した造影剤の販売移管の影響により、若干の減収となりました。海外では、アジアでの静脈留置針の販売や欧州の製薬企業向けビジネスが好調に推移しましたが、基盤医療器事業で欧州、中南米の低収益事業の縮小を進めたことや為替の影響等により、減収となりました。
その結果、ホスピタルカンパニーの売上高は前期比2.1%減の1,579億円となりました。
<血液システムカンパニー>
日本では、血液センター向けの成分採血システムの販売が堅調に推移し、増収となりました。海外では、前期の下半期に実施された米国の血液センター向け製品における価格改定の影響に加えて、各地域で為替の影響を受け、減収となりました。
その結果、血液システムカンパニーの売上高は前期比10.1%減の945億円となりました。
(2)キャッシュ・フロー
≪キャッシュ・フロー計算書概要≫
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
80,303 |
80,862 |
558 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△23,495 |
△181,433 |
△157,938 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△79,936 |
60,937 |
140,873 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
146,927 |
105,046 |
△41,880 |
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果得られた資金は809億円(前連結会計年度は803億円の取得)となりました。税金等調整前当期純利益は750億円、減価償却費は342億円、のれん償却額は112億円となりました。また、法人税等の支払額は248億円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は1,814億円(前連結会計年度は235億円の使用)となりました。事業譲受による支出1,192億円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出494億円、有形固定資産の取得による支出298億円が主な要因です。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果得られた資金は609億円(前連結会計年度は799億円の使用)となりました。これは主に、自己株式の取得による支出442億円及び配当金の支払145億円があった一方で、短期借入れによる収入1,200億円、社債の発行による収入299億円及び長期借入れによる収入296億円があったことによるものであります。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より419億円減少して1,050億円となりました。
(1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
報告セグメント |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
心臓血管カンパニー |
272,915 |
11.3 |
ホスピタルカンパニー |
153,301 |
0.6 |
血液システムカンパニー |
96,724 |
△1.8 |
合計 |
522,941 |
5.4 |
(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.報告セグメントに含まれる製品は、105ページ「各報告セグメントの主な製品」をご覧下さい。
4.当連結会計年度の仕入製品の仕入実績は、当連結会計年度平均販売価格(消費税等含まず。)算出で、23,851百万円となります。
(2)受注状況
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
報告セグメント |
売上区分 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
心臓血管カンパニー |
TIS(カテーテル) |
180,204 |
2.0 |
ニューロバスキュラー |
28,650 |
8.9 |
|
CV |
39,777 |
△4.9 |
|
血管 |
12,897 |
△7.0 |
|
ホスピタルカンパニー |
基盤医療器 |
76,230 |
△1.9 |
D&D |
57,156 |
△2.0 |
|
DM・ヘルスケア |
24,558 |
△3.0 |
|
血液システムカンパニー |
血液システム |
94,483 |
△10.1 |
調整額 |
205 |
- |
|
合計 |
514,164 |
△2.1 |
(注) 1.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.調整額205百万円は、報告セグメントに帰属しない外部向け人材派遣による収入であります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
企業理念:「医療を通じて社会に貢献する」
当社グループは、大正10年の創業以来、この企業理念のもと、医療の進歩や安全性の向上を目指し、一貫して医療現場のニーズに応える医療機器、医薬品の開発と普及に取り組んでいます。
5つのステートメント:「開かれた経営」、「新しい価値の創造」、「安全と安心の提供」、「アソシエイトの尊重」、「良き企業市民」
このステートメントは、当社グループが企業活動を行う上で行動や判断の基準とする原則を示したものです。
グローバルビジョン:“Innovating at the Speed of Life”
当社グループが将来に向かって取り組むべきこと、また、進むべき方向性を示しています。患者さんの命を第一に、医療従事者のパートナーであり続けること、そしてイノベーションを起こすことで、患者さんの暮らしや医療をより良くしていくという方針を示しており、平成27年1月に策定いたしました。
(2)目標とする経営指標
当社グループでは、次の5年間を対象とする中長期成長戦略を策定し、成長性、収益性、効率性においてそれぞれ以下の目標を掲げ、達成に向けて取り組んでいきます。
|
方針 |
目標 |
|
成長性 |
市場拡大ペースを上回る成長 |
売上高 |
:一桁後半の成長 |
収益性 |
売上成長を上回る利益成長 |
調整後営業利益(IFRS)※1 |
:二桁成長 |
調整後EPS※2 |
:270~300円※3 |
||
効率性 |
適切な効率性水準を維持 |
調整後ROE※4 |
:10%以上を維持 |
想定為替レート:USD=105円、EUR=115円
※1 買収に伴い生じた無形資産償却や一時費用等を除いた営業利益
なお、当社グループは平成30年3月期期末決算より国際会計基準(IFRS)を適用します。
※2 買収に伴い生じた無形資産償却や一時費用等を除いたEPS(一株当たり当期純利益)
※3 最終年度平成33年度時点
※4 純資産に含まれる買収関連資産に係る為替換算調整勘定残高を除いたROE(株主資本利益率)
(3)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
医療機器市場は、高齢者数の増加とそれに伴う慢性疾患の増加、新興国における経済発展や人口増加等により、今後も市場の拡大が見込まれています。一方で医療費の増加が財政を圧迫する中、価値や効率性を重視した医療へのシフトが進んでいます。また、海外では買収や合併による業界再編が進み、企業規模の巨大化と集中・寡占化が進みつつあります。このような事業環境の変化を踏まえ、当社グループは、次の5年間を対象とする中長期成長戦略を策定しました。「医療を通じて社会に貢献する」という企業理念のもと、以下の3つの戦略を推進し、製品・供給・サービスを含めたトータルクオリティを高め、世界の医療現場から必要とされる価値を提供することで、事業を展開する各分野でトップブランドとして認知されることを目指します。
中長期成長戦略
①グローバルでは選択と集中
高度医療を支えるために不可欠な製品や独自の技術力を活かして、グローバルでは、カテーテル、脳血管、D&D(ドラッグアンドデバイス、薬と医療機器を組み合わせて付加価値を高める領域)、血液治療等、市場の拡大が見込まれる領域や当社グループの競争力を発揮できる分野に注力します。
②日本では総合力の発揮
ホームグラウンドである日本では、トップ企業としてのブランド力、幅広い製品構成や医療現場との接点、確立した流通網等を活かして、医療機関や地域のニーズを満たし、患者さんのQOL(生活の質)の向上や医療の効率化に貢献する製品・サービスを提供していきます。
③イノベーションの推進
グローバルに展開する開発拠点やこれまで研究開発活動を通じて培った幅広いコア技術を活かし、自社開発を強化するとともに、社外との連携も推進し、社会全体への影響が大きい医療課題の解決に向けて、価値あるイノベーションの創出を目指します。
(4)会社の支配に関する基本方針
※平成29年5月10日の取締役会にて、平成29年6月27日の当社株主総会の終結のときをもって本基本方針を変更するとともに、本項3記載の「当社株式の大規模買付行為に関する基本方針(買収防衛策)」は更新しないことを決議しました。したがって、買収防衛策は失効しております。
1.当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当社は経営支配権の異動を通じた企業活動や経済の活性化を否定するものではありません。また、大規模買付行為が開始された場合において、これを受け入れるかどうかは、原則として、当社株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると考えております。しかしながら、当社は、大規模買付行為又はこれに関する提案につきましては、当社株主の皆様が、当該大規模買付者の事業内容、事業計画、さらには過去の投資行動等から、当該大規模買付行為又は提案の企業価値及び株主の皆様共同の利益への影響を慎重に判断する必要があると認識しています。そのためには、大規模買付者及び当社取締役会の双方から、当社株主の皆様に必要かつ十分な情報、意見、提案などの提供と、それらを検討するための必要かつ十分な時間が確保される必要があると考えます。
当社取締役会は、このような基本的な考え方に立ち、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針に定める手続を設定し、大規模買付者に対してかかる手続の遵守を求めるものとし、大規模買付者がこの手続を遵守しない場合、あるいは遵守した場合でも、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかであるときや、企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうときには、当社取締役会として一定の措置を講ずる方針です。
2.基本方針の実現に資する取組み
1)当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益向上に向けた取組み
①企業理念と経営の基本姿勢
当社は大正10年の創業以来、「医療を通じて社会に貢献する」との企業理念のもと、日本の医療機器業界をリードする企業として、医療の進歩や安全性の向上とともに、企業価値及び株主の皆様共同の利益の向上に誠実に努めることを経営の基本方針としており、現在では、世界160ヶ国以上に高品質な医療機器を供給しております。
②具体的な取組み
先進国における高齢化と医療費抑制の動き、新興国における経済発展や人口増加など、世界の医療機器産業を取り巻く市場環境は転換期を迎えていますが、当社の参入領域は、今後も成長が期待できる領域であると考えております。例えば、カテーテルを用いた血管内治療は、治療の低侵襲化という流れに即して、心臓の血管だけではなく、脳や下肢など全身の血管に広がっています。また、血液の分野においては免疫疾患などアフェレシス治療の需要拡大に加え、細胞治療の拡大に伴う細胞プロセッシングへの期待も高まっています。さらに、ホスピタル分野では、医療事故や感染を防止するセーフティ化、薬剤イノベーションにあった投与システムへのニーズがますます高まっています。このような新たな市場ニーズを成長の機会として捉え、企業理念である医療を通じた社会への貢献を実現するべく、持続的かつ収益性のある成長を続けると同時に、医療現場のニーズに合致した製品開発でイノベーションを起こし、「世界で存在感のある企業」を目指してまいります。
2)当社の社会的使命
当社は医療機器のリーディングカンパニーとして、長年にわたって医療現場と信頼関係を築き、医療を通じて社会に貢献してまいりました。優れた製品やサービス・システムを高い品質で安定的に供給すること、そして、患者さんや医療従事者の視点に立ち、医療を取り巻く様々な社会的課題の解決に向けて積極的に挑戦することが、最も重要な当社の社会的責任であると考えています。このような考え方のもと、当社は引き続き、製品の供給や品質の確保において世界の医療供給体制の中で重要な役割を担い、医療現場に安全と安心を提供してまいります。
不適切な買収行為により、当社製品の供給や品質に問題が生じた場合、社会の人々の生命や健康に深刻な影響を及ぼす可能性も否定できません。そのような事態を招くことなく、社会と医療現場からの長年の信頼を維持向上させる安定的経営は、当社の企業価値・株主の皆様共同の利益にもかなうこととなります。
3)コーポレートガバナンスの強化
コーポレート・ガバナンスに関する取組みにつきましては、「第4 提出会社の状況 6.コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの状況」に記載のとおりです。
3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうような買収等を未然に防止するため、平成20年6月27日開催の当社第93期定時株主総会において、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)を導入することにつき株主の皆様のご承認を頂きました。
その後、平成23年6月29日開催の当社第96期定時株主総会、及び平成26年6月24日開催の当社第99期定時株主総会において、買収防衛策の更新につき株主の皆様のご承認を頂いております。
4.具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
上記2に記載した、当社の目標の実現に向けた成長戦略の着実な実行は、当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益を確保・向上させるものであり、当社の基本方針に沿うものです。
また、上記3に記載した買収防衛策は、大規模買付者に対して事前に必要情報の提供及び一定の検討期間の確保を求めることにより、株主の皆様が大規模買付行為に応ずるべきか否かにつき慎重に判断される機会を確保することを目的とするものであり、基本方針に沿うものと考えます。更に、本買収防衛策は、a)株主及び投資家の皆様並びに大規模買付者の予見可能性を高めるため、事前の開示がなされていること、b)平成26年6月24日開催の株主総会において株主の皆様のご承認を頂いていること、c)経営者の保身目的での濫用防止のため、独立委員会を設置し、当社取締役会が対抗措置を発動する場合、独立委員会の勧告に従った上で判断を行うものとしていること等から、株主の皆様共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
・医療行政の方針変更
当社の属する業界は、国内外で、医療費抑制や、医療の質の向上を目的とした医療制度改革が継続的に行われております。今後予測できない大規模な医療行政の方針変更が行われ、急激な環境変化が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・販売価格の変動
当社の属する業界は、日本では医療費抑制策の一環として、2年に1度、診療報酬、薬価及び特定保険医療材料の公定償還価格の改定が行われます。また、国内外ともに、市場における企業間競争の激化や技術革新により、大幅な価格下落が発生する可能性があり、これらの販売価格の変動は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・原材料価格の変動
当社の製品を製造するための原材料は、プラスチックなどの石油を原料とするものが多いため、世界的な資源価格の高騰により、原材料購入費用が増加し、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・為替レートの変動
当社は、日本に本社を置き事業運営を行っているため、各地域における現地通貨建て財務諸表を連結財務諸表作成等のために円換算しています。従って為替レートに変動があると、換算に適用するレートが変動し、円換算後の損益に影響を受けることとなります。
当社は海外工場への生産移管、海外からの原材料調達等の構造的対応を図るとともに、保有する債権の当該リスクに対し、機動的な為替予約により対処しています。
しかしながら、予想外の変動が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を与えることがあります。
・海外活動に係るリスクについて
当社は世界各国に製品を供給していますが、当社が事業活動している様々な市場における景気後退や、それに伴う需要の縮小、あるいは海外各国における予期せぬ政情の変化や法規制等の変更があった場合、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・品質問題について
当社は、医薬品及び医療機器のGMP基準や、品質マネジメントシステムである国際規格ISOの基準等に基づいて、厳格な品質管理のもとで製品の製造をしています。しかしながら、医療事故等の発生に際して、当社製品に関わる品質上の問題が疑われる場合もあります。また、医療事故等の発生に当社製品が直接関与していないことが明らかであっても、将来的に当社製品にリスクが波及する可能性がある場合、予防的な対策、措置を講じることがあります。そのような場合には、売上の低下、またはコスト増などにより、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・重要な訴訟等について
当社は、国内外の事業に関連して、訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあります。これらの法的なリスクについて、法務・コンプライアンス室、知的財産部等の管轄部署による調査や社内チェック体制の整備をしており、必要に応じて取締役会及び監査等委員会に報告する管理体制となっています。しかしながら、万一第三者より、将来、損害賠償請求や使用差し止め等の重要な訴訟が提起された場合は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・企業合併及び買収等について
当社は、企業の合併・買収や資本・業務提携を事業基盤の強化を図るための重要な戦略の一つと位置付けておりますが、今後、かかる企業合併・買収や資本・業務提携の成否によっては、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・その他
取引慣行の変化、テロ・戦争・疫病や新型インフルエンザなどの世界的な感染症拡大・災害等が発生した場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
《おことわり》
当社の開示資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。様々な要因により、実際の業績等が変動する可能性があることをご承知おきください。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、当社の事業領域を取り巻く経済情勢、為替レートの変動、競争状況などがあります。
(1)合弁関係
相手先 |
契約期間 |
契約の内容 |
BSNメディカル(ドイツ) |
平成10年3月18日から合弁会社の存続する期間 |
日本国内市場向けBSNメディカル社製品の製造、売買及び輸入を目的とする合弁会社テルモ・ビーエスエヌ株式会社を運営 |
当連結会計年度の研究開発費は337億円(売上高比率6.6%)となりました。
心臓血管カンパニー
心臓血管カンパニーでは、日本でUltimasterのラインアップ拡充を進め、平成28年8月にステント径4mm、平成29年2月に同2.25mmの製品を販売開始しました。また、同じく平成29年2月には、日本で超音波画像診断装置「VISICUBE」と血管内超音波カテーテル「AltaView」の本格販売を開始しました。画像の高精細化、画像取得・処理の高速化に加え、装置の軽量化、操作性の向上を図ることで、検査の準備・診断・読影などにかかる時間を短縮しました。
当事業に係る研究開発費は176億円となりました。
ホスピタルカンパニー
ホスピタルカンパニーでは、平成28年6月に、日本で初めてのスプレー式癒着防止材「アドスプレー」の製造販売承認を取得しました。また、平成29年2月には、日本で唯一のアセトアミノフェン点滴バッグ製剤である解熱鎮痛剤「アセリオ静注液1000mgバッグ」の販売を開始しました。
当事業に係る研究開発費は37億円となりました。
血液システムカンパニー
血液システムカンパニーでは、日本の血液センター向けとしては初となる、血液自動製剤システム「TACSI」の開発と初期導入を行いました。米国では、米国保健福祉省から生物医学先端研究開発局(BARDA)を通じて、病原体低減化システム「Mirasol」を用いた血小板製剤の病原体低減化治験に関する助成金を受給することが決定しました。
当事業に係る研究開発費は71億円となりました。
なお、当連結会計年度の研究開発費総額には、各事業分野に配分できない基礎研究費用53億円が含まれております。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成29年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。将来に関する事項は不確実性を内包しておりますので将来生じる実際の結果と差異が生じる可能性があります。
(1)経営成績
<連結業績について>
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
525,026 |
514,164 |
△10,861 |
△2.1 |
売上総利益 |
282,856 |
278,000 |
△4,856 |
△1.7 |
営業利益 |
81,703 |
76,578 |
△5,124 |
△6.3 |
経常利益 |
73,090 |
68,552 |
△4,538 |
△6.2 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
50,676 |
54,225 |
3,549 |
7.0 |
①売上高-概況
日本では、TIS事業におけるアクセスデバイスやニューロバスキュラー(脳血管)事業、基盤医療器事業で輸液ライン等の販売が好調に推移しましたが、薬価・公定価改定の影響に加えて、平成27年10月に発売したUltimasterの売上寄与の一巡や、同時期に富士製薬工業株式会社へ造影剤の販売を移管した影響もあり、若干の減収となりました。海外では、TIS事業、ニューロバスキュラー事業が堅調に推移するとともに、買収した止血デバイス事業等の売上も加わりましたが、全社では為替の影響により、減収となりました。この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比2.1%減の5,142億円となりました。
②売上総利益
売上総利益は、アクセスデバイス等の高収益品の売上拡大、米国テルモカーディオバスキュラーシステムズCorp.の品質システム改善費用の減少及び原価改善等により、為替の影響を一部吸収しましたが、前期比1.7%減の2,780億円となりました。
③営業利益
営業利益は、売上総利益の減少に加えて販売費及び一般管理費が若干増加し、前期比6.3%減の766億円となりました。
④経常利益
経常利益は、為替差損の減少等により営業外費用は減少しましたが、営業利益の減少に伴い、前期比6.2%減の686億円となりました。
⑤親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、フランスのART(Arterial Remodeling Technologies)社との生体吸収性ステント共同開発契約解消に伴い、特別損失70億円を計上しましたが、オリンパス株式会社の株式売却に伴う特別利益157億円を計上した結果、前期比7.0%増の542億円となりました。
セグメントごとの業績、売上高、営業利益の概況については、「1 業績等の概要 (1)業績」に記載しております。
(2)財政状態の分析
<主要財務指標>
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
自己資本当期純利益率 |
9.3% |
10.8% |
総資産当期純利益率 |
5.4% |
5.6% |
自己資本比率 |
56.7% |
47.9% |
1株当たり純資産 |
1,408.53円 |
1,389.70円 |
フリー・キャッシュ・フロー |
56,808百万円 |
△100,571百万円 |
①流動資産
当連結会計年度末における流動資産残高は前連結会計年度末残高に比べ256億円減の3,492億円となりました。
②有形固定資産
当連結会計年度末における有形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ73億円増の1,831億円となりました。
③無形固定資産
当連結会計年度末における無形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ1,642億円増の4,547億円となりました。
企業買収及び事業譲渡により、のれんが736億円、技術資産が776億円増加したことが主な要因です。
④投資その他の資産
当連結会計年度末における投資その他の資産残高は前連結会計年度末残高に比べ251億円減の302億円となりました。
⑤流動負債
当連結会計年度末における流動負債残高は前連結会計年度末残高に比べ796億円増の2,484億円となりました。
短期借入金が1,199億円増加したことが主な要因です。
⑥固定負債
当連結会計年度末における固定負債残高は前連結会計年度末残高に比べ622億円増の2,835億円となりました。
社債300億円を発行したこと及び長期借入金が217億円増加したことが主な要因です。
⑦純資産
当連結会計年度末における純資産の部の残高は、利益剰余金が397億円増加した一方で、自己株式の取得442億円や為替の影響もあり、前連結会計年度末に比べ220億円減の4,896億円となりました。
なお、キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載しております。
(3)次期の見通し
次の5年間を対象とする中長期成長戦略に基づき、各カンパニーが成長機会を捉え、以下の取り組みを通じて、次期の業績見通しの達成とともに、持続的かつ収益性のある成長を目指します。
心臓血管カンパニーは、中長期成長戦略のビジョンとして、心臓血管事業領域でトップブランドとして世界の医療現場から認知されることを掲げています。その実現に向けて、各参入領域でトップ3に入り、製品や供給、サービスを含むトータルクオリティを高め、世界の医療現場から必要とされる価値を提供していきます。TIS事業では、買収を完了した止血デバイスの販売を着実に拡大し、アクセスデバイス全体で更なる売上伸長を目指します。治療デバイスでは、国内外でUltimasterの拡販に注力するとともに、製品ラインアップの拡充を進め、欧州で末梢血管用の薬剤塗布バルーンや、肝腫瘍に対する経カテーテル動脈塞栓療法に用いる放射線放出ビーズの販売を目指します。ニューロバスキュラー事業では、脳動脈瘤治療用コイルの新製品を発売するとともに、新形状の脳動脈瘤治療用デバイス「WEB」など、コイル以外の製品で販売地域の拡大に取り組んでいきます。CV事業では、人工心肺装置の販売再開に向けて注力します。血管事業では、平成29年3月末に買収を完了した米国ボルトンメディカル,Inc.との円滑な統合を図ります。また、増産及び研究開発への投資や、開発体制の強化など、カンパニー全体の成長加速を支える基盤の整備も進めていきます。
ホスピタルカンパニーは、独自の技術・サービスを提供し、医療の質向上と効率化、ドラッグデリバリーのイノベーションに貢献することで、売上成長に舵を切り、持続的な成長ステージへのシフトを目指します。病院向けのビジネスでは、テルモの総合力を活かし、日本を中心に事業拡大を目指します。輸液・シリンジポンプやクローズド(閉鎖式)輸液システム、抗がん剤投与システムなど、幅広い製品ラインアップを提供し、治療の安全性向上、業務効率化に寄与する医療のプラットフォーム構築を進めます。また、疼痛緩和製品、スプレー式の癒着防止材、糖尿病の血糖コントロールに寄与するインスリンポンプの開発など、早期退院や患者さんのQOL向上に貢献する製品の開発・販売に注力します。製薬企業向けのビジネスでは、バイオ医薬品に適したプレフィルドシリンジの開発や、高度な無菌製造技術を活かした製造受託ビジネスの拡大、製薬企業のニーズに対応した付加価値の高い専用デバイスの開発などに取り組んでいきます。
血液システムカンパニーでは、各分野で高いシェアを持つ製品の競争力をさらに高め、輸血の安全性向上や多様な治療手段の提供などに貢献することで、成長軌道へと回帰します。血液センター分野では、グローバルで50%を超えるシェアを持つ成分採血システムで次世代プラットフォームの販売拡大に注力し、現在のポジションをより強固にしていきます。また、米国での治験などを通じて、輸血の安全性を向上させる病原体低減化システムの採用をグローバルで促進していきます。血液治療システム分野では、主に自己免疫疾患を対象に、アフェレシス治療の適用拡大に注力し、グローバルでNo.1のポジションをより強固にしていきます。細胞処理分野では、再生医療の拡大を背景に、効率よく細胞培養が可能な細胞増殖システムの提案を強化し、研究機関などでの採用増を目指します。生産面では、ベトナムの工場で、血液バッグなどのディスポーザブル製品の生産拡大と原価低減を推進し、収益性の改善を図ります。