第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであり、達成を保証するものではありません。
 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、コア事業である紙事業については、国内では洋紙市場の需要縮小に見合った生産体制への移行、販売体制と間接部門のスリム化等により利益確保を図る一方、需要の伸びが見込めるアジア・オセアニア市場へは、現地生産化や現地有力紙パルプメーカーとの業務提携などによる拡大成長戦略を展開していきます。
  同時に、事業環境の変化に対応し、新たな収益の柱を育成するべく、成長分野事業の伸長や新規事業の立上げについても積極的に推進していきます。
  今後も当社グループは、持てる経営資源をフルに活用し、厳しさを増す国際競争を勝ち抜くとともに、グループの成長を実現し、株主価値の持続的拡大を追求していきます。
 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、平成30年4月から平成33年3月までを「第6次中期経営計画」の期間とし、第5次中期経営計画で取り組んできた「既存事業の競争力強化」と「事業構造転換」を基本方針に、第6次中期経営計画では「洋紙事業の生産体制の再編成と自社設備の最大活用」及び「成長分野の事業拡大と新規事業の早期戦力化」を揚げ、総合バイオマス企業としての事業構造転換に取り組んでおります。

なお、第6次中期経営計画は、平成30年5月28日の取締役会で決議したものであります。
 
<目指すべき利益目標>
 ・連結営業利益   500億円
 
<第6次中期経営計画 - 平成32年度の経営目標値>
 ・連結営業利益     470億円
 ・ROA                3.8 %
 ・D/Eレシオ          1.5 倍 以下
    注)ROA :(経常利益+支払利息)/総資産

 

(3) 会社の対処すべき課題

① 第5次中期経営計画(平成27年4月~平成30年3月)の総括
  当社は、「既存事業の競争力強化」と「事業構造転換」を柱にした第5次中期経営計画に取り組みました。
  第5次中期経営計画において当社が成長分野と位置付ける家庭紙・ヘルスケア、パッケージ、ケミカル、エネルギーの各事業は事業拡大のための投資・施策により、順調に成長軌道に乗り、ほぼ目標利益を達成することができました。
  市場の拡大が続くヘルスケア事業では、日本製紙クレシア株式会社京都工場に集中投資を行うとともに、機能性セルロースナノファイバーを用いた消臭シートを採用した製品を中心に拡販を進めました。家庭紙事業では、「3倍巻き」のトイレットペーパーやキッチンタオルなどの開発による商品ラインアップ強化と「クリネックス®」ブランドの再構築に取り組みました。パッケージ事業では、液体用紙容器においてノルウェーのエロパック社(Elopak社)とライセンス契約を結び、同社が展開する口栓付チルド用液体容器の日本市場への導入を果たしました。また、生産体制の再構築によりコスト競争力強化を図るとともに製品開発の拠点としてテクニカルセンターを設置しました。ケミカル事業では、溶解パルプ増産工事をはじめとした江津工場の基盤強化や有機ELディスプレイ用ハードコートフィルムの開発と拡販を進めました。エネルギー事業では、推進してきた発電プロジェクトを計画通りに立ち上げ安定操業を続けています。
  赤字体質からの脱却を目標とした海外事業では、コストダウンと高付加価値品の拡販を柱とした収益強化策を実行するとともに、北米において新聞・出版用紙事業からの撤退及び液体用紙容器原紙事業の買収を行い、黒字化を達成しました。また、インドにおいては紙器加工事業、ベトナムにおいては紙器加工事業と紙おむつ事業を立ち上げ、成長著しいアジアでのプレゼンス拡大にも取り組みました。
  新素材として期待の高まるセルロースナノファイバー(以下、「CNF」という。)については、石巻工場と江津工場に量産設備、富士工場にCNF強化樹脂の実証設備を設置しました。昨年、新素材営業本部を設置し、CNFやミネルパ、シールドプラスなど当社が開発に注力している新たな素材や商品の販売に向けた体制を整えました。
  既存事業の競争力強化に取り組んだ国内洋紙・板紙事業については、板紙事業は、堅調な需要を背景に、特種東海製紙株式会社との間で段ボール原紙事業及び重袋用・一般両更クラフト事業における事業提携を進め、新東海製紙株式会社のコストダウン強化、交錯輸送の解消、原燃料の共同調達などシナジーを発現させました。また、段ボール原紙の価格修正にも取り組み、収益性の改善に努めました。一方で、洋紙事業における国内需要の想定以上の減少、印刷用紙価格修正の未達、さらに、洋紙・板紙事業ともに、古紙をはじめとする原燃料価格上昇といった外部要因に加え、操業トラブルの頻発による原価改善の進捗の遅れといった内部要因も加わり、大幅な収益低迷によってグループ目標利益の大幅未達の主要因となりました。
  財務面では、理文造紙有限公司と四国コカ・コーラボトリング株式会社を売却し、北米における液体用紙容器原紙事業を買収することにより、伸びる分野への資産の入れ替えを行い、資産の効率化を図ると同時に利益に大きく貢献しました。

 

② 第6次中期経営計画(平成30年4月~平成33年3月)の推進
  本年4月から3年間の第6次中期経営計画は、当社グループの持続的成長の実現に向け、事業構造転換を推し進めてまいります。
  事業構造転換に向けた最大の課題は、既存事業の安定した収益確保です。需要の著しい減少と原燃料価格の上昇により厳しい事業環境に直面している新聞・印刷用紙事業において、本年5月の秋田工場1号塗工機及び石巻工場2号塗工機の停機に続き、北海道工場勇払事業所及び富士工場(富士)における洋紙事業からの撤退、釧路工場における抄紙機1台の停機を決定しました。この生産体制の再編成により、秋田工場・石巻工場の塗工機を含めた生産設備10台、当社グループの設備能力の約18%に相当する76万トンを削減します。余剰設備にかかる固定費の徹底した削減を行い、操業安定を前提とした高い稼働率を維持することで、新聞・印刷用紙事業の収益構造の再生を目指します。洋紙事業から撤退する2拠点においては、新規事業への転換を検討し、保有する資産の最大活用を図ります。
  板紙事業は、段ボール原紙に対する需要が世界的に伸びていることから、特種東海製紙株式会社との事業提携において更なる生産体制の最適化を進め、輸出の推進など収益性の向上を図り、強固な基盤構築を目指します。
  家庭紙・ヘルスケア、パッケージ、ケミカル、エネルギーの各事業は、引き続き成長分野と位置付けます。家庭紙・ヘルスケア事業は、訪日外国人観光客増加にともなうホテル数の増加に加え、核家族化の進行による世帯数の増加や高齢化社会の進行などによる生活様式の変化を背景に、今後も需要の伸びが見込まれます。パッケージ事業は、国内の人口減少にともなう需要減少はあるものの、環境意識の高まりからプラスチック容器から紙容器化への流れが世界的に加速しています。ケミカル事業は、電気自動車に搭載されるリチウムイオン電池に使用される機能性セルロース(CMC)や、自動車塗料などに使用される機能性コーティング剤など、市場規模は小さいものの収益性の高い製品の需要がアジアを中心に拡大しています。エネルギー事業は、再生可能エネルギーへの注目が高まる中、バイオマス発電への期待が高まっています。これらの事業では、的確なニーズの取り込みや新製品開発による新たな需要の創出によって事業拡大を図るために、積極的に投資を行い、事業構造転換を加速します。CNFやミネルパ、シールドプラスなどの新素材については、引き続き用途開拓を進め、早期の事業化を目指します。
  第6次中期経営計画における投資においては財務規律を十分に考慮し、資金のみならず当社グループが持つ人・資産を含む各リソースを成長分野に適切に配分することで、当社グループの既存事業、成長分野の事業価値最大化を目指した施策を実行してまいります。
 

(株式会社の支配に関する基本方針)

1.基本方針について

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する者が望ましいと考えています。
 もっとも、当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆さま全体の意思に基づき決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるか否かの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えます。しかしながら、当社株式等に対する大規模買付行為や買付提案の中には、買付目的や買付後の経営方針等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、株主が買付けの条件等について検討したり、当社の取締役会が代替案を提案するための充分な時間や情報を提供しないもの、買付者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買付者との交渉を必要とするもの等、株主共同の利益を毀損するものもあり得ます。
 当社は、このような大規模買付行為や買付提案を行う者は、例外的に当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと判断します。
 

2.基本方針の実現に資する取組みについて

 (1) 中期経営計画について

 当社グループは再生可能な木材資源の活用を通じて、豊かな暮らしと地球環境の両立を支える企業活動を実践しています。
  この持続的成長をさらに確かなものにするため、3年ごとに中期経営計画を策定し、推進しています。平成27年4月からの3年間で推進してきた第5次中期経営計画では既存事業の競争力強化と、パッケージ、ヘルスケア、ケミカル、エネルギーなど成長分野へ重点的に経営資源を配分し、総合バイオマス企業として事業構造転換に取り組みました。
  本年4月からは第6次中期経営計画(3か年)を推進しています。既存事業については生産体制の再編成を進めることで、安定した収益を確保し、事業構造転換を支えていきます。一方、成長分野の伸長と新規事業の戦力化に向けた投資をもう一段行うことで、事業構造転換を加速していきます。
  森林資源を基盤とした循環型の事業を通じて暮らしと文化に貢献し、企業価値・株主共同の利益の確保・向上に努めていきます。

 

 (2) コーポレート・ガバナンスの取組み

 当社は、株主をはじめとするステークホルダーに対する経営の透明性を一層高め、公正な経営を実現することを経営の最重要課題とします。業務執行と経営の監督の分離を確保するため、執行役員制度を採用するとともに、取締役会の監督機能の強化に努めます。また、当社はグループの経営の司令塔として、成長戦略を推進し、傘下事業をモニタリングし、コンプライアンスを推進します。
 このような取組みにより、当社は、今後もより一層コーポレート・ガバナンスの強化に努めていきます。
 

3.当社株式等に対する大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)

 (1) 本対応方針の概要

 当社は、上記「1.」に述べた基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みとして、「当社株式等に対する大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)」(以下「本対応方針」といいます。)を定めています。
 本対応方針の有効期間は、平成30年3月期に関する定時株主総会終結の時までとなっています。その概要は以下のとおりです。
ア.大規模買付ルールの設定
 本対応方針は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、当社の株券等の大規模買付行為が行われる場合に、大規模買付行為を行おうとする者(以下「大規模買付者」といいます。)に対し、①事前に大規模買付行為に関する必要かつ十分な情報の提供を求め、②大規模買付行為についての情報収集・検討等を行う時間を確保した上で、③株主の皆さまに当社経営陣の代替案等を提示し、大規模買付者との交渉を行っていくための手続を定めています。
イ.新株予約権無償割当ての利用
 大規模買付者が本対応方針において定められた手続に従うことなく大規模買付行為を行う等、当社の企業価値・株主共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合には、当社は、当該大規模買付者による権利行使は認められないとの行使条件及び当社が当該大規模買付者以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得する旨の取得条項が付された新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)を、その時点の全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法(会社法第277条以降に規定されます。)により割り当てます。
ウ.当社取締役会の恣意的判断を排するための独立委員会の利用等
 本対応方針においては、大規模買付行為への対抗措置としての本新株予約権の無償割当ての実施もしくは不実施、又は本新株予約権の取得等の判断について、当社取締役会による恣意的な判断を排するため、独立委員会規則に従い、当社経営陣からの独立性の高い社外者のみから構成される独立委員会の判断を経ることとしています。また、これに加えて、本新株予約権の無償割当ての実施に際して独立委員会が本新株予約権の無償割当ての実施に関する株主の皆さまの意思を確認することを勧告した場合には、原則として当社取締役会は株主意思確認総会を招集するものとされています。さらに、こうした手続の過程については、株主の皆さまに適時に情報開示を行うことにより透明性を確保することとしています。
 なお、本対応方針の独立委員会は、当社社外取締役2名、社外監査役2名及び社外の有識者1名により構成されています。
エ.本新株予約権の行使及び当社による本新株予約権の取得
 本対応方針に従って本新株予約権の無償割当てがなされ、大規模買付者以外の株主の皆さまにより本新株予約権が行使された場合、又は当社による本新株予約権の取得と引換えに、大規模買付者以外の株主の皆さまに対して当社株式が交付された場合、当該大規模買付者の有する当社株式の議決権割合は、当該行使・取得前と比較して、最大で50%まで希釈化される可能性があります。
 

 (2) 本対応方針が株主・投資家に与える影響等の概要

ア.大規模買付ルールの影響
 大規模買付ルールは、当社株主の皆さまが大規模買付行為に応じるか否かを判断するために必要な情報や、現に当社の経営を担っている当社取締役会の意見を提供し、株主の皆さまが代替案の提示を受ける機会を保障することを目的としています。これにより株主の皆さまは、十分な情報の下で、大規模買付行為に応じるか否かについて適切な判断をすることが可能となり、そのことが当社の企業価値ひいては株主共同の利益の保護につながるものと考えます。したがいまして、大規模買付ルールの設定は、株主及び投資家の皆さまが適切な投資判断を行う上での前提となるものであり、株主及び投資家の皆さまの利益に資するものであると考えています。
イ.本新株予約権の無償割当時の影響
 当社取締役会において本新株予約権無償割当決議を行った場合には、本新株予約権無償割当決議において別途定める割当期日における株主の皆さまに対し、その保有する株式1株につき本新株予約権1個の割合で本新株予約権が無償にて割り当てられます。仮に、株主の皆さまが、本新株予約権の行使期間内に本新株予約権の行使に係る手続を経なければ、他の株主の皆さまによる本新株予約権の行使により、その保有する当社株式が希釈化されることになります。
 ただし、当社は、非適格者以外の株主の皆さまから本新株予約権を取得し、それと引換えに当社株式を交付することがあります。当社がかかる取得の手続を取った場合、非適格者以外の株主の皆さまは、本新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みをせずに、当社株式を受領することとなり、保有する当社株式1株あたりの価値の希釈化は生じますが、保有する当社株式全体の希釈化は生じません。
 

 (3) 本対応方針の合理性

 本対応方針は、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足していること、平成27年6月26日開催の第91回定時株主総会における株主の皆さまのご承認の下に更新されていること、一定の場合には株主意思確認総会において本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについて株主の皆さまの意思の確認を行うこと、その内容として合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設計されていること、本対応方針の運用に関して独立性の高い社外者から成る独立委員会を設置しており、当社取締役会は本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについての独立委員会の判断を最大限尊重して決議を行うこと、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を受けることができること、本対応方針の有効期間の満了前であっても当社株主総会又は当社取締役会の決議によって本対応方針を廃止できること、本対応方針は当社の株券等を大量に買い付けた者が指名し株主総会で選任された取締役により廃止することができるものとして設計されていること(デッドハンド型買収防衛策ではないこと)等により、その公正性・客観性が担保されています。

  なお、本対応方針の詳細については、インターネット上の当社ウェブサイト(http://www.nipponpapergroup.

com/news/mt_pdf/20150515.pdf)に掲載しておりますので、そちらをご参照ください。

 

 

(ご参考)
 当社は、平成30年6月28日開催の定時株主総会終結の時をもって有効期間満了を迎える本対応方針について、国内外の機関投資家をはじめとする株主の皆さまのご意見や、買収防衛策を巡る近時の動向など、外部環境の変化を踏まえ慎重に検討を重ねた結果、本対応方針を更新せず廃止することを、平成30年5月15日開催の取締役会において決定しました。
 なお、当社は、本対応方針の廃止後も、引き続き、当社の企業価値ひいては株主全体の利益の向上に向けた取り組みに努めるとともに、当社株式に対する大規模買付行為が行われる場合には、大規模買付行為の是非を株主の皆さまが適切に判断するために必要かつ十分な情報の提供を求め、あわせて当社取締役会の意見を開示する等、金融商品取引法、会社法その他関係法令に基づき、適切な措置を講じてまいります。

 

2 【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。

 

(1) 製品需要及び市況の変動リスク

当社グループは、主力の紙・パルプ事業をはじめ、紙関連事業、木材・建材・土木建設関連事業等を行っています。これらの製品等は経済情勢等に基づく需要の変動リスク及び市況動向等に基づく製品売価の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(2) 生産状況の変動リスク

当社グループは、主として需要と現有設備を勘案した見込生産を行っています。全ての生産設備について定期的な災害防止検査や点検等を行っていますが、火災や設備のトラブルの他、原燃料調達面の支障等により生産設備の稼働率が低下した場合などに製品供給力が低下するリスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(3) 為替レートの変動リスク

当社グループは、輸出入取引等について為替変動リスクを負っています。輸出入の収支は、チップ、重油、石炭、薬品などの諸原燃料等の輸入が、製品等の輸出を上回っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合には経営成績にマイナスの影響を及ぼします。なお当社グループは、為替予約等を利用したリスクヘッジを実施しています。

 

(4) 原燃料価格の変動リスク

当社グループは、主としてチップ、古紙、重油、石炭、薬品などの諸原燃料を購入して、紙・パルプ・その他の製品を製造・販売する事業を行っています。そのため国際市況及び国内市況による原燃料価格の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(5) 株価の変動リスク

当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有していますので、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また、株価の変動は、年金資産の変動を通じて年金費用を変動させる可能性があります。

 

(6) 金利の変動リスク

当社グループは、有利子負債などについて金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(7) 海外事業リスク

当社グループは、北米・南米・北欧・中国・東南アジア・豪州等で、紙・パルプの製造販売、植林等の海外事業展開を行っています。海外事業リスクの未然防止に努めていますが、予測し得ない事態等が発生した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(8) 訴訟等のリスク

当社グループは、業務の遂行にあたり法令遵守などコンプライアンス経営に努めていますが、国内外の事業活動の遂行にあたり、刑事・民事・租税・独占禁止法・製造物責任法・知的財産権・環境問題・労務問題等に関連した訴訟等のリスクを負っており、その結果、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

 

(9) 固定資産の減損リスク

当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。資産価値が下落した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(10) 自然災害等のリスク

当社グループの生産及び販売拠点周辺で地震や大規模な自然災害等が発生して生産設備・物流インフラ等が被害を受けた場合、設備復旧のための費用、生産停止による機会損失、製品・商品・原材料等への損害などにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(11) 信用リスク

当社グループは、得意先などの信用リスクに備えていますが、経営の悪化や破綻等により債権回収に支障を来たすなど、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(12) その他の事業環境等の変動リスク

当社グループは、上記以外の項目に関しても偶発事象に起因する事業環境等の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当期のわが国の経済は、米国の政策動向や東アジア地域の情勢など懸念材料はあるものの、雇用・所得環境の改善に伴い、緩やかな回復基調が続いています。

 一方、当社グループを取り巻く経営環境は、原燃料価格が高騰し、主力の洋紙・板紙において製品価格の修正を実施したものの、厳しい事業環境が継続しました。
 以上の結果、連結売上高は1,046,499百万円(前期比5.4%増)、連結営業利益は17,613百万円(前期比25.9%減)、連結経常利益は18,649百万円(前期比30.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は7,847百万円(前期比6.6%減)となりました。
 

 各セグメントの経営成績は、以下のとおりです。

 

(紙・パルプ事業)

 洋紙は、新聞の発行部数減少や印刷用紙の広告需要低迷など、国内販売数量は総じて低調に推移し、前期を下回りました。一方、輸出に関しては、洋紙・板紙ともアジア向けを中心に需要が好調で、販売数量は前期を上回りました。
 家庭紙は、従来品より肌触りを追求したティシューを開発し、クリネックス®製品のブランド強化を図る一方、ヘルスケア製品やホテル向け業務用製品などの需要は堅調で、販売数量は前期を上回りました。
 また、平成28年9月に営業を開始した日本ダイナウェーブパッケージング社や、平成28年10月に営業を開始した日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社を前連結会計年度より連結の範囲に含めたことから、同社の売上高が対前期増収に寄与しました。
 以上の結果、連結売上高は868,487百万円(前期比5.9%増)、連結営業利益は、古紙をはじめ原燃料価格の高騰などの影響を受け、3,254百万円(前期比70.0%減)となりました。

 

(紙関連事業)

 液体用紙容器は、口栓付き紙容器の上市や新規顧客の開拓もあり、果汁飲料、野菜飲料向けを中心に販売数量は前期を上回りました。

 溶解パルプ(DP)は、増産対策効果や市況の回復により、販売数量は前期を上回りました。化成品は、自動車用途向け機能性コーティング樹脂や機能性セルロースが堅調であり、販売数量は前期を上回りました。また、機能性フィルムは、新規開発品の上市が対前期増収に寄与しました。
 以上の結果、連結売上高は94,666百万円(前期比6.1%増)、連結営業利益は7,087百万円(前期比35.1%増)となりました。

 

(木材・建材・土木建設関連事業)

 木材・建材は、新設住宅着工戸数が弱含みで推移したものの、原木などの販売数量は前期を上回りました。

 一方、土木建設関連は、住宅事業の連結子会社を連結の範囲から除外したことなどもあり、対前期減収となりました。
 以上の結果、連結売上高は62,777百万円(前期比1.2%減)、連結営業利益は4,481百万円(前期比5.9%減)となりました。

 

(その他)

 その他の連結売上高は20,567百万円(前年同期比4.8%増)、連結営業利益は2,790百万円(前年同期比4.2%減)となりました。

 

 

 財政状態につきましては、当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末の1,388,885百万円から44,151百万円増加し、1,433,036百万円となりました。負債は、前連結会計年度末の953,974百万円から35,664百万円増加し、989,638百万円となりました。純資産は、前連結会計年度末の434,911百万円から8,486百万円増加し、443,398百万円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、59,003百万円となり、前連結会計年度末に比べ31,511百万円減少しました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得た資金は、前連結会計年度に比べ42,143百万円減少し、44,944百万円となりました。この主な内訳は、税金等調整前当期純利益18,332百万円、減価償却費57,892百万円、運転資金の増減(売上債権、たな卸資産及び仕入債務の増減合計額)による支出13,508百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ2,547百万円減少し、62,731百万円となりました。この主な内訳は、固定資産の取得による支出67,981百万円、事業撤退による支出6,890百万円、投資有価証券の売却による収入10,319百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ37,146百万円減少し、12,548百万円となりました。この主な内訳は、有利子負債の返済による支出です。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成29年4月1日

至  平成30年3月31日)

前期比(%)

 

紙・パルプ事業

数量(t)

6,816,386

1.2

 

洋    紙

数量(t)

4,249,728

△4.2

 

板    紙

数量(t)

2,184,784

9.1

 

家 庭 紙

数量(t)

247,034

4.5

 

パ ル プ

数量(t)

134,840

110.7

   紙関連事業

金額(百万円)

70,367

4.7

 

(注)1.パルプについては、グループ内消費分は除いています。

2.紙関連事業は品種等が多岐にわたり、数量表示が困難であるため、各生産高に平均販売価格を乗じた金額のみを表示しています。また、この金額には、消費税等は含まれていません。

3.木材・建材・土木建設関連事業、その他は、生産高が僅少であるため、記載を省略しています。

 

b. 受注状況

当社グループは主として需要と現有設備を勘案した見込生産のため、記載を省略しています。

 

 

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成29年4月1日

至  平成30年3月31日)

前期比(%)

紙・パルプ事業

金額(百万円)

868,487

5.9

紙関連事業

金額(百万円)

94,666

6.1

木材・建材・土木建設関連事業

金額(百万円)

62,777

△1.2

その他

金額(百万円)

20,567

4.8

合計

金額(百万円)

1,046,499

5.4

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。

3.上記の金額には消費税等は含まれていません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態の分析

総資産は、前連結会計年度末の1,388,885百万円から44,151百万円増加し、1,433,036百万円となりました。この主な要因は、受取手形及び売掛金が20,325百万円、有形固定資産が31,114百万円、たな卸資産が7,218百万円増加し、現金及び預金が31,511百万円減少したことによるものです。

負債は、前連結会計年度末の953,974百万円から35,664百万円増加し、989,638百万円となりました。この主な要因は、有利子負債が増加したことによるものです。

純資産は、前連結会計年度末の434,911百万円から8,486百万円増加し、443,398百万円となりました。この主な要因は、退職給付に係る調整累計額が5,325百万円増加したことによるものです。

 

b. 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は前期比5.4%増収の1,046,499百万円となりました。この主な増収要因は前連結会計年度より連結の範囲に含めた日本ダイナウェーブパッケージング社や、日本東海インダストリアルペーパーサプライ株式会社の売上高が通期で寄与したことによるものです。

 

(経常利益)

当連結会計年度の経常利益は前期比30.9%減益の18,649百万円となりました。この主な減益要因は、洋紙の国内需要の減少や、古紙をはじめ原燃料価格の高騰などによるものです。

 

(特別損益)

当連結会計年度の特別利益は12,055百万円となりました。この主な内訳は、退職給付信託設定益6,923百万円、固定資産売却益2,637百万円、投資有価証券売却益2,414百万円です。

当連結会計年度の特別損失は12,373百万円となりました。この主な内訳は、減損損失4,797百万円、固定資産除却損2,433百万円、投資有価証券評価損1,731百万円です。

 

 

c. キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、以下のとおりです。

 

(資金需要)

 当社グループの運転資金需要の主なものは、製品製造のための原材料や燃料購入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用です。また投資を目的とした資金需要の主なものは、新規事業への投融資及び設備投資、既存事業の収益向上や操業安定化等を目的とした設備投資です。

 

(財務政策)

 当社グループの運転資金及び設備投資資金は、自己資金及び借入金等でまかなっています。長期借入金、社債等の長期の資金調達については、事業計画に基づく資金需要や既存借入の返済時期、金利動向等を考慮し、調達規模や調達手段を適宜判断しています。また、キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)により当社グループ内での余剰資金の有効活用を図り、有利子負債の圧縮や金利負担の軽減に努めています。

 

d. 経営方針及び今後の戦略について

経営方針及び今後の戦略については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

4 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。
 

 

5 【研究開発活動】

 当社グループでは、「総合バイオマス企業」への事業構造転換、既存事業の競争力強化のため、新規事業の早期創出と、パッケージング・紙加工事業、木材・ケミカル事業、エネルギー事業などの成長分野の拡大、洋紙・板紙の収益力向上に貢献する研究開発をスピードアップを図りながら進めています。研究開発体制については、当社グループの競争力向上につながる技術開発を迅速に進めていく観点から体制を再編し、王子地区(東京都北区)にある研究開発本部の基盤技術研究所(平成29年6月にアグリ・バイオ研究所と総合研究所とを統合)の洋紙・板紙の研究開発機能と、CNF研究所を平成29年9月に富士工場に移転しました。更に、段ボールの需要の拡大傾向に併せて平成29年10月に基盤技術研究所に段ボール研究室を設置しました。今後、グループ内の研究資源を最大限に活用し、イノベーションを推進して研究開発のスピードアップを進めていきます。

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、6,013百万円(人件費含む)であり、各事業部門別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は、以下のとおりです。

 

(1) 紙・パルプ事業

 国内市場の成熟化と海外市場の成長、原材料の需給逼迫と価格高騰、深刻化する地球環境問題などの様々な課題に対峙するため、基盤技術研究所、CNF研究所及びパッケージング研究所が中心となり、以下のような取り組みを行っています。当事業に係る研究開発費は4,332百万円です。

① 植林事業についての技術開発

 事業活動の基幹となる原材料確保のため、自社植林木の生産性向上を目指し、技術開発を積極的に進めています。特にブラジルなどにおいては、精英樹の開発として優良クローン選抜技術の開発、成長性と土壌要因の関連調査、迅速なバイオマス量測定技術の開発による林業技術の改良などの取り組みを推進しています。また、森林資源が豊富で、スギが多く利用されている九州地区の再造林に向け、成長に優れ、花粉量が少ないスギ特定母樹からの挿し木苗を本格的に生産するため、大規模な採穂園の造成、早期増殖の取り組みを開始しました。特定母樹の取組みは全国に展開する予定です。

② 品質とコストの更なる改善

 洋紙及び板紙の競争力強化のため、新製品開発や需要家のニーズに応えた品質改善を継続し、また製造工程の操業性改善をより効率的に行うために、生産現場とより密接に連携を図ながら、品質向上とコスダウンの技術開発を迅速に進めていきます。

 軽量でありながら嵩高で印刷適性の優れている紙が求められています。原紙や塗工処方を工夫し、当社独自技術を活かすことにより、低坪量でありながら、嵩高で軟らかいめくり感をもち、印刷再現性を向上させた「b7ライト」を開発し、販売を開始しました。

 収益改善に資する技術開発として、低級古紙の利用技術の開発、自製填料の高度利用技術の開発など独自技術開発も推進しています。

③ 将来に資する技術開発など

 「総合バイオマス企業」としての新規事業創出については、木材をベースとした新素材、パッケージなどのプラスチック代替新規紙材料の開発や、セルロースナノファイバー、バイオリファイナリー、エネルギーに関する研究開発に取り組んでいます。
 新素材としては、微粒子化した無機物と紙の原料であるパルプ(セルロース繊維)を相互に定着・複合させる当社独自の技術によって、無機物の特徴・特性を備えた機能性材料ミネラルハイブリッドファイバー(ミネルパ®)を開発しました。「消臭抗菌」、「難燃」、「X線遮断」、「抗ウイルス」などの機能を有しています。今後は、平成30年10月に実証生産設備(富士)を立ち上げ、事業化に向けた本格的なサンプル供給体制を整え、更なる用途開発を推進し、商品化を進めていきます。

  パッケージなどのプラスチック代替新規紙材料については、顔料やバインダーを主成分とする塗料を塗工する当社の独自技術を応用し、酸素、水蒸気に対して従来にない優れたバリア性を持った紙製包装材料「シールドプラス®」を開発し、販売を開始しました。

 セルロースナノファイバー(セレンピア®)については、平成29年度に量産設備(石巻、江津)及び実証生産設備(富士)の稼働により、用途に応じたCNF製造技術と本格的な供給体制を早期に確立し、CNFの市場創出の技術開発を推進します。
 また、セルロースナノファイバーの国際標準化や安全性評価についても、当社が主体的に産官学連携で取り組んでいます。
 バイオリファイナリー関連では、木材の高度利用技術の開発として、木材から化学品原料までの一貫製造プロセスに関する研究開発を行い、特にリグニンの利活用を推進しています。
 さらに、エネルギー事業に係る技術開発として、木質バイオマスを半炭化(トレファクション)して得られる新規固形燃料については、タイに実証生産設備を設置し、一貫製造技術開発を進めています。

 

(2) 紙関連事業

 液体用紙容器については当社が、各種化成品については当社及び株式会社フローリックが中心となって研究開発を行っています。当事業に係る研究開発費は1,680百万円です。
 液体用紙容器の分野につきましては、環境と衛生性、ユニバーサルデザインに配慮した製品及びそのシステム(充填機等)の開発を主要課題にしてきました。NPパックでは、付加価値向上とユーザビリティー性向上を目指し、環境に配慮した口栓付き紙容器が充填できる新型充填機を4台導入し、平成30年3月より順次製品化しています。また、これまでの「詰め替え式」のパウチ容器に代わる、「差し替え式」の紙パック容器の開発を推進しています。
 化成品の分野につきましては、自動車プラスチック部材用水系及び溶剤系プライマー、インキ添加剤等の機能性コーティング樹脂、及び合成系水溶性高分子の開発等を行いました。
 その他、スマートフォンやタブレット端末等の中小型ディスプレー用途のハードコートフィルムの開発を行いました。さらに、クリーン精密塗工及びハードコート技術を応用した新製品開発に取り組みました。

 

(3) 木材・建材・土木建設関連事業

該当事項はありません。

 

(4) その他

該当事項はありません。