第2 【事業の状況】

 当社は、平成25年4月1日に当社の親会社であった株式会社日本製紙グループ本社を吸収合併し、同社の連結財務諸表を引き継いでいますので、連結の範囲については、それまでの同社の連結の範囲と実質的な変更はありません。よって、以下の記述においては、前年同期と比較を行っている項目については同社の平成25年3月期連結会計年度(平成24年4月1日から平成25年3月31日まで)との比較、また、前連結会計年度末と比較を行っている項目については同社の平成25年3月期連結会計年度末(平成25年3月31日)との比較を行っています。

 

1 【業績等の概要】

(1) 業績

当連結会計年度のわが国の経済は、各種政策の効果により、円高の是正や株高が進行し、企業収益や雇用情勢が改善するなど、景気は緩やかな回復基調で推移しました。

紙パルプ業界におきましては、円高の是正により、輸入紙の増加も一巡し、紙・板紙の国内出荷は前年を上回る水準で推移しましたが、原燃料価格が上昇するなど、厳しい事業環境が続きました。

当社グループは、このような経営環境に対応し、原価改善・固定費削減などのコストダウンに努めるとともに、洋紙・板紙・家庭紙など各製品の価格修正に取り組んでまいりました。

 

以上の結果、連結売上高は1,081,277百万円(前期比5.5%増)、連結営業利益は28,536百万円(前期比13.5%増)、連結経常利益は28,188百万円(前期比22.1%増)となりました。また、土地や株式などの資産売却を実施した結果、連結当期純利益は22,770百万円(前期比113.7%増)となりました。

 

セグメントの状況は、以下のとおりです。

 

(紙・パルプ事業)

新聞用紙は、参議院選挙やソチオリンピックなどの特需や、好調な広告需要によるページ数の増加があったものの、発行部数の減少が継続し、販売数量は前期を下回りました。
 印刷用紙は、国内需要が堅調に推移したことに加え、輸入紙の減少、輸出を中心とした拡販などにより、販売数量は前期を上回りました。
 情報用紙は、PPC用紙(コピー用紙)やフォーム用紙などの販売数量が前期を上回りました。
 板紙は、段ボール需要が年間を通して堅調に推移し、販売数量は前期を上回りました。
 家庭紙は、消費税率引上げに伴う前倒し需要もあり、ティシューペーパーやトイレットペーパーなどの販売数量は前期を上回りました。

以上の結果、紙・パルプ事業の連結業績は、連結売上高848,145百万円(前期比5.8%増)、連結営業利益17,440百万円(前期比34.6%増)となりました。

 

(紙関連事業)

液体用紙容器事業は、野菜飲料向けでは増加しましたが、牛乳消費の減少などにより、販売数量は前期を下回りました。
 化成品事業は、コンクリート混和剤などは好調に推移したものの、液晶用途向け機能材料の販売数量は大幅に前期を下回りました。溶解パルプ(DP)は化繊向けの需要が低調に推移し、販売数量は前期を下回りました。

以上の結果、紙関連事業の連結業績は、連結売上高93,004百万円(1.5%減)、営業利益5,045百万円(19.1%減)となりました。

 

 

(木材・建材・土木建設関連事業)

木材・建材事業は、新設住宅着工戸数の増加などにより販売数量が前期を上回りました。
 土木建設事業は、資材費や人手不足による労務費の高騰の影響が収益を圧迫しました。

以上の結果、木材・建材・土木建設関連事業の連結業績は、連結売上高69,543百万円(14.5%増)、連結営業利益2,403百万円(11.6%減)となりました。

 

(その他)

清涼飲料事業は、飲料メーカー間の競争激化により厳しい事業環境が継続するなか、原価改善や販管費の削減などコストダウンに努めました。
 物流事業は、燃料費の高騰などが収益を圧迫しました。
 レジャー事業は、堅調に推移しました。

以上の結果、その他の連結業績は、連結売上高70,584百万円(2.9%増)、連結営業利益3,647百万円(12.8%増)となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、97,149百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,663百万円(12.3%)減少しました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得た資金は、75,763百万円(前連結会計年度に比べ9,785百万円(14.8%)の増加)となりました。主な収入要因は、税金等調整前当期純利益30,498百万円(前期比90.1%増)、減価償却費63,181百万円(前期比2.7%減)です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、24,861百万円(前連結会計年度に比べ36,905百万円(59.7%)の減少)となりました。主な収入要因は、投資有価証券の売却による収入15,214百万円(前期は677百万円)、固定資産の売却による収入7,218百万円(前期は1,390百万円)です。また、主な支出要因は、固定資産の取得による支出51,414百万円(前期比11.4%減)です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、65,487百万円(前連結会計年度に比べ51,101百万円(355.2%)の増加)となりました。主な内訳は、有利子負債の返済による支出です。

 

 

2【生産、受注及び販売の状況】

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成25年4月1日

至  平成26年3月31日)

前期比(%)

 

紙・パルプ事業

数量(t)

6,881,903

5.1

 

洋    紙

数量(t)

4,703,302

6.8

 

板    紙

数量(t)

1,910,773

2.9

 

家 庭 紙

数量(t)

225,294

1.3

 

パ ル プ

数量(t)

42,533

△31.1

   紙関連事業

金額(百万円)

70,842

△3.5

 

(注) 1  パルプについては、グループ内消費分は除いています。

2  紙関連事業は品種等が多岐にわたり、数量表示が困難であるため、各生産高に平均販売価格を乗じた金額のみを表示しています。また、この金額には、消費税等は含まれていません。

3  木材・建材・土木建設関連事業、その他は、生産高が僅少であるため、記載を省略しています。

 

(2) 受注状況

当社グループは主として需要と現有設備を勘案した見込生産のため、記載を省略しています。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  平成25年4月1日

至  平成26年3月31日)

前期比(%)

紙・パルプ事業

金額(百万円)

848,145

5.8

紙関連事業

金額(百万円)

93,004

△1.5

木材・建材・土木建設関連事業

金額(百万円)

69,543

14.5

その他

金額(百万円)

70,584

2.9

合計

金額(百万円)

1,081,277

5.5

 

(注) 1  セグメント間取引については、相殺消去しています。

2  主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満であるため、記載を省略しています。

3  上記の金額には消費税等は含まれていません。

 

 

3 【対処すべき課題】

(1) 当社グループを取り巻く経営環境

① 国内市場

 当期は国内の景況感が全般にわたって改善するなか、紙・板紙ともに好調な出荷となりました。洋紙については、円高是正による輸入紙の減少と輸出環境の好転もあり、国内需給が改善し高い稼働率での操業を継続しました。このような状況のなか、原燃料コスト上昇分の製品価格への転嫁を進め、市況回復を実現しました。板紙については、加工食品・青果物向けや宅配向けの需要が堅調であったほか、平成25年末からは消費税率改定前の駆け込み需要もあり、段ボール原紙を中心に出荷量は大きく前年を上回りました。
 また、紙関連事業では牛乳消費の減少や、液晶材料の在庫調整の影響がありましたが、木材・建材・土木建設関連事業及びその他の事業においては消費税率改定前の駆け込み需要の影響を含め、全般にわたって順調な需要環境となりました。
 来期は一部品種では消費税率改定前の駆け込み需要の反動はあるものの、全般的な回復基調は続くものと予想され、堅調な出荷が見込まれます。一方、円高是正による原燃料、諸資材の大幅なコストアップなどが収益面の懸念材料となっています。

 

② 海外市場

 中国経済の減速やウクライナ情勢など、依然として懸念材料はあるものの、欧州の経済状況にも落ち着きが見られ、米国経済も着実な改善傾向が続いています。当社グループが主要市場と位置づけているアジア・オセアニア地域では堅調な経済状況や人口増などに支えられ、同地域内の紙・板紙や化成品、その他各種産業向け製品の需要拡大が続いています。

 

(2) 第4次中期経営計画

 現在、当社グループが推進している「第4次中期経営計画」では、国内洋紙事業の復興計画を柱とする洋紙事業の収益力強化とともに、グループの事業構造転換を加速させるべく、成長分野の拡大及び新規事業の開発・育成を図っています。さらに海外事業の収益力強化や、財務体質の改善にも取り組んでいます。

 

① 洋紙事業の収益力強化

 国内洋紙事業の収益力を強化するために、需要に見合った生産及び販売体制の確立と、抜本的な体質改善に取り組んでいます。平成24年度には12台の生産設備を停止するとともに、一部の不採算品種から撤退しました。当期はこれらの諸施策により、固定費削減や稼働率向上、重油使用量の極小化など生産コストを大幅に削減しました。さらに、営業力強化のため板紙事業も含め組織を再編し、グローバル販売体制の強化も進めています。

 

②事業構造転換に向けた取組み強化

 長期的な国内洋紙市場の縮小も見据えたうえで、当社グループとして持続的成長を図っていくためには、海外市場への展開に加え、産業用紙分野の強化、製紙以外の事業の育成、新事業の創出を図っていく必要があると考えています。森林資源や木材科学技術など、当社グループの強みを活かしながら、「総合バイオマス企業」への事業構造転換を加速する取り組みを進めています。
 平成24年10月の当社、日本大昭和板紙株式会社、日本紙パック株式会社及び日本製紙ケミカル株式会社の四社合併、平成25年4月の事業持株会社化を通じて経営のスピードアップを図りながら、包装容器、機能性シートといった産業用素材や、セルロースナノファイバーなどの新素材を含むバイオケミカル、電力・エネルギー、さらにはアグリ・食品など今後の成長が期待できる分野に経営資源を重点配分し、主力事業とすべく拡大を図っていきます。
 当社グループでは、既に工場の発電余力を活用した売電や、電力需給逼迫時の要請に応えた電力供給を実施していますが、さらに事業拡大を推進するべく、平成25年6月に新たにエネルギー事業本部を設置しました。八代工場での未利用材を100%使用する木質バイオマス発電事業や、小松島市の社有地でのメガソーラー事業、富士工場鈴川における石炭火力発電事業など、目下、準備を進めているものに加え、新たな発電プロジェクトも検討しています。これらの発電事業では、再生可能エネルギーの固定価格買取制度による安定的な販売や、紙の原料調達網を活用した未利用材の安定集荷に加え、土地などの資産や操業経験豊富な人材といった当社グループの強みを活かし、早期の収益拡大に向け取り組んでいます。また、PPS(特定規模電気事業者)としての電力小売りや、新規バイオマス固形燃料の開発など、さらなる事業拡大に向けた検討も積極的に推進していきます。
 また、木材を原料とし、高強度、低熱膨張性、酸素バリア性、増粘性など多様かつ有用な特質をもつセルロースナノファイバーについては、平成25年10月に稼働した実証生産設備により、用途開発を進めています。

 

③ 海外事業の収益力強化

 アジア・オセアニア地域を中心とする環太平洋の成長市場をターゲットに事業展開に取り組んでいます。平成25年12月には、タイ国SCGペーパー社と同社の保有する植林、パルプ、紙で構成される事業部門への参画について合弁契約を締結し、平成28年を目処に当該株式を約30%まで取得する予定です。また先行して進めていました同社との合弁事業であるサイアム・ニッポン・インダストリアル・ペーパー社(SNP社)では、本年3月から食品・医療包装紙をはじめとする多用途薄物産業用紙の生産を開始しました。
 オーストラリアン・ペーパー社は、豪ドル高の修正による為替水準の好転とともに収益も改善しています。来期には古紙パルプ製造設備の稼働を予定しており、オーストラリア市場への古紙パルプ配合製品投入により、同国内における販売力を強化していきます。
 今後も地域ごとの事業のバランスを考慮しつつ各事業の収益力向上を図るとともに、当社グループの海外流通チャネルを活用した拡販にも注力していきます。

 

④ 財務体質の改善

 当社グループでは、東日本大震災からの復興のために多額の資金を要したことにより有利子負債が増加しました。第4次中期経営計画における諸施策の実行により財務体質の改善を図っていきます。利益の回復とともに、土地の売却など思い切った資産効率化も進め、将来のために必要な戦略投資の実行と同時に負債の圧縮を図っていきます。

 

 

(株式会社の支配に関する基本方針)

1.基本方針について

 当社は、当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として、当社の企業価値ひいては株主共同の利益の確保・向上に資する者が望ましいと考えています。
 もっとも、当社は、株式を上場して市場での自由な取引に委ねているため、会社を支配する者の在り方は、最終的には株主の皆さま全体の意思に基づき決定されるべきであり、会社の支配権の移転を伴う買付提案に応じるか否かの判断も、最終的には株主全体の意思に基づき行われるべきものと考えます。しかしながら、当社株式等に対する大規模買付行為や買付提案の中には、買付目的や買付後の経営方針等から見て企業価値ひいては株主共同の利益に対する明白な侵害をもたらすもの、株主に株式の売却を事実上強要するおそれがあるもの、株主が買付けの条件等について検討したり、当社の取締役会が代替案を提案するための充分な時間や情報を提供しないもの、買付者の提示した条件よりも有利な条件をもたらすために買付者との交渉を必要とするもの等、株主共同の利益を毀損するものもあり得ます。
 当社は、このような大規模買付行為や買付提案を行う者は、例外的に当社の財務及び事業の方針の決定を支配する者として適当でないと判断します。
 

2.基本方針の実現に資する取組みについて

 (1) 中期経営計画について

 当社グループは紙パルプ事業を中心とした、用途多彩で再生可能な木材資源の活用を通じて、豊かな暮らしと地球環境の両立を支える企業活動を実践しています。この持続的成長をさらに確かなものにするため、平成24年4月1日から平成27年3月31日までを期間とする「第4次中期経営計画」を策定しています。第4次中期経営計画では、洋紙事業の収益力強化、事業構造転換に向けた取組み強化、海外事業の収益力強化、財務体質の改善の4つの主要テーマを掲げています。
 洋紙事業の収益力強化では、生産設備12台を停止し、国内洋紙生産能力の15%に相当する年産80万トンを削減することにより収益改善を図りました。
 事業構造転換に向けた取組み強化では、国内での需要減少が見込まれる洋紙事業から、今後も国内外で安定的な成長が期待できるパッケージ・紙加工事業、再生可能資源からの素材として注目を集めるバイオケミカル事業、東日本大震災以降に事業機会が拡大しつつあるエネルギー事業など、強化すべき事業分野に経営資源を集中し、事業構造の転換を進めていきます。
 海外事業の収益力強化では、需要の旺盛なアジア・オセアニア地域を戦略地域として位置づけ、海外子会社の収益力向上を図るとともに、現地の有力企業との提携を強化し、海外展開の基盤強化を図っていきます。
 財務体質の改善では、東日本大震災からの復興のために多額の資金を要したことにより有利子負債が増加しましたが、第4次中期経営計画における諸施策の実行により財務体質の改善を図っていきます。
 当社グループは、第4次中期経営計画の実行のみならず、技術開発を含めた再生可能なバイオマス資源の活用を推進し、暮らしと社会を支える「総合バイオマス企業」として企業価値の持続的な向上に努めていきます。
 

 (2) コーポレート・ガバナンスの取組み

 当社は、株主の皆さまをはじめとするステークホルダーに対する経営の透明性を一層高め、公正な経営を実現することを経営の最重要課題としています。
 当社グループは平成25年4月1日付の組織再編成により、純粋持株会社制から事業持株会社制へ移行しました。これまで純粋持株会社として構築してまいりましたグループ経営の司令塔としてのグループ成長戦略の推進機能、傘下事業へのモニタリング(監査・監督)機能、及びコンプライアンス推進機能を維持・継続するとともに、事業持株会社として業務の執行と経営の監督を明確に分離するため執行役員制度を導入したほか、社外取締役を導入し、経営監視機能のさらなる向上を図っていきます。
 このような取組みにより、当社は、今後もより一層コーポレート・ガバナンスの強化に努めていきます。
 
 かかる取組みは当社の企業価値・株主共同の利益を確保・向上させるものであり、上記「1.」で述べた基本方針に沿うものです。
 

3.基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組み

 (1) 本対応方針の概要

 当社は、上記「1.」に述べた基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務及び事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みとして、「当社株式等に対する大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)」(以下「本対応方針」といいます。)を定めています。
 本対応方針の有効期間は、平成27年3月期に関する定時株主総会終結の時までとなっています。その概要は以下のとおりです。
ア.大規模買付ルールの設定
 本対応方針は、当社グループの企業価値ひいては株主共同の利益を確保・向上させることを目的として、当社の株券等の大規模買付行為が行われる場合に、大規模買付行為を行おうとする者(以下「大規模買付者」といいます。)に対し、①事前に大規模買付行為に関する必要かつ十分な情報の提供を求め、②大規模買付行為についての情報収集・検討等を行う時間を確保した上で、③株主の皆さまに当社経営陣の代替案等を提示し、大規模買付者との交渉を行っていくための手続を定めています。
イ.新株予約権無償割当ての利用
 大規模買付者が本対応方針において定められた手続に従うことなく大規模買付行為を行う等、当社の企業価値・株主共同の利益が害されるおそれがあると認められる場合には、当社は、当該大規模買付者による権利行使は認められないとの行使条件及び当社が当該大規模買付者以外の者から当社株式と引換えに新株予約権を取得する旨の取得条項が付された新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)を、その時点の全ての株主に対して新株予約権無償割当ての方法(会社法第277条以降に規定されます。)により割り当てます。 
ウ. 当社取締役会の恣意的判断を排するための独立委員会の利用等
 本対応方針においては、大規模買付行為への対抗措置としての本新株予約権の無償割当ての実施もしくは不実施、または本新株予約権の取得等の判断について、当社取締役会による恣意的な判断を排するため、独立委員会規則に従い、当社経営陣からの独立性の高い社外者のみから構成される独立委員会の判断を経ることとしています。また、これに加えて、本新株予約権の無償割当ての実施に際して独立委員会が本新株予約権の無償割当ての実施に関する株主の皆さまの意思を確認することを勧告した場合には、原則として当社取締役会は株主意思確認総会を招集するものとされています。さらに、こうした手続の過程については、株主の皆さまに適時に情報開示を行うことにより透明性を確保することとしています。
 なお、本対応方針の独立委員会は、当社社外取締役1名、社外監査役2名及び社外の有識者1名により構成されます。
エ.本新株予約権の行使及び当社による本新株予約権の取得
 本対応方針に従って本新株予約権の無償割当てがなされ、大規模買付者以外の株主の皆さまにより本新株予約権が行使された場合、または当社による本新株予約権の取得と引換えに、大規模買付者以外の株主の皆さまに対して当社株式が交付された場合、当該大規模買付者の有する当社株式の議決権割合は、当該行使・取得前と比較して、最大で50%まで希釈化される可能性があります。
 

 (2) 本対応方針が株主・投資家に与える影響等の概要

ア.大規模買付ルールの影響
 大規模買付ルールは、当社株主の皆さまが大規模買付行為に応じるか否かを判断するために必要な情報や、現に当社の経営を担っている当社取締役会の意見を提供し、株主の皆さまが代替案の提示を受ける機会を保障することを目的としています。これにより株主の皆さまは、十分な情報の下で、大規模買付行為に応じるか否かについて適切な判断をすることが可能となり、そのことが当社の企業価値ひいては株主共同の利益の保護につながるものと考えます。したがいまして、大規模買付ルールの設定は、株主及び投資家の皆さまが適切な投資判断を行う上での前提となるものであり、株主及び投資家の皆さまの利益に資するものであると考えています。
イ.本新株予約権の無償割当時の影響 
 当社取締役会において本新株予約権無償割当決議を行った場合には、本新株予約権無償割当決議において別途定める割当期日における株主の皆さまに対し、その保有する株式1株につき本新株予約権1個の割合で本新株予約権が無償にて割り当てられます。仮に、株主の皆さまが、本新株予約権の行使期間内に本新株予約権の行使に係る手続を経なければ、他の株主の皆さまによる本新株予約権の行使により、その保有する当社株式が希釈化されることになります。 
 ただし、当社は、非適格者以外の株主の皆さまから本新株予約権を取得し、それと引換えに当社株式を交付することがあります。当社がかかる取得の手続を取った場合、非適格者以外の株主の皆さまは、本新株予約権の行使及び行使価額相当の金銭の払込みをせずに、当社株式を受領することとなり、保有する当社株式1株あたりの価値の希釈化は生じますが、保有する当社株式全体の希釈化は生じません。
 

 (3) 本対応方針の合理性

 本対応方針は、経済産業省及び法務省が平成17年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」の定める三原則を完全に充足していること、平成24年6月28日開催の株式会社日本製紙グループ本社第12回定時株主総会においてあらかじめ株主の皆さまのご承認をいただいたうえで、平成25年2月22日開催の当社臨時株主総会において承認決議を行っていること、一定の場合には株主意思確認総会において本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについて株主の皆さまの意思の確認を行うこと、その内容として合理的かつ詳細な客観的要件が充足されなければ発動されないように設計されていること、本対応方針の運用に関して独立性の高い社外者から成る独立委員会を設置しており、当社取締役会は本新株予約権の無償割当てを実施するか否かについての独立委員会の判断を最大限尊重して決議を行うこと、独立委員会は当社の費用で独立した第三者の助言を受けることができること、本対応方針の有効期間の満了前であっても当社株主総会または当社取締役会の決議によって本対応方針を廃止できること、本対応方針は当社の株券等を大量に買い付けた者が指名し株主総会で選任された取締役により廃止することができるものとして設計されていること(デッドハンド型買収防衛策ではないこと)等により、その公正性・客観性が担保されています。
 

 

4 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 製品需要及び市況の変動リスク

当社グループは、主力の紙・パルプ事業をはじめ、紙関連事業、木材・建材・土木建設関連事業等を行っています。これらの製品等は経済情勢等に基づく需要の変動リスク及び市況動向等に基づく製品売価の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(2) 生産状況の変動リスク

当社グループは、主として需要と現有設備を勘案した見込生産を行っています。全ての生産設備について定期的な災害防止検査や点検等を行っていますが、火災や設備のトラブルの他、原燃料調達面の支障等により生産設備の稼働率が低下した場合などに製品供給力が低下するリスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(3) 為替レートの変動リスク

当社グループは、輸出入取引について為替変動リスクを負っています。輸出入の収支は、チップ、重油、石炭、薬品などの諸原燃料等の輸入が、製品等の輸出を上回っており、主として米ドル及び豪ドルに対して円安が生じた場合には経営成績にマイナスの影響を及ぼします。なお当社グループは、為替予約等を利用したリスクヘッジを実施しています。

 

(4) 原燃料価格の変動リスク

当社グループは、主としてチップ、古紙、重油、石炭、薬品などの諸原燃料を購入して、紙・パルプ・その他の製品を製造・販売する事業を行っています。そのため国際市況及び国内市況による原燃料価格の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(5) 株価の変動リスク

当社グループは、取引先や関連会社等を中心に市場性のある株式を保有していますので、株価の変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。また、株価の変動は、年金資産の変動を通じて年金費用を変動させる可能性があります。

 

(6) 金利の変動リスク

当社グループは、有利子負債などについて金利の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(7) 海外事業リスク

当社グループは、北米・南米・北欧・中国・東南アジア・豪州等で、紙・パルプの製造販売、植林等の海外事業展開を行っています。海外事業リスクの未然防止に努めていますが、予測し得ない事態等が発生した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(8) 訴訟等のリスク

当社グループは、業務の遂行にあたり法令遵守などコンプライアンス経営に努めていますが、国内外の事業活動の遂行にあたり、刑事・民事・租税・独占禁止法・製造物責任法・知的財産権・環境問題・労務問題等に関連した訴訟等のリスクを負っており、その結果、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損リスク

当社グループは、生産設備や土地をはじめとする固定資産を保有しています。資産価値が下落した場合、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(10) 自然災害等のリスク

当社グループの生産及び販売拠点周辺で地震や大規模な自然災害等が発生して生産設備・物流インフラ等が被害を受けた場合、設備復旧のための費用、生産停止による機会損失、製品・商品・原材料等への損害などにより、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(11) 信用リスク

当社グループは、得意先などの信用リスクに備えていますが、経営の悪化や破綻等により債権回収に支障を来たすなど、経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

(12) その他の事業環境等の変動リスク

当社グループは、上記以外の項目に関しても偶発事象に起因する事業環境等の変動リスクを負っており、その変動により経営成績及び財政状態等に影響を与える可能性があります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(1)  永豊餘英属蓋曼群島股份有限公司(台湾・永豊餘グループの板紙・段ボール事業、以下「永豊餘ケイマン」)の株式譲渡について

当社は、平成25年6月27日開催の取締役会において、永豊餘投資控股股份有限公司(平成24年に永豊餘造紙股份有限公司から社名変更)との戦略的業務提携に基づいて取得・保有する永豊餘ケイマン株式の売却を決議しました。(平成25年6月28日締結、同7月1日発効)
 当社は、平成22年3月に永豊餘ケイマンの株式を取得しました。永豊餘ケイマンは当時、事業の拡大を目指して海外の株式市場への上場を計画していましたが、その後の世界的な株式市場の低迷により、両社は当初予定した期間内での上場は困難と判断し、資本提携を解消することにしたものです。
 なお、台湾最大の総合製紙グループである永豊餘投資控股股份有限公司との協力関係は、今後とも継続していきます。

株式譲渡の概要
  1.譲渡株式 永豊餘ケイマン株 63,068,342株(当社の出資割合 20.35%)
  2.譲渡先  永豊餘国際公司(同社は、永豊餘投資控股股份有限公司が海外投資を行う持株会社で 
        す。)
  3.譲渡価格 1億15百万米ドル

 

(2)  当社は、平成25年8月27日開催の取締役会において、保有する固定資産を下記のとおり譲渡することを決議し、同日付で契約を締結しました。

1.譲渡の理由
資産の効率化と財務体質の強化を図るため。

2.譲渡資産の内容

資産の内容及び所在地

譲渡価額

帳簿価額

現況

東京都北区王子五丁目1番39他 土地43,146.34㎡及び建物

16,600百万円

727百万円

倉庫及び事務所

 

3.譲渡先の概要
譲渡先につきましては、譲渡先との取決めにより公表を控えさせていただきます。なお、譲渡先と当社との間には、記載すべき資本関係、人的関係及び取引関係はありません。

4.譲渡の日程
平成25年8月27日   当社取締役会決議
平成25年8月27日   契約締結
平成26年9月30日   物件引渡し(予定)

 なお、当該固定資産の譲渡により、平成27年3月期連結決算において、諸費用等を除いた固定資産売却益約150億円を特別利益として計上する見込みです。

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、原材料から製品まで一貫した研究を行い、洋紙・板紙事業の収益力強化を図ると同時に、パッケージ・紙加工事業、木材・ケミカル事業、エネルギー事業などの成長分野にも注力し、「総合バイオマス企業」への事業構造転換を進める研究開発活動を行っています。研究開発体制についても、各事業部門や工場との密接な連携により総合的な開発力の向上と競争力の強化に努めています。

当連結会計年度における当社グループの研究開発費は、5,690百万円(人件費含む)であり、各事業部門別の研究の目的、主要課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりです。

 

(1) 紙・パルプ事業

国内市場の成熟化と海外市場の成長、原材料の需給逼迫と価格高騰、深刻化する地球環境問題などの様々な課題に対峙するため、アグリ・バイオ研究所、総合研究所など以下のような取り組みを行っています。当事業に係る研究開発費は3,721百万円です。

① 植林事業についての技術開発

事業活動の基幹となる原材料確保のため、自社植林木の生産性向上を目指し、技術開発を積極的に進めています。ブラジルにおいては、精英樹の開発として開花促進技術の開発、成長性と土壌要因の関連調査などの林業技術の深耕、また簡便なパルプ収率測定技術の確立など、総合的な取り組みを推進し精英樹クローン植林の品質向上に役立てています。

② 品質とコストの更なる改善

洋紙及び板紙の競争力強化のため、新製品開発や需要家のニーズに応えた品質改善を継続しています。環境対応新製品としては「オーロラ®コートグリーン 70(PEFC)」「ユーライト®グリーン 70(PEFC)」を開発しました。
 また収益改善に資する技術開発として、各種ボイラーから発生する燃焼灰の有効利用法の確立、収率の高いパルプの製造技術の開発、難利用古紙の利用技術の開発、自製填料の高度利用技術の開発など独自技術開発を推進しています。

③ 将来に資する技術開発など

アグリ事業に係る技術開発として、植林技術を応用し茶苗「サンルージュ®」の生産と健康食品としての機能性解析を進めています。また、「総合バイオマス企業」としての新規事業創出を目指し、プラスティック代替新規紙材料の開発や、セルロースナノファイバー・バイオリファイナリー・エネルギーに関する研究開発に取り組んでいます。
 セルロースナノファイバーについては、平成25年10月に実証生産設備を設置し、早期の事業化を目指しています。
 バイオリファイナリー関連では、木材の高度利用技術の開発として溶解パルプの製造工程で発生する酸加水分解液の高度利用について検討を進めていきます。また、木材から化学品原料の一貫製造プロセスに関する研究開発を行っています。
 さらに、エネルギー事業に係る技術開発として、木質バイオマスを半炭化(トレファクション)して得られる新規固形燃料の開発を進めていきます。

 

(2) 紙関連事業

液体用紙容器については当社が、各種化成品については当社及び㈱フローリックが中心となって研究開発を行っています。当事業に係る研究開発費は1,878百万円です。

液体用紙容器の分野につきましては、環境と衛生性、ユニバーサルデザインに配慮した製品及びそのシステム(充填機等)の開発を主要課題にしてきました。フジパック(レンガ型容器)システムでは、充填機システムにおける環境配慮型脱アルミ包材の開発を、NPパックでは自社工場での原紙の生産対応を行うべく開発を推進しています。

化成品の分野につきましては、自動車プラスティック部材用水系及び溶剤系プライマーの開発、ポリカルボン酸系コンクリート分散剤の収益力強化等を行いました。セロビオース(セルロースの一種)については、外部研究機関との共同研究で健康食品分野での新規エビデンスを取得し、新規顧客の獲得に成果を挙げました。また、市場が拡大しているスマートフォンやタブレット端末等の中小型ディスプレー用途のハードコートフィルムの開発に取り組みました。

 

(3) 木材・建材・土木建設関連事業

㈱パルが国産材の使用量をより増やすための商品開発や高齢者住宅・施設向けの木質内装建材の開発を行っています。当事業に係る研究開発費は89百万円です。

 

(4) その他

該当事項はありません。

 

 

7 【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っています。

詳細につきましては、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)  連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しています。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績の分析

① 売上高

売上高は前連結会計年度の1兆250億円から561億円(5.5%)増加し、1兆812億円となりました。この主な増加要因は、印刷用紙において国内需要が堅調に推移したことに加え、輸入紙の減少、輸出を中心とした拡販などによるものや、板紙において段ボール需要が年間を通して堅調に推移したことなどにより、販売数量が前年を上回ったことによるものです。

 

② 営業利益

営業利益は前連結会計年度の251億円から33億円(13.5%)増加し、285億円となりました。この主な増加要因は、原価改善・固定費削減などのコストダウンに努めるとともに、洋紙・板紙・家庭紙など各製品の価格修正に取り組んことによるものです。

 

③ 営業外損益・経常利益

営業外損益は前連結会計年度の20億円の損失から17億円改善し、3億円の損失となりました。これは主として持分法投資利益が増加したことによるものです。

以上により、経常利益は前連結会計年度の230億円から51億円(22.1%)増加し、281億円の利益となりました。

 

④ 特別損益

特別利益は前連結会計年度の16億円から79億円増加し、95億円となりました。当連結会計年度の特別利益の主な内訳は、固定資産売却益58億円、投資有価証券売却益32億円です。
 特別損失は前連結会計年度の86億円から14億円減少し、72億円となりました。当連結会計年度の特別損失の主な内訳は、固定資産除却損20億円、事業構造改革費用13億円、減損損失13億円です。

 

⑤ 当期純利益

当期純利益は前連結会計年度の106億円から121億円(113.7%)増加し、227億円となりました。1株当たり当期純利益は前連結会計年度の92円00銭に対し、196円67銭となりました。

 

 

(3) 当連結会計年度の財政状態の分析

① 総資産・純資産

総資産は、前連結会計年度末の1兆4,977億円から168億円減少し、1兆4,808億円となりました。この主な要因は、有形固定資産が182億円減少したことによるものです。
 負債は、前連結会計年度末の1兆1,012億円から469億円減少し、1兆543億円となりました。この主な要因は、有利子負債の返済によるものです。
 純資産は、前連結会計年度末の3,964億円から301億円増加し、4,265億円となりました。この主な要因は、利益剰余金が172億円、為替換算調整勘定が167億円それぞれ増加したことによるものです。

 

② キャッシュ・フロー

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度の659億円より97億円(14.8%)多い757億円のキャッシュを獲得しました。前連結会計年度に比べて増加した主な要因は税金等調整前当期純利益が増加したことによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度の617億円より369億円(59.7%)少ない248億円のキャッシュを使用しました。前連結会計年度に比べて減少した主な要因は投資有価証券及び固定資産の売却による収入が増加したことや、固定資産の取得による支出が減少したことによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、前連結会計年度の143億円より511億円(355.2%)多い654億円のキャッシュを使用しました。前連結会計年度に比べて増加した主な要因は借入金を返済し有利子負債の圧縮を進めたことによるものです。

 

(4) 経営者の問題意識と今後の方針について

① 当社グループを取り巻く経営環境

「第2 事業の状況  3 対処すべき課題  (1) 当社グループを取り巻く経営環境」をご参照ください。

 

② 今後の対応策

当社グループは、平成27年度(2015年度)を目標とする「グループビジョン2015」の実現に向け、平成24年4月から平成27年3月までを期間とする「第4次中期経営計画」をスタートさせました。
 第4次中期経営計画では、洋紙事業の収益力強化、事業構造転換に向けた取組み強化、海外事業の収益力強化、財務体質の改善の4つの主要テーマを掲げています。

これらの内容につきましては、「第2 事業の状況  3 対処すべき課題」をご参照ください。