(1) 業績
当連結会計年度のわが国経済は、金融緩和、経済政策の効果発現等による株価上昇や円安の影響を受けて、景気は緩やかな回復基調で推移しました。世界経済においては、米国は雇用動向等に不透明感が残るものの緩やかな景気回復基調にあり、中国では景気は一部に弱めの動きもみられるものの緩やかな拡大傾向が続いております。また、欧州地域では財政危機に端を発した景気低迷からの持ち直しの動きがみられる状況にあります。
医薬品業界では、新薬創出の難易度が増しているなか、開発コストが増大していることに加え、世界的に医療費抑制策が進み、後発医薬品の使用促進の動きが強まっております。さらに、承認審査がより厳格化されるなど、厳しい事業環境が続くなか、再生医療技術の実用化等の新しい事業領域への取組が活発化しております。
このような状況のもと、当社グループは、国内において、高血圧症治療剤「アイミクス」および「アバプロ」、非定型抗精神病薬「ロナセン」(一般名:ブロナンセリン)ならびにパーキンソン病治療剤「トレリーフ」の4製品を戦略品として位置付け、一層の販売拡大に努めるとともに、ビグアナイド系経口血糖降下剤「メトグルコ」その他の製品の極大化を図るべく情報提供活動に注力いたしました。
海外では、米国子会社のサノビオン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「サノビオン社」)が、昨年6月に双極Ⅰ型障害うつに対する適応追加の承認を取得した非定型抗精神病薬「ラツーダ」(一般名:ルラシドン塩酸塩)の市場拡大に向け、経営資源を集中し事業活動を進めました。なお、「ラツーダ」については、本年3月に、欧州では導出先である武田薬品工業株式会社が販売許可を取得するとともに、オーストラリアでは当社が販売許可を取得いたしました。
また、サノビオン社では、昨年11月に抗てんかん剤「アプティオム」の米国での承認を取得いたしました。
さらに、ボストン・バイオメディカル・インク(以下「BBI社」)において開発を進めております固形がん治療剤BBI608等の米国での上市に向け、昨年10月に米国における抗がん剤の販売会社としてボストン・バイオメディカル・ファーマ・インク(以下「BBP社」)を設立しました。
当連結会計年度の業績は、国内では、消化管運動機能改善剤「ガスモチン」の特許権の存続期間満了による販売減少等を受け、減収となりましたが、米国では、短時間作用型β作動薬「ゾペネックス」の独占販売期間の満了による売上減少があったものの、「ラツーダ」が大きく伸長したことに加え、円安の影響もあり、大幅な増収となった結果、連結売上高は3,876億93百万円(前連結会計年度比11.5%増)となりました。販売費及び一般管理費は、引き続き経費の削減に努めましたが、円安の影響により増加いたしました。しかしながら、売上高が大幅に増加した結果、営業利益は421億42百万円(前連結会計年度比68.3%増)、経常利益は406億31百万円(前連結会計年度比65.8%増)となりました。また、投資有価証券売却益および米国における条件付取得対価に係る公正価値の変動額を特別利益として計上した一方、減損損失および事業構造改善費用を特別損失に計上した結果、当期純利益は200億60百万円(前連結会計年度比99.7%増)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
①日本
「アイミクス」をはじめとする戦略品4製品に加えて、「メトグルコ」が大きく伸長しましたが、特許権の存続期間満了等による既存品の売上減少、生産受託の減少等を補うには至らず、売上高は1,718億98百万円(前連結会計年度比1.5%減)となりました。利益面では、経費の削減努力により研究開発費を除く販売費及び一般管理費が減少したため、セグメント利益は608億27百万円(前連結会計年度比0.3%増)となりました。
②北米
独占販売期間が満了した「ゾペネックス」の売上が大きく減少しましたが、「ラツーダ」の売上がさらに増加したことに加え、円安の影響もあり、売上高は1,452億71百万円(前連結会計年度比25.4%増)となりました。研究開発費を除く販売費及び一般管理費は、事業構造改善に伴う人件費の削減効果や一部の特許権の減価償却終了により現地通貨ベースでは費用は減少しましたが、円安により円換算額では増加しました。しかしながら、売上の伸長の影響が大きく、セグメント利益は338億76百万円(前連結会計年度比125.2%増)と大幅な増益となりました。
③中国
引き続きカルバペネム系抗生物質製剤「メロペン」の売上が増加したほか、高血圧症・狭心症・不整脈治療剤「アルマール」等も順調に伸長いたしました。さらに円安の影響もあり、売上高は119億28百万円(前連結会計年度比56.1%増)、セグメント利益は31億82百万円(前連結会計年度比73.8%増)となりました。
④海外その他
「メロペン」の海外主要国における特許権の存続期間満了により輸出が減少しましたが、「ラツーダ」の欧州での販売許可取得に伴う工業所有権収入等が発生したことにより、売上高は167億12百万円(前連結会計年度比80.3%増)、セグメント利益は113億58百万円(前連結会計年度比161.6%増)となりました。
上記報告セグメントのほか、当社グループは、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品、診断薬等の販売を行っており、それらの事業の売上高は418億83百万円(前連結会計年度比3.4%増)、セグメント利益は26億73百万円(前連結会計年度比10.8%減)となりました。
(2) キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が増加したこと等により、前連結会計年度と比較して28百万円増加し、499億43百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、当社大阪研究所における新化学研究棟の新設に伴う有形固定資産の取得による支出がありましたが、前連結会計年度は連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による多額の支出があったことから、前連結会計年度と比較して288億11百万円支出が減少し、262億8百万円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は借入金の返済や配当金の支払等がありましたが、当連結会計年度はこれらに加え普通社債の一部を償還したため、前連結会計年度と比較して69億42百万円支出が増加し、271億64百万円の支出となりました。
なお、上記に加えて在外子会社の決算期を変更したことによる影響額としてマイナスの20億35百万円、現金および現金同等物の為替換算による影響額としてプラスの79億50百万円を加えた結果、当連結会計年度末における現金および現金同等物は739億19百万円となり、前連結会計年度末と比べて24億85百万円増加しました。
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 157,879 | △6.0 |
北米 | 150,223 | 42.0 |
中国 | 15,040 | 65.7 |
海外その他 | 8,326 | 10.8 |
その他 | 174 | △10.9 |
合計 | 331,643 | 14.1 |
(注) 1 金額は販売価格により換算したものであります。
2 セグメント間取引については相殺消去しております。
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 2,251 | △3.1 |
北米 | 1,723 | 9.1 |
中国 | ― | ― |
海外その他 | 9 | ― |
その他 | 48,652 | 2.8 |
合計 | 52,636 | 2.7 |
(注) 1 金額は仕入価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 受注状況
当社グループの生産は見込生産で、受注生産は行っておりません。
(4) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 金額(百万円) | 前期比(%) |
日本 | 171,898 | △1.5 |
北米 | 145,271 | 25.4 |
中国 | 11,928 | 56.1 |
海外その他 | 16,712 | 80.3 |
その他 | 41,883 | 3.4 |
合計 | 387,693 | 11.5 |
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 | 前連結会計年度 | 当連結会計年度 | ||
金額(百万円) | 割合(%) | 金額(百万円) | 割合(%) | |
マッケソン社(米国) | 43,479 | 12.5 | 48,061 | 12.4 |
カーディナル社(米国) | 32,449 | 9.3 | 41,030 | 10.6 |
アルフレッサ株式会社 | 36,297 | 10.4 | 37,536 | 9.7 |
株式会社メディセオ | 36,297 | 10.4 | 36,653 | 9.5 |
3 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社は、人々の健康で豊かな生活のために、研究開発を基盤とした新たな価値の創造により、広く社会に貢献することを企業理念としております。この理念の実現に向けて、平成25年に「グローバルレベルで戦える研究開発型企業」および「最先端の技術で医療に貢献」とのビジョンを設定し、そのビジョンの実現に向けて平成25年度から平成29年度までの5カ年の第三期中期経営計画を策定いたしました。第三期中期経営計画では、以下の5つの基本方針を掲げ、イノベーションに挑戦してまいります。第三期中期経営計画最終年度である平成29年度の経営目標として、売上高4,500億円、営業利益800億円、EBITDA(支払利息、法人税等、減価償却費および特別損益を控除する前の利益)1,100億円を目指してまいります。なお、抗がん剤として開発中のBBI608の結腸直腸がん(単剤)を対象とした第Ⅲ相国際共同治験において、新規の患者登録および登録済みの患者さんへの投与が平成26年5月に中止されることとなったことに伴い、本経営目標について、見直しの要否を現在検討中であります。
(1) 第三期中期経営計画の基本方針
ⅰ.強固な国内収益基盤の確立
ⅱ.海外事業の収益最大化とさらなる事業拡大
ⅲ.グローバルレベルのパイプライン充実
ⅳ.CSRと継続的経営効率の追求
ⅴ.挑戦的風土の確立と人材育成
(2) 第三期中期経営計画の戦略と事業活動
第三期中期経営計画では、その経営目標を達成し、ビジョンを実現するため、「製品戦略」、「領域戦略」、「地域戦略」、「研究開発戦略」、「投資戦略」および「財務戦略」の6つの戦略ならびに「事業基盤の強化」および「CSR経営の推進」を掲げ、事業活動を進めております。
第三期中期経営計画の前半、特に平成26年度は、日本での薬価改定、北米での催眠鎮静剤「ルネスタ」の独占販売期間の満了もあり、利益面では厳しい時期と見込んでいますが、国内外における営業活動を一段と強化するとともに、グループを挙げて経費節減に取り組み、一方では、中期的展望に立った各戦略の推進を加速することによって、事業構造改革への道を切り拓き、今後の発展を確固たるものにしていく所存です。
具体的には、日本では、「アイミクス」の高成長のもと、「アバプロ」および高血圧症・狭心症治療薬「アムロジン」を合わせた降圧薬3剤のさらなる伸長を目指します。また、精神神経領域の「ロナセン」および「トレリーフ」、糖尿病領域の「メトグルコ」および「シュアポスト」等の成長品目に経営資源を集中投入して事業規模の維持を図ります。
北米では、昨年6月に双極Ⅰ型障害うつの効能追加を取得した「ラツーダ」のブロックバスターへの成長に向けて、売上拡大の加速を図るとともに、本年4月に上市した「アプティオム」の早期売上拡大により、本年4月に独占販売期間が満了した「ルネスタ」等の既存製品の売上減少の影響を最小限に留めます。
中国では、「メロペン」を中心に売上および利益の拡大を図ってまいります。
欧州では、「ラツーダ」の英国での販売体制の立ち上げと円滑な始動を進めてまいります。東南アジアおよびオセアニア地域においても、ルラシドン塩酸塩を足がかりとした事業参入を目指してまいります。
第三期中期経営計画における研究開発については、重点領域である精神神経領域およびがん領域に、また、希少疾患等のスペシャリティ領域および細胞医薬・再生医療等の新規事業分野に積極的に経営資源を投入してまいります。
精神神経領域では、グローバル開発として、「ポスト・ラツーダ」の選定と積極的な投資、国内開発として、「ラツーダ」の開発に積極的に取り組みます。また、治療満足度の低い症状の改善や、既存薬では充分な効果が得られていない患者さんの治療に焦点を当て、統合失調症、うつ病、アルツハイマー病等の治療薬の研究開発を引き続き推進いたします。
がん領域では、がん幹細胞を標的としたファースト・イン・クラスの抗がん剤BBI608の北米での開発成功に向けて最大限の注力を行います。日本では、臨床開発体制を強化・集約した効果を最大限に活かし、開発スピードを加速します。さらに、BBI608に続く化合物の研究開発にも効率的に取り組み、画期的な製品の継続的創出を目指します。
スペシャリティ領域では、米国のエジソン・ファーマシューティカルズ・インク(以下「エジソン社」)から導入したミトコンドリア病治療剤EPI-743およびEPI-589の開発を推進するとともに、同社との共同研究を推進するなど、難治性疾患治療の研究開発に取り組んでまいります。また、米国のインターセプト・ファーマシューティカルズ・インク(以下「インターセプトファーマシューティカルズ社」)より導入した肝臓疾患治療剤DSP-1747について、現在治療薬のない非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療薬としての開発に積極的に取り組んでまいります。
新規事業分野の開拓も加速していきます。細胞医薬では、米国のサンバイオ・インクとの間でライセンス導入に関するオプション契約を締結している脳梗塞治療剤SB623の第三期中期経営計画期間中の事業化に向けて積極的に取り組み、再生医療では、眼疾患領域においてiPS細胞を用いた世界初の事業化を目指し、株式会社ヘリオスとの共同開発を推進するなど、その取組を強化していきます。ワクチン事業についても、独自性の高い先端技術を通じて事業基盤の構築を進めてまいります。
当社グループは、CSR経営の推進と事業基盤の強化を最重要の経営課題と考えております。CSR経営の推進については、企業理念・経営理念・行動宣言のさらなる浸透、とりわけ高い企業倫理の確立および事業経営の透明性の確保、グローバルでのコーポレートガバナンスの強化、国内外での社会貢献活動の推進、社員活力の向上および多様なステークホルダーとのコミュニケーションの推進を行ってまいります。事業基盤の強化については、事業環境の変化に機動的に対応できる強固な事業運営体制を早急に確立するため、人件費・一般経費の合理化、資産効率の向上、組織の簡素化、拠点再配置の推進等により経営効率の追求を進めております。これに加え、新たな挑戦が奨励される強い企業文化を確立することで、筋肉質な企業体質への転換を図ってまいります。
(3) 株主還元と新規投資
当社は、企業価値と株主価値の持続的かつ一体的な向上を基本方針としており、株主への還元については、安定的な配当に加えて、業績向上に連動した増配を行ってまいります。
当社グループは、第三期中期経営計画の5年間で2,400億円の営業キャッシュ・フローを見込んでおりますが、これに加え、必要に応じてレバレッジの活用等によりキャッシュを確保し、製品および開発品の導入ならびに国内事業、北米事業、新規事業、欧州事業等への新規投資を積極的に進めてまいります。
当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 新製品の研究開発に関わるリスク
当社グループは独創性の高い国際的に通用する有用な新製品の開発に取り組んでおります。開発パイプラインの充実と早期の上市を目指しておりますが、開発中の品目すべてが今後順調に進み発売に至るとは限らず、途中で開発を断念しなければならない事態になる場合も予想されます。このような場合、開発品によっては経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 副作用問題について
医薬品は開発段階において充分に安全性の試験を実施し、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を受けて承認されておりますが、市販後に新たな副作用が見つかることも少なくありません。市販後に予期せぬ副作用が発生した場合に、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 医療制度改革について
国内においては、急速に進展する少子高齢化等により医療保険財政が悪化する中、医療費抑制策が図られ、さらなる医療制度改革の論議が続けられております。薬価改定を含む医療制度改革はその方向性によっては当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、海外においても医薬品は各種の規制を受けており、行政施策の動向によっては、重要な影響を受ける可能性があります。
(4) 製品の売上に関わるリスク
当社グループが販売する医薬品に関して、同領域の他社製品との競合や特許満了等による後発品の上市等により、当該製品の売上高の減少に繋がる要因が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 知的財産権に関わるリスク
当社グループは研究開発において種々の知的財産権を使用しております。これらは当社グループ所有のもの、または適法に使用許諾を受けたものとの認識のうえで使用しておりますが、第三者の知的財産権を侵害する可能性がないとは言えません。知的財産権をめぐっての係争が発生した場合には当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 提携解消について
当社グループは仕入商品の販売、合弁事業、共同販売、開発品の導入または導出、共同研究等さまざまな形で他社と提携を行っております。何らかの事情によりこれらの提携関係を解消することになった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(7) 主要な事業活動の前提となる事項について
当社グループの主な事業は医療用医薬品事業であり、国内においては、薬事法その他の薬事に関する法令に基づき、その研究開発および製造販売等を行うにあたり、「第一種医薬品製造販売業」、「第二種医薬品製造販売業」(いずれも有効期間5年)等の許可等を取得しております。また、海外においても医療用医薬品事業を行うにあたっては、当該国の薬事関連法規等の規制を受け、必要に応じて許可等を取得しております。
これらの許可等については、各法令で定める手続きを適切に実施しなければ効力を失います。また各法令に違反した場合、許可等の取消し、または期間を定めてその業務の全部もしくは一部の停止等を命ぜられることがある旨が定められております。当社グループは、現時点において、許可等の取消し等の事由となる事実はないものと認識しておりますが、将来、当該許可等の取消し等を命ぜられた場合には、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(8) 訴訟に関わるリスク
当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(9) 工場の閉鎖または操業停止に関わるリスク
当社グループの工場が、技術上の問題、使用原材料の供給停止、火災、地震、その他の災害等により閉鎖または操業停止となり、製品の供給が遅滞もしくは休止した場合、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(10) 金融市況および為替変動による影響について
株式市況の低迷によっては保有する株式の評価損や売却損が生じ、金利動向によっては借入金等の支払利息が増加するほか、金融市況の悪化によっては退職給付債務が増加するなど、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、為替相場の変動によっては、輸出入取引および連結子会社業績等の円換算において、重要な影響を受ける可能性があります。
(11) 固定資産の減損の影響について
当社グループは、事業用の資産やのれん等、さまざまな有形・無形の固定資産を保有しております。将来、大幅な業績の悪化や価値の低下等があった場合、減損処理の必要が生じ、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(12) 親会社との取引について
当社と親会社である住友化学株式会社との間で、大阪研究所、愛媛工場および大分工場の土地賃借、これらの事業所等で使用する用役や主に原薬を製造する際に使用する原料の購入契約を締結しております。当該契約等は、一般的な市場価格を参考に双方協議のうえ合理的に価格が決定され、当事者からの申し出がない限り1年ごとに自動更新されるものであります。この他、親会社から出向者の受入を行っており、また、資金効率向上等の観点から親会社への短期貸付を実施しております。
今後も当該取引等を継続していく方針でありますが、同社との契約・取引内容等に変化が生じた場合には、当社グループの経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(13) 海外事業展開に関するリスク
当社グループは、北米、中国を中心にグローバルな事業活動を展開しておりますが、各国の規制・制度変更や外交関係の悪化、政情不安等のリスクが内在しており、このようなリスクに直面した場合、当社グループの事業計画が達成できず、経営成績および財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、上記以外にもさまざまなリスクがあり、ここに記載されたものが当社グループのすべてのリスクではありません。
(1) 技術導入
契約会社名 | 相手先 | 国名 | 技術の内容 | 対価の支払 | 契約期間 |
大日本住友製薬 | セルヴィエ社 | フランス | グリクラジドに関する技術 | 契約一時金 | 1974.3~1999.5 |
大日本住友製薬 | アルミラル社 | スペイン | エバスチンに関する技術 | 一定料率のロイヤルティ | 1988.1~2012.12 |
大日本住友製薬 | メイン・ファーマ社 | オーストラリア | 硫酸モルヒネのポリマーコート徐放錠を含有した硬質ゼラチンカプセルに関する技術 | 契約一時金 | 1992.2~ |
大日本住友製薬 | ワーナーチルコット社 | アメリカ | エチドロン酸 二ナトリウムに関する技術 | 一定料率のロイヤルティ | 1989.1~2000.12 |
大日本住友製薬㈱(当社) | ファイザー社 | イギリス、パナマ | アムロジピンに関する技術 | 一定料率のロイヤルティ | 2008.10~2014.8 |
大日本住友製薬 | グラクソ・スミスクライン社 | イギリス | 新種のナマルバ細胞を使用するインターフェロンに関する技術 | 契約一時金 | 1996.5~ |
大日本住友製薬 | ギリアド社 | アメリカ | アムホテリシンBに関する技術 | 契約一時金 | 1996.9~ |
大日本住友製薬 | シャイアー社 | アメリカ | アガルシダーゼアルファに関する技術 | 契約一時金 | 1998.7~ |
大日本住友製薬 | メルク・サンテ社 | フランス | グルコファージに関する技術 | 契約一時金 | 2003.3~ |
大日本住友製薬 | ノボ ノルディスク社 | デンマーク | レパグリニドに関する技術 | 契約一時金 | 2004.3~ |
大日本住友製薬㈱(当社) | ブリストル・マイヤーズ㈱ | 日本 | イルベサルタンに関する技術 | 契約一時金 | 2006.7~ |
大日本住友製薬㈱(当社) | ニューロクライン社 | アメリカ | インディプロンに関する技術 | 契約一時金 | 2007.10~ |
大日本住友製薬㈱(当社) | インターセプト ファーマシューティカルズ社 | アメリカ | ファルネソイドⅩ受容体作動薬に関する技術 | 契約一時金 | 2011.3~ |
大日本住友製薬㈱(当社) | エジソン社 | アメリカ | EPI-743及びEPI-589に関する技術 | 契約一時金 | 2013.3~ |
サノビオン社 | ビアル・ポルテラ・アンド・シーエー社 | ポルトガル | エスリカルバゼピンに関する技術 | 契約一時金 | 2007.12~ |
サノビオン社 | タケダ社 | ドイツ | シクレソニドに関する技術 | 契約一時金 | 2008.1~ |
(2) 技術導出
契約会社名 | 相手先 | 国名 | 技術の内容 | 対価の受取 | 契約期間 |
大日本住友製薬 | エーザイ㈱ | 日本 | ゾニサミドに関する技術 | 契約一時金 | 1997.10~ |
大日本住友製薬 | スニーシス社 | アメリカ | キノロン系抗癌剤に関する技術 | 契約一時金 | 2003.10~ |
大日本住友製薬 | エーザイ㈱ | 日本 | ラニレスタットに関する技術 | 契約一時金 | 2005.9~ |
大日本住友製薬 | アストラゼネカ社 | イギリス | カルバペネム系抗生物質メロペネムに関する技術 | 契約一時金 | 1990.12~ |
大日本住友製薬 | セルジーン社 | アメリカ | 塩酸アムルビシンに関する技術 | 契約一時金 | 2005.6~ |
大日本住友製薬 | 武田薬品工業㈱ | 日本 | ルラシドンに関する技術 | 契約一時金 | 2011.3~ |
サノビオン社 | シェリング・プラウ社 | スイス | デスロラタジンに関する技術 | 契約一時金 | 1997.12~ |
サノビオン社 | サノフィ・アベンティス社 | アメリカ | フェキソフェナジン塩酸塩に関する技術 | 契約一時金 | 1999.8~ |
サノビオン社 | エーザイ㈱ | 日本 | エスゾピクロンに関する技術 | 契約一時金 | 2007.7~ |
(3) 販売契約等
契約会社名 | 相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期間 |
大日本住友製薬 ㈱(当社) | ヤンセンファーマ㈱ | 日本 | ハロマンスに関する販売提携 | 2002.7~ |
大日本住友製薬 | アボット | 日本 | リズミックに関する販売提携 | 2002.12~2012.11 |
大日本住友製薬 ㈱(当社) | グラクソ・スミスクライン㈱ | 日本 | パキシルCRの共同販促 | 2012.4~ 相手方と合意した期間の満了まで |
大日本住友製薬㈱(当社) | 塩野義製薬㈱ | 日本 | アイミクス配合剤に関する並行販売 | 2012.6~ |
DSファーマアニマルヘルス㈱ | 日本ヒルズ・コルゲート㈱ | 日本 | サイエンス・ダイエットに関する販売提携 | 2011.1~2013.12 |
DSファーマアニマルヘルス㈱ | 日本ヒルズ・コルゲート㈱ | 日本 | プリスクリプション・ダイエットに関する販売提携 | 2011.1~2013.12 |
以下の契約については、当連結会計年度において解約しました。
技術導入
契約会社名 | 相手先 | 国名 | 技術の内容 | 対価の支払 | 契約期間 |
大日本住友製薬㈱(当社) | 武田薬品工業㈱ | 日本 | セフタロリン・フォサミルに関する技術 | 契約一時金 | 2011.3~ 発売から10年間又は特許満了日の長い方 |
販売契約等
契約会社名 | 相手先 | 国名 | 契約内容 | 契約期間 |
大日本住友製薬㈱(当社) | ㈱三和化学 | 日本 | セイブルの共同販促 | 2004.12~2015.12 |
当社グループは、アンメット・メディカル・ニーズの高い精神神経領域とがん領域を重点領域とし、革新的な医薬品の創製を目指しており、世界に先駆ける分野や先端的技術領域での事業展開を図るべく自社研究、技術導入、ベンチャーやアカデミアとの共同研究等あらゆる手法を取り入れております。
研究初期段階では、ゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等自社保有の先端技術等の活用により、研究効率の向上に取り組むとともに、iPS細胞等の最先端サイエンスを創薬に応用する取組を進めております。また、京都大学iPS細胞研究所と難治性希少疾患の治療薬の創製を目指した共同研究を推進中であり、産官学連携プロジェクトである「再生医療実現拠点ネットワークプログラム」にも積極的に参加しております。
研究後期および開発段階では、重点領域を中心に他の領域も含めて、グローバルな視点からグループ全体でのポートフォリオの最適化を行っております。加えて、製品価値の最大化を目指した剤形展開等の製品ライフサイクルマネジメントにも積極的に取り組んでおります。
当連結会計年度における主な開発の進捗状況は、次のとおりであります。
(1) 精神神経領域
① グローバル戦略品である非定型抗精神病薬ルラシドン塩酸塩について、次の進展がありました。
・米国において昨年6月に、カナダにおいて本年3月に、双極Ⅰ型障害うつの効能追加の承認をそれぞれ取得いたしました。
・欧州において、提携先の武田薬品工業株式会社が、中央承認審査方式による統合失調症を適応症とした販売許可を本年3月に取得いたしました。この結果を受け、各国の薬事規制上の手続きを経て、順次発売される予定です。なお、スイスにおいては、同社の現地子会社が、統合失調症を適応症とした販売許可を昨年8月に取得いたしました。
・日本において、双極Ⅰ型障害うつおよび双極性障害メンテナンスを対象にした第Ⅲ相臨床試験を昨年9月に開始いたしました。
・中国において、統合失調症を対象にした第Ⅲ相臨床試験を昨年7月に開始いたしました。
・オーストラリアにおいて、当社が、統合失調症を適応症とした販売許可を本年3月に取得し、また台湾においては、現地提携会社が、統合失調症を適応症とした承認申請を昨年10月に行いました。
② 「アプティオム」について、米国において昨年11月に承認を取得いたしました。また、カナダにおいて昨年6月に承認申請を行いました。
③ 非定型抗精神病薬ブロナンセリンについて、 中国において昨年9月に承認申請を行いました。
(2) がん領域
① がん幹細胞への抗腫瘍効果を目指して創製されたBBI608について、次の進展がありました。
・米国において、胃がん(併用)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を本年3月に開始いたしました。
・日本において、胃がん(併用)を対象とした第Ⅰ相臨床試験を昨年12月に開始いたしました。
・米国およびカナダにおいて、消化器がん(併用)を対象とした第Ⅰ相臨床試験を昨年11月に開始いたしました。
なお、BBI608の結腸直腸がん(単剤)を対象にした第Ⅲ相国際共同治験において、新規の患者登録および登録済みの患者さんへの投与が本年5月に中止されることとなりました。
② 固形がん・血液がん治療剤WT2725について、日本において、固形がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を昨年9月に開始いたしました。
(3) その他のスペシャリティ領域および新規分野
① ミトコンドリア病治療剤EPI-743について、日本において、リー脳症を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を昨年10月に開始いたしました。
② 細胞医薬・再生医療に関しましては、昨年12月に株式会社ヘリオスとの間で、加齢黄斑変性等の眼疾患を対象とした、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた細胞医薬品の日本における共同開発契約を締結いたしました。また、本年2月には、共同開発により製品化される細胞医薬品の製造や販売促進を行う合弁会社として、同社と株式会社サイレジェンを設立いたしました。
(4) その他の領域
① 「メロペン」について、日本における用量変更の承認を昨年12月に取得いたしました。
② 「メトグルコ」の小児用量の承認申請を昨年10月に行いました。
③ 速効型インスリン分泌促進剤「シュアポスト」について、効能・効果を2型糖尿病に変更する一部変更承認申請を昨年12月に行いました。
当社グループは、開発品の導入および共同研究にも積極的に取り組んでおります。本年1月にエジソン社とのミトコンドリア病治療剤に関するライセンス契約について、当社の権利を拡大すべく、両社で合意した適応症に関して、北米をテリトリーとした成人におけるEPI-589の独占的な開発・販売権を取得いたしました。同時に、同社と細胞内エネルギー代謝に関連する新薬候補化合物の創出を目的とした共同研究契約を締結いたしました。
上記医療用医薬品のほか、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品等の研究開発を実施しております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は698億4百万円であります。
なお、当社グループは、研究開発費をグローバルに管理しているため、セグメントに配分しておりません。
国内での開発状況は以下のとおりであります。
(平成26年5月8日現在)
開発段階 | 製品/コード名 | 一般名 | 予定適応症 |
申請中 | メトグルコ | メトホルミン塩酸塩 | (小児用量)2型糖尿病 |
シュアポスト | レパグリニド | (新効能)2型糖尿病:DPP-4阻害剤を含むすべての併用療法 | |
第Ⅲ相 | AS-3201 | ラニレスタット | 糖尿病合併症 |
SM-13496 | ルラシドン塩酸塩 | 統合失調症 | |
双極Ⅰ型障害うつ | |||
双極性障害メンテナンス | |||
BBI608 | 未定 | 結腸直腸がん(単剤) (注) | |
ロナセン | ブロナンセリン | (小児用量)統合失調症 | |
第Ⅱ/Ⅲ相 | EPI-743 | 未定 | リー脳症 |
第Ⅱ相 | DSP-1747 | obeticholic acid | 非アルコール性脂肪肝炎(NASH) |
DSP-6952 | 未定 | 便秘型IBS、慢性便秘 | |
ロナセン | ブロナンセリン | (新剤形:経皮吸収型製剤)統合失調症 | |
トレリーフ | ゾニサミド | (新効能)レビー小体型認知症(DLB)に伴うパーキンソニズム | |
第Ⅰ/Ⅱ相 | WT4869 | 未定 | 骨髄異形成症候群 |
第Ⅰ相 | DSP-3025 | 未定 | 気管支喘息、アレルギー性鼻炎 |
WT4869 | 未定 | 固形がん | |
WT2725 | 未定 | 固形がん | |
BBI608 | 未定 | 胃がん(併用) |
(注)BBI608の結腸直腸がん(単剤)を対象とした第Ⅲ相国際共同治験において、新規の患者登録および登録済みの患者さんへの投与が平成26年5月後半に中止されることとなりました。
また、海外での開発状況は以下のとおりであります。
(平成26年5月8日現在)
開発段階 | 製品/コード名 | 一般名 | 予定適応症 | 国/地域 |
承認/ | ラツーダ | ルラシドン塩酸塩 | 統合失調症 | オースト |
申請中 | アプティオム | エスリカルバゼピン酢酸塩 | てんかん(併用療法) | カナダ |
アムルビシン塩酸塩 | アムルビシン塩酸塩 | 小細胞肺がん | 中国 | |
ブロナンセリン | ブロナンセリン | 統合失調症 | 中国 | |
第Ⅲ相 | BBI608 | 未定 | 結腸直腸がん(単剤) (注) | 米国・ |
胃がん(併用) | 米国 | |||
SM-13496 | ルラシドン塩酸塩 | 統合失調症 | 中国 | |
ラツーダ | (新効能)双極性障害メンテナンス | 米国・ | ||
(新効能)大うつ(混合症状) | ||||
アプティオム | エスリカルバゼピン酢酸塩 | (新効能)てんかん(単剤治療) | 米国 | |
第Ⅱ相 | BBI608 | 未定 | 結腸直腸がん(併用) | 米国・ |
SUN-101 | グリコピロニウム臭化物 | 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 米国 | |
SEP-225289 | 未定 | 注意欠陥多動性障害(ADHD) | 米国 | |
第Ⅰ/Ⅱ相 | BBI608 | 未定 | 固形がん(併用) | 米国・ |
第Ⅰ相 | DSP-2230 | 未定 | 神経障害性疼痛 | 英国・ |
WT2725 | 未定 | 固形がん、血液がん | 米国 | |
BBI503 | 未定 | 固形がん(単剤) | 米国・ | |
SEP-363856 | 未定 | 統合失調症 | 米国 | |
BBI608 | 未定 | 消化器がん(併用) | 米国・ |
(注)BBI608の結腸直腸がん(単剤)を対象とした第Ⅲ相国際共同治験において、新規の患者登録および登録済みの患者さんへの投与が平成26年5月後半に中止されることとなりました。
(1) 財政状態
資産については、在外子会社の現金及び預金、受取手形及び売掛金やのれん等の無形固定資産が円安の影響等で大幅に増加いたしました。また、大阪研究所の新化学研究棟の建設に伴い有形固定資産が増加いたしました。これらの結果、総資産は前連結会計年度末に比べ518億13百万円増加し、6,590億32百万円となりました。
負債については、長期借入金の返済や普通社債の一部償還がありましたが、主として日本での課税所得の増加による未払法人税等の増加と米国における売上割戻引当金等の増加により、前連結会計年度末に比べ25億21百万円増加し、2,604億92百万円となりました。
純資産については、利益剰余金の増加と円安の影響により為替換算調整勘定が増加したことにより、前連結会計年度末に比べ492億92百万円増加し、3,985億40百万円となりました。
なお、当連結会計年度末の自己資本比率は60.5%となりました。
(2) 経営成績
「1 業績等の概要 (1) 業績」をご参照下さい。
(3) キャッシュ・フローの状況
「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フロー」をご参照下さい。