(1)業績
① 業績全般
当連結会計年度のわが国経済は、輸出・生産面に弱さがみられるものの緩やかな回復基調が続いた。企業収益は円安基調に加え原油価格低下の効果もあり高水準で推移し、個人消費は雇用・所得環境の改善を背景に底堅く推移した。
海外経済は、米国は緩やかな回復が続いた。欧州はギリシャ情勢の混迷など不安定要因を抱えるものの、ドイツ・英国では回復がみられた。一方、中国は景気減速が鮮明となり、アジア新興国は中国の景気減速の影響もあり弱さがみられた。また、資源国は原油等資源価格の低下を受け景気は減速した。
石油化学業界においては、国内生産は堅調な需要を背景に高稼働が続いた。オレフィン等製品価格は、原油価格下落の影響を大きく受けた。
電子部品・材料業界は、PCの生産は軟調に推移したものの、スマートフォン向けメモリーなど半導体は国内外で高水準な生産が続いた。
このような情勢下、当社グループは連結中期経営計画「ペガサス フェーズⅡ」において「グローバル市場で特徴ある存在感を持つ化学企業」の確立に向け、ハードディスク、黒鉛電極を両翼とする成長戦略を推進すると共に、アルミ缶、高純度アルミ箔、電子材料用高純度ガス、機能性化学品を「成長」事業と位置づけ、伸長するアジア市場において事業展開を加速させ、収益力の向上を図ってきた。平成27年においては、これら「成長」4事業につきそれぞれ海外生産拠点の拡充・強化を図った。
また、12月には新連結中期経営計画「Project 2020+」を発表し、平成28年より始動させた。新連結中期経営計画では、当社グループの持続的成長に向け、「個性派事業」の拡大・強化を図ると共に、事業構造の変革を進め収益基盤の強靭化を推進し、企業価値の向上を図っていく。
当連結会計年度の連結営業成績については、売上高は、化学品、アルミニウムの2セグメントは増収となったものの、石油化学などの4セグメントは減収となり、総じて7,809億58百万円(前連結会計年度比10.9%減)となった。
営業利益については、石油化学セグメントは前連結会計年度の定期修理の影響がなくなったことに加え年央に製品市況が改善したため大幅増益となり、化学品セグメントは情報電子化学品事業が、好調な半導体生産を受け増益となり、その他セグメントも増益となった。一方、エレクトロニクスセグメントはハードディスクの数量減や第2四半期連結会計期間のレアアースの棚卸資産の簿価切下げにより減益となり、無機、アルミニウムの2セグメントも減益となった。この結果、営業利益は総じて増益となり336億72百万円(同61.0%増)となった。
経常利益は322億25百万円(同45.8%増)となったが、当期純利益は昭光通商㈱の中国事業に係る貸倒引当金繰入額の計上、四川昭鋼炭素有限公司等における固定資産の減損損失の計上等による特別損失の増加に加え、税金費用の増加もあり、9億69百万円(同72.3%減)となった。
② セグメントの業績
(石油化学)
当セグメントでは、エチレン、プロピレンの生産は、4年に一度の定期修理を実施した前連結会計年度に比べ増加した。
オレフィン事業は、これを受けエチレン、プロピレン等主要製品の出荷量は増加したものの原料ナフサ価格下落に伴い製品価格が低下し、売上高は減少した。有機化学品事業は、酢酸エチルは販売数量増により増収となったが酢酸ビニルは市況が低下し減収となった。
この結果、当セグメントの売上高は2,312億88百万円(前連結会計年度比17.8%減)となったが、営業利益は主にオレフィン製品市況の改善により105億43百万円(同154億73百万円増益)となった。
(化学品)
当セグメントでは、液化アンモニアの生産は前連結会計年度に比べ減少したものの、電子材料用高純度ガスの生産は増加した。
基礎化学品事業は、クロロプレンゴムは米国向け出荷増により増収となったが、液化アンモニアは販売数量が減少し、アクリロニトリルは市況低下により、それぞれ減収となった。情報電子化学品事業は、東アジア全般の半導体の好調な生産を受け電子材料用高純度ガスの出荷が大幅に増加し増収となった。機能性化学品事業は、国内出荷は数量減となったが、上海昭和高分子有限公司を当連結会計年度より連結子会社としたため増収となった。産業ガス事業は前連結会計年度並みとなった。
この結果、当セグメントの売上高は1,422億92百万円(前連結会計年度比2.3%増)となり、営業利益は107億7百万円(同96.1%増)となった。
(エレクトロニクス)
当セグメントでは、ハードディスクの生産は、基幹ソフトウェアサポート切れに伴うPCの買い替え需要により高水準であった前連結会計年度に比べ減少した。
ハードディスク事業はこれにより販売数量が減少し減収となった。レアアース磁石合金は、平成27年5月の中国輸出税撤廃の影響による市況低下を受け減収となり、化合物半導体も減収となった。
この結果、当セグメントの売上高は1,314億92百万円(前連結会計年度比5.1%減)となり、営業利益は、174億72百万円(同32.2%減)となった。
(無機)
当セグメントでは、黒鉛電極の生産は前連結会計年度に比べ減少した。
黒鉛電極事業は、米国の鉄鋼業界では油井管需要減と輸入品の影響を受け厳しい状況で推移し、アジア地区では中国製鋼材輸出の影響を受け軟調な需給関係が続いたため、出荷が減少し減収となった。セラミックス事業は小幅減収となった。
この結果、当セグメントの売上高は634億76百万円(前連結会計年度比6.0%減)となり、営業損益は12億49百万円の損失(同9億49百万円減益)となった。
(アルミニウム)
当セグメントでは、アルミ電解コンデンサー用高純度箔の生産は、国内は減少したが、増強を完了した昭和電工鋁業(南通)有限公司の中国での生産は増加した。
アルミ圧延品事業はこれにより中国での販売が増加し小幅増収となった。アルミ機能部材事業は自動車・輸送機器関連向け出荷が減少し減収となった。アルミ缶事業はコーヒー向けの出荷増に加え、平成26年6月に連結子会社としたハナキャン・ジョイント・ストック・カンパニーが当連結会計年度は通期で連結寄与したことにより増収となった。
この結果、当セグメントの売上高は1,007億56百万円(前連結会計年度比2.9%増)となったが、営業利益は25億63百万円(同14.5%減)となった。
(その他)
当セグメントでは、リチウムイオン電池材料は、スマートフォン向けの出荷増に加え車載向けの出荷が本格化したため増収となった。昭光通商㈱は中国鉄鋼関連事業が大幅な減収となった。
この結果、当セグメントの売上高は1,524億59百万円(前連結会計年度比21.8%減)となったが、営業利益はリチウムイオン電池材料の出荷増により14億93百万円(同21億71百万円増益)となった。
(2)キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益は増加したものの、仕入債務の減少等により、前連結会計年度に比べ35億78百万円の収入減少となり、624億18百万円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得があったこと等により、前連結会計年度に比べ33億2百万円の支出減少となり、439億23百万円の支出となった。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ2億76百万円の収入減少となり、184億95百万円の収入となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債(借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債)は減少したものの、前連結会計年度に優先出資証券の買入や自己株式の取得を行っていたこと等により、前連結会計年度に比べ、18億22百万円の支出減少となり、232億2百万円の支出となった。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ28億84百万円減少し、636億30百万円となった。
(1)生産実績
当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため生産の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示している。
(2)受注実績
当連結会計年度における受注実績は、次のとおりである。
セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
その他 |
1,037 |
△11.4 |
72 |
10.8 |
(注) 上記金額には、消費税等は含まれていない。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
石油化学 |
231,288 |
△17.8 |
化学品 |
142,292 |
2.3 |
エレクトロニクス |
131,492 |
△5.1 |
無機 |
63,476 |
△6.0 |
アルミニウム |
100,756 |
2.9 |
その他 |
152,459 |
△21.8 |
調整額 |
△40,805 |
― |
合計 |
780,958 |
△10.9 |
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去前の数値によっている。
2 上記金額には、消費税等は含まれていない。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。
(1) 当社グループの対処すべき課題
新興国において急速な経済成長により生活水準が向上する一方で、地球環境への負荷増大を抑制するための取り組みが世界全域で求められている。社会動向を市場性の観点から見た場合、電子産業分野の一層の高品位化・高速化・高容量化・小型化の進展による利便性・快適性の向上、地球温暖化対策・環境保全の推進による健康で安全な社会の実現、化石エネルギー依存度低下・省エネルギー推進によるエネルギー供給保障等の人類共通の諸課題に対応するための新技術の開発と事業化が求められている。
当社グループは、優位性のある固有技術をベースに先進・先端技術領域をリードする部材・素材・ソリューションをお客様に提供し、豊かさと持続性が調和する社会の創造に貢献していく。
また、当社グループは、経営の健全性、実効性及び透明性を確保し、企業価値の持続的な向上により社会から信頼・評価される「社会貢献企業」を実現するために、平成27年12月、「コーポレート・ガバナンス基本方針」を定め、その充実に取り組んでいく。
「コーポレート・ガバナンス基本方針」については当社ホームページを参照。
http://www.sdk.co.jp/assets/files/about/governance/governance_policy151225.pdf
世界経済は大きな市場構造の変化の潮流の中にある。当社グループは平成28年に始動させた連結中期経営計画「Project 2020+」において、収益性と安定性を高いレベルで持続的に維持する「個性派事業」の拡大・強化を図りグローバル市場で展開していく。成長するアジア・ASEAN市場に加え、欧米などの先進国市場も含めた成長機会の獲得を追求し、海外展開を加速すると共に、市場が求める高機能、高性能な製品・技術の提供を通じ、お客様の期待、社会のニーズに応え続ける企業の確立を目指していく。
(2) 株式会社の支配に関する基本方針
①基本方針の内容
株式会社の支配に関する基本方針は次のとおりである。
「当社は、当社の株主は市場における当社株式の自由な取引を通じて決定されるものであると考えており、特定の者による当社株式の大規模買付行為に関する提案がなされた場合においても、これに応じて当社株式の売却を行うか否かの判断は、最終的には、当社株主の皆様が適切な判断を行うために必要となる十分な情報提供がなされ、かつ熟慮に必要となる十分な時間が与えられたうえでの、当社株式を保有する株主の皆様の意思に基づき行われるべきものと考えております。
しかしながら、大規模買付行為の中には、その目的等からみて企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が買付行為の条件について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社やその関係者に対し高値で株式を買い取ることを要求するもの等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資することにならないものもあります。
当社は、特定の者による大規模買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させるものであるか否かについて、株主の皆様が、当該買付者及び当社取締役会の双方から必要かつ十分な情報を得たうえで、適切な判断を下すことが望ましいと考えております。一方で、上記の例に該当するような当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大規模買付行為またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては適切でないと考えております。」
②基本方針の実現に資する取組み
当社グループは、グループ経営理念「私たちは、社会的に有用かつ安全でお客様の期待に応える製品・サービスの提供により企業価値を高め、株主にご満足いただくと共に、国際社会の一員としての責任を果たし、その健全な発展に貢献します。」のもと、豊かさと持続性の調和した社会の創造に貢献する「社会貢献企業」の実現を目指している。
当社グループは、有機化学、無機化学、アルミニウム加工等を基幹技術に事業を展開しており、これらの異なる基幹技術を深化・融合させることにより創出した他社にない技術力、開拓者精神に溢れ独創性を追求する従業員が、当社グループの企業価値の源泉であり、当社グループは、個性的で競争優位性を持つ技術や製品を開発・提供することにより企業価値を高め、「個性派化学」として市場から高い評価をいただいている。また、製品・サービスの提供、環境への取り組みや地域活動等を通じて株主の皆様、お客様をはじめ、全てのステークホルダーの皆様にご信頼いただくことにより良好な関係を築き上げ、その維持、発展に努めており、これらは、「社会貢献企業」の実現を目指すうえで損なうことのできない貴重な財産と考えている。
当社グループは、平成28年からスタートした5ヵ年の連結中期経営計画「Project 2020+」において、当社が有する多様な事業群の収益基盤強靭化と個性派事業の拡大を進め、激化する国際競争下において市場を絶えずリードする企業グループを目指している。
当社グループは、企業としての社会的責任を全うし、広く社会からの信頼を築きあげていくことが、企業価値の持続的向上と中長期的な企業価値の創出の実現に必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と認識し、経営の公正性・透明性の向上、監督・監視機能の一層の強化、迅速な意思決定と業務執行の実効性の確保に取り組んでいる。また、コンプライアンスとリスク管理の強化、レスポンシブル・ケアの徹底、情報開示の充実に取り組むと共に、株主、お客様、取引先、従業員、地域社会等の全てのステークホルダーの皆様と適切に協働して事業活動を行うことにより、企業価値ひいては株主共同の利益の向上に努めていく。
③基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み
当社は、上記基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの一つとして、平成26年2月13日開催の取締役会及び平成26年3月27日開催の第105回定時株主総会の各決議に基づき、当社株券等の大規模買付行為等への対応方針(買収防衛策)を更新した。(以下、更新後の対応方針を「本対応方針」という。)
1)本対応方針の概要
(a)本対応方針の発動に係る手続の設定
本対応方針は、当社株券等について、20%以上の保有割合となる買付けを行うこと等を希望する買付者が出現した場合に、当該買付者に対し、事前に当該買付けに関する情報の提供を求め、当該買付けについての情報収集、検討等を行う期間を確保すること、当該買付者が本対応方針に定める手続を遵守しない場合、または、当該買付者による買付けが当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると認められる場合で、かつ、これに対抗することが相当であると認められる場合には、独立委員会への諮問を経たうえで、また、一定の場合には株主意思確認総会を開催し株主の皆様の意思を確認したうえで、一定の対抗措置を採ることなど、当社の企業価値ひいては株主共同の利益が損なわれないための手続を定めている。
(b)対抗措置の内容
上記(a)記載の対抗措置として、当社は、上記(a)記載の買付者による行使は認められないとの条項及び当社が当該買付者以外の者から当社株式と引き換えに当該新株予約権を取得する旨の条項等が付された新株予約権を、当社株式1株に対し1個の割合でその時点の全ての株主に対して割り当てる手法による新株予約権の無償割当てその他法令または当社定款が取締役会の権限として認める措置を行う。
2)本対応方針の有効期間
本対応方針の有効期間は、平成25年12月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時から平成28年12月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時までとする。但し、当該定時株主総会の終結時に買収提案を行っている者等が現に存在している場合にはその限りで有効期間が延長される。
3)本対応方針の廃止及び変更
本対応方針の導入後、有効期間の満了前であっても、当社株主総会において本対応方針を廃止する旨の議案が承認された場合、または当社取締役会において本対応方針を廃止する旨の決議がなされた場合には、本対応方針はその時点で廃止される。本対応方針は株主の意向に沿ってこれを廃止させることが可能である。
④上記取組みが基本方針に沿い、当社の株主の共同の利益を損なうものでなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものでないこと及びその理由
上記②の各取組みは、中長期的視点から当社の企業価値ひいては株主共同の利益の向上のための具体的な方策として行われているものであり、まさに上記基本方針に沿うものである。また、上記③の本対応方針は、以下のように合理性が担保されており、上記基本方針に沿うと共に、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致するものであり、当社の役員の地位の維持を目的とするものではない。
1)経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足している。また、企業価値研究会が平成20年6月30日に発表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえた内容となっている。
2)株主意思を反映する内容となっており、また、当社定款上取締役の任期は1年であり、本対応方針の有効期間中であっても、当社取締役の選任を通じて株主の意向を示すことが可能である。
3)デッドハンド型やスローハンド型の買収防衛策ではない。
4)当社の業務執行を行う経営陣から独立した当社社外取締役、社外監査役及び弁護士、公認会計士、社外の経営者等の社外有識者によって構成される独立委員会への諮問を経ることとなっている。
5)合理的な客観的要件が充足されなければ対抗措置を発動することができない。
6)独立委員会は、必要と判断する場合に、当社の費用で、独立した第三者の助言を得ることができ、これにより、独立委員会による判断の公正さ・客観性がより強く担保される仕組みとなっている。
当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる主要なリスクには、以下のものがある。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスク顕在化の未然防止及びリスク発生時の影響の最小化に努めている。
なお、これらの事項は有価証券報告書提出日(平成28年3月30日)現在において判断したものであり、当社グループに関する全てのリスクを網羅しているものではない。
(1) 個別事業の経営成績における大幅な変動
当社グループは、石油化学製品、化学製品、エレクトロニクス関連製品、無機製品、アルミニウム製品等様々な製品の製造・販売を行っている。主要事業において想定されるリスクとして以下のようなものがあるが、リスクはこれらの事業に限定されるものではない。
①石油化学事業
当社グループは、大量の原料用ナフサ等を購入(輸入を含む)しており、原油価格の変動や需給バランス、為替等の要因によりナフサ価格等が変動し、販売価格との間に十分なスプレッドが確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また、石油化学事業の収益は、需給バランスによるところが大きく、他社による大型プラントの建設等により需給が緩和した場合や、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
②アルミニウム事業
当社グループは、大量のアルミニウム地金を海外から輸入しており、LME相場やアルミ割増金の上昇、円安等によりアルミニウム地金価格が上昇し、かつそれによる製造コストの上昇分をアルミニウム関連の製品価格の上昇で吸収できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また当社グループのアルミニウム製品は、自動車向け、電機電子部品・材料向けの販売が大きな比重を占めており、これらの製品の売上は、自動車市場や家電・情報機器関連市場の動向など当社グループが管理できない要因により、大きな影響を受ける可能性がある。
③ハードディスク事業
当社グループのハードディスク事業は、販売数量がIT機器や家電製品に対する需要によって大きく変動すると同時に、技術革新のスピードが速く、国際的競争が厳しい事業である。また、これらの需要変動や競争激化は価格変動の要因ともなり得る。当社グループは、市場のニーズに合致した製品を適時・適切に開発・提供すべくグローバルな生産・販売体制を整えているが、市場のニーズが想定を超えて大きく変化した場合や需給バランスが大きく変化した場合、また、為替が大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
④海外での事業活動
当社グループは、アジア、北米、欧州にて生産及び販売活動を行っているが、海外での事業活動には、予期しえない法律または規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争等による社会的混乱等、国内における事業運営とは異なるリスクが存在する。こうしたリスクが顕在化することによって、当社グループの海外での事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
(2) 財務状況及びキャッシュ・フローの予想以上の変動
①為替相場の大幅な変動
当社グループは、輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じてリスクの最小化に努めているが、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。特に、他の通貨に対する急激な円高は、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性がある。
また、為替相場の変動は、海外グループ会社の財務諸表の円貨への換算を通しても、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。
②金融市場の動向や調達環境の変化
金融市場の動向や当社グループの財務指標の悪化が、一部借入金の財務制限条項への抵触による期限前弁済を含め、当社グループの資金調達や支払金利に対して影響を与え、これらを通して、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。
③退職給付債務
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回り等に基づき算出されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更等が、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。
④有価証券
当社グループは、時価のある株式を保有しているため、株式相場の変動に伴い、評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
⑤固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用している。この基準の適用に伴い、今後の土地等の時価の変動や事業環境の大幅な変動によって、さらに減損損失が発生する可能性がある。
⑥繰延税金資産
当社グループは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上している。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しているが、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の修正が必要となり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
(3) 特有の法的規制
当社グループが行っている事業は国内外の各種の法規制を受ける。その規制内容は、石油コンビナート等災害防止法、消防法、高圧ガス保安法等保安安全に係るもの、環境基本法、大気汚染防止法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律等環境や化学物質に係るもの等があり、当社グループはこれら法規制の遵守を徹底している。万一遵守できなかった場合は、当社グループの活動が制限される可能性がある。また、これら法規制が一段と強化された場合には、コストの増加につながり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
(4) 重要な訴訟事件
当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めているが、広範な事業活動の中で、訴訟の提起を受ける可能性がある。
(5) その他
①研究開発について
当社グループは、研究開発基本方針である「多様な個性派技術を鍛えてつなぎ、新たな価値を創造」のもと、現業強化と周辺分野拡大に向けた研究と事業開発に研究資源を集中する一方で、オープンイノベーションやM&A等を活用した次世代事業の創出に取り組んでいる。無機、有機、アルミに跨る多様な中核技術の強化とシナジーを発揮することにより当社グループならではの個性派製品・技術の創出と、個性派事業の獲得を図るべく、研究開発に注力している。これらの研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
②知的財産について
当社グループは、産業財産権やノウハウ等の知的財産権が事業の競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、自社権利の取得、活用及び保護と他社権利の尊重に努めている。しかしながら、自社権利を適切に取得、活用することができなかったり不当に侵害された場合、または第三者の知的財産権を侵害する事象が発生した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
③品質保証・製造物責任について
当社グループは、「品質保証・品質管理規程」の制定や、品質保証を所管・統括・推進する組織の整備、ISO9001等の積極的な取得により、品質管理に万全を期すべく努めている。しかしながら、重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起といった事象が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
④事故・災害について
当社グループは、安全・安定操業の徹底を図り、製造設備の停止や設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、全ての製造設備について定期的な点検を実施している。しかしながら、事故あるいは大規模な自然災害等の発生により、製造設備で人的・物的被害が生じた場合、当社グループの社会的信用が低下し、事故災害への対策費用や生産活動停止による機会損失により、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また、当社グループの製造設備が直接の影響を受けない場合であっても、サプライヤーの事故・自然災害等に起因する原材料調達難、物流網の寸断及び電力の供給不足に伴い生産活動が制限された場合、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
⑤環境に対する影響について
当社グループは、化学物質の開発から製造、流通、使用を経て廃棄に至る全ライフサイクルにおける「環境・安全・健康」を確保することを目的とした「レスポンシブル・ケア」活動を推進している。しかしながら、周囲の環境に影響を及ぼすような事象が発生した場合には、社会的信用の失墜を招き、補償などを含む対策費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。
(1)技術提携の状況
(a)技術供与関係
(昭和電工株式会社)
契約締結先 |
契約発効年月 |
内容 |
摘要 |
(サウジアラビア) ナマケミカルズ社 |
平成23年1月 |
アリルアルコールの製造技術 |
(対価) 一定金額を分割払いで受け取る。 (有効期間) 平成23年1月31日から12年間 |
(b)技術導入関係
(昭和電工株式会社)
契約締結先 |
契約発効年月 |
内容 |
摘要 |
(アメリカ) ユニオン・カーバイド・コーポレーション |
平成2年3月 |
ポリエチレンの製造技術 |
(対価) 頭金のほか、製品生産高につき一定料率のロイヤルティーを支払う。 (有効期間) 平成2年3月20日から25年間 |
(注) 平成27年3月20日をもって契約期間満了により終了した。
当社グループは、連結中期経営計画「PEGASUS(ペガサス)」及び新連結中期経営計画「Project 2020+」に基づき、エネルギー・環境と情報・電子の2つの事業ドメインに研究開発資源を重点的に投入し、無機と有機の融合戦略と国内外のマーケティングを重視した研究開発を推進している。
特に、電池材料や高機能光学フィルム、SiC(炭化ケイ素)エピタキシャルウェハーなど当社の将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現に注力している。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、202億89百万円である。
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりである。
(石油化学)
石油化学分野では、コア技術である触媒開発、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子材料、自動車、印刷インク、塗料などの市場ニーズに応えるための研究開発を推進している。
まず、世界的な需要成長に対する増産余力の制約から将来的に需給のひっ迫が予想されるブタジエンに対し、当社固有の触媒技術・事業基盤を活用して、ブタジエンの目的生産プロセスの開発を進めている。プロセス検証を目的とした中規模実験設備を長時間連続稼働させ、量産化に向けた技術開発を加速している。
また、アセチル及びアリルアルコール製品群では、競争力のある独自の製造プロセスをより強化するため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めた。平成26年6月、独自の新規触媒を用い大分に新設した酢酸エチルプラントは、稼働開始以来、高稼働を継続しており、更なる競争力強化を達成すべく、触媒性能の向上を追求している。
アリルアルコール製品群のうち、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルは順調に販売量を増やしているが、更に新規用途の展開を積極的に進めている。また耐熱透明フィルム「ショウレイアル®」は、モバイルディスプレイ材料などの分野に向けて精力的に市場開拓を進めており、ガラスに匹敵する光学特性と手触り感が評価され、国内外で採用が進んでいる。
当連結会計年度における石油化学セグメントの研究開発費は、11億59百万円であった。
(化学品)
化学品分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、半導体プロセス材料、光機能材料、ソルダーレジスト、高機能ゲル、各種有機中間体、化粧品原料などの研究開発を推進している。
液晶ディスプレイの高機能化に貢献する光機能材料では、光重合開始剤や光硬化性樹脂添加剤としての多官能チオールの市場開拓に取り組んだ。多官能チオールは産業用樹脂組成物への添加剤として、継続して多用途への展開を進めている。
テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種レジスト製品は、市場で高い評価を受けているが、更に、お客様との情報ネットワークを駆使して、お客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入している。また、各種レジストなどの電子材料に使用される高機能性イソシアネートモノマー「カレンズAOI®」において、一般工業分野向け新グレード「AOI-VM®」を開発し、平成27年12月より販売を開始した。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、先進国向けを主体に、最先端技術へ適用できるカラムを開発し、並行して新興国の市場開発を積極的に進めている。40年間の日米欧で培った営業ノウハウに基づき、市場ニーズに適した情報(分析ノウハウ・技術サービス)を的確、迅速に提供している。平成27年8月に親水性化合物分析用HILICモードカラムを新たに上市した。高機能ゲルの開発においては、オーストリアの開発製造会社との連携により得られた技術シナジーを核に研究体制を強化し、近年急進するバイオ医薬品精製事業分野への販売拡大に取り組んでいる。
有機中間体では、当社固有原料と精密有機合成技術の強みを活かした各種中間体の開発に注力し、化粧品原料では、高機能ビタミンC誘導体「アプレシエ®」に続き、カルニチン誘導体「Hi-カルニチン」、ヒドロキシクエン酸誘導体「HCAP®」など、複数の化合物において市場投入に向けて進展が見られた。その他、リチウムイオン電池向けの部材開発では、負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾール®LBシリーズ」の販売が拡大中で、更に高性能化を目指し研究開発を継続している。当製品は、低抵抗性、優れた温度特性、負極集電体との高密着性などの特性を持ち、リチウムイオン電池の長寿命化、高容量化への寄与が期待される。
また、半導体製造プロセス材料として、各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、市場展開している。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進める。
当連結会計年度における化学品セグメントの研究開発費は、23億23百万円であった。
(エレクトロニクス)
エレクトロニクス分野では、高性能化の市場要請に応えるべく、最先端技術の開発に邁進している。
記録材料については、ハードディスク外販のトップメーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めると共に、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っている。3.5インチサイズにおいて、世界最大容量となる10テラバイトのヘリウム充填型ハードディスクドライブに当社製品が採用された(平成27年12月現在)。
発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力している。4元系赤色LEDでは、植物育成に最適な660ナノメートルの波長光の発光層を独自技術で開発し、植物工場及び様々な栽培モデル施設の光源として採用されている。
希土類磁石合金では、平成25年度に発表した希少金属の1つであるDy(ジスプロシウム)を使用せずに従来品と同様の性能を持つネオジム磁石用合金を製造する技術をベースに、より高濃度のDy添加が必要な用途においてもDyフリーを達成すべく、更なる技術開発に取り組んでいる。
当連結会計年度におけるエレクトロニクスセグメントの研究開発費は、51億47百万円であった。
(無機)
無機分野では、素材の特性を活かした材料及びその用途開発を進めている。
電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料の開発を行っている。
当社が得意とするナノ粒子技術などを基盤として、平成19年から平成24年に参加した国家プロジェクトにおいて、室内の可視光でも優れた抗菌・抗ウィルス性を示す光触媒材料を開発し、最終製品(住宅・公共施設・植物工場等)への用途開発を進めている。既に屋内用膜材料、カーテンなどに採用されている高機能光触媒「ルミレッシュ®」が、新たに平成27年11月に高機能繊維に採用された。
当連結会計年度における無機セグメントの研究開発費は、2億70百万円であった。
(アルミニウム)
アルミニウム分野では、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めると共に、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力している。
素形材関連では、当社が開発した気体加圧式ホットトップ連続鋳造法及び気体加圧式水平完全連続鋳造法を基軸とし、鍛造技術と合わせて、アルミ加工製品の開発を進めている。今後、自動車市場のアジアでの需要増加が見込まれることにより、更に機能性を高めたアルミニウム鋳造棒及び鍛造品の開発を進めている。
基盤技術面では、押出、鍛造及び引抜の金型技術、並びに加工、接合の各プロセス技術、各種製品に適した合金の開発、塑性加工及び熱伝導のシミュレーション技術を深化させている。
当連結会計年度におけるアルミニウムセグメントの研究開発費は、17億39百万円であった。
(その他)
先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、容量、出力、寿命、低抵抗性を満たす、黒鉛負極材「SCMG®」、高容量Si黒鉛複合負極材、カーボンナノファイバー「VGCF®」、カーボンコートアルミ箔「SDX®」、外装材であるアルミラミネートフィルム「SPALF®」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めている。
省エネルギー効果の高い次世代パワー半導体材料として注目されるSiCエピタキシャルウェハーについては、設備増設と生産技術向上による生産能力の拡大と共に、低欠陥化などの高品質化を継続している。特に4インチ品と6インチ品において、欠陥を大幅に低減した新グレード品「ハイグレードエピ」を開発し市場展開している。
当社独自技術である高輝度LED照明等の植物工場向け製品については、(大)山口大学と共同で開発した高速栽培技術「SHIGYO®法」と併せて、市場開拓に取り組んでいる。特許庁の「事業戦略対応まとめ審査」制度を活用して取得した特許権を軸に、技術アピールしながら多様な植物の栽培ができる栽培手法の開発を進めている。
プリンテッドエレクトロニクスについては、マイクロ波化学㈱と共同で透明導電パターン用の銀ナノワイヤ合成の量産技術を開発し、顧客開拓を進めている。また薄膜印刷に対応したスクリーン印刷用銀インクの開発も進めている。
燃料電池触媒については、従来品と比較して低Pt(白金)量で高活性を示す触媒の研究開発を進めている。
ナノカーボン分野では、三菱商事㈱と共同で運営するフロンティアカーボン㈱を通じて、引き続きフラーレン製品の製造及び販売を促進していく。技術開発においてはフラーレンの生産性向上に取り組むと共に、アプリケーション拡大に重要な分散技術開発にも注力し、フラーレンの有する電子受容性に優れた半導体特性を活かした有機薄膜太陽電池の負極材やその他有機エレクトロニクス分野におけるデバイス向け有望素材として開発を進めている。
研究開発は、特定分野の技術者を事業開発センターに集約し、研究所(応用化学品研究所、先端技術開発研究所)、共通支援センター(分析物性センター、安全性試験センター)、及び事業化プロジェクトの体制で推進してきた。応用化学品研究所は、事業部や事業所と連携し、現行事業や製品の付加価値を高める開発、その周辺の成長分野を開拓する開発、及び製品に関する高度な技術サポートによる事業強化を行い、先端技術開発研究所は、当社グループが保有する広範な材料・技術の中でも、将来にわたって強みを発揮できるコア材料・コア技術を軸とした次世代事業テーマの創出を推進した。平成28年からは、新連結中期経営計画「Project 2020+」に基づいた組織改定を行い、一層の研究成果顕現を目指した体制とする。
当連結会計年度におけるその他セグメントの研究開発費は、全社共通を含め、96億53百万円であった。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。
この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりである。
なお、連結決算日における資産及び負債の貸借対照表上の金額及び当連結会計年度における収益及び費用の損益計算書上の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績等を勘案し、合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。
(2)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、主に原燃料価格の低下を受け営業債権、棚卸資産が減少し、前連結会計年度末比697億69百万円減少の9,413億14百万円となった。
有利子負債(借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債)は前連結会計年度末比142億89百万円減少し、3,688億35百万円となった。負債合計は、有利子負債の減少に加え営業債務の減少等もあり、590億40百万円減少し6,315億39百万円となった。
純資産は、当期純利益の計上等はあったが、昭光通商㈱の特別損失計上に伴う少数株主持分の減少等により前連結会計年度末比107億30百万円減少の3,097億74百万円となった。
(3)経営成績の分析
当連結会計年度における売上高は、化学品、アルミニウムの2セグメントは増収となったものの、石油化学などの4セグメントは減収となり、前連結会計年度に比べ956億22百万円減少し7,809億58百万円となった。
売上原価は、売上の減少に伴い前連結会計年度に比べ1,088億39百万円減少し6,590億10百万円となった。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ4億60百万円と小幅に増加し882億76百万円となった。
営業利益は、エレクトロニクス、無機、アルミニウムの3セグメントは減益となったが、石油化学セグメントは前連結会計年度の定期修理の影響がなくなったことに加え年央に製品市況が改善したため大幅増益となり、化学品、その他、の2セグメントも増益となったことから、前連結会計年度に比べ127億57百万円増加し336億72百万円となった。
経常利益は、営業利益の増加等により前連結会計年度に比べ101億23百万円増加し322億25百万円となった。
特別利益は、投資有価証券売却益等の増加により前連結会計年度に比べ49億1百万円増加し83億91百万円となった。
特別損失は、昭光通商㈱の中国事業に係る貸倒引当金繰入額の計上や四川昭鋼炭素有限公司等における固定資産の減損損失の計上等により前連結会計年度に比べ187億49百万円増加し343億77百万円となった。
これにより、税金等調整前当期純利益は62億39百万円となり、当期純利益は前連結会計年度に比べ25億31百万円減少し9億69百万円となった。
(4)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業利益は増加したものの、仕入債務の減少等により、前連結会計年度に比べ35億78百万円の収入減少となり、624億18百万円の収入となった。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得があったこと等により、前連結会計年度に比べ33億2百万円の支出減少となり、439億23百万円の支出となった。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ2億76百万円の収入減少となり、184億95百万円の収入となった。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債は減少したものの、前連結会計年度に優先出資証券の買入や自己株式の取得を行っていたこと等により、前連結会計年度に比べ、18億22百万円の支出減少となり、232億2百万円の支出となった。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ28億84百万円減少し、636億30百万円となった。