第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 ① 業績全般

 当連結会計年度のわが国経済は、緩やかな回復基調が続いた。対ドル為替レートは円高が進行したものの、米国大統領選挙以降は円安水準に戻った。企業の輸出・生産面は回復の兆しが見られた。企業収益は改善に足踏みがみられるものの高水準にあり、雇用環境は改善し個人消費は持ち直しの動きが見られた。

 海外経済では、米国では景気の回復が続いた。欧州では、英国のEU離脱決定・テロ事件の発生などリスク要因を抱える中、ドイツ・英国では景気は緩やかに回復した。中国・ASEAN諸国では景気持ち直しの動きが見られたが、韓国・インドネシアの景気は期後半に減速感が見られた。ロシア・ブラジル等の資源国・新興国は減速した。

 石油化学業界においては、需要・製品市況に影響を及ぼす原油価格は概ね低位に推移し、国内生産は堅調なアジア需要を背景に高稼働が続いた。また、電子部品・材料業界は、PCの生産は軟調に始まったものの期後半には安定した。半導体の生産は、スマートフォン向けメモリー等の需要増を受け、特に期後半に増加した。

 

 このような情勢下、当社グループは当連結会計年度より始動させた連結中期経営計画「Project 2020+」において、当社グループの持続的成長に向け、「個性派事業」の拡大・強化を図ると共に、事業構造の変革を進め収益基盤の強靭化を推進し、企業価値の向上を図っていく。

 

 当連結会計年度の連結営業成績については、売上高は、石油化学セグメントは原料ナフサ価格の下落に伴い製品価格が低下し減収となるなど全てのセグメントで減収となり、総じて6,711億59百万円(前連結会計年度比13.5%減)となった。

 営業利益は、ハードディスクの出荷が減少したエレクトロニクスセグメントと、無機セグメントが減益となったものの、石油化学セグメントはアジアでの堅調な需給を受け大幅な増益となり、化学品、アルミニウム、その他、の3セグメントも増益となったため、総じて増益となる420億53百万円(同25.5%増)となった。

 経常利益は、円高による為替差損の計上等により386億90百万円(同20.7%増)となった。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ特別損失および法人税等が減少したため大幅な増益となり、123億5百万円(同1,236.1%増)となった。

 

 ② セグメントの業績

(石油化学)

 当セグメントでは、エチレン、プロピレンの生産は、当連結会計年度前半にコンビナート内誘導品プラントの定期修理が重なったことにより、前連結会計年度に比べ小幅に減少した。

 オレフィン事業は、アジア市場における需給は堅調に推移したものの、原料ナフサ価格の下落を受けた製品価格の低下により減収となった。有機化学品事業は、原料価格低下を受け、酢酸ビニル、酢酸エチルの販売価格が低下し減収となった。この結果、当セグメントの売上高は1,857億83百万円(前連結会計年度比19.7%減)となった。

 営業利益は、アジアでの堅調な需給を受けオレフィン・有機化学品事業ともに高い稼働が続いたことに加え原料ナフサ価格も低下したため、大幅な増益となる206億90百万円(同96.2%増)となった。

 

(化学品)

 当セグメントでは、液化アンモニアの生産は前連結会計年度に比べ増加し、電子材料用高純度ガスの生産も増加した。

 情報電子化学品事業は円高の影響を受けたものの高水準の出荷により小幅の増収となり、産業ガス事業は小幅の増収となった。一方、基礎化学品事業は、出荷は総じて堅調に推移したものの原料価格の下落を受けアクリロニトリル等の販売価格が低下し減収となり、機能性化学品事業は前連結会計年度下期のフェノール樹脂事業の譲渡により減収となった。この結果、当セグメントの売上高は1,345億29百万円(前連結会計年度比5.5%減)となった。

 営業利益は、情報電子化学品事業については円高により減益となったものの、基礎化学品事業はアンモニアのリサイクル原料利用比率の上昇等原料価格の低下により増益となり、産業ガス・機能性化学品の両事業もそれぞれ増益となったため138億24百万円(同29.1%増)となった。

 

(エレクトロニクス)

 当セグメントでは、ハードディスクの生産は、サーバー向け出荷は増加したもののPC向け出荷減を補えず前連結会計年度に比べ減少した。なお、当連結会計年度後半のPC向け出荷は当連結会計年度前半と比べ回復し、特に10—12月のハードディスク生産は前年同四半期連結会計期間に比べ増加した。

 このような市場環境を受けハードディスク事業は販売数量減と円高の影響により減収となった。レアアース磁石合金、化合物半導体もそれぞれ減収となった。この結果、当セグメントの売上高は1,033億39百万円(前連結会計年度比21.4%減)となった。

 営業利益は、ハードディスク事業の販売数量が当連結会計年度後半は出荷が回復したものの当連結会計年度前半の減少を補えず、139億7百万円(同20.4%減)となった。なお、ハードディスク事業において、生産能力の適正化とコスト競争力強化策を実施し、当連結会計年度後半には効果が顕現している。

 

(無機)

 当セグメントでは、黒鉛電極の生産は前連結会計年度に比べ小幅に増加した。

 黒鉛電極事業は、鉄鋼業界における中国の過剰生産の影響によるアジア・米国等での生産調整を受け、市況が低下し減収となった。セラミックス事業は、販売数量の減少により減収となった。

 この結果、当セグメントの売上高は508億70百万円(前連結会計年度比19.9%減)となり、営業損益は57億58百万円の損失(同45億10百万円減益)となった。なお、黒鉛電極事業の収益性向上に向け、当連結会計年度に日本・米国両生産拠点においてコスト競争力強化策を実行した。

 

(アルミニウム)

 当セグメントでは、アルミ電解コンデンサー用高純度箔の生産は、好調なエアコン、車載向け部品の生産に対応し、前連結会計年度に比べ増加した。

 アルミ圧延品事業は国内向け販売数量増に加え、昭和電工鋁業(南通)有限公司の中国での出荷も増加し増収となった。アルミ機能部材事業はアルミ地金の下落と、一部自動車向け出荷減により減収となった。アルミ缶事業はハナキャン・ジョイント・ストック・カンパニーの販売数量の増加により増収となった。この結果、当セグメントの売上高は985億75百万円(前連結会計年度比2.2%減)となった。

 営業利益は、アルミ圧延品事業の販売数量の増加、アルミ缶事業におけるハナキャン・ジョイント・ストック・カンパニーの出荷増により44億16百万円(同72.3%増)となった。

 

(その他)

 当セグメントでは、リチウムイオン電池材料はスマートフォン向けに加え車載向けの出荷が増加し小幅な増収となったが、昭光通商㈱は減収となった。この結果、当セグメントの売上高は1,423億64百万円(前連結会計年度比3.3%減)となったが、営業利益はリチウムイオン電池材料の数量増等により17億75百万円(同33.6%増)となった。

 

 

(2)キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ77億79百万円の収入増加となり、689億49百万円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出及び定期預金の増加等により、前連結会計年度に比べ112億57百万円の支出増加となり、537億54百万円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ34億78百万円の収入減少となり、151億95百万円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債(借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債)の削減を進めたが、削減額は前連結会計年度に比べ減少したため、前連結会計年度に比べ、81億16百万円の支出減少となり、132億20百万円の支出となった。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ15億89百万円増加し、561億86百万円となった。

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため生産の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示している。

(2)受注実績

  当連結会計年度における受注実績は、次のとおりである。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

その他

906

△12.6

60

△16.7

 (注) 上記金額には、消費税等は含まれていない。

(3)販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

石油化学

185,783

△19.7

化学品

134,529

△5.5

エレクトロニクス

103,339

△21.4

無機

50,870

△19.9

アルミニウム

98,575

△2.2

その他

142,364

△3.3

調整額

△44,301

合計

671,159

△13.5

 (注)1 セグメント間の取引については、相殺消去前の数値によっている。

2 上記金額には、消費税等は含まれていない。

3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。

3【対処すべき課題】

(1) 当社グループの対処すべき課題

新興国において急速な経済成長により生活水準が向上する一方で、地球環境への負荷増大を抑制するための取り組みが世界全域で求められている。社会動向を市場性の観点から見た場合、電子産業分野の一層の高品位化・高速化・高容量化・小型化の進展による利便性・快適性の向上、地球温暖化対策・環境保全の推進による健康で安全な社会の実現、化石エネルギー依存度低下・省エネルギー推進によるエネルギー供給保障等の人類共通の諸課題に対応するための新技術の開発と事業化が求められている。

当社グループは、優位性のある固有技術をベースに先進・先端技術領域をリードする部材・素材・ソリューションをお客様に提供し、豊かさと持続性が調和する社会の創造に貢献していく。

また、当社グループは、経営の健全性、実効性及び透明性を確保し、企業価値の持続的な向上により社会から信頼・評価される「社会貢献企業」を実現するために、平成27年、「コーポレート・ガバナンス基本方針」を定め、その充実に取り組んでいく。

 「コーポレート・ガバナンス基本方針」については当社ホームページを参照。

 http://www.sdk.co.jp/assets/files/about/governance/governance_policy151225.pdf

 

 世界経済は大きな市場構造の変化の潮流の中にある。当社グループは当連結会計年度から始動させた連結中期経営計画「Project 2020+」において、収益性と安定性を高いレベルで持続的に維持する「個性派事業」の拡大・強化を図りグローバル市場で展開していく。成長するアジア・ASEAN市場に加え、欧米などの先進国市場も含めた成長機会の獲得を追求し、海外展開を加速すると共に、市場が求める高機能、高性能な製品・技術の提供を通じ、お客様の期待、社会のニーズに応え続ける企業の確立を目指していく。

 

(2) 株式会社の支配に関する基本方針

①基本方針の内容

 株式会社の支配に関する基本方針は次のとおりである。

 「当社は、当社の株主は市場における当社株式の自由な取引を通じて決定されるものであると考えており、特定の者による当社株式の大規模買付行為に関する提案がなされた場合においても、これに応じて当社株式の売却を行うか否かの判断は、最終的には、当社株主の皆様が適切な判断を行うために必要となる十分な情報提供がなされ、かつ熟慮に必要となる十分な時間が与えられたうえでの、当社株式を保有する株主の皆様の意思に基づき行われるべきものと考えております。

 しかしながら、大規模買付行為の中には、その目的等からみて企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が買付行為の条件について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社やその関係者に対し高値で株式を買い取ることを要求するもの等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資することにならないものもあります。

 当社は、特定の者による大規模買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させるものであるか否かについて、株主の皆様が、当該買付者及び当社取締役会の双方から必要かつ十分な情報を得たうえで、適切な判断を下すことが望ましいと考えております。一方で、上記の例に該当するような当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大規模買付行為またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては適切でないと考えております。」

 

②基本方針の実現に資する取組み

 当社グループは、グループ経営理念「私たちは、社会的に有用かつ安全でお客様の期待に応える製品・サービスの提供により企業価値を高め、株主にご満足いただくと共に、国際社会の一員としての責任を果たし、その健全な発展に貢献します。」のもと、豊かさと持続性の調和した社会の創造に貢献する「社会貢献企業」の実現を目指している。

 当社グループは、有機化学、無機化学、アルミニウム加工等を基幹技術に事業を展開しており、これらの異なる基幹技術を深化・融合させることにより創出した他社にない技術力、開拓者精神に溢れ独創性を追求する従業員が、当社グループの企業価値の源泉であり、当社グループは、個性的で競争優位性を持つ技術や製品を開発・提供することにより企業価値を高め、「個性派化学」として市場から高い評価をいただいている。また、製品・サービスの提供、環境への取り組みや地域活動等を通じて株主の皆様、お客様をはじめ、全てのステークホルダーの皆様にご信頼いただくことにより良好な関係を築き上げ、その維持、発展に努めており、これらは、「社会貢献企業」の実現を目指すうえで損なうことのできない貴重な財産と考えている。

 当社グループは、平成28年からスタートした5ヵ年の連結中期経営計画「Project 2020+」において、当社が有する多様な事業群の収益基盤強靭化と個性派事業の拡大を進め、激化する国際競争下において市場を絶えずリードする企業グループを目指している。

 当社グループは、企業としての社会的責任を全うし、広く社会からの信頼を築きあげていくことが、企業価値の持続的向上と中長期的な企業価値の創出の実現に必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、経営の公正性・透明性の向上、監督・監視機能の一層の強化、迅速な意思決定と業務執行の実効性の確保に取り組んでいる。また、コンプライアンスとリスク管理の強化、レスポンシブル・ケアの徹底、情報開示の充実に取り組むと共に、株主、お客様、取引先、従業員、地域社会等の全てのステークホルダーの皆様と適切に協働して事業活動を行うことにより、企業価値ひいては株主共同の利益の向上に努めていく。

 

③基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

  当社は、上記基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの一つとして、平成26年2月13日開催の取締役会及び平成26年3月27日開催の第105回定時株主総会の各決議に基づき、当社株券等の大規模買付行為等への対応方針(買収防衛策)を更新した。(以下、更新後の対応方針を「本対応方針」という。)

1)本対応方針の概要

(a)本対応方針の発動に係る手続の設定

 本対応方針は、当社株券等について、20%以上の保有割合となる買付けを行うこと等を希望する買付者が出現した場合に、当該買付者に対し、事前に当該買付けに関する情報の提供を求め、当該買付けについての情報収集、検討等を行う期間を確保すること、当該買付者が本対応方針に定める手続を遵守しない場合、または、当該買付者による買付けが当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると認められる場合で、かつ、これに対抗することが相当であると認められる場合には、独立委員会への諮問を経たうえで、また、一定の場合には株主意思確認総会を開催し株主の皆様の意思を確認したうえで、一定の対抗措置を採ることなど、当社の企業価値ひいては株主共同の利益が損なわれないための手続を定めている。

(b)対抗措置の内容

 上記(a)記載の対抗措置として、当社は、上記(a)記載の買付者による行使は認められないとの条項及び当社が当該買付者以外の者から当社株式と引き換えに当該新株予約権を取得する旨の条項等が付された新株予約権を、当社株式1株に対し1個の割合でその時点の全ての株主に対して割り当てる手法による新株予約権の無償割当てその他法令または当社定款が取締役会の権限として認める措置を行う。

2)本対応方針の有効期間

 本対応方針の有効期間は、平成25年12月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時から平成28年12月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時までとする。但し、当該定時株主総会の終結時に買収提案を行っている者等が現に存在している場合にはその限りで有効期間が延長される。

3)本対応方針の廃止及び変更

 本対応方針の導入後、有効期間の満了前であっても、当社株主総会において本対応方針を廃止する旨の議案が承認された場合、または当社取締役会において本対応方針を廃止する旨の決議がなされた場合には、本対応方針はその時点で廃止される。本対応方針は株主の意向に沿ってこれを廃止させることが可能である。

 

④上記取組みが基本方針に沿い、当社の株主の共同の利益を損なうものでなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものでないこと及びその理由

 上記②の各取組みは、中長期的視点から当社の企業価値ひいては株主共同の利益の向上のための具体的な方策として行われているものであり、まさに上記基本方針に沿うものである。また、上記③の本対応方針は、以下のように合理性が担保されており、上記基本方針に沿うと共に、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致するものであり、当社の役員の地位の維持を目的とするものではない。

1)経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足している。また、企業価値研究会が平成20年6月30日に発表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえた内容となっている。

2)株主意思を反映する内容となっており、また、当社定款上取締役の任期は1年であり、本対応方針の有効期間中であっても、当社取締役の選任を通じて株主の意向を示すことが可能である。

3)デッドハンド型やスローハンド型の買収防衛策ではない。

4)当社の業務執行を行う経営陣から独立した当社社外取締役、社外監査役及び弁護士、公認会計士、社外の経営者等の社外有識者によって構成される独立委員会への諮問を経ることとなっている。

5)合理的な客観的要件が充足されなければ対抗措置を発動することができない。

6)独立委員会は、必要と判断する場合に、当社の費用で、独立した第三者の助言を得ることができ、これにより、独立委員会による判断の公正さ・客観性がより強く担保される仕組みとなっている。

 

(注)当社は、平成29年3月6日開催の取締役会において、有効期間の満了をもって本対応方針を更新しないことを決定し、本対応方針は、平成29年3月30日開催の第108回定時株主総会終結の時をもって有効期間の満了により廃止された。

 

4【事業等のリスク】

  当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる主要なリスクには、以下のものがある。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスク顕在化の未然防止及びリスク発生時の影響の最小化に努めている。

 なお、これらの事項は有価証券報告書提出日(平成29年4月25日)現在において判断したものであり、当社グループに関する全てのリスクを網羅しているものではない。

(1) 個別事業の経営成績における大幅な変動

 当社グループは、石油化学製品、化学製品、エレクトロニクス関連製品、無機製品、アルミニウム製品等様々な製品の製造・販売を行っている。主要事業において想定されるリスクとして以下のようなものがあるが、リスクはこれらの事業に限定されるものではない。

①石油化学事業

 当社グループは、大量の原料用ナフサ等を購入(輸入を含む)しており、原油価格の変動や需給バランス、為替等の要因によりナフサ価格等が変動し、販売価格との間に十分なスプレッドが確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また、石油化学事業の収益は、需給バランスによるところが大きく、他社による大型プラントの建設等により需給が緩和した場合や、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

②アルミニウム事業

 当社グループは、大量のアルミニウム地金を海外から輸入しており、LME相場やアルミ割増金の上昇、円安等によりアルミニウム地金価格が上昇し、かつそれによる製造コストの上昇分をアルミニウム関連の製品価格の上昇で吸収できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また当社グループのアルミニウム製品は、自動車向け、電機電子部品・材料向けの販売が大きな比重を占めており、これらの製品の売上は、自動車市場や家電・情報機器関連市場の動向など当社グループが管理できない要因により、大きな影響を受ける可能性がある。

③ハードディスク事業

 当社グループのハードディスク事業は、販売数量がIT機器や家電製品に対する需要によって大きく変動すると同時に、技術革新のスピードが速く、国際的競争が厳しい事業である。また、これらの需要変動や競争激化は価格変動の要因ともなり得る。当社グループは、市場のニーズに合致した製品を適時・適切に開発・提供すべくグローバルな生産・販売体制を整えているが、市場のニーズが想定を超えて大きく変化した場合や需給バランスが大きく変化した場合、また、為替が大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

④海外での事業活動

 当社グループは、アジア、北米、欧州にて生産及び販売活動を行っているが、海外での事業活動には、予期しえない法律または規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争等による社会的混乱等、国内における事業運営とは異なるリスクが存在する。こうしたリスクが顕在化することによって、当社グループの海外での事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

⑤企業買収、資本提携及び事業再編

 当社グループは、事業領域の拡大や収益性向上を目的として国内外における企業買収、資本提携及び事業再編

を実施している。当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境の変化により、当初期待していた成果が得られない場合には、当社グループの経営成績及び財務状態に悪影響を与える可能性がある。

 また、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行った場合、当社グループの経営成績及び財政状況が影響を受ける可能性がある。

 

(2) 財務状況及びキャッシュ・フローの予想以上の変動

①為替相場の大幅な変動

 当社グループは、輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じてリスクの最小化に努めているが、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。特に、他の通貨に対する急激な円高は、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性がある。

 また、為替相場の変動は、海外グループ会社の財務諸表の円貨への換算を通しても、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

②金融市場の動向や調達環境の変化

 金融市場の動向や当社グループの財務指標の悪化が、一部借入金の財務制限条項への抵触による期限前弁済を含め、当社グループの資金調達や支払金利に対して影響を与え、これらを通して、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

③退職給付債務

 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回り等に基づき算出されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更等が、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

④有価証券

 当社グループは、時価のある株式を保有しているため、株式相場の変動に伴い、評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

⑤固定資産の減損

 当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用している。この基準の適用に伴い、今後の土地等の時価の変動や事業環境の大幅な変動によって、さらに減損損失が発生する可能性がある。

⑥繰延税金資産

 当社グループは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上している。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しているが、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の修正が必要となり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(3) 特有の法的規制

 当社グループが行っている事業は国内外の各種の法規制を受ける。その規制内容は、「石油コンビナート等災害防止法」「消防法」「高圧ガス保安法」等の保安安全に係るもの、「環境基本法」「大気汚染防止法」「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」等の環境や化学物質に係るもの等があり、当社グループはこれら法規制の遵守を徹底している。万一遵守できなかった場合は、当社グループの活動が制限される可能性がある。また、これら法規制が一段と強化された場合には、コストの増加につながり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(4) 重要な訴訟事件

 当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めているが、広範な事業活動の中で、訴訟の提起を受ける可能性がある。

(5) その他

①研究開発について

 当社グループは、研究開発基本方針である「多様な個性派技術を鍛えてつなぎ、新たな価値を創造」のもと、現業強化と周辺分野拡大に向けた研究と事業開発に研究資源を集中する一方で、オープンイノベーションやM&A等を活用した次世代事業の創出に取り組んでいる。無機、有機、アルミに跨る多様な中核技術の強化とシナジーを発揮することにより当社グループならではの個性派製品・技術の創出と、個性派事業の獲得を図るべく、研究開発に注力している。これらの研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

②知的財産について

 当社グループは、産業財産権やノウハウ等の知的財産権が事業の競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、自社権利の取得、活用及び保護と他社権利の尊重に努めている。しかしながら、自社権利を適切に取得、活用することができなかったり不当に侵害された場合、または第三者の知的財産権を侵害する事象が発生した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

③品質保証・製造物責任について

 当社グループは、「品質保証・品質管理規程」の制定や、品質保証を所管・統括・推進する組織の整備、ISO9001等の積極的な取得により、品質管理に万全を期すべく努めている。しかしながら、重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起といった事象が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

④事故・災害について

 当社グループは、安全・安定操業の徹底を図り、製造設備の停止や設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、全ての製造設備について定期的な点検を実施している。しかしながら、事故あるいは大規模な自然災害等の発生により、製造設備で人的・物的被害が生じた場合、当社グループの社会的信用が低下し、事故災害への対策費用や生産活動停止による機会損失により、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また、当社グループの製造設備が直接の影響を受けない場合であっても、サプライヤーの事故・自然災害等に起因する原材料調達難、物流網の寸断及び電力の供給不足に伴い生産活動が制限された場合、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

 

⑤環境に対する影響について

 当社グループは、化学物質の開発から製造、流通、使用を経て廃棄に至る全ライフサイクルにおける「環境・安全・健康」を確保することを目的とした「レスポンシブル・ケア」活動を推進している。しかしながら、周囲の環境に影響を及ぼすような事象が発生した場合には、社会的信用の失墜を招き、補償などを含む対策費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

5【経営上の重要な契約等】

技術提携の状況

技術供与関係

(昭和電工株式会社)

契約締結先

契約発効年月

内容

摘要

(サウジアラビア)

ナマケミカルズ社

平成23年1月

アリルアルコールの製造技術

(対価)

一定金額を分割払いで受け取る。

(有効期間)

平成23年1月31日から12年間

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、連結中期経営計画「Project 2020+」に基づき、「インフラケミカルズ」、「エネルギー」、「移動・輸送」、「生活環境」、「情報電子」という5つの領域における社会課題の解決、新たな価値創造のために、当社が保有する多様な事業領域と、競争優位性のある要素技術である「中核技術」、当社が培ってきた世界トップレベルの技術である「戦略技術」を深化・融合させ、当社独自の特徴ある研究開発を推進している。

 特に、電池材料やSiC(炭化ケイ素)エピタキシャルウェハーなど当社の将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現に注力している。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、173億13百万円である。

 セグメントごとの研究開発活動は次のとおりである。

(石油化学)

 石油化学分野では、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子・電気機器、輸送機器、食品包装などの分野において、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進している。

 主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めている。平成26年6月、当社技術を用い大分に新設した酢酸エチルプラントは、稼働開始以来高稼働を継続しているが、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求している。

 アリルアルコール製品群において、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルは順調に販売量を増やしているが、更なる市場拡大を企図して新規用途の展開を積極的に進めている。この他、当社技術の特長を活かした新規誘導品の研究開発を推進している。

 また、耐熱透明フィルム「ショウレイアル®」は、モバイルディスプレイ材料などの分野に向けて精力的に市場開拓を進めており、ガラスに匹敵する光学特性と手触り感が評価され、国内外で採用されている。

 当連結会計年度における石油化学セグメントの研究開発費は、7億75百万円であった。

(化学品)

 化学品分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、半導体プロセス材料、光機能材料、ソルダーレジスト、高機能ゲル、各種有機中間体、化粧品原料、インフラケミカルズ、エネルギーなどの研究開発を推進している。

 テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けているが、更に、お客様との情報ネットワークを駆使して、お客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入している。屈曲性に優れたチップ・オン・フィルム(COF)用ソルダーレジストや、半導体や電子部品の放熱性を高めるカーボンコート箔テープ「HSシリーズ」に柔軟性を高めた新シリーズを拡充し、サンプル提供を開始した。また、各種レジストなどの電子材料に使用される高機能性イソシアネートモノマー「カレンズAOI®」において、一般工業分野向け新グレード「AOI-VM®」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続している。

 高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、先進国向けを主体に、最先端技術へ適用できるカラムを開発し、並行して新興国の市場開発を積極的に進めている。40年間の日米欧で培った営業ノウハウに基づき、市場ニーズに適した情報(分析ノウハウ・技術サービス)を的確、迅速に提供しており、従来にない迅速分析を実現したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)用充填カラム、及び医薬分野、バイオエネルギー分野における高感度分析を可能としたHILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)用充填カラムの販売を平成28年9月より開始した。高機能ゲルの研究体制を強化し、近年急進するバイオ医薬品精製事業分野への販売拡大に取り組んでいる。

 有機中間体では、当社固有原料と精密有機合成技術の強みを活かした各種中間体の開発に注力し、化粧品原料では、水溶性ビタミンE誘導体「TPNa®」に目のクマへの改善効果を見出し、アイケア用途として出荷を開始するなど、高機能ビタミンC誘導体「アプレシエ®」に続き、複数の化合物において市場投入に向けた進展が見られた。

 インフラケミカルズでは、インフラ構造物の延命、補修に注目し、ビル地下排水槽や下水道施設などの腐食環境からコンクリート面を保護する防水・防食工事に適した、水系のビニルエステル樹脂を開発し、平成28年10月よりサンプル出荷を開始した。

 エネルギーでは、リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾール®LBシリーズ」において、更に高性能化を目指し研究開発を継続している。当製品は、低抵抗性、優れた温度特性、負極集電体との高密着性などの特性を持ち、リチウムイオン電池の長寿命化、高容量化への寄与が期待される。

 また、半導体製造プロセス材料として、各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、市場展開している。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進める。

 当連結会計年度における化学品セグメントの研究開発費は、23億79百万円であった。

(エレクトロニクス)

 エレクトロニクス分野では、高性能化の市場要請に応えるべく、最先端技術の開発に邁進している。

 記録材料については、ハードディスク外販のトップメーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めると共に、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っている。3.5インチサイズにおいて、10テラバイトのヘリウム充填型ハードディスクドライブに当社製品が採用されている。

 発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力している。4元系赤色LEDでは、植物育成に最適な660ナノメートルの波長光の発光層を独自技術で開発し、植物工場及び様々な栽培モデル施設の光源として採用されている。

 希土類磁石合金では、平成25年度に発表した希少金属の1つであるDy(ジスプロシウム)を使用せずに従来品と同様の性能を持つネオジム磁石用合金を製造する技術をベースに、より高濃度のDy添加が必要な用途においてもDyフリーを達成すべく、更なる技術開発に取り組んでいる。

 当連結会計年度におけるエレクトロニクスセグメントの研究開発費は、35億3百万円であった。

(無機)

 無機分野では、素材の特性を活かした材料及びその用途開発を進めている。

 電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料の開発を行っている。

 平成19年から平成24年に参加した国家プロジェクトにて進めてきた、室内の可視光でも優れた抗菌・抗ウィルス性を示す光触媒材料の開発はほぼ終了し、最終製品(住宅・公共施設・植物工場等)への用途展開を進めている。

 当連結会計年度における無機セグメントの研究開発費は、2億53百万円であった。

(アルミニウム)

 アルミニウム分野では、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めると共に、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力している。

 素形材関連では、当社が開発した気体加圧式ホットトップ連続鋳造法及び気体加圧式水平完全連続鋳造法を基軸とし、鍛造技術と合わせて、アルミ加工製品の開発を進めている。今後、自動車市場のアジアでの需要増加が見込まれることにより、更に機能性を高めたアルミニウム合金及び加工品の開発を進めており、押出、鍛造及び引抜の金型技術、並びに加工、接合の各プロセス技術、各種製品に適した合金の開発、塑性加工及び熱伝導のシミュレーション技術を深化させている。

 圧延素材関連では、高熱伝導・高強度アルミニウム板材「ST60」の新グレード「ST60-HSM®」を開発し、量産販売を開始した。本製品は純アルミニウム並みの放熱性(熱伝導性)を持ちながら、アルミニウム合金A6061に匹敵する高強度を実現したものであり、スマートフォンやタブレットなどの筐体としての採用拡大を目指している。

 アルミニウム缶では、グラビア印刷と同等の写真やグラデーションなど、諧調のあるデザインの再現性を向上できるインクジェット方式の印刷技術を開発した。新方式は製版・刷版工程が不要なことから、データ入稿から納品までの期間を大幅に短縮でき、小さなロットサイズでも生産可能なことから新たなニーズが期待できる。

 当連結会計年度におけるアルミニウムセグメントの研究開発費は、18億43百万円であった。

(その他)

 先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、寿命、入出力、低抵抗性、容量を満たす、黒鉛負極材「SCMG®」、高容量Si黒鉛負極材、カーボンナノファイバー「VGCF®」、カーボンコートアルミ箔「SDX®」、外装材であるアルミラミネートフィルム「SPALF®」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めている。

 省エネルギー効果の高い次世代パワー半導体材料として注目されるSiCエピタキシャルウェハーについては、平成27年に上市した市場の高品質化要求に応えた新グレード品「ハイグレードエピ」について良好な評価を得ており、月産3,000枚に設備増強して積極的に市場展開している。

 当社独自技術である高輝度LED照明等の植物工場向け製品については、継続した研究活動により(大)山口大学と共同で開発した高速栽培技術「SHIGYO®法」の適用範囲を広げ、市場開拓に取り組んでいる。特許庁の「事業戦略対応まとめ審査」制度を活用して取得した特許権を軸に、従来技術の2倍以上の生産性と清潔な環境で栽培された品質をアピールし、実証設備、大型工場の受注活動を進めている。

 プリンテッドエレクトロニクスについては、高効率の製造法を確立した銀ナノワイヤを用いて透明導電膜用の試作品を作成し、市場開拓を進めている。また薄膜印刷に対応したスクリーン印刷用銀インクの開発も進めている。

 燃料電池触媒については、(大)横浜国立大学などとの協働にて非白金化を目指す研究を開始した。長期的戦略のもと、新規複合金属酸化物の合成と評価を進めている。

 カーボン分野では、三菱商事㈱と共同で運営するフロンティアカーボン㈱を通じて、引き続きフラーレン製品の製造及び販売を促進していく。技術開発においてはフラーレンの合成と精製の効率向上に取り組むと共に、用途拡大に必須な分散技術開発にも注力し、電子受容性に優れる特性を活かした有機薄膜太陽電池の負極材や、他の有機エレクトロニクスデバイス向けを主軸に開発を進めている。

 平成28年初に、有機と無機・アルミの更なる融合を目指して、応用化学品研究所を母体に融合製品開発研究所を組織し、アルミ・無機分野の技術者の一部を事業開発センターに集約して、研究所(融合製品開発研究所、先端技術開発研究所)、共通支援センター(分析物性センター、安全性試験センター、計算化学・情報センター)、及び事業化プロジェクトの体制で研究開発を推進してきている。融合製品開発研究所は、事業部や事業所と連携し、現行事業や製品の付加価値を高める開発、その周辺の成長分野を開拓する開発、及び製品に関する高度な技術サポートによる事業強化を行い、先端技術開発研究所は、当社グループが保有する広範な技術・材料の中でも、将来にわたって強みを発揮できるコア技術・コア材料を軸とした次世代事業テーマの創出を推進した。

 当連結会計年度におけるその他セグメントの研究開発費は、全社共通を含め、85億59百万円であった。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。

 この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりである。

 なお、連結決算日における資産及び負債の貸借対照表上の金額及び当連結会計年度における収益及び費用の損益計算書上の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績等を勘案し、合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。

 

(2)財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、営業債権の増加はあったものの、原燃料価格の低下を受け棚卸資産が減少したこと等により前連結会計年度末比77億97百万円減少の9,326億98百万円となった。

 負債合計は、有利子負債(借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債)については前連結会計年度末比89億6百万円減少し3,599億29百万円となり、これに加え営業債務の減少等もあり、同108億85百万円減少し6,214億67百万円となった。

 純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により前連結会計年度末比30億89百万円増加の3,112億31百万円となった。

 

(3)経営成績の分析

 当連結会計年度における売上高は、石油化学セグメントは原料ナフサ価格の下落に伴い製品価格が低下し減収となるなど全てのセグメントで減収となり、前連結会計年度に比べ1,045億73百万円減少し6,711億59百万円となった。

 売上原価は、売上の減少に伴い前連結会計年度に比べ1,089億30百万円減少し5,449億94百万円となった。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ小幅に減少し841億11百万円となった。

 営業利益は、エレクトロニクスセグメントと無機セグメントが減益となったものの、石油化学セグメントはアジアでの堅調な需給を受け大幅な増益となり、化学品、アルミニウム、その他、の3セグメントも増益となったことから、前連結会計年度に比べ85億45百万円増加し420億53百万円となった。

 経常利益は、前連結会計年度に比べ66億40百万円増加し386億90百万円となった。

 特別利益は、投資有価証券売却益等の減少により前連結会計年度に比べ67億32百万円減少し16億59百万円となった。

 特別損失は、前連結会計年度に計上した昭光通商㈱の中国事業に係る貸倒引当金繰入額の計上等の影響がなくなり、前連結会計年度に比べ115億56百万円減少し228億21百万円となった。

 これにより、税金等調整前当期純利益は175億29百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ113億84百万円増加し123億5百万円となった。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益が増加したこと等により、前連結会計年度に比べ77億79百万円の収入増加となり、689億49百万円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出及び定期預金の増加等により、前連結会計年度に比べ112億57百万円の支出増加となり、537億54百万円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ34億78百万円の収入減少となり、151億95百万円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の削減を進めたが、削減額は前連結会計年度に比べ減少したため、前連結会計年度に比べ、81億16百万円の支出減少となり、132億20百万円の支出となった。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ15億89百万円増加し、561億86百万円となった。