第2【事業の状況】

1【業績等の概要】

(1)業績

 ① 業績全般

 当連結会計年度のわが国経済は、金融緩和や財政出動の経済対策等による株価上昇や円高の是正を受け、個人消費は持ち直し企業収益も改善するなど、緩やかに回復した。

 海外経済においては、米国は堅調な民間需要を背景に緩やかな回復が続き、欧州も持ち直しの兆しがみられたものの、中国における経済成長の鈍化、インド、アセアン等の新興国の景気減速など、世界経済を巡る不確実性が高まっている。

 国内製造業は、年前半は厳しい状況で推移したが、年央以降は円安の影響等もあり回復の動きがみられた。

 石油化学業界は、年前半は中国における需要低迷の影響を受けたものの、年央以降、生産は緩やかな回復基調にある。電子部品・材料業界は、スマートフォン等の生産は増加したが、PCは厳しい生産調整が続いた。

 

 このような情勢下、当社グループは、現在推進中の連結中期経営計画「PEGASUS(ペガサス)」の後半計画である「ペガサス フェーズⅡ」を平成25年12月に発表した。

 「グローバル市場で特徴ある存在感を持つ化学企業」の確立に向け、引き続きハードディスク、黒鉛電極を両翼とする成長戦略を推進すると共に、新たにアルミ缶、高純度アルミ箔、半導体用高純度ガス、機能性化学品を「成長」事業と位置づけ、伸長するアジア市場での展開加速等、さらなる事業強化を進めていく。

 

 当連結会計年度の連結営業成績については、売上高は主に石油化学セグメントの増収により8,480億71百万円(前連結会計年度比14.6%増)となった。営業利益は、石油化学、化学品、アルミニウムの各セグメントは主に数量増により増益となったが、エレクトロニクス、無機の両セグメントは主に数量減により減益となったため、259億53百万円(同7.7%減)となった。経常利益は為替差益の計上等により234億88百万円(同0.2%増)となり、当期純利益は90億65百万円(同3.2%減)となった。

 

 ② セグメントの業績

(石油化学)

 当セグメントでは、エチレン、プロピレンの生産は、前連結会計年度に発生したエチレンプラントの設備不具合による影響がなくなったため前連結会計年度に比べ増加した。

 オレフィン事業は、これによる販売数量の増加に加え、原料ナフサ価格の上昇により販売価格が上昇し増収となった。有機化学品事業は、酢酸ビニル、アリルアルコールの販売数量の増加により増収となった。

 この結果、当セグメントの売上高は2,867億32百万円(前連結会計年度比50.2%増)となり、営業利益は43億98百万円(同53億74百万円増益)となった。

 

(化学品)

 当セグメントでは、液化アンモニアの生産は小幅に減少した。

 基礎化学品事業は、アクリロニトリルは市況が緩やかな上昇に転じ、合成ゴム「ショウプレン」は海外向け数量増により、総じて増収となった。産業ガス事業は水素等の数量減により減収となった。情報電子化学品事業は海外向け数量増により増収となった。機能性化学品事業は小幅増収となった。

 この結果、当セグメントの売上高は1,306億56百万円(前連結会計年度比2.6%増)となり、営業利益は主に基礎化学品事業の改善により25億59百万円(同34億34百万円増益)となった。

 

(エレクトロニクス)

 当セグメントでは、ハードディスクの生産は、低調なPC需要を受けハードディスクドライブ業界が生産及び在庫調整を行ったため前連結会計年度に比べ減少した。

 ハードディスク事業は、これによる販売数量の減少により減収となった。電子機能材事業は、レアアース磁石合金は第1四半期を底とした顧客業界の厳しい在庫調整の影響を受け、また化合物半導体は前連結会計年度に実施した構造改革により窒化ガリウム系LED事業が連結対象外になったため、それぞれ減収となった。

 この結果、当セグメントの売上高は1,365億48百万円(前連結会計年度比16.4%減)となり、営業利益は219億40百万円(同32.1%減)となった。

(無機)

 当セグメントでは、黒鉛電極の生産は前連結会計年度に比べ減少した。

 黒鉛電極事業は、欧州における鉄鋼需要の低迷、中国鉄鋼業界の過剰生産の影響を受け、販売数量が減少し減収となった。セラミックス事業は、電子材料分野向けを中心に数量が増加し増収となった。

 この結果、当セグメントの売上高は659億19百万円(前連結会計年度比0.5%増)となったが、営業損益は主に黒鉛電極事業の数量減等により8億38百万円の損失(同37億92百万円減益)となった。

 

(アルミニウム)

 当セグメントでは、アルミ電解コンデンサー用高純度箔の生産は、顧客業界の在庫調整が第1四半期で終了し、その後の需要回復を受け前連結会計年度に比べ増加した。

 アルミ圧延品事業は、これによる販売数量の増加により増収となった。アルミ機能部材事業は、主にショウティック事業が旺盛な海外の自動車生産を受け販売数量が増加し増収となった。アルミ缶は前連結会計年度並みとなった。

 当セグメントの売上高は上記の増収要因はあったが、昭和電工アルミ販売㈱をその他セグメントに移管したため減少し903億83百万円(前連結会計年度比2.0%減)となった。営業利益はアルミ圧延品事業の数量増等もあり58億45百万円(同269.6%増)となった。

 

(その他)

 当セグメントでは、リチウムイオン電池材料は、スマートフォン、タブレット向けの出荷が増加したため増収となった。昭光通商㈱は主に海外関連事業が増収となり、また昭光通商(上海)有限公司を新規に連結子会社としたため、総じて増収となった。

 この結果、当セグメントの売上高は1,765億16百万円(前連結会計年度比30.5%増)となったが、営業損益はリチウムイオン電池材料の固定費増等を受け、6億26百万円の損失(同7億15百万円減益)となった。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加等により、前連結会計年度に比べ102億55百万円の収入増加となり、635億65百万円の収入となった。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度に比べ65億29百万円の支出増加となり、467億38百万円の支出となった。

この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ37億26百万円の収入増加となり、168億27百万円の収入となった。

財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債(借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債)が、前連結会計年度は減少したのに対し、当連結会計年度は増加したこと等により、前連結会計年度に比べ133億45百万円の支出減少となり、68億5百万円の支出となった。

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ169億21百万円増加し、681億75百万円となった。

2【生産、受注及び販売の状況】

(1)生産実績

 当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。このため生産の状況については、「1 業績等の概要」におけるセグメントの業績に関連付けて示している。

(2)受注実績

  当連結会計年度における受注実績は、次のとおりである。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

その他

1,633

△49.5

1,380

△5.5

 (注) 上記金額には、消費税等は含まれていない。

(3)販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりである。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

石油化学

286,732

50.2

化学品

130,656

2.6

エレクトロニクス

136,548

△16.4

無機

65,919

0.5

アルミニウム

90,383

△2.0

その他

176,516

30.5

調整額

△38,684

合計

848,071

14.6

 (注)1 セグメント間の取引については、相殺消去前の数値によっている。

2 上記金額には、消費税等は含まれていない。

3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略している。

3【対処すべき課題】

(1) 当社グループの対処すべき課題

新興国において急速な経済成長により生活水準が向上する一方で、地球環境への負荷増大を抑制するための取り組みが世界全域で求められている。社会動向を市場性の観点から見た場合、電子産業分野の一層の高品位化・高速化・高容量化・小型化の進展による利便性・快適性の向上、地球温暖化対策・環境保全の推進による健康で安全な社会の実現、化石エネルギー依存度低下・省エネルギー推進によるエネルギー供給保障等の人類共通の諸課題に対応するための新技術の開発と事業化が求められている。

当社グループは、固有かつ優位性のある技術をベースに先進・先端技術領域をリードする部材・素材・ソリューションをお客様に提供し、豊かさと持続性が調和する社会の創造に貢献することにより、企業価値ひいては株主共同の利益の向上に努めていく。

 

 世界経済は大きな市場構造の変化の潮流のなかにある。当社グループは成長するアジア市場を中心とする海外への積極的な事業展開を推進すると共に、市場が求める高機能、高性能な製品・技術の提供を通じ、お客様の期待、社会のニーズに応え続ける企業を目指していく。

 

(2) 株式会社の支配に関する基本方針

①基本方針の内容

 株式会社の支配に関する基本方針は次のとおりである。

 「当社は、当社の株主は市場における当社株式の自由な取引を通じて決定されるものであると考えており、特定の者による当社株式の大規模買付行為に関する提案がなされた場合においても、これに応じて当社株式の売却を行うか否かの判断は、最終的には、当社株主の皆様が適切な判断を行うために必要となる十分な情報提供がなされ、かつ熟慮に必要となる十分な時間が与えられたうえでの、当社株式を保有する株主の皆様の意思に基づき行われるべきものと考えております。

 しかしながら、大規模買付行為の中には、その目的等からみて企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、対象会社の取締役会や株主が買付行為の条件について検討し、あるいは対象会社の取締役会が代替案を提案するための十分な時間や情報を提供しないもの、対象会社やその関係者に対し高値で株式を買い取ることを要求するもの等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益に資することにならないものもあります。

 当社は、特定の者による大規模買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させるものであるか否かについて、株主の皆様が、当該買付者及び当社取締役会の双方から必要かつ十分な情報を得たうえで、適切な判断を下すことが望ましいと考えております。一方で、上記の例に該当するような当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大規模買付行為またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者としては適切でないと考えております。」

 

②基本方針の実現に資する取組み

 当社グループは、グループ経営理念「社会的に有用かつ安全でお客様の期待に応える製品・サービスの提供により、企業価値を高め、株主にご満足いただくと共に、国際社会の一員として責任を果たし、その健全な発展に貢献します。」のもと、豊かさと持続性の調和した社会の創造に貢献する「社会貢献企業」の実現を目指している。

 当社グループは、有機化学、無機化学、アルミニウム加工等を基幹技術に事業を展開しており、これらの異なる基幹技術を深化・融合させることにより創出した他社にない技術力、開拓者精神に溢れ独創性を追求する従業員が、当社グループの企業価値の源泉であり、当社グループは、個性的で競争優位性を持つ技術や製品を開発・提供することにより企業価値を高め、「個性派化学」として市場から高い評価をいただいている。また、製品・サービスの提供、環境への取り組みや地域活動等を通じて株主の皆様、お客様をはじめ、全てのステークホルダーの皆様にご信頼いただくことにより良好な関係を築き上げ、その維持、発展に努めており、これらは、「社会貢献企業」の実現を目指すうえで損なうことのできない貴重な財産と考えている。

 当社グループは、平成23年1月からスタートした5ヵ年の連結中期経営計画「PEGASUS(ペガサス)」において、「エネルギー・環境」と「情報・電子」の2つの中核事業領域を設定し、ハードディスクと黒鉛電極を主力事業とする基本戦略のもと、「個性派化学」をさらに進化させ、強力かつ多様な事業群をグローバルに展開することにより、各市場におけるリーディングポジションの確立を目指している。

 当社グループは、企業としての社会的責任を全うし、広く社会からの信頼を築きあげていくことが、企業価値の持続的向上のために必要不可欠であると考え、コーポレート・ガバナンスの強化、レスポンシブル・ケアの徹底及び社会との関わりの深化を経営の重要課題と認識し、経営の公正性・透明性の向上、意思決定及び業務執行の実効

性・迅速性の確保、監督・監視機能の一層の強化、コンプライアンスとリスク管理の強化、情報開示の推進と共に、株主の皆様、お客様、取引先、従業員、地域社会等のステークホルダーからの信頼を一層高めるため、環境・安全・品質の確保、地域との対話等に取り組んでいる。

 当社グループは、企業価値の源泉により確立した「個性派化学」を時代のニーズに応えるべく進化させ、連結中期経営計画「PEGASUS(ペガサス)」の完遂と、CSR経営の遂行により、企業価値ひいては株主共同の利益の持続的向上に努めていく。

 

③基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

  当社は、上記基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの一つとして、平成26年2月13日開催の取締役会及び平成26年3月27日開催の第105回定時株主総会の各決議に基づき、当社株券等の大規模買付行為等への対応方針(買収防衛策)を更新した。(以下、更新後の対応方針を「本対応方針」という。)

1)本対応方針の概要

(a)本対応方針の発動に係る手続の設定

 本対応方針は、当社株券等について、20%以上の保有割合となる買付けを行うこと等を希望する買付者が出現した場合に、当該買付者に対し、事前に当該買付けに関する情報の提供を求め、当該買付けについての情報収集、検討等を行う期間を確保すること、当該買付者が本対応方針に定める手続を遵守しない場合、または、当該買付者による買付けが当社の企業価値ひいては株主共同の利益を害するおそれがあると認められる場合で、かつ、これに対抗することが相当であると認められる場合には、独立委員会への諮問を経たうえで、また、一定の場合には株主意思確認総会を開催し株主の皆様の意思を確認したうえで、一定の対抗措置を採ることなど、当社の企業価値ひいては株主共同の利益が損なわれないための手続を定めている。

(b)対抗措置の内容

 上記(a)記載の対抗措置として、当社は、上記(a)記載の買付者による行使は認められないとの条項及び当社が当該買付者以外の者から当社株式と引き換えに当該新株予約権を取得する旨の条項等が付された新株予約権を、当社株式1株に対し1個の割合でその時点の全ての株主に対して割り当てる手法による新株予約権の無償割当てその他法令または当社定款が取締役会の権限として認める措置を行う。

2)本対応方針の有効期間

 本対応方針の有効期間は、平成25年12月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時から平成28年12月期の事業年度に関する定時株主総会終結の時までとする。但し、当該定時株主総会の終結時に買収提案を行っている者等が現に存在している場合にはその限りで有効期間が延長される。

3)本対応方針の廃止及び変更

 本対応方針の導入後、有効期間の満了前であっても、当社株主総会において本対応方針を廃止する旨の議案が承認された場合、または当社取締役会において本対応方針を廃止する旨の決議がなされた場合には、本対応方針はその時点で廃止される。本対応方針は株主の意向に沿ってこれを廃止させることが可能である。

 

④上記取組みが基本方針に沿い、当社の株主の共同の利益を損なうものでなく、当社の役員の地位の維持を目的とするものでないこと及びその理由

 上記②の各取組みは、中長期的視点から当社の企業価値ひいては株主共同の利益の向上のための具体的な方策として行われているものであり、まさに上記基本方針に沿うものである。また、上記③の本対応方針は、以下のように合理性が担保されており、上記基本方針に沿うと共に、当社の企業価値ひいては株主共同の利益に合致するものであり、当社の役員の地位の維持を目的とするものではない。

1)経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足している。また、企業価値研究会が平成20年6月30日に発表した「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」を踏まえた内容となっている。

2)株主意思を反映する内容となっており、また、当社定款上取締役の任期は1年であり、本対応方針の有効期間中であっても、当社取締役の選任を通じて株主の意向を示すことが可能である。

3)デッドハンド型やスローハンド型の買収防衛策ではない。

4)当社の業務執行を行う経営陣から独立した当社社外取締役、社外監査役及び弁護士、公認会計士、社外の経営者等の社外有識者によって構成される独立委員会への諮問を経ることとなっている。

5)合理的な客観的要件が充足されなければ対抗措置を発動することができない。

6)独立委員会は、必要と判断する場合に、当社の費用で、独立した第三者の助言を得ることができ、これにより、独立委員会による判断の公正さ・客観性がより強く担保される仕組みとなっている。

4【事業等のリスク】

  当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる主要なリスクには、以下のものがある。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスク顕在化の未然防止及びリスク発生時の影響の最小化に努めている。

 なお、これらの事項は有価証券報告書提出日(平成26年3月27日)現在において判断したものであり、当社グループに関する全てのリスクを網羅しているものではない。

(1) 個別事業の経営成績における大幅な変動

 当社グループは、石油化学製品、化学製品、エレクトロニクス関連製品、無機製品、アルミニウム製品等様々な製品の製造・販売を行っている。主要事業において想定されるリスクとして以下のようなものがあるが、リスクはこれらの事業に限定されるものではない。

①石油化学事業

 当社グループは、大量の原料用ナフサ等を購入(輸入を含む)しており、原油価格の上昇や需給バランス、円安等の要因によりナフサ価格等が上昇し、かつそれによる製造コストの上昇分を製品価格の上昇で吸収できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また、石油化学事業の収益は、需給バランスによるところが大きく、他社による大型プラントの建設等により需給が緩和した場合や、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

②アルミニウム事業

 当社グループは、大量のアルミニウム地金を海外から輸入しており、LME相場の変動や円安等によりアルミニウム地金価格が上昇し、かつそれによる製造コストの上昇分をアルミニウム関連の製品価格の上昇で吸収できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また当社グループのアルミニウム製品は、自動車向け、電機電子部品・材料向けの販売が大きな比重を占めており、これらの製品の売上は、自動車市場や家電・情報機器関連市場の動向など当社グループが管理できない要因により、大きな影響を受ける可能性がある。

③ハードディスク事業

 当社グループのハードディスク事業は、販売数量がPCや家電製品に対する需要によって大きく変動すると同時に、技術革新のスピードが速く、国際的競争が厳しい事業である。また、これらの需要変動や競争激化は価格変動の要因ともなり得る。当社グループは、市場のニーズに合致した製品を適時・適切に開発・提供すべくグローバルな生産・販売体制を整えているが、市場のニーズが想定を超えて大きく変化した場合や需給バランスが大きく変化した場合、また、為替が大幅に変動した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

④海外での事業活動

 当社グループは、アジア、北米、欧州にて生産及び販売活動を行っているが、海外での事業活動には、予期しえない法律または規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争等による社会的混乱等、国内における事業運営とは異なるリスクが存在する。こうしたリスクが顕在化することによって、当社グループの海外での事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(2) 財務状況及びキャッシュ・フローの予想以上の変動

①為替相場の大幅な変動

 当社グループは、輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じてリスクの最小化に努めているが、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。特に、他の通貨に対する急激な円高は、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性がある。

 また、為替相場の変動は、海外グループ会社の財務諸表の円貨への換算を通しても、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

②金融市場の動向や調達環境の変化

 金融市場の動向や当社グループの財務指標の悪化が、一部借入金の財務制限条項への抵触による期限前弁済を含め、当社グループの資金調達や支払金利に対して影響を与え、これらを通して、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

③退職給付債務

 当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回り等に基づき算出されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更等が、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性がある。

④有価証券

 当社グループは、時価のある株式を保有しているため、株式相場の変動に伴い、評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

⑤固定資産の減損

 当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用している。この基準の適用に伴い、今後の土地等の時価の変動や事業環境の大幅な変動によって、さらに減損損失が発生する可能性がある。

⑥繰延税金資産

 当社グループは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上している。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しているが、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の修正が必要となり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(3) 特有の法的規制

 当社グループが行っている事業は国内外の各種の法規制を受ける。その規制内容は、石油コンビナート等災害防止法、消防法、高圧ガス保安法等保安安全に係るもの、環境基本法、大気汚染防止法、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律等環境や化学物質に係るもの等があり、当社グループはこれら法規制の遵守を徹底している。万一遵守できなかった場合は、当社グループの活動が制限される可能性がある。また、これら法規制が一段と強化された場合には、コストの増加につながり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

(4) 重要な訴訟事件

 当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めているが、広範な事業活動の中で、訴訟の提起を受ける可能性がある。

(5) その他

①研究開発について

 当社グループは、研究開発基本方針である「個性派技術を新規事業創出へ結実」のもと、無機・アルミニウムと有機のコア技術の深化とシナジーを発揮することにより当社グループならではの個性派製品・技術の創出と、個性的なビジネスの獲得を図るべく、継続的な開発に注力している。これらの研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

②知的財産について

 当社グループは、産業財産権やノウハウ等の知的財産権が事業の競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、自社権利の取得、活用及び保護と他社権利の尊重に努めている。しかしながら、自社権利を適切に取得、活用することができなかったり不当に侵害された場合、または第三者の知的財産権を侵害する事象が発生した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

③品質保証・製造物責任について

 当社グループは、「品質保証・品質管理規程」の制定や、品質保証を所管・統括・推進する組織の整備、ISO9001等の積極的な取得により、品質管理に万全を期すべく努めている。しかしながら、重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起といった事象が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

④事故・災害について

 当社グループは、安全・安定操業の徹底を図り、製造設備の停止や設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備について定期的な点検を実施している。しかしながら、事故あるいは大規模な自然災害等の発生により、製造設備で人的・物的被害が生じた場合、当社グループの社会的信用が低下し、事故災害への対策費用や生産活動停止による機会損失により、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。また、当社グループの製造設備が直接の影響を受けない場合であっても、サプライヤーの事故・自然災害等に起因する原材料調達難、物流網の寸断及び電力の供給不足に伴い生産活動が制限された場合、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

⑤環境に対する影響について

 当社グループは、化学物質の開発から製造、流通、使用を経て廃棄に至る全ライフサイクルにおける「環境・安全・健康」を確保することを目的とした「レスポンシブル・ケア」活動を推進している。しかしながら、周囲の環境に影響を及ぼすような事象が発生した場合には、社会的信用の失墜を招き、補償などを含む対策費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性がある。

5【経営上の重要な契約等】

(1)技術提携の状況

(a)技術供与関係

(昭和電工株式会社)

契約締結先

契約発効年月

内容

摘要

(中国)

浙江巨化股份有限公司

平成16年10月

ハイドロフルオロカーボン134aの製造技術

(対価)

一定金額を分割払いで受け取る。

(有効期間)

平成16年10月28日から10年間が経過するまで。

(サウジアラビア)

ナマケミカルズ社

平成23年1月

アリルアルコールの製造技術

(対価)

一定金額を分割払いで受け取る。

(有効期間)

平成23年1月31日から12年間

 

(b)技術導入関係

(昭和電工株式会社)

契約締結先

契約発効年月

内容

摘要

(アメリカ)

ユニオン・カーバイド・コーポレーション

平成2年3月

ポリエチレンの製造技術

(対価)

頭金のほか、製品生産高につき一定料率のロイヤルティーを支払う。

(有効期間)

平成2年3月20日から25年間

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、連結中期経営計画「PEGASUS(ペガサス)」に基づき、エネルギー・環境と情報・電子の2つの事業ドメインに研究開発資源を重点的に投入し、無機と有機の融合戦略とマーケティングを重視した研究開発を推進している。

 特に、電池材料や高機能光学フィルム、SiC(炭化ケイ素)エピタキシャルウェハーなど当社の将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現に注力している。

 なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、204億35百万円である。

 セグメントごとの研究開発活動は次のとおりである。

(石油化学)

 石油化学分野では、コア技術である触媒開発、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子材料、自動車、印刷インク、塗料などの市場ニーズに応えるための研究開発を推進している。

 まず、世界的な需要成長に対する増産余力の制約から将来的に需給のひっ迫が予想されるブタジエンに対し、当社固有の触媒技術・事業基盤を活用して、目的生産物としての製造プロセスの技術開発を精力的に進めており、今般、プロセス検証を目的とした中規模実験設備の設置を決定した。

 また、アセチル及びアリルアルコール製品群では、競争力のある独自の製造プロセスをより強化するため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めた。酢酸エチルはインドネシアにおいて独自の新規触媒を用いたプロセスが稼働中であるが、更に大分においても平成26年中頃の稼働予定で同法によるプラントを新設し、競争力を強化する。

 アリルアルコール製品群のうち、環境対応型溶剤である酢酸ノルマルプロピルは順調に販売量を増やしているが、更に新規用途の展開を積極的に進めている。また、メガネレンズ向け樹脂の技術をベースに開発した耐熱透明フィルム「ショウレイアル®」は、パイロット設備での開発が軌道に乗り、サンプル供給能力を背景として、モバイルディスプレイ材料などの分野に向けて精力的に市場開拓を進めており、ガラスに匹敵する光学特性と手触り感が評価され、商業販売を開始した。

 更に、国家プロジェクトに参画して進めてきたグリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術においては、ガス分離・回収への新しい応用における初期的検討において一定の成果を上げ、化学品製造プロセスへの実用に向け、鋭意検討を進めている。

 当連結会計年度における石油化学セグメントの研究開発費は、10億26百万円であった。

(化学品)

 化学品分野では、広範多岐に亘る需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを課題として、半導体プロセス材料、光機能材料、ソルダーレジスト、高機能ゲル、各種有機中間体、化粧品原料などの研究開発を推進している。

 液晶ディスプレイの高機能化に貢献する光機能材料では、光重合開始剤や光硬化性樹脂添加剤としての多官能チオールの市場開拓に取り組んだ。多官能チオールは産業用樹脂組成物への添加剤として、継続して多用途への展開を進めている。

 テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種レジスト製品は、市場で高い評価を受け、更に、構築したお客様との情報ネットワークを駆使して、お客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入している。

 高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックス®カラム」では、従来からの高度分析用のカラム開発と並行し、新興国の需要に合わせた新製品の開発と分析ノウハウ、技術サービスの一貫提供を進めている。高機能ゲルの開発においては、オーストリアの開発製造会社との連携により得られた技術シナジーを核に研究体制を強化し、近年急進するバイオ医薬品精製事業分野への販売活動を本格的に開始した。

 有機中間体では、当社固有原料と精密有機合成技術の強みを活かした各種中間体の開発に注力し、化粧品原料では、高機能ビタミンC誘導体「アプレシエ®」に続き、メチルヘスペリジンなど、複数の化合物において市場投入準備が進展した。その他、リチウムイオン電池向けの部材開発では、負極材用水系バインダー樹脂の開発に成功し、「ポリゾール®LBシリーズ」の量産を開始した。当製品は、低抵抗性、優れた温度特性、負極集中板との高密着性などの特性を持ち、リチウムイオン電池の長寿命化、高容量化への寄与が期待される。

 また、半導体製造プロセス材料として、各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、温室効果が非常に小さいクリーニングガスである高純度フッ化カルボニルや太陽電池用成膜材料である高純度セレン化水素を市場投入した。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進める。

 当連結会計年度における化学品セグメントの研究開発費は、22億76百万円であった。

(エレクトロニクス)

 エレクトロニクス分野では、高性能化の市場要請に応えるべく、最先端技術の開発に邁進している。

 記録材料については、ハードディスク外販のトップメーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めると共に、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化と量産化に向けた取り組みを行っている。垂直磁気記録方式による記憶容量では、世界最大となる2.5インチで670ギガバイト/枚、3.5インチでは1テラバイト/枚のハードディスクの量産を実施している(平成25年12月現在)。

 発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力している。4元系赤色LEDでは、植物育成に最適な660ナノメートルの波長光の発光層を独自技術で開発し、植物工場及び様々な栽培モデル施設の光源として採用されている。更に赤外系LEDでは、MOCVD法による反射型及び点光源品の開発製品を上市した。

 希土類磁石合金では、希少金属の1つであるジスプロシウム(Dy)を使用せずに従来品と同様の性能を持つFA(ファクトリーオートメーション、一般産業用)向けネオジム磁石用合金の開発に成功し、量産を開始した。本技術をベースに、よりジスプロシウムの添加量が多い電力パワーステアリング用や電気自動車のモーターについてもジスプロシウムフリーを達成すべく、更なる省ジスプロシウム化に取り組んでいる。

 当連結会計年度におけるエレクトロニクスセグメントの研究開発費は、46億51百万円であった。

(無機)

 無機分野では、素材の特性を活かした材料及びその用途の開発を進めている。

 電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料の開発を行っている。

 当社が得意とするナノ粒子技術などを基盤として、室内での活性を高めた可視光型で抗菌・抗ウィルス性に優れた光触媒材料を開発し、最終製品への用途開発を進めている。

 当連結会計年度における無機セグメントの研究開発費は、2億61百万円であった。

(アルミニウム)

 アルミニウム分野では、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めると共に、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力している。

 素形材関連では、当社が開発した気体加圧式ホットトップ連続鋳造法及び気体加圧式水平完全連続鋳造法を基軸とし、鍛造技術と合わせて、合金・製品の開発を進めている。今後、自動車市場のアジアでの需要増加が見込まれることにより、更に機能性を高めたアルミニウム鋳造棒及び鍛造品の開発を進めている。

 材料評価で培った技術により離床センサーを開発し、フランスベッド㈱の病院施設向けセンサーシステム「見守りケアシステムM-1」に採用された。

 基盤技術面では、押出、鍛造、引抜及びプレス加工用の金型技術並びに、精製、加工、接合の各プロセス技術、各種製品に適した合金の開発、構造材及び熱流体のシミュレーション技術を深化させている。

 当連結会計年度におけるアルミニウムセグメントの研究開発費は、19億28百万円であった。

(その他)

 先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、容量、出力、寿命、低抵抗性特性を満たす、黒鉛負極材「SCMG®」、高容量Si黒鉛複合負極材、カーボンナノチューブ「VGCF®」、カーボン下地アルミ箔「SDX®」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めている。

 省エネルギー効果の高い次世代パワー半導体材料として注目されるSiCエピタキシャルウェハーについては、低欠陥化などの高品質化と共に、設備の増設と生産技術の向上による生産能力の拡大を継続している。本年度は更にSiCエピタキシャルウェハーとしては世界最大径である6インチ径製品の上市にも成功した。

 当社独自技術である高輝度LED等の植物工場向け製品については、山口大学と共同で開発した高速栽培技術「Shigyo法」と併せて、市場開拓に取り組んでいる。本年度は福島県川内村「川内高原農産物栽培工場」の竣工に加え、複数の植物工場に採用された。

 プリンテッドエレクトロニクスについては、大阪大学と共同で、印刷により自由にパターン形成が可能な銀ナノワイヤーインクの開発に成功し、透明導電膜などの用途を開発中である。

 燃料電池触媒については、従来品と比較して低Pt量で高活性化を示す触媒の研究開発を進めている。

 炭素素材分野では、フラーレンの事業化に向けた戦略的提携を三菱商事㈱と行い、フラーレン等のナノカーボン製品の製造及び販売会社であるフロンティアカーボン㈱の共同運営を開始した。フラーレンは、分子の大きさが直径1ナノメートルの微小な炭素素材で、有機薄膜太陽電池の負極材やその他エレクトロニクス分野における有望素材として期待されている。

 研究開発体制を見直し、本年度より新たに特定分野の技術者を事業開発センターに集約して、既存事業の応用分野から次世代テーマまでを含め所管する研究所(応用化学品研究所、先端技術開発研究所)、共通支援センター(分析物性センター、安全性試験センター)、及び事業化プロジェクトを設置した。応用化学品研究所は、事業部や事業所と連携し、現在の事業や製品の付加価値を高める開発やその周辺の成長分野を開拓する開発、及び製品に関する高度な技術サポートによる事業強化を行う。先端技術開発研究所は、当社グループが保有する広範な材料、技術の中でも、将来に亘って強味を発揮できるコア材料/コア技術による次世代事業テーマの創出を主に行う。

 当連結会計年度におけるその他セグメントの研究開発費は、全社共通を含め、102億93百万円であった。

7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。

 この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりである。

 なお、連結決算日における資産及び負債の貸借対照表上の金額及び当連結会計年度における収益及び費用の損益計算書上の金額の算定には、将来に関する判断、見積りを行う必要があり、当社グループは過去の実績等を勘案し、合理的に判断しているが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。

 

(2)財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、現金・預金、営業債権、有形固定資産の増加等により、前連結会計年度末比526億10百万円増加の9,857億71百万円となった。

 有利子負債は、四川昭鋼炭素有限公司を連結子会社としたこと等により前連結会計年度末比114億25百万円増加し、3,536億86百万円となった。負債合計は、営業債務の増加等もあり217億65百万円増加し、6,399億61百万円となった。

 純資産は、当期純利益の計上、為替換算調整勘定の増加等により、前連結会計年度末比308億44百万円増加の3,458億11百万円となった。

 

(3)経営成績の分析

 当連結会計年度における売上高は、主に前連結会計年度の設備不具合が解消した石油化学セグメントの増収により、前連結会計年度に比べ1,082億60百万円増加し8,480億71百万円となった。

 売上原価は、売上の増加に伴い前連結会計年度に比べ1,103億89百万円増加し7,390億17百万円となった。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ僅かに増加の831億1百万円となった。

 営業利益は、石油化学、化学品、アルミニウムの各セグメントは増益となったものの他のセグメントは減益となり、前連結会計年度に比べ21億54百万円減少し259億53百万円となった。

 経常利益は、営業利益は減少したものの為替差益の計上等により前連結会計年度に比べ40百万円増加し234億88百万円となった。

 特別利益は、投資有価証券売却益等の増加により前連結会計年度に比べ54億56百万円増加し62億69百万円となった。

 特別損失は、前連結会計年度に計上した減損損失や投資有価証券評価損が当連結会計年度は大幅に減少したこと等により前連結会計年度に比べ72億49百万円減少し57億24百万円となった。

 これにより、税金等調整前当期純利益は24033百万円となり、当期純利益は前連結会計年度に比べ3億3百万円減少し9065百万円となった。

 

(4)キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加等により、前連結会計年度に比べ102億55百万円の収入増加となり、635億65百万円の収入となった。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の増加等により、前連結会計年度に比べ65億29百万円の支出増加となり、467億38百万円の支出となった。

 この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ37億26百万円の収入増加となり、168億27百万円の収入となった。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債が、前連結会計年度は減少したのに対し、当連結会計年度は増加したこと等により、前連結会計年度に比べ133億45百万円の支出減少となり、68億5百万円の支出となった。

 この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ169億21百万円増加し、681億75百万円となった。