2017年の日本経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善などから緩やかな回復基調で推移しました。世界的にも、米国新政権の政策運営の不確実性や英国のEU離脱に向けた動き、不安定な国際情勢などの不安要素はあるものの、米国を中心に全般的には景気は回復傾向で推移しました。
当社の海外本社である電通イージス・ネットワークが2018年1月に発表した2017年(暦年)の世界の広告費成長率予測は3.1%、地域別では、日本が1.0%、ヨーロッパ、中東およびアフリカ(以下「EMEA」)が2.3%、米州(以下「Americas」)が3.1%、アジア太平洋(日本を除く。以下「APAC」)が4.6%となっています。
こうした環境下、当期(2017年1月1日~2017年12月31日)における当社グループの国内事業の業績は、第31回オリンピック競技大会(2016/リオデジャネイロ)など、前年の大型イベントの反動減もあり、売上総利益は3,619億2百万円(前期比0.4%減)と、わずかながら前期を下回りました。海外事業の売上総利益のオーガニック成長率(為替やM&Aの影響を除いた内部成長率)は、地域別では、EMEAが3.1%、Americasが△1.5%、APACが△0.6%となり、全体では0.4%となりましたが、M&Aの貢献などにより海外事業の売上総利益は、5,160億52百万円(同21.1%増)と大幅に増加しました。
この結果、当期の収益は9,288億41百万円(前期比10.8%増)、売上総利益は8,776億22百万円(同11.2%増)となりました。売上総利益のオーガニック成長の伸び悩みと日本における労働環境改革のための費用計上などにより、調整後営業利益は1,639億46百万円(同1.6%減)、営業利益は1,373億92百万円(同0.2%減)、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は1,078億74百万円(同4.5%減)となりました。アーンアウト債務・買収関連プットオプション再評価益が増加したことなどにより、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,054億78百万円(同26.3%増)となりました。
調整後営業利益は、営業利益から、買収に伴う無形資産の償却費、M&Aに伴う費用、被買収会社に帰属する株式報酬費用、ならびに減損、固定資産の売却損益などの一時的要因を排除したものであり、恒常的な事業の業績を測る利益指標です。
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、当期利益から、営業利益に係る調整項目、アーンアウト債務・買収関連プットオプション再評価損益、これらに係る税金相当・非支配持分損益相当などを排除したものであり、親会社所有者に帰属する恒常的な損益を測る指標です。
報告セグメントの収益実績
国内事業の売上総利益は3,619億2百万円(前期比0.4%減)、調整後営業利益は888億1百万円(同8.8%減)となりました。
海外事業の売上総利益は5,160億52百万円(前期比21.1%増)、調整後営業利益は751億46百万円(同8.8%増)となりました。
なお、当社単体の業績(日本基準。2017年1月1日~2017年12月31日)は、売上高は1兆5,615億28百万円(前期比2.4%減)、売上総利益は2,284億72百万円(同2.7%減)、営業利益は542億89百万円(同16.1%減)、経常利益は768億37百万円(同20.9%減)、当期純利益は635億56百万円(同30.9%減)となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、3,057億60百万円(前連結会計年度末2,424億10百万円)となりました。営業活動による収入および財務活動による収入が投資活動による支出を上回ったため、前連結会計年度末に比べ633億49百万円の増加となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果により得た資金は、1,415億57百万円(前連結会計年度1,435億85百万円の収入)となりました。主に税引前利益の計上によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果支出した資金は、855億31百万円(前連結会計年度1,561億61百万円の支出)となりました。主に子会社の取得による支出によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果により得た資金は、12億26百万円(前連結会計年度25億39百万円の収入)となりました。主に長期借入による収入が短期借入金の減少を上回ったことによるものです。
(のれんの償却)
日本基準の下ではのれんをその効果が発現すると合理的に見積もられる期間にわたり規則的に償却しておりましたが、IFRSでは移行日以降の償却を停止しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が前連結会計年度は333億4百万円減少、当連結会計年度は378億52百万円減少しております。
(資本性金融商品の処分に係る利得又は損失)
日本基準の下では資本性金融商品の処分に係る利得又は損失は収益または費用として計上しておりましたが、IFRSではその他の包括利益として認識しております。この影響により、IFRSでは日本基準に比べて、金融収益が前連結会計年度は263億76百万円減少、当連結会計年度は13億72百万円減少しております。
当連結会計年度におけるセグメントの販売実績(売上高)は次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
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国内事業 |
1,861,766 |
98.7 |
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海外事業 |
3,325,533 |
109.4 |
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計 |
5,187,300 |
105.3 |
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。
当社グループの国内事業においては労働環境改革を最優先課題とし、「仕事のやり方・働き方」の抜本的な見直しに全力を挙げて取り組んでおります。2017年度および2018年度の2ヶ年を改革期と位置付け、持続的成長を実現できる企業基盤の再構築を進めております。
同時に、当社グループにおいては国内外ともにデータやテクノロジーの活用等、デジタル化への対応の重要性がさらに高まっております。このような環境変化の中で、当社グループが顧客や社会から真に必要とされる価値を創り出すためのビジネス・トランスフォーメーション、すなわち事業のあり方を変革していくことも喫緊の課題であると認識しております。
国内を中心とした「労働環境改革」、当社グループにおける「ビジネス・トランスフォーメーション」について、具体的な課題と取組みは以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社は、労働基準法違反に対する判決を厳粛に受け止め、企業としての社会的責任を果たせなかったことを深く反省し、法令遵守の徹底、過重労働の撲滅、労働環境の改善に向けた抜本的な改革に取り組んでおります。
労働時間の短縮と業務品質の向上を両立させ、企業基盤における機能全体の構造改革を行うとともに、当社のビジネス・トランスフォーメーションと表裏一体となるべく、労働環境改革を推進してまいります。
特に、2017年における改革の柱として、「労務管理の徹底と見守りの強化」「業務棚卸しによるワークダイエット」「ワークスタイルのスマート化」を掲げ、多岐にわたる改善・改革施策に取り組みました。また、外部有識者から構成される労働環境改革に関する独立監督委員会を設置し、労働環境改革施策に関する助言、監督、および施策遂行を通じた改善実態の検証を実施しております。これらの活動によって、社員1人当たり総労働時間は2,031時間となり、基本計画で示した2017年目標の2,100時間を下回り、また2017年の1人当たりの有給休暇取得率も前年の56.0%から64.0%に改善する等の成果がありました。今後も当社はこの改革を着実に実行し、当社グループ全体で社員、取引先、株主・投資家そして社会全体から再び信頼を寄せられる企業グループとなることを目指してまいります。
当社グループの国内事業は、前年度に過去最高益を達成した反動や労働環境改革の影響等から、2017年度における国内事業の売上総利益および調整後営業利益ともに対前年比では減収・減益とはなったものの、過去2番目の売上総利益を達成いたしました。
当社は国内事業の持続的な成長に向け、競争力の強化に引き続き努めてまいります。特に、デジタルテクノロジーを中心とした技術革新に伴い、顧客企業、広告業界、生活者行動の全てが変化しております。顧客企業においては広告の投資対効果を重視する傾向にあり、当社グループもテクノロジーやデータに基づく統合的なプランニング手法を継続的に洗練していくことが必要であると考えております。具体的な取組みの一例としては、デジタル領域において、昨年度ローンチした統合プランニングフレームワーク「People Driven Marketing™」の機能をさらに進化させるため、当社内の体制再編による標準装備化を進めるとともに、より高い専門性を持つパートナーとの協働、提携を積極的に行っております。これらの機能の拡充、および積極的な外部連携や投資等を通じて、マーケティング・コミュニケーションの領域における競争力の一層の強化を目指してまいります。さらに、顧客企業の事業課題の高度化・複雑化も進む中で、顧客に内在する事業課題にまで踏み込んだソリューション提供が重要となっているため、顧客の経営や事業開発といったビジネスデザイン領域におけるサービスラインの拡張を進めております。当社は数千社にのぼる顧客に加え、メディア、プラットフォーマー等との多様な接点を有しております。これらとの連携を深め、当社と各々のケーパビリティをつなぎ合わせ、従来の事業領域に留まらない取組みに挑戦してまいります。当社グループは「顧客企業のビジネス・トランスフォーメーションを実現する最良のパートナー」へと進化すべく、各種施策を推進し、当社グループ自身のビジネス・トランスフォーメーションを実行していく所存です。
当社グループは、2013年3月のAegis Group plc(現在の電通イージス・ネットワーク社)買収により本格的なグローバル・ネットワークへと変貌を遂げ、その後も海外事業を積極的に推進しております。2017年度は、多くの顧客が従来のマーケティング活動を全面的に見直し、デジタル時代に対応したデータを駆使するマーケティングへと移行したことにより、新たなチャレンジに直面した1年でした。
これらの変化を先取りし、今後の成長の基盤として必要なリソースの獲得および競争力の強化に資する多数のM&Aを実施し、デジタル領域におけるケーパビリティとサービス品質の向上に努めております。その結果、2017年における新規ビジネスの純増額は、メディアにおいて過去最高額の52億ドルとなりました。今後もこのモメンタムを維持するとともに、データ領域への投資を継続していきます。特に、データマーケティング領域において、2016年度に買収したMerkle Group Inc.(マークル社)を中核として、マークル社が開発したデータプラットフォーム「M1」を当社グループ全体で活用できるようにグローバルに展開し、シナジーの創出とともに、より高い成長の実現に取り組んでおります。さらに、長期的な事業成長のために、オペレーションの標準化、迅速な意思決定と事業効率の向上に資する共通の企業インフラ構築やシェアードサービス確立を企図した投資を行っております。今後も、全世界において競争力を有するグローバル・ネットワークの整備、拡充に努め、海外においてもビジネス・トランスフォーメーションを進めてまいります。
最後に、グローバルでのCSR活動にも引き続き取り組んでいます。
当社グループは、2015年に策定した「電通グループ中期CSR計画2020」に基づき、環境保全をはじめとした4つの重点領域で、2020年をターゲットにした活動を推進しています。また世界の大手広告5グループと連携して「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals: SDGs)に取り組むキャンペーンである「Common Ground」でも、マラリアや結核の撲滅を目標に、NGOを支援する活動に取り組んでいます。また当期は現行の中期CSR計画のアップデートにも着手しました。重要なCSR課題の選定などについて、広く社員の意見を求め、当社グループが事業活動を通じてこれまで以上に社会的責任を果たすために、経営陣はもとより、社員が自らの仕事と社会の関係性を問い直す契機とする考えです。
2016年6月には、国連事務総長の呼びかけに応じて、世界の大手広告5グループと連携して「持続可能な開発目標」(SDGs)に取り組むことを宣言しました。「Common Ground」と呼んでいるこのキャンペーンは、ビジネスにおける競合関係を超えて、グローバルな社会課題にアプローチする画期的なイニシアチブとなっています。
個別活動の詳細については、「電通統合レポート」(http://www.dentsu.co.jp/csr)をご覧ください。
当社グループの経営成績、株価および財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
当社グループを含めた広告会社の業績は、市場変化や景気の影響を受けやすい傾向があります。市場変化や景気によって広告支出を増減させる広告主が多いためです。
当社グループは、サービス内容や事業を行う地域の多様化を進めるなど、景気の影響を受けにくい事業構造の形成に努力しております。しかし、国内マクロ経済の動向および広告支出額の大きい国内主要産業部門における事業環境の変化が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、海外景気の減速や為替変動等が、国内景気に悪影響を与える場合もあります。
2011年3月に発生した東日本大震災は、サプライチェーンの寸断、電力不足その他の事由により、日本経済に大きな悪影響を与えました。その後、国内の経済および事業環境は改善しましたが、将来において地震その他の大きな自然災害等が再び生じた場合には事業環境に悪影響を与える可能性があります。
また、当社は2013年3月に、英国の大手広告会社イージス社を買収しました。これにより当社グループの売上総利益に占める海外比率は大幅に増加し、2017年度では58.8%となりました。この結果、当社グループが事業を行う海外の主要な市場における経済環境や事業環境の悪化が、当社グループ全体の業績にさらに悪影響を与える可能性があります。
当社グループの事業は技術革新およびメディアの構造変化による影響を受けています。2017年日本の広告費(当社発行)によれば、インターネット広告費は1996年の調査開始以来、伸長を続けており、マス四媒体広告費(新聞、雑誌、ラジオ、テレビの4つのマス媒体に掲出される広告費)のうち新聞、雑誌、ラジオの広告費を上回る規模になっております。
当社グループは、インターネット等を活用した広告手法の発達は、マス四媒体広告と、インターネット広告の連携による相乗効果をより高め、将来にわたって広告市場全体の拡大に貢献するものと考えます。既に当社グループはマス四媒体広告のみならずインターネット広告においても主導的な地位を占めており、さらなる事業機会の発掘と拡大に取り組んでおります。
しかしながら、当社グループが急速な技術革新とこれに伴うメディアの構造変化に適切に対応できなければ当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループは、国内においては、広告主の倒産等の場合に、広告主から広告料金の支払を受けられないにもかかわらず、メディア会社等に対して支払債務を負担する可能性があります。広告主による未払いが増加した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。広告業界においては、様々な事情により、広告計画や内容に、突然の変更が生じることが少なくありません。当社グループでは、主要取引先と基本契約を締結するなど、取引上のトラブルを未然に回避する努力を行っておりますが、不測の事故または紛争が生じる可能性があります。
海外においては、欧米を中心に、広告会社が同一業種に属する複数の広告主を担当しない「一業種一社制」と呼ばれる慣行があります。しかし、わが国では、このような慣行は一般的でなく、当社グループも、同一業種に属する複数の主要企業を顧客としています。仮にわが国の慣行が変化し、それに対する当社グループの対応が適切さを欠いた場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、国内外において広告会社間における激しい競合に晒されております。
わが国においては国内広告会社間の事業統合や再編、外国広告会社による日本市場への更なる参入は業界構造を変化させ、競争を激化させる可能性があります。将来、顧客獲得をめぐる競合がさらに激しくなった場合、または、外国広告会社の日本市場への参入に伴う業界構造や取引慣行の変化に当社グループが適応できない場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、海外においては、当社グループは、広い地域において事業を運営し、豊富な財務、人材その他の経営資源を有する巨大な外国広告会社や、1またはいくつかの国または地域に特化した小規模な広告会社との間の競合に晒されています。かかる競合において、当社グループが競争力および主要な顧客を維持できない場合、当社グループの業績に悪影響を与える可能性があります。
当社グループの事業領域が拡大するにつれて、総合商社、コンサルティング会社など隣接業種との競合が生じる機会も増加しております。さらにインターネット関係やソーシャル・ネットワーク・メディア関係の事業等においては新規参入企業も多く、これら企業と当社グループは、新規事業の開発等において競合する関係にあります。今後、これらの事業領域において当社グループがサービス面またはコスト面で顧客の要求に適切に応えることができない場合、または新規企業の参入により広告の取引慣行が急激に変化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、わが国の主要広告主と取引関係を有しており、これら広告主の大半と長年にわたり安定的な取引関係を維持しております。
また、当社グループは、マスメディア各社の事業運営および営業活動を通じ、社業発展の基礎を作ってまいりました。このような活動により、当社グループは、広告主・メディア会社との間でのニーズ調整と円滑な取引を実現しております。
しかしながら、当社グループが、既存または新規の広告主またはメディア会社に対して、そのニーズに合致したサービスを提供できない場合には、取引関係の終了・解消、受注の減少または取引条件の変更等が生じる可能性があり、その結果、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
近年、広告主は、コスト削減の必要から、発注先の広告会社を1社に集中するなどの方法により、効率的な広告サービス提供の要求を強めています。そのため、マスメディア広告取引における収益性が低下する傾向が継続する場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、広告主による広告およびマーケティング支出の効果を実証的に検証するための情報処理技術や、データベース等の研究開発に取り組んでおり、これらの活動を通じて潜在的な需要を掘り起こすとともに、国内広告市場における当社グループのシェア拡大を目指しております。しかし、これら研究開発活動の成果が商品化・実用化される時期は未定であり、今後広告主ニーズの変化や、技術的な困難等によって、当社グループの研究開発活動が、予定した成果をあげられない可能性があります。
当社グループでは、メディア広告市場における地位を強固にするため、マス四媒体、OOHメディア(交通広告・屋外広告等のアウト・オブ・ホームメディア)および衛星メディア(BS放送およびCS放送)などへの投資、ならびにそれに関連するリサーチや事業開発プロジェクトに対する投資を行ってきております。しかし、メディア広告に対する需要が低迷した場合や競争が激化した場合等には、研究開発や事業化に要した投資に応じた収益や予定した成果をあげられない可能性があります。
また、インターネット広告の領域においては、当社グループはクロスメディア型キャンペーン提案(複数のメディアや広告表現を消費者の行動に合わせて効果的に掛け合わせたキャンペーン提案)の積極化はもちろんのこと、運用型広告(膨大なデータを処理するプラットフォームにより、広告の最適化を自動的もしくは即時的に支援する広告手法)等多様な広告手法や広告主の裾野の広がりに対応すべく、大手専門エージェンシーとのアライアンスや、その他専門会社や技術への積極的な投資を行っています。しかしながら、インターネット広告分野の技術やサービスの急速な進化に対し、当社グループの対応が適切でなかった場合は予定した成果があげられない可能性があります。
広告主にとってプロモーション施策の重要性が高まっており、市場も拡大しています。当社グループはこの機会を捉え、店頭マーケティング専門会社、チラシ制作専門会社、ダイレクトビジネス専門会社、顧客アクセス専門会社などを設立し、プロモーション領域における事業拡大を図っています。しかしながら、広告主の需要が拡大しない場合、あるいは当社グループが競合会社に対する競争力を維持できない場合には、計画どおりの事業拡大ができない可能性があります。
当社グループでは、映画、テレビ番組、スポーツイベントおよび音楽等に関する権利の獲得、制作への投資を活発に行っており、映画やその他のコンテンツの製作・配給・販売、ライセンシングおよびスポンサーシップ権や放送権の販売、ならびに映画、その他のコンテンツに関する広告の販売から収入を得ています。しかし、これらの中には、事業計画が多年度にわたる場合、または多額の取得コストや財務的コミットメントを必要とする場合があります。また、昨今ではコンテンツを供給するメディアも多様化しております。しかも、コンテンツ事業の成否を左右する生活者の反応を確実に予測することは、困難であります。これら事業が計画どおりに進捗しない場合、また、予定した投資効果が得られなかった場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
イージス社の買収により、当社グループは、現在海外140カ国・地域以上において事業を行っておりますが、海外での事業遂行に関しては、とりわけ以下の追加的なリスクを伴います。
・ 多数かつ広範な国・地域での事業を管理し、調整することの困難さ
・ グローバル経済の変動から受ける影響
・ 資本規制・外国為替規制を含む、外国の法令、規制、政策等に関するリスク
・ 当社グループが事業を行う様々な国・地域における税制の差異・矛盾
・ 当社グループの海外子会社による送金その他の支払いに課される源泉徴収税等の賦課・増税を
含む税制の変更
・ 外国為替相場の変動
・ 契約や知的財産権の執行不可能性または労務管理上の制約を含む、法律・規制・ビジネス文化に
おける様々な基準・実務慣行
・ 貿易規制および関税制度の変更
・ 政情不安に関するリスクおよび事業環境の不確実性
・ 当社グループが事業を行う国・地域と日本との間の政治・経済的関係の変化
・ テロ行為、戦争、疫病その他の社会不安要因
・ 現地の労務管理および提携先の不適切行為を防止することの困難さ
上記のいずれかの事由により、当社グループの費用が増加し、収益が減少し、または業務に支障を来し、これにより当社グループの事業、財政状態または業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、イージス社の買収に伴い、多額ののれんおよび無形資産を計上しました。今後当該資産の価値が回復不能な程度に損なわれたと判断された場合には、減損を認識しなければならない可能性があり、当社グループの事業、財政状態または業績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの成長力および競争力は、優秀な人材の確保とその育成に大きく依存します。人材の確保に関しては、新卒者の安定的採用や専門的知識・経験を持ち即戦力となる中途採用により確保を図っております。それとともに、本人の職務や能力に応じた教育研修等により、人材の育成を図っています。しかしながら、何らかの理由により人材の確保が困難になる可能性および優秀な人材が流出する可能性もあります。このような事態が生じた場合、当社グループの成長力と競争力に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、文化的・地理的に多様な背景を有する多数の従業員を有し、かかる人材の管理に関する課題に対処しています。特に、イージス社の買収によって新たに加わった多数の海外従業員との融合が課題となります。当社グループが有能な人材を確保し、十分に活用できず、これらの課題に適切に対処できない場合、当社グループの財政状態、業績または競争上の地位に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、取引の執行、業績の報告および広告主のマーケティングまたは広告に関する情報の管理を含む当社グループの事業の管理のために、情報システムおよび情報インフラに依存しています。当社グループの情報システムは、システム障害やネットワークの寸断、システムへの不法な侵入および無差別攻撃に晒される可能性があります。同様に、従業員またはその他の者による許可を受けたうえでのまたは無許可の当社グループのシステムへのアクセスを通じたデータセキュリティの事故および侵害により、機密情報が無権限者または公衆に晒される可能性があります。また、当社グループは、データの保存、通信または処理について第三者を利用しています。当社グループはデータおよび情報システムを保護するために周到な対策を講じていますが、当社グループの取組みが当社グループまたは当社グループが利用する第三者のシステムにおけるシステム障害もしくはネットワークの寸断またはセキュリティ侵害を防止するという保証はなく、これらの事象が生じた場合には当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、下請代金支払遅延等防止法、個人情報保護法等の法令および諸規制の適用を受けておりますが、いずれも現状では当社グループの事業に悪影響を及ぼす懸念はありません。しかしながら、今後、新たに広告主の広告活動、広告の形式および内容等に影響を及ぼす法令や、各種規制が採用もしくは強化された場合、または法令および各種規制の解釈が変化した場合には、広告業界および当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは事業遂行上、広告主の情報や個人情報等を取得することがあります。当社グループでは情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格を取得するなど、情報管理には万全を期しておりますが、万一情報漏えい等の事故が発生した場合には、当社グループの信頼性を著しく損なう可能性があり、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、広告の内容および表現等当社グループの事業遂行に関連して提起される、取引先、各種団体、消費者または各種知的財産権の保有者等による訴訟に、直接または間接的に関与する可能性があります。
該当事項はありません。
当連結会計年度における研究開発費の金額は、国内事業における情報サービス業の11億34百万円です。
国内事業である㈱電通国際情報サービスを中心とする情報サービス業では、同社グループの中期経営計画の基本方針の一つである「競争優位性の追及」「新たなビジネス領域の開拓」を推進するため、各種技術研究に加え、独自ソリューションの開発・強化を実施しました。主な研究開発活動の概要は以下のとおりです。
金融ソリューションの研究開発活動の金額は1億41百万円です。
主な活動内容は、金融機関向けデータ連携サービス「A∞BLink(エービーリンク)」の開発です。
ビジネスソリューションの研究開発活動の金額は4億92百万円です。
主な活動内容は、次世代エンタープライズITプラットフォーム開発に関する調査・研究です。
エンジニアリングソリューションの研究開発活動の金額は1億48百万円です。
主な活動内容は、MBD導入支援ソリューションの強化・拡充に関する研究です。
コミュニケーションITの研究開発活動の金額は33百万円です。
主な活動内容は、RPA導入支援サービス化に向けた調査・研究です。
上記に属さない研究開発活動の金額は3億17百万円です。
主な活動内容は、IoTソリューションの各種調査・研究、スポーツをテーマにした街づくりの仕組みに関する研究、AI・機械学習技術を活用したソリューションの調査・研究、ならびに各種開発技術の研究です。
文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
当社の連結財務諸表は、国際会計基準審議会により公表されたIFRSに基づき作成されております。
また、当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値および偶発債務等オフバランス取引の開示、報告期間における財政状態および経営成績について影響を与える見積りを行わなければなりません。経営陣は、例えば、投資、企業結合、退職金、法人税等、偶発事象や訴訟等に関する見通しや判断に対して、継続して評価を行っております。経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行い、その結果は、資産・負債の簿価、収益・費用の報告数字についての根拠となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。
当社は、特に以下の重要な会計方針について、当社グループの財政状態および経営成績に特に影響を与える、あるいは、当社の連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な判断と見積りにより、大きな影響を受けると考えております。
当社グループの収益の内訳は、主に各種メディアへの広告出稿によって得られる手数料、およびクリエーティブ・サービスを含む広告制作や各種コンテンツサービス等サービスの提供に対する広告主等からの報酬であります。
広告制作やその他の広告サービスによる収益は、当社グループがこれらサービスに対する報酬として広告主およびその他のクライアントから受領する対価から原価を控除した純額、あるいは定額または一定の報酬対価により計上しております。
手数料による収益については、メディアに広告出稿がなされた時点で収益に計上し、その他の収益については、サービスの提供が完了し、対価の測定が合理的に可能となり、経済的便益が流入する可能性が高くなった時点で計上しております。
なお、広告業以外の事業に係る取引は収益および原価を総額表示しております。
連結損益計算書に開示している売上高は当社グループが顧客に対して行った請求額および顧客に対する請求可能額の総額(割引および消費税等の関連する税金を除く)であり、IFRSに準拠した開示ではありません。
当社グループは決算日において、棚卸資産および繰延税金資産を除く非金融資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額に基づき減損テストを実施しております。のれんは償却を行わず、減損の兆候の有無にかかわらず年に一度、または減損の兆候がある場合はその都度、減損テストを実施しております。資産の回収可能価額は資産または資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い方の金額としており、資産または資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産は回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。使用価値の算定に際しては、資産の耐用年数や将来キャッシュ・フロー、成長率、割引率等について一定の仮定を用いております。
これらの仮定は過去の実績や当社経営陣により承認された事業計画等に基づく最善の見積りと判断により決定しておりますが、事業戦略の変更や市場環境の変化等により影響を受ける可能性があり、仮定の変更が必要となった場合、認識される減損損失の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは有価証券やデリバティブ等の金融資産を保有しており、当該金融資産の評価に当たり一定の仮定を用いております。公正価値は、市場価格の他、マーケット・アプローチ等の算出手順に基づき決定しております。具体的には、株式およびその他の金融資産のうち活発な市場が存在する銘柄の公正価値は市場価格に基づいて算定し、活発な市場が存在しない銘柄の公正価値は観察可能な市場データを用いて算定した金額若しくは観察不能なインプットを用いて主としてマーケット・アプローチで算定した金額で評価しております。
企業結合の結果生じる条件付対価および株式買取債務の公正価値等は、観察不能なインプットを用いて割引キャッシュ・フロー法で算定した価額で評価しております。
当社経営陣は金融商品の公正価値等の評価は合理的であると判断しておりますが、予測不能な前提条件の変化等により見積りの変更が必要となった場合、認識される公正価値等の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
確定給付制度債務および退職給付費用は、年金数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、死亡率等が含まれます。
当社経営陣はこれらの前提条件は合理的であると判断しておりますが、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、認識される費用および計上される債務に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、過去の事象の結果として現在の法的または推定的債務を有しており、債務の決済を要求される可能性が高く、かつ当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に引当金を認識しております。貨幣の時間価値の影響が重要である場合、引当金は当該負債に特有のリスクを反映させた割引率を用いた現在価値により測定しております。
これらの引当金は、決算日における不確実性を考慮した最善の見積りにより算定しておりますが、予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、計上される債務の金額に重要な影響を及ぼす可能性があります。
繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金、繰越税額控除および将来減算一時差異のうち、将来の課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産は毎決算日に見直し、税務便益の実現が見込めないと判断される部分について減額しております。
当社グループは、将来の課税所得および慎重かつ実現性の高い継続的なタックス・プランニングの検討に基づき繰延税金資産を計上しており、回収可能性の評価に当たり行っている見積りは合理的であると判断しておりますが、見積りは予測不能な事象の発生や状況の変化等により影響を受ける可能性があり、実際の結果が見積りと異なる場合、認識される費用および計上される資産に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの収益は9,288億41百万円(前連結会計年度比10.8%増)、売上総利益は8,776億22百万円(前連結会計年度比11.2%増)となりました。
売上総利益のうち、国内事業は、ほぼ前連結会計年度並みの3,619億2百万円(前連結会計年度比0.4%減)となりました。
海外事業の売上総利益は5,160億52百万円(前連結会計年度比21.1%増)となりました。また、海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は、0.4%となりました。地域別では、EMEAが3.1%、Americasが△1.5%、APACが△0.6%となりました。
当連結会計年度における当社グループの販売費及び一般管理費は、7,519億57百万円(前連結会計年度比14.0%増)となりました。
また、その他の収益は233億47百万円(前連結会計年度比40.7%増)、その他の費用は116億20百万円(前連結会計年度比44.1%増)となりました。
これらの結果、当連結会計年度における営業利益は1,373億92百万円(前連結会計年度比0.2%減)となりました。
当連結会計年度の持分法投資利益は42億22百万円(前連結会計年度比25.6%増)、金融収益から金融費用を減じた金融利益は80億48百万円となり、この結果、税引前利益は1,496億62百万円(前連結会計年度比12.6%増)となりました。
税引前利益から法人所得税費用を控除した当期利益のうち、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,054億78百万円(前連結会計年度比26.3%増)となりました。
「4 事業等のリスク」をご参照下さい。
「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。
当連結会計年度末は、前連結会計年度末と比べ、主に営業債権及びその他の債権が増加したことから、資産合計で4,076億26百万円の増加となりました。一方、主に営業債務及びその他の債務や借入金が増加したことから、負債合計で2,394億53百万円の増加となりました。また、当期利益の計上等により、資本合計は1,681億73百万円の増加となりました。
当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、3,057億60百万円(前連結会計年度末2,424億10百万円)となりました。営業活動による収入および財務活動による収入が投資活動による支出を上回ったため、前連結会計年度末に比べ633億49百万円の増加となりました。
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果により得た資金は、1,415億57百万円(前連結会計年度1,435億85百万円の収入)となりました。主に税引前利益の計上によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果支出した資金は、855億31百万円(前連結会計年度1,561億61百万円の支出)となりました。主に子会社の取得による支出によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果により得た資金は、12億26百万円(前連結会計年度25億39百万円の収入)となりました。主に長期借入による収入が短期借入金の減少を上回ったことによるものです。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、広告作業実施のための媒体料金および制作費の支払等ならびに人件費をはじめとする販売費及び一般管理費であります。
また、近年においては既存の広告取引とは異なる事業機会を発掘するため、デジタル領域およびグローバル事業への投資に係る資金需要が生じております。
当社グループは、運転資金につきましては、内部資金、社債、コマーシャル・ペーパーまたは短期借入金により調達することとしております。流動資産から流動負債を控除した運転資本については、当社グループでは流動資産が上回っています。前連結会計年度および当連結会計年度における当社グループの運転資本は、それぞれ188億円および943億円の超過となっております。
当社は、資金の短期流動性を確保するため、シンジケーション方式による極度額500億円の銀行融資枠を設定しています。また、電通イージス・ネットワーク社においては、緊急時対応として、500百万ポンド(約760億円)の銀行融資枠を設定しています。さらに、グループ内の資金効率の向上を図るべく、日本においては、資金余剰状態にある国内子会社から当社が資金を借り入れ、資金需要が発生している国内子会社に貸出を行うキャッシュ・マネジメント・システム(以下CMS)を導入しております。電通イージス・ネットワークでは、海外の資金をロンドンに集約させるグローバルCMSを導入しています。
当社は、格付機関である㈱格付投資情報センター(R&I)から長期格付AA-、短期格付a-1+を取得しております。
「3 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照下さい。