(1)業績
≪連結業績≫
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
489,506 |
525,026 |
35,520 |
7.3 |
(国内) |
183,146 |
187,210 |
4,064 |
2.2 |
(海外) |
306,359 |
337,815 |
31,455 |
10.3 |
営業利益 |
67,456 |
81,703 |
14,246 |
21.1 |
経常利益 |
70,730 |
73,090 |
2,360 |
3.3 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
38,470 |
50,676 |
12,205 |
31.7 |
当期における医療市場は、米国では医療保険加入者の増加などを背景に、医療需要は緩やかな拡大基調が続きました。中国では経済の減速が続いていますが、医療制度改革が推進される中、医療需要は引き続き底堅く推移しました。日本では、財政健全化に向けて医療費適正化が推進される中、健康寿命の延伸や医療経済性の向上に寄与する医薬品・医療機器へのニーズが高まっています。また、平成26年に施行された医薬品医療機器法の下、再生医療の実用化に向けた取り組みが活発化しています。当社では、虚血性心疾患による重症心不全を対象としたヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハートシート」が、平成27年9月に同法施行後初となる条件及び期限付承認を取得しました。
このような環境の下、当社グループでは現在、「世界で存在感のある企業になる」という目標を掲げ、カンパニー経営を軸に持続的かつ収益性のある、質の高い成長を目指して経営を推進しております。
この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比7.3%増の5,250億円となり、営業利益は前期比21.1%増の817億円となりました。
当社グループは、海外子会社の業績管理区分を一部見直したため、平成26年10月1日より、連結子会社であるハーベストテクノロジーズCorp.及びハーベストテクノロジーズGmbHに係る収支を、従来の「心臓血管カンパニー」から「血液システムカンパニー」の報告セグメントに含めて記載する方法に変更しております。前第2四半期連結累計期間のセグメント情報は、変更後の報告セグメント区分に基づき作成したものを開示しております。(以下、「2 生産、受注及び販売の状況」においても同じ。)
セグメントの業績は次のとおりです。
セグメントの名称 |
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
心臓血管カンパニー |
売上高 |
226,944 |
258,600 |
31,656 |
営業利益 |
45,672 |
61,616 |
15,944 |
|
ホスピタルカンパニー |
売上高 |
161,462 |
161,382 |
△80 |
営業利益 |
20,833 |
22,613 |
1,780 |
|
血液システムカンパニー |
売上高 |
101,099 |
105,042 |
3,943 |
営業利益 |
2,626 |
△1,405 |
△4,032 |
|
調整額 |
売上高 |
- |
- |
- |
営業利益 |
△1,676 |
△1,121 |
554 |
(注) 当該セグメントの業績における営業利益は全社費用の配賦後であります。
<心臓血管カンパニー>
TIS事業では、平成27年10月に薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster」を日本で発売しました。前期に販売を開始した欧州、中南米及びアジアを含め、各地域で売上が好調に推移しました。また、米国ではTRI(手首の血管から冠動脈にアプローチするカテーテル手技)関連製品の販売が好調に推移するとともに、中国を中心にアジアの売上も伸長しました。ニューロバスキュラー事業も、米国及び中国を中心にアジアでの売上を大きく伸ばしました。
その結果、心臓血管カンパニーの売上高は前期比13.9%増の2,586億円となりました。
<ホスピタルカンパニー>
日本では、閉鎖式輸液システムや腹膜透析、糖尿病向け製品などの売上が伸長し、増収となりました。海外では、アジアで輸液ポンプなどの売上が堅調に推移する一方、欧州及び中南米を中心に低収益事業の縮小により事業ポートフォリオの見直しを進め、収益性の改善に努めました。
その結果、ホスピタルカンパニーの売上高は前期比0.0%減の1,614億円となりました。
<血液システムカンパニー>
日本では、献血数の減少傾向が続き、採血時に使用される関連製品の需要にも影響があり、減収となりました。海外では、米国で当初の計画よりずれ込んでいた新価格への移行が完了した結果、血液センター向けの製品で売上の伸びが鈍化しましたが、アフェレシス治療分野及び細胞処理分野の売上が拡大するとともに、新興国を中心に血液センター向け製品の販売も堅調に推移しました。
その結果、血液システムカンパニーの売上高は、前期比3.9%増の1,050億円となりました。
(2)キャッシュ・フロー
≪キャッシュ・フロー計算書概要≫
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
73,110 |
80,303 |
7,192 |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△40,421 |
△23,495 |
16,925 |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
44,121 |
△79,936 |
△124,057 |
現金及び現金同等物の期末残高 |
176,662 |
146,927 |
△29,735 |
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果得られた資金は803億円(前連結会計年度は731億円の取得)となりました。税金等調整前当期純利益は769億円、減価償却費は337億円、のれん償却額は110億円となりました。また、法人税等の支払額は365億円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は235億円(前連結会計年度は404億円の使用)となりました。有形固定資産の取得による支出282億円が主な要因です。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は△799億円(前連結会計年度は441億円の取得)となりました。自己株式の取得による支出610億円及び配当金の支払132億円が主な要因です。
以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より297億円減少して1,469億円となりました。
(1)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
心臓血管カンパニー |
245,109 |
4.6 |
ホスピタルカンパニー |
152,350 |
△2.6 |
血液システムカンパニー |
98,535 |
△1.3 |
合計 |
495,994 |
1.1 |
(注) 1.金額は当連結会計年度の平均販売価格で算出したものであり、消費税等は含まれておりません。また、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.各区分には以下の製品が含まれております。
心臓血管カンパニー:TIS(カテーテル)、ニューロバスキュラー、CV、血管
ホスピタルカンパニー:基盤医療器、D&D、DM・ヘルスケア
血液システムカンパニー:血液システム
3.当連結会計年度の仕入製品の仕入実績は、当連結会計年度平均販売価格(消費税等含まず。)算出で、17,994百万円となります。
(2)受注状況
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
(3)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
心臓血管カンパニー |
TIS(カテーテル) |
176,613 |
15.0 |
ニューロバスキュラー |
26,301 |
25.8 |
|
CV |
41,810 |
6.7 |
|
血管 |
13,875 |
4.0 |
|
ホスピタルカンパニー |
基盤医療器 |
77,702 |
△1.1 |
D&D |
58,350 |
△0.3 |
|
DM・ヘルスケア |
25,329 |
3.8 |
|
血液システムカンパニー |
血液システム |
105,042 |
3.9 |
合計 |
525,026 |
7.3 |
(注) 1.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。
(1)会社の経営の基本方針
企業理念:「医療を通じて社会に貢献する」
当社グループは、1921年の創業以来、この企業理念のもと、医療の進歩や安全性の向上を目指し、一貫して医療現場のニーズに応える医療機器、医薬品の開発と普及に取り組んでいます。
5つのステートメント:「開かれた経営」、「新しい価値の創造」、「安全と安心の提供」、「アソシエイトの尊重」、「良き企業市民」
このステートメントは、当社グループが企業活動を行う上で行動や判断の基準とする原則を示したものです。
グローバルビジョン:“Innovating at the Speed of Life”
当社が将来に向かって取り組むべきこと、また、進むべき方向性を示しています。患者さんの命を第一に、医療従事者のパートナーであり続けること、そしてイノベーションを起こすことで、患者さんの暮らしや医療をより良くしていくという当社グループの方針を示しており、平成27年1月に策定いたしました。
このような経営方針のもと、医療業界における国内リーダー企業としてのポジションを強化するとともに、世界市場におけるシェア拡大とブランド価値向上を通じて、企業価値を最大化すべく努めていきます。
(2)目標とする経営指標
当社グループでは現在、「世界で存在感のある企業になる」という目標を掲げ、平成29年3月期を最終年度とする4カ年の中期経営計画を推進しています。この中期経営計画では、持続的かつ収益性のある質の高い成長の実現を目指しており、のれん等償却前営業利益率20%を目標として取り組んでいます。当期において、のれん等償却前営業利益率は19.4%となり、1年前倒しで目標とする水準にほぼ到達しました。
(3)中長期的な会社の経営戦略
「世界で存在感のある企業になる」という目標の下、持続的かつ収益性のある質の高い成長を実現するため、患者さんの負担軽減や、医療現場の安全性、業務効率の向上などに寄与する高付加価値な製品・サービスをグローバルに提供していきます。既存事業での成長と併せて新たな成長機会も継続的に探索し、当社グループが強みを持つ技術・製品とのシナジーが期待できる提携やM&Aも活用することで、グローバル企業としての競争力強化を図っていきます。
(4)会社の対処すべき課題
現在、世界の医療機器市場では、大きな変化が起きています。日本では、急速に高齢化が進展する中、政府が医療費の抑制を図りつつ、医療産業を成長戦略の柱の一つとして位置付けたこともあり、異業種からの参入が活発化しています。欧米でも医療費の抑制が課題となる中で、より医療経済性の高い製品・サービスが求められています。一方、新興国では経済発展に伴い医療インフラの整備が進み、今後も医療需要の拡大が見込まれています。このように市場環境が多様化する中で、持続的かつ収益性のある、質の高い成長を実現するため、地域毎のニーズに合わせた製品の開発・導入をタイムリーに行うとともに、グローバルな生産体制を活用し、最適な地域での生産を行うことで、コスト競争力を高めていきます。
(5)会社の支配に関する基本方針
1.当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当社は経営支配権の異動を通じた企業活動や経済の活性化を否定するものではありません。また、大規模買付行為が開始された場合において、これを受け入れるかどうかは、原則として、当社株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると考えております。しかしながら、当社は、大規模買付行為またはこれに関する提案につきましては、当社株主の皆様が、当該大規模買付者の事業内容、事業計画、さらには過去の投資行動等から、当該大規模買付行為または提案の企業価値及び株主の皆様共同の利益への影響を慎重に判断する必要があると認識しています。そのためには、大規模買付者及び当社取締役会の双方から、当社株主の皆様に必要かつ十分な情報、意見、提案などの提供と、それらを検討するための必要かつ十分な時間が確保される必要があると考えます。
当社取締役会は、このような基本的な考え方に立ち、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針に定める手続を設定し、大規模買付者に対してかかる手続の遵守を求めるものとし、大規模買付者がこの手続を遵守しない場合、あるいは遵守した場合でも、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかであるときや、企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうときには、当社取締役会として一定の措置を講ずる方針です。
2.基本方針の実現に資する取組み
1)当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益向上に向けた取組み
①企業理念と経営の基本姿勢
当社は大正10年の創業以来、「医療を通じて社会に貢献する」との企業理念のもと、日本の医療機器業界をリードする企業として、医療の進歩や安全性の向上とともに、企業価値及び株主の皆様共同の利益の向上に誠実に努めることを経営の基本方針としており、現在では、世界160ヶ国以上に高品質な医療機器を供給しております。
②具体的な取組み
先進国における市場成長の鈍化と医療費抑制の動き、新興国における価格圧力など、世界の医療機器産業を取り巻く市場環境は転換期を迎えていますが、当社の参入領域は、今後も成長が期待できる領域であると考えております。例えば、カテーテルを用いた血管内治療は、治療の低侵襲化という流れに即して、心臓の血管だけではなく、脳や下肢など全身の血管に広がっています。また、血液の分野においては輸血療法に加え、免疫疾患などアフェレシス治療の需要も高まっています。さらに、ホスピタル分野では、医療事故や感染を防止するセーフティ化、痛みの少ない注射針のニーズが現場でますます高まっています。このような新たな市場ニーズを成長の機会として捉え、企業理念である医療を通じた社会への貢献を実現するべく、持続的かつ収益性のある成長を続けると同時に、医療現場のニーズに合致した製品開発でイノベーションを起こし、「世界で存在感のある企業」を目指してまいります。
2)当社の社会的使命
当社は医療機器のリーディングカンパニーとして、長年にわたって医療現場と信頼関係を築き、医療を通じて社会に貢献してまいりました。優れた製品やサービス・システムを高い品質で安定的に供給すること、そして、患者さんや医療従事者の視点に立ち、医療を取り巻く様々な社会的課題の解決に向けて積極的に挑戦することが、最も重要な当社の社会的責任であると考えています。このような考え方のもと、当社は引き続き、製品の供給や品質の確保において世界の医療供給体制の中で重要な役割を担い、医療現場に安全と安心を提供してまいります。
不適切な買収行為により、当社製品の供給や品質に問題が生じた場合、社会の人々の生命や健康に深刻な影響を及ぼす可能性も否定できません。そのような事態を招くことなく、社会と医療現場からの長年の信頼を維持向上させる安定的経営は、当社の企業価値・株主の皆様共同の利益にもかなうこととなります。
3)コーポレートガバナンスの強化
当社は、中・長期での企業価値の向上、また、株主の皆様をはじめとしたステークホルダーへのアカウンタビリティの充実のため、コーポレート・ガバナンス体制の整備・強化が重要であることを認識しております。
監査・監督機能の強化、経営の透明性と客観性の向上、また、意思決定の迅速化等を目的に、平成27年6月24日開催の当社第100期定時株主総会の承認をもって、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」に移行しました。
当該目的のもと、全取締役15名中、独立した立場の社外取締役5名(うち監査等委員である社外取締役2名)を選任するとともに、コーポレート・ガバナンス体制の充実、取締役候補者等の選任・報酬体系等について審議・助言する「コーポレート・ガバナンス委員会」を設置しています。委員の半数以上は東京証券取引所の独立役員の要件を満たす独立社外取締役とし、委員長も独立社外取締役が務めることとしております。なお、社長及び会長の後継者人事等については、独立社外取締役が過半数を占める指名委員会を設置し、審議を行います。また、経営におけるリスクマネジメント及びコンプライアンスの体制整備ならびに企業情報の適時適切な開示のため、リスク管理委員会及び内部統制委員会を設置しています。
3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうような買収等を未然に防止するため、平成20年6月27日開催の当社第93期定時株主総会において、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)を導入することにつき株主の皆様のご承認を頂きました。
その後、平成23年6月29日開催の当社第96期定時株主総会、および平成26年6月24日開催の当社第99期定時株主総会において、買収防衛策の更新につき株主の皆様のご承認を頂いております。詳細については、当社ホームページ掲載のプレスリリースをご参照ください。
(アドレス http://www.terumo.co.jp/pressrelease/baishubouei.html)
4.具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由
上記2に記載した、当社の目標の実現に向けた成長戦略の着実な実行は、当社の企業価値および株主の皆様共同の利益を確保・向上させるものであり、当社の基本方針に沿うものです。
また、上記3に記載した買収防衛策は、大規模買付者に対して事前に必要情報の提供及び一定の検討期間の確保を求めることにより、株主の皆様が大規模買付行為に応ずるべきか否かにつき慎重に判断される機会を確保することを目的とするものであり、基本方針に沿うものと考えます。更に、本買収防衛策は、a)株主及び投資家の皆様ならびに大規模買付者の予見可能性を高めるため、事前の開示がなされていること、b)平成26年6月24日開催の株主総会において株主の皆様のご承認を頂いていること、c)経営者の保身目的での濫用防止のため、独立委員会を設置し、当社取締役会が対抗措置を発動する場合、独立委員会の勧告に従った上で判断を行うものとしていること等から、株主の皆様共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
・医療行政の方針変更
当社の属する業界は、国内外で、医療費抑制や、医療の質の向上を目的とした医療制度改革が継続的に行われております。今後予測できない大規模な医療行政の方針変更が行われ、急激な環境変化が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・販売価格の変動
当社の属する業界は、日本では医療費抑制策の一環として、2年に1度、診療報酬、薬価及び特定保険医療材料の公定償還価格の改定が行われます。また、国内外ともに、市場における企業間競争の激化や技術革新により、大幅な価格下落が発生する可能性があり、これらの販売価格の変動は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・原材料価格の変動
当社の製品を製造するための原材料は、プラスチックなどの石油を原料とするものが多いため、世界的な資源価格の高騰により、原材料購入費用が増加し、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・為替レートの変動
当社は、日本に本社を置き事業運営を行っているため、各地域における現地通貨建て財務諸表を連結財務諸表作成等のために円換算しています。従って為替レートに変動があると、換算に適用するレートが変動し、円換算後の損益に影響を受けることとなります。
当社は海外工場への生産移管、海外からの原材料調達等の構造的対応を図るとともに、保有する債権の当該リスクに対し、機動的な為替予約により対処しています。
しかしながら、予想外の変動が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を与えることがあります。
・海外活動に係るリスクについて
当社は世界160ヶ国以上に製品を供給していますが、当社が事業活動している様々な市場における景気後退や、それに伴う需要の縮小、あるいは海外各国における予期せぬ政情の変化や法規制等の変更があった場合、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・品質問題について
当社は、医薬品及び医療機器のGMP基準や、品質マネジメントシステムである国際規格ISOの基準等に基づいて、厳格な品質管理のもとで製品の製造をしています。
しかしながら、医療事故等の発生に際して、当社製品に関わる品質上の問題が疑われる場合もあります。また、医療事故等の発生に当社製品が直接関与していないことが明らかであっても、将来的に当社製品にリスクが波及する可能性がある場合、予防的な対策、措置を講じることがあります。そのような場合には、売上の低下、またはコスト増などにより、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・重要な訴訟等について
当社は、国内外の事業に関連して、訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあります。これらの法的なリスクについて、法務・コンプライアンス室、知的財産部等の管轄部署による調査や社内チェック体制の整備をしており、必要に応じて取締役会及び監査等委員会に報告する管理体制となっています。しかしながら、万一第三者より、将来、損害賠償請求や使用差し止め等の重要な訴訟が提起された場合は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
・その他
取引慣行の変化、テロ・戦争・疫病や新型インフルエンザなどの世界的な感染症拡大・災害等が発生した場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
《おことわり》
当社の開示資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が有価証券報告書提出日(平成28年6月27日)現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。様々な要因により、実際の業績等が変動する可能性があることをご承知おきください。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、当社の事業領域を取り巻く経済情勢、為替レートの変動、競争状況などがあります。
(1)合弁関係
相手先 |
契約期間 |
契約の内容 |
BSNメディカル(ドイツ) |
平成10年3月18日から合弁会社の存続する期間 |
日本国内市場向けBSNメディカル社製品の製造、売買及び輸入を目的とする合弁会社テルモ・ビーエスエヌ株式会社を設立 |
(2)土地関係
当社は平成22年3月25日付をもって東京都渋谷区幡ヶ谷二丁目44番1号の土地を売却する旨の合意をしました。
平成27年8月に当該土地を売却し、固定資産売却益4,404百万円を特別利益に計上しました。
当連結会計年度の研究開発費は331億円(売上高比率6.3%)となりました。
心臓血管カンパニー
心臓血管カンパニーでは、薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster」の製造販売承認を日本でも取得し、2015
年10月に発売しました。また、米国では、末梢動脈疾患治療用ステント「Misago」が、2015年6月に体内埋め込
み型の医療機器として日本企業で初めてFDA(米国食品医薬品局)の承認を取得し、販売を開始しました。カテ
ーテルを使ったがん治療の分野では、抗がん剤を吸着させて肝臓がんなどの治療に使用する、薬剤溶出ビーズを
欧州で発売しました。
当事業に係る研究開発費は164億円となりました。
ホスピタルカンパニー
ホスピタルカンパニーでは、ワクチンの効果を高めることが期待される皮内投与を、簡便かつ確実に実施でき
ることをコンセプトとした皮内投与型デバイス「イムサイス」を開発しました。
当事業に係る研究開発費は38億円となりました。
血液システムカンパニー
輸血関連製品の開発を行っており、当事業に係る研究開発費は79億円となりました。
再生医療の分野では、虚血性心疾患による重症心不全を対象としたヒト(自己)骨格筋由来細胞シート「ハー
トシート」が、2015年9月に医薬品医療機器法の施行後初となる条件及び期限付承認を取得しました。
再生医療を含め、当連結会計年度の研究開発費総額には、各事業分野に配分できない基礎研究費用48億円が含まれております。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成28年6月27日)現在において当社グループが判断したものであります。将来に関する事項は不確実性を内包しておりますので将来生じる実際の結果と差異が生じる可能性があります。
なお、当連結会計年度より、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号 平成25年9月13日)等を適用し、「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」としております。
(1)経営成績
<連結業績について>
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額 |
増減率 |
売上高 |
489,506 |
525,026 |
35,520 |
7.3 |
売上総利益 |
256,025 |
284,900 |
28,874 |
11.3 |
営業利益 |
67,456 |
81,703 |
14,246 |
21.1 |
経常利益 |
70,730 |
73,090 |
2,360 |
3.3 |
親会社株主に帰属する当期純利益 |
38,470 |
50,676 |
12,205 |
31.7 |
①売上高-概況
日本では、TIS事業が売上を伸ばし、前期比2.2%増の1,872億円となりました。海外では、米国及び中国を中心とするアジアのTIS事業とニューロバスキュラー事業の売上が好調に推移し、前期比10.3%増の3,378億円となりました。この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比7.3%増の5,250億円となりました。
②売上総利益
売上総利益は、国内外における高付加価値製品の売上拡大に加え、継続的な原価低減も寄与し、前期比11.3%増の2,849億円となりました。
③営業利益
営業利益は、売上総利益の増加が販売費及び一般管理費の増加を上回ったことにより、前期比21.1%増の817億円となりました。
④経常利益
経常利益は、営業利益が増加した一方、為替差損を計上した結果、前期比3.3%増の731億円となりました。
⑤親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比31.7%増の507億円となりました。
セグメントごとの業績、売上高、営業利益の概況については、「1 業績等の概要 (1)業績」に記載しております。
(2)財政状態の分析
<主要財務指標>
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
自己資本当期純利益率 |
7.2% |
9.3% |
総資産当期純利益率 |
4.2% |
5.4% |
自己資本比率 |
57.8% |
56.7% |
1株当たり純資産 |
1,513.73円 |
1,408.53円 |
フリー・キャッシュ・フロー |
32,689百万円 |
56,808百万円 |
①流動資産
当連結会計年度末における流動資産残高は前連結会計年度末残高に比べ377億円減の3,747億円となりました。
有価証券(譲渡性預金)の償還による減少が主な要因です。
②有形固定資産
当連結会計年度末における有形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ27億円減の1,758億円となりました。
③無形固定資産
当連結会計年度末における無形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ415億円減の2,905億円となりました。
償却による減少が主な要因です。
④投資その他の資産
当連結会計年度末における投資その他の資産残高は前連結会計年度末残高に比べ100億円減の553億円となりました。
⑤流動負債
当連結会計年度末における流動負債残高は前連結会計年度末残高に比べ389億円増の1,688億円となりました。
1年内償還予定の社債が400億円増加したことが主な要因です。
⑥固定負債
当連結会計年度末における固定負債残高は前連結会計年度末残高に比べ673億円減の2,213億円となりました。
1年内償還予定の社債400億円を流動負債に振替えたこと及び長期借入金の返済による減少が主な要因です。
⑦純資産
当連結会計年度末における純資産の部の残高は、利益剰余金が363億円増加した一方で、自己株式の取得610億円や為替の影響もあり、前連結会計年度末に比べ620億円減の5,115億円となりました。
なお、キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載しております。
(3)次期の見通し
平成29年3月期は、円高及び薬価・公定価改定に伴い売上・利益へのマイナスの影響が見込まれますが、各カンパニーが成長機会を捉え、以下の取り組みを通じて、次期の業績見通しの達成とともに、今後の持続的かつ収益性のある質の高い成長を目指します。
心臓血管カンパニーでは、グローバルでの競争優位性を更に高めるべく、製品パイプラインを拡充するとともに、既存事業の隣接領域を中心に成長機会を探索し、有望な技術・製品への投資を行っていきます。TIS事業では、薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster」の拡販に注力し、売上伸長を目指します。ペリフェラル領域では、末梢動脈疾患治療用ステント及びバルーンカテーテルなど、治療用デバイスの売上拡大を図ります。ニューロバスキュラー事業では、脳梗塞治療用デバイスなどコイル以外の製品ラインアップを拡充し、引き続き高い成長を目指します。CV事業では、米国子会社であるテルモカーディオバスキュラーシステムズCorp.のアナーバー工場において、FDA基準の品質システムを確立し、生産・供給開始に向けた準備に注力します。
ホスピタルカンパニーでは、医療現場のニーズに応じた高付加価値製品の提供と収益マネジメントの徹底により、更なる収益改善を目指します。
基盤医療器事業では、IT機能を搭載したスマートポンプや閉鎖式輸液システムなど、医療現場の安全性と業務効率の向上に貢献する高付加価値製品をシステムとして提案し、導入先の拡大を図ります。D&D事業では、製薬メーカーとの戦略的提携を推進し、プレフィルドシリンジの供給先拡大に注力します。日本では、ワクチンの効果を高めることが期待される皮内投与を、簡便かつ確実に実施できることをコンセプトとした皮内投与型デバイス「イムサイス」の販売に向けて、準備を進めていきます。DM・ヘルスケア事業では、血糖値、体温、血圧などの測定値を電子カルテに転送できる通信機能付きバイタルサイン測定機器シリーズ「HRジョイント」の普及を推進し、測定機器の売上拡大を図ります。
血液システムカンパニーでは、新興国での医療需要の増加を着実に捉えるとともに、アフェレシス治療分野、細胞処理分野で売上を伸ばすことで、持続的な成長を目指します。アフェレシス治療分野では、適応領域の拡大を図るとともに、新興国で更なる普及を推進します。細胞処理分野では、再生医療の普及に必要とされる、効率的な細胞培養に貢献する製品の売上拡大に注力します。グローバルでの生産体制の統合も着実に進んでおり、ベトナムのホーチミン市近郊の工場において、商業生産開始に向けた準備を進めていきます。