第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 ≪連結業績≫

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

増減率
(%)

売上高

467,359

489,506

22,146

4.7

(国内)

189,041

183,146

△5,895

△3.1

(海外)

278,317

306,359

28,041

10.1

営業利益

65,288

67,456

2,167

3.3

経常利益

63,802

70,730

6,927

10.9

当期純利益

34,096

38,470

4,374

12.8

 

医療市場を概観すれば、米国では統合的な予防・ケアを目指す制度が拡がり、医療の質を担保しながら、病気の予防や不必要な入院を減らすなどの効率的運営が求められています。また、欧州ほか、各国での医療費抑制や価格圧力が継続し、新興国では自国為替レート低下や経済成長の鈍化など、先行きの不透明感が増しています。また、買収額1兆円を超す大型M&Aなどグローバルに業界再編の動きがみられました。

一方、日本では、国民医療費が過去最高を更新する中、医療提供体制の見直しによる医療機関の機能分化が続くなど、支出抑制や医療経済性といったニーズが高まっています。また、平成26年11月に医薬品医療機器等法、再生医療等安全性確保法が施行され、革新的な医薬品・医療機器の創出や再生医療の実用化に向けた整備が進んでいます。医療分野の研究開発および環境整備の中核的な役割を担う機関として「日本医療研究開発機構(AMED)」の平成27年4月設立に向けた準備が進められました。

このような環境の下、当社グループでは現在、「世界で存在感のある企業になる」という目標を掲げ、カンパニー経営を軸に持続的かつ収益性のある成長を目指して経営を推進しております。

この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比4.7%増の4,895億円となり、営業利益は前期比3.3%増の675億円となりました。

 

第1四半期連結会計期間より、カンパニー経営の進化に伴い、従来の報告セグメントである「心臓血管事業」「ホスピタル事業」「血液システム事業」をそれぞれ「心臓血管カンパニー」「ホスピタルカンパニー」「血液システムカンパニー」に名称変更しております。なお、当該セグメントの名称変更によるセグメント情報に与える影響はありません。

また、当社グループは、海外子会社の業績管理区分を一部見直したため、平成26年10月1日より、連結子会社であるハーベストテクノロジーズCorp.およびハーベストテクノロジーズGmbHに係る収支を、従来の「心臓血管カンパニー」から「血液システムカンパニー」の報告セグメントに含めて記載する方法に変更しております。前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の報告セグメント区分に基づき作成したものを開示しております。(以下、「2 生産、受注及び販売の状況」、「6 研究開発活動」および「7 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」においても同じ。)

 

 セグメントの業績は次の通りです。

 

セグメントの名称

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

心臓血管カンパニー

売上高

208,430

229,155

20,725

営業利益

42,095

45,625

3,529

ホスピタルカンパニー

売上高

164,089

161,462

△2,627

営業利益

20,797

20,833

35

血液システムカンパニー

売上高

94,871

98,887

4,016

営業利益

4,135

2,673

△1,462

調整額

売上高

△32

32

営業利益

△1,740

△1,676

63

(注) 当該セグメントの業績における営業利益は全社費用の配賦後であります。

 

<心臓血管カンパニー>
 国内では、ニューロバスキュラー事業が売上を拡大しましたが、主にIS事業での公定価改定の影響もあり、前期比で2.4%の減収となりました。海外ではIS事業で注力しているTRI(手首の血管から冠動脈にアプローチするカテーテル手技)関連製品が欧米やアジアで引き続き好調で、欧州・アジアで販売を開始した薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster」も順調に拡大しました。ニューロバスキュラー事業は各地域で引き続き堅調でした。
 その結果、心臓血管カンパニーの売上高は前期比9.9%増の2,292億円となりました。

 

<ホスピタルカンパニー>
 国内では、消費税率の引き上げ、薬価・公定価改定や一部高齢者の自己負担増加による影響があり、前期比2.8%の減収となりました。海外では製薬企業向けB2Bビジネスの拡大等により前期比で2.2%増となりました。
 その結果、ホスピタルカンパニーの売上高は前期比1.6%減の1,615億円となりました。

 

<血液システムカンパニー>
 国内では献血数の減少による需要変動の影響もあり減収となりました。一方、海外ではアフェレシス治療分野の増収に加え、新興国で全血採血関連、成分採血システムが好調でした。
 その結果、血液システムカンパニーの売上高は前期比4.2%増の989億円となりました。

 

(2)キャッシュ・フロー

 ≪キャッシュ・フロー計算書概要≫

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

96,259

73,110

△23,149

投資活動によるキャッシュ・フロー

△52,744

△40,421

12,323

財務活動によるキャッシュ・フロー

△31,785

44,121

75,907

現金及び現金同等物の期末残高

92,498

176,662

84,164

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動の結果得られた資金は731億円(前連結会計年度は963億円の取得)となりました。税金等調整前当期純利益は640億円、減価償却費は304億円、のれん償却額は103億円となりました。また、法人税等の支払額は310億円となりました。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動の結果使用した資金は404億円(前連結会計年度は527億円の使用)となりました。有形固定資産の取得による支出373億円が主な要因です。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動の結果得られた資金は441億円(前連結会計年度は318億円の使用)となりました。転換社債型新株予約権付社債の発行による収入1,003億円が主な要因です。

 

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より842億円増加して1,767億円となりました。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

心臓血管カンパニー

234,335

10.1

ホスピタルカンパニー

156,448

△3.7

血液システムカンパニー

99,836

7.3

合計

490,621

4.8

(注) 1.金額は当連結会計年度の平均販売価格で算出したものであり、消費税等は含まれておりません。また、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.各区分には以下の製品が含まれております。
心臓血管カンパニー:IS(カテーテル)、ニューロバスキュラー、CV、血管
ホスピタルカンパニー:基盤医療器、医薬品・栄養、D&D、DM・ヘルスケア
血液システムカンパニー:血液システム

3.当連結会計年度の仕入製品の仕入実績は、当連結会計年度平均販売価格(消費税等含まず)算出で、19,662百万円となります。

 

(2)受注状況

 当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

 心臓血管カンパニー

 IS(カテーテル)

153,528

8.7

 ニューロバスキュラー

20,900

19.8

 CV

41,386

8.2

 血管

13,340

16.5

 ホスピタルカンパニー

 基盤医療器

78,531

△2.9

 医薬品・栄養

34,958

△4.8

 D&D

23,563

5.7

 DM・ヘルスケア

24,408

0.8

 血液システムカンパニー

 血液システム

98,887

4.2

 調整額

合計

489,506

4.7

(注) 1.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。また、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

3【対処すべき課題】

(1)会社の経営の基本方針

 企業理念:「医療を通じて社会に貢献する」

 当社グループは、1921年の創業以来、この企業理念のもと、医療の進歩や安全性の向上を目指し、一貫して医療現場のニーズに応える医療機器、医薬品の開発と普及に取り組んでいます。

 

5つのステートメント:「開かれた経営」、「新しい価値の創造」、「安全と安心の提供」、「アソシエイトの尊重」、「良き企業市民」

 このステートメントは、当社グループが企業活動を行う上で行動や判断の基準とする原則を示したものです。

 

グローバルビジョン:“Innovating at the Speed of Life”

当社が将来に向かって取り組むべきこと、また、進むべき方向性を示しています。患者さんの命を第一に、医療従事者のパートナーであり続けること、そしてイノベーションを起こすことで、患者さんの暮らしや医療をより良くしていくという当社グループの方針を示しており、平成27年1月に策定いたしました。

 

 また、当社はコーポレート・ガバナンス体制の整備・強化を通じた中・長期での企業価値の向上のため、「監査役会設置会社」から「監査等委員会設置会社」に移行しました。これにより、監査・監督機能の強化、経営の透明性と客観性の向上、意思決定の迅速化を図ります。

 

 このような経営方針のもと、医療業界における国内リーダー企業としてのポジションを強化するとともに、世界市場におけるシェア拡大とブランド価値向上を通じて、企業価値及び株主の皆様の利益を最大化すべく努めます。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループでは現在、「世界で存在感のある企業になる」という目標を掲げ、4カ年の中期経営計画を推進しています。この中期経営計画では、経営資源の運用やコスト低減に努めつつ、医療現場のニーズに根ざした価値ある製品とサービスの提供による売上拡大によって、平成29年3月期に売上高に対するのれん等償却前の営業利益率20%を目標に取り組んでいます。資本効率と財務健全性のバランスも意識しつつ、中長期的に持続的かつ収益を伴う成長を目指します。

 

(3)会社の対処すべき課題

 グローバルの医療機器市場は変革期を迎えています。先進国では医療費抑制の圧力が高まり、性能や品質に加えて、医療経済性への貢献が医療機器において不可欠な要素となりました。一方、新興国では医療インフラの整備が進み需要が拡大しています。国内では、慢性期医療のニーズが高まり、高齢者向けの製品やサービスの市場が拡大しています。このように多様化するニーズに対応すべく、それぞれの市場に合わせた戦略を柔軟に組み合わせ、収益性を伴う継続した事業拡大に取り組んでいきます。

 

(4)会社の支配に関する基本方針

1.当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

 当社は経営支配権の異動を通じた企業活動や経済の活性化を否定するものではありません。また、大規模買付行為が開始された場合において、これを受け入れるかどうかは、原則として、当社株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると考えております。しかしながら、当社は、大規模買付行為またはこれに関する提案につきましては、当社株主の皆様が、当該大規模買付者の事業内容、事業計画、さらには過去の投資行動等から、当該大規模買付行為または提案の企業価値及び株主の皆様共同の利益への影響を慎重に判断する必要があると認識しています。そのためには、大規模買付者及び当社取締役会の双方から、当社株主の皆様に必要かつ十分な情報、意見、提案などの提供と、それらを検討するための必要かつ十分な時間が確保される必要があると考えます。

 当社取締役会は、このような基本的な考え方に立ち、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針に定める手続を設定し、大規模買付者に対してかかる手続の遵守を求めるものとし、大規模買付者がこの手続を遵守しない場合、あるいは遵守した場合でも、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかであるときや、企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうときには、当社取締役会として一定の措置を講ずる方針です。

 

2.基本方針の実現に資する取組み

1)当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益向上に向けた取組み

 ①企業理念と経営の基本姿勢

  当社は大正10年の創業以来、「医療を通じて社会に貢献する」との企業理念のもと、日本の医療機器業界をリードする企業として、医療の進歩や安全性の向上とともに、企業価値及び株主の皆様共同の利益の向上に誠実に努めることを経営の基本方針としており、現在では、世界160ヶ国以上に高品質な医療機器を供給しております。

 

 ②具体的な取り組み

  先進国における市場成長の鈍化と医療費抑制の動き、新興国における価格圧力など、世界の医療機器産業を取り巻く市場環境は転換期を迎えていますが、当社の参入領域は、今後も成長が期待できる領域であると考えております。例えば、カテーテルを用いた血管内治療は、治療の低侵襲化という流れに即して、心臓の血管だけではなく、脳や下肢など全身の血管に広がっています。また、血液の分野においては輸血療法に加え、免疫疾患などアフェレシス治療の需要も高まっています。さらに、ホスピタル分野では、医療事故や感染を防止するセーフティ化、痛みの少ない注射針のニーズが現場でますます高まっています。このような新たな市場ニーズを成長の機会として捉え、企業理念である医療を通じた社会への貢献を実現するべく、持続的かつ収益性のある成長を続けると同時に、医療現場のニーズに合致した製品開発でイノベーションを起こし、「世界で存在感のある企業」を目指してまいります。

 

2)当社の社会的使命

 当社は医療機器のリーディングカンパニーとして、長年にわたって医療現場と信頼関係を築き、医療を通じて社会に貢献してまいりました。優れた製品やサービス・システムを高い品質で安定的に供給すること、そして、患者さんや医療従事者の視点に立ち、医療を取り巻く様々な社会的課題の解決に向けて積極的に挑戦することが、最も重要な当社の社会的責任であると考えています。このような考え方のもと、当社は引き続き、製品の供給や品質の確保において世界の医療供給体制の中で重要な役割を担い、医療現場に安全と安心を提供してまいります。

 不適切な買収行為により、当社製品の供給や品質に問題が生じた場合、社会の人々の生命や健康に深刻な影響を及ぼす可能性も否定できません。そのような事態を招くことなく、社会と医療現場からの長年の信頼を維持向上させる安定的経営は、当社の企業価値・株主の皆様共同の利益にもかなうこととなります。

 

3)コーポレートガバナンスの強化

 コーポレートガバナンスに関する取組みにつきましては、「第4 提出会社の状況 6.コーポレートガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの状況」に記載のとおりです。

 

3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 当社は、当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうような買収等を未然に防止するため、平成20年4月30日開催の当社取締役会において、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)を導入することに関して決議を行い、平成20年6月27日開催の当社第93期定時株主総会において株主の皆様のご承認をいただきました。

 その後、当社は平成23年5月11日開催の当社取締役会において、所要の変更を加えて買収防衛策の更新を決議し、平成23年6月29日開催の当社第96期定時株主総会において株主の皆様のご承認をいただいております(かかる更新後のプランを「旧プラン」といいます)。

 旧プランの有効期限が到来することから、買収防衛策に関する議論の動向等を踏まえて検討した結果、平成26年5月8日開催の当社取締役会において、買収防衛策の更新(以下「本プラン」といいます)を決議し、平成26年6月24日開催の当社第99期定時株主総会において株主の皆様のご承認を頂いております。本プランの詳細については、当社ホームページ掲載のプレスリリースをご参照ください。

(アドレス http://www.terumo.co.jp/pressrelease/baishubouei.html)

 

4.具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由

 上記2に記載した、当社の目標の実現に向けた成長戦略の着実な実行は、当社の企業価値および株主の皆様共同の利益を確保・向上させるものであり、当社の基本方針に沿うものです。

 また、上記3に記載した本プランは、大規模買付者に対して事前に必要情報の提供及び一定の検討期間の確保を求めることにより、株主の皆様が大規模買付行為に応ずるべきか否かにつき慎重に判断される機会を確保することを目的とするものであり、基本方針に沿うものと考えます。更に、本プランについては、a)株主及び投資家の皆様ならびに大規模買付者の予見可能性を高めるため、事前の開示がなされていること、b)平成26年6月24日開催の株主総会において株主の皆様のご承認を頂いていること、c)経営者の保身目的での濫用防止のため、独立委員会を設置し、当社取締役会が対抗措置を発動する場合、独立委員会の勧告に従った上で判断を行うものとしていること等から、株主の皆様共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

4【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

 

・医療行政の方針変更

 当社の属する業界は、国内外で、医療費抑制や、医療の質の向上を目的とした医療制度改革が継続的に行われております。今後予測できない大規模な医療行政の方針変更が行われ、急激な環境変化が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・販売価格の変動

 当社の属する業界は、国内では医療費抑制策の一環として、2年に1度、診療報酬、薬価および特定保険医療材料の公定償還価格の改定が行われます。また、国内外ともに、市場における企業間競争の激化や技術革新により、大幅な価格下落が発生する可能性があり、これらの販売価格の変動は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・原材料価格の変動

 当社の製品を製造するための原材料は、プラスチックなどの石油を原料とするものが多いため、世界的な資源価格の高騰により、原材料購入費用が増加し、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・為替レートの変動

 当社は、日本に本社を置き事業運営を行っているため、各地域における現地通貨建て財務諸表を連結財務諸表作成等のために円換算しています。従って為替レートに変動があると、換算に適用するレートが変動し、円換算後の損益に影響を受けることとなります。
 当社は海外工場への生産移管、海外からの原材料調達等の構造的対応を図るとともに、保有する債権の当該リスクに対し、機動的な為替予約により対処しています。
 しかしながら、予想外の変動が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を与えることがあります。

 

・海外活動に係るリスクについて

 当社は世界160ヶ国以上に製品を供給していますが、当社が事業活動している様々な市場における景気後退や、それに伴う需要の縮小、あるいは海外各国における予期せぬ政情の変化や法規制等の変更があった場合、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・品質問題について
 当社は、医薬品および医療機器のGMP基準や、品質マネジメントシステムである国際規格ISOの基準等に基づいて、厳格な品質管理のもとで製品の製造をしています。
 しかしながら、医療事故等の発生に際して、当社製品に関わる品質上の問題が疑われる場合もあります。また、医療事故等の発生に当社製品が直接関与していないことが明らかであっても、将来的に当社製品にリスクが波及する可能性がある場合、予防的な対策、措置を講じることがあります。そのような場合には、売上の低下、またはコスト増などにより、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・重要な訴訟等について
 当社は、国内外の事業に関連して、訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあります。これらの法的なリスクについて、法務・コンプライアンス室、知的財産統轄部等の管轄部署による調査や社内チェック体制の整備をしており、必要に応じて取締役会および監査等委員会に報告する管理体制となっています。しかしながら、万一第三者より、将来、損害賠償請求や使用差し止め等の重要な訴訟が提起された場合は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・その他
 取引慣行の変化、テロ・戦争・疫病や新型インフルエンザなどの世界的な感染症拡大・災害等が発生した場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  《おことわり》

 当社の開示資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が有価証券報告書提出日(平成27年6月25日)現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。様々な要因により、実際の業績等が変動する可能性があることをご承知おきください。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、当社の事業領域を取り巻く経済情勢、為替レートの変動、競争状況などがあります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)合弁関係

相手先

契約期間

契約の内容

BSNメディカル(ドイツ)

平成10年3月18日から合弁会社の存続する期間

日本国内市場向けBSNメディカル社製品の製造、売買及び輸入を目的とする合弁会社テルモ・ビーエスエヌ株式会社を設立

 

(2)土地関係

当社は平成22年3月25日付をもって東京都渋谷区幡ヶ谷二丁目44番1号の土地を売却する旨の合意をしました。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発費は294億円(売上高比率6.0%)となりました。

 

心臓血管カンパニー

 PTCAバルーンカテーテルの「Accuforce(アキュフォース)」および、頸動脈ステント、脳梗塞治療デバイスを欧州で販売開始しました。米国においては、ニューロバスキュラー領域のコイルアシストステントを発売し、南カリフォルニアにおいて心臓・末梢血管カテーテル治療分野の開発体制拡充の準備を進めました。また、仏ART社と薬剤溶出型生体吸収性ステントの共同開発を進めました。

 当事業に係る研究開発費は133億円となりました。

 

ホスピタルカンパニー

 輸液システム類、輸液剤、プレフィルドシリンジ、血糖測定システム、電子体温計、電子血圧計などの研究開発を行っており、当事業に係る研究開発費は35億円となりました。

 

血液システムカンパニー

 輸血関連製品の開発を行っており、当事業に係る研究開発費は71億円となりました。

 

 なお、当連結会計年度の研究開発費総額には、各事業分野に配分できない基礎研究費用55億円が含まれております。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成27年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。将来に関する事項は不確実性を内包しておりますので将来生じる実際の結果と差異が生じる可能性があります。

 

(1)経営成績

 <連結業績について>

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

増減率
(%)

売上高

467,359

489,506

22,146

4.7

売上総利益

242,011

256,025

14,014

5.8

営業利益

65,288

67,456

2,167

3.3

経常利益

63,802

70,730

6,927

10.9

当期純利益

34,096

38,470

4,374

12.8

 

①売上高-概況

 国内は、心臓血管カンパニーおよびホスピタルカンパニーで薬価・公定価改定の影響、血液システムカンパニーでは献血数の減少傾向が続いたことで、前期比3.1%減の1,831億円となりました。一方、海外では欧米およびアジアでのIS事業、ニューロバスキュラー事業の拡大、血液システムカンパニーの伸長により、前期比10.1%増の3,064億円となりました。この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比4.7%増の4,895億円となりました。

 

②売上総利益
 売上総利益は、国内の薬価・公定価改定の影響がありながら、国内を中心とした製造原価の改善、主に海外での高付加価値製品の拡大もあり、前期比5.8%増の2,560億円となりました。

 

③営業利益
 営業利益は、販促費や物流費といった費用を適切にコントロールしたことにより、前期比3.3%増の675億円となりました。

 

④経常利益
 経常利益は、営業利益の増加と円安による為替差益で、前期比
10.9%増の707億円となりました。

 

⑤当期純利益
 当期純利益は、前期比12.8%増の385億円となりました。

 

 セグメントごとの業績、売上高、営業利益の概況については、「1 業績等の概要 (1)業績」に記載しております。

 

(2)財政状態の分析

 <主要財務指標>

 

前連結会計年度

当連結会計年度

自己資本当期純利益率

7.3%

7.2%

総資産当期純利益率

4.3%

4.2%

自己資本比率

59.6%

57.8%

1株当たり純資産

1,306.72円

1,513.73円

フリー・キャッシュ・フロー

43,515百万円

32,689百万円

 

①流動資産

 当連結会計年度末における流動資産残高は前連結会計年度末残高に比べ1,015億円増の4,125億円となりました。

 転換社債型新株予約権付社債の発行および為替の影響が主な要因です。

 

②有形固定資産

 当連結会計年度末における有形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ207億円増の1,785億円となりました。

 

③無形固定資産

 当連結会計年度末における無形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ272億円増の3,320億円となりました。

 

④投資その他の資産

 当連結会計年度末における投資その他の資産残高は前連結会計年度末残高に比べ75億円増の654億円となりました。

 

⑤流動負債

 当連結会計年度末における流動負債残高は前連結会計年度末残高に比べ310億円減の1,299億円となりました。

 社債の償還により1年内償還予定の社債が400億円減少したことが主な要因です。

 

⑥固定負債

 当連結会計年度末における固定負債残高は前連結会計年度末残高に比べ1,130億円増の2,886億円となりました。

 転換社債型新株予約権付社債を1,002億円発行したことが主な要因です。

 

⑦純資産

 当連結会計年度末における純資産の部の残高は、利益剰余金が297億円増加したことに加え、為替の影響もあり、前連結会計年度末に比べ773億円増の5,735億円となりました。

 

なお、キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載しております。

 

(3)次期の見通し

当社グループはカンパニーを軸としたグローバル経営により、カンパニーの各事業における収益責任の明確化と権限委譲による意思決定の迅速化を図っています。また、各事業を支えるグローバル本社機能の強化も推進します。

 

 心臓血管カンパニーでは、グローバルに競争優位を高めるため、成長分野への積極展開、収益マネジメントを推進していきます。IS事業においては薬剤溶出型冠動脈ステント「Ultimaster」を欧州・アジアで引き続き拡大を図りつつ、日本でも販売を開始します。ペリフェラル領域においては、末梢動脈疾患用ステント「Misago」の米国での販売開始や、PTAバルーンカテーテル等、新製品のグローバル展開を加速していきます。ニューロバスキュラー事業は、脳梗塞治療用デバイスなどの販売拡大を図り、引き続き高い成長を目指します。CV事業は、米国テルモ・カーディオバスキュラーシステムズ社に対するFDAの血液モニター装置に関する販売制限が解除され、生産および供給を開始する予定です。また、米国南カリフォルニアにおいて、カテーテル治療分野のグローバル成長の加速を担う開発拠点の設立に向けた準備を進めます。

 

 ホスピタルカンパニーは、引き続き高付加価値製品の強化と収益マネジメントの徹底により、事業利益の改善に取り組みます。基盤医療器事業においては、新しい閉鎖式輸液システム「シュアプラグAD」など、医療現場の安全性と効率性の向上に寄与する高付加価値製品の普及を目指します。また、ドラッグ&デバイス(D&D)事業においては、グローバルでの戦略的提携を推進し、DM・ヘルスケア事業は血糖値、体温、血圧など各種測定データの通信機能を持つ「HRジョイント」を活用し、事業拡大を図ります。

 

 血液システムカンパニーは、新興国での需要増加や先進国でのコスト競争力に対応できる事業基盤を整えていきます。先進国ではアフェレシス治療分野の拡大、医療需要が伸びているアジアや中南米では、当地の医療の安全性や効率性に寄与する新しい製品提案を行うことで、事業を拡大していきます。グローバルでの生産体制の統合も順調に進めており、ベトナム南部の工場での生産開始準備も予定通り進めていきます。

 

 このような取組みを通じて、次期の業績見通しの実現とともに、今後の持続的な成長を目指していきます。