第2 【事業の状況】

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度のわが国の経済は、企業収益や雇用情勢が改善するなど、景気は緩やかな回復基調で推移しました。紙パルプ業界におきましては、紙・板紙の国内出荷は消費税率引き上げ後に落ち込み、その後の持ち直しの動きも鈍く前期を下回る水準で推移しました。また下期からの急激な円安の進行による原燃料価格の上昇が収益を圧迫するなど、厳しい事業環境が続きました。
 当社グループは、このような経営環境に対応し、原価改善・固定費削減などのコストダウンに努めるとともに、減産強化などによる在庫適正化を図り、前期に取り組んだ価格修正の維持に努めてまいりました。

 

以上の結果、連結売上高は1,052,491百万円(前期比2.7%減)、連結営業利益は23,656百万円(前期比17.1%減)、連結経常利益は23,204百万円(前期比17.7%減)となりました。また、土地などの資産売却を実施した結果、連結当期純利益は23,183百万円(前期比1.8%増)となりました。

 

セグメントの状況は、以下のとおりです。

 

(紙・パルプ事業)

新聞用紙は、消費税率引き上げ後の発行部数の落ち込みが大きく販売数量は前期を下回りました。印刷用紙は、国内ではチラシや雑誌向けなどが減少し、販売数量は前期を下回りました。情報用紙は、PPC用紙(コピー用紙)やフォーム用紙などの販売数量が前期を下回りました。一方、円安を背景に輸出の販売数量は前期を上回りました。
 板紙は、段ボール原紙などが加工食品向けや飲料向けなどの安定した需要に支えられ、販売数量は前期を上回りました。
 家庭紙は、トイレットペーパーやヘルスケアなどが堅調に推移しましたが、消費税率引き上げに伴う前倒し需要の反動があったことなどにより、販売数量は前期を下回りました。

以上の結果、紙・パルプ事業の連結業績は、連結売上高835,521百万円(前期比1.5%減)、連結営業利益15,022百万円(前期比13.9%減)となりました。

 

(紙関連事業)

ケミカル事業は、溶解パルプ(DP)や液晶用途向け機能材料などの販売数量が前期を上回りました。
 液体用紙容器事業は、夏場の天候不順や牛乳消費の低迷などにより、販売数量は前期を下回りました。

以上の結果、紙関連事業の連結業績は、連結売上高91,033百万円(2.1%減)、営業利益3,760百万円(25.5%減)となりました。

 

 

(木材・建材・土木建設関連事業)

木材・建材事業は、新設住宅着工戸数の低迷が続いたことなどにより販売数量が前期を下回りました。

以上の結果、木材・建材・土木建設関連事業の連結業績は、連結売上高59,242百万円(14.8%減)、連結営業利益2,123百万円(11.7%減)となりました。

 

(その他)

清涼飲料事業はコストダウンに努めましたが、需要期である夏場に相次いだ台風や豪雨により販売が落ち込むとともに、飲料メーカー間の激しい競争が続き、減収減益となりました。
 レジャー事業は、堅調に推移しました。

以上の結果、その他の連結業績は、連結売上高66,694百万円(5.5%減)、連結営業利益2,749百万円(24.6%減)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、84,002百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,146百万円(13.5%)減少しました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得た資金は、81,846百万円(前連結会計年度に比べ6,083百万円(8.0%)の増加)となりました。主な収入要因は、税金等調整前当期純利益36,925百万円(前期比21.1%増)、減価償却費61,374百万円(前期比2.9%減)です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、42,483百万円(前連結会計年度に比べ17,622百万円(70.9%)の増加)となりました。主な収入要因は、固定資産の売却による収入19,346百万円(前期比168.0%増)です。また、主な支出要因は、固定資産の取得による支出48,692百万円(前期比5.3%減)、投資有価証券の取得による支出12,972百万円(前期は673百万円)です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、52,744百万円(前連結会計年度に比べ12,742百万円(19.5%)の減少)となりました。主な内訳は、有利子負債の返済による支出です。

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成26年4月1日

至  平成27年3月31日)

前期比(%)

 

紙・パルプ事業

数量(t)

6,762,665

△1.7

 

洋    紙

数量(t)

4,533,063

△3.6

 

板    紙

数量(t)

1,963,333

2.8

 

家 庭 紙

数量(t)

230,848

2.5

 

パ ル プ

数量(t)

35,421

△16.7

   紙関連事業

金額(百万円)

71,086

0.3

 

(注) 1  パルプについては、グループ内消費分は除いています。

2  紙関連事業は品種等が多岐にわたり、数量表示が困難であるため、各生産高に平均販売価格を乗じた金額のみを表示しています。また、この金額には、消費税等は含まれていません。

3  木材・建材・土木建設関連事業、その他は、生産高が僅少であるため、記載を省略しています。

 

(2) 受注状況

当社グループは主として需要と現有設備を勘案した見込生産のため、記載を省略しています。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成26年4月1日

至  平成27年3月31日)

前期比(%)

紙・パルプ事業

金額(百万円)

835,521

△1.5

紙関連事業

金額(百万円)

91,033

△2.1

木材・建材・土木建設関連事業

金額(百万円)

59,242

△14.8

その他

金額(百万円)

66,694

△5.5

合計

金額(百万円)

1,052,491

△2.7

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しています。

2  主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。

3  上記の金額には消費税等は含まれていません。

 

 

3 【対処すべき課題】

 円安、消費税率引き上げの影響など足元の経済環境変化に加え、紙の国内需要が減少傾向にあることが当社グループにとって中長期での大きな課題であり、既存事業の競争力強化と事業構造転換を推し進めています。

① 第4次中期経営計画(平成24年4月~平成27年3月)の総括

 第4次中期経営計画では、洋紙事業の収益力強化、事業構造転換、海外事業の収益力強化、財務体質の改善に取り組みました。外部環境の急激かつ大幅な変化などもあり、利益目標は未達となりましたが、各種施策の着実な実行と有利子負債の削減により東日本大震災からの復興を完了させました。

 洋紙事業では国内生産能力の15%を削減し、あわせて1,300人規模の人員合理化も実施することで、収益力の強化を図りました。

 事業構造転換に向けた取組みとして、軽失禁用品やケミカル製品の拡販と増産対策、またエネルギー事業拡大に向けたプロジェクトなどを推進してきました。こうした成長分野への経営資源の配分を迅速に決定・執行できるよう、平成24年10月に当社グループの3社(日本大昭和板紙株式会社、日本紙パック株式会社及び日本製紙ケミカル株式会社)を吸収合併、平成25年4月には当社の親会社である株式会社日本製紙グループ本社を吸収合併し、事業持株会社へ移行しました。また執行役員制度を導入するなど、経営体制面での改革も実施しました。

 海外事業では、収益力強化策を推進しました。北米では、日本製紙USAにおいて生産能力を半減し合理化を進めた一方で、収益を支える事業として発電事業を立ち上げました。豪州においては、オーストラリアン・ペーパー社で再生紙製品の拡販に取り組み、古紙パルプ製造設備の建設を進めました。また東南アジア地域への事業展開として、SCGペーパー社との合弁で片艶紙の生産を立ち上げ拡販に取り組んだほか、同社の保有する植林、パルプ、紙で構成される事業部門に参画しました。

 財務面では、震災からの復興のために多額の資金を要したことにより純有利子負債が増加していましたが、資産売却も含めた各種取組みの結果、目標水準まで圧縮することができました。
 

② 第5次中期経営計画(平成27年4月~平成30年3月)の推進

 本年4月から3年間の第5次中期経営計画では、既存事業における競争力強化と成長分野の伸長、そして新規事業の育成・拡大を主要なテーマに掲げています。第4次中期経営計画において財務体質改善に一定の目途を付けたことにより、前向きの投資を積極的に実施していくことが可能となりました。国内外を問わず、成長分野や新規事業には重点的に経営資源を配分し、総合バイオマス企業としての事業構造転換を加速していきます。

 既存事業における成熟分野では、販売・物流体制の見直しや、品質改善・コスト競争力強化のための適切な投資を実施します。また海外子会社についても生産体制の見直しや発電事業、新製品の開発などにより事業基盤を強化していきます。

 既存事業の中でも産業用途、パッケージングに関わる分野では今後も成長が見込まれており、川下との連携も含めて強化していきます。

 ヘルスケアやケミカル、エネルギー事業では、積極的な投資により事業規模の拡大を目指します。

 ヘルスケア分野では、大人用おむつや軽失禁用品などの拡販に注力します。ケミカル事業ではコスト競争力を強化しながら各種セルロース製品、化成品、液晶材料などを拡販するほか、高付加価値品や新分野への積極的な展開を図ります。エネルギー事業では、これまでの取組みに加え、石巻工場における石炭・バイオマス混焼火力発電のプロジェクトもスタートさせました。今後さらなる事業拡大を目指します。

 新素材として期待の高まるセルロースナノファイバーについては、大人用おむつの消臭シートとして実用化に目途をつけました。今後も様々な用途での実用化を急ぎ、生産体制も整備していきます。

 財務面では資産効率の改善に積極的に取り組みます。既に四国コカ・コーラボトリング株式会社及び理文造紙有限公司の株式を売却しましたが、現有資産については最大限に有効活用することを基本に、中長期的な戦略と照らし合わせながら、売却や入替えも実施していきます。

 

(株式会社の支配に関する基本方針)

1.基本方針について

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する者が望ましいと考えています。
 もっとも、当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆さま全体の意思に基づき決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるか否かの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えます。しかしながら、当社株式等に対する大規模買付行為や買付提案の中には、買付目的や買付後の経営方針等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、株主が買付けの条件等について検討したり、当社の取締役会が代替案を提案するための充分な時間や情報を提供しないもの、買付者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買付者との交渉を必要とするもの等、株主共同の利益を毀損するものもあり得ます。
 当社は、このような大規模買付行為や買付提案を行う者は、例外的に当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと判断します。
 

2.基本方針の実現に資する取組みについて

 (1) 中期経営計画について

 当社グループは紙パルプ事業を中心とした、用途多彩で再生可能な木材資源の活用を通じて、豊かな暮らしと地球環境の両立を支える企業活動を実践しています。
 この持続的成長をさらに確かなものにするため、3年ごとに中期経営計画を策定し、推進しています。平成24年4月からの3年間で推進してきた第4次中期経営計画では、洋紙事業の収益力強化、事業構造転換、海外事業の収益力強化、財務体質の改善に取り組みました。外部環境の急激かつ大幅な変化などもあり、利益目標は未達となりましたが、各種施策の着実な実行と有利子負債の削減により東日本大震災からの復興を完了させました。
 本年4月からは第5次中期経営計画(3か年)を推進しています。第4次中期経営計画において財務体質改善に一定の目途を付けたことにより、前向きの投資を積極的に実施していくことが可能となりました。ヘルスケア、ケミカル、エネルギー、パッケージングなど成長分野へ重点的に経営資源を配分し総合バイオマス企業としての事業構造転換を加速していきます。一方既存事業では、事業基盤を強化するための投資をもう一段行うことで安定した収益を確保し、事業構造転換を支えていきます。
 森林資源を基盤とした循環型の事業を通じて暮らしと文化に貢献し、企業価値・株主共同の利益の確保・向上に努めていきます。
 

 (2) コーポレート・ガバナンスの取組み

 当社は、株主をはじめステークホルダーに対する経営の透明性を一層高め、公正な経営を実現することを経営の最重要課題としています。
 当社グループは平成25年4月1日付の組織再編により、純粋持株会社制から事業持株会社制へ移行しました。純粋持株会社として構築してきたグループ経営の司令塔としての成長戦略推進機能、傘下事業のモニタリング(監査・監督)機能、およびコンプライアンス推進機能を維持・継続するとともに、事業持株会社として業務執行と経営の監督の分離を確保するため執行役員制度を導入しました。平成25年6月からは社外取締役も導入し、経営監視機能のさらなる向上を図っています。
 このような取組みにより、当社は、今後もより一層コーポレート・ガバナンスの強化に努めていきます。
 
 かかる取組みは当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させるものであり、上記「1.」で述べた基本方針に沿うものです。
 

3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 (1) 本対応方針の概要

 当社は、上記「1.」に述べた基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みとして、「当社株式等に対する大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)」(以下「本対応方針」といいます。)を定めています。
 本対応方針の有効期間は、平成30年3月期に関する定時株主総会終結の時までとなっています。その概要は以下のとおりです。
ア.大規模買付ルールの設定
 本対応方針は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、当社の株券等の大規模買付行為が行われる場合に、大規模買付行為を行おうとする者(以下「大規模買付者」といいます。)に対し、①事前に大規模買付行為に関する必要かつ十分な情報の提供を求め、②大規模買付行為についての情報収集・検討等を行う時間を確保した上で、③株主の皆さまに当社経営陣の代替案等を提示し、大規模買付者との交渉を行っていくための手続を定めています。
イ.新株予約権無償割当ての利用
 大規模買付者が本対応方針において定められた手続に従うことなく大規模買付行為を行う等、当社の企業価値・株主共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合には、当社は、当該大規模買付者による権利行使は認められないとの行使条件及び当社が当該大規模買付者以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得する旨の取得条項が付された新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)を、その時点の全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法(会社法第277条以降に規定されます。)により割り当てます。 
ウ.当社取締役会の恣意的判断を排するための独立委員会の利用等
 本対応方針においては、大規模買付行為への対抗措置としての本新株予約権の無償割当ての実施もしくは不実施、または本新株予約権の取得等の判断について、当社取締役会による恣意的な判断を排するため、独立委員会規則に従い、当社経営陣からの独立性の高い社外者のみから構成される独立委員会の判断を経ることとしています。また、これに加えて、本新株予約権の無償割当ての実施に際して独立委員会が本新株予約権の無償割当ての実施に関する株主の皆さまの意思を確認することを勧告した場合には、原則として当社取締役会は株主意思確認総会を招集するものとされています。さらに、こうした手続の過程については、株主の皆さまに適時に情報開示を行うことにより透明性を確保することとしています。
 なお、本対応方針の独立委員会は、当社社外取締役1名、社外監査役2名及び社外の有識者1名により構成されます。
エ.本新株予約権の行使及び当社による本新株予約権の取得
 本対応方針に従って本新株予約権の無償割当てがなされ、大規模買付者以外の株主の皆さまにより本新株予約権が行使された場合、または当社による本新株予約権の取得と引換えに、大規模買付者以外の株主の皆さまに対して当社株式が交付された場合、当該大規模買付者の有する当社株式の議決権割合は、当該行使・取得前と比較して、最大で50%まで希釈化される可能性があります。
 

 (2) 本対応方針が株主・投資家に与える影響等の概要

ア.大規模買付ルールの影響
 大規模買付ルールは、当社株主の皆さまが大規模買付行為に応じるか否かを判断するために必要な情報や、現に当社の経営を担っている当社取締役会の意見を提供し、株主の皆さまが代替案の提示を受ける機会を保障することを目的としています。これにより株主の皆さまは、十分な情報の下で、大規模買付行為に応じるか否かについて適切な判断をすることが可能となり、そのことが当社の企業価値ひいては株主共同の利益の保護につながるものと考えます。したがいまして、大規模買付ルールの設定は、株主及び投資家の皆さまが適切な投資判断を行う上での前提となるものであり、株主及び投資家の皆さまの利益に資するものであると考えています。
イ.本新株予約権の無償割当時の影響 
 当社取締役会において本新株予約権無償割当決議を行った場合には、本新株予約権無償割当決議において別途定める割当期日における株主の皆さまに対し、その保有する株式1株につき本新株予約権1個の割合で本新株予約権が無償にて割り当てられます。仮に、株主の皆さまが、本新株予約権の行使期間内に本新株予約権の行使に係る手続を経なければ、他の株主の皆さまによる本新株予約権の行使により、その保有する当社株式が希釈化されることになります。 
 ただし、当社は、非適格者以外の株主の皆さまから本新株予約権を取得し、それと引換えに当社株式を交付することがあります。当社がかかる取得の手続を取った場合、非適格者以外の株主の皆さまは、本新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みをせずに、当社株式を受領することとなり、保有する当社株式1株あたりの価値の希釈化は生じますが、保有する当社株式全体の希釈化は生じません。
 

 (3) 本対応方針の合理性

 本対応方針は、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足していること、平成27年6月26日開催の第91回定時株主総会における株主の皆さまのご承認の下に更新されていること、一定の場合には株主意思確認総会において本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについて株主の皆さまの意思の確認を行うこと、その内容として合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設計されていること、本対応方針の運用に関して独立性の高い社外者から成る独立委員会を設置しており、当社取締役会は本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについての独立委員会の判断を最大限尊重して決議を行うこと、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を受けることができること、本対応方針の有効期間の満了前であっても当社株主総会または当社取締役会の決議によって本対応方針を廃止できること、本対応方針は当社の株券等を大量に買い付けた者が指名し株主総会で選任された取締役により廃止することができるものとして設計されていること(デッドハンド型買収防衛策ではないこと)等により、その公正性・客観性が担保されています。
 

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 製品需要及び市況の変動リスク

当社グループは、主力の紙・パルプ事業をはじめ、紙関連事業、木材・建材・土木建設関連事業等を行っています。これらの製品等は経済情勢等に基づく需要の変動リスク及び市況動向等に基づく製品売価の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(2) 生産状況の変動リスク

当社グループは、主として需要と現有設備を勘案した見込生産を行っています。全ての生産設備について定期的な災害防止検査や点検等を行っていますが、火災や設備のトラブルの他、原燃料調達面の支障等により生産設備の稼働率が低下した場合などに製品供給力が低下するリスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(3) 為替レートの変動リスク

当社グループは、輸出入取引等について為替変動リスクを負っています。輸出入の収支は、チップ、重油、石炭、薬品などの諸原燃料等の輸入が、製品等の輸出を上回っており、主として米ドルに対して円安が生じた場合には経営成績にマイナスの影響を及ぼします。なお当社グループは、為替予約等を利用したリスクヘッジを実施しています。

 

(4) 原燃料価格の変動リスク

当社グループは、主としてチップ、古紙、重油、石炭、薬品などの諸原燃料を購入して、紙・パルプ・その他の製品を製造・販売する事業を行っています。そのため国際市況及び国内市況による原燃料価格の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(5) 株価の変動リスク

当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有していますので、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また、株価の変動は、年金資産の変動を通じて年金費用を変動させる可能性があります。

 

(6) 金利の変動リスク

当社グループは、有利子負債などについて金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(7) 海外事業リスク

当社グループは、北米・南米・北欧・中国・東南アジア・豪州等で、紙・パルプの製造販売、植林等の海外事業展開を行っています。海外事業リスクの未然防止に努めていますが、予測し得ない事態等が発生した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(8) 訴訟等のリスク

当社グループは、業務の遂行にあたり法令遵守などコンプライアンス経営に努めていますが、国内外の事業活動の遂行にあたり、刑事・民事・租税・独占禁止法・製造物責任法・知的財産権・環境問題・労務問題等に関連した訴訟等のリスクを負っており、その結果、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損リスク

当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。資産価値が下落した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(10) 自然災害等のリスク

当社グループの生産及び販売拠点周辺で地震や大規模な自然災害等が発生して生産設備・物流インフラ等が被害を受けた場合、設備復旧のための費用、生産停止による機会損失、製品・商品・原材料等への損害などにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(11) 信用リスク

当社グループは、得意先などの信用リスクに備えていますが、経営の悪化や破綻等により債権回収に支障を来たすなど、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(12) その他の事業環境等の変動リスク

当社グループは、上記以外の項目に関しても偶発事象に起因する事業環境等の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

     当社は、平成26年8月6日開催の取締役会において、保有する固定資産を下記のとおり譲渡することを決議し、同日付で契約を締結しました。

1.譲渡の理由
資産の効率化と財務体質の強化を図るため。

2.譲渡資産の内容

資産の内容及び所在地

譲渡価額

帳簿価額

東京都武蔵野市吉祥寺北町四丁目土地3,801.64㎡及び建物

3,910百万円

303百万円

 

3.譲渡先の概要
譲渡先につきましては、譲渡先との取決めにより公表を控えさせていただきます。なお、譲渡先と当社との間には、記載すべき資本関係、人的関係及び取引関係はありません。

4.譲渡の日程
平成26年8月6日   当社取締役会決議
平成26年8月8日   契約締結
平成26年12月19日   物件引渡し

 なお、当該固定資産の譲渡により、平成27年3月期連結決算において、諸費用等を除いた固定資産売却益35億円を特別利益として計上しています。

 

 

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、木質資源を豊富に保有する強みを活かし、原材料から製品まで一貫した研究を行い、洋紙・板紙事業の収益力強化を図ると同時に、パッケージ・紙加工事業、木材・ケミカル事業、エネルギー事業などの成長分野にも注力し、「総合バイオマス企業」への事業構造転換を進める研究開発活動を行っています。研究開発体制についても、各事業部門や工場との密接な連携、及び国内外の外部研究機関との連携により総合的な開発力の向上と競争力の強化に努めています。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、5,431百万円(人件費含む)であり、各事業部門別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりです。

 

(1) 紙・パルプ事業

国内市場の成熟化と海外市場の成長、原材料の需給逼迫と価格高騰、深刻化する地球環境問題などの様々な課題に対峙するため、アグリ・バイオ研究所、総合研究所及びCNF事業推進室が中心となり、以下のような取り組みを行っています。当事業に係る研究開発費は3,539百万円です。

① 植林事業についての技術開発

事業活動の基幹となる原材料確保のため、自社植林木の生産性向上を目指し、技術開発を積極的に進めています。ブラジルにおいては、精英樹の開発として優良クローン選抜技術の開発、成長性と土壌要因の関連調査、迅速なバイオマス量測定技術の開発による林業技術の改良などの取り組みを推進しています。

② 品質とコストの更なる改善

洋紙及び板紙の競争力強化のため、新製品開発や需要家のニーズに応えた品質改善を継続し、また製造工程の操業性改善に努めています。新製品としては、塗工紙の代表銘柄である「オーロラコート®」について、省電力型UV印刷への適性を向上させました。

また収益改善に資する技術開発として、難利用古紙の利用技術の開発、自製填料の高度利用技術の開発など独自技術開発も推進しています。

③ 将来に資する技術開発など

アグリ事業に係る技術開発として、植林技術を応用した茶苗「サンルージュ®」の生産と健康食品としての機能性解析(血糖値上昇抑制効果等)を進めています。また挿し木増殖が難しいとされている薬用植物に、当社独自の発根技術を応用した増殖技術を開発し、薬用植物の国内自給と新たな販路拡大を狙っています。
 「総合バイオマス企業」としての新規事業創出については、プラスチック代替新規紙材料の開発や、セルロースナノファイバー・バイオリファイナリー・エネルギーに関する研究開発に取組んでいます。
 セルロースナノファイバーについては、CNF事業推進室が中心となって実証生産設備を用いて、量産化技術やサンプル供給による用途開発を推進しています。また、ナノセルロースの導入促進を目的として、昨年6月に設置されたコンソーシアムである「ナノセルロースフォーラム」でも当社は主体的に関与し外部との連携を図りながら、早期の事業化を目指しています。
 バイオリファイナリー関連では、木材の高度利用技術の開発として、木材から化学品原料の一貫製造プロセスに関する研究開発を行っています。また、木質系飼料の開発等も進めています。
 さらに、エネルギー事業に係る技術開発として、木質バイオマスを半炭化(トレファクション)して得られる新規固形燃料の開発を進めています。

 

(2) 紙関連事業

 液体用紙容器については当社が、各種化成品については当社及び㈱フローリックが中心となって研究開発を行っています。当事業に係る研究開発費は1,852百万円です。
 液体用紙容器の分野につきましては、環境と衛生性、ユニバーサルデザインに配慮した製品及びそのシステム(充填機等)の開発を主要課題にしてきました。フジパック(レンガ型容器)システムでは、充填機システムにおける環境配慮型脱アルミ包材の開発を推進し、NPパックでは客先の要望に対応すべく新形状「NP-PAK+R」を開発しました。
 化成品の分野につきましては、自動車プラスティック部材用水系及び溶剤系プライマーの開発、ポリカルボン酸系コンクリート分散剤の収益力強化等を行いました。また、リグニン製品の製法を転換して競争力を強化しました。市場が拡大しているスマートフォンやタブレット端末等の中小型ディスプレー用途のハードコートフィルムの開発に取り組み、既存品の品質安定化や薄型ハードコートフィルムの開発をしました。

 

(3) 木材・建材・土木建設関連事業

㈱パルが国産材の使用量をより増やすための商品開発や高齢者住宅・施設向けの木質内装建材の開発を行いました。当事業に係る研究開発費は38百万円です。

 

(4) その他

該当事項はありません。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っています。

詳細につきましては、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)  連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しています。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上高

売上高は前連結会計年度の1兆812億円から287億円(2.7%)減少し、1兆524億円となりました。この主な減少要因は、新聞用紙において消費税率引き上げ後の発行部数の落ち込みがあったことや、印刷用紙において国内のチラシや雑誌向けなどが減少し、販売数量が前期を下回ったことによるものです。

 

② 営業利益

営業利益は前連結会計年度の285億円から48億円(17.1%)減少し、236億円となりました。この主な減少要因は、原価改善、固定費削減などのコストダウンや、減産強化などによる在庫適正化を図り、価格の維持に努めたものの、下期からの急激な円安の進行による原燃料価格の上昇を吸収できなかったためです。

 

③ 営業外損益・経常利益

営業外損益は前連結会計年度並の4億円の損失となりました。

以上により、経常利益は前連結会計年度の281億円から49億円(17.7%)減少し、232億円の利益となりました。

 

④ 特別損益

特別利益は前連結会計年度の95億円から105億円増加し、200億円となりました。当連結会計年度の特別利益の主な内訳は、固定資産売却益194億円です。
 特別損失は前連結会計年度の72億円から8億円減少し、63億円となりました。当連結会計年度の特別損失の主な内訳は、固定資産除却損21億円、事業構造改革費用14億円、減損損失10億円です。

 

⑤ 当期純利益

当期純利益は前連結会計年度の227億円から4億円(1.8%)増加し、231億円となりました。1株当たり当期純利益は前連結会計年度の196円67銭に対し、200円27銭となりました。

 

 

(3) 当連結会計年度の財政状態の分析

① 総資産・純資産

総資産は、前連結会計年度末の1兆4,808億円から147億円増加し、1兆4,956億円となりました。この主な要因は、投資有価証券が増加したことによるものです。
 負債は、前連結会計年度末の1兆543億円から484億円減少し、1兆58億円となりました。この主な要因は、有利子負債の返済によるものです。
 純資産は、前連結会計年度末の4,265億円から631億円増加し、4,897億円となりました。この主な要因は、利益剰余金が191億円、その他有価証券評価差額金が165億円それぞれ増加したことによるものです。

 

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローでは、818億円のキャッシュを獲得し、前連結会計年度の757億円より60億円(8.0%)増加しました。前連結会計年度に比べて増加した主な要因は、税金等調整前当期純利益が増加したことによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、424億円のキャッシュを使用し、前連結会計年度の248億円より176億円(70.9%)増加しました。前連結会計年度に比べて増加した主な要因は、投資有価証券の取得による支出が増加したことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、527億円のキャッシュを使用し、前連結会計年度の654億円より127億円(19.5%)減少しました。前連結会計年度に比べて減少した主な要因は、借入金の返済による有利子負債の圧縮額が減少したことによるものです。

 

(4) 経営者の問題意識と今後の方針について

① 当社グループを取り巻く経営環境

「第2 事業の状況  3 対処すべき課題  (1) 当社グループを取り巻く経営環境」をご参照ください。

 

② 今後の対応策

平成27年4月から3年間の第5次中期経営計画では、既存事業における競争力強化と成長分野の伸長、そして新規事業の育成・拡大を主要なテーマに掲げています。第4次中期経営計画において財務体質改善に一定の目途を付けたことにより、前向きの投資を積極的に実施していくことが可能となりました。国内外を問わず、成長分野や新規事業には重点的に経営資源を配分し、総合バイオマス企業としての事業構造転換を加速していきます。

これらの内容につきましては、「第2 事業の状況  3 対処すべき課題」をご参照ください。