第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

 当期のわが国の経済は、雇用環境の改善、個人消費の底堅さもあり、緩やかな回復基調が続きました。一方、原油価格の急激な下落や中国などの新興国の経済成長率の鈍化、株価や為替の不安定な動向により、景気の先行きは不透明な状況となっています。
 紙パルプ業界におきましては、印刷用紙の需要が低調に推移したことや、古紙価格が高止まりするなど、厳しい事業環境が継続しました。
 当社グループはこうした経営環境に対応し、コストダウンを推し進めるとともに、製品価格を修正し、その維持に努めました。一方海外では業績回復の遅れもあり固定資産の減損損失や工場の閉鎖損失を計上しました。また中長期的な戦略にあります資産効率の改善に取り組み、資産の売却や入替えを実施しました。

 

以上の結果、連結売上高は1,007,097百万円(前期比4.3%減)、連結営業利益は22,623百万円(前期比4.4%減)、連結経常利益は17,123百万円(前期比26.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,424百万円(前期比89.5%減)となりました。

 

セグメントの状況は、以下のとおりです。

 

(紙・パルプ事業)

 新聞用紙は発行部数が減少し、販売数量は前期を下回りました。印刷用紙は広告需要の低迷など、総じて需要が低調に推移し、国内販売数量は前期を下回りましたが、輸出に関しては拡販に取り組み、前期を上回りました。板紙の販売数量は前期を下回りました。
 家庭紙はトイレットペーパーやヘルスケア製品などの新製品の販売が寄与したことや、インバウンド効果によりホテル向け業務用製品の販売が好調であったことなどもあり、販売数量は前期を上回りました。

以上の結果、紙・パルプ事業の連結業績は、連結売上高827,560百万円(前期比1.0%減)、連結営業利益13,840百万円(前期比7.9%減)となりました。

 

(紙関連事業)

 化成品は概ね堅調に推移したものの、液晶用途向け機能材料の販売数量は前期を下回りました。液体用紙容器は、牛乳類向けが堅調だったことから、販売数量は前期並みとなりました。

以上の結果、紙関連事業の連結業績は、連結売上高88,912百万円(前期比2.3%減)、連結営業利益2,661百万円(前期比29.2%減)となりました。

 

(木材・建材・土木建設関連事業)

木材・建材は新設住宅着工戸数の持ち直しもあり、増収増益となりました。

以上の結果、木材・建材・土木建設関連事業の連結業績は、連結売上高62,155百万円(前期比4.9%増)、連結営業利益3,639百万円(前期比71.4%増)となりました。

 

(その他)

その他の連結業績は、清涼飲料事業の四国コカ・コーラボトリング株式会社の全株式を譲渡し連結の範囲から除外したことなどにより減収減益となりました。

以上の結果、その他の連結業績は、連結売上高28,469百万円(前期比57.3%減)、連結営業利益2,481百万円(前期比9.8%減)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、112,510百万円となり、前連結会計年度末に比べ28,507百万円増加しました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得た資金は、前連結会計年度に比べ29,427百万円減少し、52,419百万円となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益4,662百万円、減価償却費57,672百万円、運転資金の増減(売上債権、たな卸資産及び仕入債務の増減合計額)による支出15,228百万円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動においては、前連結会計年度は42,483百万円の資金を使用しましたが、当連結会計年度は16,270百万円の資金を得ました。この主な要因は、投資有価証券の売却による収入53,296百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入10,111百万円、固定資産の取得による支出44,511百万円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、前連結会計年度に比べ13,575百万円減少し、39,168百万円となりました。この主な要因は、有利子負債の返済による支出です。

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成27年4月1日

至  平成28年3月31日)

前期比(%)

 

紙・パルプ事業

数量(t)

6,569,376

△2.9

 

洋    紙

数量(t)

4,419,393

△2.5

 

板    紙

数量(t)

1,901,410

△3.2

 

家 庭 紙

数量(t)

222,089

△3.8

 

パ ル プ

数量(t)

26,484

△25.2

   紙関連事業

金額(百万円)

68,071

△4.2

 

(注)1.パルプについては、グループ内消費分は除いています。

2.紙関連事業は品種等が多岐にわたり、数量表示が困難であるため、各生産高に平均販売価格を乗じた金額のみを表示しています。また、この金額には、消費税等は含まれていません。

3.木材・建材・土木建設関連事業、その他は、生産高が僅少であるため、記載を省略しています。

 

(2) 受注状況

当社グループは主として需要と現有設備を勘案した見込生産のため、記載を省略しています。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成27年4月1日

至  平成28年3月31日)

前期比(%)

紙・パルプ事業

金額(百万円)

827,560

△1.0

紙関連事業

金額(百万円)

88,912

△2.3

木材・建材・土木建設関連事業

金額(百万円)

62,155

4.9

その他

金額(百万円)

28,469

△57.3

合計

金額(百万円)

1,007,097

△4.3

 

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。

3.上記の金額には消費税等は含まれていません。

4.「その他」の区分の減少の主な要因は、当連結会計年度において、四国コカ・コーラボトリング㈱の全株式を譲渡したため、同社を連結の範囲から除外したことによるものです。

 

 

3 【対処すべき課題】

 当社は、平成27年4月から推進している3年間の第5次中期経営計画の中で、既存事業における競争力強化と成長分野の伸長、そして新規事業の育成・拡大を掲げていますが、初年度である平成27年度は、新聞用紙及び印刷用紙の想定を超えた内需の落ち込み、段ボール原紙メーカー間の競争激化、北米電話帳用紙事業での需要減少と販売価格の下落や、欧州の感熱紙事業におけるユーロ安に伴う原料費高騰などによる海外事業の業績回復の遅れもあり計画は未達に終わりました。海外事業については、厳しい市場環境により北米と欧州での事業において固定資産の減損を行いました。
 第5次中期経営計画の2年目である平成28年度は、この厳しい状況を克服し、目標を達成するために、各事業において以下の対策を講じていきます。
 
 洋紙事業については、競争力強化のため原価改善や操業安定化を目的とした設備投資を積極的に実施します。また、今後も減少する内需に対して、平成27年に立ち上げたシンガポールの販売会社などを活用し、日本からの輸出を積極的に進め、生産設備の稼働率維持に努めていきます。さらに、お客さまにこれまで以上の安心と信頼を提供し、「選ばれる日本製紙」を目指して、印刷・情報・産業用紙の注文進捗管理と製品トレーサビリティを向上させる新システムの導入を平成28年度より順次導入を進める予定です。
 板紙事業については、平成28年4月25日、特種東海製紙株式会社との間で、段ボール原紙及び重袋用・一般両更クラフト紙事業において、販売機能統合、特種東海製紙島田工場における製造事業の分社化、及び分社化によって設立される新製造会社への当社による出資に関して最終合意し、平成28年10月1日の事業提携開始に向けて準備を進めています。新製造会社の品質・コスト競争力の強化、原燃料などの共同調達、効率的な販売体制の確立など両社の強みを生かしたシナジーを追求していきます。
 海外事業については、操業安定化と高付加価値品への転換に注力します。豪州のオーストラリアン・ペーパー社では、環境に配慮した再生紙製品の拡販に引き続き努めるとともに、同社メアリーヴェール工場において要員合理化を含む収益改善計画を完遂し、あわせて操業安定化に向けた投資を行います。
 北米の日本製紙USA社では、段ボール古紙の溶解設備を設置して電話帳用紙から産業用紙への品種転換を進めており、また欧州の十條サーマル社では、感熱紙の高付加価値品製造のための設備投資を実施し、拡販に取り組んでいます。東南アジアにあるサイアム・ニッポン・インダストリアル・ペーパー社(SNP社)では、食品・医療包装用途などで期待される片艶紙の拡販を目指します。
 ヘルスケア事業では、機能性セルロースナノファイバーを用いた消臭シートを採用した製品を中心に拡販を進めるとともに、日本製紙クレシア株式会社京都工場に集中投資を行い、今後大きな成長が期待される中国・アジア市場への輸出を進めていきます。
 ケミカル事業では、江津事業所の競争力強化及び新製品生産を目的とした設備投資を行い、その効果発現に注力します。また、液体用紙容器事業では、販売強化を目的に、ノルウェーのエロパック社(Elopak社)とライセンス契約を締結し、同社が世界各地で展開する口栓付きチルド用液体紙容器を今後日本市場に導入していきます。
 さらにパッケージング分野における強化策として、平成28年4月、パッケージング・コミュニケーションセンターとパッケージング研究所を新設しました。パッケージング・コミュニケーションセンターはお客さまのご要望にお応えするためのマーケティングや提案機能を担い、パッケージング研究所は木質バイオマスをベースとしたパッケージの素材・技術開発を担います。両組織が中心となり、グループ各社の連携を強化し、同分野での成長を目指します。
 エネルギー事業では、建設中の石巻工場における石炭・バイオマス混焼火力発電を計画通りに立ち上げるほか、現在検討中の秋田工場での火力発電について早期に具体化し、プロジェクトをスタートさせることを目指します。また、国内需要が高まるバイオマス燃料に関する技術の確立と早期の実用化を図るために、トレファクション技術を用いた木質バイオマス燃料(トレファイドペレット)の生産実証設備をタイに設置し、タイのフェニックスパルプ&ペーパー社(Phoenix Pulp and Paper社)と共同研究開発を進めます。
 成長分野であるヘルスケア・ケミカル・パッケージングについては、国内外問わずM&Aも推進し、事業の拡大を図っていきます。
 財務面においては、ROA(総資産利益率)を第5次中期経営計画の経営目標に掲げ、資産効率の改善に引き続き取り組みます。現有資産については最大限に有効活用することを基本に、中長期的な戦略と照らし合わせながら、売却や入替えを積極的に実施していきます。
 
 今後も国内外を問わず、成長分野や新規事業には重点的に経営資源を配分し、総合バイオマス企業としての事業構造転換に取り組んでいきます。

 

(株式会社の支配に関する基本方針)

1.基本方針について

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する者が望ましいと考えています。
 もっとも、当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆さま全体の意思に基づき決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるか否かの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えます。しかしながら、当社株式等に対する大規模買付行為や買付提案の中には、買付目的や買付後の経営方針等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、株主が買付けの条件等について検討したり、当社の取締役会が代替案を提案するための充分な時間や情報を提供しないもの、買付者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買付者との交渉を必要とするもの等、株主共同の利益を毀損するものもあり得ます。
 当社は、このような大規模買付行為や買付提案を行う者は、例外的に当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと判断します。
 

2.基本方針の実現に資する取組みについて

 (1) 中期経営計画について

 当社グループは紙パルプ事業を中心とした、用途多彩で再生可能な木材資源の活用を通じて、豊かな暮らしと地球環境の両立を支える企業活動を実践しています。
 この持続的成長をさらに確かなものにするため、3年ごとに中期経営計画を策定し、推進しています。平成27年4月からは第5次中期経営計画(3か年)を推進しています。ヘルスケア、ケミカル、エネルギー、パッケージングなど成長分野へ重点的に経営資源を配分し総合バイオマス企業としての事業構造転換を加速していきます。一方既存事業では、事業基盤を強化するための投資をもう一段行うことで安定した収益を確保し、事業構造転換を支えていきます。
 森林資源を基盤とした循環型の事業を通じて暮らしと文化に貢献し、企業価値・株主共同の利益の確保・向上に努めていきます。
 

 (2) コーポレート・ガバナンスの取組み

 当社は、株主をはじめとするステークホルダーに対する経営の透明性を一層高め、公正な経営を実現することを経営の最重要課題とします。業務執行と経営の監督の分離を確保するため、執行役員制度を採用するとともに、取締役会の監督機能の強化に努めます。また、当社はグループの経営の司令塔として、成長戦略を推進し、傘下事業をモニタリングし、コンプライアンスを推進します。
 このような取組みにより、当社は、今後もより一層コーポレート・ガバナンスの強化に努めていきます。
 
 かかる取組みは当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させるものであり、上記「1.」で述べた基本方針に沿うものです。
 

3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 (1) 本対応方針の概要

 当社は、上記「1.」に述べた基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みとして、「当社株式等に対する大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)」(以下「本対応方針」といいます。)を定めています。
 本対応方針の有効期間は、平成30年3月期に関する定時株主総会終結の時までとなっています。その概要は以下のとおりです。
ア.大規模買付ルールの設定
 本対応方針は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、当社の株券等の大規模買付行為が行われる場合に、大規模買付行為を行おうとする者(以下「大規模買付者」といいます。)に対し、①事前に大規模買付行為に関する必要かつ十分な情報の提供を求め、②大規模買付行為についての情報収集・検討等を行う時間を確保した上で、③株主の皆さまに当社経営陣の代替案等を提示し、大規模買付者との交渉を行っていくための手続を定めています。
イ.新株予約権無償割当ての利用
 大規模買付者が本対応方針において定められた手続に従うことなく大規模買付行為を行う等、当社の企業価値・株主共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合には、当社は、当該大規模買付者による権利行使は認められないとの行使条件及び当社が当該大規模買付者以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得する旨の取得条項が付された新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)を、その時点の全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法(会社法第277条以降に規定されます。)により割り当てます。 
ウ.当社取締役会の恣意的判断を排するための独立委員会の利用等
 本対応方針においては、大規模買付行為への対抗措置としての本新株予約権の無償割当ての実施もしくは不実施、又は本新株予約権の取得等の判断について、当社取締役会による恣意的な判断を排するため、独立委員会規則に従い、当社経営陣からの独立性の高い社外者のみから構成される独立委員会の判断を経ることとしています。また、これに加えて、本新株予約権の無償割当ての実施に際して独立委員会が本新株予約権の無償割当ての実施に関する株主の皆さまの意思を確認することを勧告した場合には、原則として当社取締役会は株主意思確認総会を招集するものとされています。さらに、こうした手続の過程については、株主の皆さまに適時に情報開示を行うことにより透明性を確保することとしています。
 なお、本対応方針の独立委員会は、当社社外取締役1名、社外監査役2名及び社外の有識者1名により構成されています。
エ.本新株予約権の行使及び当社による本新株予約権の取得
 本対応方針に従って本新株予約権の無償割当てがなされ、大規模買付者以外の株主の皆さまにより本新株予約権が行使された場合、又は当社による本新株予約権の取得と引換えに、大規模買付者以外の株主の皆さまに対して当社株式が交付された場合、当該大規模買付者の有する当社株式の議決権割合は、当該行使・取得前と比較して、最大で50%まで希釈化される可能性があります。
 

 (2) 本対応方針が株主・投資家に与える影響等の概要

ア.大規模買付ルールの影響
 大規模買付ルールは、当社株主の皆さまが大規模買付行為に応じるか否かを判断するために必要な情報や、現に当社の経営を担っている当社取締役会の意見を提供し、株主の皆さまが代替案の提示を受ける機会を保障することを目的としています。これにより株主の皆さまは、十分な情報の下で、大規模買付行為に応じるか否かについて適切な判断をすることが可能となり、そのことが当社の企業価値ひいては株主共同の利益の保護につながるものと考えます。したがいまして、大規模買付ルールの設定は、株主及び投資家の皆さまが適切な投資判断を行う上での前提となるものであり、株主及び投資家の皆さまの利益に資するものであると考えています。
イ.本新株予約権の無償割当時の影響 
 当社取締役会において本新株予約権無償割当決議を行った場合には、本新株予約権無償割当決議において別途定める割当期日における株主の皆さまに対し、その保有する株式1株につき本新株予約権1個の割合で本新株予約権が無償にて割り当てられます。仮に、株主の皆さまが、本新株予約権の行使期間内に本新株予約権の行使に係る手続を経なければ、他の株主の皆さまによる本新株予約権の行使により、その保有する当社株式が希釈化されることになります。 
 ただし、当社は、非適格者以外の株主の皆さまから本新株予約権を取得し、それと引換えに当社株式を交付することがあります。当社がかかる取得の手続を取った場合、非適格者以外の株主の皆さまは、本新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みをせずに、当社株式を受領することとなり、保有する当社株式1株あたりの価値の希釈化は生じますが、保有する当社株式全体の希釈化は生じません。
 

 (3) 本対応方針の合理性

 本対応方針は、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足していること、平成27年6月26日開催の第91回定時株主総会における株主の皆さまのご承認の下に更新されていること、一定の場合には株主意思確認総会において本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについて株主の皆さまの意思の確認を行うこと、その内容として合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設計されていること、本対応方針の運用に関して独立性の高い社外者から成る独立委員会を設置しており、当社取締役会は本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについての独立委員会の判断を最大限尊重して決議を行うこと、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を受けることができること、本対応方針の有効期間の満了前であっても当社株主総会又は当社取締役会の決議によって本対応方針を廃止できること、本対応方針は当社の株券等を大量に買い付けた者が指名し株主総会で選任された取締役により廃止することができるものとして設計されていること(デッドハンド型買収防衛策ではないこと)等により、その公正性・客観性が担保されています。
 

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 製品需要及び市況の変動リスク

当社グループは、主力の紙・パルプ事業をはじめ、紙関連事業、木材・建材・土木建設関連事業等を行っています。これらの製品等は経済情勢等に基づく需要の変動リスク及び市況動向等に基づく製品売価の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(2) 生産状況の変動リスク

当社グループは、主として需要と現有設備を勘案した見込生産を行っています。全ての生産設備について定期的な災害防止検査や点検等を行っていますが、火災や設備のトラブルの他、原燃料調達面の支障等により生産設備の稼働率が低下した場合などに製品供給力が低下するリスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(3) 為替レートの変動リスク

当社グループは、輸出入取引等について為替変動リスクを負っています。輸出入の収支は、チップ、重油、石炭、薬品などの諸原燃料等の輸入が、製品等の輸出を上回っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合には経営成績にマイナスの影響を及ぼします。なお当社グループは、為替予約等を利用したリスクヘッジを実施しています。

 

(4) 原燃料価格の変動リスク

当社グループは、主としてチップ、古紙、重油、石炭、薬品などの諸原燃料を購入して、紙・パルプ・その他の製品を製造・販売する事業を行っています。そのため国際市況及び国内市況による原燃料価格の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(5) 株価の変動リスク

当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有していますので、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また、株価の変動は、年金資産の変動を通じて年金費用を変動させる可能性があります。

 

(6) 金利の変動リスク

当社グループは、有利子負債などについて金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(7) 海外事業リスク

当社グループは、北米・南米・北欧・中国・東南アジア・豪州等で、紙・パルプの製造販売、植林等の海外事業展開を行っています。海外事業リスクの未然防止に努めていますが、予測し得ない事態等が発生した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(8) 訴訟等のリスク

当社グループは、業務の遂行にあたり法令遵守などコンプライアンス経営に努めていますが、国内外の事業活動の遂行にあたり、刑事・民事・租税・独占禁止法・製造物責任法・知的財産権・環境問題・労務問題等に関連した訴訟等のリスクを負っており、その結果、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損リスク

当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。資産価値が下落した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(10) 自然災害等のリスク

当社グループの生産及び販売拠点周辺で地震や大規模な自然災害等が発生して生産設備・物流インフラ等が被害を受けた場合、設備復旧のための費用、生産停止による機会損失、製品・商品・原材料等への損害などにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(11) 信用リスク

当社グループは、得意先などの信用リスクに備えていますが、経営の悪化や破綻等により債権回収に支障を来たすなど、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(12) その他の事業環境等の変動リスク

当社グループは、上記以外の項目に関しても偶発事象に起因する事業環境等の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 (1) 理文造紙有限公司との業務提携解消

 当社は、平成27年4月24日に、持分法適用関連会社である理文造紙有限公司(Lee & Man Paper Manufacturing Limited)との業務提携契約を終了することを取締役会で決議し、同日付で本契約を終了しました。これに伴い当社から派遣していた取締役は辞任し、同社は関連会社ではなくなったため、持分法適用の範囲から除外しています。

 

 (2) 四国コカ・コーラボトリング株式会社の株式譲渡

 当社は、平成27年4月30日付の株式譲渡契約に基づき、平成27年5月18日に連結子会社である四国コカ・コーラボトリング株式会社の全株式を譲渡しました。
 詳細は、「第5 経理の状況 1  連結財務諸表等  (1)  連結財務諸表 注記事項 企業結合等関係」をご参照ください。

 

 (3) 特種東海製紙株式会社との段ボール原紙及び重袋用・一般両更クラフト紙事業に係る基本合意書締結

 当社は、平成27年10月7日に、特種東海製紙株式会社(以下「特種東海製紙」)との間で、段ボール原紙及び重袋用・一般両更クラフト紙事業において、販売機能統合並びに特種東海製紙島田工場における製造事業の分社化(以下、当該分社化によって設立される特種東海製紙子会社を「新製造会社」)及び当社による新製造会社への出資に係る基本合意書を締結することを取締役会で決議しました。
 詳細は、「第5 経理の状況 1  連結財務諸表等  (1)  連結財務諸表 注記事項 重要な後発事象」をご参照ください。

 

 

6 【研究開発活動】

 当社グループでは、木質資源を豊富に保有する強みを活かし、原材料から製品まで一貫した研究を行い、洋紙・板紙事業の収益力強化を図ると同時に、パッケージング・紙加工事業、木材・ケミカル事業、エネルギー事業などの成長分野にも注力し、「総合バイオマス企業」としての研究開発活動を行っています。研究開発体制についても、各事業部門や工場との密接な連携、及び国内外の外部研究機関との連携により総合的な開発力の向上と競争力の強化に努めています。また、新たに「パッケージング研究所」を開設し、同時に企画本部内に設置したマーケティング・提案機能を備えた「パッケージング・コミュニケーションセンター」と連携して、将来も含めた市場ニーズに応じた、木質バイオマスをベースとするパッケージの素材、技術開発を推進します。

 当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、5,555百万円(人件費含む)であり、各事業部門別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりです。

 

(1) 紙・パルプ事業

 国内市場の成熟化と海外市場の成長、原材料の需給逼迫と価格高騰、深刻化する地球環境問題などの様々な課題に対峙するため、アグリ・バイオ研究所、総合研究所及びCNF事業推進室が中心となり、以下のような取り組みを行っています。当事業に係る研究開発費は3,520百万円です。

① 植林事業についての技術開発

 事業活動の基幹となる原材料確保のため、自社植林木の生産性向上を目指し、技術開発を積極的に進めています。特にブラジルなどにおいては、精英樹の開発として優良クローン選抜技術の開発、成長性と土壌要因の関連調査、迅速なバイオマス量測定技術の開発による林業技術の改良などの取り組みを推進しています。

② 品質とコストの更なる改善

 洋紙及び板紙の競争力強化のため、新製品開発や需要家のニーズに応えた品質改善を継続し、また製造工程の操業性改善に努めています。印刷会社では、小ロット・短納期の仕事が増加しており、またユーザーからの印刷再現性に関する要求も年々高くなっており、これらに対応するため、インキを素早く乾燥させる紙が求められています。

 当社のコート紙の代表銘柄である「ユーライト®」をベースに、紙の表面に塗工する最適な材料の選定と配合割合を見直して当社独自技術を活かすことにより、インキ乾燥性の向上と印刷再現性の向上、この相反する2つの目標を同時にクリアし、従来品を上回る印刷再現性も実現した優れた新製品「ユーライトDRY®」を開発し、販売を開始しました。

 また収益改善に資する技術開発として、難利用古紙の利用技術の開発、自製填料の高度利用技術の開発など独自技術開発も推進しています。

③ 将来に資する技術開発など

 アグリ事業に係る技術開発として、植林技術を応用した茶苗「サンルージュ®」の生産と健康食品としての機能性解析(血糖値上昇抑制効果、認知症抑制効果等)を進めています。また挿し木増殖が難しいとされている薬用植物に、当社独自の発根技術を応用した増殖技術を開発し、薬用植物の国内自給と新たな販路拡大を狙っています。
 「総合バイオマス企業」としての新規事業創出については、木材をベースとした素材、パッケージなどのプラスティック代替新規紙材料の開発や、セルロースナノファイバー・バイオリファイナリー・エネルギーに関する研究開発に取り組んでいます。
 セルロースナノファイバー(以下、「CNF」)については、CNF事業推進室が中心となって実証生産設備を用いて、量産化技術やサンプル供給による用途開発を推進しています。具体的には、化学処理により得られたCNFを用いて、触媒、消臭、抗菌などさまざまな性能を有する機能性シートの実用化に成功しました。製品化第1弾として、当社グループの日本製紙クレシア株式会社において、CNFを配合した高い消臭機能を持つシートを大人用紙おむつの新ブランド「肌ケア アクティ®」シリーズに採用し、機能性CNFの世界初の実用化商品として全国で販売を開始しました。
 また、ナノセルロースの導入促進を目的として、バイオマス分野では初の産官学連携コンソーシアムである「ナノセルロースフォーラム」においても、当社は主体的に関与し、早期の事業化を推進しています。
 バイオリファイナリー関連では、木材の高度利用技術の開発として、木材から化学品原料の一貫製造プロセスに関する研究開発を行っています。
 さらに、エネルギー事業に係る技術開発として、木質バイオマスを半炭化(トレファクション)して得られる新規固形燃料の実用化開発を進めています。

 

(2) 紙関連事業

 液体用紙容器については当社が、各種化成品については当社及び株式会社フローリックが中心となって研究開発を行っています。当事業に係る研究開発費は2,034百万円です。
 液体用紙容器の分野につきましては、環境と衛生性、ユニバーサルデザインに配慮した製品及びそのシステム(充填機等)の開発を主要課題にしてきました。フジパック(レンガ型容器)用原紙は主に海外から輸入していましたが、原紙国産化の開発に取り組み、切替えを開始しました。NPパックでは、更なる環境負荷低減を目標に、原紙の軽量化を進めています。また、新コンセプト紙容器の開発として、新たに機械メーカーとの秘密保持契約を結び、パーソナルユースをターゲットにした口栓付アセプティック容器の開発を開始しました。
 化成品の分野につきましては、自動車プラスティック部材用水系及び溶剤系プライマー、インキ添加剤、リグニン製品及びポリカルボン酸系コンクリート分散剤の収益力強化等を行いました。また、セルロース製品及び発酵製品の基盤強化を図ると同時に、新製品を上市しました。
 その他、スマートフォンやタブレット端末等の中小型ディスプレー用途のハードコートフィルムの品質安定化や、薄型フラットディスプレーに対応した、各種新規ハードコートフィルムの開発に努めました。さらに、精密塗工、ハードコート技術を発底とした新製品開発を行いました。

 

(3) 木材・建材・土木建設関連事業

該当事項はありません。

 

(4) その他

該当事項はありません。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものです。

 

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っています。

詳細につきましては、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)  連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しています。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上高

売上高は前連結会計年度の1兆524億円から453億円(4.3%)減少し、1兆70億円となりました。この主な減少要因は、四国コカ・コーラボトリング株式会社の全株式を譲渡し連結の範囲から除外したことなどによるものです。

 

② 営業利益

営業利益は前連結会計年度の236億円から10億円(4.4%)減少し、226億円となりました。この主な減少要因は、コストダウンや、製品価格の修正・維持に努めたものの、印刷用紙の需要が低調に推移したことや、古紙価格が高止まりするなど、厳しい事業環境が継続したためです。

 

③ 営業外損益・経常利益

営業外損益は前連結会計年度の4億円の損失から50億円悪化し、54億円の損失となりました。これは主として持分法による投資損失によるものです。

以上により、経常利益は前連結会計年度の232億円から60億円(26.2%)減少し、171億円の利益となりました。

 

④ 特別損益

特別利益は前連結会計年度の200億円から15億円増加し、216億円となりました。当連結会計年度の特別利益の主な内訳は、投資有価証券売却益208億円です。
 特別損失は前連結会計年度の63億円から277億円増加し、340億円となりました。当連結会計年度の特別損失の主な内訳は、子会社株式売却損165億円、減損損失99億円、事業構造改革費用37億円です。

 

⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度の231億円から207億円(89.5%)減少し、24億円となりました。1株当たり当期純利益は前連結会計年度の200円27銭に対し、20円95銭となりました。

 

 

(3) 当連結会計年度の財政状態の分析

① 総資産・純資産

総資産は、前連結会計年度末の1兆4,956億円から1,047億円減少し、1兆3,909億円となりました。この主な要因は、投資有価証券が712億円、有形固定資産が461億円それぞれ減少し、現金及び預金が284億円増加したことによるものです。
 負債は、前連結会計年度末の1兆58億円から396億円減少し、9,662億円となりました。この主な要因は、有利子負債の返済によるものです。
 純資産は、前連結会計年度末の4,897億円から650億円減少し、4,246億円となりました。この主な要因は、利益剰余金が149億円、為替換算調整勘定が220億円、退職給付に係る調整累計額が180億円それぞれ減少したことによるものです。

 

② キャッシュ・フロー

「第2 事業の状況  1 業績等の概要  (2) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

(4) 経営者の問題意識と今後の方針について

「第2 事業の状況  3 対処すべき課題」をご参照ください。