第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度のわが国経済は、新興国経済の減速の影響などから、輸出や生産面に鈍さが見られるものの、企業収益は高水準で推移するなど、基調としては緩やかな回復を続けております。米国では、安定した雇用環境のもと、個人消費は引き続き増加するなど景気回復が続いておりますが、一方、中国では景気は緩やかに減速しております。今後の世界経済の先行きにつきましては、中国を始めとする新興国等の景気下振れリスクや原油価格下落の影響など不透明感が増しております。

医薬品業界では、伸長する社会保障給付費を抑制するための世界的な動きとして、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進が進むなか、新薬開発の難度の高まり、研究開発費の高騰、国際競争の激化などにより、事業の予見性が低下しており、事業リスクは増大しております。

このような状況のもと、当社グループは、日本において、戦略品である高血圧症治療剤「アイミクス」、パーキンソン病治療剤「トレリーフ」、非定型抗精神病薬「ロナセン」等のさらなる売上拡大を図るべく情報提供活動に注力いたしました。

北米においては、サノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)が、グローバル戦略品である非定型抗精神病薬「ラツーダ」(一般名:ルラシドン塩酸塩)を中心とする主力製品の売上拡大に向けて事業活動を行いました。その結果、「ラツーダ」は、北米で売上高10億米ドルを超える大型製品に成長いたしました。また、抗がん剤の分野では、ボストン・バイオメディカル・インク(以下「BBI社」)が現在開発中であるnapabucasin(開発コード:BBI608)の米国での早期上市を最優先課題と位置付け、開発活動に注力いたしました。

欧州においては、武田薬品工業株式会社の販売戦略上の観点から、同社より欧州での「ラツーダ」の開発・販売権が返還されました。

当連結会計年度の連結業績は、日本では、後発医薬品の使用促進による長期収載品の売上減少の影響が大きく、大幅な減収となりました。北米では、「ラツーダ」や単剤療法の適応追加承認を新たに取得した抗てんかん剤「アプティオム」の売上が順調に拡大したことに加え、円安の影響もあり、大幅な増収となりました。これらの結果、売上高は4,032億6百万円(前連結会計年度比8.6%増)となりました。販売費及び一般管理費は、北米において積極的な研究開発を進めるなど戦略的な投資を行ったことに加え、円安の影響もあり増加いたしました。この結果、営業利益は369億29百万円(前連結会計年度比58.7%増)、経常利益は352億21百万円(前連結会計年度比51.0%増)となりました。また、特別損益として投資有価証券売却益等を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は246億97百万円(前連結会計年度比59.9%増)となりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりであります。

①日本

「アイミクス」、「トレリーフ」および「ロナセン」の戦略品3剤に加えて、速効型インスリン分泌促進剤「シュアポスト」等の売上が伸長しましたが、後発医薬品の使用促進策の浸透による長期収載品の売上減少を補うには至らず、売上高は1,464億92百万円(前連結会計年度比6.4%減)となりました。利益面では、売上の減少に加え、研究開発費を除く販売費及び一般管理費が増加したことから、セグメント利益は415億35百万円(前連結会計年度比17.9%減)となりました。

 

 

②北米

「ラツーダ」が大きく伸長したことに加え、「アプティオム」および長時間作用型β作動薬「ブロバナ」の売上が拡大し、売上高は1,848億69百万円(前連結会計年度比24.8%増)となりました。利益面では、研究開発費を除く販売費及び一般管理費は、円安の影響により増加しましたが、売上の大幅な増加が寄与し、セグメント利益は651億54百万円(前連結会計年度比87.7%増)となりました。

 

③中国

主力品であるカルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の売上増加等により、売上高は183億74百万円(前連結会計年度比7.2%増)となりました。利益面では、研究開発費を除く販売費及び一般管理費は、円安の影響により増加しましたが、セグメント利益は79億92百万円(前連結会計年度比27.9%増)となりました。

 

④海外その他

「メロペン」の輸出が増加したこと等により、売上高は111億87百万円(前連結会計年度比27.4%増)となりました。利益面では、売上品目の構成の変化により売上総利益が増加したため、セグメント利益は24億46百万円(前連結会計年度比192.6%増)となりました。

 

上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品、診断薬等の販売を行っており、これらの売上高は422億82百万円(前連結会計年度比3.9%増)、セグメント利益は18億21百万円(前連結会計年度比17.5%減)となりました。

 

(2) キャッシュ・フロー

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加や法人税等の支払額の減少等により、前連結会計年度に比べ191億63百万円収入が増加し、494億15百万円の収入となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入等が増加しましたが、有形固定資産の売却による収入が大きく減少したことから、前連結会計年度に比べ75億60百万円収入が減少し、158億87百万円の収入となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払に加えて、社債の償還を実施したことから、前連結会計年度に比べ268億79百万円支出が増加し、426億5百万円の支出となりました。 

上記のキャッシュ・フローに、現金及び現金同等物の為替換算による影響額および連結子会社の決算期変更に伴う現金及び現金同等物の調整額を加えた結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,355億75百万円となり、前連結会計年度末に比べ127億81百万円増加しました。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

145,697

△3.0

北米

207,856

28.5

中国

15,966

5.2

海外その他

9,398

26.9

その他

158

△28.9

合計

379,075

13.2

 

(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。

2 セグメント間取引については相殺消去しております。

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

2,709

67.7

北米

1,741

△15.8

中国

海外その他

その他

49,453

5.8

合計

53,904

6.9

 

(注) 1 金額は仕入価格によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(3) 受注状況

当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。

 

(4) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本

146,492

△6.4

北米

184,869

24.8

中国

18,374

7.2

海外その他

11,187

27.4

その他

42,282

3.9

合計

403,206

8.6

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

マッケソン社(米国)

46,561

12.5

62,474

15.5

カーディナル社(米国)

36,024

9.7

47,777

11.8

アメリソースバーゲン社(米国)

34,572

9.3

42,168

10.5

 

3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

3 【対処すべき課題】

当社は、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としております。この理念を実現するために、「グローバルレベルで戦える研究開発型企業」および「最先端の技術で医療に貢献」とのビジョンを設定しました。そのビジョンの実現に向け、平成25年度から平成29年度までの5カ年の第三期中期経営計画(以下「第三期中計」)を策定し、また、平成27年10月の大日本住友製薬株式会社発足10周年にあたり、グローバルスローガン「Innovation today, healthier tomorrows」を制定いたしました。

本年で第三期中計を策定して4年目を迎えますが、国内事業での新製品の上市遅延、主力品の売上の伸び悩み、後発医薬品の使用促進に伴う想定以上の長期収載品の売上減少等により、事業環境は大幅に悪化しており、その対応が喫緊の課題となっております。また、現在の当社グループの収益の柱である「ラツーダ」の平成30年度の独占販売期間満了に伴う損益への影響を最小限にとどめるとともに、その後の再成長を確固たるものにするための投資も戦略的に進める必要があります。このように激変する事業環境のもと、当社は、第三期中計における平成29年度の経営目標を以下のとおり修正いたしました。

 

 

(単位:億円)

 

従来目標

(平成29年度)

修正目標

(平成29年度)

売上高

4,500

4,400

(うち医薬品事業)

(4,000)

(3,950)

営業利益

800

500

EBITDA

1,100

750

研究開発費

850

850

 

(注)EBITDAは、支払利息、法人税等、減価償却費および特別損益を控除する前の利益であります。

 

当社グループは、この経営目標の達成および持続的成長に向け、全社一丸となって以下の経営課題に積極的に取り組んでまいります。

 

(1) CSR経営の推進

CSR経営の推進は、当社グループが持続的に成長していくために最も重要な経営課題であります。コンプライアンスの徹底、実効性の高いコーポレートガバナンス体制および透明性の高い経営の追求、国内外での社会貢献活動、女性の活躍推進などのダイバーシフィケーション、多様なステークホルダーとのコミュニケーションなどを推進してまいります。

 

(2) 事業基盤の強化

事業環境の変化に対し、機動的に事業構造を転換できるようにするため、引き続き、人件費および一般経費の合理化、資産効率の向上、組織の簡素化の推進等により経営効率を追求してまいります。これらに加え、強い企業文化を構築し、強い社員を育成することにより事業基盤の強化を図ってまいります。

 

(3) 各地域セグメントにおける戦略および事業活動

日本では、「アイミクス」、「ロナセン」および「トレリーフ」の伸長を図るとともに、昨年から鳥居薬品株式会社とのプロモーション提携を開始したそう痒症改善剤「レミッチ」および日本イーライリリー株式会社との提携により販売を開始した2型糖尿病治療薬「トルリシティ」を早期に拡大することにより、薬価改定や長期収載品の売上減少の影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。さらに、後発医薬品の使用促進が加速度的に進む国内事業環境の変化に対応し、利益の最大化に資する高効率な事業運営体制の構築に早急に取り組んでまいります。

北米では、売上高10億米ドルを達成した「ラツーダ」のさらなる伸長を図るとともに、「アプティオム」および「ブロバナ」の成長により、事業の拡大を図ってまいります。

中国では、引き続き「メロペン」の販売を中心に事業規模の維持に努めてまいります。

欧州では、「ラツーダ」の事業展開について、新たなパートナーとの提携を含め、あらゆる選択肢の検討を進めてまいります。

 

 

(4) 研究開発戦略

研究開発については、後期開発品の開発を最優先に進めてまいります。領域別では、精神神経領域およびがん領域に注力してまいりますが、希少疾患などの治療薬のない疾患分野や再生医療・細胞医薬といった新規分野にも積極的に経営資源を投入してまいります。

精神神経領域では、北米においてdasotralineの開発等を、また、日本ではルラシドン塩酸塩、「ロナセン」の経皮吸収型製剤およびレビー小体型認知症(DLB)に伴うパーキンソニズムを対象とした「トレリーフ」の開発等を積極的に行ってまいります。

がん領域では、がん幹細胞性に対する阻害剤としてファースト・イン・クラスのnapabucasinについて、胃または食道胃接合部腺がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験に最大限注力し、米国および日本での平成29年度中の申請を目指してまいります。さらに、平成27年度より開始した結腸直腸がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験なども積極的に進めてまいります。

治療薬のない疾患分野では、米国のインターセプト・ファーマシューティカルズ・インクから導入したobeticholic acid(開発コード:DSP-1747)について、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を対象とした開発を推進してまいります。

細胞医薬では、サンバイオ・インク(以下「サンバイオ社」)から導入したSB623の開発を推進いたします。再生医療では、眼疾患領域でiPS細胞を用いた世界初の事業化を目指し、株式会社ヘリオスとの共同開発を加速させ、併せて、株式会社サイレジェンにおいて、生産および販売促進体制構築に向けた検討を推進してまいります。また、国立研究開発法人理化学研究所とのiPS細胞由来立体網膜を用いた網膜変性疾患の再生医療の共同研究を進めてまいります。眼疾患以外の領域では、京都大学iPS細胞研究所および株式会社日立製作所とのヒトiPS細胞を用いたパーキンソン病に対する再生医療の実用化に向けた共同研究、慶應義塾大学および国立病院機構大阪医療センターとのiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた脊髄損傷の再生医療の共同研究などの取組を強化してまいります。

 

(5) 株主還元および財務戦略

当社は、企業価値と株主価値の持続的かつ一体的な向上を基本方針としており、株主への還元については、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行ってまいります。

財務戦略については、順次有利子負債の返済を進めておりますが、持続的な成長のために、必要に応じてレバレッジの活用などによりキャッシュを確保し、製品および開発品の導入ならびに国内事業、北米事業、新規事業等への新規投資を積極的に進めてまいります。

 

(6) リスクへの対応

これらの事業計画を進めるうえにおいては、コンプライアンス違反により社会的信用を失うリスク、新製品開発の遅延または中止のリスク、市販後に予期せぬ副作用が発生するリスク、訴訟に関わるリスク、操業停止のリスク等の様々なリスクがあります。

当社は、リスクマネジメント委員会、コンプライアンス委員会などを通じてリスク管理を強化し、リスクの未然防止および低減に努めてまいります。なお、これらのリスクが顕在化した場合には、機動的に対策を講じることにより、影響を最小限にとどめるように努めてまいります。

 

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがあります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 新製品の研究開発に関わるリスク

当社グループは独創性の高い国際的に通用する有用な新製品の開発に取り組んでおります。開発パイプラインの充実と早期の上市を目指しておりますが、新薬開発の難度が高まる中、開発中の品目すべてが今後順調に進み発売に至るとは限らず、開発が遅延する場合や中止しなければならない事態になる場合も予想されます。このような場合、開発品によっては経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 副作用問題について

医薬品は開発段階において充分に安全性の試験を実施し、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を受けて承認されておりますが、市販後に新たな副作用が見つかることも少なくありません。市販後に予期せぬ副作用が発生した場合に、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 医療制度改革について

国内においては、急速に進展する少子高齢化等により医療保険財政が悪化する中、先発医薬品の価格抑制や後発医薬品の使用促進などの医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の論議が続けられております。医療制度改革はその方向性によっては当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、海外においても医薬品は各種の規制を受けており、米国の医療保険制度改革等の行政施策の動向によっては、重要な影響を受ける可能性があります。

 

(4) 製品の売上に関わるリスク

当社グループが販売する医薬品に関して、同領域の他社製品との競合や特許満了等による後発医薬品の上市等により、当該製品の売上高の減少に繋がる要因が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 知的財産権に関わるリスク

当社グループは研究開発において種々の知的財産権を使用しております。これらは当社グループ所有のもの、または適法に使用許諾を受けたものとの認識のうえで使用しておりますが、第三者の知的財産権を侵害する可能性がないとは言えません。知的財産権をめぐっての係争が発生した場合には当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 提携解消について

当社グループは仕入商品の販売、合弁事業、共同販売、開発品の導入または導出、共同研究等さまざまな形で他社と提携を行っております。何らかの事情によりこれらの提携関係を解消することになった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 主要な事業活動の前提となる事項について

当社グループの主な事業は医療用医薬品事業であり、国内においては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の薬事に関する法令に基づき、その研究開発および製造販売等を行うにあたり、「第一種医薬品製造販売業」、「第二種医薬品製造販売業」(いずれも有効期間5年)等の許可等を取得しております。また、海外においても医療用医薬品事業を行うにあたっては、当該国の薬事関連法規等の規制を受け、必要に応じて許可等を取得しております。

 

これらの許可等については、各法令で定める手続きを適切に実施しなければ効力を失います。また各法令に違反した場合、許可等の取消し、または期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命ぜられることがある旨が定められております。当社グループは、現時点において、許可等の取消し等の事由となる事実はないものと認識しておりますが、将来、当該許可等の取消し等を命ぜられた場合には、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 訴訟に関わるリスク

当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 工場の閉鎖または操業停止に関わるリスク

当社グループの工場が、技術上の問題、使用原材料の供給停止、火災、地震、その他の災害等により閉鎖または操業停止となり、製品の供給が遅滞もしくは休止した場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10) 金融市況および為替変動による影響について

株式市況の低迷によっては保有する株式の評価損や売却損が生じ、金利動向によっては借入金等の支払利息が増加するほか、金融市況の悪化によっては退職給付債務が増加するなど、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動によっては、輸出入取引および連結子会社業績等の円換算において、重要な影響を受ける可能性があります。

 

(11) 固定資産の減損の影響について

当社グループは、事業用の資産やのれん等、さまざまな有形・無形の固定資産を保有しております。将来、大幅な業績の悪化や価値の低下等があった場合、減損処理の必要が生じ、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 親会社との取引について

当社と親会社である住友化学株式会社との間で、大阪研究所、愛媛工場および大分工場の土地賃借、これらの事業所等で使用する用役や主に原薬を製造する際に使用する原料の購入契約を締結しております。当該契約等は、一般的な市場価格を参考に双方協議のうえ合理的に価格が決定され、当事者からの申し出がない限り1年ごとに自動更新されるものであります。このほか、親会社から出向者の受入を行っており、また、資金効率向上等の観点から親会社への短期貸付を実施しております。
  今後も当該取引等を継続していく方針でありますが、同社との契約・取引内容等に変化が生じた場合には、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 海外事業展開に関するリスク

当社グループは、北米、中国を中心にグローバルな事業活動を展開しておりますが、各国の規制・制度変更や外交関係の悪化、政情不安等のリスクが内在しており、このようなリスクに直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) コンプライアンスに関するリスク

当社グループは、コンプライアンスの推進を全ての事業活動の土台と位置付け、法令および企業倫理の遵守に努めておりますが、コンプライアンスの精神に反するような事態が生じた場合には、企業グループとしての社会的信用の失墜等により、経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

なお、上記以外にもさまざまなリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1) 技術導入

 

契約会社名

相手先

国名

技術の内容

対価の支払

契約期間

大日本住友製薬
㈱(当社)

セルヴィエ社

フランス

グリクラジドに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

1974.3~1999.5
以後1年間ずつ自動更新

大日本住友製薬
㈱(当社)

アルミラル社

スペイン

エバスチンに関する技術

一定料率のロイヤルティ

1988.1~2012.12
以後5年間ずつ自動更新

大日本住友製薬
㈱(当社)

メイン・ファーマ社

オーストラリア

硫酸モルヒネのポリマーコート徐放錠を含有した硬質ゼラチンカプセルに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

1992.2~
当社が終結を通知するまで

大日本住友製薬
㈱(当社)

ワーナーチルコット社

アメリカ

エチドロン酸 二ナトリウムに関する技術

一定料率のロイヤルティ

1989.1~2000.12
以後自動更新

大日本住友製薬
㈱(当社)

グラクソ・スミスクライン社

イギリス

新種のナマルバ細胞を使用するインターフェロンに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

1996.5~
本契約の対象のインターフェロン発売から10年間又は特許満了日の長い方。ただし契約満了後も当社は本技術・細胞を使用できる

大日本住友製薬
㈱(当社)

ギリアド社

アメリカ

アムホテリシンBに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

1996.9~
発売から10年間又は特許満了日の長い方
以後1年間ずつ自動延長

大日本住友製薬
㈱(当社)

シャイアー社

アメリカ

アガルシダーゼアルファに関する技術

契約一時金

1998.7~
発売から15年間、6カ月前までの協議により延長可能

大日本住友製薬
㈱(当社)

メルク・サンテ社

フランス

グルコファージに関する技術

契約一時金

2003.3~
当社が当該製品の販売を継続する限り有効

大日本住友製薬
㈱(当社)

ノボ ノルディスク社

デンマーク

レパグリニドに関する技術

契約一時金

2004.3~
発売から25年間又は当社が商標の使用を中止するまでの短い方。ただし契約満了後も当社は販売継続できる

大日本住友製薬
㈱(当社)

ブリストル・マイヤーズ㈱

日本

イルベサルタンに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2006.7~
発売から15年間又は特許満了日の長い方

大日本住友製薬
㈱(当社)

ニューロクライン社

アメリカ

インディプロンに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2007.10~
発売から15年間又は特許満了日の長い方

大日本住友製薬
㈱(当社)

インターセプト ファーマシューティカルズ社

アメリカ

ファルネソイドⅩ受容体作動薬に関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2011.3~
国毎に、最初又は第2適応症の上市から10年間、又は独占期間のどちらか長い方

大日本住友製薬
㈱(当社)

エジソン社

アメリカ

EPI-743及びEPI-589に関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2013.3~
発売から10年間又は独占期間のどちらか長い方
協議により延長可能

大日本住友製薬
㈱(当社)

サンバイオ社

アメリカ

SB623に関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2014.9~
最終の対象国での発売から20年間

サノビオン社

ビアル・ポルテラ・アンド・シーエー社

ポルトガル

エスリカルバゼピンに関する技術

契約一時金

2007.12~
国毎に、発売から10年間、特許満了日、データ独占期間のうちいずれか長い方

サノビオン社

タケダ社

ドイツ

シクレソニドに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2008.1~
発売から15年間

 

 

(2) 技術導出

 

契約会社名

相手先

国名

技術の内容

対価の受取

契約期間

大日本住友製薬
㈱(当社)

エーザイ㈱

日本

ゾニサミドに関する技術

契約一時金

1997.10~
発売から15年間
以後2年間ずつ自動更新

大日本住友製薬
㈱(当社)

スニーシス社

アメリカ

キノロン系抗癌剤に関する技術

契約一時金

2003.10~
発売から10年間又は特許満了日の長い方

大日本住友製薬
㈱(当社)

アストラゼネカ社

イギリス

カルバペネム系抗生物質メロペネムに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

1990.12~
発売から15年間又は特許満了日の長い方

大日本住友製薬
㈱(当社)

セルジーン社

アメリカ

塩酸アムルビシンに関する技術

契約一時金

2005.6~
発売から10年間又はジェネリック品が市場シェアの20%を超えた四半期の第一日目の長い方

サノビオン社

シェリング・プラウ社

スイス

デスロラタジンに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

1997.12~
特許満了日まで

サノビオン社

エーザイ㈱

日本

エスゾピクロンに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2007.7~
販売承認から15年間又は薬価収載後15年間の長い方

 

 

(3) 販売契約等

 

契約会社名

相手先

国名

契約内容

契約期間

大日本住友製薬
㈱(当社)

ヤンセンファーマ㈱

日本

ハロマンスに関する販売提携

2002.7~
当社が終結を通知するまで

大日本住友製薬
㈱(当社)

マイランEPD(同) (注)

日本

リズミックに関する販売提携

2002.12~2012.11
以後1年間ずつ自動更新

大日本住友製薬
㈱(当社)

塩野義製薬㈱

日本

アイミクス配合剤に関する並行販売

2012.6~
発売から10年間
以後1年間ずつ自動更新

大日本住友製薬
㈱(当社)

鳥居薬品㈱

日本

レミッチに関するプロモーション提携

2015.3~

特許満了日まで

大日本住友製薬
㈱(当社)

日本イーライリリー㈱

日本

トルリシティに関する販売提携

2015.7~

相手方と合意した期間の満了まで

イーライリリー社

アメリカ

DSファーマアニマルヘルス㈱

日本ヒルズ・コルゲート㈱

日本

サイエンス・ダイエットに関する販売提携

2015.1~2016.12
以後1年間ずつ自動更新

DSファーマアニマルヘルス㈱

日本ヒルズ・コルゲート㈱

日本

プリスクリプション・ダイエットに関する販売提携

2015.1~2016.12
以後1年間ずつ自動更新

 

(注)当連結会計年度において、相手先をアボット ジャパン㈱からマイランEPD(同)に変更しております。

 

 

以下の契約については、当連結会計年度において終了しました。

技術導入 

契約会社名

相手先

国名

技術の内容

対価の支払

契約期間

大日本住友製薬
㈱(当社)

ファイザー社

イギリス、パナマ

アムロジピンに関する技術

一定料率のロイヤルティ

2008.10~2014.8
以後は無償で販売できる

 

 

技術導出

契約会社名

相手先

国名

技術の内容

対価の支払

契約期間

大日本住友製薬
㈱(当社)

武田薬品工業㈱

日本

ルラシドンに関する技術

契約一時金
一定料率のロイヤルティ

2011.3~
販売終了まで

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、自社研究、技術導入、ベンチャーやアカデミアとの共同研究等あらゆる方法で、最先端の技術を取り入れて、研究開発活動に取り組んでおり、精神神経領域とがん領域を研究重点領域とし、革新的な医薬品の創製を目指しております。さらに、治療薬のない疾患分野や再生医療・細胞医薬といった新規分野において、世界に先駆けて事業展開を図ってまいります。

研究初期段階では、ゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等に関する自社保有の先端技術等の活用により、研究効率の向上に取り組むとともに、iPS細胞等の最先端サイエンスを創薬や再生医療・細胞医薬に応用する取組を進めております。また、京都大学iPS細胞研究所と難治性希少疾患の治療薬の創製を目指した共同研究を推進中であり、産官学連携プロジェクトである「再生医療実現拠点ネットワークプログラム」にも積極的に参加しております。

研究後期および開発段階では、研究重点領域および新規分野を中心に他の領域も含めて、グローバルな視点からグループ全体でのポートフォリオの最適化を行っております。加えて、製品価値の最大化を目指した剤形展開等の製品ライフサイクルマネジメントにも積極的に取り組んでおります。

当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりであります。

(1) 精神神経領域

①「アプティオム」

米国において、部分てんかん発作の単剤療法を適応とした追加承認を昨年8月に取得いたしました。

② ルラシドン塩酸塩

日本において、統合失調症を対象とした新規第Ⅲ相臨床試験を開始いたしました。また、中国において、統合失調症を対象とした承認申請を昨年12月に行いました。

③ dasotraline(開発コード:SEP-225289)

米国において、注意欠如・多動症(ADHD)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を進めておりますが、これに加えて、過食性障害(BED)を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を開始いたしました。

 

(2) がん領域

① napabucasin

米国等において、胃または食道胃接合部腺がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験を進めておりますが、これに加えて、米国において、結腸直腸がんを対象とした併用での国際共同第Ⅲ相臨床試験を開始いたしました。また、日本において、悪性胸膜中皮腫を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の第Ⅱ相段階を開始いたしました。

② amcasertib(開発コード:BBI503)

米国において、卵巣がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。

 ③ DSP-7888

日本において、骨髄異形成症候群(MDS)を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の第Ⅱ相段階を開始いたしました。

 

(3) 再生医療・細胞医薬

① 再生医療

当社と株式会社ヘリオスとの合弁会社である株式会社サイレジェンが、商用を視野に入れた網膜色素上皮細胞の製法検討を開始いたしました。また、当社において、新規細胞生産設備の設置に向けた準備を進めております。

② 細胞医薬

米国において、サンバイオ社と共同でSB623について慢性期脳梗塞を対象とした後期第Ⅱ相臨床試験を開始いたしました。

 

 

当社グループは、開発品の導入および研究提携にも積極的に取り組んでおります。当連結会計年度においては、国内の研究機関および研究者を対象に、当社の創薬研究ニーズと合致するアイデアを募集する公募型オープンイノベーション活動「PRISM」を開始いたしました。

 

当連結会計年度の研究開発費の総額は820億33百万円であります。

なお、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分しておりません。

 

当社グループにおける開発状況は以下のとおりであります。

   (平成28年5月11日現在)

開発段階

製品/コード名
剤形

一般名

予定適応症

国/地域

申請中

ブロナンセリン
経口剤

ブロナンセリン

統合失調症

中国

アプティオム
経口剤

eslicarbazepine acetate

(新効能)てんかん(単剤)

カナダ

SM-13496
経口剤

ルラシドン塩酸塩

統合失調症

中国

第Ⅲ相

SM-13496
経口剤

ルラシドン塩酸塩

統合失調症 

日本

双極Ⅰ型障害うつ

双極性障害メンテナンス

BBI608
経口剤

napabucasin

結腸直腸がん(単剤) (注)1

米国・
カナダ・
日本等

胃または食道胃接合部腺がん
(併用)

米国・
カナダ・
日本等

結腸直腸がん(併用)

米国

SEP-225289
経口剤

dasotraline

成人注意欠如・多動症(ADHD)

米国

SUN-101
吸入剤

グリコピロニウム臭化物

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

米国

ロナセン
経口剤

ブロナンセリン

(小児用量)統合失調症

日本

ロナセン
経皮吸収型製剤

(新剤形:経皮吸収型製剤)統合失調症

トレリーフ
経口剤

ゾニサミド

(新効能)レビー小体型認知症(DLB)に伴うパーキンソニズム

日本

第Ⅱ/Ⅲ相

EPI-743
経口剤

バチキノン

リー脳症 (注)2

日本

SEP-225289
経口剤

dasotraline

小児注意欠如・多動症(ADHD)

米国

過食性障害(BED)

第Ⅱ相

BBI608
経口剤

napabucasin

結腸直腸がん(併用)

米国・
カナダ

DSP-1747
経口剤

obeticholic acid

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

日本

DSP-6952
経口剤

未定

便秘型IBS、慢性便秘

日本

BBI503
経口剤

amcasertib

腎細胞がん、尿路上皮がん(単剤)

カナダ

肝細胞がん、胆管がん(単剤)

消化管間質腫瘍(単剤)

卵巣がん(単剤)

米国

 

(注) 1  平成26年5月に新規患者登録および登録済みの患者への投与を中止

2 第Ⅱ/Ⅲ相試験終了、今後の開発方針について検討中

 

開発段階

製品/コード名
剤形

一般名

予定適応症

国/地域

第Ⅱ相

SB623
注射剤

未定

慢性期脳梗塞

米国

EPI-589
経口剤

未定

パーキンソン病

米国

筋萎縮性側索硬化症(ALS)

米国

第Ⅰ/Ⅱ相

BBI608
経口剤

napabucasin

固形がん(併用)

米国・
カナダ

悪性胸膜中皮腫(併用)

日本

肝細胞がん(併用)

米国

膠芽腫(併用)

カナダ

固形がん(併用)

米国

BBI503
経口剤

amcasertib

固形がん(単剤)

米国・
カナダ

肝細胞がん(併用)

米国

固形がん(併用)

米国・
カナダ

DSP-7888
注射剤

未定

骨髄異形成症候群

日本

小児悪性神経膠腫

WT4869
注射剤

未定

骨髄異形成症候群

日本

第Ⅰ相

WT4869
注射剤

未定

固形がん

日本

WT2725
注射剤

未定

固形がん、血液がん

米国

固形がん

日本

DSP-2230
経口剤

未定

神経障害性疼痛

英国・米国日本

SEP-363856
経口剤

未定

統合失調症

米国

BBI608
経口剤

napabucasin

消化器がん(併用)

米国・
カナダ

膵がん(併用)

米国

血液がん(単剤・併用)

肝細胞がん(併用)

日本

結腸直腸がん(併用)

DSP-3748
経口剤

未定

統合失調症に伴う認知機能障害

米国

BBI503
経口剤

amcasertib

固形がん(単剤)、肝細胞がん(併用)

日本

BBI608+BBI503
経口剤

固形がん(併用)

米国

DSP-7888
注射剤

未定

固形がん、血液がん

米国

DSP-1200
経口剤

未定

治療抵抗性うつ

米国

 

 

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 財政状態

資産については、流動資産は、有価証券は減少しましたが、現金及び預金や繰延税金資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ198億85百万円増加しました。固定資産は、投資有価証券は増加しましたが、減価償却や為替換算の影響により大きく減少したため、前連結会計年度末に比べ237億53百万円減少しました。これらの結果、総資産は前連結会計年度末に比べ38億68百万円減少し、7,077億15百万円となりました。

負債については、有利子負債(社債及び借入金)は減少しましたが、未払法人税等の増加や北米での売上増加による売上割戻引当金の増加等により、前連結会計年度末に比べ6億80百万円増加し、2,612億42百万円となりました。

純資産については、利益剰余金やその他有価証券評価差額金は増加しましたが、為替換算調整勘定が大きく減少したことから、前連結会計年度末に比べ45億48百万円減少し、4,464億72百万円となりました。

なお、当連結会計年度末の自己資本比率は63.1%となりました。

 

(2) 経営成績

「1 業績等の概要 (1) 業績」をご参照下さい。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」をご参照下さい。