第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 ≪連結業績≫

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

増減率
(%)

売上高

402,294

467,359

65,065

16.2

(国内)

185,913

189,041

3,127

1.7

(海外)

216,380

278,317

61,937

28.6

営業利益

53,216

65,288

12,072

22.7

経常利益

51,376

63,802

12,425

24.2

当期純利益

47,014

34,096

△12,918

△27.5

 

世界の医療市場を概観すれば、先進国では医療費抑制への圧力は引き続き高まっており、当期も厳しい環境となりました。一方、米国では医療改革法により、2014年1月から個人の医療保険加入の義務化が始まり、当面の政府目標であった700万人の登録者数に達しました。今後は受診者数の増加など、医療機器産業にとっても大きな影響を及ぼすと予想されます。

我が国においては、2013年11月に改正薬事法が成立し、医療機器の実用化促進へ向けた民間の第三者機関の認証対象の拡大や、審査の迅速化へ向けた措置が講じられました。また、成長戦略の具体的な施策である「日本版NIH」の設置について、「健康・医療戦略推進法案」と「独立行政法人日本医療研究開発機構法案」が閣議決定され、実行へ向けた環境整備が進みつつあります。

このような環境の下、当社グループでは現在、「世界で存在感のある企業になる」という目標を掲げ中期経営計画を推進しています。当期においては、為替の影響もあり前年同期比で増収増益となりました。

この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比16.2%増の4,674億円となり、営業利益は前期比22.7%増の653

億円となりました。

 

 セグメントの業績は次の通りです。

 当連結会計年度より、事業セグメントの名称を一部変更しており、「心臓血管領域事業」を「心臓血管事業」と表示しております。この変更は単なる名称のみの変更であり、セグメント区分の変更はありません。

 なお、前連結会計年度に事業譲渡した在宅酸素・輸液ポンプ事業及び、当連結会計年度に戦略的提携を行った次世代型補助人工心臓システム等に関わる売上高・費用に関して、これらを調整額へ含める方法に変更しております。

 

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

ホスピタル事業

売上高

155,010

164,089

9,079

営業利益

23,647

20,797

△2,849

心臓血管事業

売上高

169,678

210,558

40,880

営業利益

27,281

41,949

14,667

血液システム事業

売上高

74,745

92,743

17,997

営業利益

2,044

4,281

2,237

調整額

売上高

2,860

△32

△2,892

営業利益

243

△1,740

△1,983

(注) 当該セグメントの業績における営業利益は全社費用の配賦後であります。

 

 

<ホスピタル事業>
 
国内では、輸液システム関連の新製品立ち上げ遅れによる売上・収益悪化がありましたが、プレフィルドシリンジ、血糖測定システム関連が引き続き拡大し、前期比で1.3%の増収となりました。一方、海外ではアジア各国で売上を伸ばしました。

 その結果、ホスピタル事業の売上高は前期比5.9%増の1,641億円となりました。

 

<心臓血管事業>
 国内では、カテーテル製品群の末梢動脈疾患治療用ステント「Misago」、PTCA拡張カテーテルの「Hiryu Plus」など治療領域ごとに品種拡充をしたことで増収となりました。

 海外では引き続きカテーテル事業が好調に推移し、北米でTRI(手首の血管から冠動脈にアプローチするカテーテル手技)の普及・拡大が続きました。また、脳血管内治療に使われるニューロバスキュラー事業では、ステント他、新製品がグローバルに売上を伸ばしました。

 その結果、心臓血管事業の売上高は前期比24.1%増の2,106億円となりました。

 

<血液システム事業>
 国内では、競争環境が厳しくなりましたが、全血採血関連および成分採血システムを伸ばし、前期比で7.3%の増収となりました。

 海外では、欧米での血液使用適正化による需要影響はあったものの、欧州で血液自動製剤システムの新製品が売上を伸ばし、新興国でも成分採血システムが引き続き拡大しました。

  その結果、血液システム事業の売上高は前期比24.1%増の927億円となりました。

 

 

(2)キャッシュ・フロー

 ≪キャッシュ・フロー計算書概要≫

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

50,270

96,259

45,989

投資活動によるキャッシュ・フロー

△31,293

△52,744

△21,451

財務活動によるキャッシュ・フロー

△22,340

△31,785

△9,445

現金及び現金同等物の期末残高

75,165

92,498

17,332

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

 営業活動の結果得られた資金は963億円(前連結会計年度は503億円の取得)となりました。税金等調整前当期純利益は529億円、減価償却費は303億円、のれん償却額は96億円となりました。また、法人税等の支払額は29億円となりました。

 

投資活動によるキャッシュ・フロー

 投資活動の結果使用した資金は527億円(前連結会計年度は313億円の使用)となりました。有形固定資産の取得による支出399億円が主な要因です。

 

財務活動によるキャッシュ・フロー

 財務活動に使用された資金は318億円(前連結会計年度は223億円の使用)となりました。短期借入金の純減額180億円が主な要因です。

 

以上の結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より173億円増加して925億円となりました。

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

ホスピタル事業

162,384

6.6

心臓血管事業

212,763

21.1

血液システム事業

93,049

19.7

合計

468,197

15.4

(注) 1.金額は当連結会計年度の平均販売価格で算出したものであり、消費税等は含まれておりません。また、セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.各区分には以下の製品が含まれております。
ホスピタル事業 :基盤医療器、医薬品・栄養、D&D、DMヘルスケア
心臓血管事業:カテーテルシステム、ニューロバスキュラー、CV、血管事業
血液システム事業:血液システム

3.当連結会計年度の仕入製品の仕入実績は、当連結会計年度平均販売価格(消費税等含まず)算出で、20,132百万円となります。

 

(2)受注状況

 当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。

 

(3)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

 ホスピタル事業

 基盤医療器

80,916

4.8

 医薬品・栄養

36,732

0.5

 D&D

22,331

22.0

 DMヘルスケア

24,108

5.2

 心臓血管事業

 カテーテルシステム

141,278

26.3

 ニューロバスキュラー

17,447

38.3

 CV

40,378

16.0

 血管事業

11,453

10.3

 血液システム事業

 血液システム

92,743

24.1

 調整額

△32

△101.1

合計

467,359

16.2

(注) 1.本表の金額には、消費税等は含まれておりません。また、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

3【対処すべき課題】

(1)会社の経営の基本方針

 企業理念:「医療を通じて社会に貢献する」

 当社グループは、1921年の創業以来、この企業理念のもと、医療の進歩や安全性の向上を目指し、一貫して医療現場のニーズに応える医療機器、医薬品の開発と普及に取り組んでいます。

 

企業ビジョン:「テルモはユニークな輝く技術で、人にやさしい医療を実現します」

このビジョンは企業理念を具体化するもので、治療期間の短縮や痛みの軽減など、人にやさしい医療の実現を通して、世界中の患者さんや医療関係者、さらには健康を願う全ての人たちに貢献しようという当社グループの方向性を示したものです。

 

5つのステートメント:「開かれた経営」、「新しい価値の創造」、「安全と安心の提供」、「アソシエイトの尊重」、「良き企業市民」

 このステートメントは、当社グループが企業活動を行う上で行動や判断の基準とする原則を示したものです。

 

 このような経営方針のもと、医療業界における国内リーダー企業としてのポジションを強化するとともに、世界市場におけるシェア拡大とブランド価値向上を通じて、企業価値ひいては株主の皆様の利益を最大化すべく努めます。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

 当社グループでは現在、「世界で存在感のある企業になる」という目標を掲げ、当期から4カ年の中期経営計画を推進しています。医療現場のニーズに根ざした価値ある製品とサービスの提供による売上拡大とともに、経営資源の効率的な運用やコスト低減に取り組むことで、中長期的に持続的かつ収益を伴う成長を目指します。

 

(3)会社の対処すべき課題

 グローバルの医療機器市場は変革期を迎えています。先進国では医療費抑制の圧力が高まり、性能や品質に加えて、医療経済性への貢献が医療機器において不可欠な要素となりました。一方、新興国では医療インフラの整備が進み需要が急拡大しています。国内では、慢性期医療のニーズが高まり、高齢者向けの商品やサービスの市場が拡大しています。このように多様化するニーズに対応すべく、それぞれの市場に合わせた戦略を柔軟に組み合わせ、収益性を伴う継続した業績拡大に取り組んでいきます。

 

(4)会社の支配に関する基本方針

1.当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針

 当社は経営支配権の異動を通じた企業活動や経済の活性化を否定するものではありません。また、大規模買付行為が開始された場合において、これを受け入れるかどうかは、原則として、当社株主の皆様の判断に委ねられるべきものであると考えております。しかしながら、当社は、大規模買付行為またはこれに関する提案につきましては、当社株主の皆様が、当該大規模買付者の事業内容、事業計画、さらには過去の投資行動等から、当該大規模買付行為または提案の企業価値及び株主の皆様共同の利益への影響を慎重に判断する必要があると認識しています。そのためには、大規模買付者及び当社取締役会の双方から、当社株主の皆様に必要かつ十分な情報、意見、提案などの提供と、それらを検討するための必要かつ十分な時間が確保される必要があると考えます。

 当社取締役会は、このような基本的な考え方に立ち、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針に定める手続を設定し、大規模買付者に対してかかる手続の遵守を求めるものとし、大規模買付者がこの手続を遵守しない場合、あるいは遵守した場合でも、大規模買付行為が当社に回復しがたい損害をもたらすことが明らかであるときや、企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうときには、当社取締役会として一定の措置を講ずる方針です。

 

2.基本方針の実現に資する取組み

1)当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益向上に向けた取組み

 ①企業理念と経営の基本姿勢

  当社は大正10年の創業以来、「医療を通じて社会に貢献する」との企業理念のもと、日本の医療機器業界をリードする企業として、医療の進歩や安全性の向上とともに、企業価値及び株主の皆様共同の利益の向上に誠実に努めることを経営の基本方針としており、現在では、世界160か国以上に高品質な医療機器を供給しております。

 

 ②具体的な取り組み

  先進国における市場成長の鈍化と医療費抑制の動き、新興国における価格圧力など、世界の医療機器産業を取り巻く市場環境は転換期を迎えていますが、当社の参入領域は、今後も成長が期待できる領域であると考えております。例えば、カテーテルを用いた血管内治療は、治療の低侵襲化という流れに即して、心臓の血管だけではなく、脳や下肢など全身の血管に広がっています。また、血液の分野においては輸血療法に加え、免疫疾患などアフェレシス治療の需要も高まっています。さらに、ホスピタル分野では、医療事故や感染を防止するセーフティ化、痛みの少ない注射針のニーズが現場でますます高まっています。このような新たな市場ニーズを成長の機会として捉え、企業理念である医療を通じた社会への貢献を実現するべく、持続的かつ収益性のある成長を続けると同時に、医療現場のニーズに合致した製品開発でイノベーションを起こし、「世界で存在感のある企業」を目指してまいります。

 

2)当社の社会的使命

 当社は医療機器のリーディングカンパニーとして、長年にわたって医療現場と信頼関係を築き、医療を通じて社会に貢献してまいりました。優れた製品やサービス・システムを高い品質で安定的に供給すること、そして、患者さんや医療従事者の視点に立ち、医療を取り巻く様々な社会的課題の解決に向けて積極的に挑戦することが、最も重要な当社の社会的責任であると考えています。このような考え方のもと、当社は引き続き、製品の供給や品質の確保において世界の医療供給体制の中で重要な役割を担い、医療現場に安全と安心を提供してまいります。

 不適切な買収行為により、当社製品の供給や品質に問題が生じた場合、社会の人々の生命や健康に深刻な影響を及ぼす可能性も否定できません。そのような事態を招くことなく、社会と医療現場からの長年の信頼を維持向上させる安定的経営は、当社の企業価値・株主の皆様共同の利益にもかなうこととなります。

 

3)コーポレートガバナンスの強化

 コーポレートガバナンスに関する取組みにつきましては、「第4 提出会社の状況 6.コーポレートガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの状況」に記載のとおりです。

 

3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 当社は、当社の企業価値及び株主の皆様共同の利益を著しく損なうような買収等を未然に防止するため、平成20年4月30日開催の当社取締役会において、当社株式の大規模買付行為に関する対応方針(買収防衛策)を導入することに関して決議を行い、平成20年6月27日開催の当社第93期定時株主総会において株主の皆様のご承認をいただきました。

 その後、当社は平成23年5月11日開催の当社取締役会において、所要の変更を加えて買収防衛策の更新を決議し、平成23年6月29日開催の当社第96期定時株主総会において株主の皆様のご承認をいただいております(かかる更新後のプランを「旧プラン」といいます)。

 旧プランの有効期限が到来することから、買収防衛策に関する議論の動向等を踏まえて検討した結果、平成26年5月8日開催の当社取締役会において、買収防衛策の更新(以下「本プラン」といいます)を決議し、平成26年6月24日開催の当社第99期定時株主総会において株主の皆様のご承認を頂いております。本プランの詳細については、当社ホームページ掲載のプレスリリースをご参照ください。

(アドレス http://www.terumo.co.jp/pressrelease/baishubouei.html)

 

4.具体的取組みに対する当社取締役会の判断及びその理由

 上記2に記載した、当社の目標の実現に向けた成長戦略の着実な実行は、当社の企業価値および株主の皆様共同の利益を確保・向上させるものであり、当社の基本方針に沿うものです。

 また、上記3に記載した本プランは、大規模買付者に対して事前に必要情報の提供及び一定の検討期間の確保を求めることにより、株主の皆様が大規模買付行為に応ずるべきか否かにつき慎重に判断される機会を確保することを目的とするものであり、基本方針に沿うものと考えます。更に、本プランについては、a)株主及び投資家の皆様ならびに大規模買付者の予見可能性を高めるため、事前の開示がなされていること、b)平成26年6月24日開催の株主総会において株主の皆様のご承認を頂いていること、c)経営者の保身目的での濫用防止のため、独立委員会を設置し、当社取締役会が対抗措置を発動する場合、独立委員会の勧告に従った上で判断を行うものとしていること等から、株主の皆様共同の利益を損なうものではなく、また、当社の役員の地位の維持を目的とするものではないと考えております。

 

 

 

 

4【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。

 

・医療行政の方針変更

 当社の属する業界は、国内外で、医療費抑制や、医療の質の向上を目的とした医療制度改革が継続的に行われております。今後予測できない大規模な医療行政の方針変更が行われ、急激な環境変化が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・販売価格の変動

 当社の属する業界は、国内では医療費抑制策の一環として、2年に1度、診療報酬、薬価および特定保険医療材料の公定償還価格の改定が行われます。また、国内外ともに、市場における企業間競争の激化や技術革新により、大幅な価格下落が発生する可能性があり、これらの販売価格の変動は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・原材料価格の変動

 当社の製品を製造するための原材料は、プラスチックなどの石油を原料とするものが多いため、世界的な資源価格の高騰により、原材料購入費用が増加し、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・為替レートの変動

 当社は、日本に本社を置き事業運営を行っているため、各地域における現地通貨建て財務諸表を連結財務諸表作成等のために円換算しています。従って為替レートに変動があると、換算に適用するレートが変動し、円換算後の損益に影響を受けることとなります。
 当社は海外工場への生産移管、海外からの原材料調達等の構造的対応を図るとともに、保有する債権の当該リスクに対し、機動的な為替予約により対処しています。
 しかしながら、予想外の変動が生じた場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を与えることがあります。

 

・海外活動に係るリスクについて

 当社は世界160ヶ国以上に製品を供給していますが、当社が事業活動している様々な市場における景気後退や、それに伴う需要の縮小、あるいは海外各国における予期せぬ政情の変化や法規制等の変更があった場合、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・品質問題について
 当社は、医薬品および医療機器のGMP基準や、品質マネジメントシステムである国際規格ISOの基準等に基づいて、厳格な品質管理のもとで製品の製造をしています。
 しかしながら、医療事故等の発生に際して、当社製品に関わる品質上の問題が疑われる場合もあります。また、医療事故等の発生に当社製品が直接関与していないことが明らかであっても、将来的に当社製品にリスクが波及する可能性がある場合、予防的な対策、措置を講じることがあります。そのような場合には、売上の低下、またはコスト増などにより、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・重要な訴訟等について
 当社は、国内外の事業に関連して、訴訟、紛争、その他の法的手続きの対象となるリスクがあります。これらの法的なリスクについて、法務室、知的財産部等の管轄部署による調査や社内チェック体制の整備をしており、必要に応じて取締役会および監査役会に報告する管理体制となっています。しかしながら、万一第三者より、将来、損害賠償請求や使用差し止め等の重要な訴訟が提起された場合は、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

・その他
 取引慣行の変化、テロ・戦争・疫病や新型インフルエンザなどの世界的な感染症拡大・災害等が発生した場合には、当社の経営成績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

  《おことわり》

 当社の開示資料に記載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が有価証券報告書提出日(平成26年6月25日)現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、当社としてその実現を約束する趣旨のものではありません。様々な要因により、実際の業績等が変動する可能性があることをご承知おきください。実際の業績に影響を与えうる重要な要素には、当社の事業領域を取り巻く経済情勢、為替レートの変動、競争状況などがあります。

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)合弁関係

相手先

契約期間

契約の内容

BSNメディカル(ドイツ)

平成10年3月18日から合弁会社の存続する期間

日本国内市場向けBSNメディカル社製品の製造、売買及び輸入を目的とする合弁会社テルモ・ビーエスエヌ株式会社を設立

 

(2)土地関係

当社は平成22年3月25日付をもって東京都渋谷区幡ヶ谷二丁目44番1号の土地を売却する旨の合意をしました。

 

6【研究開発活動】

 心臓血管事業では、TRI用シース「Glidesheath Slender」を米国で、ニューロ領域において血流改変ステントやバルーンを欧州や日本で販売を開始しました。また、薬剤溶出型ステント「Ultimaster」のCE認証を2014年2月に取得し、2014年6月から欧州で販売を開始します。

 将来のパイプライン構築を目指し、生体吸収性ステントを開発するフランスのArterial Remodeling Technologies社の独占買収権取得、同社との共同開発、及び段階的な投資に関する契約を締結しました。また、最新の技術的知見の獲得を目指し、米国のベンチャーキャピタルファンド、Emergent Medical Partners II L.P.への出資および、インキュベーションセンターへ開発プロジェクトを移籍し、早期の事業化への取り組みをスタートしました。

 この結果、当連結会計年度の研究開発費は301億円(売上高比率6.4%)となりました。

 

 なお、当連結会計年度の研究開発費総額には、各事業分野に配分できない基礎研究費用12億円が含まれております。

 

ホスピタル事業

 輸液システム類、輸液剤、プレフィルドシリンジ、血糖測定システム、電子体温計、電子血圧計などの研究開発を行っており、当事業に係る研究開発費は66億円であります。

 

心臓血管事業

 カテーテルシステムや人工心肺システム、ニューロバスキュラー関連製品、人工血管の開発を行っており、当事業に係る研究開発費は160億円であります。

 

血液システム事業

 輸血関連製品の開発を行っており、当事業に係る研究開発費は63億円であります。

 

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(平成26年6月25日)現在において当社グループが判断したものであります。将来に関する事項は不確実性を内包しておりますので将来生じる実際の結果と差異が生じる可能性があります。

 

(1)経営成績

 <連結業績について>

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

増減額
(百万円)

増減率
(%)

売上高

402,294

467,359

65,065

16.2

営業利益

53,216

65,288

12,072

22.7

経常利益

51,376

63,802

12,425

24.2

当期純利益

47,014

34,096

△12,918

△27.5

 

①売上高-概況

 国内では、ホスピタル事業の血糖測定システムが引き続き拡大し、心臓血管事業の末梢動脈疾患治療用ステント「Misago」、PTCA拡張カテーテルの新製品による業績拡大、血液システム事業が成分採血システム、血液バッグで売上を伸ばし、前期比1.7%増の1,890億円となりました。一方、海外ではカテーテル事業が主に米州で好調に推移するとともに、血液システム事業も成分採血システムや新興国での拡大を受け、海外売上高は前期比28.6%増の2,783億円となりました。この結果、当連結会計年度の売上高は、前期比16.2%増の4,674億円となりました。

 

②売上総利益
 売上総利益は、ホスピタル事業の新製品の立ち上げ遅れの影響はありましたが、円安による増益効果、心臓血管事業や血液システム事業の高収益品拡大もあり、前期比17.7%増の2,420億円となりました。

 

③営業利益
 営業利益は、ビジネス拡大を図った成長投資を含む一般管理費および研究開発費が増加しましたが、売上拡大による粗利益増加、円安効果もあり、前期比22.7%増の653億円となりました。

 

④経常利益
 
経常利益は、円安進行を受けた為替差益の寄与により、前期比24.2%増の638億円となりました。

 

⑤当期純利益
 当期純利益は、受取和解金による特別利益60億円がありましたが、不採算事業設備等の固定資産減損により、前期比27.5%減の341億円となりました。

 

 セグメントごとの業績、売上高、営業利益の概況については、「1 業績等の概要 (1)業績」に記載しております。

 

(2)財政状態の分析

 <主要財務指標>

 

前連結会計年度

当連結会計年度

自己資本当期純利益率

11.9%

7.3%

総資産当期純利益率

6.4%

4.3%

自己資本比率

56.7%

59.6%

1株当たり純資産

1,152.21円

1,306.72円

フリー・キャッシュ・フロー

18,976百万円

43,515百万円

 

①流動資産

 当連結会計年度末における流動資産残高は前連結会計年度末残高に比べ240億円増の3,110億円となりました。

 

②有形固定資産

 当連結会計年度末における有形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ129億円増の1,578億円となりました。

 

③無形固定資産

 当連結会計年度末における無形固定資産残高は前連結会計年度末残高に比べ81億円増の3,048億円となりました。

 

④投資その他の資産

 当連結会計年度末における投資その他の資産残高は前連結会計年度末残高に比べ155億円増の578億円となりました。

 

⑤流動負債

 当連結会計年度末における流動負債残高は前連結会計年度末残高に比べ451億円増の1,609億円となりました。

 短期借入金が178億円減少、1年内償還予定の社債が社債からの組替により400億円増加となりました。

 

⑥固定負債

 当連結会計年度末における固定負債残高は前連結会計年度末残高に比べ416億円減の1,756億円となりました。

 社債が1年内償還予定の社債への組替により400億円減少となりました。

 

⑦純資産

 当連結会計年度末における純資産の部の残高は利益剰余金が244億円増加となり、前連結会計年度末に比べ583億円増の4,962億円となりました。

 

なお、キャッシュ・フローの状況については、「1 業績等の概要 (2)キャッシュ・フロー」に記載しております。

 

(3)次期の見通し

中期経営計画へ向けた取組みを加速すべく、事業・機能・地域でのマトリックス経営から、カンパニーを軸としたグローバル経営へ移行します。これにより各事業における収益責任の明確化と権限委譲による意思決定の迅速化を図ると共に、本社は全社視点でのポートフォリオ戦略の立案と各事業を支えるコーポレート機能を強化していきます。

 

 ホスピタル事業は、収益面での管理を徹底すると同時に、基盤医療器事業においては、閉鎖式輸液システム「シュアプラグAD」やIT機能を搭載した輸液ポンプ・シリンジポンプなどの医療現場の効率化や医療事故防止へ寄与する高付加価値製品の販売を強化していきます。またドラッグ&デバイス(D&D)事業においては、引き続き自社品の国内シェア拡大やグローバルな戦略的提携の加速など、成長分野として事業拡大を図ります。
 心臓血管事業では、成長下での収益マネジメントの実行と、アジアを中心とした海外生産工場の活用を通じ原価低減を図ります。カテーテル事業においては薬剤溶出型ステントの新製品「Ultimaster」を6月に欧州・アジアより販売を開始いたします。ペリフェラル領域においてはPTAバルーンやワイヤー等の製品のフルライン化を早期にグローバルに展開し、ニューロバスキュラー事業についてはノンコイル製品を継続投入し拡大を図ります。CV事業については、米国テルモカーディオバスキュラーシステムズ社の品質システム改善への取り組みを確実に進め、2014年度内のFDA再査察を目指します。
 血液システム事業では、先進国における血液使用適正化の動き等、厳しい市場環境にありますが、成分採血システムの新興国における拡大や治療アフェレシス分野の強化、同時にアジアにおける生産準備を進め、安定成長と堅実な収益確保を継続していきます。

 

 このような取組みを通じて、次期の業績見通しの実現とともに、今後の持続的な成長と利益確保を目指していきます。