第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度の経済情勢は、国内では、円高是正の定着、政府による一連の経済対策の効果等により、景気回復の動きが見られた。海外では、中国その他新興国の経済成長のテンポが緩やかになったものの、米国では堅調な回復が続き、期後半には、欧州も緩やかながら持ち直しの兆しが見え始めるなど、国内外の経済は総じて回復基調となった。

当社グループを取り巻く事業環境については、一部に市況・出荷の低迷が続くなど、厳しい状況が残ったが、上記の経済情勢を背景に、全体の事業環境は改善した。

このような状況の下、当社グループは、販売価格の是正、販売数量の拡大に引き続き注力するとともに、徹底した合理化によるコスト削減に取り組み、全社を挙げて業績改善に努めてきた。

この結果、当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2,913億円増加し、2兆2,438億円となった。損益面では、営業利益は1,008億円、経常利益は1,111億円、当期純利益は370億円となり、それぞれ前連結会計年度に比べ増加した。

当連結会計年度のセグメント別の業績の概況は、次のとおりである。

 

(基礎化学)

メタアクリルや合成繊維原料は市況の低迷が続き、出荷も低調に推移した。一方、円高の是正による在外子会社の邦貨換算差の影響があった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ234億円(8.9%)増加し2,869億円となったが、営業損益は前連結会計年度に比べ45億円悪化し109億円の損失となった。

また、生産規模は、約2,050億円となった。(販売価格ベース)

 

(石油化学)

合成樹脂や石油化学品は原料価格の上昇により市況が上昇したが、ラービグ リファイニング アンド ペトロケミカル カンパニー(ペトロ・ラービグ社)における設備修繕の影響等により海外子会社の出荷が減少した。また、円高の是正による在外子会社の邦貨換算差の影響があった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ982億円(14.1%)増加し7,920億円となり、営業損益は前連結会計年度に比べ82億円改善し49億円の利益となった。

また、生産規模は、約5,160億円となった。(販売価格ベース)

 

(情報電子化学)

液晶ディスプレイ材料である偏光フィルムは需要の増加により販売が増加した。また、前連結会計年度に稼働を開始したタッチセンサーパネル設備が、当連結会計年度は期を通じて販売に寄与した。この結果、円高是正の影響も加わり、売上高は前連結会計年度に比べ623億円(20.8%)増加し3,623億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ232億円増加し349億円となった。

また、生産規模は、約3,070億円となった。(販売価格ベース)

 

 

(健康・農業関連事業)

農薬は生産能力の増強や拡販により海外で除草剤を中心に出荷が増加した。メチオニン(飼料添加物)の市況は軟化したが、出荷は拡販により増加した。また、円高の是正による在外子会社の邦貨換算差の影響もあった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ644億円(24.5%)増加し3,270億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ119億円増加し382億円となった。

また、生産規模は、約1,730億円となった。(販売価格ベース)

 

(医薬品)

国内では、アイミクス(高血圧症治療剤)、メトグルコ(ビグアナイド系経口血糖降下剤)、トレリーフ(パーキンソン病治療剤)が大きく伸長したが、特許権の存続期間満了等による既存品の出荷減少や生産受託の減少により販売が減少した。北米では、ゾペネックス(短時間作用型β作動薬)の出荷が独占販売期間の終了により大きく減少したが、ラツーダ(非定型抗精神病薬)の出荷が大きく伸長したほか、円高の是正による邦貨換算差の影響もあった。この結果、売上高は前連結会計年度に比べ402億円(10.6%)増加し4,188億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ162億円増加し471億円となった。

また、生産規模は、約3,630億円となった。(販売価格ベース)

 

(その他)

上記5部門以外に、電力・蒸気の供給、化学産業設備の設計・工事監督、運送・倉庫業務、物性分析・環境分析等を行っている。これらの売上高は前連結会計年度に比べ29億円(5.3%)増加し568億円となり、営業利益は前連結会計年度に比べ4億円増加し84億円となった。

 

(2) キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加や運転資金の改善等により前連結会計年度に比べ228億円増加し、1,944億円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度には子会社の大日本住友製薬株式会社による米国のボストン バイオメディカル インコーポレーテッド(BBI社)およびエレベーション ファーマシューティカルズ インコーポレーテッド(現サノビオン レスピラトリー ディベロップメント インコーポレーテッド(SRD社))買収による支出があったこと等により、前連結会計年度に比べ306億円支出が減少し1,352億円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動および投資活動によるキャッシュ・フロー)は、前連結会計年度の58億円の収入に対して、当連結会計年度は592億円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、591億円の支出となった。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度末に比べ54億円増加し1,323億円となった。

 

 

2 【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績及び受注状況

当社グループ(当社および連結子会社)の生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産製品の規模は小さいため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。

このため生産の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメント別の業績の概況に関連付けて示している。

 

(2) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

基礎化学

286,898

8.9

石油化学

792,021

14.1

情報電子化学

362,255

20.8

健康・農業関連事業

326,967

24.5

医薬品

418,809

10.6

その他

56,844

5.3

合計

2,243,794

14.9

 

(注) 1 上記販売実績は、外部顧客に対する売上高を示している。

2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。

 

 

 

3 【対処すべき課題】

今後の経済動向は、国内は消費税率引き上げ後の個人消費減速の懸念があるものの、政府の経済対策による下支えもあり、回復基調が持続するものと思われる。海外では、新興国は減速の傾向にあるが、米国は引き続き底堅い成長が見込まれ、欧州は回復テンポが緩慢ながら持ち直しに向かうことが期待されるなど、先進国経済を中心に緩やかな回復が続くものと予想される。しかしながら、米国の量的金融緩和策縮小の影響や新興国経済の動向等は不確実で、下振れリスクの懸念もあることから、楽観はできないものと思われる。

こうした中、当社グループを取り巻く事業環境についても、アジアをはじめとする海外市場の動向や原料価格の上昇など、先行き不透明な要因があり、引き続き、これらの動向を注意深くみていく必要があると考えている。

このような状況の下で、当社グループは昨年4月にスタートした中期経営計画(平成25年度~平成27年度)の目標達成に総力を挙げて取り組んでいる。今後も引き続き強い決意と覚悟をもって次の諸課題に取り組んでいく。

① 事業構造改善の断行

スペシャリティケミカル領域の事業拡大(偏光フィルム、タッチセンサーパネル等のディスプレイ材料の拡販や除草剤スミソーヤの生産能力増強等)とバルクケミカル領域の事業再構築(国内石油化学事業の再構築、メタアクリル事業の再構築等)に取り組み、事業ポートフォリオの高度化を推進し、事業環境に大きく左右されることなく、安定した収益とキャッシュ・フローを生み出す経営基盤の構築を目指していく。

② 強固な財務基盤の構築

平成27年度末までに有利子負債残高を9,000億円未満に抑制するという目標の下、合理化および大型投資案件からの収益の確実な回収による収益性の改善、投資の厳選による投資キャッシュ・フローの抑制、資金回収期間の短縮による資産効率向上の3つの取り組みを進めていく。

③ 次世代事業の開発

環境・エネルギー、ICT(情報・通信技術)、ライフサイエンスの3分野に重点的に取り組む方針を継続し、当社の強みを生かした研究テーマをより的確に見定めるとともに、激しい競争に打ち勝つ事業の創出につながるコア技術にリソースを集中していく。

④ グローバル経営の深化

国境・国籍を越えた、事業の最適な組み合わせの実現に引き続き取り組むとともに、世界4極(中国、東南アジア・オセアニア、米州、欧州)に設置した地域統括会社を中心に、当社グループのグローバルなビジネス展開をサポートする体制を整えていく。

⑤ コンプライアンスの徹底、安全・安定操業の維持

コンプライアンスと安全・安定操業は当社グループが持続的に発展していくための最も基本的な要素で、経営の根幹をなすものであるとの認識に立ち、引き続き、国内外のグループ全体のコンプライアンス体制の維持・強化を図るとともに、安全・安定操業向上の施策に取り組んでいく。

 

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価および財政状況等に影響を及ぼす主要なリスクには以下のようなものがある。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

1.市場や供給に係るリスク

当社グループは、総合化学メーカーとして様々な事業を行っており、事業に関わるリスクは多種多様である。事業に係る市場リスクや供給リスクについては、主に以下のようなものがある。

 

・当社グループの事業は価格競争に晒されている。海外企業の国内市場参入、関税引き下げなどによる輸入品の流入、ジェネリック品の台頭など、様々な理由により当社グループの製品群は今後も厳しい価格競争に晒されるものと予想される。当社グループはコストの低減に努めているが、価格競争を克服できない場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・当社グループの海外売上高は売上高の5割以上を占め、基礎化学部門、石油化学部門などの製品は特にアジア市場での販売が多い。また、情報電子化学部門は、中国や韓国、台湾の特定顧客向けの販売が大きな比重を占め、健康・農業関連事業部門の一部製品は特定顧客へカスタムメードで製品を供給している。アジア市場での経済情勢の悪化、あるいは顧客企業の業績状況の変化などによる値下げ要求が発生した場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・石油化学部門の主要原料であるナフサは、中東地域の治安や世界の経済情勢に多大な影響を受け、時に急激な価格変動を起こすことがある。ナフサの価格が急激に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・ナフサやその他の原料品の一部については、特定の地域や購入先に依存している。購入先を複数にするなど、主要原料が購入できないリスクを低減するように努めているが、時に主要原料の不足が生じないという保証はない。必要な主要原料が確保できない場合には、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・情報電子化学部門の製品は、技術革新のスピードが速く、タイムリーに新製品を開発・提供していく必要がある。当社グループが顧客ニーズを満足させる新規製品を有効に開発できない場合、また他社において画期的な技術革新がなされた場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・健康・農業関連事業部門の農薬や家庭用殺虫剤の出荷は、世界各地域における異常気象等の理由による作物の育成状況や病害虫の発生状況に左右される。また飼料添加物は急激な価格変動を起こすことがある。作物の育成状況が悪くなった場合、病害虫の発生が少なくなった場合、或いは急激な価格変動が起こった場合、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

・医薬品部門では、国内において、急速な少子高齢化が進むなか医療保険制度改革が実行され、その一環として医療報酬体系の見直し、薬価制度改革などの議論が続けられている。薬価制度改定を含む政府の医療費抑制策が、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

 

2.為替レート変動に係るリスク

当社グループは、国内で製造した製品を海外に輸出するとともに海外から原料品を輸入しているが、製品輸出高は原料品輸入高を上回っている。外国通貨に対して円高が進行した場合、海外で生産された製品に対する価格競争力が低下することに加え、輸出手取額の減少が輸入支払額の減少を上回ることになる。このようなリスクに対しては、為替予約や円建輸出取引を行うことによりリスクを最小限にするように努めているが、中長期的な為替レートの変動によるリスク等を完全にヘッジすることは出来ないため、円高の進行は当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成のために円換算されている。換算時の為替レートにより、円換算後の価値が影響を受ける可能性があり、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

3.金利変動に係るリスク

当社グループは、資金需要に対してその内容や財政状況および金融環境を考慮し、調達の金額・期間・方法等を判断している。今後の金利の変動に備え、固定金利・変動金利を適宜組み合わせて調達を行っているが、金利が上昇した場合には支払利息が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

4.株式相場変動に係るリスク

当社グループが保有する有価証券の多くは、時価のある有価証券であるため、株式相場が大幅に下落した場合、減損が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

5.固定資産の減損に係るリスク

当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用している。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

6.繰延税金資産の取崩しに係るリスク

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っているが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

7.退職給付債務に係るリスク

当社グループの従業員退職給付費用および債務は、年金資産の運用収益率や割引率などの数理計算上の前提に基づいて算出されている。年金資産運用環境の悪化により前提と実績に乖離が生じた場合などは、将来の退職給付費用が増加し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

 

 

8.その他経営全般に係るリスク

(海外事業展開)

当社グループは、中東やアジアなど海外での事業活動を今後一層拡大していくこととしている。海外における事業活動には法律や規制の変更、労務環境の違いによる争議等の発生、人材の採用と確保の難しさ、テロ・戦争・その他の要因による社会的混乱などのリスクが内在しており、これらのリスクが顕在化した場合は、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

当社とサウジアラビアン オイル カンパニー(サウジ・アラムコ社)が共同で設立した「ペトロ・ラービグ社」は、サウジアラビアのラービグにおいて、石油精製・石油化学の統合コンプレックス事業(「ラービグ第1期計画」)を運営している。当社は、プロジェクト総投資額に対し、不測の事態による損害に備え、独立行政法人日本貿易保険の規約・限度額に従い、海外投資保険等に加入している。
  また、当社はサウジ・アラムコ社と共同でエタンクラッカーの増設や芳香族プラントの新設を通して、付加価値の高いさまざまな石油化学製品を生産する「ラービグ第2期計画」について、実行に向けての作業を進めている。なお、「ラービグ第2期計画」に係るEPC(エンジニアリング・調達・建設)契約をはじめとする各種プロジェクト契約に基づく支払いについて、両社が共同で立て替えている。

 

(企業買収・資本提携)

当社グループは、事業拡大や競争力強化等を目的として、国内外において企業買収・資本提携等を実施しているが、当社グループおよび出資先企業を取り巻く事業環境の変化等により、当初期待していたシナジー効果を得られない可能性がある。また、出資先企業の経営成績、財政状態の悪化による企業価値の低下等により、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(研究開発)

当社グループは、需要家のニーズに合わせた新技術・新製品をスピーディーに上市するため、積極的に研究開発を行っている。当社グループの研究開発は、次世代事業の創生のための探索研究を含んでいるため研究開発期間が長期間に亘る場合があり、また、研究開発テーマが実用化されず、新製品の開発が著しく遅延または断念される場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(知的財産権)

当社グループは、他社と差別化できる技術とノウハウを蓄積し事業の競争力を強化してきたが、当社グループ独自の技術・製品とノウハウの一部は、厳正な管理を行っているものの、予期せぬ事態により外部に流出する可能性があり、また、特定の地域ではこれらの知的財産の完全な保護が不可能なため、第三者が当社グループの知的財産を使用して類似製品を製造することを効果的に防止できない可能性がある。また将来、知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされる可能性がある。

 

 

(製品の品質)

当社グループは、世界的に認められている厳格な品質管理基準に従って、各種製品を製造しているが、すべての製品について欠陥が無く、将来に亘ってリコールが発生しないという保証はない。大規模な製品事故は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

また、農薬や医薬品等は各国の厳しい審査を受けて承認されているが、科学技術の進歩や市販成績が蓄積された結果から、新たに品質問題や副作用が見つかることもある。このように上市後予期せぬ品質問題や副作用が発見された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(事故・災害)

当社グループは、製造設備の停止や製造設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検を実施している。しかしながら、製造設備で発生する事故、自然災害等による影響を完全に防止・軽減できる保証はない。また、当社グループの事業活動におけるシステム・ネットワークへの依存度は年々拡大しており、セキュリティの高度化などによりシステムやデータの保護に努めているが、停電、自然災害やコンピューターウィルス、ハッカー等のシステム犯罪などにより、システム・ネットワーク障害が生じる可能性がある。

事故等により、工場周辺に物的・人的被害を及ぼした場合、あるいは、システム・ネットワーク障害が発生した場合、事業活動に支障をきたすほか多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を与え、当社グループの経営成績ならびに財政状況に悪影響を及ぼす可能性がある。

 

(規制変更)

当社グループは、事業展開する各国の規制に従い、業務を遂行している。将来における法律、規則、政策、実務慣行、解釈およびその他の政策変更ならびにそれらによって発生する事態が、当社グループの業務遂行や経営成績等に悪影響を及ぼす可能性がある。また将来的に環境および化学品安全等に対する法的規制が強化され、新たな対策コストが発生する可能性がある。

 

(訴訟)

当社グループは、国内および海外事業に関連して、訴訟、係争、その他の法律的手続きの対象となるリスクがあり、将来重要な訴訟等が提起された場合には、当社グループの経営成績ならびに財政状況に重要な悪影響を及ぼす可能性がある。

 

5 【経営上の重要な契約等】

技術導入関係

契約会社名

契約相手先

国名

内容

対価

有効期間

大日本住友製薬

株式会社

アルミラル社

スペイン

エバスチン

に関する技術

ランニング・

ロイヤリティ

昭和63年1月~平成24年12月

以後5年間ずつ自動更新

大日本住友製薬

株式会社

ファイザー社

イギリス、
パナマ

アムロジピン

に関する技術

ランニング・

ロイヤリティ

平成20年10月~平成26年8月

以後は無償で販売できる。

大日本住友製薬

株式会社

ブリストル・
マイヤーズ株式会社

日本

イルベサルタン

に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成18年7月~
発売から15年間または
特許満了日の長い方

大日本住友製薬

株式会社

ニューロクライン社

アメリカ

インディプロン

に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成19年10月~
発売から15年間または
特許満了日の長い方

大日本住友製薬

株式会社

インターセプト
ファーマシューティ
カルズ社

アメリカ

ファルネソイドX
受容体作動薬
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成23年3月~

国毎に、最初または
第2適応症の上市から10年間、または独占期間
のどちらか長い方

大日本住友製薬

株式会社

エジソン社

アメリカ

EPI-743および
EPI-589
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成25年3月~

発売から10年間または
独占期間のどちらか長い方

協議により延長可能

サノビオン社

ビアル・ポルテラ・
アンド・シーエー社

ポルトガル

エスリカルバゼピン
に関する技術

一時金

平成19年12月~
国毎に、発売から10年間、
特許満了日、データ独占期間
のうちいずれか長い方

サノビオン社

タケダ社

ドイツ

シクレソニド
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成20年1月~
発売から15年間

 

 

以下の契約については、当連結会計年度において解約した。

技術導入関係

契約会社名

契約相手先

国名

内容

対価

有効期間

大日本住友製薬

株式会社

武田薬品工業
株式会社

日本

セフタロリン・
フォサミル
に関する技術

一時金

ランニング・

ロイヤリティ

平成23年3月~
発売から10年間または
特許満了日の長い方

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社および連結子会社)は、事業拡大と収益向上に寄与すべく、独自の優位性ある技術の確立を基本方針とし、各社が独自に研究開発活動を行っているほか、当社グループ全体としての効率性を念頭に置きながら、互いの研究開発部門が密接に連携して共同研究や研究開発業務の受委託等を積極的に推進している。
 当連結会計年度においては、平成25年度から平成27年度までの中期経営計画に従い、環境・エネルギー、ライフサイエンス、ICT(情報・通信技術)の3分野に研究資源を重点投入するとともに、異分野技術融合による新規事業の芽の発掘とその育成に取り組んできた。
 これに基づき、当連結会計年度の研究開発費は、前連結会計年度に比べ163億円増加し、1,413億円となった。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりである。

 

基礎化学分野では、カプロラクタム、メタアクリルを中心とする既存バルク製品の競争力強化のための触媒・プロセス改良や、機能性に特徴を持つ各種製品開発に積極的に取り組んでいる。当連結会計年度において、無機材料関連では、独自に開発したチタン酸アルミニウム製のディーゼルエンジンすす除去フィルターの新しい工場がポーランドで完成し、商業運転開始に向けて最終調整中である。また、新たに触媒塗布量増大が可能な次世代用フィルターや直噴型ガソリンエンジン向けのフィルターの開発を進めている。高純度アルミナについては、愛媛工場の第2プラントに続いて韓国のプラントが稼働した。LED基板(サファイア)用途の新グレードを上市するとともに、リチウムイオン電池用グレードの生産性向上技術確立の目処を得た。アルミニウム分野では、高純度アルミニウムの特徴を活かした超電導向け等極低温用途の開拓に引き続き注力し顧客評価を進めるとともに、世界最高純度である7Nクラスの超高純度アルミニウムが得られる精製技術の確立に目処を得た。メタアクリルモノマーに関しては、性能が大幅に向上した触媒を開発し、その工場試作に成功した。メタアクリル樹脂関連では、パイロットで検討してきた高機能製品をシンガポールのPMMAプラントにて、その実機試作を実施した。今後早期の新製品上市に繋げてゆく。化成品関連では、機能性ゴム薬品の上市候補品についてタイヤ用途及び防振ゴム用途で顧客採用に向けた進捗があった。機能性樹脂分野でも環境対応を切り口とした新規の水系接着剤用原料開発を進め、いくつかの用途で有望な材料を見出し、顧客で良好な評価が得られている。

なお、基礎化学部門の研究開発費は64億円であった。

 

石油化学分野では、事業のグローバル競争力強化のために、石油化学品、合成樹脂および合成ゴム製品の製造プロセスの改良、既存素材の高性能化や新規高付加価値製品の開発に取り組んでいる。当連結会計年度において、合成ゴムでは、省燃費タイヤグレードのさらなる燃費性能の改良や加工性の改善検討が進展した。ポリエチレンでは、太陽電池用封止向け材料の性能改良に進展があった。具体的には、太陽電池の大規模発電で出力低下に繋がるPID(Potential Induced Degradation)現象を抑えることが可能な封止材の開発に成功、顧客での評価を開始した。ポリプロピレンでは、軽量化等の環境ニーズに対応した自動車材や機能性フィルム材に求められる高性能ポリプロピレンの材料、及び、その製造プロセスの開発に進展が見られた。機能性材料としては塗布型ガスバリアコーティング剤の開発に進捗があり、多数の顧客で実用評価を開始した。また、研究開発活動のスピードアップと新製品開発の可能性拡大を目指して研究組織の大幅な改編を行った。具体的には、研究開発の機能別にまとめたユニット編成に変更することで、機動性と弾力性の高い組織体制を構築し、研究開発体制の強化を実施した。

 なお、石油化学部門での研究開発費は76億円であった。

 

情報電子化学分野では、IT関連企業の先端技術に対応する新規材料・部材・デバイスに関する新製品の開発に、引き続き積極的に取り組んでいる。当連結会計年度は、機能性光学フィルム分野において、当社が培ってきた差別化技術に基づく最先端製品の開発・製造をさらに推進した。具体的には、大型液晶TV用光学フィルムにおいては、従来から進めていたコスト競争力強化を目的とした製造技術のグローバル展開を一層進めるとともに、独自フィルムを組み込んだ部材構成の新製品を上市した。小型液晶用光学フィルムにおいては、国内外の需要家の技術要望を先取りし、スマートフォン、タブレット向けの製品の増産体制を整備した。また、次世代ディスプレイをにらんだ革新的な新製品・新技術の開発を推し進め、今後量産化技術をブラッシュアップし、新製品上市へ向けた対応を加速していく。

 

電子材料分野では、半導体向け液浸ArFレジスト・厚膜i線レジストの開発や高性能液晶パネル向け高輝度・高色再現性カラーレジストの開発が結実し、いずれも国内外の需要家から高い評価を得ている。また、スーパーエンジニアリングプラスチックの分野では、既存材料の置き換えに加え、耐熱・成形加工性に優れた液晶性ポリマーの特性を活かし、今後伸びる新しい分野での採用を実現し、非晶性ポリエーテルスルホンでは航空機向けCFRP、人工透析膜などの用途におけるビジネスを拡大した。
 エネルギー関連分野では、高い成長が続くリチウムイオン二次電池用部材において、耐熱セパレータにおいては当社の技術が高く評価されたことで事業が拡大している。正極材料においては、当社の強みを活かした高性能・低コスト製品の開発を加速し、市場に紹介を始めた。
 表示デバイス分野では、タブレットPCやスマートフォンに使用されるタッチセンサーパネルに関する設計・開発・製造を韓国の関係会社(東友ファインケム)にて精力的に実施している。今期は、当社が培ってきたカラーフィルター技術を基盤とした最先端タイプのタッチセンサーパネルの開発に成功した。

なお、情報電子化学部門の研究開発費は150億円であった。

 

健康・農業関連事業分野では、コア事業強化と周辺事業への展開および川下化を推進し、健康・農業関連事業を取り巻く環境の変化に柔軟に対応しつつ、新製品、新技術の開発や製造プロセスの改善・向上に積極的に取り組んでいる。当連結会計年度において、農薬関連事業については、国内では、園芸用殺菌剤1剤、水稲用除草剤2剤、計3剤の新製品の農薬登録を取得し、順次上市を進め、製品ラインナップの拡充を図っている。また、家庭用園芸、ゴルフ場、森林防除等の分野にも子会社を通じて農薬・肥料製品を展開しているほか、種子やかん水資材、農産物販売に加え、住化ファームを通じた農業法人の運営、下期からは石油化学部門から農業用ポリオレフィンを販売するサンテーラ株式会社も当部門に移管し、総合解決型農業関連企業として更なる変革に取り組んでいる。海外では、米国において、種子処理用殺菌剤の新規登録取得ならびに、水稲用除草剤(混合剤)を上市した。欧州においては、果樹野菜用殺菌剤の新規登録をオーストリア、チェコ等で取得した。南米においては、果樹用殺菌剤の登録をチリで取得し、上市した。また、殺虫剤の新規登録を花卉、野菜向けにエクアドル、コロンビアにおいて取得した。アジア地域では、果樹用殺菌剤、水稲用除草剤(混合剤)を韓国で上市し、果樹用殺虫剤の適用拡大を中国で実施した。また、資本提携している豪州農薬会社ニューファーム社とは、混合剤新製品の商業化に向けた開発に取り組んでいる。生活環境事業については、家庭用殺虫剤・業務用殺虫剤・動物用殺虫剤・ヒューマンヘルスケア・エアプロテクションの各重点分野における新製品開発を推進している。家庭用殺虫剤については、国内において優れた速効性と広いスペクトルを有する新規有効成分を含む高性能エアゾール製品、ならびに、屋外での広範囲の虫よけ機能を有する噴霧デバイスを上市し、東南アジアにおいて、蚊に優れた効果を示す蚊取り線香用の新規有効成分を含む製品を上市した。業務用殺虫剤については、国内においてシロアリ対策用新製品を上市するとともに、海外においても北米を中心としてトコジラミなどの難防除害虫対策新製品の開発を推進している。また、動物用殺虫剤については国内外においてペット用駆虫剤の新商品開発を推進しており、ヒューマンヘルスケア分野については他社との共同開発によりヒト疥癬症対策製品の薬事承認を取得した。エアプロテクション分野については業務用芳香消臭デバイスの新製品を上市し、新規市場の開発を加速している。熱帯感染症対策事業については、シンガポールでは、優れた速効性と拡散性を有する空間散布剤、マリ等のアフリカ諸国でピレスロイド抵抗性対策蚊帳を上市した。マラリア対策用防虫蚊帳は、国際入札ビジネスの他、ケニア、ウガンダの一般商業市場において上市しているが、ナイジェリアなどの西アフリカ諸国に加え、ASEAN各国での一般商業市場への進出も検討を開始した。また、熱帯感染症に対する総合防除に係る製品強化のため、新しいコンセプトのピレスロイド抵抗性対策蚊帳、室内残留散布剤や幼虫防除剤などの蚊帳以外の防除手段の開発も推進している。アニマルニュートリション事業については、顧客サービスや研究開発強化のため、家禽栄養に関する試験研究施設をマレーシアに開設し、飼料分析を実施するアニマル ニュートリション テクニカル センターの機能を強化している。医薬化学品事業では、顧客上市時期に対応したジェネリック原薬の製法開発と商用生産とを継続的に進め、当社独自製法による新規テーマ獲得に積極的に取り組んでいる。また、新規分野である核酸医薬品の製造ライセンスを取得し、本格製造に向けて準備中である。

なお、健康・農業関連事業部門の研究開発費は229億円であった。

 

 

医薬品分野では、アンメット・メディカル・ニーズの高い精神神経領域とがん領域を重点領域とし、革新的な医薬品の創製を目指しており、世界に先駆ける分野や先端的技術領域での事業展開を図るべく自社研究、技術導入、ベンチャーやアカデミアとの共同研究等あらゆる手法を取り入れている。当連結会計年度においては、大日本住友製薬株式会社、日本メジフィジックス株式会社保有の先端技術を活かした創薬研究等を進めるとともに、国内外の大学を含む研究機関等とのアライアンスも積極的に進めている。

医療用医薬品の研究初期段階では、ゲノミクス、プロテオミクス、メタボロミクス等自らが保有する先端技術などの活用により研究効率の向上に取り組むとともに、iPS細胞等の最先端サイエンスを創薬に応用する取組を進めている。また、京都大学iPS細胞研究所と難治性希少疾患の治療薬の創製を目指した共同研究を推進中であり、産官学連携プロジェクトである「再生医療実現拠点ネットワークプログラム」にも積極的に参加している。
  研究後期および開発段階では、重点領域を中心に他の領域も含めて、グローバルな視点からグループ全体でのポートフォリオの最適化を行っている。加えて、製品価値の最大化を目指した剤形展開等の製品ライフサイクルマネジメントにも積極的に取り組んでいる。
  精神神経領域では、グローバル戦略品である非定型抗精神病薬ルラシドン塩酸塩について、次の進展があった。①米国において昨年6月に、カナダにおいて本年3月に、双極Ⅰ型障害うつの効能追加の承認をそれぞれ取得した。②欧州において、提携先の武田薬品工業株式会社が、中央承認審査方式による統合失調症の販売許可を本年3月に取得した。③日本において、双極Ⅰ型障害うつおよび双極性障害メンテナンスを対象にした第Ⅲ相臨床試験を昨年9月に開始した。また、抗てんかん剤「アプティオム」については、米国において昨年11月に承認を取得すると共に、カナダにおいて昨年6月に承認申請を行った。さらに、非定型抗精神病薬ブロナンセリンについて、 中国において昨年9月に承認申請を行った。
  がん領域では、がん幹細胞への抗腫瘍効果を目指して創製されたBBI608について、次の進展があった。①米国において、胃がん(併用)を対象とした第Ⅲ相臨床試験を本年3月に開始した。②日本において、胃がん(併用)を対象とした第Ⅰ相臨床試験を昨年12月に開始した。③米国およびカナダにおいて、消化器がん(併用)を対象とした第Ⅰ相臨床試験を昨年11月に開始した。また、固形がん・血液がん治療剤WT2725について、日本において、固形がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を昨年9月に開始した。なお、BBI608の結腸直腸がん(単剤)を対象にした第Ⅲ相国際共同治験において、新規の患者登録および登録済みの患者への投与が本年5月に中止されることとなった。
  その他のスペシャリティ領域および新規分野では、ミトコンドリア病治療剤EPI-743について、日本において、リー脳症を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を昨年10月に開始した。また、細胞医薬・再生医療に関して、昨年12月に株式会社ヘリオスとの間で、加齢黄斑変性等の眼疾患を対象とした、iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いた細胞医薬品の日本における共同開発契約を締結し、また本年2月には共同開発により製品化される細胞医薬品の製造や販売促進を行う合弁会社として、同社と株式会社サイレジェンを設立した。
  放射性医薬品では、前立腺がんの放射線治療用密封小線源の関連製品の製造承認取得、抗がん剤のコンパニオン診断薬に関するライセンス契約締結と国内臨床試験開始、パーキンソン症候群およびレビー小体型認知症を対象とする脳疾患診断薬の発売を実施した。
  上記医薬品のほかには、食品素材・食品添加物および化学製品材料、動物用医薬品等の研究開発を実施している。
 なお、医薬品部門の研究開発費は719億円であった。

 

全社共通およびその他の研究分野では、上記5事業分野の事業領域を外縁部へ積極拡大するための研究および触媒技術をはじめとする共通基盤技術開発とともに、既存事業の枠に属さない新規事業分野への展開を図るべく、環境・エネルギー、ICT、ライフサイエンスの各分野で研究開発に取り組んでいる。当連結会計年度においては、次の進展があった。ICT分野では、ディスプレイ用途において、引き続き高分子有機EL材料の性能向上を図るとともに、高解像度用途への印写技術を開発した。また、プリンテッド・エレクトロニクス技術を使った有機半導体の開発を進めている。環境・エネルギー分野では、高分子有機ELを活かした照明用途において、デザイン照明向けにデュアルカラーパネル作製の印刷技術を開発した。今後は当該パネルの事業化に取り組む。また、有機薄膜太陽電池(OPV)用材料・部材やパワーデバイス用半導体材料などの研究開発を推進している。ライフサイエンス分野では、農作物に環境ストレス耐性を付与する化学物質の開発を行うクロップ・ストレス・マネジメント(CSM)に取り組んでいる。また、化学物質のヒトに対する安全性を従来より精緻に予測するため、ヒトES細胞を用いた研究を推進している。

 

また工場の保安・防災力および競争力再強化のため、昨年4月に生産安全基盤センターを設立し、生産技術センターが所管する機能の一部を移管した。これに伴い、生産技術センターを工業化技術研究所に改称した。
 なお、全社共通部門の研究開発費は176億円であった。

 

このように、事業拡大および競争力強化を図るべく、新製品・新技術の研究開発および既存製品の高機能化・既存技術の一層の向上に取り組み、各事業分野において着実に成果を挙げつつある。

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

(1) 重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成している。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要とする。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しているが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。特に次の重要な会計方針が、当社グループの連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えている。

 

① 貸倒引当金

当社グループは、貸倒れが懸念される特定の債権については、個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額に基づき貸倒引当金を計上している。また、その他の一般債権についても、貸倒実績率を勘案して貸倒引当金を計上している。なお、将来、相手先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性がある。また、貸倒損失の発生により貸倒実績率が上昇し、一般債権に係る貸倒引当金の追加計上が発生する可能性がある。

 

② たな卸資産

当社グループは、たな卸資産について収益性の低下により投資額の回収可能性が認められなくなった場合には、回収可能な額まで帳簿価額を切り下げている。将来、当社グループの販売するたな卸資産の市場価格が低下した場合には、売上原価が増加する可能性がある。

 

③ 固定資産

当社グループは、事業資産については管理会計上の区分に基づき(一部の無形固定資産については、個々の資産を1つの単位として資産のグルーピングを行っている)、遊休資産等については個々の資産を1つの単位として資産のグルーピングを行っている。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等があった場合には、減損損失が発生する可能性がある。

 

④ 市場性のある有価証券

当社グループは、保有する市場性のある有価証券を合理的な基準に基づいて減損処理を行っている。時価が50%程度以上下落している場合は減損処理をしており、30%~50%下落している場合は、個別銘柄ごとに最近の時価水準と帳簿価額との乖離状況や発行体の業績、財政状態等を考慮した総合的な判断に拠って減損処理している。将来、株式相場が悪化した場合には、有価証券評価損を計上する可能性がある。

 

⑤ 繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っているが、将来の課税所得の予測・仮定が変更され、繰延税金資産の一部ないしは全部が回収できないと判断された場合、繰延税金資産は減額され、費用が増加する可能性がある。

 

⑥ 退職給付に係る資産および負債

従業員退職給付費用および債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出している。これらの前提条件には、割引率、将来の昇給率、退職率、死亡率および年金資産の収益率などが含まれる。退職給付債務等の計算の基礎に関する事項のうち、割引率は国債の利回りをもとに設定している。また、実際の結果が前提条件と異なる場合または前提条件が変更された場合、その影響は数理計算上の差異として累積され、主として3年間で規則的に費用処理されている。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

当社グループの当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2,913億円増加し2兆2,438億円となり、営業利益は前連結会計年度比558億円増益の1,008億円となった。営業外損益は前連結会計年度比50億円改善し103億円の利益となり、経常利益は前連結会計年度比609億円増益の1,111億円となった。特別損益は前連結会計年度比130億円改善し249億円の損失となり、当期純利益は前連結会計年度比881億円改善の370億円となった。

 

① 売上高と営業利益

売上高は、情報電子化学、健康・農業関連事業での出荷増加、石油化学での市況上昇に加え、在外子会社の邦貨換算差の影響もあり、前連結会計年度に比べ2,913億円増収の2兆2,438億円となった。

石油化学の売上高は、ペトロ・ラービグ社における設備修繕の影響等により、海外子会社の出荷が減少したものの、原料価格上昇による市況上昇や円高是正による邦貨換算差の影響により、前連結会計年度に比べ982億円増加し7,920億円となった。

情報電子化学の売上高は、偏光フィルム等の販売価格が下落したものの、需要の増加による偏光フィルムの出荷増加や、前連結会計年度に稼働を開始したタッチセンサーパネル設備が当連結会計年度は期を通じて販売に寄与したほか、邦貨換算差の影響も加わり、前連結会計年度に比べて623億円増加し3,623億円となった。

健康・農業関連事業の売上高は、メチオニンの市況は軟化したものの、円高是正の影響に加え、生産能力の増強や拡販により海外での除草剤を中心に出荷が増加したため、前連結会計年度に比べて644億円増加し3,270億円となった。

なお、海外売上高は1兆2,929億円となり、海外売上高比率は57.6%となった。

売上総利益は、交易条件の改善等により、前連結会計年度に比べ1,012億円増益の6,041億円となり、売上総利益率も、前連結会計年度に比べ1.2ポイント上昇し26.9%となった。販売費及び一般管理費は、研究開発費が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ454億円増加し5,033億円となったが、売上高に対する比率は、前連結会計年度に比べ1.0ポイント低下し22.4%となった。なお、研究開発費は前連結会計年度に比べ163億円増加し1,413億円となり、売上高に対する比率は6.3%となった。

この結果、営業利益は前連結会計年度に比べ558億円増益の1,008億円に、営業利益率は前連結会計年度より2.2ポイント上昇し4.5%となった。

 

② 営業外収益・費用と経常利益

営業外損益は、前連結会計年度の52億円の利益から50億円増加し、103億円の利益となった。為替差益の減少があったものの、ペトロケミカル コーポレーション オブ シンガポール(プライベート)リミテッド等の業績改善により、持分法投資利益が増加したことが主な要因である。

この結果、経常利益は前連結会計年度の503億円に対し609億円増加し、1,111億円となった。

 

③ 特別損益と税金等調整前当期純利益

特別利益は、前連結会計年度は段階取得に係る差益15億円を計上したのに対し、当連結会計年度は投資有価証券売却益、固定資産売却益、負ののれん発生益および条件付取得対価に係る公正価値の変動額で合計90億円を計上した。

特別損失は、減損損失、事業構造改善費用および投資有価証券評価損で合計339億円計上し、前連結会計年度の394億円に比べ55億円減少した。減損損失は、当社におけるカプロラクタム製造設備、子会社である日本オキシラン株式会社におけるプロピレンオキサイド・スチレンモノマー製造設備等や大日本住友製薬株式会社における仕掛研究開発などについて218億円を計上した。事業構造改善費用は、有形固定資産除却損や子会社の組織・業務改革等で106億円を計上した。

この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の123億円に対し739億円増加し、862億円となった。

 

④ 当期純損益

法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の総額は312億円となり、税金等調整前当期純利益に対する税効果会計適用後の法人税等の負担率は、36.2%となった。繰延税金資産の見直しに伴い、法人税等調整額を追加計上した前連結会計年度に比べ、215億円減少した。

この結果、少数株主損益調整前当期純利益は、550億円となった。

少数株主利益は、主として大日本住友製薬株式会社や住友共同電力株式会社などの連結子会社の少数株主に帰属する利益からなり、前連結会計年度の107億円に比べ73億円増加し、当連結会計年度は180億円となった。

この結果、当期純損益は、前連結会計年度の511億円の損失に対し881億円改善し、370億円の利益となった。

 

(3) 資本の財源および資金の流動性

① 財政政策

当社グループは、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、銀行借入、資本市場における社債およびコマーシャル・ペーパーの発行等により、必要資金を調達している。当社グループの財務活動の方針は、低利かつ中長期に亘り安定的な資金調達を行うこと、および十分な流動性を確保することである。

当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,323億円であり、流動比率(流動資産/流動負債)は130.9%である。また、短期的な資金需要に対応するため、コマーシャル・ペーパーの発行枠を1,800億円(当連結会計年度末の発行残高600億円)と大手邦銀のシンジケート団による800億円のコミットメント・ラインおよび、大手外銀のシンジケート団による210億円のマルチカレンシー(円・米ドル・ユーロ建)によるコミットメント・ラインを有している。

 

② 財政状態

当連結会計年度末の総資産は前連結会計年度末に比べ3,164億円増加し2兆7,885億円となった。在外子会社および関連会社の換算レートが前連結会計年度末に比べ円安となったことに加え、有形固定資産が増加したことが主な要因である。

負債は、前連結会計年度末に比べ1,294億円増加し、1兆8,540億円となった。資産と同様に円安の影響を受けたことに加え、支払手形及び買掛金が増加した。また、有利子負債(短期借入金、1年内償還予定の社債、コマーシャル・ペーパー、社債および長期借入金の合計でリース債務を除く)は前連結会計年度末に比べ140億円増加し、1兆746億円となった。

純資産(少数株主持分を含む)は、為替換算調整勘定等のその他の包括利益累計額が改善したことにより、前連結会計年度末に比べ1,870億円増加し9,345億円となった。自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ、3.0ポイント上昇し、23.1%となった。

 

③ キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加や運転資金の改善等により前連結会計年度に比べ228億円増加し、1,944億円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、当連結会計年度においては情報電子化学における海外での設備の新設・増強等により、固定資産の取得による支出の増加等があったものの、大日本住友製薬株式会社による米国のBBI社およびSRD社買収による支出等があった前連結会計年度に比べ306億円支出が減少し、1,352億円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度の58億円の収入に対して、当連結会計年度は592億円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、591億円の支出となった。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は前連結会計年度末に比べ54億円増加し1,323億円となった。