(1)業績
当連結会計年度の経済情勢は、米国では回復が続き、欧州でも緩やかな回復基調で推移し、アジアでは中国において景気に減速感が徐々に強まってきたものの、世界経済は全体として緩やかな回復が続きました。国内経済は、輸出など一部に弱さもみられましたが、個人消費が総じて底堅い動きとなり、企業部門に改善の動きがでるなど、緩やかな回復基調をたどりました。
このような状況の下、当社グループは、平成25年度から3カ年の中期経営計画「Change & Challenge - 更なる成長に向けて - 」の基本方針に基づき、その最終年度として、化学部門の早期収益回復をはじめ、各事業課題の解決に向け取り組んでまいりました。当連結会計年度においては、石炭・原油等原燃料の価格低下などの下支えもあり、建設資材など非化学部門は概ね順調に進捗し、化学部門においても一定程度の回復を果たしましたが、近年収益性の低迷が続いている事業について減損損失を特別損失に計上しました。
この結果、当社グループの売上高は前連結会計年度に比べ9百万円減の6,417億5千万円、営業利益は
172億6千1百万円増の414億8百万円、経常利益は163億9千2百万円増の396億2千万円、親会社株
主に帰属する当期純利益は44億6千2百万円増の191億1千1百万円となりました。
|
項 目 |
売 上 高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に帰属 する当期純利益 |
|
当連結会計年度 |
641,750百万円 |
41,408百万円 |
39,620百万円 |
19,111百万円 |
|
前連結会計年度 |
641,759百万円 |
24,147百万円 |
23,228百万円 |
14,649百万円 |
|
増 減 率 |
△0.0% |
71.5% |
70.6% |
30.5% |
セグメント別の業績は以下のとおりです。
化学
ナイロン樹脂は食品包装フィルム用途を中心に概ね堅調に推移しました。ナイロン原料カプロラクタムは、アンモニアなど副原料の価格低下が寄与しましたが、中国市場を中心とした供給過多の状況は継続しており、市況は低迷しました。アンモニア製品は、工場の定期修理を隔年実施に移行できたこともあり、出荷は堅調に推移しました。ポリブタジエン(合成ゴム)はエコタイヤ用途を中心に出荷は概ね堅調でした。
リチウムイオン電池材料の電解液はパソコンなど民生用途で、セパレータはエコカーなど車載用途で、ともに出荷は伸長しましたが、価格下落の影響を受けました。ファインケミカル製品およびポリイミドフィルムの出荷は概ね堅調でしたが、収益面ではポリイミドフィルムは低調でした。
この結果、当セグメントの売上高は前連結会計年度に比べ134億2千4百万円減の2,667億3千6百万円、営業利益は130億2千2百万円増の120億8千3百万円となりました。
|
項 目 |
売 上 高 |
営業利益 |
|
当連結会計年度 |
266,736百万円 |
12,083百万円 |
|
前連結会計年度 |
280,160百万円 |
△939百万円 |
|
増 減 率 |
△4.8% |
- |
なお、ポリイミド事業および中国における連結子会社であるエーイーティー・エレクトロライト・テクノロジーズ(ズァンジアガン),カンパニー・リミテッドの電解液事業について減損損失を特別損失に計上しました。
医薬
自社医薬品については、血圧降下剤、抗アレルギー剤、抗血小板剤ともに流通在庫の調整が続いており、原体の出荷は低調でした。受託医薬品の原体・中間体の出荷は増加傾向で推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前連結会計年度に比べ14億6千1百万円増の92億8千万円、営業利益は2億3百万円増の11億5百万円となりました。
|
項 目 |
売 上 高 |
営業利益 |
|
当連結会計年度 |
9,280百万円 |
1,105百万円 |
|
前連結会計年度 |
7,819百万円 |
902百万円 |
|
増 減 率 |
18.7% |
22.5% |
建設資材
セメント・生コン製品は、国内需要の減少に伴い、出荷は前連結会計年度をやや下回りましたが、エネルギーコストの改善もあり、全体としては堅調に推移しました。また、カルシア・マグネシア製品は、耐火物向けを中心に出荷は概ね堅調に推移しました。燃料価格低下も寄与しました。
この結果、当セグメントの売上高は前連結会計年度に比べ149億2千4百万円増の2,373億4千3百万円、営業利益は28億8百万円増の198億4千1百万円となりました。
|
項 目 |
売 上 高 |
営業利益 |
|
当連結会計年度 |
237,343百万円 |
19,841百万円 |
|
前連結会計年度 |
222,419百万円 |
17,033百万円 |
|
増 減 率 |
6.7% |
16.5% |
機械・金属成形
竪型ミルや運搬機等の産業機械の出荷は、国内向けは堅調でしたが、東南アジアなどの新興国向けは減少しました。自動車産業向けを中心とする成形機の出荷は、国内および北米向けは堅調でしたが、中国・東南アジア向けは減少しました。各製品のサービス事業は伸長し、製鋼品の出荷も堅調でした。
この結果、当セグメントの売上高は前連結会計年度に比べ55億2千1百万円減の734億3千5百万円、営業利益は2億9千5百万円増の46億円となりました。
|
項 目 |
売 上 高 |
営業利益 |
|
当連結会計年度 |
73,435百万円 |
4,600百万円 |
|
前連結会計年度 |
78,956百万円 |
4,305百万円 |
|
増 減 率 |
△7.0% |
6.9% |
エネルギー・環境
石炭事業は、コールセンター(石炭中継基地)経由での販売炭および預り炭の取扱い数量がともに堅調でした。電力事業は、IPP発電所の復旧に伴い売電量が増加しました。
この結果、当セグメントの売上高は前連結会計年度に比べ22億9千5百万円増の690億6千6百万円、営業利益は10億1千6百万円増の38億5千6百万円となりました。
|
項 目 |
売 上 高 |
営業利益 |
|
当連結会計年度 |
69,066百万円 |
3,856百万円 |
|
前連結会計年度 |
66,771百万円 |
2,840百万円 |
|
増 減 率 |
3.4% |
35.8% |
その他
その他の売上高は前連結会計年度に比べ5億9千5百万円減の167億9千2百万円、営業利益は4百万円減の
11億4千2百万円となりました。
|
項 目 |
売 上 高 |
営業利益 |
|
当連結会計年度 |
16,792百万円 |
1,142百万円 |
|
前連結会計年度 |
17,387百万円 |
1,146百万円 |
|
増 減 率 |
△3.4% |
△0.3% |
(2)キャッシュ・フロー
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、前連結会計年度に比べ、64億3千4百万円増の686億2千8百万円となりました。これは前連結会計年度に比べ、運転資金増減(売上債権、たな卸資産及び仕入債務の増減合計額)による収入及び支出が当連結会計年度は支出に転じたものの、税金等調整前当期純利益が91億6千2百万円増加したことなどによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ、87億1千5百万円減の337億2千6百万円となりました。これは前連結会計年度に比べ、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少したことなどによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ、170億8千9百万円増の310億円となりました。これは、当連結会計年度は社債の発行による収入がなかったことや、長期借入れによる収入が減少したことなどによるものです。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、現金及び現金同等物に係る換算差額等を含め、前連結会計年度末に比べ、42億2千4百万円(11.4%)増の411億8千8百万円となりました。
(1)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
化学 |
275,530 |
△4.0 |
|
医薬 |
5,223 |
7.6 |
|
建設資材 |
115,951 |
△5.4 |
|
機械・金属成形 |
69,202 |
△7.9 |
|
エネルギー・環境 |
11,524 |
105.4 |
|
合計 |
477,430 |
△3.6 |
(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.当連結会計年度より、従来の化成品・樹脂セグメントと機能品・ファインセグメントを統合し化学セグメントといたしました。前年同期比については前連結会計年度の数値を変更後のセグメントに組替えた数値で比較しております。
(2)受注状況
当連結会計年度における機械・金属成形及びエネルギー・環境の受注状況を示すと、次のとおりです。
なお、機械・金属成形及びエネルギー・環境を除くセグメントの製品については、受注生産は行っておりません。
|
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
機械・金属成形 |
72,969 |
4.8 |
55,769 |
15.7 |
|
エネルギー・環境 |
1,411 |
△2.7 |
278 |
△4.8 |
|
合計 |
74,380 |
4.6 |
56,047 |
15.6 |
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
化学 |
266,736 |
△4.8 |
|
医薬 |
9,280 |
18.7 |
|
建設資材 |
237,343 |
6.7 |
|
機械・金属成形 |
73,435 |
△7.0 |
|
エネルギー・環境 |
69,066 |
3.4 |
|
その他 |
16,792 |
△3.4 |
|
消去 |
△30,902 |
- |
|
合計 |
641,750 |
△0.0 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.当連結会計年度より、従来の化成品・樹脂セグメントと機能品・ファインセグメントを統合し化学セグメントといたしました。前年同期比については前連結会計年度の数値を変更後のセグメントに組替えた数値で比較しております。
今後の経済情勢につきましては、国内景気は緩やかな回復に向かうことが期待されるものの、為替や原燃料価格の先行き、中国など新興国や資源国での経済成長の鈍化、米国・欧州における経済・金融政策の動向など、不透明感の強い状況が続くことが見込まれます。
このような状況の下、当社グループは、2016年度を初年度とする3カ年の新中期経営計画「Change & Challenge 2018」を策定いたしました。
当計画の基本方針は次の2つです。
①持続的成長を可能にする経営基盤の強化
②資源・エネルギー・地球環境問題への対応と貢献
当計画では、当社グループの将来のありたい姿の実現に向けた3カ年の行動計画と位置付け、徹底したコストダウンや国内外グループ会社の連携深化により、顧客に提供する価値の増大とともに当社グループ各部門の収益力向上を推進し、特に化学部門における業績回復に注力してまいります。
さらに、当社グループは、公正な企業活動や社会的責任を果たすための活動を推進し、経営理念である「共存同栄」の精神の下、社会との共生を目指し、株主や資本市場をはじめ、取引先・従業員・地域社会等、すべてのステークホルダーからの信認を深めてまいります。
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を下記のとおり記載いたします。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避・分散及び発生した場合の対応、リスクの移転、危機管理対策等に最大限努力する方針です。
下記事項には、将来に関するものが含まれますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
(1)原燃料の市況動向
当社グループ化成品・樹脂事業における主要製品の主原料購入価格は、国際市況や原油・ナフサ価格の動向等に影響され変動いたします。これら主原料購入価格の変動が、製品の需給状況等により、タイムリーに製品価格に転嫁されない場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。また、当社グループはセメント焼成用及び自家発電用として石炭を海外から購入していますが、石炭の調達価格が上昇に転じた場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(2)化成品・樹脂事業の収益
化成品・樹脂事業の収益は、主要製品の主な市場である日本、アジア、欧州における需要動向、需給環境に大きく依存いたします。このため、これら地域において、経済の変調等により需要が大幅に減少する場合、また、他社の生産能力増強や他地域からの製品流入などによる供給増等により需給環境が悪化し、製品市況の低迷やスプレッド(製品と原料の値差)の大幅な縮小等が生じる場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(3)機能性材料事業の収益
機能性材料事業は、情報技術やデジタル家電関連分野を主な市場とし、主として、世代交代の早い製品向けに材料を供給しています。このため、顧客の要求に合致した材料をタイムリーに開発することが必要となりますが、開発の遅延等により、これに応ずることができない場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。また、情報技術関連製品特有の激しい需要変動の中で減少局面が現実化する場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(4)医薬品原体・中間体事業の収益
医薬品原体・中間体事業は、原体や中間体を製薬会社から受託し製造する受託事業と自社単独または製薬会社との共同により新規医薬品の研究開発を行う創薬事業を内容としています。
受託事業については、研究開発支出は限定的ではありますが、規格を満たす一定規模の製造設備設置等の先行的支出が必要となります。受託対象となる医薬品が新薬である場合、製薬会社が製造承認を当局から得るためには長期間を要し上市できない場合もあることや、受託済みであっても副作用等により承認が取り消されたり本格的上市が遅延することもあり得ます。また、受託生産中の当該原体・中間体から生産される医薬品が競合激化、特許期限切れに伴う後発品の上市等により販売不振に陥る可能性があります。
創薬事業については、自社単独研究と製薬会社との共同研究の2種に大別されます。最終的な事業形態として、何れのタイプの研究においても、ライセンスアウトを基軸とした戦略を採ることにより、臨床試験の膨大な出費や成功率の問題に関するリスクを軽減しているものの、ライセンスアウトまでに研究開発費用が必要であるため、研究や事業化の成否に係るリスクが存在します。また、製薬会社の新薬開発と同様、当局の承認後であっても承認取消や上市遅延の可能性があります。
受託事業・創薬事業に係るこのようなリスクが顕在化する場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(5)セメントの輸出価格
建設資材事業の主要製品であるセメントの国内需要は、東京オリンピック・パラリンピック関連工事が始まることもあり一定の需要が見込まれるものの、輸出については中国の内需減・東南アジア諸国の生産能力増強等により需給バランスが急速に悪化しており、輸出価格が下落し収益の下押し要因となります。このため当社グループではセメント製造工程での廃棄物(有償での受入)処理拡大、諸費用削減等を実施していますが、輸出価格が更に下落した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(6)機械事業の収益
機械・金属成形事業では、製品とサービスの連携強化・拡充により、成長の続く新興国を中心としたグローバル市場での収益拡大に取組んでおります。しかしながら、競争激化による販売価格の低下、原材料・工事価格の高騰等のリスクが顕在化する場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(7)外国為替の変動
当社グループは、外貨建の輸出入等に係る通貨変動に対するリスクを、債権・債務の均衡化、為替予約等のヘッジ取引により一定限度まで低減していますが、短期及び中長期の予測を超えた為替変動が当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
当社グループ海外会社は現地通貨で財務諸表を作成しているため、換算時の為替レートにより円換算額が影響を受けます。また、当社グループのタイ国の事業会社はUSドル建有利子負債を保有していますが、同負債に係る返済、利払い、決算時の現地通貨への換算時に、為替レートにより差損益が発生する可能性があります。
(8)金融市場の動向
当社グループは、資金調達時の金融市場の動向により当社グループの業績及び財務状況に影響を受けます。金利変動に対するリスクは金利スワップ等のヘッジ取引により一定限度まで低減していますが、短期及び中長期の予測を超えた金利変動が、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(9)海外での事業活動
当社グループはアジア、北中南米、欧州等にて生産及び販売活動を行っていますが、海外での事業活動には、通常、予期しない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人材の確保・技術の習熟、労働組合等の経済的なリスク、テロ・戦争・その他の要因による社会的又は政治的混乱等のリスクが内在します。こうしたリスクが顕在化することによって、海外での事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(10)知的財産・製造物責任(PL)
当社グループでは知的財産の重要性を認識し、その保護・活用に努めていますが、適切に保護・活用できず、違法に侵害された場合、あるいは、第三者の知的財産権を侵害したとして係争が生じた場合、また、当社グループの製品の欠陥に起因して製品回収や損害賠償につながるリスクが現実化し、これを保険により補填できない事態が生じた場合には、事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(11)産業事故および災害等
当社グループの危険物や高圧ガスを取扱う工場において、万一大きな産業事故あるいは地震・風水害等の災害による生産設備の大きな損壊等が発生した場合には、補償等を含む産業事故災害への対策費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償、更に社会的信用の失墜等によって、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
また、当社グループが供給を受けている主要な原材料等のサプライヤーにおける事故・災害等により、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(12)公的規制
当社グループは、事業展開する各国、地域の法令・規則等の各種規制に従って事業を行っていますが、これらの環境規制を含む様々な規制についての変更、強化や新たな規制の適用が生じた場合には、当社グループの業務活動の制限、規則遵守のためのコスト増大、規制に従う会計・税務上の対応などにより当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(13)石綿
当社グループでは、過去に石綿含有製品の製造・販売を行っており、また工場施設に石綿含有建材等を使用しています。工場施設の石綿を除去するために全面的又は部分的交換に順次着手しており、交換が完了するまでの期間に亘って一定額の支出が予想されます。また、従業員(退職者を含む)や工場周辺住民の健康被害に関連して、労災認定者の大幅な増加、訴の提起、法規制の更なる強化等がある場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(14)訴訟
当社グループでは法令遵守に努めていますが、広範な事業活動のなかで訴を提起される可能性もあります。なお、現在係争中の主な訴訟事件は次のとおりです。これらの訴訟の最終的な結果やその時期については、現時点で予測することができません。
平成20年5月以降、建設作業等従事者及びその遺族らが国及びウベボード㈱(当社連結子会社)を含む建材メーカー40社余に対して、建設現場で使用されていた石綿含有建材の石綿粉じんを吸引して石綿関連疾患に罹患したとして、連帯して損害を賠償するように求めて訴えを提起しております。本年1月、京都地方裁判所において一部建材メーカーに対する損害賠償請求を認める判決が下されましたが、当該判決を含むこれまでの第一審の判決において、ウベボード㈱に対する請求はいずれも棄却されました。現在、請求棄却後控訴して東京、大阪及び福岡の各高等裁判所に係属中の5件のほか、札幌、東京及び横浜の各地方裁判所に訴えが提起されており、現在13件が係属中で、請求額は最大で合計247億円です。
(15)たな卸資産の収益性の低下による簿価切下げ
平成20年4月1日以後開始する事業年度より「棚卸資産の評価に関する会計基準」が適用され、通常の販売目的で保有するたな卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とするが、期末において正味売却価額が取得原価より下落している場合には、収益性が低下していると判断し、当該正味売却価額まで貸借対照表価額を切下げ、取得原価と当該正味売却価額の差額は当期の費用として処理することとなりました。このため、当社グループにおいて、原燃料購入価格の上昇、製造固定費の増加、生産量の減少、製品販売価格の下落などが生じる結果、簿価切下げの単位となっている製品等のたな卸資産について、正味売却価額が取得原価を下回る場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(16)固定資産の減損
当社グループは平成15年度から「固定資産の減損に係る会計基準」を適用していますが、今後、遊休土地の時価が更に低下したり事業環境が大幅に悪化するなどの場合には、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(17)有価証券
当社グループは時価のある有価証券を保有し、そのほとんどが上場株式であるため、株式相場の下落により、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(18)退職給付債務
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、年金数理計算上使用される割引率や退職率、昇給率等の前提条件と年金資産の期待運用収益率等に基づき計算されており、年金資産の運用利回り悪化、割引率の低下等が、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(19)繰延税金資産
当社グループは将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対し、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産は、将来の課税所得等に関する予測に基づき回収可能性を検討し計上していますが、実際の課税所得が予測と異なり、繰延税金資産の取崩が必要となる場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
(1)技術援助契約
|
契約会社名 |
相手先 |
契約締結年月日 |
契約内容 |
有効期間 |
|
宇部興産株式会社(当社) |
松下電工株式会社(現パナソニック株式会社) |
平成16年4月21日 |
2層フレキシブル銅張積層板製造技術のライセンス契約 |
終期の定めなし |
|
エスユーマテリアルス,カンパニー・リミテッド |
平成23年9月23日 |
次世代ディスプレイ基板材料用のポリイミドに関するライセンス契約 |
終期の定めなし |
|
|
アドバンスド・エレクトロライト・テクノロジーズ,エルエルシー |
平成23年12月7日 |
リチウムイオン電池用電解液に関するライセンス契約 |
契約締結から10年間または特許及びノウハウの有効期間満了のいずれか遅い日まで |
|
|
ハイケム株式会社 |
平成24年6月22日 |
DMO(ジメチルオキサレート)及びMEG(モノエチレングリコール)の触媒製造技術に関するライセンス契約 |
実施料支払期間満了まで |
|
|
黔希煤化工投資有限公司 |
平成22年11月10日 |
DMO(ジメチルオキサレート)及びMEG(モノエチレングリコール)の製造技術に関するライセンス契約 |
特許及びノウハウの有効期間満了まで
|
|
|
錫林郭勒蘇尼特碱業有限公司 |
平成23年3月4日 |
|||
|
新疆天業(集団)有限公司 (1期) |
平成23年5月31日 |
|||
|
内蒙古开滦化工有限公司 |
平成24年4月6日 |
|||
|
新疆天業(集団)有限公司 (2期) |
平成25年5月7日 |
|||
|
内蒙古康乃尔化学工业有限公司 |
平成25年6月28日 |
|||
|
陽煤集団寿陽化工有限責任公司 |
平成25年12月11日 |
|||
|
中盐安徽红四方股份有限公司 |
平成27年4月24日 |
|||
|
新疆生产建设兵团天盈石油化工股份有限公司 |
平成27年5月8日 |
|||
|
中盐安徽红四方股份有限公司 |
平成27年4月25日 |
DMC(ジメチルカーボネート)の製造技術に関するライセンス契約 |
契約発効日から20年間 |
(2)技術導入契約
|
契約会社名 |
相手先 |
契約締結年月日 |
契約内容 |
有効期間 |
|
宇部興産株式会社(当社) |
DSMファーマシューティカル・プロダクツ社 |
平成17年7月1日 |
キラル技術(Monophos)導入のライセンス契約 |
対象特許の満了日 |
|
Industrial Copolymers, Ltd.(現Incorez Ltd.) |
平成19年8月20日 |
PUD(水系ポリウレタン・ディスパージョン)に関するライセンス契約 |
終期の定めなし |
|
|
ウベ・アメリカ,インコーポレーテッド |
米国航空宇宙局(NASA) |
平成16年5月18日 |
高耐熱複合材料向けポリイミド樹脂「PETI-330」の製造及び販売に係るライセンス契約 |
最終特許の満了日 |
当社グループの研究開発活動は、既存事業の製造技術の高度化及び周辺や延長分野における事業拡大を図るとともに、新分野における新規事業の創出及び長期的な視野に立った基盤技術の強化を志向しております。
研究開発活動は、当社の研究開発本部並びに、化学生産部門及び各事業部門の開発部門で行っているほか、一部には連結子会社独自で行っているものもあります。当社及び連結子会社における研究開発スタッフは842名にのぼりますが、これは総従業員数の約8%に当たります。
当連結会計年度における研究開発費の総額は137億5百万円であり、セグメント別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりです。
なお、当社においては、特定のセグメントに区分できない研究開発活動に要した研究開発費は各セグメントへ配賦しております。
化学
既存事業の強化、高度化を図るため、カプロラクタムやナイロン等の革新的プロセス開発及び独自技術による新規グレードや新製品の開発を行っております。合成ゴム関係ではメタロセン触媒を用いたポリブタジエンの製造技術開発や市場開発、タイヤ用途で省燃費性、耐久性に優れる新規の合成ゴムを開発中です。ナイロン関係では日本、タイ、スペインに設立した研究所を基点にして、グローバルなニーズに応える研究開発を進め、さらに高機能ポリアミドエラストマー「UBESTA XPA」の市場開発、パラダイムシフトに対応した次世代の材料開発を行っております。また、リチウムイオン二次電池及び次世代蓄電池の材料(電解液、セパレータ、導電性炭素材料など)の開発、ポリイミドフィルム及びワニス等関連製品の開発、窒化珪素セラミックスの開発、LEDを含む半導体分野向け有機金属化合物や高純度薬品の開発、新規高機能ガス分離膜の開発、次世代通信機器向け高周波デバイスの開発、航空宇宙材料(熱制御フィルム、チラノ繊維など)の開発、C1ケミカル及び二価フェノール誘導品の開発、環境型コーティング材料(水系ポリウレタンディスパージョン等)の開発等を行っております。主な成果としては、当社と日立マクセル㈱との合弁会社である宇部マクセル㈱が生産・販売を行なっている「高機能・塗布型セパレータ」が、トヨタ自動車㈱から昨年12月に発売された4代目「プリウス」に搭載のリチウムイオン電池に採用されたことがあげられます。当セグメントに係る研究開発費は92億5千5百万円です。
医薬
製薬会社などとの共同研究開発や独自に進めている創薬研究開発による新規医薬品の創製、受託医薬品原体の製造プロセスの開発等を行なっております。主な成果としては、㈱三和化学研究所との共同研究により見出した開発コード「SK-1405」について、新規そう痒症治療薬として日本における共同開発を行なうことを基本合意し共同開発契約を締結、第Ⅰ相臨床試験を開始したことがあげられます。当セグメントに係る研究開発費は25億9百万円です。
建設資材
セメント分野では、廃棄物利用技術の開発、コンクリートのニーズの多様化に対応したセメント・コンクリートの開発、生コン技術力強化のための管理技術等の開発を行っております。建材分野では、SL材の更なる競争力の強化、左官材や防水材の性能向上、リニューアル資材の新規商品・工法の開発、耐震補強設計とその材料・工法の開発、環境資材の開発を行っております。その他にはカルシウムやマグネシウム系材料を用いた環境資材の研究開発等を行っております。主な成果としては、昨年4月に耐塩害・高耐久性コンクリート用混和材「クロロガード」の販売を開始したこと、船舶用セルフレベリング材「U/DシップレベラーA」について、昨年8月に国土交通省仕切り甲板(A60級)の型式承認書を取得したこと、軽量・速硬タイプ断面修復材「U-リペアライトEX」の開発上市があげられます。当セグメントに係る研究開発費は12億6千5百万円です。
機械・金属成形
機械分野の研究開発は連結子会社の宇部興産機械㈱で行っております。
金属成形機では、新規ハイブリッド鋳造システムの商品開発、押出プレス新機種の開発等を行なっております。樹脂成形機では、大型油圧サーボ式射出成形機新機種の開発、型内加飾成形技術、発泡成形など環境対応型成形プロセスの開発を行なっております。また、海外顧客向け成形機リモートサービスシステムの開発として、ダイカストマシン海外顧客に対して設備診断システムのモニター運用を開始しました。主な成果としては、東洋機械金属㈱との共同開発機である中型機UB500iCとUB800iCダイカストマシンの上市があげられます。当セグメントに係る研究開発費は3億2千9百万円です。
エネルギー・環境
石炭等のエネルギーコストの低減及び地球環境問題への対応のため、低品位炭利用技術、バイオマス等非化石燃料と石炭の混焼技術、及び当社自家発・IPPの効率化・運用性改善のための各種技術の調査及び開発に取り組んでおります。また、電力、石炭に次ぐ第3の柱として、再生可能エネルギーの導入拡大等のエネルギー政策に対応した新規バイオマス燃料の供給事業に関する技術開発を進めております。当セグメントに係る研究開発費は3億4千7百万円です。
全社共通
上記セグメントに属さない研究開発としては、次世代事業の創出を目的に新炭素源・次世代ケミカルズ、環境・エネルギー、ヘルスケア、情報・電子を新規重点分野として定めて研究開発を行いました。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告年度における収益・費用の数値に影響を与える将来に関する見積り及び仮定が必要であり、過去の実績やその他の様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
売上高
売上高は前連結会計年度に比べ、9百万円(△0.0%)減少し、6,417億5千万円となりました。この要因は、「第2 事業の状況 1.業績等の概要」に記載のとおりです。
売上原価
売上原価は前連結会計年度に比べ、190億2千3百万円(△3.5%)減少し、5,199億6千万円となりました。これは、主に化学セグメントにおけるアンモニア等の原料価格の低下などによるものです。
販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は前連結会計年度に比べ、17億5千3百万円(2.2%)増加し、803億8千2百万円となりました。これは、主に給与手当の増加などによるものです。
営業利益
営業利益は前連結会計年度に比べ、172億6千1百万円(71.5%)増加し、414億8百万円となりました。これは、化学セグメントにおいてアンモニア等の原料コストが改善したことなどによるものです。
売上高営業利益率は、前連結会計年度に比べ、2.7ポイント上回り、6.5%となりました。
営業外損益
営業外損益は前連結会計年度に比べ、8億6千9百万円悪化し、△17億8千8百万円となりました。これは、前連結会計年度に比べ、持分法による投資利益が14億3千7百万円増加したものの、為替差損益が22億7千万円悪化したことなどによるものです。
経常利益
経常利益は前連結会計年度に比べ、163億9千2百万円(70.6%)増加し、396億2千万円となりました。
特別損益
特別損益は前連結会計年度に比べ、72億3千万円悪化し、119億6千7百万円の損失となりました。当連結会計年度における損失の主な内容は、減損損失90億8千万円です。減損損失は、収益性の悪化した当社ポリイミド製造設備や、中国の連結子会社における電解液製造設備等に対するものです。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度に比べ、91億6千2百万円(49.5%)増加し276億5千3百万円となり、法人税、住民税及び事業税や法人税等調整額、非支配株主に帰属する当期純損失を差し引いた親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ44億6千2百万円 (30.5%)増加し、191億1千1百万円となりました。
(3)当連結会計年度の財政状態の分析
総資産
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ、317億6千3百万円(△4.5%)減少し、
6,797億8千3百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金が増加しましたが、受取手形及び売掛金が減少したことなどにより、58億9千1百万円(△2.1%)減少し、2,769億2千5百万円となりました。
固定資産は、有形固定資産が減少したことなどにより258億1千6百万円(△6.0%)減少し、
4,027億4千4百万円となりました。
繰延資産は、社債発行費が減少したことにより5千6百万円減少し、1億1千4百万円となりました。
負債
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ、317億7千5百万円(△7.5%)減少し、
3,901億6千1百万円となりました。
流動負債は、短期借入金が減少したことなどにより、62億4千4百万円(△2.6%)減少し、
2,332億5千6百万円となりました。
固定負債は、社債や長期借入金が減少したことなどにより255億3千1百万円(△14.0%)減少し、1,569億5百万円となりました。
純資産
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ、1千2百万円(0.0%)増加し、2,896億2千2百万円となりました。
株主資本は、剰余金の配当により53億円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が191億1千1百万円増加したことなどにより136億6千6百万円(5.5%)増加し、2,630億3千2百万円となりました。
その他の包括利益累計額は、為替換算調整勘定が79億7百万円減少したことなどにより104億3千1百万円(△74.7%)減少し、35億3千万円となりました。
非支配株主持分は、32億5千5百万円(△12.7%)減少し、224億6千3百万円となりました。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度に比べ、2.2ポイント増加し39.2%となりました。
(4)資本の財源及び資金の流動性についての分析
営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は、前連結会計年度に比べ、64億3千4百万円増の686億2千8百万円となりました。これは前連結会計年度に比べ、税金等調整前当期純利益が増加(91億6千2百万円増)したことなどによるものです。
投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ、87億1千5百万円減の337億2千6百万円となりました。これは前連結会計年度に比べ、有形及び無形固定資産の取得による支出が減少(74億7千6百万円減)したことなどによるものです。
財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ、170億8千9百万円増の310億円となりました。これは、当連結会計年度は社債の発行による収入がなかったことや、長期借入れによる収入が減少(66億8千4百万円減)したことなどによるものです。
この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、現金及び現金同等物に係る換算差額等を含め、前連結会計年度末に比べ、42億2千4百万円(11.4%)増の411億8千8百万円となりました。